書いてあること
- 主な読者:マーケティングを活用して利益を増やしたい経営者、経営戦略担当者
- 課題:マーケティング手法に関する知見が足りない
- 解決策:マーケティングの3C分析に基づいて戦略を練る
1 マーケティングの定義付け
日本マーケティング協会では、マーケティングについて、次のように定義しています。
マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である
企業活動におけるマーケティングとは、企業の利益を増加させることを目的としています。これを実現するために、顧客にとってより良い製品やサービスを、顧客が買ってくれそうな価格を付け、効率的かつ顧客の手元に届きやすい流通経路で販売し、顧客にとってより訴求力のあるプロモーションを行う一連の活動を指しているといえるでしょう。
■日本マーケティング協会■
https://www.jma2-jp.org/
2 マーケティングの3Cとは
具体的なマーケティングの手法や戦略を考える際に必要なのが次の「マーケティングの3C」による分析です。
- Customer(カスタマー=顧客(市場))
- Competitor(コンペティター=競合)
- Company(カンパニー=自社)
3Cの視点はマーケティングを行う上で基本となるもので、「顧客(市場)」「競合」「自社」の順番で分析していきます。以降では、3Cのうち「顧客分析」を行う際に役立つ代表的なフレームワークを紹介します。
1)顧客分析に役立つAIDMAモデル
例えば、コーヒーを中心に製造販売している飲料メーカーであれば、次の点などを把握しておく必要があります。
- どのような属性の顧客(年代・性別・職業など)が
- どのようなコーヒー(銘柄や微糖・無糖など)を
- どのようなシーンで
- どのくらいの頻度で購入しているのか
- なぜ購入したのか(購入の理由)
これらのことを知るためには、定期的に顧客を対象としたアンケート調査などを行って顧客の生の声を収集し、その結果をデータベース化しておくなどの方法が考えられます。
また、顧客を分析する上では「顧客が製品を認知してから購買に至るまでのプロセス」を把握しておきましょう。この際に役立つのが「AIDMA(アイドマ)モデル」です(「AIDMAの法則」と呼ぶこともあります)。AIDMAモデルとは、顧客が製品を認知してから購入に至るまでの心理的プロセスを段階的にモデル化したもので、次の5段階の心理的プロセスモデルの頭文字をとっています。
- Attention(注意=注意を引き、目にとまる)
- Interest(関心=興味を持つ)
- Desire(欲求=欲しいという欲求が発生する)
- Memory(記憶=心に刻み、あるいは思い出す)
- Action(行動=購買という行動に出る)
このAIDMAモデルで顧客がコーヒーを購入するまでのプロセスを考えてみると、次のようになります。
- Attention「へえ~『○○コーヒー』という商品が発売されたのか」
- Interest「ダイエットに効果がある成分が含まれているんだ。興味があるな」
- Desire「どんな効果があるか飲んでみたいな」
- Memory「そうだ、今日のランチのときに飲んでみようか」
- Action「よし買おう!」
製品やサービスの種類によって、心理的プロセスには多少の違いがありますが、顧客が何に注意を引かれ、どのように興味を持ち、そしてどのような場面で購買を思い立つかを把握することが大切です。
2)顧客識別に役立つRFM分析
顧客分析の一つの手法として「RFM分析による顧客の識別」があります。これは自社の顧客を、「R:最新購買日(Recency)=最近いつ購入したか」「F:購買回数(Frequency)=どのくらいの頻度で購買しているか」「M:購買金額(Monetary)=いくら使っているか」という3項目で評価するものです。
RFM分析では、それぞれの項目ごとに区分を決定し、段階をつけて評価していく方法が知られています。RFM分析の例は次の通りです。
例えば、ほぼ毎日来店し、必ず3000円分購入する顧客AのRFMは、R=3日以内(ランク5)、F=20回以上(ランク5)、M=3000円以上(ランク5)であり、顧客AのRFM分析による評価は555(全てがランク5)となります。
RFM分析の評価は「555」が最高で、この評価の顧客は自社にとってかなりの優良顧客といえます。「555」評価の顧客に対しては、末長くリピーターでいてもらうために、「季節のあいさつなどを欠かさず密に連絡を取る」などの「親密度を高め、顧客側が大事にされていると認識できる」方法を用いると効果的でしょう。
このRFM分析では、自社にとっての優良顧客を見極め、いかにして「555(全てがランク5)の顧客」にするかを考察することがポイントです。
このように、RFM評価を活用すると、顧客ごとの特徴をつかみやすくなります。
例えば、R評価が同レベルの顧客の場合、F評価の高い顧客のほうが、購入頻度が高い傾向にあり、自社にとって良い顧客ということになります。また、F評価は低いもののM評価の高い顧客がいる場合、R評価で比較し、そのR評価の高い顧客に対して優先的にアプローチすることも考えられます。
以上(2019年12月)
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画像:unsplash