事業が繁栄している企業には、共通した特徴があります。それは、次の「ビジネスの繁栄」の公式を実践していることです。

ビジネスの繁栄=ビジネスモデル×競争戦略×マーケティング

ビジネスモデル、競争戦略、マーケティングの3つの要素がバランスよく機能することで、ビジネスは繁栄します。そのため、仮に優れたビジネスモデルと競争戦略があっても、マーケティングを実践しなければ、十分な顧客を確保することが難しくなります。実際、停滞している中小企業は、マーケティングに課題があることが多いといえます。

創業当初はマーケティングについて考えていたはずなのに、いつの間にか優先順位が低くなっていた、ということはないでしょうか。このタイミングで改めてマーケティングについて考え、実践してください。

1 自社に効果的なマーケティングを実践する

ここでは「マーケティング」を、「売る方法を考えて実践すること」とシンプルに捉えています。マーケティングに関する古典的なフレームワークに「マーケティングの4P」があります。

Product(製品)、Price(価格)、Promotion(プロモーション)、Place(流通)という4つの要素の頭文字をとったもので、次のような考え方をします。

マーケティングの4Pの説明を示した画像です

経営者は、日々「どうすれば売れるだろうか?」と考えていますが、効果的なマーケティングを行うためには、4Pを意識して組み立てることが重要です。以降では、マーケティングの4Pのうち、Promotionについて、主な種類や効果的な活用法を解説します。

2 4P:Promotion(プロモーション)の種類と効果的な活用のポイント

「うちは広告を打たなくても、口コミでお客様が来てくれる」という経営者は少なくありませんが、口コミだけの集客には限界があります。より多くの人に自社の商品・サービスに注目してもらうためにはPromotionが必要です。

中小企業が主に取り組むPromotionとしては、次のものが挙げられます。

Promotionの具体例を示した画像です

さまざまな種類があるので迷ってしまいますが、次の3つのポイントを意識することで効果を高めることが期待できます。

1)継続することで忘れた頃に効果が表れる

Promotionは、一度ですぐに効果が表れることは少なく、数カ月~数年と、継続して実施することでようやく反応が出てくることが珍しくありません。また、実施するタイミングによっても効果が違います。

少しだけ着手して「効果がないからもうやらない」と諦めるのではなく、効果を慎重に見極めながらトライ&エラーを繰り返し、一定期間継続してみることが大切です。忘れた頃に効果が表れ、そこから波に乗るケースもよくあります。

2)売上(収益)の一定割合の予算をかける

Promotionは、無料のものから高額のものまでありますが、高ければよいというわけではありません。いきなり高額な広告を打つよりも、低額な方法をうまく活用することで、継続して効果を測定します。

お勧めの方法は、「売上の5%を広告費として使う」など、売上や収益に対して一定割合を予算とすることです。「もうかったからもうやらなくていい」ではなく、「もうかったらその分、さらに広告費をかける」という姿勢が、事業の成長につながっていきます。

3)経路・集客コストを検証してチューニングする

Promotionの効果を測定するには、顧客が自社の商品・サービスを購入した“経路”をヒアリングしてみることが有効です。よく通販にある、「どこで当商品をお知りになりましたか?」というアンケートもこれに該当します。

アンケートをしてみると、「ホームページを見て」「新聞のチラシを見て」など、どの方法が集客に効果があったか分かってきます。効果の高い広告に予算を多く割り振ることができます。

また、かけた予算に対してどれくらいの顧客を獲得できたかを検証することも欠かせません。顧客1人(取引先1社)を確保するのにかかった集客コスト(顧客獲得単価)を計算することで、そのPromotionの採算性が分かるからです。

例えば、リスティング広告に10万円をかけて、5人の顧客が商品を買った場合、顧客獲得単価は2万円です。得られた収益と比較して、妥当と判断できれば「広告費を増額しよう」ということになります。


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3 リピーターを増やす活動サイクル

中小企業の多くは、限られた市場をターゲットにしています。従って、単発の顧客を集める姿勢では限界を迎え、事業の継続が難しくなってきます。

多くのリピーターを確保して、「1人の顧客(1社の取引先)から繰り返し得られる売上(顧客生涯価値)」を増加させることが不可欠です。つまり、ハンター型ではなく、長期に顧客を増やして育てていくファーマー型のビジネスを目指すことが有効です。

ターゲットとする市場からリピーターを確保するためには、図表3のような活動サイクルが求められます。これらの活動を並行して継続的に行うことが、安定した売上をもたらしてくれるリピーターを増やすことにつながります。

リピーターを増やす活動サイクルを示した画像です

それでは、それぞれの活動について効果を発揮するためのポイントを解説します。

1)見込客集客

自社の商品・サービスに興味を抱いて、来店や問い合わせをしてくれる人(会社)を増やすための活動です。見込客は、主にPromotionによって集めます。その際にカギとなるのは、「ポジショニングとブランディング」で解説した「ミッション」「ポジショニング」「ブランディング」の3つの要素を研ぎ澄ますことです。

見込客は、リスト化してアプローチできる状態にします。個人情報を得るのは難しくなりましたが、相手にメリットを感じてもらえるように工夫すれば、十分に集客可能です。なお、個人情報の取得や取り扱いには十分に注意しましょう。

よく行われているのが、チラシに粗品進呈のチケットを付けておき、来店時に連絡先を書いて提出してもらう、Webサイト上で無料の資料(オファー)を提供して名前とメールアドレスを集める、といった方法です。

2)見込客フォロー・購買客(取引先)化

見込客に対してアプローチする際は、「セールス色」が強くならないように注意しましょう。見込客が興味を持ちそうな商品情報を送るなど、信頼関係を築くことが第一です。

3)購買客フォロー

初めて商品・サービスを購入してくれた顧客をフォローします。フォローの方法には次のようなものがあります。自社の商品・サービスに合った方法を採用してください。

  • サンキューレター(お礼状)の送付
  • シーズンレター(誕生日やクリスマスなど)
  • アフターサービス
  • 定期的メンテナンスサービス
  • ニュースレター
  • メールマガジンによる情報提供
  • イベントへの招待
  • 御用聞き営業

4)リピーター化

リピーターは、事業内容や取り扱っている商品・サービスによって想定する内容が異なります。分かりやすい例では、住宅はリピート性が低いものの、飲食店で提供する料理はリピート性が高いといえます。

重要なことは、自社にとってリピーター(固定客)とはどのような人(企業)なのかを定義することです。住宅を販売する工務店であれば「リフォームなどを10年スパンで依頼してくださる世帯」、飲食店では「月に2回以上来てくださる方」などとなります。

4 リピーターを増やすためのヒント

同じような活動をしていても、リピーターが増える企業とそうでない企業が出てきます。実は、その差はちょっとしたことが原因になっているのです。ここでは、リピーターを増やしている企業の活動から、ヒントをお伝えします。

1)“ダサい”チラシや広告が注目を集める?

ごちゃごちゃした手書きのチラシが入っていると、「おや、何だろう」と、つい見てしまったという経験はありませんか?

チラシや広告は、デザイン性に優れたものよりも、“ダサい”ものが目を引くことがあります。多くの人が、デザイン性の高い広告に慣れてしまっているからです。

特に地域に根差す小売店などは、地域ネタや店主の思いなどを書いた手作り感のあるチラシを作るほうが、コストを安くできる上に効果も期待が持てます。

2)定期的な情報提供で親近感を覚えてもらう

お客様は、接触がない企業や店のことはすぐに忘れてしまいます。定期的に接触することが、思い出してもらうためには不可欠です。その方法としては、メールマガジンやニュースレターが有効です。

相手の役に立つ情報を提供することはもちろん、自社のスタッフの顔写真を載せるなどして、親近感を覚えてもらえる内容にするとよいでしょう。私の経験上、商品・サービスの宣伝は2割以下に抑えるくらいがちょうどよいと思います。

3)モノではなくお客様が求める満足を売る

お客様が商品・サービスを購入する目的は、それが欲しいというよりも、その先にある満足を得ることです。例えばレストランの場合、「おいしい料理を食べること」の先にあるのは、「一緒に行った人と仲良くなること」などではないでしょうか。

お客様が求める満足は、千差万別です。個々のお客様が「求める満足」を把握して、それを意識した接客を行うことがリピーター化に直結します。また、お客様の声(購入してくれたお客様の感想)を集めて、チラシやホームページに掲載すると、見込客が「満足した自分」を想像することができます。

4)ストーリーを伝える

見込客が購入することを決めるのは、商品・サービスのスペックや価格だけではなく、その背景にあるストーリーを重視するといわれています。企業がどのような思いで商品を作っているのか、商品開発の秘話など、隠されたストーリーをホームページやチラシに掲載することで、共感を得られる可能性が高まります。

5)製造業こそホームページを充実させる

製造業を営む中小企業のホームページは、情報量が少ないケースが多いものです。しかし、製造業こそホームページを充実させることで、問い合わせを受ける機会が増えます。他の製造業者がホームページを制作していなければ注目が集まりやすいですし、細かな技術情報を丁寧に掲載することで、検索上位に上がることも期待できるからです。

ある機械部品製造の町工場は、製品、技術力、製造可能分野など、自社の特徴や強みをホームページに掲載することで多方面から受注があり、リピーター化することにも成功しています。

6)飲食店や個人向けサービス業は“人”にリピーターがつく

飲食店の場合、顧客がリピーター化するのは、「店主やスタッフのことを気に入ったから」というケースが珍しくありません。同様に美容院など個人向けサービス業も、美容師などの“人”にリピーターがつく業種といえます。

“リピーターがつく人”になる方法は、マニュアル化しにくい暗黙知の世界ともいえますが、1つ挙げるとすれば「お客様のことを覚えること」です。例えば、飲食店に初めて来店したお客様が「○○の食材は苦手」と言ったら、次回は何も言わなくても、それを使わない料理を提供することです。ちょっとしたことですが、お客様は感銘を受けるものです。
お客様のことを覚えて、お客様に合わせてカスタマイズした接客サービスを心掛けることが、リピーター増加につながります。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2019年6月12日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

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