書いてあること

  • 主な読者:商談会への参加を検討する経営者
  • 課題:商談会に出展するためには、何を準備すればよいか分からない。大変そうに思える
  • 解決策:商談会のルールや雰囲気を把握した上で、必要な設備、準備する備品などを整理。感染症対策に必要なものも用意する

1 事前準備では、まず出展条件などを確認する

本稿では、リアル商談会に出展する際に必要な事前準備を見ていきます。商談会で良い出会いを果たし、その後、最終的に取引につなげるには、この事前準備の段階が非常に重要です。なお、本稿では「商談会」は全て、特別なことわりがない限り「リアル商談会」を指します。

1)商談会のルールや雰囲気を把握する

出展準備の前に、商談会のルールや固有の雰囲気を把握しておきましょう。これはブース作りなどにも役に立ちます。ルールは、主催者が準備している資料をよく読み、不明な点は主催者に確認しましょう。

注意が必要なのは各商談会固有の雰囲気です。例えば、ブースであれば「おしゃれで洗練されたブースが多い」「手作り感のあるブースが多い」「派手な装飾はなく『実質重視』のブースが多い」などのような違いがあります。また、商談会によっては、「大企業中心」「中小企業中心」といったように来場者層も異なります。こうした雰囲気はルールを確認するだけでは分かりにくい点があります。そのため、定期的に開催されている商談会であれば、出展前に、その商談会に足を運んで雰囲気を肌で感じておくとよいでしょう。また、主催者や出展経験者に話を聞くことや、以前に開催された際の映像や画像などを確認することも大切です。

2)ブースの備品、使用可能な設備などを確認する

通常、主催者は出展企業に、テーブル、椅子、パネル、スポットライトなどの照明器具、社名の入った看板といった備品などを提供しています。また、電源(コンセント数)などの設備は、使用できる数などが制限されていることがあります。

足りない備品があれば自社で準備しなければなりませんし、使用できる設備に制限があれば、ブースでの展示内容や展示方法などが制限されることもあります。備品や使用可能な設備などについては、必ず確認しましょう。

3)関連サービスの提供・あっせんの有無を確認する

商談会によっては、出展費用とは別料金で、主催者が関連サービスを提供・あっせんしている場合があります。例えば、オリジナルブース施工業者のあっせん、展示に必要な機器の貸し出し、搬入・搬出作業の補助など行っている場合があります。

また、備品の中には、申し出のあった出展者にのみ無料で貸し出す場合もあるようです。こうした関連サービスを上手に活用することで、負担を軽減しながら準備を進められる場合もあるので、忘れずに確認するようにしましょう。

2 自社で準備する物品の確認・手配を行う

1)ブース作りに必要な備品を準備する

展示する製品などブース作りに必要となる備品を準備します。主催者側が用意する備品は、通常、最低限度のものに限られるので、種類や数を確認しましょう。

ブース作りに関して準備する備品(例)は次の通りです。

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特に最近は、アルコール消毒液やマスクといった感染症対策に必要な備品の準備も欠かせません。来場者も、ブースにいる社員も、どちらも安心して参加できるように心掛けることが大切です。

2)来場者への配布物を準備する

会社案内や製品パンフレットなど、来場者への配布物を準備します。配布物として準備するもの(例)は次の通りです。

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この他にも、名刺交換などを通じて顧客情報を得るためのツールとして、簡単なアンケートを実施してもよいでしょう。

3)商談シートを準備する

商談会当日の商談内容を整理する「商談シート」を準備します。商談シートは、短時間で記載できるように、記載項目を絞り込んだシンプルなフォーマットにします。また、記載の手間を省き、後で見ても商談のポイントが分かりやすいように、可能な項目についてはチェックボックスを設けておくとよいでしょう。また、商談シートは、パソコンやスマホで簡単に入力できるような方法を検討するのも一策です。

4)人の手配をする

商談会には、さまざまな役割の人が必要となります。例えば、ブースへの来場者に製品の説明をしたり質問に答えたりする「説明担当」、来場者と商談を行う「商談担当」などが考えられます。また、場合によっては、商談会前日や終了後にブースへの機器類の搬入・搬出などをする人員も必要かもしれません。最小限で最大のパフォーマンスを発揮できるよう、役割分担やスケジュールなども、事前に決めておくことが大切です。

3 商談会への出展をPRする

1)招待状や案内状でご案内

既存の顧客や見込み客へは招待状や案内状などでご案内します。ただし、中には、「人がたくさん集まる場所に行くのはちょっと……」という考えの人もいます。強引に会場に呼ぶことのないようにしましょう。そういう人には、「当日、出展の模様をライブ中継します」といった案内方法もよいかもしれません。

一方、ご招待・ご案内して来てくださった方に対しては、感謝の気持ちを込めて、ノベルティーグッズなどのプレゼントを用意することも考えましょう。

2)自社ウェブサイトやSNSなどへの情報掲載

来場者は、事前に参加企業を確認し、興味があれば、会社概要や製品に関する情報収集を行います。そのため、主催者は、参加企業や展示製品の概要をパンフレットや商談会専用のウェブサイト・SNSなど(以下「ウェブサイトなど」)で紹介しています。しかし、多くの来場者は、それらとは別に当該企業のウェブサイトなどを閲覧します。また、会場で気になったブースがあれば、帰社後に当該企業のウェブサイトなどを閲覧します。

こうした情報ニーズに応えるため、自社のウェブサイトなどで商談会のパンフレットなどには掲載しきれない、より詳しい情報を掲載するようにします。また、会社概要や商談会当日に展示する製品以外の情報も、必要があれば掲載しておきましょう。

4 商談に関する事前準備を行う

事前マッチング制などによって、商談会当日の商談予定企業が事前に決まっている場合は、当該企業に関する情報収集を行います(「事前マッチング制」活用のポイントは後述参照)。商談会の参加企業の中に興味のある企業があれば、そこに対しても同じです。

基本的な情報は当該企業のウェブサイトやパンフレットなどを参考にします。また、商談会当日に、より踏み込んだ商談に至る可能性がある場合などは、帝国データバンクや東京商工リサーチなどの信用情報も確認するとよいでしょう。

5 その他の準備事項を確認する

ここまで、一般的に必要となる事前準備の事項を紹介しましたが、他にも、確認したほうがよいことがあります。例えば、ブース作りに使用する物品をレンタルするなど、社外から調達する場合は、それらを手配する必要があります。また、招待客に対する交通や宿泊の手配が必要になることもあります。商談会当日の商談が事前に決まっている場合は、スケジュール調整も必要です。このように、事前に準備すべき事項は多岐にわたるので、一覧表などを作成して漏れがないように進めていくようにしましょう。

6 事前マッチング制活用のポイント

1)事前マッチング制の概要

商談会当日に活発な商談が行われるように、事前マッチング制を導入しているケースがあります。事前マッチング制は、おおむね次のような流れです。

  • ブース出展者や商談会への来場予定者などが、事前に商談ニーズなどを記載したシートを作成・登録する
  • 商談ニーズなどを出展者や来場予定者などで共有し、興味のある企業に対して、商談会当日に行う商談を申し込む
  • 商談を申し込まれた企業が了承すれば、商談会当日に商談を行う

また、主催者がニーズの近い企業同士をマッチングしてくれる場合もあります。

2)商談ニーズを分かりやすく記載する

事前マッチング制を上手に活用するためには、シートに自社の商談ニーズを分かりやすく記載することが大切です。そのためには、「商談ニーズが一目で分かるタイトルとする」「自社のニーズを明確にし、取引実績など信頼性を高める情報を掲載する」などに留意するとよいでしょう。参考として、以下に、食品加工業者に関する商談ニーズの記載例(タイトル20文字以内、本文200文字以内)を紹介します。

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「悪い例」は、タイトルからは販売製品が分からず、商談ニーズをイメージすることができません。また、本文は事業内容や取扱製品は分かるものの、希望する取引先や取引実績などが不明確になっています。一方、「良い例」は、タイトルから製品の種類が一目で判断できます。本文には、事業内容、取扱製品、取引実績、希望取引先などが分かりやすくまとめられています。

3)幅広い相手と商談を行う

商談の申し込みを行う場合や、申し込まれた商談に対して了承するか否かを判断する場合は、自社のニーズに合っているか否かということを厳格に判断するのではなく、「参考になりそうな企業、面白そうと思う企業であれば、商談を申し込む(商談の申し込みを了承する)」というイメージで間口を広くするようにしましょう。

以上(2020年11月)

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画像:pixabay

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