高い、というのはどのくらいの金額をお考えですか?
営業ではカードを隠す人が多い?
営業は交渉事の連続で、その戦法は次の二つに分かれます。一つ目は、自分のカードを隠し続け、最も有効なタイミングを待って切る戦法。もう一つは、あえてカードを相手に見せつけ、自分はこんなに強いのだから降りたほうが得ですよと、懐柔する戦法。
通常の営業の現場でどちらの局面になることが多いかといえば、当然、前者のほうです。特に、お金に関する話になると、「高いんでしょ?」「いやいや、お安くできますよ」等、具体的な基準もないまま曖昧な話が続くことがあります。しかもこの状況は、売り手である営業側が不利になるのが常で、「もしかして他社より高いのかも?」等とついつい弱気になって、当初の想定よりも安い金額を提示してしまいがちです。
「高いんでしょ?」の本音は?
お金の話はとても大切なのに有利に進めることができない。そんな状態に陥らないために、相手に「高いんでしょ?」と聞かれても、ビビることなく冷静に状況を判断するようにしましょう。例えば、「高いんでしょ?」の言葉から、次の二つのシナリオが思い浮かびます。
一つ目は、相手が断る理由を探している状況です。この場合、こちらが頑張って安値を提示しても「高いな~」等と断られます。
二つ目は、相手が割と本気で検討している状況です。こちらにとってはチャンスであり、不用意に値引きをしたくありません。
さて、相手の答えはどっち?
この正反対の二つのシナリオ。相手の本音はどちらにあるのかを探るときに、ぜひ、投げかけてみたいのが、冒頭の営業最強フレーズです。相手の反応から、ある程度、本音を推測できる場合があります。
相手が「断る理由を探している」場合、具体的な答えはまず返ってきません。「何か高そうじゃない?」といった具合です。このとき、安値を出すのは、後のことも考えてタブーです。丸めた金額を示すにとどめます。
一方、「割と本気で検討している」場合、相手の口から「例えば○百万円?」といった具体的な金額が出てくることがあります。これは、相手の予算が決まっていたり、既に競合他社から話を聞いている可能性があります。この場合、「定価だと○百万円になりますが、仕様によって……」等、交渉の幅を広げるようにし、必要に応じて、ボリュームディスカウント等、値引きのカードも切ります。
「高いんでしょ?」に慌てることなかれ
「高いんでしょ?」と聞かれると、つい値引きを口にしたくなったりします。そうしないと、買ってもらえないという思いに駆られるからです。
しかし、その対応は正しくありません。慌てずに、相手の出すヒントから本音を見極めて、しっかりとチャンスにつなげていきましょう。お金の話になって初めて、営業の交渉は本格的に始まったようなものなのです。
以上(2018年8月)
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画像:Mariko Mitsuda