書いてあること

  • 主な読者:製品開発の新任担当者
  • 課題:新製品を開発するためのアイデアの出し方やマーケティングの方法を知りたい
  • 解決策:新商品開発の一般的なプロセスと、それに伴うマーケティング分析や販路の確保について解説する

1 新商品開発のプロセス

1)アイデア

新商品は、開発を目的にアイデアを創出するケースと、思いついたアイデアを基に新商品を開発するケースがあります。

前者の場合、ある一定期間を設けてアイデアをスタッフから募ったり、ブレーンストーミングなどの手法でアイデアを集めるのが一般的です。後者の場合は、アイデアを出そうと思って考えたわけでなく、「こんな商品があったら売れるのでは?」という偶然のアイデアから商品を開発するものです。

しかし、いざアイデアを捻り出そうと思ってもなかなか良いアイデアは浮かばないものです。そのため、社内で「提案制度」などを設けて定期的にアイデアを募集する体制が求められます。

また、アイデアの創出という意味では、顧客のニーズを取り入れることも重要です。クレームなどをデータベース化して商品開発のアイデアとして利用したり、消費者調査などを通じて「消費者の生の声」を集めるようにするのもよいでしょう。また、近年では小売業とメーカーなどの異業種が情報やノウハウを共有して共同で商品開発を行うケースも見られます。

2)マーケット分析

新商品のアイデアが出そろい、どのアイデアを採用するのかという段階では、それぞれのアイデアのマーケット分析を行います。「市場・顧客の動向」「競合他社の商品」「自社の経営資源」などの分析を行い、一番良いアイデアを選定します。

その際、「消費者へのアンケート調査」などを実施して好評だったアイデアを選ぶのも一つの方法ですが、自社に市場分析を行うノウハウがない場合は、外部へのアウトソーシングを検討するとよいでしょう。

3)企画

この段階では、各種スケジュールや予算、製造方法などを企画します。具体的には「試作品」「消費者モニター」「販売代理店募集」「製造」「営業」「販売日」などのスケジュールを立てるとともに、「開発費」「材料費」「労務費」「経費」などのコスト算出や、「外注先の選定」などの製造方法を検討します。同時にそれぞれの項目ごとに、スケジュール、予算、品質などの管理責任者を決めます。

また、できれば企画の段階で、「販売数の見込み」とともに、開発費、材料費、人件費などを考慮に入れた「利益の見込み」も立てておきたいものです。その結果、どうしても利益の確保が望めないということが分かれば、商品化を見送ります。

4)開発

開発の段階では、まず仕様書を作成し、それを基に試作品を完成させます。試作品はなるべく完成品に近いものが望ましいのですが、ここで問題となるのは製造コストです。いくら良いものでも製造コストが多大にかかるのであれば大量生産ができません。大量生産を念頭において材料・素材の選定を行い、場合によっては外注を検討します。自社の技術レベルや機材の有無によっては外注の方が結果的に安く上がることも少なくありません。

いかに製造コストを下げることができるのかという点を踏まえながら開発することが重要です。

5)テストマーケティング

試作品が出来上がったら、その商品が本当に計画通りに売れるのかどうかを検証します。消費者モニターのほか、限られた地域での市場テストや営業テストなどを行い、予想通りの販売が見込めるのかを調べます。

その際、期待通りまたは期待以上の販売結果が得られれば、すぐにでも商品化し、全国に向けて販売することができます。逆に期待通りの結果を得られなかったときは、たとえ企画の段階で売れるという結果が出ても「実際は売れない」と割り切り、商品化は見送るべきでしょう。ここまでの開発費は無駄になりますが、売れない商品を市場に導入する意味はありません。再度アイデアまたは企画の段階からやり直します。

6)商品化

テストマーケティングが終了したら、いよいよ商品化となります。大量生産を踏まえた製造方法の確立、パッケージの選定、広告戦略の推進などを行い、販売を開始します。

その際、商品の種類にもよりますが、流通ルートの開拓も重要となります。企画の段階で定めていた営業方法のほかに、代理店の選定や特殊なルートでの販売方法など、さまざまな拡販方法を推進します。

また、顧客へのアフターフォローの仕方や、クレーム処理の対処方法などもこの段階で明確にしておきます。

7)販売後のフォロー

販売を開始した後は、ただ売ればよいというわけではありません。顧客からのクレームや意見を集め、商品の仕様やパッケージの見直しを図ります。

2 マーケティング分析と販路の確保

新商品の開発に当たっては、正確なマーケット分析とともに、販路の確保が重要です。

通常、新商品というと、次のような商品に分類できます。

  • 今までにない全く新しい商品
  • 他社では販売しているが自社にとっては初めて生産する商品
  • 既存商品に何らかの改良を加えた商品

それぞれの分類ごとにマーケット分析や販路確保の手法は異なってきます。また、商品のライフサイクルによっても商品の仕様やコンセプトを変更する必要があります。

以降では、新商品を開発・販売する上で留意することをまとめます。

1)今までにない全く新しい商品

今までにない全く新しい商品を開発して販売する場合、その市場規模は未知数となります。商品を購入する消費者の「年齢層」「性別」「嗜好」のほか、「デザイン」「販路」「年間販売量」「将来性」などを考慮し、確実に売れることが見込めた段階で参入することが求められます。これらのノウハウを自社が持っている場合は問題ありませんが、そうでない場合は自社のノウハウだけに頼らず、次のような業種と協力することによって商品を企画していくことが近道になるかもしれません。

  • 商品企画会社(売れる商品の企画)
  • リサーチ会社(消費者へのアンケート調査やマーケット分析)

これらの中で最も頼りにすべきは、商品企画会社(企画デザインプロダクション)です。リサーチ会社の場合、それぞれの商品に対して調査や分析を行うのが仕事であり、売れるかどうかの見込みはあくまで予想となります。参考とはなるものの、実際の販路開拓は期待できません。

一方、商品企画会社の中には強力な販路を持ち、その販路での売り上げが期待できる商品を企画している会社もあります。そのような商品企画会社と提携し、将来的には自社で企画開発ができるようにノウハウを吸収することが大切です。なお、優れた商品企画会社を見つけるためには、今までの実績のほか、「具体的な販路を提示できるか」が重要なポイントとなります。

商品企画が決定した後は、販路を探すこととなります。販路はできれば企画の段階で見込みを立てておくことが望ましく、「このような商品があったら取り扱ってくれますか」といった問い合わせをするとともに、「○○円以下であれば○○個発注してもよい」というレベルの販路をいくつか開拓し、確実に採算が合うと判断できた段階で商品化することが求められます。

なお、今までにない全く新しい商品を開発して販売する場合、当初は、価格競争に巻き込まれることはなく、価格も強気に設定できます。しかし、競合商品が現れたときにはさらなる高付加価値化や生産コストの見直しによる低価格化が必要となります。競合商品の動向を見据え、常に売れる商品開発を行うことが大切です。

2)他社では販売しているが自社にとっては初めて生産する商品

他社では販売しているが自社にとっては初めて生産する商品の場合、既存市場への参入となるため、市場の把握はもとより、消費者へのアンケート調査が重要となります。「他社商品と比べてどう思うか」「いくらなら購入するのか」などという商品そのもののアンケートのほか、「パッケージのデザイン」「購買意欲をそそるキャッチコピー」など、十分な調査を重ねた上で商品化することとなります。できれば消費者アンケートの専門企業(リサーチ会社など)に依頼し、正確で客観的な情報を入手するとよいでしょう。

既存市場への新規参入は、通常「既存品よりも安くて良いもの」、「既存品よりも高いが付加価値が付いているもの」のいずれかを販売することになります。前者の場合は、商品1個当たりの利益は少なくなるので、大量に販売しなければ利益の確保が難しくなります。後者の場合は逆に高付加価値を前面に押し出し、なるべく商品1個当たりの利益が大きくなるようにすることが求められます。

販路に関しては、大手の販売店や問屋への営業のほか、通信販売やインターネット上での販売など、独自の販売ルートも検討したいものです。営業先の選定は、それぞれの業態や商品のカテゴリごとに業界団体を調べ、その業界団体から名簿を入手するのが早道となります。名簿を公表していない業界団体に関しては、大手企業を数社紹介してもらうなど、効率的な営業を心がけます。

3)既存商品に何らかの改良を加えた商品

既存商品に何らかの改良を加えたものを新商品として販売する場合は、従来のデザインやパッケージをそのまま踏襲するのではなく、何らかのリニューアルを加えたほうがよいでしょう。

もっとも、現在の売れ行き状況や、競合の度合いによってデザインやパッケージのリニューアル方法は異なってきます。

例えば、「市場でのシェアはナンバーワンだが、競合商品によって販売数が減少している」という商品の場合、何らかの改良を加えて商品の高付加価値化を図ることは非常に有効です。その際、商品が成長期にあるときは、機能強化や容量の増加、新材料の採用など、高付加価値化をアピールするにとどめ、大幅なリニューアルはしないほうが得策です。せっかく構築した認知度を下げてしまうことを避けるためです。

一方、商品が成熟期にあり、「買い換え需要を狙う」という状況の場合は、デザインやパッケージの大幅なリニューアルが効果的でしょう。商品の種類にもよりますが、新商品として販売すれば、競合商品よりも新鮮な商品であることをアピールできるからです。

以上(2018年10月)

pj70024
画像:pexels

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