自社をPRしたいと思っても、どのように行えばよいのか迷ってしまうことがありませんか。今回は、そのお悩みを解決すべく、今話題の五反田バレーを代表する4社のスタートアップ企業で活躍するPRの達人たちに「PRの仕事術」についてお聞きしたことを仕事術としてまとめました。ぜひ、皆様のご参考になれば幸いです。

今回、インタビューさせて頂いたのは、五反田バレーのPR四天王の4名です。
五反田バレーとは、新たなスタートアップの集積地として注目を集める五反田のスタートアップが集まり、設立された一般社団法人です。

  • 中村ガクトさん (株式会社マツリカ、 株式会社Pathee)
  • 鈴木章子さん(Safie – セーフィー株式会社 広報/PR)
  • 柳澤 芙美さん (株式会社ココナラ 広報・PRリーダー)
  • 野澤 真季さん (freee株式会社 広報)

 ご多忙の中、皆様、ご協力頂き、愛りがとうございました!(愛+ありがとう)

1 そもそもPRの仕事内容とは?

PRの語源はPublic Relations(パブリックリレーションズ)で、企業や団体が社会と良い関係を構築し、自身に対しての理解や信頼を得るための活動のことをいいます。企業や事業内容などを外部に向けてアピールすることはもちろんですが、闇雲にアピールするのではなく、事業成長に繋がるように心がけています。営業や人事の前段階を構築しているという自負を持って取り組んでいるのです。

また、ステークホルダーとの関係づくりにおいても、自社と関わって良かった、応援したくなると思ってもらえるようにすることや、社員のモチベーションアップを図ることなども重要であると考えています。さらに、世の中の意見を社内に反映するために、世間で話題になっていることや他社のサービスについても情報収集を行い、社内で共有します。

2 五反田バレーPR四天王の仕事術 5か条

  • 社内の人脈をどんどん頼るべし!
  • 積極的に社内に共有すべし!
  • 狙ったカテゴリーで認知度を上げるべし!
  • メディアの方々を味方につけるべし!
  • 市場が同じで競合にならない企業と連合を組むべし!

それでは、各項目について具体例を入れながら解説します。

1.社内の人脈をどんどん頼るべし!

自社の技術を伝える際に専門知識が必要になる場面も多くあります。その際は、社内の技術者(エンジニア)に積極的に協力をお願いしています。具体的には、メディアキャラバン(メディア関係者と直接面会し、商品説明や取材提案等を行うこと)に同行してもらったり、技術に関する記事を書いてもらったりすることがあります。また、新技術や聞きなれない専門用語についての質問に答えてもらうことで、PR担当者が自社製品の理解を深める手助けをしてもらう場合もあります。

PRの仕事は他の部署の方々からすると、何をしているか分かりにくいと思われがちです。そのため、ポジションや経験年数などにとらわれず、ランチを共にしたり、1on1ミーティングを行ったりすることで、各部署の状況を把握し、目的に合ったリリースができるような工夫もしています。
特に、経営陣とのコミュニケーションの量を増やすために、週に1回程度、定期的にミーティングを行い、インタビューの内容確認や今後のPRの方向性などについて話し合うようにしています。一人でPRを担当している場合もあるため、経営陣と率直に話ができるスタートアップならではのカルチャーには助けられているそうです。

さらに、社員のSNSをフル活用することで、自社の勢いを表現することもあります。一斉に自社製品について投稿してもらったり、自社情報をシェアしてもらったりする方法は、この時代に合っていると思います。しかし、投稿は不特定多数の人々の目に触れ、後から読み返すことも可能であるため、自社の信頼が失墜しないよう言葉遣い等の表現や業界ごとのカルチャーの違いにも注意を払う必要があります。

普段、このように社内の人脈を頼る機会が多いため、逆に相談をされた場合には、できる限り即対応するように心がけているそうです。もちろん、自分自身がメディアに出ることもあります。
株式会社ココナラの柳澤(記事内では古川)氏はご自身のインタビュー記事で最高PV数を記録しました。

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2.積極的に社内に共有すべし!

自社のビジョンや行動指針を分かりやすくまとめ、会議室やオフィスなどに掲示することで、どの社員でも体にこれらが染み付くようになり、自然と誰でも自社のビジョンが言えるようになります。
freee株式会社では、来客用の飲料水のラベルにfreeeの価値基準を入れています。取材にお越し頂いた際にもこのラベルから話題が広がり、企業文化についても触れて取材してもらえることもあります。

freeeの価値基準を入れた来客用の飲料水のラベルの画像です

また、Safie株式会社では、CEOやデザイナーと共に、創業からの流れやサービスを作る過程での失敗や成功などのストーリーを本にして社員に伝え、同じ価値観・方向性で仕事ができるように企業カルチャーの醸成と浸透を促進しています。このように社員に創業の精神を受け継いでもらうための工夫も行っています。
他にも「映像から未来をつくる」というビジョンを具現化するため、このダイアグラムにある7つのバリューを『チーム「Safie」が大切にしていく価値観・行動規範』として共有し、社内のあちらこちらに掲示しています。
こうした活動は、自社のみならずステークホルダーの皆様とwin-winになることができるサービスを生み出し、繁栄が続く仕組みづくりのプロセスの一環であり、アイデアを実現する際の意思決定及び行動時に立ち返ることができる指針としています。

fSafie株式会社のダイアグラムの画像です

3.狙ったカテゴリーで認知度を上げるべし!

PRというと、とにかく露出頻度を高めようと考えるかもしれませんが、そうではなく狙った市場で有名になれるように計画していくことも重要です。つまり、「○○といえば自社」と世間に想起してもらえるような存在になるのです。CEOがメディア受けしやすい人物の場合は、「カテゴリーの第一人者」として認知されるようにすればいいでしょう。そのためには、あえて媒体を選ぶことも必要です。さらに、ネットでのインタビューなど、後から読み返せるものを複数行う場合には、エピソードが被らないようにするなどの配慮を行います。

また、株式会社ココナラでは、複数の企業と共に「一般社団法人シェアリングエコノミー協会」を設立し、代表の南章行氏が理事に就任することで、「シェアリングエコノミー=ココナラ 南CEO」と認知されるようになりました。このように、協会等の団体を通してカテゴリーでの認知度を高めることで、そのカテゴリーに興味のある記者の方との出会いが増えるといったメリットもあります。

新しいサービスを提供する場合は、自分たちで新しいカテゴリーを生み出し、広めることもできます。Safie株式会社は、サービスの「クラウド録画カメラ」という概念自体が一般的に伝わりにくかった時期があり、自社コンテンツの説明物を作り込んだり、類似サービスとの比較をしたりし、その情報をブログやSNSで発信したり、イベントの展示会に積極的に参加したりすることで、「クラウド録画カメラ」という概念を広めてきました。また、AIに詳しい著名人とCEOの対談をセッティングしたり、「映像・視覚」の歴史を深掘りした情報を発信したりすることで、多くの方にサービスへの興味を持ってもらうきっかけづくりに取り組んでいます。

4.メディアの方々を味方につけるべし!

メディアキャラバンを行う際には、記者の方が興味を持っている分野・領域をまずヒアリングしてから提案を行うようにします。また、相手の要望にマッチする企業や人物、情報を知っていた場合はご紹介させていただくようにしています。

記事を書いたり、イベントを行ったりする場合は、準備段階で記者の方の意見を聞くことで反応を見たり、使った方がいいキーワードを教えていただいたりすることもあります。このように積極的に記者の方を巻き込んでいくことで、記事にしていただきやすくなります。

また、取材から次の取材まで期間が空くこともありますので、他社のPR担当者と記者の方をシェアするために共にランチミーティングをしたり、同じ業界の数社で勉強会を行って記者の方々を集めたりもしています。freee株式会社では、同じ業界の数社と共にフィンテック勉強会を行いましたが、チームとなって価値を高めることで注目されやすくなります。

記者の方が記事にしやすいかどうかも重要になってくるため、行政との連携や地元の活性化に繋がったりする点をアピールしたり、難しい専門用語を使わずに説明することや、ユーザーのストーリーを伝えたりすることも大切になります。

ココナラのご利用事例の画像です

株式会社ココナラでは、HPにご利用事例としてユーザーのストーリーを載せたところ、「この人に取材したい」などピンポイントでのお問い合わせをいただくようになりました。

もちろん、一度取材して頂いた方には頻繁な連絡を欠かさないようにします。また、フリーランスのライターの方は専門分野があり、さまざまな媒体で記事を書かれている場合もあります。そのため、例えば「副業」が専門のライターの方には、「副業」関連の情報をお渡しすると、毎回異なる媒体で取り上げてもらうこともあります。取材をしてた相手がどのような属性があるかを見極めて、情報提供していくことが大切です。

5.市場が同じで競合にならない企業と連合を組むべし!

今回インタビューを行った4社の共通点として「五反田バレー」が挙げられます。新たなスタートアップの集積地として注目を集める五反田。その五反田のスタートアップが集まり、ベンチャー・スタートアップ企業が社会課題を解決し、より豊かな未来を創っていくことを目指して設立されたのが一般社団法人五反田バレーです。
五反田の企業の慢性的な課題であったエンジニア採用などを解決するために、分かりやすく五反田の魅力を伝えるにはどうすればよいのかを五反田の広報コミュニティで話したことがきっかけとなって社団法人の設立に至りました。

設立後は、各社のPR担当者の持つメディアリストを出し合い、一覧を作って手分けして連絡をすることで、当初から注目を集めることができました。「五反田から逃げるな」という意思を込め、法人名にも「五反田」を入れたことで、メディアに取り上げられるたびに自然と五反田という地域も取り上げられるようになりました。
また、課題であったエンジニア採用に関しても、五反田バレーの企業で集まって大型イベントを開催したり、五反田バレーとしてメディアに掲載された情報を人事担当者が活用したりと、一社ではできなかったアプローチを行えるようになりました。

さらに、社団法人化し、問い合わせ窓口を設置したことで、メディアの方が問い合わせしやすくなるだけでなく、その内容に適した企業とマッチングさせることもできるようになり、お互いにとって良い関係を築けています。実際に、この窓口からの問い合わせがきっかけとなって、株式会社Patheeの中村ガクト氏は、テレビ東京「出没!アド街ック天国」〜五反田〜への出演が決まりました。

まず、チームとして注目を集め、その後マッチした媒体を通して企業PRを行う。「五反田バレー」はそこに参画している企業の成長だけでなく、若者が働きたくなる場所として地域の活性化にも貢献する素晴らしい仕組みとなりました。

株式会社Pathee 朝のミーティング風景の画像です

3 五反田バレーのPR四天王の皆様の仕事のやりがい

鈴木章子さん(Safie – セーフィー株式会社 広報/PR)

これまでの世界になく、みんなが知らなかった新サービスを、たくさんの方に知って頂くためのストーリーを考え発信することで、会社の成長に繋がった時に喜びを感じます。

中村ガクトさん(株式会社マツリカ、株式会社Pathee)

スタートアップは、ビジネスモデルやサービスの概念自体が世の中に浸透していないこともありますが、ビジネス側とエンジニア側を繋ぎ、PRが正しく世の中にメッセージを発信することでビジネスの急成長に寄与することができます。更に、メディアなどに取り上げられたことで、社員の周りの人(家族や友人)に「いい会社で仕事してる」と思ってもらえることもやりがいの一つです。

野澤 真季さん(freee株式会社 広報)

メディア掲載などを通して社員のテンションが上がった時や、自社が社会の進化を担っていると感じられるような発信ができた時にやりがいを感じます。「広報」だけでなく、社員全員でPR活動ができていることが、私の喜びです。また、第一に広報である自分自身が会社を大好きであることを大切にしています。

柳澤 芙美さん (株式会社ココナラ 広報・PRリーダー)

「シェアリングエコノミー」など、自分が共感した新しい概念を打ち出すことで、社会へのインパクトを与えることができるということにやりがいを感じます。

今回は、PRの5つの仕事術を取り上げましたが、いかがでしたでしょうか。
PRにかける情熱と工夫、そして「自分一人、一社ではできないこと」を知っているからこそ、チーム一丸となって働きかけることによって大きな力が生み出されてきたことが伝わってきたのではないでしょうか。事業成長に繋がるPRを行うためのヒントとなることを願っています。

ご協力頂いた、PR四天王の皆様、愛りがとうございました!

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2020年3月27日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

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