1 販促活動の効果を高めるには、消費者のデータ活用が大切

経営者の皆さん、自社の販促活動に満足していますか?

販促活動の効果を高めるには、現在の消費者ニーズを的確に把握することが欠かせません。このときに重要なのが、次のような消費者のデータです。

  • 自社で保有する、年齢や性別、購買履歴などの顧客情報
  • SNSや検索キーワードの動向から探る、現在の消費者の嗜好や関心

この記事では、データに基づく販促活動を展開する際のポイントや事例を紹介します。とはいえ、難しい話でも、大掛かりなものでもありません。まずは、他社の取り組みを参考にして、できるところから、ちょっと加えるだけの「お手軽販促DX」から始めてみましょう。

2 消費者のデータ活用に取り組む企業事例

1)オープンデータなどで需要を予測:ゑびや大食堂(飲食店)

三重県伊勢市で土産物屋や食堂などを経営するゑびやでは、データ分析による来店客予測に取り組んでいます。

かつては手切りの食券とそろばんで売上管理をしたり、来店客の予測を勘に頼っていたりしたため、再現性がなく、調理ロスなどが発生している状況でした。そのため、気象情報、メニュー別の売り上げ、グルメサイトのアクセス数や近隣の宿泊者数などのデータを集めてエクセルにまとめたり、店舗の前にカメラを設置して通行量などを測定したりするなどの取り組みで来店予測やメニューの需要予測を始めました。

天候や気温に応じて、店舗前に設置するメニューを変えるだけでも、来客数の増加につながるようになったり、来店予測ができるようになることで食品ロスの削減や従業員の休暇取得が実現できたりしたといいます。

また、2018年にシステムを外販するための会社であるEBILAB(エビラボ)を設立。データ分析ツールを「TOUCH POINT BI」という製品名で販売するに至っています。

2)店舗ごとのメニューやカットの傾向を集計:オオクシ(理容チェーン)

千葉県を中心に理容チェーンを展開するオオクシは、マーケティングや顧客管理、人材育成などのさまざまな分野で、データに基づく定量的な目標を設定しています。

顧客の分析については、独自のPOSシステムを用いてメニューやカットの傾向、再来店率などを集計し、業務に反映しています。新規出店を行う際には、商圏の分析を行い、路面店やショッピングセンター内に入居するなどのテナントの形態によって商圏の棲み分けを行っています。

こうした取り組みもあり、同社が2021年に経営品質協議会から「日本経営品質賞」を受賞した際には、顧客の再来店率は、業界平均の60~70%を上回る85%以上となりました。その後も社外からの評価は高く、2023年には中小企業からニッポンを元気にプロジェクトから「日本中小企業大賞『優秀賞』」を受賞しています。

こうした事例のように、普段の業務と並行して、データ回収のための下準備などを行う必要はあります。成果が出るかどうか不透明な状況で、普段よりも一時的に業務量が増えることに抵抗感を持つ社員が出てくるかもしれません。

一方で、データを基に顧客の動向を分析すれば、「勘」や「運」頼みではない適切な施策を選び、効率的なサービスを提供することで、これまでよりも多くの利益を獲得できるでしょう。

3 社内の顧客情報は3つのポイントでの分析が重要

前述の他社の取り組みを参考にすると、専門のデータサイエンティストなどを雇わなくても、「お手軽販促DX」を進められる感覚が湧いてきたのではないでしょうか。

それでは、お手軽販促DXのキモとなる、収集すべき情報と分析のポイントを紹介します。

1)目的に応じた情報を集める

社内には、次のような自社商品・サービスなどを利用した顧客のさまざまな情報が蓄積されています。

  • 顧客に関する情報:氏名、年齢、住所、連絡先など
  • 営業活動で得た情報:訪問した企業名、商談回数、商談した商品など
  • 販売に関する情報:販売数、販売日時、在庫数など
  • その他の情報:アンケート結果、顧客からの問い合わせ内容など

まずはこうした情報をエクセルなどで整理し、販促活動を企画する際に参照できるようにしましょう。展示会やアンケートなどで取得した見込み客の情報も活用できるようにしておくのがお勧めです。

また、販促活動に生かせる情報がない場合、利用者にアンケートを取るといった方法で情報をそろえるのが望ましいでしょう。例えば、来店促進を目指すなら、来店曜日や時間、来店動機、利用者の満足度などを調べるようにします。

2)集めたデータはポイントを絞って分析

これまで通りのデータを集め、同じ視点で眺めるだけでは「やっぱりそうだよね」という結果になりかねません。重要なのは、データをどう読み解くかです。これまで気付かなかった傾向や兆候を導出できれば、販促活動のヒントになるでしょう。次の3点を踏まえて、データを捉えるようにしてみましょう。

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4 SNSなど外部の情報に「ちょい足し」

1)インターネット上の検索傾向をつかむ

社外のデータを活用するのも有効です。例えば、SNSや検索キーワードの動向から、自社と接点のない消費者の興味を読み取ったり、意外な時期に意外なものへの関心が高まっている実態などを把握したりすることができます。そこから、消費者のニーズや行動について、さまざまな仮説も立てられるでしょう。

こうした消費者の実態を把握するときに役立つのが、グーグルのウェブサービス「Google Trends(グーグルトレンド)」です。これを使うと、「消費者がどのようなキーワードを多く使って検索しているか」が分かります。時系列で見れば、「どのような時期にどのような検索キーワードを使っているか」といった季節性によるニーズを確認することもできるでしょう。その他、どのようなニュースが話題なのかというランキングも表示されます。

また、LINEヤフー(2023年10月にLINEとヤフーが合併)は、販促施策を検討するに当たって、いつどのような検索キーワードが増えているのかを示した、月別の「販促カレンダー」を公開しています。これを使うことで、前年の同じ時期にどのようなキーワードが検索されたのか、どのようなニーズが想定されるのかの参考になりそうです。

■グーグル「Google Trends」■

https://trends.google.co.jp/trends/

■LINEヤフー「LINEヤフー for Business 2025年販促カレンダー月別一覧」■

https://www.lycbiz.com/jp/ebook/yahoo-ads/support/calendar/

2)販促施策に活用すべき主な社外データ

社外のデータには検索キーワードの他に、政府や自治体が公開するオープンデータ(誰でも利用可能な公開データのこと)や、有料のマーケットデータなどもあるので、消費者の実態を把握するときに活用するとよいでしょう。

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自治体の中には、エリア内の企業によるオープンデータの利用を促進させるため、ポータルサイトを開設したところもあります。例えば、大阪府の堺市では、政令指定都市初の試みとして、堺市内の企業のオープンデータを公開するポータルサイト「さかしる」を開設しています。ポータルサイト内の企業情報はオープンデータとして利用可能なため、他社との取り引きの拡大などが期待されています。

■さかしる|堺の会社を知る・調べるポータルサイト■

https://sakacil.com/

以上(2025年2月更新)

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画像:pixta

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