書いてあること

  • 主な読者:自社にも「見返り」がある社会貢献がしたい経営者
  • 課題:自社だけが得をするつもりはないが、相応の具体的な「見返り」が欲しい
  • 解決策:資金などを提供するのだから、スポンサー企業が見返りを求めるのは当然のこと。それは相手も理解しており、遠慮せずに目的を伝えたほうが良い結果を得やすい

1 社会貢献をしつつ、自社も具体的なメリットを得る方法

社会貢献をしたいし、するからには自社にも相応の「見返り」が欲しい。そのような経営者にご提案するのが、趣味やスポーツのサークル、同窓会、学生のサークルや部活動といった非営利のコミュニティーに、スポンサーとして参加する方法です。こうしたコミュニティーのメンバーは共通の目的を持ち、属性も似ていることがあります。自社と相性の良いコミュニティーを選んで協賛すれば、コミュニティーの活動支援を通じて社会貢献しつつ、次のような見返りを得ることが期待できます。

  • ターゲットの客層にピンポイントでアプローチできる
  • 潜在顧客に自社を認知してもらえる
  • 自社のイメージアップにつながる
  • 製品やサービスに対する具体的なフィードバックが得られる
  • 口コミ効果が得られる
  • 欲しい人材の採用につながる

また、非常に重要なポイントは、スポンサーとなる以上、相手のコミュニティーに見返りを求めるのは当然ということです。コミュニティーのメンバーも、資金などの提供を受ける以上、スポンサー企業が営利目的であると認識しています。そのため、企業の目的をはっきりとコミュニティーに伝えたほうが、メンバーの協力を得やすくなります。

それでは、次章でスポンサーになることを検討したい狙い目のコミュニティーを紹介します。

2 狙い目のコミュニティー4選+番外編

1)社会人向けサークル

メリハリ消費が広がる中、消費者は趣味や娯楽など、こだわりのある分野への出費を惜しまない傾向を強めています。そうした人が集まる社会人向けサークルアプローチできたら、営業上の効果が期待できます。

社会人向けサークル運営支援プラットフォームの「つなげーと」は、「自社のサービスや製品を提供してサークルを協賛できる企業」と「つなげーとに登録しているサークル」をマッチングするサービスを提供しています。スポンサー企業は、オーディションで選定したサークルを「アンバサダー」に任命し、そのサークルに協賛します。つなげーとのウェブサイトでは、協賛の内容とスポンサー企業のメリットの例として、次の2つを挙げています。

  • シュークリーム専門店が、シュークリーム作り体験やサークル割引などのイベントを開催して「ママ友の会」「スイーツ会」「カフェ会」を支援することで、口コミが広がる
  • 飲料メーカーが、サンプルの配布や自社の工場見学を「飲み友の会」「スポーツ観戦会」「バーベキュー会」に提供することで、製品へのファンが広がる

この他、スポーツ系のサークルに対して自社主催のスポーツカップを提供することや、サークルのメンバーに対して自社製品やサービスに対するアンケートを実施することなども提案しています。

2)地域コミュニティー

本社所在地の地域コミュニティーなどと接点を持つことができれば、「地元愛」も相まって自社の製品やサービスの固定ファンを獲得できる可能性が高まります。固定ファンの増加は、安定して収益を上げるために重要な取り組みです。

KOMURU(コミュル)は、地域コミュニティーがイベントを行う際に、「資金や場所を提供するスポンサー企業」と「そのコミュニティー」をマッチングするサービスを提供しています。コミュニティーの代表は、KOMURUにコミュニティーの目的や年齢層、参加者数などを登録します。企業はそうした登録情報を確認し、条件があえば協賛します。

そうすると、スポンサー企業はイベント会場でチラシを配布する、テーマに沿ったイベントを開催する、コミュニティーのウェブサイトやSNSで自社を取り上げてもらうなどの見返りが得られます。

3)同窓会

学校の同窓会は、年齢、学歴、場合によっては職種や居住地も近いという、非常に似通った人たちが集まるイベントであり、マーケティング担当者にとっては大きなチャンスです。

同窓会の幹事代行を営む「笑屋」は、「スポンサー企業」と「同窓会」をマッチングするサービスを提供しています。同社のウェブサイトによると、スポンサー企業が協賛するスポンサーフィーの75%が、対象となる同窓会の会費に充てられます。同窓会は会場や飲食などに掛かる会費を抑えられ、企業は同窓会の場で自社をPRできるメリットがあります。

例えば、大学の医学部の同窓会に自動車の販売店や不動産投資会社が自社を売り込む、子育て世代が集まる同窓会で学習塾や英会話教室が生徒を募集する、タクシー会社が運転手を募集する、といった事例があるようです。

4)学生サークル

一般的に、学生には「時間はあり、将来的に自社の顧客や社員になる可能性がある」といった魅力があります。スポンサー企業にとって、学生はマッチングしやすいターゲットといえます。

1.協賛金額に応じて要求できることが増える

「カレッジ」は、スポンサー企業と協賛金を受け取りたい学生の団体をマッチングするサービスを提供しています。スポンサー企業は、協賛金に応じて、学生の団体に次のことを求めることができます。

  • SNSで自社や製品、サービスを宣伝する
  • 学生サークルのイベントで、パンフレットやチラシに企業のロゴマークなどを記載する
  • 学生を対象にアンケートを実施できる

2.自社製品での協賛も可能

「ガクセイ協賛」は、お金だけではなく、スポンサー企業の製品などの物品で協賛できるサービスを提供しています。スポンサー企業が、会員登録やアンケートなど、実施してほしい「協賛プラン」を提案し、それに応じた学生サークルに協賛金や物品を提供します。

3.採用活動にも活用できる

「サークルアップ」は2021年4月から、スポンサー企業が学生を採用するきっかけとなるサービスを提供します。具体的には、企業説明や学生との個人面談などを実施できます。

企業は、サークルアップに登録しているサークルを検索し、サークルやサークル内のメンバーの属性を参考にして、特定のサークルに直接「オファー」をすることができます。企業がサークルを検索する際、オファーの内容に応じてサークルがレコメンドされる機能もあります。例えば、技術者を採用したい企業がプログラミングのサークルや理科系大学のサークルに絞ることや、社会貢献の観点を重視する企業がボランティアサークルを選ぶことも可能です。

オファーを受けたサークルは、オファーの内容やサークルアップの利用度などに応じて、1ポイント1円相当の「サークルポイント」や「マイポイント」を受け取ることができます。

5)番外編:高校の部活動

プロスポーツチームとスポンサー契約を結ぶことは一般的ですが、近年は高校の部活動のスポンサーになる企業も現れ始めています。全国高等学校体育連盟(以下「高体連」)の見解は、「高校の部活動は教育活動の延長であるため、企業のスポンサーが付くのはふさわしくない」というもので、競技者規程でも「スポーツ活動を行うことによって、物質的な利益を自ら受けない」と定められています。

一方、日本サッカー協会が主催する「高円宮杯 JFA U-18 サッカープレミアリーグ」の場合、出場校はユニフォームに企業のロゴマークを付けて参加することができます。大会に参加しているJリーグのユースチームがユニフォームに企業のロゴマークを付けていることや、出場校の経済的な負担軽減(移動など)などを理由に、高体連も「日本サッカー協会との協議の上で、特例として認めている」(高体連事務局)としています。

3 より良い「見返り」を得るための補足

企業がコミュニティーのスポンサーになるメリットは、属性を選べることに尽きるでしょう。コミュニティーの目的、規模、メンバーの属性を押さえた上で、支援先を検討することが第一歩となります。

また、スポンサー企業とコミュニティーには相性などで、当たり外れが生じます。例えば、スポンサー企業がアンケートを行った場合、自由回答欄にたくさん書き込んでくれるコミュニティーも、そうでないところもあります。もし相性が良くて協力的なコミュニティーと出会えたら、長く付き合えるような関係を構築するようにしましょう。長く付き合うほど、コミュニティーのメンバーもスポンサー企業のことを理解するので、さらに良い結果を生み出します。

以上(2021年3月)

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画像:Pixel-Shot-shutterstock

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