1 ビジネスモデルを可視化する

「新規事業のアイデアを他の人に分かるように説明したい」「既存事業の売上が低迷している原因を突き止めて改善したい」と思っても、良い方法が見つからないという経営者は少なくないでしょう。

そんなとき、「誰に」「どのような価値を」「どのような方法で届けて」「どのように対価を得るか」というビジネスの基本に立ち返り、自社のビジネスモデルを可視化するのに役立つのが、「ビジネスモデルキャンバス」というフレームワークです。

ビジネスモデルキャンバスでは、ビジネスモデルを、

「顧客セグメント」「価値提案」「チャネル」「顧客との関係」「収益の流れ」「リソース」「主要活動」「パートナー」「コスト構造」という9つの構成要素に分け、1つの表にまとめる

ことで抜け漏れなく、俯瞰(ふかん)しやすくなります。

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次章から、食品サブスク企業(家庭料理風の冷蔵・冷凍食品を顧客の自宅まで配送)のビジネスモデルを例に、ビジネスモデルキャンバスを構成する9つの要素を解説していきます。

2 ビジネスモデルキャンバスの9つの要素

食品サブスク企業のビジネスモデルを前提として、9つの要素をまとめたビジネスモデルキャンバスの例は次の通りです。

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ビジネスの構造について、イメージをつかみやすく整理できていることが分かります。基本的には、図表2に書かれている番号の流れで作成し、完成させていくのがよいでしょう。次からは、各要素について解説していきます。

3 (要素1)顧客セグメント~ターゲットとする顧客

ビジネスを行う上で、ターゲットとする顧客を記載します。購入者とエンドユーザーが異なる場合、それも想定して「顧客」と「最終顧客」に分けて設定します。また、どのような課題を持ち、何を求めているのかなどの仮説も記載します。

事例に挙げた食品サブスク企業であれば、ターゲットとする顧客は、

  • 家庭で料理をする時間が取れない単身世帯、あるいは夫婦共働き世帯

です。この顧客は、栄養バランスの取れた食事を求めていますが、料理をする時間を取れないので、手軽に家庭料理風の食品を配送することで、ニーズを満たすことができます。

4 (要素2)価値提案~自社が顧客に提供する価値

事業を通して、自社が顧客に提供する価値を記載します。他社との差別化が図れており、顧客が自社の商品を選ぶ理由がはっきりとしているものを記載することがポイントです。

事例に挙げた食品サブスク企業であれば、

  • 時短…電子レンジや湯煎で温めるだけで食べられる
  • ヘルシー…提供するのは管理栄養士が監修した、栄養バランスが取れた献立
  • 豊富な選択肢のメニュー…既存メニューは数百種。季節に合わせたメニューが届くので、飽きることなく食事を楽しめる
  • 各種手数料無料…会費、配送料、解約手数料などはなく、注文商品の代金のみの支払い

などが考えられます。

なお、ここでも購入者とエンドユーザーが異なる場合は、それも想定して「顧客」と「最終顧客」に分けて設定します。

5 (要素3)チャネル~価値を提供する方法

顧客に、「価値提案」で定めた価値を提供する方法を記載します。顧客の利用用途・利用パターン・利用場所を想定し、商品の受け取り方法など、顧客の利便性の向上に役立つ仕組みが入ります。

事例に挙げた食品サブスク企業であれば、

  • ウェブサイト、アプリ…メニューを閲覧する際、注文の際などに利用
  • SNS…新商品やキャンペーンの告知などに利用
  • 自宅まで配送…注文後は自宅まで直接配送する

などが挙げられます。

6 (要素4)顧客との関係~顧客とどのような関係を築くか

顧客とどのような関係を築くのかを記載します。具体的には、関係の深さ・長さなどです。

事例に挙げた食品サブスク企業であれば、

  • ウェブサイト、アプリに評価・口コミ機能を搭載…顧客からの評価をメニューに反映し、改善を続ける
  • SNSで新商品・キャンペーンの情報発信…顧客に直接情報を届け、SNSから注文画面へ遷移できるようにする

などが考えられます。

7 (要素5)収益の流れ~収益を上げる方法

収益を上げる方法を、具体的な数字を入れて記載します。頻度などに加えて、製造業などでは、原材料を大量ロットで発注することで費用を減らす方法などが入ることもあります。

事例に挙げた食品サブスク企業であれば、

  • 定期契約の売上…世帯人数ごとに商品を定期配送する契約の売上
  • スポット契約の売上…顧客が好きなタイミングで商品を注文する契約の売上

などが挙げられます。

8 (要素6)リソース~価値を生み出すための主要なリソース

価値を生み出すための主要なリソースを記載します。工場などの不動産、優秀な技術者などの人的リソース、特許・ノウハウなどの無形のリソースなどが入ります。

事例に挙げた食品サブスク企業であれば、

  • 自社工場…原材料の下ごしらえから調理、パッケージングまで可能
  • 管理栄養士…自社で雇用し、栄養面での監修を行う
  • 調理スタッフ…メニュー開発にも関わる、正社員か契約社員
  • オリジナルレシピ◯◯種…季節や顧客のニーズに合わせて豊富な選択肢を用意

などが挙げられます。

9 (要素7)主要活動~価値を提供するのに必要な主要活動

価値を提供するのに必要な主要活動を記載します。製品やサービスを生み出す製造開発、顧客の課題解決、プラットフォーム構築など、ビジネスを推進していくための活動が入ります。

事例に挙げた食品サブスク企業であれば、

  • メニュー開発…顧客のニーズに合わせて管理栄養士と協力しメニューを開発する
  • 注文受付…ウェブサイト、アプリなどで注文の受け付けをする
  • 商品製造…自社工場で商品を製造する
  • 配送手配…注文に応じて配送手配を行う
  • SNSでの宣伝…新商品・キャンペーンなどはSNSで随時情報を発信する

などが挙げられます。

10 (要素8)パートナー~自社だけでは賄えない技術やリソースを提供してくれるパートナー

自社だけでは賄えない技術やリソースを提供してくれるパートナーを記載します。原材料の仕入先、販売代理店、共同研究先などが入ります。

事例に挙げた食品サブスク企業であれば、

  • 食材の生産者…契約農家、漁師など
  • 決済代行業者…クレジットカード決済やキャリア決済などに対応
  • 配送会社…コールドチェーンで、新鮮なまま顧客へ配送
  • 容器・パッケージ資材の提供会社…商品に合わせた素材やデザインの資材を共同開発
  • 産廃回収業者…工場で出る産業廃棄物を回収

などが挙げられます。

11 (要素9)コスト構造~主要活動やリソースにかかる費用

主要活動やリソースにかかる費用を記載します。原材料費、人件費、研究開発費、広告宣伝費、パートナーへの支払いなどが入ります。

事例に挙げた食品サブスク企業であれば、

  • 人件費
  • 施設運営費
  • 仕入先への支払い
  • 運送会社への支払い
  • 食品ロスの廃棄

などが挙げられます。

9つの項目を全て埋めたら、ビジネスモデルキャンバスの完成です。ビジネスの内容によって完成形や正解は変わってきますが、イメージはつかんでいただけると思います。

【参考文献】
(*)『ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書 ビジョナリー、イノベーターと挑戦者のためのハンドブック』(アレックス・オスターワルダー(著)、イヴ・ピニュール(著)、45カ国の470人の実践者(共著)、小山龍介(訳)、翔泳社、2012年2月)

以上(2025年2月更新)

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画像:TarikVision-Adobe Stock

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