書いてあること

  • 主な読者:利益計画の重要性を認識しつつも、作成する時間がない経営者
  • 課題:利益計画の妥当性が分からないなど、時間がかかる
  • ポイント:経営者の夢や熱意を込めつつ、無謀ではない利益計画をまずは形にする

1 目標利益を導くアプローチ

利益計画を作成する際は、最初に利益目標を設定し、それを達成するための売上高を算出するのが通常です。ただし、単一事業で展開しているなど収益構造の変化が小さい場合は先に売上目標を設定し、そこから利益を逆算することもあります。いずれにしても、上下(売上と利益)を何度も行き来しながら確認します。

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利益計画は、「予測PL(収支の目標を示したPL)」を作成して検討します。小さな会社なら経営者が、ある程度の規模になると企画部門や経理部門が予測PLを作成します。

理想的な利益計画は、経営者の夢や熱意が伝わり、なおかつ数字に裏付けられた実現可能性が高いことです。次章ではこの中の数字に注目し、主な損益項目を予測する際のポイントを確認していきます。

2 損益項目を予測する際の勘所

1)売上高の予測

売上高の予測は、過去3~5期分の(製品別の)売上高や伸び率などを分析しながら行います。関係部門の売上見込みを足し合わせていく方法と、当該部門に精通している担当者に見積もらせる方法を併用します。

例えば、関係部門から報告される売上見込みを足し合わせる場合、現場の担当者にヒアリングすることになりますが、担当者レベルだと視野に偏りがあります。そこで、当該部門に精通している担当役職者からセカンドオピニオンを取ります。

2)製造原価の予測

製造原価は材料費、労務費、製造経費に分けて予測します。さらに、製造に直接的に関係する「直接費」と、間接的に関係する「間接費」とにも分けます。例えば材料費の場合、製品に使用される部品は直接材料費、設備のメンテナンスなどに使う工具は間接材料費となります。

分かりやすいのは、製造個数と相関性のある直接費です。こちらは製造計画を確認しながら、過去の対売上高比率を参考に予測します。原材料価格の変動や人員計画を加味することも忘れてはなりません。

一方、間接費は売上高や製造個数と相関性があるとは限らないため、予測が難しくなります。過去データを参考にしつつ、現場の担当者へのヒアリングも行うとよいでしょう。

3)販売費・一般管理費の予測

販売費・一般管理費の細かな内容は企業によって異なりますが、広告宣伝費、交際費、人件費などの勘定科目ごとに積み上げて予測します。通常、販売費・一般管理費の大部分を占めるのは人件費なので、人件費とそれ以外の経費に分けて予測するのも1つの方法です。

人件費は、人員計画と1人当たりの人件費から予測します。また、それ以外の経費は、過去データから予測するのが基本ですが、設備投資をした場合は減価償却費に関係してくるので、設備投資計画も必ず確認しましょう。

4)営業外損益の予測

過去データから予測するのが基本です。金融機関からの借り入れの条件は必ず確認しましょう。この他、投資活動を行っている場合は、外部環境についても分析する必要があります。

3 目標利益を設定する4つの方法

1)前年度実績に上積みする方法

前年度の経常利益の5%増、10%増などといった具合に、上積みの目標利益を設定する方法です。

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2)必要決算資金から決める方法

業績によって支払う配当金、役員賞与などの必要決算資金から、目標利益を設定する方法です。

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3)借入金返済額から決める方法

借入金の返済原資は利益から生まれます。そのため、借入金の返済ができる利益を目標利益として設定する方法です。

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4)売上高経常利益率から決める方法

売上高経常利益率の業界平均、上位企業の経常利益率や自社の過去3年平均の指標を参考にして、目標利益を設定する方法です。

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5)目標利益には経営者の熱意がこもる

これらは定量的な分析から目標利益を導くものであり、経営者の熱意とは別のものです。こうして設定された目標利益に対して、「こんな弱気じゃ駄目だ! もっとチャレンジングな計画を立てよう!」などと、経営者が修正を求めることは珍しくありません。

放っておくと弱気になりがちな利益計画に刺激を与える意味で、経営者の熱意は大切です。ただし、実現可能性が著しく低いものでは意味がないため、次章で紹介するように、その妥当性を評価することになります。

4 目標利益の妥当性評価と改善

1)目標利益の妥当性を検証する

当初予測した利益と目標利益とを比較すると、必ず差額が生じます。この差異をどのように埋めていくかを検討します。仮に、目標利益よりも予想した利益が低い場合は、販売計画を強化する、目標利益を引き下げるなどの施策を検討します。逆の場合は、目標利益の実現可能性や、損益項目の検討が甘くなかったかを再検証するなどを行います。

2)目標利益を高める際の考え方

仮に、目標利益を上方修正する場合、損益分岐点の観点から次の3つを検討してみるとよいでしょう。

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固定費の低減や限界利益率の向上によって損益分岐点は下がるため、利益が増加します。固定費については残業削減による人件費の削減、変動費については調達の見直しなどを検討します。また、売上の増加は、新規販売先の開拓や販売価格のアップ、値引きの停止などを検討します。

5 利益計画の実行

最終的に決定した利益計画は、経営企画部門や経理部門を通じて全社的に周知します。利益計画は実行しなければ意味がありませんが、日常業務に追われて改善活動がおろそかになり、計画倒れに終わることが珍しくありません。

そうならないように、各部門の責任者は、定期的に利益計画の進捗状況を経営者に報告するようにします。その報告には、「当初の計画に照らして状況は変化していないか」「推進上の問題点はないか」などの内容を盛り込みます。

また、3カ月に1回程度、各部門の責任者が状況の報告会を行います。その報告会には経営者も出席するようにします。もし、当初の計画に照らして状況が大きく変わっている、あるいは変わりそうなのであれば、利益計画を修正する柔軟性も必要です。

以上(2020年4月)

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