書いてあること

  • 主な読者:感染症を防ぎ、安心して働けるオフィスを整備したい経営者
  • 課題:オフィスでの感染リスクを低減したいが、どのような設備が必要か分からない。また、施工期間やコスト面などでハードルが高く感じる
  • 解決策:パーテーションの設置や対面にならないデスク配置など、コストを掛けずすぐに実現できる感染症対策に取り組む

1 ちょっとした設備の工夫で、感染リスクを減らせます

リモートワークが難しく、出社による業務を余儀なくされている企業では、オフィスでの感染リスクを少しでも低減したいものです。とはいえ、オフィスの感染症対策は、タッチパネル式の受付や自動ドアへの取り換えなど、大掛かりな改装が必要なケースが多く、「導入コストも高いのでは?」と感じているかもしれません。

しかし、例えば次のような設備なら、コストを掛けずすぐに導入できるものもあります。

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紹介した設備の一部は、地方自治体によっては、感染症予防対策の助成対象としているものもあります。

それぞれの設備がどう役に立つのか、「飛沫感染を防ぎたい」「接触感染を防ぎたい」「ソーシャルディスタンスを取りたい」「外からのウイルス持ち込みを防ぎたい」「室内にウイルスを増やさない」の5つの目的から見ていきましょう。

なお、以降で紹介する設備の事例では、一部商品例を紹介していますが、さまざまな商品がある中の一例であることをご承知おきください。

2 感染症対策で導入されている設備の事例

1)飛沫感染を防ぎたい

1.ロールスクリーン

天井にレールを取り付け、対面や隣り合うデスクの間に透明なスクリーンをブラインドのようにつり下げます。パーテーションと比べてデスクの作業スペースを狭めることなく設置できます。

商品例として、三企(東京都荒川区)が扱う「クラウドスクリーン」があります。価格は22万円(税別)からで、3~5時間で施工が可能といいます。

■三企「クラウドスクリーン」■
https://screen.engineer/

2.パーテーション(据え置き式)

デスクの間や受付など、対面や隣り合う場所に間仕切りとして設置します。各企業がさまざまな商品を取り扱っていますが、板の部分が透明なものを選べば圧迫感が少なくて済みます。また、ブックエンドやアクリル板など身近な材料を使って作ることも可能です。

商品例として、グランド印刷(福岡県北九州市)が扱う「飛沫防止用ダンボールパーテーション」があります。外枠がダンボール製なので、アクリル板の製品よりも軽く取り扱いが簡単です 。同社ウェブサイトによると、価格は受付に設置するタイプで2500円(税別)です。

■グランド印刷「飛沫防止用ダンボールパーテーション」■
https://grand-in.co.jp/ct_useful/1901/

3.パーテーション(可動式)

キャスター付きのパーテーションを組み合わせて、大掛かりな改装をせずに空間を仕切ったり、個室を作ったりすることができます。パネル部分が半透明になっており圧迫感の少ないものや、ホワイトボードが付いたものなど、さまざまな商品があります。

2)接触感染を防ぎたい

1.ドアオープナー(アームハンドル、フットハンドル)

既設のドアハンドルに専用の部品を取り付けることで、手で触らずに肘や足などでドアを開け閉めできるようにするものです。また、ドアハンドルの形状によって取り付けが難しい場合は、携帯用のドアオープナーを持ち歩くのも一つの方法です。

商品例として、nomos(岩手県滝沢市)が扱うハンズフリードアオープナー「Reknob(リノブ)」があります。ドアノブ部分に取り付けることで、腕や手首を引っ掛けてドアを開閉することができるようになります。丸ノブ用と開き戸用の2種類があり、ドライバー1本で簡単に取り付けできます。同社ウェブサイトによると、価格は2200円(税込)です。

■nomos「Reknob(リノブ)」■
https://www.nomos-reknobstore.com/

2.蓋付き、ペダル式ごみ箱

使い捨てマスクや使用済みのティッシュなど、廃棄物からのウイルスの浮遊、拡散を防ぐためには、蓋付きのごみ箱が欠かせません。また、ごみを捨てる際に手で直接触れることがないよう、足踏みペダルで蓋を開け閉めできるものを選ぶのが理想的です。

3.自動点灯照明

センサーなどを後付けし、スイッチに手をかざすだけで照明を自動点灯式にする方法です。通常のオフィスに限らず、工場などの特に衛生面に注意が必要な場所にも適しています。

商品例として、HOYEN(鳥取県鳥取市)が扱う「非接触照明スイッチ 手かざしセンサー beSwitch(ビースイッチ)」があります。価格は1万2000円(税込)です。

■HOYEN「非接触照明スイッチ 手かざしセンサー beSwitch(ビースイッチ)」」■
http://hoyen.co.jp/beswitch

4.レバー式水栓ハンドル

トイレや洗面台などの蛇口をレバーハンドルに取り換え、手で触らずに腕や肘で開け閉めする方法です。通常の蛇口よりも開け閉めに力が必要ないので、操作が楽になります。

商品例として、カクダイ(大阪府大阪市)が扱う「GAONA レバーハンドル」があります。抗菌効果のある銅合金製で、銅イオンの効果が持続するといいます。同社ウェブサイトによると、価格はオープン価格としています。

■カクダイ「GAONA レバーハンドル」■
http://gaona.jp/product/10181/

5.全自動トイレ

政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議は2020年5月の「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」で、トイレは「比較的感染リスクが高いと考えられる」と分析しています。これに基づき、提言では「トイレの蓋を閉めて汚物を流す」ことを推奨しています。

商品例として、パナソニックが取り扱うトイレ「アラウーノ S160シリーズ」には、便座から立ち上がると自動的に蓋が閉まって洗浄をする機能を備えた便器があります。価格は、25万9000円(メーカー希望小売価格、税別、取り付け設置費用は含まない)からとなっています。

また、蓋の開閉や洗浄が手動のトイレでも、表示などによって蓋を閉めてから洗浄することを促せば、感染症予防に効果が期待できます。

■パナソニック「アラウーノ S160シリーズ」■
https://sumai.panasonic.jp/toilet/alauno/alauno-s160/spec/

3)ソーシャルディスタンスを取りたい

1.フロアサイン・誘導シール

床面などに動線を表示することで、オフィスへの出入りやオフィス内を移動する際に、社員同士や来訪者と近接する頻度を下げることができます。例えば、進行方向や通行禁止マークを床や壁に貼り付けることで、出入り口や廊下などを一方通行にする方法があります。また、複合機の前やロッカールーム、洗面所など人が滞留しやすい場所には足形のマークを表示しておくことで、距離を取るよう促すこともできます。

こうした表示用のフロアサインや誘導シールは自社で作ることも可能ですし、インターネットなどで購入することもできます。

2.デスクのフリーアドレス化

社員の業務の内容によっては、全日、もしくは週に何日かリモートワークができる人がいたり、出社日をグループごとの交代制にしたりしている会社もあるでしょう。そうした会社のオフィスでは、不在社員のスペースを、ソーシャルディスタンスを取るために有効活用することができます。

例えば、固定していたデスクをフリーアドレス化(自由な席に座れるようにすること)によって、業務中の社員間の距離を広げることができます。ただし、席を使用する前後はデスクや椅子の除菌消毒を徹底しましょう。強制的に業務中の社員間の距離を空けるために、一部のデスクはバツ印を付けて使用不可とすることも一策です。

3.キャスター付きデスク・椅子

各社員に固有のデスクがあってフリーアドレス化が難しいようであれば、キャスターの付いたデスクや椅子を使用することで、一定程度のソーシャルディスタンスが確保しやすくなります。その際、パソコンなどは充電機能が充実したもの、社内の通信回線がWi-Fiなど無線機能を備えていれば、配線コードを気にせずに済みます。

4)外からのウイルス持ち込みを防ぎたい

1.検温器

新型コロナウイルス感染者の入室を防ぐための、最も初歩的な手段が検温です。オフィスの入り口に非接触式の温度検知器のスタンドを置いておき、社員や来訪者が入室する際にチェックできるようにしましょう。

カメラタイプの検温器には、入室者の画像を記録・管理ができるタイプや、AI機能を使って社員の出退勤管理ができるもの、検温と同時にマスクの未着用者を検知して警告を発する機能を備えたものもあります。

2.アルコールディスペンサー

オフィスの入室時に手のアルコール消毒を行うことは、感染症予防の基本です。接触を避けるために、足踏みペダル式や、手を近づけると自動的に噴射するタイプもあります。また、前述のスタンド式の温度検知器との一体型も販売されています。

なお、アルコール消毒以外の水溶液に関する、新型コロナウイルスの消毒・除菌方法については、厚生労働省のウェブサイトで触れていますので参考にしてください。

■新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について(厚生労働省・経済産業省・消費者庁特設ページ)■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/syoudoku_00001.html

3.消毒マット

少しでもウイルスの持ち込みの可能性を下げることを徹底したいのであれば、入り口などのマットなどを消毒マットにするのも一つの手です。マットに消毒液を噴霧するタイプや、消毒液を吸水する部分と足拭き部分が一体化したマットもあります。

4.除菌ボックス

殺菌効果が高いとされる紫外線を照射し、スマートフォンや事務用品などを除菌するものです。水洗いできないものにも使え、不特定多数で使用するものなどを除菌するのに便利です。

5)室内にウイルスを増やさない

1.銅製、真ちゅう製ドアハンドル

抗菌効果があるとされる銅や銅を含む真ちゅうを原料としたドアハンドルなどに付け替えます。

商品例として、ROOF GENERAL STORE(大阪府富田林市)が扱う「真鍮ドアノブ TYPE1」があります。同社ECサイトによると1万5180円(税込)です。

■ROOF GENERAL STORE「真鍮ドアノブ TYPE1」■
https://www.roofgeneralstore.com/product/77

2.抗ウイルス壁紙

表面に抗ウイルス成分が塗布された、抗ウイルス壁紙に張り替えます。抗ウイルス壁紙は、単に抗菌効果があるだけでなく、ウイルスを不活化させることも期待できます。広いスペースの壁紙を張り替えるには専門の企業などに施工を依頼する必要がありますが、休憩スペースの一角の壁紙を張り替える場合は、DIYも可能です。DIYグッズなどを扱うECサイトなどでは、のり付きの抗ウイルス壁紙なども販売されています。

商品例として、RESTA(兵庫県神戸市)のECサイトでは、シンコール・サンゲツ・東リなどの抗ウイルス壁紙が1メートル当たり・291円(税込)~販売されています。

■RESTA「シンコール ベスト 抗ウイルス壁紙」■
https://www.diy-shop.jp/item.php?cc=0000055092

3.抗ウイルスシート

スイッチ類のボタン、手すりやドアハンドルなど、不特定多数の人が頻繁に触れる場所に抗ウイルスシートを貼り付けます。

商品例として、エレコム(大阪府大阪市)が扱う「抗菌・抗ウイルスシート 曲面用」があります。同社ECサイトによると価格は2枚・A4サイズで5040円(税別)です。

■エレコム「抗菌・抗ウイルスシート 曲面用」■
https://www.elecom.co.jp/products/IPM-AVSSR1000.html

4.サーキュレーター

サーキュレーターを設置し、空気の流れをつくり、ウイルスの動線上に人が入らないよう管理しながら、吸排気を効果的に行うようにします。また、窓が少ない室内などでは、サーキュレーターを窓に向けて設置し、室内の空気を外へと排気することで、空気の流れをつくりだすことができます。

商品例として、アイリスオーヤマ(宮城県仙台市)が扱う「サーキュレーターアイ 18畳」があります。同社ECサイトによると価格は1万800円(税別)です。

■アイリスオーヤマ「サーキュレーターアイ 18畳」■
https://www.irisplaza.co.jp/index.php?KB=SHOSAI&SID=H282763F

5.CCFL抗菌ライト

点灯することで、室内の殺菌・除菌などに効果のある抗菌ライトに付け替える方法です。

商品例として、堀内製作所(山梨県山梨市)が扱う「CCFL 抗菌ライト」があります。同社ウェブサイトによると、価格は電球形で6500円(税別)です。

■堀内製作所「CCFL 抗菌ライト」■
https://www.horiuchi-s.com/lp/ccfl/

6)トータルで施工する場合の参考例

一部の設備を導入するだけでなく、オフィス全体を非接触型オフィスに変更したい場合、専門の企業にトータルで施工を依頼する方法もあります。

店舗デザイン、設計を手掛けるROOM810(東京都荒川区)では、テレワークが難しい職種でも安心して働けるオフィス環境を実現する「非接触型オフィス」を企業向けに提供しています。この非接触型オフィスでは、ロールスクリーンやフロアサインをはじめ、自動点灯照明や抗ウイルス壁紙などの感染症対策に効果のある製品の導入をトータルで提案しています。

同社によると、オフィスの規模や顧客の予算によって異なりますが、設計料の目安は50万円+坪単価2万円からとしており、現地の診断、設計から施工完了までの期間は最短で2カ月程度としています。

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3 対面にならないデスクの配置例

前章で挙げた設備の導入と併せて、デスクが対面にならない配置にすることも感染症対策として有効です。ここでは、オフィスコム(東京都千代田区)が提案する、対面にならないデスクの配置例を紹介します。

1)かざぐるま型レイアウト

4席が別々の方向にするレイアウトです。パーテーションを最低限の2方向に設置します。圧迫感の少ない配置です。

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2)背中合わせ型レイアウト

島型レイアウト(デスクが対面になる配置)とは逆で、デスクと椅子が背中合わせになるレイアウトです。対面にならないことで、視線を気にせず作業ができる配置です。

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3)スクール型レイアウト

学校の教室のようにデスクを一方向にしたレイアウトです。席の間に通路ができるので距離を保てる他、動線を分けることが可能です。

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4)ブース型(縦・横)レイアウト

4方向にパネルを置くことで、疑似的に小さな個室が作れるレイアウトです。隣の人と向き合って座る縦型と隣の人と同じ方向に座る横型の2パターンがあります。

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5)ジグザグ型レイアウト

交互にデスクを配置することで隣り合わないようにするレイアウトです。対向席は置かずに、パネルやパーテーションで飛沫を遮断し、距離を保つことができます。

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以上(2021年2月)

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画像:jertam2020-shutterstock

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