書いてあること

  • 主な読者:海外で販路開拓をしたい経営者
  • 課題:低いリスクと少ないリソースで、海外での収益を安定させたい
  • 解決策:頼れる代理店・販売店を獲得し、海外進出のステップごとに戦術を変える

1 たった1回の取引で満足してはいけない

筆者は、これまでに300社ほどの中小企業の海外進出を支援し、2万回ほどの商談をアレンジしてきました。また、筆者自身も海外でバイヤーを多数開拓してきました。その経験から申しますと、「単発の取引ができた」だけで、海外進出に成功したと満足している経営者が少なくありませんが、これはもったいないことです。

海外進出をするのであれば、海外販売で継続的に収益が増える状態、つまり「実現性、再現性、継続性、拡張性」の4点をカバーしたいものです。具体的には、

年間に十数回の取引を行い、年間売上で合計5000万~1億円

を目標として掲げ、実際にこの規模のビジネスを回すための資金や仕入れルートの確保、生産や物流体制の整備も進めることが重要になります。

この記事では、海外で販路開拓をしたい中小企業のために、

低いリスクと少ないリソースでも海外での収益を安定、成長させるためのステップ

を解説します。皆さまが海外進出する際の参考になれば幸いです。

2 ニーズが全て! マッチし続ける国・地域を探す

海外進出を成功させるには、何といってもニーズが継続的にあるマーケットを見つけることです。そのためには、以下のいずれか、または両方をするしかありません。

  • マーケットマッチしている市場を見つける
  • マーケットマッチするために変化・順応する

1.は、あらゆる国・地域に営業し、ニーズがマッチする市場を探すことです。2.は、例えば商品や商品の売り方、売る値段を変えて、販売先のニーズに合わせて自社が対応することです。イメージは下の図の通りです。

画像1

画像2

3 ポイントは生産・物流体制、展開手法、進出形態の選択

海外進出を成功させるために重要なのが、

生産・物流体制、展開手法、進出形態

の検討と整備です。海外進出の過程ごとに、これらの組み合わせを変えていくことがポイントです。

画像3

1)生産・物流体制

生産・物流体制とは、「どこから」「どこに送るのか」「誰が送るのか」ということです。大きく分けると、次の3つのチャネルがあります。

  • 直接貿易:メーカー(もしくは母国で仕入れた企業)が直接的に輸出する方法
  • 消費地生産:メーカーが販売先で生産して販売する方法
  • 三国間貿易:母国ではない国で生産したものを仕入れて輸出する方法

理想的なのは、関税やコストを圧迫する物流費が少ない消費地生産です。

2)展開手法

展開手法とは、「誰が誰に販売するのか」ということです。大きく分けると、次の3つのチャネルがあります。

  • 多くの企業が行っている「BtoB」といわれる代理店・販売店取引
  • 越境EC
  • 消費地で運営する自社のEC

最初からマーケティング費用の全てを負担することになる自社のECは、なかなか難しいというのが実情です。

3)進出形態

進出形態とは、「誰が役務提供者になるか」ということです。大きく分けると、次の3つのチャネルがあります。

  • 駐在員事務所・支店
  • 現地法人
  • 日本法人

主な違いは、駐在員事務所・支店は法人口座を持たず、現地法人は法人口座を持つことです。

4 海外で売上を伸ばしていくまでのステップ

海外進出を拡張させていくための過程で、各項目のチャネルを組み合わせていく理想的なステップについて、具体的にお伝えしていきます。

1)ステップ1:少ないリソースから始める(代理店・販売店の活用)

日本企業が海外進出を行う際の大きな課題は、さまざまなリソースが限られていることです。この課題の解決は困難ですので、少ないリソースから始め、失敗した場合の影響を最小限にする必要があります。

画像4

最もリソースが必要となるのはマーケティングです。これについては、自社で全て行おうとせず、一部の販売役務を海外企業に担ってもらいます。展開手法は現地の代理店や販売店に任せるとよいでしょう。

日本企業が海外の消費者に販売するには多くの広告費がかかりますが、広告費自体は、一定の期間と情報があれば最適化され、より低価格になっていくと思います。ですが、情報の収集も自社で対応しようとすると、相当なリソースを割かなければならず、現実的ではありません。

2)ステップ2:ターゲット国・地域に対する最適化を進める(販売を自社でフォロー)

ステップ1を複数国で展開すると、どこの国・地域で販売できるかが、ある程度分かってきます。また、海外の販売代理店からも、「なぜ売れる?」「なぜ売れない?」という情報が入ってきます。ステップ1である程度満足できる売れ行きだった国・地域に注目し、次のステップに進みます。

画像5

理想は現地法人を設立し、現地に生産体制を確立して生産および販売やフォローを行うことですが、これには多くの費用や工数がかかります。製造プロセスを大きく変更することもリスクです。このリスクを踏まえ、筆者がお勧めするのが上のステップ2なのです。

生産・物流体制では、ターゲット国・地域の近隣に位置し、輸出入の関税が削減できそうで、日本での販売のための生産も可能そうなエリアで生産を委託します。また、進出形態では、駐在員事務所・支店を開設して、販売をフォローします。この方法だと、情報が把握でき、ある程度売れると分かっている対象国に向けて、適切に最適化していくことができます。

3)ステップ3:ターゲット国・地域に対する最適化の最終形態(事業活動の現地化)

ステップ2まで進むと、販売を増やすには「どういう消費者に」「どのようなアプローチで」「どの程度のコストをかけるべきか」が分かってきます。その上で、生産を消費地に移して物流費用を最小化させ、消費地で自社ECを展開して、オンライン上からも的確なアプローチを行えるようにします。

画像6

ステップ1、ステップ2を通過して自社ECを展開すると、情報の質・量が格段に上がってきますので、優位にビジネスを進めることができるでしょう。また、現地法人を持つことで経営の自由度が高くなります。まさに、「海外進出が成功した」状態になったといえます。

5 まとめ:「海外の代理店・販売店探し」のための商談を

リソースが限られた中小企業が海外進出を成功させる術は、ステップごとに進化させ、リスクを管理しながら進めていくことです。

この記事を読まれた方には、まずは海外企業と多く商談し、現地で販売を担ってもらう代理店・販売店の契約を獲得していくことを強くお勧めします。海外企業と商談する方法は、多岐にわたって存在します。

弊社でも、2万回以上の商談機会を設けた「セカイコネクト」というツールを運営しておりますが、今後はインターネット上で海外企業と商談することが、より当たり前になっていくと思います。

以上(2022年7月)
(執筆 COUXU株式会社 代表取締役 大村晶彦)

pj70096
画像:Travel mania-shutterstock

Leave a comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です