皆さんはプレゼンやスピーチをする際、言葉に詰まってしまった、あるいは一生懸命話しているのに、言いたいことがうまく相手に伝わらなかった経験はありませんか? それは「語彙力」と「表現力」が足りていないからかもしれません
語彙力は、知っている言葉の数とそれらを適切に使う力。表現力は、言いたいことを効果的に相手に伝える力です。どちらもビジネスには不可欠ですが、仮に今の段階でこれらの能力が足りていなくても落ち込む必要はありません。どちらもちょっとしたトレーニングで鍛えられるからです
ここで、1つの実験をしてみましょう。今から30秒以内に、「花」の名前を10個思い浮かべてみてください。口に出すと隣の人に聞こえてしまうので、頭の中に思い浮かべるだけで結構です。では、スタート! ……ハイ! 30秒たちました。花の名前は10個浮かんだでしょうか?
実はこの実験、私が最近読んだ広告代理店のスピーチライターの書籍(*)で紹介されていた、語彙力を鍛えるトレーニングなのです。花の名前のように、冷静に考えれば必ず10個出てくるような言葉でも、短い時間の中で思い浮かべろと言われるとなかなか難しいもの。だからこそ、言葉を瞬時に脳から引き出せるトレーニングをして、知っている言葉を適切なタイミングで使う語彙力を身に付けるのです。このトレーニングを継続すれば、プレゼンやスピーチの際に言葉に詰まることもなくなっていくでしょう。
では、もう1つ、今度は表現力のトレーニングを紹介します。それは「形容詞を使わないで話す」というものです。例えば、面白い映画を見たときなどは、「面白かった」「すごかった」といった表現を多用しがちですが、これを我慢し、「ベテランの役者が年齢を感じさせない機敏なアクションをしていた」など面白いと思った理由を掘り下げたり、「髪の毛が逆立つかと思った」などすごさを自分の身体感覚で表したりしてみるのです
ビジネスの場でも、例えば、「この新製品は、旧製品に比べて、とても使いやすいです」と言っても、どこが使いやすくなったのか伝わりません。ですが、「旧製品に比べて重量を10%軽くし、片手でも開閉できる機能を付けましたので、お子さま連れのお客さまにも扱いやすくなりました」と表現すれば、新製品の使いやすさがしっかりと伝わります。
私も昔はプレゼンやスピーチが苦手でしたが、語彙力と表現力を高めることを意識してトレーニングを継続するうちに、人前で話をするのが好きになっていきました。今日紹介したトレーニングは楽しみながらできるものですから、ぜひ継続的に取り組んで「プレゼンやスピーチのマスター」を目指してください!
【参考文献】(*)「博報堂スピーチライターが教える5日間で言葉が『思いつかない』『まとまらない』『伝わらない』がなくなる本」(ひきたよしあき、大和出版、2019年4月)
以上(2023年8月)
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画像:Mariko Mitsuda