おはようございます。8月は英語でAugustですが、その語源は古代ローマ帝国の初代皇帝アウグストゥスであることを知っていますか。彼は暗殺された養父で大伯父のユリウス・カエサルの跡を継いで古代ローマを共和制から帝政に切り替えた人物です。なお、紀元前27年から始まった古代ローマ帝国は、後に西ローマ帝国と東ローマ帝国に分かれ、西は476年まで、東は1453年までの長きにわたって続きました。

カエサルの跡を継いだとき、アウグストゥスはわずか18歳でしたが、彼はその時点で「大きな領土の平和を維持するには、共和制ではなく、指揮命令系統が一本化された政治をすべきだ」という養父の信念を受け継いでいました。当時、ローマの領土は、地中海一帯から北は現在のフランス、イギリスにまで広がり、多くの民族が住むようになったため、政治的判断に時間のかかる共和制では、統治がしにくい状況だったのです。

一方で、アウグストゥスは、性急な変革を行って暗殺されたカエサルの二の舞にならないよう、慎重に事を進めました。彼は数々の政敵を倒して確固たる地位を築くも、独裁者として糾弾されないよう、「共和制の復活」と称して与えられていた特権を一度返上します。こうして民衆の支持を集めつつ、一方で自分が政治的影響力を失わない重要なポジションに就き、周囲から反発を受けない形で共和制を指揮命令系統が一本化した体制へと移し替えました。これが帝政の始まりです。

アウグストゥスのやり方を「ずるい」と見るか「したたか」と見るかはさておき、大切なのは、彼が「国の指揮命令系統を一本化して平和を守る」という原点を忘れなかったことです。18歳という若さで政治の世界に飛び込んだ彼がのし上がる上で、この原点への思いが支えになったことは想像に難くありませんし、国の将来的なビジョンが見えていたからこそ、それを成し遂げる確実な方法として、一度特権を返上するなどというからめ手を思い付けたのでしょう。

私にも経営者として仕事をする上での信念がいくつかありますが、その1つに「経営理念を守り抜く」というものがあります。何か判断に迷うことがあったら、「今やろうとしていることは経営理念に沿っているのか」と自問自答するようにしています。経営理念は、代々当社の経営者が受け継いできた志であり、何かあったときに私が立ち返るべき原点なのです。

皆さんにもそれぞれの原点があるはずです。当社に入ったときに、「この会社でこういう仕事をしたい」という志を抱いていませんでしたか。その原点を忘れず、「自分は何のために今の仕事をしているのか」「かつて抱いた志から外れた仕事をしていないか」ということを考えれば、芯がぶれることはありません。変化の激しい時代だからこそ、それぞれの原点を忘れず仕事に取り組んでいけば、アウグストゥスのようにいつか大きなことを成し遂げられるかもしれません。

以上(2023年8月)

pj17152
画像:Mariko Mitsuda

Leave a comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です