おはようございます。今朝は管理職の皆さんに、「じっくりと腰を据えた人材育成」についてお話しします。
まず、四国のお遍路めぐりをしている際に訪ねたお寺で見つけた言葉を紹介します。
早く歩くか ゆっくり歩くか
なん日で廻(まわ)るか なん回廻るか
そんな事よりしっかり歩け
そして
何かをのこせ
いかがですか。何か感じることはないでしょうか?
スピードが重視される昨今、当社も業務効率化を経営目標に掲げ、とにかく早く仕事を終わらせることや、手数を減らすことに注力しています。しかり、そればかりにとらわれてしまうと、肝心な人材育成が疎かになります。
今から10年前、新入社員には「3カ月で仕事に慣れ、半年で一人前になるように」と叱咤(しった)したものでした。ただし、これは本音ではありません。実際は1年かけてでも3年かけてでもじっくりと教育していく覚悟を決めていたものです。その間、上司と部下は文字通りの師弟関係となり、次々と課題に直面しては、泥臭く解決していきました。遠回りすることも度々ですが、そうした中で、部下は「働く喜びや意義」「当社が目指す理想の姿」「お客様と真摯に向き合う大切さ」を学びます。
そして、社内外の先輩の姿を見ながら、「自分はどんな風に成長したいのか」「何を成し遂げたいのか」をじっくりと考え、温め、実行していったのです。この、いわば「熟成期間」を若手のうちに、どれだけ早く、深く経験できるかが、その後の成長に大きく関係すると私は考えます。
最近は便利なツールが数多く登場し、これまで10の手順が必要だった仕事は、5の手順で終わるようになりました。それを使いこなす若手を見ると、「仕事が早い!」ということになるのですが、これが仕事の全てではないのです。
私は、「昔は良かった」と懐かしんでいるわけではありません。新しいものは積極的に取り入れますし、教育方法も時代に合わせて見直します。ただし、社員の成長はこれだけで測れるものではありません。すぐに実を結ぶものではありませんが、「働く喜びや意義」などをじっくりと考える時間を持たせることが、長期的には大切になるのです。
「桃栗3年柿8年」ということわざがありますが、私はここに一節を付け加えます。
桃栗3年柿8年。社員の成長50年
今は70歳まで働く時代です。20歳で働き始めてから70歳になるまでの50年間、日々、成長し続けなければなりません。これだけ長い時間をやり抜くには、土台の部分がしっかりしていないといけません。その土台を、じっくりと育てていくことが今どきの管理職の仕事です。
以上(2023年10月)
pj17156
画像:Mariko Mitsuda