おはようございます。今日は、私が先週の休みに美術館に行ったときのことをお話しします。私は正直、美術はあまり詳しくないのですが、美術館の静かな雰囲気が好きで、時間のあるときにたまに足を運びます。今回美術館で鑑賞したのは、あの有名なパブロ・ピカソの絵です。
ピカソといえば、目は正面を向いているのに鼻が横を向いているなど、一見子どもの落書きのようにも思えてしまう、独特の画風が特徴です。5人の女性を描いた「アビニョンの娘たち」や、戦争の恐怖を描いた「ゲルニカ」などは特に独特ですね。専門的な言葉を使うと、あの画風は「キュビズム」といって、複数の視点から見たイメージを、一枚の絵の中に集約するという試みなのですが、そういったことを知らない人間からすると、どうも「変わった絵」というイメージが先行します。私は昔から、ピカソの絵がなぜ世間から評価されているのかが疑問だったのですが、今回行った美術館で、その答えになるかもしれない、ちょっとした発見がありました。
実は、今回美術館で私の目を引いたのは、ピカソが10代から20代前半の頃に描いたとされる絵でした。恥ずかしながら、私はピカソの若い頃をほとんど知らなかったのですが、その頃の彼の絵は、まるで写真を撮ったかのように精巧で美しいのです。それもそのはず、ピカソと同じく画家だった彼の父親が、ピカソを早くから美術学校に通わせ、絵の才能を徹底的に磨き上げたからです。
ただ、ピカソは自身の才能が研ぎ澄まされていくうちに、「目で見たものをそのまま描くのではなく、心で感じ取った通りに表現したい」と考えるようになり、父や学校から教わった写実的な絵の描き方を脱却して、他のスタイルを模索するようになりました。そんな挑戦の中で彼が行き着いたものの1つが、キュビズムだったわけです。
ピカソがキュビズムに目覚め、その最初の作品として「アビニョンの娘たち」を描いたとき、一部の画家や画商は「ピカソが革命的なことをやろうとしている」と気付いたそうです。それは、ピカソが基本となる写実的な絵の世界でしっかりと研鑽(けんさん)を積み、実績を残してきたからではないでしょうか。彼が何の下積みもなく、いきなりキュビズムの絵を描いていたら、誰からも見向きもされず、「落書き」と一蹴されて終わっていたかもしれません。
私たちも自社の商品やサービスについて、常に「新しいアイデア」を探していますが、何の下積みもなく、単に奇抜なことをやっても周りはなかなか認めてくれません。基本となる確かな知識や技術があるからこそ、地に足の着いたアイデアが生まれますし、アイデアを誰かにプレゼンするときも「これまで基本に忠実だった人が、新しい挑戦をしようとしている。面白そうだから話を聞いてみようかな」と、前向きに受け取ってもらえるように思えます。王道をしっかりと歩んだ先に、初めて新しい道が見えてくるのです。
以上(2023年11月)
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画像:Mariko Mitsuda