書いてあること

  • 主な読者:「花粉症」に悩んでいる人
  • 課題:花粉症はつらい。売上損失は社員1人当たり約3万~8万円になるとの試算もある
  • 解決策:花粉の飛散量が多い時は窓を開けないなどのセルフケアのほか、オンライン診療をしてしっかりと治療する

1 「花粉症」の売上損失は社員1人当たり約3万~8万円

春の訪れとともに気になる「花粉症」。「またこの季節がやってきたか……」と憂鬱になる人も多いでしょう。花粉症とは、

鼻腔(びこう)内に入った植物の花粉(スギなど)に対して起こるアレルギー反応のこと

です。鼻水、くしゃみ、目のかゆみやごろごろとした違和感など、さまざまな症状が仕事への集中を妨げます。

花粉症の患者数は年々増加しており、今や日本人の約2人に1人が花粉症だといわれます。2024年春の花粉飛散予測は、昨年よりやや減少が予測されてはいますが、それでも過去10年平均の約1.2倍です(日本気象協会「2024年春の花粉症予測(第1報)」)。

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花粉症は身近なだけに軽く考えがちですが、実はそうでもありません。花粉症による経済活動の損失額は、1日当たり約2215億円に及ぶという推計(パナソニック「社会人の花粉症に関する調査(2020年)」)があり、これを基に試算すると、

社員1人当たりの売上損失は、1シーズンで3万2400円~8万1000円

になるのです。

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いかがでしょう。花粉症が会社の経営を圧迫しかねない重大なリスクであることがお分かりいただけると思います。この記事では、花粉症に詳しい現職の産業医が、花粉症の原因、症状や治療法、会社としてできる対策などについてお伝えします。

2 花粉症の主な原因と症状、治療法

1)花粉症の主な原因と症状

花粉症は前述した通り、植物の花粉が原因となり、くしゃみや鼻水などのアレルギー症状を引き起こす病気です。

広く知られているのは「スギ」や「ヒノキ」の花粉によるもので、どちらも関東における花粉のピークは、2~5月ごろです。ただ、実は「イネ科」や「ブタクサ属」などを含めると、

花粉症の原因となる花粉は60種類を超え、春だけでなく1年を通して注意が必要

です。季節の変わり目に風邪のような症状で寝込んでいた人が、後になって「実は花粉症だった」と判明するケースもあります。

花粉症の特徴は、症状の重篤さや症状の表れ方の幅が広いことで、主な困りごととしては次のようなものがあります。

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花粉症は、放っておいて自然に治るものではなく、適切な治療が必要な病気です。花粉の飛散初期から医師の診察を受けるなど早めの対処が重要です。

2)花粉症に対する治療法の例

花粉症に対する治療法の例としては、次のようなものがあります。

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鼻水・鼻づまりやくしゃみなどの症状が出て、「あれ、もしかして花粉症かな」と思った人は、とりあえず市販の内服薬や点眼薬を試すことが多いと思います。また、耳鼻科では、内服薬や点眼薬、点鼻薬などの投薬の他、レーザー治療や舌下免疫療法を行うケースがあります。

なお、薬によっては眠くなるものもありますし、ぜん息などの持病やすでに飲んでいる薬の有無によって、適切な治療法はそれぞれ異なります。副作用やリスクについて医師と相談しながら適切な行動をとってください。

1.内服薬

花粉症の内服薬には、市販薬と処方薬とがあります。目・鼻の症状だけでなく頭痛やのどの痛みなど重めの症状がある人は、症状に特化した処方薬の方が効果を実感しやすいでしょう。

2.点眼薬

点眼薬は、抗アレルギー薬やステロイド系のものがあります。これらはいずれも症状を和らげる対症療法です。使用することで眠気が生じる薬もありますので、生活スタイルに合ったものを選んでください。

3.レーザー治療

レーザー治療は、鼻の粘膜にレーザーを照射し、アレルギー反応を鈍くさせる治療法です。年間を通じて症状があり、鼻づまりの症状がひどい人、薬物治療で効果が出なかった人、妊娠中などで薬を服用できない人などにおすすめです。痛みや出血はほとんどなく、治療自体は10分程度と短時間で行えます。ただ、粘膜は再生するため、効果が持続するのは1~2年ほどです。

4.舌下免疫療法

舌下免疫療法は花粉症を根本的に治すことを目的とした治療法です。アレルギーの原因物質を少しずつ体内に吸収させていくことで、アレルギー反応を弱めていきます。スギ花粉であれば、スギ花粉が飛んでいない時期から始める必要があり、治療期間は3~5年と長くなります。

3 花粉症への対策ポイント

1)会社が実施する花粉症対策、おすすめは「オンライン診療」

多くの人を悩ませ、日常生活から仕事のクオリティまで、あらゆることに影響をもたらす花粉症。花粉症の影響をできるだけ取り除き、社員のパフォーマンスを維持・向上させるためには何をすればいいのでしょうか。

会社が実施する花粉症対策の例としては、次のようなものがあります。

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例えば、オフィスに花粉吸引機能のある空気清浄機を設置したら「花粉症の症状が楽になった」という事例はよく聞きます。定期的な清掃を徹底する他、飛散ピーク時に在宅勤務を推奨して対応するケースもあります。他にもさまざまな例がありますが、特におすすめしたいのは、

福利厚生としてオンライン診療を導入すること(会社が費用補助)

です。これは、スマホなどで医師の診察を受けて、薬(抗アレルギー薬、点眼薬、点鼻薬など)を処方してもらうことができるサービスで、忙しくてなかなか通院できない人も継続的に服用している花粉症の薬がもらえる上、時短にもなり便利です。

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花粉症患者にとって、病院に行く時間がなく、花粉症の薬を切らしてしまうのは死活問題です。また、何とか病院に行く時間を作れても、

病院が混雑し、院内で長い待ち時間を過ごさなければならない

というケースが多々あります。この点から見ると、スマホ1台で完結でき、無駄な待ち時間がないオンライン診療は非常に魅力的です。会社が福利厚生としてオンライン診療の費用を補助する制度を設ければ、忙しい社員も気軽に利用できますし、実際こうした福利厚生の導入を検討する会社は増えてきています。

2)セルフケアでは、目と鼻を守ることが重要

個人で行う花粉症対策(セルフケア)では、

とにかく目と鼻に花粉を付着させないことが重要

です。花粉の飛散が多い時は窓を開けないこと、こまめに拭き掃除をすること、帰宅時には入室前に衣類や髪をよく払うこと、など自分でできる花粉症対策はたくさんあります。

足のツボを押したり、ルイボスティーやコーヒーなどのお茶を飲んだりするのも、つらい症状を和らげるのに有効です。また、処方薬が必要な場合、シーズン前からある程度予測を立て、ひどくなる前にかかりつけ医から薬を入手できるよう、スケジュール調整をしておきましょう。

本来、飛散が多い時は外出を控えられるとよいのですが、会社の業種や職種によっては難しい場合もありますから、日ごろから花粉の飛散情報を収集し、規則正しい生活を送るよう心がけましょう。そして自分の体調の変化に気づき、少しでもよいコンディションを保てるセルフケアを選んでください。

以上(2024年3月作成)
(執筆 株式会社フェアワーク 吉田健一)
https://fairwork.jp/

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画像:aijiro-shutterstock

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