書いてあること

  • 主な読者:予算管理を自社に取り入れたい、あるいはしっかり取り組みたい経営者
  • 課題:決算書はあるけれど、予算では何をどのように作成すればよいのか分からない
  • 解決策:月次で予算損益計算書を作ろう。それぞれの勘定科目の数字については、特性に合わせて「掛け算型」「足し算型」のいずれか、または折衷型で作っていく

1 月次ベースで予算損益計算書を作ろう

予算として作成される代表的な書類は、

  • 予算損益計算書

です。予算は目標であるという話をしましたが、目標とする業績は売上と利益を指すことが大半です。そのため、利益につながる内訳書である損益計算書を作成します。売上から仕入(原価)、人件費をはじめとした様々な諸費用の数字の根拠を集め、予算損益計算書を作成していきます。

それ以外に考えられる書類として、予算貸借対照表、予算キャッシュ・フロー計算書(または資金繰り表)がありますが、この2つは全ての会社にとって常に必要というわけではありません。実際に作成している会社は多くないです。資金繰りに不安がある場合など、これらを事前に確認しておきたい状況でのみ作成すれば十分です。そのため、この記事では、予算損益計算書の作成にスポットを当てていきます。

予算損益計算書は、月次決算で比較できるように月ごとに立てます。その際に、どの業種であっても、売上には季節による変動があるので、単純に年間目標の12分の1としてはいけません。月次決算で実績の数値を正確に把握するために、自社の特性に応じた予算を立てましょう。

予算の重要な勘定科目の数字の作り方には大きく、

  • 掛け算型
  • 足し算型

の2つのタイプがあります。以降で詳しく見ていきましょう。

2 数字の作り方:掛け算型

掛け算型とは、

数字の構成要素を分解し、掛け算で計算できる勘定科目に適した方法

です。この方法で数字を作るのに適した主な勘定科目に、売上や人件費があります。

例えば、売上は「単価×数量」で分解するのが一般的です。また、人件費は「平均月給×人数」に分解することができます。

売上の構成要素は、よくKPI(重要業績評価指標)としても使われています。業績を改善するために必要な行動を考える指標として、この切り口が適しているからです。例えば、市場全体や自社の顧客の状況から、単価を上げるのは厳しいと分析したとします。それであれば、数量を伸ばすという方法を考えるしかないですよね。このように重要な科目だからこそ行動とセットで考えられるよう、予算の数字の計算方法も工夫する必要があるのです。

実務上の留意点として、掛け算型の場合は複数の担当に構成要素がまたがることも多いので、予算作成の進め方に特に注意が必要なことが挙げられます。1つの売上高という勘定科目でも、単価は仕入担当が、数量は営業担当が責任を負うというように、責任の所在が分かれて複雑になることがあります。構成要素ごとに、自社の中で責任のある部署や担当者を明確に決めておき、実績とのずれが生じた際、その背景や理由の聞き先を把握しておくことが大切です。

3 数字の作り方:足し算型

足し算型とは、

数字の構成要素をエリアや媒体で分解し、足し算で計算できる勘定科目に適した方法

です。この方法で数字を作るのに適した主な勘定科目に、売上や広告宣伝費があります。

例えば、売上は関東、関西、九州などエリア別に分解することができます。全エリアを足して売上予算とします。また、広告宣伝費は、テレビCM、電車やバスの交通広告、インターネット広告など媒体ごとに分けることができます。これは、広告宣伝においては媒体ごとに対象顧客や効果が異なるため、それぞれに管理をすることが広告宣伝の活動において一般的であることに基づいた分類です。このように、自社のビジネスの特性や、行動計画に沿った形で、構成要素を分解するのが足し算型の特徴です。

4 主な科目の予算の立て方

1)売上の予算の立て方

売上の予算は、

掛け算型と足し算型のいずれか、または掛け算型と足し算型の折衷型

というのもあり得ます。例えば、全国展開、あるいは全国ではなくても、ある程度の地域を横断して展開している会社であれば、まず、全社の売上をエリア別に、Aエリア、Bエリアと分解して、足し算型の形で計算した上で、エリアごとに単価と数量に分解して、掛け算型で計算するといった具合です。

そして、季節性や繁忙期・閑散期といった自社の特性をしっかり数字に落とし込んでいきましょう。例えば、観光・宿泊業であればゴールデンウイークや夏休み、年末年始といった繁忙期と、その他の閑散期では明らかに数字が変わってくるはずです。

その上で、客単価×客数といった具体的な数字から各月の売上予算を立てていきます。このような予算であれば、実績との差異が発生した際に、原因は客単価、または客数なのか、あるいはその両方なのかを把握できます。

2)仕入の予算の立て方

仕入の予算は、

一般的に売上に連動する変動費であるため、掛け算型で数値を立て、具体的には「売上×原価率」

とします。例えば、物価高騰や賃上げの影響で原価率の上昇が見込まれている場合は、「7月から原価率を50%から55%に変更する」といったように予算を立てます。原価に含まれる構成要素が多い場合は、重要なものについて個別に数字を作るようにし、内訳として明記しておきましょう。これは実績が乖離(かいり)した場合や、売上が想定より下がった場合、問題点を明確にし、利益維持・回復する対策を早期に練るためにも大切になります。

3)人件費予算の立て方

人件費の予算は、

人員の採用計画などに基づいて掛け算型

で立てます。人件費というのは繁忙期の残業代を除くと、営業活動に連動しない固定的な部分が大半と考えられます。例えば、「7月から製造工程で人員を2人増やすため、人件費が月50万円(平均月給25万円×2人)増加する」といったようになります。なお、社員については「平均月給×人数」、パート・アルバイトについては「平均時給×労働時間数」というように、雇用形態ごとに明確に分けておきましょう。予算管理と同時に採用計画の見直しなど、幅広く活用することができます。

4)その他の諸費用予算の立て方

金額が大きくない・重要度の低い費用の場合は、数字の根拠について、必ずしも掛け算型と足し算型といった積み上げである必要はありません。前年度実績の金額をそのまま使うというのも手です。スポット的に生じる可能性のある費用についても、金額の多寡で予算に乗せるかどうかを決定していきます。また、重要度の低い費用について、細かすぎるのも問題です。例えば、消耗品費のような勘定科目については、「ボールペン 単価90円×10本」などではなく、「文房具 年2万円」とまとめも問題のないことがほとんどです。細かすぎる情報は管理も大変で、経営陣にとってもノイズ(雑音)となってしまうからです。

以上(2024年8月作成)

pj35163
画像:thanksforbuying-Adobe Stock

Leave a comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です