書いてあること

  • 主な読者:2024年度に有利な制度を使った賃上げや投資を考えている経営者や実務担当者
  • 課題:今期(2025年3月期)に適用できる有利な税制を知りたい
  • 解決策:「賃上げ促進税制、DX投資促進税制、中小企業投資促進税制、中小企業経営強化税制、社外飲食費」を抑える!

1 税制改正大綱の内容はいつから実行される?

年末年始に税制改正大綱が公表されると、その内容が今すぐに実行されそうに思えます。しかし、実際はそのようなことはありません。税制改正大綱の内容を実行するための法令はその後に審議されますし、そもそも税制改正大綱には、

その翌年度の改正だけでなく、翌々年度の改正

も含まれているからです。

となると、経営者や実務担当者は、税制改正大綱の内容がいつから実行されるのかを意識しておく必要があります。そういう意味でいえば、直近の税制改正大綱の内容はどうなのでしょうか。皆さんが注目している税制改正が実はまだ先のことだったら困りますよね。

そこで、この記事では、近年話題になっている様々な税制の中から、

中小企業が得をする法人税の税制

について紹介していきます。具体的には、

賃上げをした、DXを進めた、設備投資をした、社外飲食に係る接待費が多い

という中小企業の経営者や実務担当者は確認してみてください。

2 賃上げをしたら「賃上げ促進税制」

賃上げ促進税制とは、

中小企業が前年度よりも給与などを増やした場合に、その増加額の一部が控除できる制度

です。通常要件に加え、上乗せ措置があり、それぞれの要件を満たすごとに、一定の税額控除率が加算されます(最大の税額控除率45%)。

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例えば、給与の合計額を前年度から500万円増やした場合、75万円(=500万円×15%)を法人税額から控除できます(通常要件のみを満たした場合のケースです)。税額控除(法人税を減額するもの)なので、75万円分、納税額が少なくなります。ただ、上限金額が決まっており、税額控除前の法人税額の20%までしか控除できません。

この税制の適用を受けるためには、法人税の申告の際に、確定申告書に、税額控除の対象となる雇用者給与等支給増加額、控除を受ける金額と、その金額の計算に関する明細書を添付する必要があります。

また、賃上げ促進税制は、税額控除であるため、法人税が発生しない赤字の会社は要件を満たしても、メリットを受けることができません。このような事情を考慮し、2024年度の税制改正に、基準を超える賃上げを実施したものの、その年度に赤字などとなった中小企業でも、最大5年間は減税を繰り越せる措置が新設されています。

3 DX投資をしたら「DX投資促進税制」

DX投資促進税制とは、

クラウド化やシステム導入などデジタル環境の設備投資をした場合に、投資額の一部を税額控除か、特別償却(通常の減価償却費のかさ増し)の選択適用ができる制度

です。要件は投資内容の要件(デジタル要件)と、投資の効果等に関する要件(企業変革要件)の2つを満たす必要があります。

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例えば、1000万円のDX投資をして税額控除を選択した場合、30万円(1000万円×3%)を法人税額から控除できます(法人税額の20%限度内である場合)。また、投資額の上限(300億円)と下限(国内売上高比の0.1%以上)が決められているため、注意が必要です。

この税制の適用を受けるためには、事前に計画申請と適合確認(この課税の特例に適合するかどうかの確認)申請をし、国からの認定が必要になります。申請準備から認定までおおよそ6カ月はかかるといわれているので、早めに相談をしましょう。法人税の申告の際には、確定申告書に、確認書の写し、認定書の写し、認定計画の写しを添付する必要があります。申告後も、毎事業年度終了後3カ月以内に事業実施の報告書を提出しなければなりません。

4 一定の設備投資をしたら「中小企業投資促進・経営強化税制」

1)中小企業投資促進税制

中小企業投資促進税制は、生産性の向上を目的に一定の設備投資やソフトウエアを購入した場合に、その投資額の一部を税額控除か、特別償却のいずれかを選択して適用できる制度です。ただし、資本金3000万円超の中小企業については特別償却しか適用できません。

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例えば、生産性の向上を目的に200万円の機械装置を購入して、税額控除を選択した場合、14万円(200万円×7%)を法人税額から控除できます(法人税額の20%限度内である場合)。

なお、購入した設備ごとに購入金額や重量などの下限が決められています。また、一部の業種(電気業、水道業、鉄道業、航空運輸業、銀行業、映画業を除く娯楽業など)は、対象外とされているため、自社の業種が指定事業に含まれているか確認してみましょう。

この税制は、事前の申請などは必要なく、法人税の申告の際に、確定申告書に一定の書類を添付することで適用を受けることができます。

1.特別償却の場合

  • 中小企業者等が取得した機械等の特別償却の償却限度額の計算に関する付表
  • 適用額明細書

2.税額控除の場合

  • 中小企業者等が機械等を取得した場合の法人税額の特別控除に関する明細書
  • 適用額明細書

2)中小企業経営強化税制

中小企業経営強化税制は、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づいて新たな設備投資をした場合に、税額控除か即時償却のいずれかを選択して適用できる制度です。要件は4つのタイプに分かれており、それぞれに定められた要件を満たす必要があります。また、法人税の申告の際に、確定申告書に一定の書類(別表や適用額明細書)を添付することで、適用を受けることができます。

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例えば、150万円のシステム投資を行って税額控除を選択した場合、15万円(150万円×10%)を法人税額から控除できます(法人税額の20%限度内である場合)。

なお、中小企業投資促進税制と同様、購入した設備ごとに購入金額に下限が決められているため、注意が必要です。また、一部の業種(電気業、水道業、鉄道業、航空運輸業、銀行業、映画業を除く娯楽業など)は、対象外とされているため、自社の業種が指定事業に含まれているか確認するようにしましょう。

この税制を受けるためには、事前に経営力向上計画を作成し、国から認定を受けなければなりません。申請準備から認定までおおよそ3カ月はかかるといわれているので、早めの相談が必要です。また、法人税の申告の際に、確定申告書に一定の書類(認定計画の申請書および認定書の写しや、別表、適用額明細書)を添付しなければなりません。

5 社外飲食をしたら「交際費課税の特例」と「交際費除外の社外飲食費の金額基準」

交際費は、原則損金に算入されませんが、中小企業に関しては年800万円までは損金に算入できる特例があり、適用期限が2027年3月31日までに開始する事業年度まで延長されています。

また、損金に算入できる金額に上記のような限度額のある交際費から除外できる社外飲食費(専ら自社の役員や従業員との接待等のために支出する費用を除く)について、これまで1人当たり5000円以下であったのが、2024年4月1日以降の社外飲食費については1人当たり1万円に引き上げられています。

以上(2024年5月作成)
(執筆 南青山税理士法人 税理士 窪田博行)

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画像:snowdrop-Adobe Stock

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