書いてあること
- 主な読者:社員同士のコミュニケーションの場として、社内勉強会を続けていきたい経営者
- 課題:社内勉強会が一度や二度の開催で終わってしまって続かない
- 解決策:社内の自主性に任せすぎず、ルールを決める(プレゼンテーマ、開催日のスケジュール、資料の事前準備)
1 なぜ社内勉強会が続かないのか?
有志の社員が集まって、特定のテーマについて知識の共有や議論を図る「社内勉強会」。社員の知識の底上げやコミュニケーションの活性化だけでなく、経営者や上司にとっても「参加する社員の人となり」「興味・関心のあるテーマ」「プレゼンの資料作りや話し方の傾向」などが分かるので、開催するメリットは大きいです。ただ、問題は
社内勉強会が一度や二度の開催で終わってしまって続かない
というケースが多いことです。
社内勉強会が続かない理由としては、次のようなものが挙げられます。
- 業務に直結するテーマを続けると、講師を担当する社員のプレッシャーが高くなる
- 開催日が場当たり的に決まるので、スケジュールが合わない社員が多い
- 当日に資料が配られるので、参加者が事前に準備できず、意見交換が盛り上がらない
- 次回の担当者やテーマが決まらず、どこか「なあなあ」になってしまう
社内勉強会が続かないからと、経営者がテーマを決めたり、運営に関与したりと口を出しすぎると、社員の姿勢が受け身になったり、やらされ感が出たりすることになりかねません。それでせっかくの社内勉強会が頓挫してしまっては本末転倒です。
まずは
社内勉強会が長続きするよう、一定のルールを決める
ようにしましょう。
決めたルールに基づいて、社内勉強会がある程度続いて軌道に乗ったら、社員の自主性に任せていけると理想的です。
そこで、この記事では、社内勉強会を軌道に乗せる手助けとして、社内勉強会を続けていくためのルール作りのポイントを提案します。
併せて、社内勉強会が長続きしている企業はどのような取り組みをしているのか、事例も紹介しますので、社内勉強会を長続きさせるためのヒントとして、ご活用ください。
2 社内勉強会を続けていくためのルール作りのポイント
1)「業務関係」以外にも、「趣味」「IT」など幅広いテーマを認める
社内勉強会のテーマを業務関係のものに絞る必要はありません。むしろ業務関係に絞ってしまうと、講師を担当する社員が「前回よりも質の高い発表をしなければいけない」とプレッシャーを感じたり、毎回内容が似通ってマンネリ化してきたりします。
勉強会は社員が知識を付ける以外に、社員同士のコミュニケーションを通して、その人となりが分かるといったメリットもあります。そうした意味では、
テーマの範囲をある程度自由にし、社員の趣味の分野についてプレゼンしてもらう
というのも1つの手です。あるいは、
若手の社員が業務・プライベートを問わず普段使っている便利なITツール
をテーマにし、よいツールがあれば、正式に社内で使ってみることもできます。
2)開催を不定期にしない
「思い立ったが吉日」とばかりにその都度社内勉強会の予定を組もうとすると、スケジュールが合わず参加者が集まりませんし、プレゼン担当者も資料などを準備する余裕がなくなります。また、開催が不定期で勉強会の間隔が空きすぎると、前回の内容を思い出しにくくなりますし、モチベーションも長続きしません。
社内勉強会をやると決めたなら、
「毎月第◯曜日の◯時から1時間」といった形で定期的に開催する体制を整え、社員のスケジュールに組み込んでもらう
ようにしましょう。開催日の1週間前など、日にちが近くなったタイミングでリマインドをするなどの小さな配慮もあるとよいでしょう。
なお、開催日のルールを決めるのは大切ですが、有志の集まりである以上、「あくまで自由参加である」という点は強調しておく必要があります。社内勉強会が自由参加の場合、その時間は原則労働時間になりませんが、開催日のルールを厳格にすると、社員の中には「参加が強制である」と誤解する人も出てくるでしょう。仮に会社が強制参加と社員に受け取られても無理のない対応をしていた場合、社内勉強会の時間が労働時間とみなされ、賃金を支払わなければならなくなるケースもあります。
3)資料を事前に共有、記録を残す
社内勉強会のテーマについて、資料がある場合にはあらかじめ参加する予定の社員で共有しておくようにしましょう。特にある程度専門的な内容を扱う場合、開催日当日に資料を渡されても内容が頭に入ってきません。逆に資料が事前にあると、参加者も事前に勉強した上で臨むことができ、意見交換も活発化します。
また、内容を頭に入れるという点では、ウェブ会議システムのレコーディング機能を活用して、社内勉強会の記録を残しておくのもよいでしょう(リモートで開催する場合)。そうすれば、次の社内勉強会まで日にちが空いたとしても前回の内容がすぐ思い出せますし、次回以降に講師役を担当する社員にとっても、資料作りや話し方などの参考になります。
4)次回の講師役を必ず決める
次回のプレゼン担当者やテーマの候補があらかじめ決まっていないと、勉強会が続かず自然消滅してしまう可能性があります。
勉強会の終わりのタイミングだと時間が足りず次回の講師役を決められなくなる場合は、勉強会の始めのタイミングで決めたり、スケジュールを決める段階でプレゼンを持ち回りで担当できるように指名したりしておくのもよいでしょう。
3 社内勉強会が長く続く会社の取り組み事例
ここでは、各社のリリースを基に、社内勉強会が長く続く会社はどのような取り組みをしているかの一例を紹介します。
1)プレゼンのハードルを下げて「ゆるく」続ける:NTTコミュニケーションズ
同社(東京都千代田区)では、昼休憩の時間を利用した社内ランチ技術勉強会「TechLunch」を9年にわたって開催しています。
元々はITに関する最新の技術や話題の技術に関するプレゼンをメインとしていたため、プレゼンを聞く社員にとっては刺激的でしたが、こうした状況が続くと、次の担当者にも技術的な内容が求められ、プレゼンのハードルが高くなるという課題がありました。
そこで、ラグビー経験者や、個人の趣味で日本酒やカメラをたしなむ人に経験や知識をプレゼンしてもらうなど、IT技術とは離れたテーマをプレゼン内容にすることで、発表に対するハードルを下げています。
また、「プレゼンをオフィスではなくリモートで行う」「時間帯は固定だが、プレゼン担当者が準備などをしやすいように、開催する曜日は任意に変更できる」などの柔軟な対応ができることも、社内勉強会を長く続けていくための大切な要素のようです。
2)運営のノウハウを残して負担を軽減する:HENNGE
同社(東京都渋谷区)では、エンジニアが技術的なテーマについてプレゼンしあう社内勉強会「MTS(Monthly Technical Session)」を100回以上開催しています。
毎回事前にプレゼン担当者を募集する形式で、業務の中で得た技術的な知見の共有や最新テクノロジーに関する話題、個人的な学習の成果などをテーマに情報交換をしています。
社内勉強会の運営は月替わりでプロジェクトチームが担当しています。プレゼン担当者の選定、設営準備、MTSの後に行う懇親会の準備などの運営に関するノウハウや手順を文書として書き起こしてあり、共有されるようになっています。こうした運営の仕組みを整えることで、社内勉強会が長く続いているといいます。
3)全社的に社内勉強会の内容を共有:モバイルファクトリー
同社(東京都品川区)では、社員のスキル向上を目的に1日1時間、業務時間内で社内勉強会を開催しており、10年以上継続しているといいます。
プレゼン内容は社員の主体性を尊重しているため、業務のノウハウの共有だけでなく、読書会や動画の視聴など多岐にわたります。
また、オンライン形式で開催することで、別の作業をしながらでも気軽に参加できるようになったため、社員が社内勉強会に参加するハードルが下がったとしています。
勉強会の資料はチャットツールのSlackで公開をしており、社員全員が閲覧できる状態になっています。公開資料に「いいね」や「コメント」などのリアクションがつくことでプレゼン担当者の達成感にもつながり、モチベーションを保つ要素になっているようです。また、社内勉強会を評価する仕組みとして、社員投票などによって良いアウトプットの事例を選出し、対象となった社員を表彰する制度もあります。
以上(2023年11月作成)
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