けさは、私が好きな野球の大リーグ(メジャーリーグ)の話をします。ご存じの方も多いでしょうが、大リーグでは、2023年シーズンから「ピッチクロック」というルールが導入されました。簡単に言うと、一定の動作を行うための時間に制限を設けるというものです。例えば、投手は、ボールを受け取った後、ランナーがいない場合は15秒以内、いる場合は20秒以内に投球動作を始めることとされ、ランナーへの牽制球は実質2回までに制限されました。一方、打者は、投手が投球動作を始めるまでの制限時間の残り8秒の時点までに、投手に注意を向けなければなりません。
このルール変更により、投球間隔の長い投手などは、今までの自分のペースではプレーできなくなり、少なからぬ影響を受けました。実際に、“二刀流”の大谷翔平選手は、投手としても打者としてもペナルティーを科された最初の選手になってしまいました。
もちろん、こうした影響はルール変更前から予想できていましたので、当初、選手会はこのルール変更に反対したのですが、運営側の強い意向によってルール変更が決まったのです。私も最初は、選手のプレーに悪い影響が出るのを懸念して、ルール変更には否定的な考えを持っていました。
ですが、今ではむしろルールを変更してよかったと思っています。理由は2つあるのですが、いずれも、仕事をする上で自分たちへの戒めにしなければいけないことと重なるように思います。
1つ目の理由は、大リーグ全体の将来のためです。そもそも、ルール変更の目的は、試合時間の長さによるファン離れを防ぐことでした。野球は他の多くのスポーツと違って時間制限がなく、一試合の平均時間が相対的に長いことから、若い世代を中心に飽きられやすいと以前から指摘されていました。実際にピッチクロックの導入によって試合時間の「時短」に効果が出ているようです。私も、会社の将来のために必要な変更であれば、自分の都合は二の次に考えて、むしろ変更を後押しするぐらいになりたいと思いました。
2つ目の理由は、たとえ自分に不利な変更であったとしても、変更されたルールの下で結果を出すことこそ、プロとしてあるべき姿だと思うからです。突然の条件や仕様の変更は、仕事の上でもよくあることです。こうした変更への対応力も、プロとしての大事な能力なのだと思いました。特に、ルール変更にしっかりと対応して活躍している大谷選手は、良いお手本になると思います。
そもそも世の中に、自分のペースでできる仕事というものは、ほとんどありません。仕事というものは、常にお客さまや取引先、同僚など、さまざまな人がいて成り立っているものですから、自分の都合だけ考えていては、とても回りません。
自分の仕事に関係する人の都合を考える。そして、変更があってもそれに負けず、プロとして結果を出す。どちらもこなせるビジネスパーソンを目指して頑張りたいと思います。
以上(2023年8月)
pj17148
画像:Mariko Mitsuda