6月も半ばを過ぎ、暑さが本格化してきました。夏バテしないように体調管理に気を付けてください。さて、「夏バテ解消」というと、7月の土用の丑(うし)の日のウナギを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。実は、今ではそれが“常識”のようにいわれますが、その習慣は江戸時代からで、それまでウナギの旬は脂の乗った冬で、夏にウナギはあまり食べられていませんでした。
諸説ありますが、冬が旬だったウナギを夏の風物詩に変えたのは、たった1人の天才の発想だったといわれています。その人こそ、江戸時代中期の発明家で、エレキテルの復元などで知られる平賀源内です。きっかけは、夏の売り上げが少ないことに困ったウナギ屋が、友人の源内に相談したことです。源内は、「本日、土用の丑の日」の看板を掲げ、暑さを乗り切るために精のつくウナギを食べたほうがいいとお客に伝えるようアドバイスしたところ、そのウナギ屋は大繁盛。多くのウナギ屋がまねをしたことで、土用の丑の日にウナギを食べる習慣が広がったというのです。旬ではない食材を大ヒットさせ、現代に至るまでその習慣が廃れていないのですから、源内の発想は、まさに天才的といえます。
ヒット商品を生み出したり、会社の新たな道を開拓したりするには、源内のような新しい発想で、従来なかった価値観を生み出すことが重要です。とはいえ、「言うはやすし」で、実際に新しい発想でビジネスを成功させるのは至難の業です。
私自身も含め、源内のような発想力がある人は、そうはいないでしょう。ですから、私たちが目指すべきは、源内ではなく、源内にウナギの売り上げに関する相談をしたウナギ屋です。もちろん、「ただ相談する」のではなく、「発想力のある人から学んで、新しい発想のヒントを得る」という姿勢が大切です。
実は私は、新しい発想のヒントを得るために、買い物の際に、新商品や珍しいお菓子を見つけると、なるべく購入するようにしています。そのお菓子は自分だけでなく、発想力があると思っている方々にも食べてもらうのです。お菓子は差し入れとしても喜ばれますし、その場で食べてもらえ、感想を聞きやすいメリットがあります。
お菓子に対する率直な感想や評価を聞いてみると、私には思い浮かばなかったような着眼点や評価基準を知り、「そういうものの見方があるのか」という気付きを得られます。そして、こうした気付きを自分の中にためておくと、後で物事を判断するときなどに、思わぬ助けになるのです。
皆さんも日ごろから、同僚、家族、知人など、多くの人の「ものの見方」を学ぶ癖を付けてください。今ならAIチャットに質問してもいいでしょう。質問のテーマは、ささいなことでも構いません。そして、自分になかった「ものの見方」があれば、自分の中にためておくようにしてください。その積み重ねが、いざというときの新しい発想につながるはずです。
以上(2023年6月)
pj17146
画像:Mariko Mitsuda