中小企業の経営者が知っておきたい 相続トラブルと事前対策

相続トラブル自体は、中小企業の経営者に限らず、ありとあらゆる人について発生する可能性がある比較的一般的な法律問題です。
相続が「争続」などと呼ばれるトラブルステージに至りますと、死んでしまった親族ら(法的には「被相続人」と呼ばれる)の資産について、換価出来るもの・出来ないものを問わず、それこそ1円単位を巡り、血で血を洗うような抗争が長期に亘って繰り広げられます。終了後の親族関係は「まるで核戦争後の荒廃したデストピア」のようになり、復興することはまずありません。
では、このような相続トラブルについて「中小企業の経営者」に発生する特有の現象とはどのようなものか?それは資産の食い合いが、そのまま大波のように「企業統治」に波及する状態です。

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男性の育休取得について

男性の育休取得は、2022年10月の新制度、出生時育児休業(産後パパ育休)の創設でより注目されることとなりました。さらに、2023年4月から「常時雇用する労働者」が1,000人を超える企業は、男性労働者の育児休業等の取得状況を年1回公表することが義務付けられました。

本稿では、一連の法改正により関心が高まっている男性の育児休業について、取得の現状や企業に課せられる法律上の義務などをご紹介します。

1 男性育休の取得率

厚生労働省「イクメンプロジェクト」、株式会社ワーク・ライフバランス、認定NPO法人フローレンスの三者が国内の企業を対象に行った独自の実態調査「男性育休推進企業実態調査2022」によると、回答企業平均の男性育休取得率は76.9%、平均取得日数は40.7日という結果となりました。

■男性育休取得率・平均取得日数の推移

男性育休取得率・平均取得日数の推移

この調査回答企業142社においては、男性の育児休業取得が定着してきたと言えるかもしれません。しかしながら、厚生労働省が発表している男性育休取得率は2020年12.65%、2021年13.97%となっており、また、2021年の育休の取得期間は、5日未満25.0%、5日~2週間未満26.5%と2週間未満が5割を超えるなど、全企業に浸透してきたと言える状況にはありません。

【男女の育児休業の取得期間の状況】

【男女の育児休業の取得期間の状況】

(厚生労働省「雇用均等基本調査」)

2 育児休業に関する企業の義務

日本では少子高齢化と労働力人口の減少が進んでおり、出産・育児を支援して労働者の離職を防ぐことは非常に重要な課題です。このことから、出産や育児に際する労働者を保護するべく法律も整備されてきました。以下に、法律により定められた育児休業に関わる企業の義務をご紹介いたします。

育児休業に関わる企業の義務

3 さいごに

企業が男性の育児休業を推進するメリットは、①労働者のワーク・ライフ・バランスが向上し、定着率がアップする、②「働きやすい企業」のイメージアップにつながり、採用に有利になる、③業務の属人化を低減させ、業務量・バランスの標準化につながる、といったものが考えられます。

また、育児休業を推進することで、両立支援等助成金(出生時両立支援コース、育児休業等支援コース)を活用することもできます。

企業は、育児介護休業規程などの運用規程の整備や、職場からの積極的な働きかけやサポートを行い、ワーク・ライフ・バランスのとれた働き方ができるよう、より良い職場環境の実現につなげていくようにしましょう。

※本内容は2023年7月14日時点での内容です

(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)

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中小企業の経営者が知っておきたい 社員の私有自転車を業務利用させる場合のリスク管理

社員の自転車乗用中の交通事故が業務中の事由または業務の一部と捉えられる通勤途上で起こった場合、加害者たる社員を雇用する会社は、報償責任の原理(利益あるところに損失を帰せしめるのを公平とする考え方)により、(1)民事的責任、(2)刑罰的責任、(3)社会的(道徳的)責任を問われます。
業務用自転車による事故はもちろんですが、私用自転車であっても業務中や通勤途上で事故が発生すれば、会社の責任が問われ得ることに注意が必要です。

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中小企業の経営者が知っておきたい 社員の私有自転車を業務利用させる場合のリスク管理

1 自転車による交通事故は増加している~ヘルメット着用が努力義務化される背景(令和5年4月1日)~

令和4年中の交通事故の発生状況(警察庁交通局)によれば、交通事故全体の発生件数は前年より減少しているにも係わらず、自転車乗用中の交通事故は69,985件、前年より291件増加しています。また、交通事故全体の発生件数300,839件に占める自転車乗用中の交通事故の割合は約23%と高止まり、その構成比は平成28年以降ずっと増加傾向にあります。

また、自転車乗用中の死傷者数は68,140人と交通事故全体の死傷者数359,211人に占める割合は約19%であり、歩行中の死傷者数38,195人に比べ約1.7倍と高い数値を示しています。

同統計の自転車乗用中のヘルメット着用有無別死傷者数によれば、自転車乗用中の死傷者数68,140人の内、60,274人がヘルメットを非着用、非着用死傷者率は88.5%でした。

こうした状況を踏まえ、改正道路交通法の施行により、令和5年4月1日から自転車利用者のヘルメット着用が努力義務化されることになりました。

これまでも、児童や幼児が自転車に乗る際、ヘルメットの着用は努力義務とされていたのですが、4月の法改正では、年齢にかかわらず自転車利用者全員に適用されるようになったのです。

このように、自転車による交通事故が増加しているということを、まず知っておきましょう。

2 自転車による交通事故と会社の責任

社員の自転車乗用中の交通事故が業務中の事由または業務の一部と捉えられる通勤途上で起こった場合、加害者たる社員を雇用する会社は、報償責任の原理(利益あるところに損失を帰せしめるのを公平とする考え方)により、(1)民事的責任、(2)刑罰的責任、(3)社会的(道徳的)責任を問われます。

業務用自転車による事故はもちろんですが、私用自転車であっても業務中や通勤途上で事故が発生すれば、会社の責任が問われ得ることに注意が必要です。

●表1 私用自転車事故の会社責任

業務使用実態

事故発生時の状況

業務中

通勤途上

私用中

日常的業務使用

私用自転車を業務使用するように会社が命令、業務遂行のために私用自転車が必要で日常業務的に継続的使用をしている場合

便宜的業務使用

業務遂行のために私用自転車を使う必要はないが、使った方が便利・効率的であり、かつ会社が黙認・許可している場合

業務使用なし(通勤のみ使用)

業務使用を厳禁しており、実態としても業務使用が一切ない場合

×

◎:会社責任を問われ得る
○:一般的には会社責任を問われ得る
△:場合によっては会社責任を問われ得る
×:会社責任を問われない

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男性の育休取得について

男性の育休取得は、2022年10月の新制度、出生時育児休業(産後パパ育休)の創設でより注目されることとなりました。さらに、2023年4月から「常時雇用する労働者」が1,000人を超える企業は、男性労働者の育児休業等の取得状況を年1回公表することが義務付けられました。

本稿では、一連の法改正により関心が高まっている男性の育児休業について、取得の現状や企業に課せられる法律上の義務などをご紹介します。

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【経理人材の育成(4)】業務改善と人材育成にもつながる。 会議のあり方・進め方の見直し

書いてあること

  • 主な読者:経理人材の育成や、経理部全体の効率化に悩む中小企業のマネジメント職
  • 課題:慣行で行われている会議や、何年もやり方を変えていない会議が多い
  • 解決策:会議は基本問題解決の場として設定する。そのためには、部下が上司にトラブルや問題点などを気兼ねなく言える雰囲気づくりのほか、会議の種類ごとの特徴をつかんだ上で、適切な会議を設定する

1 会議の実態:会議に充てる時間が毎日1時間以上

皆さんの会社でも、いくつもの会議が行われていると思います。経理部内、事業部門や経営者が相手、あるいは顧問税理士など社外の専門家との会議という場合もあるでしょう。

そこで、今回は

会議をテーマに取り上げて、経理部はどのように会議を活用したらいいのか、人材育成も含めた観点

から見ていきたいと思います。

以前新聞で見たアンケート結果によると、一般社員でも平均すると、毎日1時間程度の会議があるという話でした。そして、役職が上がっていくにつれ、2倍、3倍に増えていくとのこと。おそらく管理職の皆さんは、一日に2~3つの会議があり、準備も入れると半日程度費やしているという方が多いのではないでしょうか。意思決定のハブとして機能するためには、これぐらい必要になってしまうのではないかという印象が、自分の管理職経験からしてもあります。

また、経理の非管理職の方でも、昼はずっと会議で埋まっているという話を聞いたことがあります。その結果、作業時間がとれるのは夕方以降だそうで、毎日残業続きで大変そうでした。

社歴が長い会社であればあるほど、慣習的に行われている会議や、何年もやり方を変えていない会議もあると思います。業務改善の取り組みの一環として、自身の周りの会議のあり方・進め方を見直してみましょう。

2 経理にとっての会議:会議だけでは仕事は進まない

会議が多ければ、その分、作業時間が減るのは当然です。私たち経理は、伝票処理などの一定程度の作業時間をとらなければ、業務が遅れてしまいます。ゆえに、この一定程度の作業時間の存在を前提として、会議の量をコントロールする必要があるのです。これが経理にとっての会議を考える上で、1つ目のポイントになります。

2つ目のポイントは、会議は問題を解決する場として活用すべきという点です。私たち経理の業務は定型のものや、決算のように定期的に行われる業務が多くあります。そのため、大抵の業務は問題なく進むものの、時折、何らかの理由で遅れたり、トラブルが生じたりすることがあります。まさに会議は、このような担当者個人では解決が難しい問題(遅れやトラブル)を、上司やチームの力を借りて解決するためにこそ活用されるべきです。定例会議の場では、進捗報告が行われることがありますが、進捗を共有すること自体は手段にすぎません。本当の目的は問題を発見し、その上で解決することにあるのです。現場担当者に比べて豊富な知識や経験、人脈や権限を使って解決に近づけるケースも多いはずです。

ここで大切になるのが、部下が上司に対して今起きている問題をスムーズに報告できる会議の雰囲気づくりです。

3 会議に求められる雰囲気づくりの肝は“心理的安全性”

「会議では問題を扱うべき」という話をすると、メンバーからは「問題を報告するとうちの上司は機嫌が悪くなる」という声がしばしばあがります。確かに、自分がスタッフだった頃を考えると、やはり上司に悪い報告をするのは勇気が必要でした。そのことを見越して、私の日本マクドナルド時代の上司は「Bad News First」という標語を作り、ことあるごとにこの言葉を口にして、部内に浸透させていました。

課題や問題といった悪いニュースを伝えてくれるメンバーは、管理職自らそれを発見する手間と時間を省略させてくれる、部の運営上とても助かる存在のはずです。また、このような問題提起ができるメンバーは、リスク把握力が高いことが多く、今後の人材育成や部内の人材配置においても考慮に入れると効果的です。

近年、効果的に働くためには「心理的安全性」が大事と言われますが、私は

「悪いことでもメンバーが口に出せる状態かどうか」

ということだと捉えています。特に、複数のメンバーが参加する会議の場では、他人の目が気になるはずです。どのような意見に対しても即否定せずに、まずは発言してくれたことに感謝しつつ、なぜそう思うのかを穏やかに質問します。また、何か悪い報告があった場合は、個人を責めるのではなく、まずは事実の確認に徹しましょう。その上で、よく言われることですが、本人に反省を促す必要がある場合には、他の人がいないところに行き、1対1で話すのがベストな方法です。

ただ、すべての会議で同じやり方が通用するわけではありません。会議の種類(定例会議・臨時会議・1on1)ごとに、目的と進め方にポイントがありますので、次章で解説していきます。

4 会議の目的と進め方を整合させる

1)定例会議

定例会議の最大のポイントは、

「意味がある」議題を用意すること

です。もし皆さん管理職からみて、トラブルが無さそうなことがあらかじめ分かっていたり、そもそも重要な作業・イベントがない期間だったりすれば、会議自体をキャンセルしてもいいのです。この判断をできるのは主催者である管理職だけなので、定例だからと惰性で開催するのではなく、辞める勇気を持ってください。逆に、何か話し合った方がいい話題があれば、慣習的に行われている進捗報告に代わって、それを議題にしましょう。

そうすることで、必要なことを話せる場ができ、かつメンバーにとっても会議の重要性が伝わるため、結果として会議が活性化します。

ちなみに、多くの会社では、開始時刻は比較的守られるものの、終了時刻がうやむやになるケースが多いようです。終了時刻を守れるように、管理職の方は会議の進行管理に気を付けましょう。例えば、議題ごとに予定時間を設定したり、一人当たりの発表時間をあらかじめ定めたりするのも役に立ちます。また、1時間の会議を設定するケースが一般的ですが、スタートアップ企業でよく取り入れられているように、あえて30分間や45分間といった従来よりも短い時間枠で設定することで、緊張感が生まれることもあります。

2)臨時会議

スポットで生じた議題を話し合う臨時会議の最大のポイントは、

参加者選び

です。何か問題が生じると、念のためあの人も呼んでおこうと会議が大きくなりがちです。参加者が増えるとスケジュールの調整が難しくなり、開催が先延ばしになることもしばしばです。しかし、目的が問題解決ということであれば、会議を開催するスピードも大事です。

なるべく早く開催するためにも、関係が薄い人は参加者から外しましょう。内容が分かる人とその場で決定できる人の2種類がいれば十分です。回数も可能な限り一度で済ませましょう。
まとめると、臨時の会議は、小さく・早く・少なく開催できると、当初の課題が解決しやすいと私の経験から感じます。臨時で会議を開く目的はまさに問題の解決ですが、会議のあり方が問題解決に少なからず影響するということです。

3)1on1

次に、近年増えてきた1対1で行う面談(1on1。ワンオンワン)です。主に、日々の業務目的というよりは、各人の人材育成の観点から開催されることが多く、頻度も月次あるいは四半期に一度程度というケースが多いようです。つまり、短期ではなく中長期のスパン、業務ではなくメンバー個人の話をする場として一般に使われています。

1on1の最大のポイントは、

相手に話題を委ねること

です。この会議では、皆さんが議案を決めたり、進行したりしてはいけません。ひたすら相手の話を聞くことに徹します。これまで皆さんが経験してきた会議とは性質が大きく異なるため、はじめは慣れずに居心地が悪いかもしれません。あるいは、上司部下の関係において、心理的安全性が低い場合には、なかなか口を開いてもらえないかもしれません。その場合には、この場の趣旨に何度も触れたり、皆さん自身の他愛もない話をしたりするのもいいでしょう。日頃は業務の話しかしない上司が自分の話をすると、メンバーにとっては意外性が高いため親近感をもってもらうきっかけになりやすく、効果は高いものです。なお、もしメンバーが口を開いた内容が、業務の話だった場合には、注意しましょう。なぜなら、業務自体に関するコミュニケーションの量や質が不足していることのシグナルと考えられるためです。

1on1は、個人の思いや考えなど、人材育成のベースとなる情報を得る場として最適かつきわめて重要だと私は考えています。会議として設定することで、多忙でも時間がきちんと確保されやすいこと、継続して定点観測できること、個別に向き合うことができることなど、数多くのメリットがあります。

3つのタイプの会議を見てきましたが、それぞれの会議の特徴や進め方を理解した上で、議題を絞り込んだ会議を、何重にも活用することが大事です。

複数人いる会議であれば緊張感を活用できますし、1対1であれば限りなく相手に合わせた内容にすることができます。会議を問題解決の場だけに使うのでなく、ぜひ人材育成の場として活用してみてください。管理職の日々はあまりに忙しく、最近様子が気になるメンバーがいたとしても「時間があるときに個別に話そう」となりがちです。しかし、そう思いつつも気が付いたときには、そのメンバーから退職届が出てくるかもしれません。手遅れにならないように、ぜひ会議という身近な手段を上手に活用してみていただけると幸いです。

以上(2023年8月作成)

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画像:Shutter z-kittiphan-shutterstock

【中堅社員のスピーチ例】自分の「旗印」になる言葉を掲げよう

少し先の話ですが、皆さんは、2024年に開催されるパリ五輪の新たな種目に、「ブレイキン」という競技が加わることをご存じでしょうか? まだ「マイナースポーツ」の位置付けでしょうが、国内の競技人口は600万人という推測もあり、特に若者には人気があります

私もブレイキンのことをよく知らなかったのですが、テレビで大会の様子や選手のプロフィールなどを知って、とても興味を持ちました。もちろん、ダンスのパフォーマンス自体の動きの激しさやテクニックもすごいと思ったのですが、それと同じくらい興味を持ったのが、ブレイキン特有の「ダンサーネーム」です

ブレイキンでは、各選手が本名とは別にダンサーとしての名前を持っており、観戦者も選手のことをダンサーネームで呼んでいます。ダンサーネームの付け方は選手によって異なるのですが、アルファベット3文字、ひらがな1文字、アルファベットとひらがなをミックスさせた名前など、奇抜なものもあります。ですので、名前を見てもどんな意味があるのか分からなかったり、「そんな名前でいいの?」と思ったりすることもあります

そこで、私は、一部の選手のプロフィールをインターネットで検索して、ダンサーネームの由来を調べてみました。調べてみると、本名や自分の理想とする言葉をもじったり、あるいは過去の思い出などを表す言葉を入れたりしたダンサーネームなどもあるようでした

私が感銘を受けたのは、彼らの中に、自分がダンスで表現したいこと、ダンスを通じて伝えたいことを、ダンサーネームに込めている選手がいたことです。こうしたダンサーネームは、自分の進むべき道の「旗印」としての存在だといえるかもしれません。

また、自分の思いを込めたダンサーネームがあることで、つらいときに、その名前が自分の背中を押してくれる、という選手もいるそうです。選手にもよるでしょうが、ダンサーネームには、それだけの「重み」があり、敬意を持って呼ぶべき名前なのだということを知りました

ダンサーネームのことを知って、私は、果たして自分には、自分の「旗印」のような指針となり、つらいときに自分の背中を押してくれるような言葉を持っているのか、思い巡らすようになりました。座右の銘や、好きな言葉はありますが、「これが、自分の進む道だ」「自分が最も大切にしている、この言葉に恥じないように頑張ろう」とまで思えるほどの言葉は、明確に持っていなかったと思います

そこで、私も、ダンサーネームではありませんが、自分の「旗印」となるような、広い意味で自分の「キャッチフレーズ」といえる言葉を考えてみることにしました。ここでは明かしませんが、いくつか候補を考えています。皆さんも、キャッチフレーズを付けることで自らの「旗印」を掲げてみませんか?

以上(2023年8月)

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画像:Mariko Mitsuda

この会社、ゆるいな……。 ストイックな若手が辞めるのは会社が優しすぎるから?

書いてあること

  • 主な読者:優しく接しているのに、若手が会社に定着しないことに悩む経営者
  • 課題:なぜ辞めてしまうのか、どう向き合えばいいのかが分からない
  • 解決策:会社が優しすぎるために、若手が「ゆるい」と感じて転職することがある。挑戦できる環境を整えるなどして「この会社にいれば成長できる」という実感を与える

1 「優しすぎる会社」は、ストイックな若手からすると不安?

若手にはたくさん経験を積ませ、いずれは会社の中核を担ってほしい。なのに、成長する前に若手が辞めてしまう……。こうした問題に頭を悩ませる経営者は少なくないでしょう。若手が辞めてしまう理由はさまざまですが、今どきのケースとして押さえておきたいのが、

会社が優しすぎるために、「この会社、ゆるいな……」と感じて転職してしまう

というものです。

昨今は、働き方改革やハラスメント関連の法規制などの影響で、若手にあまり残業をさせない、ミスがあっても叱らないなど、良くも悪くも「優しい会社」が増えました。一方で、若手のほうは、終身雇用などかつての日本的な雇用が当たり前でなくなりつつある中で、経営者や上司が考えている以上に「早くどこでも通用する人材に成長しなければ……」と焦っています。

ですから、会社の優しさが行きすぎると、若手はかえって「このまま今の会社で働いていても、自分は成長できないんじゃないか……」と不安に感じ、転職してしまうのです。実際、

20代の正社員177人に、「今の会社で成長を実感できているか」などをアンケートで聞いたところ、29.4%が「成長を実感できない」でいて、うち40.4%が「転職を考えている」

ということが分かりました(アンケート結果の詳細は後述)。

自分で何の努力もせず、会社が成長させてくれるのを待っているだけの若手ならともかく、勉強をしたり、社外の人に会ったりと本人なりに努力をしている「ストイックな若手」が、その努力を活かせないまま辞めてしまうのはもったいないことです。これを防ぐには、

  • 若手がなぜ「この会社はゆるい(成長できない)」と感じるのかを分析すること
  • 分析を基に、若手が成長を実感できる機会を与えること(挑戦できる環境を整えるなど)

が肝心です。まずは、前述したアンケート結果の詳細から見ていきましょう。

2 今の会社はゆるい? 20代の正社員177人に聞きました

20代の正社員177人に対し、「今の会社と自分の成長」に関するアンケート調査を実施しました(実施期間は2023年6月1日から6月5日まで)。その結果を紹介します。

1)あなたは、今の会社に勤めていて「成長している」と実感できますか?

まず、177人全員に「今の会社での成長の実感」について聞きました。「全く実感できない」が6.2%、「あまり実感できない」が23.2%、計29.4%が成長を実感できずにいるようです。

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さらに、成長を「全く(あまり)実感できない」と回答した52人に、「転職の意向」について聞きました。「既に転職活動をしている」が15.4%、「1年以内に転職活動を始めようとしている」が25.0%、計40.4%が転職を考えているようです。

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2)今の会社で成長を実感できない(できる)と回答した理由は何ですか?

図表1で成長を「全く(あまり)実感できない」と回答した52人、「少し(大いに)実感できる」と回答した112人に、それぞれ理由を聞きました。結果を上位順に並べたのが図表3です。

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成長を実感できない理由の1位は「やりがいのない仕事ばかりさせられている(単純作業など)」の26.9%、2位は「事業のレベルが低い(技術や社会への貢献度など)」の23.1%、3位は同率で「放任主義で何も教えてくれない」「妙にご機嫌を取られているように感じる」の17.3%でした。

成長を実感できる理由の1位は「『事業を大きくしよう、新しくしよう』という気概が感じられる」の40.2%、2位は「成長に応じて新しい仕事を任せてくれる」の35.7%、3位は「事業のレベルが高い(技術や社会への貢献度など)」の33.9%でした。

アンケート結果を見る限り、「事業の意義」「若手に任せる仕事の内容」「上司の接し方」に、若手が成長を実感できるか否かのカギがあるようです。これを踏まえた上で、若手を成長させるために会社は何ができるのかを考えていきましょう。

3 若手に「ゆるい」と思われないために会社は何ができるか?

1)事業の将来ビジョンは、経営者自ら若手に伝えよう(経営者)

アンケート結果からは、「事業のレベルが低い(技術や社会への貢献度など)」会社では若手が成長を実感しにくく、逆に「事業のレベルが高い」会社、「『事業を大きくしよう、新しくしよう』という気概が感じられる」会社では成長を実感しやすいことが分かりました。

事業のレベルについては、もちろん会社の状況によって現時点で実現できること、できないことがありますが、少なくとも現状を変えていこうという気概が感じられないと、若手は離れていきます。特にもったいないのは、

経営者の頭の中には事業の将来ビジョンがあるのに、それが若手に伝わっていないケース

です。例えば、経営者は、3年から5年先の「会社のあるべき姿」、それを実現するための課題ややるべきことを中期経営計画に落とし込みますが、その計画も社内に周知されていなければ、若手に伝わりません。仮にイントラネットなどで計画を閲覧できる状態にしていたとしても、経営者が事業に懸ける思いというのは、文字だけではなかなか伝わらないものです。

ですから、

会社のこれからの事業の在り方などについて、経営者が自ら若手にプレゼンする

など、若手に事業の将来ビジョンを語る機会を設けるようにしましょう。まだビジネスの知識や経験が少ない若手でも、経営者が「今から10年後の203X年に、我が社は○○のような姿になっている」などの理想を語れば胸をおどらせるでしょうし、経営者の話に突っ込んだ質問をしてくることもあるはずです。

2)あえて新しい仕事にチャレンジさせてみよう(経営者、上司)

「やりがいのない仕事ばかりさせられている(単純作業など)」会社では若手が成長を実感しにくく、逆に「成長に応じて新しい仕事を任せてくれる」会社では成長を実感しやすいという結果も出ていました。

若手の仕事を管理するのは上司の役目です。上司は、若手の成長に合わせて任せる仕事の内容を調整しますが、例えば、

  • 上司は「若手が成長してきた、もう少ししたら別の仕事を任せてみよう」と考えている
  • 若手は「上司は自分の成長を認めてくれていない、だから、いつまでたっても同じ仕事しか任せてもらえないんだ」と考えている

など、仕事について両者の認識がかみ合っていないケースがあります。

ですから、まずは1on1ミーティングなどで両者の認識のすり合わせをすることが大切です。

上司は、今の仕事をあとどのぐらいの期間若手に任せるつもりなのか、次に何の仕事を任せる用意があるのかなどを明らかにしつつ、若手にも今の仕事に対する不満などを聞いてみます。

若手が「新しい仕事に挑戦したい」と考えているなら、その仕事について何を勉強しているのか、今任せている仕事に支障が出ないかなどを確認した上で挑戦させてみる

のも1つの手です。

また、別のアプローチとして、

経営者から若手に働きかけて、新しい事業などを提案させてみる

という方法もあります。例えば、会社が新しいツール(AIなど)を導入した際に、それを使ってどんな事業ができそうかを幅広く募集します。事業にできそうな提案を若手が上げてきたら、そのプロジェクトに参画させて事業の立ち上げを経験させてみるのもよいですし、事業にならない場合でも、考えが足りない部分をフィードバックすることで若手の成長に役立つでしょう。

3)教えるべきことはしっかり教えよう(上司)

「放任主義で何も教えてくれない」「妙にご機嫌を取られているように感じる」というのも、若手が成長を実感しにくい会社の特徴でした。

昨今は、ハラスメントに対する法規制が進んだり、パワハラやセクハラの他にもさまざまなハラスメントが出てきたりして、「若手に何か言ったらハラスメントと言われるのでは……」と指導に臆病になっている上司が少なくないようです。ただ、これでは部下を管理するという上司の本来の仕事に支障を来しますし、アンケート結果を見る限り、若手は上司に対し、腫れ物に触るような接し方ではなく、必要な指導をしてほしいと思っているようです。

ですから、上司は

若手に知らないことやできていないことがあれば、恐れず自信を持って教えるよう徹底

しましょう。暴言などを吐かないよう注意する必要はありますが、若手に「何が足りないのか」を事実として指摘するのは、ハラスメントではなく正当な指導です。単にできていないことを指摘するだけでなく、「どう軌道修正すればいいのか」をヒントだけでもいいので教えてあげると、若手も「上司は自分を成長させようとしてくれている」と実感できるでしょう。

逆に、若手が上司の期待通りかそれ以上の働きをした場合は評価すべきですが、その際は

「褒めて伸ばそう」として、若手を持ち上げすぎることがないよう注意

する必要があります。あまり簡単なことで褒められると、若手は「上司からなめられている」と感じます。「仕事で何を評価するのか」の軸をしっかり持っておきましょう。

以上(2023年8月)

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【簿記の基礎(6)】繰延資産と引当金

書いてあること

  • 主な読者:簿記の基本をマスターしたい新入社員
  • 課題:社会人としての基本である会社のお金の流れを理解したい
  • 解決策:繰延資産と引当金について、それぞれの内容と会計上の取り扱いを理解する

1 繰延資産とは

繰延資産とは、創立費、開業費、開発費、株式交付費、社債発行費、新株予約権発行費などです。他の資産である流動資産や固定資産などは譲渡換金できますが、繰延資産は創立費などの「費」が表すように譲渡換金できる資産ではありません。つまり、

繰延資産は、本来費用であるものを便宜上資産に計上し、一定期間内に償却しながら費用化するもの

です。

一方、会社法では繰延資産とその償却方法が定められていません。そのため、企業は会計慣行に従って繰延資産の処理を行うことになります。次の章で紹介する償却期間は、中小企業の会計に関する指針によるものです。

2 繰延資産の内容と仕訳例

1)創立費

創立費とは、設立事務費用、登録免許税、発起人の報酬など会社設立のために要した費用です。定款諸規則作成のための費用、株式募集のための広告費、株券などの印刷費、設立事務所の賃借料、証券会社の取扱手数料、創立総会に要する費用、設立登記の登録免許税などがこれに該当します。創立費の償却期間は5年以内です。

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2)開業費

開業費は、会社設立後から営業開始までに支出された費用です。開業準備期間中に要した土地・建物の賃借料、広告宣伝費、通信費、交通費、支払利子、給料、保険料、電気・ガス・水道料などがこれに該当します。開業費は開業後5年以内で償却します。

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3)開発費

開発費は、新技術・新組織の採用、資源の開発、市場の開拓などに特別に支出した費用です。特別に支出した費用であるかどうかは、現に生産している製品や採用している技術、現在の販路などに照らして、過去の事例などから判断します。開発費は支出後5年以内で償却します。

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4)社債発行費

社債発行費は、社債募集のための広告費、証券会社の取扱手数料、社債券の印刷費、社債登記の登録免許税など、社債発行のために直接に要した費用です。社債発行費は社債償還期間で償却します。

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5)株式交付費

株式交付費は、増資など新規に株式を発行する場合、株主募集のための広告費、証券会社の取扱手数料、株券や目論見書の印刷費など、株式発行のために直接に要した費用です。また、自己株式の処分費用もこれに含まれます。株式交付費は発行後3年以内で償却します。

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3 引当金とは

企業の一定期間の経営成績を明らかにするためには、会計期間を定めて、これに属する収益とこれに対応する費用を計上する必要があります。また、将来の企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合は、これに備えて健全な会計処理をしなければなりません。

引当金とは、当期以前の事象に起因し、将来の特定の費用または損失で発生の可能性が高く、金額を合理的に見積もることができるもので、その金額が確定していないものについて計上します。以降では、引当金として貸倒引当金について説明します。

4 貸倒引当金の内容と仕訳例

1)貸倒引当金とは

受取手形、売掛金、貸付金などの債権は回収を予定したものですが、その全てが回収できるとは限りません。このため、適正な期間損益を表す決算書の作成に当たっては、この貸し倒れによる損失の危険を、当期の費用として認識する必要があります。

貸倒引当金は、決算期末の金銭債権について、次期以降に発生する貸し倒れによる損失額を見積もって費用計上するものです。

貸倒引当金は、資産勘定内の債権額控除科目として表示されます。このことから「貸倒引当金」は「評価性引当金」と呼ばれています。貸倒引当金は、期末の金銭債権の貸倒損失の見込み額を算定し、その期の経費に計上するものです。

2)貸倒引当金の対象となる金銭債権

税務上、貸倒引当金勘定の繰り入れ対象となる金銭債権には、売掛金、受取手形、貸付金、未収譲渡代金、未収加工料、未収手数料、未収保管料、未収地代家賃、貸付金の未収利子、保証債務を履行した場合の求償権などがあります。

3)金銭債権に該当しない債権

税務上、金銭債権に該当しないものには、次のようなものがあります。

  • 預貯金およびその未収利子、公社債の未収利子、未収配当、その他これらに類する債権
  • 手付金、前渡金などのように、資産の取得代価または費用支出に充てられる金額
  • 保証金、敷金、預け金、その他これらに類する債権
  • 前払給料、概算払旅費、前渡交際費などのように将来精算される仮払金・立替金
  • 仕入割戻金の未収金
  • 商品先物取引または債権先物取引における差金勘定の金額

4)仕訳例

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なお、貸倒引当金を設定する場合、合理的な方法によって取り立て不能見込み額を算定する必要があります。

5)貸借対照表における貸倒引当金の表示例

貸借対照表上で、貸倒引当金は次のように表示されます。

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以上(2023年7月更新)
(監修 税理士 谷澤佳彦)

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【簿記の基礎(5)】償却資産

書いてあること

  • 主な読者:簿記の基本をマスターしたい新入社員
  • 課題:社会人としての基本である会社のお金の流れを理解したい
  • 解決策:会計特有の減価償却という考え方や会計上の取り扱いを解説

1 減価償却費と減価償却累計額

建物、構築物、機械装置、器具備品、車両運搬具などの固定資産は数年以上にわたって使用できるので、購入時の一時の費用とせず、減価償却によって数年以上にわたり費用計上します。一方、土地は固定資産として資産計上するものの、減価(使うほどに価値が減少)するものではないので減価償却はしません。

減価償却費は営業費用の一部として損益計算書に費用計上されます。減価償却累計額は、土地を除く固定資産の減価償却費の累計額です。固定資産(償却資産)取得価額から減価償却累計額を差し引いた価額が、償却資産の未償却残高(帳簿価額)となります。

  • 減価償却累計額=各年度の減価償却額を足し合わせたもの
  • 償却資産の未償却残高=資産の取得価額-減価償却累計額

この記事では「定額法償却」について簡単に説明します。

2 定額法による減価償却

1)定額法による減価償却の例

機械装置を100万円で取得し、耐用年数10年で償却するものとします。定額法による減価償却費は次のように求めます。

  • 各年度の減価償却費=取得価額/耐用年数

この場合、各年度の減価償却費は10万(100万円/10年)で一定です。また、減価償却費、減価償却累計額、未償却残高は次のように推移します。資産は備忘価額1円を残して、10年間で99万9999円を償却します。

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減価償却累計額は、原則的には貸借対照表の有形固定資産を間接的に減額する評価勘定として表示されます。また、減価償却費は損益計算において営業費用として処理されます。

各年度の仕訳は次の通りです。

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2)貸借対照表における有形固定資産と減価償却累計額の表示方法

有形固定資産は、減価償却累計額を科目別間接控除方式で記載します。ただし、それを資産勘定から直接減額する直接控除方式で記載することもできます。この場合は、減価償却累計額を注記しなければなりません。減価償却累計額は、2以上の科目につき一括して記載することもできます。

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3 償却資産の仕訳例

1)建物の取得と除却

当社の会計期間は4月1日~3月31日、XX01年4月1日に建物6000万円を取得し、小切手で支払いました。建物の耐用年数は20年、償却方法は定額法とします。

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2)機械装置の取得と買い換え

当社の会計期間は4月1日~3月31日、XX01年4月1日に機械装置200万円を購入し、小切手で支払いました。機械装置の耐用年数は5年、償却方法は定率法、償却率は0.4とします。

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以上(2023年7月更新)
(監修 税理士 谷澤佳彦)

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