【中堅社員のスピーチ例】なぜマリオは40年も愛され続けるのか?

おはようございます。今日はテレビゲームのキャラクター「マリオ」について話したいと思います。皆さんもご存じですよね。赤い帽子と青いオーバーオール、白い手袋に身を包んだ、配管工の男性です。1985年にマリオを操作して敵をかわしながらクリアを目指すアクションゲーム「スーパーマリオブラザーズ」が発売されて以降、マリオが活躍するゲームソフトは何十種類も作られています。今年はゲームの世界を題材にしたマリオの映画が公開され、アニメ映画の世界興行収入歴代2位を記録したことでも注目を集めました。

なぜ、マリオは約40年もの間、人々に愛され続けているのでしょうか。アクションの爽快感や年々進化するグラフィックの美しさなど、さまざまな理由があるでしょうが、私自身はマリオというキャラクターの「親しみやすさ」によるところが大きいのではないかと思っています。

マリオをご存じの人は分かると思いますが、彼は良くも悪くもヒーローらしくないのです。団子鼻で口ひげを蓄え、体形は小太り。一般的な「格好いい」からはだいぶ外れるビジュアルです。敵に負けたときに、おどけながら「マンマミーア!(何てことだ!)」と叫ぶなどユニークな一面もあり、ヒーローというよりは身近にいそうな面白いおじさんというイメージが強いです。でも、そんな親しみやすいキャラクターが、ゲームでは高い身体能力を活かして縦横無尽にフィールドを飛び回る。そのギャップがとても魅力的なのです。

マリオが活躍するゲームのジャンルは、アクション以外にも、カートレースやスポーツ、パーティーゲームなど多岐にわたります。アクションゲームの枠を超えてソフトが作られ続けるのも、マリオの持つ親しみやすいキャラクターが人々から愛され、「もっといろいろなマリオを見てみたい」と望まれてきたからではないでしょうか。

少々熱くなってしまいましたが、私が皆さんに伝えたかったのは、「長年愛されるものには、必ず愛される理由がある」ということです。私たちの会社も、ありがたいことに何十年と続いてきていますが、そこにもお客さまから愛され続ける理由があるはずです。それは、商品・サービスによるものかもしれませんし、それ以外の当社が持つ魅力によるものかもしれません。

いずれにせよ、大切なのは、時代に合わせて自分たちをアップデートしていくときに、お客さまから愛される、会社の「核」とも呼べる魅力を誤って消さないようにすることです。私たちは、常にお客さまに良い商品・サービスを提供するために、古い技術や考え方を改め、より新しいものを吸収するということを繰り返しています。でも、仮にその過程で会社が持つ本来の魅力を捨て去ってしまったら、当然お客さまは離れていきます。アップデートを継続することは大切ですが、一方で会社の歴史に目を向け、当社が愛され続ける理由を掘り下げていくことも忘れてはならないと思う今日このごろです。

以上(2023年9月)

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画像:Mariko Mitsuda

購買管理の基本「品質・価格・納期(QCD)」を意識しよう

書いてあること

  • 主な読者:購買管理に慣れておらず、基本の考え方を知りたい購買担当者
  • 課題:購買管理を適切に進めるためのポイントがわからない
  • 解決策:QCD(品質・価格・納期)の3つを意識し、過剰な在庫を持たないようにする

1 購買管理の基本はQCDを意識すること

購買管理とは、

企業が生産活動を行う際に、外部から適正な品質の資材を、必要な量だけ、必要な時期までに調達するための一連の活動

です。例えば製造業の場合、原価に占める材料費の割合は約40~60%とされています。企業にとって、購買管理がいかに重要な業務であるかがわかるでしょう。購買管理というと、価格を抑えて調達できれば問題ないと考えるかもしれませんが、それだけでは不十分です。購買管理の基本は、

QCD:Quality(品質)、Cost(価格)、Delivery(納期)

を意識することです。優先順位はQ>D>Cの順が一般的です。品質が最優先で、多少価格が高くても納期が守られるほうを優先するという判断になります。

購買担当者はQCDを理解し、適切な購買先を選択しなければなりません。同時に、QCD以外の技術提案力や法令遵守の状況なども勘案し、必要に応じて購買先にフィードバックして改善を促すことも必要です。購買先を評価する基準の例は次の通りです。

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この記事では、購買管理の基本となるQCDの考え方を紹介します。

2 Quality:品質の考え方

1)過剰品質の防止が重要

品質は、仕様に基づいて合否ラインを決めます。仕様は、寸法・重量・強度・成分などを数値や図面などで示して明確にします。品質を考える上で大切なのは、

過剰品質に陥らないこと

です。例えば、設計上必要な仕様を大幅に上回り、過剰に高い強度の資材を使えば、価格は高くなります。品質が高ければ全て良しとするのではなく、完成品の販売価格に見合った資材を購買します。

また、仮に最適な品質であっても、規格外の寸法など特別な仕様の資材を使えば価格は高くなります。このような場合、仕様を見直して、より低価格で購買できる資材での代替などを検討します。

2)受入検査と源流管理による品質管理

品質管理の方法としては、次の2つがあります。

  1. 受入検査:自社に納品された資材が仕様通りかを確認することで不良品の流入を防ぐ
  2. 源流管理:設計の見直しなども含め、購買先の製造工程を確認することで不良品の発生を防ぐ

源流管理は不良品の発生そのものを防ぐことができるため、品質管理の点では得策に思えます。ただし、購買先の負担が増えるため、その分価格は高くなります。そのため、代替品の確保が難しいなど重要度の高い資材について源流管理を行い、そうでないものは受入検査で品質管理を行うなどのメリハリをつけます。

3 Cost:価格の考え方

品質面の要求を満たしていれば、価格は低いほうがよいです。参考になるのが、コストテーブルです。コストテーブルとは、

重量・寸法・数量などの価格に影響を与える要因と、価格との関係を整理し、表や計算式にまとめたもの

です。

具体的には、購入実績や見積もりなどのデータから作成します。コストテーブルは、自社内で蓄積されていることも多いと思います。ただし、コストは技術革新や市場価格の変動によって都度変わりますので、継続的にコストテーブルを更新するのが不可欠です。

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4 Delivery:納期の考え方

納期は、余裕を持った日程で購買先に確認し、決定します。納期を決めるには、文字通りの期間だけでなく、最適な数量を確保するという視点が必要です。自社としては、在庫リスクをできるだけ避けるため、需要が確実になってから購買先に発注したいと考えます。しかし、これでは購買先が十分なリードタイムを確保できないため、品質の低下や価格の上昇、場合によっては納期遅れが発生します。

最適な数量を算出する際に参考になるのが、「ウィルソンの公式」です。これは、単価と発注費用および在庫保管・維持費用を勘案して、最も価格の低い発注数量(経済的発注数量)を算出するものです。

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例えば、「年間需要数量1000個」「1回当たりの発注費用1000円」「単価500円」「1年間の在庫維持費用が単価の20%」の資材があるとします。この場合、公式から求められる経済的発注数量は次の通りです。

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この製品の場合、最も価格が低くなる発注数量は約141.4個です。この数量を基本にしながら安全な在庫水準など、その他の要因を勘案して発注期間や発注数量を決定します。

以上(2023年9月更新)

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画像:auremar-Adobe Stock

【経理業務の効率化】交通系ICカードを使って経費精算の手間を軽減

書いてあること

  • 主な読者:経理部門の業務効率化を進めたい経営者、経理担当者
  • 課題:会計処理(仕訳)の方法や、税務上のリスクを確認したい
  • 解決策:会計処理ミスを防ぐなら旅費交通費に用途を限定する。利便性を高めるなら用途は限定しない。ただ、個人利用の混在に要注意。

1 経費精算の手間が減って社内の現金も少なくできる

毎月の経費精算が無くなれば……。

会社で働く人であれば、一度は思ったことがあるでしょう。特に外出や出張の多い役員や営業担当者の交通費精算は、多くの手間と時間を要します。また、経理担当者としても、経費精算の提出遅れやミスがあると決算作業が遅れたりして困ります。

そうした中、比較的手ごろに取り組める経費精算の効率化として注目されているのが、

交通系ICカードの利用

です。主なメリットは次の通りです。

  • 経費申請の時間短縮。アプリを利用すれば、交通経路などの検索も不要
  • 経費の請求漏れやミスの防止
  • 小口現金の出し入れ回数の削減

この他、経営者や経理担当者が気になるのは、

交通系ICカードを利用したときの会計処理(仕訳)はどうなるのか?

でしょう。そこで、この記事では交通系ICカードを利用した場合の会計処理を分かりやすく解説しますので、経理業務の効率化を進めるためにご活用ください。

2 会計処理(仕訳)

ここでは、交通系ICカードの利用について、

  • 用途を限定しない
  • 旅費交通費だけに用途を限定する

といったそれぞれのケースについて会計処理を紹介します。なお、以降で紹介する勘定科目は一例なので、貴社の実情に合わせて読み替えてください。

1)用途を限定しない場合の会計処理

1.交通系ICカードに現金をチャージ

現金をチャージしたときは、まだ用途が不明のため、仮払金などの仮勘定で処理します。

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2.支払い

支払った用途に合わせて仕訳を切ります。支払い用途の確認は、利用明細などを基に行います。交通系ICカードの利用明細は駅の自動券売機で出力できますが、交通機関の利用以外の項目は、「物販」とだけ記載されている場合があるので「個々に領収書」が必要です。

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利用明細の中に、社員が私用で購入したものが含まれている場合は要注意です。その場合は、「立替金」勘定に振り替え、後日、社員より現金で精算(給与天引きなど)します。

2)旅費交通費だけに用途を限定する場合

1.交通系ICカードに現金をチャージ

チャージされた現金の用途は旅費交通費に限定されるので、旅費交通費として計上します。

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2.支払い

支払った際は、既に旅費交通費として計上しているので、特段の会計処理は不要です。ただ、支払いが本当に旅費交通費だけなのかを明確にする必要があるので、交通系ICカードの利用明細などはこまめに提出してもらいます。

3.決算時

決算時に交通系ICカードに残高がある場合は、旅費交通費の前払いとして処理するので、前払費用に振り替えます。ここで前払費用に振り替えた旅費交通費は、決算日翌日に反対仕訳が必要になるので忘れないようにしましょう。

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3 税務上の留意点

交通系ICカードを利用すれば経費精算が楽になりますが、うっかり個人利用が混在してしまうことがあるので注意しましょう。もし、交通系ICカードで行った個人利用の支払いを経費として処理してしまった場合、社員であれば給与、役員であれば役員給与として取り扱います。

社員給与であれ、役員給与であれ、いずれの場合もまずは源泉所得税の徴収に関する問題が生じます。また、役員給与の場合は問題が複雑です。税務上、損金算入できる役員報酬は、「定期同額給与」「事前確定届出給与」「業績連動給与」のいずれかに該当するものです。役員の個人利用が判明した場合は損金算入できず、法人税が課されるケースがほとんどです。また、後日税務調査などで指摘を受けた場合は、加算税や延滞税が課されてしまう恐れがあります。最近は、税務調査の際に、交通系ICカードの経理処理に関して指摘を受けるケースが増えているようなので注意しましょう。

以上(2023年9月更新)
(監修 税理士 石田和也)

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【経理人材の育成(5)】今の時代に適した日常のピープルマネジメントとは?

書いてあること

  • 主な読者:経理人材の育成や、経理部全体の効率化に悩む中小企業のマネジメント職
  • 課題:メンバーについて、業務面のみしか把握できていないため、個々人の価値観に即した人材育成が難しい
  • 解決策:メンバーについて業務面・個人面両方を把握するため日常のささいな会話からも情報収集し、人材育成に役立てる。また、指示を伝える際にはホワイトボードなどを使って具体的に伝える

1 人を育てるためには、日常の些細なやり取りが大切

管理職の重要な仕事の1つに、ピープルマネジメントスキルがあります。ピープルマネジメントスキルとは、

メンバー一人ひとりに向き合い、仕事に対するモチベーションやエンゲージメントを向上させ、チーム全体の力を高めるスキル

です。書店に行くと、部下との接し方といった本を多く見かけることからも、おそらく苦手にしている方も多いのではないでしょうか。私の印象では、経理の管理職の皆さんも例外ではなく、むしろ他の職種以上に課題感を感じている方が多い気もします。

そこで今回は、

ピープルマネジメントスキルの中でも、日常のやり取り

を中心に見てみます。評価面談など定期的に行われるかしこまったやり取りももちろん人材育成に影響を与えますが、圧倒的に多くの影響を与えるのは日常のやり取りです。日常の中で、どのような情報を得ておくとメンバーとのコミュニケーションがスムーズになるのか、また、こちらから指示など伝えるときのポイントなどをお話しします。

2 メンバーについて5分間語れるように

突然ですが、

皆さんのチームのメンバー全員について、それぞれどのような人物なのかを5分間ずつ説明をすることはできますか?

管理職の方であれば、業務面での課題については延々と話せる方もいると思います。ただ、これから挑戦してほしいことといったメンバーの弱みが中心になりがちで、すでに達成している強みには目が向いていない方もいらっしゃるのではないのでしょうか。

管理職はメンバーに比べて視野が広く、かつ視座が高いものの、多忙を極めるため、なかなか小さな変化には気付きにくいものです。しかし、メンバー本人の視点に立てば、以前できなかった業務ができるようになること(変化)が、仕事に対するモチベーションに大きく影響してきます。このようなメンバーの変化を把握し、折に触れてコメントするだけでも、思った以上に相手に響きます。私の経験では、小さな事柄ほど、「こんなことまで気が付いてくれた、見守ってくれている」というように好意的に解釈してくれて、効果が高いものです。ぜひ、できるようになったことやプラスの面にも視点を向けるようにしてください。

次に確認していただきたいのは、

業務面と個人面の両方から語られているかということ

です。業務面とは具体的に、入社年次、これまでの配属と業務内容、担当業務を行ううえでの強みと課題、資格といったことです。これらの業務面に触れるのは難しくないと思いますが、業務面だけ押さえるのでは不十分です。

ぜひ個人面についてもコメントできるようになりましょう。例えば、入社理由、家族構成や状況、性格や思考、趣味など大事にしていることです。なぜこれらが大事かといえば、業務の進め方や得意不得意に与える影響が大きいためです。例えば、思考のパターンだけみても、慎重にミスがないことを確認しながら仕事を進めるタイプもいれば、スピード感をもって次々進めることを好むタイプもいます。私たちが行う経理業務にとって正確さもスピードもどちらも大事な要素ですが、メンバーがどちらのタイプなのかによっては、管理職の皆さんの確認すべき項目や仕事の依頼内容も変わるはずです。

また、個人的項目の中でも、入社の理由は必ず押さえておきましょう。なぜこの会社を選んだのか、経理の仕事に就いたのか、を聞くことで、本人の価値観やキャリアの考え方のベースを知ることができます。面談で改まって今後のキャリアへの希望を聞いても、饒舌(じょうぜつ)に語ってくれるメンバーは少ないものです。しかし、なぜここを選んだのかという過去については、本人も大体よく記憶しており、率直に教えてくれるケースが多いのです。まずはそれを聞き出して、今後の業務において少しでも考慮することができれば、本人のやる気アップにも中期的なキャリア形成にもつながり、一石二鳥です。

このように、個人面の情報を知ることは、雑談もできる、人間関係がスムーズになるからというレベルの話ではありません。私は、

管理職の仕事は「チューニング」だと考えています。個人の方向性と会社の方向性を合わせることで、業務の進み具合は大きく変わります。

共通点を見つけ、実行を助けるのがまさに管理職の仕事といえます。最近聞く「パーパス経営」も、個人のパーパス(存在意義)と会社のパーパスを合わせることが重要といわれており、もはや管理職の役割として社会的にも求められているのです。

3 ツールや会話を通じて、メンバーの情報を集める

では、業務面の情報はまだしも、個人面の情報はどのように集めたらいいのか、悩む方もいるでしょう。

1つの手は、性格診断テストの活用です。もし会社で人材育成の目的で受けたものがあれば、その結果を人事部門から入手して見直すといいでしょう。管理職であれば、多くの場合メンバーの診断結果は見られるはずです。おすすめなのは、

その結果を半年に1回程度定期的に目を通すこと

です。そうすることで、最近見かけた気になる行動について、この思考タイプが影響していたのかもとつながりに気が付くことがあります。これらの情報は、日常をより良く理解し、個人の性格に合わせた人材育成を行うためのものです。決して日常と切り離さないことが大事です。

例えば、私が在籍していた日本マクドナルドやウォルト・ディズニーでは、「ストレングスファインダー」という強みを把握する診断テストを部門で受検していました。各人の強みが公開されており、チームマネジメントやプロジェクトマネジメントに活用されていました。どのようなテストでも、参考になる情報は含まれています。

また、テストは大げさかもと感じる方は、会話のなかで情報を少しずつ集めていくのもおすすめです。メンバーの中には、あまり自分からは発言しないタイプもいます。その場合は、例えば、管理職自身が自分自身のことから発言してみるのもいいでしょう。あるいは、新たなメンバーが来るなど皆が自己紹介をする機会を積極的に設けることができれば、そこで改めて聞くこともできます。また、口下手なメンバーと仲がいい他のメンバーと一緒に会話をするのもおすすめです。上司と自分という1対1だと緊張あるいは警戒しますが、社交的なメンバーを巻き込むことで複数人の和のなかで安心して発言してもらえます。

私の場合には、部の定例ミーティングの報告内容に、「今週のすごい!」という項目を入れて、発表してもらっていました。対象は、仕事でもプライベートでも構いません。自身がこの1週間の中ですごいと感じたことを共有してもらいます。2~3カ月続けると、各人の傾向がかなり見えて、その方の特性が理解できるようになりました。新しい職場などでお互いの理解を深めたい場合に特におすすめです。

情報を集める際の全般的なポイントは、

自分の推測をはさまないこと

です。推測ではなく、本人の発言を得てその内容を重視してください。例えば、子供のいる女性には負担が少ないよう経験のある仕事を中心に任せようと、優しい性格の方ほど先回りして考えがちです。そのような配慮を実際に行う前に、ぜひ本人に働き方の希望を聞いてみてください。人間ですので自分の先入観がどうしても推測にはいってしまいがちですが、本人の発言ほど役に立つものはありません。もしかすると、プライベートに関することは聞きにくいと思うかもしれませんが、この例のように業務分担のための質問であれば、その旨を説明したうえで質問することには大きな問題はないはずです。

4 具体的に伝える

ここまでは、メンバー各人の情報を得るというインプットの話でした。管理職の皆さんは、インプットした情報を踏まえて、メンバーに指示などを出す場面も日常では多いはずです。ここからは、アウトプットする際のポイントを見ていきましょう。

まず、

新しい話や不得手そうな話は、対面で伝える

ようにします。もちろん、リモート勤務の場合には最近多いWeb会議でも構いません。要は電話やメールといった相手に伝わる情報(表情や雰囲気など)が少ない手段は避ける方がいいでしょう。また、本人にとって難易度が高いであろう仕事の話をする場合には、相手の反応が容易に分かり、臨機応変に説明を変えられる方法で伝えます。

また、

紙に書いたり、ホワイトボードを活用したりする

こともいい方法です。私の上司は、私に新しい資料の作成を依頼するときには、一緒にホワイトボードの前に立ちイメージを書き込み、さらにスマホで画像データにして共有してくれました。そうすることで、行き違いを防ぎ、何度も見直すことができます。対面と紙・ホワイトボードに共通するメリットは、容易に目に見えることといえます。

他にも、

理解の相違を避けるためには、使う言葉を選ぶこと

も大事です。例えば、「注意する」「意識する」などは、あまり使わない方がいいでしょう。なぜなら、具体的に何をどうすることなのかが分かりにくいからです。実際に本人が対応方法を考えることになってしまうため、そこでずれが生じがちなのです。もしそれを考えさせたいということであれば、会話の中で、具体的にどうやったらいいと思いますか? と質問して、その回答内容をもとに必要なら説明する方がいいでしょう。

さらに、

日常においてメンバーが判断する拠り所を、標語にして伝える

のも有効です。例えば、私の上司は「Quick Win」という言葉を部門の指針として使っていました。Quick Winとは、とりあえずすぐにできることに取り組んで少しでも改善するという意味です。当時、残業が非常に多く、業務上の課題が山積みという状況でした。その中で、完璧な解決を目指すのではなく、少しでも前に進もうということでこの言葉を使っていたようです。メンバーである私は、この言葉を判断基準として、根本的な解決に時間がかかる場合には応急処置を優先するという行動を迷わずとることができました。このように、標語はいちいち指示をしなくても、管理職の皆さんの考え方を届けてくれるのです。

以前に比べて、コミュニケーションの「ブラックボックス」化が進んでいる今、このような「分かりやすさ」は人材育成や業務の進捗に大きく影響すると感じます。

少し前の時代では、上司が電話でやり取りする様子を伺って、こういうことも起こるんだとか、こういう風に伝えればいいんだと、まさに背中を見て学ぶことができました。しかし、もはや電話はそれほどかかってこない時代であり、代わりにチャットなどで1対1でのコミュニケーションが簡単にとれるようになりました。それも同じタイミング(同期)ではなくお互いの都合がいいタイミングで(非同期)というタイムラグもあります。

よく世代による考え方の違いを踏まえてメンバーとコミュニケーションをとるべきといわれます。しかし、私はそれに加えて、コミュニケーションツールが変わったことで、学ぶ機会が大幅に減少していることをメンバーとのやり取りにおいては大いに踏まえる必要があるのではないかと強く感じます。

以上(2023年9月作成)

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画像:Kittiphan-Adobe Stock

クリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)のご紹介

中小企業等を支援する国や自治体の補助金・助成金事業では、雇用・人材開発・IT補助・コロナ支援など幅広いジャンルの支援があります。本レポートでは、おすすめの補助金・助成金について支援の内容や対象条件、申請方法等についてわかりやすく紹介します。

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中小企業の経営者が知っておきたい 経営者のための相続税対策

相続税対策を行うには、まず相続税がどれぐらいかかるかを把握しておくことが必要です。また、相続税対策をするには、その計算をどのようにするかも知っておかなくてはなりません。そこで、経営者にありがちな具体的な問題点をもとに、基本的な相続税計算と、相続税対策のポイントをご紹介させていただきます。

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【朝礼】“効率的じゃない”行動が皆さんを成長させる

今朝は「余白」というテーマで話をします。余白といってもページの余り部分ではありません。仕事の「余白」です。これだけ言われてもピンとこないと思いますから、まずは聞いてください。

今、世の中は「効率化の時代」を迎えています。働き方改革やコロナを背景に広がったリモートワーク、ChatGPTのような生成AIの登場によって、効率化を求める動きはこれまでとは全く違ったレベルで進んでいることを日々実感します。タイムパフォーマンスを略した「タイパ」という言葉が出てくるほどです。

皆さんも日ごろから「効率的に仕事をする」ということを意識しているはずです。効率化とは「無駄」をそぎ落とすことですから、できるだけ直線的に、なおかつ最短距離でゴールに向かうイメージです。ここで問題なのは、「何を『無駄』と定義するか」です。効率的に仕事をすることだけを考え、自分の感情を考慮せずにひたすら仕事をした場合、それは作業に近くなっていくでしょう。確かに早く仕事が終わるかもしれませんが、果たしてそれで皆さんは楽しいでしょうか? あるいは、そんな仕事をしている皆さんは、周囲の人から見て魅力的に映るでしょうか?

私の経営者仲間に、とても魅力的な人がいます。その人は頭が良く、それこそ効率的に仕事をするのですが、「効率化」や「タイパ」などと言っているのを聞いたことがありません。常に「余裕」を持って、本当に楽しそうに仕事をするのです。

この「余裕」が、いうなれば仕事の「余白」なのですが、もう少し掘り下げていきましょう。私の考える余白には、「内側の余白」「外側の余白」の2種類があります。

内側の余白とは、自由な時間や、おおらかな気持ちです。忙しい中でも、自分の趣味に没頭したり、考え事をしたりする時間を確保していれば、定期的に自分と向き合うことができます。そうすると、「私が進むべき道はこれでいいのか?」と考えては足元を固めていくので、めったなことではぐらつかないのです。

外側の余白とは、仕事や家族とは違う人とのコミュニケーションと、そこから得られる気づきです。人間関係にまで効率化を持ち込めば、それは損得感情での付き合いになってしまいます。気遣いをすることもなく、関係も深まりません。しかし、外側に余白があり、異業種の人や自分とは違う年代の人と積極的に交わっていけば、皆さんの、人としての厚みが増していくのです。

「余白は余裕」と言いましたが、余白には無駄なものもあります。しかし、無駄を経験したからこそ気づくこと、得られることがあるのも事実です。常に時間に追われ、ろくに会話もせずに仕事をする人を、誰も魅力的とは思いません。魅力的でなければ周りも本気で話しかけてはきませんから、皆さんの可能性を引き出してくれる人はいなくなります。効率化の時代だからこそ、余白を大切にすることで広がる世界もあるのです。

以上(2023年9月)

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画像:Mariko Mitsuda

【カンタン経済講座】金利が下がると困る人、金利が上がると困る人は誰?/金利のメカニズム

書いてあること

  • 主な読者:金利の仕組みについて詳しくない経営者
  • 課題:円安で困っているが、円安の修正のために金利が上がるともっと困るかもしれない
  • 解決策:金利の本質的な意味と、金利を決める要因を知る。金利が上がった場合の影響は、利払い額が増える、不景気になるなどが想定されるので、備えておくのが理想

1 低金利が招いた円安や物価高、では金利が上がればOKなの?

円安の影響で原材料や燃料の価格が上がり、困っている。そんな経営者の方に知っておいていただきたいのが、現在の円安の最大の要因とされている金利についてです。

現在、政策金利を上げている米国に対して、日本銀行(以下「日銀」)は低金利政策を続けています。円安の最大の要因となっている日米の金利差を縮小させるため、市場の一部には日銀の低金利政策の修正を求める声もあります。このため、市場では、2023年4月に日銀総裁に就任した植田和男氏が、「低金利政策をいつ転換させるか」に関心が集まっています。

つまり、経営者の方が今後、注目すべきことは、

金利が上がると、どのような影響が出るか

だといえるでしょう。

そこでこの記事では、金利のメカニズムと、金利が上昇したときに想定される影響について、カンタンに解説します。

2 金利は、資金需要を基準としたお金の貸し借りの費用

1)金利の上昇は、お金を借りるための費用が増えるということ

金利とは、

資金の借り手が貸し手に支払う利息の、元金に対する割合

を指します。資金の貸し借りの方法などによって、利率、利回り、割引率などの呼び方をしますが、どれも金利に含まれます。金利の本質を分かりやすくいうと、金利は、

資金需要を基準としたお金の価値

と置き換えることができます。つまり、金利が上がるということは、

資金需要が増し、お金を借りる(預ける)際に支払う(受け取る)金額が増えること

をいいます。好景気で企業の投資や個人の消費意欲が高く、資金需要が強いと、金利は上がります。しかし、金利がある程度まで上がると、お金を借りるよりも預けるインセンティブが強まるので、経済活動の停滞や、過熱した経済活動が引き締まることにつながります。

逆に、金利が下がると、お金を借りる(預ける)際に支払う(受け取る)金額は減ります。不景気で企業の投資や個人の消費意欲が低く、資金需要が弱いと、金利は下がります。しかし、金利がある程度まで下がると、お金を預けるよりも借りるインセンティブが強まるので、企業の投資や個人の消費を喚起することにつながります。

2)円安の最大の要因となっている日米の金利差

冒頭でも触れましたが、現在の円安の最大の要因は、日米の金利差といわれています。詳細は後述しますが、日本では経済成長やデフレ脱却を目的として始めた金融緩和策の一環として、低金利政策を継続しています。その一方、米国では物価上昇への対策として金融引き締めへとかじを切り、政策金利を引き上げています。このため、日米の金利差が拡大する事態となりました。

金利が高いということは、貸し手からすると、もうけが大きくなることを意味します。ですから、日本円をベースとした資産を保有している個人や企業は、保有する資産を米ドルベースで投融資するなどの運用を行うほうがもうかると考えて、資産のベースを日本円から米ドルに交換する動きが相次ぐようになります。つまり、米ドルの需要が高まり、ドル高円安に振れるわけです。さらに金利差が拡大すると、低い利率で日本円を借りて、米ドルに交換して運用する動き(円キャリー取引)が広がることで、一層の円安が進むことも考えられます。

こうした動きが広がると、通常は市場の作用によって、日本の金利が上がったり、日本円の買い戻しの動きが出たりといった「揺り戻し」が起きるものです。ですが、日米の金利差が金融政策という「意図的」な事象であり、今後も継続すると市場が判断すれば、さらに円安が進んでいく可能性があります。

3 2種類の金利が決まる要因

1)政策金利と市中金利

一口に金利といっても、金融政策との関わりで見ると、次の2種類に分けることができます。

  1. 政策金利:日銀が金融政策を行う際の指標とし、コントロールする金利
  2. 市中金利(市場金利):市場で金利が決まる金利全般。民間金融機関による貸出金利や預金金利、銀行間のコールレートなどを含む

2)政策金利は日銀がコントロール

政策金利は文字通り、日銀の金融政策によってコントロールされます。一般的に、景気が過熱気味のときには政策金利を上げ、資金需要を抑制します。反対に、景気が低迷しているときには政策金利を下げ、資金需要を喚起します。

市中金利は政策金利をベースに決まりますので、政策金利をコントロールすることで、市中金利も含めた金利全体をコントロールする仕組みになっています。

通常、中央銀行(日本の場合は日銀)がコントロールするのは短期金利のみですが、現在の日本では金融緩和政策の拡大に伴い、短期と長期の金利をコントロールする「イールドカーブ・コントロール(長短金利操作)」を行っています。金利のコントロールに「時間軸」の概念を加え、長期の金利まで低金利に抑えることで、将来的な低金利までコミットする方法です。

現時点での具体的なコントロールの対象は、短期金利については、日銀への当座預金のうち、法定準備預金を超えた「超過準備預金」に対する金利をマイナス0.1%としています。一方、長期金利については、10年物国債を0%程度としています。ただし、2022年12月には10年物国債の金利の変動幅を0%程度プラスマイナス0.25%程度の範囲から、プラスマイナス0.5%程度に拡大しました。

日銀は、政策委員会による「金融政策決定会合」を年に8回開催し、金融政策の方針を決めています。会合の内容だけでなく、会合後の定例記者会見を含め、さまざまな機会に行われる日銀総裁や政策委員の発言は、足元の経済状況を日銀がどう見ているかを示すとともに、今後の金融政策の方向性を見極める上でも、市場の関係者に注目されています。

3)市中金利を決める3つの要因

企業が資金を借り入れる際の金利は、大きく分けて次の3つの要因で決定されます。

  1. (貸し手側の)資金調達コスト
  2. 信用リスク
  3. 金利上昇リスク

資金調達コストは全ての借り手に共通する要因であるのに対し、信用リスクや金利上昇リスクは、個別の借り入れの条件や借り手の信用力によって大きく変わってきます。

1.(貸し手側の)資金調達コスト

貸し手である金融機関が、貸し出しに充てる資金を調達する際のコストです。調達先は日銀、他の金融機関、預金者などですが、いずれも政策金利のコントロールによる影響を強く受けるものなので、基本的に政策金利に連動するといえます。

また、一般的に資金の借入期間が長期になるほど、調達コストが高くなります。今後の経済やインフレ率などの不確定要素が多いため、リスクを織り込む必要があるからです。その他、調達コストには金融機関の人件費や事務経費なども含まれます。

2.信用リスク

貸し手が借り手から資金を回収できなくなるリスクです。信用リスクには大きく分けて、借り手の現時点または近い将来における信用力と、完済に至るまでの信用力の2つがあります。

借り手の現時点または近い将来の信用力を見る数値としては、「既に借り入れている金額」「事業の状況(売上高、利益、業界動向など)」「返済状況」「差し入れる担保」などが挙げられます。いずれも「返済できる能力があるのか」を判断することができる数値といえます。ムーディーズやS&P(スタンダード&プアーズ)といった格付け機関による格付けは、こうした数値を基に、借り手の信用状況をランク付けしたものです。

また、貸し手が取るリスクによっても金利は変わってきます。例えば、消費者金融のように「短時間の審査ですぐに貸し出す」「担保は取らない」といったように、借り手が資金を借り入れる際のハードルが低く、さらに回収不能となるリスクが高い場合などは、金利が10%台後半になることもあります。一方で、住宅ローンのように「審査に時間がかかり、通らない場合も多い」「担保の資産価値が高い」といったように、借り手が資金を借り入れる際のハードルが高く、さらに回収不能となるリスクが低い場合などは、金利が低くなる傾向があり、1%未満で貸し出されるケースもあります。

完済に至るまでの信用力に関しては、借入期間が長期にわたる場合、現時点では返済する能力があっても、将来も引き続き同じように返済できるとは限らないリスクがあります。これは、経済環境の変化に伴う経営状況の悪化、地価下落や天変地異などによる担保価値の下落といった、返済能力を損なうであろう不確定要素があるためです。借入期間が長くなるほど、このようなリスクが高まるため、リスクを織り込んで金利も高くなります。

3.金利上昇リスク

固定金利で貸し出しを行った場合、借入期間が長期になればなるほど、将来金利が上がった際に、貸し手がその金利上昇分の利益を獲得できないというリスクが高まります。貸し手はこのようなリスクに備えるため、固定金利で長期に貸し出す際は、変動金利や短期の貸し出しに比べて金利を上乗せするのが一般的です。

4 金利が上がった場合の影響

ここでは、一般的にいわれている、金利が上がった場合の影響について紹介します。ただし、現在の金利は金融政策によって影響を見ながらコントロールされており、金融政策以外の経済政策を併用することで影響を軽減させることも想定されます。また、例えば「想定していたよりも金利が上がるペースが遅い」など、市場の思惑によっては反対方向に影響する可能性もありますので、紹介することが必ず起きるとは限りません。

1)“金回り”が悪くなり不景気になる

金利と景気は密接に関わっています。好景気で金利がある程度まで上がれば、過熱した景気を抑制する効果が働きます。逆に景気が悪く金利がある程度まで下がれば、企業の投資意欲や個人の消費意欲を喚起する効果が働きます。

従って、金利が上がった(中央銀行が政策金利を引き上げた)場合は、借り入れよりも預金のインセンティブが働きますので、いわゆる“金回り”が悪くなり、景気が停滞に向かう可能性があります。

2)金融機関からの借入金の利払い額が増える

金利が上がるということは、変動金利で融資を受けている場合、利率が上がりますので、利払い額が増えることになります。多額の借り入れを行っており、利払いが負担になるのであれば、一部を早期に返済することを検討してもよいでしょう。逆に余剰資金を預金や国債などで運用している場合は、利子所得が増えることになります。

固定金利で借り入れをしている場合、金利が上がると「得をする」ことになります。極端な例で説明すると、金利が上がったことで、預金をする際の利率が、低金利のときに借り入れた利率を上回るようになったと考えてみましょう。この場合、借り入れの返済は極力遅らせて、返済する分を預金することで、「利ざや」を得ることができます。

一方、これから借り入れを予定している場合は、金利が上がると、従来よりも多い利払いを求められることになります。たとえ固定金利であっても、今後金利が上がるとの懸念があれば、貸し手側は今後の金利上昇リスクを織り込んだ利率を求めます。

3)物価が下落する

前述のように、金利が上がると、景気が減速すると同時に市中に出回るお金が減り、人々が「今はお金を使うよりも、預金しておいたほうが使えるお金が増えるので得だ」と考えるようになるため、物価が下落することになります。

金利と物価に関しては、逆に物価が金利に影響することもあります。例えば、インフレ(物価上昇)懸念が出てきた場合、金利は上がります。貸し手側は、「今後もインフレが進む見通しなので、返済までに通貨の価値が下がる分も利子で埋め合わせなければならない」と判断するからです。また、固定金利で借り入れをした後にインフレが進行した場合、借り手側は実質的な返済額の(価値の)減少になります。

金利をコントロールすることで、物価を操作する金融政策も行われています。米国が利上げを進めている理由は、物価の上昇を抑えることにあります。金利を上げることで景気は減速に向かいますが、インフレを抑制する効果を得ることができます。

一方、日銀の植田総裁は、物価上昇の見通しが大きく変われば、金融政策の変更につながってくるとの発言をしています。

4)株価が下落する

金利が上がることで景気が減速し、企業の業績にマイナスに影響するとともに、投資家など資金保有者が投資先を株式から預金などへとシフトさせる動きが進みます。このため、金利が上がると、一般的に株価は下落する方向に向かいます。

5)円高になる

これまで触れてきたように、現在の円安は、日本の金利が米国など海外に比べて低いことに起因しています。日本国内の金利が上がると、円安から円高に転じる可能性があります。輸入型産業や原材料および燃料などを輸入に多く依存している企業にとってはプラスですが、輸出型産業などにとってはマイナスになります。

以上(2023年9月更新)

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【カンタン経済講座】「攻めどき」「守りどき」の判断材料になる外部環境の知識/景気循環のメカニズム

書いてあること

  • 主な読者:経営判断の際に外部環境も検討するが、景気の動向について詳しくない経営者
  • 課題:企業の「攻めどき」「守りどき」の判断材料として、景気の動向を把握したい
  • 解決策:景気循環の仕組みを知り、景気の動向に関するレポートや統計・調査を活用する

1 経営判断に欠かせない、景気の動向の把握

経営判断をする際に欠かせない要素の一つが景気です。「攻めどき」と「守りどき」を見誤らないために、景気の動向をしっかり把握したいものです。考え方は経営者次第ですが、例えば、

  • 好景気が到来しそうなので、波に乗って攻めに転じる
  • 不景気だからこそ、次の一手を打っておく
  • 景気が減速に転じそうなので、新たな投資は控えておく

といった判断をするには、少なくとも景気の動向を客観的に読み解いておく必要があります。

この記事では、景気が循環するメカニズムを解説し、景気を判断する上で参考になるレポートと統計・調査を紹介します。

2 景気が循環する4つの要因

1)不景気と好景気は繰り返す

景気は「不景気→好景気→不景気→好景気……」を繰り返し、これを「景気循環」と呼びます。景気循環を分解すると、「谷→拡張→山→後退→谷」という経済のサイクルがあります。この「谷→山」の拡張期間が好景気、「山→谷」の後退期間が不景気に当たります。

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景気が拡張しているときは、経済の状態が「需要≧供給」となるので、供給側は増加する需要に対応するために供給量を増やします。しかし、需要にはいつか限界(=景気の「山」)が到来し、需要増を見込んで増やした供給量が過剰になります。供給が過剰になることで物価が下落し、かつ経済も後退するようになります。そして、最終的には不景気の段階(=景気の「谷」)に至ります。

逆に言えば、供給調整が進み、かつ需要が創出されるような状態が生じることで、景気が回復・拡張に向かうのです。

戦後の日本経済における景気循環は次の通りです。

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2)景気はなぜ循環するのか

企業の生産活動・在庫状況・設備投資など、景気循環はさまざまな要因によって生じます。経済学ではその期間によって景気循環を次のように区分しています。

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各景気循環の期間を見ると約40カ月(キチンの波)から約50~60年(コンドラチェフの波)までと幅広く、ひとくくりにできるものではありません。これは、景気循環の基準を何に置くかによって循環の期間に差があるためです。各循環の概要は次の通りです。

1.キチンの波(短期波動、在庫循環)

キチンの波は、企業の生産活動や在庫調整に注目した景気循環で、経済の短期的なサイクルとほぼ一致するため、一般的に景気を判断する際はキチンの波を参考にします。米国の経済学者であるジョセフ・A・キチンが提唱したので、この名が付いています。

2.ジュグラーの波(中期波動、設備投資循環)

ジュグラーの波は、企業の設備投資に注目した景気循環で、設備の設置から更新の期間に当たる約10年(中期)を基準としています。フランスの経済学者であるクレマン・ジュグラーが提唱したので、この名が付いています。

3.クズネッツの波(建築循環)

クズネッツの波は、住宅・商業施設・工場などの建造物の耐用年数や、人が生まれてから成人になるまでの人口動態の変化の期間(約20年)に注目した景気循環です。米国(ロシア生まれ)の経済学者であるサイモン・クズネッツが提唱したので、この名が付いています。

4.コンドラチェフの波(長期波動)

コンドラチェフの波は、約50~60年という産業革命クラスの大規模な技術革新が生じる期間(長期)に注目した景気循環です。この景気循環の節目を見ると、第一次世界大戦など比較的大規模な戦争が起きていることが多く、戦争が循環のサイクルに影響を与えていると考える経済学者もいます。旧ソビエト連邦(ロシア生まれ)の経済学者であるニコライ・ドミートリエヴィチ・コンドラチェフが提唱したので、この名が付いています。

3 景気を判断する上で参考になるレポートと統計・調査

景気の動向を判断するのは簡単ではありませんので、政府および日本銀行(日銀)の分析や、各種統計情報を参考にするとよいでしょう。

1)政府の月例経済報告

政府が毎月公表する、景気に関する公式見解をまとめた報告書です。景気の現状と先行きに関する見解などをまとめています。個人消費、民間設備投資、生産・出荷・在庫、企業収益・業況判断、雇用情勢など分野ごとの見解をまとめている他、海外経済に関する景気の動向についても見解をまとめています。

■内閣府「月例経済報告」■

https://www5.cao.go.jp/keizai3/getsurei/getsurei-index.html

2)日銀の経済・物価情勢の展望(展望レポート)

日本銀行(以下「日銀」)は、政策委員会による「金融政策決定会合」で経済・物価見通しなどを点検するとともに、金融政策運営の考え方を整理したレポートを公表しています(年4回。原則1、4、7、10月)。景気動向を含めた経済や物価の現状およびリスク要因を踏まえ、経済の先行きなどに関する基本的見解を示しています。

■日本銀行 金融政策「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」■

https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/index.htm/

3)内閣府経済社会総合研究所の景気動向指数

内閣府経済社会総合研究所が毎月公表(おおむね2カ月前の数値を公表)している指標です。生産、雇用などさまざまな経済活動で、景気に敏感に反応する重要な指標の動きを統合して作成しています。

景気の山の高さや谷の深さ、拡張や後退の勢いといった景気変動の大きさや量感を測るコンポジット・インデックス(CI)と、改善している指標の割合を算出することで景気の各経済部門への波及の度合い(波及度)を測るディフュージョン・インデックス(DI)があります。

いずれのインデックスも、先行指数(景気の動きに先行して動く指標)11、一致指数(景気の動きに一致して動く指標)10、遅行指数(景気の動きに遅れて動く指標)9の合計30の指数を基に算出しています。指数の基になっている個別の統計情報も参考になるでしょう。

■内閣府「景気動向指数」■

https://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/di/menu_di.html

4)景気の動向を判断するのに役立つその他の統計・調査

1.国民経済計算(GDP統計)

内閣府経済社会総合研究所が公表している国際基準に基づいた数値で、年に8回の「四半期別GDP(国内総生産)速報」と、年に1回の「国民経済計算年次推計」があります。GDP成長率や、民間・家計・公的機関の需要および輸出入の大まかな動向、国民資産・負債残高など、国内マクロ経済の基本的な数値を見ることができます。

■内閣府「国民経済計算(GDP統計)」■

https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/menu.html

2.全国企業短期経済観測調査(日銀短観)

日銀が四半期ごとに公表している数値で、大手・中小企業の業況・需給・価格・在庫水準・投資・人員・資金繰りなどに関する回答結果を数値に置き換えたものです。さまざまな経営者の景況感を見ることができ、特に大企業製造業者による業況判断は、景気に関する先行指数になるといわれています。

■日本銀行 統計「短観」■

https://www.boj.or.jp/statistics/tk/index.htm/

3.景気ウォッチャー調査

内閣府が毎月公表している数値で、タクシー運転手や小売店の店長など景気動向に敏感な立場の人が見た景況感を指数化したものです。他の指標には表れにくい、生活実感に基づいた皮膚感覚の景気動向を捉えるのに便利で、「街角景気」とも呼ばれています。

■内閣府「景気ウォッチャー調査」■

https://www5.cao.go.jp/keizai3/watcher/watcher_menu.html

4.消費者物価指数(CPI)

総務省統計局が毎月公表している数値で、世帯の消費構造を基準に、家計に関わる財やサービスの小売価格を総合した物価の変動に関する指数です。中でも、「生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数」は、一時的な要因(国際情勢、天候など)の影響を受けにくいことから、経済の実態に即した物価動向を把握しやすいとされています。

■総務省統計局「消費者物価指数(CPI)」■

https://www.stat.go.jp/data/cpi/

5.法人企業景気予測調査

財務省財務総合政策研究所が四半期ごとに公表(調査は内閣府経済社会総合研究所と共同で実施)している数値で、企業から見た景況感、企業の現状などを総合的に調査したものです。企業活動の実態を捉えることができます。

■財務省財務総合政策研究所「法人企業景気予測調査」■

https://www.mof.go.jp/pri/reference/bos/

6.消費動向調査

内閣府経済社会総合研究所が毎月公表している数値で、消費者の意識や動向を「消費者態度指数」として指標化しています。抽出した世帯への、暮らし向きや物価の見通し、主要耐久消費財の保有・買い替え状況などのアンケート調査に基づき作成されています。

■内閣府経済社会総合研究所「消費動向調査」■

https://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/shouhi/menu_shouhi.html

7.労働経済動向調査

厚生労働省が四半期ごとに公表している数値で、労働時間・労働者の過不足・雇用調整・採用計画などの雇用環境を調査したものです。消費者心理に直結する雇用情勢の変化を見ることができます。

■厚生労働省「労働経済動向調査」■

https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/43-1.html

8.家計調査

総務省統計局が毎月公表している数値で、家計の収入・出費の内訳、貯蓄・負債の状況などを調査したものです。世帯ごとの家計の状況を基に、消費者動向をつかむことができます。

■総務省統計局「家計調査」■

https://www.stat.go.jp/data/kakei/

9.鉱工業指数(IIP)

経済産業省が毎月公表している数値で、製造業などの生産・出荷・在庫・生産能力・稼働率などを指数化したものです。製造業全体および個別の業種における大まかな動向を見ることができます。

■経済産業省「鉱工業指数(IIP)について」■

https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/

10.機械受注統計調査

内閣府経済社会総合研究所が毎月の実績と四半期ごとの見通しを公表している数値で、設備用機械類の受注状況を調査したものです。設備投資の動向を見ることができます。

■内閣府経済社会総合研究所「機械受注統計調査報告」■

https://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/juchu/menu_juchu.html

11.経済産業省生産動態統計調査

経済産業省が毎月と年に1回の年報を公表している数値で、個別製品ごとの生産・出荷・在庫状況を調査したものです。より特定の業種に絞った動向を見ることができます。

■経済産業省「経済産業省生産動態統計調査」■

https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/seidou/

12.第3次産業(サービス産業)活動指数

経済産業省が毎月公表している数値で、情報通信業・金融業・サービス業など第3次産業の経済活動の状況を指数化したものです。個別サービス業の業態における大まかな状況をつかむことができます。

■経済産業省「第3次産業(サービス産業)活動指数」■

https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/sanzi/

13.商業動態統計

経済産業省が毎月公表している数値で、商業を営む事業所・企業における販売活動の現状などを調査したものです。業態や取扱商品別に見た小売業・卸売業の動向をつかむことができます。

■経済産業省「商業動態統計」■

https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/syoudou/

14.サービス産業動向調査

総務省統計局が月次調査および年に1回の拡大調査を公表している数値で、サービス業を営む事業所・企業の売上高や従業員数といった現状などを調査したものです。業種別に見たサービス業の動向をつかむことができます。

■総務省統計局「サービス産業動向調査」■

https://www.stat.go.jp/data/mssi/

以上(2023年9月更新)

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【債権回収(1)】これから倒産企業が増える?万一に備えて知っておくべき債権回収の流れ

書いてあること

  • 主な読者:与信管理から債権回収までの一連の流れを知っておきたい経営者
  • 課題:債権回収はさまざまで特徴も異なるため、適切な方法が分からない
  • 解決策:基本的な流れを把握し、状況に応じて対策を選択する。素早い判断が不可欠

1 「いざ」となってからではもう遅い?

「ない者からは回収できない」というのが債権回収の基本です。「いざ、債権を回収しなければ!」という事態に陥ったとき、相手が債務を履行できるとは限りませんから、そうなる前の与信管理、契約書のチェック、債権管理がとても大切です。

ところで、皆さんは与信管理から債権回収に至るまでの流れを把握しているでしょうか? 債権回収は経験がないとイメージしにくいものですが、そのリスクが顕在化したときの影響は大きく、経営者なら基本を押さえておかなければなりません。

そこで、この記事では債権回収の基本的な流れを紹介します。それぞれの詳細は別の記事で解説していますのでご確認ください。ポイントは、

どのような相手と、どのような条件で契約し、どのような管理をしていたか

ということです。

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2 与信管理

多くのビジネスでは、売掛金などの売上債権が発生します。そこで、万一の場合に備えて取引金額の上限や決済サイトを決めますし、担保の設定をすることもあります。これらの条件は、債権回収ができないリスクと、それによって受ける被害を考慮して決定します。つまり、相手が「信用」できるのかという点に尽きるため、「信用リスク」と呼ばれます。そして、この条件なら“信用”して取引できると判断した場合、信用を相手に与えるのが「与信」です。

与信管理の基本、チェックリスト、リモート時に行う与信管理の基本については、次のコンテンツで紹介しています。

3 契約締結

1)必ず定めるべき3つのこと

「信用できる相手だから」といって、契約書を交わさずに取引していないですか? これはビジネスを進める上でとても危険なことです。口約束しかしていない状態でお金のトラブルになったら、双方が「言った、言わない」を主張してもめてしまいます。裁判に発展した場合も、債権回収の根拠を立証するのが難しく、敗訴してしまうことさえあります。そのため、必ず契約書を交わすことが不可欠で、さらに、

  1. 期限の利益喪失:支払期日前でも債務履行を促せるようにしておく
  2. 約定解除:一定の事態が生じた場合に、契約を解除できるようにしておく
  3. 担保権:回収不能となった売掛債権を担保で回収できるようにしておく

の3つについて定めましょう。この3つを定める理由については、次のコンテンツで紹介しています。

2)公正証書にして強制執行認諾文言を定める

公正証書とは、公証役場で公証人に作成してもらう証書(公文書)です。単なる公正証書では私的な契約書と法的効力は変わらず、訴訟になった場合、証明力が強い程度です。

公正証書に私的な契約書よりも強力な効力を持たせるためには、公正証書に「強制執行認諾文言」を定める必要があります。強制執行認諾文言とは、債務を履行しない場合は、「強制執行」を受けてもやむを得ないという条項です。強制執行とは、判決等によって債務の履行が決まっているのに相手がそれに応じない場合、裁判所に「強制執行の申立て」をして、国家の強制力によって判決等で命じられた内容を実現することです。つまり、強制執行認諾文言があれば、強制的に債権回収ができるのです。公正証書については、次のコンテンツで紹介しています。

4 債権管理

契約を締結した後も安心せず、日ごろから「債権管理」を徹底しましょう。債権管理とは、滞りなく売掛金を回収するための業務全般のことで、具体的には「請求書の発行や入金チェック、未入金の場合は催促」などの一連の流れとなります。債権管理の一般的な内容については、次のコンテンツで紹介しています。

5 債権保全

1)担保の設定

万一、取引先から売掛金が回収できないような場合に備えて「債権保全」を講じます。債権保全とは、債権を確実に回収するための施策であり、基本的な方法が「担保の設定」となります。担保には物的担保や人的担保があります。担保については、次のコンテンツで紹介しています。

2)担保が設定できない場合

取引先に担保を設定する適切な資産がないなどの場合、他の方法で債権保全を講じなければなりません。こうした場合に、具体的にどのような方法で債権保全を図っていくべきなのかを紹介します。いざという時になれば、「仮差押え」という、裁判所が関与して債務者の不動産などを仮に差し押さえるなどの方法もあります。しかし、そこまで状況が悪化していなければ、もう少し穏便に、債権回収のリスクを移転する、つまり取引信用保険を利用するなどの方法があります。担保が設定できない場合の対策については、次のコンテンツで紹介しています。

3)手形に関する注意点

約束手形は2026年をめどに廃止されるといわれますが、足元ではまだまだ使われており、そうした中で不渡りなどの問題も生じています。「危ない手形」の典型は、

「1.借用書代わりの手形」「2.回り手形」「3.融通手形」「4.偽造手形」

であり、適切な債権保全を講じなければなりません。危ない手形の見分け方などについては、次のコンテンツで紹介しています。

6 内容証明郵便

期日が過ぎているのに売掛金を支払ってくれない取引先がある場合、状況にもよりますが、「内容証明郵便」を送り、法的手段を見据えつつプレッシャーをかけることが効果的です。内容証明郵便とは、郵便認証司によって郵便物の内容を証明された郵便物です。内容証明郵便そのものに法的な効力はありませんが、後に裁判になった場合に、いつ、誰に対して、どのような内容の郵便物を送ったか、相手はそれをいつ受け取ったのかなどが明確になり、また、自己が有する債権の内容(契約の名称、契約日、品名、残金、期限など)について具体的に記載をして請求をすれば、法律上、履行の「催告」となり、時効の完成を猶予する方法にもなります。それに、「万一、支払いに応じていただけない場合は、訴訟等の法的措置を検討せざるを得ません」と記載することで、「こちらは訴訟も辞さないですよ!」という強い意志を示すこともできます。内容証明郵便については、次のコンテンツで紹介しています。

7 取引継続などの判断

取引先からの支払いが滞り、こちらの催促にも応じない場合、いよいよ経営が危ないかもしれません。債権保全と回収の方法は幾つかありますが、取引先が法的な破産手続きを取ると、認められなくなるものもあります。また、取引先に債権を持つのは自社だけではないはずですから、債権回収は「早い者勝ち」ともいえます。この段階になったら、「取引を継続するか、仮差押えをするかなどを速やかに判断し、行動に移すこと」が重要です。取引継続などの判断については、次のコンテンツで紹介しています。

8 任意回収

1)訴訟によらない債権回収

債権回収の1つの分かれ目は法的手段を取るか否かですが、この判断をする際は、

スピード回収、コスト、回収可能性

の3つを考慮してください。訴訟には時間とコストがかかりますが、通常、時間がたつほど債権回収は難しくなります。また、取引先に資産がなければ、コストをかけたわりに多くを回収できません。このような場合は、訴訟によらない債権回収を検討することになります。具体的には、担保権の実行、仮差押えや仮処分のような民事保全などとなります。それぞれのメリットとデメリットなどについては、次のコンテンツで紹介しています。

2)経営者個人からの債権回収

取引先に債務不履行があったとき、会社が払えないなら、経営者から回収をしたいと考えてしまいます。特に相手が中小企業だと、経営者と会社が一体と感じられるので、なおさらです。

原則として、会社と経営者は別の法人格であり、会社の債務を経営者個人が負うことはありません。ただし、経営者が連帯保証人になっている、実質的に株式会社と経営者が一体とみなされるなど、4つのケースでは経営者から債権回収ができます。「経営者個人」から債権回収が可能となる4つのケースについては、次のコンテンツで紹介しています。

9 支払督促

内容証明郵便などで催促をしても相手が債務を弁済してくれない場合、「支払督促制度」を利用するのも1つの方法です。支払督促制度とは、簡易裁判所の裁判所書記官から、債務者に金銭等の支払いを命じる督促状(支払督促)を送ってもらう制度です。内容証明郵便とは違って裁判所からの督促となるため、相手に相当のプレッシャーをかけることができます。支払督促制度については、次のコンテンツで紹介しています。

10 民事調停

民事調停とは、簡易裁判所が間に入り、当事者間での話し合いを試みる手続です。相手との関係性を維持しながら、あくまでも話し合いで解決したい場合に有効です。通常、調停は裁判官と一般市民から選ばれた調停委員とともに進められます。調停が成立した場合、調停調書が作成されます。作成された調書は、判決等と同じく、債務名義となります。債務名義とは、「強制執行」をする根拠となる文書であり、「債権債務の存在を公に認めるもの」です。民事調停については、次のコンテンツで紹介しています。

また、債務者しか申立てることができないものに、特定調停があります。特定調停とは、債務の返済ができなくなる恐れのある債務者(以下「特定債務者」)の経済的再生を図るため、特定債務者が負っている金銭債務に係る利害関係の調整を行う手続です。債務者である相手が特定調停を申し立てた場合、それに応じるか否かを判断する知識は必要と思いますので、基本については、次のコンテンツで紹介しています。

11 即決和解

即決和解とは、「裁判上の和解」の一種で、 当事者が民事上の争いについてある程度の合意がある場合に、裁判所へ申立てをして裁判上での和解を行う制度です。訴訟の提起前に行われるので「裁判前の和解」とも呼ばれます。ちなみに、示談など裁判所が関与しないものを「裁判外の和解」といいます。即決和解については、次のコンテンツで紹介しています。

12 少額訴訟

少額の債権をスピーディーに回収したい場合、「少額訴訟手続」を利用するのも1つの方法です。少額訴訟手続とは、簡易裁判所において、60万円以下の金銭債権の支払いを求める訴えについて、原則として1回の審理で争い事を解決する特別な手続です。もともとは市民同士の小規模な争いを迅速に解決するために設けられた制度であり、基本的には、法廷ではなく、ラウンドテーブルで手続が行われることも特徴です。少額訴訟制度については、次のコンテンツで紹介しています。

13 通常訴訟

相手から任意に支払いを受けることが難しい場合、裁判所の判決ではっきりした決着をつける(和解もある)のが訴訟です。訴訟であれば、裁判所が争点となった債権債務の存在や金額を判決によって判断します。

ただし、本格的に訴訟を提起する場合、弁護士に依頼して準備する必要があり、コストがかかります。また、個別の事案にもよりますが、訴訟提起から判決に至るまで1年以上かかることもあります。その間に相手の財産状況が悪化したり、財産を隠匿されたりすると、勝訴したとしても回収できなくなる恐れがあります。そうした事態に備え、訴訟を提起する場合は、仮差押えや仮処分なども利用しておくことが考えられます。訴訟のメリットやデメリット、基本的な流れについては、次のコンテンツで紹介しています。

14 強制執行

裁判で勝訴をしても、相手が判決に従って弁済するとは限りません。そのような場合、「強制執行」手続きを経る必要があります。強制執行とは、判決によって債務の履行が決まっているのに相手がそれに応じない場合、改めて裁判所に「強制執行の申立て」をして、国家の強制力によって判決で命じられた内容を実現することです。強制執行は、民事執行法で定められた「民事執行」の1つで、

  • 金銭執行:金銭の支払いを目的とする
  • 非金銭執行:物の引渡しを目的とする等、金銭の支払い以外を目的とする

に分類され、対象となる財産や目的などによって細分化されます。強制執行については、次のコンテンツで紹介しています。

15 倒産手続

会社が債務超過に至った場合、その手続は、

  • 私的整理:裁判所を利用しない
  • 法的整理:裁判所を利用する

に大別されます。法的整理はさらに、

  • 清算型:会社の清算を目的とする
  • 再建型:会社の再建を目的とする

に大別されます。私的整理は当事者の話し合いです。一方、法的整理はそれが清算型であれ、再建型であれ、取引先がこれを申立てれば、自社の債権は大きな影響を受けます。そのため、それぞれの倒産手続の基本を押さえておく必要があります。倒産手続については、次のコンテンツで紹介しています。

以上(2023年9月更新)
(監修 リアークト法律事務所 弁護士 松下翔)

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画像:Mariko Mitsuda