法人クレジットカードとは? 作るメリットや個人カードとの違いを解説【経費精算にお困りの経営者必見!】

毎日のように発生する経理業務。次のような悩みを持つ経営者や経理担当者、営業担当者は多いでしょう。

  • 経営者「会社の経費も全て個人カードで立て替えていて、プライベートなものか会社のものか区別できない」
  • 経理「社員が持ってくる経費精算伝票は申請内容のミスが多くてイライラする!」
  • 営業「営業に出たいけど、経費精算が終わらない。誰か代わりにやってくれないかな。いっそ精算するのをやめちゃおうかしら」

こうした悩みを解消してくれるのが、法人クレジットカード(以下「法人カード」)です。法人カードとは法人や個人事業主に発行されるクレジットカードで、接待交際費や交通費の支払い・公共料金や備品の購入などビジネス上の支払いに利用できます。また、詳細は後でご紹介しますが、法人カードには主に次のようなメリットがあります。

  • 経費精算業務を効率化できる
  • キャッシュフローにゆとりが持てる
  • 公私の区別ができる
  • 振込手数料の削減やポイント利用などで経費を削減できる

この記事では、全国約200人の経営者に聞いた「法人カードの利用状況」や、法人カードと他の決済カードとの違い、法人カードのメリットなどを解説していきます。

1 経営者約200人に聞いた法人カードの利用状況

りそなCollaborare事務局では、経営者196人に対して法人カードの利用状況などに関するアンケートを実施しました。法人カードがどのくらいの割合で利用され、その利用目的はどういうものなのか、法人カードを利用している経営者の傾向が見えてきます。

【調査概要】
調査時期:2023年4月14日〜4月20日
調査方法:インターネットリサーチ
調査対象:会社経営者・役員、196人
アンケートの出所:りそなCollaborare事務局(日本情報マート)

1)法人カードの保有状況

 すでに「法人カードを保有している」経営者は62.2%でした。残りの37.8%が法人カードを「保有していない」という結果になりました。

法人カードの保有状況の画像です

2)創業から何年目に法人カードを作ったか

法人カードを作った時期は、「創業10年目以降」が48.4%と最も高く、「創業時から3年目未満以内」の23.8%が続きました。

法人カードを作った時期の画像です

3)現在所有の法人カードを選んだ理由

今持っている法人カードを選んだ理由としては、「銀行におすすめされた」が33.6%と最も高く、「ブランドイメージ」の28.7%、「年会費が安い」の23.0%が続きました。

法人カードを選んだ理由の画像です

4)法人カードの使い道

法人カードをどのような支払いに使っているか、多い順に並べてみました。
最も多い支払いは、「出張旅費」の33.6%、次いで「備品購入費」の19.7%、「接待交際費」の14.8%の順番になりました。

法人カードの使い道の画像です

5)法人カードを持っていてよかったことは?

法人カードを持っていてよかったことは、「とにかく経費精算が楽」が52.5%で最も高く、「公私の区別ができる」の39.3%、「利用明細をデータ保存できる」の38.5%が続きました

法人カードを持っていてよかったことの画像です

アンケートの回答では、62.2%の経営者が法人カードを持っていました。法人カードを持っていると、「とにかく経費精算が楽」という意見が多かったようです。法人カードをご検討されたい場合は、次のアドレスから商品内容の確認やお申し込みができます。

●りそなJCB法人カード商品詳細(商品を詳しく見る)

2 法人カードと他の決済カード(個人カード・デビッドカード)との違い

1)法人カードと個人カードの違いとは

法人カードと個人カードとの違いは、契約者が法人か個人かという点です。法人カードは、法人と経営者個人の支払い能力などをもとに総合的な審査を経て、カードが発行されます。また、法人カードは複数枚発行できるため、社員分のカードを発行し、それぞれが法人カードで立替や仮払いなどを行うことも可能です。
法人カードと個人カードの違いをまとめると、次のようになります。

法人カードと個人カードの違いの画像です

2)法人カードとビジネスデビットカードとの違いとは

法人カードとよく対比されるデビッドカードとの大きな違いは、引き落としのタイミングです。デビッドカードは決済時に口座から即時に引き落される即時払い式ですが、法人カードは決まった期日に銀行口座から引き落とされる後払い式です。
また、デビッドカードが口座残高の範囲内でしか利用できないのに対して、法人カードは限度額の範囲内で利用でき、また限度額については増枠することも可能です。
なお、デビッドカードの場合、ガソリンスタンドや高速道路の料金、飛行機の機内販売など、利用できないお店やサービスがあります。
デビットカードと法人カードの違いをまとめると、次のようになります。

デビットカードと法人カードの違いの画像です

3 法人カードのメリットと押さえておきたい留意点

法人カードを利用するメリットと、押さえておきたい留意点について紹介します。

【メリット1】経費精算業務を効率化できる

法人カードの大きなメリットは、経費精算が楽になる点です。法人カードで支払うことによって、社員が自分で立て替えたり、仮払金を使う必要がなくなります。また、振込をカード払いに変えることで振込に係る手間も削減できます。
実際に、先ほどご紹介した図表5のアンケート「法人カードを持っていてよかったこと」の回答で最も多かったのは、「とにかく経費精算が楽」(52.5%)でした。
また、カード商品によっては、法人カードの利用データを経費精算システムや会計ソフトと連携でき、入力ミスがなくなります。図表5のメリットに関するアンケートでは、「利用明細をデータ保存できる」(38.5%)が3番目に多い回答となりました。

【メリット2】キャッシュフローにゆとりが持てる

カード会社によりますが、法人カードの引き落としは、カードご利用日の翌月から翌々月となります。手元の現金が少ないときに、売掛金の入金が数カ月後となると、経費などの支払いが難しくなる場合があります。しかし、法人カードで支払いをすれば、支払いを後払いにできるため、資金繰りにゆとりが持てます。

【メリット3】公私の区別ができる

法人カードを使うことで、会社の支払いと個人の支払いがしっかり区別でき、社員の不適切な利用や不必要な経費の利用防止にもつながります。経営者も、仕事の経費と個人の生活費の区別をはっきりさせることができます。

【メリット4】振込手数料の削減やポイント利用などで経費を削減できる

法人カードで支払先をまとめることで、オフィス用品や公共料金といった多岐にわたる支払先への振込がなくなり、振込手数料を大幅に削減できます。
また、カード支払いにすることで、ポイントをためることができます。例えば、還元率0.5%の場合、年間約1200万円の経費をカード支払いにすることで年間6万円相当のポイントを獲得することができます。ポイント交換により備品を手配できればさらに経費の削減につながります。

イラストです

次に、法人カードを導入する上で押さえておきたい留意点を紹介します。

【留意点1】審査があり、発行に時間がかかる場合がある

法人カードの申し込みは入会審査があります。多くの法人カードは、個人カードよりも審査に時間がかかります。審査期間は、カード会社によって異なりますが、一般的に申し込んでからカードが届くまで2~3週間かかります。

法人カードの審査基準はカード会社によって異なりますが、最近では、後述する「りそなJCB法人カード」のように、創業1年未満のスタートアップ企業でも申し込みができる法人カードもあります。

お申し込みはこちら

【留意点2】年会費が発生する

法人カードの利用には、年会費が発生します。一部に年会費無料や初年度無料の法人カードもありますが、年会費が無料か有料かで選ぶのではなく、年会費に見合ったサービスが得られるかといった点も考慮する必要があります。
ただし、年会費は経費として処理ができることも覚えておきましょう。

【留意点3】リボ・分割払いが利用できない

多くの法人カードでは、一括払いが基本となっています。そのため、個人用のクレジットカードでリボ払いや分割払いなどを多く利用している場合は、その感覚を一旦忘れ、「法人カードではリボ払いや分割払いはできない」という前提で法人カードを作るようにしましょう。

4 個人事業主・中小企業・スタートアップ企業をサポートする「りそなJCB法人カード」とは

すでにビジネスを展開している企業だけでなく、これからビジネスを始めるスタートアップ企業も幅広くサポートしているのが「りそなJCB法人カード」です。
さまざまな優待サービスの他、1枚で複数のETCカードを発行できたり、会計ソフトと連携ができたりするなど、企業の規模やニーズに合わせて最適なカードを選択できるのが特徴です。
りそなJCB法人カードが選ばれる理由は、特に次の2つです。

1.WEBで法人カードの申し込みが可能

りそな銀行のウェブサイトから申し込むと、必要書類が指定された住所へ発送されます。所定事項を記載し返送すれば、3週間ほどでカードがお手元に届きます。

2.創業1年未満の企業でも申し込みが可能

法人カードの申請は、一般的には創業から1年以上の期間を過ぎることが求められますが、りそな銀行で口座を開設していれば、りそなJCB法人カードを申し込めます。
※審査の結果ご入会のご希望にそえない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

なお、りそな銀行では、WEB上で法人口座を開設することができます(法人口座開設WEB申込)。りそな銀行に口座をお持ちでない法人の方はこちらをご確認ください。

●りそな銀行「法人口座開設WEB申込」

他にも、りそなJCB法人カードは利用に応じてポイントがたまり、次のような付帯サービスがあります。

りそなJCB法人カードの詳しいサービス内容やお申し込みは、次のURLで見ることができます。

●りそなJCB法人カード商品詳細(商品を詳しく見る)

お申し込みはこちら

●関連記事はこちら
創業間もない企業も使いやすい「法人向けデビットカード」のメリットとは

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2023年4月26日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

【電子メールでのお問い合わせ先】
inquiry01@jim.jp

(株式会社日本情報マートが、皆様からのお問い合わせを承ります。なお、株式会社日本情報マートの会社概要は、ウェブサイト http://www.jim.jp/company/をご覧ください)

戦国時代に活躍した武将・立花道雪。多くの優秀な部下を育て慕われた彼の教育方針が分かる一言とは?

他の家に仕えておくれを取った士卒がいれば、わしの方にきて仕えるがよい。うって変わって逸物にしてやろう

立花道雪は戦国時代、九州の大名である大友家の柱石として、73歳で病死するまでこれを支え続けた武将です。若い頃に落雷に遭って下半身不随になるも、士卒に輿(こし)を担がせて戦場で指揮を執ったほどの勇猛な人物で、戦場で味方が劣勢のときにも「わしを敵のただ中にかつぎ入れろ。もし命が惜しくば、そのあとで逃げろ」と号令して士卒たちを奮起させ、常勝を誇ったといいます。

道雪は常々、「本来弱い士卒というものはいないものなのだ。もし弱い者がおれば、その人が悪いのではなく、その大将が本人を励まさないことに罪がある」と語り、冒頭の言葉を述べました。

道雪は部下を逸物(すぐれた者)に育てるため、何より部下を大切に扱い、愛情を注ぐという方法を採りました。戦場で活躍できていない部下には、「あなたが弱い人間でないことは分かっているから、焦らなくていい」と励まし、武具などを与えます。また、客を招いた席で若い部下が粗相をした際は、「(この者は)ただいま不調法いたしましたが、軍に臨めば火花を散らして戦います。槍(やり)は家中随一の腕です」とフォローします。道雪からこうした扱いを受けた部下たちは、道雪のために何とか役に立ちたい、命も惜しくないと思い、逸物に育っていったのです。道雪が育てた部下の支えを得て、道雪の養子である立花宗茂は、江戸時代に九州・柳河藩の藩祖となりました。

現代でも、会社に貢献できない社員は、本人の能力や努力不足といわれがちです。ですが、道雪のようなリーダーは、異なった見方をします。

社員を活躍させてあげられないのは、社員自身よりも、トップや上司、さらには会社そのものに問題があるのではないかと考えるのです。そのような視点に立っていれば、上司が部下に、「どうしてパフォーマンスが悪いのか」と責める前に、まずは「どうして自分は部下のパフォーマンスを上げられないのか」を問うはずです。

社員が組織になじめなかったり、仕事の内容が入社当初の想定と違っていたりして、会社を去っていくというのは、ビジネスではよくあるケースです。しかし、それを当たり前と捉えて「たまたま辞めた社員が会社に合わなかっただけ」と結論づけるよりも、「この会社には、その社員を活躍させられるだけのキャパシティーがなかった」と考えて社内体制を見直していったほうが、次の採用に活かせますし、会社の成長にもつながります。

むしろ、自分たちに都合の良い人材しか活かせない会社には、今後人が集まらなくなる恐れがあります。国内では人口減で労働人口が減る上に、国際化の進展によって海外で働くハードルが下がりつつあるからです。

SDGsの原則である「誰一人取り残さない」という言葉も、道雪の視点と重なる部分があるといえます。世界の流れは、取り残された側ではなく、取り残した側が“しっぺ返し”を受ける方向に進んでいるといえるかもしれません。

出典:「名将言行録:現代語訳」(岡谷繁実原著、北小路健、中澤恵子訳、講談社、2013年6月)

以上(2023年3月)

pj17607
画像:freehand-Adobe Stock

【朝礼】小さな時間を縮めて大きな仕事をしよう

皆さん、毎日お仕事お疲れ様です。仕事をしていると、「もっと時間があったらいいのに」と思うことも多いでしょう。日々の仕事をこなすための時間もそうですし、何か新しいことに取り組もうと思うと、そのための時間を作り出すのはさらに大変です。

1日は、みな平等に24時間です。それを26時間に増やすような魔法はありません。毎日の時間が決まっている以上、時間の使い方を変えていくしかありません。同じ時間でより多くの仕事をこなすためには、一つひとつの仕事にかかる時間を短縮するのが一番です。例えば、仕事にかかる時間を1割減らすことができれば、その積み重ねは大きな違いになるはずです。

「今でも目いっぱい仕事をしているのに、そんなことは無理だ」と思う人もいるかもしれません。けれども、考えてみてください。いつも10分かけて歩いている道を9分で歩くことは不可能だと思いますか? それくらいなら、少し早歩きすればできると思いませんか? では仕事ではどうでしょう。10分かけてする作業を9分で仕上げることはできませんか? 1割と考えると難しいように思えますが、10分の作業を9分で仕上げると考えると、少し動作を速くすればできることだと思います。

10分でやっている作業を9分でできるようにすれば、1時間で6分の余裕が生まれ、8時間の就業時間で48分にもなります。

時間に余裕を持つことで、ゆったりと行動できます。それで今までよりも一段深く考えをめぐらせ、仕事に一工夫を加えてよりよいものができれば最高でしょう。また、仕事が早く終われば、その分自分の時間を持つこともできます。

では仕事にかかる時間を1割減らすにはどうしたらよいでしょうか。もちろん、手抜きで時間を短縮するのはいけません。

私は、難しく考えず、簡単にできることから始めればいいと思います。例えば、整理整頓を心がけ、よく使う資料は目立つ場所に保管したり、ファイルに見やすく名前を付けたりといったことです。また、同じような作業はできるだけまとめて行うことや、仕事にとりかかる前に終了時間を決めておくことも時間短縮に効果的です。

今言ったようなことは、基本的なことで誰もが知っているといえばそれまでですが、十分に実践できていないことも多いのではないでしょうか。こうした小さな努力の積み重ねで、仕事の質を落とさずに時間を短縮することができるはずです。

皆さんには今日これから、自分の仕事時間を1割短縮する努力をしてほしいと思います。最初は意識しないとできないかもしれませんが、習慣づければ自然と時間短縮ができるようになります。そうして一つひとつの行動でちょっとずつ時間を短縮していけば、貴重な時間を生み出し、よりよい仕事ができるようになるでしょう。

以上(2023年4月)

pj16565
画像:Mariko Mitsuda

法人税が安くなるお得な制度4選~賃上げ、DX、設備投資をした会社は読まないと損をする?

書いてあること

  • 主な読者:2023年度に賃上げや新たな投資を考えている経営者
  • 課題:税制改正は毎年行われるが、改正年度の翌年度から実施されるものもあり、今期(2024年3月期)に適用できる税制かどうか分かりづらい
  • 解決策:税制改正により要件が緩和された「所得拡大促進税制」、適用期限の延長された「DX投資促進税制」「中小企業投資促進税制」「中小企業経営強化税制」について、適用対象や手続きの確認をする

1 税制改正大綱の内容はいつから実行される?

年末年始に税制改正大綱が公表されると、その内容が今すぐに実行されそうに思えます。しかし実際はそのようなことはありません。税制改正大綱の内容を実行するための法令はその後に審議されますし、そもそも税制改正大綱には、

その翌年度の改正だけでなく、翌々年度の改正

も含まれているからです。

となると、経営者や実務担当者は税制改正大綱の内容がいつから実行されるのかを意識しておく必要があります。そういう意味でいえば、直近の税制改正大綱の内容はどうなのでしょうか。皆さんが注目している税制改正が実はまだ先のことだったら困りますよね。

そこで、この記事では、近年話題になっているさまざまな税制の中から、

中小企業が得をする法人税の税制

について紹介していきます。具体的には、

賃上げをした、DXを進めた、設備投資をした

という中小企業の経営者や実務担当者は確認してみてください。

2 賃上げをしたら「所得拡大促進税制」

所得拡大促進税制は、中小企業が前年度よりも給与などを増やした場合に、その増加額の一部が控除できる制度です。通常要件に加え、上乗せ要件AとBがあり、それぞれの要件を満たすごとに、一定の税額控除率が加算されます(最大の税額控除率40%)。

画像1

例えば、給与の合計額を前年度から500万円増やした場合、75万円(=500万円×15%)を法人税額から控除できます(通常要件のみを満たした場合のケースです)。税額控除なので、75万円分、納税額が少なくなります。ただ、上限金額が決まっており、税額控除前の法人税額の20%までしか控除できません。

この税制の適用を受けるためには、法人税の申告の際に、確定申告書に、税額控除の対象となる雇用者給与等支給増加額、控除を受ける金額と、その金額の計算に関する明細書を添付する必要があります。

3 DX投資をしたら「DX投資促進税制」

DX投資促進税制は、クラウド化やシステム導入などデジタル環境の設備投資をした場合に、その投資額の一部を税額控除か、特別償却(通常の減価償却費のかさ増し)の選択適用ができる制度です。要件は投資内容の要件(デジタル要件)と投資の効果等に関する要件(企業変革要件)の2要件を満たす必要があります。

画像2

例えば、1000万円のDX投資をして税額控除を選択した場合、30万円(1000万円×3%)を法人税額から控除できます(法人税額の20%限度内である場合)。

なお、投資額の上限(300億円)と下限(国内売上高の0.1%以上)が決められているため、注意が必要です。

この税制を受けるためには、事前に計画申請と適合確認(この課税の特例に適合するかどうかの確認)申請し、国から認定を受けなければなりません。申請準備から認定までおおよそ6カ月はかかるといわれているので、早めの相談が必要です。法人税の申告の際には、確定申告書に、確認書の写し、認定書の写し、認定計画の写しを添付する必要があります。申告後も、毎事業年度終了後3カ月以内に事業実施の報告書を提出しなければなりません。

4 一定の設備投資をしたら「中小企業投資促進・経営強化税制」

1)中小企業投資促進税制

中小企業投資促進税制は、生産性の向上を目的に一定の設備投資やソフトウェアを購入した場合に、その投資額の一部を税額控除か、特別償却のいずれかを選択して適用できる制度です。ただし、資本金3000万円超の中小企業については特別償却しか適用できません。

画像3

例えば、生産性の向上を目的に200万円の機械装置を購入して、税額控除を選択した場合、14万円(200万円×7%)を法人税額から控除できます(法人税額の20%限度内である場合)。

なお、購入した設備ごとに購入金額や重量などの下限が決められています。また、一部の業種(電気業、水道業、鉄道業、航空運輸業、銀行業、映画業を除く娯楽業など)は、対象外とされているため、自社の業種が指定事業に含まれているか確認してみましょう。

この税制の適用を受けるためには、事前の申請などは必要なく、法人税の申告の際に、確定申告書に一定の書類を添付することで適用を受けることができます。

1.特別償却の場合

  • 中小企業者等または中小連結法人が取得した機械等の特別償却の償却限度額の計算に関する付表
  • 適用額明細書

2.税額控除の場合

  • 中小企業者等が機械等を取得した場合の法人税額の特別控除に関する明細書
  • 適用額明細書

2)中小企業経営強化税制

中小企業経営強化税制は、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づいて新たな設備投資をした場合に、税額控除か即時償却のいずれかを選択して適用できる制度です。要件は4つのタイプに分かれており、それぞれに定められた要件を満たす必要があります。また、法人税の申告の際に、確定申告書に一定の書類(別表や適用額明細書)を添付することで適用を受けることができます。

画像4

 例えば、150万円のシステム投資を行って税額控除を選択した場合、15万円(150万円×10%)を法人税額から控除できます(法人税額の20%限度内である場合)。

なお、中小企業投資促進税制と同様、購入した設備ごとに購入金額に下限が決められているため、注意が必要です。また、一部の業種(電気業、水道業、鉄道業、航空運輸業、銀行業、映画業を除く娯楽業など)は、対象外とされているため、自社の業種が指定事業に含まれているか確認するようにしましょう。

この税制を受けるためには、事前に経営力向上計画を作成し、国から認定を受けなければなりません。申請準備から認定までおおよそ3カ月はかかるといわれているので、早めの相談が必要です。また、法人税の申告の際に、確定申告書に一定の書類(認定計画の申請書および認定書の写しや、別表、適用額明細書)を添付しなければなりません。

以上(2023年4月)
(執筆 南青山税理士法人 税理士 窪田博行)

pj30162
画像:ELUTAS-Adobe Stock

経営者の学び直し~「株主の権利」を知れば会社経営が安定する

書いてあること

  • 主な読者:株主総会などを前に、株主の権利を改めて確認しておきたい経営者
  • 課題:「自益権」と「共益権」というが、具体的な内容が分からない
  • 解決策:基本を確認し、必要に応じて会社法を確認したり、専門家に相談したりする

1 主な株主の権利

1)自益権と共益権

株主の権利は自益権と共益権とに大別されます。

自益権とは、

剰余金の配当を受ける権利、残余財産の分配を受ける権利など、会社から直接経済的な利益を受ける権利

です。全ての自益権は1株の株主でも行使できる単独株主権です。

共益権とは、

株主総会の議決権を行使する権利、取締役等の違法な行為の差止めを請求する権利など、会社の経営に参与し、あるいは会社の経営を監督是正する権利

です。共益権は他の株主の利益にも影響するため、単元未満株主を除き1株の株主でも行使できるもの(単独株主権)と、一定の議決権数または総株主の議決権の一定割合の議決権もしくは、発行済株式の一定割合の株式を有する株主のみが行使できるもの(少数株主権)とに分かれます。

以降で、主な単独株主権を見ていきましょう。

2)株主の投下資本回収に関する権利

  • 剰余金の配当を受ける権利(会社法第105条第1項第1号)
  • 譲渡制限株式の譲渡を承認しない場合の譲渡制限株式の買取を請求することができる権利(会社法第138条第1号ハ、第2号ハ)
  • 残余財産の分配を受ける権利(会社法第105条第1項第2号)

3)株主総会に関する権利

  • 株主総会において株主総会の目的である事項につき議案を提出することができる権利(会社法第304条)
  • 株主総会において特定の事項について質問をすることができる権利(会社法第314条)
  • 株主総会における議決権(会社法第105条第1項第3号、第308条第1項)

4)取締役等の不正行為に対応するための株主の権利

  • 取締役が会社の目的の範囲外の行為その他法令もしくは定款に違反する行為をし、またはするおそれがある場合において、当該行為によって当該会社に著しい損害が生じるおそれがあるときに、当該取締役に対して当該行為をやめることを請求することができる権利(違法行為の差止請求・会社法第360条)
  • 取締役が会社の目的の範囲外の行為その他法令もしくは定款に違反する行為をし、またはするおそれがあると認めるときに、取締役会の招集を請求することができる権利(取締役会招集請求・会社法第367条第1項)
  • 募集株式の発行もしくは自己株式の処分が法令もしくは定款に違反する場合、または募集株式の発行もしくは自己株式の処分が著しく不公正な方法により行われる場合において、株主が不利益を受けるおそれがあるときに、募集株式の発行または自己株式の処分をやめることを請求することができる権利(募集株式発行差止、自己株式処分差止請求・会社法第210条)
  • 募集新株予約権の発行が法令もしくは定款に違反する場合、または募集新株予約権の発行が著しく不公正な方法により行われる場合において、株主が不利益を受けるおそれがあるときに、募集新株予約権の発行をやめることを請求することができる権利(新株予約権発行差止請求・会社法第247条)
  • 会社の設立、株式(会社成立後)の発行、自己株式の処分、会社の合併・分割など、会社の組織に関する行為の無効を、訴えをもって主張することができる権利(組織に関する行為の無効の訴え・会社法第828条各号)

5)会社の有する情報を取得するための権利

  • 株主総会議事録等の閲覧または謄写を請求することができる権利(会社法第318条第4項、第319条第3項)
  • 株主の権利を行使するために必要があるときに、取締役会議事録等の閲覧または謄写を請求することができる権利(会社法第371条第2項)
  • 計算書類等の閲覧、謄本または抄本などの交付を請求することができる権利(会社法第442条第3項)
  • 株主名簿、新株予約権原簿の閲覧または謄写を請求することができる権利(会社法第125条第2項、第252条第2項)

2 主な少数株主権

1)少数株主権とは

少数株主権とは、一定の議決権数、総株主の議決権の一定割合の議決権または発行済株式の一定割合の株式を有する株主に認められる権利です。ここでは、非公開会社における主な少数株主権とその内容を見ていきます。便宜上、取締役会設置会社を前提とします。

なお、以下の議決権割合や株式数を下回る割合や数を定款で定めた場合には、それに従うことになります。また、次の株主の権利は、それぞれ原則の規定を紹介するものであり、法令や定款の定めにより、その権利に制限がなされている場合があります。

主な少数株主権とその割合

2)株主総会検査役の選任申立権(会社法第306条)

総株主(完全無議決権株式の株主を除く)の議決権の100分の1以上の議決権を有する株主は、株主総会に係る招集の手続きおよび決議の方法を調査させるため、当該株主総会に先立ち、裁判所に対して、検査役の選任の申し立てをすることができます。

3)議題提案権(会社法第303条)および議案の要領の通知請求権(会社法第305条)

取締役会非設置会社では、株主総会の議題提案権は単独株主権とされますが、取締役会設置会社における株主の議題提案権は少数株主権となります。次のどちらかに該当する株主は、取締役に対し、一定の事項を株主総会の目的とすることを請求することができます。

  • 総株主の議決権の100分の1以上の議決権を有する株主
  • 300個以上の議決権を有する株主

また、取締役会設置会社における議案の要領の通知請求権(株主総会の目的である事項につき自らが提出しようとする議案の要領を株主に通知することを請求することができる権利)も少数株主権です(会社法第305条)。

なお、株主の「議案提出権(会社法第305条)」は単独株主権のため、株主であればその権利行使が可能です。

4)株主総会の招集請求権(会社法第297条)

総株主の議決権の100分の3以上の議決権を有する株主は、取締役に対し、株主総会の目的である事項および招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができます。

5)取締役等による責任の一部免除への異議(会社法第426条第7項)

取締役が2人以上あり、かつ監査役設置会社である会社などにおいては、定款に定めをおくことにより、責任を負う役員等である者を除いた取締役会決議(取締役非設置会社であれば責任を負う役員等である者を除いた取締役の過半数の同意)によって一定の額を限度として、役員等の会社に対する損害賠償責任を免除することができます(会社法第426条)。

取締役会が定款の定めに基づき、役員等の責任の一部免除の決議をしたときでも、総株主(責任を負う役員等である者を除く)の議決権の100分の3以上の議決権を有する株主は、異議を述べることができ、その場合、会社は定款の定めに基づく役員等の責任の一部免除をすることはできません(会社法第426条第7項)。

なお、最終完全親会社等(会社法第847条の3第1項、第2項)のある会社においては、取締役等の特定責任(会社法第847条の3第4項)の追及について、別個の定めが設けられています。

6)業務および財産調査のための検査役の選任申立権(会社法第358条)

株式会社の業務の執行に関し、不正の行為または法令・定款に違反する重大な事実があることを疑うに足りる事由があるとき、以下のどちらかに該当する株主は、当該会社の業務および財産の状況を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任の申し立てをすることができます。

  • 総株主(完全無議決権株式の株主を除く)の議決権の100分の3以上の議決権を有する株主
  • 発行済株式(自己株式を除く)の100分の3以上の数の株式を有する株主

7)会計帳簿の閲覧請求権(会社法第433条)

次のどちらかに該当する株主は、当該請求の理由を明らかにすることにより、会社の営業時間内はいつでも会計帳簿またはこれに関する資料の閲覧、もしくは謄写を請求することができます。

  • 総株主(完全無議決権株式の株主を除く)の議決権の100分の3以上の議決権を有する株主
  • 発行済株式(自己株式を除く)の100分の3以上の数の株式を有する株主

会社は、会社法第433条第2項の閲覧拒否事由に該当すると認められる場合を除き、これを拒むことができません。

8)会社の役員の解任の訴え(会社法第854条)

役員の職務の執行に関し不正の行為または法令もしくは定款に違反する重大な事実があったにもかかわらず、当該役員を解任する旨の議案が株主総会において否決されたときなどにおいて、次のどちらかに該当する株主は、当該株主総会の日から30日以内に、訴えをもって当該役員の解任を請求することができます。

  • 総株主(当該請求に係る役員である株主などを除く)の議決権の100分の3以上の議決権を有する株主
  • 発行済株式(当該請求に係る役員である株主などが有する株式を除く)の100分の3以上の数の株式を有する株主

なお、この場合、株主総会における解任議案の否決等が訴訟要件であるため、訴えを提起しようとする株主は、当該議案を株主総会に付議することなどが必要となります。

9)会社の解散の訴え(会社法第833条)

会社が業務の執行において著しく困難な状況に至り、当該会社に回復することができない損害が生じもしくは生じるおそれがある場合、または会社の財産の管理もしくは処分が著しく失当で、当該会社の存立を危うくする場合において、それぞれやむを得ない事由があるときは、次のどちらかに該当する株主は、訴えをもって会社の解散を請求することができます。

  • 総株主(完全無議決権株式の株主を除く)の議決権の10分の1以上の議決権を有する株主
  • 発行済株式(自己株式を除く)の10分の1以上の数の株式を有する株主

業務の執行において著しく困難な状況とは、それぞれが議決権の50%ずつを保有する株主派閥の対立により、新たな取締役の選任も不能となったケースなどがあります。会社の財産の管理または処分が著しく失当とは、取締役に会社の存立に関わる非行があるにもかかわらず、同人が過半数の議決権を保有するため、その是正が期待できないようなケースなどがあります。

この制度は、主に非公開会社等、株式に流通性のない会社の少数株主が損害を防止するための最後の手段として位置付けられています。

以上(2023年4月)
(監修 リアークト法律事務所 弁護士 松下翔)

pj60061
画像:Yuricami-Adobe Stock

ものづくり中小企業の夢! 「開放特許」を使ってコスパよく自社製品を開発した2社の事例

書いてあること

  • 主な読者:自社製品を作るという夢をかなえたい、ものづくり中小企業の経営者
  • 課題:自社だけでは、新しい技術を開発する時間、人、技術がない
  • 解決策:大企業や大学、研究機関などが公開している未活用の「開放特許」を利用する

1 「開放特許」を使って自社製品を開発しよう!

多くのものづくり中小企業にとって、自社製品の開発は1つの夢といっても過言ではないでしょう。時間やコストを掛け、失敗を乗り越えた先に広がる世界には、新たな可能性が広がっています。この夢をお手伝いする手段として紹介したいのが「開放特許」です。開放特許とは、

大企業や大学、研究機関などの特許権者が公開している未活用の特許

です。特許権者は、未活用の特許を第三者に使用してもらうことでライセンス収入を得ることなどを目的としているため、前向きにこちらの提案を聞いてくれる可能性があります。

この記事では、

  • 開放特許を活用するメリット
  • 売れる特許技術の見つけ方
  • 佐々木工機の「真空吸着ツールスタンド」
  • マイスの部品定数供給装置「パーツカウンター」
  • 事業化するまでの流れ

について紹介していきます。

2 開放特許を活用するメリット

特許庁「特許行政年次報告書 2022年版」によると、国内特許約166万件の半数に当たる約80万件が未活用特許です。これらのうち、「市場規模が合わない」「経営方針が変わった」などの理由で未活用になっている特許が、開放特許として公開されることがあります。こうした開放特許をうまく活用することができれば、中小企業は次のようなメリットを享受できるかもしれません。

  • 開発期間の短縮や費用の削減ができる
  • 大企業の技術者から特許技術を直接学べる
  • 大企業の特許技術を活用することで製品の信用・ブランド力が向上する
  • 大企業との協業関係が深まり、新しい事業展開の可能性も広がる

大企業にとっても、放っておけば何も生み出さない開放特許で、ライセンス収入が得られます。

3 売れる特許技術の見つけ方

1)開放特許データベースから探す

開放特許は、独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)が運営している「開放特許データベース(以下「データベース」)」から探すことができます。データベースの登録件数は約2万3000件です(2023年2月時点)。

膨大な開放特許から自社が活用できそうな情報を見つけるのは大変ですが、データベースでは、複数の開放特許を組み合わせてパッケージ化したアイデアを含めて紹介していたり、開放特許の活用事例集を紹介していたりします。

■独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)「開放特許データベース」■
https://plidb.inpit.go.jp/

2)地元の産業振興団体に相談する

データベースから探す以外に、地元の産業振興団体に相談する方法もあります。東京都知的財産総合センターの製品化コーディネーターである木村勝己さんは、

「各都道府県にある発明協会や自治体の産業振興課、産業振興団体、商工会・商工会議所、地元の金融機関などの産業支援機関に『特許技術を活用した新製品を開発したい』と相談するほうが、データベースから探すより近道になる場合が多い。なお、各支援団体の専門職員の一部は、自治体特許流通コーディネーターとして特許庁の認定を受け、相互の情報交換や新規開放特許情報などを得ながら活動しています」

と言います。また、各都道府県の産業振興に関わる部署には、特許庁から専門の職員が派遣されているケースもあるので、その人につなげてもらうことも有効だそうです

同センターは東京都内の中小企業と大企業とのマッチング支援をしています。マッチング支援では、数十社参加から数社参加のセミナー・マッチング会の開催や、特許技術を使えそうな技術を持った中小企業を大企業にピンポイントで引き合わせる活動などをしています。

こうしたマッチング会・セミナーは、多くの産業支援機関が自治体ごとに開催しています。新しい自社製品を開発するためにも、このような場を交流活動の一環として考え、定期的に参加することも一策です。

ピンポイントでの引き合わせは、担当者の知識と経験による目利き力だと木村さんは言います。

「まず特許を見て、その技術を使って製品化できそうな中小企業を探し、コンタクトしていきます。あの会社なら製品化できそうだと判断するのは、製品化コーディネーターの目利き力によります」

日頃から交流している企業であれば、「あの企業ならこの技術を活用できそうだ」と思いつくこともあるそうです。

次章からは、開放特許を活用して、自社製品を開発し、事業化に成功した2社を紹介します。

4 佐々木工機の「真空吸着ツールスタンド」

1)会社と開放特許の概要

1.会社名:佐々木工機(神奈川県川崎市、従業員6人)

アルミやステンレス、プラスチックなどの素材を取り扱い、各種機械装置の設計から製作・組み立て・調整・据付などを取り扱っています。特に、空気を動力とした機器の制御(空圧制御)を得意としています。

■佐々木工機■
https://www.sasaki-koki.co.jp/index.htm

2.開発製品:「真空吸着ツールスタンド」(2015年発売)

佐々木工機は、ミツトヨの特許「真空吸着ツールスタンド」を活用し、さまざまな素材の定盤(じょうばん)に固定できる測定用ツールスタンド(以下「ツールスタンド」)を製品化しました。

従来の定盤は鉄製のものが多く、マグネットで固定して測定していましたが、鉄製はさびや温度によって体積が変化するなどの欠点があり、これらの欠点のない石やセラミックの定盤が増えてきています。そのため、マグネットに代わる、固定できる測定器が求められていました。

製品化したツールスタンドは、空気圧で吸着するため、鉄製以外の定盤にも固定することができ、測定の効率を向上させました。

左はミツトヨの特許「真空吸着ツールスタンド」を活用した佐々木工機の製品。右は真空吸着ツールスタンドに比べ排気音を静音化し、固定器具として用途を広げた新製品「Air-fix(画像中央~画像下部)」 (写真提供:佐々木工機)

2)インタビュー(代表:佐々木政仁さん)

1.マッチングに至る経緯

2013年に川崎市の職員と川崎市産業振興財団の知的財産コーディネーターから「ミツトヨさんの真空吸着技術は、空圧技術を持つ御社なら活かせるのではないか」と紹介されたのがきっかけです。

資料を見て、技術的には作れると思いましたが、売れるのかどうかは、分かりませんでした。それでも、ミツトヨさんと協業できることは宣伝になるし、技術交流にもつながるので、当社として大きなメリットになると思い、契約を締結しました。

2.試作の繰り返し

契約後はひたすら試作品作りです。試作品を作り、実験し、それを特許の発明者に見ていただきました。そこで、さまざまな指摘を受けて、修正していくことで、製品をブラッシュアップしていくコツを学びました。

3.大企業と組むメリット

完成に至るまで、ミツトヨさんとは、さまざまな意見交換をしました。そうしたやり取りのなかで信頼関係が深まり、ツールスタンドをミツトヨさんの展示会に一緒に展示してもらったり、ミツトヨさん側から新しく取得した特許を使った製品開発の相談をいただいたりして、ついには佐々木工機・ミツトヨの両社でアイデアを出して作った技術を共同で出願するまでになりました。

また、川崎市内でのミツトヨさん初の開放特許活用事例ということで、川崎市長の記者会見で発表してもらったことでマスコミにも取り上げられ、大企業と組むメリットは予想以上に大きいと実感しました。

4.開放特許を活用したメリット

ものづくりをしている中小企業の共通の夢は、自社製品の開発だと思います。当社はもともと図面通りに金属を加工する会社でした。図面通りには加工できるけれど、図面あっての事業です。そうではなく、自社でコンセプトから製品開発、販売価格まで決め、収益を得ていくのは、中小企業にとってなかなか難しい。開放特許はものづくり中小企業の夢をかなえる1つのツールなのだと思います。

5 マイスの部品定数供給装置「パーツカウンター」

1)会社と開放特許の概要

1.会社名:マイス(神奈川県川崎市、従業員6人)

工業製品の生産に使用される組立機、検査装置、部品供給装置などの自動化装置を作成しています。特に、顧客の要望に応じて開発、設計から組立、配線、制御、据付までを、オーダーメイドで対応する高い技術力が強みです。

■マイス■
https://www.mice1991.co.jp/

2.開発製品:部品定数供給装置「パーツカウンター」(2015年発売)

マイスは、日産自動車追浜工場(神奈川県横須賀市)で試作された特許技術である小型部品定数供給装置の原理を活用して、金属ボルトの部品定数供給装置「パーツカウンター」を製品化しました。

自動車メーカーの生産ラインでは、従来から作業員が車種に応じて必要な数のボルトやナットを取り出していたため、作業の滞りやボルトの締め忘れなどが発生していました。しかし、同製品を導入することで、取りこぼしがなくなり、部品を数える手間などが削減でき、ある自動車メーカーでは、約20%の生産性向上につながったそうです。

同製品は日産自動車に限らず、トヨタ自動車、SUBARU、いすゞ自動車などの自動車会社にも多数導入されています。2017年には、樹脂(プラスチックファスナー)用のパーツカウンターも発売しました。

日産の部品定数供給装置を活用して開発したパーツカウンター。左が「金属ボルト用」、右が「樹脂 (プラスチックファスナー) 用」(写真提供:川崎市産業振興財団)

2)インタビュー(代表:秋山昌宏さん)

1.マッチングに至る経緯

川崎市の知財マッチングイベントで知的財産コーディネーターに紹介され、日産自動車さんと個別面談を行いました。その後、日産自動車追浜工場の自動車生産ラインで部品供給装置の試作品を見たところ、改良も製品化もできると思いました。製品は日産自動車さんに購入してもらえば販路も確保できると思い、契約を締結しました。

2.試作の繰り返し

当社にとって自動車業界との取引は、今回が初めてだったので、原理通りには作れるけれど、自動車ラインがどういうもので、製品はどの場所に設置し、どれくらいの大きさであると一番いいのかも分かりませんでした。そこでヒアリング、試作品開発、テストを何度も繰り返しました。

3.大企業と組むメリット

10人に満たない中小企業は、市場調査もできないので、技術はあっても製品をどう売っていいか分かりません。そのため、大企業の知名度と信用力を活用できるのは、販売面では大きなメリットを感じました。「日産自動車の特許を使った技術」と伝えると話を聞いてくれるケースがよくありました。

6 事業化するまでの流れ

開放特許を活用して、事業化していくために必要なのは「販売ルートを考えること」だと、川崎市産業振興財団の知的財産コーディネーターである西谷亨さんは強調します。

「開放特許を活用するとしても、製品化を目標にするのではなく、どういうルートで売るのかを考えないと、せっかく作ったものが売れないということになりかねません。必ず、販路や客層を確保してから、ライセンス契約を結ぶようにしてください」

また、「自社の事業を洗い出し、強みを見つけることが重要」だそうです。

「自社の強みや本業を活かす技術を探すほうが、実現する可能性は高いと思います。残念ながら大企業とマッチングまで成立しても、製品化や販売にたどり着かないケースもあります。そうならないためにも、まずは自社の強みを見つけてください」

なお、川崎市産業振興財団は下記図表のような流れでサポートしているといいます。これは一例ですが、参考にしてください。

川崎市産業振興財団の中小企業サポートの一例

以上(2023年4月)

pj60246
画像:naum-Adobe Stock

【朝礼】自分の仕事は「ローリスク・ハイリターン」だと思えば何でもできる

新年度が始まりました。今年度は皆さん1人1人が新しいことに挑戦し、会社を盛り上げる1年にしてほしいと思っています。営業先の新規開拓、新たなプロジェクトの立ち上げ、製造ラインの見直しなど、どんなことでも構いません。ぜひ、積極的に手を挙げてチャレンジしてください。

ただ、そうはいっても何かを始めるときというのは、「本当に大丈夫かな」「失敗したら怖いな」といった不安が付いて回るものです。そんな不安を感じたときは、ぜひこう考えてみてください。皆さんの仕事は、「ローリスク・ハイリターン」であると。「いやいや、リスクはあるだろう」と思う人もいるでしょうが、大切なのは気の持ちようです。試しに、経営者である私と比べてみてください。

私の主な仕事は、事業のあらゆる局面で最終的な決定を下す「経営判断」です。もちろん些細(ささい)な決定事項もありますが、重要な事項を決めるときは常に「ハイリスク・ハイリターン」です。正しい判断をすることで得られるものは大きいですが、判断を誤れば、場合によっては会社を潰し、皆さんを路頭に迷わせてしまうことだってあります。かといって、何もリスクを取らず、動かないままでは会社を存続させられません。経営者として、会社のためにリスクを取って勝負しなければならないときもあります。ですから、自分で言うのもなんですが、常に慎重に、不安と戦いながら仕事をしているのです。

もちろん社員の皆さんも、会社の中で成長するにつれて重要な仕事を与えられ、責任が重くなっていきます。とはいえ、仮に皆さんが仕事で失敗をしたからといって、会社を潰すほどの影響を与えるのかといえば、基本的には「ない」でしょう。権限の問題もありますが、皆さんの仕事の中で想定し得る程度の失敗であれば、大抵は私や幹部の人たちでフォローできるからです。ですから、皆さんの仕事は「ゼロリスク」とはいかないまでも、「ローリスク」といえるわけです。

そして、皆さんが失敗を恐れずに挑戦することには「ハイリターン」があります。チャレンジに成功すれば、それは皆さんの自信となり、仕事にも一層張りが出ます。成果を上げて会社の中での立場が変われば、お給料だって変わってくるでしょう。仮にチャレンジに失敗したとしても、新しいことに挑戦するために皆さんが身に付けた知識や技術は、その先も皆さんを助けてくれます。そして、皆さんの挑戦によって会社の事業に新しい可能性が見えれば、私たちや私たちの家族、地域の人々など、多くの人の未来が明るくなります。

いかがでしょうか。自分たちの仕事は「ローリスク・ハイリターン」だと割り切れば、リスクを取って新たなことに挑戦しようという気になりませんか。私は、皆さんが挑戦するための提案を、時間を惜しまずに聞くつもりです。今年度は、皆さんが私に、素晴らしい挑戦を提案してくれることを期待しています。

以上(2023年4月)

pj17140
画像:Mariko Mitsuda

自動配送ロボが歩道を行き交う日常は間近!?/2023年4月の道交法改正で加速する自動運転の最前線(前)

書いてあること

  • 主な読者:ラストワンマイルの動向に影響を受ける販売事業者や運送・運輸業者
  • 課題:自動配送ロボットの導入を検討するために、実用化に向けた動きを知りたい
  • 解決策:2023年4月の道路交通法改正の内容と、自動配送ロボットの実用化に向けた最新の動きを把握し、実用化に備えておく

1 遠隔監視の自動配送ロボットが歩道を走れるように!

世界中で自動運転の実用化に向けた動きが進んでいますが、日本でも2023年4月に、大きな前進がありました。改正道路交通法(以下「道交法」)の施行により、

  • 遠隔監視の自動配送ロボット
  • 過疎地などでの自動運転バス

が公道で走行することが認められたのです。

そこで、このシリーズでは、実用化へ大きく前進した自動運転について、道交法改正の内容と、実用化に向けた取り組みの最新事情を、2回にわたって紹介します。

前編となる第1回は、物流のラストワンマイルの新たな担い手として期待されている、自動配送ロボットについてです。

2 自動配送ロボは「歩行者と同様のルール」に

2023年4月に施行された改正道交法および関係法令では、自動配送ロボットが該当する「遠隔操作型小型車」のルールが定められています。

道交法や関係法令が定める「遠隔操作型小型車」のルール

なお、「遠隔操作型小型車」には、標識を付けることが義務付けられています。

「遠隔操作型小型車」に付ける標識

それでは、実用化に向けて進んでいる実証実験などの取り組みについて、実際に携わった担当者の話を紹介します。

3 実証実験1:都市部でのラストワンマイル事業への参入(ENEOSホールディングス)

1)実証実験の概要

実験主体:ENEOSホールディングス(東京都千代田区、エネルギー事業など)、ZMP(東京都文京区、ロボット開発)、エニキャリ(東京都千代田区、ラストワンマイル物流サービス)
実験日:2022年12月~2023年3月(自動配送ロボット4台を稼働。荒天時を除く11時から20時)
実験場所:東京都中央区の佃・月島・勝どきエリア(約1万7000戸)
実験の概要:アプリを通じて注文を受けたエリア内の飲食店やスーパーの商品を、注文者のマンション下まで配送。到着すると注文者の携帯電話に、自動配送ロボットの扉を開けるURLとともに通知
使用した自動配送ロボット:ZMPの「DeliRoR(デリロR)」

2)担当者の話(ENEOSホールディングス)

物流のラストワンマイル問題は社会課題であり、ビジネスチャンスでもあると認識しています。今回の実証実験を踏まえて、2023年度中に、このまま事業として始めるか、事業エリアを変えるなどビジネスモデルを一部変更して始めるか、商用化の時期を延期するか、いずれかの決定をする予定です。

実証実験で使用したDeliRo®(ENEOSホールディングス提供)

実証実験では、お客さまから注文を受けると、自動的に自動配送ロボットにアサインし、ロボットを稼働させるという一連のシステムを機能させることができました。ただ、1人の監視員が複数台のロボットを監視する実験は、走行時間が足りないなどの理由で行えませんでした。

また、自転車などが道を塞いでいて自動運転だけでは対応できず、人による操作が必要になったケースや、注文データとロボットの稼働を連携させるシステムがうまくいかずにロボットが止まってしまうケースなどがありました。歩行者や自転車が進路を遮ってしまった場合でも、ロボットの前面には表情がついており、「道を開けてください」などとしゃべることでコミュニケーションしながら対応することができますので、地域の皆さまに受け入れていただけたように思います。

事業を始める場合、都心部の人口密度の高い地域が対象になると思っています。ロボットは時速6キロメートルが上限ですので、1時間以内で配送できるのは約1キロメートル以内が目安となります。どのような商品を運ぶかにもよりますが、売り上げを確保するには、一定程度の人口密度が必要になります。その他、特定のエリア内の、例えばショッピングセンターやテーマパークでも活用の可能性はあると思います。過疎地にも買い物が困難な高齢者などのニーズは確実にあるのですが、ロボットの運用コストが下がったり、例えば見守り機能など何らかの付加価値を付けたりしなければ、現状では持続可能なサービスにするのは難しいと思っています。

採算性の観点から、現時点では1人の遠隔監視員が、少なくとも8台程度のロボットを同時に遠隔監視することが必要だと分析しています。それを可能にするためには、ロボットが高い安定稼働率で走行することや、画面をポップアップさせるなどして遠隔監視員にアラートするような機能を持つような複数台監視を可能にするモニタリングシステムが必要になると思います。

サービスステーションを基点に配送を実施(ENEOSホールディングス提供)

自動配送ロボットが今後普及していくポイントは、鶏と卵の関係ではありませんが、利用ニーズと、外資を含めたロボット開発会社の参入の両方が増えていくことだと思います。海外にはさまざまな機能やコスト感のロボットがあり、ロボットの運用コストが日本の半額以下のサービスもあります。2023年4月の道交法改正を機に、多くの開発会社が参入して、選択肢が広がることを期待しています。自動配送ロボットが普及すれば、遠隔監視員の担い手も増えていくので、遠隔監視員の人件費も下がるでしょう。

3)担当者の話(ZMP)

今後のDeliRoR(デリロR、以下「デリロ」)販売台数の見込みなどの公表は控えますが、道交法改正によって届け出で公道を使用できるようになるのは、クライアントの拡大につながると思っています。

デリロは、人口が多い都市部はもちろん、過疎化が進む地域での人手不足にも役立ちます。デリロは揺れや傾きが少ないのが特徴で、例えば汁物であっても、しっかりと封をすれば配送が可能だと考えています。段差は5センチメートルまでは超えることができ、坂道は8度までの傾斜が対応可能です。ちなみに、一般的な車いす用のスロープのほうがもっと緩やかです。重量は50キログラムまで対応可能です。電波条件については、スマートフォンの基地局があれば対応できます。

配送物の受け取りなどの操作については、スマートフォンが使える程度のリテラシーがあれば、問題ありません。

東京都中央区での実証実験(ZMP提供)

4 実証実験2:自社の飲食物の配送(関西フーズ)

1)実証実験の概要

実験主体:関西フーズ(兵庫県姫路市、神戸市や姫路市で回転寿司「力丸」14店舗を展開)
実験日:2023年2月(10日間、1時間に1件を上限に、約30件を配送)
実験場所:姫路駅周辺
実験の概要:JR姫路駅前店から指定した姫路駅前エリアの9カ所に寿司を配送。顧客が携帯電話で注文および決済。到着すると注文者の携帯電話に通知
使用した自動配送ロボット:ZMPの「DeliRoR(デリロR)」

2)担当者の話(関西フーズ)

現在、実証実験の課題を精査していますが、できれば2023年夏から、姫路駅周辺で実用化したいと考えています。今後も人件費は上昇していくでしょうし、人手不足の問題もあるので、自動配送ロボットは今後の有力なデリバリー方法になると思っています。

実証実験で、安全性に関してはクリアしました。人が近くに来ると、きちんと停止するプログラムも機能しました。

姫路駅前という人通りの多い場所で実証実験を行ったことから、観光客などもいて、写真を撮りにロボットに近づく人もいました。そのたびに停止するので、配送に時間がかかることもありました。通行人がロボットに見慣れるまでは、このようなことは起こることが想定されます。実用化の際には、その辺も計算しなければならないと思いました。

どれくらいの件数を配送できれば採算的に見合うのか、これから精査します。姫路駅周辺でも、配送には往復で30分はかかるでしょう。導入する台数、1時間で運べる件数や、1回の配送で運べる量なども勘案する必要があります。

件数を多くこなすために、まずは店舗の近くで、需要の多い地域から始めます。とはいっても、売り上げを伸ばすためには、エリアを拡大していく必要もあると思っています。

競合としては、ウーバーイーツや出前館などのフードデリバリー事業者を想定しています。自動配送ロボットは、配送速度では勝てません。ですので、正確性や価格など、他の面で勝つしかないと思っています。このため、お客さまの利便性についても、実証実験の結果を精査していきたいと思っています。

5 実証実験3:山間部を想定した配送(広島県北広島町)

1)実証実験の概要

実験主体:広島県北広島町、Yper(東京都品川区、置き配バッグを製造販売)、コムズ(広島県広島市、中国地方でショッピングセンター8店舗を管理など)
実験日:2021年10月(5日間、規定のコースを18往復して配送)
実験場所:北広島町
実験の概要:北広島町のショッピングセンターの搬入口から、町有地を通って300メートル先の町役場に設置した特設BOXに、宅配物とショッピングセンターのスーパーでの購入品を配送。到着すると注文者の携帯電話に通知され、QRコードでBOXを開ける
使用した自動配送ロボット:Yper(現在はLOMBYが事業を継承)の「LOMBY(ロンビ-)」

実証実験で使用したLOMBY(北広島町役場提供)

2)担当者の話(北広島町)

北広島町は山間部にあり、高齢化が著しく、担い手も不足していますので、ラストワンマイルの課題解決の必要性を感じています。子育て世代の利便性も向上しますので、実証実験は町の課題解決につながる可能性のある取り組みだと考えています。

ただ、実証実験では、課題も感じました。実証実験では公道を使用しませんでしたが、公道の場合、特に中山間地域では、必ずしも路面状況が良いわけではありません。車道と歩道の境など、路上の段差やくぼみもあります。北広島町は冬が寒く、路面の凍結や積雪もあります。

また、実証実験では交通整理をしていたので安全性が確保されていましたが、公道では急に飛び出してくるような人もいるでしょうから、対応ができるのかどうか未知数の部分もありました。

実証実験では数名の町民にモニターになっていただきましたが、若い世代の方が多かったのもあって、配送物の受け取りでの混乱はありませんでした。

現時点では実用化に向けた計画はありませんが、先ほどお話ししたラストワンマイルの課題は認識しているので、機会があれば実用化したいとは思っています。ただし、やはり費用面が一番大きな問題になると思います。他の方法と比較して、費用対効果の高い方法を選択していくことになるでしょう。

広島県北広島町での実証実験(北広島町役場提供)

6 自動配送ロボットの開発会社を紹介

紹介した実証実験以外にも、自動配送ロボットの実用化に向けた取り組みが進んでいます。自動配送ロボットの開発会社と主な取り組みをまとめて紹介します。関心のある方は、開発会社に問い合わせてみてもよいでしょう。

1.パナソニックホールディングス

自動配送ロボット:X – Area Robo
主な取り組み:茨城県つくば市でスーパーの商品を個人宅に配送(2022年5月~7月)
神奈川県藤沢市で医薬品や冷蔵品を個人宅に配送(2021年3月)

■パナソニックホールディングス「エリアモビリティ向けソリューション」■
https://holdings.panasonic/jp/corporate/mobility/solutions/areamobility.html

2.ZMP

自動配送ロボット:デリロ
主な取り組み:東京都中央区で飲食店とスーパーの商品を配送(2022年12月~2023年3月)
兵庫県姫路市で回転寿司店の商品を配送(2023年2月)

■ZMP「宅配ロボットDeliRo (デリロ)」■
https://www.zmp.co.jp/products/lrb/deliro

3.川崎重工業

自動配送ロボット:FORRO
主な取り組み:東京都新宿区で飲食店やスーパーの商品を配送(2023年1月~2月)
東京都墨田区で介護者向けの日用品や食事を個人宅に配送(2021年11月~12月)

■川崎重工業「配送ロボット」■
https://www.khi.co.jp/groupvision2030/deliveryrobots.html

4.本田技術研究所

自動配送ロボット:本田技術研究所が開発した車台に、楽天グループが開発した商品配送用ボックスを搭載
主な取り組み:茨城県つくば市の筑波大学構内や一部公道の約500メートルを走行(2021年7月~8月)

■本田技研工業「自動配送ロボット 実証実験の取り組み」■
https://www.honda.co.jp/future/EngineerTalk_deliveryrobo/

5.LOMBY

自動配送ロボット:LOMBY
主な取り組み:広島県北広島町で宅配物とスーパーの商品を配送(2021年10月)

■LOMBY■
https://lomby.jp/

以上(2023年4月)

pj50523
画像:onlyyouqj-Adobe Stock

【朝礼】上司は魚を与えるのではなく、魚の獲り方を教えましょう

「飢えている人がいたら、魚を与えるのではなく、魚の獲り方を教えてあげなさい」ということわざがあります。魚を与えれば、その人は1日は飢えをしのげるでしょう。しかし、魚の獲り方を教えれば、その人は一生飢えないでいられます。

1900年代前半に活躍したシュヴァイツァー博士は、アフリカの赤道直下の国ガボンにおいて、当地の住民への医療などに生涯を捧げたことで、高く評価されています。ただ、ひとつだけ残念なことに、博士には現地人に医学の知識を与えて、医師に育成し、医療環境を整えるという発想がありませんでした。そのため、現地人の中から医師が生まれることはありませんでした。仮に、現地人の中から医師が育っていく環境を実現できていれば、博士の死後もアフリカにおける医学は大きく進歩したことでしょう。

一方、アフリカの人に井戸の掘り方を教えた日本人がいます。その人は、初めはアフリカに行って自ら井戸を掘ったそうです。しかしあるとき、自分が井戸を掘るのではなく、現地の人に掘り方を教えてあげるべきだと気がついて、日本式の井戸の掘り方を教えたのです。そして、掘り方がうまくいかないときの対処法や井戸の修理方法も教えておいたため、現地の人は自分たちで井戸の管理・維持ができるようになったそうです。

これらのことを、ビジネスに置き換えてみましょう。分かりやすいのは、上司と部下の関係です。

上司が部下に与えなければならないのは「金銭」ではなく「方法」です。金銭は一度使ってしまえばなくなりますが、方法はいくら使ってもなくなりません。手取り足取りして面倒見の良い上司がいますが、先のことわざでいえば、それは「魚」を与えているだけで、部下の成長の機会を奪っているといえます。

魚を直接「与える」よりも「獲る方法」を教えるほうが、真に部下のためになり、部下の将来が開けることになるのです。

ここでいう「魚の獲り方を教える」とは、相手が欲していることに対して、ただ与えるのではなく、「どうすれば求めるものにたどり着くことができるのか」を教えてやることです。

上司が部下の仕事を手伝う場合とそうでない場合を比較してみましょう。部下の仕事を手伝う場合は、部下の仕事を手伝う→部下の仕事は速く進む→上司の仕事が遅れる→必死で上司は仕事を終わらせようとする→部下の仕事がまた遅れる→2人とも仕事が遅れる。結果としては2人とも仕事が遅れてしまいます。

一方、仕事を手伝うのではなく、部下の仕事がなぜ遅いのかを観察し、効率良く仕事ができる方法を教えた場合はどうでしょうか。この場合、上司は部下の仕事をチェックして問題点を把握する→部下にはいったん仕事を止めさせて、上司が問題点を説明する→上司は解決方法を部下に自分で考えさせる→さらに良くなる点があれば上司はアドバイスする→部下は自分で効率良く仕事ができるようになる→そして、その部下が効率良く仕事ができる方法をほかの人に教えることで組織全体の効率が上がる。こんな具合にいけば理想的です。

魚の獲り方を教えるのは、魚を与えるよりはるかに根気が必要で、面倒なことです。しかし、上司の仕事とは、人や組織をよく観察して、そこで働く人たちが高い能力を発揮できる方法を教えることなのです。

上司の皆さんは「やり方」を教えることに徹してください。

以上(2023年4月)

pj16524
画像:Mariko Mitsuda

知って得する「申告期限の延長制度」で罰金に似た加算税は回避!

書いてあること

  • 主な読者:決算月、決算作業月に決算が間に合わない理由が生じた会社の経営者
  • 課題:何も申請せずに申告期限を過ぎると、加算税や延滞税を徴収されてしまう
  • 解決策:大きな災害だけでなく、会社の火災など個別事情であっても申請書を提出することで申告期限を延長することができる

1 税金の申告期限は延長できる

法人税や消費税は、申告期限までに必要な申告書を税務署に提出しなければなりません。これを怠ると、

本来支払うべき税金の他、加算税や延滞税といった罰金のようなものが徴収

されます。会社としては避けたい事態ですが、「やむを得ない事情」もありますよね。

実際、経理担当者が新型コロナウイルス感染症で休職してしまったような場合は、申告期限の延長が認められることがあるので、基本を押さえておきましょう。ポイントは、

  • 申告期限の延長は税金ごとに取り扱いが異なること
  • 申告期限は自動的に延長される場合と一定の申請書を税務署に提出する場合があること

です。以降で詳しく確認していきましょう。

2 法人税と消費税の申告期限等の延長

法人税と消費税の申告期限は、原則として、

事業年度終了の日の翌日から2カ月以内

です。つまり、3月末決算なら5月31日までに申告書を提出しなければなりません。しかし、次の場合は申告期限が延長されることがあります。

  • 被災地が広範囲にわたる災害などやむを得ない事情が発生した場合
  • 会社が火災にあうなど、申告・納付が申告期限内にできない事情が発生した場合
  • 定款で定められている定時株主総会が、申告期限後に行われる場合

1)被災地が広範囲にわたる災害などやむを得ない事情が発生した場合

東日本大震災のような被災地が広範囲にわたる災害が発生した場合、国税庁が申告や納付ができないと判断します。延長が認められる地域や対象者は国税局が決定し、官報に掲載されたり、国税庁ホームページで公表されたりします。

最近では、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、2020年3月15日に申告期限を迎えた申告所得税(いわゆる所得税の確定申告期限)が一律4月15日に延長された例がありました。

なお、延長するか否かは国税庁が判断して公表するので、会社が自ら申請手続きをする必要はありません。また、この制度では、

申告期限だけでなく、税金の納付期限も併せて延長

されます。

2)会社が火災にあうなど、申告・納付が申告期限内にできない事情が発生した場合

火災によって帳簿書類が消滅した場合など、会社の個別事情を加味して延長される制度です。最近では、次のようなケースで、この制度を利用して延長が認められたことがありました。

  • 経理担当やその周辺に、新型コロナウイルス感染症の感染者や濃厚接触者が多数出たことで部署を閉鎖したケース
  • 顧問税理士が新型コロナウイルスに感染して会計事務所が長期間閉鎖したケース

なお、国(税務署)は会社の個別事情は分からないので、この延長を受けるためには、会社が自ら申請手続きをする必要があります。申請期限は

やむを得ない理由がやんだ後、相当の期間内

とされていますが、明確な期日は定められていません。なお、原則的な申告期限が過ぎた後でも申請できます。ただし、申請したからといって必ず認められるわけではないため、申請にあたっては事前に税務署へ相談するといったことも必要になるでしょう。

なお、この制度による延長についても、

申告期限だけでなく、税金の納付期限も併せて延長

されます。

3)定款で定められている定時株主総会が、申告期限後に行われる場合

定款に「定時株主総会を事業年度終了後、3カ月以内に行う」と定めている場合、定時株主総会を実施するまで決算の数値が確定しないため、事業年度が終了してから2カ月以内(原則的な申告期限)に申告できないケースがあります。

このような会社は、

延長の適用を受けようとする事業年度終了の日までに申請書を提出する

ことで申告期限の延長が認められます。なお、法人税と消費税では申請用紙が別のため、法人税用と消費税用の申請を別々に行う必要があるので注意しましょう。

この制度による延長は、

申告期限は延長されるが、納付期限は延長されない

ので、税金そのものは概算で計算し、原則通りの期限までに納付(見込納付)しておく必要があります。なぜなら、納税が遅れると、

利子税という利息のようなものが課される

ことになるからです。

3 源泉所得税の納期限の延長

会社が、従業員に支払う給与などから源泉徴収を行った場合、原則として、給与を支払った月の翌月10日までに納付しなければいけません。つまり、4月25日に給料を支払い、源泉徴収を行った場合には、5月10日までに源泉徴収した金額を納付しなければなりません。しかし、

  • 被災地が広範囲にわたる災害などやむを得ない事情が発生した場合
  • 会社が火災にあうなど申告・納付が申告期限内にできない事情が発生した場合
  • 給与の支給人員が常時10人未満の会社の場合

は納期限が延長されます。なお、1.および2.の内容と手続きは法人税や消費税と同じなので、ここでは「3.給与の支給人員が常時10人未満の会社の場合」について解説します。

規模が小さい会社(給与の支給人員が常時10人未満の会社)については、

源泉徴収した所得税を、半年分まとめて納付してよい

という特例があり、これを「納期の特例」といいます。この特例を受けた場合、納期限は年に2回、7月10日と翌年1月20日です。

半年分の源泉徴収分の納期限

この特例を受けるためには、所定の届出書を提出する必要がありますが、提出期限は特に定められていません。原則として、届出書を提出した月の翌月徴収分から適用となるので、4月に届出書を提出した場合、納付済みかつ特例適用前の1~4月分を除く、5・6月分(2カ月分)を7月10日までに納付することになります。

以上(2023年4月)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)

pj35122
画像:vectorhot-Adobe Stock