2024年4月に大幅な規制緩和 ライドシェアって何?

書いてあること

  • 主な読者:ライドシェア解禁の動向を知りたい経営者など
  • 課題:ライドシェア解禁に向けた議論が進められているが、ポイントがつかみにくい
  • 解決策:2024年4月から、タクシーの需要に供給が追い付かない地域・時期・時間帯に限り、タクシー事業者の管理下でのライドシェアが解禁予定だが、詳細は未定

1 2024年4月から、ライドシェアが一部解禁へ

ライドシェアは、配車アプリを介して乗客とドライバーをマッチングし、乗客がドライバーに対価を支払って目的地まで車で運んでもらうサービスです。米国のUberなどが有名で、現地の移動で利用したことがある人もいるのではないでしょうか。配車アプリの機能によりますが、乗客は、乗降場所の設定、料金の決済まで事前に行えるようになっています。ドライバーは、指定された場所で乗客を乗せて目的地まで運べばよく、料金を受け取り損なう心配もありません。

便利なライドシェアですが、日本では、いわゆる「白タク」行為として道路運送法によって禁止されています。その一方で、タクシーの需要に供給が追い付かない観光地や過疎地の交通インフラ問題が顕在化しています。

2023年12月には超党派の議員勉強会が、ライドシェアの導入について、2024年中にも必要な法整備を行うよう政府に求める提言を取りまとめました。その後、政府は、2024年4月から、タクシー事業者の運行管理の下でライドシェアを一部認める方針を固めました。

この記事では、注目されるライドシェアについて、道路運送法による規制の概要を押さえたうえで、規制緩和に向けた政府の方針について解説します。

2 道路運送法による規制の概要

1)旅客自動車運送事業は許可制

道路運送法では、他人の需要に応じ、有償で、自動車を使用して旅客を運送する事業を旅客自動車運送事業と定め、国土交通大臣による許可制をとっています。

タクシーは、一般乗用旅客自動車運送事業に該当します。タクシー事業者は、運行管理者の選任をはじめとする運行管理体制の整備をしなければならず、旅客運賃・料金も国土交通大臣の認可を受けなければなりません。ドライバーは第二種運転免許の保有などの要件を満たす必要があります。

ライドシェアは、現行法では無許可で一般旅客自動車運送事業を営む「白タク」行為に該当し、一般のドライバーが自家用車を使って乗客を運び運賃・料金を得ることは禁止されています。これに違反したドライバーは、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金に処されます(併科あり)。なお、乗客側の罰則は定められていません。

2)自家用車による有償運送は原則禁止

道路運送法では、自家用車による有償運送を原則禁止しており、自家用車による有償運送が認められるのは、

市町村、NPO法人などが地域住民や観光客を対象に、国土交通大臣の登録を受けて行うとき(自家用有償旅客運送)

などに限られます。自家用有償旅客運送は、運送の対価として実費の範囲内での収受が認められています。2006年の制度創設以降、全国に広まり、2022年3月末時点で、

  • 地域住民や観光客の移動手段を確保する「交通空白地有償運送」は、670団体で実施
  • 介護を必要とする者の移動手段を確保する「福祉有償運送」は、2470団体で実施

されています。

3 政府による規制緩和の主な方針

1)2024年4月からライドシェアが一部解禁

2023年12月20日に開かれたデジタル行財政改革会議で、政府は、

現状のタクシー事業では不足している移動の足を、地域の自家用車や一般ドライバーを活かしたライドシェアにより補う

という方針を打ち出しました。具体的には、

  • タクシー事業者の配車アプリで蓄積しているデータを基に、タクシーが不足している地域・時期・時間帯を特定する
  • タクシー事業者が運送主体となり、地域の自家用車・ドライバーを活用し、アプリによる配車とタクシー運賃の収受が可能な運送サービスを2024年4月から提供する

としています。この新制度の創設に先立ち、現行の自家用有償旅客運送についても、

  • 適用対象となる「交通空白」について、「地域」だけではなく、夜間などの「時間帯」による空白の概念も取り込む
  • 従来、タクシー運賃・料金の2分の1が目安とされてきた有償運送の対価を、タクシーの約8割まで引き上げ、ドライバーの適正報酬を確保する
  • 一定のダイナミックプライシングを導入する

など大幅に見直されます。

さらに、利便性を向上するために、

  • NPO法人などの非営利団体だけでなく、株式会社も運送の実施主体からの受託により参画できることを明確化する
  • 道路運送法の許可または登録の対象外の運送(無償運送)について、アプリを通じたドライバーへの謝礼の支払いが認められることを明確化する

としています。

一般のドライバーは、タクシー事業者の管理下で自家用車を使って乗客を運び運賃・料金を得られるようになるわけですが、詳細は未定の部分が多く、政策の動向を継続してウォッチしていく必要があります。

例えば、タクシー事業者と一般のドライバーの関係は「安全性の確保を前提に、雇用契約に限らずに検討を進める」とされており、タクシー事業者から一般のドライバーへの業務委託契約が成り立つのか、運行の安全性をどのように確保するのか、万一事故を起こしたときの責任はどうなるのかなどの課題があります。

2)第二種運転免許取得者の確保に向けた制度の改正

政府は、深刻なタクシードライバー不足を改善するため、ドライバーになるための運転免許を取得しやすい制度に改める方針も打ち出しています。具体的には、

  • 第二種運転免許取得に係る教習について、1日当たりの技能教習の上限時間の延長や、教習内容の見直しなどを図り、2024年4月以降できる限り早期から教習期間を大幅短縮する
  • タクシードライバーになるために課せられている道路運送法に基づく法定研修の期間要件(10日)を撤廃する
  • タクシー業務適正化特別措置法に基づいて課されている地理試験について、2023年度中に廃止する

としています。また、2024年4月以降に行う第二種免許試験について、多言語での受験を可能とし、外国人のドライバーへの積極的な採用を促す方針です。

4 今後の政策動向に注目

タクシー業界のドライバー不足の背景には、高齢ドライバーの引退だけでなく、求職者が賃金の高い別の仕事を選ぶ傾向が続いていることが挙げられます。

さらに、新型コロナウイルス感染症の拡大期には、乗客数が激減したためにドライバーを辞めてしまうケースも相次ぎました。国土交通省によると、個人タクシーを除くタクシードライバーの数は、2020年3月末時点の26万1671人から、2022年3月末時点では22万1849人と大幅に減少しました。

そうした中、観光地や過疎地の移動手段を確保するための一策として期待を集めるライドシェア。2023年12月20日に開かれたデジタル行財政改革会議で、政府は、

タクシー事業者以外の者がライドシェア事業を行うことを位置付ける法律制度について、2024年6月に向けて議論を進めていく

と、期限を設けて言及しています。

業界団体の強い反対もある中、一足飛びに全面解禁とはいかないものの、2020年に「いわゆる『ライドシェア』は引き続き導入を認めないこと」が附帯決議として明記された(第201回国会の衆議院国土交通委員会(4月14日)、参議院国土交通委員会(5月26日))ところからは、方針が大きく転換されたといえるでしょう。今後の政策動向が注目されます。

以上(2024年2月作成)

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画像:terovesalainen-Adobe Stock

【朝礼】2024年度はビジネスの旅に出発しよう!

皆さん、おはようございます。今日は「目的地主義ではなく、旅の道中を楽しむ」というテーマについてお話しします。

アップルの共同創業者であるスティーブ・ジョブズのことは皆さんも知っているでしょう。そのジョブズの有名な言葉に「旅そのものが報酬だ」というものがあります。「旅は目的地に行くためにするものではない。道中のさまざまな経験こそが旅であり、かけがえのない報酬である」ということです。実際、ジョブズの旅は実にエキサイティングです。アップルを設立した後に解雇され、そして再雇用されるという経験をしつつ、革新的な製品を世に送り出し続けました。ジョブズは、そうした旅の中で、かけがえのない経験を積みながら歩んでいきました。

もう1人、ウォルト・ディズニーの言葉「夢見ることができれば、それは実現できる」も印象深いものです。一口に「夢」といっても、それにどれだけまい進できるかは人それぞれです。ディズニーは、自分の生み出すキャラクターが人々を笑顔にし続けることを夢見て、さまざまな困難を乗り越え、最高のエンターテインメントの世界を築き上げました。ディズニーの旅は、持続的な創造性と挑戦の連続ですが、私はその根底に夢に対する貪欲な姿勢があったと考えています。自分の夢に貪欲で、全力で立ち向かっていったからこそ、彼の生み出したキャラクターは、今なお世界中を魅了してやまないのです。

さて、2人の偉大な経営者と同じように、私たちも、日々、ビジネスの旅を続けています。私たちには経営計画があり、それを達成することが目下の目標になっていますが、それは札所(ふだしょ)の1つに過ぎません。私たちが掲げているミッションを達成し、あるべき理想の姿を実現することが真の目的であり、夢なのです。そういう意味では、私たちはまだまだ長い旅の途中です。

もうすぐ2024年度が始まります。私たちの旅に新たな1ページが刻み込まれるわけですが、出発の前に、皆さんに伝えたいことがあります。それは、

夢に憧れ、私たちの旅を思う存分に楽しむ

ということです。楽しくなければ夢に憧れ続けることはできないですし、長く続けることもできません。ジョブズとディズニーもそうであったはずですが、私たちも夢を追い続ける旅を大いに楽しみましょう。

皆さん、目をつぶり、私たちが夢をかなえた瞬間をイメージしてください。皆さんはどこに立っていますか、周囲には誰がいますか、どんな話をしていますか。そして何より、ワクワクしてきましたか。今、皆さんがイメージした世界を必ず成し遂げようではありませんか。2024年度、当社は新しい中期経営計画の下、これまで以上に新規事業にまい進します。皆さん一人ひとりの努力と挑戦、仲間を思うチームワーク、そして何より旅を楽しむ心を忘れずに、さぁ、出発です!

以上(2024年2月作成)

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画像:Mariko Mitsuda

交差点での右折(2024/2号)【交通安全ニュース】

活用する機会の例

  • 月次や週次などの定例ミーティング時の事故防止勉強会
  • 毎日の朝礼や点呼の際の安全運転意識向上のためのスピーチ
  • マイカー通勤者、新入社員、事故発生者への安全運転指導 など

多くの車や人が行き交う交差点は、交通事故が起こりやすい場所です。

特に右折では、運転者は対向車はもちろんのこと、歩行者や自転車などにも十分注意しなければなりません。一瞬の気の緩みが重大事故につながるおそれがあります。

今月は、このような重大事故となる危険が高い、信号のある交差点での右折における安全運転を考えます。

交差点での右折

1.交差点での右折に潜む危険

令和4年の統計をみると、信号のある交差点で発生した交通事故は約5.3万件あり、その内、右折事故は約2万件にのぼり、全体の約40%を占めています。

交通事故件数

出典:公益財団法人交通事故総合分析センター「令和4年版交通統計」から当社作成

交差点での右折は、走行中の対向車とのタイミングを計ったり、横断歩道上の歩行者や自転車などの安全を確認したりする必要があり、運転行動が複雑です。また、交通状況で想定外のことが起こったり、心理面で負荷がかかったりすることもあります。例えば以下のような危険が潜んでいます。

◆交通状況の危険

  • 対向車の陰から二輪車などが飛び出してくる。
  • 黄色信号で対向車が無理に交差点へ進入してくる。
  • 自転車が目前の横断歩道を猛スピードで走行する。

◆運転者の心理面の危険

  • 後続車がいるプレッシャーで、早く右折しなければと焦る。
  • 対向車の車体が小さい場合など、そのスピードを実際よりも遅く感じる。
  • 対向車の動きに気を取られてしまい、横断歩道上の歩行者や自転車への注意が疎かになる。

右折をする際は、様々な危険が常に潜んでいることを意識して運転することが大切です。

2.右折時の安全運転のポイント

右折時の安全運転のポイント

以下の運転行動で上図のような安全確認を徹底し、事故を防ぎましょう。

  • 交差点の中央寄りを徐行して、交差点の状況を広く見るようにしましょう。(交差点内での視野が広がり、右後方(※1)の確認がしやすくなります。)
  • 対向車に急減速させるような強引な右折をしてはいけません。対向車が途切れない場合には、焦らず信号が変わるまで待つことが大切です。(対向車の陰(※2)に注意しましょう。)
  • 交差点の信号が青に変わる瞬間に(対向車よりも先に)、猛ダッシュでショートカットするような右折をしてはいけません。

3.重大事故を避けるために

交差点右折時の重大事故で、多くの歩行者や自転車搭乗者が被害にあっています。交差点の右折では、対向車だけに気を取られないようにし、右折先の横断歩道にいる歩行者や自転車などにも注意を向ける必要があります。

対向車の陰や運転者の視野の外など見えないところに歩行者や自転車などがいるかもしれないと想定しながら運転しましょう。

見えない先に注意

以上(2024年2月)

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画像:amanaimages

「【どのように】褒めるか」の5つの手法とその活用テクを伝授/武田斉紀の『次世代リーダーに必須のコミュニケーション習慣』(8)

書いてあること

  • 主な読者:会社経営者・役員、管理職、一般社員の皆さん
  • 課題:最近話題のZ世代(1990年代後半以降生まれで会社においては20代前半くらいまで)だけでなく、それ以前の平成生まれ(30代前半くらいまで)の世代と、現在経営や管理職を担っている昭和世代との世代間ギャップが注目されています。それは価値観の違いやコミュニケーションの違いとして表れ、変化や多様性が求められる昨今、日本企業において深刻な経営の足かせとなりつつあるようです。
  • 解決策:まず会社においてZ世代を含む平成生まれと昭和生まれの世代背景を整理しながら、ギャップを埋めるための「価値観の変化」を明らかにします。その上で、筆者が多くの講演や企業研修で紹介してきた『次世代リーダーに必須のコミュニケーション習慣』を実践的に指南します。

1 相手を【どのように】褒めるべきかを、意識できていますか?

今シリーズでは、昭和生まれの管理職・リーダー世代と、平成生まれ、とりわけ「Z世代」との価値観に、ここ10年ほどで“真逆”といえるほどのギャップが生まれていることを取り上げています。

世界のビジネス上の価値観は、平成生まれや「Z世代」の価値観のほうに寄っており、会社の成長を今後も目指すためには管理職・リーダー側の皆さんが、価値観やコミュニケーション習慣を見直す必要に迫られているのです。

『次世代リーダーに必須のコミュニケーション習慣』その1の『傾聴』に続いて、第6回からは、その2『褒める』を取り上げています。

『褒める』は各社における35歳くらいから以下の平成生まれや、新人や若手の「Z世代」が育ってきた環境を象徴するキーワードの1つです。彼らは昭和生まれの『叱る』ではなく、『褒める』ことを優先した教育を経験しています。

同時に『褒める』は、『傾聴』と同様にグローバルで互いを尊重し合うDEI(=Diversity:多様性、 Equity:公平性、 Inclusion:包括性)にもつながっており、昭和世代にとって「人を褒めるなんて恥ずかしくて自分には無理」と逃げている場合ではなくなっているのです。

今回は、前回の「【何を】褒めるか」に続いて、「【どのように】褒めるか」の5つの手法とその活用テクニックを伝授したいと思います。

皆さんは、相手を「褒める」ときに、【何を】褒めるかだけでなく、【どのように】褒めるのがベストかを意識できていますか?

2 ①言葉にして2~3割増しで褒める ②すぐ褒める、後でも褒める

①言葉にして“2~3割増し”で褒める

言葉にしないとあなたの思いは相手に伝わりません。もっというと普通に褒めただけでは相手にはその数分の1しか伝わっていません。なので私は「自分が思っている“2~3割増し”で褒めましょう」とお勧めしています。

普段より2~3割増しで声を張り「〇〇さんの〇〇なところ、いいですね!」と言ってみてください。さらに満面の笑顔と大きめのジェスチャーで「いいね!」と親指を添えられれば満点です。

経験的にはこちらが少し大げさだったかもと思うくらいで、相手にはちょうどよい感じで届いているようです。それくらいしないと他人にこちらの思いのたけは届きません。せっかく勇気を持って届けたつもりが、実にもったいないと思いませんか。

そうはいっても、一度もやったことないのに、恥ずかしくていきなりそんなことできないという方は、まずは声も出さず「いいね!」と親指を添えるだけでもOKです。少しは相手に思いが届くでしょう。そうして何度かやっていると、「どうせやるのに少ししか伝わらないなんてもったいない」と思うようになるでしょう。

最初は恥ずかしくてもすぐに慣れますし、周囲の目も気にならなくなりますよ。

②すぐ褒める、後でも褒める

いつ褒めるかでいえば、【何を】に気付いた直後がベストです。そして後でも褒めましょう。素晴らしいことは、何度褒めてあげてもいいのですから。

相手は自分がうまくできた、貢献できたと思ったら、すぐに誰かに何か言ってほしいものです。そこですかさず気付いて一言かけてくれた人に対して「この人は分かってくれている」と感じるのではないでしょうか。直後であれば直後のほうがいいし、最初であればなおさら感謝されます。

何かのイベントや会議の最中など、その場では褒められないケースもあるでしょう。ならば終了して本人が一息ついたタイミングがチャンスです。「今日の〇〇さんの発表、よかったですね」と一番先に言ってあげたいものです。

発表がイベント全体に好影響を与えるくらいよかったのであれば、一日の終了時にも思い出すように言ってあげてください。「今思い出しても、今日のイベントの成功は〇〇さんの発表が効いてましたね」

本人は家に帰ってその日を気持ちよくかつ前向きに振り返り、自分なりの反省点やもっとできたなと思う点を洗い出して、さらに上を目指してくれることでしょう。

3 ③みんなの前で褒める、1対1で褒める ④You、 I、 第三者を使い分ける

③みんなの前で褒める、1対1で褒める

従来、マネジメントの基本として「褒めるときはみんなの前で、叱るときは1対1で」といわれていましたが、最近は人前で褒められることを本気で嫌がる人も目立ちます。無理強いしても、褒める効果どころか逆に嫌われるかもしれません。相手の嗜好を日常的に確認しておくとよいでしょう。

よほど嫌いな相手からでない限り、褒められて嫌な人はいません。人前で褒められるのが苦手と分かれば、場所を変えて1対1のときに褒めてあげればいいだけのことです。

人前で褒められるのがうれしい人は、1対1で褒めても喜んでくれるはずです。場面ごとに言い回しを変えて、何度でも褒めてあげてください。

本人が「もっと褒めて、もっと褒めて」と言ってくるかもしれません。うれしいから言っているのです。笑いながら「欲しがりますねえ(笑)、次回もっと褒めますから」などと冗談で返すだけで、場は和むはずです。

みんなの前で褒めると、周囲からも称賛の言葉を引き出せます。周囲のメンバーにも「よーし、次は自分も褒められるように頑張ろう」と好影響を及ぼし、職場やチームの雰囲気は盛り上がっていくことでしょう。

④You、 I、 第三者を使い分ける

これはテクニックの1つとして覚えておいてください。Youは「事実に基づいた客観的な」褒め方。Iは「自分が感じた主観的な」褒め方。第三者は文字通り、「その場にいない別の人が褒めていたことを知らせる」褒め方です。それぞれに効果があるので、使い分けられるとよいでしょう。

例えば、Youだと「あなたは〇〇をしたのですね。頑張りましたね」に対して、Iだと「私はあなたの〇〇に感動しました、すごいですね」といった感じ。第三者だと「〇〇さんが、あなたの頑張りを褒めていましたよ」と伝えるのです。

第三者を介した情報発信は信頼性が増しやすいという心理効果を「ウィンザー効果」と呼び、マーケティングなどでも使われています。第三者が、普段接することの少ない上司の上司、社長、あるいは本音が聞きづらい取引先の関係者やお客様であったりすると、さらに効果は絶大です。

4 ⑤相手をより理解するつもりで両面から探す

【どのように】褒めるかで立ち返るべき基本は、相手をより理解するつもりで褒め方を考えることです。「相手が気付いてほしい点」は何か、あるいは「本人が気付いていない優れた点」はないか、その両面からアプローチしてみましょう。

「両面」は前回ご説明した【何を】褒めるかにも当たりますが、褒める側の視点を【どのように】持つべきかという点で、こちらに加えてみました。

SNSであえて発信していない人も含めて、誰しも大なり小なり承認欲求はあるものです。

「相手が気付いてほしい点」に気付いて真っ先に褒めてあげられると、あなたは特別な一人になれます。

相手は「この人は私のことを見てくれている、分かってくれる」と思えるからです。

特に上司と部下の関係作りには向いているでしょう。

さらには「本人が気付いていない優れた点」を見つけて教えてあげられたらどうでしょう。

「そんなことで褒められたのは初めてです」という本人の言葉には、驚きと共に小さな自信が芽生えています。

「私の〇〇という強みは、〇〇さんが発見してくれたおかげなのです」と、一生ものの関係にさえなれるかもしれません。

チームスポーツで言えば、現在のポジションや役割でなかなか結果を残せずに悩んでいる選手に対して、監督が「あなたは〇〇の特徴があると思うよ。〇〇のポジションにチャレンジしてみてはどうですか」と褒めてアドバイスをすることがあります。

コンバートされた先で可能性を見いだして成長できた選手はどう考えるでしょうか。「今の自分があるのは監督のおかげです」とずっと思ってくれるのではないでしょうか。

相手をより理解するつもりで寄り添うこと。本人が気付いてほしい点、気付いていない優れた点の両面からアプローチすることで、互いに強い信頼関係が生まれるのです。

以上、今回は「【どのように】褒めるか」の5つの手法とその活用テクニックをご紹介してきました。

前回の【何を】と今回の【どのように】をセットにしてマスターし、常にベストな「褒める」を意識できれば、職場やチームの互いの信頼関係は良くなり、人もおのずと育っていくことでしょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。次回は、「NGな褒め方」や「褒めてばかりでなく、時には叱るべきか?」をテーマにお話ししていきたいと思います。

<ご質問を承ります>ご質問や疑問点などあれば以下までメールください。※個別のお問合せもこちらまで

Mail to: brightinfo@brightside.co.jp

※武田が以前上梓した書籍『新スペシャリストになろう!』(PHP研究所)が、ディスカヴァー・トゥエンティワンより電子書籍として復刻出版されました。キャリア選択でお悩みの方にお薦めです。

https://www.amazon.co.jp/dp/B0CMCW1FVY/

以上(2024年2月作成)
(著作 ブライトサイド株式会社 代表取締役社長 武田斉紀)
https://www.brightside.co.jp/

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画像:PureSolution-Adobe Stock

【文例付き】2024年4月1日から 労働条件通知書はどう変わる?

書いてあること

  • 主な読者:労働条件をめぐるトラブルを避けたい経営者、人事労務担当者
  • 課題:2024年4月1日以降発行の労働条件通知書に、どう記載すればよいのか分からない
  • 解決策:就業場所、業務内容は「変更範囲」も明示する。パート等の契約更新は「上限」を明らかにし、「無期転換の申込機会」についても記載する

1 労働条件通知書などで明示する内容が変わります

会社は社員(正社員、パート等)と労働契約を締結する際、労働条件を「労働条件通知書」などで明示しなければなりません。明示すべき労働条件は労働基準法などで決まっているのですが、2024年4月1日からは、明示すべき労働条件が、図表1の赤字部分の通り変わります。

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2024年4月1日以降に労働契約を締結する場合、会社は、

  • 就業場所、業務内容の「変更範囲」
  • 契約更新の「更新上限」
  • 無期転換の「申込機会」「転換後の労働条件」

についても社員に明示しなければならず、違反したら「30万円以下の罰金」の対象となります。以降で、詳細を確認していきましょう。

なお、現在雇用している社員については、労働条件通知書を交付し直す必要は原則ありません。ただし、契約期間の定めがあるパート等(以下「有期パート等」)については、契約更新の都度、労働条件を明示する必要があるので、2024年4月1日以降に契約を更新する場合、上記の項目を追加した労働条件通知書を交付しなければなりません。

2 就業場所、業務内容は「変更範囲」も明示

1)改正のポイント

就業場所、業務内容については、現行のルールでは「契約締結時」の条件だけを明示すればよいのですが、2024年4月1日から「変更範囲」も明示しなければなりません。

変更範囲といっても、想定される就業場所や業務内容を1つずつ記載する必要はなく、

  • 会社の定める場所
  • 会社の指示する業務

といった書き方もできます。ただ、記載内容があまりに漠然としているといけません。特に就業場所や業務内容がある程度限定される「限定正社員」の場合は、

  • 就業場所の一覧を別紙で交付する(地図や組織図など)
  • 業務内容をおおまかなカテゴリーで分けつつ、簡単な概要を記載する

とよいでしょう。

なお、「労働条件通知書に記載漏れがあった」「他の社員の業務を代替してもらう必要が出てきた」「傷病や育児・介護などで予定通りに働けなくなった」といった事情で、労働条件通知書に記載していない条件での勤務を社員にさせたい場合、

社員に変更理由を説明して同意を得た上で、新しい労働条件通知書を交付

する必要があります。

2)労働条件通知書の記載例

2024年4月1日以降の労働条件通知書の記載例は次の通りです。

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なお、記載例では触れていませんが、社員にリモートワークを命じる可能性がある場合は就業場所に「社員の自宅など」を加えておく、在籍出向をさせる可能性がある場合は業務内容に「出向先の命じる業務」を加えておくようにします。

3 契約更新の「更新上限」の明示

1)改正のポイント

会社は有期パート等を雇用する場合、契約締結時に「契約更新の基準」を明示する義務があります。現行のルールでは「更新の有無」「更新の判断基準」「その他留意すべき事項」を明示すれば足りますが、2024年4月1日からは、これに加えて

更新上限の有無とその内容(通算契約期間または更新回数について)

を明示する必要があります。

通算契約期間は「契約更新を繰り返した場合、通算で最大何年働けるか」、更新回数は「最大何回まで契約を更新できるか」という意味です。労働条件通知書には、これらの上限があるかないか、上限がある場合はその内容(◯年、◯回など)を記載する必要があります。

なお、更新上限の定めがない労働契約を締結していたが、次の契約から上限を「新設」する場合、あるいは更新上限を次の契約から「短縮」する場合、

その理由をパート等にあらかじめ(新設・短縮をする前のタイミングで)説明

しなければなりません。

2)労働条件通知書の記載例

2024年4月1日以降の労働条件通知書の記載例は次の通りです。

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2024年4月1日以降に新たに設ける「更新上限の有無」の記載欄には、通算契約期間または更新回数に上限があるかないか、上限がある場合は具体的な内容を記載します。ちなみに、更新回数は、会社と有期パート等との認識さえ一致していれば、「最初の契約から数えた回数」でも「残りの更新回数」でも構いません。

なお、通算契約期間の上限を定める場合、「無期転換」に注意しましょう。無期転換とは、

有期パート等の通算契約期間(同じ会社でのもの)が5年を超えた場合、その有期パート等が会社に申し込むことで、契約期間の定めのない「無期契約」に転換できるという制度

です。会社は無期転換の申込みを原則拒否できないので、そもそも有期パート等の長期雇用を想定していない場合、通算契約期間の上限は5年未満に設定しておいたほうが無難です。

また、記載内容ではありませんが、実際に有期パート等に労働条件通知書を交付する際は、

「必ず更新上限まで契約を更新するわけではない」旨を確実に伝える

ようにしましょう。契約を更新しない場合に有期パート等とトラブルになるのを防ぐためです。

4 無期転換の「申込機会」「転換後の労働条件」の明示

1)改正のポイント

前述した通り、有期パート等は通算契約期間が5年を超えると、会社に無期転換の申込みをする権利(無期転換申込権)を得ます。現行のルールでは無期転換について明示する義務は特にないのですが、2024年4月1日からは、無期転換申込権が発生する契約更新のタイミングごとに、有期パート等に無期転換の「申込機会」「転換後の労働条件」を明示する必要があります。

  • 申込機会:無期転換の申込みができること
  • 転換後の労働条件:労働条件の変更の有無、転換後の労働条件の一覧または変更箇所

「無期転換申込権が発生する契約更新のタイミング」は、契約期間の長さによって異なります。図表4は1年ごとの契約更新の場合と、3年ごとの契約更新の場合を比較したものです。どちらも、グレー部分の有期契約が開始するタイミングから、無期転換の申込みが可能になります。

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グレー部分の契約期間中に申込みをした場合、その有期契約が満了するタイミングで無期契約に転換します。

2)労働条件通知書の記載例

2024年4月1日以降の労働条件通知書の記載例は次の通りです。

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2024年4月1日以降は、新たに「無期転換に関する事項」の記載欄を設ける必要があります(有期パート等が無期転換申込権を得ていなければ不要)。また、「更新上限の有無」を記載する際などに「契約更新の状況(現在○年目など)」も併せて記載しておくと丁寧です。

無期転換申込機会については、無期転換の申込みをした場合、いつから無期契約に変わるかを、具体的な日付(◯年◯月◯日)を明らかにして記載しましょう。

転換後の労働条件については、労働条件の変更があるかないかを明らかにした上で、転換後の労働条件の一覧や変更箇所を「別紙」で明示するとよいでしょう。「契約期間」以外の労働条件を変更しない場合、「無期転換後の労働条件は本契約と同じ」などと記載します。

以上(2024年1月)
(監修 ひらの社会保険労務士事務所)

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画像: Rummy & Rummy-Adobe Stock

タワマン節税にメス、生前贈与改正。 大きく変わる相続・贈与税対策を解説

書いてあること

  • 主な読者:子供や孫などへの相続対策を行っている、または検討している人
  • 課題:一般的な税金対策に改正が入ったり、入ると見込まれたりしている
  • 解決策:近年の動きとして「暦年贈与・相続時精算課税・マンション節税・一括贈与(教育資金、結婚・子育て資金)」の制度改正を押さえる

1 改正が頻発している相続・贈与税

近年影響の大きい改正が頻発している相続・贈与税。生前贈与の非課税枠が縮小したり、タワマン節税にメスが入ったりと、これまで有効だった税金対策の効果が薄れたり、そもそも実施できなくなったりしています。

具体的に、どのような改正が入っているのか、または入る見込みがあるのか、この記事で分かりやすく紹介します。注目するのは、

暦年贈与・相続時精算課税・マンション節税・一括贈与(教育資金、結婚・子育て資金)

です。

2 暦年贈与

暦年贈与とは、1月1日から12月31日までの1年間(暦年)で、贈与額が110万円以下ならば贈与税がかからないというものです。毎年非課税で110万円を子供や孫などに渡せるので、将来的に発生する相続税の負担が減ります¥。ただし、亡くなる前の一定期間に行った生前贈与については、110万円以下も相続税の課税対象となります。この一定期間を加算期間と呼び、

2024年1月1日以降の贈与については、加算期間が3年から7年に延長

されました。改正後は、亡くなる前1~3年の間に行われた生前贈与は全額、4~7年の間に行われた生前贈与はその期間の贈与総額から100万円を差し引いた金額が相続税の課税対象となります。

暦年贈与は一般的な相続対策ですが、加算期間の延長や後述する相続時精算課税の改正(基礎控除の創設)によって、2024年以降は相続時精算課税制度を選択した場合の方が、より節税効果が高くなるケースが多く発生することが見込まれます。暦年贈与と相続時精算課税どちらを選ぶか、慎重に検討しましょう。

3 相続時精算課税

相続時精算課税とは、60歳以上の父母または祖父母から18歳以上の子・孫への生前贈与について、2500万円までは贈与税がかからず、相続時に生前贈与分もまとめて相続税を計算するものです。生前贈与した金額の累計が2500万円を超えた場合は、超えた部分に対して一律20%の贈与税がかかります(この贈与税は、相続税を計算する際に相殺されます)。

2024年1月1日以降、

相続時精算課税制度で使える「年間110万円の基礎控除」が創設

されます。2024年1月1日以降に相続時精算課税制度を選択して贈与を行った場合、年間110万円以内であれば贈与税はもちろん、相続税もかからなくなります。加えて、贈与税の申告も不要です。従来は、相続時精算課税を選択すれば、少しでも贈与があれば、贈与税の申告が必要だったため、利便性がよくなりました。

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4 マンション節税

マンション節税とは、市場での売却価格と通達に基づく相続税評価額とが大きく乖離(かいり)するというタワーマンションの特徴(一般的に高層階ほど価格は高額になるが、相続税評価額に反映されにくいなど)を生かした相続税のスキームです(2023年10月時点)。

まず相続税の計算をする際は、被相続人(亡くなった人)が所有していた全ての財産に対して、税金がかかる対象となる金額を算出します。相続税が発生する場合、被相続人の財産の価額は、国税庁が定めている評価基準(財産評価基本通達)によって決められます。この評価額が高いほど相続税の税額が高くなり、評価額が低くなるほど、税額は低くなります。そのため、タワーマンションには節税効果があると考えられていきました。

2024年1月1日以降、財産評価基本通達の改正が行われ、相続税評価額の計算方法が変わり、マンションの相続や贈与に影響が生じると考えられています。

今回予定されている改正では、

実勢価格(実際の取引が成立する価格)との乖離が1.67倍以上になる場合においては、「相続税評価額×乖離率×0.6」で評価される

と見込まれています。新たな基準が盛り込まれることによって、相続税評価額は実勢価格の4割から6割になるように検討されています(改正前は2割程度という事例もあった)。相続税評価額が上がると、それに伴い相続税も高くなるため、従来に比べて相続税対策としての効果が少なくなる可能性が高いです。

5 一括贈与(教育資金)

教育資金贈与の非課税制度とは、親から子、祖父母から孫など直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合、1500万円までは贈与税が非課税になるものです。2023年3月31日が適用期限でしたが、3年延長され2026年3月31日までとなりました。

また、贈与者が死亡した時点で、贈与を受けた教育資金が残っていた場合の残額の取り扱いについて、いままでは受贈者(贈与を受けた孫など)が23歳未満・学生(教育訓練を受けている場合を含む)の場合には相続税の課税対象ではありませんでした。しかし、2023年4月1日以後の一括贈与については、

贈与者の死亡の際の相続税の課税価格の合計額が5億円を超える場合には、受贈者が23歳未満・学生の場合でも、「残額」は相続財産に加算

され、課税対象となります。

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さらに、受贈者が30歳に達した時点で贈与された教育資金が残っている場合は、贈与税が課されます。その際に適用される税率について、これまでは特例税率(低い税率)が適用されていましたが、

2023年4月1日以後の贈与については、一般税率(通常の贈与税率)が適用される

ことになっています。

6 結婚・子育て資金一括贈与非課税措置の見直し

結婚・子育て資金の一括贈与とは、父母などから結婚・子育て資金の贈与をうけたときに1000万円まで贈与税が非課税になる制度です。2023年3月31日が適用期限でしたが、2年延長され2025年3月31日までとなりました。

また、受贈者が50歳に達した時点で贈与された結婚・子育て資金が残っている場合などには、贈与税が課されます。その際に適用される税率について、これまでは特例税率(低い税率)が適用されていましたが、

2023年4月1日以後の贈与については、一般税率(通常の贈与税率)適用される

ことになっています。

以上(2024年1月作成)
(執筆 南青山税理士法人 税理士 窪田博行)

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【規程・文例集】自社に合った「役員規程」に仕上げるためのポイント

書いてあること

  • 主な読者:役員規程を整備していなかったり、ひな型をそのまま使ったりしている経営者
  • 課題:自社に合った役員規程にするために、どこを見直せばよいのか分からない
  • 解決策:役員の定義、役員規程の適用範囲、辞任、機密保持義務などを見直す

1 大きな権限を持つ役員にルールがないのは不自然です

「就業規則」はあるのに「役員規程」はない、そんな会社が少なくありません。労働基準法で10人以上の社員がいる会社には、就業規則の作成が義務付けられている一方、役員規程には、会社法などによる義務がないというのが背景にあるのでしょう。

しかし、役員は経営の中枢であり、権力や影響力が大きいわけですから、それを規定する役員規程がないのはガバナンスの面でまずいわけです。改めて整理すると、役員規程とは、

役員に共通して適用されるルール(役員の選任・就任、退任、執務条件、責務など)について定めた、いわば役員用の就業規則

です。特に、親族以外の役員がいるオーナー経営者にとって、役員規程は重宝するでしょう。

また、役員規程を作成する際に、インターネットや書籍のひな型をそのまま使うのはお勧めできません。役員構成などは会社によって異なるわけですから、役員規程も自社の実情に合ったものであることが必要なのです。

そこで、この記事では、

役員規程のひな型に通常盛り込まれている条項を「1)条文例」として紹介し、弁護士の視点から条文について「2)追記・修正案」と「3)解説」を記載

していますので、ご確認ください。なお、役員規程の作成・見直しをする際は、それと併せて、

役員と締結する委任契約に、役員規程が適用される旨の条項を盛り込んでおく

ようにしましょう。

2 「役員」の定義:自社の役員構成に合わせて修正する

1)条文例

第●条(役員の定義)

「役員」とは、株主総会で選任された取締役をいう。

2)追記・修正案

第●条(役員の定義)

「役員」とは、株主総会で選任された取締役および監査役をいう。

3)解説

役員構成は、会社によって異なるため、自社の役員がカバーされるように、適宜修正します。

3 役員規程の適用範囲:非常勤役員への準用について明記する

1)条文例

第●条(適用範囲)

本規程は、常勤の役員に適用する。ただし、必要があるときは、本規程の一部を非常勤役員に準用することがある。

2)追記・修正案

第●条(適用範囲)

本規程は、常勤の役員に適用する。ただし、本規程その他の書面で別途の定めがある場合には、本規程の一部を非常勤役員に準用することがある。

3)解説

役員規程の適用範囲については、特に決まったルールはないので、どのように定めても構いません。実務上は、「常勤役員のみ」を適用対象とするのが一般的です。

なお、非常勤役員への準用を定める場合、単に「必要があるとき」などとすると、どのような場合に準用が認められるのか分かりません。そのため、「本規程その他の書面で別途の定めがある場合」などとして、準用に明文の根拠を要求するように修正することが望ましいでしょう。

4 役員の辞任:辞任の事前通知期間を適切に定める

1)条文例

第●条(辞任)

役員が辞任する場合は、原則として2カ月前までに社長に届け出るものとする。

2)追記・修正案

第●条(辞任)

役員が辞任する場合は、原則として3カ月前までに社長に届け出るものとする。

3)解説

役員が辞任する場合、会社の業務運営に支障が出ないように、引き継ぎが確実に行える準備期間が必要です。準備期間としてどの程度の期間を確保すべきかについては、取締役の担当業務の内容や、後任者を確保できる見込みなどによって異なります。そのため、ひな型に記載された準備期間が短いと感じられる場合には、延長しておくとよいでしょう。

なお、会社の裁量により、所定の期間よりも短期間での辞任を認めることはできます。

5 役員の定年:退任時点を明記する

1)条文例

第●条(定年)

役員の定年は、原則として次に定める通りとする。

  1. 社長:70歳
  2. 取締役:65歳
  3. 監査役:65歳

2)追記・修正案

第●条(定年)

1)役員の定年は、原則として次に定める通りとする。

  1. 社長:70歳
  2. 取締役:65歳
  3. 監査役:65歳

2)事業年度の途中で定年に達した場合には、その日以降最初に到来する定時株主総会終了の日をもって退任するものとする。

3)解説

定年となる年齢を記載しているだけでは、いつ退任するのかがはっきりしないため、退任時期を明確にしておくべきです。退任時期については、取締役に欠員が生じないように、定時株主総会のタイミングに退任時期を合わせるとよいでしょう。

6 機密保持義務:別途NDAを締結して定める

1)条文例

第●条(機密保持)

役員は、職務上知り得た会社の機密情報を、正当な理由なく会社の内外に開示または漏洩してはならない。

2)追記・修正案

第●条(機密保持)

役員は、職務上知り得た会社の機密情報を、正当な理由なく会社の内外に開示または漏洩してはならない。また、役員は、会社との間で秘密保持契約書を締結し、その定めに従わなければならない。

3)解説

役員としての機密保持義務については、別途秘密保持契約書(NDA)を締結し、その中で詳細にルールを定めておきます。NDAで定めるべき事項は、次のようなものです。

  1. 機密情報の定義
  2. 例外的に開示を認める場合
  3. 退任後の機密情報の取り扱い
  4. 機密保持義務の存続期間など

以上(2024年2月更新)
(監修 弁護士 坂東利国)

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【労働条件の変更(4)】「労働契約」による労働条件の不利益変更

書いてあること

  • 主な読者:賃金引き下げなど、いわゆる「労働条件の不利益変更」を検討している経営者
  • 課題:労働契約の変更手続きの流れが分からない
  • 解決策:労働協約や就業規則に定めのない労働条件を変更する場合や、就業規則を下回らない範囲で労働条件を変更する場合、社員の合意を得て労働契約を変更する

1 労働協約や就業規則に定めのない労働条件を変更する方法

会社の経営状況や働き方の変化などを理由に、労働条件を引き下げることを「労働条件の不利益変更」といいます。労働条件を変える場合、労働組合がある会社なら「労働協約」の変更、労働組合がない会社なら「就業規則」の変更で対応するのが通常ですが、

労働協約や就業規則に定めのない労働条件を変更する場合などは、「労働契約の変更」が必要

です。また、変更の際は

  • 個別の社員との交渉・合意などを、正しい手続きで進めること
  • 就業規則の変更と労働契約の変更の使い分けなど、必要なポイントを押さえること

が大切です。以降で詳しく見ていきましょう。

2 労働契約とは?

労働契約とは、社員が会社から与えられた仕事をする代わりに、会社が社員に賃金を支払う契約です。労働契約を締結するに当たり、会社は次の事項を労働条件通知書などで社員に明示しなければなりません。なお、2024年4月1日以降は、図表1の赤字の内容を新たに明示する必要があります。

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労働契約の効力が及ぶのは、

労働契約の当事者である社員のみ

です。そのため、特定の社員の労働契約を変更しても、他の社員の労働条件は変更されません。労働契約の変更によって不利益変更を行う場合、変更する労働条件が、労働協約や就業規則に定めがある内容か否かで対応が変わります。まず、

労働協約や就業規則に定めのない労働条件を変える場合、労働契約を変更する必要

があります(契約期間、契約の更新基準(有期の場合)、就業場所など)。

次に、労働協約や就業規則に定めのある労働条件を変える場合です。労働協約、就業規則、労働契約の力関係は、

「労働協約>就業規則>労働契約」という力関係

があります。労働協約や就業規則よりも不利な労働条件を定めた労働契約は無効ですので、原則として労働協約か就業規則を変更しない限り、不利益変更はできません。ただし、法令上、「労働契約の労働条件が就業規則を上回る場合のみ、労働契約は就業規則に優先する」というルールがあるので、

就業規則を上回る部分の労働条件を変える場合は、労働契約を変更する必要

があります。なお、労働協約との関係では、たとえ労働契約の労働条件が労働協約を上回っていても労働協約が優先するという考え方が有力です。その場合は労働協約を変更しない限り、社員の労働条件は変えられません(社員が労働協約の対象とならない非組合員である場合を除く)。

3 労働契約による不利益変更の流れ

1)労働条件の不利益変更を行うことについて社員と交渉する

労働契約は会社が一方的に変更できないので、会社と社員の合意によって変更します。そのため、労働条件の不利益変更を行うには社員との交渉が必須です。

交渉の進め方などは当事者の自由ですが、通常は会社が労働条件の新旧対照表を作成し、変更が必要な理由を社員に説明します。例えば、賃金を引き下げる場合は賃金額の新旧対照表を作成し、変更が必要な理由(勤務成績が目標の○%に満たず、指導を継続しても改善が見られないなど)を説明するといった具合です。

2)労働条件の不利益変更を行うことについて社員の合意を得る

会社と社員が合意すれば、新しい労働条件が適用されます。「言った、言わない」のトラブルを防ぐため、「合意書」(任意の書式)を取得するのが無難です。合意書には、社員自身が署名する欄を設け、さらに、

社員が労働条件の変更について理解した上で合意する

などの文言を入れておくとよいでしょう。社員から「内容をよく理解せずに合意した」「会社の説明が不十分で、内容を誤解した状態で合意した」などと言われないようにするためです。

4 労働契約による不利益変更のポイント

1)社員の言い分も聴きながら交渉する

労働条件の不利益変更について社員と交渉する場合、会社と社員の立場の違いに注意しましょう。例えば、

「不利益変更を拒否したら、会社に居づらくなるのではないか」という不安から、本当は不利益変更に応じたくないのに、無理をして同意するケース

があります。その場の交渉は無事に終わっても、後に不満を募らせた社員がユニオンなどに駆け込み、「会社から不当な労働条件を強いられた」などと主張することがあります。

ですから、交渉の際は、必ず社員の言い分も聴くようにしましょう。例えば、「勤務成績が目標の○%に満たず、指導を継続しても改善が見られないため、月給を○円引き下げる」といった場合であれば、目標を達成できない理由などについて社員の言い分を聴きます。場合によっては引き下げ額の見直しや引き下げの撤回などを検討するようにします。

2)ケースに応じて、就業規則の変更と労働契約の変更を使い分ける

前述した通り、就業規則と労働契約の間には、

  • 原則:就業規則が労働契約に優先する
  • 例外:労働契約の労働条件が就業規則を上回る場合、労働契約が就業規則に優先する

というルールがあります。

例えば、就業規則で月給を25万円と定めている会社が、特定の社員と月給を30万円とする労働契約を締結することは問題ありません。また、月給が就業規則の25万円を下回らなければ、就業規則を変更せず、労働契約の変更によってその社員の月給を引き下げることも可能です。

同じ「賃金引き下げ」という不利益変更であっても、就業規則の変更で対応するか、労働契約の変更によって対応するかはケースによって使い分けるとよいでしょう。基本的なイメージは、

  • 賃金を一律的に引き下げるなら、就業規則を変更する(会社の業績が悪化した場合など)
  • 特定の社員の賃金だけを引き下げるなら、労働契約を変更する(社員の成果が著しく低い場合など)

です。

以上(2024年2月更新)
(監修 有村総合法律事務所 弁護士 小出雄輝)

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【労働条件の変更(3)】「就業規則」による労働条件の不利益変更

書いてあること

  • 主な読者:賃金引き下げなど、社員の「労働条件の不利益変更」を検討している経営者
  • 課題:就業規則の変更手続きの流れが分からない
  • 解決策:労働組合が組織されていない(労働協約を交わしていない)場合は、就業規則の変更によって労働条件を変更する

1 労働組合がない会社が、社員の労働条件を変更するには?

会社の経営状況や働き方の変化などを理由に、労働条件を引き下げることを「労働条件の不利益変更」といいます。労働条件を変える場合、労働組合のある会社であれば「労働協約」の変更で対応するのが通常ですが、

御社に労働組合がない場合、社員の労働条件を変えるには、原則として「就業規則」の変更が必要

になります。また、変更の際は

  • 過半数労働組合や過半数代表者からの意見聴取などを、正しい手続きで進めること
  • 就業規則の変更の合理性など、必要なポイントを押さえること

が大切です。以降で確認していきましょう。

2 就業規則とは?

就業規則とは、賃金や労働時間など一定の労働条件をまとめた職場のルールブックです。社員数が常時10人以上の会社(実際は本店・支店などの事業場単位)の場合、作成は義務です。

就業規則に記載する事項は次の3つに分かれています。なお、「就業規則(本則)」とは別に、「賃金規程」などを別規程で作成する会社は多いですが、法令上は、本則も賃金規程なども全て就業規則に当たります。

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就業規則の効力が及ぶ範囲は、

就業規則の中で適用対象として定めた全ての社員

です。例えば、就業規則の中に「本規程は正社員に適用する」という定めがある場合、正社員にのみ効力が及びます。なお、正社員と異なる労働条件が適用される社員については、そうした社員を適用対象とする「パートタイマー用就業規則」などを別に作成すれば問題ありません。

労働組合がない会社の場合、社員の労働条件は、就業規則か労働契約によって決まりますが、

この両者の間には「就業規則>労働契約」という力関係

があるため、労働契約を変更しても、社員には就業規則の労働条件が引き続き適用されます。つまり、

就業規則のある会社が社員の労働条件を変える場合、まず就業規則を変更する必要

があるわけです。ただし、例外として、

労働契約の労働条件が就業規則を上回る場合のみ、労働契約は就業規則に優先

するというルールがあり、この場合は労働契約の変更で対応することになります。

3 就業規則による不利益変更の流れ

1)新しい就業規則を作成する

本来、会社は社員と合意せずに、就業規則の変更による不利益変更を行うことはできません。しかし、社員の不利益や労働条件を変える必要性など、いくつかの要素に照らして就業規則の変更が合理的といえる場合、社員と合意しなくても不利益変更が可能です。

合理性の判断のポイントは、第4章で事例を交えて紹介しますが、まずは経営者や人事労務担当者が、合理的かどうかを自己判断しながら新しい就業規則を作成することになります。

2)過半数労働組合や過半数代表者から意見を聴取する

就業規則を変更する場合、過半数労働組合(社員の過半数で組織される労働組合)から意見を聴取しなければなりません。過半数労働組合がない場合は過半数代表者(社員の過半数を代表する者)から意見を聴取します。なお、過半数代表者は、次の要件を満たす必要があります。

  • 管理監督者(労働基準法の「監督もしくは管理の地位にある者」、労務管理について一定の責任・権限を与えられている管理職など)でないこと
  • 就業規則に関する意見聴取のために選出されることを明らかにした上で、投票や挙手などによって選ばれた者であること

意見を聴取する際は、意見を聴取される者の氏名、意見の内容、聴取した日付などを書き込める「意見書」(任意の書式)を作成します。

なお、会社と意見を聴取される者が、変更内容について合意することまでは求められていません。つまり、

反対意見が出たからといって、就業規則の変更が無効になるわけではない

ということです。

3)変更した就業規則を所轄労働基準監督署に届け出て、社員に周知する

変更した就業規則は、過半数労働組合または過半数代表者の意見書を添えて、所轄労働基準監督署に届け出ます。書面で直接提出するか、「電子政府の総合窓口(e-Gov)」を使用できる環境にあればデータで送付します。

届け出が完了したら、変更した就業規則を社員に周知します。

就業規則を社員に周知しないと、新しい労働条件が社員に適用されない

ので、注意が必要です。例えば、オフィス内に就業規則を掲示しても、ほとんどの社員がリモートワークをしていて内容が確認できない場合などは、周知したことになりません。社内のイントラネットなど、社員が閲覧しやすい場所・方法で、就業規則のデータを掲示する必要があります。

■電子政府の総合窓口(e-Gov)■

https://www.e-gov.go.jp/

4 就業規則による不利益変更のポイント

1)「就業規則の変更が合理的か」が重要

前述した通り、会社が社員と合意せずに、就業規則の変更による不利益変更を行う場合、その変更が合理的である必要があります。具体的には、次の要素に照らして合理性を判断します。

  • 社員の不利益が大き過ぎないか
  • 労働条件を変える必要があるか(経営上の理由など)
  • 内容は適切か(変更の方向性、不利益の緩和措置、一般的な同業他社の状況など)
  • 労働組合等との交渉を行っているか
  • その他、就業規則の変更に当たって考慮すべき事情を見落としていないか

例えば、「仕事内容を基準にしたジョブ型の人事制度にしたいので、成果や仕事内容との関係性が薄い住宅手当を廃止する」という不利益変更の場合、次のような対応をしていれば合理的といえるかもしれません。

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図表2の場合、「住宅手当を廃止することによる社員の不利益が大きい」のがネックですが、会社としては競争力を上げるためにジョブ型の人事制度への切り替えが不可欠と考えているのが難しいところです。そのため、

住宅手当を廃止する代わりに、調整給を一定期間支給するという落とし所によって、社員の不利益を緩和し、合理性を担保する

という対応になっています。

就業規則を変更する場合、変更に当たって会社が考慮した要素を、図表2のような形であらかじめまとめておくと、過半数労働組合や過半数代表者も、意見を述べやすいかもしれません。

2)必要であれば個々の社員の合意を得る

第3章で紹介した手続きを踏めば、会社と社員が合意しなくても就業規則を変更できますが、変更の内容によっては反感を覚える社員もいるでしょう。社員とのトラブルを回避したいのであれば、

個々の社員の合意を得た上で就業規則を変更し、あくまで反対する社員については個別の労働契約によって就業規則と異なる労働条件を定める

というのも1つの方法です。

以上(2024年2月更新)
(監修 有村総合法律事務所 弁護士 栗原功佑)

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【労働条件の変更(2)】「労働協約」による労働条件の不利益変更

書いてあること

  • 主な読者:賃金引き下げなど、いわゆる「労働条件の不利益変更」を検討している経営者
  • 課題:労働協約の変更手続きの流れが分からない
  • 解決策:労働組合が組織され、労働協約を交わしている場合は、労働協約の変更によって労働条件を変更する。非組合員の労働条件を変更するには就業規則の変更も必要

1 労働組合がある会社が労働条件を変更する方法

会社の経営状況や働き方の変化などを理由に、労働条件を引き下げることを「労働条件の不利益変更」といいます。労働条件を変える場合、

労働組合がある会社なら、原則として「労働協約」の変更が必要

です。また、変更の際は

  • 労働組合との団体交渉などを、正しい手続きで進めること
  • 労働組合との交渉に失敗した場合の対応など、必要なポイントを押さえること

が大切です。以降で確認していきましょう。

2 労働協約とは?

労働協約とは、会社と労働組合が交わす書面の協定で、作成は任意です。労働協約に記載する事項は、労働条件(賃金、労働時間など)、組合活動(組合専従者、組合費の給与天引きなど)、団体交渉(交渉担当者、交渉手続きなど)などです。

労働協約の効力が及ぶ範囲は、

  • 原則:組合員のみ
  • 例外:労働組合が事業場(本社、支店など)の4分の3以上の社員で組織されている場合、組合員と非組合員

です。

労働条件は、労働協約、就業規則、労働契約のいずれかによって決まりますが、これらには、

「労働協約>就業規則>労働契約」という力関係

があります。そのため、就業規則や労働契約を変更しても、組合員には労働協約の労働条件が引き続き適用されます。つまり、

労働協約のある会社が組合員の労働条件を変える場合、まず労働協約を変更する必要

があるわけです。

なお、労働組合の組織率は減少傾向にあります。会社に労働組合がないようであれば、就業規則や労働契約の変更によって労働条件の不利益変更を行います。

3 労働協約による不利益変更の流れ

1)労働組合に対し、団体交渉を申し入れる

労働協約は、会社と労働組合の約束事なので、両者が合意しないと内容を変更できません。合意するには、労働組合と「団体交渉」をする必要があるので、まずは会社がその申し入れをします。申し入れの方法は労働協約などで定めます。例えば、「所定の書面を開催要望日時の○労働日前までに提出する」といった具合です。

申し入れの際は、労働条件の不利益変更を行う理由を明確にします。賃金引き下げを行う場合であれば、「業績が悪化している中で、全社員の雇用を維持するため」などが考えられます。

2)労働条件の不利益変更を行うことについて、会社と労働組合が合意する

労働組合との団体交渉を通して、労働条件の不利益変更を行うことについての合意を得ます。例えば、賃金引き下げを行う場合、団体交渉では次のような点がポイントになります。

  • 賃金引き下げの必要性を裏付ける資料があるか(会社の収益・支出、人件費の推移など)
  • 賃金引き下げの方向性は明確か(基本給を引き下げるのか手当の一部を廃止するのか、具体的にいくら引き下げるのかなど)
  • 賃金引き下げの内容は合理的か(例えば、社員の基本給は引き下げるが、経営者や役員の役員報酬は引き下げないというのは合理的と言いにくい)

団体交渉は1回で決着がつくとは限りません。例えば、賃金を引き下げることについては合意できても、その方法や引き下げ金額について反対意見が出ることなどがあります。そうした場合、ある程度労働組合の意見を尊重するなどして、妥協点を見つけていくことも必要です。

なお、団体交渉を繰り返しても、会社と労働組合が合意できない場合の対応については、第4章をご参照ください。

3)新しい労働協約を作成・締結し、組合員の労働条件を変更する

会社と労働組合が合意した場合、変更箇所や有効期間を確認しながら新しい労働協約を作成します。会社と労働組合それぞれの署名または記名押印があれば有効で、就業規則と違い、所轄労働基準監督署への届け出は不要です。なお、労働協約に決まった書式はありません。

4)就業規則または労働契約を変更し、非組合員の労働条件を変更する

労働協約を変更しても、基本的に非組合員には効力が及びません(事業場の4分の3以上の社員で組織されている労働組合を除く)。そのため、非組合員については、

  • 原則:就業規則を変更
  • 例外:就業規則と異なる労働条件で労働契約を交わしている場合、労働契約を変更

することによって、労働条件の不利益変更を行います。また、

労働協約や就業規則に定めのない労働条件を変える場合については、労働契約を変更

する必要があります(契約期間、契約の更新基準(有期の場合)、就業場所など)。

4 労働協約による不利益変更のポイント

1)労働組合との交渉に失敗した場合は、労働協約の解約を検討する

団体交渉を繰り返しても会社と労働組合が合意できない場合、労働協約の解約を検討するのも1つの方法です。具体的には、

  • 労働協約に有効期間(最長3年)の定めがある場合、期間満了の際に解約
  • 有効期間の定めがない場合、90日以上前に予告した上で解約(予告は、署名または記名押印した文書で行う)

します。

労働協約を解約した場合、労働条件の不利益変更は、就業規則または労働契約を変更して行います。

2)労働協約解約後の規律

労働協約が失効した後の措置について別段の合意がない場合、協約の効力は消滅しますが、新たな労働契約が成立したり、就業規則の合理的改訂がなされたりすれば、これらによって規律されることになります。

以上(2024年2月更新)
(監修 有村総合法律事務所 弁護士 渡邉和也)

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