【朝礼】プレゼンやスピーチで必要な「語彙力」と「表現力」を鍛える方法

皆さんはプレゼンやスピーチをする際、言葉に詰まってしまった、あるいは一生懸命話しているのに、言いたいことがうまく相手に伝わらなかった経験はありませんか? それは「語彙力」と「表現力」が足りていないからかもしれません

語彙力は、知っている言葉の数とそれらを適切に使う力。表現力は、言いたいことを効果的に相手に伝える力です。どちらもビジネスには不可欠ですが、仮に今の段階でこれらの能力が足りていなくても落ち込む必要はありません。どちらもちょっとしたトレーニングで鍛えられるからです

ここで、1つの実験をしてみましょう。今から30秒以内に、「花」の名前を10個思い浮かべてみてください。口に出すと隣の人に聞こえてしまうので、頭の中に思い浮かべるだけで結構です。では、スタート! ……ハイ! 30秒たちました。花の名前は10個浮かんだでしょうか?

実はこの実験、私が最近読んだ広告代理店のスピーチライターの書籍(*)で紹介されていた、語彙力を鍛えるトレーニングなのです。花の名前のように、冷静に考えれば必ず10個出てくるような言葉でも、短い時間の中で思い浮かべろと言われるとなかなか難しいもの。だからこそ、言葉を瞬時に脳から引き出せるトレーニングをして、知っている言葉を適切なタイミングで使う語彙力を身に付けるのです。このトレーニングを継続すれば、プレゼンやスピーチの際に言葉に詰まることもなくなっていくでしょう。

では、もう1つ、今度は表現力のトレーニングを紹介します。それは「形容詞を使わないで話す」というものです。例えば、面白い映画を見たときなどは、「面白かった」「すごかった」といった表現を多用しがちですが、これを我慢し、「ベテランの役者が年齢を感じさせない機敏なアクションをしていた」など面白いと思った理由を掘り下げたり、「髪の毛が逆立つかと思った」などすごさを自分の身体感覚で表したりしてみるのです

ビジネスの場でも、例えば、「この新製品は、旧製品に比べて、とても使いやすいです」と言っても、どこが使いやすくなったのか伝わりません。ですが、「旧製品に比べて重量を10%軽くし、片手でも開閉できる機能を付けましたので、お子さま連れのお客さまにも扱いやすくなりました」と表現すれば、新製品の使いやすさがしっかりと伝わります。

私も昔はプレゼンやスピーチが苦手でしたが、語彙力と表現力を高めることを意識してトレーニングを継続するうちに、人前で話をするのが好きになっていきました。今日紹介したトレーニングは楽しみながらできるものですから、ぜひ継続的に取り組んで「プレゼンやスピーチのマスター」を目指してください!

【参考文献】(*)「博報堂スピーチライターが教える5日間で言葉が『思いつかない』『まとまらない』『伝わらない』がなくなる本」(ひきたよしあき、大和出版、2019年4月)

以上(2023年8月)

pj17143
画像:Mariko Mitsuda

「共感型採用」で、中小企業に人が集まり競争力も上がる

書いてあること

  • 主な読者:採用に悩むすべての経営者。共感型採用に興味のある中小企業の経営者、人事担当者、採用担当者
  • 課題:限られた採用予算で優秀な人材を確保したいがうまくいっていない。待遇や給与面で比較されない、独自の魅力で勝負できる採用ブランディングを実現したい。自分たちの魅力、やっていることを理解し、賛同してくれる人を採用したい
  • 解決策:なぜ中小企業ほど共感型採用が大切なのかを知る。共感型採用の具体的なやり方を知り、自社に活かす方法を考える。自社に隠された魅力を社員インタビューで掘り起こし、言語化する

1 共感型採用とは

共感型採用。聞き慣れない方も多いかもしれません。共感型採用とは、

待遇や給与面に焦点を当てるのではなく、企業のビジョンや理念への共感を通じて応募者を採用する手法

です。

ここ最近「求人広告に掲載しても、以前のように人が採用できなくなってきた」というお悩みを、企業様からよくお聞きするようになりました。

人材獲得競争が激化し、従来の方法では人材を採用できなくなる時代。長く活躍してくれる人材の採用に大変有効なのが、自社の事業やビジョン、思いへの共感を通じて採用を行う「共感型採用」なのです。

2 中小企業における共感型採用の重要性

中小企業は、大手企業に比べて採用予算を確保しにくく、待遇や福利厚生面でも大手企業を上回ることがなかなか難しい状況にあります。

「では、中小企業は、優秀な人材を確保できないのか」と言うと、決してそうではありません。

中小企業には、独自の技術、ユニークなサービス、経営者や社員の熱い思い、柔軟な働き方といった、その会社ならではの素晴らしい魅力がたくさんあります。そうした魅力を、自信を持って応募者に伝えることで、待遇や福利厚生面などの土俵ではなく、独自の価値で勝負できるようにする。そうすれば、自社本来の魅力や価値を理解した上で入社し、長く活躍してくれる人を採用しやすい状態を作ることができます。

待遇や福利厚生面といった「他社とも比較しやすい土俵」ではなく独自の価値で勝負。これはある意味、自分たちだけの採用スタイル、採用戦略ともいえるでしょう。

結果、中小企業でも、人材紹介や求人広告に頼り過ぎることなく、採用コストを抑え、費用対効果の高い採用手法を確立できるようになるということです。

3 共感型採用を実現するための具体策

では、具体的に「共感型採用」をどのように実現していくか、いくつかポイントを見ていきましょう。

1)自社の採用ページの文面の見直し

もし、自社の採用ページが既にあり、ある程度のアクセスがあるのならば、まずはその文章を見直してみることをオススメします。特に意識したいのは、以下の3点です。

  • どのような事業をしているのか、強みは何かを、その業界ではない人にも分かりやすく伝えること
  • なぜ今の事業をやっているのか、創業の思いやめざす未来を伝えること
  • 実際に働くイメージが湧くように、社風や企業文化を伝えること

このあたりに重点を置いて、現在の採用ページの文章ではそれらが正しく伝わっているのかを見直し、文章を構成してみましょう。

2)採用媒体(プラットフォーム)の活用

共感型採用の実現と相性が良いのが、例えば「Wantedly(ウォンテッドリー)」などの採用媒体の活用です。

Wantedlyには、待遇や給与面は一切書かず、事業内容や思いを発信することで応募者を獲得できるという特徴があります。ユーザーは300万人、やりがいや自己実現に重きを置く、中小企業やベンチャー企業と相性の良い応募者が多い媒体でもあります。

もし、自社の採用ページが今は無かったり、そこまでアクセスが多くなかったりするようであれば、Wantedlyのように、すでにユーザーが多くいる採用プラットフォームを使うことをおすすめします。

当社(筆者の会社)のお客様もこのWantedlyを活用し、スタートアップ企業ながら、募集記事掲載から4カ月で、ベンチャーマインドの高い営業パーソン2名の採用に成功されました。

3)求人広告の内容の見直し

「現在求人広告を出しているのに、うまく採用できない」という場合は、求人広告の冒頭に書く文章の見直しをするのも一つの方法です。

  • どのような事業をしていて(事業内容)
  • なぜその事業をやっていて(ミッション)
  • どのような未来を作りたいか(ビジョン)

を意識し、待遇よりも思いや価値に共感してもらえる文章を整えてみましょう。

4 自社の魅力の発掘は社員インタビューで

「そうは言っても、自社の魅力がなかなか分からない。言語化しにくい」という企業様も多くおられます。

そんな時にはぜひ、社員インタビューの実施をおすすめします。

社員インタビューは、文章にすることで採用ページやホームページに掲載する記事の素材にもなりますので、採用や広報担当者の方に余裕があれば、ぜひ実施してみてください。現場で働く社員の生の声を聞くことで

  • 応募者は自社のどこに魅力を感じて入社するのか
  • 長く活躍している社員にとって、自社のどこが魅力なのか

といった、自社独自の魅力を新たな視点から発掘することができます。インタビューでは、現場で働くからこそ分かる、具体的な仕事内容や職場の雰囲気、企業文化などを聞き出し、応募者の共感を集める採用ブランディングを実現していきましょう。

5 まとめ

人材採用難のこの時代。待遇に焦点を当てるのではなく「共感型採用」を導入することは、

限られた採用予算を効果的に活用し、自社に適した優秀な人材を確保し、企業競争力を向上させるために最も適した採用手法

です。自社独自の魅力を明確にし、他社の成功事例を参考にしながら、ぜひ、共感型採用を実践されてみてはいかがでしょうか。

以上(2023年8月)

pj00675
画像:Rawpixel.com-Adobe Stock

バス、タクシー、トラック業界のDX!業務後自動点呼がスタート

書いてあること

  • 主な読者:バス、タクシー、トラック事業者の運行管理者
  • 課題:目視・対面で点呼をしなくても良くなったらしいが詳しく知りたい
  • 解決策:法令など最新情報を確認し、自社の実情に合った対応を進める

1 「点呼」は目視・対面でなくてもOKに

日本の旅客や物流を支えるバス、タクシー、トラックの運行管理者の皆さん。ドライバーに対して実施しなければならない日々の「点呼」のスタイルが大きく変わりつつあります。

従来は、顔を見て、声を聞き、挙動やにおいも分かる「対面点呼」が当然でした。しかし、いわゆる「新・点呼告示」(2023年3月31日・国土交通省告示第266号。対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定める方法を定める告示)によって、

所定の要件を満たす機器を使った「業務後自動点呼」や「遠隔点呼」も認められる

ようになったのです。

「2024年問題」が迫る自動車運送業界。運行管理者の業務の1つとして重要な「点呼」ですが、その業務負担は、こうした機器の導入で軽減できる可能性があります。ひいては、業界全体のDXにつながることが期待されます。

この記事では、運行管理者が点呼に立ち会わなくてもよい「業務後自動点呼」に特に注目し、自動点呼に対応するための要件などについて分かりやすく解説します。

2 業務後自動点呼を始めるには

1)対象事業者はバス、タクシー、トラック事業者

業務後自動点呼や遠隔点呼が認められるのは、バス、タクシー、トラックの3業種いずれかの事業者に限られます。

自家用の営業車などを使っている「白ナンバー事業者」にも、ドライバーに対して運転前後の飲酒チェックが義務付けられています(アルコール検知器の使用義務化は2023年12月1日から施行予定)が、「新・点呼告示」では対象外です。

2)業務後自動点呼を行うためには

業務後自動点呼は、運行管理者等の立ち会いなしで、

点呼で実施する確認、指示、判断、記録の一部または全てを、国が定める機器認定要件を備える自動点呼機器に代替させる

ものです。

業務後自動点呼は、営業所または営業所の車庫で、その営業所に所属するドライバーに対して行うことが認められています。業務後自動点呼を行おうとする営業所を管轄する運輸支局に、実施予定日の10日前までに届け出をすることが必要です。

なお、国土交通省「運行管理高度化検討会」のウェブサイトで、運送事業者向けチェックリストや、認定を受けた自動点呼機器が紹介されています。詳細は次のウェブサイトをご確認ください。

■国土交通省「運行管理高度化検討会」■
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk2_000082.html

ここでは、業務後自動点呼を行うために満たさなければならない、「自動点呼機器の機能の要件」「自動点呼機器を設置する施設・環境の要件」「自動点呼機器の運用上の遵守事項」について解説します。

1.自動点呼機器の機能の要件

自動点呼機器の機能の要件は、新・点呼告示第9条第1号~第14号にわたって定められています。具体的には次のような機能を備えた機器を導入する必要があります。

  • 業務後自動点呼に必要な事項の確認、判断および記録を実施できる機能
  • 運行管理者等が、ドライバーごとの点呼の実施予定、点呼に責任を持つ運行管理者の氏名を入力し、点呼の実施状況および実施結果を確認できる機能
  • 個人を確実に識別できる生体認証(顔認証、静脈認証、虹彩認証など。以下同じ)でドライバー本人と識別された場合に、点呼を開始する機能
  • 生体認証でドライバー本人と識別された場合に、アルコール検知器が作動する機能
  • アルコール検知器による測定結果(ドライバーの呼気中のアルコールの有無または濃度)や、測定時の静止画または動画を自動的に記録・保存する機能
  • ドライバーの呼気中にアルコールが検知された場合に、運行管理者に警報または通知を発し、業務後自動点呼を完了できなくする機能
  • ドライバーが従事した運行業務に係る自動車、道路、運行状況、交代するドライバーに対する通告について、ドライバーが口頭で報告した内容をデータとして記録し、運行管理者が確認できる機能
  • 運行管理者がドライバーに伝える指示事項を、ドライバーごとに画面表示または音声により伝達できる機能
  • 業務後自動点呼に必要な事項の確認、判断および記録がなされない場合や、機器が故障した場合に、業務後自動点呼を完了できなくする機能
  • ドライバーごとに業務後自動点呼の実施予定時刻を設定でき、予定時刻を過ぎても業務後自動点呼が完了しない場合に、運行管理者等に警報または通知を発する機能
  • 業務後自動点呼を受けたドライバーごとに、業務後自動点呼の実施記録(運行管理者の氏名、当該ドライバーの氏名、実施日時などの項目)をデータとして記録し、その記録を1年間保存する機能
  • 自動点呼機器が故障した場合、故障発生日時や故障内容をデータとして記録し、その記録を1年間保存する機能
  • 業務後自動点呼の実施記録や機器の故障発生の記録は修正・消去ができない、または修正できても変更前の情報が保存され消去できない機能
  • 自動点呼機器に保存された、業務後自動点呼の実施記録や機器の故障発生の記録を、CSV形式で出力できる機能

2.自動点呼機器を設置する施設・環境の要件

自動点呼機器を設置する施設・環境の要件は、新・点呼告示第10条に定められています。

なりすまし、アルコール検知器の不正使用および所定の場所以外で業務後自動点呼が実施されることを防止するため、

業務後自動点呼実施場所の天井などに監視カメラを備え、運行管理者等が、業務後自動点呼を受けるドライバーの全身を常時または業務後自動点呼実施後に、明瞭に確認することができること

が求められます。

3.自動点呼機器の運用上の遵守事項

自動点呼機器の運用上の遵守事項は、新・点呼告示第11条第1号~第11号に定められています。詳細は割愛しますが、

  • 業務後自動点呼の運用に関し必要な事項について、あらかじめ運行管理規程に明記し、関係者(運行管理者等、ドライバー)に周知すること
  • 自動点呼機器の使用方法、故障時の対応などについて、関係者にあらかじめ教育・指導を行うこと
  • ドライバーの呼気からアルコールが検知された場合や、自動点呼機器が故障した場合に、運行管理者が確認できる体制を整えること
  • 業務後自動点呼の対象となるドライバーの識別に必要な生体認証情報は、本人の同意を得て取得すること

などが求められます。

業務後自動点呼は、条件付きで認められるもので、

運行管理者等は点呼に立ち会う必要はないものの、非常時に常に対応できる体制

が必要です。非常時には自動点呼は完了しないので、運行管理者等がすぐに駆けつけ対応できるようにしなければならないでしょう。

3)業務後自動点呼の実施に係る届け出の様式

繰り返しになりますが、業務後自動点呼を行おうとする場合、当該の営業所を管轄する運輸支局に、実施予定日の10日前までに届け出ることが必要です。業務後自動点呼の実施に係る届出書は、前述した国土交通省「運行管理高度化検討会」のウェブサイトから入手できます(次のURLから直接Wordファイルをダウンロード可能です)。

■業務後自動点呼の実施に係る届出書(旅客運送用)■
https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001736953.docx
■業務後自動点呼の実施に係る届出書(貨物運送用)■
https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001736956.docx

届出書は1枚ですが、添付書類は多岐にわたって用意する必要があります。届け出自体は、運輸支局の担当宛てにメール送信でも可能です。

3 自動点呼機器の導入費用の補助・助成

業務後自動点呼を行うためには、自動点呼機器や監視カメラの導入が欠かせません。

国土交通省は、「過労運転防止のための先進的な取り組みに対する支援」などとして、自動点呼機器などを導入する自動車運送事業者向けに補助事業を行っています。

2023年6月末時点で対象機器の募集が行われており、その選定が終わった後、支援施策の詳細が公表される予定です。

■国土交通省自動車局「事故防止対策支援推進事業」■
https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/subcontents/jikoboushi.html

また、全日本トラック協会では、各都道府県トラック協会の会員事業者のうち、中小事業者を対象として、自動点呼機器の導入費用(周辺機器、セットアップ費用および契約期間中のサービス利用料を含む)の一部を助成しています。助成額は、1事業者当たり1台分(上限10万円)で、安全性優良事業所(Gマーク事業所)を有する事業者は2台分(上限20万円)になります。

■全日本トラック協会「令和5年度 自動点呼機器導入促進助成事業について」■
https://jta.or.jp/member/shien/tenko2023.html

4 近い将来、「業務前」自動点呼もOKに?

2023年3月23日に開催された国土交通省「運行管理高度化検討会(令和4年度第4回)」では、業務前自動点呼の導入に向けた実証実験を2023年度前半に開始するとしており、早ければ2023年12月ごろから業務前自動点呼が解禁されるかもしれないという見立てもあります。今後も、政策の動向をウオッチしながら、自社の実情に適した点呼のあり方を探ってみてはいかがでしょうか?

以上(2023年8月)

pj60249
画像:scharfsinn86-Adobe Stock

中小企業の経営者が知っておきたい 相続トラブルと事前対策

相続トラブル自体は、中小企業の経営者に限らず、ありとあらゆる人について発生する可能性がある比較的一般的な法律問題です。
相続が「争続」などと呼ばれるトラブルステージに至りますと、死んでしまった親族ら(法的には「被相続人」と呼ばれる)の資産について、換価出来るもの・出来ないものを問わず、それこそ1円単位を巡り、血で血を洗うような抗争が長期に亘って繰り広げられます。終了後の親族関係は「まるで核戦争後の荒廃したデストピア」のようになり、復興することはまずありません。
では、このような相続トラブルについて「中小企業の経営者」に発生する特有の現象とはどのようなものか?それは資産の食い合いが、そのまま大波のように「企業統治」に波及する状態です。

この記事は、こちらからお読みいただけます。pdf

男性の育休取得について

男性の育休取得は、2022年10月の新制度、出生時育児休業(産後パパ育休)の創設でより注目されることとなりました。さらに、2023年4月から「常時雇用する労働者」が1,000人を超える企業は、男性労働者の育児休業等の取得状況を年1回公表することが義務付けられました。

本稿では、一連の法改正により関心が高まっている男性の育児休業について、取得の現状や企業に課せられる法律上の義務などをご紹介します。

1 男性育休の取得率

厚生労働省「イクメンプロジェクト」、株式会社ワーク・ライフバランス、認定NPO法人フローレンスの三者が国内の企業を対象に行った独自の実態調査「男性育休推進企業実態調査2022」によると、回答企業平均の男性育休取得率は76.9%、平均取得日数は40.7日という結果となりました。

■男性育休取得率・平均取得日数の推移

男性育休取得率・平均取得日数の推移

この調査回答企業142社においては、男性の育児休業取得が定着してきたと言えるかもしれません。しかしながら、厚生労働省が発表している男性育休取得率は2020年12.65%、2021年13.97%となっており、また、2021年の育休の取得期間は、5日未満25.0%、5日~2週間未満26.5%と2週間未満が5割を超えるなど、全企業に浸透してきたと言える状況にはありません。

【男女の育児休業の取得期間の状況】

【男女の育児休業の取得期間の状況】

(厚生労働省「雇用均等基本調査」)

2 育児休業に関する企業の義務

日本では少子高齢化と労働力人口の減少が進んでおり、出産・育児を支援して労働者の離職を防ぐことは非常に重要な課題です。このことから、出産や育児に際する労働者を保護するべく法律も整備されてきました。以下に、法律により定められた育児休業に関わる企業の義務をご紹介いたします。

育児休業に関わる企業の義務

3 さいごに

企業が男性の育児休業を推進するメリットは、①労働者のワーク・ライフ・バランスが向上し、定着率がアップする、②「働きやすい企業」のイメージアップにつながり、採用に有利になる、③業務の属人化を低減させ、業務量・バランスの標準化につながる、といったものが考えられます。

また、育児休業を推進することで、両立支援等助成金(出生時両立支援コース、育児休業等支援コース)を活用することもできます。

企業は、育児介護休業規程などの運用規程の整備や、職場からの積極的な働きかけやサポートを行い、ワーク・ライフ・バランスのとれた働き方ができるよう、より良い職場環境の実現につなげていくようにしましょう。

※本内容は2023年7月14日時点での内容です

(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)

sj09084
画像:photo-ac

中小企業の経営者が知っておきたい 社員の私有自転車を業務利用させる場合のリスク管理

社員の自転車乗用中の交通事故が業務中の事由または業務の一部と捉えられる通勤途上で起こった場合、加害者たる社員を雇用する会社は、報償責任の原理(利益あるところに損失を帰せしめるのを公平とする考え方)により、(1)民事的責任、(2)刑罰的責任、(3)社会的(道徳的)責任を問われます。
業務用自転車による事故はもちろんですが、私用自転車であっても業務中や通勤途上で事故が発生すれば、会社の責任が問われ得ることに注意が必要です。

この記事は、こちらからお読みいただけます。pdf

中小企業の経営者が知っておきたい 社員の私有自転車を業務利用させる場合のリスク管理

1 自転車による交通事故は増加している~ヘルメット着用が努力義務化される背景(令和5年4月1日)~

令和4年中の交通事故の発生状況(警察庁交通局)によれば、交通事故全体の発生件数は前年より減少しているにも係わらず、自転車乗用中の交通事故は69,985件、前年より291件増加しています。また、交通事故全体の発生件数300,839件に占める自転車乗用中の交通事故の割合は約23%と高止まり、その構成比は平成28年以降ずっと増加傾向にあります。

また、自転車乗用中の死傷者数は68,140人と交通事故全体の死傷者数359,211人に占める割合は約19%であり、歩行中の死傷者数38,195人に比べ約1.7倍と高い数値を示しています。

同統計の自転車乗用中のヘルメット着用有無別死傷者数によれば、自転車乗用中の死傷者数68,140人の内、60,274人がヘルメットを非着用、非着用死傷者率は88.5%でした。

こうした状況を踏まえ、改正道路交通法の施行により、令和5年4月1日から自転車利用者のヘルメット着用が努力義務化されることになりました。

これまでも、児童や幼児が自転車に乗る際、ヘルメットの着用は努力義務とされていたのですが、4月の法改正では、年齢にかかわらず自転車利用者全員に適用されるようになったのです。

このように、自転車による交通事故が増加しているということを、まず知っておきましょう。

2 自転車による交通事故と会社の責任

社員の自転車乗用中の交通事故が業務中の事由または業務の一部と捉えられる通勤途上で起こった場合、加害者たる社員を雇用する会社は、報償責任の原理(利益あるところに損失を帰せしめるのを公平とする考え方)により、(1)民事的責任、(2)刑罰的責任、(3)社会的(道徳的)責任を問われます。

業務用自転車による事故はもちろんですが、私用自転車であっても業務中や通勤途上で事故が発生すれば、会社の責任が問われ得ることに注意が必要です。

●表1 私用自転車事故の会社責任

業務使用実態

事故発生時の状況

業務中

通勤途上

私用中

日常的業務使用

私用自転車を業務使用するように会社が命令、業務遂行のために私用自転車が必要で日常業務的に継続的使用をしている場合

便宜的業務使用

業務遂行のために私用自転車を使う必要はないが、使った方が便利・効率的であり、かつ会社が黙認・許可している場合

業務使用なし(通勤のみ使用)

業務使用を厳禁しており、実態としても業務使用が一切ない場合

×

◎:会社責任を問われ得る
○:一般的には会社責任を問われ得る
△:場合によっては会社責任を問われ得る
×:会社責任を問われない

この記事の全文は、こちらからお読みいただけます。pdf

sj09083
画像:photo-ac

男性の育休取得について

男性の育休取得は、2022年10月の新制度、出生時育児休業(産後パパ育休)の創設でより注目されることとなりました。さらに、2023年4月から「常時雇用する労働者」が1,000人を超える企業は、男性労働者の育児休業等の取得状況を年1回公表することが義務付けられました。

本稿では、一連の法改正により関心が高まっている男性の育児休業について、取得の現状や企業に課せられる法律上の義務などをご紹介します。

この記事は、こちらからお読みいただけます。pdf

【経理人材の育成(4)】業務改善と人材育成にもつながる。 会議のあり方・進め方の見直し

書いてあること

  • 主な読者:経理人材の育成や、経理部全体の効率化に悩む中小企業のマネジメント職
  • 課題:慣行で行われている会議や、何年もやり方を変えていない会議が多い
  • 解決策:会議は基本問題解決の場として設定する。そのためには、部下が上司にトラブルや問題点などを気兼ねなく言える雰囲気づくりのほか、会議の種類ごとの特徴をつかんだ上で、適切な会議を設定する

1 会議の実態:会議に充てる時間が毎日1時間以上

皆さんの会社でも、いくつもの会議が行われていると思います。経理部内、事業部門や経営者が相手、あるいは顧問税理士など社外の専門家との会議という場合もあるでしょう。

そこで、今回は

会議をテーマに取り上げて、経理部はどのように会議を活用したらいいのか、人材育成も含めた観点

から見ていきたいと思います。

以前新聞で見たアンケート結果によると、一般社員でも平均すると、毎日1時間程度の会議があるという話でした。そして、役職が上がっていくにつれ、2倍、3倍に増えていくとのこと。おそらく管理職の皆さんは、一日に2~3つの会議があり、準備も入れると半日程度費やしているという方が多いのではないでしょうか。意思決定のハブとして機能するためには、これぐらい必要になってしまうのではないかという印象が、自分の管理職経験からしてもあります。

また、経理の非管理職の方でも、昼はずっと会議で埋まっているという話を聞いたことがあります。その結果、作業時間がとれるのは夕方以降だそうで、毎日残業続きで大変そうでした。

社歴が長い会社であればあるほど、慣習的に行われている会議や、何年もやり方を変えていない会議もあると思います。業務改善の取り組みの一環として、自身の周りの会議のあり方・進め方を見直してみましょう。

2 経理にとっての会議:会議だけでは仕事は進まない

会議が多ければ、その分、作業時間が減るのは当然です。私たち経理は、伝票処理などの一定程度の作業時間をとらなければ、業務が遅れてしまいます。ゆえに、この一定程度の作業時間の存在を前提として、会議の量をコントロールする必要があるのです。これが経理にとっての会議を考える上で、1つ目のポイントになります。

2つ目のポイントは、会議は問題を解決する場として活用すべきという点です。私たち経理の業務は定型のものや、決算のように定期的に行われる業務が多くあります。そのため、大抵の業務は問題なく進むものの、時折、何らかの理由で遅れたり、トラブルが生じたりすることがあります。まさに会議は、このような担当者個人では解決が難しい問題(遅れやトラブル)を、上司やチームの力を借りて解決するためにこそ活用されるべきです。定例会議の場では、進捗報告が行われることがありますが、進捗を共有すること自体は手段にすぎません。本当の目的は問題を発見し、その上で解決することにあるのです。現場担当者に比べて豊富な知識や経験、人脈や権限を使って解決に近づけるケースも多いはずです。

ここで大切になるのが、部下が上司に対して今起きている問題をスムーズに報告できる会議の雰囲気づくりです。

3 会議に求められる雰囲気づくりの肝は“心理的安全性”

「会議では問題を扱うべき」という話をすると、メンバーからは「問題を報告するとうちの上司は機嫌が悪くなる」という声がしばしばあがります。確かに、自分がスタッフだった頃を考えると、やはり上司に悪い報告をするのは勇気が必要でした。そのことを見越して、私の日本マクドナルド時代の上司は「Bad News First」という標語を作り、ことあるごとにこの言葉を口にして、部内に浸透させていました。

課題や問題といった悪いニュースを伝えてくれるメンバーは、管理職自らそれを発見する手間と時間を省略させてくれる、部の運営上とても助かる存在のはずです。また、このような問題提起ができるメンバーは、リスク把握力が高いことが多く、今後の人材育成や部内の人材配置においても考慮に入れると効果的です。

近年、効果的に働くためには「心理的安全性」が大事と言われますが、私は

「悪いことでもメンバーが口に出せる状態かどうか」

ということだと捉えています。特に、複数のメンバーが参加する会議の場では、他人の目が気になるはずです。どのような意見に対しても即否定せずに、まずは発言してくれたことに感謝しつつ、なぜそう思うのかを穏やかに質問します。また、何か悪い報告があった場合は、個人を責めるのではなく、まずは事実の確認に徹しましょう。その上で、よく言われることですが、本人に反省を促す必要がある場合には、他の人がいないところに行き、1対1で話すのがベストな方法です。

ただ、すべての会議で同じやり方が通用するわけではありません。会議の種類(定例会議・臨時会議・1on1)ごとに、目的と進め方にポイントがありますので、次章で解説していきます。

4 会議の目的と進め方を整合させる

1)定例会議

定例会議の最大のポイントは、

「意味がある」議題を用意すること

です。もし皆さん管理職からみて、トラブルが無さそうなことがあらかじめ分かっていたり、そもそも重要な作業・イベントがない期間だったりすれば、会議自体をキャンセルしてもいいのです。この判断をできるのは主催者である管理職だけなので、定例だからと惰性で開催するのではなく、辞める勇気を持ってください。逆に、何か話し合った方がいい話題があれば、慣習的に行われている進捗報告に代わって、それを議題にしましょう。

そうすることで、必要なことを話せる場ができ、かつメンバーにとっても会議の重要性が伝わるため、結果として会議が活性化します。

ちなみに、多くの会社では、開始時刻は比較的守られるものの、終了時刻がうやむやになるケースが多いようです。終了時刻を守れるように、管理職の方は会議の進行管理に気を付けましょう。例えば、議題ごとに予定時間を設定したり、一人当たりの発表時間をあらかじめ定めたりするのも役に立ちます。また、1時間の会議を設定するケースが一般的ですが、スタートアップ企業でよく取り入れられているように、あえて30分間や45分間といった従来よりも短い時間枠で設定することで、緊張感が生まれることもあります。

2)臨時会議

スポットで生じた議題を話し合う臨時会議の最大のポイントは、

参加者選び

です。何か問題が生じると、念のためあの人も呼んでおこうと会議が大きくなりがちです。参加者が増えるとスケジュールの調整が難しくなり、開催が先延ばしになることもしばしばです。しかし、目的が問題解決ということであれば、会議を開催するスピードも大事です。

なるべく早く開催するためにも、関係が薄い人は参加者から外しましょう。内容が分かる人とその場で決定できる人の2種類がいれば十分です。回数も可能な限り一度で済ませましょう。
まとめると、臨時の会議は、小さく・早く・少なく開催できると、当初の課題が解決しやすいと私の経験から感じます。臨時で会議を開く目的はまさに問題の解決ですが、会議のあり方が問題解決に少なからず影響するということです。

3)1on1

次に、近年増えてきた1対1で行う面談(1on1。ワンオンワン)です。主に、日々の業務目的というよりは、各人の人材育成の観点から開催されることが多く、頻度も月次あるいは四半期に一度程度というケースが多いようです。つまり、短期ではなく中長期のスパン、業務ではなくメンバー個人の話をする場として一般に使われています。

1on1の最大のポイントは、

相手に話題を委ねること

です。この会議では、皆さんが議案を決めたり、進行したりしてはいけません。ひたすら相手の話を聞くことに徹します。これまで皆さんが経験してきた会議とは性質が大きく異なるため、はじめは慣れずに居心地が悪いかもしれません。あるいは、上司部下の関係において、心理的安全性が低い場合には、なかなか口を開いてもらえないかもしれません。その場合には、この場の趣旨に何度も触れたり、皆さん自身の他愛もない話をしたりするのもいいでしょう。日頃は業務の話しかしない上司が自分の話をすると、メンバーにとっては意外性が高いため親近感をもってもらうきっかけになりやすく、効果は高いものです。なお、もしメンバーが口を開いた内容が、業務の話だった場合には、注意しましょう。なぜなら、業務自体に関するコミュニケーションの量や質が不足していることのシグナルと考えられるためです。

1on1は、個人の思いや考えなど、人材育成のベースとなる情報を得る場として最適かつきわめて重要だと私は考えています。会議として設定することで、多忙でも時間がきちんと確保されやすいこと、継続して定点観測できること、個別に向き合うことができることなど、数多くのメリットがあります。

3つのタイプの会議を見てきましたが、それぞれの会議の特徴や進め方を理解した上で、議題を絞り込んだ会議を、何重にも活用することが大事です。

複数人いる会議であれば緊張感を活用できますし、1対1であれば限りなく相手に合わせた内容にすることができます。会議を問題解決の場だけに使うのでなく、ぜひ人材育成の場として活用してみてください。管理職の日々はあまりに忙しく、最近様子が気になるメンバーがいたとしても「時間があるときに個別に話そう」となりがちです。しかし、そう思いつつも気が付いたときには、そのメンバーから退職届が出てくるかもしれません。手遅れにならないように、ぜひ会議という身近な手段を上手に活用してみていただけると幸いです。

以上(2023年8月作成)

pj35153
画像:Shutter z-kittiphan-shutterstock

【中堅社員のスピーチ例】自分の「旗印」になる言葉を掲げよう

少し先の話ですが、皆さんは、2024年に開催されるパリ五輪の新たな種目に、「ブレイキン」という競技が加わることをご存じでしょうか? まだ「マイナースポーツ」の位置付けでしょうが、国内の競技人口は600万人という推測もあり、特に若者には人気があります

私もブレイキンのことをよく知らなかったのですが、テレビで大会の様子や選手のプロフィールなどを知って、とても興味を持ちました。もちろん、ダンスのパフォーマンス自体の動きの激しさやテクニックもすごいと思ったのですが、それと同じくらい興味を持ったのが、ブレイキン特有の「ダンサーネーム」です

ブレイキンでは、各選手が本名とは別にダンサーとしての名前を持っており、観戦者も選手のことをダンサーネームで呼んでいます。ダンサーネームの付け方は選手によって異なるのですが、アルファベット3文字、ひらがな1文字、アルファベットとひらがなをミックスさせた名前など、奇抜なものもあります。ですので、名前を見てもどんな意味があるのか分からなかったり、「そんな名前でいいの?」と思ったりすることもあります

そこで、私は、一部の選手のプロフィールをインターネットで検索して、ダンサーネームの由来を調べてみました。調べてみると、本名や自分の理想とする言葉をもじったり、あるいは過去の思い出などを表す言葉を入れたりしたダンサーネームなどもあるようでした

私が感銘を受けたのは、彼らの中に、自分がダンスで表現したいこと、ダンスを通じて伝えたいことを、ダンサーネームに込めている選手がいたことです。こうしたダンサーネームは、自分の進むべき道の「旗印」としての存在だといえるかもしれません。

また、自分の思いを込めたダンサーネームがあることで、つらいときに、その名前が自分の背中を押してくれる、という選手もいるそうです。選手にもよるでしょうが、ダンサーネームには、それだけの「重み」があり、敬意を持って呼ぶべき名前なのだということを知りました

ダンサーネームのことを知って、私は、果たして自分には、自分の「旗印」のような指針となり、つらいときに自分の背中を押してくれるような言葉を持っているのか、思い巡らすようになりました。座右の銘や、好きな言葉はありますが、「これが、自分の進む道だ」「自分が最も大切にしている、この言葉に恥じないように頑張ろう」とまで思えるほどの言葉は、明確に持っていなかったと思います

そこで、私も、ダンサーネームではありませんが、自分の「旗印」となるような、広い意味で自分の「キャッチフレーズ」といえる言葉を考えてみることにしました。ここでは明かしませんが、いくつか候補を考えています。皆さんも、キャッチフレーズを付けることで自らの「旗印」を掲げてみませんか?

以上(2023年8月)

pj17142
画像:Mariko Mitsuda