逆流性食道炎の対策は「遅い時間に食べるのをやめること」から

遅い夕食

1 「遅い夕食」で胃食道逆流症のリスクが上昇!?

胃食道逆流症(逆流性食道炎)は、胃液や胃の内容物が食道に逆流して起こる病気です。
胃の粘膜には、胃液に含まれる胃酸から胃を守る働きが備わっていますが、食道の粘膜にはそのような働きがありません。そのため、胃酸が食道に上がってくると、粘膜にただれができたり、胸やけや、酸っぱいものが込み上げてくる呑酸(どんさん)も典型的な症状です。

胃食道逆流症(逆流性食道炎)の原因となるのは、「脂肪分の多い物や肉類の食べ過ぎ」「アルコール飲料」「早食い」「食後すぐに横になる」「精神的・身体的ストレス」「遅い夕食時刻」などがあります。

慢性的な胸焼け・せき・副鼻腔炎などの症状を訴えていたあるレストラン経営をしている男性が、毎日午後11時頃に仕事を終え帰宅後に夕食をとってから眠る、という生活スタイルを、夕食を午後7時に食べて、仕事の後は何も食べないようにすることや、寝る前のアルコールを控えるように変えただけで、6週間以内に症状が治まりました。

健康な人なら数時間ほどで胃内の食物が空になりますが、高脂肪の食品を食べ過ぎると、消化がさらに遅くなる傾向があります。就寝前の間食も逆流を促す原因となります。

遅い時間に飲食をする生活スタイルがある方は、生活を見直してみてはいかがでしょうか。

【注意】医師の指示を受けている方は、必ず医師の指示を優先してください。

2 休肝日はアルコール性肝臓病予防にも効果的!

アルコール性肝臓病を予防するために週に3~5日の休肝日が効果的であることが、5万人以上を対象とした調査で明らかになりました。

アルコールを飲み過ぎると、「脂肪肝」という状態になりやすくなります。この段階では自覚症状は乏しく、エコー検査で発見されることが多いです。飲酒が原因の場合は、断酒や節酒で脂肪肝を改善できます。つまりこの段階で気をつければ、元の健康な肝臓に戻れます。しかし、脂肪肝を放置したまま、アルコールを飲み続けると、やがて「肝硬変」に至る可能性があります。肝硬変は治療が困難で糖尿病など様々な合併症を引き起こし、肝がんの原因にもなります。

◆お酒の飲み方がアルコール性肝臓病に影響する?

「休肝日を設けた方が良い」と言われるのは理由があります。
アルコール20gに相当する量(ビールなら500mL、日本酒なら1合)を肝臓で分解するのに、個人差はありますが3~5時間前後かかります。
睡眠中は肝臓がアルコールを代謝する機能が落ちるので、飲んだ後にすぐ眠ると更に時間を要します。お酒を飲んだ後、就寝している間も肝臓は働き続けています。
肝臓を毎日連続して酷使すると障害が出やすくなります。
アルコールを殆ど毎日飲む人では、週に2~4回飲む人に比べ、アルコール性肝障害の発症率が3.7倍に上昇することが明らかになりました。
また、50歳代にアルコールを飲み過ぎた人のアルコール性肝障害のリスクは7.5倍に上昇し、20歳代に飲み過ぎてその後は節酒した人では1.7倍に抑えられていました。
お酒を飲む方は、ぜひ休肝日をつくりながら楽しみましょう。

【注意】医師の指示を受けている方は、必ず医師の指示を優先してください。

休肝日

以上(2023年2月)

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画像:photo-ac

カーブでの安全運転(2023/2号)【交通安全ニュース】

活用する機会の例

  • 月次や週次などの定例ミーティング時の事故防止勉強会
  • 毎日の朝礼や点呼の際の安全運転意識向上のためのスピーチ
  • マイカー通勤者、新入社員、事故発生者への安全運転指導 など

カーブでの走行は、スピード調整や視線の移動、ハンドル操作など複数の運転操作を適切に行う必要があります。

例えば、十分にスピードを落とさずカーブを曲がろうとすると遠心力が働き、車線を逸脱して対向車やガードレールなどに衝突する危険があります。

今回は、カーブ走行の危険性と安全運転について考えます。

カーブでの安全運転

1.カーブ走行の危険性

警察庁の統計をみると、カーブでの事故発生率は2.7%ですが、死亡事故発生率は14.4%と5倍以上高くなっており、カーブでの事故は重大事故につながりやすいことが分かります(図1)。

カーブでの交通事故発生率

出典:警察庁「令和3年中の交通事故の発生状況」から当社作成

カーブでの死亡事故の事故類型別割合では、車両単独と車両相互が大半を占めており、さらに内訳をみると比較的衝撃力の大きい「工作物衝突」と「正面衝突」が突出しています(図2)、(図3)。

カーブでの死亡事故の事故類型(車両単独)

カーブでの死亡事故の事故類型(車両相互)

出典:警察庁「令和3年中の交通事故の発生状況」から当社作成

カーブ走行では以下の危険性があります。

◆カーブ走行では車に外側へ滑りだそうとする力「遠心力」が働きます。遠心力はカーブの半径が小さいほど大きく、速度の二乗に比例して大きくなります。

◆見通しの悪いカーブでは対向車や歩行者などの発見が遅れがちになります。死角にいる対向車や歩行者などが突然目の前に現れることも想定されます。

従って、十分にスピードを落とさずカーブを曲がると、重大事故を招くおそれがあります。

2.カーブの安全な曲がり方

センターラインを越えないように走行すること(センターラインのない場合は「キープレフト」走行)が基本です。遠心力を考慮して以下の運転をしましょう。

①カーブ手前で十分にスピードを落とす

カーブでは「スローイン・ファストアウト」走行が基本です。道路標識等に注意し、カーブに入る手前で十分にスピードを落とすことがコツです。

※左カーブでは自車の走行車線が広く感じ、スピードを出しがちになります。 スピードを抑えて対向車線にはみ出さないよう注意しましょう。

カーブ手前で十分にスピードを落とす

②視線をカーブの先に置く

カーブでの走行では「曲方指向」という錯覚が起きることがあります。

カーブの曲がる方向に視線が向き、その方向にハンドルを切って走行してしまう(カーブの曲がる方向に車が寄ってしまう)というものです。

※右カーブでは右側に視線が向き、道路の内側へ寄りがちになります。視線をカーブの先に置き、キープレフトを意識して走行するようにしましょう。

視線をカーブの先に置く

③ハンドル操作を緩やかに行う

カーブを曲がるときに急ハンドル・急ブレーキを行うと横滑りする危険があります。カーブに入る手前で十分にスピードを落としていれば、ハンドル操作を緩やかに行うことができます。

3.見通しの悪いカーブの運転

見通しの悪いカーブでは先の状況が把握しにくいため、見通せる範囲内で停止できるスピードで運転することが原則です。

駐車車両などがある場合は、対向車や自転車、歩行者などの存在や動きに注意を払い、危険を予測して運転しなければなりません。

夜間は、カーブに入る手前で前照灯を上向きに切り替えるか点滅させ、対向車などに自車の接近を知らせるようにしましょう。

見通しの悪いカーブの運転

カーブでは対向車がセンターラインを越えてくるかもしれません。

そのような場合でも事故を回避できるよう、カーブに入る手前で十分にスピードを落としましょう!

以上(2023年2月)

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画像:amanaimages

テレワークのニューノーマル化

いまだ続く新型コロナウイルス感染症の影響を考慮して、アフターコロナにおける新しい仕事のスタイルを見据え検討を進めなければなりません。本稿では、「テレワークという新しい常態」の現状と課題を紹介し、今後どのような取り組みが必要なのかを考えていきます。

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日本のスマートホーム市場を大きく変えたのは、行動力とやり切り力が他に類を見ない事業立ち上げの猛者。未来の暮らしを、ビジネスをつくり出す秘訣は「スピード感と常識破りと丁寧な進め方」/岡目八目リポート

年間1000人以上の経営者と会い、人と人とのご縁をつなぐ代表世話人杉浦佳浩氏。ベンチャーやユニークな中小企業の目利きである杉浦氏が今回紹介するのは、橘 嘉宏(たちばな よしひろ)さん(三菱地所株式会社 住宅業務企画部)です。

橘さんが今まさに力を入れているのは、総合スマートホームサービス「HOMETACT(ホームタクト)」です。2022年12月に東京ビッグサイトで開催された「スマートハウスEXPO」にもひときわ目立つブースで出展され、HOMETACTは大盛況、かなりの人だかりでした。
このHOMETACTがまずすごいのは、複数メーカーのサービスを横断していて、ユーザーが簡単に一元管理・操作できることです。日本国内でスマートホームは、ユーザー(消費者)側の関心は高いものの「複数の家電メーカーが関係していると、個々のアプリがいくつもバラバラにあって操作が面倒」などが障壁となり、なかなかうまくいっていませんでした。
 これを、橘さんは、「日本に前例がなければ米国から持ってくる」という圧倒的な行動力、行動量、巻き込み力、やり切り力で「徹底した複数メーカー横断一元管理」を実現しています。大企業にいながらベンチャー経営者のような動きでHOMETACTを実現してきて、さらにこれからも進化を加速させようとしている橘さん。
スマホ一つで家ナカを思い通りに設定でき(カーテン開閉、温度、照明、音楽など)、新しいライフスタイルを創造していくHOMETACTそのものが素晴らしいのはもちろん、そこにガッツリ心血を注いでいる橘さんの考え方、動き方、進め方も素晴らしく(お話お伺いしていて興奮の連続でした)、多くの経営者やビジネスパーソンにとってヒントになるのではないかと思います。37歳の橘さんがどのようにしてHOMETACTを実現してきたのか、その機能の裏にある思い、実現してきた道のりなどを伺いました。

1 「HOMETACT」便利さの原点は「徹底してユーザーの気持ちに寄り添う」

1)ユーザーの気持ちに徹底して寄り添う

ここで改めてお伝えしますと、「スマートホーム」とは住宅設備や家電などのIoT機器を、スマホアプリやスマートスピーカーと連携させた住宅のことです。ドアの施開錠、照明や空調のコントロールを遠隔で操作できるなど、暮らしをより快適にする住まいのかたちです。

 そして、こちら(下資料)が橘さんが実現しているスマートホームサービス「HOMETACT」です。特に動画を見ていただくとどのようなサービスか分かりやすいと思います。テクノロジーの力で毎日の生活が“簡単に”快適になる、理想の暮らしがそこにあります。

●HOMETACT

HOMETACTの画像です

(出所:HOMETACT ウェブサイトより)

●HOMETACTがある暮らし(動画)

(出所:HOMETACT限定公開資料より)

冒頭でもお伝えした通り、HOMETACTが従来のサービスと全く異なるのは、複数のメーカーのサービスを横断して一元管理できることです。徹底的にシンプルなデザインとユーザビリティにこだわっていて、エアコンも給湯も、ユーザーが触るスマホの画面上では「メーカーのロゴなどなく、機能も最低限なので、どこのメーカーか分からなくなっている」くらいです。橘さん曰く

「ユーザーから見ればどこのメーカーのエアコンか給湯かなんてどうでも良い。エアコンなら、暑いとき寒いときにつけられればよい、快適な温度にできればよいわけです」

まさに、ユーザーの気持ちはそうです。橘さんがHOMETACTで実現している徹底したユーザビリティ。次のような「スマートホームが普及しないマイナスの“あるある”」を橘さんは大きく変えました。

  • メーカーやプラットフォームが異なると、それぞれのアプリで操作しなければならず、面倒。ユーザーにとってハードルが高い
  • そもそもユーザーは初期設定でつまずく
  • 運よく設定できたとしても、使っているうちにトラブルが起き、問い合わせたくても、メールフォームやチャットしかなく、ユーザーが思った通りに解決できない

●HOMETACTのユーザーが触るスマホの画面:メーカーに関する表示は一切なし

HOMETACTスマホ画面の画像です

(出所:日本情報マート撮影)

2)「超簡単に使える」のは機能を絞っているから

機能を絞り込んでいるのもHOMETACTの大きな特徴です。「日本のサービスは、なんでもとてもよく作り込まれています。例えば100の機能を実装し、さらに操作も4階層、5階層と深くなる。ただユーザーからすると、実際に使う機能は、そのうち5つくらいですし、操作もせいぜい2階層くらいでないと使いにくい」と橘さん。その言葉通り、HOMETACTは機能を絞り込んでいてあれこれ操作しなくてもよく、とても簡単&便利です。

また、初期設定は訪問で行いますが、以降は基本的に遠隔でトラブルシュートを行える体制を整えています。そうしたユーザーサポートは大手サービサーとの協業で成り立っています。初期設定から保守運用まで、本当によく考えられているサービスだと改めて感じます。
さらに言うと、橘さんが、ひいては三菱地所が、本腰を入れてこの総合スマートホームサービスをさまざまなメーカーなど「やる気のある企業」と連携して広げていく、継続していくという総合デベロッパーとしての覚悟をも感じます。

3)HOMETACTで実現できる自由自在に快適な暮らし

HOMETACTの機能をもう少しお伝えしておきます。位置情報や時間、特定のデバイス動作をトリガーとして、複数のIoT機器を自動で動かすことができます。例えば「帰宅間近になると、部屋の明かりをつけ、エアコンを入れて、風呂を沸かしはじめる」「日没の2時間前から、照明を間接照明にする」といった使い方があります。

日の出や日没の時間で設定できると、季節に応じてカーテンが開いたり照明が点いたりする時間が変わるので、季節感まで自動的に感じることができるという、まさに色々な意味で「温度感のある家」。まるで、家全体が人のように自分たちに寄り添って生活してくれているようです。HOMETACTを体験すると家に対して、何か温かい気持ち、家や暮らしを大切にしようという気持ちが湧いてきます。HOMETACT Labs 赤坂(東京都)では、まさにこのHOMETACTを体験・体感できます。スマートホームのパートナー企業をご検討されている場合などは必見です。家や暮らしに対する価値観がきっと変わります。

●HOMETACTが体験・体感できるHOMETACT Labs 赤坂をご案内くださる橘さん

橘さんの画像です

(出所:日本情報マート撮影)

HOMETACTの「タクト」には、臨機応変、機転の効くといった意味が込められています。ユーザーのニーズによって臨機応変に機転が効いてくれる自由自在な家、そういう家に、「指揮して(タクトを振って)オーケストレーションしていく」という意味も、「タクト」にはあります。実にネーミングの通りのサービスだと思います!

HOMETACT資料の画像です

(出所:HOMETACT限定公開資料より)

20年以上にわたり、各社が競り合って、自社の規格としか互換性のない商品開発に励んできたスマートホームの日本市場。「メーカーによるユーザーの囲い込み、これが結局ユーザーのためになっていなかった」と橘さんは振り返ります。橘さんは、米国で当たり前に行われているメーカー間の連携を日本に持ち込み、かつ、日本の不動産管理習慣や商習慣に適したプラットフォームを実現しました。これは、本当に並々ならぬことです。日本のスマートホーム市場の進化を牽引していくサービスであると確信しました。
次章では、そんな橘さんのこれまでを振り返ってみます。

2 「猪突猛進」に事業を進め、やり切ってきている橘さん

1)20代で事業立ち上げを経験したことが原点

足かけ4年、HOMETACTを進めてきてリリースしさらに進化させようとしている橘さん(すごいスピード感です)。自社やグループ会社内で音頭を取る他、メーカー間を横断する協力体制をまとめ上げ、海外企業とも協業。HOMETACTを1つのサービスとしてユーザーに提供できるまでにしました。「ユーザーから見れば、サービスが一体的でとても簡単に使える」ようになっていればいるほど、その裏側の作り手には相当の汗、苦労、思いが込められているものだと心底実感します。

ここまでのものを実現してきた橘さんの行動力、やり切り力の源泉は、橘さんがこれまで携わってきた事業企画にありそうです。
橘さんは、2008年に三菱地所に入社。連結決算などの経理部業務を4年間経て、2012年から住宅開発分野へ異動し、マンションの分譲や販売、計画を行う三菱地所レジデンスに、約3年間勤務しました。そのときに1棟リノベーション事業を立ち上げたのだといいます。
橘さんは当時、「他の人と同じことをやっていることへ違和感があり、何か新しいことをやりたい」と考えていたそうで、ちょうどそのころ、東京都内で築15年ほどのマンションが1棟売りに出ていたといいます。

この築15年ほどのマンションについて、橘さんは「普通にやっても勝負にならないなと。平均200平米超えのマンションだったのですが、おそらくリノベーションして売ったほうが回転率も上がるし、かつ物件の付加価値もより上がるのではないかと考えました。そこで、200平米超えという、普通の新築だとありえない規格を活かした販売戦略が取れるのではないかと、1棟リノベーション事業を立ち上げました」と話します。そして、2年がかりで販売完了までに至ります。これが事業立ち上げの経験になっており、ここで自分は事業企画が好きなのだと実感したそうです。若い20代のうちに事業立ち上げを経験したのは、非常に大きかったのかもしれません。

2)30歳前後でグループ会社内の縦割りを打破する業務を担う

2016年から、橘さんが担ったのは住宅事業部門のバリューチェーン推進業務です。グループ会社連携はもちろん、DX機能の立ち上げや、新規事業の発掘を行っています。
「その中でも大きな転機になったのが、2016年から2018年の三菱地所グループCRMシステムとグループ顧客向けサイトの統合プロジェクト『三菱地所のレジデンスクラブ』PJです」と橘さん。

当時、三菱地所グループの住宅部門のCRMシステムは13個ほどあり、さらにグループ7社にまたがっているような状態でした。かつ会員組織もバラバラになっていたそうです。それらを1つに名寄せして統合し、データプラットフォームと顧客窓口を整備するというこのプロジェクト、お話をお伺いしているだけで、途方もない、調整が相当に大変そう、実現が無理なのではと思う内容です。
このプロジェクトのことを、橘さんは次のように振り返っています。実に苛烈で、強い信念を持たなければ進められない現場が目に浮かびます。

「このプロジェクトは、個人的にはすごく大きかったです。私が29歳とか30歳くらいのときだったのですが、グループ会社で対峙する人が、総勢30人くらいいました。そして、途中からは私が中心となって打ち合わせを進めなければならなくなりました。
最初は、私より年長のグループ会社の経営企画や情シスの部長・課長たちに気を使いながら進めていたのですが、途中から、強烈にリードしないと実現できないと感じるようになりました。
例えば各社の情報ポリシーもバラバラでしたし、まず個人情報の保護ポリシーをグループで統合する基本的なところから、システム設計をどうするか、名寄せのルールをどうするかなどなど。とにかくがむしゃらにやっていたら、私もきつく言わざるを得ない場面も出てきました。
結果的には、かなり強いリーダーシップで、最後の方には、もうやるのかやらないのか、30歳前後ぐらいの若造(自分)がげきを飛ばしながらやるような激しいプロジェクトになっていました。でも一方で協力者もちゃんと増えていったんです」

2018年の6月にリリースを迎えるまでに、グループ会社だけでなく、ベンダーの方々なども含めると、150名ほどは関わっていたプロジェクトだったといいます。150名! これはもう、いちプロジェクトのリーダーという域を超えた業務領域です。想像を絶します。この過程で経験したことがHOMETACTへも繋がっているといいます。

CRMの統合や会員組織の統合、立ち上げについて、橘さんは、「私たち不動産事業者には、デジタル接点をお客さまと作りたいという、強烈なニーズがあります。そこに対して、グループで最低限、統合してデータマーケティングの基盤を構築しないことにはその先はないだろうと、私なりにかなり危機感と問題意識を持って取り組んでいたプロジェクトでした」と続けます。
この危機感から橘さんがたどり着いたのがHOMETACTの原点「スマートロック」です。

「スマートロックをきちんと導入してシステム連携し、会員組織と結びつければ、1日2回は使われるはずだということに気付きました。そこで不動産会社が、デジタルで顧客との接点を作ろうと思ったときに、スマートロックを取り込まない手はないだろうと。その仮説のもと調査を始めたことが、HOMETACTへと繋がっていきました」。橘さんの成し遂げてきたこと、考え抜いて来たことが、今すべてHOMETACTにつながっているということがよく分かります。

3)CESで受けた衝撃。日本がIoTで遅れを取った理由

HOMETACTの実現には、橘さんの海外調査も大きく関わっています。橘さんは2019年ごろからスマートホーム先進国のアメリカでの調査を重ね、どんなIoT機器がありどのように使われているのか、どのようなサービスが提供されているのかなど徹底的に調査を続けました。

2020年1月にはラスベガスで行われるハイテク技術見本市「CES」に参加した橘さん。そこでCESの実態に驚きます。CESは、他国のメーカーにとって単なる展示会ではなく、実はホテルのVIPルームで商談が行われる場でした。「展示会を見て喜んでいるのは日本人だけ。日本で報道されていることはほんの表層にすぎない」と危機感を抱いた橘さん。自身も展示会へ参加しつつ、あとは商談で具体的な話をするという“本来のCES”を体験して「この市場の動きは日本も目指すべきところだ」と確信したといいます。

またのちにパートナーとなる、クラウドによるIoT機器のAPI連携プラットフォームを提供している米国のYONOMI,Inc.(以下「YONOMI」)と連携することで合意に至ったのもこのタイミングでした。YONOMIとは、2020年、コロナ禍前に「日本で実証実験を行う」話をしており、それも大きなターニングポイントになったそうです。
橘さんはこのYONOMIの機能を活かし、かつ日本の不動産実務にフィットさせたプラットフォームを開発します。プラットフォームをそのまま海外から持ってこようとしていた時期もあったそうですが、日本の不動産の管理慣習にフィットしたシステムなど欧米にありません。議論や調査の末、日本にフィットしたものを自分たちで作らなければならないという結論に至り、HOMETACTおよびTACTCORE(アプリ、管理ポータルや機器連携を実現させるプラットフォームシステム)を開発したのだそうです。
外(海外)へ出て、外から新しいものを持ってくる。そして日本に合うようにつくる。これをやり切った橘さんです。橘さんでなければできなかったと思います。

帰国後の2020年の5月から、プロトタイプの開発を始め、わずか約1年半後にはHOMETACTのプレスリリースを出すに至りました。以来、機能改善などを重ねており、HOMETACTを導入した自社グループ物件は4物件。今後も賃貸・分譲マンションや注文戸建、リフォームなど導入を加速していきます。
2022年7月に経営会議に付議し事業化承認を経て、ようやく本格的に事業化。わずか4年でここまでたどり着いたというスピード感!そして事業化承認と併せて、HOMETACTの外部提供も開始。本格的なSaaS(System as a Service)外販をスタートさせています。

「普通なら、4年もあれば、その間に異動してしまう可能性もあると思います。だから私はすごくラッキーでした。ここまでやり切らせてもらえましたから。ただ、システム開発1つをとっても2年以上はかかっていますから、時間のかかるプロジェクトを、いかにスピード感を持って進めるのか。そこは大切にしてきました。1〜2年でできるDXや新事業なんてそうありませんから。HOMETACTはまさに不動産会社である三菱地所が始めた、ソフトウェアサービス。DXの『X』はTransformation(変態、変身)であることをみな忘れがちですが(デジタル化のことではないのです)、個人的には『これぞDX!』と胸を張れるPJです」

と言う橘さん。この点は規模や業種にかかわらず、全ての企業が参考にしたいところかもしれません。

3 社内外を巻き込み続けてきた秘訣

橘さんがこれだけの大きなプロジェクトを進めるには社内もグループ会社も、そして他社(ベンダーやメーカーなど)も、色々と巻き込まなければなりません。橘さんのお話を伺っていると、秘訣としては「腰を据えて取り組むことができた」「全体最適の丁寧なコミュニケーションを実践した」といったことが伺えます。

1)腰を据えた取り組み

橘さんは住宅業務企画部に8年在籍しているそうです。これは、通常3〜4年で異動する大企業では珍しいことです。橘さんはこのことについて「中長期的なキャリアを築けたのは幸せなこと。DXや新事業をやり遂げるためには、腰を据えて取り組ませてもらえる環境も、重要な要素だと思う」と話しています。このことも、新規事業に取り組む全ての企業にとって大切なヒントになるのではないでしょうか。
同時に、「部下(自分)の裁量をどんどん大きくして成長させてくれた上司との出会いもとても大きかった」と振り返る橘さん。「信頼する上司と8年間一緒に様々なPJを推進してくることができたのは、大企業では滅多にないことだとおもいます」。この上司と橘さんのコンビが最強だったようです。部下のほうから「人を成長させてくれることに長けた素晴らしい上司」と言われるほどの上司はなかなかいないでしょう。本当に素晴らしい上司、そして受け止めて成長した橘さんも素晴らしいのだと思います。

2)「全体最適」の丁寧なコミュニケーション

グループ会社内を横断することが一筋縄ではいかないのは想像に難くありません。むしろ大変さしか思い浮かびません。どのように進めていったのかをお聞きすると、橘さんは、自分1人の力では難しかった点も多いと前置きしつつ、次のように話してくれました。

「グループ会社との難しい交渉は、例えばその会社のポリシーとの戦いのようなものです。そうなると、役員クラスの方々の巻き込み方が大事になってきます。そうしたときに、私の上司は社内調整が非常に丁寧で、きちんと双方の落としどころを探りながら会話をしつつ、グループ全体としての目線を持った落としどころに着地させていました」
「その上司と私がよく話すのが“全体最適”と“部分最適”についてです。私たちは、全体最適の観点を常に重視しています。グループ会社を束ねる立場なので、短期的にはグループ各社の思いや利益はあるとしても、必ず“全体最適”の概念を持たせる。もしくは“全体最適”の概念を持っている社員を1人でも多く増やす。そのことに、私たちはこの8年間、一緒に取り組んできたと思っています。かなり地道なコミュニケーションに尽きるのですが、そうした啓蒙活動や社員の巻き込み。今振り返ると、これを非常に丁寧にやってきたと思います」

「全体最適の丁寧なコミュニケーション」。言うは易しですが、これは非常に難しいことだと思います。橘さんは、「全体最適」を見つつ、「全体最適だからと妥協せず、丁寧にやるべきことを実現してきた」感じで、地道に丁寧に、でもスピード感も忘れずに進めてきた。うまく表しきれませんが、地に足のついた、地面をコツコツと耕し続けるような力強さと大きな器、他にあまり類を見ない凄みを感じます。

4 目指すのはスマートホームサービスのインフラを担えるポジション

さて、こうしてHOMETACTを実現してきた橘さん。ポイントは色々とありますが、特に下記の両方のアプローチを大事にすることが、今回のプロジェクトで重要だったと振り返ります。

  • システム開発のような最短距離を駆け抜けるときには、今までの常識にない動きをしつつ
  • スケールアップさせるときには、丁寧に進めていく

 最後に、これからのことを橘さんにお伺いすると、次のようなことをお話しいただきました。

「賃貸管理のデジタル化を、スマートロックとの連携によって実現していきたいと考えています。それが両方機能するようになれば、HOMETACTは賃貸市場によりアプローチしやすくなります」
「日本における、スマートホームの主な使われ方でもあるのですが、エネルギーの可視化ソリューションとしての側面が大切です」

そして特に力強い覚悟を感じたのが今後についての次の言葉です。

日本はスマートホームサービスのプラットフォーマーが不在です。ですから、私たちが新しい生活インフラを担うという覚悟を以て、プラットフォーマーのポジショニングを目指しています

こうしたHOMETACTとは、さまざまな企業や機関が連携したいと考えるのではないでしょうか。地場のハウスメーカー、デベロッパー、マンションメーカー、家電メーカーなどなど。その他にも、生活インフラとなる企業(インターネットプロバイダー、電力やガスなどエネルギー系)、地元の金融機関なども考えられるかもしれません。人々の暮らしという面でも、ビジネスの面でも大きな大きな可能性を感じるHOMETACTです。
今では、三菱地所は、LIXIL、mui Labとスマートホーム事業領域での提携に向けた基本合意書を交わし、HOMETACTアプリでの使用エネルギーの見える化や省エネの推進などによる脱炭素社会への貢献も目指しています(2022年11月30日プレスリリース)。進化が止まりません。

そして橘さん、37歳。ここまでのことをやり遂げてきた方、とても文章で表しきれないくらい、ちょっと凄すぎる方です。しかも明るくて楽しくてサービス精神も旺盛! こういう方がいてくださるなら、未来は大丈夫と思えます。これからも橘さんのつくる未来に大いに期待します! 有り難うございます。

以上(2023年2月作成)

テレワークのニューノーマル化

コロナ禍3年目にして初めて、行動制限がない年初となりました。一方で、いまだ続く新型コロナウイルス感染症の影響を考慮して、アフターコロナにおける新しい仕事のスタイルを見据え検討を進めなければなりません。
そのなかでテレワークは、コロナ禍の当初からオフィスへの出社からの切り替えが検討され、「ニューノーマル(新しい常態)」として、確立させようと各企業が努力を重ねてきました。
本稿では、「テレワークという新しい常態」の現状と課題を紹介し、今後どのような取り組みが必要なのかを考えていきます。

1 テレワークの現状

クラウドサービスを提供する企業の調査によると、週に3日以上のテレワークを実施していると回答した人は全体の28%で、「以前はテレワークしていたが今はしていない」と回答した人は全体の17%となりました。また、「テレワークをしている」と回答した方に対する「テレワークに不満がありますか?」との問いには、66%が何らかの「不満がある」と回答しました。

テレワークの実態調査

((株)ソウルウェア「アフターコロナにおける働き方実態調査2022年版」)

2 テレワークの不満や課題の内容

テレワーク自体への慣れからか、精神的な要因(「やりがいを感じづらい」「孤独を感じる」)より、次のように自宅で業務を行う環境に関連する不満や課題が目立つようになっています。テレワークが定着している方にとっては、オフィスと同様に働ける環境を求める声が多くなっていることが窺える結果と言えます。

テレワークの不満や課題

((株)ソウルウェア「アフターコロナにおける働き方実態調査2022年版」)

主な不満や課題の一つである、テレワーク下でのITツール利用で課題を感じる業務を複数回答可で聞いた結果としては「社内外での書類のやりとり」「交通費や経費の精算」「勤怠管理」などがあげられています。

3 さいごに

前述の通り、これからテレワークを「ニューノーマル」として定着させるためには、オフィス出社と変わらない「職場環境づくり」が大切になります。当然ながらオフィスは働くための場所として長らく整備されてきており、それに勝る環境を作ることは困難と言えます。しかしながら、日進月歩で進化する労務周りのシステムの導入や抜本的な業務(分担)の見直し、通勤手当・在宅勤務手当の整理などを行えば、自宅勤務だとしても変えられる職場環境もあるのではないでしょうか。

本内容は、あくまで複数社の調査結果となります。それでは、自社における問題点は何か、それをまず把握をすること。そしてその問題点に対応するためには何をすれば良いのかといったことに真剣に向き合うことが「テレワークのニューノーマル化」に必要なことと言えるでしょう。

※本内容は2023年1月11日時点での内容です

(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)

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【朝礼】学歴にも会社の知名度にも頼らない君たちこそ、誇れる社員だ

けさは、私の古くからの友人の息子さんの話をしたいと思います。

その友人とは、家族ぐるみの付き合いで、息子さんのことも小さい頃からよく知っていました。もう10年以上前の話になりますが、息子さんが就職活動をしていたときに、実は我が社に入らないかと誘ったことがあったのです。

ですが、息子さんは学業が優秀で、名前の知られた大学を卒業し、上場会社に就職しました。私はそのとき、我が社に入社してもらえなかったことは残念でしたが、心から「就職おめでとう」と、友人と息子さんを祝福したことを覚えています。友人も息子さんも、「これで将来は安泰だ」と喜ばれていました。特に友人は私に、「一流会社に就職してくれるなんて、さすが自慢の息子だ」と誇らしげに語っていたものです。

ところが少し前に、息子さんが勤めている会社が、事業の一部を売却したというニュースを見ました。心配になって友人に連絡したところ、息子さんは売却された事業とともに、転籍しなければならなくなったとのことでした。友人は、「こんなことになるなんて思ってもみなかった。息子の将来が心配で仕方ない」と、ため息をついていました。

私は友人と息子さんに同情するとともに、改めて、「学歴があって、一流会社の社員になったからといって、将来まで安泰だとは限らない」ということを実感しました。

最近、息子さんと会う機会があったのですが、「転籍して、給料が大きく減りました。転職したいけれど、改めて考えてみると、自分には学歴くらいしか誇れるものがない」と話していました。もしかしたら、息子さんは一流会社に入ったことで安心しきってしまい、入社後、自分から主体的に何かに取り組んだり、技術を身に付けたりしてこなかったのかもしれません。彼の言葉を聞いて、私は「就職活動のとき、もっと強く我が社に誘っていればよかった」と後悔しました。

皆さんに改めてお話ししたいのですが、ビジネスパーソンとしての価値は、学歴や所属する会社の知名度で決まるものではありません。業務でどんな結果を出しているのか、業務に関して、どのような知見やスキルを持っているのかで決まります。

我が社は、世間的に名の知れた会社というわけではありませんが、それでも1つ、大いに誇れることがあります。それは、私が常日ごろから口酸っぱく言ってきた、「業務に関する知見やスキルを磨くように」という言葉を、皆さんが忠実に実践してきてくれたことです。自分を磨き続け、会社とともに成長してきてくれた皆さんは、我が社にとって誇るべき財産です。今、我が社は苦しいときではありますが、皆さんのような財産に恵まれた我が社であれば、必ず乗り越えられるはずです。全員で一緒に苦境を乗り越え、さらに会社を成長させていきましょう。

以上(2023年1月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】伝える力は「理由」と「数字」と「話し合い」

今日は、ビジネスをスムーズに進めるために重要な「伝える力」についてお話しします。

ビジネスにおいて「伝える力」とは、自分の考えを相手に伝え、理解・納得してもらうことです。これがなければ、共通の目的と具体的なイメージを持って協力して仕事を進めることはできません。

皆さんが仕事を進める際に、会議や商談など実際に会って話をするだけではなく、電話やメールでも頻繁に連絡を取り合うのは、繰り返し相手に自分の考えを伝え、意思の疎通を図るためです。

物事の伝え方は人それぞれですが、誰でも「自分にとっても相手にとっても利益が見込める話」は自信を持って伝えられるものです。話の内容もより具体的になるでしょう。「この提案が実現すれば、年間売り上げは1億円が見込める」といったようにです。

一方で、相手が損失を被る場合はどうでしょう。例えば、仕入先に30%という大幅な値下げをお願いするシーンをイメージしてみてください。「相手に申し訳ないな」という気持ちから、「ご無理は承知ですが、値下げを検討していただけないでしょうか」などと曖昧(あいまい)な表現でお茶を濁してしまいがちです。このような表現では、相手に自分の真意はしっかりと伝わりません。例えば、私がこのような言い方で値下げのお願いをされたら、それほど深刻な値下げ要求ではないと判断し、「十分に検討しましたが、値下げは難しい」と答えるでしょう。

しかし、この場合、相手にとっては30%という大幅な値下げは業務命令であるため、「会社として30%のコスト削減を図っております。仕入価格が現状のままだと、契約解除を検討しなければなりません」と2度目の値下げ要求をすることになります。

私ならばこう言われたときに、「そんなことだったら、最初からはっきりと言ってくれればよかったのに」と不愉快な気持ちになります。

言いにくいことを相手に伝えるのは誰でも苦痛なものです。このようなときこそ、「理由」と「数字」をはっきり伝えなければなりません。理由を伝えれば、相手はこちらの言葉が根拠のあるものであることを理解することができます。数字を伝えれば、検討の基準を持つことができます。

  

ビジネスでは、自分や相手にとって良い話も悪い話もあります。良い話は、多少、内容が曖昧(あいまい)でも問題になることはありません。むしろ悪い話をするときこそ、丁寧に、正確に自分の考えを伝えなければなりません。そして、相手から質問が出たら、それにしっかりと答える姿勢が信頼につながります。

以前、テレビで移植手術の世界的権威の医師のドキュメンタリー番組を見たことがあります。この医師が行う手術は患者の生命にかかわる困難なものばかりです。だからこそ、医師は手術のリスクや術後の患者の生活について、包み隠すことなく、また、患者が理解できるように伝えます。そして、患者が納得する、具体的には患者から質問が出なくなるまで話し合うそうです。

私たちの仕事においては、たとえどれほど悪い話であっても、この医師のように命にかかわるものではありません。

悪い話を伝えるときは表現を曖昧(あいまい)にしがちです。しかし、そのようなときこそ、「理由」と「数字」を明らかにして、相手が理解・納得できるまで話し合いましょう。

以上(2023年1月)

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画像:Mariko Mitsuda

【中堅社員のスピーチ例】長篠の戦いに学ぶ「常識」の怖さ

皆さんもご存じの通り、私は日本の歴史、特に戦国時代が好きで、関連する書籍やテレビ番組をよく見ています。今年の大河ドラマ「どうする家康」も、毎週楽しみにしています。主人公である徳川家康は、さまざまな強敵を相手にしましたが、中でも武田家との戦いは、非常に大きな試練だったと思います。ですから、織田信長と家康の連合軍が、1575年に武田勝頼を破った「長篠(ながしの)の戦い」は、私にとって非常に興味深い戦いです。そこで今日は、この長篠の戦いについて、「常識」というテーマで話をしたいと思います。

長篠の戦いは、鉄砲が日本で初めて、本格的に戦いの場に投入された出来事として有名です。戦国最強といわれた武田軍の騎馬隊に対し、織田・徳川連合軍は3000丁の鉄砲を準備して対抗しました。当時の鉄砲は、弾を込めて撃つまでに数十秒かかるため、猛スピードで突進してくる騎馬隊には対抗できないと思われましたが、織田・徳川連合軍は、鉄砲隊を前段・中段・後段に分け、時間差で砲撃を仕掛ける「3段撃ち」という戦術によって、鉄砲の弱点を克服し、武田軍の騎馬隊を打ち破ったと伝えられています。

このエピソードは、当時の戦いの「常識」だった騎馬中心の個人戦を、鉄砲隊を中心とする集団戦に移行させた画期的な出来事だといわれています。それによって、鉄砲や火薬を入手するための経済力の重要性が高まり、城の立地や構造にも影響を与えたとされています。

長篠の戦いでは、織田・徳川連合軍の鉄砲隊の砲火を浴びた武田軍が、かたくなに騎馬隊を突撃させる戦術にこだわったために大敗しました。そして、有能な重臣を数多く失ったことで、後の武田家の滅亡につながったといわれています。勝頼は、「武田軍の騎馬隊が突撃すれば敵を蹴散らせる」という、従来の「常識」に凝り固まり、目の前の新しい現実に対応できずに、滅びていったわけです。

ここから、私たちも、「常識は、塗り替えられる」ということを教訓にすべきだと思います。私たちも日々、業界や会社の中で「当たり前」とされる、さまざまな常識の中で仕事をしていますが、仮にその常識を塗り替えるほどの革新的な考え方や技術が出てきたら、あっという間に周囲に置いていかれてしまいます。あるいは、今まで「常識だ」と信じていたことに間違いや問題点があり、非効率なことを続けているかもしれません。

常識を知らずに仕事をすることはできませんが、同時に「常識通りに行動すれば失敗しない」という、一種の思考停止に陥ることがないよう、気を付けて業務にまい進したいと思います。

ちなみに、長篠の戦いで「織田・徳川連合軍は鉄砲の3段撃ちによって、武田軍に勝利した」という「常識」も、実は裏付けとなる史料の信ぴょう性に欠け、誤っている可能性があるそうです。従来の「常識」に凝り固まって勝頼を不当に低く評価しないよう、気を付けたいと思います。

以上(2023年1月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】多面的に見ると、本質が見えてきます

皆さんは、タイトルを見て面白そうと思って買った本や、おいしそうな名前だったので注文したメニューが、期待はずれであったという経験はありませんか。これは、目立つキャッチコピーに目を奪われて、内容をしっかりと確認しなかったことが原因です。

プライベートの話であれば良い経験の一つですが、ビジネスの場で同じ失敗をしてはいけません。外側だけを一瞥(いちべつ)して、内容をしっかりと確認しなければ、本質を捉(とら)えきれずに大きな過ちを招いてしまうことがあります。

今日は印象にとらわれずに物事の本質を見抜くためのポイントについて話をします。例えば、薄味の料理に味の濃いタレを一滴垂らしたときのことを想像してください。その料理はそのタレの味になります。また、淡い色のスーツに目が覚めるような赤色のネクタイを締めたときを想像してください。赤いネクタイは非常に目立ち、会う人に強烈な印象を与えます。このように、味や色の濃いものは、それがわずかな量であったとしても人の興味や注意をひきつけ、全体を印象付けるほどの影響力を持ちます。

このことは私たちのビジネスの世界でも同じです。例えば、真新しい情報や、画期的とされる新製品は私たちの目を引き寄せ、強烈な印象を与えてくれますが、一方でその強烈な印象は、その情報が確かなものであるのか、その製品が本当に利用価値があるものなのかどうか、を判断する目を曇らせてしまいます。私たち人間は、どうしても真新しいもの、刺激の強いもの、色の濃いものに注目する性質があります。

つまり、私たちは、印象の強さに意識を奪われて、物事の本質を見ていないのです。

確かに、目や耳に飛び込んでくるものを見るな、聞くな、気にするなというのは無理な話です。手品などはこのような人間の習性をうまく利用しています。手品であれば素直に騙(だま)されて楽しめますが、ビジネスの場ではそうはいきません。

そこで、まず自分が見ているものは物事の最も目立つ部分であるということ、そしてそれは物事の一部分にすぎないのだと自覚してください。その上で、物事を多角的に見るように努力してみましょう。

例えば、取引先との商談の場に際して、あらかじめ取引先の業績を調べておく、業界全体の動向や取引先の競合先についても調べておく、というようにです。商品パンフレットでも、裏から見たり、小さな文字から読んでみたり、色の薄い部分にあえて注目してみるのもよいでしょう。また、モノであれば前からだけでなく後ろ側、裏側、真上、斜めなどいつもと異なる角度から見てみましょう。インターネットで検索するときも、検索結果の後ろの方のページから見たり、いつもと違う検索エンジンを使ってみましょう。そうすれば、今まで見えなかったことが、次々と見えるようになってくるはずです。

本質を見抜くのは簡単ではありません。ビジネスで本質を見抜きたければ、前後左右、表裏から見るのはもちろん、近くから見る、遠くから見る、時間をおいてもう一度見る、そして、複数の人の意見をきくということも必要です。今日から試してください。

以上(2023年1月)

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画像:Mariko Mitsuda

          

【朝礼】「人の褌で相撲を取る」のもう一つの意味

今年度も残り2カ月程度となりました。年度始めに立てた目標は、どれだけ達成できましたか。1年間の活動を振り返ってみれば、数多くの課題が見つかるはずです。そして、特に管理職以上の人は、自分一人の努力だけでは解決できない課題が増えたことを痛感するでしょう。

組織や自分自身の成長に応じて、ビジネスは難しくなっていきます。新しいことにチャレンジしたり、これまでよりもレベルの高い人の信頼を獲得したりする必要があるからです。そして、これらの課題は、孤軍奮闘するだけでは、うまく解決できない場合があります。

例えば、新しいことにチャレンジする場合です。私たちにとっては未知の領域でも、他の誰かにとっては“土地勘のある”ビジネスであるというのが通常です。それならば、“土地勘のある”人のアドバイスを得たほうが課題を解決しやすくなります。そうした人と親しくなれば、人脈や販路を紹介してくれる可能性もあるでしょう。

これは「人の褌(ふんどし)で相撲を取る」ことでもあります。この言葉は良い意味で使われないこともありますが、私の考え方は少し違います。確かに、他人の権勢を利用する、「虎の威を借る狐(きつね)」のような振る舞いは好ましくありません。しかし、相手との信頼関係を築いた上で、相手の同意を得て褌を借りるのであれば、何の問題もありません。それに他人から褌を借りるというのは、相当に難しいことでもあるのです。

一つ、私の経験談をお話ししましょう。私には懇意にさせてもらっている10歳以上年上の大学教授がいます。彼はベンチャー企業を経営した経験があり、ビジネスをよく知っています。そして、折に触れて私に言ってくれます。「私の人脈を全部紹介してあげるよ。きっかけは会食でもゴルフでもいいんだから、もっと私を利用しなさい」

その大学教授は、知識だけではなく、リアルなビジネスを知っているからこそ、人の“パワー”を借りる、つまり人の褌で相撲を取ることの大切さを痛感しているのでしょう。

実際、私はその大学教授の“パワー”を借りてビジネスをすることもありますが、なぜ、ここまで私に良くしてくれるのでしょうか。大学教授に尋ねてみると、答えは「信用しているからだよ」というシンプルなものでした。信用をもう少し分解すると、「礼儀正しく約束を破らない」「相手のメリットをよく考えられる」「自分にないものを持っている」ということでした。

大学教授の言葉から、真摯にビジネスと向き合い、社外で通用する絶対的な強みがなければ、他人から褌は貸してもらえないことが分かるでしょう。あえて言います。人の褌で、正々堂々と相撲が取れる人になってください。言葉を変えれば、相手が大切な褌を貸してもいいと思えるくらい信用される人になってください。そのためには、皆さんは何を磨くべきでしょうか。来年度の皆さんの課題が見えてきたはずです。

以上(2023年1月)

pj16898
画像:Mariko Mitsuda