【規程・文例集】「退職一時金規程」のひな型

書いてあること

  • 主な読者:「退職一時金規程」のひな型が欲しい経営者、実務担当者
  • 課題:退職金制度の内容が会社ごとに異なり、具体的に何を定めればよいのかが分からない
  • 解決策:「1.退職金を支給する社員の範囲」「2.退職金の決定、計算、支給の方法」「3. 退職金の支給時期」は、労働基準法で義務付けられているので必ず定める

1 退職金一時金とは

退職金とは、社員が退職するときに会社が支給する金銭の総称で、支給形態によって、

  • 退職一時金:退職金を一括で支給
  • 退職年金:退職金を年金として支給(企業年金とも呼ばれます)

に大別できます。中小企業に広く定着しているのは退職一時金で、例えば、社内で退職金原資を積み立ておき、次のように支給額を計算するなどして社員に支給します。

支給額=退職算定基礎額(退職時の基本給など)×支給率

退職金制度がある会社は、労働基準法により、次の3つについて就業規則(退職一時金規程など)に定めることが義務付けられています。

  • 退職金を支給する社員の範囲
  • 退職金の決定、計算、支給の方法
  • 退職金の支給時期

この3つは、就業規則の「相対的必要記載事項」なので、自社に退職金制度がある場合、必ず記載しなければなりません。次章で専門家監修付きの退職一時金規程のひな型を紹介するので、自社の規程と見比べながら確認していきましょう。

2 退職一時金規程のひな型

以降で紹介するひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の会社によって定めるべき内容が異なってきます。実際にこうした規程を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

【退職一時金規程のひな型】

第1条(目的)
本規程は、就業規則第○条の退職金について定めたものである。会社は、本規程に基づき、永年勤続した従業員の退職後の生活の安定および遺族の支援を図るために退職一時金制度を設ける。本規程に定めのない事項は、本制度の実施について定める関係法令によるものとする。

第2条(差別的取り扱いの禁止)
会社は退職一時金制度を実施するに当たり、特定の者について不当に差別的な取り扱いをしない。

第3条(支給範囲)
本規程に定める退職金は、従業員が退職または役員に就任した場合に支給する。

第4条(適用)
本規程は、次の各号に定める者を除く全ての従業員に適用する。ただし、個別の契約書などにより、会社と従業員との間に別段の合意がある場合については、この限りでない。
 1.役員。
 2.嘱託。
 3.短時間勤務従業員。
 4.臨時に期間を定めて雇い入れられる者(臨時雇い)。
 5.日々雇い入れられる者。
 6.入社3年未満の者。

第5条(支給額の計算)
1)退職金算定基礎額は勤続年数に応じて別表第1「退職金算定基礎額」に定める額とする。
2)次の各号に定める会社都合退職に該当する者の退職金は、退職金算定基礎額に別表第2「会社都合の退職金支給係数」(以下「別表第2」)を乗じて算定する。
 1.役員に就任した者。
 2.定年に達したため退職した者。
 3.在職中に死亡した者。
 4.休職期間が満了し、退職する者。
 5.やむを得ない事業の縮小などにより解雇した者。
3)第5条第2項各号以外の自己都合退職に該当する者の退職金は、別表第2に別表第3「自己都合の退職金支給係数」を乗じた支給率により算定する。
4)退職金の支給額において、1000円未満の端数が生じたときはこれを切り上げる。

第6条(勤続年数の計算方法)
退職時における勤続年数は、次の各号に定める通りとする。
 1.勤続年数は、入社日から退職日までとする。
 2.1年未満の端数が生じた場合は月割で計算し、1カ月未満の端数は15日以上を1カ月とする。
 3.就業規則○条に定める休職期間は、勤続年数に算入しない。

第7条(加算金)
在職中に特に功労のあった者または勤務成績が優秀であった者には、その退職時における基本給の10カ月分の範囲において会社が適当と認める加算金を支給することがある。

第8条(支給制限)
1)就業規則第○条が定める懲戒規定に基づき懲戒解雇された従業員または懲戒事由に相当する背信行為を行った従業員には、退職金を支給しない。
2)就業規則〇条が定める懲戒規定に基づき諭旨解雇され自己都合退職した従業員には、退職金を一部支給しないことがある。

第9条(死亡時の取り扱い)
従業員が死亡した場合の退職金は、従業員の遺族に支給する。なお遺族の範囲および支給順位については、労働基準法施行規則第42条から45条に定める遺族補償の順位を準用する。

第10条(支給時期)
退職金は、原則として退職日より3カ月後に支給する。

第11条(支給方法)
退職金は原則として一括払いとし、退職金の支給を受ける者があらかじめ指定した金融機関に振り込む。

第12条(譲渡などの禁止)
退職金を受ける権利は、これを譲渡し、または質権、担保に供したりしてはならない。

第13条(書類の提出等)
退職一時金の給付を受けようとする者は、会社が指定する書類を指定の期日までに提出しなければならない。

第14条(返還)
退職金支給後において、第8条に定める支給制限に該当した者については、既に支給済の退職金の全額若しくはその一部の返還を命じる。この場合、退職者は誠実に返還に応じなければならない。

第15条(改廃)
本規程の改廃は、会社の状況および業績等の変化により必要のあるときは、従業員代表との協議の上、改正または一部廃止することがある。

附則
本規程は、○年○月○日より実施する。

■別表第1「退職金算定基礎額」■

退職金算定基礎額

■別表第2「会社都合の退職金支給係数」■

会社都合の退職金支給係数

■別表第3「自己都合の退職金支給係数」■

自己都合の退職金支給係数

以上(2022年11月)
(監修 弁護士 田島直明)

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画像:ESB Professional-shutterstock

危険予測による事故防止(2022/11号)【交通安全ニュース】

活用する機会の例

  • 月次や週次などの定例ミーティング時の事故防止勉強会
  • 毎日の朝礼や点呼の際の安全運転意識向上のためのスピーチ
  • マイカー通勤者、新入社員、事故発生者への安全運転指導 など

交通ルールをきちんと守って運転していても、他の運転者や歩行者等の危険な行動により、事故に遭うことがあります。安全な運転には、さまざまな交通場面で起こりうる危険を予測しながら運転することが大切です。

今回は、危険予測運転を取り上げます。

危険予測による事故防止

1.危険予測運転とは

令和3年警察庁統計によると、違反別交通事故のうち「安全運転義務違反」が72%を占めています。

※安全運転義務違反とは、ハンドル等の操作を誤ったり、周囲への注意や状況判断が十分でない運転をする違反です。その原因としては、不注意による発見の遅れ・見落としのほか、思い込みや予測の甘さなどによる判断ミスがあげられます。

では、安全運転義務違反とならないようにするには、どのように運転したらよいでしょうか?

交通事故の発生状況

出典:警察庁「令和3年中の交通事故の発生状況」から当社作成

運転行動は「①認知→②判断→③操作」の3つの要素で行われます。

もちろん①認知が最も重要であり、「周囲をよく見る」ことが大切です。しかし、人の目で見える範囲には限りがあり、また歩行者の急な飛び出しなど突発的な危険に対しては、正しい状況判断や適切な運転操作を行うことが困難なことがあります。

そこで、事前に危険を予測し、それらの危険に準備しながら運転することが必要になります。

危険予測運転とは、目の前の交通場面で生じうる危険を予測し、その危険に対する準備をすることによって事故を防止する運転です。

2.危険予測の方法

運転中は、目の前の交通場面に応じて、さまざまな危険を予測する必要があります。

行動の予測

◆ 歩行者等の特性を理解し、行動を予測する

  • 子供:周りを確認せず飛び出すことがある
  • 高齢者:走行車両の直前直後を横断することがある
  • 自転車:突然、進路変更することがある

など

◆ 見えない場所に潜む危険を予測する

  • 自車両の死角:後方に自転車がいる
  • 駐車車両の陰:子供や自転車が飛び出す
  • 見通しの悪い交差点:車やバイクがくる

など

◆ 気象状況等に潜む危険を予測する

  • 雨天時:停止距離の延伸
  • 降雪時:路面の凍結
  • 濃霧時:前方の視界悪化

など

※刻一刻と変化する交通状況に応じた危険予測も大切です。

3.危険予測運転の実践

目の前の交通場面を自分に都合よく判断する「だろう運転」を止めて、「かもしれない運転」をすることが大切です。

かもしれない運転


①歩行者が道路を横断するかもしれない
②自転車が右にハンドルをきるかもしれない
③車の陰から子供が飛び出すかもしれない
④車のドアが急に開くかもしれない
⑤車が発進するかもしれない

特に歩行者等が多い市街地では、危険が多く潜んでいますので、必ず危険予測運転を実践しましょう。

目の前の交通場面で突発的な危険が生じても事故を防止できるよう、危険予測運転を習慣化しましょう。

さまざまな交通場面で危険予測のケーススタディができる危険予測トレーニングツールの活用も有効です。

以上(2022年11月)

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画像:amanaimages

歯周病からみえる健康管理

1.歯周病と動脈硬化

歯周病

歯周病が血管を詰まりやすくする原因になるということをご存知ですか?
歯周病の菌が悪い働きをして、血管がボロボロになり、動脈硬化の原因のひとつになっていきます。
歯周病は、自覚症状がほとんど現われずに進行する病気です。
セルフチェックをしてみましょう。

【セルフチェック】

①次の項目でチェックが付いた人は、歯周病に罹るリスクの高い人です。
□ タバコを吸う
□ 歯並びがわるい
□ やわらかい食べ物や甘い物が好き
□ 口を開けて眠るクセがある
□ 歯石を取ってもらったことがない
□ 太っている

②次の項目でチェックが付いた人は、歯周病に罹っている可能性が高い人です。
痛みを感じていなくても、1つでも当てはまったら、歯科で検査してもらいましょう。
□ 歯磨きの時に歯ぐきから血が出ることがある
□ 口臭が強いと言われたことがある
□ 歯ぐきが腫れることがある
□ 歯が浮いた感じがする
□ 歯と歯の間にものがはさまる
□ 歯がぐらぐらする

週に一度は歯と歯ぐきをチェックしてみてくださいね!

2.歯周病があると心筋梗塞リスクが2倍に上昇する?

歯周病は全身の病気に関係しています。
歯周病菌や炎症物質がだ液に混じったり血液に入り込み、全身に運ばれて悪影響を及ぼすと考えられています。

歯周病は糖尿病とも関連が深いです。歯周病菌に対する免疫反応から生じる生理活性物質である「サイトカイン」が、インスリンの働きを妨げることが分かっています。
歯周病があると糖尿病のリスクが高まるだけでなく、治療のときも血糖値のコントロールが難しくなります。

歯周病は「動脈硬化」にも関係します。血流に乗って運ばれた歯周病菌が血管壁に付着すると動脈硬化の進行に関与するのではないかと考えられています。

血液中に悪玉のLDLコレステロールが増えるとそれが血管壁の中に入り込みアテロームと呼ばれる脂肪の塊ができ、血管の通り道が狭くなります。これが動脈硬化で、心臓の血管で起きると「狭心症」や「心筋梗塞」が、脳の血管で起きると「脳梗塞」が引き起こされます。

東京大学の研究チームが、36歳~59歳の男性従業員3,081人を対象に、歯周病と心筋梗塞の関連を調べました。質問票を用いて「歯肉に出血がある」「歯がぐらつく」「口臭がする」という3項目に答えてもらい、その後5年間の健康状態を追跡調査しました。

その結果、歯周病の強く疑われる男性は、そうでない人に比べて、心筋梗塞の発症が約2倍多いことが明らかになりました。

歯周病は、40歳以降の日本人男性において頻度の高い疾患である一方、適切なセルフケア(歯磨きなど)や歯科メンテナンス(歯石除去、専門的クリーニング)で予防・改善できます。
つまり、歯周病を治療することが心筋梗塞の予防にも役立つのです。

【注意】医師の指示を受けている方は、必ず医師の指示を優先してください。

歯科治療

以上(2022年11月)

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画像:photo-ac

創業間もない企業も使いやすい「法人向けデビットカード」のメリットとは

スタートアップやベンチャーの場合、支払手段として「法人向けデビットカード」を導入するのがおすすめです。法人用クレジットカードに比べて導入しやすく、お金の管理も簡単で、万が一不正利用された場合でも補償を受けられます。今回は法人向けデビットカードを利用するメリットや使い方のコツについて分かりやすく解説します。

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1 デビットカードの商品性・仕組みについて

デビットカードはキャッシュレス決済の一種で、銀行口座からお金が即時に引落される仕組みです。デビットカードは、口座からお金を引き出さなくても支払える利便性、口座の残高以上に使いすぎない安心感、不正利用補償が付く安全性などが利用者から支持されています。

1)他の支払方法との比較

デビットカードと他の支払方法との違いを、以下の比較表にまとめました。

デビットカードと他の支払方法との違いの画像です

デビットカードは決済時に口座から即時に引落されるため、現金感覚で利用できます。ATMでお金をおろす必要もありません。現金は紛失しても補償がありませんが、デビットカードであれば補償があるので安心です。
 デビットカードは一括払いのみです。クレジットカードであれば分割払い・リボ払いの選択が可能です。

2)デビットカードは大きく分けて2種類

デビットカードには、銀行のキャッシュカードをそのままショッピングで使えるJ-Debitと、国際ブランド加盟店で利用できる国際ブランド付きデビットカードの2種類があります。国際ブランドとはVisa、Mastercard、JCBなどのことです。国際ブランド付きデビットカードは海外の加盟店やATMでも利用できるため、海外出張に行く方にも便利です。

3)支払通知メールが届く

デビットカードで支払うと、登録したアドレス宛てに支払通知メールが届く仕組みです。利用日時や利用金額が記載されたもので、デビットカードを安心・安全に利用するのに役立ちます。

4)ポイント還元やキャッシュバックもある

クレジットカードと同様、デビットカードにもポイント還元やキャッシュバックの特典があります。ビジネス用途でまとまった支払をすれば、多くのポイントを獲得することも可能で、現金で支払うよりお得です。

2 法人向けデビットカードを利用する「6つのメリット」

スタートアップやベンチャーの経営者の方にとっても、法人向けのデビットカードは便利です。その理由は主に下記の6つです。

メリット1)導入しやすい

原則として、デビットカードは銀行に口座があれば導入可能です。法人向けのビジネスデビットカードも、法人口座があれば申込可能で、立ち上げたばかりの業歴の浅い企業でも導入できます。
一方で、クレジットカードには審査があり、法人としての経営実績・財務状況などの審査に加え、経営者個人についての審査もあります。

メリット2)使いすぎを防止しやすい

クレジットカードは後払い式であり、利用限度額の範囲であれば自由に使えます。しかし使いすぎると支払日にお金を用意できず、困ってしまうこともあります。
これに対してデビットカードは、口座の残高以上に支払うことはできませんので、お金の使いすぎを防げます。

メリット3)クレジットカードと同じように使える

国際ブランド付きのデビットカードであれば、ほぼクレジットカードと同様に使えます。VisaのデビットカードはVisaの加盟店で支払うことが可能で、仕入資金、公共料金、ネット購買、ネット広告費、交通費、出張費などさまざまな場面で利用できます。

メリット4)会計処理の効率化につながる

クレジットカードの利用を経理で処理する場合、いったん未払金での仕分けが必要になります。支払日に未払金を消し込む処理をすることになります。また残高をチェックし、支払日には引落される金額を用意しておかなくてはなりません。
デビットカードならその場ですぐ引落されるので、仕分けも簡単で効率的です。経理の負担が少なくて済みます。

メリット5)海外ATMで現地通貨の引き出しができる

国内で発行されたデビットカードも、国際ブランドの付いた海外のATMで利用することが可能です。引き出した代金は、その時点での為替レートで口座残高から引落されます。現地通貨が簡単に調達でき、両替所で交換する手間が省けます。海外出張の際にもデビットカードは便利です。

メリット6)不正利用補償がある

デビットカードは不正利用補償が付いていて、第三者によって勝手に利用されてしまった場合には補償を受けることができます。ただ、補償限度額や条件があるため、必ず事前に調べておきましょう。

3 デビットカードを活用するための重要なポイント

1)残高や利用確認メールをチェックする

デビットカードは使いすぎを防ぎやすいものの、残高を一切気にしないでいると、いつの間にかお金を使いすぎてしまうリスクがあります。定期的に残高や利用明細を確認しましょう。また利用確認メールをその都度チェックすれば、不正利用にもいち早く気づくことができます。

2)資金繰りに注意

デビットカードは即時払いのため、支払の猶予はありません。売上が入金されるタイミングなど資金繰りに注意し、無理のない範囲で利用しましょう。また、口座の残高が不足している場合はご利用できませんので注意が必要です。

3)支払方法は一括払いのみ

デビットカードで分割払いやリボ払いなどを選択することはできず、キャッシング機能も付いていません。残高以上に利用することは不可能です。

4)一部利用できないお店がある

デビットカードを利用できないお店・場所が一部あります。例を挙げると、ガソリンスタンド、飛行機の機内販売、高速道路の料金、インターネットプロバイダーなどです。これらをよく利用する場合は、クレジットカードやETCカードも用意しておきましょう。

5)引落口座の変更はできない

デビットカードは銀行口座と結びついているため、その他の金融機関の口座に変更することはできません。別の法人口座を使いたくなった場合は、その銀行のデビットカードを発行する必要があります。

4 りそなビジネスデビットカードはスタートアップ・ベンチャーにおすすめ

「りそなビジネスデビットカード」は以下のような特徴があり、お得・便利・安心にご利用いただけます。

1)0.6%のキャッシュバックを受け取れる

月間の利用代金の0.6%をキャッシュバックとして現金で受け取れます。1,000円ごとに6円で計算し、毎年5月・11月に口座に振り込まれます。ただし海外での現地通貨の引出、カード年会費の引落に関してはキャッシュバックの対象外です。

2)年会費無料特典あり

メインカードの年会費は1,100円(税込)、サブカードは550円(税込)ですが、メインカードの初年度の年会費は無料です。またメインカード・サブカードともに、年に1回以上利用すれば、翌年度の年会費は無料になります(注)。

(注)消費税は年会費引落時点の税率に基づきます。

3)りそなWebサービスで簡単に利用限度額を変更可能

りそなビジネスデビットカードは、状況に応じ、りそなWebサービスで簡単に利用限度額を変更できます。例えば、ネット広告の費用など高額な支払が発生する時にだけ一時的に限度額を引き上げ、利用がない時は限度額を引き下げることも可能です。

4)Visaビジネスオファーを利用できる

Visaビジネスオファーとは、Visaの法人カードの保有者が利用可能な優待サービスです。ビジネスに欠かせない各種サービスが優待特典でご利用いただけます。

5)安心・安全に使える

りそなビジネスデビットカードはセキュリティ機能も充実しています。盗難保険・海外旅行傷害保険を付帯しており、利用限度額も1回・1日・1ヵ月でそれぞれ設定できます。利用するたびに確認メールが届き、利用明細書はいつでもWEBで確認可能です。万一、不正利用にあった場合でも年間1,000万円を限度に補償可能です(注)。

(注)お客さまの故意または過失による被害等、補償できない場合があります。また、りそなWebサービスの初期設定が未設定の場合、補償対象外となります。必ず初期設定をお願いいたします。

6)バーチャルカードも選べる

インターネット支払のみ利用したい場合、バーチャルカードを選ぶこともできます(注)。プラスチックのカードは発行されない形式で、カード支払に必要な情報は別途通知される仕組みです。また、プラスチックカードの管理負担も削減できます。

(注)バーチャルカードはサブカードのみ発行可能です。

5 ビジネスシーンでもデビットカードは便利

デビットカードは、使用すると口座から即時でお金が引き落とされる仕組みの決済方法です。法人向けのデビットカードもあり、立ち上げたばかりの会社でも導入しやすく、ベンチャーやスタートアップの経営者の方が利用するのにも適しています。デビットカードのなかでもVisaなど国際ブランド付きのタイプは、幅広いお店で使えるので便利です。
日本銀行が公表している「決済動向」の統計によると、2021年度のデビットカードの決済件数は6億5,300万件、決済金額は約2兆8,336億円に達しています。件数・金額とも2018年度から3年連続で増加しており、デビットカードの利用が徐々に増えていることが分かります。
口座の残高や利用履歴などをチェックしながら、デビットカードをスマートに使いこなしてみてはいかがでしょうか。

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以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2022年11月16日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

【電子メールでのお問い合わせ先】
inquiry01@jim.jp

(株式会社日本情報マートが、皆様からのお問い合わせを承ります。なお、株式会社日本情報マートの会社概要は、ウェブサイト
https://www.jim.jp/company/をご覧ください)

【規程・文例集】「個人情報保護規程」のひな型

書いてあること

  • 主な読者:個人情報の適正な取り扱いを徹底させるに当たって「個人情報保護規程」のひな型が欲しい経営者
  • 課題:具体的に何を定めればよいかが分からない
  • 解決策:個人情報の取得・利用、保管・管理、第三者提供、開示請求等への対応などについて定める

1 個人情報の漏洩は経営を脅かす重大なリスク

個人情報の漏洩は経営を脅かす重大なリスクです。2022年4月施行の改正個人情報保護法では、漏洩が発生し、不正に利用されることにより財産的被害が生じるおそれがある場合や、不正の目的をもって行われたおそれがある場合などに、

  • 個人情報保護委員会への報告
  • 本人への通知

が義務付けられました。このような漏洩リスクの発生に備え、社内規程を策定・改訂し、体制を整備しておく必要があります。

なお、以下のコンテンツや個人情報保護委員会のページが参考になります。

■改正個人情報保護法 特集■
https://www.ppc.go.jp/news/kaiseihou_feature/
■個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)■
https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/
■個人情報の保護に関する法律についてのガイドラインに関するQ&A■
https://www.ppc.go.jp/personalinfo/faq/APPI_QA/
■漏えい等の対応とお役立ち資料■
https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/leakAction/

2 個人情報保護規程のひな型

以降で紹介するひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の企業によって定めるべき内容が異なってきます。実際にこうした規程を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

【個人情報保護規程のひな型】

第1章 総則

第1条(目的)
本規程は、当社が保有する個人情報について、個人情報の保護に関する法律(以下「個人情報保護法」)および関連する政省令、ガイドライン等を遵守しつつ、適正に取り扱うための基本事項を定めることにより、個人の権利利益を保護することを目的とする。

第2条(用語の定義)
本規程において、各用語の意義は、個人情報保護法その他関連法令等の定義に従い、次に定めるところによる。
1.個人情報
生存する個人に関する情報であって、次のいずれかに該当するものをいう。
  ・当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができるものを含む)
  ・個人識別符号が含まれるもの
2.個人識別符号
次のいずれかに該当する文字、番号、記号その他の符号のうち、政令で定めるものをいう。
  ・特定の個人の身体の一部の特徴を電子計算機の用に供するために変換した文字、番号、記号その他の符号であって、当該特定の個人を識別することができるもの
  ・個人に提供される役務の利用もしくは個人に販売される商品の購入に関し割り当てられ、または個人に発行されるカードその他の書類に記載され、もしくは電磁的方式により記録された文字、番号、記号その他の符号であって、その利用者もしくは購入者または発行を受ける者ごとに異なるものとなるように割り当てられ、または記載され、もしくは記録されることにより、特定の利用者もしくは購入者または発行を受ける者を識別することができるもの
3.要配慮個人情報
本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取り扱いに特に配慮を要する個人情報をいう。
4.個人情報データベース等
個人情報を含む情報の集合物であって、次に掲げるものをいう。
  ・特定の個人情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したもの
  ・特定の個人情報を容易に検索することができるように体系的に構成したものとして政令で定めるもの
5.個人データ
個人情報データベース等を構成する個人情報をいう。
6.保有個人データ
会社が、開示、内容の訂正、追加または削除、利用の停止、消去および第三者への提供の停止を行うことのできる権限を有する個人データで、6カ月以上保有するものをいう。
7.本人
個人情報によって識別される特定の個人をいう。
8.本人の同意
本人が自己の個人情報の利用または提供に関する情報を与えられた上で、当該個人情報の収集、利用または提供について了承する明確な意思表示をいう。

第3条(適用範囲)
本規程は、当社において処理される全ての個人情報、個人データおよび保有個人データ(以下「個人情報等」)の取り扱いについて定めるものとし、当社の業務に従事する全ての従業員等(正社員・契約社員・嘱託社員・パート社員・アルバイト社員等の雇用関係にある従業員の他、取締役、監査役、執行役、派遣社員等を含む。以下同じ)に対して適用するものとする。対象となる個人情報等について、記録されている媒体が電子的なものであるか、紙であるかなどの形態を問わない。

第2章 個人情報の取り扱い

第4条(利用目的の特定)
1)個人情報を取り扱うに当たっては、その利用目的をできる限り特定しなければならない。
2)利用目的を変更する場合には、変更前の利用目的と関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えて行ってはならない。

第5条(利用目的による制限)
1)あらかじめ本人の同意を得ずに、特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を取り扱ってはならない。ただし、法令に特別の規定がある場合を除く。
2)合併その他の事由により他の個人情報取扱事業者から事業を承継することに伴って個人情報を取得した場合は、あらかじめ本人の同意を得ないで、承継前における当該個人情報の利用目的の達成に必要な範囲を超えて、当該個人情報を取り扱ってはならない。ただし、法令に特別の規定がある場合を除く。
3)利用目的の達成に必要な範囲内か否かが不明な場合は、都度、個人情報保護管理者に判断を求めるものとする。

第6条(適正な取得)
1)個人情報の取得は業務上必要な範囲内で、適正かつ適法な手段により行うものとする。
2)要配慮個人情報は、あらかじめ本人の同意を得ずに取得してはならない。ただし、法令に特別の規定がある場合を除く。

第7条(取得に際しての利用目的の通知等)
1)個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、または公表しなければならない。
2)書面(電子メール、当社ウェブサイトへの記入等も含む)により本人から直接個人情報を取得する場合は、本人に対してあらかじめ利用目的を明示しなければならない。ただし、人の生命、身体または財産の保護のために緊急に必要がある場合は、この限りでない。
3)利用目的を変更した場合は、変更された利用目的について、本人に通知し、または公表しなければならない。

第8条(データ内容の正確性の確保等)
利用目的の達成に必要な範囲内において、個人データを正確かつ最新の内容に保つとともに、利用する必要がなくなったときは、当該個人データを遅滞なく消去するよう努めるものとする。

第9条(安全管理措置)
1)取り扱う個人データの漏洩、滅失または毀損の防止その他の個人データの安全管理のために、組織的、人的、物理的、技術的に必要かつ適切な措置を講じるものとする。
2)個人データの取り扱いについて必要な事項は、「個人情報安全管理細則」に定める。

第10条(従業員等の監督)
個人情報保護管理者は、従業員等が個人データを取り扱うに当たり、必要かつ適切な監督を行うものとする。

第11条(委託先の監督)
1)個人データの取り扱いの一部または全部を外部委託する場合は、別途定める「外部委託管理規程」(省略)に従って、委託先における個人情報保護の体制が十分であることを確認した上で、委託先を選定しなければならない。
2)委託先に対して次の各号の事項を契約によって規定し、十分な個人情報保護の水準を担保するよう努めるものとする。
  1.委託する個人データの適法かつ適切な取り扱い(当該個人データに対する人的、物理的、技術的な安全管理措置を委託先が講じることを含む)
  2.委託する個人データに関する秘密保持
  3.委託する個人データの当該業務以外の使用禁止
  4.委託する個人データを取り扱う上での安全対策
  5.再委託に関する事項(再委託は原則禁止とし、再委託がやむを得ない場合は事前に書面による当社の同意を要し、委託先が再委託先と連帯して責任を負うことの確認)
  6.契約内容が遵守されていることの確認
  7.委託する個人データに関する事故が生じた際の責任
  8.契約終了時の個人情報の返却および抹消

第12条(第三者提供の制限)
あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。ただし、法令に特別の規定がある場合を除く。

第13条(外国にある第三者への提供の制限)
外国にある第三者に個人データを提供する場合には、あらかじめ外国にある第三者への提供を認める旨の本人の同意を得なければならない。ただし、法令に特別の規定がある場合を除く。

第14条(第三者提供に係る記録の作成等)
個人データを第三者に提供したときは、当該個人データを提供した年月日、当該第三者の氏名または名称その他の個人情報保護委員会規則で定める事項に関する記録を作成し、当該記録を個人情報保護委員会規則で定める期間保存しなければならない。ただし、法令に特別の規定がある場合を除く。

第15条(第三者提供を受ける際の確認等)
1)第三者から個人データの提供を受けるに際しては、当該第三者の氏名または名称および住所並びに法人(法人でない団体で代表者または管理人の定めのあるものにあっては、その代表者または管理人)の氏名、当該第三者による当該個人データの取得の経緯の確認を行わなければならない。ただし、法令に特別の規定がある場合を除く。
2)第1項の規定による確認を行ったときは、当該個人データの提供を受けた年月日、当該確認に係る事項その他の個人情報保護委員会規則で定める事項に関する記録を作成し、当該記録を個人情報保護委員会規則で定める期間保存しなければならない。

第16条(保有個人データに関する事項の公表等)
1)保有個人データに関し、次の各号の事項を、当社ウェブサイトで掲載もしくは窓口等で掲示・備え付け等を行い、本人の知り得る状態に置くものとする。
  1.当社の名称
  2.当社の保有個人データの利用目的(法令に特別の規定がある場合を除く)
  3.本人からの保有個人データの開示の求めおよび、その内容の訂正、追加または削除(以下「訂正等」)の請求、利用の停止または消去(以下「利用停止等」)の請求に応じる手続き
  4.手続きに係る手数料の額を定めたときは、その手数料の額
  5.当社が行う保有個人データの取り扱いに関する苦情の申出先
2)本人から、当該本人が識別される保有個人データの利用目的の通知を求められたときは、本人であることを確認した上で、遅滞なくこれを通知するものとする。ただし、法令に特別の規定がある場合を除く。
3)保有個人データについて、求められた保有個人データの利用目的を通知しない旨の決定をしたときは、本人に対し、遅滞なくその旨を通知するものとする。この場合、その理由を説明するよう努めるものとする。

第17条(開示)
1)保有個人データについて、本人から、当該本人が識別される保有個人データの開示の請求を受けたときは、本人であることを確認した上で、合理的な期間で応じるものとする。ただし、法令に特別の規定がある場合を除く。
2)保有個人データについて、本人からの開示の請求の全部もしくは一部に応じない旨の決定をしたとき、または当該保有個人データが存在しないときは、本人に対し、遅滞なくその旨を通知するものとする。この場合、その理由を説明するよう努めるものとする。

第18条(訂正等)
1)保有個人データについて、本人から、当該本人が識別される保有個人データの内容が事実でないという理由によって訂正等の請求を受けたときは、その内容の訂正等に関して法令の規定により特別の手続きが定められている場合を除き、利用目的の達成に必要な範囲内において、遅滞なく必要な調査を行い、その結果に基づき、当該保有個人データの内容の訂正等を行う。
2)保有個人データについて、本人からの訂正等の請求により内容の全部もしくは一部について訂正等を行ったとき、または訂正等を行わない旨の決定をしたときは、本人に対し、遅滞なくその旨(訂正等を行ったときは、その内容を含む)を通知するものとする。この場合、その理由を説明するよう努めるものとする。

第19条(利用停止等)
1)保有個人データについて、本人から、当該本人が識別される保有個人データの利用停止等の請求を受け、その請求に理由があることが判明したときは、利用停止等の請求を認める原因を是正するために必要な限度で、遅滞なく、当該保有個人データの利用停止等を行う。
2)保有個人データについて、本人からの利用停止等の請求の全部もしくは一部について利用停止等を行ったとき、または利用停止等を行わない旨の決定をしたときは、本人に対し、遅滞なくその旨を通知するものとする。この場合、その理由を説明するよう努めるものとする。

第20条(開示等の求めに応じる手続き)
保有個人データについて、本人から、当該本人が識別される保有個人データの利用目的の通知、開示、訂正等、利用停止等の求めを受けるに際し、個人情報保護管理者は、あらかじめ本人確認方法、対応の期限および料金、開示等の求めに応じる手続きの具体的内容を含んだ手順を定めるものとする。

第21条(苦情および相談)
個人情報の取り扱いについて本人から苦情および相談を受け付け、対応する窓口を常設するものとする。この窓口への連絡方法は本人が容易に分かる方法で通知または公表するものとする。

第22条(教育)
1)従業員等に対して、個人情報保護の重要性等について理解させ、遵守の徹底が図られるよう必要な教育方針を定める。
2)従業員等は、教育方針に基づき実施される研修を受けなければならない。

第3章 監査

第23条(監査)
個人情報の取り扱いが法令、個人情報保護委員会が定めるガイドライン、本規程(本規程に基づく「個人情報安全管理細則」を含む)、その他の規範と合致していることを定期的に監査するものとし、個人情報保護監査責任者がその責を負う。なお、代表者は個人情報保護監査責任者を兼任できない。

第24条(体制の見直し)
代表者は、前条による監査結果に照らし、必要に応じて個人情報の取り扱いに関する安全対策、諸施策を見直し、改善しなければならない。

第4章 その他

第25条(所管官庁への報告)
個人データの漏洩の事実または漏洩の恐れを把握した場合には、その事実関係および再発防止策等について、個人情報保護委員会等に対し、速やかに報告するものとする。

第26条(罰則)
従業員等が故意または重大な過失により、本規程に違反した場合、就業規則または契約および法令に照らして処分を決定する。

第27条(改廃)
本規程の改廃は、取締役会において行うものとする。

附則
本規程は、○年○月○日より施行する。

以上(2022年11月)
(監修 Earth&法律事務所 弁護士 岡部健一)

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文系の経営者にも分かりやすい定量的な経営判断

書いてあること

  • 主な読者:意思決定において定量的な要素を考慮したい経営者
  • 課題:定量的な考え方が苦手で、これまで定性的な考えだけで決めてきていた
  • 解決策:確率が分からない状況でも、判断に役立つ根拠を導く考え方を知る

1 難しい意思決定を求められる経営者

経営の意思決定は、

確信を持てることなどほとんどなく、不確実性やトレードオフ(一方を追求すれば、他方を犠牲にせざるを得ない二律背反の状態)の中で行われる

ものです。会社の命運を分ける重要な決定もあるので、経営者は意思決定のよりどころを求めます。物事を考える際は、

  • 定性的:経営者の経験や勘、知人のアドバイスなど数字で表すことができないもの
  • 定量的:統計学など数字で表すことができるもの

の両面から捉えますが、定性的な部分は経営者個人のものです。ですので、この記事では、定性的な考え方を補完するものとして、定量的な6つの考え方を示します。統計の知識がなくても理解できるように簡易に示していますので、参考にしてください。

2 確率を考慮した意思決定手法

1)意思決定に当たっての前提条件

ここから、皆さんは衣料品店の社長になっていただきます。今、冬物衣料を販売するに当たり、メーカーに発注する量を検討しているのですが、季節商品なので追加発注はできません。厳冬ならば平年を上回る売上高が見込めますが、暖冬ならば売上高は減少します。過去のデータを基に推計した結果、冬の気象と売上高予測の関係は次の通りです。

  • 厳冬:1億1000万円
  • 平年並み:1億円
  • 暖冬:9000万円

平年並みなら売上高は1億円を見込めます。また、厳冬なら売上高は平年の10%増の1億1000万円、しかし、暖冬なら売上高は平年の10%減の9000万円しか見込めません。

2)仕入高と気象と営業利益の関係

長期気象予報によると、今季の冬は厳冬となる確率が20%、平年並みとなる確率が50%、暖冬となる確率が30%です。冬物衣料の仕入計画としては、次の3つの案があります。

  • A案:厳冬を考慮して、仕入高を平年の10%増とする案
  • B案:平年並みの冬であると考え、仕入高を平年並みとする案
  • C案:暖冬を考慮して、仕入高を平年の10%減とする案

もし、厳冬と予想したのに暖冬になった場合、売れ残り商品が大量に発生し、値引き販売などによって処分しなければなりません。逆に、暖冬と予想したのに厳冬になった場合、在庫が底を突いて販売する商品がなくなってしまいます。気象ごとの仕入高と営業利益金額の関係は次の通りです。

気象ごとの仕入高と営業利益金額の関係

厳冬と予想して仕入高を平年の10%増とし、実際に厳冬であれば1400万円(1億1000万円-1億1000万円×60%-3000万円)の営業利益が見込めます。しかし、予想が外れて暖冬になった場合、400万円(9000万円+(1億1000万円-9000万円)×50%-1億1000万円×60%-3000万円)となります。

3)期待値原理

期待値は、予想される利益に発生する確率を乗じた総和をいいます。

期待値=∑(気象ごとの営業利益金額×気象の発生確率)

期待値原理

図表2の仕入案A・B・Cの期待値は次の通りです。

  • Aの期待値=1400万円×20%+900万円×50%+400万円×30%=850万円
  • Bの期待値=1000万円×20%+1000万円×50%+500万円×30%=850万円
  • Cの期待値=600万円×20%+600万円×50%+600万円×30%=600万円

期待値が最も大きいのはA案およびB案の850万円です。期待値原理によると、A案かB案のいずれかを選択することになります(図表2の網掛け部分)。

4)最尤(さいゆう)未来原理

最尤未来原理による意思決定は、明快な方法で、起きる可能性の最も高い中から利益の一番大きいものを選ぶ手法です。

最尤(さいゆう)未来原理

最尤未来原理によると、発生する確率の最も高い平年並みのB案を選択することになります。

3 確率が不明な場合の意思決定手法

1)等可能性の原理

期待値原理と最尤未来原理は発生の確率を考慮したものですが、発生の確率が分からない場合もあります。ここからは、確率が分からない場合の意思決定手法について、引き続き、冬物衣料の仕入案のケースを用いて説明します。

等可能性の原理による意思決定は、厳冬の確率、平年並みの確率、暖冬の確率がどれも1/3で同じと考えて意思決定する手法です。

等可能性の原理

期待値の算出方法は次の通りです。

  • Aの期待値=1400万円×1/3+900万円×1/3+400万円×1/3=900万円
  • Bの期待値=1000万円×1/3+1000万円×1/3+500万円×1/3=833万円
  • Cの期待値=600万円×1/3+600万円×1/3+600万円×1/3=600万円

等可能性の原理によると、期待値が最も高いA案を選択することになります。

2)悲観的態度を反映した決定原理

悲観的態度を反映した決定原理による意思決定は、最悪の事態において、最大の利益が確保できることを念頭に置いた手法です。最も売上高が小さくなる暖冬のときに、最も大きな利益が確保できる仕入案を選択することになります。

悲観的態度を反映した決定原理

悲観的態度を反映した決定原理によると、先の冬物衣料の仕入案のケースでいえば、暖冬のケースを想定して、その中で最も営業利益金額が大きいC案を選択することになります。

3)楽観的態度を反映した決定原理

楽観的態度を反映した決定原理による意思決定は、最大の利益が確保できることを念頭に置いた意思決定手法です。最も売上高が大きくなる厳冬のときに、最も大きな利益が確保できる仕入案を選択することになります。

楽観的態度を反映した決定原理

楽観的態度を反映した決定原理によると、先の冬物衣料の仕入案のケースでいえば、厳冬のケースを想定して、その中で最も営業利益金額が大きいA案を選択することになります。

4)楽観的態度と悲観的態度を含めた決定原理による意思決定

楽観的態度と悲観的態度を含めた決定原理による意思決定は、楽観的態度を反映した決定原理による意思決定と、悲観的態度を反映した決定原理による意思決定の中間に位置付けられる手法です。

ここでは楽観的態度について楽観度係数を用いて表現します。先の仕入案で説明すると次のようになります。

決定係数=見込める最大の利益×楽観度係数+見込める最小の利益×(1-楽観度係数)

楽観度係数は0以上1以下に設定されます。楽観度係数が最低の0のとき、決定係数は悲観的態度を反映した決定原理と同じになります。また、楽観度係数が1で最大のとき、決定係数は楽観的態度を反映した決定原理と同じになります。

仮に、楽観度係数を0.7として、仕入案Aの決定係数を算出すると次の通りです。

仕入案Aの決定係数=1400万円×0.7+400万円×(1-0.7)=1100万円

楽観的態度と悲観的態度を含めた決定原理に基づく楽観度係数別の営業利益金額は次の通りです。

楽観的態度と悲観的態度を含めた決定原理に基づく楽観度係数別の営業利益金額

楽観的態度と悲観的態度を含めた決定原理による場合、楽観度係数によって結果が大きく変わります。楽観度係数の中間である0.5を平均とすると、0.5未満は消極的、0.5以上は積極的といえます。消極的でリスクを取らない経営者は楽観度係数0.5未満を、積極的でリスクを取る経営者は楽観度係数0.5以上を見積もることになるでしょう。

以上(2022年11月)

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【規程・文例集】「製品安全管理規程」のひな型

書いてあること

  • 主な読者:製品の品質や安全性を確保するに当たって「製品安全管理規程」のひな型が欲しい経営者
  • 課題:具体的に何を定めればよいかが分からない
  • 解決策:製品安全に関する基本方針、組織体制、技術開発や工程管理などについて定める

1 製造物責任と求められる製品安全管理

製造物責任法(PL法)によって、製造業者や輸入業者は、製造物の欠陥により人の生命、身体または財産を侵害したときは、過失の有無にかかわらず、これによって生じた損害を賠償する責任を負うこととなります。

消費者に安全な製品を供給することは製造業者や輸入業者の責務です。製品事故を防ぐために、技術開発や工程管理、出荷前の検査などを怠ってはなりません。また、品質や使用上の注意の表示、取扱説明書の適正化やアフターケアの充実により、製品販売後の被害の発生・拡大の防止に努めることも大切です。

なお、製品安全に関する解説などは、経済産業省の以下のページが参考になります。

■製品安全ガイド■
https://www.meti.go.jp/product_safety/
■製品安全自主行動計画策定のためのガイドライン■
https://www.meti.go.jp/product_safety/policy/guideline_selfaction.pdf
■リスクアセスメント・ハンドブック■
https://www.meti.go.jp/product_safety/recall/risk_assessment.html
■製品安全に関する事業者ハンドブック■
https://www.meti.go.jp/product_safety/producer/jigyouhandbook.html

2 製品安全管理規程のひな型

以降で紹介するひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の企業によって定めるべき内容が異なってきます。実際にこうした規程を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

【製品安全管理規程のひな型】

第1条(目的)
本規程は、当社の製品の安全性を確保するための関連各部門内での業務について定める。

第2条(用語の定義)
本規程において「製品の安全性」とは、製品の所持・使用・処分に際し、製品が人の生命、身体、財産を侵害することのないことをいう。

第3条(製品安全基本方針)
当社が製造・販売した全ての製品の安全性に対する消費者の信頼を確保することが、当社の経営上の重要課題であるとの認識の下、次の通り、製品安全に関する基本方針を定め、誠実に製品安全の確保に努める。
1.消費生活用製品安全法その他の製品安全に関する関係法令・各種基準等に定められた事項を遵守する。
2.製品安全基本方針に基づき、品質保証体制をはじめとした組織構築を行い、継続的な改善を実施して「顧客視点」に基づいた「安全」「安心」の確保と維持に努める。
3.製品安全管理について各事業部を横断的に統括する製品安全管理室を設置する。併せて各事業部内での品質保証体制および安全管理体制を構築する。製品の設計・製造・出荷の全ての段階において、常に適正な品質管理および安全管理を行い、その向上に努める。
4.当社製品に係る事故について、その情報を顧客や販売事業者、業界団体等から積極的に収集するとともに、製品の使用に伴うリスクの洗い出しを常に行い、そのリスクを評価し、その結果を製品の設計、部品、取扱説明書、警告ラベルにフィードバックする等、継続的な製品安全向上に努める。
5.当社製品に関する不慮の事故が発生した場合、直ちに原因究明を行い、安全上の問題があることが判明したときは、速やかに製品の回収、その他の危害の発生・拡大の防止措置を講じ、適切な情報提供方法を用いて迅速に消費者に告知する。
6.製品安全に関する関係法令、各種基準等について社内研修を実施し、製品安全に関する全社的な取り組みを継続的に行うとともに、関係法令遵守と製品安全の確保について周知徹底を図る。また、定期的な内部監査を実施し、製品安全管理に関する各種規程・手順等の遵守の状況の確認や適正な体制整備を行う。

第4条(製品安全責任者)
1)各部門長を、各部門における製品安全責任者とする。
2)各部門の製品安全責任者は、各担当部門における製品の安全性を確保するよう、従業員を指導・監督し、製品安全管理室と常に連絡を取るものとする。

第5条(分掌事項)
当社製品の安全性を確保するため、各部門は次の事項を分掌する。
  1.製品安全管理室
   ・製品の安全性の確保に関する方針の審議
   ・製品の安全性に関する情報の収集および伝達
   ・開発、改良製品の安全性の審議
   ・取扱説明書、警告ラベルの審査
   ・各種チェックリストの審議
   ・発生事故対策の指揮
   ・製品安全教育計画の審議
   ・各部門への指導および改善勧告
   ・各部門間の連絡および調整
  2.技術部
   ・製品の安全性に関する関係法令の調査および遵守
   ・JIS規格等の公的自主基準、業界自主基準等の遵守
   ・製品の品質並びに安全性に関する自社基準の作成
   ・本質的な安全設計
   ・安全装置の採用
   ・安全性を考慮した付属品、部品、材料の選択
   ・取扱説明書、警告ラベルの作成
   ・発生事故の原因の調査および究明
   ・製品の安全性に関する資料の作成および保管
  3.製造部
   ・材料、部品、製品の品質確保
   ・作業の標準化
   ・品質管理によるばらつきの防止
   ・製造設備、検査設備の保全、精度管理
   ・検査機器の精度管理および使用条件の維持
   ・検査方法の維持
   ・取扱説明書、警告ラベルの確認
   ・包装容器の所定基準による検査
   ・図面、作業手順書および生産記録の保管
  4.営業部
   ・製品納入時の製品取扱説明または指導
   ・製品の納入先記録の保管
   ・製品の安全性に関連する情報の製品安全管理室への通知
   ・発生事故の原因の調査
  5.総務部
   ・製品の安全性に関する関係法令の調査および他部門が行う調査の支援
   ・製品安全教育計画の立案および実施
   ・発生事故の原因の調査の支援
   ・発生事故による損害賠償責任の有無の調査および賠償交渉

第6条(製品安全管理室の審議)
製品の開発・改良に当たっては、製品安全管理室による開発製品または改良製品の安全性についての審議を経るものとする。

第7条(製品の安全性の確保)
製品の安全性を確保するため、製品の設計・製造・出荷の全ての段階において、次の手順を経るものとする。
1.製品の企画段階において、製品の安全性について検証し、予見されるリスクを可能な限り抽出する。その際、通常の使用における危険な箇所、想定され得る誤使用による事故の危険性等について図面および企画書を基に検討を行う。
2.製品に適用される関係法令、JIS規格等の公的自主基準、業界自主基準等を製品仕様に全て盛り込むものとする。
3.製品の外観デザインを似せた模型を作り、実際の使用条件下での安全性を検証し、製品の品質基準を安全面・性能面において設定する。
4.試作品を作り、それが品質に関する自社基準および安全性に関する自社基準を満たしているか確認するため検査を行う。試作は、基準の要求を満たすまで繰り返し行うものとする。
5.外部の検査機関において品質基準書に基づき試験を行う。
6.量産体制に入った際、生産開始直後の製品で抜き取り検査を行い、品質および安全性が保持されているか確認する。
7.製造の作業工程ごとに品質管理を徹底し、異物の混入等を防止する。
8.製品の工場出荷前にロットごとに抜き取り検査を行う。

第8条(取扱説明書および警告ラベルの作成手順)
製品の取扱説明書および警告ラベルの作成は技術部が行い、次の手順に従うものとする。
1.誤使用を含め予見可能な限り製品の使用状況を想定し、開発または改良しようとする製品が安全性を欠いている点(以下「欠陥」)を調査する。欠陥による事故の発生頻度および被害程度を予測する。
2.設計により安全化を図る。
3.設計および製造段階で欠陥を取り除くことができない場合は、取扱説明書または警告ラベルで事故の予防を図る。この場合、次の事項を決定する。
   ・警告の対象者
   ・警告の方法(取扱説明書への記載や警告ラベルの貼り付け等)
4.原案を作成する。
  ・開発品または改良品が試作され、その安全性試験を行った後、取扱説明書および警告ラベルが原案通りでよいか検討する。
  ・製品安全管理室において、開発品または改良品の製造および取扱説明書、警告ラベルについて審議し、取締役会の決裁を受ける。
  ・取扱説明書および警告ラベルには、次の事項を明記する。なお、取扱説明書および警告ラベルの作成方法は別に定める(省略)。
  ・危険度レベルの区分(危険、警告、注意)
  ・危険の内容、性質
  ・警告無視の結果(被害)
  ・危険の回避

第9条(苦情処理)
1)製品使用者等が当社に申し出た苦情のうち、製品の欠陥を原因とする苦情は、苦情対応窓口から製品安全管理室へ通知するものとする。
2)製品安全管理室は、各関係部門の協力を得て行われた当該苦情の原因究明、被害想定の結果を取りまとめ、各関係部門の製品安全責任者に報告し、情報を共有する。
3)取締役会によってリコール実施を不要と判断した場合において、製品安全対策室は、当該苦情の処理対策の立案を行い、取締役会に決裁を仰ぐ。
4)製品安全管理室は、当該苦情の処理対策に従い、対策を実施する。
   ・製品使用者等に対する回答
   ・総務部による損害賠償交渉への協力
   ・仕入先に対する求償手続き

第10条(設計変更等)
1)製品の安全性を確保できない恐れがあることが判明したときは、技術部は設計変更により、製造部は製造上の変更により、当該欠陥を取り除くことが可能か直ちに検討するものとする。
2)設計変更または製造上の変更により、当該製品の安全性を確保できない恐れを取り除くことが可能な場合、技術部は改良または開発の手続きを、製造部は製造上の変更手続きを取るものとする。
3)設計変更または製造上の変更のいずれによっても当該製品の安全性を確保できない恐れを取り除くことができない場合、技術部は取扱説明書・警告ラベルの変更で対応可能か否かを直ちに検討する。可能な場合、第8条に準じて取扱説明書・警告ラベルの変更を行うものとする。
4)取扱説明書・警告ラベルの変更で対応が不可能な場合、当該製品の製造を中止する手続きを取る。

第11条(関係機関等への報告)
製品安全管理室は、製品の開発・改良が行われる場合および苦情処理対策を実施する場合は、関係行政機関、所属業界団体等に対し製品の安全性に関する所定の報告・届出・申請を行う。

第12条(教育等)
日ごろより、従業員等に対し、必要な教育・研修を実施し、消費者の安全確保の観点から企業の社会的責任の重要性を認識させるよう努める。

第13条(罰則)
従業員等が故意または重大な過失により、本規程に違反した場合、就業規則に照らして処分を決定する。

第14条(改廃)
本規程の改廃は、取締役会において行うものとする。

附則
本規程は、○年○月○日より実施する。

以上(2022年11月)

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徹底的な「先生ファースト」で学校教育を変えていく。他の人が手を付けない領域に「逆張り」してやり切るスタートアップ起業家が仕掛ける、先生限定の胸アツなサービス。その大事なキーワードは「応援」/岡目八目リポート

年間1000人以上の経営者と会い、人と人とのご縁をつなぐ代表世話人杉浦佳浩氏。ベンチャーやユニークな中小企業の目利きである杉浦氏が今回紹介するのは、浅谷 治希(あさたに はるき)さん(株式会社ARROWS代表取締役CEO)です。

「先生から、教育を変えていく。」を掲げる浅谷さんたちは、教育分野の中でも他社がやらない「学校教育の改革」に挑戦しており、徹底を極めた「先生ファースト」のビジネスモデルは他に類を見ません。
他の人が手を出さない領域にチャレンジし、試行錯誤を繰り返しながらとにかくゴリゴリやり切っていく。そんな浅谷さんが展開するサービス「SENSEI(せんせい)ノート」や「SENSEI よのなか学」に登録している先生は、なんと全国約9万人。しかも登録・利用は無料!
「人は生まれた瞬間は、親も地域も選べない。教育は、そのスタートラインの差異をカバーできるツールのはず。教育を変革することで、世の中の不平等をなくしたい」と浅谷さん。そこには目からウロコの教育ビジネスモデルがありました。日本中、そして世界にまでも広がっていきそうなサービス内容と、「逆張りするのがポリシー」な浅谷さんご自身の考え方などをご紹介します。企業が今後、子どもたちの教育に関わるヒントにもなるかと思います。

1 「先生から、教育を変えていく」ARROWSが目指すのは

浅谷さんたちARROWSが掲げるミッション・ビジョンは次の通りです。

ミッションの画像です

ビジョンの画像です

(出所:ARROWSのウェブサイト)

浅谷さんはこのミッション・ビジョンに込めた思いを次のように語ります。浅谷さんが、他社が手を付けない「学校教育」というフィールドを選んだ理由が見えてきます。

「『世界的課題に取り組む、知性の体現者であり続ける』というミッションの意味は、『今まで培ってきた知性は人が解決できないような困難な課題にぶつけよう。そういうのを解決していく事で世の中よくなっていくよね』ということです。なので、立ち上がる地面とか土台が他の人が無理だと言う領域しかやらないというやり方をしています。同じような会社は世界中に1社もありません」

「今、国内には、小学校・中学校・高校までで100万人くらいの先生がいます。その先生のもとに1200万人の子どもたちが通い、さらに1200万世帯の保護者がいます。学校は人口の3分の1以上をカバーしていて、それを支えているのが先生たちと考えると、先生とはとても大事な仕事だと思います。その方たちを応援しない手はないと感じています」

 この言葉通り、とにかく常に「先生のためになること」を考え実践している浅谷さんたちARROWS。まずはARROWSの主なサービスについて、浅谷さんのお話などを基にご紹介します。

1)先生限定の“オンライン職員室”「SENSEI ノート」

「SENSEI ノート」とは、ずばり、先生向けの

大きな“オンライン職員室”。しかも先生の登録・利用は無料

です。
先生たちの世界は、教室や学校の中で閉じてしまいがちで、同じ課題を抱えているのにもかかわらず情報共有がしにくい。そうした課題に着目した浅谷さんが発案した、全国各地の先生同士がつながるオンラインコミュニティです。「オンライン上に仮想のでっかい職員室を作って情報共有ができれば、自校内で解決できない問題でも、他校の先生からアドバイスをもらうことができるのでは」と考えたそうです。

せんせいノートの画像です

(出所:SENSEI ノートウェブサイト)

面識のない先生同士が質問・回答し合うこの「SENSEI ノート」、なんと、書き込まれた質問への回答率は驚きの100%! 課題や悩みを書き込むと、先生同士で、必ず熱心に回答してくれるサービスになっているとのこと。
考えてみると、先生になる人は、子どもの教育や未来、社会を良くすることに高い志を持っている人が多いイメージなので、お互いに共感しやすく、困っている先生を見たら力を貸したくなる、応援したくなる雰囲気が生まれやすいのかもしれません。

例えば2020年3月ごろには「コロナ禍の卒業式」の問題が大きく取り沙汰されていました。当時は、文部科学省も自治体も「やるのかやらないのかは学校で決めてください」。一方、どういう基準でやるか決めるべきか、経験したことのない事態に困り果てる学校現場……。
そんな中、ある先生が「SENSEI ノート」に「皆さん、どうしますか」と書き込んだのをきっかけに、「うちはこういう基準で(卒業式を)やると決めました」「うちはこういう理由でやります」という書き込みがバーっと集まり、たくさんの先生がそれを見に来たそうです。これは、先生からすると、とても心強いサービスではないでしょうか。困ったら同じ立場にいる誰かに聞ける、一人じゃない。まさに“オンライン職員室”です。ウェブサイトのログイン前に公開されている質問を少しだけご紹介します。先生たちの真剣な悩み、志が伺えます。

●「SENSEI ノート」に寄せられる先生からの質問・悩み例

  • 二分の一成人式について取り入れている小学校は多いのでしょうか(小学校)
  • 席替えのしかたでいつも悩んでいます(小学校)
  • (公立中学の)部活動のシステムに疑問を感じています(中学校)
  • 生徒の提出物に対する評価基準について悩んでいます(中学校)
  • 数学をする(学ぶ)動機付けを生徒にどう伝えますか(高校)
  • 生徒のスマホについての規制と教育は、どうしていますか(高校)

(出所:SENSEI ノートウェブサイト公開資料)

こうした先生同士の助け合いや議論が繰り広げられているかと思うと、何か胸が熱くなります。この「SENSEI ノート」、いまでは4万人の先生(3万校近くの学校)が登録し(2022年7月時点)、教材やノウハウのシェアも行われています。高校の登録率(1校で1人以上、先生が登録している場合は「1校」とカウント)は実に98%に上ります(下記図)。

●「SENSEI ノート」のサイトはこちら

せんせいノート登録率の画像です

(出所:SENSEI よのなか学ウェブサイト)

2)先生向けに「企業コラボ教材」の無償提供「SENSEI よのなか学」

「SENSEI ノート」が大きくなり、これ以外にも先生たちをサポートできないかと目を向けたのが、授業のサポートでした。「SENSEI よのなか学」です。これは、

企業とコラボして教材を作り、先生に提供。先生は無料で完全オリジナルな授業ができる

というものです。

例えばGoogleとコラボした「ITリテラシーの授業」、サントリーとコラボした「熱中症対策」などその企業の知見やノウハウ、強み、いわばその道のプロが提供する情報がギュッと詰まった授業は、子どもたちに生きた社会、ビジネスを伝えることができます。
また、浅谷さんたちがこだわっているのは、「先生が教えやすい教材にする」こと。よくある「企業の中の人」が学校に来て先生の代わりに授業を行うのとは違って、

子どもたちに教えるのはあくまで先生。教材・題材を企業が作る完全オリジナル

なのが大きな特徴です。浅谷さんたちは徹底的に「先生を一番幸せにすること」にコミットしているので、「先生が教えやすいようにする」が大事です。実際に、先生から「めちゃめちゃ自分たちのことを分かってくれている教材が来た」と喜んでもらっているそうです。

●「SENSEI よのなか学」のサイトはこちら

よのなか学_先生の声の画像です

(出所:SENSEI よのなか学ウェブサイト)

「SENSEI ノート」「SENSEI よのなか学」などを合わせると、浅谷さんたちのサービスに登録している先生は、約9万人に上るそうです。

3)「SENSEI よのなか学」の事例

ここで、浅谷さんが教えてくれた「SENSEIよのなか学」の事例を一つご紹介します。
「SENSEI よのなか学」×集英社の事例です。下記の画像を見ただけで、もうワクワクします。

「SENSEI よのなか学」×集英社の画像です

(出所:SENSEI よのなか学ウェブサイト)

この集英社とのコラボは、浅谷さんたちが先生に調査して分かった「宿題に一つ一つコメント書くのが大変」「スタンプ、ハンコ系の備品を多くの先生たちが自腹購入している」課題感から生まれたものです。「ONE PIECE」のキャラクター&褒め言葉スタンプを1万セットつくり、先生に無料配布しました。「5日間で全国の小学校30%の6000校から申し込みがあり、大大大反響でした!」とにっこり笑顔の浅谷さん。これは素晴らしい取り組みですね!

スタンプの画像です

(出所:SENSEI よのなか学ウェブサイト)

このコラボがヒットしたのは時期的なものもあるだろうと浅谷さん。ちょうどコロナ禍が始まった2020年夏ごろに実施した企画で、「学校では喋らない」「黙食」などで子どもたちも元気がなくなっていたこのころ。言葉に出さなくても子どもたちを褒めることができる、子どもたちを喜ばせることができると、先生たちから大好評だったそうです。

2 浅谷さんの周りにあふれる「応援」と「逆張り」ポリシー

浅谷さんのプロフィールや考え方などを伺っていると、ひとつ、

「応援」というキーワード

が浮かび上がってきます。まず、「先生を一番幸せにしたい」と言い切るくらいの浅谷さんから先生への応援。そういうアツい思いを持って諦めずに進む浅谷さんへの、先生や周りからの応援。この両方の「応援」があるからこそ、事業が成り立っているように感じます。浅谷さんのプロフィールを振り返ってみました。

1)わずか3日間で「SENSEI ノート」のプロトタイプを作る

浅谷さんは大学卒業後、通信教育の大手企業に就職し1年半ほど勤務したのち、スタートアップへ転職。その後の2012年、浅谷さんはスタートアップハッカソン「Startup Weekend」に参加します。この3日間のハッカソンでできたのが「SENSEI ノート」の原型です。

「その3日間で『SENSEI ノート』のアイデアを持ちこんでプロトタイプを作ってみて、もっとやったほうがよいと思い、翌日に退職願を出しARROWSの前身、株式会社LOUPEを創業しました」と浅谷さん。ちなみに、Startup Weekendで浅谷さんの「SENSEI ノート」は入賞し、世界大会への出場も遂げています。

2)夜行バスで地方へ向かい先生の課題に耳を傾ける日々

わずか3日でプロトタイプを作り、入賞。独立を決めて翌日には退職と、一気に展開するかのように見えた「SENSEI ノート」ですが、その後の道のりは平坦ではありませんでした。まず、最大の顧客であり幸せにしたい「先生」の知り合いが、学生時代の友人1人しかいない状態。

ここから浅谷さんの、ある意味、野性味あふれるスタートアップ魂が燃え盛ります。

「当初は、そもそも先生がどんな課題に困っているのかが分かりませんでした。なので、まずは先生たちに会いに行こうと思いました。先生たちが週末に行っておられる勉強会にどうにかして参加して、懇親会で仲良くなった先生から課題を聞くといったことを、ずっとやっていました」
「先生たちに会うために、東京だけでなく、地方へも夜行バスで行っていました。先生たちのイベントに参加し懇親会が終わったら、また夜行バスで帰るという生活をしていました。当時は本当にお金がなかったので、夜行バスをよく使っていましたし、だいたい宿は、そのときに知り合った人の家に泊めてもらったりしていました」

この行動力と巻き込み力。浅谷さんのアツい思いと真っ直ぐな人柄があったからできることだと思います。そのときに知り合った先生はいまだに仲良しで、結婚式のスピーチに呼ばれたり、会社の移転祝いが贈られてきたりするそうです。すごすぎるコミュニケーション力です。

3)「応援」がつながりをつくる

先生たちを応援したい浅谷さん、逆に先生たちから応援されることも多いようです。

「先生たちは、周りから批判されること、たたかれることはあっても、(先生たちを)応援してくれる人は、なかなかいないのが実情。なので、僕に対しても『こんな若者が自分たちのことを応援しようと頑張っているぞ。自分たちも浅谷を応援しないと』と。先生たちから直筆のお手紙やお電話いただくこともあります」

先生たちからこれほど応援され、愛されている企業は日本中探しても他にないと思います。

「応援」に関しては、もう一つ、印象的なエピソードがあります。起業して間もない2014年~2016年ごろ、浅谷さんはなかなかうまくいかず苦労していました。一軒家を借りて仲間皆で住み込み、24時間仕事漬けの日々。振り返ると、当時の浅谷さんたちは「名もなきベンチャー」。浅谷さん自身も「よく大家さんが家を貸してくれたものだ」と思っていたら、大家さんの奥さんが実は先生で、「浅谷さんたちみたいなことをやっている会社は応援するしかない!」とサポートしてくれたのだそうです。応援のご縁に深く感謝している浅谷さんです。

4)これまで「逆張り」でやってきた

「応援」と同じく、浅谷さんを表すもう一つのキーワードは「逆張り」です。浅谷さんは「逆張りするのがポリシー」だそうで、その理由は「できないという諦めから始まる未来は嫌だから。それより、色々な方のお力もお借りしながら、こうやったらできるだろうと考えるほうがいいです」といいます。これが、ARROWSのミッションの説明「知性は困難を乗り越えるために存在する」にもつながっていくのだと思います。

3 ビジネスモデルの根本も「先生ファースト」

徹底して「先生ファースト」を貫くARROWSは、先生たちからすると「無償でこんなに応援してくれる会社」です。浅谷さんが学校へ行くと「私たち1円も払っていないのですが、皆さん大丈夫ですか? どうやって生活をされているのですか?」と心配されることもあるそうです。

いまのところARROWSの売上は、「SENSEI よのなか学」でコラボする企業からの費用で成り立っています。企業は、未来のお客さま、未来のファンを作れるということで、マーケティング予算をつけてやりたいと言ってくれるそうです。

この「SENSEI よのなか学」のブレイクスルーポイントになったのはGoogleとのコラボだという浅谷さん。まだ実績がない時点でコラボしてくれて、他社も「Googleが参加しているなら、うちも」と続くようになりました。

こうして「企業から対価をもらい、先生には無料で提供する」ビジネスモデルは、ARROWSにおけるビジネスの大事なポイントです。先生たちから1円でももらおうとなると、学校側で決済が発生してしまう。そうなると手続きが面倒だし、時間もかかる。そうではなく、先生からはお金をもらわない、先生が使いたいときに使いたい教材を無料で使えるようにすれば、より多くの子どもに伝えられます。浅谷さんは自分たちの歩みをこう振り返ります。

「そもそもなぜ学校教育で、物事が進んでいないのかと考えると、たぶんビジネスモデルの視点が違っている。行政か保護者からお金をもらうとかの二択しかなかったり。僕たちは、そもそもそのアプローチ自体が間違っているのではないかと考え、新しい道を切り開いていきました」

4 「今後の展開」そして「ビジネスで大事にしていること」

最後に、浅谷さんに今後の展望と、ビジネスにおいて大事にしていることを改めて聞いてみました。浅谷さんの言葉でご紹介します。

●浅谷さんが語る今後の展望

「海外へも展開していきたいですね。国内では、先生の人数は100万人ですが、世界でいうと5000万人から6000万人くらいいますから。そう考えると、現在のARROWSのユーザー数は、6000万人中の9万人ですから、まだまだだなと考えています」

●浅谷さんが語るビジネスで大事にしていること

「ARROWSではバリューのひとつに“先生ファースト”を掲げていますが、常にARROWSで話題になるのは“これって先生のためになるのかな?”とか“先生の課題って何だっけ?”です。これはとても大事にしていることですね。そうでないと、例えば企業からお金をもらうのが目的になっていくとか、もともとやろうとしていたことがだんだんねじ曲がってきてしまいます。われわれがやりたいのはそうではない。
そのようにミッション・ビジョン・バリューからブレず、乖離することなく、事業を進めていけているところは、メンバーにも共感してもらっていると思います」
「物事は“A or B”ではなく“A and B”だと、社内でもよく言っています。二者択一でなく、両方取りに行くのだと。コロナ禍やウクライナなど世界情勢なども含め、そういったピンチをいかにチャンスに変えるかだと。僕はそう思っています」

「先生ファースト」を、メンバー皆とブレずに徹底的に考え抜いていく。これは非常に重要なことだと思います。「われわれの顧客は誰か」「誰を喜ばせればいいか」「誰を一番幸せにしたいか」。こうしたことを、試行錯誤や創意工夫を繰り返しながら見事に実践・実現していると感じました。これを組織としてやり続けるのは、覚悟も胆力も必要で、ものすごいことをされていると思います。
「先生ファースト」のサービス、これはぜひ全世界6000万人の先生たちにも広がってほしい、そうして日本の、世界の学校教育がもっと良くなってほしいと心から思いました。浅谷さんたちなら実現できそうです! 有り難うございます。

以上(2022年11月作成)

【朝礼】月面着陸は、はたして誰の偉業か?

11月に入りました。皆さん、今年も間もなく終わりますが、1年を振り返ってみていかがですか。「十分な活躍ができた」「目標を達成できた」という人もいれば、あるいはその逆の人もいるでしょう。今日は、そんな皆さんに向けて、米国の宇宙開発の話をします。

今から50年前の1972年12月、「アポロ計画」最後の宇宙船である「アポロ17号」が、月から地球に帰還しました。アポロ計画は、米国が1961年から1972年までの11年間にわたって実施した、月への宇宙飛行計画です。また、有人宇宙船での月面着陸の初めての試みでした。最初に月に降り立ったのは、1969年7月の「アポロ11号」。米国はそこからさらに3年間で、アポロ12号から17号まで計6回の月面着陸を試み、うち5回を成功させています。

ところで、この月面着陸という偉業について考えるとき、皆さんは誰の顔を思い浮かべるでしょうか。まずは、月に降り立った宇宙飛行士、次いで、強いリーダーシップで計画を動かした当時の米国大統領でしょうか。ですが、忘れてほしくないのが、裏方である「技術者」の人たちです。

例えば、宇宙船に人を乗せて飛ばすには、宇宙飛行士の安全を守るための技術や、宇宙船を大気圏外に打ち出す角度など、とにかく緻密なコントロールが求められます。実際、アポロ計画初期の「アポロ1号」が、設計上の欠陥によって大事故を起こしたこともあります。

現代と比較すれば、まだ技術もおぼつかなかった50年前に、技術者たちがこうした事態が起きるたびに問題に向き合い、改善を重ねてきたからこそ、人類は月に降り立つことができたわけです。

この話を通じて、私は1年を振り返ってみた皆さんに伝えたいメッセージが2つあります。

まずは、この1年で「十分な活躍ができた」「目標を達成できた」という人は、本当によく頑張りました。自身の努力を大いに誇ってください。ただ、それと同時に、皆さんの成果が、はたして自分一人のものなのかということも考えてみてください。皆さんの成果が「月面着陸」だとすれば、皆さんをそこに到達できるように支えてくれた人がいませんでしたか。陰ながら見守ってくれた上司や、忙しいときに手伝ってくれた部下がいるはずです。もし、思い当たる人がいるなら、ぜひ、その人に感謝の気持ちを伝えてください。

次に、「あまり活躍できなかった」「目標を達成できなかった」という人は、なぜ思い通りにいかなかったのかの反省は必要ですが、決して気に病むことはありません。悔しいという気持ちがあるなら、それは皆さんが努力をしたということです。皆さんは、今年のスタート地点から見れば、間違いなく成長しています。いうなれば、アポロ計画の途中、宇宙船を月に着陸させるための研究を続けている段階です。腐らず、自分を磨くことを忘れないでください。皆さんが「月」に降り立つ日はすぐそこです。

以上(2022年11月)

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画像:Mariko Mitsuda

【規程・文例集】 「ポイント制退職金規程」のひな型

書いてあること

  • 主な読者:ポイント制退職金制度に対応した会社規程のひな型が欲しい経営者
  • 課題:通常の退職一時金規程とどう違うのか、具体的に何を定めればよいのかが分からない
  • 解決策:「支給額の計算方法」「ポイントの種類と単価」を明らかにし、さらに勤続年数や等級に応じてポイント数がどう変わるのかを別表などで示す

1 ポイント制退職金制度とは

ポイント制退職金制度とは、勤続年数や等級など、一定のルールに基づいて社員にポイントを付与し、そのポイント累計にポイント単価(1ポイント当たり1万円など)と退職金支給率(勤続5年で自己都合退職した場合は0.5など)を掛け、退職金の支給額を計算する制度です。

退職金の支給額 = 退職時のポイント累計 × ポイント単価 × 退職金支給率

ポイントには次のような種類があり、一般的に複数のポイントを組み合わせて運用します。

  • 勤続ポイント:勤続年数に応じて付与
  • 等級ポイント:職能資格等級などの格付けに応じて付与
  • 業績ポイント:会社の業績の良し悪しに応じて付与
  • 職務ポイント:個人の業務の難易度や責任に応じて付与
  • 個人ポイント:個人の人事考課結果などに応じて付与

ポイントの組み合わせ次第で、例えば「等級ポイントや個人ポイントの比率を上げて、能力重視の退職金制度にする」「職務ポイントの比率を上げて、職務重視(ジョブ型)の退職金制度にする」といった運用が可能です。ただ、ポイントの種類が多くなると管理が煩雑になりやすく、一般的には「勤続ポイント」と「等級ポイント」の2階建て方式がよく用いられます。

ポイント制退職金制度を社内規程に落とし込む場合、制度の内容が社員に正しく伝わるよう、

「支給額の計算方法」「ポイントの種類と単価」を明らかにし、さらに勤続年数や等級に応じてポイント数がどう変わるのかを別表などで示す

ことが大切です。次章で、専門家の監修付きひな型を紹介するので、確認してみましょう。

2 ポイント制退職金規程のひな型

以降で紹介するひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の会社によって定めるべき内容が異なってきます。実際にこうした規程を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

【ポイント制退職金規程のひな型】

第1条(目的)
本規程は、就業規則第○条の退職金について定めたものである。会社は、本規程に基づき、永年勤続および中途にて退職した従業員の退職後の生活の安定および遺族の支援を図るために退職一時金制度を設ける。本規程に定めのない事項は、本制度の実施について定める関係法令によるものとする。

第2条(差別的取り扱いの禁止)
会社は退職一時金制度を実施するに当たり、特定の者について不当に差別的な取り扱いをしない。

第3条(支給範囲)
本規程に定める退職金は、従業員が退職(死去による退職を含む)または役員に就任した場合に支給する。ただし、兼務役員の場合を除く。

第4条(適用)
本規程は、次の各号に定める者を除く全ての従業員に適用する。ただし、個別の契約書などにより、会社と従業員との間に別段の合意がある場合については、この限りでない。

  • 役員。
  • 嘱託。
  • 短時間勤務従業員。
  • 臨時に期間を定めて雇い入れられる者(臨時雇い)。
  • 日々雇い入れられる者。
  • 入社後、定年までの予定勤続年数が3年未満の者。

第5条(支給額の計算方法)
1)退職金の支給額は、次の算式により計算する。
  (勤続ポイントの累計+等級ポイントの累計)×ポイント単価
2)退職金の支給額において、1000円未満の端数が生じたときはこれを切り上げる。

第6条(ポイントの種類と単価)
1)勤続ポイントは、勤続1年ごとに付与されるポイントである。入社からの勤続年数に応じたポイント数は別表第1「ポイント表」に定める通りとする。
2)等級ポイントは、各職能資格等級への在級1年ごとに付与されるポイントである。職能資格等級に応じたポイント数は別表1「ポイント表」の通りである。
3)勤続ポイントおよび等級ポイントの1ポイント当たりの単価は1万円とする。

第7条(勤続年数などの計算方法)
退職時における勤続年数および職能資格等級への在級期間は、次の各号に定める通りとする。

  • 勤続年数は、入社日から退職日までとする。
  • 勤続年数および在級期間に1年未満の端数が生じた場合は月割で計算し、1カ月未満の端数は15日以上を1カ月とする。
  • 休職期間(業務上の事由による傷病での休職期間を除く)は、勤続年数および在級期間に算入しない。

第8条(加算金)
在職中に特に功労のあった者または勤務成績が優秀であった者には、加算金を支給する。加算金の支給の有無およびその額は取締役会で決定するものとする。

第9条(自己都合退職時の減額)
自己都合退職に該当する者の退職金は、別表2「自己都合の退職金支給率」を乗じた支給率により算定する。

第10条(支給制限)
就業規則第○条に定める懲戒解雇をされた従業員には、原則として退職金を支給しない。ただし、情状により一部を支給することがある。

第11条(死亡時の取り扱い)
1)死亡した従業員の退職金は、次の各号に定める順位に従い、その遺族に支給する。第2号から第5号については、従業員の死亡当時、死亡した従業員の収入によって生計を維持していた、あるいは生計を一にしていた者に限る。

  • 死亡した従業員の配偶者(婚姻の届け出をしなくとも事実上婚姻と同様の関係にある者を含む)。
  • 死亡した従業員の子。
  • 死亡した従業員の父母(実父母より養父母を優先する)。
  • 死亡した従業員の孫。
  • 死亡した従業員の祖父母。

2)同順位の者が2名以上となる場合には、そのうち最年長者を代表者としてその者に給付する。

第12条(支給時期)
退職金は、原則として退職日より3カ月後に支給する。ただし、不正行為等に対する調査中の場合については、当該支給を一旦保留とすることがある。

第13条(支給方法)
退職金は原則として一括払いとし、退職金の支給を受ける者があらかじめ指定した金融機関に振り込む。

第14条(譲渡などの禁止)
退職金を受ける権利は、これを譲渡し、または質権、担保に供したりしてはならない。

第15条(債務等への相殺)
従業員が会社に対して債務等を有する場合については、本人の同意を得ることにより、退職金をもって当該債務等の返済に充てることができるものとする。

第16条(書類の提出等)
退職一時金の給付を受けようとする者は、会社が指定する書類を指定の期日までに提出しなければならない。

第17条(罰則)
従業員等が故意または重大な過失により、本規程に違反した場合、就業規則に照らして処分を決定する。

第18条(取消および返還)
退職後、在職中の勤務に関し、懲戒解雇に相当する事由が明らかになった場合には、会社は退職金の支給を取消し、支給済の退職金を返還させることができる。

第19条(改廃)
本規程の改廃は、取締役会において行うものとする。

附則
本規程は、○年○月○日より実施する。

■別表1「ポイント表」■

別表第1「ポイント表」

■別表2「自己都合の退職金支給率」■

別表第2「自己都合の退職金支給率」

以上(2022年11月)
(監修 人事労務すず木オフィス 特定社会保険労務士 鈴木快昌)

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画像:ESB Professional-shutterstock