町中華の経済学 多品種、丼勘定は本当か?

書いてあること

  • 主な読者:飲食店や小売業など多品種少量販売の事業を行う経営者
  • 課題:原材料の値上げやコロナ禍の影響を受ける中、事業を継続するヒントを知りたい
  • 解決策:丼勘定ではなく、管理会計でポイントを押さえる

1 丼勘定は本当か?

「安い・うまい・早い」の三拍子そろった町中華。どこの街にでもありますが、長く続く秘訣は何でしょうか? 低価格で、客数はさほど多くもなさそう。でも潰れない。

町中華探検隊として町中華を食べ歩くライターの北尾トロ氏は、町中華を「昭和以前から営業し、1000円以内で満腹になれる庶民的な中華店。単品料理主体や、ラーメンなどに特化した専門店と異なり、麺類、飯類、定食など多彩な味を提供する。カレーやカツ丼、オムライスを備える店も。大規模チェーン店と違ってマニュアルは存在せず、店主の人柄や味の傾向もはっきりあらわれる」と定義づけています(「町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう」北尾トロ、下関マグロ、竜超著、KADOKAWA、2018年9月)。

丼勘定のイメージがありますが、本当にそうでしょうか? 町中華がいかにして生き残っているのかを探り、他の飲食店や小売業などの経営者が、管理会計で押さえるべきポイントを紹介します。

2 町中華が強い3つの秘訣

1)多品種に対応できる使い回しが利く仕入れ

町中華の特徴は豊富なメニューです。しかし、原材料となる食材は実は共通の食材が多いのです。町中華によくあるメニューと食材の例を挙げました。

町中華のメニュー例と主な原材料

こうして見ると、豚バラ肉など汎用性の高い食材が多く使われていることが分かります。仕入れや在庫管理の工夫はあるのでしょうか。公認会計士・税理士で、自身も青森県八戸市でラーメン店を経営し、『会計の基本と儲け方はラーメン屋が教えてくれる』(日本実業出版社)の著書もある石動龍氏は次のように教えてくれました。

「お客さんへ魅力を感じてもらえるよう、豊富なメニューを用意するとしても、食材のロスのないよう、メニュー構成や、原材料の仕入れ、管理を工夫する必要があります。例えばレバニラ炒めにしか使わないレバーを大量に仕入れるわけにはいかないでしょう。共通の食材で、いかに幅広いメニューを用意するか。食材のロスがないように仕入れ、管理するか。品質を保ちながら冷凍保存するのも一案でしょう」

2)適正な利益を確保できる価格設定

価格帯が異なるメニューが共存できるのも町中華の強みであると、石動氏は指摘します。中華料理には、北京ダックやフカヒレスープ、つばめの巣といった高級メニューがあります。町中華でもエビチリくらいはラインアップとしてあるところも少なくないでしょう。町中華でチャーハンが750円でエビチリが1500円で販売されていても違和感はありませんよね。一方、よほどのマーケティング的な狙いがない限り、価格帯の大きく異なるメニューを並べるのは、ラーメン屋やファストフード店では難しいでしょう。1杯750円が相場のラーメン屋に、1500円のラーメンがあったら違和感を覚えますよね。つまり、

町中華は適正な利益を確保できる価格設定がしやすい業態

ともいえるわけです。

3)居心地の良さが利益を生む

町中華に行くと、おつまみを数品頼んでお酒を飲んでいるお客さんを見かけます。この点も町中華の強みであると、石動氏は自著で述べています。つまり

長居をしてもらって、原価率が低いおつまみやお酒を頼んでもらうことで利益を確保

しているのです。例えば800円の炒め物が原価率30%だとして(粗利560円)、加えておつまみとお酒を2000円分オーダーし、その原価率が10%だったとします(粗利1800円)。そうすると、客1人当たりの限界利益は2360円になります。

町中華の店主がそのように狙っているかは分かりませんが、町中華には手軽な「居酒屋」という側面もあります。ファストフード店などが努力して取り込もうとしている居酒屋需要が町中華にはあるのです。

3 ココだけは押さえたい管理会計のポイント

1)FLR比率に注目する

本当に丼勘定でやっていると、自分の店が苦戦している理由として、固定費が高いのか、原材料費が高いのかすら分からなくなります。一般的に、飲食店経営で大切な指標といえばFLRコストです。それぞれ、

  • F(Food):食材費
  • L(Labor):人件費
  • R(Rent):賃料

を指しています。店の状況によってさまざまですが、一般的に、

F比率は30%程度、FL比率は60%程度、FLR比率は70%程度

に抑えるのが理想とされています。

FLR比率=(食材費+人件費+賃料)÷売上

とはいえ、R(Rent/賃料)は、都市部と地方とで大きな差があります。都市部の好立地では、賃料は高くなりますが、それに見合う人通りもあります。ちなみに、昔ながらの商店街で数十年と続いている町中華がありますが、

「そのような店の多くは、持ち物件で営まれているのかもしれませんね。さらにもし家族経営だったとすれば、それだけで固定費の大半がカットできます。コストはほぼ食材のみとなり、あとは利益となるのです」(石動氏)

2)固定費と変動費に分ける

コストには、売上高に関係なく発生する固定費と、売上高に応じて発生する変動費があります。FLRコストに注目すると、

  • 固定費:人件費、賃料
  • 変動費:食材費

となります。これを軸に考えると、

月の売上高から食材費を引いたものを「限界利益」と呼び、この限界利益で人件費や賃料を賄えるか否か

が重要となります。これは、一般的な損益分岐点の考え方です。

3)利益構造を把握する

石動氏によると、押さえておきたいポイントは、

  • 客単価
  • 来客人数
  • コスト:固定費(主に人件費、賃料)
  • コスト:変動費(主に食材費)

です。客単価をベースとして、何人の来客数があれば、コストがどれくらいかかり、どれくらいの利益が残るのかという利益構造を把握していれば、食材費などが高騰したときも、どこに影響が出て、どこをやりくりすれば賄えるのかという打ち手がイメージできるようになります。

例えば、麺の仕入れ価格が、1玉当たり5円値上がりしたとすると、

5円×月の来客数=月の原材料コストがいくら上がるか

がすぐに分かり、ダメージの小さいうちに対処することができるのです。町中華の店主は、このあたりの計数感覚を自然と身に付けているのかもしれません。

以上のようなポイントを押さえ、管理会計を経営に活かしましょう。

以上(2022年10月)

pj50519
画像:和久 澤田-Adobe Stock

【朝礼】よい結果を出すために、気持ちを共有しよう

「皆さんにお願いがあります。明日の午後3時までに、皆さんが日々行っている業務内容を箇条書きにした資料を上長に提出してください」

ではもう一つ、「皆さんにお願いがあります。皆さんが日々行っている業務を整理し、業務の効率化につなげたいと考えています。本人以外が知らない細かな作業を、簡単なことでも把握したいと思います。そこで、明日の午後3時までに、皆さんの業務内容を箇条書きにした資料を上長に提出してください」

どうでしょう。前者と後者、どちらの方が、より正確な資料を作ることができそうですか? もちろん後者です。

前者では、私は単に必要な項目を提示しただけであり、それが何のために必要なのか、何に使うものなのかについて一切言っていません。これでは、資料を作る皆さんはきっと「これから一体何が起こるのか」と不安に思うでしょう。

vビジネスで頻繁に話題となる「見える化」というテーマは、簡単にいうと「現場における目に見えない活動の様子を目に見える形にしようとする取り組み」です。スタートからゴールに至るまでの過程を明らかにすることで、よりよい結果を出そうとする試みでもあります。

例えば、上司が部下に対して「新商品についてまとめたプレゼン資料を作っておくように」などといったように、作成すべきものだけを指示したとしましょう。部下は上司に指示された通りの資料を作成するわけですが、用途や目的が分からないままなので、部下は「これでよいのだろうか?」という疑問を抱くでしょう。自分なりの創意工夫や提案を盛り込むことにもちゅうちょしてしまうかもしれません。これでは上司が満足する資料ができない可能性があるだけでなく、部下にとっても経験・成長する機会にならず、お互いにとってよい仕事ができません。

そこで、上司が「来週、取引先を訪問する際に新商品を案内したい。新商品の概要をまとめたプレゼン資料を作ってほしい。特に機能面をアピールしたい」と伝えればどうでしょう。これなら部下は上司の意図や目的を理解できますから、それに沿うように自分で考え、調べ、工夫するでしょう。結果として、期待以上の資料が完成する可能性も高くなります。

このように、スタートからゴールに至るまでの過程を明らかにし、周囲の人と共有することは、自分以外の人に対して自分の考えを説明・説得するときにとても大切なことです。

人の気持ちや考えは当人にしか分かりません。他人が皆さんの頭や心をのぞくことはできないのです。ですから、皆さんが誰かに何か指示や依頼をするときは、相手がその意図を理解し、理由について納得できる話をするように努めましょう。過程とゴールを相手と共有できれば、必ずよい結果が出るはずです。

以上(2022年10月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】マラドーナ選手の“神の手”ゴールを批判から伝説に変えたプレー

けさは皆さんに、1986年にメキシコで開催されたサッカーワールドカップ(以下「W杯」)でのエピソードを話したいと思います。昔の話ですから知らない人も多いでしょうが、優勝したアルゼンチン代表のディエゴ・マラドーナ選手のプレーは、映像で見たことがあるかもしれません。

中でも有名なのが、準々決勝のイングランド戦で、ボールを手に当ててゴールを決めたプレーです。本来は反則ですので、ゴールは無効となるべきで、イングランド側から審判に対して抗議があったのですが、審判は判定を覆さずにゴールとして認めてしまいました。このプレーは、試合後にマラドーナ選手自身が、「ただ神の手が触れた」とコメントしたことで、“神の手”ゴールと呼ばれるようになりました。

当時はビデオによる判定が制度化されていなかったという事情はありますが、テレビの視聴者も明らかにハンドだと分かったくらいですから、試合後に審判やマラドーナ選手に対する批判が集まってもおかしくない状況だったと思います。

ちなみに、W杯の主催者であるFIFA(国際サッカー連盟)ですら、2004年の創立100周年を記念して制作したDVDの中で、W杯での「10大誤審」の第1位に“神の手”ゴールを選んでいます。

ところが、“神の手”ゴールは、後に「伝説のプレー」と呼ばれるようになったものの、審判もマラドーナ選手も、強く批判されることはありませんでした。

その大きな理由は、“神の手”ゴールのわずか4分後に、マラドーナ選手自身が世界中を魅了した、さらなる「伝説のプレー」を披露したことでした。ビデオで映像を見たことのある人も多いと思いますが、約60メートルをドリブルで独走し、相手ディフェンスを5人も抜き去ってゴールを決めたプレーです。そのプレーがあまりにも印象的だったため、その前の“神の手”ゴールに対する批判のトーンは一気に和らぎ、2つのプレーがセットになって「伝説」となっていったのです。

このエピソードは、サッカーに限らず、私たちが仕事をする上での心構えにも通じるものがあります。皆さんは多かれ少なかれ、仕事で失敗をして、クライアントに迷惑をかけてしまった経験があるかもしれません。大きな失敗であれば、人によっては、「クライアントの信頼を失った……もうダメだ」と思うこともあるでしょうが、素直に自分の誤りを認めて真摯(しんし)に謝罪し、ミスを帳消しにするぐらいの活躍を見せれば、クライアントの信頼は取り戻せるのです。

仕事に失敗はつきもので、特に前例がない、難しい業務をやるときはなおさらです。もちろん、誰しも失敗したくありませんが、仮に失敗しても、立ち止まって落ち込むのではなく、「取り返そう」と前を向ける意志の強さこそが大切です。間もなく今年も終わりです。来年も細心の注意を払いつつ、しかし失敗を恐れることなく、仕事に取り組んでください。期待しています。

以上(2022年10月)

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画像:Mariko Mitsuda

POS情報の連携やクラウドファンディングなど「6次産業化テック」最前線/新技術で変わる農林水産業(5)

書いてあること

  • 主な読者:業務の効率化や人手不足の解消を図りたい農林水産業者
  • 課題:どのようにすれば効率化や人手不足の解消が図れるのか分からない
  • 解決策:事例を参考に、生産者が生産だけでなく、販売・流通までの新技術を取り入れる

1 テクノロジーで6次産業化の課題を解決「6次産業化テック」

近年、農林水産業を営む企業で、人工知能(AI)やドローンなどのテクノロジーを取り入れる動きが出てきています。体力勝負のこまめな管理や、自然環境の影響を大きく受けるこれらの業界では、次のような課題が挙げられています。

  • 高齢化による人手不足、ノウハウの継承
  • 変化する自然環境への対応
  • 効率的、持続的な生産・収穫・漁獲・販売体制の確立

このシリーズでは、農林水産業を営む企業が直面する課題を解決するための最新テクノロジーの動向と、その活用事例を紹介します。これまで4回にわたって第1次産業である農林水産業に関する最新テックを紹介してきました。最終回となる第5回は、農林水産業者が、6次産業化を目指す中で直面する課題を解決するための「6次産業化テック」です。具体的には、

  • POSシステムを取り入れたリアルタイムの情報連携で、補充漏れや誤発注を回避
  • 産直サイトなどを通じた消費者とのコミュニケーションで中間マージンを削減
  • クラウドファンディングを活用した資金調達とファンづくり

といった取り組みを紹介します。

2 「6次産業化テック」取り組み事例

6次産業化テックで実現すること

1)生産者・食品加工業者・飲食店×POS連携=フードロスの回避

ブエナピンタ(徳島県鳴門市)が運営する6次化支援施設「THE NARUTO BASE(ナルトベース)」は、生産者による農産物や加工品の直売所を提供している他、生産者が持ち込む農産物の加工場やレストランを展開しています。ナルトベースは販売情報を個別に管理するPOS(Point Of Sales=販売時点情報管理)システムを取り入れて、生産者や施設内の加工場、レストラン、直売所、契約レストランなどとリアルタイムの情報連携を行っています。当日の追加補充の必要性や、週ごとにどのくらい仕込めばよいのかが分かるので、「売れ筋」商品を早期に把握できるとともに、補充漏れや誤発注などのロスが回避できます。

また、加工場は、規格外で既存の流通では廃棄されてしまう農作物や魚介類を、近隣の生産者から買い取り、新鮮なままペースト加工・瞬間冷凍などにより商品化します。商品は首都圏の契約レストランをはじめ、全国の飲食店や個人に販売します。地元の加工場で新鮮な食材を低コストで調理することで、人件費や土地代の高い首都圏で下ごしらえをするコストの削減につながります。地元生産者にとっても、もともと廃棄するものが商品として販売できるので、利益になる仕組みです。

2)生産者と消費者×ネットワーク=消費者との直接のコミュニケーションの実現・配送のコストダウン

ビビッドガーデン(東京都港区)は全国の生産者から、消費者が直接食材を購入できるオンライン直売所「食べチョク」を運営しています。通常の流通では、生産者が作った食材は農協がまとめて購入し、卸売―仲卸―小売店―消費者といった流通ルートを通すため、生産者の取り分は小売価格の30%ほどといいます。その一方で「食べチョク」は、生産者がサイトに自分のページを作り、値段も自分で決めて、直接消費者へと送ります。そのため、売り上げ手数料である20%を差し引いた80%ほどが粗利益となります。

「食べチョク」は、収穫から最短24時間以内に発送を行っているので、鮮度の高い食材が届くことや、農家が自分のページを持つことで、生産者と消費者が直接コミュニケーションできることが特徴です。「食べチョク」の登録ユーザー数は70万人、登録生産者数は7500件に上ります(2022年7月22日時点)。

生産者と直接つながることで、消費者は「生産者とつながっているから安心できる」という声が多いそうです。また、生産者は「こういう料理に使いやすい」といった情報や、手書きの「ありがとう」メッセージを入れるなどして、ファンづくりをしているといいます。

やさいバス(静岡県牧之原市)もECサイト「やさいバス」を通して地域内の生産者と消費者を結び付けていますが、独自の配送システムで野菜を効率的に流通させる仕組みも提供しています。

生産者は「やさいバス」を利用することで、受発注の記録が流通の過程で自動的に残るため、伝票を書いたり、集計したりする必要がなくなり、事務作業が大幅に効率化したそうです。また、通常の市場流通では、農家に価格決定権はありませんが、「やさいバス」では、農家側が価格を提示できるので、こだわって作った野菜を、適切な価格で早く消費者の元へ届けることが可能です。サイトにはSNS(交流サイト)もあり、そこで農家と購入者が直接コミュニケーションできます。例えば、こだわりの農産物の栽培農家を探す際にSNSを活用し、好みの農家と出会い、土壌や栽培方法などを聞くことで付加価値に気付いたり、農家側も購入者の声を聞くことで、栽培する野菜を見直したりすることもできるようになったそうです。

同社は、地域内の複数の場所に「バス停」を開設。消費者から注文を受けた農家が最寄りの「バス停」に野菜を持ち込むと、当日中に同社の地域巡回冷蔵トラックが消費者の最寄りの「バス停」に配送します。利用料は、2022年9月時点で農家の販売手数料が売り上げの15%で、購入者の配送手数料が1ケース385円(税込み)です。従来は、農家が宅配事業者を利用して取引先に配送しようとすると、配送料が野菜と同程度になることもあったので、大幅にコストダウンできたそうです。

3)自治体の支援×クラウドファンディング=資金調達とファンづくりに貢献

鹿児島県は2021年に、県内の6次産業化に取り組む農林漁業者や県産農林水産物の食品加工事業者に対して、「クラウドファンディング」の支援を行いました。17事業者が参加し、全事業者が目標金額を達成できました。

同県は参加した事業者に対し、2回の活用セミナーと、ウェブサイトの作り方や返礼品の設計などをオンラインによる個別指導を実施しました。それを基に、参加した事業者の多くがウェブサイトに、「顔写真があり、自分の気持ちや生い立ちを説明した自己紹介」や「商品へのこだわり」を掲載しました。その他、「鹿児島県ならではの歴史や地域性」「事業者の家族やグループメンバーの紹介」「レシピ集」など、事業者と商品を関連付けてストーリー化したPRでファンづくりにつなげました。

4)取引業務アプリ×LINE=数多くの取引先とのやり取りを効率化

Kikitori(東京都文京区)は、スマホやタブレットなどの端末を使って卸売事業者や仲卸業者といった、流通業者と生産者の取引業務が効率化できるアプリ「nimaru」を提供しています。

生産者は、「nimaru」を利用する流通業者とLINEで友だち登録するだけで、新たな流通業者とつながることができるのが特徴です。一方、流通業者の中には、営業担当者1人につき100件を超える生産者・出荷者と取り引きをしているところもあります。生産者ごとに電話、FAX、メール、SMSといった連絡手段が違うと、日々相場が変化する市場取引では、集計や報告作業が煩雑になり、報告漏れやミスの原因となります。

しかし、流通業者と生産者の双方が「nimaru」を利用すれば、入力した入出荷予定情報は、即時に流通業者と生産者の間で共有されるので、情報集約のための作業負担が大幅に軽減されたといいます。

3 6次産業化テック関連のデータ:ニーズと課題など

1)市場は緩やかに拡大

これまで見てきたように、さまざまなシーンで「6次産業化テック」導入の動きが始まっています。農林水産省などの資料から、求められているニーズや課題などの状況を見てみましょう。6次産業化の農業生産関連事業の年間総販売金額は2018年度まで緩やかに拡大していましたが、2019年度は、前年度と比べて267億円減少し、2兆773億円となりました。

農業生産関連事業の年間総販売金額

2)6次産業化に取り組んだ事業者の売上額は増加傾向となる

政府は2010年3月に「地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出等及び地域の農林水産物の利用促進に関する法律」(六次産業化・地産地消法)を成立させました。

農林水産物などの生産や加工、販売を一体的に行う事業計画を「総合化事業計画」と呼び、認定を受けた事業者は「総合化事業計画認定者」として、無利子融資資金の貸し付けや新商品開発、販路開拓などに対する補助、農林水産省による媒体掲載、仲間づくり、情報提供などの支援を受けることができる法律です。

総合化事業計画の認定件数は2020年度末時点で2591件となりました。農林水産省が行った認定事業者を対象としたフォローアップ調査によると、5年間総合化事業に取り組んだ事業者の総合化事業で用いる農林水産物等と新商品の売上高平均額は、増加傾向となっています。

農林水産物等と新商品の売上高平均額

以上(2022年10月)

pj50514
画像:onephoto-Adobe Stock

【朝礼】仕事と勉強、できない人の6つの共通点

突然、変な質問をしますが、皆さんは自分自身を、仕事ができる人間だと思いますか? できない人間だと思いますか? 実は恥ずかしながら、若手だった頃の私には「自分は仕事ができる」と信じきっていた時期がありました。ただ、ある程度月日がたち、それがうぬぼれだったことに気付きました。なぜ、うぬぼれだと気付いたのかをお話しする前に、ぜひ聞いてほしいことがあります。

私は、仕事ができない人には、学生時代、勉強が苦手だった人が多いと考えています。私が考える、勉強が苦手な人というのは、

  • 同じ問題を何度も間違える
  • 一冊の問題集をやり遂げられない
  • ノートをきれいに作りすぎる
  • 勉強時間の長さにこだわる
  • 理想が高く難問ばかりに挑戦する
  • 志望校などの情報に、やたら詳しい

のいずれかに当てはまる人です。この1.から6.のタイプ、実は学校だけでなく会社にもいます。

まず、1.は、学習効果の薄い人です。仕事で同じミスを繰り返す人は評価が低いですし、特に若い社員は、失敗も含めた経験を次に活かすことが大事なはずです。

2.は、根気と実行力のない人です。途中で次々と新しい問題集に手を出す学生がいるように、仕事でも、最初の掛け声や返事は良いのに、少したって「あれはどうなった?」と聞くと、「実は、進んでいません」と答える人がいます。

3.は、手段と目的を明確にできない人です。例えば、きれいなプレゼン資料を作ることに満足してしまい、プレゼンで提案を通すという本来の目的を忘れてしまうようなタイプです。

4.は、結果でなく努力だけを重視する人です。結果を出すための工夫をせずに、非効率であっても、ただ頑張ったことだけを誇るタイプです。

5.のような理想が高い人は、自分自身の現時点での実力を受け入れられない人です。一見、仕事ができそうに感じますが、ただ背伸びをして、基礎を固めていないので、しばらくするとメッキが剥がれるタイプです。

6.は、情報通で、ゴシップ好きな人です。情報収集力は高いのですが、その力の発揮する方向が社内に限定され、仕事に費やすべきエネルギーについて、間違った使い方をしているタイプです。

怖いのは、周囲から仕事ができると評価されている人が、実はこの6つのタイプに当てはまるケースがあるという点です。特に若手のうちは「頑張り」が見えれば評価されますが、ある程度月日が経過すると、それだけでは通用せず、結果を求められるようになっていきます。私が自分のうぬぼれに気付けたのも、月日がたって、そうしたメッキが剥がれてきたからなのです。

「自分は仕事ができる」と思っている方、ぜひこの6つのタイプに当てはまっていないか確認してみてください。私も若手の頃の過ちを繰り返さないよう、謙虚に自分を見つめていきます。

以上(2022年10月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】整理整頓ができなければ、思い切って捨ててしまえ

オフィスを見回すと、デスクの上が片付いている人、片付いていない人がいます。デスクが雑然としていると、必要なときに探し物が見つからず、仕事の効率が悪くなります。中には「片付けなくても、私はどこに何があるか分かっている」という人がいるかもしれません。そういう人に聞いてみましょう。「デスクの上や引き出しの中には何があるのかすべて覚えていますか? 必要なものをすぐに取り出せますか?」。どうですか? すべてを把握している人はいないでしょう。

仕事を効率的に進めるためにも不要なものを整理し、使い勝手よく整頓することは欠かせませんが、整理整頓が苦手な人もいるようです。私がみたところ、そんな人の多くは不要なものを捨てることができていないようです。そういう人は「不要なものを保管しておくのは、収納スペースがもったいない、探し物をする時間と労力がもったいない」と、視点を変えて整理整頓に取り組んでみてはどうでしょうか。

ここで、私が実際に整理整頓を実践する際の秘訣を紹介したいと思います。整理整頓は、まず不要なものを捨てることからスタートしますが、人によって要不要の判断基準は異なると思います。私はまず、それがすぐに使うものかどうかという点でそれを判断します。例えば、毎日使うカレンダーをデスクにしまい込む必要はありませんが、3カ月に一度しか使わない画びょうをデスクの上に出したままにしておくのはおかしいですね。

もし、すぐに使うかどうか判断に迷う場合は、しばらく置いておくのもよいでしょう。その場合もただ置いておくのではなく、判断に迷うものを入れる箱を用意して、そこに入れて1週間たっても使わないようなら片付けるか、捨ててしまいます。

また、資料などであれば、すぐに手に入るか否かで判断します。インターネットで簡単に入手できる資料を印刷して保存するのは無駄ですが、図書館に行かなければ手に入らないものはファイリングして保存しておく必要があります。

このほか、なくしてしまいがちで、整理が面倒なメモ書きなどはバラバラに保管したり、ノートに内容を書き写したりするよりも、スキャナでパソコンに取り込んだり、ノートにまとめて張り付けてしまうのもよいでしょう。

不要なものをためこんでしまうから、デスクは雑然としてしまい、肝心なときに必要なものを見つけられなくなってしまいます。要不要を判断して、不要なものは思い切って捨ててしまうことです。そして、要不要の基準は、頻繁に使うものか、再度入手することが容易なものかです。さらに、バラバラなものはとにかくまとめてしまう。これが、私の整理整頓の秘訣です。

デスクやオフィスの収納スペースには限りがあります。もったいないと思わず、思い切って捨ててしまいましょう。今日紹介した要不要の判断基準や、自分なりの判断基準を基に整理整頓に努めて、仕事の効率化につなげていただきたいと思います。

以上(2022年10月)

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画像:Mariko Mitsuda

男女の賃金差異、どこからが違法な「男女差別」?

書いてあること

  • 主な読者:男女の賃金差異の公表が義務化され、賃金の方向性について考えている経営者
  • 課題:男女の平均年齢の違いなど、やむを得ない賃金差異もある。どこまで対処すべき?
  • 解決策:「性別の違いだけを理由に賃金に差を付ける」「産休(産前・産後休業)などを取った女性の賃金を極端に下げる」など、違法な賃金差異がないかを確認する

1 常時301人以上の会社では、男女の賃金差異の公表が義務化

2022年7月8日より、女性活躍推進法の厚生労働省令が改正され、

社員数が常時301人以上の会社では、自社が雇用する男女の賃金差異を、事業年度ごとに公表することが義務化(社員数が常時300人以下の場合、公表は任意)

されました。具体的には、新年度の開始からおおむね3カ月以内に、図表の赤字の内容(前年度の実績)を、厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース」などで公表する必要があります。

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中小企業は公表義務の対象外ですが、男女の賃金差異に無頓着でいると、「女性に優しくない、時代遅れの会社」などのレッテルを貼られ、人材採用などにも影響が出るかもしれません。

男女の賃金差異が生じる理由はさまざまで、なかには「男女の平均年齢の違いから、年功給の平均額に差異が出る」など、やむを得ないケースもあります。一方で、確実に対処しなければならないのが、違法な「男女差別」による賃金差異です。主なものは、次の3つです。

  • 性別の違いだけを理由に賃金に差を付ける(労働基準法)
  • 性別の違いだけを理由に職務に差を付ける(男女雇用機会均等法)
  • 産休などを取った女性の賃金を極端に下げる(男女雇用機会均等法、育児・介護休業法)

いずれも社員とトラブルになった場合、民法の損害賠償請求などを受ける恐れがある他、1.については、労働基準法違反の罰則(6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金)もあります。

「令和の時代に、こんな露骨なことをする会社があるのか」と思うかもしれませんが、まだ法整備が進んでいない頃に作られた社内規程が見直されないまま、知らず知らずのうちに「男女差別」に当たる運用をしてしまうケースなどもあるので、念のため確認しておきましょう。

2 ケース1:性別の違いだけを理由に賃金に差を付ける

労働基準法には、「性別の違いだけを理由に賃金に差を付けてはならない」というルールがあります。「賃金に差を付ける」ケースに当たるのは、例えば、

  • 男女で基本給の額が異なる
  • 特定の手当を男性にだけ支給し、女性に支給しない
  • 男女別の賃金表を設けており、勤続年数に応じて昇給額が異なる

などです。

労働基準法では、何をもって「性別の違いだけを理由に賃金に差を付けている」と判断するのかが明らかになっていませんが、過去の裁判(東京地裁平成4年8月27日判決)では、

男女の「職務内容・責任・能力が同じ」で「勤続年数や年齢も比較的近い」場合、賃金に差を付けるのは違法(性別の違いだけを理由に差を付けていると判断できる)

という考えが示されています。要するに「男女の働き方が同じなら、賃金も男女平等にしなければならない」ということです。

なお、労働基準法では、

賃金について、女性を男性よりも「不利に扱う」だけでなく「有利に扱う」のも違法

とされています。最近は、女性が働きやすいように福利厚生の充実に取り組む会社が多いですが、例えば、「育休(育児休業)期間のうち、最初の○日間は有給とする」という制度を設ける場合、「女性の育休は有給とするが、男性の育休は無給とする」といった運用はできません。

3 ケース2:性別の違いだけを理由に職務に差を付ける

男女雇用機会均等法には、「性別の違いだけを理由に、次の内容について差を付けてはならない」というルールがあります。

  • 配置転換(業務の配分、権限の付与を含む)、昇進、降格、教育訓練
  • 住宅資金の貸付けなどの福利厚生の措置
  • 職種、雇用形態の変更
  • 退職勧奨、定年、解雇、労働契約の更新

第2章の労働基準法のルールだけにのっとると、「男女で職務が違う場合、賃金差異があっても違法ではない」といえそうですが、この男女雇用機会均等法のルールがあるため、

合理的な理由もなく、男女で就くことのできる職務に差を付け、その結果、男女の賃金差異が生じる場合は違法

になります。

過去の裁判(東京地裁平成14年2月20日判決)では、「総合職」「一般職」のコース別人事を設けていた会社が、賃金の高い総合職には男性ばかりを、賃金の低い一般職には女性ばかりを当てはめていて違法と判断されたことがあります。社内規程上は男女双方に開かれたポストであっても、実際にそのポストに就いている社員(過去に就いていた社員を含む)の性別が極端に偏っている場合、配置の見直しが必要かもしれません。

なお、個人の経験や能力の違いによって職務に差を付けることは問題ありませんが、その裏で「会社として、職務に就くために必要な能力を身に付ける教育訓練を実施しているが、教育訓練の対象を男性に限定している」といった運用がされている場合は、違法になります。

4 ケース3:産休などを取った女性の賃金を極端に下げる

男女雇用機会均等法と育児・介護休業法には、「妊娠や出産をしたり、産休や育休を取ったりしたことを理由に、不利益な取扱いをしてはならない」というルールがあります。賃金に関する不利益な取扱いの例としては、

  • 基本給を引き下げる
  • 賞与支給額や昇給額の一部または全部をカットする

などが挙げられます。不利益な取扱いが禁止されているのは、産休や育休などの制度の利用を妨げないためですが、賞与支給額や昇給額の一部または全部をカットするケースについては、少し判断が複雑です。例えば、賞与の査定期間中に産休を取った女性がいる場合、

その女性は、休業しなかった他の社員よりも査定期間中の仕事量が少なくなる

ため、その点を賞与支給額に反映しないと、他の社員にとって不公平になる

という問題があります。

過去の裁判(最高裁第一小法廷平成15年12月4日判決)では、ある学校が「賞与の査定期間の90%以上を勤務しない場合、賞与は支給しない」というルールに基づき、査定期間中に産休を取った女性の職員に賞与を支給せず、トラブルになったケースがあります。裁判では、

  • 賞与の査定期間の出勤すべき日数に、産休の日数を算入することは、法令で認められた休業制度の意義を失わせるので違法である
  • 賞与支給額を、産休による欠勤日数の分だけ減額すること自体は違法でない

という判断がされています。つまり、

女性が査定期間中に産休や育休を取っていても、出勤した分の仕事については評価して賞与を支給しなければならない

ということです。

5 (補足)違法ではないものの、見直しが必要なケース

ここまで「賃金差異が違法なケース」を紹介してきましたが、これ以外に「違法ではないものの、見直しが必要なケース」というものもあります。

例えば、第1章で紹介した「男女の平均年齢の違いから、年功給の平均額に差異が出る」というケースは、賃金制度の運用と直接関係がなく違法とはいえませんが、仮にその裏に「男性に比べて女性の平均勤続年数が明らかに短い」という事情がある場合、見直しが必要です。

女性が定着しない会社によく見られるケースとしては、

  • 産休や育休などの制度は整備されているものの、「職場が常に忙しく、妊娠や出産を歓迎する雰囲気がない」などの理由で、制度を利用しにくい
  • 女性の管理職が少なく、キャリアアップが見込めない雰囲気がある

などが挙げられます。対策としては、

  • 会社として女性の活躍推進に積極的に取り組みたい旨を、経営者が進んでPRする
  • 産休や育休などの制度の存在を、定期的に社内に周知する
  • 産休や育休を取る社員には、出産・育児の妨げにならない範囲で、職場の状況などを共有する機会を設け、休業終了後にスムーズに職場復帰できるようにする
  • 社員とキャリア形成に関する面談を定期的に実施し、キャリアアップの希望を聞く

などが挙げられます。なお、一番最後の「キャリア形成に関する面談」については、女性自身がキャリアアップを希望しないケースもありますが、それが本人の生活事情や価値観によるものなのか、あるいは「女性は○○職に就けない」などの誤解をしているからなのかは、慎重に確認する必要があります。

上のようなケースは、「賃金差異が違法なケース」に比べると対処の優先度は低く、また是正にもそれなりの時間を要しますが、冒頭でも触れた通り、世間全体が男女の賃金差異に注目している状況ですので、やはり計画的に是正に取り組む必要があります。

以上(2022年10月)
(監修 弁護士 田島直明)

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画像:gugu-Adobe Stock

【特別企画】Z世代起業家がZ世代の学生に向けて「起業」を語る講座/岡目八目リポート

年間1000人以上の経営者と会い、人と人とのご縁をつなぐ代表世話人杉浦佳浩氏。ベンチャーやユニークな中小企業の目利きである杉浦氏が今回ご紹介するのは、
特別企画、埼玉大学で行われた講座「実践ベンチャー論:Z世代スタートアップ実践の実情を聞く」(2022/6/24開催)です。

この講座は、「Z世代に向けて、Z世代起業家がスタートアップの実情を語る」内容で、他では聞くことのできない、志も高く実績もある起業家4名による講義です。事業や起業の実情を詳しく語った4名の起業家。そして、真剣に耳を傾け、時間が足りなくなるほど質問もたくさんしてくれていた埼玉大学の学生などの聴講生。講義後、「起業の志が固まりました!」と決意も新たに顔つきがすっかり変わった聴講生もいたほどです。
本当に大げさでなく、聴講生たち(年齢問わず)の今後の人生に影響を与えたであろう、かけがえのない暑いアツい夏の一日が凝縮されていました。この記事では、講義の中で4名のZ世代起業家がお話してくださった内容を一部ご紹介します(とても伝えきれない、盛りだくさんで素晴らしい内容と熱量!)。なお、起業家4名の中には、かつてこの「岡目八目シリーズ」でご紹介した方々もおられます。後ほどそれぞれの岡目八目シリーズ記事へのリンクもご案内しますので、ぜひ覗いてみてください。

●登壇 Z世代起業家
後藤 学氏 :株式会社Helte 代表取締役
福田 駿氏 :株式会社Diary 代表取締役、就活YouTuber
西側 愛弓氏:株式会社COXCO 代表取締役
大槻 祐依氏:株式会社FinT  代表取締役

●モデレート
杉浦 佳浩氏:代表世話人株式会社 代表取締役

1 どのような事業をしているか?

まずは自己紹介を兼ねて、「どのような事業をやっているか」「なぜその事業をやっているか」といったことを最初にそれぞれお話してくださいました。そこからしてもう、面白くて勉強になる情報が満載です。お話してくださった順番にご紹介します。

1)大槻さん 株式会社FinT

大槻さんの株式会社FinTでは、主に、メルカリなどの企業のSNSマーケティング支援や運用、ライブ配信、メディア運用などを行っています。とにかく勉強家で実績もあり、突破力も実行力もハンパない大槻さん。ビジコンで優勝したこともある大学時代には、インターンながら一事業部を担当し、力強く仕事をして社員のマネジメントもしていたそうです。
 ビジコン優勝特典でシリコンバレーに行ったり、シンガポールに1年間留学したり、大学3年のうちに起業したりとさまざまな経験をしてきた大槻さん。聴講生向けにさっそく「私自身、たくさんチャレンジしてたくさん失敗してきました。皆さんも多くのチャレンジと失敗をしてください。今私たちの会社は、インターン生20人くらい社員40人くらいで、インターン生もすごく活躍していて年齢は関係ないなと感じてます。ぜひ頑張ってください」と激励を。場作り、リーダーシップも素晴らしいと感じました。
 会社としてのパーパスを変えたという大槻さん。その思いを次のように話していました。
「今のパーパスは“みんなの強みを活かして、日本を世界を前向きに”です。日本を、世界を前向きにしたい、それが今一番やりたいこと。日本の技術など日本の『何か』を使ってグローバルスタンダードをつくっていけるようにしようとしています」

●株式会社FinTのウェブサイトはこちら

大槻さんの画像です

2)後藤さん 株式会社Helte

後藤さんの株式会社Helteでは、日本のアクティブシニア層と海外の人たちがオンライン上で、“日本語で”交流できるプラットフォーム「Sail」を開発展開しています。「Sail」はまさに、すぐに海外とつながれる、自分の世界を広げる窓。参加国は実に154カ国、総利用者数は26,000人以上(2022年9月時点)とすごい数です。海外の人たちを集めるために、コネ無し知り合い無しの状態でタイなどの海外を“飛び込み”で回った泥臭いガッツの後藤さん。その様子を、まるで当たり前のように飄々と語る感じがまた、聴講生を惹きつけていました。
「Sail」を使って交流した後の分析にハマっているという後藤さん、そうした中で海外の人が日本で就職する際の支援のようなこともやっているそうです。
また、東京大学と一緒に、「Sail」を使ったことによる人の行動変容(ICTの理解度が上がった、海外の人に対する偏見が減ったなど)の分析なども行っており、これに関心を持った自治体などとも連携が実現。これからもどんどん全国各地、そして世界に拡がっていきそうです。
 海外の人たちが参加した日本語スピーチコンテストを実施した後藤さん。こう語ります。
 「今回は、全世界80カ国を超える1500人が参加、日本語でビジコン的にプレゼンしてもらいました。彼らの大きな夢を日本語で聞いて本当に感動した。これからの日本を支えるのはきっと彼らのような海外の人たち。ぜひ一緒に色々な事業ができたらと思います」

●株式会社Helteのウェブサイトはこちら

後藤さんの画像です

3)福田さん 株式会社Diary、就活YouTuber

福田さんは株式会社Diaryの代表かつ、就活生向けのYouTubeチャンネル「しゅんダイアリー」を持つ就活YouTuberでもあります。YouTubeで11万人、TikTokで9.7万人の登録者がいて(2022年9月時点)、そこを軸に就活サービスを展開。また、企業の採用広報も手掛けています。
YouTuberとして、日頃から色々な人にインタビューもしている福田さん、今回の講義でも自分の話をしつつも聴講生に「しゅんダイアリーって聞いたことある人、手を挙げてもらっていいですか?」とインタラクティブに展開。
続けて「僕は石川県金沢市出身で金沢大学に行っていて、留学もインターンもしたことなかったんです。でもどうしても東京の大学に来たかったし、東京で仕事したかった」「埼玉大学と金沢大学はなんか雰囲気が似ていてめちゃめちゃ親近感あります」「中学生のころから起業を考えていたけれど、自分は何者でもないし何もできないので、とりあえずYouTubeで結果を残したいと思った」「最初は旅行系の動画とか配信してまったくうまくいかず、『自分の言いたくないことを言おう』と仮面浪人に失敗した体験談をアップしたら初めて10万回再生」「仮面浪人人口は2万人しかいないと気づいて、大学3年の就活タイミングで就活系に切り替えて、毎週東京に行って東京の会社で自分がガチで面接を受ける様子を動画にしたらちょっとずつウケて今につながる」などなど、聴講生から見るととても分かりやすく親近感がわく、そしてぐんぐん引き込まれるストーリー。聴かせます。福田さんは目指す未来もしっかり語ります。
 「僕は中学生のころから世界と戦いたいと思ってきた。時価総額という会社の『企業価値』というものがありますが、時価総額10兆円の会社にすることが今の目標であり課題です」

●株式会社Diaryのウェブサイトはこちら

福田さんの画像です

4)西側さん 株式会社COXCO

今回、西側さんはなんと、フィリピンからのオンライン参加でした。こういうスタイルも、聴講生にとってはとても良い刺激になります。
西側さんが展開するのは社会課題と向き合うアパレルブランドです。西側さんは「服の形をしたメディア」とも表現しています。「大学時代にバックパッカーをした経験から、貧困問題などさまざまな社会課題を肌で感じた」という西側さん、ファッションを通して社会にとっていいことをしたいと考えるようになったそうです。例えば、不要になった繊維(洋服)からつくられた再生ポリエステルを使って、できるだけ長く愛されるデザインの服を仕立てる、しかも受注生産で気に入ってくれた人にだけ提供するなどを行っています。
そして今は、「フィリピンでファッションスクールをつくる」というチャレンジもしているそうです。
フィリピンではファッションショーも開催している西側さん、その思いを語ります。
 「2015年から、フィリピンで暮らす子どもたちが思い出になる場所をつくろうと、ファッションショーをやっています。今回で8回目になります。ファッションを通してみんなで夢を描く、みんなで胸を張って生きていこうという体験をつくりたいです」

●株式会社COXCOのウェブサイトはこちら

西側さんの画像です

「挑戦」。4名の自己紹介含めた事業の話からまず感じるのはこの言葉です。グローバルな目線を持っている、そもそも生き方が枠にとらわれていない。そして難しいこと、でもやりたいことに果敢に挑み続けていることがうかがえます。

2 なぜ、どうやって起業したか? 起業ストーリー

起業の理由、起業ストーリーも各者各様で、特に今回は起業を志す聴講生も多かったため、かなり聞き応えがあったのではないでしょうか。「海外留学」「バックパッカー」といった、世界に触れられる環境も起業要因の一つと思いますが、そうした環境以上に「これをやりたい、やってみる。やり切ってみる」という志、そして行動することがとても大事だと感じました。ここでは、それぞれが講義で語っていた濃い起業ストーリーの特徴的な点をご紹介します。

●大槻さん

  • 起業した理由は、広く言うと「自分が生まれてきた意味を持ちたい、私が生まれたから世界が良くなったという風にしたい」から
  • シンガポール留学時代から「金融課題を解決するサービスをやろう」と一緒に練っていた仲間と大学3年のときに起業。後にサービスは変化
  • 起業当初は両親が大反対。起業して、オフィスに寝泊まりするくらいずっと仕事漬けで必死だったがうまく行かず。お金もなくなり。仲間とは解散したり。そうした過酷な毎日でも、1人でやり切ると頑張っているうちに親の見る目が変わってきた
  • 今では、税理士事務所で働く母が経理担当として会社をとても支えてくれている

●後藤さん

  • 誰もが知る大企業に就職するも1年で辞めて起業。泥船でもいいから早く出航したかった
  • 大学時代にシアトルに留学、インドにも行き、その他にも色々とバックパッカーで世界を放浪する日々。それが後に「海外の仕事に貢献したい」につながって、その気持ちが爆発
  • 起業していく中でさまざまな人のご縁を感じる。フランス人の事業家が最初に出資してくれたり、中国人の投資家がいてくれたり
  • 事業がしんどい局面は何度もあったが、ふと誰かが助けてくれたり、そういうご縁の中で「生かされている」と感じる。感謝の気持ち、恩返しをしたい気持ちがとてもある

●福田さん

  • 金沢の大学で就活生をしているときは「大企業に行っている人が勝ち組」と思っていた
  • サイバーエージェントやDeNAのインターンに参加してショックを受ける。東京の大学生は1年次からインターンやってるとか起業しているとかいう人がゴロゴロ
  • 東京と地方では、大学生が使っている言語、見ている景色、情報がまったく違うと、大きな格差を感じる。そうした格差をなくしたいと、就活チャンネルを立ち上げ起業した
  • お金はクラウドファンディングなどで120万円、商工会議所で一人1万円ずつなど人力で180万円くらい集めて、300万円くらい集まったタイミングで東京に引っ越してきた
  • 親を説得する自信はなかったので、起業については事後報告

●西側さん

  • 起業した理由は「(ファッションという)好きなことができたから」
  • 起業する前はサイバーエージェントに就職し、2年ほど働いた
  • 大学3年のとき、現在フィリピンで活動している団体を立ち上げた。そこから、ファッションスクールをつくろうと頑張ってきている
  • ファッションスクールをつくるなら、卒業生の将来を考える必要があると思い、起業した
  • 社会課題解決のためにアパレルブランドを立ち上げたが、「会社」という体がないと話を聞いてもらえない、契約してもらえないという観点からも起業した

3 キラキラばかりではない。課題、失敗の連続。それでもその先を考える

インターン、海外留学、バックパッカー、起業、スタートアップなどのキーワードから、何も知らないとキラキラしたイメージを持ちそうですが、それだけではありません。というより、そうではありません。課題も失敗もたくさんあります。それが実情です。この4名のZ世代起業家もそうです。そして、課題や失敗がどれほどあろうとも、今後の展開を考え続け、前に進み続けます。それぞれの課題感、そして今後について印象的な点をご紹介します。

●大槻さん

「課題はたくさんあります。常にあります。起業をしていてとても面白いと感じるのは、目の前に毎回、壁が出てくること。例えば、組織がよくない感じになっているという壁があったとして、やっとその壁をよじ登って超えたと思ったら、また別の壁が出てくる。それが病みつきになります。これをずっと繰り返す、成長ってそういうもんだなあと楽しくて、社長やっててよかった、起業してよかったと思います」
「今後3〜4年後には海外展開というか、日本のものを海外に出していく軸もつくりたいです」

●後藤さん

「日々の仕事に追われてインプットが難しいときがあるのが課題。余白が生まれたほうが新しいチャレンジやコミュニケーションの方法などが分かってきて、それが事業につながると思うので、そういう余白があるようにしたい」
「今後はグローバル展開のギアを上げていきたい。今年に入ってから、積極的に英語やフランス語でプレゼンするようにしている」
「会社も、インド人やフランス人など色々な人がいるようになってきたので、そういう色々な考え方をまとめて編集して力を付けていく、これも課題」

●福田さん

「僕らの一番の課題は採用。自分たちよりも優秀で素直な人を仲間にしていくのが課題。凡人が後天的に努力していく、そういう仲間。自分たちもそうありたい」
「採用するときは一緒に山に登る。山登りは苦しいから本音が見える。スマホも使えないので、みっちり話ができる」
「採用するときは、親にも会いに行って、娘さんおよび息子さんを私にください、一緒に社会をよくする会社をつくっていくと伝える」
「今後は、世の中の人に行動してもらえるようにWeb3の領域で事業展開も考えている。試験的にやっていることもある」

●西側さん

「起業するとお金周りも課題になると思う。お金を借りるとなると大きな責任も負うし、本当に大変」
「起業はキラキラしたイメージかもしれないが、実際に人に見せないところで起業家は皆大変だし、根気がいること」

4 講座の最後。途切れない質疑応答

もっともっと話を聞いていたいところでしたが、最後の質疑応答へ。4名のZ世代起業家の話に、質問したい聴講生がたくさん。もしかしたら、今までにない質問の多さだったかもしれません。中には、4名の会社でインターンをしてみたいという聴講生もいました。
 聴講生からの質問は、例えば次のようなものでした。登壇してくださったZ世代起業家、熱心に参加されていたZ世代が中心の聴講生。本当にアツくて濃い時間、有り難うございました!

●聴講生からの質問例

  • 海外とビジネスをやっていく中で、どうやって海外の方とつながったのか?
  • 就活サービスについて、他のナビサイトとどうやって差異化を図っていくのか?
  • パーパスが変わったことで、社員の行動変容、変わったアクションはあったか?
  • どうやって自分のビジョンに合う人(仲間)を見つけてきたのか?
  • VCからの資金調達を考えているか?

集合写真です

以上(2022年10月作成)

Z世代に聞いてみた どんな会社で働きたい?

書いてあること

  • 主な読者:Z世代を採用したいが、なかなか応募をしてもらえないと悩む経営者
  • 課題:会社として、どんな対策や準備をすればZ世代が関心を持つのか分からない
  • 解決策:Z世代を特別扱いせず、迎合もせず、会社としての「ありのまま」を伝える。ただし、「中で働く人」にフォーカスするなど、伝え方や届け方には工夫が必要

1 Z世代を採用するにはまず、「Z世代の声」を聞いてみよう 

会社の今後のためにも「若い人を採用したい」と、Z世代(この記事でのZ世代は10代から25歳くらいまで)に注目している経営者は多いものです。Z世代は、どのような価値観やキャリア観、人生観を持ち、どのような会社で働きたいと考えているのでしょうか。

Z世代といっても考え方は人それぞれで、環境によっても違います。実際にZ世代の方々に話を聞くと、中学・高校の頃から起業を意識し、そのための勉強をしている人、何か一つに特化した中小企業で働きたい人、大企業がいい人、芸術分野に進みたい人などさまざまです。

「Z世代」とひとくくりにするのはもはやナンセンスかもしれませんが、一方で、世代が離れているからこそ、「どんなふうにアプローチすれば響くのか、せめて傾向が知りたい」という人もいるでしょう。

そこで今回は、自らもZ世代であり、就活YouTuberとしてご活躍し、日ごろからたくさんのZ世代と接している株式会社Diaryの代表取締役社長、福田駿(ふくだ しゅん)さんにお話をお聞きしました。この記事では、その内容をまとめてご紹介します。

取材を通して見えてきたのは、変にZ世代に迎合せず、会社や経営者のリアルや本音、情熱を、嘘偽りなく発信し伝えることの大切さでした。

なお、記事の最後には、Z世代に「どんな働き方をしたいか」などを聞いたアンケート結果も掲載していますので、考え方の傾向についてご参考になれば幸いです。

2 「人検索」の信頼度。人とのつながりに価値を置くZ世代

1)Z世代の選択肢に入るには? SNS活用が有効

昔からある、学生の人気企業ランキング。大企業、世に名の知られたITベンチャーやコンサルティング会社などが上位に入っているイメージです。今のZ世代の場合はどうでしょうか。

結論からいうと、昔から変わらず、

「大企業」「知名度の高い会社」に行きたい

というニーズは、Z世代にもあります。

ただし、注意したいのは、

単にそういう会社しか知らないから、「その他」が選択肢に入らないというだけである

ということです。

「そもそもあまり世の中の会社を知らない」人たちに自社を認知してもらうには、フォローが必要です。その手段としてSNS、YouTubeなどは有効に活用したいものです。

一方で、福田さんによると「もう一つの軸として、ベンチャー企業やスタートアップ企業に入社したい人も増えています。その中でも、やはり見せ方やブランディングが上手な会社は、志望されやすいと思います」とのこと。

例えば、社員の働いている様子を伝えるSNSやYouTube、TikTokなどの動画配信をやっている会社は、新卒や第2新卒の採用に強い印象があるといいます。実際に、Z世代222人に「就職・転職に関する情報の入手方法」をアンケートしたところ、「SNSで入手する」が28.4%。これは、「就職・転職サイトで入手する」の47.3%に次いで、実に、2番目に多い回答でした(アンケートは2022年9月に実施)。

2)つながりが大切な「人検索」の時代

また、人とのつながりに価値を感じるZ世代は、「人検索」も大切にするのだと福田さんは教えてくれました。人検索とは、文字通り「人を軸にした検索」で、

  • 先輩がいる会社だから
  • 友達がインターンシップに参加した会社だから

といった「人とのつながり」から、情報を求めていくことをいいます。

Z世代の間で、人検索の信頼度はどんどん増しているといい、

  • 「あの人」が言っているから
  • 「あの人」がメディアで紹介していたから

などに価値を感じる人が多いそうです。

「人検索」はある意味、中小企業にとってチャンスな面もあります。大企業の場合、すぐに上長からの許可が下りなくて、SNS運用や動画配信がやりにくいかもしれませんが、中小企業だと、こまやかな配慮をしつつ、「小回りの利く運用」がやりやすいのではないでしょうか。

また、従来のサイト検索では、どうしても知名度の高い大企業しか検索されませんでした。しかし「知らないから検索されようがない」というところから、「人検索」であれば、人を介することで、認知される可能性があるのです。

3)情報感度が高い=若手を受け入れる態勢があるのでは

会社を検索しても、文字や写真だけでは、いまひとつ実態は伝わりづらいものです。恐らく多くの会社で、アットホームな雰囲気の写真や言葉が並んでいることでしょう。

文字と写真だけでは伝わらないものを、いかに伝えるか。SNSを活用するとしても、それぞれをどう使うのか。リアルに会う機会を設ける工夫なども必要です。

福田さんいわく、例えばTikTokなどを経営者がやっていると、「情報感度がかなり高い、ということは若手を受け入れる態勢があるんじゃないか」とも感じるそうです。ワンクリックで簡単にエントリーできてしまう時代ですから、「この会社に入ってみたい」という、ある意味「ファン」をどれだけ増やせるかが重要なのかもしれません。

また、社会的な信頼度が高いとされるメディアから、取材を受けたり紹介されたりした場合も、その事実をSNSや動画で発信することが大切です。それぞれの会社にもともとついているフォロワーを介して、興味のある学生に拡散される可能性があるからです。第三者という「人」、あるいは社会的な信用のあるところから発信されたことが、さらなる信用を築きます。

なお、Z世代の就活生は、次のような傾向があるそうです。

  • OB・OG訪問など、自分のなりたい人、憧れている人が受けていた会社を志望する
  • ランキングやリサーチを見て会社を選ぶ
  • 人材系のエージェントを利用し、ベンチャーなどを受ける

いずれにも共通しているのは、Z世代側は情報感度が高く、とてもよく調べているということです。やはり、Z世代に届く可能性を広げられるよう、SNSなどでこまめに情報発信するのが効きそうです。

4)近い世代と和気あいあいと働きたい。会社の平均年齢も重要な要素?

実際にZ世代の方に話を聞くと、「大企業は人間関係が難しそうだからあまり行きたくない」という声もありました。これは、どういったイメージを抱いているのでしょうか。

考えられる理由の一つとして、会社の規模が大きいと、一緒に働く人を選びにくい(どういう人と一緒に働くのか分からない)など、恐れを感じているというのがあるかもしれません。

また、社員の平均年齢も、Z世代が気にかける要素の一つだといいます。「ちょっと年の近い若い先輩がいたほうがよい」という声は多く聞かれます。

50代の社員しかいない会社に、20代前半の新卒社員が入社するとしたら、仕事の内容ややりがいなど、よほどの動機が必要なはずです。会社の状況にもよるので一概にはいえませんが、段階的に会社の平均年齢を下げていくというのも一策かもしれません。

5)裁量を大きく、休日しっかり、副業も。憧れる働き方のモデルは?

では、Z世代が憧れる働き方のモデルは、どのようなものなのでしょうか。

「人検索」にもあったように、やはり「憧れる会社」という面でも「人」は大事なようで、福田さんからは、Z世代が魅力を感じる会社の一つは、「憧れる人が働いている会社、かもしれません」という答えが返ってきました。

具体的には、自分たちが普段使っているサービスを運営する会社で、かつ若手の頃から裁量権を持って活躍している人が多い会社は、憧れの対象になるといいます。例えば、入社3年目で事業責任者の立場など、上の役位で物事を動かしている人。かつ休みもしっかり取り、週休3日で副業もといった働き方は、憧れられるそうです。ただ、福田さんはこう続けます。

「裁量権があるかどうかは、よく就活生から気になると言われることではあります。でも、それを意識しすぎて、実態と乖離(かいり)している情報を伝えたりするのはよくないですよね。やはり、リアルを伝えるというのが大事だと思います」

3 キラキラは必要ない。本音やリアルな実態を発信

ここまでZ世代の気持ちを考えてきましたが、とはいえ福田さんも言っていたように、彼らに迎合し、無理をして「キラキラ」に見せようとするのはよくありません。大切なのは、やはり、

本音やリアルな実態を、偽ることなく伝えること

です。無理をしてZ世代の気に入る感じに見せ、それで採用に至ったとしても、いざ実際に一緒に働けば、どこかでほころびは出るはずです。それは労使双方にとって不幸でしかありません。

「うわべだけのきれいごとを言っているようでは、信用できないと感じてしまう。本音をきちんと言っているのか、リアルな実態を発信しているのかを、包み隠さず伝える。そういうところは『この会社に入りたい』と思う要素として、とても大きいはずです」

結果としてエントリー数が少なかったとしても、それが本音やリアルな実態を伝えた上でエントリーしてきた人たちならば、「辞退率は低いのでは」と福田さん。

福田さんの言葉を借りると、変にZ世代を意識したり、短絡的に「憧れられる」会社や経営者、社員を目指したりする必要はありません。それよりも、ありのままを、熱意を持ってきちんと伝えることが重要です。デジタルに慣れており、プロモーションも見慣れているZ世代相手だからこそ、嘘をつかない、妙にきれいに見せない伝え方や発信の仕方が大切です。

経営者や社員が「うちの会社はこういうことを実現したいから、一緒にやりたい人、ぜひ1週間でもいいから、まず見にきてほしい」「私はうちの会社のこういうところ(仕事でも雰囲気でも)、めちゃ好きなんです。一緒に盛り上げてください!」くらいのほうが、臨場感や熱量が伝わり、Z世代の胸に迫るものがあるのではないでしょうか。

また、インターンシップを取り入れて、1週間など実際に一緒に働いてみると、お互いに実情が分かっていいかもしれません。その様子を経営者、社員、インターンシップ生(Z世代)がSNSや動画配信すると、リアルな姿が伝わりやすいでしょう。

株式会社Diary 代表取締役社長、就活YouTuber:福田 駿(ふくだ しゅん)さん

福田 駿

■株式会社Diary■
https://diary-inc.com/
■YouTubeチャンネル「しゅんダイアリー」(チャンネル登録数11万人以上)■
https://www.youtube.com/channel/UCdo3Z5oFt04IDMjpjaXN5hw

補足:Z世代に「就活・働き方」について聞いたアンケート

アンケート結果はあくまで一例です。世の中の全てのZ世代にあてはまるわけではありませんが、傾向を知るヒントになるかもしれません。会社を選ぶときには、やりがいや業種などもそうですが、給与の他、休日日数や勤務時間、勤務地といった働く環境も大切にしたいようです。

会社の何を見るか

「有名ではないが業績が安定している中小企業」で働きたいと考えるZ世代も多いようです。

働きたい会社

切磋琢磨(せっさたくま)し合えることより、「和気あいあい」を重視しているようです。

働きたい会社の雰囲気

どちらかといえば、人のサポートをする仕事のほうが望ましいようです。

希望の働き方

以上(2022年10月)

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画像:j.ennifer-shutterstock

武田斉紀の『誰もが身に付けておきたい“経営的視点”』(4)

書いてあること

  • 主な読者:会社経営者・役員、管理職、一般社員の皆さん
  • 課題:経営幹部や管理職の方はもちろん、若手社員の方でも「経営的視点で見るように」と社長や上司から求められた経験があるのではないでしょうか。その場でうなずきはするものの、「経営的視点とは何か?」「それは社長以外の社員に必要なのか?」「会社員として働く上で、人生において価値があるのか?」「そもそもどのように身に付けていけばいいのか?」といった疑問があるのではないでしょうか
  • 解決策:課題で挙げたさまざまな質問に対して、『“経営的視点”の身に付け方』というテーマで、全国で多くの講演を行っている筆者が明快に回答します。“経営的視点”はこれからの時代において新入社員から求められる視点であって、より早く身に付けることができれば、その分、仕事においても人生においてもプラスであることが分かるはずです

1 トップの社長だけが見ている5つの“経営者の視点”

シリーズ『武田斉紀の「誰もが身に付けておきたい“経営的視点”」』の第4回です。

社長や上司が「“経営的視点”を持て!」と言いながら、もしも“経営的視点”ではなく、“経営者の視点”を求めているとしたら、それは無理な話であるとこれまで申し上げてきました。相手が一般社員ならもちろん、管理職や取締役など幹部クラスであってもです。

なぜなら、

“経営者の視点”は会社のトップとしての経営者になって初めて身に付けられるもの。会社のトップとしての経営者になればおのずと身に付くものの、ならない限り簡単には身に付かないからです。

では一体、“経営者の視点”とはどんなものなのか。

“経営者の視点”の違いを次の5つに集約して説明してきました。
1)高さ(広さ)
2)時間(時空)
3)スピード
4)お金の流れ
5)人と組織

第2回では1)高さ(広さ)と2)時間(時空)について、第3回では3)スピードと4)お金の流れについてご紹介しました。社長がともすると「ノロノロやってるんじゃない、もっと早くできるはずだ!」と叱責してしまう原因の根っこを知っていただけたでしょうか。

今回は最後の5)人と組織について触れて、まとめてみることにします。

さて、このシリーズでは、社長や上司から「“経営的視点”を持て!」と言われるけれど…「経営的視点って何?」「社長以外の社員にも必要なの?」「会社で働く上で、人生において価値があるの?」「そもそもどうやって身に付ければいいの?」。こうした疑問にお答えしています。

さらには、『“経営的視点”の身に付け方』の具体的なノウハウと、経営における効用、働く側のメリットなどを事例も交えながらご紹介していきます。

“経営的視点”はこれからの経営や働き方において、新入社員から求められる視点であり、誰にとってもより早く身に付けることができれば、その分、仕事においても人生においてもプラスになるといえるでしょう。

2 社長は「人と組織」における“人事の最終決定権者”である

皆さんの会社で「人事権」を持っている人はどの役職からでしょうか。そもそも人事権とはどういうものでしょう。

全日本情報学習振興協会の定義によれば、

〇最も広義には、労働者を企業組織の構成員として受け入れ、組織のなかで活用し、組織から放逐する一切の権限

〇より狭義には、採用、配置、異動、人事考課、昇進、昇格、降格、求職、解雇など、企業組織における労働者の地位の変動や処遇に関する使用者の決定権限

とあります。

私なりに言い換えると、「人事権」とは社員の「採用と配属」およびその後の「評価と処遇」を決定する権限となるでしょうか。

評価によっては昇給や昇進・昇格もあれば、降給や降等・降格、時には解雇もあり得ます。

会社の役職を大きく社長、役員・部長、課長、一般社員(主任・係長も含む)の4段階に分けた場合、多くの会社では人事権は部長以上に与えられているのではないでしょうか。

課長クラスも関わってはいても現場の意見を具申するまでで、非正規社員の採用をはじめとする人事権を除いては、決定権までは与えられていないことが多いようです。

人事権を持つ部長クラスが考えて提案した組織案、人事案を役員が覆すことはあるものです。そして、最終的には社長が決裁をする。つまり、社長が「人と組織」における“人事の最終決定権者”なのです。

3 社長は「人事を最終決定」する責任を、役員以下は「実行」する責任を負う

もちろん、社員数十人の会社ならまだしも、数百人、数千人も抱える会社においては、社長が社員一人ひとりの「採用と配属」「評価と処遇」まで見て決裁するわけではありません。

知り合いの社長はとても社員想いの方で、社員一人ひとりに寄り添っていきたいと、アルバイトやパートも含めた全員の顔と名前、主な個人情報を覚えようと努力していました。社長室の壁に顔写真とメモをずらりと並べて、時間があればそれをいつも眺めていたそうです。

それでもある程度人も入れ替わっていく中で、300人くらいまでが限界で、会社の成長とともに難しくなって諦めました。同時に、一人ひとりを覚えるのも大事な仕事ではあるけれど、会社全体を良くしていくことで、全従業員の期待に応えるほうがより重要だと悟ったようです。

社長が経営で目指すべきゴールは、経営理念やビジョンとして表している場合はその実現であり、それに向けて業績を拡大しながら、株主、顧客、従業員、取引先や社会といったステークホルダーに、より多くの価値を提供し続けていくことです。

そのために社長は中長期の「事業戦略」や毎年の「経営計画」を策定し、同時にそれらを実現し得る人事を決定します。経営学者アルフレッド・チャンドラーのいう「組織は戦略に従う」の具現化です。

とりわけ重要なのは、組織案を考え提案する側近幹部や、主要事業の実行を担うキーパーソンの人事です。社長はそれらを中心に、全体のバランス、抜けや弱点がないかも含めて人事案をチェックし最終決定します。

「実行」するのは役員以下の仕事です。

人事を決定した後は、指揮する役員や部長を信じて任せます。進め方にいちいち口を出したり、マイクロマネジメントをしたりせず、進捗の報告を待って、必要に応じた戦略や戦術、人事の修正を行うのがトップの本来あるべき姿でしょう。組織の頂上から全社を俯瞰(ふかん)できる、唯一の立場として。

スタートアップや中小企業においては、人材も潤沢ではなく、社長も「実行」に関わらざるを得ない現実はあります。

実行できる人がいない、実行しないと会社が存続できないとなれば、当然やらざるを得ないでしょう。

しかしながら、会社組織として事業拡大を目指す選択をした時点で、本来「実行」は社長の仕事ではなく、それ以外の幹部を含めた社員の仕事です。

実際、社長が「実行」に深く関わっている会社では、社長が将来や事業拡大に向けた時間が持てず、業績が低迷したり、変化に対応できずにいたりといったケースが目立ちます。

いずれにしても、社長が“人事の最終決定権者”であることに変わりはなく、だからこそ最終的な経営責任も同時に負っています。それ以外の人たちは組織や人事についての案を提案しても、最終決定権は持っておらず、決定した人事に従って戦略を「実行」する責任を負っています。

「5)人と組織」においても、1)~4)と同じように、唯一社長だけが“経営者の視点”を持って会社を見ているのです。

4 社長は昔を思い出し、自分以外は“経営者の視点”を持てないことを自覚するべき

第2回から今回の第4回まで、トップの社長だけが見ている5つの“経営者の視点”についてご説明してきました。繰り返しますが、

“経営者の視点”は唯一、トップである社長だけが持てるのです。

ところがいざ社長になってしまうと、社長自身がそのことに気付いていながら忘れがちなようです。

社長になった瞬間は、「自分が社長になって今見ている視点は、これまでと全然違うぞ」とはっと気付くのです。けれどもそれが日常になっていくと、自分の見ている“経営者の視点”が当たり前になってしまい、ついつい同じ視点を幹部や社員たちに求めてしまうのです。

社長には折につけ昔の自分を思い出し、自分以外の人は“経営者の視点”を持てないことを自覚するべきです。

難しいのは、社長自身に社員の経験がほとんどないままに起業したケースでしょうか。最初から“経営者の視点”でしか見たことがないので、それ以外の視点で見るということが想像できず、悩み、苦労をされているようです。

第4回も最後までお読みいただきありがとうございました。次回からはいよいよ“経営者の視点”ではなく、“経営的視点”の身に付け方のノウハウについて解説していきたいと思います。

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以上(2022年10月)
(著作 ブライトサイド株式会社 代表取締役社長 武田斉紀)
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