【朝礼】見えない壁を壊せ

私たちの日常は、日々が成功と失敗の繰り返しです。成功が続くときもあれば、失敗を繰り返してしまうことも多くあります。

何度かの失敗の後に成功に至れば苦労も報われますが、時にはひたすら失敗を繰り返すこともあります。私たちは失敗を繰り返すと成功の望みを失い、「これはもしかしたら絶対に不可能なことなのではないか」と思い込んで、自ら心に「壁」を作ってしまうことがあります。

例えば、皆さんが考えぬいた企画の提案が10回連続で認められなかったとしたら、11回目の提案内容に自信を持てますか? おそらく「自分の企画の何が悪いのか分からない」「どうせ次もダメだろう」と意欲を失って落ち込むでしょう。中には「自分には能力などないのだ」と諦めてしまう人もいるかもしれません。

そうした自信の喪失や諦めは心の壁となって再挑戦への気力をそぎます。そして、スランプの原因になったり、成長の足かせになったりします。

一度ぶつかった「壁」は、皆さんが成長するに従って簡単に乗り越えられるようになっていくはずですが、いつまでたっても古い壁に悩まされて、いつしかそれが自分の苦手なこととして意識の中に刻まれてしまうことがあります。

例えば、新人時代に皆さんの提案が通らなかったのはアイデア、プレゼンテーション能力、準備などが不足していたからであり、それらは成長した今なら、おそらく克服できているはずです。しかし、過去の失敗が壁となって苦手意識を持ち続けてしまってはいませんか? ある程度の経験を積んだ皆さんが、今苦手だと思っていることの中には、自分自身で作ってしまった心の壁が、いくつもあるはずです。

自分が作ってしまった壁を壊すためには、まず、苦手意識を持つ事柄をリストアップし、なぜそれを苦手と思っているのか考えてみましょう。今、冷静に思い返せば、苦手の原因はささいなことにすぎなかったかもしれません。自分で考えるだけではなく、同僚や友人などに意見を求めるのもよいでしょう。自分が苦手だと思っていたことが、実は周囲からは高い評価を得ているかもしれません。それがわかれば、心の壁はいつの間にか消えてしまうことでしょう。

最後に、どうしても苦手意識をぬぐえず壁を感じるなら、それを飛び越える努力は、惜しむべきではありません。例えば、接客が不得手なら積極的に店頭に立つ、苦手な顧客がいるなら、週に1度は直接足を運ぶことを決めて実行してみましょう。

過去の失敗を恐れてはいけません。自分で作ってしまった自分の限界は、自分自身で打ち破らなくては、超えることはできないのです。苦手から逃げず、チャレンジする。そういう意識に自分を置くことで、皆さんが感じている心の壁は、きっと打ち破れることでしょう。

以上(2022年9月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】「それでも地球は回っている」と主張し続けた男

今日は、ガリレオ・ガリレイの話をします。ガリレオは、16世紀から17世紀にかけて活躍した、イタリアの物理学者、天文学者です。ピサ大聖堂のランプを見て「振り子の等時性」や、ピサの斜塔から大小2つの鉄球を落として「落体の法則」を発見したなど、ガリレオの功績はさまざまありますが、私が好きなのは「地動説」に関する話です。

地動説とは、地球が太陽の周りを回っているという、ポーランドの天文学者コペルニクスが提唱したとされる説です。ガリレオは40代の頃、まだ発明されたばかりの望遠鏡を使って、星の満ち欠けや、太陽黒点の動きを観測した結果、コペルニクスの説が正しいことを証明します。

ただ、当時のカトリック教会は、地球が宇宙の中心にあり、地球の周りを太陽、月、その他の星が周回しているという「天動説」を支持していました。当時はカトリック教会が絶対的な力を持っていた時代だったので、ガリレオの考えは教会の教えに背いているとして、彼は異端審問にかけられてしまいます。

やがて、ガリレオはローマ法王の前で、半ば強引に地動説を撤回する宣誓をさせられ、フィレンツェ郊外の村に幽閉されますが、その後も地動説を信じ続け、幽閉先の村で、それまでの自分の考えをまとめた本を出版します。諸説ありますが、最期は「それでも地球は回っている」と言い残して、この世を去ったといわれています。

カトリック教会は、ガリレオの死後も引き続き天動説の考え方を貫き通します。しかし、彼の地動説に対する考えは多くの人々に影響を与え続け、ガリレオの死から300年以上が経過した1992年、カトリック教会は、ガリレオに対する異端審問が間違いだったことを認めました。

私がガリレオをすごいと思うのは、「古くから当たり前とされている考え方におもねることなく、科学的な根拠に基づいて導き出した“真実”を主張し続けた」ということです。革新的な主張は奇異の目で見られやすく、その中で意見を貫き通すのは、簡単なことではありません。

皆さんも仕事の中で、自分の意見について上司や先輩から「それは間違っているんじゃないか?」と言われて、自分の意見を引っ込めてしまった経験はありませんか? もちろん、本当に間違っていたときにそれを認める素直さは大事なのですが、自分では納得できていないのに、相手が上司や先輩だからという理由で萎縮してしまっているのだとしたら、それは皆さんにとっても、会社にとっても決して良いことではありません。

上司や先輩は、皆さんの意見が自分たちと違うというだけでは否定しません。客観的に見て正しいことであれば、ちゃんと耳を傾けます。もし社内に、「天動説」のような改善すべき課題を見つけたならば、自信を持って主張してみてください。皆さんの一言が、社内の「天動説」をひっくり返すことを期待しています。

以上(2022年9月)

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画像:Mariko Mitsuda

中小企業の社員がやる気になる「良い朝礼」とは

書いてあること

  • 主な読者:朝礼のバージョンアップを図りたい経営者
  • 課題:長年行ってきた朝礼のスタイルを、どう変えたらよいのか分からない
  • 解決策:伝える力(表情、声のトーン、話すスピード、つかみのネタ)を磨く、人材育成の場とする

1 朝礼のバージョンアップが求められる

朝礼は経営者の思いを伝え、全社的な認識の統一を図る貴重な機会です。経営者・役員239人を対象とした独自アンケート(日本情報マート、2021年2月調査)によると、

30.5%の企業が朝礼を行っている

という結果が出ています。コロナ禍でリモートワークが進んだり、職場のコミュニケーションの在り方が変わってきたりして全体的に朝礼は減っているようですが、今でも朝礼が日本企業に深く浸透しているのは間違いないようです。

ただ、朝礼の在り方は変わってきています。従来の朝礼は「集まることに意義がある。上意下達の場」という面がありました。しかし今では、朝礼を

参加者の成長を促す、フラットなコミュニケーションの場

にバージョンアップする企業が出ています。

2 朝礼のバージョンアップの鍵

朝礼をバージョンアップするための前提は、

経営者や上司が「伝える力」を磨くこと

です。皆さん自身の話術を自己評価してみてください。「つかみがない、論点が不明瞭、話が長い、自分の話ばかり、インタラクティブでない、締めのメッセージが曖昧……」といったことはないでしょうか。

オンラインが浸透してくると、制約が多い中でも相手をうまく引き込む【話し上手】が登場しました。そうした人の話を聞いて耳が肥えた社員は、つまらない話に厳しくなっています。リアルの朝礼の場合、皆さんの話がつまらなくても社員は聞く姿勢を崩しません。目の前で上司が話しているのですから当然ですが、ほとんど話を聞いていないでしょう。オンラインでビデオオフを許しているなら、画面の向こうで別のことをしているかもしれません。それくらい人に聞いてもらうのは難しく、努力が必要なのです。伝える力を磨くテクニックには、表情、声のトーン、話すスピード、つかみのネタなどがあります。

3 人材育成の視点を持つ

従来の朝礼は「1対多」ですが、バージョンアップされた朝礼は「多対多」とし、参加者の成長を促します。そのためには経営者や上司が一方的に話をするのではなく、社員が自由に意見やアイデアを出せる雰囲気が理想です。

とはいえ、いきなり意見を出してもらうのは難しいため、朝礼とは別に「1対1」のコミュニケーションを取ります。実際、多くの経営者が「朝礼だけでは十分にコミュニケーションが取れない。社員のメンタルが心配」という理由で、「1対1」のコミュニケーションを取っていますが、その結果、

社員が「発言してもいいのだ」と気付き、実際に発言することで自信を持つ

という効果が出ています。特にオンラインで「1対1」のコミュニケーションを取る場合、経営者や上司が意図せずに醸し出してしまう「圧」も緩和されるため、対話が進みやすくなります。

こうして社員とのコミュニケーションが進むと社員が発言しやすい環境となり、若手社員も頭角を現していきます。こちらが想定しているよりも仕事ができたり、積極的に発言したりする社員が出てきます。朝礼の場で全体に発言することは、客先で話すのを想定した訓練になりますし、自信も持ってもらえるでしょう。

4 事務連絡は意外と浸透している

最後に補足します。特にオンラインでの朝礼になると、事務連絡がきちんと伝わっているか不安になるという意見があります。しかし、手順の変更、仕事の締め切り、ミーティングの日時などといった事務連絡は、意外と浸透しているものです。なぜなら、こうした内容は聞き逃すと仕事に支障が出るものであるため、社員もしっかり聞くのです。面白い/つまらないという評価は関係のない内容ということです。朝礼で聞き逃してしまった社員がいても、同僚に確認してキャッチアップしています。

ただし、例えば「手順の変更」がされるのには理由があり、そちらのほうが大切だったりします。変更された手順は選択肢の1つにすぎず、背景を理解していれば別のアイデアも出てきて、業務が改善されていきます。この背景に耳を傾けてもらうには、やはり伝える力が重要になってきます。

以上(2022年9月)

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画像:unsplash

【消費税】提出期限に要注意! 損をしないための3つの届出

書いてあること

  • 主な読者:消費税の基本を知りたい経営者や経理担当者
  • 課題:各種届出が遅れると大きな損をする恐れがある。しかも、届出の提出期限は早い
  • 解決策:基本的には、適用を受けたい課税期間の前課税期間末日までに提出期限が来るものが多いので、計画時など早い段階での判断が必要になる

1 忘れていたでは済まされない“消費税の届出書”

消費税は、

届出をしなければ適用されない制度が多い税金

といえます。当然、それぞれの届出には提出期限があり、1日でも遅れてしまうと大きな損につながる恐れがあります。厄介なのは提出期限です。提出期限は、

適用を受けたい課税期間の前課税期間の末日(例えば、2023年4月1日以降に受けたい3月決算の会社であれば、2022年3月31日)に設定

されているものが多いので、顧問税理士に早めに知らせて計画的に進めないと間に合わなくなります。

そこで、この記事では、消費税の実務の中でも大きな損につながりやすい届出として、「課税事業者選択届出書」「簡易課税制度選択届出書」「課税期間特例選択・変更届出書」を紹介します。

2 課税事業者選択届出書

1)免税事業者が対象

消費税の納付税額は、次のように計算します。

納付税額=課税売上に係る消費税額(預かった消費税額)-課税仕入に係る消費税額(支払った消費税額)

預かった消費税額よりも支払った消費税額が大きい場合、その差額は還付を受けることができます。しかし、免税事業者は還付申告ができません。免税事業者は、

確定申告する義務がない代わりに、還付申告する権利もない

のです。免税事業者が還付申告したいなら、届出書を提出して課税事業者を選択しなければなりません。

なお、免税事業者になるには複数の要件を満たす必要があります。詳細は、次の記事をご参照ください。

2)課税事業者の選択

免税事業者が、課税事業者選択届出書を税務署長に提出した場合、

提出日の属する課税期間(以下「提出課税期間」)の翌課税期間以後

に国内で行う課税資産の譲渡等については、納税義務は免除されなくなります。なお、事業を開始した課税期間などである場合は提出した課税期間から適用を受けます。

注意が必要なのは、その届出書の効力は翌課税期間から生じるので、

当課税期間から課税事業者となって還付申告をする場合は、前課税期間末までに届出書を提出しなければならない

ことです。免税事業者が設備投資等によって、課税売上を超える多額の課税仕入れが生じた場合、還付を受けることができるのにもかかわらず、届出を忘れたことで還付を受けられないという事態に陥ってしまいます。

3)課税事業者の選択不適用の届出

課税事業者選択届出書を提出して課税事業者になった事業者が、免税事業者に戻りたいとき(または事業を廃止したとき)は、課税事業者選択不適用届出書を提出します。ただし、課税事業者を選択すると、最低2年間は継続適用してからでないと免税事業者には戻れません。従って、免税事業者が課税事業者を選択する場合、2年間のシミュレーションをして判断することになります。

また、課税事業者選択不適用届出書の効力も、提出課税期間の翌課税期間からです。従って、当課税期間から免税事業者に戻りたい場合、前課税期間の末日までに届出書を提出する必要があります。なお、課税事業者を選択している期間中に、高額特定資産(1000万円以上の一定の資産)の課税仕入れがあった場合、免税事業者の選択には一定の制限が入ります。

3 簡易課税制度選択届出書

1)課税売上高が5000万円以下の事業者が適用できる簡易課税制度

基準期間(簡単にいうと2年前)における課税売上高が5000万円以下の中小企業には、簡単に消費税の納付税額を計算する簡易課税方式が認められています(適用の届出をした者に限る)。この場合、納付税額を次のように計算します。

納付税額=課税売上に係る消費税額-課税売上に係る消費税額×みなし仕入率

みなし仕入率は、業種ごとに40%~90%となります。課税売上に係る消費税額のみを集計すればよいので、実務上の負担が少なく済みます。

2)簡易課税制度の選択

簡易課税制度の適用を受ける場合、簡易課税制度選択届出書を税務署長に提出しなければなりません。この届出書の効力も、翌課税期間から生じます。従って、当課税期間から簡易課税制度で計算したい場合は、前課税期間末までに届出書の提出が必要です。

なお、簡易課税制度を検討する際は、仕入項目(費用の支払い、資産の取得など)のうち、課税仕入れに該当するものを集計し、原則課税と簡易課税のどちらが有利なのかを判断しましょう。例えば、簡易課税制度では仕入項目は考慮しません。そのため、その課税期間に多額の課税仕入れ等(設備投資など)があり、原則課税なら還付を受けられるケースでも、簡易課税では還付を受けられないので注意が必要です。

3)簡易課税制度の選択不適用の届出

簡易課税制度選択届出書を提出した事業者は、簡易課税制度で計算することをやめるとき(または事業を廃止したとき)は、簡易課税制度選択不適用届出書を提出します。ただし、簡易課税制度の適用を受けると、原則として、最低2年間は継続適用してからでないと原則課税には戻れません。

また、簡易課税制度選択不適用届出書の効力も、提出課税期間の翌課税期間からです。当課税期間から原則課税に戻りたいという場合は、前課税期間の末日までに届出書を提出する必要があります。

4 課税期間特例選択・変更届出書

1)輸出業者など、消費税の還付が経常的に発生する事業者が対象

消費税の課税期間の原則は、

  • 個人事業者:暦年(1月1日から12月31日までの期間)
  • 法人:事業年度

です。しかし、経常的に還付を受ける事業者のために、選択によって課税期間を短縮できる特例制度があります。例えば、輸出業者は売上げに係る消費税額よりも仕入れに係る消費税額のほうが大きいため、常に還付を受けることになります。そこで、特例制度を利用することで、より早く還付を受けられます。

この課税期間の短縮制度には、

3月ごとの期間に短縮する場合と、1月ごとの期間に短縮する場合

があります。

「3月ごとの期間に短縮する場合」の短縮課税期間は、

  • 個人事業者は、「1月から3月まで」「4月から6月まで」「7月から9月まで」「10月から12月まで」の期間
  • 法人は、その事業年度開始の日から3カ月ごとに区分した期間(最後に3カ月未満の期間を生じたときは、その3カ月未満の期間を含む)

となります。

「1月ごとの期間に短縮する場合」の短縮課税期間は、

  • 個人事業者は、1月から12月までの各期間
  • 法人は、その事業年度開始の日から1カ月ごとに区分した期間

となります。

2)短縮課税期間の選択

課税期間を短縮する場合、課税期間特例選択・変更届出書を税務署長に提出します。この届出書の効力も、翌課税期間から生じます。

事業年度が4月1日から翌年3月31日までの法人が7月15日に届出書を提出したとします。3カ月の短縮を適用する場合、7月から9月までの期間が提出期間となり、翌期間である10月から12月までの期間から短縮課税期間が始まります。この場合、4月から9月までの期間も1つの課税期間とみなされます。

また、1カ月の短縮課税期間を適用する場合、7月が提出期間となり、翌期間である8月から短縮課税期間が始まることになります。この場合は4月から7月までの期間も1つの課税期間とみなされます。

3)短縮課税期間の選択不適用の届出

課税期間特例選択・変更届出書を提出した事業者が、短縮課税期間の適用をやめようとするとき(または事業を廃止したとき)は、課税期間特例選択不適用届出書を提出します。ただし、短縮課税期間を採用すると、最低2年間は継続適用しないと原則には戻れません。

5 短縮課税期間を利用した還付申告

短縮課税期間の選択は、毎年のように還付が生じる事業者のために設けられた特例ですが、

課税事業者の選択の届出書や簡易課税制度の選択不適用の届出書の提出を忘れた場合などの裏技として利用する

こともできます。

免税事業者が当課税期間に多額の設備投資をした場合、還付申告を行うために、前課税期間末までに「課税事業者選択届出書」を提出する必要があります。同様に、簡易課税制度を選択している事業者が当課税期間において多額の設備投資をした場合、還付申告を行うために、前課税期間末までに「簡易課税制度選択不適用届出書」を提出する必要があります。もし、これらの提出を忘れてしまった場合、

短縮課税期間の特例を利用することで、事実上その提出期限を延ばす

ことができます。

例えば、事業年度が4月1日から翌年3月31日の免税事業者が、当課税期間の2月に多額の設備投資をしたとします。当課税期間から課税事業者を選択して還付申告を行おうとする場合、前課税期間の3月末までに課税事業者選択届出書を提出する必要がありますが、これを忘れてしまった場合でも、

当課税期間の1月末までにこれらの届出書を提出すれば還付申告を行う

ことができます。なぜなら、当事業年度の課税期間は、短縮課税期間の特例により、「4月から翌年1月までの期間」、「2月」そして「3月」の3つに区分されます。そして、課税事業者選択届出書の提出課税期間は「4月から翌年1月までの期間」となりますから、この届出書の効力は、翌課税期間である「2月」から生じ、還付申告ができるのです。

以上(2022年9月)
(監修 税理士 谷澤佳彦)

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画像:unsplash

事業承継で何を引き継ぐのか 後継者計画の策定・運用の視点から

経済産業省が策定した「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針」(CGSガイドライン)に示されている、後継者計画の考え方や後継者選定の視点、選定・育成に当たっての有効な取り組みを紹介する。

(日本法令ビジネスガイドより)
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自動走行するトラクタや薬剤散布・農場観測ドローンなど「農業テック」最前線/新技術で変わる農林水産業(4)

書いてあること

  • 主な読者:業務の効率化や人手不足の解消を図りたい農業の経営者
  • 課題:どのようにすれば効率化や人手不足の解消が図れるのか分からない
  • 解決策:事例を参考に、自動農機やドローン、ビッグデータ解析などの新技術を取り入れる

1 テクノロジーで農業の課題を解決「農業テック」

近年、農林水産業を営む企業で、人工知能(AI)やドローンなどのテクノロジーを取り入れる動きが出てきています。体力勝負のこまめな管理や、自然環境の影響を大きく受けるこれらの業界では、次のような課題が挙げられています。

  • 高齢化による人手不足、ノウハウの継承
  • 変化する自然環境への対応
  • 効率的、持続的な生産・収穫・漁獲体制の確立

このシリーズでは、農林水産業を営む企業が直面する課題を解決するための最新テクノロジーの動向と、その活用事例を紹介します。第4回の今回のテーマは、農業が直面する課題を解決するための「農業テック」です。具体的には、

  • 無人で走り、2台同時でも操作ができるロボットトラクタ
  • センサー機能搭載で病害虫の発生を確認して農薬散布するドローン
  • 農作業用の車両に設置すると、作業の進捗が管理できる生産管理ツール
  • 農業に関わるあらゆる情報を、誰もが利用できる農業データプラットフォーム

といった取り組みを紹介します。

2 「農業テック」取り組み事例

かねてから農業はトラクタによる耕地やコンバインでの脱穀、ベルトコンベアーでの搬送など、作業の省力化・自動化が進められてきました。しかしそれでも、手作業で作業進捗をまとめなければならない、自分で運転した分しか耕せないなどの問題がありました。

それがテクノロジーの進化により、農作業の進捗状況を自動的にまとめる生産管理ツールや、ビッグデータを解析して市場予測や生産・出荷を予測するAI、設定された農地を無人で自動運転するトラクタなどが登場し、さらなる省力化・自動化が達成できるようになってきました。

今回登場するのは、無人で動くトラクタや自動で草刈りをするロボット、車両に取り付けた端末がスマホやPCと連動し、農地の作業進捗を自動で記録・蓄積する生産管理ツールなどです。こうしたテクノロジーを導入することで、次のようなことが実現できます。

農業テックで実現すること

1)自動走行×有人トラクタと無人トラクタの2台使い=作業効率を拡大

ヤンマーアグリジャパン(大阪市北区)の無人のロボット農機「ロボットトラクタ」は、熟練者と同程度の精度で農地内を自動走行します。1人で2台の操作が可能(1台は有人)なので、無人機で耕うん・整地を行うのと同時に、有人機で肥料やり・種まきなどの作業ができます。また、作業中のハンドル操作がなくなるので、作業状況の確認に集中でき、運転による疲労が軽減されます。

同社は従来の人が運転するタイプのトラクタ・田植機・コンバインなどに、後付けで使用できる自動操舵(そうだ)システム「ジョンディア」や、登録した農地データを基にした作業経路の作成と農地データに基づいた適正量を肥料散布でき、田植えを自動で行うスマート施肥田植機「直進アシスト田植機 可変施肥仕様」など、さまざまな自動化農機を展開しています。

2)自動走行×見えないところ・行きにくいところを除草=作業の軽減化や危険の回避

和同産業(岩手県花巻市)のロボット草刈機「ロボモア」は、地面のさまざまな凹凸や勾配を走破し、超音波センサーで障害物を探知しながら、草の状況に応じた草刈りを自動で行い、充電ステーションまで帰還します。スマホと連動するため、離れたところにいても草刈りの状況が確認でき、一部の操作ができます。

3)センサー×収量・食味測定=農地ごとの品質の偏りを解消

クボタ(大阪市浪速区)の穂先だけ選別・脱穀するコンバイン「DIONITH」は、収穫時に農地単位で収穫物の収量・食味(水分およびタンパク含有率)を測定できるセンサー機能を搭載しています。さらに、同社の営農支援システム「クボタスマートアグリシステム(KSAS)」と無線で連携することで、自動的に作業日誌の作成や栽培履歴の管理もできます。

こうしたデータを活用することで、農地ごとの品質の偏りの解消につなげられます。

4)アシストスーツ×上向き状態保持=摘果・摘花・収穫などの上向き作業の負担軽減

ダイドー(大阪府河内長野市)の上向き作業用アシストスーツ「TASK AR」は、上向き作業に特化しています。1分ほどで装着できる簡便さに加え、動力がガススプリングなので電力いらずで、摘果・摘花・収穫などの上向き作業の負担軽減になります。

5)ドローン×観測×薬剤散布=育成期間を可視化し、最適な時期の薬剤散布が可能

ドローンは操作が簡単で、さまざまな用途に拡張できる小型の飛行プラットフォームとして、農業分野での活用も行われています。

中国のメーカーで、農業用ドローンでは国内でも最大のシェアを持つDJI(日本法人は東京都港区)の「P4 MULTISPECTRAL」は、6つのセンサーを搭載したセンシングドローンです。センチメートル単位の測定値が得られるので、より詳細に作物の生育状態を把握できます。また、同社のiOSアプリ「GS PRO」と連動させることで、あらかじめ計画した飛行計画に沿って、自動飛行およびデータ収集を行うことが可能になります。

サイトテック(山梨県身延町)は、ユニット交換により輸送・測量・検査・散布などさまざまな作業ができるユニット型ドローン「YOROI」や、大型で大量の薬剤散布や資機材、農作物を運搬できる重量物運搬ドローン(最大搭載荷重は80キログラム)「KATANA」を発売しています。

また、オプティム(東京都港区)の農場管理システム「Agri Field Manager」は、ドローンが撮影した農地の画像をAI分析します。病害虫や雑草を検知すると、ドローンが対象となる地点のみをピンポイントで農薬散布します。同社のオペレーターがドローンを操縦するサービスもあり、必要なときだけ利用ができます。

6)スマホ×農地の各種センサー=水田を監視して給水・止水を自動化

Farmo(栃木県宇都宮市)の「水田ファーモ」は、太陽光で発電する水位センサーと給水ゲート(自動給水装置)、スマホで給水・止水ができる給水バルブを連携させて、自動測定した農地の水位・水温に異常があった場合に、スマホやタブレット端末などに連絡します。アプリに水田に入れたい水位を設定しておけば、給水ゲートが自動で開閉し、水田の水位を保ち続けます。

7)位置情報×作業記録を自動的に作成=作業進捗の共有とデータ蓄積が容易に

エゾウィン(北海道標津町)の「レポサク」は、GPS端末を利用した車両と農地の管理ツールです。GPS端末を農作業用車両のシガーソケットに差し込むと、運転者が車両を走らせた位置情報から、リアルタイムにスマホやPCに作業状況を送信し、日報を自動的に作成します。

広い農地では、トラクタなどの作業状況を無線でしか確認できず、全体の状況を把握するのが難しいですが、スマホやPCで常に現場の進捗状況が分かるので、作業内容の整理や手順の検討、情報共有が容易になります。

8)ビッグデータ×データを基にツール開発=生産管理のデジタル化

農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構、茨城県つくば市)が運営主体である「WAGRI」は、72(2022年6月末現在)の民間事業者などが利用している農業データプラットフォームです。官公庁や農機メーカー、民間企業などが持つ気象や農地、収量予測などの農業データを、統一した規格で集積しているので、さまざまなツールを開発・提供するための基盤になっています。

例えば、26日先まで局地的に天気の予測ができる「1キロメートルメッシュ気象情報」や、スマホで撮った異常のある葉の部位から、どのような病害虫か分かる「病虫害画像判定プログラム」、農薬データを組み込んだ「栽培支援サービス」などが開発されています。この他、WAGRIの「育成・収量予測」「青果物市況情報」「青果物卸売市場調査情報」などの支援サービスを利用することで、将来を見通した生産管理体制を作ることができます。

また、さまざまな農業データを一元化することで、農業に関わる情報や熟練を要する作業、勘が「見える化」され、新規参入者がいち早く生産活動に入ることを可能にしています。

3 農業テック関連のデータ:ニーズと課題など

これまで見てきたように、さまざまなシーンで「農業テック」導入の動きが始まっています。農林水産省などの資料から、求められているニーズや課題などの状況を見てみましょう。

1)農業テックのニーズ

流通経済研究所が行った農業者の「経営課題ごとの重要さ」によると、一番関心の高いものは「作業の効率化」です。

農業者の経営課題ごとの重要さ

農業経営者が実際にどのような技術に関心があるのかに関しては、「全国的な公表データはありません」(農林水産省大臣官房政策課技術政策室)ということですが、中国地方に限定した調査データがありますので、1つの指標として参考になります。

農業従事者が関心があるスマート農業の内容

2)基幹的農業従事者の推移と年齢構成

農林水産省「農林業センサス」によると、国内の基幹的農業従事者の推移と年齢構成は次の通りです。担い手の減少・高齢化は年々深刻さを増してきており、これまで以上の作業の省力化・自動化は喫緊の課題といえます。

農業従事者の推移と年齢構成

3)農業テックの導入で労働時間が平均38~47%削減とのデータも

農林水産省は、2019年度から「スマート農業実証プロジェクト」を全国各地(19地区=畜産除く)で実施し、農作業の自動化や各種データの活用などによる効果の分析を行っています。その結果、品目ごとの各作業の労働時間削減率の単純平均は、38~47%でした。

スマート農業技術を導入した各作業の労働時間削減効果

人手不足や高齢化、業務の効率化を図りたい農業従事者にとって、農業テックは有効なツールといえるのではないでしょうか。

以上(2022年9月)

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画像:Andrey Popov-Adobe Stock

打ち上げ花火の豆知識(2)

1 打ち上げ花火の大きさ

打ち上げ花火の玉の大きさは昔ながらの単位である「寸」を用いて表示されます(1寸は約3センチメートル)。2.5号玉から40号玉まであり(実際は打ち上げ用の筒の大きさに合わせ、少し小さめに作られます)、3寸の大きさのものは3号玉と呼ばれます。

花火の玉の大きさが増すと、打ち上げたときの直径も大きくなります。一般的な花火大会で打ち上げられる花火玉は2.5~5号玉で、空中で開いたときの直径は約50~150メートルです。それでも十分迫力がありますが、40号玉の場合は約750メートルと、桁違いのスケールになります。

打ち上げ花火の直径と高さ

花火を打ち上げるには安全を確保する必要があるため、花火大会で使用される花火の最大の大きさは「保安距離」によって決まります。保安距離とは、玉の大きさに合わせて、花火の打ち上げ場所から観客や付近の建物まで最低限確保すべき距離で、都道府県により規定が違っています。

都市部では建物が多くたくさんの人が集まるため、小規模な花火大会が多くなります。

2 打ち上げ方

1)打ち上げ方の分類

花火の打ち上げ方は、1発ずつ打ち上げるものからたくさんの花火を一気に打ち上げるものまでさまざまです。

  • 単発打ち
    単発打ちは、その名の通り、1発ずつ打ち上げる方法です。7寸以上の大玉などによく採用されます。

  • 早打ち
    早打ちは、1つの筒で数十玉を連続で打ち上げる方法です。

  • スターマイン
    スターマインは連射連発とも呼ばれる数多くの玉を一気に打ち上げる方法で、観客にもよく知られたプログラムです。見た目が華やかで、花火大会の目玉となっています。

打ち上げ花火

2)電気・コンピューターを使用した遠隔点火

かつては打ち上げ筒の間近に人間が作業して点火するのが当たり前でした。しかし、近年では安全性などの観点から、電気・コンピューターを使った、遠隔操作による点火が多く見られるようになり、広範囲の演出が可能になりました。

特にコンピューターを使用した点火器では、音楽とシンクロさせたタイミングで打ち上げられるようになり、花火の表現の幅を広げていくことが期待されています。

3 良い花火の見分け方

どんな花火が良い花火かという基本を覚えておけば、花火見物はもっと楽しくなるでしょう。ここでは良い花火の見分け方を紹介します。

  • 玉の座り
    玉の座りとは、打ち上げられた花火の玉が上空の最高点に達したところをいいます。玉の座りに達したところで割火薬に点火されて玉が破裂するのが良い花火とされており、これを「玉の座りが良い」といいます。最高点まで玉が上がったかどうか、玉が最高点まで昇りつめたところで破裂しているかどうかに注意してみましょう。


  • 玉が開いた形を盆といい、「菊」などの花火では円(丸)形が良いとされています。楕円(だえん)や形がゆがんだものは「盆が欠ける」といい、評価されません。開いたときの輪郭がはっきりしているかどうか、玉の号数に合わせた大きさに開いたかどうかを見ます。

  • 星の飛び方
    玉から飛び出した星が放射状にまっすぐ飛ぶのがよく、これを「肩の張りが良い」といいます。星は全てに火が付いて飛んでいくのが良いとされ、一部に火が付かなかったり、まだらに飛んでいってしまったりするものは評価が下がります。また、飛ぶはずの星が飛ばなかったり、放射線状に飛ばず、ふらふら飛んでいったりするのも評価を下げてしまいます。

  • 消え口
    全ての星が同時に開き、同時に色が変化し、さらに飛び散った星が同時に消えることを「消え口がそろう」といいます。

  • 配色
    最近の花火はさまざまな色が用いられていますが、たくさんの色を使用すればよいというものでもありません。特に小さな玉は目まぐるしく色が変化すると、開いたとき色がそろわないことが多くなります。
    また、星の色合いや色の組み合わせ、変化にも注目してみましょう。色が濃くかつ明るいかどうか、色の変化が多いかどうかを見ていると、技術的な難しさや手間の入れ具合が読み取れるかもしれません。

以上(2022年9月)

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あったら便利! 会社の休みや休業中にもらえる保険給付の一覧表

書いてあること

  • 主な読者:休日や休暇の管理に不慣れな新任の人事労務担当者
  • 課題:「何日休みを与えればいいのか」「賃金を支払う必要はあるのか」などが分からない
  • 解決策:対象者、申請時期、日数、賃金の支払いについて違いを整理し、一覧表にまとめる

1 会社の休み一覧表

法定休日、年次有給休暇、育児休業など、会社にはさまざまな休み(仕事をしない日)があります。正直種類が多すぎて、「何日休みを与えればいいのか」「社員が休んでいる間、賃金を支払う必要はあるのか」など、実務に不安がある人もいるでしょう。

そこで、この記事では会社の休みを次の4つに区分し、「対象者」「申請時期」「日数」「賃金の支払い」について一覧表にまとめました。さっそく見ていきましょう。

  • 休日:元々、労働義務がない日
  • 休暇:労働義務を免除される日(一般的には、1日から数日などの短い休みを指す)
  • 休業:労働義務を免除される日(一般的には、1カ月超などの長い休みを指す)
  • その他:欠勤や出勤停止など

なお、一覧表のご利用に当たっては次の点にご注意ください。

  • 一覧表の内容は法令に基づいているので、法令上特段定めのないものは「特になし」と表記しています。
  • 日数は、法令で定められている日数を記載していますが、会社独自で法令以上の休日・休暇を与える制度設計をしても差し支えありません。
  • 賃金は、法令上支払いが義務付けられていないものは「不要」としていますが、就業規則等で支払う旨を定めた場合は支払い義務が生じます。
  • 休日に関するルールが異なる管理監督者などについては、考慮していません。

会社の休み一覧表

2 休業中に受給できる保険給付の一覧表

私傷病、労働災害、出産、育児、介護などの事情で休業する場合、社員は一定の要件を満たせば、社会保険や労働保険から休業中の生活を補償するための保険給付を受給できます。図表1では名称のみの記載だったので、こちらの図表2で補足します。

休業中に受給できる保険給付一覧表

なお、社員が保険給付の受給を開始した後で、業務の引き継ぎやリハビリなどで出勤して賃金が支払われると、保険給付を受給できなくなることがあるので、注意が必要です。

例えば、傷病手当金(健康保険)の場合、保険給付を受給中に社員が出勤すると、原則として実労働時間に関係なく、その日については傷病手当金を受給できません。仮に社員が半日だけ出勤した場合、その日の賃金が傷病手当金の受給額より少なくなってしまうことがあります。

一方、休業(補償)給付(労災保険)の場合、保険給付を受給中に社員が出勤しても、1日の中で賃金を受けない時間があれば、その時間については休業(補償)給付を受給できます。

以上(2022年9月)
(監修 社会保険労務士 志賀碧)

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打ち上げ花火の豆知識(1)

1 打ち上げ花火ができるまで

花火は火薬を使い危険が伴うため、日本では現在でもほとんどが機械化されていません。手作業で一つひとつ打ち上げ花火が作られていきます。

1)調合

必要な薬品や金属粉などを配合します。配合する薬品の種類や量によって光の色が変わるため、慎重に作業を行います。

2)割火薬づくり・星づくり

花火には、「割火薬」と「星」の2種類の火薬が使われています。割火薬は、花火を爆発させて、星を遠くに飛ばすための火薬です。星は、光りながら、放物線状の軌跡を描いて飛び出し、色を出しながら燃える火薬です。

火薬の配合によって花火の見え方が異なるため、熟練の職人が慎重に作業を行います。

特に星は、花火を構成する部品の中で最も重要とされ、花火作家が最も力を注ぐパーツといえます。

打ち上げ花火の断面図(単純なものの一例)

3)組み立て工程

各部品ができたら、次は組み立てを行います。玉皮(玉殻)というボール紙で作った半球体に、完成した星をすき間なく詰めていきます。中心部に薄い和紙(間断紙・はさみがみ)を引き、中に割火薬を詰めます。詰め終わったら、2つの半球を手に持ち、打ち上げたときにきれいな絵になるよう、左右をしっかり合わせてテープなどでとじます。

4)玉貼りと乾燥

玉貼りは、左右合わせた花火の外側にクラフト紙を貼り付ける作業です。貼り方の強さは、花火が開いたときの「盆(ぼん)」の大きさや星が広がるスピードに影響します。
玉貼りは紙を均一に、何重にも貼り付けて何度も乾燥させるため、時間のかかる作業でもあります。

2 打ち上げ花火の種類

花火には何種類かありますが、その中でも打ち上げ花火は大きく分けて4つの種類があります。

1)割物

割物は日本で独自の発展を遂げた花火です。特徴は、整然と並べた星を中央にある大量の火薬で四方八方に飛ばすことです。割物の中で代表的なものは菊と牡丹です。


  • 菊は、丸く開く花火でおなじみです。特徴は、「引(ひき)」と呼ばれる光跡を残しながら外側へ開いていくことです。

  • 牡丹(ぼたん)
    牡丹は菊と同様に丸く開く花火ですが、大きな違いは引が見られないことです。そのため、いくつもの花火を同時に打ち上げるときによく用いられます。

  • 型物(かたもの)
    型物は、丸い形ではなくさまざまな形に変形する花火です。ハートや土星、ネコなど数多くの種類があります。トンボや蝶(ちょう)などを立体的に表現する「立体的型物」というものもあります。

2)ポカ物

ポカ物は上空に達した後、合わせ目に沿って玉が2つに割れ、中に入っている星や細工物などが落ちてくるものです。


  • 柳は、上空で玉が軽く破裂し、中の星が柳のように垂れ下がりながら落ちていくものです。


  • 蜂は、ブルルンという音を発しながら、中の星が不規則に回転するものです。

  • 花雷(はならい)
    花雷は、音花火が白い花のようにさく裂するものです。

3)半割物(小割物)

半割物は、割物とポカ物の中間に当たるもので、割火薬が割物より少なくポカ物より多いのが特徴です。特徴は、花火玉の中にさらに小さな花火玉がたくさん入っているもので、小さな花火玉の種類を変えることで多彩な表現を見せることができます。代表的なものに、千輪菊、小割などがあります。

打ち上げ花火

以上(2022年9月)

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【朝礼】サプライズは愛がないとできない

少し前ですが、私の父が長年勤めた職場を定年退職し、家族そろってお祝いをすることになりました。少し奮発して、あるホテルでお祝いをしたのですが、そのホテルの対応にとても感動したので、皆さんにもお話ししたいと思います。

私はお祝いの当日、父と母とホテルで待ち合わせをすることになっていました。しかし、当日に両親から少し遅れて到着するとの連絡があったため、私は先にチェックインを済ませ、スタッフの方に部屋まで案内していただきました。私の荷物の中に父に渡すプレゼントがあったからか、スタッフの方が、「今日は何かお祝いでいらっしゃったんですか?」と私に尋ねました。私は「えぇ、父の定年退職の祝いです」と答えましたが、間もなく両親が到着したので、スタッフの方との会話はそこで一旦終わりとなりました。

驚いたのは、その日の夕食でした。ホテルで父と母と食事を楽しんでいたのですが、最後のほうになって、先ほどとは別のスタッフの方がテーブルに小さなケーキを運んできました。そこには、チョコクリームで「ご退職おめでとうございます」の文字が。父が驚いて「これはどういうことですか?」と尋ねると、スタッフの方は笑顔で「お客さまの退職祝いと息子さまから伺いましたので、ささやかですが私たちからもお祝いさせてください」と答えました。私がホテル側に頼んだわけでもないのに、わざわざ気を利かせて、父のためにケーキを用意してくれたのです。

私が感動したのは、このホテルが、スタッフの方と私とのちょっとした会話の中で出てきた「父の退職祝い」というワードを、「家族での夕食」という最高のタイミングでサービスにつなげてくれたことです。私がホテルに到着したのは夕方ごろで、夕食までさほど時間もなかったのですが、そのわずかな時間を使ってホテル内で連携を取り、本来の夕食のメニューとは別に、できる限りのサプライズを用意してくれたのです。

私はこのホテルの対応に今でも感謝していますし、スタッフの方々を心から尊敬しています。恥ずかしながら、もし私がこのホテルのスタッフだったとしたら、チェックイン後のわずかな時間の会話は、「軽い世間話」ぐらいの感覚で流してしまったでしょう。「父の退職祝い」などのキーワードに気付けたとしても、その日のうちにサプライズを用意するほどの行動力があるか、というと正直自信はありません。

私たちは、日ごろから「お客さまに愛を持って接する」を合言葉にしていますが、愛というものは相手に伝わって初めて意味があります。ささいな会話にも気を配る「アンテナ」、それをサービスに昇華させる「スピード感」、私はそこにホテルのスタッフの方々の大きな愛を見ました。私自身も、自分のお客さまに愛を届けられるよう、アンテナとスピード感をもって業務に励んでいきたいと思います。

以上(2022年9月)

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画像:Mariko Mitsuda