令和5年度はコロナウイルス禍による影響も段階的に縮小し、雇用調整助成金コロナ特例や緊急雇用安定助成金廃止等、多くの助成金が廃止・縮小されました。しかし、その中でも社会的な課題に対応する助成金として新設・拡充されたものもあります。今回はその中で
- 産業雇用安定助成金(事業再構築支援コース)
- 働き方改革推進支援助成金(適用猶予業種等対応コース)
- 両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)
- 高年齢労働者処遇改善促進助成金
を取り上げて解説します。
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令和5年度はコロナウイルス禍による影響も段階的に縮小し、雇用調整助成金コロナ特例や緊急雇用安定助成金廃止等、多くの助成金が廃止・縮小されました。しかし、その中でも社会的な課題に対応する助成金として新設・拡充されたものもあります。今回はその中で
を取り上げて解説します。
2022年4月施行の道路交通法の改正により、安全運転管理者のアルコールチェック業務が、白ナンバー事業者においても義務化されました。また、同年10月から開始とされていたアルコール検知器によるドライバーの飲酒検査の義務化は「当面の間延期」とされていましたが、本年12月1日から義務化するとの方針を明らかにしました。
本稿では、本制度の概要から、従業員が社用車で業務中に飲酒運転をした場合の企業リスクをご紹介し、さらには、義務化を機に企業が取り組むべきことの一つである就業規則の整備や従業員への明確な周知など、労務管理上の対策について解説していきます。
2022年4月施行の道路交通法の改正により、安全運転管理者のアルコールチェック業務が、白ナンバー事業者においても義務化されました。また、同年10月から開始とされていたアルコール検知器によるドライバーの飲酒検査の義務化は「当面の間延期」とされていましたが、本年12月1日から義務化するとの方針を明らかにしました。
本稿では、本制度の概要から、従業員が社用車で業務中に飲酒運転をした場合の企業リスクをご紹介し、さらには、義務化を機に企業が取り組むべきことの一つである就業規則の整備や従業員への明確な周知など、労務管理上の対策について解説していきます。
これまでは運送業や旅客運送業などの、いわゆる「緑ナンバー」を対象として義務化されていたアルコール検知器でのチェックですが、「白ナンバー」の車を規定の台数以上使用する事業者も対象となりました。

社用車で従業員が飲酒運転を行った場合、道路交通法の「酒気帯び運転等の禁止違反」として、運転者だけでなく関係する対象者にも罰則が適用されることになります。また、アルコールチェックを行う安全運転管理者および副安全運転管理者の選任を怠ると50万円以下の罰金が科されることになります。

企業と従業員を守るため、酒気帯びには厳格に対処すること、アルコールチェックを適切に実施していくことについては、社内規程に明確に記載しましょう。規程に盛り込むことで、従業員に対して、アルコールチェックの遂行を明確な業務指示として周知することができます。また、罰則を規定することで、飲酒運転の危険性についての意識を持ち、より確実に業務を遂行してもらうことができます。

まず、社内規程作成前に、①安全運転管理者の選定、②アルコールチェックの記録方法と管理体制の構築を行います。そして、前述のように就業規則へ規定するとともに、別途、アルコールチェックの実運用に関する社内規程を作成すると良いでしょう。
この法改正自体、実際の事故事案への対策としてのものとなります。まだ先のことと捉えるのではなく、更なる事故の悲劇を避け、企業や従業員を守るためと考えて、積極的に取り組みを進めていただければと思います。
※本内容は2023年6月15日時点での内容です
(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)
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画像:photo-ac
年間1000人以上の経営者と会い、人と人とのご縁をつなぐ代表世話人杉浦佳浩氏。ベンチャーやユニークな中小企業の目利きである杉浦氏が今回紹介するのは、三谷 淳(みたに じゅん)さん(未来創造グループ 未来創造弁護士法人 代表弁護士・税理士、株式会社未来創造コンサルティング 代表取締役)です。
日本一裁判しない弁護士。
こう呼ばれる三谷さん。未来創造弁護士法人のホームページにも堂々と掲げられています。「裁判しない弁護士」とは、今の弁護士業界の中では、かなり異端児かもしれません。しかし、こういう姿勢こそ、経営者に本当に寄り添っているのではないでしょうか。実際、多くの経営者から支持されている三谷さんです。
三谷さんが、自身が代表を務める未来創造弁護士法人で「従業員を大切にする会社の新しい福利厚生」として始めた事業が、「Law Room(ロールーム)」です。これは、
会社が無料で導入でき、従業員やその家族も無料で弁護士相談できるサービス
で、現在は全国の会社に提供しています。
ロールームの背景には、三谷さんの「プライベートの悩みを弁護士がサポートすることによって、従業員の生産性を向上させたい。従業員を大切にする会社に導入してほしい」という熱い思いと、「次世代に少しでもよい社会を残したい」という切なる願い、そして、稲盛和夫氏の盛和塾での学びや出会いがありました。
「本当に従業員を大切にする会社」には、特におすすめの新しい福利厚生、ロールーム。ひいては、人的資本経営にもつながっていきます。その内容をご紹介します。
「企業が経営を伸ばすということは、日本を救うということだ!」を掲げ、顧問弁護士として、多くの会社を応援してきた三谷さん。三谷さんの根底には、「このままでは日本はまずい」という危機感、そして「日本をなんとかしたい」という思いが強くあります。昭和50年生まれと最後のボリュームゾーンにあたる世代の三谷さん。これからの日本を考えたときに「自分たちがなんとかするしかない」という強い当事者意識を持っています。グループ名・法人名に冠した「未来創造」も同様で、「自分たちの未来は自分で作る」という当事者意識を表しているそうです。三谷さんはこう語ります。
「私にも子どもがいるので、この国を子どもたちに渡すときのことを考えます。私の父が昭和戦中生まれで、高度経済成長期を経験し、世界GDP2位の国を作り上げた世代。素晴らしい努力があったと思うのです。
ただし、その後、社会保障制度に手をつけずに、自分たちが恩恵を受けていたから、日本のピンチを生んだのも彼ら世代だと、私はそういう風に感じることもあります」
ご自身も、我が子から将来どんなふうに言われるかと考えた三谷さん。子どもから「お父さんの世代って悪いことしかしてないじゃん」とか「何もいいことしてないじゃん」って言われてしまうかもしれないと、本気で思ったそうです。それが2010年ごろのことで、それから三谷さんは、
少しでもマシな社会を次世代に残したい
と奮起します。日本の収支を鑑みて、具体的にやるべきことを考えたところ、社会保障費を削ること、消費税を上げること、あとは、法人税や所得税を増やして儲かる会社を増やす、これで均衡するくらいだなと。しかし、消費税を上げることや社会保障費を増やすことは、民間にはできません。
「民間の自分には稼ぐことしかできない。だとしたら自分は稼いで付加価値を出す、人の役に立って利益を出して、国に納める。これが、次の世代に渡すことだ。
ただし自分1人でやっても、たいしたことはきっとできない。(日本をよい社会にして次世代に渡すというような)そういう思いで会社を経営している経営者たちをとことん応援しよう」
「企業が経営を伸ばすということは、日本を救うということだ!」 未来創造グループ・三谷さんの次世代への思い、日本をなんとかしたいという「本気」がここに集約されています。
●三谷さんが代表弁護士を務める未来創造弁護士法人
https://www.mirai-law.jp


(出所:未来創造弁護士法人ホームページから抜粋)
従業員が無料で弁護士に相談できる「ロールーム」は「従業員を大切にする会社の新しい福利厚生」として打ち出されています。
会社が導入するときに未来創造弁護士法人と交わす契約書にも、導入する前提として「従業員を大切にする会社である」ということが明記されており、三谷さんも「導入の条件は、従業員を大切にする会社かどうかに尽きます」と強調します。
ここで、ロールームの仕組みを見ていきたいと思います。聞けば聞くほど、本当に従業員ファーストで、かつ、それが会社の成長につながると実感できる内容です。
会社が導入する際の費用は無料。そして、従業員が弁護士に相談する費用も無料です(1回60分以内のご相談)。普通、弁護士に相談するとなると、高額な費用がかかるイメージがあります。一般的には、弁護士への相談料は通常30分で5000円、60分であれば1万円などかかるところ、ロールームは会社の福利厚生として60分無料で受けられるので、とても貴重です。しかも、会社側にもお金はかかりません。
ロールームに寄せられる相談のうち、90%くらいは、弁護士の法的な助言によって、「こうしてみます」「心配することはありませんでしたね」といったように、その場のご相談だけで解決するそうです。
残り10%ほどは、弁護士が窓口となって交渉したり、裁判所で手続きを取ったりした方がよいケースがあります。その場合は、「ご本人のご希望があれば、改めて委任契約を結び、費用をいただいてお手伝いをさせていただきます」ということです。
●従業員が無料で弁護士相談できる「ロールーム」
https://lawroom.mirai-law.jp/

(出所:未来創造弁護士法人の資料から抜粋)
ロールームに、具体的に寄せられる相談内容は、主に次のものだそうです。
確かに、どれも深刻であり、知り合いには相談しにくい内容かもしれません。従業員が100人いれば、年間1.5人ほどくらいの割合で相談が上がってくるそうです。大きな会社よりも小さい会社の方が周知されるのが早く、相談率が高い、と三谷さん。
「逆にいえば、100人に1人くらいは、弁護士に相談しなきゃいけない悩みを、どこかに抱えてらっしゃるものなのだなと思います。
それをどこにどういうルートで相談するかで、その後の解決も左右されますが、何も知らないと、やはりインターネット検索などで、マーケティング的な方法で広告宣伝をしている法律事務所へたどりついてしまいますよね」
その点、会社側が福利厚生として用意してくれていて、守秘義務を遵守してもらえる、さらに従業員の家族もサービスを利用できる。そういう信頼できる法律事務所の存在は心強いものです。
●ロールームのカード。従業員がいつも携行でき、困ったときにすぐ相談できる心強い味方

(出所:りそなCollaborare事務局にて撮影)
「日本一裁判しない弁護士」の三谷さんは、弁護士としては珍しく、係争に勝つことよりも争いを未然に防ぐトラブル防止を武器に、会社の経営を心底応援する弁護士であり続けようとしています。こうした三谷さんに対して、三谷さんのところの従業員があるとき、こう質問を投げかけます。
「企業を応援するなら、そこで働く従業員も応援すればいいのではないでしょうか。なんで従業員の応援をしないのですか?」
それまで「BtoBの応援をするのが、私の思いをより社会に還元できるのかな」と考えていたという三谷さん。しかし、従業員からの言葉をきっかけに考えてみると、次のように思えたといいます。
「たしかに家で、離婚問題に悩んでいるとか、夫婦仲が悪いとか、会社に言えない借金があるとか、そういう人が仕事に集中できるわけがないのですよね。それなら、私たちがその悩みを聞き解消して、仕事に集中してくれたら、従業員の生産性が上がり、企業の生産性も上がる。付加価値が上がる。利益が増える。この国を救うことになるのではないかと」
もちろん守秘義務を負っていますので、従業員から相談された内容は、会社に漏れることは一切ありません。従業員からすると、「会社に筒抜けになってしまうのでは」という不安があるかもしれませんが、そこも大丈夫、会社には漏れないので安心して相談できます。
ただし、会社の業務に関するご相談やパワハラなど会社と利害の対立するような相談は受けられないとしています。会社が従業員の福利厚生として導入する趣旨と合わなくなってしまうからです。
このあたりも、本当によく考えられており、従業員にとっても会社にとっても「超安心設計の福利厚生サービス」と言えそうです。
生い立ちなどを振り返ってお話ししていただくと、なんと、大学3年生のときに最年少で司法試験に合格した三谷さん。31歳のときに独立しますが、ご自身いわく「天狗になっていた」ところもあってなかなか顧客が増えない……。そうしたときに、三谷さんを変えてくれたのは稲盛和夫氏の盛和塾だったそうです。参加者が暖かく、「人間としてすごい人とは、こういう人をいうのか」と思えるお手本となる人たちと出会えて、稲盛氏がずっと言い続けていた「利他」にも触れていった三谷さん。
「そこで出会ったのは『経営者の身のまわりで起こる全てのことは、自分のせいである』という自責の考え方。それまでの私はまるで逆でした。全部他責、他人のせいにしていました。
悪いのはお客さん、従業員。俺はすごいのになぜって思っていたのですが、お客さんが増えないのは、自分がすごくなんかないからだ。自分に力がないからだ。そこに気付かせてもらえました。従業員が言うことを聞かないのは、尊敬されてないからだという、当たり前のことに気付かせていただいて、気持ちが楽になりました。
これまでは、他人が悪くて、変えられないから、常にイライラしていたのですが、『自分に原因がある、自分はコントロールできるから自分さえ変わればまだよくなれるのだ』とイライラがなくなりました」
「稲盛さんは『利他こそが人生を成功させるために一番大切な要素なのだ』と言っています。人がみな利他であれば、裁判など起きないのではないか。相手への思いやりを持って、つまり『利他』を実践して仕事をすれば、ビジネス上もうまくいくのではないか。心底、そう思うようになりました」
こうした気付きや思いが、「日本一裁判しない弁護士」そして「従業員を大切にする会社の新しい福利厚生=ロールーム」へとつながっていると感じます。大人になってから、自分の考え方を大きく変え、しかも行動に移すのは簡単なことではありません。思慮深く頭脳明晰かつ、とても温かい心。それらに裏打ちされた、成し遂げる行動力。そうしたものが三谷さんを形作っているように思います。
ロールームのスタートや継続には、三谷さんたち未来創造弁護士法人の中でも大いに議論があったといいます。特に無料で相談を受ける点については、「お金になりやすい(個別案件につながりやすい)ものだけを無料で聞きましょう」「相談分野を絞って無料で受けましょう」といった議論が出てきたこともあるそうです。ビジネスとして、当然出てくる意見だと思います。
しかし、そこで三谷さんは立ち止まって考えよう、と呼びかけたそうです。
「ちょっと待って。このサービスは、何のために始めたのでしたか? 従業員の悩みを解決して、生産性を上げてもらうためですよね。
それなのに、『その悩みは聞くけども、この悩みは聞きません』って、そんなのないでしょうという議論を、社内でしました」
ほかの法律事務所では、マーケティング的にどこが儲かるか分析して、同様のサービスを実施しているところもあります。「それと同じことをやるのか。われわれがこのサービスを立ち上げようとした原点は、そんなものじゃありませんでしたよね」と、三谷さんは自社の従業員たちに投げかけます。
「マーケティング的なやりかたをしている法律事務所は、莫大なマーケティング費用をかけて、案件を集めています。
私たちのロールームは、基本的に広告費用をかけていません。会社の社長が、自分の会社の従業員に『これ良いから使ってみて』と推奨してくださることによって、マーケティング費用0なわけです。社長がそうやってくれるわけですよね。
であれば、それで来てくださる従業員の方のご相談は、全部聞こうよ、と。
『どちらが社会の役に立つか。役に立つほうが最後に成功する』というのが、稲盛さんの言葉でもありますから」
三谷さんは、こうも続けます。
「私たちのサービス、ロールームは、相談が来ないと何も始まりませんから、どんな悩みでも相談してください、となります。絶対に世の中のためになることをやっているという自信と実感がありますから、胸を張っておすすめできます。
私たちは、これ(ロールーム)で、名を上げるとか売り上げがどうだ、収入がどうだとは考えたことがなくて、絶対にこれはみなさんにお役立てていただけると確信しています。
従業員の育成の場にもなるし、弁護士の育成の場にもなるし、何をとってもいいことなのではないかと思っています」
ロールームを通じて実現されるであろう「従業員がイキイキ働く、仕事に集中する、生産性を上げる」、これは、まさに今、会社が実現しなければならない人的資本経営にとって欠かせない、というかむしろ根幹の部分ではないかと思います。
ロールームのような「本当に従業員を大切にする会社の新しい福利厚生」が、会社にとってデフォルトになる日は、それほど遠くはない気がします。新しい素晴らしい未来を感じさせていただきました、三谷さん、本当に有り難うございます!
●従業員が無料で弁護士相談できる「ロールーム」
https://lawroom.mirai-law.jp/
以上(2023年7月作成)
デジタルはすでに世の中に欠かせない存在になっています。コンビニのレジにはQRコードを読み込むリーダーが設置されていますし、上場株を保有するならデジタルでの取引が必須条件となります。取引先への連絡でも、電話よりも電子メールやLINEが好まれるケースも増えています。
パソコンやスマートフォン(スマホ)、オンラインアカウントなどなど、好むと好まざるとにかかわらず、「デジタル資産」を全く持たない生活は不可能に近いでしょう。
であるならば、
万が一のときにデジタル資産で困らないようにする「デジタル終活」は誰にとっても欠かせないこと
だといえます。とりわけ、経営者の方はきちんと備えておかないと、社会的な信用問題に直結する恐れがあります。家族や社員、株主、取引先のためにも、日ごろからデジタル終活を実践しましょう。
最低限やっておくべきデジタル終活は何かと問われれば、誰に対しても「スマホのパスワードを紙に書いて残しておくことです」と答えます。スマホを持っていない方は、メインで使っているパソコンのパスワードと置き換えてください。


方法を具体的に解説しましょう。必要なものは名刺サイズの厚紙とペン、それに修正テープです。特別な道具は要りません。まずは厚紙にスマホの型番や特徴とパスワードを書き込みます。そして、パスワード部分にだけ修正テープを走らせます。一度だけでは透けてしまうので、2~3回重ねるのがコツです。厚紙を照明にかざすと裏側から文字が透けることもあるので、裏側にも同様に修正テープを重ねておきましょう。
これで即席のスクラッチカードの出来上がりです。これを預金通帳や権利書などの重要な書類と一緒に保管しておけば、万が一の際もかなり高い確率で家族や社員に気付いてもらえるはずです。普段盗み見られる心配も、修正テープが抑えてくれます。誰かが削って盗み見たら厚紙に痕跡が残るので、気付いた時点で手元のスマホのパスワードを変更して作り直すだけです。

私はこれを「スマホのスペアキー」と名付けました。お手持ちの名刺を使えば、3分以内に作れそうではないですか?
作例のような専用カードを作るなら、筆者のホームページ(https://www.ysk-furuta.com/)でひな型を公開しているので、ぜひご利用ください。
デジタル遺品になり得るものはさまざまな種類があります。その中で、なぜスマホを第一優先にすべきなのでしょうか。理由は2つあります。
ひとつは、スマホがデジタル遺品の要になりやすいことが挙げられます。通話やLINEのやりとりといったコミュニケーションの履歴が残るだけでなく、最近はネットバンキングや有価証券の取引の道具としても、パソコン以上に積極的に活用されています。
とりわけ近年目立っているのは、QRコード決済サービスです。スマホで使うことを前提に設計されたサービスで、業界大手の「PayPay」はサービス内に最大100万円分をチャージしておけます。スマホを最大100万円の財布として使えるわけですが、残高を残したまま持ち主に何かがあっても、残された人が現実の財布のようには抜き出すことはできません。
総務省と地方自治体、金融機関はスマホで地方税を納税する仕組みの標準化に取り掛かっていますし、マイナンバーとスマホを連動させる取り組みも国を挙げて検討されています。全てが順調に進まなかったとしても、財産と個人情報の両面からみてスマホの存在感が高まっていくのは間違いなさそうです。
それでいて、スマホのロックはパソコン以上に強固です。それが2つ目の理由となります。
最新のスマホは指紋や瞳の虹彩、顔などの生体認証システムと、文字列などを使ったパスワードシステムを併用するロックが一般的です。どちらかの鍵さえあれば開けますが、どちらも手に入らないとお手上げになってしまいます。本人の身を不幸が襲って生体認証が使えなくなり、パスワードも本人の頭の中だけだったら……もうお手上げです。
別の方法でロックを解除する方法は、一切用意されていません。通信キャリアのショップやメーカーもマスターキーを提供していないので、相談しても無駄です。
この段階でも、パソコンなら地域にある優秀な修理サービスに相談すれば、機械を分解したり、特殊な手順を使って中身にアクセスしたりと、さまざまな方法を検討してくれるでしょう。しかし、スマホの解除を検討してくれるところは全国を見回しても片手で収まるほどしかありませんし、成功率はかなり低くなります。
象徴的なのが、2016年にFBIがアップル社を相手取って起こした連邦裁判です。前年に発生した銃乱射事件では、現場で射殺された犯人が同社のスマホ「iPhone」を所持していました。FBIはこのスマホの解析に乗り出しましたが、自力でのロック解除を断念。そこで製造元のアップル社に技術提供を要請したものの、その後の不正利用を不安視した同社が拒否したことで裁判に発展しました。
つまり、家電量販店や通信キャリアのショップに普通に並んでいるスマホは、一台一台が、FBIですら自力ではどうすることもできないほど強固なセキュリティー機能を有しているわけです。ポケットに収まる地下金庫のような、アンバランスな存在です。
そんなスマホですが、いざというときにパスワードさえ伝わる仕組みを自分で作っておけば、不測の事態が起きても何の憂いもありません。そのために「スマホのスペアキー」を用意しておく必要があるのです。
さて、スマホのスペアキーが役目を果たすときは、家族や社員が自分のデジタル環境に足を踏み入れるときでもあります。当たり前のことですが、ことデジタル環境においては、それを想定している人は意外と少ないようです。
数年前に、ある女性から相談を受けました。法人成りした自営業の夫が急な不幸に見舞われたとのことで、仕事場に残された数台のパソコンを調べるためのアドバイスが欲しいといいます。法律面と技術面で基本的な情報を伝え、信頼できるデジタル遺品サポートを紹介したところ、連絡すべき相手や法人名義の預金口座など、あらかたの情報が拾い出せたそうです。しかし、仕事関連の隣にあったフォルダーからプライベートで収集していた画像が大量に見つかり、相当面食らったと後から教えてくれました。
プライベートなコレクションの中には、違法性が疑われるデータが出てきたという話も少なからず耳にします。その是非はさて置き、デジタル環境においても、日ごろから自分以外の誰かが足を踏み入れることを想定しながら使用する、という意識が必要なのは間違いないでしょう。
家族や社員がデジタル遺品を調べる動機は、金銭関連や進捗中の仕事の情報などの把握が第一に挙げられます。第二に家族写真などの思い出のデータを探したい欲求も強いことがよくあります。
そのように、残された側が求めるであろうデジタル遺品は、なるべく分かりやすいところに置いておくのが親切です。そして、隠しておきたいものがあるなら、その動線上に置かないように、日ごろから意識しておくのが鉄則です。

パソコンには隠しファイル機能がありますし、パスワード付きの外付けハードディスクに保存するといった手もあります。スマホも特定の写真を隠しフォルダーに収納するなどの工夫の余地はいくらでもありますが、何よりこの鉄則を守ることが大切です。残された側が必死に探すモチベーションを持たない領域なら、いくらでも自由に隠したり壁を作ったりできるでしょう。
ただ、ひとつ注意したいのは、閲覧履歴や通信履歴などは普通に使っているとどうしても痕跡が残るということです。また、バックアップ機能も十分に把握しておかないと、隠したいものの完全な隠蔽は難しいでしょう。デジタル環境をきちんと整理整頓するには、それなりの知識と使いこなしが必要になります。残念ながら、魔法のようなアイテムは存在しません。
以上(2023年7月更新)
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画像:執筆者提供
仕事や私生活を送る上で、私たちは日々多くの壁にぶつかります。思い通りに行かないこと、想像もしなかった結果に終わることが多々あるでしょう。皆さんは、そんな状況を乗り越えていくために、どのような心構えが必要だと思いますか。
「困難な状況を乗り越えるには、鉄のように強く硬い意志が必要だ、意志が弱ければ鍛えて強くすればよい」とよく言われます。ここでいう、強い意志とは何事も弾き返す、鉄のような硬さを持った意志を指します。確かに、あらゆるストレスを弾き返すことができる硬い意志はどんな状況にも耐えられそうです。しかし、本当に硬い意志を持つだけで、困難な状況を乗り越えることができるのでしょうか。私はそうは思いません。私は、困難な状況には柔軟さこそが必要だと思います。
皆さんは刃物などを製造する時に「焼き入れ」「焼き戻し」などの作業を行うことは知っていますか。「焼き入れ」とは熱した金属を一気に冷やすこと、「焼き戻し」とは熱した金属をゆっくり冷やすことです。
焼き入れを行うと刃は硬くなりますが同時に脆くなり割れやすくなります。焼き戻しを行うと、刃の硬さは落ちるものの、柔軟になります。焼き入れと焼き戻しの作業を繰り返して作られる優れた刃物は、硬さと同時に柔軟さも兼ね備えています。
刃物だけではありません。例えば、「柳に雪折れなし」ということわざがあります。これは、柳の枝はちょっとした風雨や雪でも揺れますが、猛烈な風雨や雪の影響を受けても折れずに軟らかい枝で力を受け流すことから、柔軟なものは堅剛なものよりもよく事に耐えるという意味を表しています。そうした柔軟さを持ちながらも、柳は倒れることなくしっかりと地面に根を張って立ち続けているのです。
刃物であれ、柳であれ、柔軟さを持たずにただ硬いだけでは、自分より強いものとぶつかった時に折れてしまいます。人間も、大きな壁に直面した時、それをはじき返そうと心を固めているだけでは、大きな力に負けて折れてしまうかもしれません。しかし、柔軟でしなやかな心を持てば、一旦は状況を受け止め、そして困難を脱するためのアイデアも湧いてくることでしょう。
ここで、心にしなやかさを持つために、心がけていただきたいことを一つ挙げておきましょう。それは、何事につけても先入観にとらわれてしまわないことです。例えば、過去の経験や習慣はとても重要なことですし、その経験を生かすことは何か問題が起きた時の解決にはとても役立つでしょう。けれども、それだけでは型通りで硬直的な対応になってしまい、新しい問題に対応できないかもしれません。
困難に突き当たっても折れてしまうことなく、臨機応変に対応できる柳のようにしなやかな心を持つことが、皆さんが本当に実力のあるビジネスパーソンとなるための秘訣だと思います。
以上(2023年7月)
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画像:Mariko Mitsuda
自動車の故障は1年の中で7月頃から増える傾向があります。
皆さんは日常点検を適切に実施していますか?
自動車は精密機械です。走行距離や時間の経過に伴って部品の摩耗や劣化が進みます。日常点検を怠っていると、運転中に故障やトラブルが生じ、交通渋滞や交通事故を誘因するおそれがあります。
今月は、自動車の日常点検について再確認してみましょう。

自動車の故障の発生件数は、6~7月から増え始め、12~1月にピークを迎えます。※
特に、ゴールデンウィークやお盆、年末年始などの連休にはロードサービスの救援要請が増加します。

出典:一般社団法人日本自動車連盟(JAF)「ロードサービス救援 データ」から当社作成
※夏季は路面温度が上昇しタイヤに負荷が掛かったり、夏季にバッテリーを酷使して冬季にトラブルが生じたりすることが要因と考えられます。

国土交通省「令和4年度路上故障の実態調査結果」から当社作成
国土交通省の統計データで路上故障(一般道路)の故障部位をみると、「タイヤ」と「バッテリー」の割合が高く、この2つで全体の約6割を占めています。
タイヤの故障原因としては、空気圧不足やパンク、バーストなどがあげられ、バッテリーの故障原因としては、ライト類の長時間使用などによる過放電や破損、劣化などがあげられます。
運転中に発生するこれらのトラブルの多くは、日常点検をしっかりと行っていれば回避することが可能です。

当社調べ「あなたは過去にお車が故障し自走不能となった経験がありますか?
(事故による故障の場合を除きます)」への回答結果
(2022年5月実績 回答者数:2,421名)
実は、3人に1人が故障を経験しています!
エンジン故障など修理費が高額になることもあります。
自走不能の場合はレッカー費用もかさみます。
日常点検整備の実施は、ユーザーの義務として法令(道路運送車両法47条の2)に定められています。自家用乗用自動車の場合は、日頃、自動車を使用している中で、走行距離や運行時の状態などから判断した適切な時期に点検を行う必要があります。
自動車に安全に乗るためには欠かせない日常点検ですが、自家用乗用自動車の場合、エンジンルーム5項目、クルマの周り4項目、運転席6項目(全部で15項目)をチェックする必要があります。
「日常点検項目チェックシート」を活用して効率的に日常点検を実施しましょう。

日常点検項目チェックシート(上図参照)
出典:国土交通省「自動車の点検整備」
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha/tenkenseibi/tenken/t1/t1-2/
※日常点検で、もし少しでも「変だな」と感じたら、整備工場などで点検整備を受けてください。
高速で走行中にパンクやバーストが発生すると非常に危険です。また高速道路などの路肩でのタイヤ交換は追突されるなどの危険が伴います。
運転の前には、タイヤの空気圧、亀裂・損傷の有無、溝の深さ(スリップサイン)をしっかりチェックしましょう。

バッテリーがあがる前にはランプ類が暗くなったり、エンジン始動の際のモーターの回転がスムーズでなくなったりします。
バッテリーの寿命を意識して日頃のバッテリー液の点検をしっかり行いましょう。

日常点検を励行すれば、不具合を早期に発見・修理することができ、次のメリットが期待できます。
※「エコドライブ10のすすめ」の項目(8.タイヤの空気圧から始める点検・整備)になっています。
日常点検をしっかりと行い、安心・安全かつ快適な運転を心がけましょう!
以上(2023年7月)
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画像:amanaimages
海外展開を検討する際、現地のリスクの把握や市場調査の他に、収集すべき情報として、
先行した他社の成功事例
があります。理論や数字などから海外展開の成功ポイントを知るだけでなく、実際の成功事例を参考にすることで、検討すべき課題がより明確になるはずです。
この記事では、日本貿易振興機構(以下「ジェトロ」)「ジェトロ活用事例」、新輸出大国コンソーシアム「海外展開成功事例集」、中小企業基盤整備機構(以下「中小機構」)「中小企業の海外展開入門」などの資料や、各社ウェブサイトなどを基に、中小企業の海外展開事例を紹介します。なお、各機関の資料で紹介されている事例については、各資料作成時点のものです。
翠華園 谷村弥三郎商店は、茶せんなどの茶道具を製造販売しています。
同社は2020年に海外への輸出に取り組み始めました。まずは茶道具の海外ユーザーを増やすために、SNSのInstagram(インスタグラム)を活用し、茶道具の魅力や工房の様子などを発信したところ、ダイレクトメッセージで引き合いがくるようになったといいます。
そして、ジェトロが主催するオンラインカタログサイト「JAPAN STREET」に登録したことで、米国のバイヤーとの取引が成約し、ニューヨークのセレクトショップで販売されるようになりました。
取引が成約に至った決め手は、オンライン商談でした。バイヤーが顧客にも茶せんの価値や魅力を伝えられるよう、スマートフォンを使って実物を見てもらいながら、商品の背景にあるストーリーを説明したことが奏功したといいます。
具体的には、原料となる竹を見てもらいながら素材へのこだわりを説明。さらに、実際に工房で職人が手作業で茶せんを作る様子を映しながら製造工程を紹介することで、商品の価値と魅力を伝えることができたそうです。
Earthinkは、食品や雑貨の企画製造・販売などを行っており、食品の国内外への通販事業にも携わっています。2015年からは、米国のECモールAmazon.comに「Japan Village」を出店し、うなぎのかば焼きなど日本のこだわり食品を販売しています。
ECモール内で自社の販売する商品を見つけてもらうために試行錯誤する中、同社は2021年にジェトロとAmazonが日本の事業者の商品を特集するストア「JAPAN STORE」に参加しました。事業で提供されるウェビナーや講座からSEO対策や広告運用などのノウハウを得て、売り上げの増加につながったといいます。
また、ウェビナーをきっかけに、Amazon内のSNS「POST」への投稿に力を入れるようになりました。POSTではセールス色を抑え、販売している食品の用途やレシピ、商品の魅力や背景にあるストーリーの他、日本の文化など、より日本を身近に感じてもらう投稿を行いました。その結果、フォロワーや購入リピーターが増えたといいます。また、Amazonのイベント前や販促を強化したい商品があるときに集中的に投稿を行うことで、露出がさらに増えたそうです。
アーキテックは建造物の防水加工や内装工事を行っています。同社はミャンマーで建築資材の防水加工を専門に行う企業がないことを知り、ミャンマーへの進出を考えるようになったといいます。
2017年に現地法人を設立後、新輸出大国コンソーシアムの支援を受けて、本格展開の準備を進めました。コンソーシアムの専門家からは、現地の法律や、ASEANでの商習慣などの助言を受けました。コンソーシアムの専門家の助言を受けて日系ゼネコンなどへのPR活動を行った結果、2018年11月から工業団地の工場の外壁工事や、ヤンゴン市内の学校およびホテルの工事の一部を受注できるようになったといいます。
人員体制の整備については、技能実習生として2015年から日本の本社で受け入れていたミャンマー人を活用しました。技能実習生としての勤務経験があるスタッフを雇用し、現地採用の人材の指導に当たってもらうことで、20人規模の運営体制を構築したといいます。元技能実習生を現地で雇用したことは、日本にやって来る技能実習生にとっても、やる気を引き出す効果があったようです。
アイマックエンジニアリングは、プラント用機械の設計・製作を行っており、工場内で製作したユニットを現地で据え付けるだけで建設可能な新工法のノウハウを持っていることが強みです。
同社は2019年度に、新工法のノウハウを武器に、国内メーカーだけでなく海外メーカーとの取引も行うことを目指して、知的財産を活用した中小企業の海外展開をサポートする経済産業省の「戦略的知財活用型中小企業海外展開支援事業」に応募し、採択されました。
当初はライセンス供与による海外メーカーとの取引を計画しましたが、中小機構のアドバイザーと検討した結果、周辺特許を多数権利化する必要があることなどが判明し、PCT出願(国際特許出願)を行うことにしました。PCT出願は、特許協力条約(PCT)への加盟国の1カ国に、統一された出願書で特許を出願すると、全ての加盟国に特許出願したことになるものです。
2020年12月に日本での特許の権利化を達成し、2021年度までにアジアや欧米の9カ国で権利化の手続きを開始しました。同社は特許の権利化を足掛かりに、今後は海外展開を進めていく方針といいます。
ジェトロでは、目的、分野、海外展開先などから、海外ビジネスの成功事例を検索できるようにしています。
■ジェトロ「ジェトロ活用事例」■
https://www.jetro.go.jp/case_study/
ジェトロのウェブサイトでは、ジェトロが事務局を務める新輸出大国コンソーシアムによる支援を活用した、58社の事例を紹介しています。
■ジェトロ「新輸出大国コンソーシアム『海外展開支援活用事例集』をウェブサイトで公開」■
https://www.jetro.go.jp/news/releases/2022/0f885ee3faef4a45.html
また、同じく新輸出大国コンソーシアムを活用して海外展開に成功した、100社の事例も紹介しています。
■ジェトロ「新輸出大国コンソーシアム『海外展開成功事例集』をウェブサイトで公開」■
https://www.jetro.go.jp/news/releases/2019/48c3ea6f0bbe6a95.html
中小企業基盤整備機構では、中小企業による「海外進出の取り組み事例一覧」をウェブサイト上で掲載しています。また、「事例集(中小企業庁編)」では、全国の中小企業支援機関による支援を受けて、海外展開を果たした事例を紹介しています。
■中小企業基盤整備機構「中小企業の海外展開入門」■
https://j-net21.smrj.go.jp/special/overseas/
国際協力機構(JICA)では、中小企業への海外展開支援事業に関して、対象国、スキーム、公示年度などから過去の案件事例を検索できるようにしています。
■国際協力機構「採択事業検索」■
https://www2.jica.go.jp/ja/priv_sme_partner/index.php
日本商工会議所および東京商工会議所では、2018年1月に中小企業の海外展開事例集「ヒラケ、セカイ2」を発行しました。2016年10月に発行した第1弾に続く電子冊子で、16社の事例を紹介しています。
■日本商工会議所/東京商工会議所「ヒラケ、セカイ2」■
http://www.tokyo-cci.or.jp/page.jsp?id=112735
工業所有権情報・研修館では、ウェブサイト「知財総合支援窓口」において、知財面における「支援事例」を紹介したページの中で、代表的な海外展開支援事例を紹介しています。
■工業所有権情報・研修館 知財総合支援窓口「支援事例」■
https://chizai-portal.inpit.go.jp/supportcase/02.html#supportcase04
以上(2023年6月更新)
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コロナ禍で広まったリモートワークですが、最近はオフィス回帰の動きが広まっています。その場合に注意が必要なのは、労働安全衛生法とその関係法令で定められている「オフィス環境の衛生基準(以下「法定基準」)」です。
会社は「照明の明るさ」「トイレの数」などについて、法定基準を守らなければならないのですが、図表1の通り、2022年(4月と12月)にルール変更があった関係で、知らないうちに法令に違反している可能性があるのです(違反は努力義務の場合を除き、6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金)。

以降で、図表1のそれぞれの項目について法令上のルールを紹介するので、今のオフィス環境に不安がある場合は確認してみてください。
照明は、社員の作業内容に応じた「照度(照明の明るさ)」が法定基準を満たすようにしなければなりません(義務)。照度は、光の量を表す「ルクス」という単位で表され、照度計で測定できます。作業場所はルクスが高いほど明るく、低いほど暗くなります。
2022年12月1日からは、社員の作業内容と、作業内容ごとに満たすべき照度の基準が次のように変更されています。

パソコン操作・計算などの「精密な作業」と電話応対などの「普通の作業」が「一般的な事務作業」に統合され、資料の袋詰めなど文字を読む必要のない「粗な作業」が「付随的な作業」に名称変更されました。作業に必要な照度も引き上げられているので注意が必要です。
オフィスの照明・採光は、図表2の基準の照度を満たした上で、「明暗の対照が著しくなく、かつ、まぶしさを感じさせない方法」とされています。
などの対策が必要です。また、オフィス全体の照度は基準通りでも、パーテーションで作業スペースが暗くなるといったケースでは、基準を満たさなくなる恐れがあるので注意しましょう。
トイレは、社員の性別や人数に応じて、次のように設置しなければなりません(義務)。
また、2022年4月1日からは、「独立設置型のトイレ」に関するルールが新設されました。
独立設置型のトイレとは、プライバシーが保護され、社員が性別などに関係なく利用できる、完全個室のトイレのこと
で、具体的には次の基準を満たすものをいいます。

独立設置型のトイレを設置すると、そのトイレ1個につき、会社の男性社員と女性社員を、実際の人数よりも10人ずつ減らしてカウントすることができます。例えば、男性社員が70人いる場合、独立設置型のトイレを1個設置することで、男性社員は60人(70人−10人)としてカウントされ、会社が設置しなければならない男性用トイレの数が次のように変わります。
ただ、このルールは、会社が建物の都合上、トイレを男女別に設置できないケースなどに対応するためのものなので、法定基準を満たすからといって、今ある男性用・女性用トイレの数を減らしてスペースを節約するといったことはできません。
また、独立設置型のトイレを設置する場合、トイレは男女共用になり、重い持病や障害がある社員も使うことが想定されますから、次のような事項についても検討する必要があります。
会社は社員数に関係なく、社員が顔を洗える洗面設備を設置しなければなりません。加えて、業務上、社員の服が汚れたり、濡れたりすることがある場合は、更衣室やシャワー設備、乾燥機などを設置しなければなりません(義務)。
また、2022年4月1日からは、社員が更衣室やシャワー設備を、性別に関係なく安全に使えるよう、プライバシーに配慮することが会社に求められるようになりました。プライバシー保護の基本的な考え方は、前述した独立設置型のトイレと同じです。
休養室・休養所とは、体調が悪い社員や生理中の女性社員が横になって休むことのできる場所のことです。部屋の場合は「休養室」、施設の場合は「休養所」といいます。会社は、
社員が50人以上または女性社員が30人以上いる場合、休養室・休養所を「男女別」に設置
しなければなりません(義務)。
また、2022年4月1日からは、オフィスの空いているスペースを臨時の休養室として使う場合などに、社員がすぐに利用できる体制を整えることが求められるようになりました。例えば、
社員が体調不良を訴えたら、すぐに折りたたみ式のベッドを出せるようにする
といった具合です。また、社員が安心して休めるよう、プライバシーと安全に配慮することが求められるようになりました。例えば、
といった具合です。
休憩設備とは、社員が食事をしたり、休憩したりするための場所です(設置は努力義務)。設置に関する具体的な基準は特にありません。
ただし、2022年4月1日から「休憩スペースの広さや設備内容については、衛生委員会などで調査審議・検討するのが望ましい」旨が示されたので、衛生委員会がある社員数50人以上の会社などは認識しておいたほうがよいでしょう。例えば、「同じタイミングで休憩する社員が多い場合、今の休憩設備は窮屈でないか」などについて確認してみましょう。
会社は、負傷した社員の応急手当に必要な救急用具を備えて、清潔に保たなければなりません(義務)。救急用具の品目については、以前は最低でも
の3つを用意することが義務付けられていたのですが、2022年4月1日からは具体的な品目が削除され、各社が想定される事故などに応じて必要な品目を準備することになりました。
ホワイトカラーの会社でも、はさみやカッターによるけが、階段での転倒などが起こり得るので、救急用具は必需品です。一概には言えませんが、包帯・ピンセット・消毒薬などの他、感染予防のためのマスク・ビニール手袋・手指洗浄薬などを用意しておく必要があるでしょう。
また、救急用具の保管場所や使用方法、応急手当後の対応ルール(医療機関への搬送など)については、あらかじめ社内で共有しておきましょう。
会社には、空調設備(エアコンや加湿器など)がある部屋の室温を、法令で定める基準に設定することが求められています(努力義務)。
2022年4月1日からは、室温に関する努力目標値が次のように変更されています。
オフィスに中央管理方式の空調設備がある会社は、原則2カ月以内に1回、次の項目に関する作業環境測定をし、その記録を3年間保存しなければなりません(義務)。
このうち、一酸化炭素・二酸化炭素の含有率の測定については、検知管方式と同等以上の性能がある場合、他の測定器の使用も認められています。2022年4月1日からは、具体的な測定器の例として次の2つが示されています。
なお、作業環境測定に必要な機器は、各都道府県の産業保健総合支援センターなどで貸し出している場合があります。また、自社で行うのが難しい場合は、「作業環境測定士」に依頼することもできます。
以上(2023年6月更新)
(監修 社会保険労務士 志賀碧)
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海外展開のための構想を練って現地調査が完了したら、いよいよ実現に向けて具体的に動き出す段階です。ここで必要な手順は、次の2つです。
海外展開の戦略を立てる上で欠かせないものの一つが、現地拠点の形態をどうするかです。
一般的に、現地拠点の形態は次のようなものが挙げられます。

国や地域、業種によっては、外資規制のため単独出資で現地法人を設立できないこともあります。基本的には、拠点の規模が大きく、自社の出資比率が高いほど、ハイリスク・ハイリターンになります。
海外で事業を行うためのリソースやノウハウを持っている現地企業とパートナーシップを築くことは、海外展開の成否に大きく影響します。
現地での取引相手となるパートナーを探す際は、自社が求める具体的な希望条件と、自社のアピールポイントをまとめておくことが必要です。
例えば自社商品の販売先を探すのであれば、具体的な希望条件として金額、数量、納期、輸送方法などを決めておきます。自社のアピールポイントとしては、製品の強み(品質、販売実績、報道・表彰歴など)をまとめ、バイヤー(購買担当者)に示すことで、実際の商談に結び付けられるようにします。
海外展開を支援する機関の中には、専用のウェブサイトを設けるなどして、海外展開のためのマッチングサービスを提供している場合があります。
例えば、日本貿易振興機構(以下「ジェトロ」)が運営する国際ビジネスマッチングサイト「e-Venue」は、100カ国以上のビジネスパーソンが利用しており、ビジネス案件の登録や、ビジネス案件の検索・閲覧・問い合せ(引き合い)などを行うことができます。海外のビジネス案件は日本語でも閲覧でき、コンタクト先とチャットでやり取りすることも可能です。e-Venueの登録や利用は無料です。
■ジェトロ国際ビジネスマッチングサイト「e-Venue」■
https://e-venue.jetro.go.jp/bizportal/s/?language=ja
民間企業でも国際ビジネスマッチングのサービスを提供している企業があります。例えば、世界的な電子商取引仲介業であるアリババグループは、190以上の国と地域のバイヤーが参加しているというマッチングサイト「Alibaba.com」を展開しています。
国内外で開催される国際的な展示会・展覧会・商談会に出展することで、国外のバイヤーと接触でき、具体的な取引へつなげることが可能になります。
自社で負担できる費用と、開拓したい市場(国・地域、販売チャネルなど)を勘案し、適切な展示会・展覧会・商談会に出展するようにしましょう。
ジェトロでは、ウェブサイト上で国際的な展示会・展覧会・商談会に関する情報を発信するとともに、要件を満たした事業者に対して出展に関する各種支援を行っています。また、国内外の展示会・商談会で、ジェトロが主催・参加するジャパンブースへの、個別企業・団体などの参加を支援します。一部の展示会の出展については、ジェトロから、出展にかかる各種手続きの支援と出展費用の一部補助を受けることができます。
■ジェトロ「展示会・商談会への出展支援」■
https://www.jetro.go.jp/services/tradefair/
この他、中小企業基盤整備機構では、海外の展示会に出展することをテーマに、必要な知識を集めた冊子「海外出展 海外展示会ハンドブック」を公開しています。
■中小企業基盤整備機構 海外ビジネスナビ「海外出展 海外展示会ハンドブック」■
https://biznavi.smrj.go.jp/handbook-overseas-exhibitions/
せっかく選んだ現地パートナーの経営が傾いてしまっては、元も子もありません。パートナー候補の信用情報は、ある程度のお金を掛けてでも押さえておきたい情報です。
海外企業の信用情報を入手するに当たっては、国内信用情報会社の海外企業調査サービスを活用する方法があります。例えば、東京商工リサーチでは、米国の企業情報サービス会社Dun&Bradstreet(D&B)社と提携し、同社がカバーする240カ国超、5億件超の「ダンレポート」を有料で提供しています。
■東京商工リサーチ「海外企業調査レポート(ダンレポート)」■
http://www.tsr-net.co.jp/service/detail/dun-report.html
現地法人を設立するなどの大規模な海外展開を行う場合、相応の資金を要します。また、海外展開は思わぬ出費が嵩む場合もあります。資金の手当ては万全にしておきましょう。
中小企業が海外の地域で事業開始・拡大・再編する際に必要な資金(海外企業に対する転貸資金を含む)の融資を受けられます。詳細は日本政策金融公庫の支店窓口で確認してください。
■日本政策金融公庫「海外展開・事業再編資金」■
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/kaigaitenkai.html
中堅・中小企業の海外投資や製品輸出などに必要な長期資金を、民間金融機関との協調融資などで支援しています。また、対外借り入れ規制や諸手続きなどへの助言も行っています。
■国際協力銀行「中堅・中小企業分野」■
https://www.jbic.go.jp/ja/business-areas/sectors/smes.html
都道府県の信用保証協会は、中小企業が海外展開に要する資金を金融機関から借り入れる際の債務の保証を行います。「海外投資関係保証制度」は、国内の金融機関から海外直接投資事業資金の融資を受ける際に利用できます。「特定信用状関連保証制度」は、海外子会社が現地金融機関から融資を受ける際に利用できます。
■全国信用保証協会連合会「海外展開をお考えの方」■
https://www.zenshinhoren.or.jp/model-case/kaigaitenkai/
商工中金は国内外全店舗に「中小企業海外展開サポートデスク」を設置し、海外進出に必要な海外投融資から貿易金融まで、個別相談によるサポートを行っています。
■商工中金「海外進出サポート」■
https://www.shokochukin.co.jp/corporation/service/support/
初めて海外展開を行う企業にとって障害となりかねない問題として、「ヒト」の問題が挙げられます。海外で存分に力を発揮できる人材の確保や育成は、実務面での大きな課題です。
単に語学力があるだけでは、海外展開の重責を担う資質として不十分です。現地の文化や習慣に敬意を払って順応し、多様性や現地の事情を認めながらも、大事なところでは折れずに自社の立場を主張できる「グローバル人材」の育成が求められます。
国際ビジネスに対応できる人材育成を総合的にサポートしており、貿易実務者養成講習会やグローバル人材育成講座などを開催しています。
■東京都中小企業振興公社−海外展開支援−■
https://www.tokyo-kosha.or.jp/TTC/
海外での経営の効率化や、現地スタッフおよび現地駐在日本人の育成を支援しています。具体的には、現地スタッフのマネジメント力向上などの課題の解決を支援しており、現地社員の意識調査や、マネージャー育成プラグラムなどを行います。
■日本生産性本部「コンサルティング・人材育成支援(海外進出企業支援)■
https://www.jpc-net.jp/consulting/mc/global/vietnam.html
海外事業を展開する上で必要となる人材の育成を支援しています。対象となる国・地域は経済協力開発機構(OECD)の開発援助委員会が定めるODA対象国・地域です。一般研修と管理研修の2つのコースがあります。
■海外産業人材育成協会(AOTS)「技術協力活用型・新興国市場開拓事業」■
https://www.aots.jp/hrd/technology-transfer/receiving/oda/
社内でグローバル人材を育成するのは容易ではありませんし、時間もかかります。社内で人材が育つまで、外部から経験者を中途採用するというのも現実的な方法です。
最近では海外に居住している日本人も多いので、現地の事情に精通している日本人の現地採用を検討してもよいでしょう。
海外展開を行うには、現地の法規制にしっかりと対応する必要があります。法規制への対応といっても、出資や土地取得などに関する法規制、知的財産権に関わる法規制、税制や会計制度など多岐にわたります。
それぞれ現地の事情に詳しい専門家のアドバイスを受けることが不可欠ですが、公的機関などが海外展開時の法規制への対応に関して、一部サービスを提供しています。
日本弁護士連合会では、ジェトロ、東京商工会議所、日本政策金融公庫、国際協力銀行、国際協力機構などを通じて依頼があった際に限り、弁護士の紹介サービスを行っています。
海外展開において、相手国側の企業・団体との契約書のチェックなどで法的知見を必要とする場合や、トラブルが発生した際のアドバイスをしてくれます。初回の相談は30分無料です。
■日本弁護士連合会「中小企業の国際業務支援事業(弁護士紹介)」■
https://www.nichibenren.or.jp/activity/resolution/support.html
日本企業の海外展開を法的な側面から支援するための調査研究の結果を掲載しています。調査対象の国は限られていますが、海外展開を検討している国であれば参考になります。
■法務省「日本企業及び邦人を法的側面から支援する方策等を検討するための調査研究」■
https://www.moj.go.jp/housei/shihouseido/housei10_00135.html
海外駐在経験などを持つ知財のスペシャリスト「海外知的財産プロデューサー」が、海外ビジネスにおける知的財産のリスク管理に関してアドバイスします。また、ビジネス展開に応じた知的財産の権利化や、取得した権利を利益に結びつけるための活用方法を提案します。相談は無料で、全国どこにでも訪問します。
また、海外での知財リスクに対応するために、新興国などの知財実務情報を「新興国等知財情報データバンク」で提供しています。
■工業所有権情報・研修館「海外展開知財支援窓口」■
https://faq.inpit.go.jp/gippd/service/
■工業所有権情報・研修館「新興国等知財情報データバンク」■
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/
以上(2023年6月更新)
pj80100
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