リゾート施設の開業ラッシュで賑わう淡路島 地元の「食」のPRで企業を呼び込む

書いてあること

  • 主な読者:飲食・宿泊業など観光事業者、地域の集客力を高めて利益につなげたい事業者
  • 課題:地域内に集客できるような資源が見当たらない
  • 解決策:地元の食材の魅力を発掘・PRし続けることで、観光客だけでなく島外の企業にも評価され、一大リゾート地へと急変貌を遂げている淡路島の事例を参考にする

1 過疎化の進む「普通の島」、一大リゾート地に急変貌中!

コロナ禍が一服して旅行熱が高まっている中で、ひときわ注目を集めているのが、兵庫県の淡路島です。東京23区とほぼ同じ広さに約12万5000人(2022年)が住む島が、

ここ数年、島北部の西海岸を中心に、レストランやホテル、体験型施設などのオープンが相次ぎ、一大リゾート地へと急変貌を遂げている

のです。

さらに、人材派遣サービスのパソナグループ(以下「パソナ」)が

2024年5月末まで段階的に本社機能を一部移転し、約1200人の社員が移り住む

ことを公表しています。2025年に開催を控えた大阪・関西万博での波及効果も期待されており、リゾート地・淡路島は当面、追い風が続くとみられます。

にわかに活気づいている淡路島ですが、人口の推移で見ると、多くの地方圏と同様に過疎化が進む「普通の島」といえます。2020年までの10年間で、総人口の1割以上に当たる約1万6000人が減少しており、2035年には約9万7000人、2065年には約4万8000人まで減少すると推計されています(兵庫県が2019年に公表した将来人口推計)。

この記事では、淡路島が人口減少という地方圏に共通した問題を抱えながら、一大リゾート地へと変貌を遂げつつあり、大手企業に本社機能を移転させたいと思わせる魅力的な島になった経緯について、淡路島観光協会へのヒアリングを交えて紹介します。観光事業者の方だけでなく、地域の集客力を高めて自社の利益につなげたいと考えている事業者の方は、参考にしてください。

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2 ご当地B級グルメで淡路島の豊富な食材を個人客にPR

1)阪神地区からの好アクセスと豊富な農水産物が特徴の「最初」の島

淡路島は、兵庫県淡路市、洲本市、南あわじ市の3市で構成される、約596平方キロメートルの瀬戸内海最大の島です。神戸市と明石海峡大橋で、徳島県鳴門市と大鳴門橋でそれぞれ結ばれており、阪神地区からの日帰り旅行も可能な距離に立地しています。

日本の歴史書「古事記」や「日本書紀」の冒頭にある「国生み神話」には、イザナギとイザナミの夫婦神によって日本が創られた際の最初の島と記されています。また、海産物などの農水産物が豊富に取れることから、古来より朝廷や天皇家に食物を献じる「御食国(みけつくに)」とされていました。

2)時代の変化に合わせた、団体客から個人客への転換

淡路島は観光業への依存度が高く、兵庫県によると、2019年度の観光GDPは約696億円で、島全体のGDP(約4471億円)の15.6%を占めています。

戦後から2000年ごろまでの淡路島は、洲本の温泉や、会席料理などに提供されるハモやサワラといった高級魚など一級品の食材を売りに、京阪神地区などからの「社員旅行」の団体客が中心に訪れていました。ところが1990年代をピークに、社員旅行は減少していきます。地域によっては、社員旅行の減少とともに衰退していった観光地もありますが、淡路島はいち早く家族連れなど個人客の取り込みに軸足を移します。

大きな要因は、1998年4月に明石海峡大橋が開通し、阪神地区からの自動車によるアクセスが容易になったことでした。とはいえ、個人客は、島の魅力がうまく伝わり、共感されなければ関心を持ってくれませんし、足を運んでくれません。淡路島観光協会(以下「観光協会」)などによるPR活動なしには、個人客の取り込みには結びつかなかったといえるでしょう。

3)30代女性をターゲットにする

淡路島が個人客の取り込みを加速させるきっかけになったのは、15年ほど前に行ったアンケート調査だったといいます。観光協会事務局長の福浦泰穂さんは、「意外なことに、淡路島に最も関心が高かったのは、30代女性だということが分かりました。今でこそ、観光地のマーケティング戦略として女性をターゲットにするのは当たり前になっていますが、アンケートを行った当時、そのような発想はありませんでした。アンケートの結果を受けて、女性の取り込みを考えるようになった」そうです。

観光協会はまず、観光PR用のパンフレットやウェブサイトを、30代女性を意識したデザインや内容に変更しました。「制作当初は、『軽すぎる』『変わっている』といった評価もありましたが、次第に観光客の客層にマッチしていった」(福浦さん)といいます。

最近では、四方を海に囲まれた島という立地を活かして、「SNS映え」スポットとして、夕日や朝日が見えるロケーションの魅力もアピールしているそうです。

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4)ご当地B級グルメの考案で淡路島の豊富な「食」をPR

観光協会が個人客を呼び込むために目を付けたのが、当時、町おこしのために活用され始めていた「ご当地B級グルメ」でした。体験型旅行の中でも比較的、手軽かつ安価に楽しめる「食」を切り口にして、日帰り客の取り込みを狙ったものです。元々、淡路島には海産物の他にも玉ねぎ、牛乳、果物など多彩な農畜産物が生産されており、観光資源としての「潜在能力」があったことに加えて、古来より「御食国」だったというストーリー性をPRに活かせるメリットもありました。

ご当地B級グルメとして2008年に初めて考案したのが、「淡路島牛丼」でした。淡路島の統一ブランドではありますが、レシピは各飲食店の裁量に任せ、さまざまなバリエーションの商品で観光客の食べ歩きを促すことにしました。その一方で、ブランドの使用には、食材に淡路島産の牛肉、玉ねぎ、コメを使うことを条件としました。「淡路島牛丼のPRに加えて、淡路島が年間を通じて地元の食が楽しめることをPRすることも目的だった」(福浦さん)ためです。

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淡路島牛丼は成功を収めましたが、観光協会は一過性のブームで終わらせませんでした。「淡路島の名産品として認知度の高い食材の裾野を広げる」(福浦さん)ために、「淡路島の生シラス丼」「淡路島の生サワラ丼」「淡路島ぬーどる」「島スイーツ」「淡路島バーガー」「島サラダ」など、次々にご当地B級グルメを考案、PRしていったのです。

一方、高級魚についても、夏が旬であるハモだけでなく、春のサクラマス、冬の「3年トラフグ」などもPRして、淡路島には年間を通じて旬の食材があることを発信していきました。

こうしたPR戦略が奏功し、コロナ禍前まで、淡路島の観光客数は上昇傾向を続けました。

5)京阪神地区からの日帰り客が観光消費を支える

福浦さんによると、現在の淡路島の観光客は、日帰り客が9割で、8割ほどが京阪神地区からという特徴があります。首都圏からは1割に満たず、海外からの観光客は3%程度しかいません。日帰り客のほとんどがマイカーやレンタカーなどで来ており、密になりにくいということで、コロナ禍の影響は比較的軽微で済み、コロナ禍からの回復も順調に進んでいます。

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3 豊富な食材のPRは、島外の企業にも効果を発揮

1)島外から高まる注目度

地元で取れる農水産物の食材の豊かさをPRする観光協会の戦略は、観光客だけでなく、ビジネスチャンスを窺っていた島外の企業にも効果を発揮しました。

人材派遣サービスを行うパソナグループは、2008年9月に淡路島で農業ベンチャー支援制度「チャレンジファーム」を開始したのをきっかけに、2017年から商業施設やアトラクション施設を相次ぎオープンさせています。同社はリゾート地としての開発にとどまらず、淡路島を「美食の島」「文化芸術の島」「健康の島」として「世界で最も先進的で豊かな生き方・働き方ができる場所にする」ことを目指し、2020年9月には本社機能を一部移転させる計画を公表しました。さらに同社は、建設費約130億円をかけて2025年5月にリゾートホテルを開業することを公表しています。

また、飲食店の開発運営などを行うバルニバービは、「食から始まる日本創再生」という成長戦略の中で、淡路島の潜在的な魅力に着目し、「Frogs FARM ATMOSPHERE」と名付けたエリア開発プロジェクトを進めています。

両社とも、淡路島の「食」の魅力を評価したことで、施設の開業を続けているといえます。

2)「観光で淡路島を支える」ための新たな「国生み」の始まり

リゾート地として発展を続ける淡路島ですが、観光協会の福浦さんは、「人口減の中で、観光で淡路島を支えていくためには、もっと観光客の単価を上げ、観光客数を増やす必要がある」と話します。そのために、観光資源の高付加価値化と、外国人観光客や首都圏からの観光客を呼び込むことを課題に挙げます。

その上で福浦さんは、「淡路島の人たちはこれまでも、島外のものを迎え入れるために1つになってきており、伝統を守りながらも新しいものを受け入れる寛容性がある。国創りの精神で、淡路島の人たちと、これからの島の将来を切り開いていきたい」と話しています。

以上(2023年10月作成)

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画像:淡路島観光協会

【朝礼】桃栗3年柿8年。社員の成長50年

おはようございます。今朝は管理職の皆さんに、「じっくりと腰を据えた人材育成」についてお話しします。

まず、四国のお遍路めぐりをしている際に訪ねたお寺で見つけた言葉を紹介します。

早く歩くか ゆっくり歩くか

なん日で廻(まわ)るか なん回廻るか

そんな事よりしっかり歩け

そして

何かをのこせ

いかがですか。何か感じることはないでしょうか?

スピードが重視される昨今、当社も業務効率化を経営目標に掲げ、とにかく早く仕事を終わらせることや、手数を減らすことに注力しています。しかり、そればかりにとらわれてしまうと、肝心な人材育成が疎かになります。

今から10年前、新入社員には「3カ月で仕事に慣れ、半年で一人前になるように」と叱咤(しった)したものでした。ただし、これは本音ではありません。実際は1年かけてでも3年かけてでもじっくりと教育していく覚悟を決めていたものです。その間、上司と部下は文字通りの師弟関係となり、次々と課題に直面しては、泥臭く解決していきました。遠回りすることも度々ですが、そうした中で、部下は「働く喜びや意義」「当社が目指す理想の姿」「お客様と真摯に向き合う大切さ」を学びます。

そして、社内外の先輩の姿を見ながら、「自分はどんな風に成長したいのか」「何を成し遂げたいのか」をじっくりと考え、温め、実行していったのです。この、いわば「熟成期間」を若手のうちに、どれだけ早く、深く経験できるかが、その後の成長に大きく関係すると私は考えます。

最近は便利なツールが数多く登場し、これまで10の手順が必要だった仕事は、5の手順で終わるようになりました。それを使いこなす若手を見ると、「仕事が早い!」ということになるのですが、これが仕事の全てではないのです。

私は、「昔は良かった」と懐かしんでいるわけではありません。新しいものは積極的に取り入れますし、教育方法も時代に合わせて見直します。ただし、社員の成長はこれだけで測れるものではありません。すぐに実を結ぶものではありませんが、「働く喜びや意義」などをじっくりと考える時間を持たせることが、長期的には大切になるのです。

「桃栗3年柿8年」ということわざがありますが、私はここに一節を付け加えます。

桃栗3年柿8年。社員の成長50年

今は70歳まで働く時代です。20歳で働き始めてから70歳になるまでの50年間、日々、成長し続けなければなりません。これだけ長い時間をやり抜くには、土台の部分がしっかりしていないといけません。その土台を、じっくりと育てていくことが今どきの管理職の仕事です。

以上(2023年10月)

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画像:Mariko Mitsuda

現役の経営者が最も尊敬する“伝説の経営者”たちが残した名言集~経営者190人アンケート

書いてあること

  • 主な読者:ビジネスで判断の難しい問題などに直面している経営者
  • 課題:自分の判断を信じたいが、いまひとつ自信が持てない。誰かに背中を押してほしい
  • 解決策:現役の経営者たちから尊敬を集めている“伝説の経営者”の名言に触れる

1 経営者の心に響く “伝説の経営者”の名言

経営者はビジネスのあらゆる局面で、難しい判断を迫られます。判断の責任を一身に背負わなければならず、常に孤独。そんな経営者を支えてくれるのは、同じ苦しみを知っている経営者の言葉です。例えば、パナソニックホールディングス(旧松下電器産業)創業者の松下幸之助氏、本田技研工業創業者の本田宗一郎氏など、もはや“伝説”ともいうべき経営者の名言は、困ったり悩んだりしている今の経営者に勇気を与えてくれます。

実際、190人の経営者に対し「尊敬する経営者の名言」に関するアンケートを実施したところ、

121人に尊敬する経営者がいて、59人にその経営者の名言で印象に残っているものがある

ことが分かりました(アンケートは2023年7月実施)。

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さらに、このアンケートでは、印象に残っている名言が「ある」と回答した59人の経営者に、具体的にどのような名言が印象に残っているのかを質問しました(自由回答)。その結果、名言のタイプは大きく次のように分けられることが分かりました。以降で詳しく見ていきましょう。

  • 失敗に対して前向きになれる名言
  • ストイックになれる名言
  • 決断を後押ししてくれる名言

2 失敗に対して前向きになれる名言:松下幸之助氏など

経営に失敗はつきものであり、それをどう受け止めるかが大切です。数々の失敗を糧に成功をおさめ、“伝説の経営者”となった松下氏や本田氏が、失敗に関する数多くの名言を残しています。「前向きになれる名言なので心に残っている」と回答する経営者もいました。

1.失敗を恐れて毎回「前例踏襲」に陥ってしまう人へ

「とにかく考えてみること、くふうしてみること、そしてやってみること。失敗すればやりなおせばいい」(松下幸之助*1)

松下氏は、「同じことを同じままに繰り返すだけでは、何の進歩もない」として、上の名言を残しています。「自分もものづくりに携わってきたから(この名言が印象に残っている)」と回答した経営者(60代男性)もいました。

2.一度失敗するとそこで立ち止まってしまう人へ

「成功するまで続けたならば失敗というものはない。成功あるのみである」(松下幸之助*2)

松下氏は「失敗したところでやめてしまうから失敗になる」として、上の名言を残しています。松下氏の失敗に関する名言は他にもあり、「自分の現状と重なって、これから頑張るモチベーションになった」と回答した経営者(40代男性)もいました。

3.部下の失敗につい声を荒げてしまう人へ

「成功は九九パーセントの失敗に支えられた一パーセントである」(本田宗一郎*3)

国内自動車メーカーとして後発だったホンダを先行企業と肩を並べるブランドに成長させた本田氏の名言です。「実際に本人から聞いたから(印象に残っている)」と回答した経営者(70代男性)もいました。

なお、本田氏は上の名言を述べる際、「現役時代、部下の失敗に腹が立ち、本気で怒鳴りつけるなどして、後で自己嫌悪に陥っていた時期もあった」と述懐しています。この名言には、本田氏が「失敗を受け止められる人間になれ」と自分自身に言い聞かせる意味もあったのかもしれません。

4.失敗続きで「もう成功しないんじゃないか」と思っている人へ

「色々の失敗が、将来のびる為めには良い体験であった」(豊田喜一郎*4)

国内自動車メーカーの先行企業として、国産自動車の開発に腐心したトヨタ自動車創業者の豊田氏の名言です。この他にも失敗に関する名言を残していて、「失敗が多いが、創意工夫によって成功すると信じているから(印象に残っている)」と回答した経営者(50代男性)もいました。

5.失敗続きの自分を責めてしまう人へ

「最初にあったのは夢と根拠のない自信だけ」(孫正義*5)

ソフトバンクグループを一代で築いた孫氏は、10代後半のころを振り返って、上の言葉を残しています。「開業にあたり、(心に)響いた」と回答した経営者(50代男性)もいました。

3 ストイックになれる名言:稲盛和夫氏

京セラ(旧京都セラミック)やKDDI(旧第二電電)を創業し、日本航空の再建にも尽力した稲盛和夫氏。ストイックな名言が多く、「生き方の指針となる」と回答した経営者も少なくありませんでした。

1.結果が出ないなどで、努力する意味が分からなくなっている人へ

「人生における労苦とは、己の人間性を鍛えるための絶好のチャンスなのです」(稲盛和夫*6)

稲盛氏は、「生きていくということは、苦しいことのほうが多い。それでも日々成長しようとたゆまず努力することに人間の生きる目的や価値がある」として、上の名言を残しています。「労苦があるということは、自分が前に進んでいると捉えている」と回答した経営者(60代男性)もいました。

2.仕事が嫌になり、投げ出したいと思っている人へ

「与えられた仕事を天職と思い、それに全身全霊を傾けることです」(稲盛和夫*7)

稲盛氏は、「1つのことを究めることによって初めて真理やものごとの本質を体得することができる」として、上の名言を残しています。「一生懸命に取り組むことに共感を得ました」と回答した経営者(60代男性)もいました。

3.努力を惜しんで、つい近道をしたがってしまう人へ

「人生や仕事の結果は、考え方と熱意と能力の3つの要素の掛け算で決まります」(稲盛和夫*8)

稲盛氏は、「能力を鼻にかけ努力を怠った人よりは、自分には普通の能力しかないと思って誰よりも努力した人の方が、はるかにすばらしい結果を残すことができる」として、上の名言を残しています。「うまくいってないときに、何が足りなかったかを考えるきっかけになる」と回答した経営者(70代男性)もいました。

4 決断を後押ししてくれる名言:スティーブ・ジョブズ氏

Appleの共同創業者で、Pixar Animation Studiosの創業者でもあるスティーブ・ジョブズ氏は、創業したAppleの仲間たちから一度は追放されながらも、傾きかけた同社に復帰。強力なリーダーシップを発揮して立て直しに成功し、世界的な企業に成長させました。

1.今、考えていることを実行すべきか否か迷っている人へ

「If today were the last day of my life, would I want to do what I am about to do today?(もし今日が人生最後の日だとしたら、今日やろうとしていることをやりたいと思うだろうか?)」(スティーブ・ジョブズ*9)

ジョブズ氏が米スタンフォード大学の卒業式で、卒業生たちに送ったメッセージです。「分かりやすく、実践しやすいと思った(から印象に残っている)」と回答した経営者(50代男性)もいました。

2.「自分の決断は間違っているんじゃないか?」と足を止めてしまう人へ

「Stay Hungry. Stay Foolish.(ハングリーであれ、愚か者であれ)」(スティーブ・ジョブズ*10)

同じく、米スタンフォード大学の卒業式でのスピーチで、ジョブズ氏が残した名言です。「常識にとらわれず、前進し続ける感じがジョブズ氏の生き方を表現していると思う」と回答した経営者(40代男性)や、「説得力があります」と回答した経営者(60代男性)もいました。

5 他にこんな名言も:盛田昭夫氏など

この他、現役の経営者の印象に残っている名言には、次のようなものがありました。

1.チャレンジする会社をつくりたい人へ

「出るクイを求む」(盛田昭夫*11)

井深大氏と共にソニーの共同創業者として、「ウォークマン」などを世に送り出した盛田氏の名言として有名です。盛田氏は、社員がおとなしいだけのイエスマンにならず、自分で活躍できる場所を見つけ出すことを重視しており、他にもこうした趣旨の名言を残しています。「個性の重視、オリジナリティーの確立(が重要と感じているので印象に残っている)」と回答した経営者(70代男性)もいました。

2.一つ一つの仕事を丁寧にやる会社をつくりたい人へ

「凡事徹底」(樋口武男*12)

約20年間にわたって大和ハウス工業のトップを務め、同社の「中興の祖」とも呼ばれた樋口武男氏の名言です。樋口氏は現役時代、赤字のある支店を立て直すに当たり、「電話のベルは1コールで取り、元気な声で挨拶して担当者に回す」ということを社員に徹底させました。基本的なこと(凡事)ですが、これが社外の評判を上げることにつながったそうです。「いつも継続して仕事をこなすことによって成果が上がる(ことを示すので印象に残っている)」という経営者(70代男性)もいました。

【参考文献】
(*1)「道をひらく」(松下幸之助、PHP研究所、1968年5月)
(*2)「松下幸之助日々のことば : 生きる知恵・仕事のヒント」(松下幸之助、PHP研究所、1988年6月)
(*3)「やりたいことをやれ」(本田宗一郎、PHP研究所、2005年9月)
(*4)「豊田喜一郎文書集成」(和田一夫編、名古屋大学出版会、1999年4月)
(*5)「孫正義語録 孫氏の兵法」(孫氏の兵法製作委員会、ぴあ、2007年2月)
(*6)「『成功』と『失敗』の法則」(稲盛和夫、致知出版社、2008年9月)
(*7)京セラ「稲盛和夫 OFFICIAL SITE ものごとの本質を究める」
(*8)京セラ「稲盛和夫OFFICIAL SITE 人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力」
(*9)Stanford University「Stanford News, JUNE 12, 2005」
(*10)Stanford University「Stanford News, JUNE 12, 2005」
(*11)「盛田昭夫語録」(盛田昭夫研究会編、小学館、1999年3月)
(*12)「凡事を極める」(樋口武男、日本経済新聞出版社、2013年3月)

以上(2023年10月)

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画像:metamorworks-Adobe Stock

【経理人材の育成(6)】メンバーのモチベーションを上げ、成果を出すための業務分担と評価

書いてあること

  • 主な読者:経理人材の育成や、経理部全体の効率化に悩む中小企業のマネジメント職
  • 課題:業務分担とその評価は、メンバーのモチベーションに直結する。うまく分担できていない場合には、最悪退職してしまうケースもある
  • 解決策:数多くの勘定科目の経験を早回しで経験してもらうよう業務分担を行い、目標設定の段階で期待値を伝えるなどコミュニケーションを密にとった上で評価を伝える

1 モチベーションや成果に影響を与える業務分担と評価

今回は、

業務分担の決め方や評価の方法

についてお話しします。管理職の皆さんから、「業務分担は一度決めてしまうと、なかなか変えるのが難しい」という声をお聞きします。しかし、担当している本人にとっては、何年も同じ業務を続けていると飽きてしまいます。最悪、成長機会の少ないことを理由に転職してしまうケースも見られます。

評価についても、評価の仕方や、伝え方に苦労している方もいるのではないでしょうか。私自身も経験がありますが、評価結果が本人の期待よりも悪い場合には、なかなか納得してもらうのは難しいものです。

では、どのようにメンバーのモチベーションや成果に良い影響を与えられる業務分担と評価をしていけばいいのか見ていきましょう。

2 分担は勘定科目と業務量をベースに考える

経理業務の分担を決める際にまず注目すべきは、

その業務に関連する勘定科目

です。経理業務の最終成果物は決算書なので、ほぼすべての業務は、決算書の中のいずれかの勘定科目にひも付きます。メンバーが業務で成果をあげられるよう、なるべく幅広い経験を積んでもらうためには、色々な勘定科目に関連する業務を経験させることが必要です。とくに、ITツールの導入により手作業が減ってきている中で、従来のように「売掛金一筋ウン十年」といったキャリアは現実的ではありません。これまで以上に経理パーソンは決算書全体を理解する必要が高まっているのです。そのためにも、メンバー自身にとって、数多くの勘定科目の経験を早回しで経験することが重要です。

勘定科目によって業務の難しさは異なります。

  • 現金預金や固定資産などの勘定科目は、実際にかたちがあるものは確認しやすく、比較的経験が浅いメンバーでも習得しやすいでしょう
  • 売上・売掛金や仕入・買掛金など営業周りの勘定科目は、会計システムの使い方など一通りの経理の流れを理解した経理メンバーにおすすめです。営業部門など他部門とのやり取りが頻発しますし、自社事業の知識も必要になるためです
  • 税金や引当金といった高度な会計知識を必要とする勘定科目は、税法や会計基準をしっかり理解する必要があるため、経理経験をある程度積んでから担うのがいいでしょう

なお、インボイス制度の導入や収益認識会計基準など時事的に必要になる取り組みも、経理経験の高い人が担当することが多いようです。このように、

勘定科目の固有の性質に加え、各社のシステムや関係者などの状況を踏まえ、総合的な難易度を、業務ごとに一度整理しておく

といいでしょう。体系化された自社オリジナルの「業務分担表」は、「メンバー育成計画表」としても活用でき、効果的です。

このように、勘定科目の難易度や経験の有無をもとに分担を決めるのは、理想的な決め方です。しかし、現実には、業務量への配慮も不可欠です。例えば、売上・売掛金や仕入・買掛金、経費・未払金などは、件数も多く、業務量が多くなりがちです。実際にどのくらいの頻度・業務量があるのかを踏まえて、最終的な分担を決めることが必要です。ただし、これらの業務は色々なITツールの進化がもっとも多い分野でもありますので、

従来のやり方を前提にした業務量にとらわれない

ようにしましょう。「業務量が多すぎて分担の見直しが難しい」と感じた場合には、それは、業務の進め方自体を見直す必要があるシグナルかもしれません。

分担を変えるのは、個人のモチベーションのためだけではありません。担当者の不在や退職が急遽発生したとしても、経理業務を止めないためには、どの業務も2人以上が実施できる必要があります。会社のリスクマネジメントの観点からも、管理職は分担を見直し、ジョブローテーションを行う必要があるのです。

3 分担した業務の意義や成果は、何度でも口に出して伝える

決めた分担について伝える場合には、その伝え方も重要です。

例えば、売掛金の回収確認や督促は、煩雑かつ精神的な負担もあり、メンバーにとってはあまり気が進まない業務です。しかし、その重要性について疑問をはさむ人はいないでしょう。

では、その重要性について担当者に直接口頭で伝えていますか。煩雑な業務や気が重い業務ほど、会社にとっての重要性を、担当することになったときはもちろん、その後も継続的に伝えていくべきです。そうすることで、本人も業務の位置づけをより理解し、多少なりともモチベーションを上げることができます。また、業務への取組みの結果、〇〇円回収が進んだといった成果を定量的に示すのも成果が感じやすく、おすすめです。

皆さんが思っている以上に、管理職は、業務の重要性や結果を口に出して伝えることが大事です。本人にとっては日常のルーティンになってしまいがちですし、視座の高さの違いから意味を本当に理解してもらうことは難しいように感じます。

4 モチベーションを上げる業務分担の決め方

会社側から見た好ましい業務分担の決め方は、メンバー目線で分担を見ることです。

「キャリアの3要素」という考え方があります。

  1. 本人の得意分野や経験(Can)
  2. 本人の希望(Will)
  3. 会社としての必要性(Must)

この3つがかなう業務を経験することがキャリアにとってもっとも望ましいといわれています。つまり、先ほど紹介した考え方は、会社のMustの話でしたが、個人のCanやWillも合わせて考慮して決めるのがキャリア上望ましいのです。

もちろん、会社の事情もありますから、すべての特性や希望をかなえることはできません。例えば、いくら本人がある業務を希望したとしても、他にも希望している人がいたり、本人の能力に対して難易度が高かったりする場合もあるでしょう。

そこで、まずはなるべく本人の希望や特性を幅広く把握することが大事です。その上で、本人の希望の3割は1年以内の期間で叶えることを目指します。そして、別の3割については2~3年以内に叶えられるように、スキル習得とジョブローテーションの予定をたてます。

つまり、すべてをすぐに対応するのではなく、短期と中期に分けて、できることからかなえられるようにしましょう。自分の考えや希望がかなうことで、本人のモチベーションが上がり、成果も出やすくなります。

5 評価の成否は、事前の目標設定で決まる

業務分担の内容に基づいて、年度末に各人の評価を行う会社も多いでしょう。この際に、気を付けていただきたいのは、

  1. 目標はあらかじめ決まっているか
  2. 本人はきちんと理解しているのか

の2点です。

分担を決めただけでは、この業務をどのように頑張ったらいいのかが不明確です。分担というのは、何をやるか(What)という話にすぎず、それだけではまだ良し悪しの評価をすることはできません。目標として、どのくらいの時間数をかけるのか、あるいはいつまでにやるかの期限、ミスをどのくらい減らすかという正確さなど、どのくらいやるか(How Much)というモノサシを明確にしてはじめて、良し悪しが判定できるのです。

このように、分担を決めることと、目標を決めることは別ですので、評価が必要な場合には、必ず目標を決めるようにしてください。もし皆さんの部門全体の目標がある場合には、それを細分化して設定するのがベストです。このように部門全体と個人の目標を整合させることで、個人の目標が達成されれば、結果として組織目標も達成する仕組みができあがります。

6 評価面談の場ではじめて評価を伝えるのはNG

評価面談の場でメンバーともめるケースがしばしば見かけられます。もめずに評価を伝えるための最大のポイントは、「No Surprise」=びっくりさせないことです。なぜもめるかといえば、本人の予想と評価が異なることがほとんどです。もちろん、ときに評価の内容が良くないことが原因になることもありますが、それでも事前に把握できていれば、納得するかどうかは別ですが、大きくもめることは少ないはずです。

びっくりさせないためには、

まず目標設定の段階で期待値を正しく伝えておくこと

が必要です。先ほどの目標の話でもお伝えしたとおり、何をどの程度期待しているかを、具体的に事前に伝えておきましょう。

また、達成状況について途中経過を共有することも大事です。もし月次で面談などを行っているのであれば、その場を活用してもいいでしょう。多くの会社では、年度の真ん中で半期の評価面談を行うようです。これも、年度末での食い違いを防ぎ、達成に向けて調整するための取り組みといえます。このような場を使って、少なくとも1回、できたら軽く触れる程度でもいいので年に2~3回、途中経過としての皆さんの見解を伝えておくといいでしょう。

そして、3つ目は、途中経過や最終評価の面談の場で、本人のコメントに十分に耳を傾けることです。メンバー本人にも、設定された目標に対して思うところなどがあるはずです。まずはそれをきちんと聞いた上で、管理職の皆さんの見解を伝えるようにします。このとき、皆さんが評価の拠り所とした事実やエピソードも用意しておくと説得力が増します。

つまり、評価面談の場ではじめて、一方的に評価を伝えるのはNGということです。管理職をやっていると、分担や評価は気が重いイベントかもしれません。しかしながら、どちらも会社にとって重要で成果に大きく影響するものであり、かつメンバー個人のキャリアにとってもあたえる影響は大きいものです。ぜひ今後分担や評価を行う際の参考になれば幸いです。

以上(2023年10月作成)

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画像:Kittiphan-Adobe Stock

ビジネスケアラーに対する支援

高齢化や生産年齢人口(15歳~64歳)の減少が続く中で、ビジネスケアラー(仕事をしながら家族等の介護に従事する者)の数は増加傾向にあり、介護に起因した労働総量や生産性の減少が懸念されております。

介護と仕事の両立実現に向けては、職場・上司の理解が不足していることや、両立体制構築に当たっての初動支援が手薄いこと、介護保険サービス単体ではカバー範囲が限定的であること等が課題として挙がり、従業員個人のみでは十分な対応が困難な状況です。

本稿では、日本でのビジネスケアラーの人数推移を解説するとともに、企業が行える仕事と介護の両立支援について、ご紹介してまいります。

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ビジネスケアラーに対する支援

高齢化や生産年齢人口(15歳~64歳)の減少が続く中で、ビジネスケアラー(仕事をしながら家族等の介護に従事する者)の数は増加傾向にあり、介護に起因した労働総量や生産性の減少が懸念されております。

介護と仕事の両立実現に向けては、職場・上司の理解が不足していることや、両立体制構築に当たっての初動支援が手薄いこと、介護保険サービス単体ではカバー範囲が限定的であること等が課題として挙がり、従業員個人のみでは十分な対応が困難な状況です。

本稿では、日本でのビジネスケアラーの人数推移を解説するとともに、企業が行える仕事と介護の両立支援について、ご紹介してまいります。

1 ビジネスケアラーなどの推移

2030年には家族介護者833万人に対して、その約4割(約318万人)がビジネスケアラーになるとされています。また、ビジネスケアラー発生の労働生産性損失や離職に伴う経済損失額は、約9兆円に上ると推計されています。

家族介護者・ビジネスケアラー・介護離職者の人数の推移

(経済産業省「家族介護者・ビジネスケアラー・介護離職者の人数の推移」)

政府は2016年に「介護離職者数ゼロ」を掲げ、「介護離職の防止」に対する取り組みが進められてきました。しかしながら、2020年時点でビジネスケアラーは介護離職者に対して37倍超の人数がおり、深刻な問題となっていることが見て取れます。

2 仕事と介護の両立支援

2017年の法改正で、介護休業制度の見直しなどが行われ、介護離職者数は大きく増加することなく推移しています。一方で、在職しているがゆえ問題が見えづらいビジネスケアラーに対し、フォローが行き届いていない状況が生まれているのではないでしょうか。

企業としては、従業員にヒアリングなどを行いながら、以下のような法定の介護支援策の推奨や、必要に応じて法定外の支援策を検討すること、職場内での理解と助け合いを促していくことが肝要です。

《育児介護休業法に基づく介護支援》

介護休業

対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限として分割で休業を取得できる。

介護休暇

介護や世話をするために、年5日(対象家族が2人以上の場合は、年10日)まで、1日または時間単位で休暇を取得できる。

所定外労働の制限
(残業免除)

介護をするために申請した場合、所定外労働を免除しなければならない。

時間外労働の制限

介護をするために申請した場合、1か月について24時間、1年について150時間を超える時間外労働をさせてはいけない。

深夜業の制限

介護をするために申請した場合、深夜に働かせてはいけない。

短時間勤務等の措置

短時間勤務制度、フレックスタイム制度、時差出勤の制度、介護費用の助成などの措置を講じる

3 さいごに

前述の通り、今後ますますビジネスケアラーが増加することが想定されており、看過しては生産性の低下、ひいては介護離職に至る可能性もあります。これは企業にとっても労働者にとっても不幸でしかありません。

高齢化が進展するこれからの時代を見据え、皆が介護を行う当事者になり得るという可能性について認識を共有しながら、ビジネスケアラー対策への準備を進めてみてはいかがでしょうか。

※本内容は2023年9月11日時点での内容です

(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)

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【債権回収】担保権の実行など訴訟ではない方法で債権を回収する

書いてあること

  • 主な読者:訴訟ではない方法による債権回収を検討している経営者
  • 課題:「担保権の実行」「仮差押え・仮処分」「保証人からの回収」で迷っている
  • 解決策:コストや時間はかからないが、事前に契約が必要であることなどに注意

1 訴訟によらない債権回収

債権回収の1つの分かれ目は法的手段を取るか否かですが、この判断をする際は、

スピード回収、コスト、回収可能性

の3つを考慮してください。訴訟には時間とコストがかかりますが、通常、時間がたつほど債権回収は難しくなります。また、取引先に資産がなければ、コストをかけたわりに多くを回収できません。

このような場合は、訴訟によらない債権回収を検討することになります。具体的には、担保権の実行、仮差押えや仮処分のような民事保全などとなります。それぞれのメリットとデメリットを確認していきましょう。

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2 担保権の実行の概要

担保権とは、

債権者が債務者に対して有する債権を担保するために、債務者または第三者の財産に対して、その財産から強制的に弁済を受けることができる権利

です。取引先が約束通りに支払わない場合、契約で担保権の設定を受けているときは、それを実行して債権回収をします。メリットは次の通りです。

  • 確定判決などの「債務名義」が不要である
  • 強制執行に比べて迅速かつ低コストで行うことができる
  • 倒産手続においても優先されるものがある
  • 法律上当然に発生するものがある

担保権には、契約締結によって成立する担保権(約定担保権)だけではなく、法律上当然に発生する担保権(法定担保権)があります。そのため、契約で担保権を設定していなくても成立している可能性があります。

また、担保権の実行には債務名義が不要です。債務名義とは、簡単に言うと、

強制執行をする根拠となる文書であり、債権債務の存在を公に認めるもの

です。そのため、訴訟や支払督促などの手続を経ることなく、低コストかつスピーディーに債権回収を行うことができます。

ただし、約定担保権を実行するには、事前に取引先と契約を交わしておく必要があります。また、法定担保権については、知らないと見逃してしまう恐れがあるため、日ごろの債権管理で確認しなければなりません。

3 担保権の実行の流れ

1)抵当権・根抵当権を実行

不動産は財産の中でも安定性があり、登記制度による対抗力があるため、担保としてよく用いられています。不動産に設定されるのは、抵当権(根抵当権を含む)が多いです。取引先が支払いを遅延した場合、債権者は抵当権を実行して不動産を競売にかけ、その売却代金を債権に充当することができます。これを、担保不動産競売といいます。主な流れは次の通りです。

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競売手続は順調に進んだとしても、申立てから配当までに半年以上かかります。また、物件にもよりますが、競売手続で売却される金額は市場価格の7?8割程度になることが多いとされています。そのため、直ちに競売を申し立てるのではなく、取引先に対して不動産の任意売却を促すことも検討しましょう。

この他、抵当権の実行方法として「担保不動産収益執行」があります。担保不動産収益執行とは、簡単に言うと、

当該不動産から生じる賃料などを債権者に配当すること

です。そのため、担保不動産収益執行は、目的となる不動産が賃貸物件で、毎月賃料収入があるような場合に限られます。

2)動産売買先取特権を実行

商品などの動産を売買した場合、当該動産の代金が未払いであれば、売却した動産の上に「動産売買先取特権」が成立します。これは、取引先と担保に関する契約を交わしていなくても発生する法定担保権です。

売却した動産が取引先の手元にある場合、動産競売の申立てができます。動産競売の申立ては、

裁判所の執行官が債務者の住居や占有する場所に立ち入って目的物を差押え、当該目的物を売却して、配当を行う

という流れになります。債権者は、売却代金から配当を受けて債権に充当することができます。

しかし、取引先が既に当該動産を第三者に転売していた場合、動産競売の申立てはできないのですが、第三者から取引先への支払いが未了であれば、取引先が第三者に対して有する転売代金債権を差し押さえて、債権を回収することが可能です。

3)留保所有権を実行

売買契約において、

売買代金が支払われるまでの間、目的物の所有権を売主のもとにとどめておく

という条件を付すことがあります(所有権留保)。この場合、取引先が代金の支払いを怠ったときは、債権者は所有権に基づいて売買目的物を取り戻し、売買代金に充当することができます。

ただし、取引先が倒産手続に入った場合、あらかじめ取引先から「占有改定」などの方法により、対抗要件を備えておく必要があります。占有改定とは、

民法が定める引渡し方法の一つであり、現実の所持は買主のまま、目的物の買主と売主の合意によって、売主が占有を取得する

というものです。

4)譲渡担保権を実行

取引先の商品や機械などの動産に譲渡担保権を設定している場合、裁判所を介することなく、実行手続を進めることができます。債権者は取引先に譲渡担保権を実行する旨を通知した上で、担保の目的となっている動産を引き揚げ、自ら換価して回収することもできます。

ただし、取引先に無断で倉庫に立ち入って商品や機械を引き揚げることは、建造物侵入や窃盗に該当するため、引き揚げに当たっては、取引先の同意を得る必要があります。また、担保権が実行される前に取引先が担保目的物を処分してしまう恐れがある場合、動産の処分禁止の仮処分を申し立てることも考えられます。

4 仮差押え・仮処分の概要と流れ

1)仮差押え・仮処分の概要

仮差押えと仮処分は「民事保全」と呼ばれます。まず、仮差押えとは、

売上債権などの金銭債権を保全するために、取引先の保有している財産を暫定的に差押える制度

です。仮差押えは金銭債権を対象としています。一方、仮処分とは、

仮差押えと異なり、取引先に対して有する金銭債権以外の権利を保全する制度

です。例えば、譲渡担保権を設定している取引先の物件が第三者に譲渡される恐れがある場合、それを阻止するために利用されます。

民事保全による債権回収には、次のようなメリットがあります。

  • 判決が出るまでの間、取引先の財産や自身の権利を保全することができる
  • 取引先にプレッシャーをかけて、任意の支払いを促すことができる

民事保全では、判決が出るまでの間、取引先の財産や行動に制限をかけることになります。そのため、

申立てをする債権者は担保金を供託

しなければなりません。担保金は、

一般的に被保全権利の2割から3割程度の金額となることが多い

ようです。また、担保金は、勝訴するまで供託したままですし、敗訴した場合は相手への損害賠償に充てられてしまう可能性もあります。

注意が必要なのは、仮差押えや仮処分には、

取引先が破産などの法的倒産手続を開始した場合は効力を失う

というデメリットがあることです。そのため、破産の恐れがある取引先に対して、費用をかけて民事保全手続を行うのは得策ではありません。取引先に資産があり、処分や隠匿の恐れがないようならば、仮差押えなどを申し立てず、訴訟を提起したほうがよいかもしれません。

2)仮差押え・仮処分の流れ

仮差押えの申立人は、

自らが取引先に対して有する売掛金請求権などの金銭債権(被保全権利)の存在と、判決を待っていたのでは強制執行をすることができなくなる恐れ(保全の必要性)を主張して、仮差押命令の申立て

を行います。裁判所は、申立人の主張と提出する証拠書類だけを見て、取引先の主張を聞かずに判断します。

仮差押えの対象となる財産に制限はないため、取引先が所有している不動産、動産、債権その他の財産に対して仮差押えを行うことができます。また、仮差押えの申立てに当たり、裁判所から担保金の供託を命じられたら、すぐに供託できるように事前に準備しておく必要があります。

仮処分の流れも仮差押えと同様です。やはり、裁判所から担保金の供託が命じられますので、事前に担保金を準備しておかなければなりません。

5 保証人からの回収の概要と流れ

1)保証人からの回収の概要

保証人からの回収とは、

取引先との契約において、代表取締役その他第三者との間で保証契約を交わしている場合、保証人から債権を回収すること

です。

保証には、普通保証(単純保証)、連帯保証、根保証などがあり、それぞれ保証人の権利や負担する義務が異なります。また、いずれも保証人との間であらかじめ保証契約を交わす必要があります。資力のある保証人と保証契約を交わしておくことで、取引先に代わって債権回収ができます。

なお、保証人が個人である場合、事業性のある貸金等債務を保証するときは、公正証書を作成する必要があります。また、保証契約締結前に、公正証書により保証債務を履行する意思を確認しなければ、保証契約は無効です。なお、この公正証書は、契約締結の日前1か月以内に作成する必要があります。

ただし、次の者が保証をするときは、公正証書を作成する必要はありません。

  • 主債務者が法人である場合の理事、取締役、執行役等
  • 主債務者が法人である場合の総株主の議決権の過半数を有する者等
  • 主債務者が個人である場合の共同事業者又は主債務者が行う事業に現に従事している主債務者の配偶者

2)保証人からの回収の流れ

まずは保証人に対して、請求書を内容証明郵便等で送付します。これに対して、保証人が任意に支払いに応じない場合は、取引先に対する債権回収と同様に、訴訟や民事保全などの法的手続を検討することになります。

以上(2023年9月更新)
(監修 リアークト法律事務所 弁護士 松下翔)

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画像:Mariko Mitsuda

事業承継・引継ぎ補助金のご紹介

中小企業等を支援する国や自治体の補助金・助成金事業では、雇用・人材開発・IT補助・コロナ支援など幅広いジャンルの支援があります。本レポートでは、おすすめの補助金・助成金について支援の内容や対象条件、申請方法等についてわかりやすく紹介します。

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ラグビー日本代表の元ヘッドコーチ、ジェイミー・ジョセフ。チームを鼓舞するための、信頼が表れた一言とは?

全部を出し切ったと思った瞬間に、さらにもう一度出し尽くす

ジェイミー・ジョセフ氏は、ラグビー日本代表のヘッドコーチとして、2019年に開催されたラグビーワールドカップ2019日本大会で、日本を初のベスト8に導きました。「ONE TEAM」のスローガンを掲げて活躍した日本チームの勇姿は、まだ記憶に新しいでしょう。ジョセフ氏は2023年9月から10月に開催される2023フランス大会でも、日本代表のヘッドコーチを務めています。

冒頭の言葉は、2019年の日本大会一次リーグで最大の難関となったアイルランド戦を前に、ジョセフ氏が選手やスタッフに語った言葉です。大会直前の世界ランキングが1位だったアイルランドとの試合は、当然ながらハードな内容になることが予想されました。このためジョセフ氏は、後半の戦い方について、冒頭の言葉を述べたのです。

ジョセフ氏は、選手たちに根性論を訴えたわけではありません。この言葉に続いて、「宮崎(での合宿)で、網走(での合宿)で、我々はそのための準備をしてきた」「お互いを信頼しろ。皆を信じている」と語っています。合宿で心も体も極限まで鍛え上げ、ONE TEAMになった選手とスタッフは、一人ひとりが全力を出し切るのはもちろん、チームのために、全力のさらに上の力を出せるための準備ができていると、ジョセフ氏は確信していたのでしょう。それは、根性論という単純な論理ではなく、「全員がチームのために、全力以上の力を出して貢献してくれる。もちろん自分もそうする」という、チーム内の固い信頼関係によって生まれた考えだといえるでしょう。

アイルランド戦では、ジョセフ氏の言葉がまさに現実になりました。前半を9対12でリードされて迎えた後半、日本チームは一丸となって力を出し尽くし、19対12で逆転勝利したのです。

会社でも社会でも、チームが弱体化する要因の一つに、メンバー間の「不公平感」があります。例えば、手抜きをしたり、ルールを守らなかったりする社員がいると、他の社員は「なぜ自分だけ真面目に頑張らないといけないんだ。不公平だ」と、やる気を失っていきます。ですが、逆に「全社員が目標に向かって全力を出している」という思いが共有されると、皆が「自分が足を引っ張るわけにはいかない」と奮起し、それが全力以上の力を引き出すきっかけになるのです。

そんなチームをつくるには、システムとして全社員が公平感を持てる仕組みをつくるか、トップが率先して全力以上のものを出す姿を見せ、社員の目線を引き上げることが重要です。

ちなみに、ジョセフ氏は日本代表の試合後に、最優秀選手を指名して表彰する制度を創設していました。ところがアイルランド戦では、最優秀選手は「誰か一人にではなく、チーム全体に」と言って、スタッフを含めた全員をたたえたそうです。ジョセフ氏は試合の勝因は、全員が全力以上を出したことだと確信していたのでしょう。

出典:「ラグビー日本代表ONE TEAMの軌跡:あの感動と勇気が甦ってくる」(藤井雄一郎、藪木宏之著、伊藤芳明文・構成、講談社、2020年7月)

以上(2023年9月作成)

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画像:Sergey Nivens-Adobe Stock

飲酒運転の防止(2023/10号)【交通安全ニュース】

活用する機会の例

  • 月次や週次などの定例ミーティング時の事故防止勉強会
  • 毎日の朝礼や点呼の際の安全運転意識向上のためのスピーチ
  • マイカー通勤者、新入社員、事故発生者への安全運転指導 など

「白ナンバー」の車を5台以上使用する事業者等に関して、12月1日から運転者の酒気帯び確認時のアルコール検知器の使用が義務化されます。

アルコール検知器を使用した酒気帯び確認は、飲酒運転を防止するための取り組みで、社用車や営業車を保有する多くの企業が対象になっています。

職場での酒気帯び確認を適切に実施するとともに、運転者一人一人が飲酒運転防止の意識を高めることが大切です。

飲酒運転の防止

1.飲酒運転による交通事故の状況

◆飲酒運転による交通事故件数

飲酒運転による交通事故件数は年々減少してきましたが、近年は下げ止まりの状況です。令和3年に千葉県八街市で発生した事故(飲酒運転のトラックが下校中の児童5名をはねて死傷させた)が今なお記憶に新しいかと思います。飲酒運転は重大な事故につながるおそれがあるため、ゼロにしなければなりません。

飲酒運転による交通事故件数

◆飲酒状況別の交通事故件数

令和4年の飲酒運転による交通事故件数を飲酒状況別にみると、「酒気帯び」の次に「基準以下」が多くなっています。前日の飲酒により二日酔い運転で事故が発生したり、あるいはアルコール摂取量が「基準以下」でも事故が発生していることが分かります。

飲酒状況別の交通事故件数

出典:警察庁「令和4年中の交通事故の発生状況」から当社作成

道路交通法により飲酒した状態での運転は禁止されています。
飲酒した場合はもちろん、二日酔いでアルコールが体内に少しでも残っている場合は運転してはいけません。

2.アルコールが抜けるまでの時間

「節度ある適度な飲酒量」は1日平均純アルコールで約20g程度であると言われています。

個人差はありますが、アルコール20g(=1単位)が体内で分解されるには、約4時間かかります。2単位では8時間、3単位では12時間かかります。

各酒類の単位換算表

出典:厚生労働省eヘルスネット「飲酒量の単位」から当社作成
(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-02-001.html)

運転の前日は、飲酒の時間や酒量に注意することが大切です。飲酒した翌朝にすっきり目覚めたつもりでも飲酒運転で検挙された事案も多いようです。

注意:ノンアルコール飲料

ノンアルコール飲料とは、アルコール度数が1%未満の飲料を指し、中にはアルコールが含まれた商品もあります。運転する前にはアルコール度数が0.00%であることを確認しましょう。

3.職場での取り組み

飲酒運転で事故を起こしてしまうと、刑事罰や行政処分、社会的制裁を受けることになります。職場で以下を取り組みましょう。

運転業務の開始前・終了後にアルコール検知器を使用した酒気帯び確認を適切に実施する。

※法令での義務がない会社であっても、アルコール検知器を使用して酒気帯び確認を行うことは、飲酒運転を生じさせない職場づくりに有効です。

アルコール検知器

交通安全研修や小集団活動等を通じて、運転者一人一人が飲酒運転防止に向けた意識を高め、飲酒運転に厳しい職場をつくる。

みんなで『飲酒運転は絶対に「しない!」「させない!」』を徹底しましょう。

以上(2023年10月)

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画像:amanaimages