「Z世代」について企業が理解しておくべきこと

1 世界の人口の約3割を占めるZ世代

私の息子は1996年生まれです。まさにZ世代の初めの世代。少なくとも息子の人生初めてのお絵かきの道具は「クレヨン」ではありませんでした。クレヨンを買い与える前に勝手に「マウス」を触ってお絵描きをした世代です。なぜなら我が家には“Windows95”があったからです。生まれた時から両親がパソコンを立ち上げる姿をその目に映しながら人生のスタートをきった世代がZ世代です。

「今どきの若い者は…」などという、いつの世代も繰り返されてきたような、世代を一括りにするような言い方はあまり好きではありませんが、20歳までの多感な時期をどのような時代背景で育まれてきたのかは、ある程度その世代の文化をつくると感じます。

マーケティングの世界において、すでに世界の人口の約32%を占めるといわれるZ世代の消費行動に対応できなければ、この世代を顧客化し、次代に生き残る企業とはなり得ません。日本においては少子高齢化の影響もあり、Z世代の人口割合は約半分、15%程度に過ぎませんが、これからの日本を支えていくのは間違いなく彼らの世代です。

そもそも近年はVUCAの時代といわれてきました。VUCAは、次の4つの単語の頭文字をとった造語です。

V(Volatility:変動性)
U(Uncertainty:不確実性)
C(Complexity:複雑性)
A(Ambiguity:曖昧性)

そして、ここにコロナ禍という想定外が重なりました。Z世代はこのタイミングで入社や就活を経験した世代ともいえます。限られた誌面ではありますが、この時代背景におけるいわゆるZ世代への対応を通じて、これからの人事・労務担当者のあり方を一緒に考えていきましょう。

(日本法令ビジネスガイドより)

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【働き方改革】副業社員の「残業代」を負担するのは自社か副業先か?

書いてあること

  • 主な読者:副業する社員の【労働時間管理】のルールについて知りたい経営者
  • 課題:できれば副業社員の残業代は負担したくない
  • 解決策:原則として、残業代は労働契約の締結が遅いほうで発生する

1 副業社員の労働時間はどう管理する?

働き方改革が進み、いよいよ中小企業でも社員の「副業」を認めるケースが増えてきています。本業がおろそかになる、副業先に社員を引き抜かれてしまうなどといったネガティブなイメージよりも、人手不足の解消や社員のスキルアップなど前向きな捉え方が浸透しつつあるのです。

一方、副業には通常と異なる労務管理のルールがあるので、この記事では基本となる労働時間管理を取り上げます。ポイントは次の3点です。

  • 自社と副業先での労働時間は通算される
  • 残業代の支払い義務は「労働契約の締結時期」で判断する
  • 副業先での実労働時間は必ずしも把握しなくてもよい

なお、副業特有の労務管理のルールについて詳しく知りたい場合、次のURLの厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(以下「ガイドライン」)も併せてご確認ください。

■厚生労働省「副業・兼業」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192188.html

2 自社と副業先で労働時間を通算

労働基準法(以下「労基法」)では、事業場(就業場所)が異なる場合、その労働時間を通算して規定を適用します。例えば、

自社で8時間、副業先で4時間働いたら、12時間(8時間+4時間)働いた

ことになります。このルールが適用されるのは「労基法上、労働時間規制が適用される社員」なので、次に該当する場合は通算されません。

  • 労基法が適用されないケース:フリーランス、独立、起業、共同経営、アドバイザー、コンサルタント、顧問、理事、監事など
  • 労基法は適用されるが労働時間制度が適用されない場合:農業・畜産業・養蚕業・水産業、管理監督者・機密事務取扱者、監視・断続的労働者、高度プロフェッショナル制度の対象者など

3 残業代の負担は「労働契約の締結時期」で判断

労働時間を通算する場合、気になるのは、

自社と副業先のどちらが残業代を支払うのか

ですが、これは労働契約の締結時期で判断します。簡単に言うと、

自社が副業先よりも早く社員と労働契約を締結していれば、副業先で時間外労働が発生する(逆の場合は、自社で時間外労働が発生する)

ことになります。

図表1は、1日の所定労働時間(就業規則に定める労働時間)が8時間の社員が、新たに副業先と1日の所定労働時間が4時間の労働契約を締結したイメージです。

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このように言うと、自社のほうが先に社員を雇っている限り、自社では時間外労働が発生しないように思うかもしれませんが、例外があります。それは、

自社と副業先の所定労働時間を通算した時間が、法定労働時間に達することを知りながら労働時間を延長した場合、自社で時間外労働が発生する

というものです。

図表2は自社と副業先の所定労働時間が共に1日4時間の社員が、自社で5時間、副業先で5時間働いた場合のイメージです。

画像2

自社と副業先の所定労働時間は通算8時間(4時間+4時間)で、すでに法定労働時間(原則として、1日8時間、週40時間)に達しています。そのことを知っていて、社員の労働時間を延長した場合、自社で1時間(5時間-4時間)、副業先で1時間(5時間-4時間)の時間外労働が発生します。

4 副業先での実労働時間は必ずしも把握しなくてよい

最後に、「自社(副業先)は、副業先(自社)での実労働時間を把握する必要はあるのか」を説明します。結論から言うと、過重労働や残業代の未払いを防ぐため、本来は自社も副業先も互いの実労働時間を把握する必要があるとされています(方法は社員からの自己申告など)。とはいえ、これだと労務管理上の負担が大きいため、ガイドラインでは、

自社と副業先がそれぞれ時間外労働の上限を設定し、社員がその範囲内で働く場合、互いの実労働時間を把握しなくてもよいとされています。この運用方法を「管理モデル」

といいます。具体的には、

労働時間を通算した際に、時間外労働(休日労働を含む)が単月100時間未満、2~6カ月平均80時間以内となるよう、自社と副業先がそれぞれ時間外労働の上限を設定

します。なお、この単月100時間未満、2~6カ月平均80時間以内というのは、労基法で定められている時間外労働の上限です。

例えば、図表3は所定労働時間が共に1日4時間の自社と副業先が、1日単位・1カ月単位(20日稼働)でそれぞれ時間外労働の上限を設定する場合のイメージです。

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社員の時間外労働の上限は1カ月単位で通算60時間(3時間×20日)です。社員がこの上限を守って6カ月間働く場合、時間外労働は通算で単月100時間未満、2~6カ月平均80時間以内に収まるので、自社と副業先は互いの実労働時間を把握しなくてもよいということです。

ただし、当然のことながら、それぞれの会社の時間外労働の上限については、事前に社員を通じて共有しておかないと、管理モデルが正しく機能しません。

なお、36協定(労基法第36条に基づく労使協定)の時間数については、通算されません。図表3の場合、自社は1カ月単位で40時間(2時間×20日)、副業先は1カ月単位で20時間(2時間×20日)という時間数が、それぞれの会社の36協定に違反しなければ問題ないということです。

以上(2022年3月)
(監修 弁護士 田島直明)

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【働き方改革】副業解禁で改正が進む労働保険。複数の会社で雇用保険に加入できる

書いてあること

  • 主な読者:副業する社員の【労働保険】のルールについて知りたい経営者
  • 課題:自社と副業先のどちらで労働保険に加入し、保険料は誰が負担するのか?
  • 解決策:65歳以上の社員の一部は複数の会社で雇用保険に加入できる。また、多くの場合、労災保険の申請には自社と副業先の両方が携わる

1 副業社員の労働保険はどうなる?

副業にはさまざまな労務管理のルールがありますが、直近で大きな変更があったのは労働保険(雇用保険・労災保険)の適用です。雇用保険については、

2022年1月1日より、65歳以上など一定の要件を満たす社員に限り、複数の会社での加入を認める「雇用保険マルチジョブホルダー制度」がスタート

しました。労災保険についても、2020年9月1日より、副業の場合における労災保険給付の支給額の算定方法などが一部改正されています。

この記事では、副業特有の労働保険のルールを取り上げます。ポイントは、次の5点です。

  • 雇用保険は原則として1社で加入する
  • 65歳以上の社員は一部、複数の会社で雇用保険に加入できる
  • 雇用継続中でも離職証明書の作成が必要になるケースがある
  • 労災保険給付の申請には自社と副業先の両方が携わる
  • 疾病による労災は自社と副業先の両方の負荷で判断することがある

2 雇用保険は原則として1社で加入する

学生などの例外を除き、次の2つのいずれにも該当する社員は、必ず雇用保険に加入します。

  • 週の所定労働時間が20時間以上であること
  • 雇用見込みが31日以上あること

役員は原則として加入できませんが、経営業務以外の業務にも携わり賃金が支払われる「兼務役員」については、所轄ハローワークの認定を受ければ加入できます。

社員等が副業する場合、雇用保険は原則として「本業先(賃金の大半が支払われる会社)」で加入します。つまり、

原則として複数の会社で同時に雇用保険に加入することはできず、1社で加入する

ということです。

3 65歳以上の社員は一部、複数の会社で雇用保険に加入できる

原則として、雇用保険は1社で加入します。しかし、例外として雇用保険マルチジョブホルダー制度があります。これは、高齢社員の就業機会を増やすために2022年1月1日より新設された制度で、次の3つのいずれにも該当する社員に限り、複数の会社で雇用保険に加入できます(兼務役員への制度適用については特に定めがないため、所轄ハローワークなどに要相談)。

  • 複数の会社で雇用され、年齢が65歳以上であること
  • 複数の会社のうち2つの会社(どちらも週の所定労働時間が5時間以上20時間未満)について、週の所定労働時間の合計が20時間以上であること
  • 複数の会社のうち2つの会社について、それぞれ雇用見込みが31日以上あること

図表1は3つの会社で雇用される65歳の社員への制度適用のイメージです。

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社員が3つの会社の中から制度の対象となる会社を2つ選択します。C社は雇用見込みが31日以上ないので対象外ですが、A社とB社が週の所定労働時間と雇用見込みの要件を満たします。そのため、社員はA社とB社、2つの会社で雇用保険に加入できます。

なお、雇用保険は通常、強制加入(加入要件を満たす社員は必ず加入しなければならない)ですが、雇用保険マルチジョブホルダー制度の場合は任意加入(社員が加入するかどうかを自分で決められる)です。加入を希望する場合、

社員本人が「マルチジョブホルダー雇入・資格取得届」などの必要書類を、自分の住所を管轄するハローワークに提出(提出期限はなし)

します。この際、

社員が制度の対象として選択した2つの会社は、それぞれ社員からの依頼に基づいて、書類の事業主記載事項(賃金や週の所定労働時間など)を記入する必要があります。また、手続き時には賃金台帳や出勤簿、雇用契約書などの確認資料(コピー可)の添付も必要となりますので、それらの書類を社員本人に交付

します。

雇用保険料については、雇用保険の資格取得日から発生し、2つの会社がそれぞれ納付義務を負います。社員からの保険料徴収(給与天引き)、保険料納付(年度更新)などの実務は、通常の社員と変わりません。

被保険者となった社員は、通常の社員と同様、雇用保険給付を受けられます。ただし、給付を受けるには2つの会社で同時に支給要件を満たさなければなりません。例えば、介護休業給付(介護休業中、賃金が支払われない場合に支給)の場合、2つの会社で原則として「直近2年間に被保険者期間が12カ月以上あること」などの要件を満たし、かつ同時に介護休業を取得する必要があります。

4 雇用継続中でも離職証明書が必要になるケースがある

社員が副業先を退職するなどして、雇用保険マルチジョブホルダー制度の対象から外れる場合、雇用保険の被保険者資格も失われます。その場合、

社員本人が「マルチジョブホルダー喪失・資格喪失届」などの必要書類を、自分の住所を管轄するハローワークに提出(被保険者でなくなった日の翌日から10日以内)

します。この際、

社員が雇用保険加入時に制度の対象として選択した2つの会社は、それぞれ社員からの依頼に基づいて、書類の事業主記載事項(退職日や退職理由)を記入

します。また、

社員から依頼があった場合、2つの会社でそれぞれ「離職証明書」を作成

する必要があります。雇用が継続しているほうの会社も、社員に退職日などを確認して離職証明書を作成しなければなりません。

なお、マルチジョブホルダー喪失・資格喪失届や離職証明書は、社員が退職したほうの会社と、雇用が継続しているほうの会社とで記入方法が異なります。詳細は次の申請パンフレットをご確認ください。

■厚生労働省「雇用保険マルチジョブホルダー制度の申請パンフレット」■
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000838543.pdf

5 労災保険給付の申請には自社と副業先の両方が携わる

労災保険は、適用事業に雇用されている全ての社員に適用されます(事業場単位で保険に加入するので、被保険者という概念はない)。

原則として、役員は労災保険に加入できませんが、中小事業主等に該当する経営者などは、所轄都道府県労働局長の承認を受ければ特別加入できます。また、兼務役員の場合、経営業務以外の業務中に発生した業務災害と通勤災害について、労災保険が適用されます。

副業している社員等が労災により傷病を負った場合、通常の社員等と同様、労災保険給付を受けられます。ただし、一部の給付を除き、

自社と副業先の賃金額の合計を基に支給額が算定される

という点が通常と異なります(特別加入の経営者などは、厚生労働大臣が具体的な額を定めるため対象外)。かつては、労災が発生したほうの会社の賃金だけを基に支給額が算定されましたが、労働時間などの関係で支給額が少なくなってしまうケースが多かったため、2020年9月1日より、ルールが改正されました。

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社員等が労災保険給付(一部を除く)を申請する場合、労災が発生したほうの会社は、申請に当たって傷病の発生状況、賃金の支払い状況、休業状況などを申請書に記入します。ただし、社員等が副業している場合、支給額を正確に算定するため、

労災が発生していないほうの会社も、賃金の支払い状況などを、申請書の別紙に記入しなければならないケース

があります。具体的には、次の保険給付の場合です。

  • 休業(補償)等給付:療養のために働けず、休業が通算3日以上となった場合に支給
  • 障害(補償)等給付:社員等の傷病が治癒し、一定の障害が残った場合に支給
  • 遺族(補償)等給付:社員等が亡くなった場合、遺族に対して支給
  • 葬祭料等(葬祭給付):社員等が亡くなった場合、葬儀を執り行う者に支給

6 疾病による労災は自社と副業先の両方の負荷で判断することがある

脳出血やうつ病などの疾病は、負傷の場合と違って労災の発生状況が分かりにくいため、自社と副業先の両方について社員等の負荷を評価し、労災に当たるかを判断します。具体的には、

まずそれぞれの会社で社員等の負荷がどの程度あったかを評価し、1つの会社の負荷だけでは労災に当たると認定できない場合、複数の会社での負荷を総合的に評価して判断

します。かつては、それぞれの会社の負荷を個別に評価するだけだったのですが、労災認定がされず、社員等が泣き寝入りになってしまうケースが多かったため、2020年9月1日より、ルールが改正されました。

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以上(2022年3月)
(監修 人事労務すず木オフィス 特定社会保険労務士 鈴木快昌)

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画像:takasu-Adobe Stock

【朝礼】私は童心に帰ります!

早いもので、2021年度も今月で終わりです。今年度の自分を振り返ってみると、恥ずかしながら、与えられた仕事をこなすだけの1年で終わってしまいました。新年度は、もっとエネルギッシュに仕事に取り組みたいと思います。そのために決めた新年度の私の仕事のテーマは、「童心に帰る」です。どういう意味かを説明する前に、まずはこのテーマを考えるきっかけをくれた、私の甥(おい)っ子の話をしたいと思います。

甥っ子は現在4歳で、電車やバスなどの乗り物が大好きです。普段は遠方に住んでいますが、先日、私の弟が彼を連れて遊びに来たので、私は2人を近所にある鉄道の博物館に連れていきました。この博物館には、人が乗れる大きさの電車があります。もちろん、ただの展示物なので動きませんが、車両の中には運転席があります。それを見た甥っ子は運転士になりきり、私や弟を乗客に見立てて「ごっこ遊び」を始めました。

そこからが大変です。甥っ子は「お客さん、早く乗ってください」「お客さん、終点です」と言っては、私と弟を車両に乗り降りさせるだけの遊びを、延々と繰り返しました。私が「そろそろ他のコーナーに行かない?」と言っても運転席を離れようとせず、なんとか説得して家に帰った後も、運転士ごっこは続きました。甥っ子が寝る頃には、私はクタクタに疲れてしまい、「4歳の小さな体のどこにそんなスタミナがあるのか」と驚かされるばかりでした。

諸説あるそうですが、小さい子どもが並外れたスタミナを持っているのには、大人に比べて筋肉が疲れにくい、疲労から回復する能力が高いといった身体的な理由の他に、「ワクワク」や「ドキドキ」をたくさん感じているからだという精神的な理由もあるそうです。まだ幼く、見るもの触れるもの全てが新鮮な甥っ子にとって、電車の運転席に座るというのは、それほど心が躍る体験だったのだと思います。

自分の話に戻りますが、最近の私が、与えられた仕事をこなすだけの毎日になってしまっているのは、仕事を楽しんでいないからだと思います。新入社員のときに感じていた「ワクワク」や「ドキドキ」といった感情をどこかに忘れ、“心のスタミナ”が続かなくなっているのでしょう。だから、新年度は甥っ子を見習い、童心に帰ろうと思います。

童心に帰る、というのは「何事にも純粋無垢(むく)な気持ちで取り組む」ということです。事前にある程度の結果を想定してしまうと、想定内に収めるだけの作業になってしまいそうなので、結果を気にせず、ただ自分が「面白そう」と思ったことに全力で挑戦します。今のところ、話しづらいお客さまとの会話が弾むネタを探す、新しいツールを試す、読んだことのない分野の本を読むなどに取り組みたいと思っています。童心に帰った新年度に自分がどんなことをするのか、今から「ワクワク」「ドキドキ」しています。

以上(2022年3月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】画竜点睛を欠くべからず

昨日、我が社の社員から、「ビジネスで一番大切なプロセスはどこですか?」との質問を受けました。ビジネスの本質を突いた良い質問なので、今朝はこのテーマでお話しします。

例えば、新規営業のプロセスは「開拓、訪問、商談、契約」といったところですが、これらのプロセスの中でどこを最も重視すべきなのか。それは、ビジネスの目的と状況によって変わってきます。1つの例を紹介します。

先月、当社の業務にも関係する大きなイベントがありました。当社からは私の他、役員を含め数人が見学に行きました。私たちは全員別々に行ったので、同じ相手と個別に名刺交換をしていることもありました。

後日、私たちが名刺交換をしたA社から商談の申し入れがあったので、会うことになりました。迎えた当日。A社の営業担当者は、「たくさん名刺交換をしていただき、ありがとうございます」と言いながら、名刺交換をした相手のリストを見せてくれました。驚いたことに、そこには関係のない他社の社員も載っていました。

もう1つ驚いたのは、当社の社員名のところに、社長である私の名前がなかったことです。意思決定権者である私を押さえていないなんて、詰めの甘い話です。話を聞いてみると、イベントの最終日に、スタッフ総出で一気に名刺を整理したそうです。そのような混乱した状況の中で、私の名刺を紛失してしまったのでしょう。

A社の目的は新規営業です。先に話したプロセスの通りなら、「開拓、訪問、商談、契約」といった流れで進めることになります。最初は開拓のプロセスが大事になりますが、A社はさまざまな方法の中からイベントへの出展を選択し、多くの人と名刺交換をしました。成功です。

次のプロセスは訪問なので、訪問候補のリスト作成と、アポイント取りをしなければなりません。では、リスト作成で大事なことは何でしょうか。地域や業種ごとにきれいに並べることではありません。この時点では、情報の紛失や漏洩がないように、慎重に取り扱うことが最も重要です。もし、個人情報の漏洩などを起こして問題になったら、会社に大きな損失を与えます。A社はこのあたりの認識が甘かったのかもしれません。

ビジネスは「最初が肝心、終わり良ければ全て良し」というものではなく、始まりから終わりまでの全プロセスが重要です。まずは足元で携わっているプロセスに注力してください。その際、どのように注力するかというのも、状況によって変わってくることを覚えておいてください。A社の例でいえば、訪問の準備の際に最も注力することは、情報の取り扱いだったわけです。

「ビジネスで一番大切なプロセスはどこか」。それは、現にその仕事をしている皆さん自身が決めることです。迷ってしまったときは、もう一度、仕事の目的と状況を確認してください。大切なポイントが見えてくるはずです。

以上(2022年3月)

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画像:Mariko Mitsuda

【働き方改革】副業社員の「社会保険料」を負担するのは自社か副業先か?

書いてあること

  • 主な読者:副業する社員の【社会保険】のルールについて知りたい経営者
  • 課題:自社と副業先のどちらで社会保険に加入し、保険料は誰が負担するのか?
  • 解決策:要件を満たせば複数の会社で加入。社会保険料は報酬などに基づいて案分される

1 副業社員の社会保険はどうなる?

副業社員の社会保険(健康保険・厚生年金保険)のルールは複雑です。例えば、自社と副業先のどちらで加入するのか、保険料負担はどうなるのかなどが気になります。あるいは、副業社員が私傷病で休業する場合、傷病手当金(健康保険)の申請手続きも気になるところです。

この記事では、副業特有の社会保険のルールを取り上げます。ポイントは、次の4点です。

  • 社会保険は複数の会社で加入するケースがある
  • 社会保険料は自社と副業先の報酬に応じて案分される
  • 賞与保険料も賞与の支給月が同じであれば案分される
  • 傷病手当金の申請には自社と副業先の両方が携わる

なお、この記事では、健康保険の保険者は自社・副業先ともに全国健康保険協会(以下「協会けんぽ」)とし、社会保険料を計算する場合、2022年度の保険料額表(東京都)を使用します。

2 社会保険は複数の会社で加入するケースがある

日雇いなどの例外を除き、次の3つのいずれかに該当する社員は、必ず社会保険に加入します。

  • 正社員(常用雇用労働者)
  • 週の所定労働時間と月の所定労働日数の両方が、正社員の4分の3以上のパートなど
  • 2.に該当しないが、週の所定労働時間が20時間以上、賃金の月額が8万8000円以上、学生でないなど所定の要件を満たすパートなど(特定適用事業所に勤務している場合)

また、法人に使用され報酬を受ける役員も、社会保険に加入することになります。

社員や役員(以下「社員等」)が自社と副業先それぞれで加入要件を満たす場合、

社員等は複数の会社で社会保険に加入

します。自社で社会保険に加入している社員等が、さらに副業先で社会保険に加入する場合、副業先は社員等が加入要件に該当してから5日以内に、被保険者資格の取得手続きを行います。

また、社員等本人は、資格取得から10日以内に、複数の会社の中から「主たる事業所」を1社選択し、選択した会社の所轄年金事務所に届け出ます。この際、全ての会社の健康保険被保険者証を被扶養者分も含めて返却します。

その後、

新しい健康保険被保険者証(「主たる事業所」として選択した会社の名称が記載され、被保険者番号が変更されたもの)が発行され、選択した会社に送付

されます。

3 社会保険料は自社と副業先の報酬に応じて案分される

社員等が自社と副業先の両方で社会保険の被保険者になると、

自社と副業先の報酬の合計を基に「標準報酬月額」が決定され、報酬の額に応じて案分された保険料を、それぞれの会社が支払う

ことになります。標準報酬月額とは、報酬を一定の金額幅で等級別に区分したものです。

図表1は自社が月額22万円、副業先が月額10万円の報酬を支払う場合の標準報酬月額のイメージです。

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協会けんぽの2022年度の保険料額表(東京都)により、標準報酬月額は32万円になります。健康保険料率は9.81%(介護保険の適用がない場合)、厚生年金保険料率は18.3%なので、自社と副業先の保険料負担は、各社の報酬(月額)に応じて次のように案分されます。

  • 自社の保険料負担(社員等の自己負担分を除く)
    健康保険料:(32万×9.81%×1/2)×22万/32万=10791円
    厚生年金保険料:(32万×18.3%×1/2)×22万/32万=2万130円
  • 副業先の保険料負担(社員等の自己負担分を除く)
    健康保険料:(32万×9.81%×1/2)×10万/32万=4905円
    厚生年金保険料:(32万×18.3%×1/2)×10万/32万=9万150円

標準報酬月額が決定・変更されるのは、主に次の3つのタイミングです。

  • 資格取得時決定:被保険者資格を取得したとき(雇用開始など)
  • 定時決定:4月から6月までの報酬月額に基づいて毎年9月から適用
  • 随時改定:被保険者の報酬に大幅な変更があったとき(昇給・降給など)

例えば、社員等が副業先で昇給した場合(随時改定の場合)、副業先が報酬月額の変更手続きを行います。その後、自社と副業先に新しい標準報酬月額が通知されるので、その内容に基づいて保険料を納付します。資格取得時決定と定時決定の場合も、大まかな流れは同じです。

また、社員等が副業先を退職するなどして、その社会保険の被保険者でなくなった場合、副業先がそこから5日以内に資格喪失の手続きを行います。この場合も、新しい標準報酬月額が自社に送付されるので、その内容に基づいて保険料を納付します。

4 賞与保険料も賞与の支給月が同じであれば案分される

自社と副業先が社員等に賞与(役員賞与を含む)を支払う場合、

支給月が同月であれば、自社と副業先の賞与額の合計を基に「標準賞与額」が決定され、賞与額の金額に応じて案分された保険料を、それぞれの会社が支払う

ことになります。標準賞与額とは、賞与総額から1000円未満を切り捨てた金額です。

図表2は自社が26万円、副業先が12万円の賞与を支給する場合の標準賞与額のイメージです。

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標準賞与額は38万円になります。第3章の図表1のケースと同じく、健康保険料率は9.81%(介護保険の適用がない場合)、厚生年金保険料率は18.3%なので、自社と副業先の保険料負担は、各社の賞与額に応じて次のように案分されます。

  • 自社の保険料負担(社員等の自己負担分を除く)
    健康保険料:(38万×9.81%×1/2)×26万/38万=1万2753円
    厚生年金保険料:(38万×18.3%×1/2)×26万/38万=2万3790円
  • 副業先の保険料負担(社員等の自己負担分を除く)
    健康保険料:(38万×9.81%×1/2)×12万/38万=5886円
    厚生年金保険料:(38万×18.3%×1/2)×12万/38万=1万980円

実務では、自社と副業先がそれぞれの賞与の支給状況を、賞与支給日から5日以内に、第2章で紹介した本業先の所轄年金事務所に届け出ます。その後、自社と副業先に標準賞与額が通知されるので、その内容に基づいて保険料を納付します。

なお、自社と副業先で賞与の支払月が異なる場合、標準賞与額は合算されず、その月に賞与を支給した会社にのみ保険料が請求されます。

5 傷病手当金の申請には自社と副業先の両方が携わる

傷病手当金とは、

社員等が私傷病による療養で働くことができず、休業が連続3日以上となった場合、4日目以降から支給される健康保険の給付

です。1日当たりの支給額は、原則として

支給開始日以前直近12カ月間における各月の標準報酬月額の平均÷30×2/3

で計算されます。社員等が自社と副業先の両方で被保険者になる場合、標準報酬月額は第3章で紹介した通り、自社と副業先の報酬の合計を基に決定されます。

傷病手当金は、所定の申請書に必要事項を記入して、協会けんぽに提出することで支給されます。申請書は4枚つづりで、

1枚目:被保険者情報や傷病手当金の振込先(社員等本人が記入)
2枚目:傷病の状況や休業中の報酬の有無(社員等本人が記入)
3枚目:勤務状況や報酬の支払い状況などの証明(会社が記入)
4枚目:療養担当者の意見(主治医などが記入)

という構成になっています。ただし、社員等が副業している場合、

3枚目については、自社と副業先が1枚ずつ記入する必要がある

ので、注意してください(つまり、申請書は計5枚必要)。実務上、社員等本人が自社と副業先からそれぞれ3枚目を受け取り、5枚まとめて協会けんぽに提出することになるでしょう。この場合、申請書の提出先は第2章で紹介した「主たる事業所」を管轄する協会けんぽの都道府県支部になります。

以上(2022年3月)
(監修 社会保険労務士 志賀碧)

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【損金】「債権放棄も寄附金になる」特殊な寄附金課税を理解する

書いてあること

  • 主な読者:税務調査などで指摘されないように適切に税金対策をしたい経営者
  • 課題:税務上の寄附金の範囲は広く、意図せず間違った処理をすることがある
  • 解決策:債権放棄や無利息貸付などは相手に経済的利益が生じ、寄附金となることがある

1 税務上の曲者「寄附金」

税務上の寄附金の範囲は一般的なイメージよりも広く、次のようになります。

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税務上の寄附金の範囲は広く、また判断も複雑なため、本来は寄附金として処理すべき取引を別の項目(勘定科目)で処理してしまうケースがあります。問題は、

寄附金で一定の金額を超える部分は損金に算入できない

ことです。法人税の申告の際に、適切に寄附金を処理していないと税金計算に誤りが生じるなどの問題が出てきます。

2 寄附金課税の仕組み

1)寄附金課税とは

まず、寄附金課税の仕組みを確認しましょう。寄附金課税とは、

財務上は寄附金(費用)として処理された取引について、税務上の調整により、一部に課税すること

です。具体的には、一定の金額(以下「損金算入限度額」)を超える部分については課税所得に加算されます。

寄附金課税のイメージは次の通りです。

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2)寄附金の損金不算入の概要

寄附金の損金算入限度額は、どのよう先への支出なのかによって違います。

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国、地方公共団体への寄附金、財務大臣の指定した寄附金および特定公益増進法人等への寄附金を損金に算入するには、

確定申告書に寄附金の額を記載して、寄附金の明細書(法人税の別表)を添付するとともに、領収書など寄附金に該当することを証する書類を会社側においても保存

する必要があります。また、債権放棄や無利息貸付など後述する要注意の取引については、「一般の寄附金」に区分されることが想定されます。

仮に、資本金等の額が1億円、所得の金額が1000万円の普通法人の一般の寄附金に係る損金算入限度額は次の通りです。この場合、年間の寄附金の額が12.5万円を超える部分は、課税所得に加算されます。

(1億円×12/12×2.5/1000+1000万円×2.5/100)×1/4=12.5万円

3 要注意の取引

1)債権放棄

債権放棄とは、

売掛金や貸付金などの債権の回収を放棄すること

です。債権放棄のうち、「取引先が民事再生法や会社更生法の手続きを申し立て、その規定により金銭債権が切り捨てられた場合」など、一定の条件を満たした部分は貸倒損失として損金に算入できます。

逆に、これらの基準を満たしていない場合は寄附金として取り扱われます。これは、

本来回収することができる権利を放棄することで、債務者に経済的利益が生じたとして、寄附金として取り扱う

という考え方です。債権放棄について寄附金とされる金額は、権利を放棄した債権の額となります。

2)無利息貸付または低利息貸付

無利息貸付または低利息貸付をした場合、

本来なら受け取れる利息を受け取らないことで、相手に経済的利益が生じたとして、寄附金として取り扱う

ことになります。寄附金とされる金額は、

  • 無利息貸付:本来受け取るべき利息の額
  • 低利息貸付:本来受け取るべき利息の額と、実際受け取っている利息の額との差額

になります。なお、本来受け取るべき利息の額に規定はなく、会社の事情や日ごろの取引状況などの観点から個別に判断します。

3)低額譲渡または低額供与

低額譲渡または低額供与とは、

その譲渡や供与が行われたときの時価に対し、実際の取引金額が低い場合の取引

です。この場合、

時価とかけ離れた取引は、その差額分、相手側に経済的利益が生じたとして、寄附金として取り扱う

ことになります。寄附金とされる金額は、

その譲渡または供与時の時価と実際の取引金額との差額のうち、実質的に贈与や無償の供与をしたと認められる金額

です。また、取引金額が低額なだけで必ず寄附金となるわけではなく、その取引の理由や背景に、贈与や無償の供与の意図があるかないかなどを考慮するケースもあります。

4)関係会社間の取引

関係会社間の取引は、利害関係が相反する第三者との取引に比べ、価格などが自由に設定できるので、税務調査などで重点的に調査されます。したがって、完全支配関係がある会社(100%親子会社など)以外の関係会社間の取引については、前述した支出や取引に該当しないよう、また税務上の寄附にならないように一層注意が必要になります。

以上(2022年3月)
(監修 税理士 石田一也)

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画像:Kittiphan-Adobe Stock

【朝礼】早く、遠くまで、みんなで行くための6つのお願い

おはようございます。皆さんは、「早く行きたければ一人で進め。遠くまで行きたければ、みんなで進め」という言葉をご存知でしょうか。一説には海外のことわざと言われているもので、一人であれば早く目的を達成できるかもしれないが、仲間と一緒なら、より大きなことを成し遂げられるという意味があります。

説得力のあるいい言葉だと思いますが、我が社が目指すのは、早く行くだけでも、遠くまで行くだけでもありません。早く、かつ遠くまで行くこと、つまり「会社を早く成長させ、長く持続させる」ことを目指します。どうすれば、これを成し遂げられるのか。そこでポイントになるのが、個人と集団の「いいとこ取り」です。

冒頭で紹介した言葉をもう少し掘り下げてみましょう。一人で進むと早く行けるのは、進む道を自分だけで決め、自分のペースで進み、自分が全責任を持って進むからです。逆に、人数が多いと、意見が対立して進む道を決めるのが遅れ、進み方が遅い人に合わせる必要があり、一生懸命歩かない人が出ることで、進みが遅れることになります。

みんなで進むと遠くまで行けるのは、知恵を出し合ってベストな道を選び、それぞれが得意なことを分担し、互いに助け合いながら進むからです。逆に、一人で進むと、道を誤りやすく、進むための作業を全て自分で行わなければならず、自分の都合が悪いときに誰も助けてくれないため、遠くまで行くのが難しくなります。

以上のことを踏まえると、早く、かつ遠くまで行くためには、次のようなことが大切になります。まず、進む道を決めるときは、みんなで知恵を出し合ってベストな道を選びます。そして一度道を決めたら、全員が決定に従います。進むペースには個人差がありますが、進むペースが速い人が遅い人に対して、速く進むコツを教えてあげれば、全体のペースアップにつながります。そして、力の強い人が荷物を多めに持ったり、速く進める人が先遣隊として偵察したりと、各自が得意分野を担当すれば、一人のときより早く行くことができます。誰かが困っているときには、積極的に助け合うことも大切です。こうしたことができるためには、一人ひとりが責任を持ち、集団の課題を自分事として捉えることが大切です。

これは、我が社が早く成長し、長く持続していくために必要なことにも当てはまると思います。すなわち、私は皆さんに、次の6つのことをお願いしたいと思います。それは、

皆で積極的に意見を出し合う

一度決まったことは、全員で守る

成功や失敗の情報を共有する

自分の得意分野を伸ばして会社に貢献する

困ったときは、皆で助け合う

一人ひとりが会社の課題を自分事として捉え、責任を持つ

の6つです。新年度は、ぜひこの6つのお願いを心掛けていただきたいと思います。

以上(2022年3月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】人との出会いがビジネスを広げる。ただしご用心

先日、イベントで“面白い人”と出会いました。ここではA氏と呼びましょう。A氏は非常に勢いのある人で、出会った瞬間に両手で握手を求めてきました。ビジネスでも素晴らしい実績を上げているようですが、本の出版など客観的に確認できること以外は、具体的に何をしているのかよく分かりません。その点を尋ねてみると、「日本のスタートアップ企業を支援するために、幅広く活動している」ということでした。幾つかの顧問先を持っているようですが、その日は名刺を1枚も持っていませんでした。

私の常識に照らすと危うさを感じるA氏。私はA氏と少し距離を置いて付き合うことにしました。「君子危うきに近寄らず」といいます。社長である私にはいろいろな人が近づいてくるのですが、中には自分が得することしか考えていない人や、法的に“グレー”な領域でのビジネスに誘ってくる人もいます。そうした人と関わり、万一トラブルに巻き込まれたときに大きな損害を被る恐れがあるので、会社を守るために人付き合いには慎重にならざるを得ないのです。

しばらくして、A氏から連絡があり、2人でミーティングをすることになりました。私は、隙を見せないようにと少々構えて臨んだのですが、意図せずA氏に助けられることになります。私は、A氏と出会ったイベントで知り合ったB氏と、次の週にミーティングをする予定だったので、そのことをA氏に何気なく話しました。

すると、A氏は少し迷った素振りを見せた後、「いない人のことを悪く言いたくはないのですが……。B氏と2人で会うのはやめたほうがいいですよ」と言うのです。理由を聞くと、B氏はビジネスの進め方が強引で、過去にこの業界で大きなトラブルを起こしたことがあり、今も評判が悪いというのです。私が抱いていた印象と違い、A氏は信用第一でビジネスをする当社のことを思い、わざわざ忠告してくれたわけです。

B氏は、弁護士から起業家に転身しており、イベントで出会ったとき、A氏とは対照的に非常に落ち着いた雰囲気を醸し出していました。私は経歴や雰囲気からB氏のことをすっかり信頼し、しっかりした人であると思い込んでいたのです。

「人を見る目」を養うことは、本当に難しいものです。A氏との一件で、そのことを痛感しました。しかし一方で、人と会うことを恐れていては、ビジネスの可能性を失います。ですから私は、A氏との出来事を反面教師にしつつ、皆さんがますます多くの人とつながることを望みます。人と会うことによって、私たちは自分の常識や当たり前を見直す機会を得ることができ、そこから新たな発想が生まれるからです。

ただし、リスクを回避する“嗅覚”は不可欠です。少しでも「違和感がある」と思ったときには、必ず上司や同僚に相談してください。また、特に最初は、1対1ではなく、複数人で会うようにすることも大切です。

以上(2022年3月)

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画像:Mariko Mitsuda