「修繕引当金」「特別修繕引当金」の会計処理ルールと金額の目安について

1 不動産の修繕に必要な「修繕引当金」「特別修繕引当金」

自社ビルや工場、商用ビルなどを所有する会社は、建物の状態を保つために修繕が必要です。特に数年に1度の大規模修繕などは費用が高額になるため、修繕を行った事業年度だけに修繕費用の全額を計上するのではなく、大規模修繕に備えて毎年費用をコツコツ計上しておくことが、正確な利益計算をする上で重要になります。

そこで利用する勘定科目が、「修繕引当金」と「特別修繕引当金」です。これらの勘定科目を利用することで、将来発生する修繕や大規模修繕に備えた利益計算や資産管理ができます。ただし、経営者や担当者の中には、修繕引当金と特別修繕引当金のルールや計上方法が分からない人もいるかもしれません。

この記事では、修繕引当金と特別修繕引当金の会計処理のルールや、いくら計上すればいいかの目安を紹介します。

2 会計処理のルール

1)そもそも「修繕引当金」「特別修繕引当金」とは?

「修繕引当金」「特別修繕引当金」は、名前は似ていますが用途が異なります。それぞれの概要は次の通りです。

  • 修繕引当金:毎年行う定期修繕が予算の制約や工事スケジュールの遅れなどの何かしらの理由で、事業年度内に実施できなかった場合に計上するもの
  • 特別修繕引当金:数年に1度の大規模修繕に備えて各事業年度に分割して計上するもの

修繕引当金が必要に応じて計上されるのに対し、特別修繕引当金は数年に1度の大規模修繕に備えて基本的には各事業年度に分割して計上します。例えば、1000万円かかる大規模修繕を5年に1度行う場合、1~4年目は毎年200万円の特別修繕引当金を計上するといった具合です。

2)修繕引当金と特別修繕引当金は損金に算入できない

修繕引当金と特別修繕引当金は、

いずれも会計上は「費用」になりますが、税金計算上では損金に算入できません。

つまり、決算書上には記載されますが、確定申告書上では損金としない調整(損金不算入)をします。会計上で計上した引当金の繰入額が損金に算入できるのは、実際に修繕を行った事業年度のみとなります。

3)それぞれの引当金の計上時の会計処理

1.修繕引当金

まずは、修繕引当金の仕訳を確認します。毎年定期的に行っている自社ビルの定期修繕(費用30万円)が、諸事情によって翌事業年度に行われることになった場合の仕訳は次の通りです。修繕引当金に相対する勘定科目は「修繕引当金繰入」となります。修繕引当金を負債勘定、修繕引当金繰入を費用勘定として仕訳します。

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実際に翌事業年度に定期修繕を行った場合の仕訳は次の通りです。前期で負債勘定として計上した修繕引当金を相殺する仕訳を行います。貸方科目は、支払方法に応じて適宜変更してください。

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2.特別修繕引当金

次は、特別修繕引当金の仕訳です。5年に1度、自社ビルの大規模修繕(費用3000万円)を行う場合の1~4年目の仕訳は次の通りです。3000万円を5年間で分割し、各事業年度に600万円ずつ計上、特別修繕引当金を負債勘定、特別修繕引当金繰入を費用勘定として仕訳します。

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また、大規模修繕を実際に行った5年目の仕訳は次の通りです。4年間積み上げた特別修繕引当金を相殺します。5年目分の600万円は修繕費として計上しましょう。

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3 設定金額の目安

修繕引当金は、毎年行っている定期修繕が事業年度内に実施されなかった場合に計上するため、計上金額は本来行うはずだった定期修繕にかかる費用です。従って、過去に行った定期修繕費用の平均値などから設定金額を計算します。

特別修繕引当金は、大規模修繕に備えて計上するため、「大規模修繕にかかる費用(見積額)÷大規模修繕の周期(年数)」が、毎年計上するべき金額になります。大規模修繕の費用や頻度は、建物の形状や規模、立地、設備の仕様などによって変わりますから、建物ごとに設定金額を計算します。

以降に大規模修繕の費用と頻度の参考資料等を示しますが、最終的な設定は、公認会計士などの専門家に相談してから決めるようにしてください。

1)不動産会社の調査データより

不動産売買や仲介業などを展開している株式会社ボルテックス(東京都千代田区)によると、自社ビルの一般的な修繕サイクルと費用の目安は次の通りです。

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同社によると、ビルの大規模修繕工事にかかる費用は、建物の規模や築年数によって異なるものの、2000万~3000万円程度が相場とのことです。

また、マンションでは、大規模修繕工事の周期を12年として、長期修繕計画が組まれていることが多いですが、オフィス用のビルについても、外壁や防水など建物の性能に関わる点は、ほぼ同じ程度で計算されるとのことです。

2)国土交通省の調査データより

国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、マンションの大規模修繕工事の実施時期は次の通りです。

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マンションの大規模修繕工事の工事金額は次の通りです。

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また、床面積(1平方メートル)当たり工事金額は次の通りです。

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以上(2024年3月作成)
(監修:税理士法人AKJパートナーズ 公認会計士 仁田順哉)

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画像:godfather-Adobe Stock

現タカラトミーの創業者・富山栄市郎氏。逆境のおもちゃ会社が100年企業となった理由が分かる一言とは?

市場は変わるぞ。次の一手が大事だぞ。ヒットのあとには必ず停滞がやってくる。気を引き締めろ

富山栄市郎(とみやまえいいちろう)氏は、今から100年前の1924年に、21歳の若さで富山玩具製作所(現タカラトミー)を創業し、おもちゃ業界全体の発展に貢献した人物です。少年時代からおもちゃを作る玩具製作所で働いていた富山氏は、そこでモノ作りの楽しさを知り、いつか自分の手でおもちゃを作りたいと考えるようになります。そうして立ち上げたのが富山玩具製作所です。富山氏は斬新なおもちゃを次々に生み出し、おもちゃ業界をけん引していきますが、事業を支えたのはその発想力だけではありませんでした。

冒頭の言葉は、戦後に富山玩具製作所が富山商事と名を改め、「スカイピンポン」というおもちゃを売り出した頃、富山氏が社員たちに言い聞かせた言葉です。スカイピンポンは、ラケットの中にあるバネを使ってピンポン球のキャッチボールを楽しめるプラスチック製のおもちゃです。ブリキ人形などの金属製のおもちゃが主流だった時代に、プラスチック製のおもちゃを作るという発想は斬新で、スカイピンポンはたちまち人気になります。しかし、富山氏はその人気に甘んじることを良しとしませんでした。彼はそれまでの経験から、1つの成功が長くは続かないことを知っていたからです。

富山玩具製作所を立ち上げて間もない頃、富山氏は外国の飛行機をモデルにおもちゃを作り注目を集めますが、やがて昭和恐慌、さらには第二次世界対戦が始まり、おもちゃ作り自体を続けることが難しくなります。戦後、やっとの思いで事業を再開した際も、戦闘機のおもちゃで子どもたちの心をつかみ会社を立て直しますが、工場の火災や戦闘機ブームの停滞などで再び窮地に立たされます。何度も辛酸をなめ、時には人員整理という苦渋の決断を迫られてきた富山氏は、もう同じことを繰り返すまいと心に誓っていたのです。

富山氏は、スカイピンポンと並行して、目玉商品となる別のおもちゃ作りに取り組みます。それは、家の中でプラスチック製のレールをつなぎ合わせ、電車を走らせて遊ぶ「プラレール」。現代でもなお、子どもたちから愛されているおもちゃです。スカイピンポンでプラスチック製のおもちゃの存在を世に知らしめて市場を変え、そこに別のおもちゃを投入する。このように、成功を収めても油断せず「次の一手」を打ち続けることで、富山氏は会社を大きくしていったのです。

会社経営は、よくマラソンに例えられます。事業目標は、マラソンの途中にある道標(みちしるべ)であり、何か大きな成功を収めて目標を達成すれば、「道標を通過した」ということができます。ただ、それはゴールではありません。経営者が夢を見続ける限り、マラソンは続きます。一時の成功を喜ぶのはいいですが、そこに満足して足を止めてしまったら、それ以上先には行けません。大切なのは、足を動かし続けること。それが成功の後に繰り出す「次の一手」なのです。

出典:「社史『軌跡~夢をカタチに~』」(タカラトミーウェブサイト)

以上(2024年3月作成)

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画像:BillionPhotos.com–Adobe Stock

【社長のモノサシ】 退職したい社員を引き止める? 引き止めない?

1 【提案】社長のモノサシをバージョンアップしよう!

会社にはさまざまなルールがありますが、ある意味それらのルールの在り方を決定づけているのが「社長のモノサシ」です。社長のモノサシとは、

会社経営における社長の価値観や行動基準

であり、日々の判断はこのモノサシを基準に行われます。

さて、社員から退職の申し出があったら、皆さんはこれを引き止めるでしょうか? ケースバイケースといえばそれまでですが、根本には「縁があるのだから引き止める」「去る者は追わない」など、社長の考え方があるはずです。そして、これこそが社長のモノサシです。

社長である筆者も、「社長、ちょっといいですか?」と社員から退職の申し出を受けたことが何度もあります。引き止めるか否かは相手次第でしたが、実際に次のような経験をしました。

  • 頼りにしていた幹部から退職の申し出があったときは、本気で引き止めをはかり、1年間かけて話し合ったが、結局、辞めてしまった
  • かねてから問題を感じていた社員から退職の申し出があったときは、正直ほっとして、すぐに退職の手続きに入った

人手不足で売り手市場の昨今、社員の退職がますます増えていくことは覚悟しなければなりません。そうした事態に備えるためにも、他の社長が社員の退職をどのように考えているか気になりませんか?

この記事では、当社が292人の社長に行ったアンケート結果を紹介していきますので、参考にしてください。ちなみに、

社員の退職をうまく思いとどまらせた経験のある社長は40.1%

です。また、こちらに悪気がなくても、社員への引き止めが「ハラスメント」と言われてしまうこともあります。昔のような考えで引き止めるのでは通用しないケースもあり、社長のモノサシのバージョンアップが必要な時代になったようです。

2 社員が退職の申し出をしてきたら引き止めるか?

まずは、社員が退職の申し出をしてきたときに引き止めるか否かですが、社長の回答は次の通りでした。

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注目したいポイントは、引き止めるか否かが明確に決まっているのは54.2%で、状況によるという回答が45.9%もあることです(四捨五入などの関係で、合計で100.1%となります)。日々が決断の連続である社長を対象にしたアンケートの割に、明確な回答が少ない印象です。裏を返せば、それだけ社員の退職に関する問題は難しいものなのでしょう。

3 社員の退職を引き止める理由は?

社員の退職を「引き止める」と回答した社長に、その理由を聞いてみたところ、次のような結果になりました。

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こちらは、「大切な自社の社員だから(縁ができたから)」という回答が75.6%と最も多く、次いで「人材不足だから」の57.0%が続きます。小さな会社の場合は特に社長と社員の距離感が近いため「縁」を感じやすく、こうした結果になっているのでしょう。

ただし、「5 どのような社員なら引き止める?」の章で紹介しますが、いかに「縁」があるとはいえ、全ての社員が引き止める対象になるわけではありません。

4 社員の退職を引き止めない理由は?

逆に社員の退職を「引き止めない」と回答した社長に、その理由を聞いてみたところ、次のような結果になりました。

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こちらは上位が拮抗していて、「去る者は追わない主義だから」の58.3%が最も多く、「社員の意思を尊重したいから」の56.9%が続きます。筆者のまわりにも、「一切、引き止めない」という社長は少なくなく、社長の価値観が顕著に表れるところです。

5 どのような社員なら引き止める?

次に、どのような社員なら引き止めるのかについて聞いてみました。この結果はほぼ皆さんの予想通りの結果になっているのではないでしょうか。

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最も多い回答は「社員の能力が高ければ引き止める」の76.1%で、「社員の人柄が良ければ引き止める」の53.7%、「社員の仕事が専門的ならば引き止める」の50.7%が続きます。いかに「縁」があったとはいえ、どのような社員でも引き止めるわけではなく、このあたりはシビアに状況を判断していることが分かります。

転職支援を生業とする会社のウェブサイトには、「(転職者に対して)ほぼ間違いなく退職を止められるので注意」などと書かれていることがありますが、これは極端すぎる意見で、実際は相手(社員)次第です。

また、そうしたウェブサイトには「会社から退職を引き止められたときの対処法(断り方)」として、「とにかく退職届を出すこと」「とにかく退職の強い意思を伝える」などと紹介されています。こうした情報を参考にしている社員は、態度がかたくななのですぐに分かります。こちらは対話をしたいだけで他意がなくても、そうした社員を引き止めると、「辞めさせてくれない」とトラブルになる恐れがあるので注意しましょう。

6 社員の引き止めは成功した?

最後に、社員の引き止めが成功したかを聞いてみました。その結果は次の通りです。

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引き止めに成功した社長は40.1%と半数以下となっています。一度退職を決めた社員を引き止めることは簡単ではないことが分かります。筆者の経験からもハッキリと言えるのは、退職の申し出を受けた時点で未来はほぼ決まっていて、それを覆すことは相当に難しいということです。

7 他の社長はどうやって引き止めている?

アンケートでは、どのようにして社員の引き止めに成功したかについても聞いてみました。すると、

賃金など条件面の改善

を行ったケースが最も多く、次いで多かったのが、

該当社員とのコミュニケーションを密にする

というものでした。意外とドライだなと感じますが、社員に退職を思いとどまらせるには、条件面の改善など分かりやすい形が必要なようです。一方、社員の引き止めに失敗した理由には、

夢を語り過ぎた

というものもありました。年功序列や終身雇用が維持されていた頃と比較して、日本企業の労使関係は大きく変わっています。「縁」や「情」だけでは解決できない問題も多く、ここは社長のモノサシのバージョンアップも必要なのでしょう。

以上(2024年5月作成)

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【社員が求める福利厚生】「人間ドック」で健康な会社に! 経費で処理すれば負担も軽減

1 実はニーズが高い「人間ドック受診の補助」

社員の高齢化が進むと、加齢によって

生活習慣病(脂質異常症(高脂血症)、高血圧症、糖尿病など)予備軍も増加

します。生活習慣病を放っておくとさまざまな問題が起こるため、会社としても放っておけません。そこで提案するのが「人間ドック」の受診です。人間ドックには、

  • 定期健康診断などよりも検査項目が多く、自覚症状のない病気なども早期発見できる可能性がある
  • 脳疾患や心臓疾患、性別に特有のがん、など分野を絞って受診することもできる

といった特徴があります。

実は、社員の人間ドック受診へのニーズは高く、過去に労働政策研究・研修機構が、会社員8298人の「自分にとって特に必要性が高い福利厚生」を調査した際も、「人間ドック受診の補助」が第1位(21.8%)になっています(労働政策研究・研修機構「企業における福利厚生施策の実態に関する調査(2020年7月)」)。

ただ、人間ドックは高額で、日帰りで3万円から7万円程度、1泊2日で4万円から10万円程度となります(地域や医療機関によって異なります)。また、原則として医療費控除の対象にもなりません。だからこそ、人間ドックの受診費用を会社が補助してあげれば、社員の健康維持、モチベーションアップを同時に実現することができるのです。

この記事では、社員に健康で長く働いてもらいたいと考える経営者向けに、法定外の福利厚生制度として「人間ドック受診の補助」を行う際のポイントを解説します。

2 人間ドックの受診費用を経費で処理するためには

人間ドック受診の補助に関して、一定の要件を満たす場合には、福利厚生費(経費)として処理して差し支えないものと考えられます。ただし、税務署から指摘された場合には、会社は損金にできませんし、社員も給与等として所得税が課税されますので、実際に行う場合は、税理士などの専門家へよくご相談されてください。

なお、一定の要件を満たした上で、きちんと取り組みがされていることを証明するために、人間ドックの受診について就業規則に定め、また実際に人間ドックの受診をする際は社員が希望するか否かを聞いて、その結果も残しておくことをお薦めします。

1)全社員に受診機会があること

全社員が受診できるようにしておく必要があります。よく役員だけが人間ドックを受診しているケースがありますが、これだと福利厚生費とはなりません。

一方、健康管理の必要性から「一定年齢以上の希望者」を対象とすることはできます。例えば、全社員に健康診断を実施した上で、生活習慣病予防のため、年齢35歳以上の希望者全員の2日間の人間ドックによる受診費用の一部を負担するといった具合です。

2)人間ドックの費用は、実費費用の範囲内で会社が負担すること

人間ドックの受診費用は、実費費用の範囲内で会社が負担する必要があります。なお、社員の請求に基づいて会社が社員に受診費用を支払う場合でも、会社が当該受診費用を負担したことに変わりはないものと考えられます。その場合は、領収書を保管し、実費費用の範囲内であることが確認できるようにしておきましょう。実際の受診費用を超えて補助を行うと、福利厚生費として認められませんので注意が必要です。

3)常識範囲内の金額であること

社員が受ける経済的利益が著しく多額である場合は、原則として、福利厚生費として認められません。なお、国税庁の質疑応答事例にある「一般的に実施されている人間ドック程度の健康診断の実施が義務付けられている」との記載から、前述した人間ドック1泊2日の場合の費用(4万円から10万円)程度であれば、許容範囲であると考えられます。

■国税庁 質疑応答事例「人間ドックの費用負担」■

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/gensen/03/03.htm

3 人間ドックでの検査の特徴―時短・お手軽な検査も登場

1)自覚症状のない病気なども早期発見できる可能性がある

労働安全衛生法により実施が義務付けられている健康診断(定期健康診断)では、社員が受診すべき法定項目が決められています。人間ドックの検査項目は定期健康診断などの法定項目よりも多く、自覚症状のない病気なども早期発見できる可能性があります。

日本人間ドック学会が公表している「人間ドック(1日)の基本検査項目」と「定期健康診断の法定項目」を比較すると次のようになります。

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2)分野を絞って受診することもできる

脳疾患や心臓疾患、性別に特有のがん(子宮がんなど)など、分野を絞って集中的に検査できる医療機関もあります。例えば、社員に健康上の不安に関するアンケートなどを実施し、特に不安の多い疾病などがあれば、人間ドックで集中的に検査するという運用が考えられます。

その他にも、

  • 遺伝子検査を取り入れた「遺伝子検査付き人間ドック」
  • X線画像をAIが解析し、疾病リスクを予想する「疾病リスク予測AI」

などの最新の検査手法もオプションとして取り入れる診療機関が増えてきました。

「遺伝子検査」は、将来発症する可能性のある病気を見つけるDNA検査と体内にがん細胞があるかどうかを検出することのできるRNA検査があります。検査により、各種がんの発症や細胞の老化度などが分かります。

「疾病リスク予測AI」は、1年分の健康診断データを基に、「〇年後の△疾病リスクが□%」という数値を予測します。予測できる疾病は、利用する医療機関によって異なりますが、各種がんや糖尿病、心臓疾患、認知症などです。

3)時短・お手軽な検査も登場

従来の人間ドックは、短いものでも検査に数時間を要することが多かったですが、最近は、

  • 約30分で脳ドックの受診が終わる「スマート脳ドック」
  • 血液・尿を郵送してがんや生活習慣病の検査をする「オンライン人間ドック」

など、あまり時間のかからない検査も登場しています。

「スマート脳ドック」は、Webでの予約と問診票を事前に送付し、検査後の受診結果をパソコンやスマートフォンから確認できるようにして、滞在時間を短縮した脳ドックです。検査内容は通常の脳ドックと同じで、頭部MRIやMRA(脳血管の立体画像検査)、頸部MRAなどを実施します。

「オンライン人間ドック」は、自分で採取した数滴の血液と尿を郵送すると、検査機関が検査し、2~3週間後に、検査結果を自宅に届けるものです。検査結果を見て電話やチャットで相談できるサービスもあります。

4 人間ドックの受診が求められる背景

1)約6割が40歳以上―日本の労働市場

現在の日本の労働市場では、40歳以上の人が労働力の多数派で約6割をしめています。

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2)定期健康診断受診者の約6割が「異常あり」

厚生労働省の「定期健康診断実施結果報告」によると有所見率(健康診断を受けた人のうち、「異常なし」以外の人の割合)は、2008年に50%を超え、2022年は58.3%となっています。

年齢や性別は調査対象外のため傾向は分かりませんが、約6割の人が何らか「異常あり」。そして、再検査や治療を受けるように促されても、忙しいからなどといって後回しにしがちです。

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3)健康経営への関心の高まり

経済産業省は、特に優良な健康経営を行っている会社を認定する「健康経営優良法人認定制度」を行っており、申請・認定件数は年々増加しています。

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補足:SDGsにも資する

2030年に17のゴールを目指しているSDGsでは、その3に「すべての人に健康と福祉を」、8に「働きがいも経済成長も」というゴールを設定しています。

福利厚生の充実をはじめとした健康経営は、

  • 3 すべての人に健康と福祉を
  • 8 働きがいも経済成長も

の達成に資することになります。社員の健康を支援することは、社員がいきいきと長期的に働くこと、ひいては労働生産性の向上と社会の持続的な成長へとつながるのです。

以上(2024年4月更新)
(監修 株式会社フェアワーク 吉田健一)

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【収支シミュレーション】特別養護老人ホームの開業収支モデル

1 特別養護老人ホームとは

特別養護老人ホームとは、

65歳以上で常時介護を必要とし、在宅での生活が困難な高齢者(原則要介護3以上)に対して、生活全般の介護を提供する施設

です。

特別養護老人ホームでは、入浴、排泄、食事などの介護をはじめ、日常生活、機能訓練、健康管理及び療養上の世話を行います。

特別養護老人ホームを開設するには、

  • 社会福祉法人を設立する
  • 厚生労働省令で定められた事項を都道府県知事に届け出る
  • 厚生労働省が定める「特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準」の人員配置基準、設備基準、運営基準を満たす
  • 施設の所在地の都道府県知事(指定都市・中核市は各市長)から老人福祉法における「特別養護老人ホーム」の指定を受ける
  • 入所定員が30人以上の施設は、施設の所在地の都道府県知事(指定都市・中核市は各市長)から介護保険法における「介護老人福祉施設」の指定を受ける
  • 入所定員が29人以下の施設は、施設の所在地の区市町村から介護保険法における「地域密着型介護老人福祉施設」の指定を受ける

必要があります。

なお、市区町村によって基準が異なる場合や、設置を計画していた施設の数を満たしているといった理由で申請を受け付けていない場合があるため、事前に市区町村の担当部署に確認しましょう。

また、市区町村によって施設整備費や設備整備費などに補助金を出していることもあるので、併せて確認するとよいでしょう。

2 開業収支を考える

1)前提条件

1.売上高

売上高は、施設定員80人(10人×8ユニット)として年間3億5129万円とします。算出式は次の通りです。

(介護サービス費30万4700円×12カ月+ホテルコスト(1970円+1380円)×365日)×定員80人×稼働率90%≒3億5129万円

特別養護老人ホームの売上高は、介護サービス費とホテルコストから成ります。

厚生労働省「介護給付費実態統計月報(2023年11月審査分)第5表、介護サービス受給者1人当たり費用額、要介護状態区分・サービス種類別」によると、介護福祉施設サービスの介護サービス受給者1人当たり費用の平均月額は30万4700円となっています。

また、ここでは日常生活費を1日当たり1970円、食費を1日当たり1380円とします。

2.原価率

原価率は、後掲の図表4(介護老人福祉施設の1施設1カ月当たり収支)の介護事業費用のうち(4)その他を参考に29.4%とします。

3.人件費

また、人件費は同じく後掲の図表4(介護老人福祉施設の1施設1カ月当たり収支)の介護事業費用のうち(1)給与費65.2%を参考に2億2904万円(3億5129万円×65.2%)とします。

4.施設整備費

建物(延床面積4000平方メートル。1平方メートル当たり工事単価33万円)は13億2000万円。建物附属設備(電気・給排水・消火設備など)は1億8000万円とします。

その他の諸条件は図表1の通りです。

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2)収支シミュレーション

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3 介護老人福祉施設の1施設1カ月当たり収支

厚生労働省「令和5年度介護事業経営実態調査」によると、介護老人福祉施設の1施設1カ月当たり収支は次の通りです。

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以上(2024年3月更新)

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ドラゴンボールはなぜ愛され続けるのか、原作者・鳥山明氏のポリシーが垣間見える一言とは?

だからやっていくうちにキャラクターが勝手に動き出したらしめたもので、意外とこのキャラで行けるかなって

鳥山明(とりやまあきら)氏は、集英社の週刊少年ジャンプ(以下「ジャンプ」)で、「Dr.スランプ」「ドラゴンボール」などの作品を手掛けた漫画家です。どの作品も愛されていますが、特にドラゴンボールは、主人公の孫悟空(そんごくう)が、地球、宇宙、時には死後の世界を舞台に、さまざまな敵と戦う壮大なアクション漫画で、ジャンプでの連載終了から約30年たった今でも、絶大な人気を誇ります。鳥山氏が2024年3月1日に68年の生涯を終えられた際は、日本だけでなく世界中のファンがその早過ぎる死を悼みました。

冒頭の言葉は、鳥山氏がジャンプに連載していた頃の編集担当だった鳥嶋和彦(とりしまかずひこ)氏と対談した際、ドラゴンボールの連載当時を振り返って述べたものです。「ドラゴンボールは先の話を考えず、自分でもワクワクしながら描いているっておっしゃっていましたよね?」と尋ねられた鳥山氏は、「そうだけど、本当はただ先のことを考えるのが面倒臭いだけで……」とおどけながら、冒頭の言葉を言いました。

ドラゴンボールには、主人公である悟空を強さで上回る強敵が度々登場しますが、悟空はそんな強敵と出会うと、むしろワクワクするというキャラクターです。そして、鳥山氏も悟空が最終的にどう強敵に勝利するのか細かく筋道を立てず、自分も同じ敵と戦っているつもりで、その時その時の展開を考えていたようです。一見「行き当たりばったり」のようにも思えますが、それ故多くの読者が予想のつかない展開に魅せられました。

もう1つ、鳥山氏が心掛けていたのが「スピード感」です。ジャンプは週刊連載なので、物語の展開が遅いと読者が飽きてしまいます。複雑な背景などは描写に時間がかかるため、鳥山氏は敵に建物を破壊させて更地にするなどして背景を描く時間を節約し、その分、読者が好きな戦いのシーンに力を注いだそうです。また、悟空は物語の途中で「超(スーパー)サイヤ人」という金髪の戦士にパワーアップしますが、これも白黒漫画の場合、金髪は髪を黒く塗る「ベタ塗り」の作業を省略できるという理由から生まれた発想でした。

鳥山氏のすごいところは、うがった見方をすれば「手抜き」と思われそうなことまでも武器に変え、読者を自分の世界に引き込み続けた点です。ビジネスで競争に勝つためには、いかに自分たちの短所を改善するかが重要ですが、短所がそのまま長所に塗り替わればこれほど心強いことはありません。そして、鳥山氏がこれを成し遂げられた理由は、強敵との出会いにワクワクする悟空と、週刊連載というハードな仕事にワクワクする自分とがうまくマッチしたからでしょう。最近は、頑張ることや無理をすることが敬遠されがちな風潮がありますが、ハードな環境に身を置いてこそ初めて味わえる楽しみもあり、事実、鳥山氏がそれを続けてきたからこそ、ドラゴンボールは今なお世界中から愛されているのです。

出典:「Dr.マシリト 最強漫画術」(鳥嶋和彦 (著)、集英社、2023年7月)

以上(2024年3月作成)

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【登録無料】商品やサービスを掲載して販路を拡大!

1 お役立ちサービスって何?

当社の商品・サービスをもっと多くの人に知ってもらい、販路を拡大したい! そのような会員の皆さんにご案内したいのが、サクセスネットの「お役立ちサービス」です。これは、指定のフォーマットに情報を入力するだけで、御社イチオシの商品・サービスを他の会社にPRできる「無料」のサービスです。

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2 実際に登録してみましょう!

手順

1)トップページから「お役立ちサービスの登録」をクリックします

 

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※【お役立ちサービスの登録】→【新規作成】でページに飛べます

2)「新規作成」をクリックします

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3)「メーン画像」をアップします

左上の「ファイルを選択」をクリックし、商品・サービスのアイキャッチ画像をアップしてください(画像の推奨サイズ:横800px 縦400px)。商品・サービスを使っている様子が分かる画像などがあると、会員にイメージが伝わりやすいです。

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4)「タイトル」を入力します

商品・サービスの内容を表すタイトルを140字以内で入力してください

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例えば、次のようなタイトルは会員の目を引きやすいです

■ヒント1:「誰の、どんな課題を解決するのか」をタイトルの頭に

 (例)営業担当の売上アップをサポート! AI分析ツール「○○」

■ヒント2:「イチオシのポイント」をタイトルの頭に

(例)最先端AIで将来の売上データを予測! AI分析ツール「○○」

5)「サービス提供」を入力します

会社名を入力してください

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6)「会社名および商品・サービスの概要」を入力します

240字以内で商品・サービスの特徴や性能などを簡潔にまとめて記入してください

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例えば、次のような点を工夫すると、会員に伝わりやすくなります

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7)カテゴリ1、2を選択します

商品・サービスに適していると思われるカテゴリを選択してください。

●カテゴリ1:下記12種類から一つ選んでください。

  • 売り上げを上げたい
  • 営業力を強化したい
  • 海外進出したい
  • 人材を採用・教育したい
  • 資金を調達したい
  • リスク・トラブルに備えたい
  • 業務を効率化したい(IT化、DX)
  • 市場動向などをリサーチしたい
  • 事業承継やM&Aに興味がある
  • 専門家に気軽に相談したい
  • 他の経営者と交流したい
  • 自身や家族の健康に気をつけたい

●カテゴリ2:下記8種類から一つ選んでください。

  • 経営戦略
  • 営業・マーケティング
  • 採用・教育・人事労務
  • 会計・税務
  • 法務・リスク
  • 業務効率化
  • 市場動向
  • 経営者

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8)強調したいキーワードを入力します

商品・サービスについて、強調したいキーワードを登録してください。ここで登録されたキーワードは「タグ」となり、同じタグが登録された別の情報と関連して表示されます。

半角カンマで区切ると、キーワードを複数登録することができます。

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どんなテーマの記事を探している方に読んでほしいかを考えましょう。

9)具体的な商品・サービスの内容を入力します。

「商品やサービスの性能や特徴など」「導入事例」「料金や条件など」を入力します。

「商品やサービスの性能や特徴など」については入力必須です。

【掲載する内容の例】

  • 商品の概要
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  • 経営者(利用者)のメリット
  • 実際に活用している経営者(利用者)の声   など

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■ヒント1:説明は「見出し」「太字」などを付けて分かりやすく

例えば、商品・サービスの性能や特徴を複数記入したい場合、

  • 性能1:○○…
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といった具合に「見出し」を付けると読みやすいです。また、性能や特徴で特にアピールしたい部分は「太字」にすると伝わりやすいです。

見出しや太字を作る際は、「マークダウン(Markdown)」というウェブ上の文字の書き方を知っておく必要があります。以下の記事で詳しく紹介していますのでご確認ください。

■ヒント2:料金や条件は「画像」があると伝わりやすい

商品・サービスの料金や条件は、文章で説明してもいいですし、表などの「画像」を活用して伝わりやすくしてもよいです(画像の推奨サイズ:横800px 縦400px)。

 

10)お問い合わせ先や表示の設定をします

「商品・サービスのお問合せ先のメールアドレス」「この情報を見て欲しい企業の興味関心・所在地・業種」を入力します。

メールアドレスは、必ず1つ以上は入れてください。

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11)下書きを保存して最終確認をします

「下書き保存して、プレビューする」をクリックすると、お役立ちサービスのプレビュー画面が表示されます。

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プレビュー内容に問題がなければ「公開する」をクリックします。

修正がある場合、「登録・編集画面に戻る」をクリックします。

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こちらの画面が表示されたら、「公開完了」です!

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以上(2024年2月作成)

同一労働同一賃金とは?企業に必要な対策をガイドラインにそって解説

現在、非正規雇用労働者の割合は、労働者全体のほぼ4割を占めています。
非正規雇用は多様な働き方を実現する一方で、さまざまな問題点も指摘されていますが、その1つが正規雇用労働者との間に存在する待遇格差です。

そこで国は、待遇差のうち、どのようなものが不合理であり、どのようなものが不合理でないのか、原則となる考え方と具体例を示した「同一労働同一賃金ガイドライン」を公表しています。

そのガイドラインにそって、同一労働同一賃金のルールがどのようなものか、企業にはどのような対策が求められるのか、わかりやすく解説します。

同一労働同一賃金とは?

国は2018年12月28日に、「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」を公表しました。*1
いわゆる「労働者派遣法」(2020年4月1日より施行)と「パートタイム・有期雇用労働法」(2021年4月1日より全面施行)を反映させた内容で、これが「同一労働同一賃金ガイドライン」(以後、「ガイドライン」)と呼ばれるものです。*2

まず、「ガイドライン」の背景と趣旨をみていきましょう。

背景

この問題の背景には、非正規雇用労働者の多さと、正規雇用者との待遇格差があります。

下の図1は、労働者数の推移を表しています。*3

図1 正規・非正規雇用労働者数・割合の推移

図1 正規・非正規雇用労働者数・割合の推移
出所)厚生労働省「非正規雇用の現状と課題」p.1
https://www.mhlw.go.jp/content/001214080.pdf

非正規雇用労働者は、2010年以降増加が続き、2020年にはやや落ち込みましたが、その後、再び増加に転じ、2023年には労働者全体の37.1%を占めています。

非正規雇用労働者の中では、パート(48.5%)とアルバイト(21.6%)の割合が高く、契約社員(13.3%)がそれに続いています。

また非正規雇用労働者のうち、正社員として働く機会がなく、非正規雇用で働いている、いわゆる「不本意非正規雇用」の割合は、非正規雇用労働者全体の9.6%(2023年)に当たります。

では、待遇はどうでしょうか(図2)。

図2 年齢階層別賃金(時給ベース)

図2 年齢階層別賃金(時給ベース)
出所)厚生労働省「非正規雇用の現状と課題」p.5
https://www.mhlw.go.jp/content/001214080.pdf

この図から、非正規雇用労働者の平均賃金は、一般労働者(非短時間労働者)が601円、短時間労働者が517円、正規雇用労働者(正社員・正職員)より低いことがわかります。

さらに、教育訓練の実施状況を正規雇用労働者と比較すると、非正規雇用労働者は、無期雇用パートタイム、有期雇用パートタイム、有期雇用フルタイムのいずれの就業形態においても、「計画的な教育訓練(OJT)」、「入職時のガイダンス(Off-JT)」は正規雇用労働者の7割前後となっています。
また、「将来のキャリアアップのための教育訓練(Off-JT)」は正規雇用労働者のわずか29.2%~35.7%と、その格差が際立っています。

このように、ガイドライン策定の背景には、全労働者に占める非正規雇用労働者の割合が高いのにもかかわらず、正規雇用労働者に比べて待遇が悪いという問題があります。

同一労働同一賃金の概要

同一労働同一賃金の導入は、同一企業における正規雇用労働者と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)との間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。*2
そして、どのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できる働き方を目指しています。

留意点は以下の2点です。*4

1)同じ企業で働く正社員と短時間労働者・有期雇用労働者との間で、基本給や賞与、手当、福利厚生などあらゆる待遇について、不合理な差を設けることが禁止されている。

2)事業主は、短時間労働者・有期雇用労働者から、正社員との待遇の違いやその理由などについて説明を求められた場合は、説明をしなければならない。

禁止される差別的待遇、何が含まれる?

ガイドラインには、まず「原則になる考え方」が示され、次に裁判で争い得る範囲として、「問題とならない例」「問題になる例」が記されています。*5

同一労働同一賃金で禁止される差別待遇にはどのようなものがあるのか、非正規雇用労働者の約7割を占める短時間労働者・有期雇用労働者を対象に、ガイドラインにそってみていきましょう。

ポイントは、短時間労働者・有期雇用労働者の待遇が、正規雇用労働者との働き方や役割の違いに応じたものになっているかどうかです。*4

基本給

原則となる考え方は、以下のようなものです。

労働者の「能力・経験」「業績・成果」「勤続年数」に応じて支給する場合は、これらが同一であれば同一の支給をし、違いがあれば違いに応じた支給をする。*4

問題となるのは、以下のようなケースです。

1)能力・経験に応じて基本給を支給している会社で、正社員が多くの経験を有することを理由に短時間労働者・有期雇用労働者より高い基本給を支給しているが、正社員のこれまでの経験は現在の業務に関連がない。

2)労働者の勤続年数に応じて支給している会社で、短時間・有期雇用労働者に対し、当初の労働契約の開始時から通算して勤続年数を評価せず、その時点の労働契約の期間のみによって勤続年数を評価した上で支給している。*1

昇給に関しての原則となる考え方は、以下のようなものです。

労働者の勤続による能力の向上に応じて行うものについては、同一の能力の向上には同一の、違いがあれば違いに応じた昇給を行わなければならない。*5

問題となるのは、こうした原則から外れたケースです。

賞与

原則となる考え方は、以下のようなものです。

会社の業績などへの労働者の貢献に応じて支給するものについては、同一の貢献には同一の、違いがあれば違いに応じた支給を行わなければならない。*4

問題となるのは、以下のようなケースです。

1)正社員には職務内容や会社の業績などへの貢献などにかかわらず全員に何らかの賞与を支給しているが、短時間・有期雇用労働者には支給していない。

2)会社の業績などへの労働者の貢献に応じて支給している会社で、正社員と会社の業績などへの同等の貢献がある有期雇用労働者に対し、同一の賞与を支給していない。*1

各種手当

原則となる考え方は、以下のようなものです。*5

1)役職手当で、役職の内容に対して支給するものについては、同一の内容の役職には同一の、違いがあれば違いに応じた支給を行わなければならない。

2)以下のような各種手当については、同一の支給を行わなければならない。

  • 業務の危険度または作業環境に応じて支給される特殊作業手当
  • 交替制勤務などに応じて支給される特殊勤務手当
  • 業務の内容が同一の場合の精皆勤手当
  • 所定労働時間を超えて正社員と同一の時間外労働に対して支給される時間外労働手当の割増率
  • 深夜・休日労働を行った場合に支給される深夜・休日労働手当の割増率
  • 通勤手当・出張旅費
  • 労働時間の途中に食事のための休憩時間がある際の食事手当
  • 同一の支給要件を満たす場合の単身赴任手当
  • 特定の地域で働く労働者に対する補償として支給する地域手当

問題となるのは、以下のようなケースです。*1

1)役職の内容に対して役職手当を支給している会社で、正社員の役職と同一の役職名であって同一の内容の役職に就く有期雇用労働者に、役職手当を正社員より低く支給している。

2)正社員と同じ時間数、職務の内容の深夜労働または休日労働を行った短時間労働者に、深夜労働または休日労働に対して支給される手当の単価を正社員より低く設定している。

3)正社員には、有期雇用労働者に比べ、食事手当を高く支給している。

4)正社員と有期雇用労働者にいずれも全国一律の基本給の体系を適用しており、かつ、いずれも転勤があるにもかかわらず、有期雇用労働者には地域手当を支給していない。

福利厚生・教育訓練

原則となる考え方は、以下のようなものです。*5

1)以下については、同一の利用・付与を行わなければならない。

  • 食堂、休憩室、更衣室など福利厚生施設の利用
  • 転勤の有無などの要件が同一の場合の転勤者用社宅
  • 慶弔休暇
  • 健康診断に伴う勤務免除・有給保障

2)病気休職については、無期雇用の短時間労働者には正社員と同一の、有期雇用労働者にも労働契約が終了するまでの期間を踏まえて同一の付与を行わなければならない。

3)法定外の有給休暇その他の休暇は、勤続期間に応じて認めているものについては、同一の勤続期間であれば同一の付与を行わなければならない。特に有期労働契約を更新している場合には、当初の契約期間から通算して勤続期間を評価する必要がある。

4)教育訓練は、現在の職務に必要な技能・知識を習得するために実施するものについては、同一の職務内容であれば同一の、違いがあれば違いに応じた実施を行わなければならない。

問題となるのは、以上の原則から外れたものです。

なお、このガイドラインに記載がない退職手当、住宅手当、家族手当などの待遇や、具体例に該当しないケースについても、不合理な待遇差の解消が求められています。*1
そのため、ガイドラインには、各社の労使により、それぞれの事情に応じて待遇の体系について議論していくことが望まれると記されています。

同一労働同一賃金への対応 企業のメリットは?

同一労働同一賃金は、企業にとっては人件費の上昇を意味します。
では、この問題に取り組むメリットはどこにあるのでしょうか。

厚生労働省の「同一労働同一賃金に関する法整備について(報告)」には、「雇用形態にかかわらない公正な評価に基づいて待遇が決定される」ことによる効果が、以下のように記されています。*6

多様な働き方の選択が可能となるとともに、非正規雇用労働者の意欲・能力が向上し、労働生産性の向上につながり、ひいては企業や経済・社会の発展に寄与する

また、非正規雇用労働者の待遇情報がオープンになれば、労働市場を通じて正規雇用労働者との不合理な格差を是正するメカニズムが働くようになるため、待遇に関する企業の情報がオープンになればなるほど、企業は労働市場で選別されるようになるという指摘もあります。*7

したがって、ガイドラインにそって非正規雇用労働者に公正な待遇を担保し、それをオープンにすれば、労働者から選ばれる企業になるポテンシャルが高まるといえるでしょう。

ただし、逆に、不公正な待遇情報がオープンになると、離職率が上昇するだけではなく、新規の人材獲得にも苦戦するようになるというリスクも指摘されています。

人事担当者が取り組むべき対策

同一労働同一賃金に関して、人事担当者がとるべき具体的な対策についてみていきましょう。

導入に際しては、以下のような3ステップをふむことが大切です。*2

STEP1:情報収集と社内点検

まず、情報収集は以下の3つが基本です。

  • パンフレット・リーフレット で法律の内容を把握する
  • 自社の法遵守の状況を法対応チェックツールで確認する
  • 相談窓口に法律の内容を詳しく聞いてみる

次に、社内点検では、以下のポイントを押さえます。

1)従業員の雇用形態の確認

  • 正社員と比べてパート・アルバイトなど労働時間が少ない従業員はいるか。
  • 契約社員や派遣労働者など契約期間が決まっている従業員はいるか。

2)労働条件の確認

  • 法を遵守した雇用契約書になっているか。
  • 正社員とパート・アルバイトなどとの間で待遇に違いはないか。

STEP2:就業規則と賃金体系の見直し

就業規則と賃金体系の見直しについては、厚生労働省による、以下のような支援の活用を検討しましょう。

1)「働き方改革推進支援センター」:労務管理の専門家による無料の相談支援

2)「キャリアアップ助成金」:非正規雇用労働者の正社員化や待遇改善を実施した事業者への助成金の支給

3)職務分析・職務評価の導入支援:基本給の現状確認・賃金制度見直しの一助になる

STEP3:検証

同一労働同一賃金の取り組みによって、従業員のモチベーションが向上したか、離職率は低下したかなどを検証し、その結果を今後の取り組みにいかします。

おわりに

同一労働同一賃金にどのように対応すれば、企業の競争力向上につながるのでしょうか。

それをテーマにした研究では、種々の分析をふまえ、以下のような結論を導き出しています。*7

同一労働同一賃金の待遇説明義務がただちに企業の競争力を高めるのではなく、競争力を高めるために待遇説明をどういかすかという発想の転換が、企業には求められることが示された。

これは、企業の競争力向上に結び付くような有益な効果は、同一労働同一賃金を導入すればそれだけで自動的に得られるものではないということを意味しています。

公正な待遇やそれを説明をすること自体が即メリットにつながるわけではなく、日々の職場での個別のコミュニケーションを通じて、待遇に対する非正規雇用労働者の納得度が高まり、モチベーションがアップする。そのことによって能力開発や職場への積極的な参加を促すことができ、それが企業の競争力向上につながるというのです。

こうした視点も備え、同一労働同一賃金が、従業員・企業双方にとって有益な取り組みになるよう配慮することが、人事担当者の腕の見せ所ではないでしょうか。

資料一覧

*1
出所)厚生労働省「同一労働同一賃金ガイドライン」(厚生労働省告示第430号)p.7, p.9, p.10, pp.11-12, p.13
https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000469932.pdf

*2
出所)厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144972.html

*3
出所)厚生労働省「非正規雇用の現状と課題」p.1, p.4
https://www.mhlw.go.jp/content/001214080.pdf

*4
出所)厚生労働省「「同一労働同一賃金」への対応に向けて」p.1, p.2
https://www.mhlw.go.jp/content/000824263.pdf

*5
出所)厚生労働省「「同一労働同一賃金ガイドライン」の概要①」p.1, p.2
https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000470304.pdf

*6
出所)厚生労働省「同一労働同一賃金に関する法整備について(報告)」p.1
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12602000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Roudouseisakutantou/0000167471.pdf

*7
出所)中村天江(リクルートワークス研究所主任研究員)「「同一労働同一賃金」は企業の競争力向上につながるのか?─待遇の説明義務に着目して」(『日本労働研究雑誌』)pp.54-55,p.42
https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2019/05/pdf/042-056.pdf

以上(2024年3月)

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画像:photo-ac

2024年問題と物流業界 解決すべき課題と対策は?

トラック、タクシー、バスなどの自動車運送は、私たちの生活や経済活動を支えています。
ところが、その自動車運送業界は現在、危機に瀕しています。ドライバーの時間外労働の上限を規制する「改善基準告示」の改正が2024年4月に施行されるためです。

この問題は現在、自動車運転業界、特にトラック運転者が担う物流に深刻な影響を与えます。
これがいわゆる「2024年問題」です。

その最大の問題とはなんでしょうか。
また、その問題を解決するためには、どのような取り組みが必要でしょうか。

本記事では、自動車運送業界のうち物流に対象を絞り、2024年問題によって物流が直面する課題について解説し、国の打ち出した対策を中心に、そのソリューションを明らかにします。

2024年問題の概要と物流業界

まず、2024年問題の概要についてみていきましょう。

背景

持続可能な物流の実現に向けてドライバーの安定的な確保は大切ですが、トラック業界は、ドライバー不足という大きな課題を抱えています。*1

2022年9月の求人倍率は、全職業平均が1.20であるのに対して、トラック運転者は2.12と、約1.8倍に上っています(図1)。

図1 トラック運転者の求人倍率の推移

図1 トラック運転者の求人倍率の推移
出所)国土交通省「国民のみなさまへ トラック運転者手の仕事を知ってみよう 統計からみるトラック運転者の仕事」
https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/truck/work

こうしたドライバー不足の大きな要因として、他業種に比べて厳しい労働環境にあることが挙げられます。
全産業平均に比べて、労働時間が約20%長いのにもかかわらず、賃金は約5~10%安く、業務内容が厳しい現場もあります。

労災請求・支給決定の件数も、こうした道路貨物運送業の長時間・過重労働を物語っています。*2
2022年度の脳・心臓疾患の労災請求件数は133件、労災支給決定件数は50件に上り、ともに全業種の中で最多です。

こうした労働環境を改善するためには、物流現場での働き方改革が必要です。また、自動車運転者の過重労働を防ぐことは、労働者自身の健康確保だけでなく、国民の安全確保の観点からも重要です。*3

「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(以後、「改善基準告示」)の見直しは、こうした状況を背景にしています。

改善基準告知の改正内容

改善基準告示は、法定労働時間の段階的な短縮を踏まえて見直しが行われた1997年以降、改正が行われていませんでした。*3

しかし、2022年12月に自動車運転者の健康確保などの観点から見直しが行われ、トラック、バス、ハイヤー・タクシーなどの自動車運転者について、労働時間などの労働条件の向上を図るため、拘束時間の上限、休息期間、運転時間などについて新たな基準が定められました。

労働基準法改正による時間外労働の上限規制では、年間960時間と定められていたものの、これまで適用が猶予されていました。したがって、違反しても罰則はありませんでしたが、2024年4月からは違反した場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則が科されることがあります(図2)。*2

図2 労働基準法改正による時間外労働の上限規制の適用

図2 労働基準法改正による時間外労働の上限規制の適用
出所)公益社団法人 全日本トラック協会「解説 トラック運転者の改善基準告示ー2024年4月適用ー」p.1
https://jta.or.jp/pdf/kaizen/kaizen_text.pdf

この960時間は将来的には一般労働者と同じ720時間にすることを目指しています。

次に、下の表1は、トラックの改善基準告示見直しのポイントです。*3

表1 トラックの改善基準告示見直しのポイント

表1 トラックの改善基準告示見直しのポイント
出所)厚生労働省「自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト>トラック運転者の改善基準告示>改善基準告示とは?」
https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/truck/notice

こうした改正の施行が2024年4月1日であることから、この改正とその影響は「2024年問題」と呼ばれています。

物流業界最大の問題とは?

では、この2024年問題で、物流業界に想定される最大の問題とはなんでしょうか。
それは、輸送力不足です。

国は施策がない場合、需要に対して、2024年には14%、2030年には34%、輸送力が不足すると試算しています。*4

その背景となる状況を、厚生労働省による「自動車運転者の労働時間等に係る実態調査結果」(2021年度)からみていきましょう。

1年の拘束時間

表1でみたように、「改善基準告示」の改正では、1年の拘束時間(「労働時間」+「休憩時間」)の上限を、現行より216時間短い3,300時間に定めています。

しかし、1年の拘束時間が3,300時間を超えるトラック運転者の割合は21.7%に上ります(図3)。*5

図3 トラック運転者の1年の拘束時間

図3 トラック運転者の1年の拘束時間
出所)厚生労働省「資料1 自動車運転者の労働時間等に係る実態調査結果(概要)」p.3
https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000883703.pdf

1日の休息期間

休息期間はどうでしょうか。
「改善基準告示」では、1日の休息期間(業務終了時刻から、次の始業時刻までの時間)を、継続11時間を基本とし、下限を9時間と定めています。

しかし、継続11時間を超えるのは全体のわずか31.1%で、下限の継続9時間を超えるのも52.4%にすぎません(図4)。

図4 トラック運転者の1日の休息期間

図4 トラック運転者の1日の休息期間
出所)厚生労働省「資料1 自動車運転者の労働時間等に係る実態調査結果(概要)」p.11
https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000883703.pdf

足元のトラック運転者不足

上述したように、改善基準告示の改正は、ドライバーの健康確保の観点から、労働時間などの労働条件の向上を図るためです。それは、ドライバー不足の大きな要因である厳しい労働環境を改善することにもつながります。

しかし、1年の拘束時間と1日の休息期間の実態からもわかるように、改正された改善基準告示を遵守するためには、ドライバーの労働時間を現在よりかなり削減する必要があります。
その影響で短期的には人手不足がさらに厳しくなり、輸送力不足という深刻な状況をまねくことが危惧されています。

これが「2024年問題」最大の課題です。

不足する人手…取り組むべき対策とは

2024年2月16日、国は「2024年問題」の対策指針を示した「2030年度に向けた政府の中長期計画」(以後、「中長期計画」)を公表しました。
その内容を中心に、物流業者がとるべき対策についてみていきましょう。

賃金の引上げ

まず、2024年に、運転者確保のための賃上げを図ります(図5)。*6

図5 賃上げの効果

図5 賃上げの効果
出所)内閣官房「物流革新及び賃上げに向けた政府の取組」p.9
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/buturyu_kakushin/ik_dai1/siryou.pdf

トラック事業者が受け取る「標準的運賃」を8%引き上げるほか、荷物の積み下ろし作業にも適正な対価を求め、これらの対応によってトラック事業者の収益を改善させ、運転者の賃金を2024年度に10%前後引き上げることを目指します。

逆にいえば、これらの施策をとらず、賃上げの達成ができない物流業者は、今以上に深刻な人手不足に陥る可能性が高いといっていいでしょう。

政策パッケージ

国は「政策パッケージ」を打ち出し、さまざまな施策を積み上げれば、輸送力の不足分を補えるという試算を示しました(表2)。*6

表2 政策パッケージの効果

表2 政策パッケージの効果
出所)内閣官房「物流革新及び賃上げに向けた政府の取組」p.9
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/buturyu_kakushin/ik_dai1/siryou.pdf

パッケージの内容を概観していきましょう。

(1)荷待ち・荷役の削減

荷主や物流事業者を対象に、自動化・機械化設備・システム投資を支援することで、2030年度までに運転者の荷待ちや荷役の時間を2019年度比で1人あたり年間125時間削減する。

(2)積載率向上・物流の効率化

共同輸配送や帰り荷確保を促進する取り組みなどによって、2030年度までに積載率を44%にまで増加させる。また、自動運転やドローンなどデジタル技術を活用し、物流の効率化を図る。

(3)モーダルシフト

鉄道(コンテナ貨物)や内航海運(フェリー・RORO船など)の輸送量を今後10年程度で倍増することを目指し、トラックなどの自動車で行われている貨物輸送を環境負荷の小さい鉄道や船舶の利用へと転換する。

(4)再配達削減

コンビニ受け取りや置き配、ゆとりある配送日時の指定など、物流負荷の低い受取方法を選択した消費者に対しポイントを還元する実証事業などを行い、再配達を現在の12%から6%に削減する。

(5)トラック輸送力拡大など

大型トラックの法定速度を2024年4月に90km/hに引き上げる。また、トラック輸送の省人化の促進や労働生産性の向上に向けて、1台で通常のトラック2台分の輸送を可能とする「ダブル連結トラック」の導入を推進し、その運転に必要な大型免許の取得を促進するなどの取り組みをする。

物流業者は、今後、以上のような施策が実施されることを睨み、それに対応可能な体勢を整えることが重要です。

おわりに

物流は国民の生活と経済活動を支える重要な社会インフラです。
そのため、国も2024年問題を解決するために、中長期計画をとりまとめ、有益な対策を講じようとしています。
物流業者には、そうした対策に歩調を合わせ、対応することが求められることになります。

最後に、中長期計画に盛り込まれていない点に言及したいと思います。
それは、2024年問題は、長期的な観点に立てば、今まで採用できなかった優秀な人材を採用するチャンスとも捉えられるのではないかということです。

たとえば、トラック運転者は男性がなるものというイメージがありますが、国は「トラガール促進プロジェクト」と銘打った取り組みを推進しています。*7
「トラガール」とはトラック・ガール、つまり女性のトラック運転者のことです。

国土交通省「トラガール促進プロジェクト」

トラック運送業界では近年、女性をトラック運転者として積極的に採用する動きが広がってきました。そのため、トイレや更衣室など施設の改修や力仕事の必要のない車両の整備、ライフスタイルに合わせた働き方が選べる制度の創設、福利厚生の充実など、さまざまな取り組みを進めています。*8

そうした観点からみれば、改善基準告示の改正・施行も、中長期計画も、女性が働きやすい環境の整備とも通じます。

国の打ち出した対策とともに、こうした視点を備えることも必要ではないでしょうか。

資料一覧

*1
出所)国土交通省「国民のみなさまへ トラック運転者の仕事を知ってみよう 統計からみるトラック運転者の仕事」
https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/truck/work

*2
出所)公益社団法人 全日本トラック協会「解説 トラック運転者の改善基準告示ー2024年4月適用ー」p.2, p.1
https://jta.or.jp/pdf/kaizen/kaizen_text.pdf

*3
出所)厚生労働省「自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト>トラック運転者の改善基準告示>改善基準告示とは?」
https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/truck/notice

*4
出所)内閣官房「2030年度に向けた政府の中長期計画(ポイント)」(2024年2月16日)p.2
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/buturyu_kakushin/pdf/20240216.pdf

*5
出所)厚生労働省「資料1 自動車運転者の労働時間等に係る実態調査結果(概要)」(2021年)p.3, p.11
https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000883703.pdf

*6
出所)内閣官房「物流革新及び賃上げに向けた政府の取組」p.9, p.5, p.6, p.8, p.7
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/buturyu_kakushin/ik_dai1/siryou.pdf

*7
出所)国土交通省「トラガール促進プロジェクト」
https://www.mlit.go.jp/jidosha/tragirl/index.html

*8
出所)国土交通省「トラガール促進プロジェクト>トラガールの魅力」
https://www.mlit.go.jp/jidosha/tragirl/miryoku/

以上(2024年3月)

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画像:photo-ac

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