【規程・文例集】「マイナンバー(特定個人情報)取扱規程」のひな型

書いてあること

  • 主な読者:マイナンバーやマイナンバーを含む個人情報(特定個人情報等)の適正な取り扱いを徹底させるに当たって「取扱規程」のひな型が欲しい経営者
  • 課題:具体的に何を定めればよいかが分からない
  • 解決策:特定個人情報等の取得、利用、保存、提供、削除・廃棄への対応などについて定める

1 マイナンバー制度への対応

「給与所得に係る源泉徴収票作成事務」「雇用保険関係届出事務」「健康保険・厚生年金保険関係届出事務」など、企業がマイナンバーを取り扱うこととなるケースは多岐にわたります。

個人情報保護委員会「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)」により、社員数が100人超の企業は、マイナンバーやマイナンバーを含む個人情報(特定個人情報等)の具体的な取り扱いを定めた規程を作成することが義務付けられています。

社員数が100人以下の企業は、取扱規程の策定は義務ではありませんが、「特定個人情報等の取扱い等を明確化する」こととされています。結局のところ、

特定個人情報等の取得、利用、保存、提供、削除・廃棄への対応などについて具体的に定めた「取扱規程」を整備しておく

に越したことはありません。

なお、マイナンバー制度に関する解説などは、個人情報保護委員会の以下のページが参考になります。

■「マイナンバーガイドライン入門(事業者編)」「はじめてのマイナンバーガイドライン(事業者編)」■
https://www.ppc.go.jp/legal/policy/document/
■特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)■
https://www.ppc.go.jp/legal/policy/my_number_guideline_jigyosha/
■「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)」及び「(別冊)金融業務における特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン」 に関するQ&A■
https://www.ppc.go.jp/legal/policy/faq/

2 マイナンバー(特定個人情報)取扱規程のひな型

以降で紹介するひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の企業によって定めるべき内容が異なってきます。実際にこうした規程を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

【マイナンバー(特定個人情報)取扱規程のひな型】

第1章 総則

第1条(目的)
本規程は、当社における個人番号および特定個人情報(以下「特定個人情報等」という)の取り扱いについて、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(以下「番号利用法」という)、「個人情報の保護に関する法律」および個人情報保護委員会が定める「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)」(以下「マイナンバーガイドライン」という)を遵守し、適正に取り扱うための基本事項を定める。

第2条(用語の定義)
本規程において各用語の定義は、次に定めるところによる。なお、本規程における用語は、他に特段の定めのない限り、番号利用法その他関連法令の定めに従う。
  1.個人番号
   番号利用法の規定により、住民票コードを変換して得られる番号であって、当該住民票コードが記載された住民票に係る者を識別するために指定されるものをいう。
  2.特定個人情報
   個人番号をその内容に含む個人情報をいう。
  3.特定個人情報等
   個人番号および特定個人情報をいう。
  4.個人情報ファイル
   個人情報データベース等、ある特定の個人情報について容易に検索することができるように体系的に構成した情報の集合物をいう。
  5.特定個人情報ファイル
   個人番号をその内容に含む個人情報ファイルをいう。
  6.本人
   個人番号によって識別される特定の個人をいう。
  7.従業員等
   当社の役員、正社員、嘱託社員、契約社員、パート社員、アルバイト社員および派遣社員をいう。

第3条(適用範囲)
1)本規程は、当社の全ての従業員等に適用する。
2)本規程は、当社で取り扱う全ての特定個人情報等を対象とする。

第4条(個人番号を取り扱う事務の範囲)
1)当社が個人番号を取り扱う事務の範囲は次の通りとする。
  1.雇用保険関係届出事務
  2.健康保険・厚生年金保険関係届出事務
  3.給与所得・退職所得に係る源泉徴収票作成事務
  4.報酬、料金、契約金および賞金の支払調書作成事務
  5.配当、剰余金の分配および基金利息の支払調書作成事務
  6.不動産の使用料等の支払調書作成事務

2)番号利用法に規定される利用範囲において、第1項各号に定める事務の範囲を超えて個人番号を取り扱う場合、あらかじめ利用目的を明らかにし、本人に通知しなければならない。

第5条(特定個人情報等の範囲)
第4条において当社が個人番号を取り扱う事務において使用される特定個人情報等の範囲は、個人番号、および個人番号とともに管理される氏名、生年月日、性別、住所、電話番号、電子メールアドレスとする。

第2章 特定個人情報等の取り扱い

第6条(特定個人情報等の取り扱いに関する基本方針)
1)当社における特定個人情報等の取り扱いに関する基本方針は次の通りとする。
  1.特定個人情報等の取り扱いについて、番号利用法、関連法令およびマイナンバーガイドライン等、国が定める指針その他の規範を遵守し、本規程に従って運用する。
  2.特定個人情報等を取り扱う事務の処理に携わる従業員等を明確にする。これに含まれない従業員等は本人もしくはその扶養親族以外の特定個人情報等を取り扱わないものとする。
  3.特定個人情報等の漏洩、滅失または毀損(以下「情報漏洩等事案」)を防止するために必要な安全管理措置を講じる。
  4.特定個人情報等の取り扱いを外部に委託する際には、別途定める「外部委託管理規程」(省略)に従って、委託先の選定、契約、監督を行う。委託を受けた者が再委託する場合にも当社が同様の監督を行う。
  5.特定個人情報等の取り扱いに関する質問・苦情等を受け付ける窓口を設置し、対応に当たる。
2)上記基本方針は、社内に掲示する、もしくはイントラネットに掲載することによって従業員等に周知する。

第7条(個人番号の提供の求め)
1)当社は、第4条に定める個人番号を取り扱う事務を処理するために必要があるときに限り、本人に対し、本人およびその扶養親族の個人番号の提供を求めることができる。
2)第1項にかかわらず、当社は、本人との法律関係等に基づき、第4条に定める個人番号を取り扱う事務の発生が予想される場合には、その時点で個人番号の提供を求めることができるものとする。
3)本人が、個人番号の提供要求または第8条に基づく本人確認を拒む場合には、法令で定められた義務であることを周知し、提供および本人確認に応じるよう促すものとする。

第8条(本人確認)
1)本人から個人番号の提供を受ける場合、別途定める個人番号確認手順および個人番号届出書(省略)に従って、当該本人の個人番号の確認および身元確認を行うものとする。
2)本人の代理人から個人番号の提供を受ける場合、別途定める個人番号確認手順および個人番号届出書(省略)に従って、当該代理人の代理権の確認および身元確認を行い、本人の個人番号の確認を行うものとする。
3)個人番号届出書には、番号利用法の規定により提示を受けることとされている書類またはその写しを添付するものとする。
4)個人番号が変更された場合、本人は速やかに第10条第2項に定める事務取扱責任者に申告するものとする。
5)当社が一定の期間ごとに個人番号の変更の有無を確認する際、本人はその確認に協力するものとする。

第9条(目的外利用の禁止)
当社は、第4条に定める個人番号を取り扱う事務を処理するため以外に、特定個人情報等の取り扱いは一切行わない。ただし、番号利用法に特別の規定がある場合を除く。

第3章 組織的安全管理措置・人的安全管理措置

第10条(組織体制)
1)人事部を特定個人情報等を管理する責任部署とする。
2)人事部長を事務取扱責任者とする。
3)人事部長以外の人事部の従業員等および各部署において個人番号が記載された書類等を受領する担当者を事務取扱担当者とする。
4)法務部長を特定個人情報監査責任者とする。

第11条(事務取扱責任者の責務)
事務取扱責任者は、次の業務を所管する。
  1.特定個人情報等の安全管理に関する教育・研修の企画および実施
  2.事務取扱担当者の監督
  3.特定個人情報等の取り扱い状況の把握
  4.特定個人情報等の利用申請の承認および記録等の管理
  5.特定個人情報等の取り扱いを外部に委託する場合の、委託先の選定
  6.特定個人情報等の取り扱いを外部に委託する場合の、委託先における特定個人情報等の取り扱い状況等の監督(実地調査を含む)

第12条(事務取扱担当者の責務)
1)事務取扱担当者は、本規程およびその他の社内規程並びに事務取扱責任者の指示した事項に従い、十分な注意を払って特定個人情報等を取り扱うものとする。
2)事務取扱担当者は、情報漏洩等事案の発生またはその兆候を把握した場合、速やかに事務取扱責任者に報告するものとする。
3)各部署において個人番号が記載された書類等を受領する事務取扱担当者は、個人番号の確認等の必要な事務を行った後、速やかにその書類等を第10条第1項に定める責任部署に受け渡すこととし、自分の手元に個人番号を残してはならない。

第13条(運用状況の記録)
1)事務取扱担当者は、本規程に基づく運用状況を確認するため、次の事項を記録するものとする。
  1.特定個人情報等の取得および特定個人情報ファイルへの入力
  2.特定個人情報ファイルの利用・出力
  3.特定個人情報等が記録された電子媒体または書類等の持ち出し
  4.特定個人情報ファイルの削除・廃棄
  5.特定個人情報ファイルの削除・廃棄を委託した場合、委託先から受領した証明書等
2)特定個人情報ファイルを情報システムで取り扱う場合、事務取扱担当者の情報システムの利用状況(ログイン実績、アクセスログ等)を記録するものとする。

第14条(取り扱い状況の確認手段)
1)責任部署の事務取扱担当者は、特定個人情報ファイルの取り扱い状況を確認するための手段として、特定個人情報管理台帳に次の事項を記録するものとする。
  1.特定個人情報ファイルの種類、名称
  2.責任者、取り扱い部署
  3.利用目的
  4.削除・廃棄の状況
  5.アクセス権限を有する者
2)特定個人情報管理台帳には、特定個人情報等を記載してはならない。

第15条(情報漏洩等事案への対応)
1)事務取扱責任者は、情報漏洩等事案が発生したことを知った場合、またはその可能性が高いと判断した場合、適切かつ迅速に対応しなければならない。
2)事務取扱責任者は、情報漏洩等事案が発生したと判断した場合は、その旨を速やかに代表取締役に報告し、事実関係の調査および原因の究明に努めるものとする。
3)事務取扱責任者は、情報漏洩等事案によって影響を受ける可能性のある本人に対し、事実関係の通知、原因関係の説明等を速やかに行うものとする。
4)事務取扱責任者は、情報漏洩等事案が発生した場合、個人情報保護委員会および主務大臣等に対して必要な報告を速やかに行うものとする。
5)事務取扱責任者は、情報漏洩等事案が発生した原因を分析し、再発防止に向けた対策を講じるものとする。
6)二次被害の防止、類似事案の発生防止等の観点から、必要に応じて、事実関係および再発防止策等を公表する。

第16条(教育・研修)
1)事務取扱責任者は、特定個人情報等の安全管理に関する教育・研修を実施し、事務取扱担当者および従業員等に本規程を遵守させるものとする。研修の内容および実施時期は、毎年、事務取扱責任者が定める。
2)事務取扱担当者は、事務取扱責任者が実施する特定個人情報等の安全管理に関する教育・研修を受けなければならない。

第17条(監査)
1)特定個人情報監査責任者は、特定個人情報等を管理する責任部署その他各部署における特定個人情報等の取り扱いが、番号利用法、関連法令、マイナンバーガイドライン等国が定める指針その他の規範および本規程と合致していることを定期的に監査する。
2)特定個人情報監査責任者は、事務取扱責任者および事務取扱担当者以外の者から監査員を指名し、監査を指揮することができる。
3)特定個人情報監査責任者は、特定個人情報等の取り扱いに関する監査結果を代表取締役に報告するものとする。

第18条(取扱状況の確認並びに安全管理措置の見直し)
代表取締役は、監査結果に照らし、必要に応じて特定個人情報等の取り扱いに関する安全対策、諸施策を見直し、改善しなければならない。

第4章 物理的安全管理措置

第19条(特定個人情報等を取り扱う区域の管理)
特定個人情報ファイルを取り扱う情報システムを管理する区域(以下「管理区域」)および特定個人情報等を取り扱う事務を実施する区域(以下「取扱区域」)を明確にし、それぞれの区域に対し、次の措置を講じる。
  1.管理区域
   ICカード、ナンバーキー等による入退室管理システムの設置等により入退室管理を行うものとする。また、管理区域に持ち込む機器および電子媒体等の制限を行うものとする。
  2.取扱区域
   事務取扱担当者以外の者の往来が少ない場所や、取り扱いを後ろからのぞき見される可能性が低い場所への座席配置等、情報漏洩等事案を防止するための工夫を施すものとする。また、必要に応じて壁または間仕切り等を設置するものとする。

第20条(機器および電子媒体等の盗難等の防止)
管理区域および取扱区域における特定個人情報等を取り扱う機器、電子媒体および書類等の盗難または紛失等を防止するために、次の措置を講じる。
  1.特定個人情報等を取り扱う機器、電子媒体、書類等は、施錠できるキャビネット・書庫等に保管する。
  2.特定個人情報ファイルを取り扱う情報システムが機器のみで運用されている場合は、セキュリティーワイヤ等により固定する。

第21条(電子媒体等を持ち出す場合の漏洩等の防止)
1)特定個人情報等が記録された電子媒体または書類等の持ち出しは、次に掲げる場合を除き禁止する。なお、「持ち出し」とは特定個人情報等を、管理区域または取扱区域の外へ移動させることをいい、事業所内での移動等であっても持ち出しに該当するものとする。
  1.第4条に定める個人番号を取り扱う事務に関して、行政機関等に対しデータまたは書類等を提出する場合
  2.第4条に定める個人番号を取り扱う事務を委託する場合であって、事務を実施する上で必要と認められる範囲内で委託先に対しデータを提供する場合
2)第1項により、特定個人情報等が記録された電子媒体または書類等の持ち出しを行うときには、次の安全策を講じるものとする。ただし、提出方法に関して行政機関等による指定がある場合は、それに従う。
  1.特定個人情報等が記録された電子媒体の持ち出しを行う場合
   ・持ち出しデータの暗号化、パスワードによる保護
   ・施錠できる搬送容器の使用
  2.特定個人情報等が記録された書類等の持ち出しを行う場合
   ・封かん、目隠しシールの貼付
3)第1項による持ち出しを行う場合には、移送する特定個人情報等の特性に応じて、追跡可能な移送手段を利用する等、適切な方法を選択することとする。

第22条(個人番号の削除、機器および電子媒体等の廃棄)
1)第4条に定める個人番号を取り扱う事務を行う必要がなくなった場合で、所管法令等の法定保存期間を経過したときは、事務取扱担当者は速やかに次のいずれかの方法で個人番号を復元できないように削除または廃棄する。
  1.特定個人情報等が記載された書類等を廃棄する場合
   ・復元不可能な程度に細断可能なシュレッダーの利用
   ・焼却または溶解
  2.特定個人情報等が記録された機器および電子媒体を廃棄する場合
   ・専用のデータ削除ソフトウエアの利用
   ・物理的な破壊
2)事務取扱担当者は、特定個人情報ファイル中の個人番号または一部の特定個人情報等を削除する場合、容易に復元できない手段を用いるものとする。
3)特定個人情報等を取り扱う情報システムにおいては、関連する法定調書の法定保存期間経過後に個人番号を削除することを前提として、情報システムを構築するものとする。
4)個人番号が記載された書類等については、関連する法定調書の法定保存期間経過後に廃棄するものとする。
5)事務取扱担当者は、個人番号もしくは特定個人情報ファイルを削除した場合、または電子媒体等を廃棄した場合には、削除あるいは廃棄した記録を保存するものとする。また、これらの作業を委託する場合には、委託先が確実に削除または廃棄したことについて証明書等により確認するものとする。

第5章 技術的安全管理措置

第23条(アクセス制御)
特定個人情報等へのアクセスについて、次の通り制御する。
  1.個人番号とひも付けてアクセスできる情報の範囲を、アクセス制御により限定する。
  2.特定個人情報ファイルを取り扱う情報システムを、アクセス制御により限定する。
  3.ユーザーIDに付与するアクセス権限により、特定個人情報ファイルを取り扱う情報システムを使用できる者を、事務取扱責任者および事務取扱担当者に限定する。 

第24条(アクセス者の識別と認証)
特定個人情報等を取り扱う情報システムは、ユーザーID・パスワード等により、事務取扱責任者、事務取扱担当者が正当なアクセス権限を有するものであることを識別した結果に基づき、認証するものとする。

第25条(外部からの不正アクセス等の防止)
情報システムを外部からの不正アクセスまたは不正ソフトウエアから保護するため、次の対策を講じ、適切に運用する。
  1.情報システムと外部ネットワークとの接続箇所にファイアウオールを設置し、不正アクセスを遮断する。
  2.情報システムおよび機器にセキュリティー対策ソフトウエア(ウイルス対策ソフトウエア等)を導入する。
  3.導入したセキュリティー対策ソフトウエア等により、入出力データにおける不正ソフトウエアの有無を確認する。
  4.機器やソフトウエア等に標準で備わっている自動更新機能等を活用し、ソフトウエア等を最新の状態にする。
  5.ログ等の分析を定期的に行い、不正アクセス等を検知する。

第26条(情報漏洩等の防止)
特定個人情報等をインターネット等により外部に送信する場合、通信経路における情報漏洩等および情報システム内に保存されている特定個人情報等の情報漏洩等を防止するため、次の措置を講じる。
  1.通信経路における情報漏洩等の防止
   ・通信経路の暗号化
  2.情報システム内に保存されている特定個人情報等の情報漏洩等の防止
   ・データの暗号化またはパスワードによる保護

第6章 その他

第27条(罰則)
従業員等が故意または重大な過失により、本規程に違反した場合、就業規則または契約および法令に照らして処分を決定する。

第28条(改廃)
本規程の改廃は、取締役会において行うものとする。

附則
本規程は、○年○月○日より施行する。

以上(2022年11月)
(監修 有村総合法律事務所 弁護士 小出雄輝)

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【朝礼】その情報は真実か。そして、いま必要か

皆さん、今朝は新聞を読んできましたか。テレビやインターネットでニュースを見ましたか。あるいは出社して、ほかの人と会話をしましたか。新聞、テレビ、インターネット、口コミなど、私たちは膨大な情報に囲まれています。こうした多くの情報の中から、必要な情報を正確に見極めることは、とても大切です。

皆さんは、「死せる孔明(こうめい)、生ける仲達(ちゅうたつ)を走らす」ということわざを聞いたことがあるでしょう。これは三国志に出てくる蜀(しょく)という国の軍師・諸葛孔明(しょかつこうめい)が残した逸話からくる有名な故事です。

三国時代、蜀と魏(ぎ)の両軍が五丈原で対陣中、孔明は病死しました。孔明の部下の将である楊儀(ようぎ)は軍をまとめて退却を始めました。司馬(しば)仲達は孔明の死を知り、追撃を始めましたが、蜀軍が反撃のようすを見せたので「孔明が死んだというのは謀略ではないか」と恐れ、追撃をやめて退却したという話です。実は孔明は死ぬ間際、自らが死んだことが敵国である魏の軍師・仲達に悟られれば、必ず攻撃されると考えました。そこで、孔明は自分と瓜二つの木像を作っておきました。孔明が生前に想定した通り、孔明の死後、仲達は蜀軍を攻撃してきました。そのとき、死んだとされる孔明が蜀軍を指揮して反撃してきたため、魏軍は逃げ出しました。もちろん、魏軍が見た孔明は木像です。死んだ後も、孔明は情報を巧みに操作し、蜀軍の危機を救ったのです。

「死せる孔明、生ける仲達を走らす」は「すぐれた人物は死後も生きているものを恐れさせる。または、生前と同じように大きな影響力を及ぼす」ということの例えとされます。

私は他の教訓も含んでいると考えています。例えば、孔明の立場では、情報を効果的に発信することで、自らの立場を有利に持っていけることです。一方、仲達の立場では、誤った情報を根拠に判断を下すと、千載一遇の好機を逸する場合があることです。いずれも、私たちが仕事をする上で、特に情報に接する際のヒントとなりますが、私は皆さんには仲達を反面教師として情報に接してほしいのです。

現代は三国志の時代よりもはるかに情報メディアが発達しています。新聞、テレビ、インターネット、口コミとさまざまなメディアがあります。だからこそ、私たちは、玉石混合の情報から必要な情報を正確に取捨選択しなければなりません。その基準は、「まず、その情報は真実か否か、次に、いま本当に必要か、あるいは将来必要なときがくるか」としてください。

取引先や上司・同僚から必要とされるビジネスパーソンとなるためには、相手が求める情報を、正確に、素早く、適正な水準で提供することが不可欠です。要は「情報力を身に付ける」ということになります。とは言っても、あまりにも漠然としすぎていて、何から手を付けてよいか分からない人は多いでしょう。身に付けるべき情報は、取引先・上司・同僚がいま求めるもの、これから求めるであろうものを優先してください。身に付けるための具体的な方法は、新聞を読む、書籍を読む、セミナーに参加する、上司・同僚に質問する、人脈を広げるなどです。

情報力は武器となり、業務に大いに役立つだけでなく、皆さんのビジネスパーソンとしての価値を高めます。情報力を身に付けてください。

以上(2022年11月)

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画像:Mariko Mitsuda

知っていますか? 社会保険の未加入などを指摘する年金事務所の「社会保険調査」

書いてあること

  • 主な読者:年金事務所の「社会保険調査」なるものがあることを知った経営者や人事担当者
  • 課題:なじみがなく、何をチェックされるのか、どのような対策が必要なのかが分からない
  • 解決策:資格得喪関係、報酬関係の手続きがチェックされる。法令のルールを再確認する

1 パート等が多い会社は要注意? 社会保険調査が入るかも

年金事務所の「社会保険調査」なるものをご存じでしょうか? これは、

年金事務所が、会社の社会保険(健康保険・厚生年金保険)の手続きに不正がないかをチェックする調査

で、主に次の2点を確認されます(社会保険に加入している場合)。

  • 資格得喪関係(社会保険に加入すべき社員を、適正に加入させているか)
  • 報酬関係(賃金や賞与に係る社会保険料を、適正に算定・納付しているか)

パート等(短時間労働者)を多く雇用する会社などが対象になりやすいのが特徴で、罰則もあります。2022年10月からの「社会保険の適用拡大」で被保険者になるパート等が増えたことで、資格得喪関係の調査対象も広がる可能性があり、御社にも通知がくるかもしれません。

この記事では、社会保険調査の対象になる会社やチェックされる書類などを紹介するので、事前準備にお役立てください。

なお、社会保険調査には、

  • 総合調査(年金事務所が都度、時期を決め、資格得喪関係、報酬関係を総合的に調査)
  • 定時決定時調査(定時決定の手続きを行う6~7月ごろに、算定基礎届を中心に調査)

などがありますが、現在実施されているものは、基本的に全て「総合調査」です。次章以降に出てくる「社会保険調査」というワードも、特に断りがなければ総合調査のことを指します。

2 社会保険調査の流れは?

社会保険調査の流れは次の通りです。

社会保険調査の流れ

まず、年金事務所から「社会保険調査のご案内」などの名目で通知(書面)が届きます。通知が届くのは、年金事務所が「調査が必要」と判断したタイミングで、具体的には次のようなケースがあります。

  • 年金事務所が社員(被保険者)から通報を受けたとき
  • 社会保険関連の法改正があるとき
  • 前回の社会保険調査から一定の期間が経過したとき(数年に一度など)

通知が届いたら、会社は通知に記載された書類を、郵送または対面で年金事務所に提出します。年金事務所が提出書類をチェックし、問題がない場合は調査終了、問題がある場合は年金事務所の指示に従い、問題点を是正すれば終了となります。

社会保険調査の通知を無視したり、是正の指示に従わなかったりすることは許されず、

悪質な場合、罰則(6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金)を受ける

こともあります。

3 社会保険調査の最近の動向は?

年金事務所を統括する日本年金機構によると、2021年度に社会保険調査が実施されたのは、24万2793事業所です。また、過去の調査事業所数の推移を見ると、2016年度からの3年間は、パート等への「社会保険の適用拡大」がスタート(2016年10月)したことなどもあって、特に多くの事業所で調査が実施されています。

社会保険調査の調査事業所数の推移

なお、2021年度に社会保険調査が実施された24万2793事業所のうち、資格得喪関係、報酬関係の指摘を受けたのは、9万5922事業所(全体の39.51%)です。

指摘を受けた事業所(2021年度)

4 社会保険調査が入りやすい会社は?

日本年金機構は、2021年度に社会保険調査が実施された24万2793事業所のうち、調査の優先度が高かった事業所として、次の18万872事業所を挙げています。

社会保険調査の優先度が高かった事業所(2021年度)

図表4の赤囲みの4項目だけで全体の86.64%を占めます。「パート等を多く雇用している」「定時決定に必要な算定基礎届を提出していない」「雇用保険には加入しているが、社会保険には加入していない社員がいる」といった場合、社会保険調査が入りやすく、さらに、そこで指摘を受けると、以降も社会保険調査の対象になる可能性が高まります。

5 どのような書類をチェックされるのか?

社会保険調査で年金事務所から提出を求められるのは、次のような書類です。

  • 原則として必ず提出する書類(注):賃金台帳、出勤簿、源泉所得税領収書
  • 必要に応じて提出する書類:就業規則、雇用契約書

(注)年金事務所によって異なりますが、過去2年分程度の提出を求められるケースが多いです。

例えば、賃金台帳には、社員の「賃金計算期間」「労働日数」「労働時間数」「賃金額」「支給項目」「控除項目」などが記載されています。仮に、

  • 社員が被保険者要件を満たすのに、社会保険に加入していない
  • 社会保険には加入しているが、社会保険料の計算が間違っている

といった問題が見つかると、年金事務所から是正を指示されます。例えば、社員が被保険者要件を満たすのに、社会保険に加入していなかった場合、

  • 速やかに資格取得手続きを行う(被保険者資格取得届の提出)
  • 社員が被保険者要件を満たすようになった時期まで遡って、未払いの社会保険料を納付する(最大で過去2年分)
  • 未払いの社会保険料のうち、社員負担分を社員から徴収する(賃金から控除する場合、原則として社員の同意が必要)

などの手続きをします。

是正が完了しても、その旨を年金事務所に報告する必要はありません。社員の資格得喪や、社会保険料の納付が適正に行われれば、年金事務所内で把握できるからです。また、資格得喪の手続き漏れや社会保険料の未払いには、本来「6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金」という罰則がありますが、実際は、

年金事務所の指示通りに速やかに手続きを行えば、罰則を受けずに済むケースが多い

ようです。

6 これで安心。事前に確認したい10項目

最後に、社会保険調査に備えて事前に確認したい10項目を紹介します。特に5.と10.は要注意です。

事前に確認したい10項目

5.については、御社が2022年10月からの「社会保険の適用拡大」の対象、つまり厚生年金保険の被保険者数が常時100人超の状態であれば、被保険者要件を満たすパート等がいないか確認しましょう。そして、該当者がいる場合は速やかに資格取得手続きを行います。

パート等の被保険者要件

10.は、本来、賞与として支給すべき金銭が、「○○手当」などとして月例賃金に組み込まれているケースの指摘です。法令上、

労働の対償として支給する金銭のうち、支給期間が3カ月を超えるものは全て「賞与」

に当たり、該当する場合、

「賞与」以外の名目で支給していたとしても、「賞与支払届」を年金事務所に提出して、社会保険料(賞与保険料)を納付

しなければなりません。自社の就業規則(賃金規程など)をいま一度見直して、該当するものがないかチェックしておきましょう。

5.と10.以外は、資格得喪や定時決定などの決まった手続きを適正に行っていれば、基本的に問題ありません。手続きに不安がある場合は、日本年金機構のウェブサイトなどで確認しておきましょう。また、社会保険のうち健康保険の保険料率は定期的に改定されるので、こちらも保険者(全国健康保険協会など)のウェブサイトなどで確認するとよいでしょう。

■日本年金機構「健康保険・厚生年金保険の保険料関係」■
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/index.html
■全国健康保険協会「保険料率」■
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g7/cat330/

以上(2022年11月)
(監修 シンシア総合労務事務所 特定社会保険労務士 白石和之)

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画像:ipuwadol-Adobe Stock

【規程・文例集】「退職一時金規程」のポイント

書いてあること

  • 主な読者:「退職一時金規程」の見直しを検討している経営者
  • 課題:退職金制度の内容が会社ごとに異なり、具体的に何を定めればよいのかが分からない
  • 解決策:「1.退職金を支給する社員の範囲」「2.退職金の決定、計算、支給の方法」「3.退職金の支給時期」は、労働基準法で義務付けられているので必ず定める

1 退職一時金規程に定めるべき3つの項目

退職金とは、社員が退職するときに会社が支給する金銭の総称で、支給形態によって

  • 退職一時金:退職金を一括で支給
  • 退職年金:退職金を年金として支給(企業年金とも呼ばれます)

に大別できます。退職金制度がある中小企業のうち、95.1%は退職一時金で対応しています(東京都労働相談情報センター「中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)」)。

退職金は、就業規則の「相対的必要記載事項(制度がある場合、必ず記載しなければならない事項)」で、退職金制度がある会社は、労働基準法により、次の3つについて定めることが義務付けられています。

  • 退職金を支給する社員の範囲
  • 退職金の決定、計算、支給の方法
  • 退職金の支給時期

以降で、1.から3.を「退職一時金規程」に落とし込む際のポイントを紹介していきます。

2 退職金を支給する社員の範囲

会社は正社員やパート等(パート社員や契約社員)など、さまざまな条件で社員を雇用しており、適用される労働条件が異なります。

多くの場合、退職金制度の対象となるのは正社員なので、その旨を明確に定める

ようにします。

ただし、同一労働同一賃金の観点から、職務内容などによっては、パート等に退職金を支給しないことが不合理とされることがあるので、

会社と社員の間に個別の合意がある場合、退職金を支給することがある

などの文言を加えておくのが無難です。個別の合意は、労働条件通知書や雇用契約書などで交わすことになります。なお、退職金制度の対象とならないパート等の場合、労働条件通知書などに「退職金の支給はない」旨を明記しておくと、トラブルを予防できます。

3 退職金の決定、計算、支給の方法

退職金の決定、計算、支給の方法では、文字通り、退職金制度の基本的なルールを定めます。主な内容は次の通りです。

1)退職事由

退職金を支給する場合、退職事由によって支給率などに差を設けることがあります。一般的な退職事由は次の通りです。

  • 役員に就任した場合
  • 会社の都合により退職した場合
  • 自己の都合により退職した場合
  • 定年に達したため退職した場合
  • 在職中に死亡した場合
  • 業務上負傷しまたは疾病にかかり、その職に堪えないため退職した場合

2)退職金の計算方法

退職金の計算方法とは、どのように支給額を計算するのかのルールです。退職一時金の場合、一般的に次の2種類の計算方法があります。

  • 基本給連動型:退職時の基本給などを基準に支給額を計算する
  • 基本給非連動型:基本給とは別の指標を用いる(ポイント制など)

中小企業の場合、基本給連動型が一般的です。支給額の計算はさまざまですが、例えば、

支給額=算定基礎額(退職時の基本給など)×支給率(退職事由や勤続年数に応じた係数)+加算額(役職加算など)

といった具合に計算します。

1.算定基礎額

算定基礎額とは、退職金支給額を計算する際の基礎となる金額で、多くの会社では退職時の基本給を算定基礎額としています。しかし、属人給(年齢給や勤続給など)を中心とした賃金体系の場合、社員の基本給は年功序列で大きくなり、会社の退職金負担も重くなります。このような理由から、基本給とは別に、退職金を算出するための算定基礎額のテーブルを設ける会社もあります。これを「別テーブル方式」と呼びます。

2.支給率

支給率とは退職事由や勤続年数に応じた係数であり、通常は「自己都合退職よりも会社都合退職のほうが支給率が高い」「勤続年数が長いほど支給率が高い」といったように設計します。特に、入社3年未満の社員が自己都合で退職した場合は、支給率を「0」とし、退職金を支給しない会社も少なくありません。

この他、業務災害や私傷病による休業期間、育児・介護のための休業期間などを退職金算定の期間に加えるか否かなどについても明確に定めます。

3.加算額

加算額とは特定の事由に該当する社員の退職金に加算されるものであり、「役職加算:一定の役職の社員が退職する場合」「功労加算:一定の功績があると会社が認めた社員が退職する場合」などがあります。

3)退職金の支給方法

退職金の支給方法では、どのように退職金を支給するのかについて定めます。退職一時金の場合は、社員があらかじめ指定した金融機関に一括で振り込むのが通常です。

4 退職金の支給時期

就業規則(退職一時金規程など)に基づいて支給する退職金は、労働基準法の賃金とほぼ同様の取り扱いになります。ただ、毎月1回以上定期に支給する賃金と違い、

退職金については、あらかじめ退職一時金規程などで定めた時期に支給すればよい

とされています。

会社によって異なるものの、多くの場合は社員の退職後1~3カ月以内に設定されています。

5 その他の記載内容

1)懲戒解雇された社員の取り扱い

懲戒解雇とは会社が社員に与える最も重い制裁であり、懲戒解雇された社員には退職金を支給しないか、一部支給とすることが通常です。この点を退職一時金規程に明確に定める必要があります。ただし、裁判所の判断などによっては、退職一時金規程に不支給の定めがあっても退職金の支給が必要となるケースがあります。また、退職後に懲戒解雇事由が判明した場合に退職金の返還を求める旨の規定を置くことも考えられます。

2)社員が死亡した場合の退職金の支給

社員が死亡した場合、退職金は遺族等に支給することになります。就業規則に「誰に支給するか」の定めがなければ、民法の相続順位に従って支給します。就業規則でこれと異なる規定をすることも可能で、多くの会社は、労働基準法施行規則の遺族補償を受ける遺族の範囲と順位に従って退職金を支給しています。具体的には次の通りです。

  • 配偶者
  • 社員の収入によって生計を維持または生計を一にしていた1)子、2)父母(実父母より養父母を優先)、3)孫、4)祖父母
  • 前項に該当しない1)子、2)父母、3)孫、4)祖父母
  • 兄弟姉妹(社員の収入によって生計を維持していた者または生計を一にしていた者を優先)

以上(2022年11月)
(監修 社会保険労務士 志賀碧)

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【規程・文例集】「退職一時金規程」のひな型

書いてあること

  • 主な読者:「退職一時金規程」のひな型が欲しい経営者、実務担当者
  • 課題:退職金制度の内容が会社ごとに異なり、具体的に何を定めればよいのかが分からない
  • 解決策:「1.退職金を支給する社員の範囲」「2.退職金の決定、計算、支給の方法」「3. 退職金の支給時期」は、労働基準法で義務付けられているので必ず定める

1 退職金一時金とは

退職金とは、社員が退職するときに会社が支給する金銭の総称で、支給形態によって、

  • 退職一時金:退職金を一括で支給
  • 退職年金:退職金を年金として支給(企業年金とも呼ばれます)

に大別できます。中小企業に広く定着しているのは退職一時金で、例えば、社内で退職金原資を積み立ておき、次のように支給額を計算するなどして社員に支給します。

支給額=退職算定基礎額(退職時の基本給など)×支給率

退職金制度がある会社は、労働基準法により、次の3つについて就業規則(退職一時金規程など)に定めることが義務付けられています。

  • 退職金を支給する社員の範囲
  • 退職金の決定、計算、支給の方法
  • 退職金の支給時期

この3つは、就業規則の「相対的必要記載事項」なので、自社に退職金制度がある場合、必ず記載しなければなりません。次章で専門家監修付きの退職一時金規程のひな型を紹介するので、自社の規程と見比べながら確認していきましょう。

2 退職一時金規程のひな型

以降で紹介するひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の会社によって定めるべき内容が異なってきます。実際にこうした規程を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

【退職一時金規程のひな型】

第1条(目的)
本規程は、就業規則第○条の退職金について定めたものである。会社は、本規程に基づき、永年勤続した従業員の退職後の生活の安定および遺族の支援を図るために退職一時金制度を設ける。本規程に定めのない事項は、本制度の実施について定める関係法令によるものとする。

第2条(差別的取り扱いの禁止)
会社は退職一時金制度を実施するに当たり、特定の者について不当に差別的な取り扱いをしない。

第3条(支給範囲)
本規程に定める退職金は、従業員が退職または役員に就任した場合に支給する。

第4条(適用)
本規程は、次の各号に定める者を除く全ての従業員に適用する。ただし、個別の契約書などにより、会社と従業員との間に別段の合意がある場合については、この限りでない。
 1.役員。
 2.嘱託。
 3.短時間勤務従業員。
 4.臨時に期間を定めて雇い入れられる者(臨時雇い)。
 5.日々雇い入れられる者。
 6.入社3年未満の者。

第5条(支給額の計算)
1)退職金算定基礎額は勤続年数に応じて別表第1「退職金算定基礎額」に定める額とする。
2)次の各号に定める会社都合退職に該当する者の退職金は、退職金算定基礎額に別表第2「会社都合の退職金支給係数」(以下「別表第2」)を乗じて算定する。
 1.役員に就任した者。
 2.定年に達したため退職した者。
 3.在職中に死亡した者。
 4.休職期間が満了し、退職する者。
 5.やむを得ない事業の縮小などにより解雇した者。
3)第5条第2項各号以外の自己都合退職に該当する者の退職金は、別表第2に別表第3「自己都合の退職金支給係数」を乗じた支給率により算定する。
4)退職金の支給額において、1000円未満の端数が生じたときはこれを切り上げる。

第6条(勤続年数の計算方法)
退職時における勤続年数は、次の各号に定める通りとする。
 1.勤続年数は、入社日から退職日までとする。
 2.1年未満の端数が生じた場合は月割で計算し、1カ月未満の端数は15日以上を1カ月とする。
 3.就業規則○条に定める休職期間は、勤続年数に算入しない。

第7条(加算金)
在職中に特に功労のあった者または勤務成績が優秀であった者には、その退職時における基本給の10カ月分の範囲において会社が適当と認める加算金を支給することがある。

第8条(支給制限)
1)就業規則第○条が定める懲戒規定に基づき懲戒解雇された従業員または懲戒事由に相当する背信行為を行った従業員には、退職金を支給しない。
2)就業規則〇条が定める懲戒規定に基づき諭旨解雇され自己都合退職した従業員には、退職金を一部支給しないことがある。

第9条(死亡時の取り扱い)
従業員が死亡した場合の退職金は、従業員の遺族に支給する。なお遺族の範囲および支給順位については、労働基準法施行規則第42条から45条に定める遺族補償の順位を準用する。

第10条(支給時期)
退職金は、原則として退職日より3カ月後に支給する。

第11条(支給方法)
退職金は原則として一括払いとし、退職金の支給を受ける者があらかじめ指定した金融機関に振り込む。

第12条(譲渡などの禁止)
退職金を受ける権利は、これを譲渡し、または質権、担保に供したりしてはならない。

第13条(書類の提出等)
退職一時金の給付を受けようとする者は、会社が指定する書類を指定の期日までに提出しなければならない。

第14条(返還)
退職金支給後において、第8条に定める支給制限に該当した者については、既に支給済の退職金の全額若しくはその一部の返還を命じる。この場合、退職者は誠実に返還に応じなければならない。

第15条(改廃)
本規程の改廃は、会社の状況および業績等の変化により必要のあるときは、従業員代表との協議の上、改正または一部廃止することがある。

附則
本規程は、○年○月○日より実施する。

■別表第1「退職金算定基礎額」■

退職金算定基礎額

■別表第2「会社都合の退職金支給係数」■

会社都合の退職金支給係数

■別表第3「自己都合の退職金支給係数」■

自己都合の退職金支給係数

以上(2022年11月)
(監修 弁護士 田島直明)

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危険予測による事故防止(2022/11号)【交通安全ニュース】

活用する機会の例

  • 月次や週次などの定例ミーティング時の事故防止勉強会
  • 毎日の朝礼や点呼の際の安全運転意識向上のためのスピーチ
  • マイカー通勤者、新入社員、事故発生者への安全運転指導 など

交通ルールをきちんと守って運転していても、他の運転者や歩行者等の危険な行動により、事故に遭うことがあります。安全な運転には、さまざまな交通場面で起こりうる危険を予測しながら運転することが大切です。

今回は、危険予測運転を取り上げます。

危険予測による事故防止

1.危険予測運転とは

令和3年警察庁統計によると、違反別交通事故のうち「安全運転義務違反」が72%を占めています。

※安全運転義務違反とは、ハンドル等の操作を誤ったり、周囲への注意や状況判断が十分でない運転をする違反です。その原因としては、不注意による発見の遅れ・見落としのほか、思い込みや予測の甘さなどによる判断ミスがあげられます。

では、安全運転義務違反とならないようにするには、どのように運転したらよいでしょうか?

交通事故の発生状況

出典:警察庁「令和3年中の交通事故の発生状況」から当社作成

運転行動は「①認知→②判断→③操作」の3つの要素で行われます。

もちろん①認知が最も重要であり、「周囲をよく見る」ことが大切です。しかし、人の目で見える範囲には限りがあり、また歩行者の急な飛び出しなど突発的な危険に対しては、正しい状況判断や適切な運転操作を行うことが困難なことがあります。

そこで、事前に危険を予測し、それらの危険に準備しながら運転することが必要になります。

危険予測運転とは、目の前の交通場面で生じうる危険を予測し、その危険に対する準備をすることによって事故を防止する運転です。

2.危険予測の方法

運転中は、目の前の交通場面に応じて、さまざまな危険を予測する必要があります。

行動の予測

◆ 歩行者等の特性を理解し、行動を予測する

  • 子供:周りを確認せず飛び出すことがある
  • 高齢者:走行車両の直前直後を横断することがある
  • 自転車:突然、進路変更することがある

など

◆ 見えない場所に潜む危険を予測する

  • 自車両の死角:後方に自転車がいる
  • 駐車車両の陰:子供や自転車が飛び出す
  • 見通しの悪い交差点:車やバイクがくる

など

◆ 気象状況等に潜む危険を予測する

  • 雨天時:停止距離の延伸
  • 降雪時:路面の凍結
  • 濃霧時:前方の視界悪化

など

※刻一刻と変化する交通状況に応じた危険予測も大切です。

3.危険予測運転の実践

目の前の交通場面を自分に都合よく判断する「だろう運転」を止めて、「かもしれない運転」をすることが大切です。

かもしれない運転


①歩行者が道路を横断するかもしれない
②自転車が右にハンドルをきるかもしれない
③車の陰から子供が飛び出すかもしれない
④車のドアが急に開くかもしれない
⑤車が発進するかもしれない

特に歩行者等が多い市街地では、危険が多く潜んでいますので、必ず危険予測運転を実践しましょう。

目の前の交通場面で突発的な危険が生じても事故を防止できるよう、危険予測運転を習慣化しましょう。

さまざまな交通場面で危険予測のケーススタディができる危険予測トレーニングツールの活用も有効です。

以上(2022年11月)

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歯周病からみえる健康管理

1.歯周病と動脈硬化

歯周病

歯周病が血管を詰まりやすくする原因になるということをご存知ですか?
歯周病の菌が悪い働きをして、血管がボロボロになり、動脈硬化の原因のひとつになっていきます。
歯周病は、自覚症状がほとんど現われずに進行する病気です。
セルフチェックをしてみましょう。

【セルフチェック】

①次の項目でチェックが付いた人は、歯周病に罹るリスクの高い人です。
□ タバコを吸う
□ 歯並びがわるい
□ やわらかい食べ物や甘い物が好き
□ 口を開けて眠るクセがある
□ 歯石を取ってもらったことがない
□ 太っている

②次の項目でチェックが付いた人は、歯周病に罹っている可能性が高い人です。
痛みを感じていなくても、1つでも当てはまったら、歯科で検査してもらいましょう。
□ 歯磨きの時に歯ぐきから血が出ることがある
□ 口臭が強いと言われたことがある
□ 歯ぐきが腫れることがある
□ 歯が浮いた感じがする
□ 歯と歯の間にものがはさまる
□ 歯がぐらぐらする

週に一度は歯と歯ぐきをチェックしてみてくださいね!

2.歯周病があると心筋梗塞リスクが2倍に上昇する?

歯周病は全身の病気に関係しています。
歯周病菌や炎症物質がだ液に混じったり血液に入り込み、全身に運ばれて悪影響を及ぼすと考えられています。

歯周病は糖尿病とも関連が深いです。歯周病菌に対する免疫反応から生じる生理活性物質である「サイトカイン」が、インスリンの働きを妨げることが分かっています。
歯周病があると糖尿病のリスクが高まるだけでなく、治療のときも血糖値のコントロールが難しくなります。

歯周病は「動脈硬化」にも関係します。血流に乗って運ばれた歯周病菌が血管壁に付着すると動脈硬化の進行に関与するのではないかと考えられています。

血液中に悪玉のLDLコレステロールが増えるとそれが血管壁の中に入り込みアテロームと呼ばれる脂肪の塊ができ、血管の通り道が狭くなります。これが動脈硬化で、心臓の血管で起きると「狭心症」や「心筋梗塞」が、脳の血管で起きると「脳梗塞」が引き起こされます。

東京大学の研究チームが、36歳~59歳の男性従業員3,081人を対象に、歯周病と心筋梗塞の関連を調べました。質問票を用いて「歯肉に出血がある」「歯がぐらつく」「口臭がする」という3項目に答えてもらい、その後5年間の健康状態を追跡調査しました。

その結果、歯周病の強く疑われる男性は、そうでない人に比べて、心筋梗塞の発症が約2倍多いことが明らかになりました。

歯周病は、40歳以降の日本人男性において頻度の高い疾患である一方、適切なセルフケア(歯磨きなど)や歯科メンテナンス(歯石除去、専門的クリーニング)で予防・改善できます。
つまり、歯周病を治療することが心筋梗塞の予防にも役立つのです。

【注意】医師の指示を受けている方は、必ず医師の指示を優先してください。

歯科治療

以上(2022年11月)

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【規程・文例集】「個人情報保護規程」のひな型

書いてあること

  • 主な読者:個人情報の適正な取り扱いを徹底させるに当たって「個人情報保護規程」のひな型が欲しい経営者
  • 課題:具体的に何を定めればよいかが分からない
  • 解決策:個人情報の取得・利用、保管・管理、第三者提供、開示請求等への対応などについて定める

1 個人情報の漏洩は経営を脅かす重大なリスク

個人情報の漏洩は経営を脅かす重大なリスクです。2022年4月施行の改正個人情報保護法では、漏洩が発生し、不正に利用されることにより財産的被害が生じるおそれがある場合や、不正の目的をもって行われたおそれがある場合などに、

  • 個人情報保護委員会への報告
  • 本人への通知

が義務付けられました。このような漏洩リスクの発生に備え、社内規程を策定・改訂し、体制を整備しておく必要があります。

なお、以下のコンテンツや個人情報保護委員会のページが参考になります。

■改正個人情報保護法 特集■
https://www.ppc.go.jp/news/kaiseihou_feature/
■個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)■
https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/
■個人情報の保護に関する法律についてのガイドラインに関するQ&A■
https://www.ppc.go.jp/personalinfo/faq/APPI_QA/
■漏えい等の対応とお役立ち資料■
https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/leakAction/

2 個人情報保護規程のひな型

以降で紹介するひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の企業によって定めるべき内容が異なってきます。実際にこうした規程を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

【個人情報保護規程のひな型】

第1章 総則

第1条(目的)
本規程は、当社が保有する個人情報について、個人情報の保護に関する法律(以下「個人情報保護法」)および関連する政省令、ガイドライン等を遵守しつつ、適正に取り扱うための基本事項を定めることにより、個人の権利利益を保護することを目的とする。

第2条(用語の定義)
本規程において、各用語の意義は、個人情報保護法その他関連法令等の定義に従い、次に定めるところによる。
1.個人情報
生存する個人に関する情報であって、次のいずれかに該当するものをいう。
  ・当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができるものを含む)
  ・個人識別符号が含まれるもの
2.個人識別符号
次のいずれかに該当する文字、番号、記号その他の符号のうち、政令で定めるものをいう。
  ・特定の個人の身体の一部の特徴を電子計算機の用に供するために変換した文字、番号、記号その他の符号であって、当該特定の個人を識別することができるもの
  ・個人に提供される役務の利用もしくは個人に販売される商品の購入に関し割り当てられ、または個人に発行されるカードその他の書類に記載され、もしくは電磁的方式により記録された文字、番号、記号その他の符号であって、その利用者もしくは購入者または発行を受ける者ごとに異なるものとなるように割り当てられ、または記載され、もしくは記録されることにより、特定の利用者もしくは購入者または発行を受ける者を識別することができるもの
3.要配慮個人情報
本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取り扱いに特に配慮を要する個人情報をいう。
4.個人情報データベース等
個人情報を含む情報の集合物であって、次に掲げるものをいう。
  ・特定の個人情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したもの
  ・特定の個人情報を容易に検索することができるように体系的に構成したものとして政令で定めるもの
5.個人データ
個人情報データベース等を構成する個人情報をいう。
6.保有個人データ
会社が、開示、内容の訂正、追加または削除、利用の停止、消去および第三者への提供の停止を行うことのできる権限を有する個人データで、6カ月以上保有するものをいう。
7.本人
個人情報によって識別される特定の個人をいう。
8.本人の同意
本人が自己の個人情報の利用または提供に関する情報を与えられた上で、当該個人情報の収集、利用または提供について了承する明確な意思表示をいう。

第3条(適用範囲)
本規程は、当社において処理される全ての個人情報、個人データおよび保有個人データ(以下「個人情報等」)の取り扱いについて定めるものとし、当社の業務に従事する全ての従業員等(正社員・契約社員・嘱託社員・パート社員・アルバイト社員等の雇用関係にある従業員の他、取締役、監査役、執行役、派遣社員等を含む。以下同じ)に対して適用するものとする。対象となる個人情報等について、記録されている媒体が電子的なものであるか、紙であるかなどの形態を問わない。

第2章 個人情報の取り扱い

第4条(利用目的の特定)
1)個人情報を取り扱うに当たっては、その利用目的をできる限り特定しなければならない。
2)利用目的を変更する場合には、変更前の利用目的と関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えて行ってはならない。

第5条(利用目的による制限)
1)あらかじめ本人の同意を得ずに、特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を取り扱ってはならない。ただし、法令に特別の規定がある場合を除く。
2)合併その他の事由により他の個人情報取扱事業者から事業を承継することに伴って個人情報を取得した場合は、あらかじめ本人の同意を得ないで、承継前における当該個人情報の利用目的の達成に必要な範囲を超えて、当該個人情報を取り扱ってはならない。ただし、法令に特別の規定がある場合を除く。
3)利用目的の達成に必要な範囲内か否かが不明な場合は、都度、個人情報保護管理者に判断を求めるものとする。

第6条(適正な取得)
1)個人情報の取得は業務上必要な範囲内で、適正かつ適法な手段により行うものとする。
2)要配慮個人情報は、あらかじめ本人の同意を得ずに取得してはならない。ただし、法令に特別の規定がある場合を除く。

第7条(取得に際しての利用目的の通知等)
1)個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、または公表しなければならない。
2)書面(電子メール、当社ウェブサイトへの記入等も含む)により本人から直接個人情報を取得する場合は、本人に対してあらかじめ利用目的を明示しなければならない。ただし、人の生命、身体または財産の保護のために緊急に必要がある場合は、この限りでない。
3)利用目的を変更した場合は、変更された利用目的について、本人に通知し、または公表しなければならない。

第8条(データ内容の正確性の確保等)
利用目的の達成に必要な範囲内において、個人データを正確かつ最新の内容に保つとともに、利用する必要がなくなったときは、当該個人データを遅滞なく消去するよう努めるものとする。

第9条(安全管理措置)
1)取り扱う個人データの漏洩、滅失または毀損の防止その他の個人データの安全管理のために、組織的、人的、物理的、技術的に必要かつ適切な措置を講じるものとする。
2)個人データの取り扱いについて必要な事項は、「個人情報安全管理細則」に定める。

第10条(従業員等の監督)
個人情報保護管理者は、従業員等が個人データを取り扱うに当たり、必要かつ適切な監督を行うものとする。

第11条(委託先の監督)
1)個人データの取り扱いの一部または全部を外部委託する場合は、別途定める「外部委託管理規程」(省略)に従って、委託先における個人情報保護の体制が十分であることを確認した上で、委託先を選定しなければならない。
2)委託先に対して次の各号の事項を契約によって規定し、十分な個人情報保護の水準を担保するよう努めるものとする。
  1.委託する個人データの適法かつ適切な取り扱い(当該個人データに対する人的、物理的、技術的な安全管理措置を委託先が講じることを含む)
  2.委託する個人データに関する秘密保持
  3.委託する個人データの当該業務以外の使用禁止
  4.委託する個人データを取り扱う上での安全対策
  5.再委託に関する事項(再委託は原則禁止とし、再委託がやむを得ない場合は事前に書面による当社の同意を要し、委託先が再委託先と連帯して責任を負うことの確認)
  6.契約内容が遵守されていることの確認
  7.委託する個人データに関する事故が生じた際の責任
  8.契約終了時の個人情報の返却および抹消

第12条(第三者提供の制限)
あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。ただし、法令に特別の規定がある場合を除く。

第13条(外国にある第三者への提供の制限)
外国にある第三者に個人データを提供する場合には、あらかじめ外国にある第三者への提供を認める旨の本人の同意を得なければならない。ただし、法令に特別の規定がある場合を除く。

第14条(第三者提供に係る記録の作成等)
個人データを第三者に提供したときは、当該個人データを提供した年月日、当該第三者の氏名または名称その他の個人情報保護委員会規則で定める事項に関する記録を作成し、当該記録を個人情報保護委員会規則で定める期間保存しなければならない。ただし、法令に特別の規定がある場合を除く。

第15条(第三者提供を受ける際の確認等)
1)第三者から個人データの提供を受けるに際しては、当該第三者の氏名または名称および住所並びに法人(法人でない団体で代表者または管理人の定めのあるものにあっては、その代表者または管理人)の氏名、当該第三者による当該個人データの取得の経緯の確認を行わなければならない。ただし、法令に特別の規定がある場合を除く。
2)第1項の規定による確認を行ったときは、当該個人データの提供を受けた年月日、当該確認に係る事項その他の個人情報保護委員会規則で定める事項に関する記録を作成し、当該記録を個人情報保護委員会規則で定める期間保存しなければならない。

第16条(保有個人データに関する事項の公表等)
1)保有個人データに関し、次の各号の事項を、当社ウェブサイトで掲載もしくは窓口等で掲示・備え付け等を行い、本人の知り得る状態に置くものとする。
  1.当社の名称
  2.当社の保有個人データの利用目的(法令に特別の規定がある場合を除く)
  3.本人からの保有個人データの開示の求めおよび、その内容の訂正、追加または削除(以下「訂正等」)の請求、利用の停止または消去(以下「利用停止等」)の請求に応じる手続き
  4.手続きに係る手数料の額を定めたときは、その手数料の額
  5.当社が行う保有個人データの取り扱いに関する苦情の申出先
2)本人から、当該本人が識別される保有個人データの利用目的の通知を求められたときは、本人であることを確認した上で、遅滞なくこれを通知するものとする。ただし、法令に特別の規定がある場合を除く。
3)保有個人データについて、求められた保有個人データの利用目的を通知しない旨の決定をしたときは、本人に対し、遅滞なくその旨を通知するものとする。この場合、その理由を説明するよう努めるものとする。

第17条(開示)
1)保有個人データについて、本人から、当該本人が識別される保有個人データの開示の請求を受けたときは、本人であることを確認した上で、合理的な期間で応じるものとする。ただし、法令に特別の規定がある場合を除く。
2)保有個人データについて、本人からの開示の請求の全部もしくは一部に応じない旨の決定をしたとき、または当該保有個人データが存在しないときは、本人に対し、遅滞なくその旨を通知するものとする。この場合、その理由を説明するよう努めるものとする。

第18条(訂正等)
1)保有個人データについて、本人から、当該本人が識別される保有個人データの内容が事実でないという理由によって訂正等の請求を受けたときは、その内容の訂正等に関して法令の規定により特別の手続きが定められている場合を除き、利用目的の達成に必要な範囲内において、遅滞なく必要な調査を行い、その結果に基づき、当該保有個人データの内容の訂正等を行う。
2)保有個人データについて、本人からの訂正等の請求により内容の全部もしくは一部について訂正等を行ったとき、または訂正等を行わない旨の決定をしたときは、本人に対し、遅滞なくその旨(訂正等を行ったときは、その内容を含む)を通知するものとする。この場合、その理由を説明するよう努めるものとする。

第19条(利用停止等)
1)保有個人データについて、本人から、当該本人が識別される保有個人データの利用停止等の請求を受け、その請求に理由があることが判明したときは、利用停止等の請求を認める原因を是正するために必要な限度で、遅滞なく、当該保有個人データの利用停止等を行う。
2)保有個人データについて、本人からの利用停止等の請求の全部もしくは一部について利用停止等を行ったとき、または利用停止等を行わない旨の決定をしたときは、本人に対し、遅滞なくその旨を通知するものとする。この場合、その理由を説明するよう努めるものとする。

第20条(開示等の求めに応じる手続き)
保有個人データについて、本人から、当該本人が識別される保有個人データの利用目的の通知、開示、訂正等、利用停止等の求めを受けるに際し、個人情報保護管理者は、あらかじめ本人確認方法、対応の期限および料金、開示等の求めに応じる手続きの具体的内容を含んだ手順を定めるものとする。

第21条(苦情および相談)
個人情報の取り扱いについて本人から苦情および相談を受け付け、対応する窓口を常設するものとする。この窓口への連絡方法は本人が容易に分かる方法で通知または公表するものとする。

第22条(教育)
1)従業員等に対して、個人情報保護の重要性等について理解させ、遵守の徹底が図られるよう必要な教育方針を定める。
2)従業員等は、教育方針に基づき実施される研修を受けなければならない。

第3章 監査

第23条(監査)
個人情報の取り扱いが法令、個人情報保護委員会が定めるガイドライン、本規程(本規程に基づく「個人情報安全管理細則」を含む)、その他の規範と合致していることを定期的に監査するものとし、個人情報保護監査責任者がその責を負う。なお、代表者は個人情報保護監査責任者を兼任できない。

第24条(体制の見直し)
代表者は、前条による監査結果に照らし、必要に応じて個人情報の取り扱いに関する安全対策、諸施策を見直し、改善しなければならない。

第4章 その他

第25条(所管官庁への報告)
個人データの漏洩の事実または漏洩の恐れを把握した場合には、その事実関係および再発防止策等について、個人情報保護委員会等に対し、速やかに報告するものとする。

第26条(罰則)
従業員等が故意または重大な過失により、本規程に違反した場合、就業規則または契約および法令に照らして処分を決定する。

第27条(改廃)
本規程の改廃は、取締役会において行うものとする。

附則
本規程は、○年○月○日より施行する。

以上(2022年11月)
(監修 Earth&法律事務所 弁護士 岡部健一)

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文系の経営者にも分かりやすい定量的な経営判断

書いてあること

  • 主な読者:意思決定において定量的な要素を考慮したい経営者
  • 課題:定量的な考え方が苦手で、これまで定性的な考えだけで決めてきていた
  • 解決策:確率が分からない状況でも、判断に役立つ根拠を導く考え方を知る

1 難しい意思決定を求められる経営者

経営の意思決定は、

確信を持てることなどほとんどなく、不確実性やトレードオフ(一方を追求すれば、他方を犠牲にせざるを得ない二律背反の状態)の中で行われる

ものです。会社の命運を分ける重要な決定もあるので、経営者は意思決定のよりどころを求めます。物事を考える際は、

  • 定性的:経営者の経験や勘、知人のアドバイスなど数字で表すことができないもの
  • 定量的:統計学など数字で表すことができるもの

の両面から捉えますが、定性的な部分は経営者個人のものです。ですので、この記事では、定性的な考え方を補完するものとして、定量的な6つの考え方を示します。統計の知識がなくても理解できるように簡易に示していますので、参考にしてください。

2 確率を考慮した意思決定手法

1)意思決定に当たっての前提条件

ここから、皆さんは衣料品店の社長になっていただきます。今、冬物衣料を販売するに当たり、メーカーに発注する量を検討しているのですが、季節商品なので追加発注はできません。厳冬ならば平年を上回る売上高が見込めますが、暖冬ならば売上高は減少します。過去のデータを基に推計した結果、冬の気象と売上高予測の関係は次の通りです。

  • 厳冬:1億1000万円
  • 平年並み:1億円
  • 暖冬:9000万円

平年並みなら売上高は1億円を見込めます。また、厳冬なら売上高は平年の10%増の1億1000万円、しかし、暖冬なら売上高は平年の10%減の9000万円しか見込めません。

2)仕入高と気象と営業利益の関係

長期気象予報によると、今季の冬は厳冬となる確率が20%、平年並みとなる確率が50%、暖冬となる確率が30%です。冬物衣料の仕入計画としては、次の3つの案があります。

  • A案:厳冬を考慮して、仕入高を平年の10%増とする案
  • B案:平年並みの冬であると考え、仕入高を平年並みとする案
  • C案:暖冬を考慮して、仕入高を平年の10%減とする案

もし、厳冬と予想したのに暖冬になった場合、売れ残り商品が大量に発生し、値引き販売などによって処分しなければなりません。逆に、暖冬と予想したのに厳冬になった場合、在庫が底を突いて販売する商品がなくなってしまいます。気象ごとの仕入高と営業利益金額の関係は次の通りです。

気象ごとの仕入高と営業利益金額の関係

厳冬と予想して仕入高を平年の10%増とし、実際に厳冬であれば1400万円(1億1000万円-1億1000万円×60%-3000万円)の営業利益が見込めます。しかし、予想が外れて暖冬になった場合、400万円(9000万円+(1億1000万円-9000万円)×50%-1億1000万円×60%-3000万円)となります。

3)期待値原理

期待値は、予想される利益に発生する確率を乗じた総和をいいます。

期待値=∑(気象ごとの営業利益金額×気象の発生確率)

期待値原理

図表2の仕入案A・B・Cの期待値は次の通りです。

  • Aの期待値=1400万円×20%+900万円×50%+400万円×30%=850万円
  • Bの期待値=1000万円×20%+1000万円×50%+500万円×30%=850万円
  • Cの期待値=600万円×20%+600万円×50%+600万円×30%=600万円

期待値が最も大きいのはA案およびB案の850万円です。期待値原理によると、A案かB案のいずれかを選択することになります(図表2の網掛け部分)。

4)最尤(さいゆう)未来原理

最尤未来原理による意思決定は、明快な方法で、起きる可能性の最も高い中から利益の一番大きいものを選ぶ手法です。

最尤(さいゆう)未来原理

最尤未来原理によると、発生する確率の最も高い平年並みのB案を選択することになります。

3 確率が不明な場合の意思決定手法

1)等可能性の原理

期待値原理と最尤未来原理は発生の確率を考慮したものですが、発生の確率が分からない場合もあります。ここからは、確率が分からない場合の意思決定手法について、引き続き、冬物衣料の仕入案のケースを用いて説明します。

等可能性の原理による意思決定は、厳冬の確率、平年並みの確率、暖冬の確率がどれも1/3で同じと考えて意思決定する手法です。

等可能性の原理

期待値の算出方法は次の通りです。

  • Aの期待値=1400万円×1/3+900万円×1/3+400万円×1/3=900万円
  • Bの期待値=1000万円×1/3+1000万円×1/3+500万円×1/3=833万円
  • Cの期待値=600万円×1/3+600万円×1/3+600万円×1/3=600万円

等可能性の原理によると、期待値が最も高いA案を選択することになります。

2)悲観的態度を反映した決定原理

悲観的態度を反映した決定原理による意思決定は、最悪の事態において、最大の利益が確保できることを念頭に置いた手法です。最も売上高が小さくなる暖冬のときに、最も大きな利益が確保できる仕入案を選択することになります。

悲観的態度を反映した決定原理

悲観的態度を反映した決定原理によると、先の冬物衣料の仕入案のケースでいえば、暖冬のケースを想定して、その中で最も営業利益金額が大きいC案を選択することになります。

3)楽観的態度を反映した決定原理

楽観的態度を反映した決定原理による意思決定は、最大の利益が確保できることを念頭に置いた意思決定手法です。最も売上高が大きくなる厳冬のときに、最も大きな利益が確保できる仕入案を選択することになります。

楽観的態度を反映した決定原理

楽観的態度を反映した決定原理によると、先の冬物衣料の仕入案のケースでいえば、厳冬のケースを想定して、その中で最も営業利益金額が大きいA案を選択することになります。

4)楽観的態度と悲観的態度を含めた決定原理による意思決定

楽観的態度と悲観的態度を含めた決定原理による意思決定は、楽観的態度を反映した決定原理による意思決定と、悲観的態度を反映した決定原理による意思決定の中間に位置付けられる手法です。

ここでは楽観的態度について楽観度係数を用いて表現します。先の仕入案で説明すると次のようになります。

決定係数=見込める最大の利益×楽観度係数+見込める最小の利益×(1-楽観度係数)

楽観度係数は0以上1以下に設定されます。楽観度係数が最低の0のとき、決定係数は悲観的態度を反映した決定原理と同じになります。また、楽観度係数が1で最大のとき、決定係数は楽観的態度を反映した決定原理と同じになります。

仮に、楽観度係数を0.7として、仕入案Aの決定係数を算出すると次の通りです。

仕入案Aの決定係数=1400万円×0.7+400万円×(1-0.7)=1100万円

楽観的態度と悲観的態度を含めた決定原理に基づく楽観度係数別の営業利益金額は次の通りです。

楽観的態度と悲観的態度を含めた決定原理に基づく楽観度係数別の営業利益金額

楽観的態度と悲観的態度を含めた決定原理による場合、楽観度係数によって結果が大きく変わります。楽観度係数の中間である0.5を平均とすると、0.5未満は消極的、0.5以上は積極的といえます。消極的でリスクを取らない経営者は楽観度係数0.5未満を、積極的でリスクを取る経営者は楽観度係数0.5以上を見積もることになるでしょう。

以上(2022年11月)

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【規程・文例集】「製品安全管理規程」のひな型

書いてあること

  • 主な読者:製品の品質や安全性を確保するに当たって「製品安全管理規程」のひな型が欲しい経営者
  • 課題:具体的に何を定めればよいかが分からない
  • 解決策:製品安全に関する基本方針、組織体制、技術開発や工程管理などについて定める

1 製造物責任と求められる製品安全管理

製造物責任法(PL法)によって、製造業者や輸入業者は、製造物の欠陥により人の生命、身体または財産を侵害したときは、過失の有無にかかわらず、これによって生じた損害を賠償する責任を負うこととなります。

消費者に安全な製品を供給することは製造業者や輸入業者の責務です。製品事故を防ぐために、技術開発や工程管理、出荷前の検査などを怠ってはなりません。また、品質や使用上の注意の表示、取扱説明書の適正化やアフターケアの充実により、製品販売後の被害の発生・拡大の防止に努めることも大切です。

なお、製品安全に関する解説などは、経済産業省の以下のページが参考になります。

■製品安全ガイド■
https://www.meti.go.jp/product_safety/
■製品安全自主行動計画策定のためのガイドライン■
https://www.meti.go.jp/product_safety/policy/guideline_selfaction.pdf
■リスクアセスメント・ハンドブック■
https://www.meti.go.jp/product_safety/recall/risk_assessment.html
■製品安全に関する事業者ハンドブック■
https://www.meti.go.jp/product_safety/producer/jigyouhandbook.html

2 製品安全管理規程のひな型

以降で紹介するひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の企業によって定めるべき内容が異なってきます。実際にこうした規程を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

【製品安全管理規程のひな型】

第1条(目的)
本規程は、当社の製品の安全性を確保するための関連各部門内での業務について定める。

第2条(用語の定義)
本規程において「製品の安全性」とは、製品の所持・使用・処分に際し、製品が人の生命、身体、財産を侵害することのないことをいう。

第3条(製品安全基本方針)
当社が製造・販売した全ての製品の安全性に対する消費者の信頼を確保することが、当社の経営上の重要課題であるとの認識の下、次の通り、製品安全に関する基本方針を定め、誠実に製品安全の確保に努める。
1.消費生活用製品安全法その他の製品安全に関する関係法令・各種基準等に定められた事項を遵守する。
2.製品安全基本方針に基づき、品質保証体制をはじめとした組織構築を行い、継続的な改善を実施して「顧客視点」に基づいた「安全」「安心」の確保と維持に努める。
3.製品安全管理について各事業部を横断的に統括する製品安全管理室を設置する。併せて各事業部内での品質保証体制および安全管理体制を構築する。製品の設計・製造・出荷の全ての段階において、常に適正な品質管理および安全管理を行い、その向上に努める。
4.当社製品に係る事故について、その情報を顧客や販売事業者、業界団体等から積極的に収集するとともに、製品の使用に伴うリスクの洗い出しを常に行い、そのリスクを評価し、その結果を製品の設計、部品、取扱説明書、警告ラベルにフィードバックする等、継続的な製品安全向上に努める。
5.当社製品に関する不慮の事故が発生した場合、直ちに原因究明を行い、安全上の問題があることが判明したときは、速やかに製品の回収、その他の危害の発生・拡大の防止措置を講じ、適切な情報提供方法を用いて迅速に消費者に告知する。
6.製品安全に関する関係法令、各種基準等について社内研修を実施し、製品安全に関する全社的な取り組みを継続的に行うとともに、関係法令遵守と製品安全の確保について周知徹底を図る。また、定期的な内部監査を実施し、製品安全管理に関する各種規程・手順等の遵守の状況の確認や適正な体制整備を行う。

第4条(製品安全責任者)
1)各部門長を、各部門における製品安全責任者とする。
2)各部門の製品安全責任者は、各担当部門における製品の安全性を確保するよう、従業員を指導・監督し、製品安全管理室と常に連絡を取るものとする。

第5条(分掌事項)
当社製品の安全性を確保するため、各部門は次の事項を分掌する。
  1.製品安全管理室
   ・製品の安全性の確保に関する方針の審議
   ・製品の安全性に関する情報の収集および伝達
   ・開発、改良製品の安全性の審議
   ・取扱説明書、警告ラベルの審査
   ・各種チェックリストの審議
   ・発生事故対策の指揮
   ・製品安全教育計画の審議
   ・各部門への指導および改善勧告
   ・各部門間の連絡および調整
  2.技術部
   ・製品の安全性に関する関係法令の調査および遵守
   ・JIS規格等の公的自主基準、業界自主基準等の遵守
   ・製品の品質並びに安全性に関する自社基準の作成
   ・本質的な安全設計
   ・安全装置の採用
   ・安全性を考慮した付属品、部品、材料の選択
   ・取扱説明書、警告ラベルの作成
   ・発生事故の原因の調査および究明
   ・製品の安全性に関する資料の作成および保管
  3.製造部
   ・材料、部品、製品の品質確保
   ・作業の標準化
   ・品質管理によるばらつきの防止
   ・製造設備、検査設備の保全、精度管理
   ・検査機器の精度管理および使用条件の維持
   ・検査方法の維持
   ・取扱説明書、警告ラベルの確認
   ・包装容器の所定基準による検査
   ・図面、作業手順書および生産記録の保管
  4.営業部
   ・製品納入時の製品取扱説明または指導
   ・製品の納入先記録の保管
   ・製品の安全性に関連する情報の製品安全管理室への通知
   ・発生事故の原因の調査
  5.総務部
   ・製品の安全性に関する関係法令の調査および他部門が行う調査の支援
   ・製品安全教育計画の立案および実施
   ・発生事故の原因の調査の支援
   ・発生事故による損害賠償責任の有無の調査および賠償交渉

第6条(製品安全管理室の審議)
製品の開発・改良に当たっては、製品安全管理室による開発製品または改良製品の安全性についての審議を経るものとする。

第7条(製品の安全性の確保)
製品の安全性を確保するため、製品の設計・製造・出荷の全ての段階において、次の手順を経るものとする。
1.製品の企画段階において、製品の安全性について検証し、予見されるリスクを可能な限り抽出する。その際、通常の使用における危険な箇所、想定され得る誤使用による事故の危険性等について図面および企画書を基に検討を行う。
2.製品に適用される関係法令、JIS規格等の公的自主基準、業界自主基準等を製品仕様に全て盛り込むものとする。
3.製品の外観デザインを似せた模型を作り、実際の使用条件下での安全性を検証し、製品の品質基準を安全面・性能面において設定する。
4.試作品を作り、それが品質に関する自社基準および安全性に関する自社基準を満たしているか確認するため検査を行う。試作は、基準の要求を満たすまで繰り返し行うものとする。
5.外部の検査機関において品質基準書に基づき試験を行う。
6.量産体制に入った際、生産開始直後の製品で抜き取り検査を行い、品質および安全性が保持されているか確認する。
7.製造の作業工程ごとに品質管理を徹底し、異物の混入等を防止する。
8.製品の工場出荷前にロットごとに抜き取り検査を行う。

第8条(取扱説明書および警告ラベルの作成手順)
製品の取扱説明書および警告ラベルの作成は技術部が行い、次の手順に従うものとする。
1.誤使用を含め予見可能な限り製品の使用状況を想定し、開発または改良しようとする製品が安全性を欠いている点(以下「欠陥」)を調査する。欠陥による事故の発生頻度および被害程度を予測する。
2.設計により安全化を図る。
3.設計および製造段階で欠陥を取り除くことができない場合は、取扱説明書または警告ラベルで事故の予防を図る。この場合、次の事項を決定する。
   ・警告の対象者
   ・警告の方法(取扱説明書への記載や警告ラベルの貼り付け等)
4.原案を作成する。
  ・開発品または改良品が試作され、その安全性試験を行った後、取扱説明書および警告ラベルが原案通りでよいか検討する。
  ・製品安全管理室において、開発品または改良品の製造および取扱説明書、警告ラベルについて審議し、取締役会の決裁を受ける。
  ・取扱説明書および警告ラベルには、次の事項を明記する。なお、取扱説明書および警告ラベルの作成方法は別に定める(省略)。
  ・危険度レベルの区分(危険、警告、注意)
  ・危険の内容、性質
  ・警告無視の結果(被害)
  ・危険の回避

第9条(苦情処理)
1)製品使用者等が当社に申し出た苦情のうち、製品の欠陥を原因とする苦情は、苦情対応窓口から製品安全管理室へ通知するものとする。
2)製品安全管理室は、各関係部門の協力を得て行われた当該苦情の原因究明、被害想定の結果を取りまとめ、各関係部門の製品安全責任者に報告し、情報を共有する。
3)取締役会によってリコール実施を不要と判断した場合において、製品安全対策室は、当該苦情の処理対策の立案を行い、取締役会に決裁を仰ぐ。
4)製品安全管理室は、当該苦情の処理対策に従い、対策を実施する。
   ・製品使用者等に対する回答
   ・総務部による損害賠償交渉への協力
   ・仕入先に対する求償手続き

第10条(設計変更等)
1)製品の安全性を確保できない恐れがあることが判明したときは、技術部は設計変更により、製造部は製造上の変更により、当該欠陥を取り除くことが可能か直ちに検討するものとする。
2)設計変更または製造上の変更により、当該製品の安全性を確保できない恐れを取り除くことが可能な場合、技術部は改良または開発の手続きを、製造部は製造上の変更手続きを取るものとする。
3)設計変更または製造上の変更のいずれによっても当該製品の安全性を確保できない恐れを取り除くことができない場合、技術部は取扱説明書・警告ラベルの変更で対応可能か否かを直ちに検討する。可能な場合、第8条に準じて取扱説明書・警告ラベルの変更を行うものとする。
4)取扱説明書・警告ラベルの変更で対応が不可能な場合、当該製品の製造を中止する手続きを取る。

第11条(関係機関等への報告)
製品安全管理室は、製品の開発・改良が行われる場合および苦情処理対策を実施する場合は、関係行政機関、所属業界団体等に対し製品の安全性に関する所定の報告・届出・申請を行う。

第12条(教育等)
日ごろより、従業員等に対し、必要な教育・研修を実施し、消費者の安全確保の観点から企業の社会的責任の重要性を認識させるよう努める。

第13条(罰則)
従業員等が故意または重大な過失により、本規程に違反した場合、就業規則に照らして処分を決定する。

第14条(改廃)
本規程の改廃は、取締役会において行うものとする。

附則
本規程は、○年○月○日より実施する。

以上(2022年11月)

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