【業種別データ】製鉄業の動向

書いてあること

  • 主な読者:各業種の産業規模、経営指標などを知りたい経営者
  • 課題:さまざまなデータを集める必要があり、時間や手間がかかる
  • 解決策:事業所数や製造品出荷額等から近年の動向を把握する。経営指標で各業種の平均値を知る

1 業界動向

1)業界全体

2019年の製鉄業の事業所数は28事業所(対前年比96.6%)、従業者数は4万2079人(対前年比100.7%)、製造品出荷額等は6兆2429億9900万円(対前年比94.4%)となっています。

1事業所当たりの従業者数は1503人(対前年比104.3%)、現金給与総額は101億6700万円(対前年比102.7%)、原材料使用額等は1990億8000万円(対前年比103.2%)、製造品出荷額等は2229億6400万円(対前年比97.8%)、付加価値額は154億8800万円(対前年比58.5%)となっています。

従業者1人当たりの現金給与総額は676万円(対前年比98.5%)、製造品出荷額等は1億4836万円(対前年比93.7%)、付加価値額は1031万円(対前年比56.1%)となっています。

製造品出荷額等に占める原材料使用額等比率は89.3%(対前年比105.5%)、同付加価値額比率は6.9%(対前年比59.8%)、同現金給与総額比率は4.6%(対前年比105.1%)となっています。

画像1

2)高炉による製鉄業

2019年の高炉による製鉄業の事業所数は14事業所(対前年比100.0%)、従業者数は3万9586人(対前年比100.9%)、製造品出荷額等は5兆9903億6900万円(対前年比94.6%)となっています。

画像2

3)フェロアロイ製造業

2019年のフェロアロイ製造業の事業所数は14事業所(対前年比93.3%)、従業者数は2493人(対前年比98.4%)、製造品出荷額等は2526億3000万円(対前年比89.6%)となっています。

画像3

2 品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2019年実績)

品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2019年実績)は次の通りです。

画像4

3 経営指標

画像5

以上(2022年1月)

pj55066
画像:pixabay

【業種別データ】化学肥料製造業の動向

書いてあること

  • 主な読者:各業種の産業規模、経営指標などを知りたい経営者
  • 課題:さまざまなデータを集める必要があり、時間や手間がかかる
  • 解決策:事業所数や製造品出荷額等から近年の動向を把握する。経営指標で各業種の平均値を知る

1 業界動向

1)業界全体

2019年の化学肥料製造業の事業所数は144事業所(対前年比98.6%)、従業者数は3893人(対前年比99.8%)、製造品出荷額等は2710億9600万円(対前年比97.6%)となっています。

1事業所当たりの従業者数は27人(対前年比101.2%)、現金給与総額は1億3100万円(対前年比101.5%)、原材料使用額等は13億4400万円(対前年比100.8%)、製造品出荷額等は18億8300万円(対前年比99.0%)、付加価値額は4億9400万円(対前年比96.6%)となっています。

従業者1人当たりの現金給与総額は484万円(対前年比100.4%)、製造品出荷額等は6964万円(対前年比97.8%)、付加価値額は1826万円(対前年比95.5%)となっています。

製造品出荷額等に占める原材料使用額等比率は71.4%(対前年比101.9%)、同付加価値額比率は26.2%(対前年比97.6%)、同現金給与総額比率は6.9%(対前年比102.6%)となっています。

画像1

2)窒素質・りん酸質肥料製造業

2019年の窒素質・りん酸質肥料製造業の事業所数は10事業所(対前年比111.1%)、従業者数は461人(対前年比115.5%)、製造品出荷額等は402億2300万円(対前年比95.6%)となっています。

画像2

3)複合肥料製造業

2019年の複合肥料製造業の事業所数は101事業所(対前年比100.0%)、従業者数は2777人(対前年比99.7%)、製造品出荷額等は2100億5900万円(対前年比99.1%)となっています。

画像3

4)その他の化学肥料製造業

2019年のその他の化学肥料製造業の事業所数は33事業所(対前年比91.7%)、従業者数は655人(対前年比91.1%)、製造品出荷額等は208億1500万円(対前年比88.0%)となっています。

画像4

2 品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2019年実績)

品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2019年実績)は次の通りです。

画像5

3 経営指標

画像6

以上(2021年12月)

pj55038
画像:Cavan-Adobe Stock

【業種別データ】電子応用装置製造業の動向

書いてあること

  • 主な読者:各業種の産業規模、経営指標などを知りたい経営者
  • 課題:さまざまなデータを集める必要があり、時間や手間がかかる
  • 解決策:事業所数や製造品出荷額等から近年の動向を把握する。経営指標で各業種の平均値を知る

1)業界全体

2019年の電子応用装置製造業の事業所数は486事業所(対前年比98.4%)、従業者数は2万8457人(対前年比98.9%)、製造品出荷額等は1兆774億9700万円(対前年比97.8%)となっています。

1事業所当たりの従業者数は59人(対前年比100.6%)、現金給与総額は3億4800万円(対前年比105.0%)、原材料使用額等は11億円(対前年比99.9%)、製造品出荷額等は22億1700万円(対前年比99.4%)、付加価値額は10億2300万円(対前年比94.7%)となっています。

従業者1人当たりの現金給与総額は594万円(対前年比104.4%)、製造品出荷額等は3786万円(対前年比98.9%)、付加価値額は1748万円(対前年比94.2%)となっています。

製造品出荷額等に占める原材料使用額等比率は49.6%(対前年比100.5%)、同付加価値額比率は46.2%(対前年比95.3%)、同現金給与総額比率は15.7%(対前年比105.6%)となっています。

画像1

2)X線装置製造業

2019年のX線装置製造業の事業所数は82事業所(対前年比95.3%)、従業者数は6493人(対前年比94.5%)、製造品出荷額等は3738億3300万円(対前年比96.3%)となっています。

画像2

3)医療用電子応用装置製造業

2019年の医療用電子応用装置製造業の事業所数は66事業所(対前年比101.5%)、従業者数は4200人(対前年比98.7%)、製造品出荷額等は2033億2600万円(対前年比100.8%)となっています。

画像3

4)その他の電子応用装置製造業

2019年のその他の電子応用装置製造業の事業所数は338事業所(対前年比98.5%)、従業者数は1万7764人(対前年比100.7%)、製造品出荷額等は5003億3800万円(対前年比97.8%)となっています。

画像4

2 品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2019年実績)

品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2019年実績)は次の通りです。

画像5

3 経営指標

画像6

以上(2022年1月)

pj55116
画像:pixabay

リーダーの条件/ローマ史から学ぶガバナンス(10)

書いてあること

  • 主な読者:現在・将来の自社のビジネスガバナンスを考えるためのヒントがほしい経営者
  • 課題:変化が激しい時代であり、既存のガバナンス論を学ぶだけでは、不十分
  • 解決策:古代ローマ史を時系列で追い、その長い歴史との対話を通じて、現代に生かせるヒントを学ぶ

1 古典的なリーダーシップ論

リーダー、あるいはリーダーシップは、古くから研究されてきました。人類が集団を形成し、社会生活を営むようになってから今日に至るまで、私たちはずっとその答えを探しているようです。絶対的な答えは存在しませんが、先人たちが考察してきたリーダーシップ論は、私たちに豊かな示唆を与えてくれます。ごく簡単にですが、リーダーシップ論の変遷をたどってみます。

いわゆるリーダーシップ論は、1900年代頃から活発に議論されるようになりました。近代産業の発展、軍隊の強大化などが背景にあります。最も古典的な考え方は「特性理論」で、リーダーは生まれながらの特性(性格や資質)によってリーダーシップを発揮していると捉えます。この理論は、優秀なリーダーを分析しても同じ特性ではないため、理論として不十分とされましたが、実際に、優れた経営者などを見ると、生まれながらの何かがあるようにも感じられます。

これに続き、1940~60年代に注目されたのは「行動理論」です。これは、リーダーシップは行動によって発揮されると考え、優れたリーダーの行動を類型化し、それを模倣することでリーダーを育成する理論です。「行動理論」に属する代表的な考え方としては、“人への関心”と“生産への関心”という2軸で捉える「マネジリアル・グリッド」や、“課題達成機能(Performance)”と“人間関係・集団維持機能(Maintenance)”という2軸で捉える「PM理論」などがあり、汎用的であるため、現在でも使われています。ただし、行動を模倣するだけでリーダーシップが身に付くわけではないという批判もありました。確かに、行動の模倣だけでは不十分ですが、優れたリーダーの行動軸を捉え、自分に取り入れることは有益でしょう。

2 現在のリーダーシップ論

1960~80年代には「条件適合理論」が提唱されました。これは、外部・内部環境などの条件によって有効なリーダーシップは異なると考え、それらの諸条件に適したリーダーシップに変化させるという理論です。代表的な考え方としては、リーダーの行動を分類し、“環境要因”と“部下の要因”によって、適したリーダーシップは変化すると説いた「パス・ゴール理論」、“リーダーとメンバーとの関係”“仕事の構造化度合い”“自分の地位とパワー”という業務の特徴とリーダーのタイプを組み合わせてリーダーシップを見極める「LPC理論」などがあります。

この「条件適合理論」が発展し、80年代以降、「コンセプト理論」という形で整理されています。「コンセプト理論」は、集団組織やビジネス環境に応じて起こるさまざまなパターンに対して取るべきリーダーシップを整理します。「変革型リーダーシップ」「サーバント・リーダーシップ」などのように、パターンごとにリーダーシップを描いた考え方になっています。

このように、どの時代のリーダーシップ論も、リーダー像を考える上での示唆を含んでいます。そして、「条件適合理論」や「コンセプト理論」に見られるように、結局のところ、リーダーシップとそれを取り巻くさまざまな歯車がうまくかみ合うことが重要であり、それによって、良い結果が生まれ、良い状態が維持されるのです。

3 五賢帝時代の始まり

さて、ローマ史においては、平和と繁栄を謳歌した最盛期といえる時代がありました。5人の皇帝による治世下であったため、「五賢帝時代」と呼ばれています。

前回、カリグラ以降の混乱期をご紹介しましたが、その混乱は、ヴェスパシアヌスが皇帝に就き、一時的に回復されました。しかし、その後を継いだ長男ティトゥスは2年で病死し、経験に乏しい次男ドミティアヌスが皇帝に就きます。ドミティアヌスは、ゲルマニア防壁の建設着手などの功績もありますが、元老院の反皇帝派を強硬に排除したことから元老院との激しい対立を生みました。最後は、執事の解放奴隷に暗殺され、元老院によって「記録抹殺刑」に処されます。これは、存在しなかったものとして、すべての痕跡を抹消するという処罰です。こうしたことにより、元老院派階級の歴史家が残した否定的評価のみが現在まで伝えられています。

ドミティアヌス暗殺後、元老院は早々にネルヴァを皇帝とします。このネルヴァから始まる5人の皇帝の時代が「五賢帝時代」といわれるわけですが、皇帝に即位したとき、ネルヴァはすでに高齢で、15カ月で病没します。高齢で子供もいなかったため、当初から臨時的につなぐための皇帝と考えられており、本人もそれを自覚していたのでしょう。皇帝というよりも調整役といった形で、元老院、市民、軍からの支持を集めるべく奔走し、早々にトラヤヌスを養子にして後継者に指名しました。ネルヴァは、皇帝としては不適格と評価され、五賢帝とされる理由は「トラヤヌスを後継者に選んだ一事のみ」などといわれていますが、ドミティアヌスが暗殺され、一呼吸が必要であった状況下において、ネルヴァのような穏健な調整役のリーダーがうまくかみ合い、安定した状況を次につないだのではないか、と思います。

4 五賢帝時代の全盛期

ネルヴァ没後、トラヤヌスが皇帝に即位します。それまでイタリア本土出身者の最上流貴族しか皇帝に選ばれたことがなかったのですが、トラヤヌスは、初めての属州出身皇帝でした。トラヤヌスは、ダキア戦争とパルティア戦争で功績を上げ、ローマ帝国の版図を史上最大にした他、内政にも努め、帝国全域で公共施設の強化・整備を図りました。真面目に皇帝という役割を務め、演じ、後世に残る功績を数多く打ち立てました。

通常、皇帝というものは、必ず批判的な意見や論評がありますが、トラヤヌスについては、同時代においても後世においても、また、能力も実績も人柄も称賛されており、非の打ちどころがありません。これは、トラヤヌスが優れた特性を持ち、リーダーとしてバランスよく行動したことに加え、元老院、市民、軍を含む国内外のあらゆる状況とそれらを構成する要素が、トラヤヌスというリーダーを中心に、見事にかみ合った結果です。これは意図して成せるものではないと思いますが、リーダーとしての理想的な形といえるでしょう。

トラヤヌスの施政で惜しまれることといえば、パルティアを完全に併呑できぬまま、病没したことでしょう。トラヤヌスには子供がなく、ハドリアヌスを後継者に指名したことになっています。歴史上、疑わしいとされていますが、円滑に皇位は継承されました。ハドリアヌスは、トラヤヌスがパルティア戦争によって属州としたメソポタミア、アッシリア、アルメニアを放棄して戦争を収束させ、東方の国境の安定化を図りました。そして、トラヤヌスの重臣たちを粛清しました。

こうしたことから、元老院とは緊張関係となり、市民からも信頼を失うのですが、税制の公正な実施、社会福祉への取り組みなどを大胆に実行し、市民からの人気を回復させます。そして、皇帝が不在でも完璧に機能するよう内閣組織を固めた上で、ハドリアヌスは、長期の視察巡行の旅に出ます。当時、皇帝が首都を離れる旅は軍事目的が多く、具体的な実務目的を持たない旅など、元老院や市民から反発を招くことでしたが、ハドリアヌスは、二度にわたって長期の視察巡行の旅に出かけ、在位21年中7年しか本国に滞在していません。それが許されるだけの市民からの人気と盤石な内閣組織を備えていました。そうまでしてハドリアヌスが望んだ旅の目的は、各地の巡察、防衛の再整備、行政の調整、統合の象徴としての皇帝の周知にあり、建設分野の一団も引き連れ、各地で公共工事も行いました。こうした長期の旅がありながらも、官僚制度の確立、法制度の整備、ユダヤ反乱の鎮圧など数多くの実績を残しています。

ハドリアヌスは、複雑な性格だったようですが、極めて現実的で、実績重視のリーダーでした。市民への人気取り政策もありましたが、それは手段に過ぎず、なすべきことを確実に遂行しました。長期の視察巡行の旅や文化面での功績などは、この時代の情勢なればこそですが、それも含め、ハドリアヌスのリーダーシップがうまくハマっていたのでしょう。

ハドリアヌスが亡くなると、養子のアントニヌスが即位したのですが、ハドリアヌスと緊張関係が続いた元老院は、「記録抹殺刑」の前段階ともいうべき、先帝ハドリアヌスの神格化を拒否する動議を提出しました。これに対し、アントニヌスは、元老院議員たちに先帝の神格化を粘り強く求め、元老院側が根負けした形で認められました。こうしたアントニヌスの行為から「敬虔なる者」を意味するピウスという称号がつけられ、「アントニヌス・ピウス」と呼ばれています。

アントニヌス・ピウスは「歴史のない皇帝」といわれていますが、これは23年間という長い治世の中で、目立った出来事がないためです。無策や怠慢のように思われがちですが、目立った事件や戦争などが起きていないということは、安定的に運営していたともいえます。アントニヌス・ピウスは何もしなかったわけではなく、新しいことはしなかった。それこそが自分の責務であると考えて行動したのです。

人事や安全保障などは先帝の方向性を継承し、紛争は外交で解決、大規模な公共事業は行わず、自費を投じて財政の立て直しを図り、健全な治世で国家資産を増やしました。アントニヌス・ピウスが亡くなるときには、帝国の国庫は、初代アウグストゥス以来の最高額になったといわれています。

5 リーダーの条件

平和と繁栄が続いた五賢帝時代の中でも、全盛期といえるトラヤヌス、ハドリアヌス、アントニヌス・ピウスの3人をごく簡単にご紹介しましたが、いかがでしたか。私の個人的な見解ですが、トラヤヌスからは「成長」「けん引」、ハドリアヌスからは「転換」「改革」、アントニヌス・ピウスからは「静観」「定着」といった言葉が連想されます。それぞれ全盛期を支えた優れたリーダーですが、性格や考え方も、行動や振る舞いも異なります。この全盛期を眺めてみると、3人の順序も含め、あらゆる要素がうまくかみ合っていたということがよく分かります。現在、「条件適合理論」や「コンセプト理論」を軸にリーダーシップ論が議論されていることもうなずけます。

ご紹介したリーダーシップ論から遡ること400年ほど、ルネサンス期の政治思想家マキャヴェッリは、リーダーにとって不可欠な3条件として、「力量」「好運」「時代への適合性」を掲げています。これもまた納得できます。マキャヴェッリは、古典から学んだ歴史上の人物をもとに思考したわけですが、ローマ史のみならず、歴史には多くのリーダー像のサンプルがあります。それらから学び、自分なりの形を見つけ、追究していくことがリーダーシップの第一歩かもしれません。

以上(2021年10月)
(執筆 辻大志)

op90059
画像:unsplash

【交渉術】ビジネスに欠かせない交渉の実践テクニック

書いてあること

  • 主な読者:交渉の窓口担当者
  • 課題:関係者間の主張を調整するのが難しい
  • 解決策:交渉の目的や自分の主張を明確にするなど、交渉の準備などをしっかりする

1 交渉の目的はWin-Winの関係を築くこと

交渉の目的は自分の要求を一方的に相手に認めさせることではなく、

双方が主張と譲歩を繰り返しつつ、互いに納得できるWin-Winの妥協点を見いだすこと

です。

例えば、自社が100万円のサービスを80万円に値切った場合、100万円という「パイ」の大きさが変わらなければ、自社が得をした分だけ相手は損をします。これを「ゼロサム・ゲーム」といいます。理想的な交渉は、ゼロサム・ゲームを脱し、何かで損をしても別の何かで得をするように「パイ」を大きくする「プラスサム・ゲーム」に転換することです。

交渉はさまざまなシーンで行われます。特に、ビジネスは社内外を問わず複数の関係者が互いの主張を調整し合いながら進められるので、交渉を避けては通れません。とはいえ、自社の要求を力ずくで認めさせようとすれば、ビジネスはうまくいきません。そのため、主張すべきところは主張し、妥協すべきところは妥協するといった交渉が重要となります。

この記事では、ビジネスに欠かせない交渉の基本を紹介していきます。

2 相手からより大きな譲歩を得るために

1)交渉に勝つために必要な事前準備をする

交渉をしても、一方の主張が全面的に受け入れられることはほとんどありません。そのため、当事者は主張と譲歩を繰り返しながら妥協点を探ります。こちらが譲歩する代わりに相手にも譲歩を求めることになるので、相手からより大きな譲歩を得たほうが交渉の勝者です。

相手から譲歩を得るには、事前準備が必要です。交渉の事前準備は、

  • 交渉の目的を明らかにし、自分の主張を固めること
  • 相手が最も重視している事項について仮説を立てること

です。

2)交渉の目的を明らかにし、自分の主張を固める

多くの交渉担当者は、「交渉の目的や自分の主張は、言うまでもなく明確である」と勘違いしています。例えば、販売部でA社を担当している山田さんの頭の中は次のようなものです。

今回の交渉の目的は、A社に製品を販売すること。他社への販売実績は100万円なので、A社にも100万円で提案する

山田さんが交渉に臨んだところ、A社から次のオファーが出されました。これに対して、山田さんはどのように切り返すことができるでしょうか。恐らく、即答することはできないでしょう。

金額は100万円で結構です。その代わり、納期を半分に短縮してください

山田さんが考えていたのは、交渉の目的は「販売」、主張は「他社と同様に100万円で販売する」ことだけです。これでは、あまりにも準備不足です。少なくとも、次の点は明確にしておきたいものです。

  • 販売金額を含め、納期やアフターサービスなどでどこまで譲歩できるのか?
  • なぜ、他社に対する同規模の取引事例を基準に販売金額を決定したのか?

特に、A社のオファーをどこまで受け入れるのか決めておかなければなりません。初めから譲歩の限界を落としどころに交渉をするわけではありませんが、「80万円までなら値下げする」といったように譲歩の限界が明確でなければなりません。

また、山田さんのように他社への取引事例を基準に条件を設定するケースが多いですが、A社にとっては関係のない話です。他がどうあれ、A社にはA社の条件があります。A社が交渉上手だと、山田さんの主張は逆手に取られ、「うちは、御社が事例として挙げた取引先より大きな取引をするので、値下げをご検討いただけますよね」と切り返されてしまいます。

このように、自分では交渉の材料が準備できているつもりでも、実は交渉の目的が曖昧であったり、主張の根拠が弱かったりすることがあります。上司や同僚にも意見を求めながら、少なくとも次の点は明らかにして交渉に臨みたいものです。

  • 交渉の目的と背景を把握しているか?
  • 最も重視する交渉事項(金額、納期、数量など)は何か?
  • 自分の主張は明確か、またその主張の正当性を証明する根拠はあるか?
  • 自分が譲歩できる限界を決めているか?

3)相手が最も重視している事項について仮説を立てる

「交渉はテーブルに着く前から始まっている」といいます。これは、事前に交渉相手に関する情報を多く入手しているほうが有利になることを示しています。

実際、交渉の場で初めて主張や譲歩の内容を考えることはありません。入念な事前準備の末、いくつかの交渉シナリオを準備し、状況に応じて自社にとって最も有利な方向を目指すことが基本です。そこで、相手の状況について次の点を調べることが重要になります。特に、複数の会社が競合する商談では、商談相手に関する情報を少しでも多く集めるようにします。

  • 交渉相手の主張が適正(不適正)であることを示す客観的な資料はあるか?
  • 交渉相手が最も望んでいる事項について仮説を立てたか?
  • 交渉相手はどのような人柄か?
  • 交渉相手のキーパーソンは誰か、その人は交渉に出席するのか?
  • 交渉相手の出席者の役職と人数は?

4)相手の主張は、相手にとって都合がよい内容である

ある程度、交渉の経験がある人は、交渉が双方の譲歩によって成立することを知っています。そこで、あらかじめ販売価格などに譲歩する分を上乗せしてくることが珍しくありません。例えば、150万円で販売したいところ、200万円を提示して50万円の値引きの余地を残すパターンです。相手がこの作戦に乗り、まんまと180万円で販売できたとします。この場合、

  • 販売側:30万円の利益が上積みされる
  • 購入側:20万円のコスト削減

となります。この例で、販売側が悪いわけではなく、多くのビジネスはこうして決着しています。とにかく注意すべきなのは、相手の主張してくることは、こちらに都合がよさそうなことであっても、実際は相手にとって都合がよいということです。それを見極めるためにも、事前の情報収集が大切なのです。

そうした意味では、仮に購入側が入念な事前準備をして、製品の適正価格は130万円であることを把握していたら、「他社の製品も調べたが200万円は高過ぎる。130万円にしてください」と切り返すことができ、全く違った展開になっていたでしょう。

3 実践で使える交渉テクニック

1)「良い警官」と「悪い警官」

「良い警官」と「悪い警官」は、交渉相手にとって好ましくない主張をする「悪い警官」と、それをなだめて交渉相手にとって好ましい主張をする「良い警官」がチームになって交渉に臨むテクニックです。よくある方法は、上司を「悪い警官」役にすることです。そして、「上司はなかなか値下げを認めませんでしたが、私のほうで何とか説得し、御社に15%引きで販売できるよう社内調整をしました。上司はこれがギリギリで、見積もりの有効期間も1カ月だといっています。これ以上の値下げはできません。ぜひご検討ください」といったように交渉します。

2)譲歩の回数を決め、その幅を小さくしていく

交渉相手に要求されるたびに譲歩をするようではダメなので、あらかじめ譲歩できるラインと譲歩の回数を決めておきます。例えば、値引きは最大10万円まで、譲歩するのは3回と決めた場合、「1回目は6万円、2回目は3万円、3回目は1万円」といったように譲歩の幅を小さくしていきます。これにより、交渉相手は「本当にギリギリなのだな」という印象を持ちます。

3)時間をうまく使う

交渉には期限があります。これをうまく使うことで交渉を有利に進めることができます。まず、頻繁に交渉の機会を設けるなど、交渉相手に多くの時間を使わせます。人は過去の投資をなかなか捨てることができないため、「このように多くの時間を割いて交渉してきたのだから、何とかして成立させたい」と考えがちです。

次に、交渉の期限を切って相手に本気で動いてもらいます。「夏休みの宿題」と同じで、時間に余裕があると、どうしても物事を先送りにしてしまいがちです。そこで、「交渉期限は今月いっぱいです。それまでに明確なご回答がいただけないのであれば、この話は白紙にさせていただきます」といったように、期限を切って交渉相手に差し迫った気分にさせるのです。

4 交渉をしないケース

交渉の勝ち負けは譲歩の大きさで決まりますが、目先の利益だけを考えて交渉するのはよくない場合があります。仮に、交渉相手が厳しい条件を提示してきたとしても、「今、その条件を受け入れるか否か」だけを考えるのではなく、その条件を受け入れることで末長く安定した取引が見込めないかを検討してみるのです。

また、ビジネスはギブ・アンド・テークです。過去、自社に大きな譲歩をしてくれた取引先が、「今回はどうしても譲歩できない。こちらの提案を受け入れてくれないか」とお願いしてきたら、今回はこちらが譲歩する番かもしれません。これも、将来にわたって良好な関係を維持していくために必要なことです。

交渉はビジネスにおいて不可欠であるものの、あえて交渉を避けたほうがよいケースがあることにも留意しなければなりません。

以上(2021年10月)

op00157
画像:pixabay

商店街活性化の第一歩は「固定会費を止めること!」 福井駅前の家賃を実質2倍にしたまちづくりの仕掛け人が語る、商店街活性化の“4つの秘訣”/岡目八目リポート

年間1000人以上の経営者と会い、人と人とのご縁をつなぐ代表世話人杉浦佳浩氏。ベンチャーやユニークな中小企業の目利きである杉浦氏が今回紹介するのは、竹本祐司さん(一般社団法人EKIMAE MALLの代表理事)です。

「ものすごい熱量で、商店街活性化を【ビジネス】にしている方」。それが竹本さんです。他の人には思いつかないような企画力、やると決めたら実現するまでやり切る行動力、そしてしっかりとマネタイズも見据える戦略力。そうした竹本さんの土台には、「福井駅前商店街を活性化させる」というブレずに燃え続ける情熱と、数々の壁や失敗など語り尽くせないくらいのご経験がありました。

1 福井駅前の家賃を、実質2倍にした竹本さん

竹本さんの実現してこられたことは、内容も実績も「すごい」の連続です。まず衝撃的だったのは、福井駅前のテナント家賃についてのお話です。なんと家賃を実質2倍にされたというから驚きです!

もともとシャッター街だった福井駅前では、指定家賃の2分の1くらいで貸し出していました。2015年3月、竹本さんが福井駅前に「美容系の11店舗同時開業」を達成されたことでメディアに取り上げられ、それをきっかけに4カ月後(2015年7月)には家賃が通常に戻った、つまり「実質2倍」になりました。

その後、福井駅前の駐車場料金も値上がりしていったそうで、例えば福井駅前のコインパーキングでは、料金が1.5倍ほど値上がりしたといいます。竹本さん曰く、車社会の福井県では「駐車場にお金を払うのはありえない」とお考えの方も多いそうですが、福井駅前の駐車場に関しては、有料にもかかわらず需要が増えて足りなくなってしまったくらい、変わりました。駅前の雰囲気もとても良くなったそうです。人々の意識や雰囲気を変えた、これはすごいことですね!

なぜこうしたことが実現できたのか竹本さんにお聞きしたところ、

    「エリアの価値が上がったのが要因」

ということでした。そこで竹本さんから、福井駅前の「エリアの価値が上がるまでの流れ」を教えていただきました。

まず、インパクトのある「美容系の11店舗同時開業」をきっかけに、福井駅前にさまざまな店舗の出店が増え雰囲気が良くなり、福井駅前で面白いことを仕掛けるプレーヤーも多くなっていきました。ビアガーデンなども出てきたそうです。そうすると、夜、福井駅前に人が集まるようになり、今度は大手居酒屋チェーンが出店してきました(それまで福井駅前には大手チェーンは来なかったとのこと)。この大手居酒屋に多くの福井県民が詰めかけます。そうすると混んで入れない人も出てくるので、そういう人たちは近辺の飲食店に流れます。その結果、夜の飲食店が増え、集まる人も増え、福井駅前というエリアの価値がどんどん上がっていったと竹本さん。やはり、活性化には「エリアの価値を上げる」のが非常に重要なのだと思います。お話をお聞きしていると、さっそく福井駅前に行きたくなります!

2 20代、30代(今)が“濃い”竹本さんのプロフィール

福井駅前を活性化することに全力を注いでおられる竹本さん。もともとはクラブイベントの企画などをやっていましたが、26歳ころにはまちづくりに時間も労力も費やすようになり、30歳を過ぎたころには、まちづくり一本でやっていこうと決意されたそうです。竹本さんのプロフィールを拝見しますと、20代、30代(今)でかなり色々なことをやっておられるのが分かります。濃いですね! 「2300人合コン」なんて、他に聞いたことがありません……。

竹本さんのプロフィールを示した画像です

(出所:竹本さんからいただいた資料より抜粋)

3 竹本さんの「商店街活性化」の盛りだくさんな事例

竹本さんが今やっておられる商店街活性化、まちづくりのことを色々とご説明していただきました。特に、福井駅前のイベントなどソフト事業に強みがある竹本さん、内容、熱量ともに盛りだくさんでユニークなものばかり。例えば駅前商店街と商業施設の対決イベント(駅前モールVSエルパ)などはなかなか思いつかない発想ですし、他の地域でも参考になりそうです。

●竹本さんが手がけた200以上のソフト事業のうちの一部

竹本さんが手がけた200以上のソフト事業のうちの一部を示した画像です

(出所:竹本さんからいただいた資料より抜粋)

竹本さんは現在、複数の会社を通して商店街活性化、まちづくりをされています。まず、2016年10月に立ち上げられたのが一般社団法人EKIMAE MALLです。今5期目を迎えている民間のまちづくり会社で、事業のメーンは「福井駅前の活性化」。福井県民が一番来やすい福井駅前で商業を活性化し、エリア価値を高めるための仕掛けを実践しておられます。

1)一般社団法人EKIMAE MALLの取り組み「情報インフラ整備」

竹本さんたちは、消費者と商店街の両方に対して情報インフラ整備をされています。例えば、消費者の方々には福井駅前情報だけのフリーペーパーを毎月1万3000部発刊しており、SNSも。チラシをうまく届けられないなど、商店街は情報発信力が弱いのが課題と考えていた竹本さん。「福井駅前の広告代理店」として、商店街全体を取りまとめて販促しています。

フリーペーパーはビアガーデンや忘年会特集などテーマを絞った内容が特徴で、宣伝したい店舗側の費用負担は5万5000円。フリーペーパーは竹本さんたちが市役所などに設置、手配り、21カ所の専用ラックに置いている他、EKIMAE MALLのウェブサイトでも閲覧できます。

●フリーペーパーの一部

フリーペーパーの一部画像です

(出所:一般社団法人EKIMAE MALLのウェブサイトより抜粋)

一方、商店街の各店舗に対しても、「情報インフラ整備」をされている竹本さん。福井駅前には6つの商店街がありますが、お互いに何をしているか分からない……。そこで、お互いに実施している販促などの情報を分かるように「エキマエモール情報便」としてまとめ、440店舗の商店主さんにお届け。SNSのグループもつくっておられます。

●「エキマエモール情報便」やSNSグループ

「エキマエモール情報便」やSNSグループを示した画像です

(出所:竹本さんからいただいた資料より抜粋)

2)福井県まちづくりセンターの取り組み プレイヤーの育成

竹本さんは、別会社「福井県まちづくりセンター」で、福井県の地域活性化を担うプレイヤーの育成も行なっています。「地域活性化は【人】が大事である」という思いからです。

福井県まちづくりセンターの取り組み プレイヤーの育成を示した画像です

(出所:福井県まちづくりセンターウェブサイトより抜粋)

「福井駅前を盛り上げたいというワークショップはよくあるが、皆で集まって一つのことをワイワイ決めるのは無理がある。決まったとしても妥協したものになる」と語る竹本さん。マネタイズも含め、信念を持ち、しっかりと考え抜いて実行していくプレイヤーが欠かせないと考える竹本さんは、福井県が主催する「ワクワクチャレンジプランコンテスト」への応募者の事業支援、コンサルも行なっておられます。

このコンテストの賞金は100万円ですが、竹本さんとしては「たとえ賞金で100万円もらえたとしても、その事業を継続していくのが難しい」と感じているため、継続して100万円を生み出せるようにコンサルしておられるそうです。コンテストの勝ち負けだけで終わるのではなく、「自分たちで事業を継続していく力を付ける」のは非常に重要なことだと思います。

●福井県まちづくりセンター「ワクワクチャレンジプランコンテスト」コンサル

福井県まちづくりセンター「ワクワクチャレンジプランコンテスト」コンサルを示した画像です

(出所:竹本さんからいただいた資料より抜粋)

●福井県まちづくりセンター活動実績の一例

福井県まちづくりセンター活動実績の一例を示した画像です

(出所:竹本さんからいただいた資料より抜粋)

3)美のまちプロジェクト

竹本さんがやってこられた商店街活性化の中でも、美容系の11店舗同時開業(2015年3月)などインパクトのある取り組みが満載なのが「美のまちプロジェクト」です。これは、「福井駅前の空きテナントを減らそう」という目的でスタートしたものです。

福井駅前活性化を図るため、若者向けに「2300人合コン」というものすごいイベントなどを開催していた竹本さん。その後、商店主さんの意識改革にも努めながら、一緒に「空きテナントを埋める」ためにさまざまなことを考えました。中でも、エステやリラクゼーションといった美容系業態は飲食店などに比べてリスクが低いこともあり、“福井駅前をジャック”して、「ここ(福井駅前)に行けばビューティー系がある!」と消費者に思ってもらえるようにしようと考えました。

そして、「美容系の11店舗同時開業」を仕掛け、メディアにもプレスリリースを打ち出しました。メディアの注目度はかなり高かったようです! この美のまちプロジェクトでは、13カ月で実に22店舗もの美容店舗が出店したということです。

●「美のまち祭」のパンフレット

「美のまち祭」のパンフレットを示した画像です

(出所:竹本さんからいただいた資料より抜粋)

4 商店街活性化の秘訣は4つの“竹本節”

竹本さんに、ご経験や現在の商店街活性化事業をお聞きしていく中で、「竹本節」が色々と飛び出しました。商店街活性化に取り組む方々には目からウロコのお話もあると思いますし、成功の秘訣が凝縮されています。ここでは次の4つをご紹介させていただきます!

  • 商店街活性化を成功させる第一歩は「固定会費」をなくすこと
  • 「一人で始めろ!」
  • 1万人の賛同者より大切なもの
  • 大事なのは継続してマネタイズできる「ビジネス」にすること

1)商店街活性化を成功させる第一歩は「固定会費」をなくすこと

竹本さんが商店街活性化のために、まず取り組んだほうがいいと教えてくださったのは、「商店主さんが月々いくら払う、という固定会費(販促などソフト面に関する固定会費)を止めること」でした。商店街の会費は大きく分けると、アーケードやゴミ処理などにかかる「ハード費」と販促などにかかる「ソフト費」がありますが、竹本さんは「ハード面にかかる固定会費は残す必要があると思いますが、ソフト費のほうは止めていいと思います」とのことでした。そのわけは、竹本さんの言葉をお借りすると、次の理由からです。

    「商店街にはさまざまな業種がある。そうした中で(商店主)皆が販促に1万円の会費を払うような仕組みでは、効果的な販促ができるわけがない。これが地域を問わず商店街の大きな課題です。結局、スタンプラリーなど抽象的、全体最適なものになってしまう。
    スタンプラリーが悪いわけではないが、お金を出してやりたい販促の取り組みは、店舗ごとに違うはず」

そこで竹本さんが実践しているのは、竹本さんたちの会社が「企画」を用意し、いいと思った商店主からお金をもらうという方法です。従来の固定会費制の商店街単位ではなく、竹本さんたちの会社が企画し、それに対していいと思った商店主がお金を支払うこの方法は、いわゆる民間の広告代理店(竹本さんたち)とその顧客(商店主)と同じ構図です。

言葉を選ばずに言えば、広告代理店なのですから、竹本さんたちは消費者を惹きつける企画を必死で考えますし、商店主側もやりたければお金を払います。やりたくないのに、実績が上がらないのにとりあえず会費を払っている状態とは全く違います。そして消費者も、練った面白い企画、分かりやすい情報を受け取れるわけです。消費者、参加者(商店主)、企画側、まさに「三方よし」の仕組みといえます。竹本さんは、次のように続けます。

    「商店主さん全員が満足する企画なんて、おそらくあり得ません。固定会費(ソフト面)でやらなければ、という固定概念の枠を取り払うことがとても大切」

これは目からウロコで、驚きつつも「実は真似したい」方がおられるのではないでしょうか。

2)「一人で始めろ!」

竹本さんは、商店街活性化を進める組織についても、ご自身の考え方をお話くださいました。「商店街活性化は、まずは一人で始めろ」。これが、竹本さんの薦めです。

    「一人でやりたいことを必死で考え抜き、コンセプトを詰めて決める。そうしてブレないコンセプトを決めてから仲間を集める。この順番が逆になると成功が難しい」

最初から人数だけ集めてしまうとスピード感も遅くなりますし、物事が決まらなくなります。また、何人も集まったとしても、結局ちゃんと動いているのは決まった数人、もしくは一人だけ、ということも起きがちです。コンセプトを決めないで友達同士で始めてしまうのも、途中で揉めてしまう可能性があるとのこと。こうしたことは、起業と通じるところがあるかもしれません。会社のコンセプト、やることをしっかり決めてから仲間を集めないと、会社も方向性が右往左往する、人が離れていくなど揉めがちです。

「まずは一人で始めろ」と同様に、「一緒にじゃなくて連携」も大事な考え方だと、竹本さんは教えてくださいました。実際に、とある別々のイベント開催のときに、関連がある内容だからと販促を一緒にやることにしたそうです。しかし、チラシは一緒で良くても、肝心の「ネーミング」が困ってしまったようです。別々のイベント2つの内容なのに、どういうネーミングにしてチラシに載せるのか、など。最初から「連携」という形にして、合うところだけ共同、難しいところは別々に実施する、と最初から決めておくことが大切と竹本さんは語ります。

3)1万人の賛同者より大切なもの

「一人で始めろ」ともつながりますが、商店街活性化を実現するために大切なのは、

    「1万人の賛同者よりも一人の覚悟です」

と真っ直ぐに語ってくださる竹本さん。

この言葉には、これまで色々なことがありつつも福井駅前の商店街活性化を地道に実現されてきた竹本さんの実体験が込められており、とても心に刺さります。色々なことがあっても「やり切る」という竹本さんの覚悟、その覚悟を持ってやり切ってきた実績があるからこそ出てくる、まさに「血と汗の結晶、厚みのある言葉」です。
 もちろん、失敗したこと、成し遂げられなかったことも多いとおっしゃる竹本さん。そうしたさまざまなことも全部、今の竹本さんをガッチリ支える土台になっているのを感じます。

    「周りにどれほど無理だと言われても、僕ができると思ったらできる」

こうおっしゃる竹本さん。言葉だけ聞くとかなりパワーがありますが、竹本さんご自身は自然体で変な「力み」がありません。本当に実践してきたからなのでしょう。かつて1500人合コンをすると竹本さんが打ち出したとき、「できるわけがない」「人が集まるわけがない」と皆から言われたそうですが、蓋を開けてみるとイベントの3週間前には枠が完売したそうです。

もっと言うと、竹本さんは24歳で運転代行会社を立ち上げましたが、それまで運転代行で働いたこともなければ、代行車に乗ったこともありませんでした。そのため周りから「絶対にうまくいかない」と言われていたそうです。しかし、立ち上げからおよそ3年後、竹本さんの運転代行会社は、福井県内でトップクラスの保有台数にまで上り詰めました。

「結局は自分自身がやると覚悟を持って決めて、それを実行する。それに尽きる」ということを、竹本さんは実際のご経験から教えてくださっていると思います。竹本さんの言葉や姿は、商店街活性化だけでなくすべてのビジネス、ひいては人生にも通じるのではないでしょうか。

4)大事なのは継続してマネタイズできる「ビジネス」にすること

覚悟を持ってやり切ることが大前提ではありますが、「商店街活性化は、単なる精神論だけでうまくいくわけではない」とも語る竹本さん。商店街活性化を継続していくには何が大事か、次のようにお話してくださいました。

    「商店街活性化、まちづくりは正義の押し付けになってはいけない。ちゃんと利益などメリットを出す【ビジネス】にすることが大事」

確かに、こうしたメリットがなければ継続していくことは難しいでしょう。竹本さんは、全国の商店街で店舗加盟率が減少している今こそ、専属の事務局(例えば竹本さんたちのような商店街活性化を実現する民間会社)がしっかりと「生産性のある企画」を立て実現し、利益を出していかなければならないと言います。

商店主自身が販促を行なっている場合、本業もあって販促に注力するのが難しいため、なかなかうまくいかないことも多いようです。そうなると、思うように販促の成果が上がらず、皆の不満が溜まってしまいます。これでは悪循環です。まちづくり=マネタイズするビジネスと位置付け、それを専門に行う事務局(民間会社など)を持ち、「ビジネスとして」まちづくりをしていく。これが、商店街活性化を継続して実現していく大きな秘訣といえるでしょう。

5 「今後」に向けて

最後に、竹本さんに今後の展望などをお伺いしたところ、福井駅前など福井県で実績を積まれている商店街活性化を、他の都道府県にも展開されていくとのことでした。既にお話されている地域もあるそうです。竹本さんのものすごいご経験と発想が、次はどこの地域で発揮されるのか、本当に楽しみです!

また、全国の行政に対しても、次のような思いがあると竹本さん。

    「今はまだ地域活性化が産業になっていないが、今後は産業化が進んでいく。そうなるとソフト事業はスピードが重要なので、行政は自分たちでやるよりも、【ソフト事業に対して投資してプロジェクトを育てる】ことが必要」

竹本さん風に言うと、「まちづくりでメシ食ってます」。そう当たり前に言い切れる会社、組織などのプレイヤーが増えていき、日本全国で活躍することが、「継続できる商店街活性化の実現」には欠かせないといえるでしょう。

めちゃくちゃ失敗したからこそ、そのノウハウを実感を持って人に伝えることができる、「まちづくりに関わる物理的、精神的な大変さ」を経験し乗り越えてきたからこその「まちづくりコンサル」を実践されている竹本さん。
 竹本さんのお話をお聞きしていたら、竹本さんたち、そして竹本さんたちがコンサルするプレイヤーが増えれば、日本全国各地の未来は明るい、そう思える心持ちになりました! 商店街活性化を、まちづくりを、利益を生み出す当たり前のビジネスに変えていこうとしている竹本さんはまさに「まちづくりのイノベーター」、心から応援したいと思います。有り難うございます!

以上(2021年10月作成)

事務管理部門の生産性が向上しない22の理由と対策

書いてあること

  • 主な読者:事務管理部門の生産性を向上させたいと考えている経営者
  • 課題:事務管理部門の業務は個人の裁量に任されていることが多く、効率化しにくい
  • 解決策:厚生労働省「働き方・休み方改善ポータルサイト」を参考に、自社の生産性が向上しない理由に該当する対策を実行し、社員の意識や仕事のやり方を改革する

1 事務管理部門の生産性が向上しない理由にはパターンがある

業務効率化やコストダウンの推進は重要な経営課題ですが、事務管理部門に関して言うと、業務が個人の裁量に任されていることも多く、改善が進みにくい面があります。一方で、事務管理部門の業務の内容はどの企業も大体同じなので、改善が進みにくい理由も似通ってきます。

そこで紹介したいのが、厚生労働省「働き方・休み方改善ポータルサイト」です。同サイトでは、社員の働き方・休み方に関してありがちな、具体的な課題とその解決策を示しています。

この記事では、同サイトから事務管理部門の生産性向上に関する部分をピックアップし、生産性が向上しない22の理由(課題)とその対策を紹介します。「うちも困っている」という経営者の皆さんは、ぜひご確認ください。

■厚生労働省「働き方・休み方改善ポータルサイト」■
https://work-holiday.mhlw.go.jp/

2 働き方の実態把握に問題あり

1)働き方の実態が把握できていない

【理由1】自己申告による時間管理を行っており、正確な労働時間の実態把握ができていない
【対策】適切に労働時間を把握するためのシステムを導入する

タイムカードや勤怠管理システムを設置し、労働時間を正確に把握します。直行・直帰する社員、リモートワークをする社員などについては、始業・終業時刻を電話やSNSで報告させたり、ノートPCから打刻可能な勤怠管理システムを活用したりして対応します。自己申告での労働時間管理を続ける場合、PCログをチェックするなどして労働実態の把握に努めましょう。

【理由2】長時間労働や年次有給休暇の取得が低調な部署、個人の原因がわかっていない
【対策】所定外労働(残業)の時間数、年次有給休暇(年休)の取得状況を一覧にする

まずは部署ごとの残業の時間数、年休の取得状況を一覧にして状況を整理します。そして、長時間労働が続いている、あるいは年休の取得が滞っている部署や個人に対して、その要因を明らかにするための調査を行います(ヒアリングなど)。調査する内容は、

  • 顧客および業務の状況(顧客数、担当業務、各業務の所要時間など)
  • 残業が多い要因、年休の取得が滞る要因(業務量が多い、業務用ツールが古いなど)
  • 改善のために実施している取り組み内容(業務の分担、業務用ツールを見直すなど)
  • 問題点(業務の分担を見直したが、どの社員も業務量が多く改善につながらないなど)

などです。また、もしも残業削減や年休の取得促進に成功している部署が他にある場合、その成功理由をヒアリングし、改善が滞っている部署に適用できないか検討します。

  • 成功理由(アウトソーシングによって部署内の総合的な業務量を削減した上で、業務の分担を見直し、社員ごとの業務量を平準化することに成功したなど)

2)働き方に関するデータと業績の関係が不明確

【理由3】経営層に取り組みのメリットがない(業績ダウンにつながる)のではと指摘される
【対策】働き方・休み方に関するデータと業績の関係、組織単位の生産性などを分析する

残業削減や年休の取得促進の効果に疑問を抱く経営層には、データなど客観的な情報で説得を試みましょう。例えば、厚生労働省「働き方・休み方改善ポータルサイト」では、残業削減や年休の取得促進に関する各社の成功事例が、具体的な数字(取り組み前後の残業時間の変化など)とともに紹介されているので参考になります。

3 管理職や社員の意識に問題あり

1)管理職の意識が低い

【理由4】管理職の意識やモチベーションが低く、各職場に業務効率化の動きが浸透しない
【対策】トップからメッセージを発信し、管理職を巻き込んだ推進体制を構築する

業務効率化に消極的な管理職に対しては、経営者から「そのような姿勢ではダメだ」とメッセージを発信し、意識の変化を促しましょう。また、経営者を中心に、業務効率化に取り組むプロジェクトチームをつくり、管理職をメンバーに加えるというのも一策です。

【理由5】管理職に長時間労働の傾向がある場合、部下も長時間労働となる傾向にある
【対策】管理職の長時間労働を解消する仕組みを導入する

管理職を対象とした定時退社推奨日、定時退社推奨月間の設定など、管理職に対して定時退社を促す仕組みを検討しましょう。

2)長時間労働が評価される(と感じている)組織風土がある

【理由6】「付き合い残業」が常態化している
【対策】管理職による所定外労働の事前承認制を設ける

所定外労働を行う場合は、管理職への事前申請・承認を要することとし、部下は、終業時刻前に、「業務内容と残業する理由」「残業予定時間」を上司に申請するルールを設けます。なお、リモートワークなどの場合、事前申請・承認の手続きを嫌がる社員が、定時で終業したように見せかけて仕事を続ける「隠れ残業」が発生しがちです。こうした場合、残業時間の上限(1日○時間、1カ月□時間など)を社員ごとに設定し、その範囲内で残業を認めるのも一策です。

【理由7】「成果を出すためには長時間労働も仕方がない」「長時間労働が評価されるはず」と考えている社員がいる
【対策】効率指標としての「時間当たり成果」を人事評価項目に加える

「時間当たり成果」を人事評価項目に加え、「時間」ではなく「効率性」で評価するように制度設計することで、社員の行動パターンの変化を促しましょう。

【理由8】長時間働くことを評価する意識が残っている部署・個人が存在する
【対策】現場の仕事の進め方を改革し、効率的な業務遂行に向けたインセンティブを付与する

組織業績の評価項目として、人件費を削減して付加価値を高める、時間当たりの売上高を高めるといった指標を組み込み、効率的な業務遂行を評価します。その際、部署メンバーの賞与へ反映させるなどして、所定外労働の削減により賃金に影響が及ばないようにします。

【理由9】フレックスタイム制を導入しているが、一部に夜遅くまで勤務する社員がいる
【対策】朝型勤務を奨励する

1日で終わらせる必要のない業務であれば、早めに終業し、翌朝の早い時間帯に業務を回すよう奨励しましょう。コアタイムの時間帯を前倒しし、朝の時間帯に働きやすい状況を整えるのも一策です。なお、フレキシブルタイムの開始・終了時刻は労使協定で決まっているので、その時刻を超えて働く社員には、管理職への事前申請・承認を義務付けるようにしましょう。

3)社員が長時間労働をいとわない

【理由10】仕事にやりがいを感じており、退社して特段やりたいこともないため、長時間労働に対する問題意識を持っていない
【対策】社員向けの教育・研修を行う

長時間労働と健康・仕事効率の関係などを社員に認知してもらうため、全社員の受講を義務とする教育・研修を行いましょう。例えば、過労死ライン、インターバル(休息)と生産性の関係、社内全体における割増賃金の支払い状況などについて説明することが考えられます。

【対策】オフの時間確保とそれによる社外のさまざまな活動への参加の推奨

定時退社や年休取得により、家族と過ごす時間を大事にし、自己啓発や休養、趣味なども含めて人間性を高め、自分の仕事を見つめ直すことを推奨します。必要に応じて、それら活動の情報提供を求めましょう。オフの活動の際の社員の生き生きした姿や、活動によって得られるものなどの情報について、社内報などを通じて提供することで効果が高まります。

4 仕事の特性、仕事のやり方に問題あり

1)業務が標準化されていない

【理由11】繁忙期に外部人材を雇用しても業務内容の説明に労力がかかり、うまく活用できない
【対策】業務の棚卸しを行う、業務手順書を作成する

業務の棚卸しを行い、業務手順書を作成しましょう。作成した業務手順書を、繁忙期などに新規人材の教育に活用します。ただし、経験や知識を基に感覚的な判断が求められる「属人的な業務(採用面接のノウハウなど)」は、マニュアル化に向かないので対象から外します。

2)業務(時間)の無駄、重複が多い

【理由12】決裁などに手間をかけすぎる部分がある
【対策】組織運営・決裁権限を見直す

現在の組織運営のあり方を再度検討し、特に決裁権限について企業経営上の観点、リスク対策、事業運営の効率性の観点などから簡素化を図りましょう。例えば、現場で決裁できる業務を増やす、紙からオンラインでの決裁に切り替えることなどが考えられます。

【理由13】退職や人事異動、育児休暇取得時など、業務の引き継ぎに時間を取られる
【対策】引継書を作成して業務引き継ぎの効率化を図る

引継書を作成して、上司が事前に承認しておきます。引継書は過去に作成したものをベースに作成するので、半期や四半期、プロジェクトの節目などに改訂を行っておくとよいでしょう。引継書は、業務全体を俯瞰(ふかん)できるものとし、業務の流れ、社内外の関係者とのつながりなどを明示します。資料がある場合、資料一覧と格納先をリストアップしておきます。

3)アウトプットの品質を過剰に追求する

【理由14】社内向け説明資料でも必要以上に質の高い資料を作成するため、手間がかかる
【対策】社内資料の内容について再検討を行う、資料内容の簡素化および枚数の上限を設定する

社内資料は要点が理解できるのであれば、デザインや分量にこだわる必要はありません。例えば図の色は白黒とする、枚数は○枚以内にするなどルールを決め、作成時間を短縮します。

4)必要ではないメール、会議が多い、会議が効果的に行われていない

【理由15】ミーティングやメールが多い(減らない)ことがネックとなっている
【対策】会議の効率化を図る

会議で明確な意思決定を行うことや、会議に必要な人のみが出席するなどの取り組みを徹底しましょう。また、決められた会議時間内に決定をする、資料は紙ではなくデータで連携し参加者がノートPCで内容を確認するなど、具体的なルールを設定します。

【対策】会議を開かないという選択肢を検討する

これまで会議を行ってきた議事事項について、決定権限を委譲するなどして会議の開催を省略することを検討します。

【対策】メールに関わる時間の削減・効率化を図る、メール数そのものの削減を図る

メールの宛先について、TOは返信をしてほしい相手、CCはやり取りを知っておくべき相手に限定するなどして、送受信や確認作業の手間を減らします。また、社内の簡易な連絡については手間がかからないSNSで行うなどして、メール数そのものの削減を図ります。

【理由16】会議で意見が出ず、会議の機能を果たしていない
【対策】会議の活性化を促進する

会議の前に、その会議の目的、議題、決めるべきことなどを明確にし、会議参加者に伝えるようにします。参加者には、問題意識を持って会議に参加するように促します。会議によっては会議中のメールや電話の使用を禁じることも検討しましょう。

5)IT化(効率化)に対する忌避感がある

【理由17】業務効率化のためにIT機器を導入したいが、IT機器に対する忌避感が強い社員が多く導入が難しい
【対策】IT機器に対する忌避感がある社員向けに、通常のマニュアルとは別の簡易マニュアルを作成する

IT機器を使用する際に活用できる、図付きのマニュアルを作成しましょう。手順通り行えば従来通りに業務が行え、時間場所を選ばず報告ができるなどのメリットがあることも伝えましょう。IT機器の使い方を習得するための研修機会を設けるとよいでしょう。

6)特定の部署・社員に仕事が集中している

【理由18】社員各人の業務負荷が把握できていない
【対策】業務の棚卸しを行う

業務の棚卸しをすることで、各人の業務負荷を「見える化」しましょう。長時間労働につながる負荷が重い業務は、業務分担の調整を行い、業務を平準化します。

【理由19】月の所定外労働60時間以上のリストに挙げられている社員が常連化している
【対策】実態や状況を把握し、フォローアップを進めて改善を推進する

担当部署に改善報告書を作成させ、

  • 原因が的確に分析されているか
  • 改善対策は分析した原因に対応したものとなっているか
  • 改善対策は実現可能なものであるか、改善目標の達成期日は設定されているか
  • 設定された期日に無理はないか

を精査します。改善報告書を基に、報告した所属長をリーダーとして、改善報告書に記載した内容に取り組みます。

取り組み結果の報告を基に、効果を上げていない取り組みについて、その原因を分析して対策を講じましょう。該当部署だけで推進することが難しい取り組みについては、企業全体で対策を推進するための体制の整備について検討すべきです。

7)周囲の社員が業務を代替しにくい

【理由20】知識やスキルの違いから、職場内で特定社員の仕事を分担できない状況が発生し、仕事が属人化している
【対策】周辺領域も含めた、広めの専門性の育成と業務の標準化

社員に対して、周辺領域を含めた広めの専門性の育成を行いましょう。標準化できる業務については、マニュアルなどを作成し、業務の平準化を図ります。

【理由21】全社的に「自分の持っている業務を他人に頼む」という考えが根付いておらず、個人で抱え込みがちである
【対策】業務の組織的遂行体制の構築(ペア制など)

主担当が不在の場合は副担当がバックアップする「ペア制」を導入するなど、組織的に対応する体制を構築しましょう。人事評価において、個人業績に加えて部門の業績を評価の対象とするように検討します。

【対策】複数業務を経験させ、多能工型の育成を行う

ある程度複数の業務を経験させ、多能工型の社員の育成を図りましょう。業務範囲を他のメンバーと重複させるなどして、協力し合う体制づくりを進めます。

8)中間管理職がプレイングマネジャーになっている

【理由22】部下の残業を減らすために、業務を引き受けた課長がプレイングマネジャーになっており、生産性向上を考える十分な時間が取れない
【対策】上長職が課長職への支援を行う、上長職の人事評価項目にワーク・ライフ・バランスの項目を盛り込む

課長の顧客に対する折衝に上長が立ち会うなど、無理な働き方の防止や計画的な業務遂行が可能となるよう、課長職を支援しましょう。また、上長職の人事評価項目にワーク・ライフ・バランスについての項目を盛り込むことで、上長職本人および課長職を含む部下の長時間労働の抑制や年休の取得を促進させることにつながります。

【対策】業務の棚卸しにより課長級の業務負荷を軽減させる

課長職が担っている業務の棚卸しを行って業務が必要かどうかを選別し、不要な業務を廃止しましょう。それでも負荷の軽減が足りない場合は、必要な業務のうち課長職が行うべき業務を選別し、一部の業務を上司や部下に振り分けましょう。プレーヤーとしての仕事とマネジャーとしての仕事の割合を、ある程度決めておくことも一策です。

以上(2021年10月)

pj40012
画像:pixabay

ダイレクト・メールを活用したマーケティングを再考する

書いてあること

  • 主な読者:若年層などに「刺さる」宣伝活動をしたい一般消費者向けサービスの提供者
  • 課題:今のやり方では競合他社との差異化が図れない。もっと宣伝効率を高めたい
  • 解決策:紙媒体のダイレクト・メールを再活用する。提供するサービスの特性と目的に合わせて送付先を絞り、ターゲットの心を掴む仕様のものを送付すれば効果が見込める

1 紙媒体のダイレクト・メールは、若年層には受けが良い?

SNSなどが普及した今、企業や店舗から送られてくる紙媒体のダイレクト・メール(以下「DM」)は、「古い」と思われがちかもしれませんが、そう決めつけるのは早計です。意外なことに、

DMは20代の男女や30代の女性への訴求力が強い

ことを示唆する調査結果もあります。例えば下記のデータです。

画像1

日本ダイレクトメール協会の「DMメディア実態調査2020」によると、DMを見て何らかの行動をした人は15.1%で、そのうち商品やサービスを購入・利用した人の割合は2.1%です。

この「何らかの行動をした人」の割合を性別と年代で見ると、20代男性は37.1%、20代女性は31.6%、30代女性は27.7%です。同協会では、調査結果から、比較的若い世代のほうがDMを見て何らかの行動をする傾向にあるとしています(30代男性は7.7%、40代男性は8.9%、50代男性は14.5%、40代女性は17.8%、50代女性は9.2%)。また、世帯年収別が高い層ほど、何らかの行動をする人の割合が高くなる傾向もあるようです。

また、DMにはその他にも次のような「追い風」があります。

  • コロナ禍の影響で在宅率が高まり、手に取る、あるいは目に入る可能性が高まった
  • デジタルの宣伝手法が増えたことで、アナログはユニークな存在になりつつある
  • 個人情報保護法の改正でDMのハードルが高くなり、逆に「特別感」が増している
  • デジタルマーケティングの手法が広がり、顧客分析や効果検証が容易になっている

この記事では、アナログな手法であるDMを見直すべき理由を解説した上で、分析などを行って戦略的にDMを活用することで宣伝効果を高める考え方を紹介します。改めてDMの活用を検討する際のご参考にしてください。

2 DMが若年層に「刺さる」3つの理由

前述の「DMメディア実態調査2020」を行った日本ダイレクトメール協会によると、「若年層のDMに対する行動喚起率の高さは、5~6年ほど前から顕著に見られる傾向」だといいます。

同協会ではその理由や背景について確認するために、2018年に「若年層のDM意識」を調べるグループインタビューを実施しました。その結果、若年層の開封率および行動喚起率が高い要因として、次の3点を確認できたといいます(2018年調査時点の内容です)。

1.デジタルネイティブ世代にとってのDMは特別感がありインパクトもある

「(電子メールは)1日で200~300通は届いている。量が多すぎて、全くさばききれていない」(40代男性)
「(DMは)欲しい情報が向こうから来てくれるので、うれしい。それがアクションするきっかけになる」(30代女性)
「手に取ったときにインパクトがあるのは“企業からの手紙”ならではなので、テンションが上がる」(20代男性)

2.自分のために手間とコストを掛けて印刷物を送ってくれたことに価値を感じる

「自分がいよいよ大人になった、お金を使う立場になったと認識するきっかけになった」(20代男性)
「5年前の美容院からのDMをまだ取ってある。オシャレだし、店員さんのメッセージも書かれていたので」(20代女性)
「スポーツショップからDMを受け取ったとき、そのショップとの付き合いの長さを初めて実感した。企業から『お得意様』として認めてもらえたことがうれしくて、また利用したいと思った」(20代男性)

3.電子メールよりも見やすく分かりやすいため、お得情報が印象に残る

「スマホでは件名も最初の何文字かしか見えない。前半に「クーポン」とか入っていなければスルー」(30代女性)
「電子メールだとスクロールしなければならないが、DMは開くと全ての情報が一覧できる」(20代男性)
「紙だからからこそ、周辺の興味がなかった情報を知るきっかけになるし、内容が頭に残りやすい」(30代男性)

3 DMで狙える効果と活用事例

このように、若年層に受けが良いかもしれないDMについて、実際にどのような効果が狙えるのか、どのような活用方法があるのか確認しましょう。

DMは、最終的には提供するサービスの販売につなげることが目的ですが、1通のDMで販売を目指すことだけが活用方法ではありません。自社が提供するサービスの特徴によって、効果のある活用方法が異なります。例えば、次の通りです。

画像2

自社が提供するサービスの特徴を踏まえた上で、どのような目的で(Why)、誰に(ターゲット、Whom)、どのようなタイミングで(When)、どのような(What)DMを送るのか、検討することが大切です。次章で「4W(Why、Whom、When、What)」を見てみましょう。

4 DMの効果を高めるために必要な「4W」

1)目的を明確にする(Why)

第3章で触れたように、DMは提供するサービスによって効果が異なります。自社が提供するサービスの特徴に合わせて、「優良顧客の囲い込み」「顧客との関係維持」「休眠顧客の掘り起こし」「新規顧客の開拓」など、DMを送付する目的を明確にしましょう。

また、DMをそのままサービスの販売に結び付けるのか、「来店してもらう」「ウェブサイトにアクセスしてもらう」「会員登録してもらう」「アプリをダウンロードしてもらう」「まずは認知してもらう」といった段階を踏むのかなど、細かい目的も決めておきましょう。そのほうが訴求力のある内容が考えやすくなります。

2)ターゲットを絞る(Whom)

1通のDMにもコストが掛かるので、送付先は可能な限り絞るようにしましょう。DMの目的を踏まえて、性別や年齢層はもちろん、住所、これまでの自社のサービスの利用頻度などに基づいてターゲットを絞ります。新規顧客を獲得したいときなど、自社の顧客リストが活用できない場合は、送付先の属性を絞ってDMを送付してくれる「ターゲティングDM」事業者に相談してみてもよいでしょう。

3)送付のタイミングを選ぶ(When)

送付のタイミングも、DMの目的に沿った形で選びましょう。イベントやセールなど期間限定の内容であれば開始直前が理想的です。時候の挨拶やバースデーカードであれば、そのタイミングをずらさないようにしましょう。タイミングを逸したDMは、逆に顧客の心象を悪くしないとも限りません。

4)DMの内容にこだわる(What)

せっかく送付したDMが、郵便受けからゴミ箱に直行してしまうような内容では意味がありません。簡単ではありませんが、パッと見も詳しい内容も、ターゲットのハートを掴み、目的とする行動を促しやすいDMづくりをしたいものです。予算にもよりますが、外部のデザイナーなどに相談するのも一策です。

前述の日本ダイレクトメール協会による2018年の「若年層のDM意識」では、「特に若年層の女性はデザイン性の高さや豪華さにときめく」という結果も出たそうです。

予算や費用対効果との兼ね合いにもよりますが、場合によっては試供品やノベルティグッズを同封したり、簡単なクイズによる懸賞を付けたり、アンケートを返信してくれた人に粗品をプレゼントしたりするなど、送付先にメリットを与えることで注目度を高めることも検討してよいでしょう。

この他、宛名や大切なメッセージの部分を手書きにするなど、送付先によって「パーソナライズ」させることや、「丁寧さ」を大切にすることもおすすめです。

画像3

日本郵便が主催する全日本DM大賞では、毎年応募のあったDMの中から優れた作品を選定し、表彰しています。全日本DM大賞のウェブサイトでは、表彰されたDMを画像入りで紹介していますので、デザインなどを検討する際に参考になるでしょう。

■日本郵便「全日本DM大賞」■
https://www.dm-award.jp/

5 DM送付後の対応でさらなる効果が期待できる

1)送付後の検証が次回以降の効果を高める

DMを送りっぱなしでは、DMを送付するメリットを享受できているとは言えません。DMの効果について検証を徹底することで、DMの効果を高めることにつなげられるようになります。

DMの目的が明確になっていれば、効果の検証もやりやすくなります。今回のDMが目的の達成のためにどの程度効果を発揮したのか、データを基に確認しましょう。効果を検証する視点としては、次のようなものがあります。

  • DM送付前後の客数や売り上げなどの変化
  • 客数や売り上げなどの変化が、費用や作業量に見合ったものだったのか
  • DMで効果のあった客層の属性にはどのような特徴があるか
  • そもそもDMの「4W」が正しかったのか
  • DMのどこを改善すれば、もっと効果が高まるという仮説が立てられるか

また、例えば当初からDMの内容を2種類にする、送付時期を分けるなど「ABテスト」を実施して効果の高い送付方法を検証してみてもよいでしょう。

2)顧客リストをアップデートする

顧客リストを基にDMを送付している場合、顧客リストをアップデートすることが大事です。不達の送付先を顧客リストから削除することはもちろんですが、DMへの反応があったかどうか、購買行動につながったかなどの情報も付加するようにしましょう。

顧客の属性とDMに対する反応をひも付けてデータ化していけば、自社のサービスをDMでプロモーションするには、どのような属性の人をターゲットにすれば効果が高いかも把握できるようになるでしょう。

3)個人情報の取り扱いには注意を

個人情報の漏洩があっては、サービスの販売どころか企業の信頼にも影響します。自社内だけでなく取引先を含めた、情報管理の徹底に留意しましょう。

  

以上(2021年10月)

pj70002
画像:unsplash

融資かリースか? 自社に有利な調達方法を判断する材料

書いてあること

  • 主な読者:新たな設備投資について融資かリースかを検討している経営者
  • 課題:融資とリースのどちらが有利なのか、どう判断すればよいのか分からない
  • 解決策:固定資産税はリースがお得だが税制次第。その他、金利や企業の信用状況によって異なるため、都度、判断するしかない

1 融資とリースでどちらがお得か?

機械などの設備投資には多額の資金が必要で、自己資金だけで賄いきれないことがあります。そうした場合は、

  • 金融機関から設備資金の融資を受けて設備を購入する
  • リースまたはレンタルで調達する

ことが一般的です。経営者が知りたいのは、「融資とリースではどちらがお得か?」ということですが、結論は、設備投資の都度、判断するしかありません。なぜなら、

固定資産税の負担はリースが有利ですが、支払利息の負担は金利や企業の信用状況によって異なります。また、税制も変わります。そのため、設備投資の都度、税制、金利、企業の信用状況などを総合的に勘案する必要がある

ということです。この記事では、こうした結論に至るまでの考え方を紹介します。

2 融資を受けて購入する場合

融資を受けて設備を購入する場合、損益に影響する項目は、

減価償却費、支払利息、租税公課(固定資産税)

です。注目するのは減価償却費です。代表的な減価償却方法には、

  • 定額法:耐用年数にわたり一定の減価償却費を計上
  • 定率法:取得当初に多額の減価償却費を計上

があります。いずれを選択しても最終的な減価償却費は同じですが、途中の事業年度の損益に与える影響が異なります。定額法と定率法における減価償却費の推移(イメージ)は次の通りです。

画像1

3 リースで導入する場合

1)ファイナンスリースとオペレーティングリース

会計上のリースとは、

特定の物件の所有者たる貸手が当該物件の借手に対して、リース期間にわたりこれを使用収益する権利を与え、借手は貸手にリース料を支払う取引

です。専門的でとっつきにくい印象を受けるかもしれませんが、内容はリースに関する世間一般の認識と異なるものではありません。また、会計上のリースは、ファイナンスリースとオペレーティングリースとに区分されます。

ファイナンスリースは、リース期間の中途で契約解除ができないリース、またはこれに準ずる取引です。借手が当該リース物件からもたらされる経済的利益を実質的に受け、かつ、当該リース物件の使用に伴って生じるコストを実質的に負担します。ファイナンスリースに該当するか否かについては、「リース取引に関する会計基準の適用指針」で詳細に規定されています。ファイナンスリースは、「売買取引」に準ずる取引とみなすため、設備を導入した企業は、リース資産を購入した場合に準じた会計処理を行います。なお、ファイナンスリースは所有権移転ファイナンスリースと所有権移転外ファイナンスリースに区分されますが、わが国のファイナンスリースは所有権移転外ファイナンスリースであることが多いため、以降では所有権移転外ファイナンスリースを前提とします。

一方、オペレーティングリースは、ファイナンスリース以外のリースをいい、リース取引を「賃貸借取引」に準ずる取引とみなすため、設備を導入した企業は、リース資産を賃貸借した場合に準じた会計処理を行います。現在、オペレーティングリースの会計基準(日本基準)の見直しが検討されていて、今後、資産計上が必要になる可能性があります(2021年9月17日時点)。この記事では、現時点の会計基準(日本基準)を基に、「賃貸借取引」に準じた会計処理として紹介しています。

会計上、ファイナンスリースとオペレーティングリースのどちらに該当するかの判断は、次のように行われます。

画像2

2)損益に与える主な影響(費用化)

ファイナンスリースの場合、

減価償却費と支払利息

が損益に影響する項目になります。ファイナンスリースの減価償却方法は、通常はリース期間を耐用年数としたリース期間定額法となります。一方、オペレーティングリースの場合、

支払リース料

が損益に影響する項目になります。

4 融資とリースでキャッシュフローが有利なのはどっち?

融資とリースでキャッシュフローが有利なのはどちらなのか、次の条件で比較します。

  • 売上高:1500万円
  • 導入資産の取得価額:1000万円
  • 耐用年数:7年
  • リース期間:5年
  • 融資の場合の借入金利:年2.0%
  • リースの場合の割引率(支払利息の計算に適用される利率):年2.8%

融資とリースの場合の、損益計算書とキャッシュフロー計算書は次の通りです。

画像3

この条件のキャッシュフローの合計は、融資が4480万円、リースが4490万円となり、リースのほうが10万円有利になります。その理由は次の通りです。

  • 固定資産税負担がない:40万円
  • 支払利息負担が多い:マイナス26万円(融資2.0%、リース2.8%)
  • 上記による税負担の増加:マイナス4万円((40万円-26万円)×30%)(万円未満切捨)

融資とリースの比較の場合、固定資産税の負担ではリースが有利です。一方、支払利息の負担では、金利動向や企業の信用状況によって結果が変わります。そのため、いずれが有利かの判断は画一的には決定できず、設備調達の都度、税制、金利、企業の信用状況など総合的に勘案して決定することが大切です。

5 (参考)それぞれの会計処理

1)融資を受けて設備を購入する場合の会計処理

融資を受けて設備を購入する場合の会計処理を紹介します。なお、購入する設備は機械設備とし、取得価額は1000万円(耐用年数7年、定額法、消費税は考慮しません)、金融機関からの借入金返済期間は5年、利率は年2.0%とします。

1.融資を受けたとき

現金預金を借方に計上(資産の増加)し、借入金を貸方に計上(負債の増加)します。

(借方)現金預金 1000万円 /(貸方)借入金 1000万円

2.設備の購入時

現金預金を貸方に計上(資産の減少)し、機械設備を借方に計上(資産の増加)します。

(借方)機械設備 1000万円 /(貸方)現金預金 1000万円

3.金融機関に対する元本および利息の支払時

現金預金を貸方に計上(資産の減少)し、借入金を借方に計上(負債の減少)するとともに、支払利息も借方に計上(費用の計上)します。

(借方)借入金  192万円 /(貸方)現金預金 212万円

(借方)支払利息 20万円 /

4.購入した設備の減価償却費計上

減価償却費を借方に計上(費用の計上)し、機械設備を貸方に計上(資産の減少)します。これは、機械設備の取得価額に、使用による価値の減少を反映するものです。

(借方)減価償却費 143万円 /(貸方)機械設備 143万円

5.固定資産税の支払時

現金預金を貸方に計上(資産の減少)し、租税公課(固定資産税)を借方に計上(費用の計上)します。これは、設備等に課された固定資産税(固定資産評価額×標準税率1.4%)を反映するものです。

(借方)租税公課 12万円 /(貸方)現金預金 12万円

2)ファイナンスリースにより設備を導入する場合の会計処理

ファイナンスリースにより設備を導入する場合、次のような会計処理になります。なお、リース資産の取得価額は1000万円、リース期間は5年、支払利息は利息法(毎事業年度のリース債務未返済残高に一定の利率を乗じて、支払利息を計上する方法)によるものとし、割引率は年2.8%、消費税は考慮しません。

1.リース資産の導入時

リース資産を借方に計上(資産の増加)し、リース債務を貸方に計上(負債の増加)します。

(借方)リース資産 1000万円 /(貸方)リース債務 1000万円

2.リース会社に対するリース料の支払時

現金預金を貸方に計上(資産の減少)し、リース債務を借方に計上(負債の減少)するとともに、支払利息も借方に計上(費用の計上)します。

(借方)リース債務 189万円 /(貸方)現金預金 217万円

(借方)支払利息   28万円 /

3.リース資産の減価償却費計上

リース資産を貸方に計上(資産の減少)し、減価償却費を借方に計上(費用の計上)します。これは、リース資産の取得価額に、使用による価値の減少を反映するものです。

(借方)減価償却費 200万円 /(貸方)リース資産 200万円

ファイナンスリースを売買取引に準ずる取引とみなすため、企業はリース資産を購入した場合と同様に資産計上し、リース期間にわたって減価償却費を計上していきます。ただし、リース資産の所有権はリース会社にあるため、固定資産税はリース会社が負担します。

3)オペレーティングリースにより設備を導入する場合の会計処理

リース料の支払いの都度、支払リース料を借方に計上(費用の計上)し、現金預金を貸方に計上(資産の減少)します。

(借方)支払リース料 217万円 /(貸方)現金預金 217万円

オペレーティングリースを賃貸借取引に準ずる取引とみなすため、設備を導入しても、資産計上する必要はありません。また、ファイナンスリース同様に、固定資産税はリース会社が負担します。

なお、レンタル会社から設備をレンタルする場合の会計処理も、賃貸借取引であることから、オペレーティングリースと同様の会計処理(費用科目は賃貸料など)となります。そのため、別途説明は省略します。

以上(2021年10月)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 公認会計士 仁田順哉)

pj35027
画像:pixabay

【朝礼】リモートワークで「進化し続ける組織」になるために

皆さん、おはようございます。今日も全員リモートワークですので、チャットやオンラインツールでしっかりコミュニケーションを取って、仕事を進めていきましょう。

さて、当社がリモートワークに切り替えてからもうすぐ1年半がたちます。この1年半、皆さんが頑張ってくれたおかげでリモートワークで仕事が回るようになり、この新しい働き方も浸透しました。これからも試行錯誤が続くかもしれませんが、皆さんの協力と頑張りには心から感謝しています。ありがとうございます。

当社では今後もリモートワークを続けていくつもりですので、今日は皆さんに改めて伝えておきたいことがあります。皆さんは、これから言う数字が何を指しているか分かるでしょうか?

「リモートワーク前は週に5時間、

リモートワーク後は月に5時間」

これは、私自身が改めて振り返った、「自分が新しいことを学ぶためにセミナーに費やした時間」です。リモートワークになる前は、新しい領域の対面セミナーに少なくとも週に5時間は参加していました。それが、リモートワークになってから、なんと「月に5時間」に減ってしまっていたのです。リモートワークに切り替えた当初の3、4カ月ほどは、多くのセミナーがオンラインに切り替わり、移動時間もなく便利なので、それこそ週に10時間くらいは参加していました。

しかし、リモートワークやオンラインセミナーに慣れた最近は、自ら積極的にセミナーなどに参加する機会が減っていることに気付いてがくぜんとしました。

自宅でリモートワークをしていると、通信状態さえ整っていれば仕事環境としては最高です。極端に言えば、起きてすぐから寝る直前まで仕事ができますし、移動せずにクライアントや社内外の人とオンラインでミーティングもできます。

その一方で、リモートワークでは「自ら新しいことを学ぼうとしなければ、その機会は減ってしまう」のも事実です。皆さんはどうでしょうか?

出社していたときは上司や同僚、社外の人と触れ合えるので、自分の知らなかった新しいことを学ぶ機会がまさに「転がっていた」はずです。しかしリモートワークでは、自分で情報を取りに行く、違った領域に触れに行くことをしなければ、新しい知識を身に付けたり学んだりするのは難しいでしょう。そうして自分自身が進化できなくなってしまうのです。さらに、何より恐ろしいのは、「自分が進化していないことに気付かなくなっていく」ことです。

当社は、「進化し続ける組織」を目指しています。これからもリモートワークを続けていく当社だからこそ、一人ひとりが自分で「新しいことを学ぼう」とする姿勢が大切です。皆さん、ぜひ「新しく学ぶこと」を決めて、今日、それをスタートさせましょう!

以上(2021年10月)

pj17073
画像:Mariko Mitsuda