オンラインでも中古車が売れる!? 仕組みが変わる中古車販売業界の動向

書いてあること

  • 主な読者:中古車販売業や、その関連サービスを手掛ける経営者
  • 課題:中古車販売は好調なのか、各企業がどのような事業展開をしているのかを知りたい
  • 解決策:中古車需要は高まっている一方、半導体や部品の供給不足による品薄などの課題がある。特定の車種を取り扱ったり、非対面のサービスを推進したりする企業が多い

1 中古車の流通経路と主なプレーヤーについて

中古車の流通経路のイメージは次の通りです。

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中古車販売業の主なプレーヤーは次の通りです。

1)ディーラー系販売店

各自動車メーカーと特約店契約を結び、そのメーカーで展示用や試乗用として使用されていた車を仕入れたり、一般ユーザーから下取り(ユーザーが新しい車に乗り換えるために、今乗っている車をディーラーに買い取ってもらうこと)したりした車を販売する店舗です。

2)中古車販売店

一般ユーザーからの買い取りや、オートオークションなどの業者間取引を通じて中古車を仕入れて販売する店舗です。

全国展開するチェーン店から、地域密着型で単独経営を行う販売店までさまざまな規模の店舗があります。また、特定の車種の取り扱いに特化した店舗や、高級車から軽自動車まで幅広く取り扱う店舗など、商品展開もいろいろです。

3)中古車買取店

一般ユーザーからの買い取りを専業としている店舗です。仕入れた中古車はオークションなどを通じて、中古車販売店に転売する流れとなっています。

なお、企業によっては一般ユーザーからの買い取り、業者間取引だけでなく、一般ユーザーへの直接販売に注力するところもあります。

この他にも、自動車整備工場やガソリンスタンドが事業多角化の一環として中古車を取り扱ったり、実店舗を持たず、ネットオークション形式の販売や個人売買の仲介を手掛けたりするケースもあります。

2 中古車販売にまつわるデータについて

1)乗用車の保有台数、平均使用年数について

自動車検査登録情報協会「自動車保有台数推移表」によると、2021年の自動車保有台数は約8208万台で、そのうち乗用車が約6192万台となっています。乗用車の多くはガソリンエンジン車ですが、ハイブリッド車(プラグインハイブリッド車を含む)が約1001万台、電気自動車が約12万台と、年々普及が進んでいます。

また、同協会が公表している「自動車の平均使用年数(軽自動車を除く)」によると、乗用車の平均使用年数は13.87年(注)となっています。

(注)1年前の自動車保有台数と比較し、減少した車両を1年間に抹消された車両とみなして、国内で新規(新車)登録されてから抹消登録するまでの平均年数を算出しています。ただし、減少台数には一時抹消(一時的に登録を抹消し、公道を走れなくする手続き)も含まれるため、自動車が完全にスクラップされるまでの期間とは若干異なります。

2)中古車販売業の事業所数について

中古車販売業は日本標準産業分類上、「中古自動車小売業」に位置付けられます。直近の総務省「平成28年経済センサス活動調査」によると、2016年時点で中古自動車小売業の事業所数は2万1556です。

3)中古車登録台数について

日本自動車販売協会連合会「中古車年別登録台数」によると、中古車登録台数の推移は次の通りです。

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2021年度の普通乗用車と小型乗用車の合計台数は前年度比5.8%減の316万9492台となり、2019年度以降の前年度割れとなりました。この背景には、中古車需要が高まる一方で、半導体や部品不足により新車の販売が停滞し、中古車流通が減ったことが挙げられます。

4)軽乗用車の中古車販売台数について

全国軽自動車協会連合会「軽四輪車 中古車販売台数の年別推移」によると、軽四輪車のうち、軽乗用車の中古車販売台数の年別推移は次の通りです。

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5)中古車の購入台数と市場規模について

リクルート「中古車購入実態調査2021」によると、中古車の購入台数、市場規模(推計値)は次の通りです。

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中古車市場規模(推計)は2020年に一度前年を下回りましたが、2021年には回復し、直近5年間の推移でも最大の数値となっています。また、若者の車離れといわれて久しい状況ですが、年齢別に見ると、中古車市場で購入台数が最も多いのは20歳代、次いで30歳代となっています。

6)中古車輸出の仕向け国上位10カ国について

日本中古車輸出業協同組合「中古車輸出台数」によると、中古車輸出の仕向け国上位10カ国の推移は次の通りです。

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中古車の海外への輸出先は5カ年連続でロシア、アラブ首長国連邦、ニュージーランドが上位3カ国を占めており、ロシアは5年連続で輸出台数が増加しています。一方、図表には掲載されていませんが、2022年3月時点ではウクライナ侵攻に伴う経済制裁が影響し、ロシアへの輸出が滞ったことで、アラブ首長国連邦への輸出が首位となっています。

また、タイが2020年に入り仕向け国の上位10カ国に入っていますが、背景として、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、公共交通機関を避けて自動車を選ぶ傾向にあることや、経済的事情で新車の購入が難しく、中古車購入の需要が高まっていることが挙げられます。

7)中古自動車小売業を手掛ける主な企業(大手5社)の売上高ランキング

各企業の決算短信資料によると、中古自動車小売業を手掛ける主な企業(大手5社)の売上高ランキングは次の通りです。

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各企業とも、売上高が増加傾向にあります。各企業の動向を見ていきましょう。

IDOMは、中古車買い取り、販売店の「ガリバー」をはじめ、個人間売買の仲介を行う「ガリバーフリマ」や、中古車の査定をスマートフォンアプリで行う「ガリバーオート」などを手掛けています。2022年2月期の国内直営店における中古車小売台数が14万119台となり、創業以来過去最高となりました。

ネクステージは、地域密着型として中古車の販売だけでなく、車検、板金修理、自動車保険までトータルで手掛けています。スバル車だけを取り扱う専門店や輸入車専門店、買取専門店などを幅広く出店したことで、売上高の増加につなげています。

ケーユーホールディングスは、中古車販売店の「ケーユー」を手掛けつつ、もう1つの事業である輸入車ディーラーのほうで売上高を伸ばしています。2022年3月期の国産車販売事業の売上高が404億8800万円に対して、輸入車ディーラー事業の売上高はおよそ2倍の906億3100万円となっています。

ユー・エス・エスは、中古車オークションや中古自動車買取専門店「ラビット」を手掛けています。オートオークションでの中古車取り扱い台数の増加、成約率の上昇が売上高の増加につながったとしています。

グッドスピードは、SUVや4WDの取り扱いに強みを持ち、店舗にサービスファクトリーを併設してサポートを行っています。東海地方以外へのエリア拡大による専門店の出店を進めただけでなく、整備・板金・ガソリンスタンド、レンタカーサービス、保険代理店サービスを強化し、ワンストップでサービスを提供できる体制を整えることによって、売上高の増加につなげています。

3 中古車販売業を取り巻く市場環境の分析

ここではPEST分析を用いて、中古車販売業を取り巻く外部環境と成長要因について整理します。

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中古車販売市場は新車販売の状況に大きく影響されます。新型コロナウイルスの感染拡大や、半導体の供給不足による自動車生産の停滞によって中古車も品薄になり、販売価格が上昇傾向にあります。

中古車の取引価格は年式、走行距離、整備状況や不具合の有無、オートオークションでの相場などを基に販売事業者が決めていますが、一般的に内燃機関(ガソリンやディーゼルエンジン)搭載の車両は、走行距離や整備、修理の履歴で価格の評価が可能とされている一方で、バッテリーを搭載する電気自動車は、バッテリーの性能を適正に評価することが難しく、中古車市場では取引価格が下がる、ユーザーからの人気が低いといわれています。

このことから、日本中古自動車販売協会連合会では、中古自動車のカーボンニュートラルを実現するために、補助金・減免税制を新車、中古車問わずに実施すること、電気自動車のバッテリーを適正に評価するための制度づくりを政府に要望しています。

中古車販売に関わるサービスでは、新型コロナウイルスの感染防止対策や業務効率化の観点から、これまでの対面による商談を避けて、オンライン商談に取り組む企業や、ウェブサイト上で車を購入する際のオートローンの手続きを行えるサービスなど、中古車販売店向けの業務支援ビジネスも登場しています(詳細は次章で後述)。

4 中古車販売に関わる新しいサービスの事例

1)じげん(東京都港区):買い取りが難しい水没車、事故車などの売却を支援

求人情報サイトや住宅リフォームサイトなどのライフサービスプラットフォーム事業を手掛ける同社では、中古車買取店や輸出事業社特化型の買取一括査定メディア「セルトレ」を運営しています。一般的に買い取りが難しいとされている水没車、事故車、走行距離が10万キロ以上の車でも、査定・買い取りが可能としています。

中古車の買い取りを依頼したいユーザーがウェブサイト上で車種や走行距離などの情報を入力すると、「国内小売向け」「海外輸出向け」「廃車」の区分で自動判定を行い、買い取りが可能な中古車の買取専門店や輸出事業者を紹介する仕組みとなっています。

2)ゼロカートラブル(大阪府大阪市):高級車を古着感覚で楽しむことを提案

欧州の中古車をメインに取り扱う同社では、取り扱う車に「チープアップ」という独自のカスタマイズをして提案しています。日本に輸入される欧州車は高級なイメージがありますが、例えば、アルミホイールをあえて質素なスチールホイールに取り換える、キャンプ用品などを積むためのキャリアを取り付ける、ステッカーを車体に貼るなどのカスタマイズを施すことで、より気軽に高級車を楽しんでもらうことをコンセプトにしています。

3)プロトコーポレーション(愛知県名古屋市):オンライン商談、AIで中古車販売を支援

クルマ情報メディア「グーネット」の運営などを手掛ける同社では、専用アプリ等のインストールが不要のオンライン商談ツール「グーネットLive」を提供しています。ユーザーが「グーネット」に掲載している自動車販売会社から発行されるURLを開きパスコードを入力することで、音声とビデオ通話機能でクルマのオンライン商談が可能となります。

また、「グーネット」を利用する中古車販売会社の経営支援システム「MOTOR GATE(モーターゲート)」では、掲載する中古車の画像から、車種情報登録などをAIが自動で判別してデータ化する「MOTOR GATE AI」というサービスも提供しています。

4)ロペライオ(東京都世田谷区):高級中古車のリモート査定、YouTube動画での紹介

輸入中古車の販売・買い取りを手掛ける同社では、リモート査定や動画による販売車の紹介に取り組んでいます。リモート査定は同社ウェブサイトの専用フォームへの入力やラインによる申し込みを受け付けており、最短10分で査定ができるとしています。

販売車を紹介するYouTube動画では、内外装の状態チェックをはじめ、スタッフが試乗して公道を走る様子やレビューも収めているため、顧客が気になった車の状態を詳細に知ることができます。

5)リクルート(東京都千代田区):「非対面WEBローンシステム」で購入プロセスを効率化

中古車情報サイト「カーセンサー」などを手掛ける同社では、アルファ・ゴリラ(兵庫県神戸市)が開発し、リクルートが中古車販売店向けに提供している「インスタントLIVE」(販売店と顧客がオンライン相談をしたり、商談情報を管理したりするシステム)と連携した「非対面WEBローンシステム」を提供しています。

自動車を購入する際のオートローンの審査申し込み、審査結果確認、契約締結までをオンラインでできるので、顧客の契約書記入・なつ印のための来店が不要になるだけでなく、店舗側の業務効率化にもつながります。

以上(2022年6月)

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画像:photo-ac

知的財産の活用~新ビジネスを創出する製造業の事例に学ぶ~/意外と知らない「知的財産権」シリーズ9

書いてあること

  • 主な読者:知的財産を活用して新ビジネスを創出したい製造業の経営者
  • 課題:どのように知的財産を活用すればよいのか分からない
  • 解決策:成功事例を基に、自社の技術の再定義などを行ってみる

1 知的財産の活用で新ビジネスが生まれる

特許権や意匠権など、新規で有用性の高いアイデアやデザインが知的財産権として保護されるのは、これまでにも説明してきた通りです。また、アイデアやデザインなどだけでなく、権利化していない技術上・営業上のノウハウなども知的財産であり、あらゆる無形資産が保護の対象となります。

今回は、社内で保有するさまざまな知的財産を活用することで、新ビジネスを生み出した製造業の事例を紹介します。

2 特許出願した機械点検情報システムで「第三の市場」を創出

しのはらプレスサービスは、プレス加工機械の点検・保守などを行う会社です。プレス加工機械産業においては、従来、プレス加工機械メーカー(大手数社)と修理業者(全国500以上の小企業)の2種類だけで構成されていました。メーカーが新式装置を開発・販売し、修理業者が旧式装置を応急的に直すという構造が定着していたのです。しのはらプレスサービスの創業者である篠原氏も、メーカー側の従業員としてその中にいたそうです。

篠原氏は、プレス加工機械の生産性を向上するためには、故障した機械を修理する、いわば「マイナスからのスタート」よりも、壊れる前のメンテナンスの段階から関わる「マイナスではない状態でのスタート」のほうが優れていると考えました。そこで、

プレス加工機械の「メンテナンス」ビジネスに着目し、新式装置への交換と旧式装置の修理だけではない「第三の市場」を開拓すること

を目指しました。

従来の修理では、職人の勘と経験に頼らざるを得ない部分が多かった一方で、しのはらプレスサービスは、そのバックボーンとなる次の情報収集に取り組みました。

  • プレス加工機械そのもののスペックに関わる「静的情報」
  • ユーザーによるプレス加工機械の使用状況や部品の劣化状況といった、経時的に変化する「動的情報」

これらの情報をセンサーで収集して数値を管理することにより、故障前に不具合の兆候を察知して、予防保全を実現する「メンテナンス」ビジネスに行き着いたとのことです。

これによって、職人がいなくても、センサーによって収集された大量のデータから、高い精度で不具合の兆候を察知し、故障前に対応できるようになりました。実際に、故障後の対処では修理まで2週間以上要していたところ、このサービスであれば、故障前の不具合対応により、5日程度でできるようになったそうです。

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しのはらプレスサービスは、この機械設備の点検情報システムについて2005年に特許出願しました。特許庁は特許登録を認めませんでしたが、しのはらプレスサービスは、従来にはなかった「第三の市場」を開拓して業界にも徐々に受け入れられ、ビジネスのバリエーションを拡大し続けています。

その要となったのは、収集された「データ」や、そのデータから、故障原因を予測することを可能とするメンテナンスの「ノウハウ」のシステム化といった、知的財産を活用する戦略があったといえるでしょう。

3 特許権で守られた自社技術を「再定義」して他分野に応用

ナベルは、蛇腹を専門に取り扱うメーカーです。蛇腹とは、アコーディオンのように伸縮自在な部品で、従来はカメラのレンズ取り付け部とカメラ本体とをつなぐ遮光部材として取引されてきました。やがてカメラはデジタル化し、カメラ用途の蛇腹の需要は縮小していきました。

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そこでナベルは、

蛇腹を「必要なときに伸び、不要なときに縮んで、何かを守るもの」と広く捉え直し、CT・MRI装置の昇降テーブル用の蛇腹フードなど、産業機械向けに応用分野を拡大させた蛇腹製品を製作

しました。

さらにナベルは、蛇腹の概念を「機能的なカバー」へと進化させて、レーザー加工機用蛇腹、測定機器の駆動部カバー、飛散する油や粉末でロボットが汚れるのを防ぐロボットのアームカバーなどを製作し、幅広い分野に進出しました。また、工作機械ロボットのカバーは交換需要が広く見込めることから、蛇腹の整備サービスもスタートさせ、「製造業のサービス化」にも乗り出しました。

この他、東日本大震災をきっかけに、災害時のスマートフォンの充電や小型家電の電源としての利用を想定し、三重大学との共同で、充電式バッテリーとともに、コンパクトに折り畳んで持ち運べるソーラーパネルを開発しました。

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このように、一見すると縮小傾向にあると思われる市場でも、知的財産を見直し、自社が提供しようとする価値を再定義することで、新たな市場を切り開いていくことが可能な場合があります。

そして、ナベルのこのような挑戦を可能にした要素の一つに、

適切な特許権の取得と、これによる競争優位性の確保・維持

があります。「カメラの蛇腹」の技術を他の分野に応用するとき、そこには当然、工夫や発明が発生します。このような応用された技術を適切に権利化することで、それぞれの分野における優位性を確保し、かつ、これを固定化することに成功しているのです。

4 「スマート農業」というテーマで関連技術やノウハウを集積

5Gの浸透によって、一般市民の生活だけでなく、あらゆる産業が大きく進化できる可能性があるといわれています。熟練者の勘と経験に頼る作業が多かった農業においても、ロボットや、情報通信技術(ICT)とセンシング(センサーによる計測)で得られる大規模データを活用する「スマート農業」が注目されています。スマート農業が実現すれば、農機の自動化・無人化とデータを活用した精密農業が軸となり、農家の負担軽減、新規就農者の確保、栽培技術力の継承などが実現します。

国内大手の農機メーカーであるクボタとヤンマーは、早くからスマート農業への取り組みを開始しました。GPSアンテナと通信端末を用いたシステムを構築して、各圃場の状況、施肥作業の状況、刈り取りと乾燥作業のバランス、農機の稼働状況、最適な収穫のタイミングなどに関する情報の提供、日報の簡易作成など、これまでの農家が抱えていたさまざまな問題を解消しています。

これらは、単に農業機械を高度化したということではなく、

自社の役割を、「豊かで安定的な食料の生産、安心な水の供給と再生、快適な生活環境の創造に貢献し、地球と人の未来を支え続け」る(クボタ)などの内容に再定義したこと

から始まりました。クボタとヤンマーは、「農業」「食料の供給」「環境」といった切り口から、技術の力で社会課題を解決しようとしているのです。

そして、

言うまでもなく独自に開発した関連技術については特許出願するなどして権利化していますし、「ノウハウ」や「データ」については営業秘密化

しています。そうすることで、自社の競争優位の確立と維持を図り、付加価値の高い事業を展開しようとしているのです。これらは、まさに知的財産を活用して事業の価値を増進させた事例といえるでしょう。

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以上のように、プレス加工機械、カメラ用蛇腹、農業といった、いわば伝統的ともいえる産業分野においてさえ、新しい情報技術との融合により、これまでには想像もできなかったようなビジネスの形が日々生み出されています。

これらの企業は、その新しいビジネスや価値が持つ競争優位性を、知的財産権や営業秘密、ブランドイメージなどを通して確立、維持しています。このような企業の取り組みは、変化の時代に新しい挑戦を行おうとするあらゆる企業にとって、とても参考になるといえます。

以上(2022年5月)
(執筆 明倫国際法律事務所 弁護士 田中雅敏)

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画像:areebarbar-Adobe Stock

【サブスクビジネス】継続購入で安定した収益を上げるために欠かせない3つの成功ポイント

書いてあること

  • 主な読者:サブスクリプションを導入して収益を安定させたい経営者
  • 課題:サブスクリプションを成功させるポイントが分からない
  • 解決策:新規顧客の獲得、解約率(チャーンレート)の低下、顧客単価の引き上げが重要

1 サブスクで日々の売り上げに一喜一憂しない

小売業などでは、日々の売り上げにバラつきがあることが経営上の大きな課題です。これを解決する手法として注目されるのが「サブスクリプション」(以下「サブスク」)です。サブスクとは、

販売数量に関係なく、顧客と継続的に契約する方式の販売手法であり、簡単にいうと「継続購入」

です。サブスクを取り入れたサブスクビジネスには、新聞紙の定期購読などがあります。近年はサービス領域が広がっています。

サブスクビジネスのメリットには、

  • 商品・サービスを1つずつ販売する労力を大幅に軽減できる
  • 年度当初から年間の売上高が予測できる
  • いったん新規顧客を獲得すると、解約されない限り、安定的に売り上げを確保できる
  • 顧客データを活用し、提供サービスの精度を高められる

などがありますが、これらを享受するために、

新規顧客の獲得、解約率(チャーンレート)の低下、顧客単価の引き上げ

が必須となります。この記事では、サブスクビジネスで成功するためのポイントをご紹介します。

2 サブスクビジネス成功の第一歩はLTVを理解すること

サブスクビジネスの最重要指標は、

LTV (Life Time Value):顧客生涯価値

です。LTVは、

顧客単価×購入頻度×継続購入期間

で求められます。ただ、サブスクビジネスでは購入頻度が一定なので、この要素は除外します。このLTVに顧客数を掛け合わせた数字が年間定期収益です。このため、サブスクビジネスで年間定期収益を増やすためには、冒頭で紹介したように次の3つの取り組みが大切になります。

  • 新規顧客の獲得
  • 解約率(チャーンレート)の低下
  • 顧客単価の引き上げ

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3 新規顧客の獲得

1)無料・お試しキャンペーンを実施する

「試しに利用してみよう」と思ってもらうために、一定期間の無料・お試しキャンペーンを展開する例があります。例えば、Amazon Primeは「お試し期間」として、30日間、無料で利用できます。気に入らない場合は期間内に解約すれば料金はかからないため、契約のハードルは低くなります。無料にするのが厳しい場合は、初回半額や最初の1カ月間は40%OFFといった特典が考えられます。

2)契約手続きをシンプルにする

契約のハードルを下げるために、少ない項目で会員登録できるようにするなど、手続きを簡素化することが大切です。購入理由などたくさんのことを聞きたいところではありますが、手続き中の離脱のリスクが高まりますので、設問は2~3問程度にとどめる、回答方法は選択式だけにするなどの工夫をします。

3)家族や友人・知人の紹介特典を用意する

ポイントや割引などの紹介特典を用意して、既存会員に家族や友人・知人を紹介してもらいます。紹介する側・される側の双方が得をするような設計が大切です。

4 解約率(チャーンレート)の低下

1)顧客の行動履歴やニーズを分析する

顧客の行動履歴やニーズを分析します。注目すべきデータは、ウェブページへのアクセス数や滞在時間、商品・サービスの契約数、顧客ごとの購入金額、契約継続期間などです。これらを性別や年代といった属性ごとに分析することで、深掘りするのも有効です。データを分析していくと、休眠状態になりやすい顧客や、解約しやすい顧客の特徴も明らかになってきます。

2)顧客にマッチする商品やサービスを提案・提供する

データ分析の結果を活かして、顧客に合った商品・サービスを提供します。例えば、商品Aの利用者は商品Bも利用する傾向がある場合、商品Aだけの利用者に商品Bを提案するなどします。

3)契約の自由度を高めて縛りをなくす

サブスクビジネスの前提は継続的な契約ですが、逆に短期の解約や、利用の一時休止を認めることで、顧客満足度の向上につなげる例もあります。例えば、チョコレートのゴディバが毎月提供するスイーツの定額購入では、1カ月の配送を中止する「スキップ」ができます。また、Netflixではしばらく利用していない休眠会員に対して、契約の継続確認を促し、反応がなければ解約をする取り組みを導入しました。

5 顧客単価の引き上げ

1)サービスプランを多様にそろえる

複数のサービスプランや料金プランを設定すれば、顧客のニーズを満たすことができます。また、1つ上の料金プランに変更を促す「アップセル」も見込めます。例えば、3つの料金プランを設定し、「松竹梅の法則」が効力を発揮した場合、多くの顧客を真ん中の料金のプランに誘導することもできます。ただし、あまり複雑にすると顧客管理が大変になります。

2)優良顧客への特典を付与する

いわゆる「ロイヤルティー・プログラム」を実施します。購入額の多さや、友人の紹介数などによってポイントを付与したり、顧客をランク分けしたりします。顧客をランク分けする場合、上位にランクされた顧客に対して、価格面や特典などで優遇することは、優良顧客を育成することにつながります。

6 サブスクビジネスの4つの注意点

1)収益化するまで時間がかかる

通常、サブスクビジネスでは客単価は低く設定されるので、一定の顧客数を確保しなければ収益はプラスになりません。資金回収までの期間、利益が出せるようになるタイミングを試算しておきましょう。また、収益化するまで資金の手当てについても検討しておく必要があります。

2)都度購入者のサブスク移行で一時的に収益が減少する

既存サービスをサブスクビジネスに移行する場合、既存顧客はサブスクの単価となり、一時的に収益が減少する恐れがあります。このような場合、ヘビーユーザーだけにサブスクを提案するといった方法も考えられます。

3)幅広い業種の企業が競合になる

顧客はサブスクを継続的な「固定費」と認識します。その固定費が多額になると大きな負担となるため、「動画や飲食などのサブスクの負担を毎月5000円以内に抑える」といったように、上限を設けることが考えられます。この場合、動画と飲食という異業種の競合が生じます。

4)サービスの継続的な改善が必要

サブスクビジネスは増えており、契約までのハードルも比較的低いため、顧客は気軽に別のサービスに乗り換えます。顧客離れを防止するには、競合の観察や自社データの利活用により、サービス内容を継続的に改善していくことが必要です。

以上(2022年5月)

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画像:unsplash

【サブスクビジネス】8つの具体的な事例で把握する「サブスクビジネス」の仕組み

書いてあること

  • 主な読者:サブスクリプションを導入して収益を安定させたい経営者
  • 課題:具体的にどのようなビジネスがあり、その特徴が何であるのか知りたい
  • 解決策:プラットフォーマーなどのサブスクリプションビジネスを参考にする

1 サブスクビジネスがいまいちピンとこない人に

この記事は、「サブスクリプション(以下「サブスク」)ビジネスがどのようなものか、だいたい分かっているけど、具体的なイメージが湧かない」という方にお勧めです。具体的なサブスクビジネスの事例を紹介していますので、ビジネスのヒントが見つかると思います。

なお、サブスクビジネスが通常の物販と何が違うのか、どのようにすれば成功するのかについてお知りになりたい方は、次の記事をご覧ください。

2 サブスクビジネスってどんなものがあるの?

近年、サブスクビジネスの領域はさまざまに広がっています。まずは、代表的なサブスクビジネスを、「縦軸:デジタルまたは非デジタル」と「横軸:提案型または定額制重視型」に分類して紹介します。

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1)パーソナライズ・コンテンツ型

デジタルコンテンツを提供するビジネスの中で、顧客に合ったコンテンツを提案するレコメンド機能を備えたサービスです。サイト・アプリ内での顧客の行動をデータで分析し、最適な商品・サービスを提案します。

1.Amazon Prime

Amazonの即日配送やビデオ試聴を提供している、定額制の有料会員プログラムです。Amazonはデータ分析にも力を入れてきた背景があり、顧客に関するページビューやCV(コンバージョン)、年齢・性別といったデモグラフィックデータなどを分析し、パーソナライズでレコメンデーションをする機能を備えています。

2.Netflix

世界最大級の映像配信サービスです。3種類の月額プランがあり、同時に視聴可能な画面数やダウンロードに使えるデバイスの数に違いがあります。パーソナライズされたレコメンド機能も特徴で、視聴履歴、時間帯、時間の長さ、ユーザーの趣味・嗜好、ジャンル・カテゴリーなどさまざまな切り口で分析しています。

2)読み放題・使い放題型

デジタルマガジン・コミックの読み放題、ソフトウエアの使い放題などの定額サービスを提供するビジネスです。

1.dマガジン

NTTドコモが運営する、デジタル雑誌の読み放題サービスです。取り扱う雑誌は700誌以上で、月額440円という価格設定となっています。

2.Microsoft 365

マイクロソフトが展開する、Office製品を定額利用できるサービスです。主に法人向け・個人向けの2種類があり、法人向けは利用できるソフトウエアの種類によって、さらに複数の料金プランが用意されています。WordやExcelなどに加え、コミュニケーションツールのTeamsも含まれています。

3)プロ・専門家による提案型

ファッションや化粧品などのカテゴリーで、専門知識のあるプロ・専門家が、利用者に合うアイテムを選んで提供するサービスです。自分に合うアイテムが分からない利用者も、質問に回答したりすることで、最適な商品を提案してもらえます。

1.エアークローゼット

スタイリストが、利用者に合わせて選んだ洋服を届けるのが特徴のレンタルサービスです。自分に合う服がどれか分からない、気付けば同じような服ばかりでマンネリを感じるといった悩みを持つ女性が主な顧客です。

最初の利用時に50項目の質問に回答してもらい、回答内容やリクエストを基に厳選した3アイテムを毎月届ける仕組みです。担当するスタイリストはランダムに決まりますが、気に入ったスタイリストを指名できる制度もあります。

2.ビーグレン

化粧水・乳液・美容などのサブスクサービスを提供しています。AIによる肌解析の機能により、利用者に合う製品やケア方法を判定することができます。希望すれば選任のコンシェルジュから、マンツーマンでスキンケアの指導を受けることも可能です。

最適なケア製品が見つからずに、さまざまなトライアル製品を繰り返し使ってしまう、間違った自己流ケアで肌トラブルが悪化するといった問題を、オンライン完結で解決するために開発されたサービスです。

4)食べ放題・着放題型

飲食物の食べ・飲み放題、洋服の借り放題などを提供する定額制ビジネスです。一定程度以上利用すると割安になるので、お得感があります。

1.favy

コーヒー・餃子・焼肉など、契約したさまざまな飲食店のサブスクサービスを提供しています。favyを導入した飲食店は、インターネット予約、オリジナルホームページの作成、見込み客に対するお知らせ配信といった機能を利用できるようになります。

2.MECHAKARI

利用者が選んだ新品の洋服を貸し出すサービスです。利用者は実際に着てみてから、気に入った洋服を割引で購入することも可能です。おしゃれを楽しみたい女性や、どんな洋服を選べばいいか分からないという女性が主な顧客です。ヤマト運輸との配送連携によって、運送コストを低くすると同時に、洋服の返却時の利便性も高めています。MECHAKARIで使用された服は、中古品として販売しています。

以上(2022年5月)

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【朝礼】自分に足りない部分を見つけたら胸を張って語れ

先日行った業務改善のための社内会議は、とても有意義でした。皆さん一人ひとりが、自分の業務に関して感じているさまざまな課題について話してくれました。私は皆さんが自分の業務について真剣に考えてくれていて、本当にうれしかったです。一方で、一つ気になったことがありました。それは、自分に足りない部分があることを、恥ずかしそうに語っていた人がいたことです。私はむしろ、胸を張って語るべきだと思っています。けさは、私がそう思う理由をお話しします。

まずお伝えしておきたいのは、皆さんの中には営業、生産、経理、総務など、さまざまな業務の人がいますが、どの業務にも「もうここまでで十分」という“動かぬゴール”は、永遠にないということです。

皆さんには、常に現状より望ましい「理想の形」を目指すことが求められます。この「理想の形」の追求に終わりはありません。人は、何かの理想を達成するために、努力を重ねます。すると、理想を達成する頃には、それまでの努力の積み重ねによって、かつては見えなかった別の理想が見えてきます。いわば“動くゴール”です。

私がうれしいのは、業務も経験も違う皆さん全員が、自分の業務についての課題や、自分に足りない部分を認識してくれていたことです。皆さんが自分の業務に関して、常に理想の形を思い描いているからこそ、そこに及ばない部分を挙げてくれたのだと思います。

次に皆さんにお伝えしたいのは、「ベストを尽くしたのに理想の形に届いていない」ことは、決して恥ずかしいことではなく、むしろ胸を張っていいということです。

自分に足りない部分を語れるということは、自分の中できちんとPDCAサイクルを回せているということです。すなわち、理想の形を描くという「計画」、それに向けてベストを尽くすという「実行」、自分に足りない部分を見つけるという「評価」、そして足りない部分を補うためにさらにベストを尽くす「改善」です。PDCAサイクルを回しながらベストを尽くしている人は、理想の形に向かって、常に「自己ベスト」を更新しているわけですから、何ら恥じることはありません。

もし恥ずかしそうに語る必要があるとすれば、自分に足りないと感じている部分についてではなく、ベストを尽くしていないことについてではないでしょうか。

ただし、私はベストを尽くすといっても、いたずらに業務時間を延ばすなどの無理をしろと言っているわけではありません。時間的、予算的な制約もあるでしょうし、ほとんどの業務は社内外の相手あってのものですので、自分の力だけではどうにもならないことも理解しています。自分に足りない部分を語ってくれた人は、その制約や不可抗力すら言い訳にせず、「もっと自分にできたことはなかったのか」と考えてくれているわけですから、やはり胸を張るべきです。

以上(2022年5月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】「管理職の朝礼」で分かる会社のレベル

今朝は管理職の皆さんに集まってもらいました。少々厳しい話となりますが、とても大切なことなので、しっかりと聞いてください。

皆さんは、今の私と同じように、部下の前に立ってお話をする立場です。朝礼などを利用して部下に会社が大切にしている理念や価値観を伝え、実践させることが皆さんの仕事です。しかし、私から見ると、皆さんは朝礼がうまくありません。声のトーンや話すスピードなどプレゼンテーションのテクニックがマズイと言っているわけではありません。皆さんがどこからか“拝借”してきたような表層的な内容を、格好をつけて話していることが問題なのです。

我が社のように、朝礼を習慣にしている会社の管理職は、次の朝礼で何を話そうかと考え、“朝礼のネタ探し”をします。そのためにウェブサイトを見たり、書籍を読んだりするでしょう。

情報のインプットは大切ですが、そこで得られるネタは、管理職が自分の思いを分かりやすく伝えるための“切り口”にすぎません。しかし、管理職の中には、ネタをそのままスピーチの内容にしてしまう人がいます。例えば、年始の朝礼ではえとを話材にすることが多いのですが、一般的にいわれているその干支の年生まれの特徴などを紹介し、最後に「今年も頑張りましょう」で締めくくるだけのパターンです。ウェブサイトの記事を、ほぼそのまま話してしまう管理職もいます。

なぜ、このようになってしまうのか。それは、管理職が部下に伝えたいことを持っていないからです。あるいは、伝えたいことはあるけれど、話す内容に自信が持てないので、借りてきた言葉ばかり並べて格好をつけているというケースもあります。

両方とも、管理職としての役割をもう一度考えてもらわなければなりません。「朝礼ができない管理職」の問題は我が社に限ったことではありませんが、これは皆さんが考えている以上に深刻な問題です。会社が長く続き、大きくなっていく過程で生じる問題の一つは、意図せずに起こってしまう“理念や価値観の希釈”です。起業したてであれば、会社が本当に大切にしている理念や価値観は数人で共有すればよく、それらは議論の中で濃くしていくことができます。

しかし、組織が大きくなると理念や価値観を隅々まで伝えることが難しくなってきます。本来、そうした“理念や価値観の希釈”を抑える役割の一部を担うのは管理職です。にもかかわらず、年始のとても大切な朝礼の場で借りてきた話しかできないようでは、我が社のレベルは低いと言わざるを得ないでしょう。

管理職の皆さん、我が社の理念や価値観をもう一度、確認してください。そして、何度もそしゃくし、皆さんの言葉で部下に伝える努力をしてください。ぎこちなくてもいいのです。大切なのは、スピーチに込められた皆さんの思いです。

以上(2022年5月)

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画像:Mariko Mitsuda

ネットショップはキラリと光る商品づくりが命/基礎から分かる ウェブの活用で売上アップ(1)

書いてあること

  • 主な読者:ウェブを活用して売上アップにつなげたい物販事業の経営者
  • 課題:ネットショップを開設し売上アップを図りたいが、どうすれば成功するか分からない
  • 解決策:キラリと光る商品づくりが重要で、ウェブの知識は専門家を使えば済む。「何を売るか」「誰に売るか」「どのように売るか」をしっかり設計すれば、商圏が広がる

1 町の布団屋さんに全国から注文が舞い込む「ウェブの力」

コロナ禍で減少した売り上げが戻らず、お悩みの経営者の皆さま。ここで劣勢を挽回するための一手を打たれてはいかがでしょうか? お薦めは、ウェブを活用した手法の導入です。自社ネットショップ、SNS、メールマーケティングなどのウェブツールを活用することで、「商圏」を確実に広げることができます。

このシリーズでは、ウェブを活用して売り上げをアップさせるための方法を、3回にわたってご紹介します。インターネットに不慣れな方でも分かりやすいように、基本的な仕組みやビジネスを行う上での考え方を中心にご説明いたします。

第1回目にご紹介するのは、店舗などで物販事業を行っている経営者の方にお薦めしたい、

自社ネットショップの開設

です。実際に、

町の布団屋さんに全国各地から注文が舞い込むようになった

酒屋さんの地ビールの品ぞろえが評判となり、遠方からの再購入が増えた

というケースもあります。

「そうはいっても、ウェブの知識がないので…」との心配はご無用。専門家との連携でカバーできます。それよりも重要なのは、従来の販売手法とは異なる、ネットショップならではの

売れる仕組みづくり

です。かく言う当社も、ネットショップではありませんが、コロナ禍に商圏を拡大することができました。コロナ前は本社のある新潟県とその隣県のお客さまへの個別支援が中心でしたが、コロナ後は全国のお客さまにオンラインでのセミナーやコンサルティングでご支援させていただいています。今回は、当社がアドバイスをさせていただいている、ネットショップを成功させるための手法をご紹介いたします。

2 「キラリと光る商品」がネットショップ成功のキーワード

1)ウェブの活用による販売機会の増大

今まで地域密着で商売をしてきた店舗・企業がウェブを活用することで、商圏を全国、全世界に広げることが可能となっています。

町の布団屋さんが自社ネットショップを開設した結果、全国に商圏を広げることに成功したのは冒頭の通りです。

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2)ウェブの活用による脅威

ウェブを活用することで商圏を広げられるということは、一方で脅威でもあります。逆に考えれば、既存の商圏内には、ネットショップを通じて、全国そして全世界から今まで以上に競合が攻めてくるということです。「うちは地域密着だから…」と油断していると、全国の競合からあっという間にお客さまを取られてしまう可能性もあります。

3)町の布団屋さんを全国クラスに押し上げた、オーダーメードのお昼寝布団

このような状況下で生き残り、売り上げを伸ばしていくためのキーワードは、ズバリ「キラリと光る商品・サービス」です。

ウェブの活用が進む世界では、競合は全国・全世界

です。そこで通用する「キラリと光る商品・サービス」があれば、それをウェブツールに乗せて、いくらでも売り上げを伸ばすことができるでしょう。

一方で、商品・サービスに魅力がなく、差異化要素がなければ、競争に負けて顧客を奪われてしまいます。

例えば、冒頭の布団屋さんの「キラリと光る商品・サービス」は、「オーダーメードのお昼寝布団」です。子育て経験のある方はご存じの通り、子供を保育園などに預ける際に、子供を寝かしつけるためのお昼寝布団を用意する必要があります。そのお昼寝布団を、オーダーメードで作るサービスが店舗で大人気でした。

そこに目を付け、店舗で人気のお昼寝布団という「キラリと光る商品・サービス」を自社のネットショップを開設して発信したところ、全国から注文が舞い込みました。そして、全国のお客さまからお喜びの声をたくさんいただきました。

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余談ですが、このお布団屋さんでは、商圏を広げたことでスタッフさんの士気が向上しました。「自分たちの商品・サービスは全国に通用することが分かった」「全国のお客さまとつながっている感じがしてうれしい」と、自店の商品・サービスに対して自信を深め、誇りを持てるようになったそうです。

3 ネットショップで商圏を拡大する3つのステップ

自社でもネットショップで商圏を広げて、全国に販路を開拓したいと思った方は、次の3つのステップで、具体的にご検討ください。

1)STEP1:キラリと光る商品を見つける

どこでも買える、どこにでもある商品であれば、ECモールと呼ばれる巨大なネットショップ群であるAmazonや楽天で、既に誰かが売っているでしょう。そうなると、価格勝負の世界になってしまいます。

まずは、自社や自店で既存のお客さまから喜んでいただいている、評判のよい商品・サービス、他社に負けない商品・サービスは何かを分析してみましょう。

ある酒屋さんは、珍しい「地ビールの品ぞろえ」が評判で、お客さまからよく「初めて出合う全国の地ビールがあって楽しい」との声をいただいていました。そこで、「出合ったことのない全国の地ビール」を売りにネットショップを展開することにしました。

2)STEP2:理想のお客さまを明確にする

「何を売るか」を考えた次は、「誰に売るか」、つまりターゲットを考えます。ターゲットというと難しそうですが、どんな方に買ってもらいたいか、「理想のお客さま像」を膨らませてください。

先ほどの酒屋さんは、理想のお客さまを、「遠方から店舗に来てくれたお客さま」に設定しました。このお店では、評判を聞いて店舗のある市内だけでなく、県内居住者や観光客など遠方からも店舗にお客さまがいらっしゃいます。遠方のお客さまは、どうしても来店頻度は下がってしまいます。観光客となれば、再度の来店は難しいかもしれません。しかし、ネットショップがあれば、遠方のお客さまでも来店せずに、ネットショップから再購入していただくことが可能です。

3)STEP3:アプローチ手法を設計する

「何を売るか」「誰に売るか」を考えたら、最後に「どのように売るか」というアプローチ手法を考えます。

最近では、特別な知識がなくてもネットショップを作って運営することができるようになりました。BASE(ベイス)、STORES(ストアーズ)など、簡単にネットショップを作れ、初期費用や月額費用が抑えられるネットショップ構築・運営サービスが多く出ています。お付き合いのあるホームページ制作会社に相談してみるのもよいでしょう。

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とはいえ、ただネットショップを作っただけでは、砂漠の真ん中にお店を出すのと同じことです。重要なのは、その

ネットショップをどうやって知ってもらい、どうやって訪れてもらうのかを設計すること

です。

事例でご紹介している酒屋さんは、理想のお客さまは「遠方から店舗に来てくれたお客さま」ですので、次のような施策を設計して、ネットショップに誘導することを考えました。

  • 来店時に顧客にショップカードを渡してネットショップを告知する
  • LINEへの登録を促し、LINEで定期的にネットショップ限定商品の案内を送る

4 重要なのは、ツールの知識よりも「売れる仕組みづくり」

お伝えした3つのステップ「何を売るか」「誰に売るか」「どのように売るか」という3要素を設計して、売れる仕組みをつくっていく活動を「マーケティング」といいます。

ウェブ活用で重要なことは、ネットショップやSNSなどウェブツールの使い方の前に、この「マーケティング=売れる仕組みづくり」を考えることです。いくら優れたウェブツールを使っても、商品・サービスに魅力がなかったり、お客さま像が不明確だったりすれば、売ることは難しいですよね。

ウェブやデジタルが苦手な方も多いかもしれませんが、そんな方でも大丈夫。ウェブツールの活用は専門家と連携して進めればよいでしょう。大切なのは、売れる仕組みの設計力です。まずは、今回お伝えした自社・自店の「キラリと光る商品・サービス」を探し、それを誰に、どのようにして届けていくか、その構想を練ってみてください。

以上(2022年5月)

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画像:Pixel-Shot-Adobe Stock
執筆者サイト:https://glocal-marketing.jp/

【朝礼】「お客さまのお客さま」を見よ

先日、ある優秀なマーケターだった方のお話を聞く機会がありました。その方は、お客さまのニーズを知るために、営業担当者以上にお客さまを訪問していたという、とても仕事熱心な人です。これだけでも素晴らしいことですが、私が特に感銘を受けたのは、その方がお客さまのお客さま、つまりお客さまの取引先にまで足を運び、話を聞くようにしていたという点です。これはとても重要なことであり、まさに私が理想としている姿勢なので、ぜひ皆さんにも参考にしてもらいたいと思います。

「お客さまがそう望まれたから」というのは、一面では正しいことなのですが、私には「お客さまの声に甘えている」ようにも思えます。なぜなら、それが本当にお客さまのためになっているのかどうかを、その人たちの声を通じてしか判断しようとしていないからです。

確かに、お客さまのご要望を満たすことは最も基本的なことですし、そのために声を聞くことは大切です。ですが、それだけで終わってしまうなら、競合他社と何も変わりません。そして何より、それではお客さまの想定内のサービスしかご提供することができません。つまり、どんなに頑張っても100%のサービスしかご提供できないということです。

「それではダメなの?」と思った人がいるかもしれません。ダメではないのですが、私は皆さんに、それ以上のことを期待したいのです。

もし、「お客さまのお客さま」のニーズを知ることができれば、お客さまに対して、「御社の取引先が望んでいるのはこれです。ですから、このようなサービスを始められてはいかがでしょうか? 弊社もお手伝いさせていただきます」といった提案ができるようになります。つまり、お客さまが望むことの120%、場合によっては150%のサービスをご提供できる可能性があるわけです。もし、これができるようになれば、我が社はお客さまにとって、競合他社とは全く違う存在になれるはずです。

「お客さまのお客さま」を見るというのは、社内の業務にも置き換えられます。「次工程はお客さま」という言葉がありますが、皆さんには、次工程の担当者が業務をしやすくなるよう、お客さまに対するのと同じくらい丁寧に業務を行ってもらいたいと思っています。そのために、「次工程の次工程」まで意識するように心掛けてみてください。

例えば経費を請求する場合、会計処理という工程だけでなく、その先にある決算資料の作成や、税務署への書類の提出のことまで意識してみてください。「経費請求書は迅速かつ正確に作成しよう」という気持ちが強くなるはずです。また、社内向けの企画書を作成する場合、それを基にした営業資料で営業をする人のことを考えてみてください。「社内向けだから、これでいいや」という気持ちにはならないはずです。

以上(2022年5月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】会社は舞台、管理職は役者

この朝礼もそうですが、私には皆さんの前でお話しする機会がたくさんあります。また、多いときは月に10回くらい、社外の方々の前でスピーチや講演をさせていただいています。

そのため皆さんの中には、私のことを「人前で話すのが得意で、根っからの出たがり」と思っている人も多いようですが、私は若い頃、全くそうではなかったのです。社内外を問わず人前で話すことにとてもプレッシャーを感じ、逃げ出したくなるほどでした。緊張のあまり頭が真っ白になり、しどろもどろになってプレゼンに失敗したことも一度や二度ではありません。

このことに悩んでいた私は、初めて管理職になったときに気持ちを切り替え、「人前で話すのがとても得意で、常に自信を持ち堂々と話す人」を「演じる」ことにしたのです。

演じることは、皆さんにもあてはまります。むしろそれは、皆さんの仕事でもあるのです。特にそれが求められるのは管理職です。日本電産の創業者である永守重信氏は、「経営者や管理職はどのような状況にあっても『アイ・アム・ファイン=私は元気です』と言えなければならない」という趣旨のことを言っていますが、これこそ管理職が実践すべき重要な「演技」ともいえるでしょう。

例えば、管理職は、組織が「元気がないな」と思ったときこそ率先して声を出し、前向きな管理職の姿を演じることで、組織をポジティブな方向に持っていかなければなりません。

また、トラブルが起きたときも同じです。たとえ心の中では激しく動揺したとしても、管理職は右往左往したり弱気な態度を見せたりしてはなりません。状況にもよりますが、そうしたときこそ冷静に指示を出し、組織を動かして対応する役割を演じる必要があります。

とはいえ、演じるのは簡単ではありません。また、どのように演じたらよいか分からない管理職も多いでしょう。そこで私がお勧めしたいのは、まず、手本となる人を見つけ、その人をまねるという演技をすることです。管理職の皆さんは社内外の多くの人と接し、ネットワークを広げ、手本を見つけてください。そしてどうしても見つからなければ、私を手本にしてください。私自身も大いに迷い悩みながら、諸先輩方を手本に、管理職、そして経営者を演じ続けてきているからです。

私は特に人前で話をすることが大の苦手でしたが、「得意な人を演じる」と決めてから、人前に出るときに「演じるスイッチ」が入るようになりました。自分の感情やモチベーションとは一切関係なく、「人前で堂々と自信を持って話す人」の演技ができるようになったのです。

それは、人の上に立つ者として、人前で堂々と話をする人であることが私の重要な仕事だと認識したからです。管理職も同じです。管理職という役を演じるのは皆さんの重要な仕事なのです。

会社は舞台、管理職の皆さんは役者です。私と一緒に素晴らしい舞台をつくりましょう。

以上(2022年5月)

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画像:Mariko Mitsuda

日本人が最も使っているSNSは? ターゲット別に考える効果の高いSNSはこれだ!

書いてあること

  • 主な読者:SNSを利用して効果を上げたい中小企業・ベンチャー企業の経営者
  • 課題:SNSを利用して認知度を上げたいが、運用工数に制限もあり、どのSNSから取り掛かっていいのかが分からない
  • 解決策:商品やサービスに合うSNSがベストですが、自分が慣れているSNSからまずはやることをお勧めする

1 日本でユーザー数が一番多いSNSはLINE

各SNSの公式発表では、

日本で最もユーザー数が多いSNSは、LINEで9000万人

になります。各SNSのユーザー数ー数と利用率の比較は次の通りです。

画像1

ユーザー数だけを見るとLINEをやるのがいいように思えますが、SNSによっては利用者数が多い世代があったり、手軽さが違っていたり、画像や動画などでアプローチするのに適していたりするものもあります。それぞれのSNSの特徴を把握して、自社の商品やサービスの特性と掛け合わせて、合うもので行うのが一番いいやり方です。

難しい場合は、

普段、皆さんが利用しているSNSから始めること

をお勧めしています。使い慣れていますので、あまり悩むことはなく発信できます。

この記事では、SNSの特徴やどのSNSが合っているかのヒントを解説していきます。最近は、FacebookやTwitterといったテキストが主体のSNSや、Instagramなど画像が主体のSNSでも、TikTokのような短い動画(ショート動画、ショートムービー)が投稿できるなど機能が似てきている面もありますが、向いているターゲット層が違うなどの特徴があります。ぜひご参考になれば幸いです。

2 SNSの特徴を押さえましょう

ご飯を食べに行くときに、

40代は食べログ、30代はGoogle検索、20代はTwitterやInstagramでお店を探す傾向が高い

です。このように検索をひとつとっても、世代によって調べ方が違います。実は、SNSも世代によって使用方法が変わってきます。ここでは、SNSの特徴を説明していきます。

1)Facebookは経営者アプローチやBtoBビジネスに向いています

Facebookはユーザー数が減少傾向ですが、世界最大のユーザー数は見逃せません。海外展開を狙っている商品は、Facebookでの発信をお勧めします。また、30代以上のユーザーは活発に投稿していますし、ビジネス目的で利用するユーザーも多いです。30~50代の利用方法としまして、経営者と名刺交換をした後に、よりつながりを持つためにFacebookで友達登録をしている人もよく見られます。そのため、

経営者にアプローチしたい場合やBtoBビジネスでの関係構築で有効に活用

できます。

実名登録が必須となっていますので、登録されている個人情報はしっかりしています。Facebookで属性を絞って広告を出す場合の効果は大きいです。なお、実名登録が影響しているせいか、Facebookでの炎上事例はあまり見当たりません。

デメリットは、10代や20代の若いユーザーのアクティブ率が低くなっています。そのため、

若年層をターゲットにした商品告知での利用は向かない

でしょう。また、Facebookページから発信された投稿のオーガニックリーチ(ユーザーに情報が届くこと)は大幅に減少しているので、広告の併用が必要となっています。

2)Twitterは即時性と拡散性が高く、イベント告知やキャンペーンに向いています

Twitterは最も即時性と拡散性に優れたSNSです。「こんなお得な情報を見つけた」「こんな面白い情報を見つけた」という感覚でリツイートされることで、どんどんと拡散されていきます。フォロワーが少なくても、リツイートによって大きな表示回数を獲得することもあります。そのため、

イベントの告知やキャンペーンをすることで認知を上げたい

場合は向いています。ユーザー層としては、10代後半から20代までの若年層が厚いですが、ユーザー数の母数も多いので、40代以上のユーザーも一定数存在しています。また、BtoB、BtoCの両方に向いています。さらに、ユーザーの本音が拾いやすいです。今までアンケートなどで行っていた商品の評判の収集を、エゴサーチすることもできます。

なお、企業がSNSに取り組む際に、最も懸念すべきことが「炎上」です。

Twitterは実名登録が必須ではないので、発信が自身の日常生活に影響がないこともあり、誹謗(ひぼう)中傷が発生しやすい

です。炎上は、思いもかけないところが発信となります。Twitterにアカウントを持っていると、炎上対策が講じられますが、アカウントを持っていないと対策もできません。そういう意味でもTwitterでアカウントを持つ必要はあるのではと考えます。

デメリットは、Twitterは利用者数が多いことも影響していて、発信が届かないことがあります。他のSNSと比べても投稿頻度を多く確保する(運用工数をかける)必要があります。

3)LINEは幅広い年代層で利用されています。高い世代への訴求にも適しています

LINEは9000万人のユーザーと日本で一番利用されています。幅広い層に利用されていて、40代から60代の利用率も高いです。メッセージを送るツールとして利用されていることもあり、アクティブ率も高く、

企業がビジネスシーンで活用するケース

も増えています。性別を問わず全ての世代に効果があります。また、台湾やタイ、インドネシアにもユーザーが多く、アジア圏において展開する商品がある場合は有効に活用できます。

企業で利用する場合、ビジネス利用に特化したLINE公式アカウントを開設します。以前は高額な予算が必要でしたが、現在は無料で開設が可能です。リアル店舗やECサイトの運営など用途はさまざまです。メッセージやクーポン、アンケートなどを送信できます。

デメリットは、友だちとしてつながったユーザーに対して発信できるクローズドなSNSですので、FacebookやTwitterのように、誰にでも見てもらうことができるオープンなSNSとは違います。まずは、友だちとしてつながらなければなりません。

4)Instagramは画像や動画などビジュアルでアプローチする商品・サービスに向いています

Instagramはユーザー数やアクティブ率が上昇過程にあるSNSのひとつです。画像や動画といったビジュアルでの訴求に適していますので、

コスメ系やファッション系の商品やサービスでの活用

をお勧めします。テキストでの訴求には向いていません。当初は、若い女性を中心に利用されていたメディアでしたが、今は幅広い層に利用されています。

デメリットは、Facebookにはシェアを拡散する機能、Twitterにはリツイート機能がありますが、Instagramにはありません。

5)YouTubeは動画で幅広い年代層に訴求できます

YouTubeは日本で6500万人、世界で20億人のユーザー数です。インターネットユーザーの3分の1が利用する巨大プラットフォームに成長しています。そのため、

動画素材をコンスタントに更新できるならば、幅広い層に対して、世界にもアプローチ

できます。チャンネル登録したユーザーに最新動画の更新を通知できたり、関連動画を表示することで、ユーザーの滞在時間を長くすることができたりします。

デメリットは、動画素材を用意しなければならないことです。内製化できればいいのですが、外注すると費用がかかります。更新頻度もある程度担保しなければなりません。お気に入りのチャンネルが1本か2本しか動画がなかったり、最新の更新が1カ月前だったりすると、熱が冷めてきてファン離れすることもあります。ただし、スマートフォンで撮影・投稿ができるショート動画機能もリリースされているので、それを上手に利用すれば更新負担を軽減できるかもしれません。

6)TikTokは若年層対象の商品・サービスに向いています

TikTokは日本では950万人ですが、若年層に爆発的な広がりを見せています。まだユーザーが増えている段階ですので、先行者メリットを得られます。そのため、

若年層を対象にしたエンターテインメント・教育・How Toなど生活に役に立つコンテンツの投稿

が増えています。最近ですと、不動産賃貸で成果を上げ始めているところもあります。

スマートフォンを利用して、簡単に自分自身で1分以内の短い映像を撮影・編集し、投稿することができます。BGMもあらかじめ用意されているリストから組み合わせることも可能です。全て感覚的に扱えるUIになっているので、難しい操作もありません。

デメリットは、「広告以外」の商業利用ができないことです。クーポンを送ってサイトや店舗に流入してもらうとか、商品の直接的な宣伝を投稿するなどはふさわしくありません。

7)LinkedInも経営者にアプローチするには有力なSNSです

LinkedInはビジネスで活用できるSNSです。ちょっと前までは転職や採用を促進するという使われ方をしていました。そのため、

SNSの中で一番経営層にアプローチしやすい

という特徴があります。

世界規模では8億1000万人のユーザーがおり、海外ではLinkedInのアカウントを名刺代わりに交換されています。海外展開も視野に入れている商品・サービスを展開するときには、絶好のSNSともいえます。

デメリットは、日本でのユーザー数が200万人以上と、やや物足りないことです。ただ、利用している人数が少ないがゆえに、経営者とつながりやすい利点があります。自社のビジネス情報を発信し、顧客やビジネスパートナーとつながっている事例もあります。

3 企業がSNS運用で失敗してしまう例

1)目標の設定を間違っている/SNSについて理解を得ていない

SNSはファンづくりですので時間がかかり、ちょっと投稿すれば、すぐに成果が出るものではありません。最終的には成果を目標にするべきですが、開始3カ月後に問い合わせ〇件などは非常に難しいです。1年後に成果が出るよう、段階的に目標を設定します。時間がかかってしまう状況を上長に理解してもらうようにしましょう。

また、SNSを始める前に、

「なんのためにSNSをやるのかという目的」はきちんと固めておく

ことが大切です。目的はその後修正してもいいのですが、目的からずれそうになったときには、振り返ることは重要です。

始めて1カ月後に成果が出ないと上長に詰められて、モチベーションが下がってしまうということがよくあります。成果が出ないと、きちんと組み立てて進めていた投稿内容にまで口を挟まれて、さらにモチベーションが下がってしまうこともよくあります。

広告はすぐに効果が出ますが、SNSは気長に育てるものです。結果は時間とともに付いてきます。

2)ただの告知だけになっている/更新頻度が担保できない

もし、気に入ったSNSがあっても“最新の更新は3週間前かぁ”と、更新が全然されていないことで、ユーザーの熱が冷めてくることがあります。興味を持ってもらったのに、チャンスを逃してしまう瞬間です。定期的に会社の思いや人となりを発信することで、興味を持ってもらうようにしましょう。更新頻度は、まずは週に3回(Twitterは1日5投稿)を目安にしてください。

コーポレートサイトのお知らせをそのままSNSに転載しているだけということがあります。更新はしていても、SNSを見に来る方は、企業のお知らせを見たいわけではありません。もちろん、告知も大事ですが、情報が多すぎてしまうのもいけません。

3)体制の不整備によるトラブル発生と悪化

炎上の事例です。フォロワー数も順調に伸びて、影響力が出始めた企業アカウントがあります。ある投稿をしたところ、表現が一定数のユーザーによって批判を浴びました。担当者は焦って、自分の独断で投稿を削除してしまいました。今度は、削除前にスクリーンショットを撮影していたユーザーが、その画像を上げました。結果的に、削除前とは比較にならないほど大規模な拡散が行われ、炎上案件になってしまいました。

この場合、削除をしないことが大切です。また、担当者以外に対応を判断する責任者を決めておきましょう。他にも、「批判的な書き込みにはどう対応するか」「炎上した場合のフロー」「災害時に投稿をどうするか」など、前もって決めておいたほうが安心できます。

以上(2022年5月)

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画像:Julien Eichinger-Adobe Stock
執筆者サイト:https://yoshikazunomori.com/