【朝礼】「もう一度の青春」が生み出す爆発力

皆さんは何か、若い頃に「青春」をささげたものはありますか? スポーツ、研究、ボランティア、アルバイト……何か1つは熱中したものがあるはずです。もし「朝から暑苦しいな……」だとか「そんな昔のことは忘れた……」なんてドライな感想を持った人がいたら、そんな人にこそぜひ聞いてほしい話があります。今日お話しするのは、今から60年前の1962年に完成した、戦後初の国産旅客機「YS-11」のエピソードです。

この話の前提になるのは、当時の日本にとって「航空機産業」というのは、非常にハードルが高い分野だったということです。第二次世界大戦で敗戦国となった日本は、1945年以降、航空機の製造や開発など、航空に関するあらゆる活動を禁止されます。1952年に連合国による統治が終わったことで、これらの禁止は解かれるのですが、7年間のブランクによって、日本の航空機は世界に大きく後れを取ってしまったのです。

そんな状況を打開しようと立ち上がったのが、今でいう経済産業省の役人だった赤澤璋一(あかざわしょういち)氏でした。赤澤氏は「日本の空を日本の翼で」を合言葉に、民間機体メーカーの精鋭たちをかき集め、国産旅客機の開発に取り組みます。ジブリ映画の「風立ちぬ」で有名な航空技術者の堀越二郎(ほりこしじろう)氏もメンバーにいたそうです。そんな精鋭たちによって動き出したYS-11のプロジェクトですが、製造は難航しました。

旅客機は、何十もの座席を設置した上で乗り心地も確保しなければならないのに、当時の技術力では機体を安定させることさえ難しく、航空実験は何度も失敗しました。それでも開発チームは最後まで音を上げずに試行錯誤を続け、ついにYS-11は旅客機としての認可をクリアします。

なぜ、彼らは諦めなかったのか。理由はさまざまありますが、私が大きいと思う理由は「メンバーの多くが若い頃、航空機に青春をささげていたから」です。開発チームのメンバーには、「零戦(ぜろせん)」「飛燕(ひえん)」など、戦前戦中に日本で使用された航空機の開発に携わった人たちが多くいました。ただ、先ほどお話しした通り、敗戦で航空機に関する活動が禁止され、彼らはその仕事を続けることができなくなってしまいました。国産旅客機の開発は、彼らにとって失った青春をもう一度取り戻すための場所であり、その情熱がYS-11を完成へと押し上げたのです。

皆さんにもし、若い頃に青春をささげたけれど、今は遠ざかっているものがあれば、折を見て再び挑戦してみてはいかがでしょうか。大きな活力を得られるかもしれませんし、今の仕事につながる「気付き」を与えてくれるかもしれません。私自身も、皆さんが「もう一度の青春」に挑戦することで生まれる爆発力を見てみたいと思います。仮に爆発力までいかなくても、新たな人脈づくりや、社内外の人との会話の際の「話題づくり」に、大いに役立つはずです。

以上(2022年6月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】プロ意識を考える

皆さんは、上司や先輩から「プロとしての自覚を持て」とか「プロ意識を持て」と言われることがあるでしょう。プロとは、もちろんプロフェッショナルの略語であり、日本語でいうと「専門家」となります。また、プロ意識とは専門家としての自負心を持つということになるでしょう。しかしプロとは何なのか、プロとしての自覚を持つとはどういうことなのか、というのはなかなか分かりにくいものです。プロなんて、野球選手・音楽家・職人・研究者などの世界の言葉であって、自分たちには関係ないと思う人も多いでしょう。

ここで、プロとアマチュアの違いは何か考えてみましょう。両者の区別は、お金を基準に考えれば分かりやすいでしょう。それを行うことでお金がもらえる人はプロ、もらえない人はアマチュアです。そういう意味では皆さんは私も含め、この業界で働くことによってお金をもらっているわけですからプロであるということになります。実際、我が社のお客様は私たちのことを業界のプロとして見ています。ですから私たちはこの業種のプロであると自覚することはとても大切です。

さあ、皆さんはプロとして自覚を持ちました。プロである以上、もらうお金以上の仕事ができるようになりましょう。言われたことを言われた通りにできるだけでは十分ではありません。

プロの自覚があれば、言われたことはもちろん、それ以上の結果を残す、成果を挙げることが求められているのです。

例えば、何かサービスを受けたとき、お金を払ってサービスを受け、「こんなものかな」と思ったときと、「値段以上のもので、とても満足」と思ったときを考えればすぐに分かります。「もう一度このサービスを受けたい」と思うのは後者です。

もちろん、私だって最初から言われたこと以上の結果を残せたわけではありません。まずは、与えられた業務をこなし、組織の中での役割を実行し、その仕事にやりがいを感じられるようになることから始めました。それを、自分にしかできない仕事へ高めていくために、努力や創意工夫を重ねていったのです。

こうして積み重なっていったものが、いつしか周囲から実力として評価され、私の自信や誇りとなりました。周囲の評価や自らの自信はさらなる努力や創意工夫の源泉となりました。

プロは最初からプロであったのではなく、不断の努力と創意工夫、そして情熱で真のプロになっていくのです。今から「私はプロ」の自覚を持って業務に励んでください。

以上(2022年6月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】自分に足りない部分を見つけたら胸を張って語れ

先日行った業務改善のための社内会議は、とても有意義でした。皆さん一人ひとりが、自分の業務に関して感じているさまざまな課題について話してくれました。私は皆さんが自分の業務について真剣に考えてくれていて、本当にうれしかったです。一方で、一つ気になったことがありました。それは、自分に足りない部分があることを、恥ずかしそうに語っていた人がいたことです。私はむしろ、胸を張って語るべきだと思っています。けさは、私がそう思う理由をお話しします。

まずお伝えしておきたいのは、皆さんの中には営業、生産、経理、総務など、さまざまな業務の人がいますが、どの業務にも「もうここまでで十分」という“動かぬゴール”は、永遠にないということです。

皆さんには、常に現状より望ましい「理想の形」を目指すことが求められます。この「理想の形」の追求に終わりはありません。人は、何かの理想を達成するために、努力を重ねます。すると、理想を達成する頃には、それまでの努力の積み重ねによって、かつては見えなかった別の理想が見えてきます。いわば“動くゴール”です。

私がうれしいのは、業務も経験も違う皆さん全員が、自分の業務についての課題や、自分に足りない部分を認識してくれていたことです。皆さんが自分の業務に関して、常に理想の形を思い描いているからこそ、そこに及ばない部分を挙げてくれたのだと思います。

次に皆さんにお伝えしたいのは、「ベストを尽くしたのに理想の形に届いていない」ことは、決して恥ずかしいことではなく、むしろ胸を張っていいということです。

自分に足りない部分を語れるということは、自分の中できちんとPDCAサイクルを回せているということです。すなわち、理想の形を描くという「計画」、それに向けてベストを尽くすという「実行」、自分に足りない部分を見つけるという「評価」、そして足りない部分を補うためにさらにベストを尽くす「改善」です。PDCAサイクルを回しながらベストを尽くしている人は、理想の形に向かって、常に「自己ベスト」を更新しているわけですから、何ら恥じることはありません。

もし恥ずかしそうに語る必要があるとすれば、自分に足りないと感じている部分についてではなく、ベストを尽くしていないことについてではないでしょうか。

ただし、私はベストを尽くすといっても、いたずらに業務時間を延ばすなどの無理をしろと言っているわけではありません。時間的、予算的な制約もあるでしょうし、ほとんどの業務は社内外の相手あってのものですので、自分の力だけではどうにもならないことも理解しています。自分に足りない部分を語ってくれた人は、その制約や不可抗力すら言い訳にせず、「もっと自分にできたことはなかったのか」と考えてくれているわけですから、やはり胸を張るべきです。

以上(2022年5月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】「管理職の朝礼」で分かる会社のレベル

今朝は管理職の皆さんに集まってもらいました。少々厳しい話となりますが、とても大切なことなので、しっかりと聞いてください。

皆さんは、今の私と同じように、部下の前に立ってお話をする立場です。朝礼などを利用して部下に会社が大切にしている理念や価値観を伝え、実践させることが皆さんの仕事です。しかし、私から見ると、皆さんは朝礼がうまくありません。声のトーンや話すスピードなどプレゼンテーションのテクニックがマズイと言っているわけではありません。皆さんがどこからか“拝借”してきたような表層的な内容を、格好をつけて話していることが問題なのです。

我が社のように、朝礼を習慣にしている会社の管理職は、次の朝礼で何を話そうかと考え、“朝礼のネタ探し”をします。そのためにウェブサイトを見たり、書籍を読んだりするでしょう。

情報のインプットは大切ですが、そこで得られるネタは、管理職が自分の思いを分かりやすく伝えるための“切り口”にすぎません。しかし、管理職の中には、ネタをそのままスピーチの内容にしてしまう人がいます。例えば、年始の朝礼ではえとを話材にすることが多いのですが、一般的にいわれているその干支の年生まれの特徴などを紹介し、最後に「今年も頑張りましょう」で締めくくるだけのパターンです。ウェブサイトの記事を、ほぼそのまま話してしまう管理職もいます。

なぜ、このようになってしまうのか。それは、管理職が部下に伝えたいことを持っていないからです。あるいは、伝えたいことはあるけれど、話す内容に自信が持てないので、借りてきた言葉ばかり並べて格好をつけているというケースもあります。

両方とも、管理職としての役割をもう一度考えてもらわなければなりません。「朝礼ができない管理職」の問題は我が社に限ったことではありませんが、これは皆さんが考えている以上に深刻な問題です。会社が長く続き、大きくなっていく過程で生じる問題の一つは、意図せずに起こってしまう“理念や価値観の希釈”です。起業したてであれば、会社が本当に大切にしている理念や価値観は数人で共有すればよく、それらは議論の中で濃くしていくことができます。

しかし、組織が大きくなると理念や価値観を隅々まで伝えることが難しくなってきます。本来、そうした“理念や価値観の希釈”を抑える役割の一部を担うのは管理職です。にもかかわらず、年始のとても大切な朝礼の場で借りてきた話しかできないようでは、我が社のレベルは低いと言わざるを得ないでしょう。

管理職の皆さん、我が社の理念や価値観をもう一度、確認してください。そして、何度もそしゃくし、皆さんの言葉で部下に伝える努力をしてください。ぎこちなくてもいいのです。大切なのは、スピーチに込められた皆さんの思いです。

以上(2022年5月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】「お客さまのお客さま」を見よ

先日、ある優秀なマーケターだった方のお話を聞く機会がありました。その方は、お客さまのニーズを知るために、営業担当者以上にお客さまを訪問していたという、とても仕事熱心な人です。これだけでも素晴らしいことですが、私が特に感銘を受けたのは、その方がお客さまのお客さま、つまりお客さまの取引先にまで足を運び、話を聞くようにしていたという点です。これはとても重要なことであり、まさに私が理想としている姿勢なので、ぜひ皆さんにも参考にしてもらいたいと思います。

「お客さまがそう望まれたから」というのは、一面では正しいことなのですが、私には「お客さまの声に甘えている」ようにも思えます。なぜなら、それが本当にお客さまのためになっているのかどうかを、その人たちの声を通じてしか判断しようとしていないからです。

確かに、お客さまのご要望を満たすことは最も基本的なことですし、そのために声を聞くことは大切です。ですが、それだけで終わってしまうなら、競合他社と何も変わりません。そして何より、それではお客さまの想定内のサービスしかご提供することができません。つまり、どんなに頑張っても100%のサービスしかご提供できないということです。

「それではダメなの?」と思った人がいるかもしれません。ダメではないのですが、私は皆さんに、それ以上のことを期待したいのです。

もし、「お客さまのお客さま」のニーズを知ることができれば、お客さまに対して、「御社の取引先が望んでいるのはこれです。ですから、このようなサービスを始められてはいかがでしょうか? 弊社もお手伝いさせていただきます」といった提案ができるようになります。つまり、お客さまが望むことの120%、場合によっては150%のサービスをご提供できる可能性があるわけです。もし、これができるようになれば、我が社はお客さまにとって、競合他社とは全く違う存在になれるはずです。

「お客さまのお客さま」を見るというのは、社内の業務にも置き換えられます。「次工程はお客さま」という言葉がありますが、皆さんには、次工程の担当者が業務をしやすくなるよう、お客さまに対するのと同じくらい丁寧に業務を行ってもらいたいと思っています。そのために、「次工程の次工程」まで意識するように心掛けてみてください。

例えば経費を請求する場合、会計処理という工程だけでなく、その先にある決算資料の作成や、税務署への書類の提出のことまで意識してみてください。「経費請求書は迅速かつ正確に作成しよう」という気持ちが強くなるはずです。また、社内向けの企画書を作成する場合、それを基にした営業資料で営業をする人のことを考えてみてください。「社内向けだから、これでいいや」という気持ちにはならないはずです。

以上(2022年5月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】会社は舞台、管理職は役者

この朝礼もそうですが、私には皆さんの前でお話しする機会がたくさんあります。また、多いときは月に10回くらい、社外の方々の前でスピーチや講演をさせていただいています。

そのため皆さんの中には、私のことを「人前で話すのが得意で、根っからの出たがり」と思っている人も多いようですが、私は若い頃、全くそうではなかったのです。社内外を問わず人前で話すことにとてもプレッシャーを感じ、逃げ出したくなるほどでした。緊張のあまり頭が真っ白になり、しどろもどろになってプレゼンに失敗したことも一度や二度ではありません。

このことに悩んでいた私は、初めて管理職になったときに気持ちを切り替え、「人前で話すのがとても得意で、常に自信を持ち堂々と話す人」を「演じる」ことにしたのです。

演じることは、皆さんにもあてはまります。むしろそれは、皆さんの仕事でもあるのです。特にそれが求められるのは管理職です。日本電産の創業者である永守重信氏は、「経営者や管理職はどのような状況にあっても『アイ・アム・ファイン=私は元気です』と言えなければならない」という趣旨のことを言っていますが、これこそ管理職が実践すべき重要な「演技」ともいえるでしょう。

例えば、管理職は、組織が「元気がないな」と思ったときこそ率先して声を出し、前向きな管理職の姿を演じることで、組織をポジティブな方向に持っていかなければなりません。

また、トラブルが起きたときも同じです。たとえ心の中では激しく動揺したとしても、管理職は右往左往したり弱気な態度を見せたりしてはなりません。状況にもよりますが、そうしたときこそ冷静に指示を出し、組織を動かして対応する役割を演じる必要があります。

とはいえ、演じるのは簡単ではありません。また、どのように演じたらよいか分からない管理職も多いでしょう。そこで私がお勧めしたいのは、まず、手本となる人を見つけ、その人をまねるという演技をすることです。管理職の皆さんは社内外の多くの人と接し、ネットワークを広げ、手本を見つけてください。そしてどうしても見つからなければ、私を手本にしてください。私自身も大いに迷い悩みながら、諸先輩方を手本に、管理職、そして経営者を演じ続けてきているからです。

私は特に人前で話をすることが大の苦手でしたが、「得意な人を演じる」と決めてから、人前に出るときに「演じるスイッチ」が入るようになりました。自分の感情やモチベーションとは一切関係なく、「人前で堂々と自信を持って話す人」の演技ができるようになったのです。

それは、人の上に立つ者として、人前で堂々と話をする人であることが私の重要な仕事だと認識したからです。管理職も同じです。管理職という役を演じるのは皆さんの重要な仕事なのです。

会社は舞台、管理職の皆さんは役者です。私と一緒に素晴らしい舞台をつくりましょう。

以上(2022年5月)

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画像:Mariko Mitsuda

組織のモチベーションを高めるために2つのセオリーを意識して実践しよう

書いてあること

  • 主な読者:部下のモチベーションを高めたい上司
  • 課題:各人によってモチベーションの要因が異なる
  • 解決策:2要因理論と欲求段階説を意識して意見を出させる環境づくりや、普段のコミュニケーションを充実させるなどを、いま一度見直す

1 モチベーションは人それぞれ。理論で考え多数派を取る

いつの時代も、社員のやる気を引き出すのは難しい問題です。一昔前なら臨時ボーナスやインセンティブの提供、新しいポストへの抜てきなどがモチベーションにつながりましたが、今は必ずしもそうではありません。「自身の成長」や「ワークライフバランスの重視」など、給与や昇進とはまた違うものをモチベーションにしている人も多いです。

問題は、価値観が多様化しすぎて、社員一人一人の異なる欲求を全部満たすことはできないという点です。だからこそ、この記事では、

人間の欲求を理論で考え、多数派の欲求を押さえること

をご提案します。具体的には、人間の欲求に関する理論として有名な、

  • 2要因理論:職場での特定の要素によって社員が不満や満足感を持つ
  • 欲求段階説:人間はより高い次元の欲求の達成に向けて行動する

の2つのセオリーと、これらのセオリーを実際の職場で活かしていくポイントをご紹介します。

2 給与は実はモチベーションにつながりにくい?

1)まずは2つのセオリーを押さえよう

1.ハーズバーグの「2要因理論」

心理学者フレデリック・ハーズバーグが提唱した、仕事に対する不満の要因となる「衛生要因」と、満足をもたらす「動機付け要因」に注目する理論です。

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衛生要因には、満たされないと不満につながるが、満たされても満足しにくいという特徴があり、動機付け要因には、満たされると満足しやすくなるが、満たされなくても不満にはつながりにくいという特徴があります。

2.マズローの「欲求段階説」

アブラハム・マズローが提唱した、人間の持つ内面的欲求を5段階に分けて考える理論です。

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第1段階「生理的欲求」が最も低位、第5段階「自己実現の欲求」が最も高位で、人間は低位の欲求が満たされると、より高位の欲求が生じるようになるという考え方に立っています。

2)給与を上げるだけでは限界がある

この2つのセオリーを通して、まず皆さんにお伝えしたいのは、

給与は、意外とモチベーションにつながりにくい

ということです。

2要因理論で考えると、給与は「衛生要因」に当たります。衛生要因には前述した通り、満たされないと不満につながるものの、満たされても満足しにくいという特徴があります。つまり、

不満が出ないレベルの給与は払わないといけないが、多く払ったからといって、モチベーションにつながるわけでもない

ということです。

また、欲求段階説に立った場合、給与は主に第1段階から第3段階までの欲求を満たすことはできますが、第4段階や第5段階の欲求とは直接の関わりを持ちません。

3)結論:達成感や承認欲求に着目する

給与がモチベーションにつながりにくい一方、

達成感や承認欲求が満たされる組織風土は、モチベーションにつながりやすい傾向

があります。2要因理論でいえば「動機付け要因」、欲求段階説でいえば第4段階「尊厳の欲求」や第5段階「自己実現の欲求」といった高位の欲求です。

動機付け要因は、前述した通り満たされると満足しやすくなるが、満たされなくても不満にはつながりにくいという特徴があります。また、欲求段階説で、高位の欲求が満たされる状態というのも満足感が高い状態です。

ですから、会社は、

  • 社員の人間的成長や満足の向上など、強い動機付け要因を満たすこと
  • より高位の欲求である第4段階「尊厳の欲求」や第5段階「自己実現の欲求」を、普段の仕事の中で満たす方策を考えること

です。以降で、そのための方策を紹介します。

3 達成感や承認欲求が満たされる組織にするには?

1)動機付けはまず「意見を出せる」環境づくりから

組織のモチベーションを高めるには、まず仕事に関する意見を自由に言える環境を整えましょう。「風通しの良い環境」は前向きになりやすく、一丸となって目標に向かおうという雰囲気が生まれます。管理者(経営者や管理職)に求められる役割は次の通りです。

1.普段のコミュニケーションを充実させる

管理者から元気にあいさつをするのはもちろん、毎日、社員に何気なく声を掛けるようにしましょう。話題は、堅苦しくないカジュアルなもので、社員が答えやすいものにします。コンサートに行った、飲み会があったなど前日の社員の予定を聞いておけば、「楽しかった?」というように気軽に声が掛けられます。

また、会話の“蚊帳の外”にいる社員に気を配るのも大切です。特定の社員同士がいつも盛り上がっていて、他の社員があまりよく思っていないようなときは、話を少し抑えます。また、できればよく思っていない社員も、話の輪に入れるように管理者が導くことも大切です。

2.社員に意見を出させる

管理者は、会議はもちろん、ちょっとした打ち合わせでも、できるだけ多くの社員に意見を出してもらうようにしましょう。ほとんど意見を出さない社員には、直接問い掛けます。その際は、次のような工夫をしましょう。

  • いきなり具体的な案を求めるのではなく、先に出ている意見をどう思うかなど、答えやすい質問から誘導する
  • 社員が出した意見は聞き流すことなく、まず肯定的に受け止める

2)挑戦しやすい環境をつくる

モチベーションが高い社員には、希望する仕事や新しい仕事にどんどん挑戦してもらいましょう。もちろん、投げっ放しではなく、必要に応じて管理者が仕事の方向性を示したり、相談に乗ったりします。

また、挑戦させた仕事が成功したら、きちんとその社員を褒め、その成功を喜び合いましょう。逆に失敗しても決して頭ごなしに怒鳴ったりせず、共に失敗した原因や対策を考えましょう。組織全体に仕事に対する挑戦意欲が広がれば、モチベーションも高まります。

3)組織の目標・行動指針の明確化と落とし込み

組織の雰囲気が良くなってきたら、組織の向かうべき方向性(組織の目標、目標達成のための行動指針)を提示して、全体の意識を統一していきます。これをはっきり提示しないと、社員が組織の方向性からずれた努力をしてしまう恐れがあります。せっかく組織のために頑張っても評価されなければ、達成感は満たされず、モチベーションの向上も見込めません。

ですから、管理者は組織の方向性をいかに分かりやすく伝えるかが重要です。目標や行動指針が抽象的な場合、具体的な数値を使って「見える化」するなどの工夫をしてみましょう。

4)組織の役割と責任範囲の明確化

前向きで積極的な組織には仕事が集まります。ただ、仕事が集まりすぎる状態が長く続くと、社員の間に、「なぜ私たちがここまでしなければならないんだ」という不満が広がります。

こうならないよう、管理者は組織の役割と責任範囲を明確にします。決められた範囲を超える仕事が他の組織から集まってきて負荷が掛かりすぎるようなら、他の管理者とも相談して、仕事の量を調整しましょう。

5)必要な権限の付与

組織の役割と責任範囲を決めたら、次は組織(実際は社員ベース)に対して権限を委譲します。権限の委譲は信頼と期待の証し、組織のモチベーションを高めるきっかけになります。

一方、権限の委譲はプレッシャーになることもあります。そのため、権限を委譲するのは、その職務を遂行する能力があり、それを任せても業務過多にならない社員ということになります。

6)組織間の良好な関係の構築によるモチベーション低下の防止

権限の範囲内の行動であっても、例えば一方の組織がもう一方の組織に無理をさせ続けると、無理をさせられた組織に不満がたまります。典型的なのは、営業と現場(製造あるいはサービス提供部門)の対立です。

営業担当者が顧客からの急な依頼を受け、現場に短い納期で製造を依頼することはよくありますが、現場にとっては負担です。モチベーションが高い現場でも、急な依頼が続く場合や、営業担当者が「顧客からの依頼なのだからやってもらわないと困る!」といった態度を取ると、組織間でギクシャクした雰囲気になります。

別の組織に負荷を掛ける場合は、無理をお願いしていることを忘れず、負荷を掛けることになった経緯と理由をしっかりと説明しなければなりません。さらに、組織間で普段から互いに労をねぎらう、コミュニケーションを取るなどして良好な関係を保っておくことが必要です。

このように、小さな配慮を積み重ね、関連する組織同士が良好な関係を保っておくことで、それぞれの組織は気持ち良く仕事ができます。管理者は、他の管理者と良い関係を築くのはもちろん、大きな仕事がひと山越えたときには、関連する組織の社員の労をねぎらったり、組織間で社員同士が交流する場を設けたりするとよいでしょう。

以上(2022年5月)

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画像:Studio Romantic-Adobe Stock

【朝礼】“意図的”な判官びいきに踊らされるな

私は毎週、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」を楽しみにしています。大河ドラマの中でも珍しい、鎌倉時代を扱った作品であり、幕府の礎を築いた源頼朝や北条義時たちによって繰り広げられる命がけの戦いに、毎回ハラハラしています。そんななかで、私が驚いたのは、頼朝の弟である源義経の描き方です。

義経といえば、優れた戦いの才能によって平家を倒すも、兄である頼朝に疎まれて滅ぼされた悲劇のヒーローというイメージがありますが、「鎌倉殿」の義経は、平時はいささか思慮に欠け、自分の感情のままに行動して周囲を振り回すなど、困った人物としての一面も強調されています。私は最初に見たとき、「なんか義経のイメージと違うな」と思ったのですが、調べてみると、どうやら史実でも、義経には武家のリーダーである頼朝の許可なく朝廷から平家討伐のほうびをもらってしまうなど、軽率な一面があったようです。

私たちが普段あまり義経の短所に目を向けず、悲劇的な結末に注目しがちなのは、私たちの中に不遇な人や立場の弱い人に同情してしまう気持ちがあるからです。こうした感情を、義経が朝廷からもらった官職にちなんで「判官びいき」というそうです。不遇な人や立場の弱い人を思いやる感情自体は決して悪いものではないですが、一方で私は、先日ある歴史書の現代語訳を読んで、「“意図的”な判官びいきに踊らされてはいけないな」と思うようになりました。

その歴史書とは、鎌倉幕府の始まりから6代将軍宗尊(むねたか)親王の時代までの出来事を記した「吾妻鏡(あづまかがみ)」です。この歴史書では、家臣からの讒言(ざんげん)を受けて義経を追い詰める頼朝と、頼朝に追われ東北に逃げる義経の様子が詳細に描かれていて、現代まで続く判官びいきの感情の形成に一役買っています。

ただ、実はこの歴史書、頼朝の死後に幕府の実権を握った北条家が、自分たちの政治を正当化するために作ったという説があり、世間の頼朝に対する評価が下がるような書き方を、意図的にしているのではないかと指摘する学者もいます。また、創作も多く入り交じっていて、例えば、義経が断崖絶壁を馬で駆け下りて平家に奇襲を掛けた、いわゆる「逆(さか)落とし」などは、実際にはなかったという説が有力です。

つまり、世間が頼朝に抱く冷酷な支配者のイメージや、義経に抱く悲劇のヒーローのイメージは、もしかしたら北条家が頼朝の評価を下げるために意図的に作り出したものかもしれないということです。仮にそうだとしたら、私はまんまと北条家の思惑に乗せられて「義経哀れ、頼朝憎し」の感情にとらわれていたことになります。

私たちも日々ニュースを見たり、ビジネスで情報収集をしたりしますが、流れてくる情報をただうのみにするのではなく、「これは本当か?」「発信者の思惑は何なのか?」とよくよく吟味しなければならないと思う今日このごろです。

以上(2022年5月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】聞いたことに答えなさい!

今日は、私の友人の笑い話を紹介します。その友人は、スカイダイビングをする予定を立てていましたが、何度も「いざとなったらおじ気づいて、飛ぶのをやめるかもしれない」と言っていました。

彼がスカイダイビングをする予定日が過ぎた頃、私は、はたして彼が飛んだのかどうかが気になって、「飛んだの?」とメールで尋ねてみました。すると、彼からの返信は、「空を飛んだ気持ちは、飛んだ者にしか分からない」という一文だったのです。

皆さんはこの一文から、私の友人がスカイダイビングを無事決行することができたのか、それともできなかったのか、分かるでしょうか? 「飛んだ者にしか気持ちは分からない」というのは、「自分は飛んだ。だからこそ空を飛ぶ素晴らしさが分かる」という感動を伝えているのか、それとも「飛べなかった。だから、自分には空を飛んだ者の気持ちは分からない」と嘆いているのか、どちらなのか分かりません。

メールを読んだ私は思わず、その場で「いったい、どっちなんだ? 聞いたことに答えていないじゃないか!」と笑ってしまいました。

結局、後から「飛んだ」ことが分かり、友人との間では笑い話になりましたが、これが仕事上の話だったらどうでしょうか。プライベートな会話であれば、たとえ「聞いたことに答えていない」としても笑い話で済むことがあるでしょう。しかし、ビジネスシーンではそうはいきません。

ビジネスにおいては、判断したり、次の行動に移したりするために質問をします。聞いたことに答えてもらえなければ、先に進むことができません。時間も無駄になります。

皆さんは、仕事の中で、「聞かれたこと」にしっかりと答えていますか。残念ながら、そうではない人が多いように見えます。特に、皆さんが聞いたことに答えていないのは、「確認したか?」「できたか?」など「はい」か「いいえ」で答えられる質問のときです。

例えば、私や上司が進捗状況を知るために「あの資料できた?」と尋ねると、皆さんは、「この部分は、思うに……」などあれこれと説明し始めます。これでは、聞いたほうは、知りたいことが分かりません。皆さんがまず答えるべきなのは、「できた」「できていない」のどちらかです。

また、仮にできていない場合には、「できていない」と答えるだけでは不十分です。聞いたほうは、どのくらい進んでいるのか、いつできるのかを確認したいのです。「できていません」と事実を答えた上で、「ただし、下調べは済んでおり、他に急ぎの仕事もないので、今日の11時までには完成する予定です」と現状と予定を必ず伝えるようにしてください。相手は、必要に応じてスケジュールなどを調整することができるでしょう。

ビジネスにおいて聞いたことに答えるには、まず、相手の立場に立つことが大切です。今日から、肝に銘じて実践してください。

以上(2022年5月)

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画像:Mariko Mitsuda

スマホで新しい販路を開拓する「ライブコマース」の成功ポイント

書いてあること

  • 主な読者:対面の接客・販売手法だけでなく、「ライブコマース」を取り入れたい経営者
  • 課題:具体的な「ライブコマース」の動向や事例、成功のポイントが分からない
  • 解決策:インターネットとはいえ、コミュニケーションを重視する。関連法令にも注意

1 新たな販路の開拓にライブコマースを!

ライブコマースとは、

ライブ(Live)+Eコマース(E-Commerce)の名の通り、インターネットで商品を紹介する動画をライブ配信し、リアルタイムでオンラインショップでの購入につなげる販売手法

です。日本では、2017年頃に登場し、新型コロナの影響が拡大した2020年以降、ユーチューバーやインスタグラマー、動画アプリのTiktokなどになじみがある、若者や外国人を中心に定着してきています。

売りたい商品を映像で紹介するスタイルは、従来のテレビショッピングと似ていますが、ライブコマースには次のような特徴があります。

  • ネットの動画配信による、視聴者との双方向のコミュニケーション
  • 顧客に対して購入ボタンのワンクリックのみで直感的な購入に導くことができる
  • モデルやインフルエンサーなどがPRすることで、効果的な宣伝が見込める

この記事では、ライブコマースのサービス内容や、企業の取り組み、利用者の動向などについて解説し、ライブコマースで新たな販路を開拓するためのヒントをご提供します。

2 スマホで簡単注文、テレビ通販と実演販売のいいとこ取り

ライブコマースは、スマートフォンなどのアプリを用いて提供するタイプや、自社のECサイトにライブコマース機能を持たせるタイプなどがあります。

配信者が商品を紹介する動画を撮りながら、その動画を見ている利用者の質問などに答えていくスタイルですが、リアルタイムで顧客とコミュニケーションを取るライブコマースは、スーパーで総菜などを目の前で調理してくれる実演販売のようなイメージかもしれません。

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3 多様化が進むライブコマースの活用方法

日本でも、さまざまな業界でライブコマースの導入が進んでいます。最近は、ライブコマースをデジタルな販売戦略の一環として組み込んだり、地方の企業向けにライブコマースのサービスを提供する取り組みも登場したりと、活用方法が多様化してきている印象を受けます。

1)三越伊勢丹HD:実店舗のイベント連動、チャットやビデオ通話で接客

新型コロナが出現する前からライブコマースに取り組んでいた三越伊勢丹ホールディングスは、自社のライブコマースの取り組みを進化させています。これまでは、実店舗でのイベントに連動したものや新商品を紹介する配信を行っていました。

現在では、自社の専用アプリ「三越伊勢丹リモートショッピングアプリ」を提供しています。このアプリは、販売員にチャットでの商品についての相談や、一部の店舗限定ですが、販売員にビデオ通話で商品を見ながら提案を受けたり相談したりすることもできます。

こうした取り組みもあり、同社はライブコマースを含むオンライン売上高を、2024年度には600億円超と計画しています。

2)ファンケル:中国での販売に活用、限定商品や先行情報も発信

化粧品メーカーのファンケルは、新型コロナの感染拡大を機にライブコマースのサービス「ファンケル ライブショッピング」を開始し、自社の強みである通販事業の強化に取り組んでいます。

PR担当者と商品部門の担当者がコンビで、紹介する商品とその使用方法を説明します。配信中は、利用者からの質問などに商品部門の担当者が回答したり、PR担当者が使い心地やメークのコツなどを引き出したりします。

また、ライブコマース限定商品の販売や、その配信でしか聞けない先行情報などもあり、コアなユーザーを引きつける効果的な取り組みといえます。

同社は日本の化粧品に対する評価、需要が高い中国の顧客向けのライブコマース活用にも注力しているようです。同社は2021年11月に中国・上海で行われた博覧会に出展し、SNS「WeChat」によるライブ配信を行ったところ、約8900万人が閲覧したといいます。

3)京都中央信用金庫など:海外向けに店舗や周辺の風景の動画も配信

京都中央信用金庫は、取引先企業の販路拡大を支援すべく、越境ECの事業を行うインタセクト・コミュニケーションズと共に越境ECモール「京都優品跨境商城」の提供をしています。

この越境ECモールは、「WeChat」の軽量アプリ「ミニプログラム」として展開し、京都中央信用金庫の取引先の商品に限定して販売しています。商品の掲載だけでなく、プロモーション動画の配信や、商品を掲載している企業の実店舗や周辺の風景をライブコマースで配信しました。

新型コロナの影響によりインバウンド観光客がほぼ途絶えている中、金融機関が取引先を越境EC、ライブコマースで支援する動きは、今後も要注目といえそうです。

4)クリップス:地場商品を全国に発信

クリップスは、地方創生に特化したライブコマースのプラットフォーム「Sharing Live(シェアリングライブ)」を運営しています。

シェアリングライブの特徴は、地方創生に特化したプラットフォームのため、これまでは地元で消費されることが多かった地場の商品を他の都道府県の視聴者に紹介し、全国に販路を広めることができる点です。その他の同社の強みとして、ライブコマースの動画配信だけにとどまらず、企画や配信者(ライバー)の育成やスタジオ、撮影機器の手配なども一気通貫して提供できることが挙げられます。

こうした特徴を活かし、地方の企業や金融機関と共同でのライブコマースの配信実績を積み重ねています。同社の取り組みは、自治体からも好評を得ているようで、2021年11月には、東京都が主催するスタートアップ支援事業「NEXs Tokyo(ネックス トウキョウ」のモデル事業創出プログラムとして採択されました。

5)楽天:巨大ECサイト「楽天市場」を活用したライブコマース

楽天は、自社が運営するECサイト「楽天市場」の出店企業向けにライブコマースの配信機能を追加しました。

この配信機能は、楽天市場の各店舗が、最大90分の動画配信を行えるものです。また、楽天市場で定期的に行われる「楽天スーパーセール」などのイベントと連動し、動画配信もできます。

直近の配信予定を見ると、アパレルや食品、健康器具を販売する店舗などが比較的多く配信を行っているようです。これらの店舗を見てみると、視聴者限定の10%オフのクーポン発行や、購入時に付与される楽天ポイントを10倍にするなどで、視聴者を引きつける試みを行っています。

4 ライブコマースを成功させるためのヒント

ライブコマースを導入し、ファンや潜在顧客を獲得し、収益につなげるためにはどのような対策が必要なのでしょうか。ライブコマースを取り入れている企業からは、次のようなヒントを聞くことができました。

ライブコマースに対するスタンス:

  • 単なる商品・サービス説明ではテレビショッピングと変わらず、利用者にも飽きられるため、「顧客とのコミュニケーション」に主眼を置くこと。自社や商品の認知度が高くない場合は、収益化を急がずに、まずは自社のファンを増やすような気持ちで取り組む

配信者の選定:

  • 自社内で選定する場合には、進行役の「しゃべりのうまい人」、利用者の質問に的確に回答する「商品知識の深い人」のコンビで行っている。他のライブコマースの配信や、ユーチューブで有名ユーチューバーの配信方法を参考にしている
  • インフルエンサーなどに依頼したことはないが、多数の利用者に商品をアピールする場合や、自社が狙う顧客層とインフルエンサーのフォロワー層が合致する場合には、配信効果が大きいと考える。ただし、依頼する際には、商品の特徴や、想定問答の準備などが必ず必要になる

配信中:

  • 配信中は、利用者からの質問コメントに丁寧に回答する。回答し忘れたり、曖昧な回答をしたりすると、コメント欄が「荒れ」、視聴者が離脱する恐れがある
  • 配信者だけが盛り上がり、利用者を置いてきぼりにさせないために、「スーパーマーケットの実演販売者」を意識してお客さんとのコミュニケーションを取る
  • 利用者からは、色味やイメージが違うとの声が寄せられることがある。これは、カメラの僅かな光の加減や、手ブレなどによることもあり、配信時には、さまざまな角度で商品を紹介することや、アップで撮るなどの工夫をしている

配信後:

  • ただ配信するのではなく、コメントや販売数などの分析や、配信時の改善点の洗い出しも行う。質問やコメントなどは、貴重な「お客様の声」となるので、今後の商品企画や配信のヒントになる

5 リスク面:利用者とのトラブルや法規制

ライブコマースの本格的な普及はこれからなので、ライブコマースの利用者と導入する企業との両者の間で、ノウハウなどの蓄積が不十分といえます。国民生活センターの調査によると、「イメージと異なる商品が届いた」「出品者に確認した内容と異なる品質の商品が届いた」などのトラブルが報告されているようです。

1)消費者庁の注意喚起

消費者庁は「インターネット消費者トラブルに関する調査研究 ライブコマースの動向整理」の中で、利用者が注意すべき事項として、以下のような注意喚起を行っています。

  • 商品情報・取引条件を確認する
  • 衝動的な購入を行わない
  • 販売者・配信者の信頼性について確認する

2)関連法規制

ライブコマースに関連する法規制としては、次のようなものがあります。

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これらの法規制に抵触する恐れがある場合には、消費者庁が調査を実施し、措置命令や課徴金の納付を命じたり、業務停止命令や罰金が科されたりすることもあります。

6 ライブコマースの利用者動向

ネオマーケティングが2022年1月に行った「全国の20歳~69歳の男女1000人に聞いた『ライブコマース成功のカギ』」によると、ライブコマースを視聴した理由について、以下のように回答しています。この回答結果を見ると、「すでに知っている商品」について、さらに詳しく知りたいというニーズがあるようです。また、「パッケージを開いて使ってみせる」などの一歩踏み込んだ商品解説が求められているともいえそうです。

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また、ライブコマース利用者に今後の利用意向については、68.6%が「購入したい・やや購入したい」と回答しており、配信を継続することで顧客を定着させることができる可能性もうかがえます。利用者のライブコマースでの消費行動(消費金額、売れ筋商品など)は公表されていませんが、ライブコマースのサービスを提供する企業などによると、アパレルやアクセサリー、家電などがよく売れる傾向にあり、消費金額は数千円~1万円前後がボリュームゾーンとなっているそうです。

新型コロナの拡大を受けた外出自粛や店舗の閉鎖などを背景に、巣ごもり需要を捉える方法の一つとして広まったライブコマースですが、現在では、目的を差異化したものや、顧客との新しいコミュニケーション手法として活用する事例も登場しています。

一方、スマホで手軽に情報発信や顧客とやり取りができるため、トラブルなども消費者庁にも寄せられています。ライブコマースを取り入れる際には、関連する法規制の確認はもちろん、動画配信時の表現やコメント対応にも配慮することが望ましいといえます。

以上(2022年5月)

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画像:Daxiao Productions-shutterstock