従業員を海外赴任させるときの源泉税・住民税の取り扱いは?

書いてあること

  • 主な読者:従業員の海外赴任を検討している中小企業の税務担当者
  • 課題:海外進出を検討する際の税務上の問題点を把握したい
  • 解決策:従業員の源泉所得税・住民税の取り扱いに注意が必要

1 海外赴任と税金

コロナ禍により、一時的に海外往来はストップしているものの、近年は大企業だけでなく中小企業においても、海外進出が増えており、海外赴任をする従業員も珍しくない時代です。本記事では、従業員を海外に赴任させる際におけるその従業員に関する税金の取り扱いを解説していきます。

なお、本稿における海外赴任とは、企業等に属する個人が辞令等により日本国外の関係会社もしくは支店等に1年以上の長期にわたり勤務する行為をいい、短期の出張等に関しては海外赴任に含めないものとします。

2 海外赴任に関連する国内の主な税金

1)所得税

所得税法では、1年以上日本国内に住所等(住民票の有無にかかわらず、居所や生活の本拠地等実情に基づいて総合的に判断)を有しない者を「非居住者」といい、居住者(永住者、日本国内に住所等を有する者)と比べて、所得税の課税範囲が異なります。

居住者に対する所得税の課税範囲が、全世界所得(国内源泉所得+国外源泉所得)であるのに対して、非居住者に対する課税範囲は、国内源泉所得に限定されます。

なお、国内源泉所得とは、国内で生じた所得(収入)をいい、具体的には国内勤務の対価として支払われる給与や国内に所在する不動産から生じた賃貸料収入、国内の銀行から受ける利息や国内の企業から受ける配当などがあります。

2)住民税

住民税はその年の1月1日時点で日本国内に住所等を有する場合に課税されます。そのため、12月31日に海外赴任により出国した場合には翌年の住民税について課税は生じませんが、1月1日に出国した場合は課税関係が生じることになります。なお、普通徴収の未納分(あるいは特別徴収未済分)については、海外赴任をしても納税が免除されるわけではないので、出国前に全て納付するなどの留意が必要です。

3)国外転出時課税制度

海外赴任者が、出国時に多額の金融資産(株式などで時価が1億円以上)を所有している場合は、「国外転出時課税制度」が適用されることがあります。そのため、多額の金融資産を有する同族会社のオーナー一族の人などが海外赴任をする際には留意が必要です。なお、国外転出時課税の申告が必要な海外赴任者が、国外転出のときまでに一定の手続きを行った場合には、国外転出の日から5年間(延長の届出により最長10年間)納税が猶予されます。

(注)「国外転出時課税制度」とは、1億円以上の金融資産を保有している者が国外に転出する場合に、その金融資産の未実現利益(含み益)に対して課税を行う制度です。

3 赴任先における税金負担(所得税)

送り出し企業が海外赴任者に対して留守宅手当等の名目で支給する給与については、原則的には国外源泉所得として日本での課税が生じない代わりに、通常は赴任先の国等において課税が生じることになります。ただし、赴任者が従業員でなく「役員」である場合には、留守宅手当等の名目で送り出し企業が支給しているものであっても、国内源泉所得として源泉徴収が必要になるので注意が必要です。なお、国外支店等において役員としてではなく「使用人」として赴任する場合は、通常の従業員と同様にその給与は国外源泉所得として日本では課税されません。

また、赴任先における課税範囲や課税方法は各国等の税法等により異なるため、どのような税負担や申告、納税方法を採用しているか確認し、赴任後に思いがけない課税等が生じることのないよう、事前の対応が必要です。

各国等における代表的な課税範囲の取り扱いを例示すると、赴任先での業務に係る給与の全て(現地払い分+現地以外(日本)払い分+経済的利益)を対象としていることが多く、この場合、現地払い給与のみを申告している際などは特に留意しなければなりません。実際、適切な申告をせずペナルティーが科せられる事例や、国等によっては未納等がある場合には出国(帰任)できないなどの事例もあるようです。

このように税金の取り扱いについては、国等によってさまざまであるため、実際の対応については、海外進出支援を行っている税理士などの専門家に相談するようにしましょう。

4 海外赴任者に係る税務手続きに関する留意点

1)海外赴任前の国内の給与所得等に関する留意点(所得税の精算)

海外赴任者が1カ所の給与所得のみで、その収入総額が2000万円以下の場合は、送り出し企業はその者の出国時までに、年末調整により所得税を精算する必要があります。なお、出国前までの期間(国内勤務期間)に相当する賞与を「出国後に支給」した場合は、国内勤務期間に相当する部分の金額は、非居住者に対する国内源泉所得として通常の給与(居住者時代の給与)とは異なる税率で源泉徴収が必要になります。このような複雑な実務を回避する方法として、出国までに賞与を支給し、出国時に年末調整を実施することなどが考えられます。

また、2カ所以上からの給与や不動産所得など、給与所得以外の国内源泉所得を有する海外赴任者は、出国時までに納税管理人を選定し、所轄の税務署および住所のある市町村に届け出ます。納税管理人は法人・個人いずれでも届け出ることができ、海外赴任者の代理人として確定申告をすることになります。なお、納税管理人を選定しない場合は、出国時までに自分自身で確定申告をしなければなりません。

その他、参考として、海外赴任者がNISA口座を保有している場合の留意点を紹介します。以前は、非居住者(国内に恒久的施設を有しないもの)はNISA口座を保有できないこととなっていたため、赴任前に証券会社にて出国に係る諸手続きを経てNISA口座を廃止し、お金を払いだす必要がありました。しかし、2019年度税制改正に伴い、NISA口座については、証券会社にて一定の手続きを取ることにより、継続保有が可能となっています。ただし、非居住者については証券口座自体の保有を認めていない証券会社もあり、これらの取扱いは各証券会社で異なるため、各自で事前に確認する等の留意が必要となります。

2)非居住者に係る源泉所得税の納付書に関する留意点

非居住者に対して支給する役員報酬や、出国後に支給される出国前の国内勤務期間に係る賞与等は国内源泉所得に該当するため、20.42%の源泉所得税の徴収が必要です。また、この際の納付書は通常の給与に係る納付書と様式が異なります。

3)非居住者の確定申告(納税管理人の届出有り)に関する留意点

前述した一定の国内源泉所得を有する非居住者で、納税管理人の届出書を提出した場合は、申告期限(原則3月15日)までに、納税管理人を通じて確定申告書を提出し納税します。当該確定申告に係る課税範囲は国内源泉所得に限られ、また適用される所得控除は、基礎控除、寄附金控除及び雑損控除(国内資産から生じたもの)に限られます。

4)帰任時の留意点

赴任者が帰任(一時的なものを除く)した場合には、帰国した日の翌日から居住者となり、通常の従業員と同様の方法で、給与に対する源泉徴収が必要になります。また、帰任後に現地勤務に起因する給与や賞与が支給された場合においても、日本の課税対象となりますので、現地勤務に起因する給与等は帰国前にすべて支給し、現地で納税を済ませることで二重課税を避けるといった工夫が必要です。なお、二重課税が生じた場合も、確定申告で外国税額控除(詳細な説明は省略)を適用することにより、一定の額について二重課税を排除することが可能となる場合があります。

その他、納税管理人を選定している場合は、納税管理人の解任手続きが必要です。また、国外転出時課税制度の納税猶予を届け出ている場合には、課税の取り消しや更正の請求手続き等に留意が必要です。

なお、2019年度税制改正により、5年以内の海外転勤であればNISA口座の継続利用が可能になったため、出国の段階で証券会社に「継続適用届出書」を提出していた場合には、帰国後に「帰国届出書」を提出する必要があります。

5 【参考】短期滞在者免税(租税条約)

海外赴任ではなく、自社の業務等で海外に出張したときにも、その出張先の国等によっては、現地で課税が生じることがあります。この場合、同じ所得に対して、日本と出張先の国等の双方で課税関係が生じることになります(二重課税)。この二重課税の排除を目的として租税条約において「短期滞在者免税」という規定があります。この短期滞在者免税の要件を満たす場合は、現地での課税が免除されます。そのため、日本と出張先の国等との間に租税条約が締結されているかどうかや、その免除条件を確認することも重要です。

以上(2021年7月)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森 浩之)

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画像:photo-ac

第22回 経済産業省 新規事業創造推進室長 石井 芳明氏/森若幸次郎(John Kojiro Moriwaka)氏によるイノベーションフィロソフィー

かつてナポレオン・ヒルは、偉大な多くの成功者たちにインタビューすることで、成功哲学を築き、世の中に広められました。私Johnも、経営者やイノベーター支援者などとの対談を通じて、ビジョンや戦略、成功だけではなく、失敗から再チャレンジに挑んだマインドを聞き出し、「イノベーション哲学」を体系化し、皆さまのお役に立ちたいと思います。

第22回に登場していただきましたのは、経済産業省 新規事業創造推進室長の石井 芳明氏(以下インタビューでは「石井」)です。

1 「中小企業も大事だけれども、スタートアップを応援するということが、日本の産業を元気にする重要なポイントになるのではないか」と思ったのです(石井)

John

石井先生、この度は貴重なお時間を本当に愛りがとう(愛+ありがとう)ございます!
石井先生は、2012年からベンチャー政策や新規事業創出支援を進められ、内閣府にいらっしゃった2020年には「世界に伍するスタートアップ・エコシステム拠点形成戦略」として日本全国の8つの都市を選定されるなど、日本のスタートアップ・エコシステムをつくられた立役者ともいうべき方です。日本ベンチャー大賞、始動Next Innovator、J-Startup、日本オープンイノベーション大賞などの素晴らしい取り組みを牽引されてきた石井先生にインタビューする機会を与えていただいて、心より感謝申し上げます。

早速ですが、石井先生はなぜここまでスタートアップ支援に力を入れていらっしゃるのでしょうか?

石井

私はもともと経済産業省にいて、途中で内閣府に出向していましたが、一貫して「中小企業やベンチャー企業の支援畑」を歩いてきました。このようなキャリアを歩むきっかけになったのは故郷で見た光景です。

私は、岡山県倉敷市の児島という田舎町の商店街の、小さな小売店の一家に生まれました。商家の5代目を継ぐかという話もあったのですが、中学生、高校生と成長するにつれて商店街がシャッター通りになってしまい、家を継ぐという選択肢もなくなりました。
児島は今でもジーンズなどの工場で知られる繊維産業の街で、かつて商店街は工場従事者の方々で賑わっていました。ですが、産業構造が変わってきて製造業がどんどん海外に移転するようになり、児島の周辺の繊維工場も海外に移転していってしまったのです。それに加えて、大規模小売店舗法が改正されて、商店街の近所に大規模店舗が出店するようになり、商店街がガラガラになってしまいました。

そのときに感じたのが、中小企業が一生懸命努力をしても、それ以前に経済の流れや、産業構造などが中小企業の経営を大きく左右するのだということでした。そこで、何とか頑張る中小企業の応援ができないかと思い、通商産業省(現在の経済産業省)に入省しました。

通商産業省ではずっと中小企業畑にいたのですが、途中で米国に留学する機会を得ました。留学時はカリフォルニア大学バークレー校で公共政策を勉強していたのですが、ビジネススクールをちょっとのぞいてみたときに、スタートアップとの出会いがありました。
その頃は、Amazon.comが出始めたころで、サンフランシスコのベイエリアやスタンフォード、バークレーなどでは、インターネットを介して何か新しいことをやろうと、とても盛り上がっていたのです。

その雰囲気を感じて、「中小企業も大事だけれども、スタートアップを応援するということが、日本の産業を元気にする重要なポイントになるのではないか」と思ったのです。それ以降はずっと、中小企業に加えてスタートアップも応援し続けています。
経済産業省でも新規産業を担当しましたし、内閣府ではスタートアップ・エコシステムの支援や、スタートアップのための税制やスタートアップの組織を統制するための法律をつくることに携わってきました。

John

1996年のバークレーへの留学が先生の人生を変え、ひいては日本の未来を変えたということですよね?

石井

日本の未来を変えたかどうかは分かりませんが、少なくとも私の中では、中小企業以外にスタートアップというプレーヤーがいると明確に認識するきっかけになりました。政策マンとして、スタートアップも応援しなくてはいけないということを強く思い始めるようになりましたね。

2 社会全体として、リスクを取る、挑戦する人を称賛する、“良い失敗”についてもっと寛容になり、次のチャンスを与える、ということが足りないと思います(石井)

John

そもそも日本の産業が元気を失ってしまった元凶である「失われた30年」が起こったのは、何が原因だったと思われますか?

石井

「失われた30年」以前、日本が元気だった時代の経済は、高度成長を続けて、欧米を凌ぐ勢いでした。その成功体験が、その後もずっと足を引っ張り続けたのかもしれないですね。「こうすれば成功する」という、高度成長時代の成功パターンにずっと縛られていた。これが1つの原因ですね。

それからもう1つは、リスクを取れなくなってしまったことだと思います。もっと新しいことに挑戦すればよいのに、大企業を中心に、安全な方向に進もうとしてしまいました。その結果として、スタートアップが生まれにくいということにもつながり、新しい産業をつくる上でマイナスになったのだと思います。

John

「失われた30年」を経た現在、またこの先の未来も含めて、日本の社会課題として、どのようなことが挙げられると思いますか?

石井

やはり、リスクを取る人が少ないことだと思います。社会全体として、リスクを取る、挑戦する人を称賛する、“良い失敗”についてもっと寛容になり、次のチャンスを与える、ということが足りないと思います。失敗には種類がありますが、良い失敗に対しては寛容になって次のチャンスを与えるべきです。
これは大企業もそうですし、役所にも当てはまります。「面白いから、どんどんチャレンジしなよ」と後押しする社会にならないといけない。それが課題でしょう。

John

成功か失敗かという二択で考えてしまいがちですが、失敗にも色々あって、“良い失敗”の場合は評価していこうということですね。今、成功しているとされている起業家や企業も様々な失敗から得た学びを活かして現在の地位を築いているわけですし、失敗を恐れて現状維持をしようとしても変化の激しい現代ではすぐに顧客のニーズを満たせなくなってしまいます。ですから、リスクを怖がって現状維持ばかりしようとすると、実際はマイナスになってしまうし、これからますますチャレンジなくして成長なしという社会になっていきますよね。
そこで、取るべきリスクとは何かということが重要ですが、石井先生はどうお考えでしょうか?

石井

新しいこと、つまり現状の延長線上にはないことをやってみるためのリスクは取るべきですね。

ですが、闇雲にやってもダメで、基本的には、解決しなければならない課題が明確にある部分を特定して、そこにチャレンジしていくことです。リスク取ることと、博打(ばくち)をすることとは違います。リスクを取る上ですごく大事なのは、現場の声をどんどん聞いたり、現場の空気を感じたりして、解決が必要な課題が明確にあることを十分に検証しておくことです。その上で、解決しなければならない課題があると確信したら、それを迷わずやる、しかもやり続けることが大事なのだと思います。

3 スタートアップが成長していくような仕組みを、全体として作っていくことがとても重要です(石井)

John

社会課題の解決のために、新たなチャレンジをしてイノベーションを起こそうとするスタートアップの存在が求められていますよね。

石井先生は、日本の経済をJカーブさせてもう一度発展させていくために、スタートアップが果たす役割は何だと思われますか?

石井

スタートアップだけでは今の日本の状況は変えられないと思います。スタートアップは重要なプレーヤーではありますが、スタートアップを取り巻くエコシステムが変わらないと、日本全体を変えることはできません。大企業や大学は重要なプレーヤーですし、他にもいろいろなプレーヤーが変わっていく必要があります。
スタートアップは、大企業や大学を始めとするプレーヤーが変わるためのきっかけをつくる、あるいは突破口を開く役割を果たすのではないでしょうか。

スタートアップは大企業に成長していかないといけないですし、大企業にならないのであればゼブラ企業として、安定して地域に貢献できる存在にならないといけないと思います。チャレンジをしてイノベーションを起こし、成長するという社会にするためのけん引役にスタートアップがなることで、大企業や大学にも良い影響を与えることができます。

そして、スタートアップが成長していくような仕組みを、全体として作っていくことがとても重要です。

John

一番聞きたかったお話をお聞きすることができました! ユニコーン企業とゼブラ企業の役割は違いますが、どちらもスタートアップ的なマインドを忘れずに、イノベーティブであり続けて欲しいです。

また、スタートアップ・エコシステムといえば、やはりこのコロナ禍の一年を見てもシリコンバレーが圧倒的にユニコーン輩出も一番ですし、起業家を支援するプレーヤーのボリュームも優れていますよね。私も、現地の大学やアクセラレーターで学び、インキュベーターやハッカーハウスを訪れ、VCやエンジェル投資家、弁護士などのスタートアップの支援者達と交流をし、その素晴らしさを実感しました。イノベーションは、世界をより良くしたいと願う者達みんなで起こすものなのだと気づいたことが、現在の活動に繋がっています。

ところで、石井先生が創設に携わった「日本オープンイノベーション大賞」はどのような経緯でスタートしたのでしょうか。同賞についてご説明していただけますか?

石井

日本オープンイノベーション大賞は、「産学官連携功労者表彰」として15回開催されてきたものをリニューアルして、2018年度に創設された制度です。オープンイノベーションという言葉が幅広く使われるようになり、「オープンイノベーションをやらなきゃ」という人が増えてきたことが創設の背景にあります。

ですが当時は、本当に成果を出しているオープンイノベーションは何か、これぞオープンイノベーションだと言える事例は何かというと、国内には見える形では示されていませんでした。そのため、「社長からの指示で、突然オープンイノベーション担当になりました」というような人たちは、何を参考にすればよいか分からずに苦労していたのです。

そこで、オープンイノベーションのモデル例、つまりロールモデルを示そうと、日本オープンイノベーション大賞が創設されました。
日本オープンイノベーション大賞は総理大臣賞だけでなく、文部科学大臣賞、国土交通大臣賞、総務大臣賞など各省の大臣賞などもあるため、それぞれの政策フィールドでの好事例を表彰することで、さまざまな分野でのオープンイノベーションのロールモデルを見える化できると思いました。すでに第3回まで開催しています。

John

目標となるモデルを示して、後に続く人々を育成しようというねらいがあったのですね。第3回まで行ってこられた中で感じられた成果や変化はどのようなものがありましたか?

石井

オープンイノベーションの取り組みが、ボトムアップされてきたという認識があります。
過去3回の受賞者に関しては、いずれも立派な取り組みと成果を出しているという点ではそれほど変わっていないと思います。ですが、毎回応募される120件程度の案件全体で見ると、いい案件が増えてきたと感じています。

John

素晴らしいですね。日本オープンイノベーション大賞に応募される案件は、スタートアップと大企業とのオープンイノベーションが多いのでしょうか?

石井

スタートアップと大企業とのオープンイノベーションもありますし、大企業同士や大学連携もあります。また、地域住民を巻き込んだ、地域のプレーヤーが参加するオープンイノベーションも見られます。

John

多種多様なオープンイノベーションが見られているのですね。
海外スタートアップと日本の大企業とのオープンイノベーションはいかがでしょう。グローバルオープンイノベーションを加速させ、海外のよい知見を取り入れたり、海外の素晴らしいスタートアップを日本に呼び込んだりすることで、日本の課題の解決方法にも幅が出ると思います。
また、日本の大企業がイスラエルやインド、フランスなどの海外のスタートアップを買収することも重要だと思いますが、海外のスタートアップと日本の大企業とのオープンイノベーションの現状について、石井先生の分析とお考えを聞かせて頂けますか?

石井

海外のスタートアップと日本の大企業とのオープンイノベーションは欠かせないと思っています。海外のスタートアップに日本に来てもらう、あるいは日本の大企業が海外のスタートアップをM&Aしたり、協業体制を築いたりすることは、非常に大事なことです。

ですが、残念ながら現時点では、は海外のスタートアップとオープンイノベーションを行う体制が整っていない日本の大企業が多いと、痛感しています。

これは海外のスタートアップとの連携には限らないのですが、大企業は、スタートアップのスピードに対応して意思決定するというのが、なかなかできないという問題があります。スタートアップは、時間とともにお金を燃やしているわけです。だから「3週間検討します」、下手したら「1カ月検討します」「3カ月検討します」と言われてしまうと、バーンアウトしてしまうわけです。
そうならないように、大企業にはもっと早く意思決定するとか、あるいはまだ情報が全部そろっていなくても、それを許容した上でリスクを取るという意思決定することが求められます。しかし、それができていません。
日本の大企業は国内のスタートアップとのオープンイノベーションもなかなか難しいくらいですから、海外のスタートアップと連携するには、そのような意思決定ができる体制をしっかりと整えてから始めないといけないと思います。

そのときに何が必要かというと、海外のスタートアップとちゃんと話ができる人、あるいは海外のスタートアップの在籍経験がある人だと思います。

John

スピード感の差は、大きな課題ですよね。石井先生が仰られたようなスタートアップ側の事情を、もっと大企業は理解した上で、従来のプロセスとは違う迅速な対応ができるシステムを社内に構築しなければなりませんよね。「弊社はこういう流れでやっています」というのを一方に押し付けるような形になってしまっては、国内外問わずオープンイノベーションの成功は難しいです。共にイノベーションを起こすチームなんだという認識で、相手の状況を理解し、手を取り合うためには何が出来るだろうというと考えていかなければ。
相手が海外スタートアップなら尚更です。ミーティングをすることが重要なのではなく、その中で意思の疎通をしっかりとり、いつまでに誰が何をするのか、共通のビジョンやゴールは何なのかを明確にして、次に繋げていきたいですね。

石井

森若さんが大企業の中に入れば、海外のスタートアップと“切った張った”ができるでしょうが、そういう人はあまりいないですよね。だから、そういう人が増えないといけないのです。

John

ありがとうございます。海外のスタートアップとちゃんと話ができる人、あるいは海外のスタートアップの在籍経験がある人を、どのようにして増やしていけばよいと思われますか?

石井

昔は商社マンに、そのような人が多かったですよね。ですから、商社マンや、海外のスタートアップの在籍経験がある人をちゃんとリクルートすることが大事かもしれません。
あとは、少し時間はかかりますが、社員を海外で武者修行させることです。ちなみに経済産業省でも日本貿易振興機構(JETRO)との共催で、グローバル起業家などのイノベーターを育成するプログラム「始動Next Innovator」を毎年実施しています。国内のイノベーターの卵100人を一般募集して研修し、上位20人をシリコンバレーに送って本場の風にあたらせる、というプログラムです。

ただ、武者修行させるときに大事なのは、1人ないし数人だけ研修させても効果は得られないということです。そういう人がごく少数だと、結局、内部で浮いてしまうのです。ですから、留学期間は短くてもいいので、なるべく多くの人を海外に出していくことが重要です。
これは社内から海外に留学させる場合も、外部から人材を招へいする場合も同じです。ごく少数で社内の組織をオペレートしようとしても、全体は動かないものです。全体を動かすためのスレッシュホールド(閾値)を超える人数を用意する努力をしたときに、日本の大企業は海外のスタートアップを活用できるようになると思います。

4 日本もスタートアップ・エコシステムづくりに力を入れている各国の都市に負けていられない、それに匹敵するような都市を選定し、政府として応援しましょうというものです(石井)

John

石井先生が携わった大きな施策の1つに、「Beyond Limits. Unlock Our Potential~世界に伍するスタートアップ・エコシステム拠点形成戦略~」がありますね。2020年7月に、グローバル拠点都市として「スタートアップ・エコシステム 東京コンソーシアム (東京都、川崎市、横浜市、和光市、つくば市、茨城県等)等」「Central Japan Startup Ecosystem Consortium (愛知県、名古屋市、浜松市等)」「大阪・京都・ひょうご神戸コンソーシアム (大阪市、京都市、神戸市等)」「福岡スタートアップ・コンソーシアム (福岡市等)」の4拠点、推進拠点都市として「札幌・北海道スタートアップ・エコシステム推進協議会 (札幌市等)」「仙台スタートアップ・エコシステム推進協議会 (仙台市等)」「広島地域イノベーション戦略推進会議 (広島県等)」「北九州市SDGsスタートアップエコシステムコンソーシアム (北九州市等)」の4拠点が選定されました。
この施策は、世界のユニコーンの約7割が、シリコンバレーを始め、ニューヨーク、イスラエルなどの都市圏から出てきていることも踏まえたものだと思いますが、どのような基準で8拠点を選定されたのでしょうか?

石井

ユニコーンの約7割が都市圏から生まれているのは、都市圏にイノベーティブな人材が集まりやすいからです。一定のポテンシャルのある都市に、とてもイノベーティブな人たちが集まってチャレンジをして、スタートアップがどんどん生まれていき、ユニコーンに成長する。そのようなエコシステムをつくっていく動きが、シリコンバレーに続いて、ニューヨーク、パリ、ベルリン、ロンドン、北京、上海といったところで出始めています。
拠点都市の選定の元々の発想は、日本もスタートアップ・エコシステムづくりに力を入れている各国の都市に負けていられない、それに匹敵するような都市を選定し、政府として応援しましょうというものです。

ですから、都市をたくさん選んでも仕方ないので、当初は2カ所か3カ所の都市を想定して募集を始めました。ところが30くらいの都市から応募があり、首長の方々も積極的にアピールされ、プランの提案競争になったのです。
そうはいっても3カ所程度に絞らないといけないので、外部の審査委員にも入ってもらいながら、まずは各都市のスタートアップの数やベンチャーキャピタルの投資規模、大学の研究者の数などのデータをベースにしながら採点をしました。それに加えて、各都市が今後どのようにエコシステム形成のための取り組みを進めていくのかというプランも採点しました。

結果としては、もちろんポテンシャルでいうと東京がダントツですから、東京が選ばれました。それから、高島宗一郎市長の下で2012年から「スタートアップ都市」を目指して活動してきた福岡市が、コミュニティーづくりを評価されて選定されました。
残りは、大阪、京都、名古屋の3都市が接戦になっていたのですが、「大阪・関西万博」も控えて関西圏を盛り上げようという機運が高まっていた大阪、京都、神戸の3都市が連携するということになったので、選定されました。
また、名古屋市も、大村秀章知事や河村たかし市長がスタートアップをオープンにやると打ち出すなど、ここ3〜5年で大きく変化してきました。そこで名古屋は外せない、ということになりました。さらに選定直前に、もともと起業が盛んな浜松市の鈴木康友市長が大村知事と直談判して、二都市が連携することになりました。

推進拠点都市の4都市は、行政が一生懸命スタートアップ支援に力を入れており、頑張る中堅都市も大事だということで選定しました。

John

浜松市は、私が大尊敬しており、親しくさせて頂いているスタンフォード大学の池野文昭先生が、浜松の魅力を国内外に広く発信することを使命とした親善大使「浜松市やらまいか大使」を2018年度に務めています。

石井

浜松市は池野先生の存在も大きいですね。浜松市の選定の理由は、鈴木市長と、ベンチャートライブというベンチャー起業家のコミュニティー、それから池野先生が「浜松市にコミットする」と主張されていたのも印象深く、「こういうキープレーヤーがいるのは大切だ」と私達も思いました。

5 日本の勝ち筋というのは、やはりディープテック系だと思っています(石井)

John

石井先生が携わったスタートアップ・エコシステムづくりで忘れてならないのが、J-Startupです。地域版は、北海道、東北、セントラル(中部)、関西、新潟まで広がっていますね。J-Startupについて教えてください。

石井

先ほどのスタートアップ・エコシステム拠点都市の選定では、ニューヨークやパリなどとの都市間競争の話をしました。それだけでなく、米国のGAFAや中国のBATなど、巨大なプラットフォーマーが世界を席巻している状況を踏まえると、日本にも世界で戦って勝てる企業をつくらないといけないということになるわけです。

本来、産業政策というのは、今後の成長が期待できたり、国にとって重要であったりする業種や分野にフォーカスして行うのが基本です。ですが、スタートアップの世界での競争を見ると、勝てる企業をつくるためには、企業単位にフォーカスすることが重要だと思っています。その考えに基づき、企業単位にフォーカスしてマーケティングをするために創設されたのがJ-Startupです。

J-Startupは経済産業省が世耕弘成大臣だった2018年に創設したのですが、世耕大臣の言葉を借りると、「えこひいきをしてでも世界に勝てる企業を作ろう」という考えなんです。スポーツの世界で、強化選手を選んで強化合宿をするようなイメージですね。これまで140社程度のJ-Startup企業を選んでいます。
すると、地方から、もっと地域の核となるようなスタートアップを支援したいとの要望が聞かれたので、現在は地域版にも取り組んでいるという状況です。

John

J-Startup企業に選ばれるのは、全体としてどのような業態の企業が多いのでしょうか? やはりディープテックの領域が多いのでしょうか?

石井

先ほど「世界で戦う」という話をしましたが、日本の勝ち筋というのは、やはりディープテック系だと思っています。残念ながら日本は、GAFAなどとのITプラットフォームを巡る戦いには勝てていないわけです。この戦いは欧米のほうが長けており、おそらく、日本はこれからも勝てないのではないかと思っています。
では、日本が欧米に勝てる分野は何かというと、テック系のプラットフォームだと思います。ITプラットフォームのように横への広がりはないものの、縦に深く広がっていくタイプのものです。その分野では、このプラットフォームを使わないとダメというような、テック系のプラットフォームを押さえていくことが、日本の勝ち筋だと思います。

1つの例が、ペプチドリームという会社です。創業から15年ほどで時価総額7000億円程度まで成長しています。彼らはファイザーやアストラゼネカと対等に共同研究の契約が結べます。なぜなら、「ペプチド創薬」の技術的な開発プラットフォームを持っているからです。
ペプチドリームのような事例をどんどん作っていくことが大事だと思います。ペプチドリームのようにバイオの分野の他に、バイオ以外の医療分野、素材の分野、ロボット系の分野、あるいは少し先になりますが量子コンピュータなどの分野ですね。こうした、今でも日本が強い分野を戦略分野として伸ばしていって、その分野ではこのプラットフォームを使わなければ成り立たないという戦略拠点を押さえるということが重要だと思います。

John

約140社のJ-Startup企業を見ても、ディープテックスタートアップの比率が高いですね。

石井

そうですね。時価総額だけを見てJ-Startup企業を選定していたら、このような選定にはなりません。選定された企業がディープテックに偏っているのは、日本としての勝ち筋を意識した政策意図によるものです。

John

日本でディープテックを育てていくメリットの1つには、英語がそこまで通じなくても、良いものであればグローバルに展開できるという要素もありますね。

石井

それはあります。IT系のプラットフォーム、つまりサービス系のプラットフォームは、言葉プラス仕組みづくりです。ですが、ディープテックであれば言葉は関係ないですし、圧倒的なパフォーマンスさえ実現すれば、それで勝てるわけです。あとは、その周辺の知的財産の戦略的な取得方法ということも大事になりますが、それさえできれば世界で勝つことができます。

John

石井先生は、ディープテックスタートアップがグローバルスケールしていくにあたり、どのような課題があるとお考えですか?

石井

とても悩ましいのは、ディープテックは成長するまでに時間がかかるということです。ハードであれば10年以上、15年もかかってしまいます。また、レイターステージになるにつれて、かかるお金の量はとても多くなります。
ですから、ペイシェントマネーと、さらにドンと出せるまとまったお金も必要になります。その問題をどうクリアするかは課題になります。

それともう1つの課題は、事業化していく動きが、まだまだ少ないということです。そのためには、大学の研究室からもっと芽が出てこないといけないですし、研究者の“手離れ”を早くするということも大事だと思います。

John

技術系の大学の研究室からディープテックのスタートアップがどんどん生まれてくることが、日本の経済の立て直しにもつながっていくというわけですね?

石井

そうです。東大や京大も大事ですが、地方大学にも「世界で随一」という技術を持っている研究室があります。そうしたところも含めて、事業化をしていく動きが加速するといいと思います。

John

そうした意味では、札幌や名古屋、福岡などの地方の証券取引所で早めに上場をして、資金を大量に投入できるようにしたり、エグジットしたりしていくことも、1つの手法ではないでしょうか。

石井

また、地方の有力企業がもっとスタートアップにエンジェル投資をするなど、地方の方々も一丸となって日本を盛り上げよう、世界に日本をアピールしようとする動きが出るといいと思います。

6 優秀な方が日本で起業されて、日本で上場できるという“ジャパンドリーム”が実現できたらいいですね(John)

John

大学発の研究室型スタートアップでは、留学生の活用も重要ではないでしょうか? 人数でいえば日本人よりも中国人やインドネシア人などの若手のPh.D.(博士)の方が多いわけですから、そういった方々にもっと日本の大学発の研究室型スタートアップに参加していただきたいです。

石井

留学生のスタートアップはとても大事だと思います。せっかく日本で勉強したのに、日本の外で起業するというのは、日本にとってももったいない話で、どんどん日本で起業してほしいと思います。
そのためにスタートアップビザ(外国人起業活動促進事業)制度を開始しました。同事業に認定された地方公共団体は、1年以内に起業する見込みがある外国人に対して、最長1年間、「特定活動」としての在留資格を認めることができます。従来は留学生が学生ビザから経営者ビザに移行するためには、一度母国に帰国しなければいけませんでしたが、この制度を活用することで、1年間シームレスで起業の準備ができるようになりました。
福岡市や神戸市、東京都渋谷区などではこの制度を使ってもらい、日本で起業したりスタートアップで働いてもらえたりするといいと考えています。

John

優秀な方が日本で起業されて、日本で上場できるという“ジャパンドリーム”が実現できたらいいですね!

石井

アジアの優秀な人材がせっかく日本に留学しても、そのまま日本に滞在しないのはもったいないことです。今はコロナ禍の問題がありますが、将来的には、世界中から優秀な人材がどんどん日本に集まって増えればいいと思います。

John

2021年3月には、台湾のAppier Group(エイピアグループ)というAIを活用したマーケティングサービス会社が東証マザーズに上場しました。100億円近い売り上げのあるグローバルスケールした企業が日本で上場してくれたわけです。もっと多くの海外企業が日本で上場して、日本の投資家も海外の投資家も日本に増えていくという流れが生まれると良いと思っています。

石井

そうですね。東京証券取引所でも、海外から企業を呼びたいという話を聞いたことがあります。どんどん来てもらいたいですね。

John

最後に、人生の全てをかけて日本のスタートアップや中小企業の応援をされてきた石井先生にとって、イノベーションを起こすための哲学とは何か、お聞きかせください。

石井

哲学というほど大それたものではないのですが、とにかく挑戦することと、挑戦を応援することが、とても大事だと思います。自分自身も挑戦するし、周りも挑戦する。新しいことにどんどん挑戦して、挑戦することが面白いことだと感じられる、そんな流れを増やしていきたいですね。
挑戦する中で、上手くいかないこともあるでしょうが「まあいいじゃないですか」と次へ進む。それを世の中みんなでやっていくということが大事だと思います。

理想論で言うと、挑戦した人が成功する、そして次の挑戦者をどんどん応援する。そのようなサイクルが回ることがとても大事だと思います。

John

私も、誰もが挑戦でき、頑張る人が応援され、互いに応援し合える社会こそが、真のエコシステムだと思っています。挑戦者を応援するということは、共に同じ夢を見ることであり、未来を作る仲間になるということです。より良い世界を作るために挑戦することを尊いと感じる人々が日本にもっと増えたら嬉しいですし、私自身も挑戦し続け、挑戦者を全力で応援したいと思います。

石井

社会として挑戦する人を応援して、成功した人を賛えるということは、すごく大切ですよね。挑戦した人は応援され、成功したら賛えられ、成功した人は後輩を育成する。そんな動きが自然になってくるといいと思います。

John

日本をより良い国にするために第一線でリードされてきた石井先生にお話を伺うことができて、大変勉強になりました。

石井先生、本日はお忙しい中、貴重なお時間をいただき、愛りがとうございました。

石井氏のイノベーションフィロソフィーを示した画像です

以上

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消費生活用製品安全法の概要

書いてあること

  • 主な読者:消費生活用製品の製造・輸入、または販売を行う事業者
  • 課題:消費生活用製品安全法について押さえておきたい
  • 解決策:「PSCマーク制度」「製品事故情報報告・公表制度」「長期使用製品安全点検・表示制度」について把握し、製品事故や危害拡大の防止を図る

1 消費生活用製品安全法(消安法)とは

消費生活用製品安全法(消安法)は、消費生活用製品により起こり得るけが、やけど、死亡などの事故の発生を未然に防ぎ、消費者の安全と利益を保護することを目的として制定された法律です。

消費生活用製品とは、家庭用電気製品をはじめ、一般消費者の生活の用に供される目的で、市場で一般消費者に販売されている製品のほとんどを指すものとされます(船舶、消火器具など、食品、毒物・劇物、自動車・原動機付自転車などの道路運送車両、高圧ガス容器、医薬品・医薬部外品・化粧品・医療器具など、他の法令で個別に安全規制が図られている製品については除外)。

この記事では、消費生活用製品の製造・輸入、または販売を行う事業者の方向けに、消安法の柱である「PSCマーク制度」「製品事故情報報告・公表制度」「長期使用製品安全点検・表示制度」の3つの制度について紹介します。

2 PSCマーク制度

消費生活用製品の中でも、消費者の生命・身体に対して特に危害を及ぼす恐れがある「特定製品」について、国が定めた技術基準に適合していることを示すPSCマークの表示を義務付け、PSCマークのない製品の販売や販売目的の陳列を規制する制度です。

規制対象となる「特定製品」は、家庭用の圧力鍋および圧力釜、乗車用ヘルメット、乳幼児用ベッド、登山用ロープ、携帯用レーザー応用装置、浴槽用温水循環器、石油給湯機、石油風呂釜、石油ストーブ、ライターの10製品です。

特定製品の製造または輸入を行う事業者は、事業の届け出、自主検査による技術基準への適合の確認、検査記録の作成・保存などの義務を履行したとき、製品に○囲みのPSCマークを付すことができます。

また、特定製品のうち、乳幼児用ベッド、携帯用レーザー応用装置、浴槽用温水循環器、ライターの4製品は、特別特定製品として、自主検査に加え、登録検査機関による適合性検査が義務付けられています。特別特定製品の製造または輸入を行う事業者は、自主検査記録の作成・保存、登録検査機関による適合性検査への合格など義務を履行したとき、製品に◇囲みのPSCマークを付すことができます。

PSCマークのない危険な製品が市中に出回ったときは、消費者庁は製造・輸入または販売を行う事業者に回収などの措置を命ずることがあります。

3 製品事故情報報告・公表制度

消費生活用製品の製造または輸入を行う事業者に対して、重大製品事故が生じたことを知ったとき、10日以内に事故の発生日、概要などについて消費者庁に報告することを義務付ける制度です。

重大製品事故とは、消費生活用製品の使用に伴い発生した事故で、死亡事故、一酸化炭素中毒事故、30日以上の治療を要した事故、火災、後遺障害事故が該当します。

消費者庁は、重大製品事故による危害の発生および拡大を防止するため必要と認めるときには、製品の名称・型式、事故の内容などを迅速に公表します。

4 長期使用製品安全点検・表示制度

1)長期使用製品安全点検制度

経年劣化によって火災や死亡事故などを起こす恐れがある「特定保守製品」の製造または輸入を行う事業者に対して、設計上の標準使用期間、点検期間、点検の要請を容易にするための問い合わせ連絡先などの表示を義務付ける制度です。「特定保守製品」の製造または輸入を行う事業者が、製品の所有者に登録してもらい、設計標準使用期間が終わるころに点検の通知をして、所有者の依頼を受けて点検を実施し、事故の防止を図る仕組みです。

規制対象となる「特定保守製品」は、屋内式ガス瞬間湯沸器(都市ガス用・LPガス用)、屋内式ガスバーナー付風呂釜(都市ガス用・LPガス用)、石油給湯機、密閉燃焼式石油温風暖房機、ビルトイン式電気食器洗機、石油風呂釜、浴室用電気乾燥機の9品目です。

2)長期使用製品安全表示制度

「特定保守製品」ではないものの、長期にわたって使用され経年劣化による事故が多い製品の製造または輸入を行う事業者に対して、製品に設計上の標準使用期間と経年劣化に関する注意喚起などの表示を義務付ける制度です。

規制対象となる製品は、扇風機、エアコン、換気扇、洗濯機(洗濯乾燥機を除く)、ブラウン管テレビの5品目です。

5 参考

1)関係法令、制度全般について知りたい方に

■経済産業省「消費生活用製品安全法」■
https://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/shouan/

実務レベルのガイドブック「消費生活用製品安全法 法令業務実施ガイド」の他、問い合わせ窓口となる経済産業局の情報も掲載されています。

2)製品事故情報報告・公表制度について詳しく知りたい方に

■消費者庁「消費者安全」■
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/

事故情報の集約等 > 消費生活用製品安全法のページに、制度の解説書「消費生活用製品安全法に基づく製品事故情報報告・公表制度の解説」の他、重大製品事故発生時の報告方法などが掲載されています。

3)具体的な製品事故情報・リコール情報について知りたい方に

■製品評価技術基盤機構(NITE)「製品事故情報・リコール情報」■
https://www.nite.go.jp/jiko/jikojohou/

NITEは、消費生活用製品等に関する事故情報の収集を行い、事故原因を調査・究明し、その結果を公表することによって、製品事故の再発・未然防止を図っています。

以上(2021年7月)

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画像:pexels

インターンシップを絶対実施したほうがいいたったひとつの理由/超現実的インターンシップ主義〜手間をかけずに成功させる導入のノウハウ(1)

現在の新卒採用市場において、企業にとっても学生にとってもインターンシップが「活動の起点」になってきました。一方で、インターンシップの実施には負荷がかかることもあって、これまで導入をためらう企業も少なくありませんでした。人事担当を専任で置くことさえままならない中小企業においては、なおのことハードルの高い取り組みでもあります。
「何から手を付けていいかわからない…」「できるだけ手をかけずに実施するには…」「せっかくやるなら結果ださないと…」。導入したいのはやまやまだが、人もいないし知恵もない。そんな前提があるからには、できるだけ省エネで最大限の効果を得る。そんなノウハウでないと現実味がありません。

本連載では、はじめてインターンシップに着手しようという中小企業の視点に立って、「超現実的なインターンシップの導入ノウハウ」について解説していきます。第1回の本稿では、読者の皆様が「手間はかかるけどインターンシップやろう!」と腰をあげる気になるような“絶対実施したほうがいい理由”について、筆者の実体験も交えながらお伝えしていきます。

1 サマーインターンシーズン突入

6月1日、2023年卒採用のインターンシップサイトがグランドオープンしました。新卒採用媒体の2大サイトの掲載社数は、初日の時点でのべ1万2000社を超えています。登録学生数も各々のサイトで、前年から約8割増え30万人を超えました。昨年度は新型コロナウイルスの影響によって会員登録が思ったように進まなかったのですが、コロナ禍2年目となる本年度に関しては、混乱も少なく前年よりも大きく増加した格好です。

インターンシップは大学3年生の夏から翌年の3月頃にかけて行われることがほとんどです。スケジュールや期間は企業によって異なりますが、概ね6月から募集がはじまり7月~9月中旬に行われるサマーインターン、10月~12月に行われる秋冬インターンという2つの山があります。従来は、サマーインターン=企業研究、秋冬インターン=採用の前哨戦という位置づけだったのが、昨今では、サマーインターンから採用に直結するという流れも出てきました。

そういった観点でいけば、まさに今はじまろうとしているサマーインターンから実施するのが王道です。しかし、この時点から大学3年生と接触し、つながりを保ちながら採用につなげていくのは、マンパワー的に相当な体力を要します。中小企業にとっては、今から準備をはじめて秋冬インターンを実施するというのが現実的な選択肢といえるでしょう。

2 なぜインターンシップが就活に直結するようになったのか

2023年卒の就活は、2022年の3月に採用情報が解禁され、6月から本格的に書類選考や面接がスタートする予定となっています。2022年と同様のスケジュールとなった背景には、経済状況の悪化に伴う採用活動への影響が生じる可能性を考慮したことが挙げられます。

このルール自体は2016年卒の新卒採用から導入されました(※導入当初は8月に採用面接解禁、2017年卒から2カ月前倒し)。ちなみに経団連は企業の就職・採用活動ルールを定めた「倫理憲章」の名称を、このタイミングから「指針」に変更しています。

それまでのルールでは、採用広報など実質的な活動の開始は大学3年生の12月1日とされていました。当時の安倍政権が経団連に、大学生が勉強に集中できる期間を長く確保するために活動時期を繰り下げるよう検討を求め、3カ月遅らせる決定が下されたのです。
この議論とともに、インターンシップの実施率を高めようという動きも進みました。企業の採用選考期間は短縮されることを受け、1DAYインターンシップやインターンからの採用を認める流れができはじめたのです。

3 新卒一括採用のはじまりは、なんと明治時代

さて、ここから少し歴史の話におつきあいください。
「就職協定」のはじまりは1953年。戦後復興が進み、朝鮮特需を皮切りに好景気を迎えたことで、就職の売り手市場化が加速しました。これを受け採用選考が早期化していく中、現在の文部科学省が教育・財界関係者を集めて懇親会を開き「採用選考の推薦開始を卒業年度の10月1日以降とする」と決定。あまりに加熱する流れを抑制しようという動きでした。この取り決めが「就職協定」の始まりになります。

そもそも新卒一括採用や協定的なルールは、実は戦後にはじまったのではありません。その歴史はなんと明治時代にまで遡ります。海外事業の拡大を機に旧財閥系企業を中心に学生の採用を活発化させたことが、その端緒でした。
この時代は、大学卒業後に入社試験が実施されていたのですが、人手不足から売り手市場になるにつれて、多くの企業が学生と早いうちから接触を図りたいと、学校卒業前に選考が開始されるようになります。第一次世界大戦後の世界恐慌で一気に買い手市場になると、企業は厳選採用に舵を切るものの、優秀な学生を囲うために選抜試験の開始時期が早期化されていきました。
その後、大手銀行などの呼びかけによって、「大卒学生の採用選考は『卒業後』に行うこととする」という協定が結ばれます。しかしその翌年には、もう協定加盟企業も卒業前の選考開始が目立ちはじめ、「選考開始時期を卒業年度の1月以降とする」と協定が緩み、早期選考の動きは止まらず、協定は破棄されることになりました。

4 繰り返されてきた歴史の本質

なぜ、新卒採用の歴史を振り返ってきたのか。それはこの歴史の中に、新卒一括採用におけるKSF(キーサクセスファクター/主要成功要因)が見てとれると思ったからです。新卒採用をめぐる紆余曲折は、明治の時代から令和に至る現在まで見事に、そして残念なくらい同じように繰り返されています。ここまで同じような議論が繰り返されてしまうということは、「新卒一括採用システム」を成立させる上での構造的な本質が宿っているからに他なりません。
それは以下の4点です。

  • 新卒一括採用というシステムは、企業にとって合理的な機能を果たしてきたこと
  • とはいえ、いい人材を確保するにはいち早く採用をはじめたいという力学が働くこと
  • その反作用として、抜け駆けを防止するルールが必要になってしまうこと
  • そのルールが建前的なものであるがゆえ紳士協定にとどまり、結局は破綻してしまうこと

一括で採用するのは企業にとって都合がいいからです。しかしその環境下で、優秀な人材を採用するには「早く会うこと」が最も有効です。優秀な人材を囲い込みたいという思惑が大きければ、どれだけ規制をしようが「我先に」という行動に歯止めはかかりません。

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5 インターンシップを実施したほうがいい理由

いち早く学生と接触する。それが新卒採用における最重要なセオリーであることを、歴史が教えてくれています。そしてこのセオリーは、採用強者といえない企業にとって大きな武器になります。知名度が高い、規模が大きいといった企業の魅力を凌駕するには、とにかく採用したい学生にいちばん先に唾をつけておくこと。つまり中小企業が採用のジャイアントキリングを起こすためには、大手よりも先に学生と会うことが必須条件だということです。
だからインターンシップなのです。インターンシップを絶対実施したほうがいい理由とは、“インターンシップが学生と早期接触できるまたとない機会である”という極めてシンプルなポイントに尽きます。

ある人材サービス企業が、就活に臨む学生の思考や行動を調べたところ、

  • 学生は、興味を持った企業のWEBコンテンツをよくみて研究している
  • 企業の思いに共感すれば、学生は企業規模に関係なく会いたいと思っている
  • ただし、中小零細企業の場合は、できるだけ早い段階で会いたいと思っている

という傾向が明らかになっています。

就活の初期段階において、学生は業界や企業を絞り込む上でも、幅広く企業と接触したいと考えています。このように学生の志向からも早期接触は合理的だということです。そのタイミングでインパクトを残す、共感を得る。そうすれば勝機は広がります。

6 最初に自分を見込んでくれたインパクト

学生と早く会う必要性について力説する背景には、筆者の2つの実体験も大きく影響しています。1つ目は自分がリクルートに入社を決めた時の体験、2つ目は、そのリクルートに入社して自分自身が採用担当として働いていた時の体験です。

筆者が就活をしていたのは1987年。バブル期が到来しつつあって新卒採用は「超売り手市場」の状況でした。ちょうどこの年に就職協定は微調整され「企業説明会開始8月20日、会社訪問開始9月5日、内定開始10月15日」となっていました。
今でこそ上場を果たし大きな企業になったリクルートも、当時はまさにベンチャー企業で、自分は他に行きたい業界がありました。しかし結局は、リクルートに入社したのです。それは内定をもらったのがいちばん早かったということが大きく影響しています。
確か内定をもらったのは6月の中旬でした。4月に非公式に接触して3回くらい面談してアッという間に決まりました。説明会が始まるのが8月と聞いていた学生の立場からすると、狐につままれたというか、「え、こんな簡単でいいの?」という感じでした。
その後、自分の志望する業界を何社か受け、いくつか内定もいただきました。この会社に入りたいという企業からの内定もいただけたのですが、最初に自分を見込んでくれたインパクトが勝りました。内定までのスピード感に熱量を感じ、内定後も「他の企業を見てきていいよ」というリクルーターの発言に懐の深さを感じたことも、大きい要因となりました。

7 リクルートが教えてくれたこと

入社したら、いきなり採用部署に配属されました。今度は自分が学生を口説くほうです。筆者は、この時に「いい人材を採用するにはとことんエネルギーをかけるのだ」ということを徹底的に教え込まれました。今でいうGoogleの採用に関する考え方と似ています。
そして採用に対するエネルギーの大きな部分を、とにかく学生と早く会うことに向けていました。季節労働色の強い新卒採用部署であっても、リクルートでは1年中忙しく学生と会っていた記憶があります。
当時、最初に接触するのは大学3年の秋でした。自分が4月に新人として配属された時点で、すでに目をつけている学生がゴロゴロいたのです。もちろん非公式な接触という建前ですが、学生もなんとなく状況は飲み込めている状況でした。これって、まさしく今のインターンシップです。リクルートは30年以上前から、こうした採用で優秀な学生にアプローチしていたのです。

もちろんリクルートのようなパワープレイ的採用を強要しようというのではありません。あそこまで途轍もないパワーをかけられる企業は、大手であっても稀有でしょう。ここでお伝えしたいのは、あくまで新卒採用において学生と早く会うことが重要であるというエッセンスです。そして早期接触には、いまやインターンシップが欠かせない。むしろ中小企業にこそ必要な取り組みである。改めてその事実を直視してください。
さあ今年こそ、インターンシップやりましょう。今からでも遅くはありません。

以上

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慣れていない人も「プレゼンの達人」に近づけるプレゼンのコツ

書いてあること

  • 主な読者:プレゼンに慣れていないが、プレゼンが上手になりたい人
  • 課題:上手にプレゼンをするコツが分からない
  • 解決策:ストーリーを明確にし、話す順番を心得る。情熱的に振る舞い、少し遊びを入れる

1 プレゼンに必要なのはストーリー

プレゼンテーション(以下「プレゼン」)はビジネスシーンに欠かせないものです。特にオンラインだと、「1対多」でコミュニケーションをとるため、正式な「プレゼン」の場でなくても、ちょっとした説明でプレゼンの能力が求められます。

プレゼンで大切なのは、

ストーリー、話す順番(構成)、情熱、遊び

です。この4つが備わっていれば、そうそう失敗することはないでしょう。そこで、この記事では、慣れていない人もプレゼンの達人に近づける「プレゼンのコツ」をお伝えします。

2 何といってもストーリー

プレゼンで最も重要なのは、「伝えたいこと」を明確にし、ストーリーを練ることです。進め方は次の通りです。

  • 頭の中でストーリーを整理
  • 紙に簡単に流れを書いてみる
  • 声に出して説明してみる
  • 支離滅裂なところや、強引な展開のところを修正する
  • 1~4を繰り返す

となります。

また、プレゼンに慣れていない人はスライドに余白があることを恐れ、たくさんの情報を盛り込もうとしますが、これは間違いです。余白を恐れずに、

1枚のスライドに、伝えたいこと1つ

と徹底しましょう。スライドの中央にメッセージがたった一つある場合、聞き手は「大切なポイントなのだな」と認識してくれます。

ストーリーを練るときの注意点は次の通りです。

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3 マスターしたい3つの話す順番(構成)

1)SDSとは

SDSは、

1.Summary(全体要約)→2.Details(詳細説明)→3.Summary(全体要約)

の流れでプレゼンを進めます。要約をプレゼンの始めと終わりに伝えることで、比較的短い時間で、聞き手に要点を伝えることができます。

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2)PREPとは

PREPは、

1.Point(要点)→2.Reason(理由)→3.Example(具体例)→4.Point(要点)

の流れでプレゼンを進めます。要点(最も伝えたいこと)をプレゼンの始めと終わりに伝えるのはSDSと似ていますが、3.Exampleのように、具体例を織り込むことで、聞き手の共感を得て、プレゼン内容を「自分たちのこと」と捉えてもらいやすくなります。

簡潔にまとめるSDSと対象的に、話の内容で共感を得ることが狙いの一つでもあるので、身近な例を分かりやすく伝えることがPREPのポイントです。具体例の内容にもよりますが、SDSよりもプレゼンの時間は長くなります。

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3)提核背補とは

提核背補は、

1.提案→2.核心→3.背景→4.補足

の流れでプレゼンを進めます。冒頭でも紹介したように、プレゼンを行うのは正式なプレゼンの場に限りません。商談中に、突然、「軽くサービスを説明してもらえますか?」と求められることもあり、この説明も立派なプレゼンとなります。

限られた時間で、相手を飽きさせずに話すためには、提核背補が必要です。具体的には次のように内容を組み立てます。

  • 提案:なぜ、相手があなたのプレゼンを聞く必要があるのかを明確に提案
  • 核心:提案の核心として、最も大きいメリットやデメリットを説明
  • 背景:提案をした社会的な背景を説明
  • 補足:補足があれば説明。ないようであれば、プレゼンを打ち切る

提核背補は、話すときはもちろん、資料を作る際にも役立ちます。

4 情熱的に振る舞う

1)身ぶり手ぶりはオーバー気味に

話し手が聞き手に与える印象もプレゼンの結果に大きく影響します。印象は、態度・身ぶり・手ぶり・姿勢・外見・表情・視線・声・服装などから判断されるため、特に次の点に注意しましょう。

  • 熱意ある態度で接する
  • ジェスチャーを効果的に使う
  • 背筋を真っすぐに伸ばす
  • 話の内容に表情を合わせる
  • 話し掛けるほうへ顔を向ける
  • 全員に目配りをし、特定の人ばかりを見ない
  • 大きな声でゆっくりと話す

2)プレゼン中は「大統領」になりきる

大勢の前でプレゼンする場合などは、「怖い」「恥ずかしい」と感じる人もいるでしょう。そのようなときは、アメリカ大統領などリーダーたちのスピーチをマネし、聴衆に語り掛けるようにするのもよいでしょう。視線は、会場の後方左側から始めて、アルファベットのZを描くように動かすと聞き手に好印象を与えます。悠然と構え、議会全体を見渡す外国のリーダーのように、ゆっくりと視線を移していくとよいでしょう。

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3)原稿に頼らず、自分の言葉で話す

原稿を準備するのは大切ですが、それを読むだけでは「魅力的なプレゼン」とは言えません。重要なポイントをしっかりと覚え、それ以外はアドリブでも話せるようにします。そうすることで、突然の事態にも対応できます。

また、「専門用語を多用せず、分かりやすい言葉を選ぶ」「自分自身が経験していることを話す」といった点も重要です。聞き手への気配りを示しつつ、経験を語ることでリアリティーも増します。

5 遊びを取り入れる

プレゼンでは、「笑いがとれたら一人前」とも言われます。これがなかなか難しいことなのですが、一つ言えるのは、

芸人でもない限り、あらかじめ仕込んだネタ(ギャグ)で笑いをとるのは難しい。自然と笑みがあふれるような和やかな場をつくることが大切

ということです。

場づくりのコツはいくつかあるのですが、代表的な方法は、

聞き手に質問したりして、巻き込むこと

です。聞き手を「聞くだけの受け身の存在」にしてしまうと、ほとんどリアクションがなくなってしまいます。ですので、聞き手を「聞くだけではなく、答える存在」とし、良い意味で「聞き手いじり」をします。芸人がする「客いじり」と同じです。

その際、話し手と聞き手で共通のフレーズがあると理想的です。例えば、話し手が「激辛料理が大好き」であれば、それを最初に宣言しておき、プレゼンの途中に「激辛料理」に関するネタをいくつか仕込んでおきます。「激辛料理」というキーワードが出てきたら、そこは反応するところという雰囲気が聞き手に生まれてきたら成功です。

最後に、「全くウケない」「無反応」に負けない勇気を持ってください。話し手にとっては相当ショックですが、聞き手は気にもとめていないことがほとんどなので大丈夫です。

6 「リモートプレゼン」は勝手が違う

リモートプレゼンは、相手が目の前にいないために相手の反応が分かりにくいのが大きな違いです。相手の反応をつかめないままプレゼンを進めると、聞き手が置いてきぼりになる可能性があります。

こうしたリスクを避けるため、聞き手に対してこまめに質問の有無を確認し、プレゼン中にも気軽に質問できるようにチャットでの質疑応答に対応することなどは効果的です。

また、プレゼン資料も、これまで以上にイラストや図表、場合によっては説明動画などを追加し、聞き手の注意を引きつけることなども重要になるでしょう。

以上(2021年7月)

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画像:unsplash

ウィズ・コロナ時代を勝ち抜くための組織変革の方向性

書いてあること

  • 主な読者:「ウィズ・コロナ」の環境で戦える組織作りをしたい経営者
  • 課題:リモートワークを特別ではなく、当たり前のものとして定着させたい
  • 解決策:無駄なコミュニケーションや悪平等をやめ、できる社員が働きやすい環境を整える

1 「ウィズ・コロナ」を勝ち抜くための取り組みとは?

新型コロナウイルス感染症の影響で始まった“半強制リモートワーク”ですが、その後も取り組みを継続する会社は多くあり、足元では56.4%が実施しています(東京都「テレワーク導入率調査結果をお知らせします!3月後半の調査結果」2021年4月2日)。

リモートワークをしている経営者が見据えるのは、ウィズ・コロナに通用する組織作りです。そこで本稿でご提案したいのは、

  • 無駄なコミュニケーションを取らない
  • 「自前主義」を徹底する

ことです。意外かもしれませんが、

ウィズ・コロナで必要なマネジメントは、異能の者を束ねて機能させる「オーケストレーション」

であり、先の2つの取り組みを行うことで実現できます。その取り組みをご提案していきます。

2 無駄なコミュニケーション不要、外部の知見を吸収し尽くす

1)「できる/できない」のシンプルな違いから目をそらさない

リモートワークで成果を上げられる社員と、上げられない問題社員(以下、便宜上の表現として「問題社員」)の差は、「できる/できない」という非常にシンプルなものです。

  • 自分で考えて、仕事を「作れる/作れない(指示待ち)」
  • 実際にその仕事が「できる/できない」
  • 自分で時間管理が「できる/できない」
  • 自分からきめ細かいコミュニケーションが「取れる/取れない」
  • 自分の足りない部分を知り、自ら勉強が「できる/できない」

「できる/できない」の差はリモートワークが始まる前からありました。しかし、問題社員でも、出社すれば上司の指示や同僚のフォローが受けられるため“げたを履いた状態”になっていました。ところが、リモートワークが始まってこうしたフォローが受けにくくなり、問題社員の本来の実力が露呈したのです。

ここで、「問題社員のフォローを強化して何とかしよう」とすると、“組織全体の戦闘力”が低下しかねません。自分で考えて動けない問題社員は指示やフォローを待つだけですが、リモートワークにおいてこのコミュニケーションコストは、出社時の比にならないくらい大きいものです。それなのに、できる社員が出社時の何倍もの時間をかけて問題社員のフォローをすると、本来、できる社員が行うべき仕事に時間をかけられなくなり、機会損失が発生します。

2)無駄なコミュニケーションを取らない

リモートワークが定着した組織では、「仕事の進め方を確認する会議」のような、従来は不可欠と考えられてきたコミュニケーションが、最低限しか実現できません。対面で丁寧に説明したとしても、仕事の進め方には認識の相違が生じるもので、いかにオンラインツールを駆使しても、非対面でこまごまとした仕事の進め方を理解し合うのは難しいことなのです。

ですので、コミュニケーションの取り方を工夫して、何とか仕事の進め方を理解し合うのではなく、マニュアルを作成して、コミュニケーションを取らなくてもよい体制にするように考え方を変えるべきです。最近のマニュアル作成ツールでは、写真や動画を使ったマニュアルが簡単に作れます。

会議についても同様です。一応参加はしているが内容を理解しておらず、また理解するつもりもない。ビデオをオフにして会議を休憩時間のように捉えている問題社員は、会議に参加させる必要はありません。これまでの悪平等を撤廃し、やる気のある社員だけが会議に参加するべきです。

なお、誤解のないように補足しますが、

人と人との関係を良くするためのコミュニケーションはたくさん取るべき

です。例えば、“バーチャル雑談ルーム”などは、ぜひとも設置したいものです。

3)自前主義を徹底する

多くの中小企業は、リソースやコストなどの問題から、新しいことを始める際も既存社員で対応します。その結果、「広く浅く」対応できる器用な社員が優遇されますが、我流には限界があるため専門性が高まりません。また、業務の属人化が進み、“筋の悪いブラックボックス”も生まれます。

先に、「無駄なコミュニケーションを減らすためのマニュアル作成」を提案しましたが、これによって自社の社員が行うべき業務と、そうでない業務とが峻別(しゅんべつ)されます。

単なる作業は問題社員に任せますが、秘書代行サービスなどを使って外注することもできます。一方、将来の事業展開に必要で、自社の社員がやるべき業務だが専門性がなくて対応できない場合は、プロ人材の派遣サービスなどを使って専門知識に積極的に触れます。社員の成長スピードを速めるためにも、実務を通じてプロ人材から学び、そのノウハウを徹底的に吸収することに注力するのです。

これはつまり、必要な事業を早期に自社内で行えるようにすることであり、「自前主義」の徹底であるといえます。自社にコアとなる事業が生まれるからこそ、他社との提携も進み、実力のある人材も集まってきます。

3 労働条件の変更は慎重に行う

ここまで紹介してきたことを実行すると、成果主義・役割主義が推し進められます。これはつまり、「何ができるか」によって社員を評価する体制に移行するということです。

一方、多くの日本企業は日本式の能力主義を採用しており、「◯◯ができるはず」という基準で社員を評価しています。日本式の能力主義から成果主義・役割主義に移行すれば、社員の労働条件は変わります。できる社員はより厚遇され、問題社員にとっては厳しい状況になるかもしれません。

労働条件の変更は、これまで以上に慎重に行いましょう。リモートワークだからといって、労働法の解釈が緩和されるわけではありません。それに、対象となる問題社員とのコミュニケーションが取りにくい状況だと、意図せぬトラブルが発生するリスクが高まります。オンラインで賃下げなど労働条件の引き下げを伝えなければならない場合、複数人が参加する、記録を取るといったオフラインの際の基本を徹底します。

また、労働条件の変更では、就業規則や賃金規程、人事考課表などの見直しが必要です。後々のトラブルを防ぐためにも、労働法を遵守して周知しましょう。

4 止める“コロナ離職”と、少し考えたほうがよい“コロナ離職”

いわゆる“コロナ離職”の問題についても触れておきます。コロナ離職には止めるべきものと、少し考えたほうがよいものとがあります。

止めたほうがよいのは、できる社員が転職活動をし、実際に離職してしまうケースです。ただし、人材流動化の流れを止めることはできないため、自社で何とか囲い込もうとするよりも、副業・兼業を認めて引き続きその社員の力を借りつつ、労働市場に出てきた別の人材を獲得したほうが得策かもしれません。

少し考えたほうがよいのは、「自分のやりたいことを見失った」「環境の変化についていけなくなった」などの理由によるコロナ離職です。リモートワークにおける経営者の悩みは、目に見えない企業文化などの価値をいかに浸透・維持するかですが、そもそもこうした理由で退職する社員は、少なくともその時点で企業文化を受け入れていません。であれば、ここで雇用関係を終了したほうが双方のためになるという考え方もあるのです。

5 オーケストレーションが求められる

これまで見てきたように、ウィズ・コロナで通用する組織を作るためには、既存制度をゼロベースで見直していく必要があります。そして、その核心は、属性や能力などが違う異能の者を集め、事業が自動的に動いていく仕組みを整える「オーケストレーション」のマネジメントです。そのために、経営者は以下の視点を持って組織作りを進めましょう。

  • 問題社員との関係性を見直す(悪平等を断ち切る)
  • 外部コストを恐れずに業務委託を利用する(雇用しなくても、労働力は得られる)
  • 事業のオペレーションを見直し、仕組み化を進める(しがらみを断ち切り、徹底的に無駄をなくす。仕組み化には、若手の意見を取り入れる)

これらを進める上で、もう一つ意識しておきたいのが若手の登用です。リモートワークでは、若手を教育する時間が取りにくくなるという問題があります。いかにオンライン教育の仕組みを作っても、リアルでしか感じられないもの、伝えられないものがあります。経営者は意識的に若手を教育し、登用することが大事です。結局、自社の社員で、経営者の考えを理解している元気で優秀な若手が、会社の発展のために不可欠であることを忘れてはなりません。

6 信頼関係のない社員とその家族にご用心?

補足ですが、リモートワークでは社員の家族への配慮も忘れてはなりません。在宅勤務の場合、社員の仕事の様子を家族は見聞きしています。イヤホンなどを使っていなければ、社員の家族が仕事上の会話を全て聞くことができます。経営者や上司と、前提となる関係性がない家族は、自分の家族が上司から叱責されたり、残業を命じられたりすると、ハラスメントであると勘違いする恐れがあります。

社員との関係がしっかりとできていれば、社員自身が誤解であると家族に説明するでしょう。しかし、そうした信頼関係のない社員やその家族は“被害者意識”を膨らませていくかもしれません。リモートワークにおいて、信頼関係が築けていないと感じる社員とその家族は、新たな労務リスクになる恐れがあることを心得ておく必要があります。

リモートワークについては、次のコンテンツも参考になります。ぜひ、ご活用ください。

以上(2021年6月)

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画像:pixabay

ウィズ・コロナを勝ち抜く組織。リモートワークで成功するための3つのポイント

書いてあること

  • 主な読者:ウィズ・コロナを勝ち抜くために組織をバージョンアップしたい経営者
  • 課題:これまでの働き方では通用しないという危機感を社員にも持ってもらいたい
  • 解決策:「できる/できない」を基準に組織をつくり直す

1 リモート前提の組織にバージョンアップ

リモートワークを進めてきた経営者は、組織を次のステージに成長させることに余念がありません。働く場所を変えただけの表面的なものではなく、リモートワークでこそ、新しい価値をつくり出すことができる組織にバージョンアップです。「ウィズ・コロナ」で通用する組織に必要なことは何なのか?

以降で、そのために必要な3つのポイントを挙げます。各ポイントに関連するコンテンツも紹介していますので、ぜひ併せてお読みください。

2 組織:無駄なコミュニケーションを取らず、自前主義を貫く

ウィズ・コロナで通用する新しい組織では、雇用やマネジメントの考え方はシンプルで、「できる/できない」が基準となります。一見、とてもシビアに思えますが、社員一人ひとりの実力がつまびらかになっただけです。

社員へのアプローチも大きく変わります。マニュアルを作成してコミュニケーションのいらない仕組みをつくり、必要に応じて外部の力も借ります。制度も社員もゼロベースで見直すことになるのです。

  • 新しい組織では、社員の本当の「できる/できない」が明らかになる。経営者には、外部の力など異能の者を束ねる「オーケストレーション」が求められる

詳細は、下記コンテンツをお読みください。

3 人事考課:「できる/できない」を基準に、教育も充実させる

リモートワークでは、社員同士が離れた場所で働くため、上司の指示や同僚のフォローが手薄になります。「遅くまで真面目に頑張っていたから」といった理由で、上司が部下の能力をかさ上げして評価することもなくなるため、ある意味、評価はとても分かりやすくなります。「できる/できない」という「成果」が評価の基準です。

この基準があれば、社員の実力が分かるようになります。これはかなりシビアなようですが、組織全体の能力の底上げにつながります。実力を突き付けられた社員は、必死になるしかないからです。

  • 新しい組織では、評価の基準はもちろん「できる/できない」。自力で業務をこなすことができない社員には、厳しい評価システムとなる

詳細は、下記コンテンツをお読みください。

4 メンタルヘルス:リモートワークを継続できる環境をつくる

「できる/できない」という考え方がリモートワークの根本ではありますが、これを長期にわたって実行していくためには、社員が前向きにリモートワークに取り組める環境づくりが重要です。

顔を合わせる機会が少ないリモートワークだからこそ、社員同士が雑談できる場を設けたり、健康管理を促したりして、社員がメンタルヘルス不調(リモート疲れ)にならないようフォローしていくことが必要です。

  • リモートワークであっても、個々の社員と向き合い、支援していくというマネジメントの本質は変わらない

詳細は、下記コンテンツをお読みください。

以上(2021年6月)

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画像:pixta

知名度向上、新規開拓にもつながるピッチコンテスト。過去大会の動画にピッチのコツが満載/第3回スタ★アトピッチJapanにぜひご参加を

スタートアップや中小企業がピッチコンテストに参加すると、さまざまな効果が期待できます。例えば、「知名度が向上し、顧客が増える」「資金調達先や提携先となる相手が見つかる」「求職者から問い合わせがある」そして「一緒に働いているメンバーが誇りに感じる」などです。自分たちのビジネスモデルのブラッシュアップにもつながるでしょう。
ただし、ただ参加すればそれで効果があるわけではありません。ポイントは、

「どういうピッチコンテストに参加するか」「受賞を目指してどのような工夫をするか」

などです。
この記事では、ピッチコンテストの例として、日本経済新聞社主催の【スタ★アトピッチJapan】をご紹介します。無料でエントリーできますので、事業PRやビジネスモデルのブラッシュアップの場として、ぜひお役立てください。

1 スタ★アトピッチJapanとは

スタ★アトピッチJapanは、スタートアップやアトツギベンチャーによるピッチコンテストの全国大会で、2019年(第1回)から開催されています。

●スタ★アトピッチJapan
https://staatpitch.nikkei.co.jp/

スタートアップやアトツギベンチャーは、イノベーションを担う存在であり、

  • スタートアップやアトツギベンチャーが広く社会に認知され、飛躍するきっかけを提供する
  • スタートアップやアトツギベンチャーのロールモデルを輩出し、起業や事業承継といった社会的課題の解決を目指していく

という趣旨で開催されています。主催は日本経済新聞社で、大会趣旨に賛同するりそな銀行も3年連続で協賛しています。参加対象となるスタートアップやアトツギベンチャーの応募資格は次の通りです。

応募資格:
新規事業を立ち上げ、その成長に挑んでいるスタートアップやアトツギベンチャー

  • スタートアップ:創業10年程度の未上場のスタートアップ企業・団体の経営者
  • アトツギベンチャー:新規事業などに挑む家業のアトツギ経営者・候補者

第3回となる2021年は、8月31日(火)にエントリーが締め切られ、書類選考・審査を経た後、全国を8つに分けて行われるブロック大会、ブロック大会を勝ち上がった企業による決勝大会(2022年2月を予定)が開催されます。決勝大会では、グランプリなど各賞が選ばれる他、グランプリには副賞も授与される予定です。

●スタ★アトピッチJapan
https://staatpitch.nikkei.co.jp/

2 スタ★アトピッチJapanに参加する魅力やメリット

スタ★アトピッチJapanは、第1回は351社、第2回は406社と、年々参加企業が増えています。今後はさらに参加企業も増加し、よりメジャーなピッチコンテストになることでしょう。

これまでの大会参加者は、次のような理由でスタ★アトピッチJapanに参加しています。

第2回 スタ★アトピッチJapanへの参加理由の画像です

この他にもスタ★アトピッチJapanに参加するメリットはさまざまあります。

  • 日本経済新聞などメディアで大会の様子が取り上げられ、全国の読者に向けて企業名・事業内容などを広くアピールできる
  • 読者・審査員・協賛社・他の参加企業とのネットワーキング構築や、ビジネスマッチングに参加できる
  • 各種アワード受賞による、社員モチベーションの向上が期待できる
  • 事業内容を言語化することで、自社の目指すべき方向性の再確認や、ブラッシュアップに役立つ

大会公式ウェブサイトで公開されている過去大会の報告書では、グランプリ、準グランプリ受賞者による参加のメリットや、参加後の反響に関する声などが掲載されていますので、ご確認ください。

●スタ★アトピッチJapan
https://staatpitch.nikkei.co.jp/

3 過去大会の動画から学べるピッチのコツ

参加するだけでも自分たちのビジネスモデルをブラッシュアップできますし、そうそうたる審査員の方々(詳細は後述します)と出会うこともできますが、参加するからには、受賞を目指したいところです。

スタ★アトピッチJapanのウェブサイトには、過去大会のグランプリ、準グランプリなどのピッチの様子が動画で掲載されていますので、参考になるでしょう。特に注目したいのは、

  • ピッチの進め方(ストーリー)、話し方、使っているキーワード
  • ピッチで使っているスライド(資料)の特徴

です。

事例にもよりますが、過去大会の受賞者の動画からは、例えば次のようなことが学べます。

  • 一番大事かつ分かりやすいキーワードを、印象に残るように最初に伝えている
  • 伝えたいことを、分かりやすい言葉&短い文章で区切って話している
  • 一枚のスライドにつき、伝えたいこと、キーワードは一つにしている
  • スライドに記載しているキーワード、数字は大きなフォントサイズにしている

過去大会(第2回)のピッチ動画はこちらからご参照いただけます。

第2回 スタ★アトピッチJapanへの参加理由の画像ジです

4 スタ★アトピッチJapanの選考過程や応募資格

選考過程には7つのステップがあります。

選考過程の7つのステップの画像です

1)エントリー

エントリーページから応募します。大会公式ウェブサイトのトップページに「ENTRYはこちらから」の記載を目印にして、本社所在地を選択してお進みください。

選考過程の7つのステップの画像です

締め切りは、2021年8月31日(火)です。

応募資格は次の通りです。

新規事業を立ち上げ、その成長に挑んでいるスタートアップやアトツギベンチャー

  • スタートアップ:創業10年程度の未上場のスタートアップ企業・団体の経営者
  • アトツギベンチャー:新規事業などに挑む家業のアトツギ経営者・候補者

2)書類選考・審査

公開情報と応募書類をもとに、主催者・有識者で構成される選考委員が審査を行います。必要に応じて別途資料の提出や、適宜ヒアリングなどが行われる場合があります。応募書類は、次の通りです。

  • 事業内容・ビジネスモデル・事業ビジョンを示す事業計画書(書式自由、10ページ程度の5MB以内のPDFファイル)
  • 事業概要記入書(フォーマットはエントリー企業専用サイトよりダウンロード)

ご参考

第2回審査員の一覧を示した画像です

(出所:日本経済新聞社)

3)審査通過

書類選考の結果は、2021年9月下旬までに通知される予定です。書類選考を通過した企業を対象に、2021年10月上旬にブロック大会の説明会(後述します)が開催される予定です。

4)ブロック大会開催

書類選考を通過した企業は、2021年11月中に開催予定のブロック大会に進出します。ブロック大会では、全国を8ブロックに分け、ブロック大会進出企業や審査員などが参加するクローズド・ピッチが開催されます。ピッチの様子は事務局が動画を撮影します。
 ブロック大会は審査員が審査する他、撮影した動画が後日公開され、日経新聞の読者などが閲覧、投票できる仕組みになっています。

5)決勝大会進出企業決定

ブロック大会出場企業のうち審査員審査で、決勝大会に進出する企業を決定します。ブロック大会の開催の様子や結果は、随時ウェブサイトや日本経済新聞紙面にて随時発表されます。

6)決勝大会開催・7)全国グランプリほか入賞企業決定

決勝大会に進出した企業は、2022年2月に東京・日経ホールで開催予定のリアル・ピッチに参加します。
 決勝大会当日は会場内で審査員が各企業のピッチを審査し、グランプリをはじめとした入賞企業を決定します。

応募受付ページや、応募や審査に関する詳細などは大会公式ウェブサイトからご確認いただけます。

自社の成長の機会として、ぜひスタ★アトピッチJapanをお役立てください!

●スタ★アトピッチJapan
https://staatpitch.nikkei.co.jp/

※上記スケジュールについては、日程・形式などについて変更の可能性がございます。あらかじめご了承ください。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2021年7月27日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

【電子メールでのお問い合わせ先】
inquiry01@jim.jp

(株式会社日本情報マートが、皆様からのお問い合わせを承ります。なお、株式会社日本情報マートの会社概要は、ウェブサイト https://www.jim.jp/company/をご覧ください)

ご回答は平日午前10:00~18:00とさせていただいておりますので、ご了承ください。

海外の取引先の与信管理 貿易でのリスクを低減する3つの方策

書いてあること

  • 主な読者:商社などを通さず独自に貿易をしている、またはしようとしている企業の経営者
  • 課題:海外の取引先は訪問するのが容易でないので与信管理が難しい
  • 解決策:民間調査機関を活用する、信用状を発行してもらう、荷為替手形による決済を行う、ファクタリングや貿易保険を活用するなどしてリスクを減らす

1 日本の“当たり前”が通用しない海外の取引先の与信管理

与信管理で基本的かつ有効な方法といえるのは、実際に取引先を訪問することです。これにより、「動いていない生産ラインがある」「社内に活気がない」「来客がまばら」など取引先の様子が分かり、倒産などトラブルの兆候を見つけられる可能性が高くなるからです。コロナ禍において取引先を訪問するハードルは上がっているとはいえ、こちらが希望すれば実現できます。

しかし、クロスボーダー取引、つまり海外企業との取引ではそうはいきません。訪問しようにも、今は新型コロナウイルス感染症の拡大でそれが許されにくいからです。さらに、交通費や移動時間がかかるという根本的な問題もあります。

この他にも、クロスボーダー取引では、

  • 全般的な海外情報の不足
  • 言語やコミュニケーションの壁
  • 商習慣や文化の違い
  • カントリーリスク

といった課題があります。この記事では、これらの点を踏まえ、海外に所在する取引先と、商社などを通さず独自に貿易する際の与信管理について、リスクを低減する3つの方策を紹介します。

2 方策その1:幅広い情報収集、リスクを契約条件に織り込む

1)信用できる相手か?

信用できる相手であるかどうかの確認は、与信管理の基本です。一般的には、決算書を提出してもらったり、調査機関に企業調査を依頼したりして情報収集を行い、信用できるかどうか判断する材料にします。

情報収集の対象は貿易相手だけではありません。独自に貿易を行う場合、売り手(輸出者)・買い手(輸入者)だけでなく、運送業者、金融機関はもちろん、船積みや貿易関連の事務などを担当するフォワーダー、輸出入国の税関といったさまざまな主体が取引に関わります。このため、関係する幅広い取引先の情報収集が必要になります。

リスクを見極める際には、東京商工リサーチ「D&Bレポート(海外企業情報レポート)」、帝国データバンク「海外企業信用調査」、コファス・サービス・ジャパン「海外企業調査レポート」など、有力な調査機関による情報を活用することが考えられます。

■東京商工リサーチ■
https://www.tsr-net.co.jp/
■帝国データバンク■
https://www.tdb.co.jp/
■コファス・サービス・ジャパン■
https://www.coface.jp/

2)リスクの許容範囲を決め、契約書に反映させる

取引先から提出された書類の精査や、調査機関による企業調査の結果などを総合的に評価して、信用できる企業であると判断した場合であっても、リスクマネジメントが必要です。具体的には、取引で許容できるリスクの程度を決めておき、それを基にした支払い条件などを契約書で定めます。例えば、事前に取引金額の30%の代金支払いを確保したいのであれば、そうした条件で取引をします。

3 方策その2:特有の決済方法などを活用する

1)前提となる認識

貿易取引は国内取引に比べて代金の流れ・商品の流れ・書類(船積書類など)の流れが複雑で、手続きも煩雑になります。そのため、手続きの内容や必要な書類について熟知し、適切な貿易決済手段を選択することが大切になります。

貿易取引特有の決済方法は、以降で紹介するものも含めて、取引金融機関や売り手(輸出者)・買い手(輸入者)によって、利用が制限される場合があります。例えば、後述する「信用状が付く荷為替手形」は、信用状を発行する金融機関自体の信用度に問題がある場合、荷為替手形の買い取りを拒否されることがあります。

まずは、取引金融機関や専門家に相談した上で、自社に合った方法を選びましょう。なお、以降で紹介する内容は概要となるため、詳細については、別途確認をするようにしてください。

2)代金を前払いしてもらう

代金を前払いしてもらうことは、有効なリスク低減策です。買い手(輸入者)が代金を前払いする場合の貿易取引の主な流れは次の通りです。

画像1

ただし、信頼関係が構築されていない取引当初は、買い手(輸入者)に代金の全額前払いを受け入れてもらうことは困難でしょう。そのため、代金の一部の前払いなど、買い手(輸入者)に受け入れてもらえる提案が欠かせません。

3)信用状(L/C)を買い手(輸入者)の取引金融機関に発行してもらう

信用状(L/C)とは、

買い手(輸入者)の取引金融機関(以下「信用状発行銀行」)が発行する書面で、信用状発行銀行が信用状で定めた書類の提示を条件に支払いを確約するもの

です。通常は取引ごとに「発行」されますが、同一種類の物品の継続的な取引に利用できるもの(回転信用状)など、さまざまな種類があります。なお、買い手(輸入者)が信用状発行銀行に信用状を発行してもらうことを「開設」ということがありますが、この記事では便宜上「発行」で統一します。

買い手(輸入者)の信用リスクが高い、初めての取引で信頼関係が構築されていないなど、貿易取引に不安がある場合は、信用状を発行してもらい、確実に支払いを受けられるようにして、与信管理を万全に行えるようにするとよいでしょう。

4)貿易取引特有の「荷為替手形による決済」

荷為替手形による決済とは、

売り手(輸出者)が振り出す為替手形に、船積書類を添付して「荷為替手形」を作成し、金融機関経由で買い手(輸入者)に提示して、代金支払い、または手形引き受けと引き換えに船積書類を引き渡す決済方法

です。売り手(輸出者)の取引金融機関に手形を買い取ってもらう場合と、買い手(輸入者)への取り立てのみを依頼する場合の2通りがあります。荷為替手形の買い取りを行う金融機関を「買取銀行」といいます。

荷為替手形による決済には、信用状が付く場合と付かない場合の2種類があります。

1.信用状が付く荷為替手形による決済

信用状が付いた荷為替手形を、売り手(輸出者)の取引金融機関に買い取ってもらうまでの手続きの流れは次の通りです。

まず、売り手(輸出者)は、信用状発行銀行を名宛人とする為替手形を振り出し、輸出地の買取銀行に買い取りを依頼します。買取銀行は書類点検後、買い取り代金を売り手(輸出者)に払います。

その後、買取銀行は荷為替手形などを信用状発行銀行に送付します。信用状発行銀行は書類点検後、買取銀行に代金を支払います。

信用状発行銀行は買い手(輸入者)に対して、代金の支払いと引き換えに船積書類を渡します。これにより、買い手(輸入者)は商品を受け取れます。「信用状に記載されている条件を満たす荷為替手形の提示に対して代金を支払う」という信用状発行銀行の確約があるため、商品だけが買い手(輸入者)に渡って代金が売り手(輸出者)に支払われない恐れがなく、リスクを低減できます。

信用状が付く荷為替手形の買い取りは、提示された為替手形と船積書類が信用状条件に合致しているかを確認し、不一致な点がない場合に実行されます。そのため、売り手(輸出者)は信用状に記載されている条件に合致する書類を作成する必要があります。

信用状が付く荷為替手形による決済の主な流れは次の通りです。

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2.信用状が付かない荷為替手形による決済

信用状が付かない荷為替手形による決済には、「手形支払書類渡(D/P)決済(以下「D/P決済」)」と「手形引受書類渡(D/A)決済(以下「D/A決済」)」の2つがあります。

D/P決済とは、

買い手(輸入者)が代金を支払うことにより、添付されている船積書類を引き取ることができ、さらには商品を引き取ることができる取引方法

です。売り手(輸出者)へ代金の支払いをしてから商品を引き取ることになるため、代金決済がされない状態で商品が買い手(輸入者)に渡るリスクがありません。ただし、買い手(輸入者)が決済できない場合、引き取られなかった商品が現地に残留することになるため、割引価格による現地処分や、返送に伴う運賃の負担といった損失が生じます。

D/A決済とは、

買い手(輸入者)が手形を引き受けて支払いを確約することで、添付されている船積書類を引き取る取引方法

です。手形には支払猶予期間(ユーザンス)が設定されているので、買い手(輸入者)は引き受け後、支払期限まで支払いを延ばすことができます。そのため、手形の不渡りが生じた際は、商品だけ買い手(輸入者)に渡って、売り手(輸出者)に代金が支払われないというリスクがあります。

信用状が付かない荷為替手形による決済の主な流れは次の通りです。

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4 方策その3:支払いを保証するサービスを活用する

買い手の支払いを保証する「ファクタリング」、貿易取引の決済に関する事故を補償する「貿易保険」「取引信用保険」などの活用を考えてもよいでしょう。

ファクタリングとは、

ファクタリング事業者と呼ばれる企業が、売り手の持つ債権を買い取って債権回収を行ったり、債権の決済の保証などをしたりするサービス

で、一部の事業者は海外企業との貿易取引も対象としています。

貿易保険とは、主に日本貿易保険が提供する保険サービスで、貿易取引の代金が回収できなかったときの補償に加え、輸入制限や紛争といったカントリーリスクそのものに起因する損失(輸出不能になるなど)も補償対象となっています。国や地域によっては、カントリーリスクの一部を補償対象外としていたり、保険の引き受けそのものを行っていなかったりする場合などがあります。

取引信用保険は、民間の損害保険会社が提供する保険サービスで、代金が回収できなかったときの補償をしており、国内外問わず売買取引に際して利用できます。

■日本貿易保険■
https://www.nexi.go.jp/

5 その他:専門機関や専門家に相談するのも一策

取引先が海外に所在する場合、自社で取れる対応は限られがちであり、専門的な知識も求められます。そのため、次に挙げる日本貿易振興機構(ジェトロ)などの専門機関、弁護士や貿易アドバイザーといった専門家を活用して、万が一の事態を未然に防ぐ体制を整えておき、いざというときには相談するようにしましょう。

1)日本貿易振興機構(ジェトロ)

日本貿易振興機構(ジェトロ)は、独立行政法人日本貿易振興機構法に基づき設立された貿易・投資の支援機関です。同機構は、海外進出を検討している企業に対して、貿易投資相談(無料)、海外ミニ調査サービス(有料)などを提供しています。

■日本貿易振興機構(ジェトロ)■
https://www.jetro.go.jp/

2)中小企業基盤整備機構 販路支援部 海外展開支援課

中小企業基盤整備機構では、中小企業国際化支援アドバイスを行っています。個別の相談ごとに、各分野で専門性の高いスキルを持つ「国際化支援アドバイザー」が、経営課題解決の観点に立ったアドバイスを行っています。アドバイスの費用は無料となっており、何度でも相談できます。

また、同機構では、ウェブサイト上での情報提供や、全国各地において貿易など海外展開に関するセミナーを実施しています。

■中小企業基盤整備機構「海外展開に関する相談」■
https://www.smrj.go.jp/sme/overseas/consulting/

3)日本商事仲裁協会

日本商事仲裁協会は、商事紛争の処理および未然防止などを図ることによる、円滑な国際取引の促進を目的とした団体です。同協会は、国内外の商事紛争を対象としていますが、元来は国際商事紛争の解決を主な業務としていたことから、貿易取引に関する支援などが充実しています。具体的には会員向けに国際契約・国際取引法律相談などを行っています。

■日本商事仲裁協会■
https://www.jcaa.or.jp/

4)貿易アドバイザー協会(AIBA)

貿易アドバイザー協会(AIBA)は、貿易に関するコンサルティングなどを行う貿易アドバイザーによって運営されている団体です。同協会では、貿易アドバイザーの認定の他、輸出入実務サポート、海外法規制・市場調査、貿易に関するセミナーの講師派遣、現地視察への同行などを行っています。

■貿易アドバイザー協会(AIBA)■
https://trade-advisers.com/

以上(2021年7月)
(監修 一般社団法人貿易アドバイザー協会(AIBA))

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画像:pixabay

【朝礼】イメージトレーニングを実践してみよう

いよいよ4年に1度のスポーツの「熱き祭典」が始まりました。新型コロナウィルス感染症などさまざまな課題はあるものの、世界のトップアスリートたちを、是非、応援したいものです。

さて、トップアスリートと呼ばれる人のほとんどが「イメージトレーニング」を取り入れているそうです。トップアスリートたちは、自分がこれからする競技を頭の中で思い浮かべて成功をイメージし、本番ではそのイメージを持って競技に挑むのだといいます。

例えば、マラソン競技ならばコースの風景や上り下りの傾斜をイメージしながら頭の中でレースを進め、スパートをかける勝負どころはどこなのかをあらかじめイメージしてレースに向かうのだそうです。また、「自分が先頭でゴールテープを切る姿」を思い浮かべて、成功をイメージすることも大切なイメージトレーニングだといいます。

イメージトレーニングが効果的なのはスポーツだけに限るものではありません。私たちが仕事に取り組む上でも、イメージトレーニングはとても大切です。仕事に取り組むときには、どのような手順で仕事を進めるのか、そのためには事前の準備として何をすればいいのか、そして最終的なゴールはいつ、どのようなものになるのかを事前にイメージしておきましょう。

例えば今日、お客様を訪問する予定があれば、お客様の顔を思い浮かべながら伝えなければいけないことや聞きたい話を整理し、お客様がどのような質問をしてくるか、どう説明すれば成功に結びつくかをイメージしておくとよいでしょう。

ひとは誰でもよい仕事をしたいし、よい結果を残したいと思っているはずです。けれども、ただ漠然と成功したいと考えているだけではそれはうまくいかないかもしれません。

自分がなすべきこととそこに至る道筋をあらかじめ頭の中でまとめて、なすべきことと成功へのイメージを作っておけば、目の前の仕事に追われてしまって右往左往してしまうことも少なくなります。

アスリートたちの勝負は、競技が始まるずいぶん前に、イメージの中で始まっています。同じように、私たちの仕事も本当は事前にイメージすることから始めてみてはどうでしょう。仕事に取り掛かる前には、自分のやるべきことをできるだけはっきりと具体的にイメージしておくのです。頭の中でのイメージを具現化するように仕事に取り組むことで、段取りよく無駄のない仕事ができるようになります。また、イメージした通りに仕事が進んだり、商談が成立すれば、成功体験を2回することができ、仕事に対する自信にもつながります。

以上(2021年7月)

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画像:Mariko Mitsuda