【朝礼】「言語化」とは何をすることだと思いますか

先日、私はあるクライアントから、オンライン勉強会の講師をしてほしいと依頼されました。そのクライアントの若手メンバーに対して、当社サービスの活用方法をレクチャーするというものです。講師を務めるのは久しぶりだったので少し緊張しましたが、結果として、良い経験になりました。特に大きかったのは、当社サービスに込めた思いを、改めて「言語化」できたことです。

当社のサービスをどのように活用すれば、クライアントにとって良いことがあるのか。良いこととは具体的にどういうものか。その良いことを生み出すために、当社ではどんな仕掛けを施しているのか。当社がこのサービスに込めた思いは何か。なぜやっているのか。こうしたことはいつも、当たり前のように私の心の中にあります。ただ、当たり前すぎて、最近は人に説明できるレベルで言語化していなかったことでもあります。

今回のオンライン勉強会は、当社を全く知らない人も多く参加するものでした。そこで、いつも私が考えていることや当社がやっていることを、初見の人でも分かるように平易かつ具体的に言葉にしようと心掛けました。資料もしかりです。これが想像以上に大変だったのですが、おかげで、当社と当社サービスについて、より高い粒度で言語化できましたし、「具体的には」「なぜ」の自問自答を繰り返したことで、新たに気付けた点もありました。こうした機会をいただいたクライアントには、本当に感謝しています。

さて、皆さんは、言語化とは、何をすることだと思いますか。単に考えていることを言葉にすればいいのでしょうか。人によって捉え方はそれぞれですが、私は今回改めて、言語化とは、

「相手と共有でき、次の行動に移せるように、考えや思いを言葉にして見える化すること」

と捉えるようになりました。

ポイントは、「相手と共有できるようにする」点です。どう言葉にすれば相手が理解し、納得し、次の行動に移せるか。言語化には、この「相手に寄り添う」ことが不可欠です。これがあるからこそ、言語化は、大切なコミュニケーションの手段といえるのではないでしょうか。

このことは、相手が社外でも社内でも同じです。例えば管理職は、メンバーに対して「言わなくても分かっているだろう」と思い、言語化をサボりがちですが、それでは考えや思いは共有できないでしょう。チームが目指す方向や一人ひとりの役割などについて、「どうすればメンバーが理解し共有できるか」を考え、言語化する努力を惜しんではなりません。

今後、リモートワークはさらに増えていきます。離れた場所にいる場合はなおさら、ビジョンなど大局的なものから、業務の進め方一つまで言語化が必要です。それが一人ひとりのよりどころになるからです。皆さん、今のビジネスでは、「相手が共有できるように言語化する能力」が必須であることを改めて認識してください。

以上(2021年11月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】丁寧さは、何にも勝る

先日、私はお客様からの要望で、知り合いの会社のサービスを幾つか紹介することになり、お客様と引き合わせる場を設けました。おかげさまでお客様はどのサービスにも、興味を持ってくれました。紹介した会社は、いずれもお世話になっているところなので、今回の件を通じて、当社が少しでも役に立てたことをうれしく思います。

同時に、実は残念に感じていることもあります。お客様には全部で5社を紹介しましたが、紹介したことに対するお礼の連絡は、そのうちの2社からしか来なかったのです。

誤解しないでいただきたいのですが、私は、お礼を言ってほしくて紹介したわけではありません。また、「お礼を言ってもらって当然」などと思っているわけでもありません。しかし、もし私が逆の立場だったら、間違いなく、その日のうちにこちらからお礼をお伝えするでしょう。

会社同士を引き合わせるのは、とても神経を使います。単にスケジュール調整だけをすればよいわけではありません。万が一、何かあれば、紹介する側が責任を取る場面も出てきます。また、どのような会社や人を紹介するかによって、紹介する側の評価は、プラスにもなることもあれば、逆にマイナスになることもあります。

そうした責任やリスクを負ってなお、「会社同士を引き合わせる」ということを選択し骨を折ってくれた人に、感謝の気持ちをお伝えするのは当たり前。いわば「最低限の礼儀」だと思うのです。

私は今回の件を通じて、自分自身も気を付けなければならないと感じています。「紹介してもらう」ということに限らず、何かをしてもらったら、必ず、こちらのほうから先にお礼を伝えなければなりません。こうしたことをおろそかにしないよう、改めて自分に言い聞かせています。

皆さんはどうですか。社内外の関係者と関わり合って仕事を進める中で、相手に対して感謝の気持ちを、しっかりと伝えているでしょうか。

元東レ経営研究所社長の佐々木常夫氏は、著書やセミナーで、よく、「礼儀正しさは最大の攻撃力である」と言っています。「挨拶をする、脱いだ靴をそろえる、お礼やおわびをこちらのほうから伝えるなどの礼儀は基本的なことだが、意外とできないビジネスパーソンが少なくない。そのため、礼儀正しさがしっかりしていれば、それだけでリーダーにさえなれる」というのがその趣旨です。この考えに、私は半分だけ共感しています。

私は、礼儀正しさは、人として、できて当たり前だと思います。ただし、「どうすれば礼儀正しいか」は人によって違うとも思っています。こちら側は礼儀正しくしているつもりでも、相手から見たら、そうではないかもしれません。だからこそ、何事も、「丁寧に進めること」が重要になってくるのです。皆さん、ぜひ、メールの書き方一つ、連絡の取り方一つでも、「心を込めて丁寧に」進めるようにしてください。丁寧さこそ、何にも勝る攻撃力になると私は考えます。

以上(2021年11月)

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画像:Mariko Mitsuda

「ビジネスチャンスにつながるリスク対策と与信管理」を実践しよう

書いてあること

  • 主な読者:ビジネスチャンスを広げたい経営者
  • 課題:リスクを考慮しつつ、新しい領域、新規の取引先を増やしていきたい
  • 解決策:ポイントは新しい取引相手が信頼できるかどうか。相手の「人となり」で最終判断するが、【取引可能と判断できる範囲】を広げるリスク対策や与信管理も大切

1 新しい取引をスタートするとき、相手の何を見ているか?

経営者は日々、新しい会社や経営者と出会います。そうしたとき、その新しい相手と取引するかどうかは何を見て判断しているでしょうか。実際に経営者の方々にお聞きしたところ、次のような回答を挙げていただきました。

  • 仕事に対する考え方が合うか(例:プラス思考かどうか など)
  • 大切にしているものが同じか(例:価値観、時間感覚 など)
  • SNSで誰とつながっているか、どのグループ・層の方々と仲良くしているか

このように経営者は、相手(経営者や担当者)の「人となり」から「信頼できるかどうか」を見ています。その会社のビジネスが今後伸びそうか、財務状況やキャッシュはどうかなどももちろん重要ですが、最終的には、

たとえ失敗したとしても、この人(会社)と一緒にビジネスをした結果、そうなったのであれば仕方ない!と思えるくらい、信頼できる人(会社)と取引をする

というのが経営者の理想かもしれません。

ただし、特に、「これまでと全く違う領域の人(会社)と新しいビジネスにチャレンジする」「知人の紹介などではない新しい取引先を開拓する」場合は、その会社の今後の展望も含めて、信頼できるかを判断するのに迷うこともあると思います。そこで、この記事では、

「たとえ失敗したとしても」の失敗ダメージを少なくしつつ、かつスピーディーに新規取引をスタートできるリスク対策や与信管理のヒントをご提案します。

さまざまな状況が大きく変化している今、こうした「今後のビジネスの可能性を広げるリスク対策」の実践が、皆さまのビジネスチャンスの拡大につながれば幸いです。

2 【取引可能と判断できる範囲】を広げるという考え方

この記事でご提案するリスク対策の考え方は、「経営者の皆さまが【取引可能と判断できる範囲】を広げる」というものです。これを図示すると、図表1のようになります。

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この4象限は、「取引先の倒産などにより売上債権が回収できなくなる(貸倒れ)リスク」に対して、それぞれどのような対策が必要かを表しています。何もしない状態(リスク対策前)では、【取引可能と判断できる範囲】は、「A:リスクの保有」部分しかありません。

  • A:リスクの保有-リスクはあるが、受け入れる=取引できる範囲
  • B:リスクの移転-リスクを外へ移す必要がある=このままでは取引できない範囲
  • C:リスクの回避-リスクを回避する必要がある=このままでは取引できない範囲
  • D:リスクの低減-リスクを低減する必要がある=このままでは取引できない範囲

この状態のとき、例えば、「リスクの移転=リスクを外へ移す必要がある」の対策としては、取引信用保険などが考えられます(詳細後述)。そうすると、リスクの程度は変わらないものの顕在化したときのダメージが少なくなるので、「取引できる」と思える範囲が広がるのです。

  • A:リスクの保有-リスクはあるが、受け入れる=取引できる範囲
  • B:リスクの移転-取引信用保険、保証ファクタリングなど=一部、取引できる範囲
  • C:リスクの回避-リスクを回避する必要がある=取引できない範囲
  • D:リスクの低減-契約書での取り決め、代金の先払いなど=一部、取引できる範囲

ここで紹介した対策は、自分たちにとっては有効なものですが、ビジネスには必ず相手がいます。例えば、「リスクの低減」で示した、契約書で取り決める、代金を先払いにしてもらうといった方法は、相手が了承してくれるとは限りません。

また、お互いに気持ちが分かる経営者としては、「代金を先払いにしてほしい」とは言いにくい面もあるでしょう。特に新しい取引先の場合はなおさらです。そこで次章では、相手を巻き込まずに実践できる「外部に移転する」方法を見てみます(サービス内容は各社で異なります)。

3 「外部の力」を知り、うまく使う

貸倒れリスクを外部に移転する方法には、取引信用保険や保証ファクタリングがあります。取引先が倒産した場合などでも、一定の金額が保険金や保証という形で支払われます。その他、取引先が倒産したら無担保で借入できる共済制度も、リスク対策の一つといえるでしょう。

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取引信用保険や保証ファクタリングでは、取引先に知られずにすむことや、取引先に関する信用情報を提供してもらえることも大きな特徴です。例えば、損保ジャパンは自社で収集した大量のデータから独自の格付けを行い、取引信用保険の見積時に無料提供しています。こうした情報を活用すれば、効率的な与信管理が実現できるでしょう。

なお、取引信用保険や保証ファクタリングは、サービス提供各社によって条件や費用などが異なりますので、インターネットや資料請求などで詳細を確認することが大切です。損保ジャパンでは取引信用保険の説明動画を公開しています。

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ご参考 「与信判断に何を重視しているか」などのデータ2点~与信管理白書 2021

最後に、他社が「与信判断の際に取引先のどのような情報を重視しているか」「今後、何を与信管理で強化したいと考えているか」のアンケート結果をご紹介します。やはり、財務状況の他、経営者の人物像などの与信判断につながる情報収集も、重視される傾向にあるようです。

  • 【アンケート資料概要】
  • タイトル : 2021年 与信管理の実態に関するアンケート
  • 実施期間 : 2021年6月17日(木)~7月16日(金)
  • 実施方式 : Webアンケート方式
  • 回答数  : 5019件
  • 出所:帝国データバンク「与信管理白書 2021」

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以上(2021年11月)

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中小企業も本気の女性活用。2022年度から始まる行動計画とは

書いてあること

  • 主な読者:社員101人以上の会社の経営者
  • 課題:女性活躍推進法に基づく「一般事業主行動計画」の策定義務が生じる
  • 解決策:女性活躍は経営者と現場のギャップが生じがちなので注意。計画の策定・実行で助成金の対象となるので受給を検討する

1 2022年4月1日より「行動計画」に関する義務の対象が拡大

女性活躍推進法に基づく「一般事業主行動計画」(以下「行動計画」)とは、

会社が女性の活躍に関する課題を解決するための計画であり、社員数が常時301人以上の会社に策定などが義務付けられている

状況です。これが、

2022年4月1日より、社員数が常時101人以上の会社にも義務付けられる

ことになります。

経営者は「当社では女性が十分に活躍している」と思っていても、実際は、

  • 育児休業から復帰した女性へのサポートが不十分で、その後のキャリアが限定される
  • 女性の管理職登用に注力しているが、そもそも管理職に与えられている権限が小さい

といったケースがあります。行動計画を策定する場合、その過程で「採用者に占める女性の割合」「管理職に占める女性の割合」などを確認するので、こうした課題が明らかになる可能性があります。また、行動計画を策定すると、一定の要件を満たすことで、

  • 最大60万円の「両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)」を受給できる
  • 会社PRなどに使える「えるぼし認定」「プラチナえるぼし認定」を取得できる

といったメリットがあります。

2 まずは行動計画の策定などの全体像を押さえよう

2022年4月1日より、社員数が常時101人以上の会社に義務付けられるのは、

  • 行動計画の策定・届け出
  • 女性の活躍に関する情報公表

です。

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「1.行動計画の策定・届け出」「2.女性の活躍に関する情報公表」に違反しても罰則はありませんが、次のペナルティーを受けることがあります。

都道府県労働局からの報告徴収、助言、指導、勧告、会社名の公表

ここから先は、「1.行動計画の策定・届け出」の「(ステップ1)自社の女性の活躍に関する状況把握、課題分析」に焦点を当てて、ポイントを紹介します。行動計画の策定例、届け出の様式、女性の活躍に関する情報公表のイメージなどについては、こちらをご確認ください。

■厚生労働省「女性活躍推進法特集ページ(えるぼし認定・プラチナえるぼし認定)」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000091025.html
■厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース」■
http://positive-ryouritsu.mhlw.go.jp/positivedb/
■厚生労働省東京労働局「【労働者数101人以上~300人以下の事業主の皆様へ】令和4年4月1日改正女性活躍推進法の義務化について ≪NEW≫」■
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/kinto2/joseikatsuyaku300ika.html

3 女性の活躍に関する課題を明らかにする

1)「基礎項目」と「選択項目」を押さえる

女性の活躍に関する状況を把握する場合、まずは「基礎項目」の状況を全て調査し、次に「選択項目」の状況を可能な限り調査します。

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2)数値だけではなく本質も見る

把握した状況を基に自社の課題を分析し、解決のためのアプローチを行動計画に落とし込みます。厚生労働省東京労働局では、状況把握の結果に応じた数値改善のアプローチ例として、次のようなものを紹介しています。

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基本的には基礎項目と選択項目のうち、数値が低い項目に注目することになりますが、注意しなければならないのは、

「数値が低い項目=解決すべき課題」とは限らない

ことです。例えば、管理職に占める女性の割合が低い場合、

そもそも管理職になることが、本当に女性の活躍につながるのか

という問題があります。中小企業では個々の社員一人一人の裁量が大きいため、管理職がマネジメントできる範囲が限られます。つまり、「管理職になったら女性が活躍できる」とは言いにくく、管理職の権限を見直すことが先決となります。

こうした課題を見つけるには、

経営者自身が「女性が活躍しているとは、どのような状態なのか」を掘り下げる

ことが重要です。活躍のイメージは、

  • 新しい仕事に積極的に挑戦する女性が多い
  • 育児休業や時短勤務などの両立支援制度を、積極的に利用する女性が多い
  • 特別な成果などを上げるわけではないが、活気にあふれている女性が多い

などさまざま考えられます。

3)解決のためのアプローチに注意する

解決のためのアプローチも慎重に判断します。例えば、女性の育児休業取得率を高めたい場合、育児休業取得率が低い理由によってアプローチが異なります。

  • 管理職の理解が乏しい:マタニティーハラスメント研修などを受講させる
  • 長期休業が取得しにくい:多能工化を進めつつ、業務委託なども利用する
  • 復帰に不安を覚える:休業中、定期的に仕事に関する情報を共有する
  • 復帰後の両立支援が不安:時短勤務など自社の両立支援制度を再度周知する

この辺りは、社内アンケートなどで、

自社の仕事や両立支援制度で改善が必要だと思う項目は何ですか(理由も)

といった質問を、女性にぶつけてみるとよいでしょう。

4 行動計画を策定・実行すると助成金の対象になる

1)両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)

両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)とは、

  • 社員数が常時300人以下の会社が、行動計画に盛り込んだ取組内容を実施し、3年以内に数値目標を達成した場合、
  • 47万5000円(生産性に関する要件を満たした場合は60万円)が支給される

というものです。申請先は管轄の都道府県労働局で、支給は1社につき1回限りです。詳細はこちらをご確認ください。

■厚生労働省「事業主の方への給付金のご案内(両立支援等助成金)」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/shokuba_kosodate/ryouritsu01/index.html

2)えるぼし認定・プラチナえるぼし認定

「えるぼし認定」は女性の活躍が推進されている証しといえます。行動計画の策定・届け出、女性の活躍に関する情報公表を行った会社は、えるぼし認定の申請ができます。取得のメリットは次の通りです。

  • 自社のウェブサイトや商品などに認定マークを貼布してPRできる
  • 公共調達で加点評価を受けられる
  • 日本政策金融公庫「働き方改革推進支援資金(企業活力強化貸付)」を、通常より低金利で利用できる

えるぼし認定は3段階に分かれています。また、えるぼし認定を取得した会社のうち、「女性の活躍推進に関する状況が優良である」など一定の要件を満たした会社は、さらに上位の「プラチナえるぼし認定」を取得できます。

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えるぼし認定・プラチナえるぼし認定の詳細は、こちらをご確認ください。

■厚生労働省「女性活躍推進法特集ページ(えるぼし認定・プラチナえるぼし認定)」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000091025.html

以上(2021年11月)

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薄暮時間帯の運転(2021/11号)【交通安全ニュース】

活用する機会の例

  • 月次や週次などの定例ミーティング時の事故防止勉強会
  • 毎日の朝礼や点呼の際の安全運転意識向上のためのスピーチ
  • マイカー通勤者、新入社員、事故発生者への安全運転指導 など

日没前後の時間帯は薄暮時間帯※と言われ、交通事故のリスクが高まる時間帯です。

特に11~12月は、薄暮時間帯と多くの人の帰社時間や帰宅時間が重なり、交通事故のリスクもさらに高まるため、自動車の運転にはより一層の注意が必要です。

この時間帯の交通事故を防ぐため、薄暮時間帯のリスクとドライバーの注意点をご紹介します。

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※季節や地域によって差はありますが、一般には「夕暮れ時」や「たそがれ時」などと呼ばれる時間帯であり、警察庁では、日没時刻の前後1時間を「薄暮時間帯」としています。

1.重大事故の発生状況

(1)死亡事故が多い時間帯

死亡事故は、17時台から19時台に多く発生しています。薄暮時間帯の死亡事故件数は、7月から増加傾向となり11月~12月に最も多くなっています。

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(2)薄暮時間帯の死亡事故

死亡事故の当事者別では「自動車対歩行者」の事故が多く、薄暮時間帯は顕著になっています。 その事故類型別をみると「横断中」が約9割を占めています。

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※出典:警察庁Webサイト「薄暮時間帯における交通事故防止」
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/hakubo.html
 (2021.10.5 閲覧)から当社作成

2.薄暮時間帯のリスク

薄暮時間帯は交通量が増す分、昼間よりリスクが高くなります。運転する際には以下のような点に注意が必要です。

(1)交通ルールを守らない歩行者等の増加

帰宅ラッシュ等での交通量の増加に伴い、信号無視、横断歩道付近の横断、自動車の直前直後横断、ながらスマホ、無灯火の自転車などと遭遇するかもしれません。

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(2)歩行者や自転車に気づきにくくなる

薄暮では周囲のコントラストがなくなり、景色全体が暗くなるため視力が低下します。また、これから冬に向けて黒っぽい服装※が多くなり、歩行者や自転車に気づきにくくなります。

※「赤色や緑色・茶色・黒色」は全部黒っぽく見えて、暗がりに隠れてしまいます。

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(3)一日の疲れ・油断からの漫然運転

薄暮時間帯は、一日の疲れが出たり、また会社や自宅付近の運転では油断が生じやすくなります。集中力や注意力が低下した運転は、急な「飛び出し」などへの反応が遅れ、非常に危険です。

3.運転の注意点

(1)横断歩道に関するルールの遵守

横断歩道に歩行者がいる場合は、横断歩道の直前で一時停止し、その通行を妨げないようにしましょう。

路面に「ダイヤマーク」がある場合、速度を落として運転しましょう。

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(2)早めのヘッドライト点灯

視界を確保するため、また、他の車や歩行者に自分の車の存在を知らせるため、早めに点灯しましょう。日没の30分より前を目安に点灯するのが、早期点灯のタイミングです。

暗い道を走行する際は、ハイビームを上手に使って歩行者等の早期発見に努めましょう。

(3)危険を予測した慎重な運転

運転への集中を絶やさないように努めるとともに、「見えにくいところに歩行者や自転車が隠れているかもしれない」「自動車に気づかず歩行者や自転車が突然横断してくるかもしれない」といった危険を予測して、慎重に運転しましょう。

以上(2021年11月)

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【朝礼】「進化圧」を感じ、「ゼロリスク」信仰と決別しよう

新型コロナウイルス感染症の影響で、この1~2年のうちに、10年分のデジタル化が進んだといわれます。この変化がさらに続くことは間違いなく、私たちは次の世界を見据えて進化しなければなりません。私たちが進化するために必要なこととして、「進化圧」を感じ、「ゼロリスク」信仰と決別することについてお話しします。

さて、いまやデジタル化の代名詞となっているのが、DX(デジタルトランスフォーメーション)です。しかし、DXは抽象的で分かりにくい面があり、多くの会社はペーパーレス化という、身近で具体的な課題をDXとして取り組んでいます。

こうした話のときに出てくるのが、「ペーパーレスはDXではない!」「ペーパーレス化の先の目的は何だ?」と批評する人です。こうした人は、ペーパーレス化をばかにしたり、非協力的な姿勢を示したりして組織の足を引っ張りますが、当の本人もDXを定義できているわけではなく、「DXなのだから、何か壮大なことをしなければならない」と漠然と考えているだけです。

当社はどうでしょうか。今から10年ほど前、当社はコスト削減の一環として、まさにペーパーレス化を掲げました。しかし、ちまちまとした取り組みは定着せず、全く結果が出ませんでした。

しかし今は、リモートワークを進めた結果、95%以上のペーパーレス化が達成されています。リモートワークを実施する際、ペーパーレス化はほとんど意識していませんでした。

そう、私たちは働き方を変えただけです。「新しい働き方をしなければ生き残れない」という強烈な危機感にかられて、行動を起こしただけのことなのです。

生物学の世界には、「進化圧」という言葉があります。簡単にいうと、「生物は環境に適合しなければ生き残れない。だから進化せよという圧力」のことです。当社がリモートワークを掲げたのはコロナ前でしたが、コロナによって一気に進化圧が強まりました。急激な変化は、捉え方によっては変わろうとする者の背中を押すのです。

生物は自然界の変化に対応するために体の色を変えたり、木に登れるようになったりします。当社に置き換えると、私たちはリモートワークにフィットした組織に進化しました。しかし、まだまだ道半ばです。DXは私たちが生き残る可能性の一つにすぎず、私たちには強い進化圧がかかり続けているのです。

「なるほど、では行動しよう!」と思うわけですが、そのときに出てくるのが「ゼロリスク」信仰です。リスクがゼロにならないと決められない、動けないという、日本人にありがちな思考ですが、リスクはゼロになりません。自然界ならとっくに捕食者に食べられてしまう姿勢です。

コロナやDXは今の話題であり、数カ月後は別のものになっているかもしれません。ただ一ついえるのは、リスクをとって変わらなければ、新しい可能性も生まれないということです。

以上(2021年11月)

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画像:Mariko Mitsuda

何が同じで、何が違うのかを見極める/ローマ史から学ぶガバナンス(12)

書いてあること

  • 主な読者:現在・将来の自社のビジネスガバナンスを考えるためのヒントがほしい経営者
  • 課題:変化が激しい時代であり、既存のガバナンス論を学ぶだけでは、不十分
  • 解決策:古代ローマ史を時系列で追い、その長い歴史との対話を通じて、現代に生かせるヒントを学ぶ

1 同じなのか、違うのか

インターネットが広く一般に利用されるようになって二十余年がたち、情報技術革命という言葉も今や古びた印象さえ持つようになりました。技術の発展はますます加速化しており、AI、IoT、VR/ARなど、かつては未来の物語と思われていたようなことが現実化・実用化され、私たち一般市民の生活や活動も大きく変化しています。

当然、企業のビジネスも大きく変化し、これまでの考え方ややり方ではもはや通用しないとまでいわれるようになっています。かつての経営学、ビジネス理論、メソドロジーなどは、現在、急成長を続ける企業のビジネスモデルに当てはめづらくなっているのも事実で、20世紀型のビジネスと現代のビジネスとの違いを感じることが私自身も多々あります。一方で、変わらない部分、同じ部分というのも存在します。

同じなのか、違うのか。こうした議論は、日常でもよくあります。「この映画はこれまでの映画とはアプローチが全然違う」「いや、あの映画と系統は同じでしょ」といったような会話もありますし、「あの事件とこの事件は本質的に同じだ」「いや、そんなことはない」といったTVコメンテーターのやり取りも目にします。

多くの場合、こうした議論は平行線をたどることになりますが、その理由は、目線の違いにあります。動物や哺乳類という目線で言えば、犬も猫も同じですが、「犬」と「猫」と言い分けている通り、犬と猫は分類上も異なる科です。片方が哺乳類の目線で議論を展開し、もう片方が科の目線で議論をすれば、当然、同じなのか、違うのかという論争に決着はつきません。

ところで、コンピューターのプログラミング言語、特にオブジェクト指向と呼ばれるプログラミングでは、汎化と特化という考え方があります。よく挙げられる自動車の例を用いますが、救急車と消防車は、自動車として共通的な機能を持っています。この共通的な機能をまとめてスーパークラスという上位のものとして定義します。これを汎化といいます。そして、このスーパークラスの定義を継承し、救急車と消防車がそれぞれ持つ特殊な機能を下位のサブクラスで分けて定義します。これを特化といいます。

こうすることで、例えば、新たにパトカー(警邏(ら)車)を定義しなければならない場合に、すでにスーパークラスで定義している自動車として共通的な機能は、もう一度プログラミングする必要はなくなります。パトカーが持つ特殊な機能だけをサブクラスとして定義すればいいので、開発の生産性が上がることになります。

ここで私が申し上げたいのは、同じなのか、違うのか、ということは重要ではなく、何が同じで、何が違うのかを見極めることこそが重要なのだということです。これまで12回にわたって連載させていただいたローマ史の人々と現代の私たちとでは、多くの点で違いがあります。

しかし、何が同じで、何が違うのかを見極めながら歴史を眺めてみると、同じところからは先人たちの知恵が見つけられ、違うところからはその「差分」の気付きを得ることができます。そうすることで、現在の自分へのヒントをつかむことになるのです。ローマ史に限らず、歴史は、そういった教材になります。

2 滅亡までの道のり

ローマ帝国は、五賢帝時代の後、混乱と迷走が続き、衰弱していきます。マルクス・アウレリウスの息子コモドゥスがその悪政から暗殺され、その後、セプティウス・セヴェルスが内戦を制して皇帝に就きますが、「三世紀の危機」と呼ばれる時代に突入していきます。蛮族の大侵入、軍事力強化による財政悪化、内戦の同時多発などがあり、211年からの73年間に多くの皇帝が登場しては消えていきました。

235年から約50年間は、軍隊を支持母体とする軍人が皇帝となる軍人皇帝時代となり、ローマ帝国の性質も大きく変化します。3世紀末のディオクレティアヌスが皇帝になってからは、共和政の伝統をなくした専制君主制を敷くとともに、帝国の分担統治を実施し、広大な領土の効率的な防衛によって秩序回復を図っていきます。

4世紀には、皇帝コンスタンティヌスが「ミラノ勅令」によりキリスト教を公認し、ローマを離れてコンスタンティノープルに首都を遷(うつ)し、新たなローマ帝国の再建を図ろうとします。しかしこれは、ローマ帝国の特質を失わせ、全く異なる帝国に変えることで、ローマ帝国を存続させるようなものでした。

その後、皇帝ユリアヌスのときにキリスト教が否定され、ローマの伝統的な多神教を擁護するなどの政策を取りますが、キリスト教信徒は増え続け、皇帝テオドシウスがキリスト教を国教と定めるに至り、キリスト教の覇権が決定的になりました。テオドシウスの死後、395年には東西に分裂し、西ローマ帝国と東ローマ帝国が成立します。西ローマ帝国はゲルマン人の侵攻を受け続けて衰えていき、476年に滅亡します。

東ローマ帝国は、ローマから離れた領土で実質的にギリシャ化が進み、7世紀にはビザンチン帝国と呼ばれるようになりますが、イスラム勢に次々と領土を奪われていきます。それでも度重なる危機に耐え、1453年にオスマン帝国によって滅亡させられるまで1000年にわたって命脈を保ちました。

なお、ローマ帝国がいつ滅びたのかについてはいろいろな考え方がありますが、一般的には、西ローマ帝国の滅亡をもってローマ帝国の滅亡とされています。東ローマ帝国の滅亡は、中世の終わりを象徴する出来事として捉えられているようです。

3 終わりに

今回は全12回連載の最後ということで、かなりの駆け足でローマ帝国の滅亡までを振り返ってみました。建国以来、数多くの危機に直面しながらも、それを乗り越えて強大化していったローマ帝国でしたが、そうした国家も衰亡していくということを改めて思い知らされます。

現代の情勢を考えると、例えば、宗教や文化における方向性が大きく変化し、国家運営が左右されるのは考えにくいですし、日本が他民族の侵入によって滅亡を迎えるということも想像しがたいところです。ですが、人々の集合体である社会的な組織という観点で見ると、私たちは大企業が滅びていく姿を数多く見てきていますし、政治の紆余曲折も見てきています。

これまで見てきたローマ史の輝かしい場面、苦難を乗り越える場面、愚かな過ちが重なる場面など、全て身近なところで似たようなことを見たり聞いたりしているはずです。自分自身でも、程度の差こそあれ、照らし合わせて考えたくなるような場面があるのではないでしょうか。

当然のことながら、全く同じではありませんが、全く違うわけでもないのです。何が同じで、何が違うのかという目を持って、歴史を眺めてみると、単なる過去のことではなく、豊かな示唆を与えてくれるお話として、親近感を持って捉えることができるかと思います。ローマ史に限らず、歴史に興味をお持ちいただき、自身の生き方、考え方、働き方などに生かしていただければと思います。私自身も、そのように努めてまいりたいと思います。

以上(2021年11月)
(執筆 辻大志)

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カネがなく、チームは弱い。それでも利益を出す仕組み作り/千葉ロッテを黒字転換させた前球団社長の組織再建術(前)

書いてあること

  • 主な読者:会社の再建を成功させたい経営者
  • 課題:資金も戦力もないところから、どのように立て直せばよいのか分からない
  • 解決策:全社員から生の声を聞いて課題を洗い出し、優先順位を決めて再建に取り組む

1 創業以来50年続いた赤字会社を5年で黒字に転換

創業以来、50年にわたって赤字の連続。新たに投資するための資金も不足し、現有戦力は弱小で補強もままならず、顧客基盤も不安定――。そんな会社が、新社長を迎えて5年目に黒字転換を果たしました。その会社の名前は、千葉ロッテマリーンズ。ご存じの通り、プロ野球の球団を運営する会社です。

この記事では、オーナー会社からの資金の補填に安住していた組織の仕組みを変え、社員の意識を変えた前球団社長・山室晋也氏へのインタビューを通じて見える、組織再建の秘訣を紹介します。

前編となる今回は、お金がなく、チームは弱く、新たな投資も戦力補強もできない中で作り上げた、利益を出すための仕組み作りについてのインタビューです。

2 「どうしようもない」財務状況からの出発

大手銀行の子会社で社長をしていた私が千葉ロッテマリーンズ(以下「千葉ロッテ」)の社長に就任したのは、2014年1月のことでした。高校・大学・社会人とラグビーをやっていた私は、球団社長になるまで、特に野球に深い思い入れがあるわけでもありませんでした。

縁あって社長に就任することになりましたが、最初に財務諸表を見て抱いた感想は、「どうしようもないな」というものでした。1969年の「ロッテオリオンズ」誕生以来、赤字の連続。近年は毎年20億~30億円もの赤字を垂れ流し、オーナーであるロッテホールディングス(以下「ロッテHD」)が広告費として補填することが常態化していました。その状況を変えるには、この会社を自立させることが必要だと感じました。つまり、オーナーではなく、ファンやスポンサーにしっかり向き合うビジネスに転換させることが必要だと考えたのです。

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3 全社員の生の声を聞くことで課題が見えてくる

私が社長に就任する際、オーナーであるロッテHDからは、次の3つの指令を受けました。

  • 年間の赤字を12億円程度に削減する
  • チームを強くする
  • ロッテブランドを高める

3つの指令を遂行すべく、社長に就任して私が最初にやったことは、60~70人の正社員全員に対するヒアリングでした。現場の人たちが、職場の雰囲気をどう感じ、会社についてどう考えているのか、困っていることはないか、などについて把握することから始めました。

事前にヒアリングシートを配り、回答してもらった上でヒアリングを行います。ヒアリングシートには、会社全体と自分の部署のそれぞれについて、次の項目を記載してもらいました。

  • 良い点
  • 改善すべき点
  • 提案(意見、展望)
  • 自分の夢、目指す社員像
  • その他(自由記入欄)

ヒアリングは1人当たり30分ほどかけて行い、ヒアリングの後も、部署ごとのショートミーティングを1、2週間に1回程度続けました。

全社員へのヒアリングで見えてきた千葉ロッテの課題は、次のようなものでした。

  • そもそもお金がない
  • 集客のためには積極的な選手補強などによるチーム力の強化が必要
  • ファン拡大のための投資が必要
  • どの部門も社員数が不足しており、疲弊している
  • 球場の立地や設備に問題がある
  • ファン、スポンサー、地域・行政など、あらゆるステークホルダーとの信頼関係の構築が必要

こうした見えてきた課題を基に、千葉ロッテを再建するための優先順位を決めました。

4 再建のための優先順位を決める

私には3つの指令が与えられていましたが、千葉ロッテを再建するには、限られた資金や人的資源などを効率的に動かすために、優先順位を決める必要がありました。これは経営者として重要な仕事だと思っています。原則通りに、ROI(投資利益率)の高いものから、次のように優先順位を決めました。

  • 売り上げを伸ばす
  • 得た資金で最も投資効果の高い分野(集客やファンの増加)に投資して収益を増やす
  • さらに増えた資金をチーム力強化とファンの満足度向上に充てる

会社を再建する場合、まずはコスト削減を第一に考える人も少なくないと思います。ですが、特に中小企業では、コスト削減に注力しても効果はたかが知れています。特に球団経営の場合、広告収入の粗利益率は80%以上、チケット収入の粗利益率は85%以上という特徴があります。売り上げを伸ばすほうが、はるかにROIにインパクトがあるのです。

また、プロスポーツの場合、チーム力を強化して人気選手を集めれば集客力も増すと思われがちですが、お金をかけて良い選手を集めれば必ず勝てるほどスポーツは簡単ではありませんし、そこが面白いところでもあります。

私たちにはチームの強さはコントロールできないので、チームの強さと集客力・経営状況は切り離して考えるべきです。「チームが弱いから赤字になっている」というのは危険な考え方です。これは、「景気が悪いから赤字になっている」というのと同じ論理かもしれません。自分たちがコントロールできる部分で、ファンやスポンサーのためにできることはあります。そこに注力することで、弱くても稼げる会社作りを目指すべきです。どんなにチーム力を強化しても、6球団の中には1位から6位までの「勝者」と「敗者」が生まれます。ですが、球団経営では6球団全てが黒字という「勝者」になることが可能です。

5 スポンサーへの営業強化で売り上げ10億円アップ

千葉ロッテ再建の第一歩は、売り上げを伸ばすことから始めました。球団経営で売り上げを伸ばすポイントは、スポンサー収入、チケット収入、放映権の3つです。中でもスポンサー収入は単価が高く、最も即効性があるので、スポンサーへの営業の強化を最優先課題としました。

1)商売の原理原則「自分を安売りしない」「フェアな交渉を行う」を徹底

まず行ったのは、私が社長に就任する前までの旧弊の改革です。従来は売り上げ目標も広告費のルールもなかったため、「看板が空白にさえならなければいい」と、スポンサーごとに営業部の裁量による値引きが横行していました。そこで、売り上げ目標を設定するとともに、広告の種類ごとの価格を明確に定めました。これは、「自分を安売りしない」「フェアな交渉を行う」という商売の原理原則に即したものです。

2)選手の協力を得てスポンサーに明確なメリットを提示

その一方で、スポンサーには明確な2つのメリットを提示することにしました。いずれも選手の協力を得て実現したものです。1つは、選手と会えたり話せたりすることです。シーズン終了後の11月に選手とスポンサーとのゴルフコンペを開催し、選手がスポンサーの幹部とともにゴルフコースを回ってもらうことにしました。また、シーズン前にはスポンサーを集めた「出陣式」を行い、選手がスポンサーの幹部のテーブルまで行ってシーズンの抱負などを語る機会を設けました。

もう1つのスポンサーのメリットは、地元でのイメージアップになるということです。選手に介護施設や学校の訪問などの社会貢献活動に積極的に協力してもらったり、地元向けのイベントを開催したりして、千葉ロッテが地元の「公器」としての存在価値を高めることで、結果としてスポンサーとなっている会社のイメージアップにつながるというものです。

3)トップセールスも重要

スポンサー収入は最も投資効果の高い課題ですから、社長だった私の稼働時間の中でも、3分の1程度というかなりの部分をスポンサー回りに投入しました。既存のスポンサーだけでなく、銀行で働いていた時代のお客さまも訪問して新規開拓を行いました。

こうした営業努力によって、私が在任した6年の間に、オーナーであるロッテHD以外のスポンサーからの収入を、年間で10億円増やすことができました。

6 集客力を高める投資で収益を改善

スポンサー収入の増加によって経営が安定してきたため、次のステージとして、投資効果の高い課題である集客やファンの増加に取り組みました。チケットの売り上げは全体の売り上げの4分の1ほどですが、来場してくれるファンの数は球団経営の根幹であり、経営基盤の安定につながります。

1)重視すべきは既存の顧客か、新規の顧客か

中小企業にとって、取引の長いお客さまは大切な存在です。ですが、既存顧客への配慮を重視するあまり、新規顧客の獲得を遠慮していては、会社は先細りしてしまいます。

千葉ロッテの課題は、ライトなファン層の開拓でした。従来から「千葉ロッテファンは熱い」と言われており、社員もそのような熱い古参ファンを大事に思ってきました。しかし、会社の経営を考えると、古参ファンを守るか、新規ファンを獲得するか、どちらかに絞って戦略を立てなければ投資効果が薄れてしまいます。

私が選んだのは、新規ファンの獲得でした。しかし、社員の多くは「これまで築き上げてきたマリーンズファン(千葉ロッテファン)の文化を壊してしまう」と反対しました。私は「このまま古参ファンに甘えていてはいけない。大切なのは、ファンの裾野を広げて来場者を増やすことで収益を上げ、チームを強くすることだ。一時的には古参ファンの意向に反しても、古参ファンはいつか必ず分かってくれる」と社員に訴えました。

そして、来場者にユニホームを無料配布したり、「こどもの日」に子供たちに帽子やタオルをあげたりと、応援グッズがたくさんもらえるイベントを増やすことで、イベントデーの来場者数を飛躍的に伸ばすことができました。たとえ最初は無料のグッズが目当てであっても、まずは球場に足を運んでもらい、球場の雰囲気を含めた生のプロ野球の魅力を体感してもらわなければ、新規ファンの獲得はできません。

2)立地の悪さという弱点は諦めて発想を転換

先にも触れましたが、千葉ロッテの課題の1つに、球場の立地があります。本拠地のホームグラウンドは海際にあり、球場を中心に同心円状の商圏を描いても半分は海です。さらに東京駅から球場までは電車で約40分プラス徒歩で約15分かかるため、平日に仕事を終えて観戦するにはアクセスが悪いという致命的な欠点があります。

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そこで私は、思い切った決断をしました。平日に売り上げを求めるのは諦め、土・日に経営資源をフル投入することにしたのです。その代わり、平日は「未来のファン」を生み出す日にしました。地元の千葉県の小学生とその親たちを積極的に球場に招待して、試合観戦や仕事体験などをしてもらうことにしたのです。これは、何歳でスポーツチームのファンになったかという市場調査(小学生までにプロ野球チームのファンになった人が3分の1以上を占めているというアンケート結果もあります)から見ても、理にかなった戦略だと思います。

3)チケット単価を上げる

価格戦略は会社にとって、非常に重要です。サービスの価値に見合った価格を設定し、売り上げを最大化させなければなりません。

千葉ロッテでは従来、球場の座席の価格は、大まかなエリアに分けて設定していました。ですが、同じエリアでも前方と後方とでは見え方が違う、つまり試合観戦という点での価値が異なることもありました。そこで、きめ細かい料金設定を行い、メリハリをつけることにしました。これは、価値があるものを正当に評価してもらうためです。例えば最前列の座席は、クッションの利いた高級なシートに変え、テーブルを付けて足元に荷物入れを設置した「サブマリン・シート」として高価格で売り出すことにしました。

また、従来は記者席だった、バックネット裏という観戦者にとって最高のスペースを、高級ビールやソフトドリンク飲み放題、オードブル食べ放題のVIP席に改装しました。改装費用に7000万円ほどかけましたが、ネーミングライツを販売し、座席が即完売となったことで、2年で投資回収できました。当初は記者からの反発もありましたが、「会社を立て直すためには背に腹は代えられない」と腹をくくり、3階席に移動してもらいました。

黒字に転換した後の2019年には、さらに思い切った施策を行いました。外野席からグラウンドにせり出す形で、「ホームランラグーン」という座席を新設しました。これには、外野手と同じような目線で観戦できる単価の高い座席数を増やすことに加えて、「野球の華」ともいえるホームラン数を増やして試合を面白くするという狙いもありました。他球場と比べたホームランが出る確率の指標を、「ホームランファクター」といいます。2016年から2018年までの千葉ロッテのホームグラウンドでのホームランファクターは、平均の1よりはるかに低い0.72でしたが、ホームランラグーンの設置によって2019年は1.07へと上昇しました。

記者席の移動や、試合結果にも影響するホームランラグーンの設置は、会社としては社内の誰もが良いと感じることですが、外部からの反発や調整の難しさも想定されました。そのため、実現困難だと考えて、提案をためらっていた社員もいたのではないかと思います。そのようなことは、やはりトップが「いいんだ、やるんだ」と提案し、実行すべきだと思います。

ただし、私は基本的に自分からは提案せず、なるべく社員からの発言を待つようにしています。社長の提案には社員も忖度(そんたく)して賛同するので、勘違いして「裸の王様」になってしまいがちです。とはいっても、どうしても「あれをやったらどうだ」というものは、つい出てしまうものですが……。

4)数値化によって20年以上固定していた球場内の飲食店に競争原理を導入

長らく取引していた発注先を変更するのは、中小企業にとっても大きな決断を伴うことでしょう。そのようなときに活用すべきなのが、「数値化による評価」です。

新規のファンの獲得によって高めた集客力を売り上げ増につなげるには、チケット販売だけでなく、飲食物やグッズの販売を無視できません。むしろこちらのほうが経営努力による「伸びしろ」が大きいといえます。

ところが千葉ロッテの場合、私が社長に就任するまで20年以上にわたり、同じ業者が球場内の飲食店を運営していました。それによって「球場の名物」があり、固定ファンがいたのも確かですが、競争原理が働いていないことに疑問を感じました。広く業者を募ることを提案すると、社員からも反発を受けました。

そこで私が行ったのが、「数値化による評価」です。「売り上げ」「オペレーション」「衛生」「接客態度」などの評価項目を作って業者に改善を促し、1年間で基準に達しなかった業者には立ち退いてもらいました。これによって売り上げは飛躍的に伸び、接客サービスも向上しました。「お客さまのために何ができるか」を考えれば、必要な措置だったと思います。

5)ブランド作りとSNSでの発信

オーナーからの指令にもあった、「ロッテブランドを高める」は大きな課題ですが、子会社としてグループ全体のブランディングを行うのは困難ですので、千葉ロッテとしてのブランド価値向上を目指すことにしました。

球団経営の特徴は、ある意味で「商品」ともいえる選手や監督が頻繁に入れ替わることです。会社の旗艦商品を刷新する場合、とても大きな経営判断を伴うでしょうが、プロ野球の場合は看板選手の引退やトレードが少なくありません。それでも変わらずに千葉ロッテというチームを応援したいと思ってもらえる、「これが千葉ロッテマリーンズだ」と誇れるものを見つけるために、社内で自由に話し合いをしました。

そこで挙がったブランド候補を集約した結果、千葉ロッテのブランドを「意外性」「日本一の応援」「突飛なファンサービス」の3つに決めました。

ブランド力を高めてファンを増やすには、メディアへの発信が大切です。しかし、試合結果以外に、チームの特色をメディアを通じて伝えられる機会は多くありません。そこで活用したのがSNSです。選手たちが試合前に円陣を組む姿、勝利後のロッカールームでリラックスして試合を振り返る姿、ドラフト会議の前に意気込むフロントや監督を映した「ドラフト会議舞台裏」など、球団広報が積極的に発信することで、ファンに感情移入してもらえる取り組みを進めました。

6)メディア対策のためにトップとして一肌脱ぐ

SNSでの発信力は高まっていますが、やはりプロスポーツは、「メディアに取り上げられてなんぼ」というビジネス構造であることには変わりません。

いろいろなチャレンジをする中で、メディアからの注目を集めることに成功したのが、「つば九郎(くろう)移籍問題」でした。2014年末にフリーエージェント(以下「FA」)で千葉ロッテから東京ヤクルトスワローズ(以下「東京ヤクルト」)に移籍することになったエースピッチャーの人(鳥)的補償として、私が東京ヤクルトのマスコットキャラクターである「つば九郎」の移籍を要求する緊急記者会見を開いたのです。FA制度の補償の仕組みを知らなかった私のボケから生まれた話なのですが、多くのメディアに取り上げてもらうことができました。さらに、東京ヤクルトから断られた後、東京ヤクルトの遠征時だけつば九郎をレンタルすることを再提案する形で、もう一回記者会見を開くことができました。

世間では私がメディアに出たがっていると勘違いされているようですが、私は本当は出たくもなんともないのに、社員たちから利用されているだけです。頑張って企画している社員から、「社長、これやってください」と頼まれてしまうと、トップとしても、「いや、俺はやめておくよ」というわけにはいかない、というだけです。

ちなみに、つば九郎移籍問題の記者会見では、つば九郎への3年契約の年俸としてロッテのお菓子を提案し、オーナーの人気商品を宣伝することもできました。

これで山室晋也氏インタビューの前編は終わりです。後編では、社員の意識を変えることで組織の再建につなげていった方法についてお伺いしています。熱い内容にご期待ください。

【参考文献】
「経営の正解はすべて社員が知っている」(山室晋也、ポプラ社、2021年2月)

山室晋也(やまむろ しんや)
1960年1月25日、三重県生まれ。エスパルス代表取締役社長。
1982年に立教大学経済学部卒業後、大手銀行に入行。4店の支店長を経て、2011年4月から執行役員。2013年4月、銀行子会社の代表取締役社長に就任。
2013年11月に千葉ロッテマリーンズ顧問に就任し、2014年1月から取締役社長。2019年12月、退任。
2020年1月、清水エスパルスを運営するエスパルス代表取締役社長に就任し、現在に至る。
著書に「経営の正解はすべて社員が知っている」(ポプラ社、2021年2月)。

以上(2021年11月)

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画像:千葉県

職場のハラスメント撲滅月間

1 「いじめ・嫌がらせ」に関する相談件数

都道府県労働局などの総合労働相談コーナーに寄せられる民事上の個別労働紛争の相談内容の中で、「いじめ・嫌がらせ」は9年連続で最多となりました。

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大企業は、令和2年6月にハラスメント防止措置が法律上義務化されていることから、「いじめ・嫌がらせ」ではなく「労働基準法等の違反の疑いがあるもの」として別に計上されおり、過去の相談件数と単純比較はできないものの、件数は高止まりの様相を呈しています。また、相談全体に対する割合もおおむね4分の1を占める状況が続いており、職場におけるハラスメントの防止対策は各企業において喫緊の課題と言えそうです。

2 自主点検の実施

来年4月から中小企業にもパワーハラスメントの防止措置が義務化されることを受けて、東京労働局では、現時点における取り組み状況を確認するための「自主点検票」を作成し、一部の中小企業に対し点検を要請しました。その点検票には、以下の講ずべき措置を10個の項目に区分して記載しています。

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「自主点検票」は、東京労働局のホームページ上でダウンロードが可能となっています。また、取り組みが未了の事項については、参考となる「自主点検解説動画」や資料なども合わせて公開されていますので、準備を始める企業は活用してみてはいかがでしょうか。

東京労働局「パワハラ防止対策(改正労推法)自主点検」ぺージ
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/news_topics/kyoku_oshirase/_120743/jisyutennkenn.html

3 おわりに

パワーハラスメントの問題に関しては、過日、国内自動車メーカーの男性が自殺した事件で、高裁において、パワーハラスメントや過重労働が自殺の原因として、労災を認める判決を下したことがニュースになりました。同判決では、労災認定の基準として新設された「パワーハラスメント」の項目で審理され、名古屋高裁はその新基準に沿って労災と認定しました。これから何ら対策を講じない「パワーハラスメントの放置」は企業の責任問題にも発展することになります。経営上の重要課題として、職場のハラスメントの撲滅に取り組みましょう。

※本内容は2021年10月14日時点での内容です

(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)

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【朝礼】困っているのは、私たち以上にお客さまです!

おはようございます。最近、表情に元気がない人が多いように感じます。確かに、最近は会社の業績も、世の中全体も暗い話題が多いので、気がめいってしまいがちなのは分かります。ですが、暗い顔ばかりしていても仕方ありません。そんなときこそ、私たちが事業を行うことの意味を考えて、原点に立ち返ってみましょう。

今さら言うまでもないことですが、そもそも会社の事業は、お客さまのニーズがあって初めて成り立つものです。利益が出るということは、私たちが提供するサービスに対して、お客さまがそれだけの価値を見いだしていただいているということです。つまり、これまで会社が利益を得てきたのは、私たちが提供するサービスが、お客さまの役に立っていたからです。

では、利益が出ていない今は、私たちの提供するサービスが不要になったということでしょうか? 私は、決してそのようなことはないと思っています。私たちの提供するサービスが陳腐化したわけではなく、また、お客さまのニーズが大きく変化してしまったわけでもありません。ただ、純粋にコロナ禍という外部要因によって、私たちのサービスをお客さまに届けにくくなっているのだと思います。

もちろん、コロナ禍によってお客さまのニーズは変化した部分もありますが、これは意図的な変化ではなく、コロナ禍という制約を受ける中で、やむを得ずニーズが変化しているだけです。

そのように考えると、売り上げや利益が減っている私たちも困っていますが、これまでサービスを利用して満足していただいていたお客さまのほうが、もっとお困りなのではないかと思いませんか?

分かりやすい例えは飲食店です。飲食店側も来店客が減って困っていますが、その裏には、コロナ禍で飲食店に行けずに困っているお客さまが大勢いらっしゃるわけです。ですからお客さまは、飲食店に行けなくなった代替として、飲食物の持ち帰りや宅配サービスを利用されているのです。

私たちの事業も同じです。コロナ禍の制約によってサービスを受けることができなくなった、もしくは受けたいサービスが変化してしまったお客さまに対して、私たちのほうから歩み寄っていかなければなりません。つまり、コロナ禍の制約があってもお客さまがサービスを受けられるような方法を考え、必要であれば新たな代替サービスを提供するようにしなければいけません。

自分本位に物事を考え、ただ売り上げや利益が減って「困った」と言っているだけでは、私たちの存在意義はありません。私たちのサービスをご利用できずに困っているお客さまに寄り添い、改善できる方法を考えましょう。従来と同じやり方にこだわる必要はありません。柔軟に、お客さまにとって何が良いか考えてみましょう。私も知恵を振り絞りますので、皆さんも良いアイデアが浮かんだらぜひ提案してください。

以上(2021年10月)

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画像:Mariko Mitsuda