「差分」でシンプルに比較するファイナンスは経営の味方/経営者のためのファイナンス講座(8)

1 経営者の意思決定の裏に、ファイナンス思考あり

経営は、大きなことから小さなことまで、日々、意思決定の連続です。新規の得意先を開拓するかどうか、増えつつある管理業務を誰にやってもらうかなど。私自身も小さな会社を経営していますので、決めなくてはいけないことの多さに、夕方にはへとへとになることもしばしばです。ただ数が多いというだけならまだしも、大事な意思決定に対する判断を間違えてしまうと、経営に打撃を与えることになります。

ファイナンスはこのような状況を解決するのに、とても役に立つツールです。あまたある意思決定を正しく、また負担を減らしてくれます。お金を尺度として情報を整理することで状況が理解しやすくなり、判断のポイントが見えてくるのです。

シリーズの最終回となる今回は、ファイナンスのベースにある考え方を見てみましょう。ファイナンスに限らず、広く意思決定を行う場合にも使える、とても便利な考え方ですので、押さえておくといいと思います。

2 比較を制する者が、ファイナンスを制する

ファイナンスのベースにあるのは、

「比較」というとてもシンプルな考え方

です。日常生活でも、天気予報に出てくる気温情報に比較が用いられています。「明日の最高気温30度」に加えて、前日比+2度といった比較が必ずセットで表示されます。30度という実数だけでは、多くの人は正しく情報を理解できないのです。自分が過ごした今日と比べることで、「明日の方が少し暑い」と理解できます。このように、私たちは日常でも比較を活用しているのです。

とあるデータサイエンティストが、「分析とは比較すること」と言っているのを聞いたことがあります。これは、財務数値を扱うファイナンスでも同じです。比較という一見シンプルな手法は、多くのことを教えてくれます。

3 メリハリをつけて、差分だけに注目する

比較するときには、差分だけに注目すると効率的です。例えば、シリーズ第4回(意思決定時に欠かせない「機会コスト」と「埋没コスト」/中小企業経営者のためのファイナンス講座(4))で紹介した機会コストと埋没コストいうファイナンス特有の用語も、差分の性質を扱っています。それだけ、ファイナンスは差分を大事にしているのです。

工場の機械が老朽化し、取り換えが必要な場合を考えてみましょう。機械Aと機械Bが候補に上がっているなら、両者の違いだけに目を向けます。機械Aは年間保守料が100万円だけど、機械Bは80万円であれば、機械Bの方が20万円お得ですので、この差分は押さえておく必要があります。一方、耐用年数がどちらも5年で同じということであれば、耐用年数に関してはどちらを選んでも変わらないわけです。購入相手からは、年間保守料など差分の部分を中心に説明を受けたり、交渉したりすればよく、差分のない耐用年数については根掘り葉掘り聞く必要はないでしょう。

4 比較対象を間違えない

仮に、現在稼働している機械の年間保守料が50万円だったとしましょう。これに比べると、機械A、機械Bどちらも高くなります。しかし、このことは意思決定においては考慮しません。この機械が主力製品を製造するのに使用しているもので、老朽化したのであれば、取り換えのために投資せざるを得ないからです。

どうしても通常の感覚では、比較対象を現在に置きがちです。しかし、それはファイナンスの観点からは正しくありません。気持ちとしては、今より高くなるというのはがっかりしますが、感情と理性を切り分けます。理性の面から、現状維持という選択肢がない以上、現実として選び得る案だけを検討対象にしましょう。余計なことに頭と時間を使う余裕は、中小企業にはありません。

5 見えないコストこそ、見落とさない

もし機械Aと機械Bで稼働させるために必要な工数が異なるようであれば、それも考慮する必要があります。保守費用や耐用年数はパンフレットなどに書いてあるので目がいくと思いますが、見落としがちなのが、付随して発生する社内のコストの差分です。もし機械Aは、機械Bよりも作業員が関わる時間が少なくて済むのであれば、保守費用が高くても採用すべきかもしれません。

シリーズ第2回(ファイナンス特有の「見えないコスト」の考え方/中小企業経営者のためのファイナンス講座(2))で、現金を管理することに伴うコストの話をしましたが、これと同じです。社内ですでに発生している人件費などのコストの変化に気が付かず、機械本体の代金など、請求書によって実際に支払いが生じるものばかりに目がいきがちです。このような社内的なコストが漏れなく把握されているのか、慎重に検討しましょう。

6 シンプルに考えることが、意思決定では一番大事

ファイナンスはお金を尺度として考えることが特徴であり、中小企業の意思決定の場面での使い方をこれまで見てきました。一方で、そのベースにあるのは、今回ご紹介したような普遍的で何にでも使える、とてもシンプルな比較という考え方です。

よく通販の広告では、サプリメントから通信講座まで、「1日当たり〇〇円」という表示を見かけます。これも、お金を尺度としながらも、身近な1日という単位を用いることで、買い手がその金額感を理解し、比べやすくし、さらには購入という意思決定を促すことを目的としています。

シンプルに考えることこそが、意思決定を間違えずに、かつスムーズにする最大のポイントなのです。情報量が多いことは一見良いことに思えますが、多くから1つの結論を選び出す意思決定においては、むしろ逆です。意思決定だけに時間を避けるわけではありません。また、経営には中小企業であっても多くの人が関わります。さらには、膨大な数値情報を一度に処理できるほど、人間は賢くありません。このような状況の中で、最小限の時間で間違いのない結論に至るカギは、単純さにあるのです。

7 気負わず、まずはできるところから取り組もう

全8回にわたって見てきましたファイナンスは、数字を使うことで、私たち中小企業にとって意思決定を楽にしてくれる、味方のツールです。「ファイナンス」を気負わずに、どうやって楽ができるかという視点で、経営者や管理部門の皆さんに興味を持っていただけたらと思います。最も大事なのは、激変する環境の中で多忙な日々をなんとか乗り切っていくことです。「これならできそう」という簡単なことから、ぜひ取り組んでみていただけたら幸いです。

以上(2021年10月)
(執筆 管理会計ラボ 代表取締役 公認会計士 梅澤真由美)

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“円満”退職のための「退職合意書」作成のポイント

(日本法令ビジネスガイドより)
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問題社員“円満”退職のための「退職合意書」作成のポイント

1 はじめに

能力不足や業務命令違反、規律違反等の問題がある社員について、雇用の継続が困難なときも、企業は、解雇ではなく、合意による退職で解決することが必要です。つまり、退職勧奨による解決が原則です。解雇による解決は、不当解雇であるとして訴訟を起こされた場合、裁判所で解雇が無効と判断されてしまい、多額の金銭の支払いと雇用の継続を命じられるリスクが大きいからです。筆者は、問題社員対応に悩む顧問先を訪問し、問題社員と直接話し合いをし、合意による退職での解決を実践してきました。

では、問題社員に対する退職勧奨による解決の場面で、どのような点に注意すべきでしょうか。本稿では、退職合意書の作成のポイントに焦点を絞ってご説明します。退職合意書については、最近の裁判例で、退職合意書にいわゆる「清算条項」を入れていても、退職後の従業員による割増賃金請求を認めたものが出ている点等にも注意を要します。

以下で、退職届とは別に退職合意書を作る必要性や、退職合意後にトラブルにならないようにするための個別の事案ごとの作成上の注意点について解説していきます。それでは見ていきましょう。

2 「退職合意書」作成の必要性

退職合意書の作成が必要になる理由としては、大きく分けて以下の4つを挙げることができます。

  • 問題社員が退職後に転職先が決まらず、「退職は意思に反するもので、解雇だ」と主張して復職を求めてきた場合でも、復職を断れるようにするため
  • 問題社員からの退職後の金銭請求や訴訟提起を防ぐため
  • 退職後の会社に対する誹謗中傷や退職条件についての第三者への口外を防ぐため
  • 退職を会社が承諾したことを明確にし、退職の撤回を防ぐため

(1)「退職は意思に反するもので、解雇だ」と主張してくるリスクに対応する

退職勧奨の結果、問題社員との間で退職の合意が成立したとしても、退職届も退職合意書も作成していなければ、そもそも、従業員の意思に基づく退職だったことを明確に示す証拠がありません。つまり、意思に基づく「退職」なのか、会社による「解雇」なのかを示す証拠がありません。そして、解雇について「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」は、従業員は解雇の無効を主張して雇用の継続を求めることができます(労働契約法16条)。

口頭で問題社員から「退職に応じます」と言われて、その時は円満に退職してもらったと思っていても、退職届や退職合意書がなければ、会社は安心するべきではありません。退職した問題社員が、後になって「会社から不本意な扱いを受けた」という気持ちが芽生え、さらに次の職も決まらなければ、退職を取り消したいという気持ちになり、「自分は不当に解雇された」と主張し始めることはよくあることです。そして、退職届や退職合意書などの書面が作成されていないときは、「口頭で従業員との間で退職の合意が成立していた」という会社側の主張が認められることは稀です。

過去の裁判例でも、社長が「新しい事務員も雇ったことだし、残業をやめてくれ。残業を付けるならその分ボーナスから差し引く」、「来月からは残業代は支払えない。残業を付けないか、それが嫌なら辞めてくれ」と告げたところ、従業員が「それでは辞めさせてもらいます」と応じた事案が問題になりました。一見すると従業員の意思による退職ともいえそうですし、会社はそのように主張しましたが、裁判所は、自発的意思による退職とはいえないと判断し、社長の発言は解雇の意思表示に当たるとして、解雇予告手当の支払いを命じています(大阪地裁判決平成10年10月30日)。

解雇ではなく従業員の意思に基づく退職であったということを明確にするためには、退職届あるいは退職合意書を作成することが必須です。

(2)問題社員からの退職後の金銭請求や訴訟提起を防ぐ

では、退職届があれば退職合意書は必要ないかといえばそうではありません。退職に向けた話し合いの場面で、問題社員の側から、例えば未払い残業代を請求されるケースもあります。仮に、会社がこれに応じて、未払い残業代分を300万円支払い、従業員から退職届を提出してもらったとします。この場合、退職合意書がなくても、会社から300万円の振込みをした履歴は残りますが、振込みの履歴だけでは300万円が何のお金かはわかりません。

その結果、退職後に問題社員から「あの300万円は退職金だ。残業代が未払いになっているので残業代を払え」という要求がされ、支払いを断れば、訴訟に発展するリスクがあります。こういった退職後の金銭請求や訴訟提起のリスクに対策するためには、退職後に一切の請求を認めないことを内容とする退職合意書の作成が必要です。このような後日の金銭請求の禁止については、退職届で対応するよりも、退職合意書に記載するほうが対応しやすく、退職届とは別に退職合意書の作成が必要になる理由の大部分を占めます。

(日本法令ビジネスガイドより)

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それは性格や資質の問題ですか?~苦手な課題を克服する方法~

書いてあること

  • 主な読者:「苦手」なことがなかなか克服できず、悩んでいる中堅社員
  • 課題:苦手なことは克服できないことだと思いんでいる
  • 解決策:できる人の話しを聞く。明確な評価基準を設けて克服していく

1 取引先の担当者との関係

課長との昼食を終えてオフィスに戻る途中、中堅社員のAさんは、偶然、取引先の担当者のBさんを見かけました。すると、課長は「こんにちは。Bさん!」と元気よく声をかけました。その後、雑談を交えながら、最近の業況や、自社製品に対する評価などについて話をし、笑顔で挨拶を交わしてBさんと別れました。

Bさんをはじめ、どの取引先の担当者とも、真剣な仕事の話だけではなく、ときには友人のような親しい雰囲気をつくりながら話をしている課長の様子を思い浮かべて、Aさんは課長に話かけました。

「課長は、お客様との関係づくりが上手ですよね。私は、何度もお会いしているお客様でも、固い雰囲気が抜けないんですよね。課長のようになりたいと思っているのですが……。性格的な問題もあるのか、なかなかうまくいかないんですよね…」

「私だって、Aさんとそれほど変わらないよ。率直にいうと、今でも人付き合いは得意だとは思っていないよ。でも、それは、努力次第でなんとかなるものだよ」。そういって、課長はAさんの様子をうかがっています。

Aさんは思いました。努力次第か…。でも、まずは、自分の性格を直さなきゃダメなのかな……。

2 得意・不得意は性格の問題?

さまざまな仕事をこなしていくと、自分にとって得意な仕事、苦手な仕事というのは、どうしても出てきます。苦手なことは克服していくように努力しなければなりませんが、その際に問題となるのが、自身の「性格」や「資質」です。

「この仕事は自分の性格には合わない」と考え、それを克服することを半ばあきらめてしまうことはないでしょうか。しかし、そのほとんどは、実は、単なる「苦手意識」の問題にすぎません。代表的な例は人付き合いです。人付き合いというと「社交的な性格か否か」など、性格や資質などによって得意な人、苦手な人が決まるように思われがちです。

しかし、場の雰囲気をつくるのが上手な人など、一見、人付き合いが得意そうな人でも、課長のように「今は違うが、以前は人付き合いは苦手だった」「今でも、人と話すのは得意ではない」という人は少なくありません。こうした人たちは、努力を重ねて人付き合いという苦手な課題を克服しているのです。

そこで、以下では、人付き合いを例に、苦手な課題を克服するためのヒントを紹介します。

3 得意な人に話を聞いてみる

一番の近道は、得意な人、特に「以前は、苦手だった」という人に、直接話を聞くことです。そうした人は、課題克服のため、試行錯誤を繰り返しながら、効果的な改善方法などを把握しているものです。

人付き合いであれば、「営業の際に、同行した上司が話をした順番、内容、話題などをメモしてまねするようにしていた」「営業訪問先を想定したロールプレイングを同期の仲間と毎日、行った」「話し方教室に通ってみた」「趣味のサークルに入会するなどして、人と話す機会を意識的に増やした」など、実際に取り組んだことや、効果の有無など、具体的な話を聞くことができます。そうした経験談は、自分がすべきことを考える際に参考になるはずです。

4 得意な人の行動を見て盗む

得意な人の行動を、継続して観察してみましょう。教えてくれたことを当の本人が実践している姿などを見ることで、自分がすべきことを、具体的にイメージしやすくなります。

また、得意な人は、すべてを言葉で教えてくれるわけではありません。無意識に行っていることなど、言葉では伝えきれないことはたくさんあります。こうした点は、数回見ただけでは分かりませんが、継続して見ていくと、その人の特長や行動パターン、うまくいっている秘訣など、多くの気付きを得ることができるはずです。

得意な人に聞いたことや、観察して気が付いたことをまねしてみるのも大切です。中には、「自分にはできない」と思うようなこともあるかもしれません。しかし、それらは、得意な人が実践していることなのですから、「できる・できない」などと思いを巡らすのではなく、「とにかくまねしてみよう」というスタンスで臨むことがポイントです。

5 明確な評価基準を設ける

自分が実践できているか否かを、簡単、かつ明確に判断できる基準を2つ、3つ設定します。苦手なことを克服するためには、少なからず、今までの自分の行動パターンを変える必要があります。そのためには、常に自分の行動をチェックしながら、新しい行動パターンを自分の中に定着させていかなければなりません。

例えば、人付き合いであれば「お客様と話す機会を増やす」といった曖昧な基準ではなく、「毎月1度はお客様を訪問する」「常に、相手より先に挨拶をする」といったように、「できた」か「できなかった」が一目で判断できる基準を設けるとよいでしょう。

自分で自分の行動を常にチェックできるようになると、できなかったときには「次は頑張るぞ」というモチベーションの源泉になりますし、できたときにはそれが少しずつ自信へとつながっていくものです。

そして、自分で決めたことができるようになったら、新たな基準を設けるようにします。そうすることで、次第に、課題を克服できるようになっていくでしょう。

6 苦手意識は早めに克服しよう

人付き合いに限ったことではありませんが、苦手意識を感じている課題は、早いうちに克服しなければなりません。先延ばしにしては、「お客様を前にすると過度に緊張してしまう→うまく話せない→ますます苦手意識が強くなる」といったような悪循環に陥って、克服することが一層難しくなってきます。もし、苦手意識を感じている課題があれば、積極的に克服していきましょう。

以上(2021年10月)

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テレワークの実施率と今後の在り方について

1 コロナ禍におけるテレワーク実施率の推移

先般、総務省が公表した「提言:ポストコロナの働き方「日本型テレワーク」の実現」関連資料によると、企業のテレワーク実施率は、2020年3月の17.6%(3月2日から8日)から、1回目の緊急事態宣言終了の頃には、56.4%(5月28日から6月9日)に上昇しました。

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しかし、緊急事態宣言解除後は低下し、11月には30.7%(11月9日から16日)まで低下しました。2回目の緊急事態宣言時には38.4%(2021年3月1日から8日)へ再上昇しましたが、1回目の緊急事態宣言の際の実施率とは水をあけられている状況です。

2 直近のテレワーク実施率

それでは、オリンピックを間近に控えた6月のテレワークの実施状況はどのようになっているでしょうか? 株式会社東京商工リサーチの直近の調査結果を見ると38.3%(6月1日から9日)となっており、3月調査とさほどの変化は見られませんでした。

もう少し、掘り下げて調査結果を見てみると、在宅勤務を「現在、実施している」企業のうち、「従業員の何割が在宅勤務を実施していますか?」の問いについては、最多は「1割」の25.6%(1,013社)、続いて「2割」14.05%(555社)、「10割」13.72%(542社)となっています。

政府は「出勤者数7割削減」を呼びかけていましたが、達成している企業は29.0%(1,149社)でした。規模別では、7割以上の削減は、大企業23.8%(1,051社中、251社)、中小企業は30.9%(2,898社中、898社)という結果となっています。

3 おわりに

前述の通り、昨年の緊急事態宣言の発令の際に、急速な広がりを見せたテレワークですが、それ以降のテレワーク実施率は、緊急事態宣言に多少反応しつつも、落ち着いた数値となっているようです。

パーソル総合研究所が本年7月30日から8月1日に行った「第五回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」によれば、テレワークを行っていない理由として、「会社がテレワークに消極的で、実施しにくい」という理由が10.3%を占めています。このことは、十分な準備を行わないまま、テレワークが導入された結果、テレワーク本来の良さやテレワークで出来るようになったことよりも、生産性の低下等の課題にフォーカスされてしまったからではないでしょうか。

しかしながらテレワークは、感染症対策の観点だけでなく、長時間労働の抑制やワークライフバランスなどの観点からも、働き方の選択肢として維持されることが望まれます。そして、近時の求職者も高い関心を示していることから、今後はテレワーク制度の有無も企業選びの際のポイントのひとつになるかもしれません。

コロナ禍はいずれ終わります。しかしながら、労働力の不足は長期的に企業の人材戦略に影響を及ぼすでしょう。出勤抑制が求められるからではなく、将来を見据えたテレワークの定着、改善に取り組んでみてはいかがでしょうか。

※本内容は2021年9月2日時点での内容です

(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)

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強風・大雨時の運転(2021/10号)【交通安全ニュース】

活用する機会の例

  • 月次や週次などの定例ミーティング時の事故防止勉強会
  • 毎日の朝礼や点呼の際の安全運転意識向上のためのスピーチ
  • マイカー通勤者、新入社員、事故発生者への安全運転指導 など

今年も本格的な台風シーズンになりました。昨今は台風が大型化、強力化しているだけでなく、局所的な集中豪雨による被害も大きくなっています。

台風や集中豪雨などの気象予報については事前に情報収集し、強風・大雨が予想される地域、時間帯の運転は避けるようにしましょう。それでも運転せざるを得ない場合の注意点について以下にまとめてみました。強風・大雨時に運転する場合には、いつも以上に注意を払って運転しましょう。

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1.強風時の運転

■ 強い横風でハンドルを取られやすくなるので、十分に減速して慎重にハンドル操作を行いましょう。特に高速で走行しているときに注意が必要です。トンネル出口、切通し出口、橋の上や大型車の横を通過する時などは、あおられやすいので減速するなど注意しましょう。

■ 市街地を走行していると看板やトタン板などの飛来物があるかもしれません。被害を受けないよう、できるだけ幹線道路を走行しましょう。

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2.大雨時の運転

■ 大雨は視界を悪化させます。対向車の跳ね上げた水しぶきを浴びると一瞬視界を奪われ、周囲の危険を認知しづらくなります。ブレーキの効きも悪くなります。大雨時には十分に速度を落とし、車間距離を広めに取りましょう。また、周囲を走る車や歩行者等に自分の存在を知らせるためにも、昼間でもヘッドライトを点灯して走行しましょう。

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■ 高架下や地下トンネルなどの低い場所は冠水する恐れがあります。冠水した道路を進行すると、エンジンが故障して動けなくなる可能性があります。周囲の地面より低くなっているような場所の通行はできるだけ避けましょう。

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■ 土砂災害や高波、河川の氾濫に巻き込まれないよう注意が必要です。山沿いや海岸・河川の近くを走るのは危険です。できるだけ避けた経路を選択して下さい。

【参考】気象庁では、大雨による「土砂災害」「浸水害」「洪水災害」の危険度分布をリアルタイムで公開しており、以下の政府広報オンラインサイト※が参考になります。

※ 2021年6月2日 この雨、大丈夫? 迫る災害を一目で確認!危険度分布「キキクル」
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202008/1.html

3.台風通過後の運転

■ 強風による飛散物・落下物が道路に散乱していることが想定されます。早めの出発、慎重な運転を心がけましょう。

■ 排水の悪い箇所では冠水状態が続いている場合もあります。冠水場所の通行には注意しましょう。

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以上(2021年10月)

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【従業員が交通事故!】責任割合はどうなる? ②一時停止のある交差点

書いてあること

  • 主な読者:社有車の事故防止に力を入れたい経営者や運行管理責任者ならびに運転者
  • 課題:交通事故の基本的な責任割合や未然防止策を知りたい
  • 解決策:過去の裁判例に基づく基本的な責任割合と場所や状況に応じた事故防止策を理解する

1 事故事例と状況を把握します。

今回の事故状況はこちらです。A(自社の青い車)が、交差点でB(相手方の赤い車)と接触してしまいました。Aの進行方向に、一時停止の標識があったそうです。

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【A車:自社車両 B車:相手方車両】

前回の交差点での確認ポイントをおさらいしてみましょう。

①信号の有無
②双方の道路幅
③交通規制の有無
④センターラインの有無
⑤双方の速度

また、最近ではドライブレコーダーを搭載した車両も多くなってきました。ドライブレコーダーの映像は責任割合を決定するうえで非常に有効ですが、機種によっては時間経過するとデータが自動消去されるものや、走行すると上書きされてしまうものもありますので、事故を録画したデータの保全も重要です。

2 今回の事故事例の基本的な責任割合を見てみましょう。

1)責任割合の決まり方は?

双方に責任が生じる事故の場合、主に加入している保険会社の担当者が窓口となり、類似した過去の裁判例をもとに、実際の事故状況に応じて双方の責任割合に修正を加えながら決定していきます。

2)今回の責任割合は?

過去の裁判例より、A(自社の青い車)80%:B(相手方の赤い車)20% が基本の責任割合となります。

今回はどちらの道路も同じ幅でセンターラインが無く、双方同程度のスピードで接触した場合の基本の割合です。

道路交通法では、一時停止の規制がある場合、車両等には停止線の直前での一時停止義務が定められています。また、交差する道路を走行する車両等の進行を妨げてはいけない(道路交通法43条)とも定められています。

一方、相手方にも、交差点を通行する車両に対する注意義務(道路交通法42条1項)があるため、20%の責任が発生します。

※実際は、それぞれの事故状況に応じて個別に決定されます。そのため、記載の内容とは異なる結果になる場合もあります。

3 今回の事故事例を未然に防ぐポイントとは。

一時停止の規制標識や停止線が、交差点より少し手前に設定されていることが多いのには理由があります。建物やブロック塀などで見通しの悪い場所から突然、歩行者や自転車が進行してくる可能性もあるため、少し手前で停止しないと接触してしまう危険があります。

  • まずは、一時停止の標識や停止線で必ず停止
  • 次に、左右の安全が確認できる地点まで、減速しつつ慎重に進む(カーブミラーも活用)

車の運転は一人で行う業務のため、運転者本人が「事故を絶対に起こさない。」という意識を強くもち、事故を起こさない運転行動を自主的に行うことが重要です。

また、管理者は運転者に対し、組織的なサポート・指導・管理を行う必要があります。

例えば、ある運送会社では、事故に繋がりやすい性格や心理状態を診断する無料のサービスを運転者全員が受検し、心の穏やかさや慎重さなどの各運転者の診断結果を踏まえたきめ細やかな指導を行っています。

その他、ドライブレコーダーを活用した安全運転指導や教育サービス、無料の安全運転セミナーを提供している機関もありますので、それらを利用して自動車事故防止活動をしていくのも良いでしょう。

以上(2021年10月)

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本記事で紹介している責任割合は、過去の裁判例を参考にした基本的な割合です。実際は、それぞれの事故状況に応じて個別に決定されます。そのため、記載の内容と異なる結果になる場合もあります。

【朝礼】思ったことをそのまま口に出してはいけません

「伝え方」に関する書籍がベストセラーになるなど、ビジネスでは「自分の考えを相手に正確に伝えるスキル」が重要視されます。特にある程度の役職で影響力が大きかったり、法人対法人で取引する際の窓口担当者になったりした場合、伝える力は一層大事になります。

例えば、この会社で最も影響力が大きい私が相手に対する伝え方を間違えると、それだけで取引が終わってしまう恐れがあります。一方、窓口担当者の場合は、伝え方を間違えたくらいではいきなり取引がなくなることはないかもしれません。しかし、相手の社内における当社の評判は、確実に悪くなります。この恐ろしさが分かるでしょうか。相手にとって「当社が大切ではない」ということになれば、何かの対応は他よりも後送りにされますし、いざというときに本気で助けてくれません。

先日、社長仲間で話をしていたとき、その中の1人の社長の会社に届いたメールが話題になりました。そのメールには、「取引を終わらせようとしているのか?」と思えるような、辛辣な内容が書かれていました。しかし最後に、「怒りにまかせて、失礼なことを言ってしまいました」と謝罪をしています。相手としては、この最後の謝罪で、それまでの内容をご破算にできると思ったのかもしれませんが、甘い話です。法人対法人の継続取引で、一方的に売ったけんかを、たった1行の謝罪で勝手に終わらせることなどできません。

それでもその社長は、相手がそこまで立腹しているのだからと自分たちの落ち度を反省し、すぐに今後の対策などをまとめて、相手の意見や要望を確認するメールを返信したそうです。しかし、それには何の返事もなく、相手はこれまで通りに取引を続けています。恐らく、一時の怒りの感情をメールで送って、すっきりしたのでしょう。

さて、この話をしていた場には、その社長と私の他にも、同業界の社長が数名いました。つまり、その怒りのメールを送ってきた相手の会社のことは、私たちの中ですっかり共有されました。それどころか、今、私が皆さんにお話ししているのと同じように、他の社長も、自社の社員や別の社長に話しているはずです。

今どきは、ネットの世界におけるネガティブ情報の拡散が問題になりがちですが、今回のようなリアルの世界では、情報は当事者の感情が込められて伝わります。ひとたび悪評が立てば、もはや“火消し”をすることはできないかもしれません。

「伝え方」に関する書籍では、シーン、話す順番、言葉の選択などが多く紹介されています。しかし、テクニックを意識するよりも大切なのは、「思ったことをそのまま口にしたり、メールで送ったりしない」ことです。特にネガティブな話をするときは、必ず一呼吸おいて、自分がこれから口にしようとしている内容を吟味してから、判断してください。当たり前ですが、これはビジネスでとても大切なことなのです。

以上(2021年10月)

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画像:Mariko Mitsuda

パートナーシップによる価値創造/経済性と社会性を両立させる中小企業のSDGs(3)

書いてあること

  • 主な読者:SDGsに本格的に取り組みたいけれど、企業としての損得勘定も気になる経営者
  • 課題:経済性と社会性を両立させるSDGsの取り組み方を知る
  • 解決策:SDGsのポイントはパートナーシップにある。自社の取り組みに自己満足せず、課題解決のためのつながりを広げていく

1 「自己満足」に陥らないSDGsを目指す

前回は、SDGsで経済的なメリットを享受するまでの「成果」と「出口戦略」を決める方法について、お話をさせていただきました。

企業が社会課題解決に取り組むときに陥りがちなのが、「自己満足」です。

設定した成果は、誰が幸せになっているのでしょうか? 誰が褒めてくれるのでしょうか? 出口戦略では、その「誰」を事前にしっかり決めておくことだとお伝えしました。最終回となる今回は、この、

自社のSDGsによって幸せになる人や、自社のSDGsを褒めてくれる人が「誰」なのかを深めることが、自社のSDGsの価値を高め、そして新たなイノベーションを生む

ことをお話ししたいと思います。

2 自社だけで取り組むSDGsは「真のSDGs」ではない

SDGsのゴール17に、「パートナーシップで目標を達成しよう」というゴールがあります。その他の16の政策的なゴールに比べると、ちょっと忘れがちですが、一般社団法人SDGsマネジメント(以下「SDM」)では、SDGsの中で最も重要なゴールであると位置付けています。

そもそも国連がSDGsを定める際に、なぜゴール17を設定したのでしょうか? それは、SDGsのゴール1~16を達成するためには、世界中の国の政府、国民、技術者、地域、企業といった、ありとあらゆる人たちが結束してSDGsに取り組むことが必要だからです。つまり、誰かがやってくれるのを待つだけでは達成されないし、主体的に取り組むにしても自分一人では達成できないのがSDGsなのです。

「自社だけでSDGsをやっている」と語る企業は、本質的にやり方を間違っている

のです。

では、どのようにパートナーシップを構築したらよいのでしょうか? SDMは、団体フィロソフィーに、「社会課題に対して、あらゆるパートナーと連携し、ビジネスという手法を通じて、新しい価値を生み出し解決をする」と定義しています。

変化が激しく、社会課題も複雑な現代において、中小企業が単体の機動力で対応することは、人的資源、経済的資源の観点から考えても困難です。だからこそ、SDGsのゴール17を活用し、それぞれの機関や立場の人の強みを活かした「オールスターチーム」を組むほうが、柔軟性と創造性が増すと考えております。

3 産官学の「オールスターチーム」を組む方法

では、具体的にはどのようにオールスターチームを組めばよいのでしょうか?

SDMでは、産官学モデルを推奨しています。もちろん、皆さんの会社は「産」の立場でパートナーシップを作っていくことになります。

ここでポイントなのは、

自社だけがもうかるための、上下関係のパートナーシップは作らない

ということです。

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1)社会課題だけを抽出した団体を立ち上げれば、「産」同士が連携できる

パートナーシップの中心となるのは企業の利益ではなく、社会課題解決です。そこでSDMでは、社会課題解決のための団体を立ち上げることをお勧めしています。

前回も触れましたが、SDMの共同代表である西岡徹人さんが経営するSUNSHOW GROUP(以下「SG」)の事例を紹介しましょう。SGでは、SDGsゴール5:「ジェンダー平等を実現しよう」のために、女性活躍や働き方改革を推進する団体として一般社団法人WOMAN EMPOWERMENT PLATFORM(WEP)を立ち上げ、女性社員が理事長を務められています。

確かにSGのSDGsゴール5に対する取り組みは先進的ですが、1社だけでは本質的な解決はできません。とはいえ、企業体であるSGの活動に、SGとは利害関係のない他の企業が関わるというのも難しい話です。

そこで、社会課題だけを企業体から抽出することで、利害関係のない他の企業もSGの取り組みに賛同しやすい仕掛けを作っているのです。

2)「産」同士が連携すると「学」と連携しやすくなる

社会課題解決のための団体の立ち上げは、「産」のパートナーシップだけに効果を発揮するものではありません。

次にパートナーシップを作るのは、大学や研究機関などの専門家・研究者といった「学」です。SDGsに関わる研究を進めている専門家は、多くの企業事例を求めていますので、本来、「産」と「学」はもっと積極的に交流すべきです。

なぜ中小企業と「学」との連携が進まないかというと、中小企業は自社の事例だけしか提供できないため、研究対象になりにくいからです。その課題を解決するのが、前述した社会課題解決のための団体です。「産」で集めた社会課題解決の企業事例を「学」に提供することで、社会課題解決の企業事例が、専門家の研究のための「エビデンス(数値的な根拠)化」するのです。

3)「産」「学」連携は「官」にとっても好都合

実は、企業事例が研究のためのエビデンス化するというのは、「官」である政府や行政にとっても好都合なのです。政府や行政の官僚にとって一番重要なのは、自分たちの政策の成果が出ることです。そのため、政策を立案するに当たっては十分な事例を検討する必要がありますが、政府などは中小企業との強いネットワークがあるわけではありません。

社会課題解決のための団体である「産」の私たちの事例が、「学」によってエビデンス化され、「官」に情報提供される仕組みができれば、より大きな社会課題解決のパートナーシップが構成されるようになるのです。

4)オールスターチームのラインアップ表を作成

SDMでは、この産官学モデルのパートナーシップを構築することを大前提として、オールスターチームのラインアップ表を作るようにしています。「産」で共に社会課題解決に協力してくれる企業は誰か? 「学」でその社会課題に対して研究をしている専門家は誰か? 「官」では、政府や地方自治体で、この社会課題に取り組んでいる担当部署はどこか? またその政策作りを担当しているのは誰か? などを調べ上げるようにしています。

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ラインアップ表ができたら、ラインアップした機関や人を巻き込む仕掛け作りをします。仕掛けは、例えば次のようなものがあります。

  • 企業と専門家による社会課題検討をするためのワーキンググループなどを主催する
  • 自社などの企業事例を専門家に研究材料として提供する
  • 専門家の最新研究を自社に取り込み、自社で社会実験を実装してみる

中小企業のSDGsにおいて、最大の課題は情報とネットワークであると考えています。産官学モデルを参考にしていただき、パートナーシップの考え方の視座を上げていただけると、今までにない価値創造ができると思います。

4 まとめ

経済性と社会性を両立していく取り組みについて、中小企業だからこそできるSDGsをイメージすることはできましたでしょうか? ポイントになるのは、社会課題と政策への感度を高め、成果と出口戦略を設定し、そして自社だけでない幅広いパートナーシップを構築することです。

最後に、SDGsの思考フローを整理してみます。

1.経営者の想い、事業計画を深める

経営者の事業への想いを社会課題とマッチングさせながら深めていきます。また既存の事業計画においても、問題意識を共有できるようにします。

2.行政の掲げる政策を読み込む

「経済財政運営と改革の基本方針(=骨太の方針)」や、自社の商圏の総合計画・マスタープラン・政策集を読み込みます。それによって、日本や商圏の現状と未来と課題を捉えることができるとともに、自社の事業にマッチングする行政セクションを探すことが可能になります。

3.成果を決める

自社が具体的にどんな社会課題=指標に対して、明確な変化を起こすのか? を決めます。そのときには、経営者の想いと総合計画・政策集との整合性を考え、対外から見た視点でも、分かりやすい成果設定をします。この場合の成果設定は、政策の実施計画に合わせて、長期的な指標と1年で達成できる短期的な指標を作ることが望ましいです。長期指標だけだと具体性が乏しくなり、また短期指標だけだと目線が下がってしまって、目的を見失う可能性があります。

4.誰とやるのかを決める

成果が決まったら、共に運動をしてくれそうなパートナーを探します(図表1の産官学モデルをご参照ください)。政策から導く場合には、政策を担当している省庁や市町村の担当課にアプローチをします。その際、公的機関は一企業だけの利益になるような情報提供はしないため、ビジネスという目線だけではなかなか話を聞いてもらえないケースがあります。その場合には、社会課題解決に特化した一般社団法人の設立なども視野に入れた上で、パートナーシップ構築をすることをお勧めします。

5.運動を決める

成果を残すための具体的な運動(推進事業または提言事業)を決めます。お勧めは行政の政策と連動した推進事業です。それを展開する中で、政策の弱点も見えるようになりますので、提言事業につなげるとよいでしょう。

6.出口を決める

一生懸命に取り組んだ運動の成果について、誰に自社を評価してほしいのかを明確にストーリーにします。「この社会課題解決を通じて誰かからの評価が高まる」→「自社の評価が高まり、経済的な利益を得る」→「経済的な利益を得られるので、さらに社会課題解決に取り組む」という連鎖を起こし、結果的にビジネスに好影響を与えるという解釈(すなわち「事業のローカライズ」)をします。

ここまでできたら、あとはやり切るだけです。途中で多くの問題に突き当たるとは思いますが、ぜひそのプロセスを記録しておいてください。記録を広く公開することで、他社の参考になるだけでなく、自社の知名度や評価を高めることにもつながります。

記録する媒体は、一般社団法人サステナブルトランジションが提供する「Platform Clover」がお勧めです。自社のSDGsの取り組みについて、アクティビティの発信、プロジェクトの管理・評価が体系的に行えるオンラインプラットフォームです。

■Platform Clover■
https://platform-clover.net/

SDGsはゴールを宣言するだけでは意味がありません。ゴールに向かって経済性と社会性の両立をマネジメントすることで、まさに社会課題解決の取り組み自体を持続可能な形で発展させていくことが、これからのSDGsには求められています。

以上(2021年10月)

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画像:Sakosshu Taro-Adobe Stock

【朝礼】批判を受け止める勇気、受け止めた上で前に進む勇気

おはようございます。突然ですが、クイズを出します。今から約120年前に創設された、世界初の受賞者の国籍を問わない賞といえば何でしょう? 答えは「ノーベル賞」です。ノーベル賞は、発明家アルフレッド・ノーベル氏の「人類に最大の利益を与えた人々に賞を授けるため、自分の遺産を使ってほしい」という遺言に基づき、1901年に第1回授賞が行われました。現在は物理学、化学、医学生理学、文学、平和、経済学の6分野において、世界最大級の貢献をした人々に賞が贈られています。今日はノーベル賞がどうやって生まれたのかを、ノーベル氏の生涯と共に紹介します。

ノーベル氏は1833年、スウェーデンのストックホルムに生まれました。後の自分と同じく発明家だった父の影響もあって、幼い頃から化学に興味を持っていたノーベル氏は、あるとき知人から爆薬の一種であるニトログリセリンを紹介されます。当時のニトログリセリンは、爆発しやすく扱いが難しいとされていましたが、彼はその爆発を制御し、建設工事などの平和利用に役立てようと研究に没頭します。こうして発明されたのが、皆さんもご存じの、ダイナマイトです。

ノーベル氏は、この発明により莫大な財産を築きますが、後にそのダイナマイトが戦争に利用され、自身にも「死の商人」のレッテルが貼られていることを知ります。人類を豊かにするための発明が、全く逆の受け取り方をされていたことに、ノーベル氏はショックを受けます。

やがてノーベル氏は、自分の発明について彼なりの結論を出します。彼は、「この世の中で悪用されないものはない」と、ダイナマイトに人命を奪う負の側面があることを認め、その上で自身の発明が正しく使われることを願って、平和のための運動に積極的に参加するようになります。一方で、人類のための発明がうがった見方をされることなく正当に評価されるシステムをつくりたいとも考えるようになります。こうした発明への思いから誕生したのが、ノーベル賞というわけです。

私がノーベル氏をすごいと思うのは、批判の声に真っ向から向き合い、一方で、その声に押し潰されず、発明への思いを生涯大事に持ち続けた点です。彼が批判の声を「関係ない」と無視していたとしても、逆に「自分は死の商人だ、悪だ」と絶望して発明家をやめてしまっていたとしても、恐らくノーベル賞は生まれなかったでしょう。

私たちのビジネスでも、サービスや商品の内容、コミュニケーションなどについて、自分の意図とは裏腹に、相手から厳しい言葉を浴びることがあります。そんなときはぜひとも深呼吸して、「相手の言うことにも一理あるのではないか」と、批判に向き合ってみてください。そして、批判の声を受け止めつつ、それでも自分が貫きたい思いがあるなら、それを貫くことを簡単に諦めないでください。批判を受け止める勇気、受け止めた上で前に進む勇気、この2つが備わったとき、皆さんはさらに大きく成長できるはずです。

以上(2021年9月)

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画像:Mariko Mitsuda