パートを採用する際に知っておきたい基本

書いてあること

  • 主な読者:パートの採用を予定している企業の経営者、人事担当者
  • 課題:これまでパートを採用したことがなく、採用活動を進めるポイントが分からない
  • 解決策:パートが必要な理由や配置先、募集するターゲットなどを明らかにした上で、募集方法や面接時のポイントなどを押さえる

1 パートを採用する際の基本ポイント

1)パートが必要な理由と配置先を明らかにする

パートに限らず、企業が人材を採用するのには理由があります。パートを募集する際も、「新店舗の出店に伴ってホールスタッフが必要」など、パートが必要な理由と配置先を明らかにした上で、本当にパートが必要かを確認することが重要です。

パートであっても、採用活動やその後の教育に時間とコストが掛かります。そのため、採用活動は慎重に、無駄なく進めましょう。

2)配置時期と人数を明らかにする

パートの配置時期と人数を明らかにします。募集から採用までの期間は短くとも3カ月は掛かるでしょう。また、募集人数が多い場合は、求人誌や求人サイトヘの掲載、店頭チラシの掲示など複数の方法で募集しなければ、応募者の人数が集まりません。そのため、パートの募集は専任の採用担当者を配置して、計画的に実施することが重要です。

3)募集するターゲットを明らかにする

パートの中心は、近隣の主婦や通学の途中に立ち寄ることができる学生です。パートが担当する職務内容によっても異なりますが、オーソドックスなターゲットは主婦です。一般的に学生よりも社会経験が豊富だからです。

また、昨今は働き方改革の影響で、副業・兼業をすることが社会的に容認されてきており、会社員が本業と掛け持ちでパート勤務を希望するケースも珍しくありません。パートというと、正社員の補助的なイメージが強いかもしれませんが、こうした人材は即戦力として、正社員と同等以上の働きが期待できるケースもあります。

4)賃金を明らかにする

パートの賃金は時給制が一般的です。時給は近隣の相場などを参考に決定します。パートタイム労働法では、賃金は正社員などとの均衡待遇を図ることが労働条件に含まれており、「パートである」という理由だけで正社員よりも低い賃金を支払うことはできません。簡単に言うと、パートに支払う賃金のうち基本給や賞与、役職手当など職務に関連の深いものについては、その職務内容や成果、意欲などを勘案して均衡待遇を確保することが求められます。

パートの人件費を抑える場合は、パートが担当する職務を正社員とは明らかに異なる単純作業などの業務に限る必要があります(ただし、パートであるからといって、賃金を不当に低く設定してよいわけではありません)。

2 募集方法を検討する

1)求人誌への掲載

求人誌への掲載は最も一般的な募集方法であり、主婦や学生など幅広い属性の応募者に求人情報を伝えることができます。また、これまでは有料求人誌が中心でしたが、最近はフリーペーパーが求人媒体として定着してきています。

2)求人サイトへの掲載

フリーペーパーと並び、近年、大きな注目を集めている募集方法が求人サイトです。求人サイトにはパソコン用と携帯電話用があり、特に携帯電話用の求人サイトは、手軽に利用できることから広く普及しています。

3)店頭チラシの掲示

「パート募集」のチラシを内製して店頭などに掲示する方法です。これは、特別な費用が掛からない手軽な募集方法といえますが、求人誌や求人サイトに比べると求人情報の伝達先が制限される点に注意が必要です。

店頭チラシには、チラシを見つけた時点で応募できるという特徴があり、「いつからかは決めていないが、パートとして働こう」と考えている主婦などの応募者が就職を決意するきっかけとなります。そのため、店頭チラシは住宅地にある飲食店などがパートを募集する際に大きな効果を発揮することがあります。

4)パートからの紹介

求人誌や求人サイトへの掲載など、主なパートの募集方法と特徴について紹介してきましたが、この他の募集方法として「紹介」を検討するとよいでしょう。

これは、既に働いているパートから友人・知人を紹介してもらう方法です。企業から友人・知人の紹介をお願いされたパートの多くは、「真面目な人」を紹介してくるものです。また、紹介によりパートになった人は、既に働いているパートと知り合いであるため、採用後に職場でのコミュニケーション不和などの問題が起こりにくい点もメリットです。

3 面接時の基本ポイント

応募者が集まったらいよいよ面接です。面接では、企業が応募者の能力ややる気を見極めるのと同時に、応募者も職場の雰囲気を観察しています。明るく気持ちの良い態度で面接に臨みましょう。また、企業と応募者の条件のミスマッチがないかをしっかりと確認することも重要です。

1)歓待を心掛ける

応募者は、これから働くかもしれない企業がどのような所なのかについて敏感になっています。そのため、応募者からの問い合わせの電話を受ける際などは注意し、誰が電話に出ても気持ちよく対応し、「雰囲気の良い職場」であるという印象を持ってもらえるようにします。

2)応募者シートの用意

面接は、応募者と直接話をすることができる貴重な時間です。面接を効率的かつ効果的に行うために、履歴書や職務経歴書だけでなく、企業側が質問したい項目をまとめた「応募者シート」などを用意するとよいでしょう。その応募者シートに、応募者の発言などをメモしておけば選考時の貴重な資料となります。

3)面接時間に余裕を持つ

採用面接の段階で十分に時間を掛け、互いの希望をじっくりと話し合い、その後に調整することが重要です。

応募者の中には、「パートなので、いつ辞めても大きな問題ではない」と考える人もいます。しかし、たとえパートであっても、採用した人材が早期離職してしまうことは大きな損失です。企業は、面接の時間を有効に活用して、「応募者が本気で応募してきているのか」を見極めることが重要です。

以上(2019年4月)

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企業のパワハラ防止対策で大切な3つのこと

書いてあること

  • 主な読者:自社のパワハラ防止対策を推し進めたい経営者
  • 課題:「言動がパワハラに当たるか」の基準が人によって異なり、防止対策を進めにくい
  • 解決策:「パワハラ防止規程の作成」「管理者に対するパワハラ教育の実施」「『パワハラ110番(仮称)』などの相談窓口の設置」の3つを実施する

1 職場の「いじめ・嫌がらせ」の状況

パワーハラスメント(以下「パワハラ」)は、企業と労働者にとって看過できない問題になりました。職場の「いじめ・嫌がらせ」について、都道府県労働局などに寄せられた相談件数は毎年増加しています。

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図表1の「いじめ・嫌がらせ」の全てがパワハラに該当するわけではないものの、パワハラを含むハラスメント問題がこれだけ取り上げられるようになった今、労働者の注目がかつてないほど集まっているのは事実です。

2 パワハラ防止対策の法制化に向けた動き

こうした状況の中、厚生労働省はパワハラ防止対策の法制化に踏み切ろうとしています。2019年2月14日、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律案要綱」(以下「法律案要綱」)が、労働政策審議会に諮問されました。

労働政策審議会からは「おおむね妥当と認める」との答申が得られ、厚生労働省はこの答申を踏まえ、2019年通常国会への法案提出の準備を進めるとしています。

法律案要綱の内容のうち、企業に求められる主なパワハラ防止対策は次の通りです。

  • 事業主は、パワハラ防止に向けた雇用管理上の措置(労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備など)を講じなければならない
  • 事業主は、労働者がパワハラに関する相談を行ったことや、事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、解雇など不利益な取り扱いをしてはならない
  • 事業主は、パワハラ問題に対する労働者の関心と理解を深め、当該労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう研修の実施などを行う他、国が実施するパワハラ防止のための広報活動、啓発活動などに協力するよう努めなければならない
  • 事業主(法人の場合は役員)自らも、パワハラ問題に関する関心と理解を深め、労働者に対する言動に注意を払うよう努めなければならない
  • 労働者は、パワハラ問題に関する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主が講じる1.の措置に協力するよう努めなければならない

特に1.と2.に違反している事業主に対して、厚生労働省が勧告をし、事業主がこの勧告に従わなかった場合、企業名などが公表されることがあるため注意が必要です。

パワハラ防止対策がいつ法制化されるかは未定ですが、法制化されたときに備え、次章以降で基本的な知識を復習しておきましょう。

3 パワハラの定義と類型

1)パワハラの定義

パワハラに対する感覚には個人差があります。企業がパワハラ防止対策を講じる上で、まずパワハラがどのようなものであるのかを把握する必要があります。ここでは、厚生労働省の定義を確認してみましょう。

  • 【パワーハラスメントとは】
  • 職場のパワハラとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう。

上の定義にある「職場内の優位性」とは、上司から部下に行われるものだけでなく、先輩・後輩間や同僚間、さらには部下から上司に対してまで、さまざまな優位性を背景に行われるものも含まれます。

同様に、「業務の適正な範囲」とは、上司が職位・職能に応じて、業務上必要な指揮監督や教育指導を行うことを指します。つまり、上司がその職責を果たすための行為はパワハラにはなりませんが、そのやり方(言動)には注意が必要です。

実際、パワハラ防止対策で難しいのは、パワハラの基準が人によって異なることです。裁判で争われるようなケースは明らかに、職務上の合理性を欠き、いじめや人格権を侵害するほどの状況にあるものが中心となっています。

しかし、社内で問題となるものの多くは、立場によって判断が分かれます。上司は指導だと主張しても、部下はパワハラだと主張するようなケースです。

2)パワハラの類型

厚生労働省では、パワハラの類型として次の6つを示しています。

  • 精神的な攻撃:脅迫、名誉毀損、侮辱、暴言など精神的な攻撃を加える
  • 過大な要求:業務上明らかに不要な業務や遂行不可能な業務を押し付ける
  • 過小な要求:本来の仕事を取り上げる
  • 人間関係からの切り離し:仲間外れや無視など個人を疎外する
  • 個の侵害:個人のプライバシーを侵害する
  • 身体的な攻撃:蹴ったり、殴ったり、体に危害を加える

パワハラでは、「精神的な攻撃」だけが行われるのではなく、「人間関係からの切り離し」や「過大(過小)な要求」も複合的に発生しているのが通常です。また、こうした問題はパワハラというカテゴリーにとどまりません。

現在、労務の分野では慢性的な長時間労働なども問題になっていますが、これとパワハラは関係していることが多くあります。例えば、「パワハラを受けながら、長時間労働を実質的に強制される」といったケースです。

問題が複合的に生じた場合、労働者が受ける心身の負担も大きくなります。2015年12月、大手広告会社の新入社員が過労などを苦に自殺する事件が発生しましたが、このケースでも、パワハラや長時間労働などが複合的に生じていたようです。

企業がパワハラ防止対策を進める際は、その問題が根深く、また広範囲にわたっていることを認識する必要があります。逆に言うと、1つきっかけをつかめば、そこを足掛かりとして、状況の改善が進むこともあります。

4 3人に1人がパワハラの被害者?

1)パワハラの被害者と加害者のアンバランス

厚生労働省「職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書」によると、2016年度実態調査におけるパワハラの被害者は32.5%で、3人に1人はパワハラを受けたことがあるということです。なお、2012年度実態調査におけるパワハラの被害者は25.3%であり、4年間でパワハラの被害者の割合が増加していることが分かります。

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2012年度と2016年度いずれの実態調査においても、「パワハラを受けたことがある」割合と「パワハラをしたと感じたり、パワハラをしたと指摘されたことがある」割合が乖離(かいり)しています。行為をした側にはパワハラの実感がなくても、行為をされた側はパワハラと感じているケースが多いということでしょう。

2)パワハラの実態

厚生労働省「職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書」の2016年度実態調査より、パワハラの具体例を紹介します。前述した6つの類型で整理されています。

1.精神的な攻撃

  • いること自体が会社に対して損害だと大声で言われた(男性、50歳以上)
  • ミスをしたら現金に換算し支払わされる(女性、40歳代)
  • 全員が観覧するノートに何度も個人名を出され、能力が低いと罵られた(男性、20歳代)

2.過大な要求

  • 多大な業務量を強いられ、月80時間を超える残業が継続していた(男性、20歳代)
  • 明らかに管理者の業務であるにもかかわらず、業務命令で仕事を振ってくる(女性、40歳代)
  • 絶対にできない仕事を、管理職ならやるべきと強制された(女性、50歳以上)

3.過小な要求

  • 故意に簡単な仕事をずっとするように言われた(男性、30歳代)
  • 一日中掃除しかさせられない日々があった(男性、20歳代)
  • 入社当時に期待・希望されていた事とかけ離れた事務処理ばかりさせられる(女性、50歳以上)

4.人間関係からの切り離し

  • 今まで参加していた会議から外された(女性、50歳以上)
  • 職場での会話での無視や飲み会などに一人だけ誘われないなど(男性、30歳代)
  • 他の部下には雑談や軽口をしているが、自分とは業務の話以外一切ない(男性、50歳以上)

5.個の侵害

  • 出身校や家庭の事情等をしつこく聞かれ、答えないと総務に聞くと言われた(女性、40歳代)
  • 接客態度がかたいのは彼氏がいないからだと言われた(女性、20歳代)
  • 引越したことを皆の前で言われ、おおまかな住所まで言われた(女性、20歳代)

6.身体的な攻撃

  • カッターナイフで頭部を切りつけられた(男性、20歳代)
  • 唾を吐かれたり、物を投げつけられたり蹴られたりした(男性、20歳代)
  • 痛いと言ったところを冗談ぽくわざとたたく(女性、40歳代)
  • (出所:厚生労働省「職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書」)

 

5 パワハラに関する基準

企業のパワハラ防止対策の基本は、当事者の主観が入ることで曖昧になりがちなパワハラの基準を、規程の作成などを通じてできるだけ明確にすることです。その際、企業はパワハラに関する基準が、次のように3つあることを認識しなければなりません。

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何よりも優先されるのは「1.法令の基準」です。傷害、名誉毀損、脅迫などがあった場合、企業や個人の基準に関係なく、加害者は罰を受けることになります。一般的には不法行為に基づく慰謝料請求が行為者や企業に対して行われます。

次に「2.企業の基準」と「3.個人の基準」ですが、両者の関係は単純に図表3のような形になっていません。つまり、「2.企業の基準≧3.個人の基準」といった関係は成立しにくいということです。

「2.企業の基準」と「3.個人の基準」は、当事者の人間関係によっても変わります。よく言われるように、同じ言動であっても、相手によってパワハラと感じたり、感じなかったりすることがあります。

通常、労働者は自分の基準を組織の基準に合わせ、多少のことは我慢しています。また、組織の雰囲気が良いと「2.企業の基準」と「3.個人の基準」が一致しやすくなり、パワハラ問題が起こりにくくなります。

以上、パワハラに関する3つの基準を紹介してきました。「1.法令の基準」は別次元のものなので、「2.企業の基準」と「3.個人の基準」を一致させることが重要になります。そのためには、日ごろのコミュニケーションが大きな意味を持ちます。

6 パワハラ防止対策で大切な3つのこと

1)パワハラ防止規程の作成

企業のパワハラ防止対策の基本は、パワハラ防止規程の作成です。規程の中で、企業のパワハラに対する基準を明確にして、労働者に周知徹底します。こうしたパワハラ防止規程を作成することの効果は次の2つです。

1つ目は就業規則としての効力です。パワハラ防止規程を作成して、労働者に周知し、管轄の労働基準監督署に届け出た場合、労働者はパワハラ防止規程を順守する義務を負い、違反した場合は懲戒の対象とすることもできます。

2つ目はトラブル時の証拠です。パワハラに関するトラブルに企業が巻き込まれた場合、企業のパワハラ防止対策が適切であったか否かが問われます。この点、パワハラ防止規程に基づく管理をしていれば、企業がパワハラ防止に努めていたことを示す1つの証しになる可能性があります。

2)管理者に対するパワハラ教育の実施

パワハラ防止の要は管理者ですが、同時に管理者がパワハラの加害者になることもあります。企業は、「他社事例の研究」「ロールプレイングの実施」「外部セミナーへの派遣」など、管理者のパワハラ教育を実施する必要があります。

3)「パワハラ110番(仮称)」などの相談窓口の設置

いつでも気軽に相談できる「パワハラ110番(仮称)」などの相談窓口を設置しましょう。弁護士や社会保険労務士とヘルプラインを開設するのが理想ですが、難しい場合は、人事部の労働者を相談担当者として配置します。

「パワハラ110番(仮称)」の主な機能は次の通りですが、相談担当者は当事者の個人情報などプライバシー保護に細心の注意を払わなければなりません。また、判断が難しい事案については、すぐに事業主に相談するようにしましょう。

また、ここで紹介した「パワハラ110番(仮称)」の取り組みは、企業がセクシュアルハラスメント対策を進める際の方法と類似しているので、既にその対策を講じている企業はそれを参考にするとよいでしょう。

1.管理者からの定期報告の受け付け(事前防止措置)

パワハラが発生した後では、対策が後手に回りがちです。管理者は「部下の様子がいつもと違う」など、ちょっとした異変を見逃さず、すぐに「パワハラ110番(仮称)」に相談しましょう。

「パワハラ110番(仮称)」の相談担当者が客観的に内容を確認し、パワハラに該当する恐れがあると判断した事案については、事業主に報告・相談した上で、管理者と部下から事実確認を行います。また管理者に対して定期報告の機会を設けることも1つの策でしょう。

2.被害者からの相談の受け付け(早期解決措置)

パワハラを受けたという被害者から相談を受け付けた場合、相談担当者は速やかに事実確認をした上で対策を講じます。事実確認は、管理者と部下の双方から行います。

実際にパワハラに該当する場合、加害者は懲戒処分にし、被害者は配置換えなどのフォローをします。一方、パワハラに該当しないと判断された場合は、相談担当者が仲介して管理者と部下の関係修復に努めますが、難しいようであれば配置転換などを行います。

3.パワハラ防止対策の再点検(再発防止策)

パワハラの事案が生じた場合、再発防止に向けた対策を講じます。対策としては、パワハラ防止に関する方針や基準の周知、パワハラ教育の再実施、「パワハラ110番(仮称)」が適切に機能するための見直しなどが挙げられます。

以上(2019年4月)
(監修 弁護士 田島直明)

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「役職名」の基礎知識

書いてあること

  • 主な読者:役職名の変更などを検討している企業の経営者、取引先などの役職で、どのような役割や責任があるのかを知りたいビジネスパーソン
  • 課題:他社がどのような考えの下、役職名を決めているのか参考にしたい
  • 解決策:役職名はビジネスの潮流や各社の価値観が表れるものであり、その役職名にどのような役割があるのかを考えたり、知ったりすることが重要

1 ビジネスの潮流などを反映する役職名

企業規模、業種、企業風土、経営戦略などさまざまな要素を考慮して、各企業は組織形態とそれに応じた役職名を採用しています。

従来、日本企業の多くは、「社長」「本部長」「部長」「次長」「課長」「係長」「主任」など、上位から下位に向けて命令が伝達される部課制(ライン組織)を採用してきました。しかし、最近では迅速な意思決定や対応を行うことを目的に、役職の階層を減らして組織のフラット化を進める企業もあります。

また、「CEO」といった役職名を目にする機会が増えています。こうした役職名はもともと経営の意思決定・監督機関としての取締役会と、意思決定に基づく業務執行機能を分離した制度(以下「執行役員制」)を採用する外資系企業などで使用されていました。現在では日本企業でも一般的になってきています。執行役員制を導入する企業などで使用されている代表的な役職名は次の通りです。

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これらの役職名は社内規定に基づく呼称ですが、会長兼CEOなどといったように使われるケースが増えてきています。また、自社のブランドや価値観などを創造し、社内外に発信・浸透させていくCCO(Chief Culture Officer、最高文化責任者)や、健康経営を推進する企業などがCHO(Chief Health Officer、最高健康責任者)を設けるなど、自社が重視する価値観を表したユニークな役職を設けている企業もあります。

このように企業における組織とそれに応じた役職名の在り方は、その時々のビジネスの潮流を反映していたり、自社の重視する価値観を反映したりするものでもあります。

以降では、企業でよく使用されている役職名について紹介します。役職名の新設や変更を考える際、あるいは自社と異なる役職名を目にしたときに、どのような役割や権限があるのかを確認する際の参考としてください。

2 部課制における役職名

1)中間的な役職名

部課制(ライン組織)は、日本企業の多くで採用されている組織形態です。役職としては、「社長」「本部長」「部長」「課長」「係長」などがあり、そこに中間的な役職が加わって組織が形成されています。

中間的な管理職の代表的な役職名としては、「副本部長」「副部長(部長代理・部長補佐)」「次長・副次長(次長代理・次長補佐)」「副課長(課長代理・課長補佐)」「副係長(係長代理・係長補佐)」などがあります。

2)その他の役職名

中間的な管理職の他にも、「顧問」「相談役」「非常勤取締役」「参事」などという役職があります。また、支社(支店)・営業所・工場においては、部長クラスに代わる役職として「支社長(支店長)」「所長」「工場長」などを置いている場合があります。

本社・営業所を問わず「係長の代わりに主任」としている企業や、その下に「班長」がいる場合もあります。一方、事業部制を採用している企業では、「事業部長」という役職があり、社内的には取締役と同等の立場である場合もあります。

3)執行役員について

経営と業務の執行の分離が重要視されるようになり、さまざまな企業で社内体制として執行役員制が設立されたことから、多くの「執行役員」が選出されました。執行役員制は会社法の規定によるものではありません。そのため、社内体制や権限などについては各企業によって異なります。また、執行役員は現場のトップということもあって、本部長や営業部長を兼ねている場合が多いようです。

3 グループ制における役職名

グループ制とは、従来のピラミッド型の組織から、課や中間的な役職を除いた体制です。組織のフラット化を図り、意思決定や判断の迅速化を進めることを目的としています。

具体的には、「部を部門に変更し、部門の下にグループまたは室を置く」という体制です。役職は、次長クラス、係長クラスを廃止して、部長クラスは「部門長」「グループマネジャー」「主席」などに、課長クラスは「グループリーダー」「室長」「主査」などとなります。また、企業によっては室長や部長クラスがグループリーダーになっているケースもあります。

部課制・部門室制・グループ制の組織(例)は次の通りです。

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4 マトリックス組織の概要

部門室制やグループ制などと並行して、業務遂行のためにプロジェクトチーム制を設けている企業もあります。プロジェクトチーム制では、各部門やグループから担当者が集まってチームを構成することによって、何らかの目的を果たすために業務を遂行していきます。スポーツメーカーを例に取ると、ユニフォームチーム、シューズチームなどとなり、各チームは企画・開発・販売・宣伝など各部門やグループから数名ずつ担当者が任命されて構成されています。

その際、各チームにチームリーダーが配置されます。この組織形態は、各スタッフがグループとチームの双方に所属するため、マトリックス組織とも呼ばれます。

例えば、資生堂では、世界の地域ごとに強いブランドを育成するため、5つのブランドカテゴリーと6つの地域を掛け合わせたマトリックス組織を発足させています。

マトリックス組織(例)は次の通りです。

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5 専門職について

従来の人事制度では、管理職に就くことで高い賃金やキャリアを得ることが一般的でした。しかし、中には管理職に就くよりも、現場で高い専門性を発揮するほうが、企業にとって高い付加価値を生む人材もいます。また、消極的な理由として、管理職ポストが不足している場合に、専門職ポストを設ける場合もあるようです。

専門職は、部課制(ライン組織)上の役職とは異なり、部下を持たずに(持つ場合も少数)業務を遂行します。

専門職の仕事は、技術や営業・販売に関しては各企業の扱う製品やサービスによって異なるため一概にはいえません。ただし一般的には、研究開発に携わる研究者や技術者、法務・税務などの分野に関連した資格を持つ者、営業・システムエンジニアやコンサルタントなど、高度な専門性が求められる職種が挙げられます。

また、専門職は部課制(ライン組織)やグループ制において新しく課やグループをつくるに至らない(規模が小さい)場合にも有効な手段として導入されています。

この他、最近は高年齢社員の技能を活用するための専門職を設ける企業も増えています。こうした高年齢社員には、「シニアアドバイザー」「シニアマネジャー」などの役職が設けられ、一般の従業員とは別の基準で処遇されています。

以上(2019年4月)

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退職金の支給水準を検討する際の考え方と参考データ

書いてあること

  • 主な読者:退職金の導入・または見直しを検討したい経営者
  • 課題:支給水準や、自社にあった制度の目安が分からない
  • 解決策:東京都労働相談情報センター「中小企業の賃金・退職金事情」などの統計を参考にし、シミュレーションをしてみる

1 退職金制度の導入状況

退職金とは、労働契約期間の満了(定年退職)または途中終了(解雇や退職)を事由に企業が従業員に支給する金銭を指します。退職金制度の機能については諸説ありますが、一般的には次の3つが有力とされています。

  • 功労報奨説:在職中の功労に対する報奨としての退職金
  • 老後保障説:退職後の従業員の老後保障としての退職金
  • 賃金後払説:在職中の賃金の後払いとしての退職金

現在、多くの企業が何らかの形式で退職金制度を導入しています。厚生年金保険支払い開始年齢の段階的な引き上げなどが実施されている現在、退職金に対する従業員の期待は高まっています。東京都労働相談情報センター「中小企業の賃金・退職金事情(平成30年度版)」によると、退職金制度の有無および退職金制度の形態は次の通りです。

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2 退職金制度の見直しにおける支給水準の視点

1)退職金制度の見直しが進む

雇用環境は景気動向を反映して変化します。足元では、景気回復によって人材不足感が高まっていることから、多くの企業は賃上げなど労働条件の引き上げによって人材を確保しつつ、既存の従業員の定着率向上を図っています。

退職金制度は賃金ほど制度変更の動きがありませんが、賃上げをした場合、それに応じて退職金の支給額も増加することが多いので留意する必要があります(退職時の基本給を基準に退職金の支給額を決めている企業が多いためです)。

2)見直しの方向性

厚生労働省「平成30年 就労条件総合調査」から、退職一時金および退職年金の見直しの方向性を確認してみましょう。退職一時金の見直しの状況は次の通りです。

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今後3年間で退職一時金制度を見直そうとする企業の割合は減少しています。過去3年間に比べて今後の見直しの方向性として比較的高い割合を示しているのが「退職一時金制度を新たに導入または既存のものの他に設置」することです。

この他、退職一時金の支給率の増加を検討する企業が多い中で、従業員規模1000人以上の企業は今後の支給率を減少させるという回答が少なくありません。また、同規模の企業では「算定基礎額の算出方法の変更(ポイント制の導入など)」を検討しているところもあります。「ポイント制退職金制度」とは、従業員が退職時に獲得しているポイント数に応じて退職金の支給額が決まる制度であり、在職中の従業員の成果を退職金の支給額に反映させやすくなります。

次に退職年金の見直しの状況を見てみましょう。詳細は次の通りです。

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退職一時金と同様、過去3年間に比べて、今後3年間で退職年金制度を見直そうとする企業の割合は減少しています。減少の幅は退職一時金制度の場合よりもやや大きくなっていますが、その理由としては、退職年金制度は厚生年金基金などのように外部に掛け金を積み立てているケースが多いため、そもそも見直しが困難であるという制度上の特徴を挙げることができます。

実際、退職年金制度を見直す場合、既存制度の一部を変更する方法の他に、既存の退職年金制度を廃止する、別の退職年金制度に移行するなどの方法が取られることが少なくありません。

退職年金制度の見直しについては、中小企業での導入が多かった税制適格退職年金が実質的に廃止(2012年3月末)される前の制度移行・廃止によって“ひとやま”越えました。今後は、財政状態の芳しくない厚生年金基金の解散後の受け皿制度探しや、景気好調で魅力が増している確定拠出年金制度の導入などの動きが活発化していく可能性があります。

3 退職金の支給水準の検討

1)企業が負担する掛け金の水準

厚生労働省「平成28年 就労条件総合調査」によると、常用労働者1人1カ月平均の労働費用の内訳は次の通りです。

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退職金の掛け金などは「現金給与以外の労働費用」に含まれています。「調査産業計」では、退職給付等の費用が労働費用全体に占める割合は4.5%です。

2)退職金のモデル支給額

厚生労働省「平成30年 就労条件総合調査」によると、常用労働者1人1カ月平均の退職給付等の内訳は次の通りです。前述した常用労働者1人1カ月平均の労働費用の内訳と併せて分析すると、自社の退職金の支給額を決定する際に役立ちます。

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4 従業員に支払う退職金の水準

1)退職金の支給相場を確認してみよう

従業員から見ると退職金の支給額は多いほど好ましいといえますが、企業が支給する退職金には適正な水準があります。例えば、退職金の原資となる掛け金から考える場合は、常用労働者1人1カ月平均の労働費用の内訳が参考になるでしょう。つまり、掛け金の積み立てによって確保できる水準が、企業から見た適正な退職金の目安になるといえそうです。ただし、そうした退職金の額が、同業種・同規模・同地域などと比べて著しく低い場合、従業員は不満に感じます。

そのため、企業は厚生労働省などの資料から退職金の支給相場を把握して、必要に応じて退職金の額を見直すことが大切です。退職金の支給相場を把握するための資料には次のようなものがあります。

2)厚生労働省の資料

厚生労働省では、不定期に退職金に関する調査を行っています。例えば、前述した「就労条件総合調査」では、退職金の支給額や退職金制度の内容などを調査しています。

また、「賃金構造基本統計調査(賃金センサス)」では、業種別・職位別・地域別の賃金額を調査しています。多くの企業では、「退職時の基本給×勤続年数×支給率」といった計算によって退職金を算出しており(退職一時金の場合です)、この式の「退職時の基本給」に「賃金構造基本統計調査」のデータを割り当てれば、退職金の支給相場の目安を把握することができるでしょう。

3)行政の資料

各都道府県庁やその関連団体、労働局などの行政官庁が、地域の企業の退職金相場を調査することがあります。

4)調査機関の資料

人事・労務関連のデータなどについて調査している団体や企業が数多くあるので、そうしたデータを参考にするとよいでしょう。主な団体や企業は次の通りです。

■労務行政研究所■
https://www.rosei.or.jp/
■産労総合研究所■
https://www.e-sanro.net/

5)金融機関の情報サービス

金融機関が取引先である法人や個人に対して、さまざまなビジネス情報を提供するサービスを行っていることがあります。そうしたビジネス情報の中には、退職金に関するものも数多くあるので参考になります。厚生労働省や行政などの資料をまとめているリポートや報告書もあり、一覧性が高くて便利です。

6)中小企業退職金共済制度をモデルとする

理想的な退職金制度とは、「給付と負担」のバランスが取れていて安定感があるだけではなく、企業の業種・従業員の年齢構成・従業員の意向(勤続年数に応じて退職金が増加する制度、多少リスクがあっても将来の退職金が増える可能性がある制度など)を考慮して設計された制度だといえます。

しかし、このような理想的な退職金制度を単独で構築するには、時間やコストが掛かります。そこで、中小企業退職金共済制度(以下「中退共」)の支給水準を1つのモデルとしてみるのも一策です。中退共は単独で退職金制度を構築することが難しい中小企業が加入する、共済方式の退職金制度です。2019年1月末現在の加入企業は36万9063カ所、加入従業員は346万4620人、運用資産額は約4.9兆円となっています。

5 退職金の支給水準を見直す際の基本的な流れ

1)他社との比較、退職金基準額の確定、シミュレーション

自社の退職金の支給額と「同業種・同規模・同地域の企業の退職金の支給額や中退共の支給水準」(他社の退職金の額)を比較します。自社の退職金の支給額が他社と同等であれば、一般的な支給額といえるでしょう。一方、自社の退職金の支給額が他社に比べて低過ぎる場合は必要に応じて見直します。

その際は初めに「退職金基準額」を決定します。退職金基準額はモデルとなる標準的な退職金の支給額であり、自社の従業員の年齢構成や定着率なども考慮して決定します。 退職金基準額を決定した後は、それを算出するためのベースとなる「退職金算定基礎額」を決定します。多くの企業は、「退職金算定基礎額」を退職時の基本給としていますが、これとは全く別に、退職金の額を算出するためのテーブルを設ける企業もあります。こうした方式を「別テーブル方式」と呼びます。

「退職金算定基礎額」などに基づいて、新たな退職金制度の支給水準をシミュレーションします。定年前に退職する従業員もいるので、その点も考慮してシミュレーションすることが重要です。

2)就業規則の変更

常時10人以上の従業員を使用する企業は就業規則を作成し(作成は支店や工場単位)、従業員の過半数で組織される労働組合(労働組合が無い場合は労働者の過半数を代表する者)の意見を聴いた上で、所轄労働基準監督署に届け出なければなりません。退職金制度を新たに構築したり、既存の制度を変更する場合も同様です。

以上(2019年4月)

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清算型と通算型で差が出る転籍者に対する退職金の支払い方法

書いてあること

  • 主な読者:グループ企業に転籍する社員に対し、これから退職金を支払う予定がある経営者
  • 課題:退職金の支払い方法によって支給額がどう変わるのか分からない
  • 解決策:自社での勤務期間と他社での勤務期間を別々に取り扱い、個別に退職金を支払う「清算型」と、2社での勤務期間を通算する「通算型」がある。具体的な支給額については、本稿でシミュレーションを紹介している

1 退職金制度に関する労務知識

1)労働基準法における賃金の取り扱い

企業と従業員の間には、労働契約に基づく雇用関係が成立しています。雇用関係の基本は「労働者による労働力の提供」と「企業による賃金の支払い」ですが、その他にも労働基準法(以下「労基法」)などの法令で多様な労働条件(労働契約の期間、賃金、労働時間、就業の場所など)が定められています。

賃金は「賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」と定義されています(労基法第11条)。

また、労基法において支払い方法などが規定されており、これを賃金支払いの5原則といいます(労基法第24条)。賃金支払いの5原則は次の通りです。

  • 通貨払い:賃金は通貨で支払う
  • 直接払い:原則として、賃金は労働者に直接支払う
  • 全額払い:社会保険料など一部を除き、賃金の全額を支払う
  • 毎月1回以上払い:毎月1回以上のペースで支払う
  • 一定期日払い:毎月一定の期日に支払う

2)退職金の機能

退職金とは、労働契約期間の満了(定年退職)または途中終了(解雇や退職)を事由に企業が従業員に支給する金銭を指します。退職金の機能は諸説がありますが、一般的には次の3つが有力とされています。

  • 功労報奨説:在職中の功労に対する報奨としての退職金
  • 老後保障説:退職後の従業員の老後保障としての退職金
  • 賃金後払説:在職中の賃金の後払いとしての退職金

現在、多くの企業が何らかの形式で退職金制度を導入しており、退職金は退職金制度は賃金制度や労働時間制度と並ぶ主要な労働条件の1つとなっています。

2 退職金の取り扱い

1)任意的・恩恵的に支払う退職金

基本的に、任意的・恩恵的に支払われる退職金は、労基法の賃金には該当しません。前述した通り、労基法第11条では「労働の対償として支払う金銭を賃金」と定義しているからです。従って、次のような事項は、企業が自由に決定することができます。

  • 退職金制度の適用を受ける従業員の範囲
  • 退職金支払額の決定、計算方法
  • 退職金の支払い方法
  • 退職金の支払期日

2)就業規則などに基づいて支払う退職金

就業規則に退職金制度に関する定めをした場合、それに基づいて企業より支払われる退職金は賃金とほぼ同様の取り扱いとなります(労働協約などに退職金制度を定めた場合も同様の考え方となりますが、本稿では就業規則に注目します)。

就業規則は、企業と従業員が順守する労働条件をまとめた職場のルールブックです。常時10人以上の従業員を雇用する企業(実際は、本店や支店などの事業場単位となります)には、就業規則の作成と、就業規則を作成・変更した場合に労働基準監督署に届け出ることが義務付けられています(労基法第89条)。

就業規則に定められる事項は労働条件の1つであり、それに基づいて支払われる退職金は労働の対償であると考えることができます。労働の対償として支払われる金銭は労基法第11条の賃金に該当するため、企業は就業規則に基づいて、退職する従業員に退職金を支払わなければなりません。

3)賃金と全く同じではない

退職金が就業規則に定められた事項であっても、労基法上、賃金と全く同じものになるわけではなく、あくまでも「ほぼ同様の取り扱い」となります。なぜなら、次のような違いがあるため、両者を全く同じように取り扱うことができないのです。

  • 賃金:毎月1回以上のペースで支払う
  • 退職金:雇用契約期間の満了または途中終了時に、1回だけ支払う

なお、退職金の支払期日は退職金規程に定めますが、仮に退職金の支払期日に関する定めがない場合は、従業員が退職金の支払いを企業に請求してきた日から起算して7日以内に支払うことになります(労基法第23条第1項)。

3 転籍者に対する退職金の支払い方法

1)転籍とは

ここからは、転籍者に対する退職金の支払い方法について考えていきます。

転籍とは、企業と従業員が現在交わしている労働契約を解消した上で、従業員が別の企業と新たに労働契約を締結することです。通常、転籍はグループ企業間で行われるため、当事者である従業員にも「転籍によって別の企業に勤める」という意識があまりないことがありますが、労働契約の解消と新規締結という面から考えると、通常の転職と変わりません。つまり、転籍によって従前の労働条件はリセットされるということです。

ここで、次のケースで考えてみましょう。基本的な考え方は清算型と通算型に大別されます。

  • 株式会社ABCから、そのグループ企業である株式会社XYZに転籍した転籍者に対する退職金の支払い

2)清算型

清算型とは、株式会社ABCへの勤務期間と株式会社XYZへの勤務期間を別々に取り扱い、個別に退職金を支払うケースです。

転籍によって転籍者は株式会社ABCを退職します。転籍者が株式会社ABCの退職金制度の支給要件を満たしている場合、株式会社ABCは退職金規程に基づく退職金を転籍者に支払います。また、転籍者が将来、転籍先である株式会社XYZの退職金制度の支給要件を満たした場合、株式会社XYZは退職金規程に基づく退職金を転籍者に支払います。

3)通算型

通算型とは、株式会社ABCへの勤務期間と株式会社XYZへの勤務期間を通算して算定した退職金を支払うケースです。

通算型の場合の退職金の支払い方法はさまざまですが、例えば、株式会社ABCは転籍者が同社を退職する際に発生していた退職金を負担し、残りを株式会社XYZが負担するなどします。

4)退職金の額の違い

転籍によって従前の労働条件はリセットされるため、基本は清算型の処理となります。しかし、実際には退職金の額の問題などから通算型を採用している企業も少なくありません。清算型と通算型で退職金の額が異なるのは、次のような計算式によるものです。

  • 退職金=勤続年数×算定基礎額×支給率+加算金

算定基礎額は基本給をベースに決定されるのが通常で、このような退職金の計算に基本給を組み入れる制度を本給連動型の退職金制度といいます。本給連動型の退職金制度の場合、勤続年数が長いほど退職金の額が大きくなります。退職金の額を計算する際のベースとなる退職時の基本給や支給率などは、勤続年数が長いほど有利になっていくためです。

仮に、株式会社ABCと株式会社XYZがともに、同じ本給連動型の退職金制度を導入していたとします。ここでは、株式会社ABCと株式会社XYZが導入している本給連動型の退職金制度を次の通りとします。

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転籍者が株式会社ABCと株式会社XYZにそれぞれ20年ずつ、計40年間勤続したとすると、清算型と通算型では退職金の額が大きく異なります(以下は、清算型と通算型の違いを分かりやすく示したものであり、実際の運用は個々の企業で異なります)。

1.清算型:195万520円あるいは231万8360円

清算型の場合、退職金の額は株式会社ABCから支払われる勤続年数20年分の97万5260円、同じく株式会社XYZから支払われる勤続年数20年分の97万5260円の合計で、195万520円となります。

また、株式会社XYZに中途入社した際の算定基礎額を勤続年数21年のテーブルからスタートし、支給率は勤続20年のテーブルを利用した場合、株式会社XYZから支払われる退職金は134万3100円となります。株式会社ABCから支払われる97万5260円と合わせると231万8360円となります。

2.通算型:701万5200円

通算型の場合、退職金の額は勤続年数40年分の701万5200円となります。この退職金を株式会社ABCと株式会社XYZがどのように案分するかはさまざまですが、例えば、株式会社ABCが97万5260円(株式会社ABCを退職する際に発生している退職金の額です)、株式会社XYZが603万9940円(701万5200円-97万5260円)とするケースもあります。

4 退職金規程の記載例

清算型と通算型のいずれを採用するにしても、その実施根拠となる退職金規程が必要です。清算型の場合は特に記載する事項はありませんが、通算型の場合はその取り扱いを分かりやすく退職金規程に記載しなければなりません。

通算型を実施する場合の退職金規程の記載例は次の通りです。

【第○条(転籍者に対する退職金の支払い)】

就業規則第○条により、別表第○(省略)に定める関連会社(以下「転籍先」)に転籍した従業員(以下「転籍者」)の退職金の取り扱いは次の通りとする。

  • 退職金は、転籍者が転籍先を退職した日の翌日から起算して2カ月以内に支払う。
  • 退職金の算定期間は、転籍者が会社に入社した日から転籍先を退職するまでの通算された期間とする。
  • 会社と転籍先の退職金規程で異なる内容がある場合は、原則として会社の規定を適用する。

以上(2019年4月)

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今どきの新入社員教育法―「父親型」か「友達型」か?

書いてあること

  • 主な読者:新入社員の教育に悩む上司
  • 課題:最近の新入社員は上司に対し、自分の話を聞いてもらうことや、一人ひとりに対して丁寧に指導することを期待する傾向にある。しかし、新入社員がどのような考えを持っていようと、理屈抜きで覚えてもらわなければならない内容もある
  • 解決策:上司が強いリーダーシップで引っ張る「父親型」と新入社員の考えに耳を傾ける「友達型」の2つの指導法を状況に応じて使い分ける

1 「父親型」の上司と「友達型」の上司

新入社員は、右も左も分からない社会人の“赤ちゃん”のような存在です。上司にとっては当たり前の「社会人としての常識」が通じないことも多いため、「どこから教えればよいのか?」と迷ってしまうことがあります。また、今どきはパワハラが問題になることも多く、「どうやって伝えればよいのか?」という心配もあるかもしれません。

上司や新入社員の性格、仕事の内容、局面によって好ましい指導スタイルは変わってきますが、少々極端に分けた場合の1つのイメージは次の通りです。

  • 父親型:
    「私の言うことを聞け!」と強いリーダーシップで新入社員を引っ張って業務を遂行させるスタイル
  • 友達型:
    「君はどうしたい?」と新入社員の意見や考えていることに耳を傾け、二人三脚で業務を遂行するスタイル

最近の新入社員は上司に対し、自分の話を聞いてもらうことや、一人ひとりに対して丁寧に指導すること、つまり友達型の指導を期待する傾向にあるようです。

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とはいえ、上司が指導しなければならない内容は多岐にわたり、時には新入社員に「理屈抜きで覚えてもらわなければならない」こともあります。

父親型と友達型のどちらの指導法が適しているかはケース・バイ・ケースです。大切なのは新入社員の性格はもちろん、仕事の内容や局面を考慮しながら、父親型と友達型の指導方法を上手に使い分けていくことです。

2 ジェネレーションギャップを乗り越えろ!

ジェネレーションギャップは年代に限らず存在するため、比較的年配の上司が新入社員とうまくコミュニケーションを取るのは簡単ではありません。「何を考えているかよく分からない」と、上司同士で愚痴をこぼし合うこともあるでしょう。

しかし、それだけでは根本的な解決になりません。新入社員の教育に悩む上司は、まず今どきの新入社員の育った環境からその特徴を整理してみるとよいでしょう。

最近の新入社員には、次のような特徴がよく見られるようです。

  • 上昇志向が低く、そこそこの成績や賃金で満足する
  • 普段付き合いのない人間との会話に慣れておらず、挨拶や敬語、報告・連絡・相談ができない
  • 「目立つと集団内で孤立する」と考える傾向があり、自分から発言をしない
  • 叱られることに慣れておらず、上司が少し注意しただけで落ち込む
  • 考えて行動するのが苦手で、「指示待ち人間」になりやすい

このようなことを理解した上で、それを上司自身が育った環境と比較してみると、「自分にとってはしっくりきた指導方法は、今の新入社員に向いているのだろうか……」と気付くことができるかもしれません。

3 父親型の指導のポイント

1)マナーや社会常識は父親型で指導する

父親型の指導は、マナーや社会常識など、社会人として不可欠な技術や知識を短い時間で確実に覚えさせるためのものです。これは理屈抜きで必要なことですが、上から目線で伝えるだけでは、新入社員は腹落ちしません。

大切なのは、「なぜ、そのような立ち振る舞いをするのか?」という理由や目的を伝えることです。新入社員が間違えたときも、ただ叱るのではなく、その間違いが仕事にどのような影響をもたらすのかを伝えるようにすると、新入社員も失敗の重さに気付くことができるでしょう。

また、注意をした後は、「次からは○○と言ったほうがいい」と具体的な改善方法を教えることも欠かせません。そうしたほうが新入社員も納得しやすく、「否定された」ではなく、「上司が自分を指導してくれた」という印象が心に残りやすくなります。

指導が一段落したら別の明るい話題に切り替えたり、全員の前で叱るのではなく、別室に呼んで指導したりするなどの配慮も大切です。指導されたことを引きずり過ぎないようにすると、新入社員は次の課題に向き合いやすくなります。

2)父親型から友達型へのシフト

入社したばかりの新入社員に、「自分で考えて仕事をしてくれ」と指示をしてもうまくいきません。新入社員が初めて携わる業務などは、まずは父親型で指導して経験を積ませる必要があります。その上で、新入社員の知識・経験などを考慮しながら、徐々に友達型に移行し、新入社員の自主性を育てる指導に切り替えていきましょう。

例えば商品のチラシの作成であれば、記載する事項はもちろん、色使いや文字のサイズ、フォント、時にはソフトの使い方まで上司が細かく指示を出さなければなりません。

そうして、ある程度知識や経験を積んだら、次は「以前チラシを作ってもらった商品○○のリニューアル版が出た。基本的なデザインは以前のチラシを踏襲しようと考えているが、新しい機能をアピールできるような説明を自分で考えて追加してみてくれ」と指示してみましょう。

新入社員の成長度合いや依頼する業務内容を勘案しつつ、父親型と友達型の指導のバランスを調整していくことで、新入社員の考える力が効果的に身に付いていくでしょう。

4 友達型の指導のポイント

1)考える力が要求される業務は友達型で指導する

友達型の指導は、「社員として必要な考える力を、ゆっくりと時間をかけて身に付けさせる」ためのものです。

友達型の指導が必要なのは、主体的に動こうとしない「指示待ち人間タイプ」や、報告・連絡・相談(以下「報連相」)ができない新入社員です。なかには「主体的に動きたい」「上司に相談したい」と思っていても、仕事・職場生活に対する疑問や不安が原因で実行に移せない新入社員もいます。

こういった新入社員の不安を解決して成長を促すための指導のポイントを、新商品のプレゼン資料を作ることを例にして紹介します。

2)仕事の目的を明らかにする

非合理的なことを嫌う最近の新入社員は、依頼された仕事について「この仕事に本当に意味があるのだろうか」という疑問を抱きがちです。仕事をする目的を伝え、新入社員の仕事に対するモチベーションを維持しましょう。

新商品のプレゼン資料を作る場合、「購入を検討している顧客に新商品のデザインや機能をPRするため」「自社の営業会議で、新商品をどのようなターゲットに向けて展開していくか協議するため」といったように、目的を具体的に伝えましょう。

3)上司と新入社員のギャップを見える化する

新入社員に仕事を任せても、上司の要求水準に達しなかったり、方向の誤った努力をしてしまったりすることはよくあります。上司がこと細かに指示を与えれば認識のギャップは生まれませんが、それでは新入社員の考える力が身に付きません。こういった場合は、上司と新入社員のギャップを見える化してみましょう。

新商品のプレゼン資料の作成では、取り掛かる前に資料全体の構成や盛り込む情報を、サマリーなどの形式で新入社員に報告させるとよいでしょう。サマリーを基に上司が確認することで、新入社員と上司の認識が合っているかどうかが分かります。

また、途中報告の期限についても「20%できた段階」などの曖昧な表現ではなく、「第○章までを○日の○時まで」と具体的に提示することで、計画的に仕事が進められます。

4)上司から新入社員に声を掛けて業務の進捗を確認する

上司が忙しそうで、報連相を行うタイミングが分からないという新入社員に対しては、上司のほうから積極的に声を掛けてみましょう。そうすれば、新入社員にとっても「この上司は話を聞いてくれる」という安心感が生まれ、報連相を行いやすくなります。

新入社員に声を掛ける際は、曖昧な質問をしないようにしましょう。例えば「業務の進捗はどう?」と聞かれても順調なのかどうか判断できない、「何か分からないことはない?」と聞かれても何を質問すればよいのか分からない、という新入社員もいます。

そのため、「第○章までを、今日の14時までに完成させてほしいのだけど、できそう?」「どこにデータがあるか分からずに困っているものはない?」などと質問することで、新入社員は疑問点が整理しやすくなります。

5 コミュニケーションの目的は?

上司が新入社員とコミュニケーションを取る目的は、新入社員に正しい行動を起こしてもらうこと、そして理想的には成果を上げてもらうことです。結果は同じでも、そこに導くためのプロセスは幾つもあり、父親型と友達型の指導はどのようなプロセスをたどるのかについての選択肢の1つにすぎません。

上司の重要な仕事は部下を導くことであり、特に企業の貴重な財産である新入社員の教育は、企業の成長のために欠かせない取り組みです。少しずつ仕事に慣れてきた新入社員は、徐々に“自分らしさ”を出してくるようになります。これは良いことですが、今どきの新入社員に対して先入観を持っていると、せっかく新入社員が表し始めた個性を、「生意気だ!」と感じ、抑え込んでしまうこともあり得ます。

新入社員の自主性を潰さないよう、まずは先入観を取り払ってフラットな視点で見てみましょう。新入社員は何に困り、どのようなサポートを求めているのか、おのずと見えてくるのではないでしょうか。

以上(2019年4月)

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出向社員を受け入れる側の留意点

書いてあること

  • 主な読者:親会社から出向社員を受け入れる予定のある企業の経営者
  • 課題:出向について親会社に確認すべきことや出向社員への対応のポイントが分からない
  • 解決策:親会社には出向期間・賃金・賞与・労働条件などを確認する。出向社員とトラブルにならないよう出向者を受け入れる際の覚書を用意する(本稿でひな型を紹介)

1 人事権の基本的な考え方

使用者には、出向など労働者の地位の変更に関する事項について、その裁量で決定できる権利、すなわち「人事権」が認められています。ただし、人事権は使用者が自由に行使できるわけではありません。個々のケースで解釈が異なる場合があるものの、基本的な考え方を確認していきましょう。

使用者と労働者が締結している労働契約の条件は、就業規則などで定められています。人事権は労働契約に基づく指揮命令の一つであると解釈されていることから、「就業規則などで定められた範囲で行使することができる権利である」と考えることができます。そのため、出向などについて、就業規則で定められた範囲を逸脱した決定を下すと、使用者の人事権の濫用と判断されてしまうことがあります。

加えて、就業規則などの定めだけを根拠とする人事権が問題となることがあります。就業規則などに、出向などに関する定めがあったとしても、それが「業務上の必要性があること」「不当な目的によるものでないこと」などの要件を満たしていない場合、使用者の人事権の濫用と判断されてしまうことがあります。

この点については、労働契約法でも定められており、使用者が出向を命じることができる場合であっても、その必要性や対象となる労働者の選定の方法などを考慮し、それが使用者の権利濫用であると認められるときは出向命令を無効にするとしています。

2 出向の種類と主な目的

1)在籍出向と転籍出向

1.在籍出向

在籍出向とは、労働者が出向元(出向を命じる会社)との労働契約を維持したまま、出向先(出向する労働者を受け入れる会社)と労働契約を交わして労働する形態です。労働者の立場から見ると、就業場所が変わるイメージです。

2.転籍出向

転籍出向とは、労働者が出向元との労働契約を終了した後、新たに出向先と労働契約を交わして労働する形態です。労働者の立場から見ると、勤め先の会社が変わるイメージです。

通常、人事権の範囲に含まれると解釈されるのは在籍出向までです。労働者との労働契約が消滅する転籍出向は人事権の範囲には含まれず、これを命じる場合は労働者の同意が必要となります。

以降では、在籍出向に注目し、その特徴などを紹介していきます。

2)会社が労働者に出向を命じる主な目的

1.新会社の経営の早期安定

新分野に進出する際に新会社を設立することがあります。新会社の経営を早期に軌道に乗せるために、優秀な労働者を出向させることがあります。

2.人材開発

人材の育成を目的として、若手や幹部候補の労働者をグループ会社などに出向させることがあります。

3.雇用の維持

親会社での雇用が困難になった場合、子会社に出向させることで雇用を維持するケースがあります。

3 出向者を受け入れる際の留意点

出向先が、出向者を受け入れる際の主な留意点を紹介します。

1)出向期間

出向者を受け入れる際の条件はさまざまですが、まずは出向期間を明確にしなければなりません。例えば、優秀な出向者が短期間で出向元に呼び戻されてしまったら、出向先は業務の引き継ぎなどに苦労します。逆に、優秀ではない者の出向が長期にわたる場合は雇用負担が重くなります。また、出向先は出向期間に応じて、出向者の教育ペースや配置を考えるものです。仮に、「3年間」といったように出向期間を明確にすることが難しい場合は、出向期間を1年単位とした上で、更新の3カ月~6カ月前までに、次期の出向の有無を決定するようにします。

2)賃金・賞与などの支払い

出向期間中の出向者に対する賃金・賞与などの支払い方法は次に大別されます。

  • 出向元か出向先のどちらかが全額を負担するケース
  • 出向元と出向先が負担割合を決めて負担するケース

特に、出向元と出向先が負担割合を決めて負担する場合は、負担割合を明確にしておくことが大切です。

3)出向者の労働条件

出向元よりも、出向先の労働条件のほうが低いことがあります。このような場合、出向者のためにも出向元の労働条件を適用することが理想的です。これが難しい場合、あらかじめ出向者に、出向元と出向先の労働条件の違いを伝え、同意を得ることが不可欠です。

4)親会社が出向者の受け入れを要請してきた場合の対応

親会社が子会社に出向者の受け入れを要請してきたケースを考えてみましょう。

出向元(親会社)が出向者の受け入れを要請してきた場合、基本的に出向先(子会社)はこれを受け入れることになるでしょう。出向者の受け入れによる人的交流を図ることで出向元との関係強化が期待できるからです。

とはいえ、労働者を一人雇用する際の負担はとても大きなものです。そのため、出向先は、前述した出向期間・賃金・賞与・労働条件を十分に確認しなければなりません。これに加え、出向の目的についても確認しておきます。出向元が出向者の受け入れを要請する目的は、ポスト不足・技術支援・雇用調整の布石などさまざまで、これによって出向先の対応も異なります。仮に、出向元が出向者を高く評価しており、幹部候補として送り込んでくるのであれば、出向先もそれなりの処遇をしなければなりません。

また、こうした出向元との条件確認に加え、出向先は自社の労働者に対する説明もしなければなりません。「親会社からの出向者を受け入れる」ことについて、出向先の労働者は高い関心を持っています。出向者を受け入れた後の円滑なコミュニケーションを実現するためにも、出向先は労働者に対して「出向者を受け入れる理由と活用の方針」を説明しておく必要があるかもしれません。

一方、雇用負担やポスト不足などを理由に、出向元からの出向要請を断らざるを得ない場合は、出向元との円満な関係を維持するために、十分に話し合います。その際は、「出向者を受け入れることができない理由」を明確に伝えることが重要です。

4 出向者受け入れに関する覚書のひな型

出向者を受け入れる際の覚書のひな型を紹介します。なお、次のひな型は一般的な定めを紹介したものであるため、実際にこうした覚書を作成する際は弁護士や社会保険労務士などの専門家に相談することをお勧めします。

【出向社員受け入れに関する覚書のひな型】

○○株式会社(以下「甲」)と△△株式会社(以下「乙」)とは、甲から乙へ出向の取り扱いを受ける甲の従業員◇◇◇◇(以下「丙」)の労働条件その他について、以下の事項を確認し、その証として本書を交換する。

第1条
この出向により、甲と丙の労働契約が終了することはなく、出向期間中も丙は引き続き甲の従業員としての地位を維持する。

第2条
出向期間は○年○月○日より○年○月○日までとする。ただし、甲乙の協議により出向期間が変更されることがある。この場合、甲は丙の同意を得た上で出向期間を変更する。

第3条
出向期間中、丙は乙の指揮命令に従って労働する。

第4条
出向期間中の丙の労働条件は乙の就業規則に基づくものとする。

第5条
出向期間中、甲は丙に所定の給与、賞与、通勤費実費を支給する。

第6条
丙の健康保険、介護保険、厚生年金保険および雇用保険などの社会・労働保険については、甲において引き続き加入する。

第7条
丙の安全衛生および災害補償義務は乙が負い、丙の労災保険料は乙が負担する。

第8条
丙が乙の指揮命令による業務の従事中、過失などにより乙または第三者に損害を及ぼしたときは、乙はその責任においてこれを処理し、甲に対して何ら請求をしない。

第9条
出向により、丙が何らかの不利益を被ることがある場合は、甲乙並びに丙が協議してその解決を図るものとする。

第10条
本書の解釈などに疑義のあるときは、その都度、甲乙協議のうえで決定する。

本書締結の証として、2通を作成し甲乙各々その1通を保有する。

○年○月○日

以上(2019年4月)

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心理学で見る「ゆとり社員」の特徴

書いてあること

  • 主な読者:いわゆる「ゆとり教育」を受けた「ゆとり社員」とのコミュニケーションに悩む上司や先輩社員
  • 課題:もっとやる気を持って仕事に取り組んでほしいが、強く注意すると逆にやる気を失うような気がして、うまく指導できない
  • 解決策:「自身にとって必要なことには真面目に取り組む」「成長意欲が高い」など、仕事に対する原動力になり得る特性を押さえる

1 若手社員の中に「ゆとり社員」がいたら……

世代間のギャップはいつの時代にもあるもので、企業の組織においても例外ではありません。例えば、入社して間もないのにすぐに辞めようとしたり、自ら進んで仕事に取り組もうとしなかったりする社員を見ると、上司や先輩社員は「今どきの若者は……」と思うでしょう。

こうした「今どき」の若い社員は、1990年代から2000年代初頭に行われたいわゆる「ゆとり教育」を受けた世代と重なるため、現在では「ゆとり社員」と呼ばれることが多いようです。

とはいえ、ゆとり社員とのコミュニケーションの問題は、上司や先輩社員が、物事の伝え方、言葉の選び方、接し方を少し注意するだけで解決することもあります。「ゆとり社員」の特徴を、心理学的視点から考えていきましょう。

2 自分の居場所はここじゃない~青い鳥症候群~

1)青い鳥症候群とは

青い鳥症候群とは常に現状に不満を持ち、新しい居場所を求め続ける状態で、童話「青い鳥」にちなんで名付けられました。仕事に当てはめると、「自分にはもっと適した仕事があるはずだ」と転職を繰り返す、ということなどになります。

「最近の若者は忍耐力が足りず、1つの仕事が続かない」などといわれますが、そうした人は、青い鳥症候群の可能性があります。

青い鳥症候群は、挫折経験が少ない人や、自分の能力に自信を持っている人がなりやすいようです。にもかかわらず、入社直後は先輩社員のサポートなど地味な仕事ばかり任されるので、「自分の能力が適正に評価されていない」と不満を抱くのです。

2)青い鳥症候群にならないためには

上司や先輩社員は、青い鳥症候群の部下を「どこに行っても同じ」などと説得します。しかし、青い鳥症候群になっている部下は、「もっと自分に向いた仕事があるはず」と信じているため、それを受け入れることはできません。

青い鳥症候群にならないためには、「より良い場所」への憧れを捨てさせるのではなく、現状に対する不満を軽減させることが重要です。ゆとり社員の不満は、多くが「自分は適正に評価されていない」「自分の能力が発揮できない」というものです。

この不満を軽減させるには、まず「ゆとり社員が現在行っている仕事の意味をしっかりと伝える」ことです。地味に思える仕事でも、企業全体の中では重要な意味を持っているのだということを伝えます。

さらに「評価していることを示す」ことも重要です。「地味に思える仕事だが、君がこの仕事をやってくれるので、とても助かっている」などと声を掛けることで、ゆとり社員が仕事に意味を見いだせるようになるでしょう。

なお、ゆとり社員の中には、成長意欲がとても強く、ごく短期間でのキャリアアップを望む人もいます。「早く結果を出したい」と考えているため、目に見える成果を実感しにくい仕事の意味を理解しないことがあります。

このような場合は、一度難しい仕事を任せて失敗させるのも1つの方法です。ゆとり社員に意図的に挫折を経験させた上で、現在の仕事が成長のために不可欠であること、結果だけでなく取り組み姿勢などを総合的に評価していることを説明するのです。

3 誰かがやるだろう~責任の分散~

1)責任の分散とは

責任の分散とは、複数の人間が1つの問題に向かい合うことで、個人が感じる責任の程度が軽減され、積極的な行動を取らなくなることをいいます。企業に当てはめると、「自分の仕事は行うが、担当者が決まっていない仕事には取り組まない状態」といえます。

例えば、共用スペースのゴミを「誰かが拾うだろう」と自分では拾わなかったり、代表電話を「誰かが出るだろう」と自分では出なかったりする場合です。

責任の分散は、ゆとり社員だけに限ったことではありません。ただし、入社から日の浅いゆとり社員の場合、重い責任を負った経験が少なく、責任の分散が起こりやすいといえます。

2)責任の分散を防ぐには

責任の分散を防ぐためには、担当者を決めて各人の責任を明確にすることが有効です。しかし、全ての活動の担当者を決めるのは困難です。また、仮に全ての活動の担当者を決めたとすると、担当者以外はその活動に参加しなくなるかもしれません。

特に、問題発見や新たな提案などは、社員全員が随時取り組むべきもので、これを行う社員を決めてしまうことは好ましくありません。担当者を決めずに責任の分散を防ぐためには、各社員に「自分自身が問題に向き合っている」という意識を持たせることです。具体的には、次のような方法が考えられます。

  • 経営者や上司が各社員に個別に声を掛けるなどすることで、大勢いる社員の中の1人ではない「個人としての意識」を高める
  • 担当者が定まっていない活動に自ら取り組んだ社員を朝礼で称賛するなど、きちんと評価していることを伝える
  • 360度人事評価(多面評価)を導入するなど、他者の目を意識させる

4 ゆとり社員を戦力化するためには

ゆとり社員の共通の特性として、「自身にとって必要なことには真面目に取り組む」「無駄なことはしたがらない」「成長意欲が高い」「他者から認められたいという欲求が強い」といった面があるようです。

これらは、仕事に対する原動力になり得るものです。表面的な態度などから、つい「やる気がない」などと判断してしまいがちですが、意識をうまく仕事に向けさせると、ゆとり社員は大変な集中力と意欲を持って仕事に取り組むでしょう。

入社して間もないゆとり社員は、企業にとっては次代を担う大切な人材です。表面的な態度だけから、「最近の若い社員は駄目だ」と決め付けて、彼らの意欲をなくさせるのは企業にとって大きな損失です。ゆとり社員の特性を理解した上で、次代を担う戦力へと成長させていくマネジメントを心掛けましょう。

以上(2019年1月)

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労使コミュニケーションがうまくいく5つの取り組み

書いてあること

  • 主な読者:社員に会社を好きになってもらいたい経営陣
  • 課題:経営陣と社員は気持ちがすれ違う、分かりあえないところが多い
  • 解決策:労使コミュニケーションのきっかけは経営陣がつくり、主役を社員にするのが大切。「伝える」「示す」「聞く」「交わす」「育てる」の5つで実践しよう

1 理想的な労使コミュニケーションとは

経営陣と社員との意思の疎通を指す「労使コミュニケーション」。労使コミュニケーションの重要性は会社(経営陣)も社員も理解していますが、なかなかうまくいかないのが実情です。

労使コミュニケーションが良好な状態とは、会社と社員が“両思い”にあることです。会社は全ての社員に感謝し、そして社員が意欲的に仕事に取り組むことができるよう教育します。さらに、チャンスを与え成長を促します。

それに対して社員も会社に感謝し、会社の目標(理念)を理解した上で、会社の成長にどのように貢献できるかを自分で考え、それを行動に移します。これを社員が当たり前に行っていれば、労使コミュニケーションは理想的な姿といえるでしょう。

2 伊那食品工業(長野県)の例

良好な労使コミュニケーションで知られている伊那食品工業(長野県)は、業績と働きがいが両方ある会社として有名な寒天メーカーです。

伊那食品工業は社員はもちろん、地元の人も「あの会社はいい会社だ」と自慢するほどで、日本銀行やトヨタ自動車のトップなども視察に訪れ、伊那食品工業の会社としての在り方などを学んでいます。

伊那食品工業の会長である塚越寛氏は、社員を幸せにすることを会社の目的としており、「いい会社をつくりましょう」(*)という社是を掲げています。また、社員が自ら考え行動できるようにしようと、トップの考え方や生きざまを朝礼などで伝えています。

良好な労使コミュニケーションは一朝一夕に実現できるものではありません。特に現在、労使コミュニケーションで悩みを抱えている会社であれば、腹を据えて年単位で取り組んでいくことが求められます。

それでは、伊那食品工業のような良好な労使コミュニケーションを実現するためにはどうしたらよいのでしょうか。ここでは、「伝える」「示す」「聞く」「交わす」「育てる」の5つの要素から考えていきます。

3 大切な5つの要素

1)伝える

例えば、今年度の事業方針説明会などを行って、会社の現状、今後の方針、今年度の計画、具体的な目標などを社員に伝えます。これは、社員に自分が取り組んでいる仕事が全体像のどの部分か、どのような意味があるのかを認識してもらうためです。

また、「伝える」ことには、トップの考え方や思いを社員に明確に伝えるという意味もあります。京セラ創業者の稲盛和夫氏は、トップと現場の社員が経営目標を共有することの重要性を説いており、自身も経営に対する思いを熱く社員に語ったといいます。

稲盛氏は、このことについて、社員に「エネルギーを転移する」(**)という言葉を使っています。社長など経営陣が全身全霊をささげて本気で思いを伝えることで、社員の意欲を鼓舞することができるのかもしれません。

2)示す

労使コミュニケーションが良好だと、経営陣と現場で働く社員の考えが一致するようになります。それを実現するには、経営陣のほうから社員に「よりどころ=行動指針」となる明確な基準を示すことが大切です。

例えば、ヤマト運輸には、創業者の小倉昌男氏が残した「サービスが先、利益は後」(***)という言葉があります。コストが掛かっても、お客様の要望に応えようとする姿勢が社員のよりどころになっているといいます。

このように、社員にとって分かりやすい言葉をつくり、それを「我が社の品質基準=行動指針」とすることも、労使コミュニケーションの一環といえるでしょう。行動指針は、社員にとって分かりやすく覚えやすいのが一番です。

例えば、「ダントツ」という言葉を社内外に浸透させた小松製作所の相談役である坂根正弘氏のように、社長をはじめ経営陣が、社員が覚えやすい新しい言葉をつくったり、あるいは造語を考えたりしてもよいかもしれません。

3)聞く

良好な労使コミュニケーションを実現するために、経営陣が社員側の考え方や意見を聞くことも大切です。例えば、直属の上司が部下の考え方・意見を聞く機会を増やし、それを上司が経営陣に伝えられる仕組みをつくるとよいでしょう。

とはいえ、部下である社員の話を聞くのは“つらい”と感じる経営陣や上司は少なくありません。部下の話は、主語がない、事実と意見が混在している、主観的過ぎて視野の狭い発言が多いなどの改善すべき点が多いためです。

加えて、経営陣や上司は多忙です。主語がなかったり事実と意見が混在していたりして分かりにくい部下の話を、「もっと分かりやすく話をして」などと、毎回聞き直してじっくり聞いている時間は確保しにくいでしょう。

そこで、月に一度など定期的に経営陣や上司が「部下の話を聞く日」をつくって徹底的に聞いてみましょう。その際、部下の話をできるだけさえぎらずに、最後まで“聞き切る”ことを心掛けることが大切です。

もちろん、日ごろから部下に、人に物事を話したり伝えたりするときには、主語・目的語・結論・時間軸などを明確にするなど、分かりやすく整然と話すよう指導することも忘れてはなりません。

4)交わす

社員が生き生きと働く会社の多くは、まず、気持ちの良い挨拶が実践できています。社員同士は「今日も一緒に頑張ろう、よろしくお願いします」という気持ちを込めているのでしょう。

社員同士が気持ち良く挨拶ができる会社は、社外の人が訪れた場合も同じように挨拶ができます。社外の人を迎える社員が、「我が社に来てくださってありがとうございます」という感謝の気持ちを込めて挨拶することができるのでしょう。

こうした挨拶を交わすことを社員に浸透させるには、まず、社長自らが明るく気持ち良く挨拶をしなければなりません。そして、それに他の取締役や上司も倣っていくことが大切です。

社長をはじめ経営陣や上司は、挨拶をしている自分の姿を鏡で毎朝確認したり、自分で録画したりして、「本当に明るく気持ち良く挨拶ができているか」をチェックしてみるのもよいでしょう。

気持ちの良い挨拶が全社員に浸透するには時間がかかります。経営陣や上司は、たとえどのようなことがあったときでも、まずは、明るく気持ちの良い挨拶を毎日欠かさず続けましょう。

また、意見・議論を「交わす」ことも必要です。前述した「聞く」にも通じますが、社員と積極的に意見・議論を交わすには、部下の話を聞く日を設けるなど、まず、経営陣や上司が部下の意見を聞く姿勢、議論する姿勢を見せなければなりません。

5)育てる

本稿では、労使コミュニケーションを実現する「伝える」「示す」「聞く」「交わす」を紹介してきました。大切なのは、これらの取り組みを実践できるような組織風土を醸成すること、そしてその組織風土を維持することです。

つまり、風土と社員を常に「育てる」ことが欠かせないということです。多くの会社が「育てる」ことの重要性を分かっていますが、実現できている会社は少ないのではないでしょうか。実現するにはまず、社長の言動が必要です。

社長が毎日気持ち良く挨拶をし、「社員が生き生きと働くことのできる会社にしよう」と決め、社員の話を聞きます。そして、時には本気で議論することを実践していかなければなりません。社員はその姿を見て育ちます。

前述の伊那食品工業の場合は、積雪の多い長野県にあるため、本社前の道路脇の溝に自動車がはまってしまうことがあるそうです。それを見た社員が他の社員に呼び掛けると、「困っている人を助けるのに理由は要らない」と、何人もの社員が自動車を引き上げるといいます。

伊那食品工業の社員がこうしたことを実践するのは、社員をはじめ会社に関わる人全てに「いい会社だ」と言ってもらえる会社になろう、という塚越氏の理念に基づきます。こうした“生きざま”を社員が常に見ていて、「自分たちもそうしよう」と思っている証しです。

4 労使コミュニケーションという呼び方が変わる?

社員の働き方は、テレワークなどに代表されるように多様化しており、今後は毎日出社する必要がない会社が増えていくかもしれません。会社と社員の関係も変わりつつある時代だからこそ、経営陣と社員が強い信頼関係を築くことがますます重要になるでしょう。

なぜなら、たとえ会社の外で仕事をしていようと、経営陣と離れたところで仕事をしていようと、自ら意欲的に仕事に取り組み、会社や同僚のことを考えて行動できるような社員を増やしていかなければならないからです。

伊那食品工業には、労働組合がありません。塚越氏は、社長と社員は「労使」ではなく、社員全員の幸せを目指す「同志」だからと言っています。これからは、“労使コミュニケーション”という呼び方も、新しく変わっていくのかもしれません。

【参考文献】

(*)「いい会社をつくりましょう」(塚越寛(著)、大久保寛司(監修)、文屋、2012年5月)
(**)「燃える闘魂」(稲盛和夫、毎日新聞社、2013年9月)
(***)「小倉昌男 経営学」(小倉昌男、日経BP社、1999年10月)
「ダントツ経営 コマツが目指す『日本国籍グローバル企業』」(坂根正弘、日本経済新聞出版社、2011年4月)
「月曜日の朝からやる気になる働き方 成功より成長を楽しむ」(大久保寛司、かんき出版、2008年12月)

以上(2019年1月)

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データに見る中小企業の退職金事情

書いてあること

  • 主な読者:退職金制度の普及状況を知りたい経営者
  • 課題:退職金制度を導入したいものの、どの形態が良いのかわからない
  • 解決策:企業規模、業種別に分けた導入状況を把握する

1 退職金制度の普及状況

退職給付(一時金・年金)制度がある企業の割合は80.5%で、企業規模が大きいほど導入率が高くなっています。形態別については、退職一時金制度のみを導入している企業が最も多くなっています。

ただし、企業規模が大きくなると、両制度の併用や退職年金制度のみを導入する割合が高まっていくのが特徴です。産業別に見ると、最も導入率が高いのは「複合サービス事業」、最も低いのは「宿泊業・飲食サービス業」となっています。

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次に、退職者1人平均退職給付額(勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職者)を見てみると、学歴が高くなるほど退職給付額が大きくなります。また、両制度併用の場合の給付額が大きくなります。

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2 中小企業のモデル退職金

1)調査産業計のモデル退職金

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2)建設業のモデル退職金

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3)製造業のモデル退職金

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4)情報通信業のモデル退職金

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5)運輸業、郵便業のモデル退職金

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6)卸売業、小売業のモデル退職金

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7)金融業、保険業のモデル退職金

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8)不動産業、物品賃貸業のモデル退職金

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9)学術研究、専門・技術サービス業のモデル退職金

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10)宿泊業、飲食サービス業のモデル退職金

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11)生活関連サービス業、娯楽業のモデル退職金

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12)教育、学習支援業(学校教育を除く)のモデル退職金

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13)医療、福祉のモデル退職金

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14)サービス業(他に分類されないもの)のモデル退職金

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3 中小企業退職金共済制度とは

中小企業退職金共済制度は、企業独自に退職金制度を持つことが困難な中小企業が相互扶助の精神により、互いに退職金原資を拠出し合って、安定した退職金制度を構築することを目的に作られた制度です。

事業主が勤労者退職金共済機構と退職金共済契約を結び、毎月の掛金を口座振替により納付します。従業員が退職したときは、その従業員に中退共から退職金が直接支払われます。中小企業が退職給付(一時金・年金)制度を導入する際の選択肢として検討するとよいでしょう。

■勤労者退職金共済機構 中小企業退職金共済事業本部(中退共)■
http://chutaikyo.taisyokukin.go.jp/

以上(2019年3月)

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