災害で社員が負傷したら、労災になりますか?/中小企業のためのBCP

Q.災害で社員が負傷したら、労災になりますか?

A.業務中や通勤途中の災害による負傷は、労災として認定されやすい傾向にあります。

1 災害による負傷などが労災になる場合

労災は、業務上の事由による「業務災害」と、通勤による「通勤災害」とがあります。災害は業務とは関係なく発生するので、災害による負傷が業務上の事由に当たるのか、疑問に思うかもしれません。

実際は、業務中や通勤途中の災害による負傷は、労災として認定されやすい傾向にあります。オフィスや通勤経路に被災しやすい事情(建物や道路の構造上の脆弱性など)があって、その危険が災害によって現実化したものと考えられるからです(下図を参照)。

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2 労災が会社の責任になる場合

会社は、社員が安全で健康に働けるよう配慮する「安全配慮義務」を負います。この配慮が不十分なために労災が発生した場合、社員から損害賠償などを求められる恐れがあります。

例えば、オフィスの什器の固定が不十分で、地震によってその什器が倒れてきたために社員が負傷した場合(業務災害)、安全配慮義務違反を問われる恐れがあります。

また、防災気象情報が出ているなど、危険がある状態にもかかわらず、会社が出勤を命じたために社員が被災した場合(通勤災害)も同様です。 オフィスなどの設備点検はもちろん、被災の危険がある場合には、社員に自宅待機を命じるなど適切な対応をしないと、単なる労災では済まなくなってしまうでしょう。

なお、業務の内容にもよりますが、災害時に在宅勤務を命じることができる体制を整えておくことで、社員の安全を確保しつつ業務への影響を抑えることができます。

以上(2020年4月)
(監修 社会保険労務士 志賀碧)

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【座談会】休業の取り扱いや給与の支払いなど、災害時のルールを把握していますか?/中小企業のためのBCP

――災害時に起こりがちな労務上の問題について教えてください。

社会保険労務士
まず想定されるのは、休業です。休業というと、「オフィスなどが損壊したため、事業をストップする」といったイメージが強いかもしれません。

しかし実際は、二次災害を防ぐため、社員を自宅待機させる休業もあります。「どのような場合に休業するのか」が曖昧な状態で、社員が通勤中などに被災してしまった場合、会社が責任を問われる恐れがあります。

弁護士
給与の支払いについても注意が必要です。大規模な災害の場合、一時的に預金の引き出しなどができなくなるかもしれません。そうなると、生活費や治療費に充てるため、社員が給与の前払いを請求してくることも考えられます。

――休業するかどうかは、何を基準に判断すればよいですか? また、その他に休業について注意すべきことはありますか?

社会保険労務士
休業するかどうかを迷った場合、気象庁の防災気象情報などを1つの判断基準とするとよいでしょう。

休業を社員に伝えるタイミングも大切です。例えば、鉄道会社の中には、計画運休の可能性を48時間前に知らせ、運休内容の詳細を24時間前に発表しているところがあります。これを参考にするのもよいでしょう。いずれにせよ、できるだけ早く社員に休業を伝えることが大切です。

休業の理由によっては、休業手当の支払いが必要になるケースがあることも押さえておきましょう。なお、災害時は、休業手当の支払いに充てることのできる助成金があるので、積極的に活用することをお勧めします。

――給与の支払いを通常通りに行えない場合、会社はどのような対応を取ればよいですか?

弁護士
災害時、社員が治療などのために給与の前払いを請求してきた場合、支払期日前であっても、すでに働いた時間分については支払わなければなりません。口座振込を行うのが難しい状態であれば、給与の支払い方法を一時的に手渡しに切り替えます。

社員本人と連絡が取れない間に、親族が給与の支払いを請求してくることも考えられます。本来、給与は社員本人に支払わなければなりませんが、緊急性が高ければ、親族の身分を確認し、領収書を発行した上で支払うなどの対応を検討します。なお、退職金の場合、支払額が高額になるため、社員が「失踪宣告」(生死不明の者を、法律上死亡したものとみなす効果を生じさせる制度)を受けているのかを確認するなど、より慎重な対応が必要です。

――BCPや災害対策に本気で取り組もうとしている経営者に対して、アドバイスをお願いします。

社会保険労務士
会社にとって最も大切なのは社員です。まずは社員を守ることを最優先に考えてください。いわゆる「労災」や助成金などは、手続きが煩雑なイメージがあるかもしれませんが、災害時は手続きが簡略化されるなど、行政側もある程度柔軟な対応をしてくれます。「忙しくて、そんな暇はない!」と手続きを後回しにせず、できるだけ早く行動を起こすことが、社員や会社を救うことにつながります。

事前の備えも大切です。休業に関するルールなどの他、オフィスの設備などについても対策を立てておきましょう。例えば、什器の固定が甘く、それが倒れてきて社員が被災した場合、会社が責任を問われる恐れがあります。また、災害ではありませんが、昨今は感染症のリスクも指摘されており、社内に感染症がまん延しないよう対応することが求められています。従って、日ごろから定期的に設備を点検する、オフィスを清潔に保つなど、安全衛生管理をしっかりと行う必要があるでしょう。

以上(2020年4月)
(監修 弁護士 田島直明、弁護士 坂東利国、社会保険労務士 志賀碧)

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自社(取引先)が営業できない。どのようなリスクがありますか?/中小企業のためのBCP法務

Q.自社(取引先)が営業できない。どのようなリスクがありますか?

A.災害前に発注した商品や業務の受け入れについては、取引先とよく協議をすることが必要です。

1 自社が営業できなくなった場合

工場が被災した、社員が出勤できないなどの事情により自社が営業できなくなったとしても、災害の規模などによっては、取引先は営業を継続している可能性があります。

例えば、自社が災害前に発注していた商品を、取引先が納品しに来た場合、保管場所がない、社員がいないため対応できないなどの理由で受領を拒絶すると、法的には受領遅滞という状態になり、次のような不利益が生じます(これは商品の納品に限らず、何らかのサービスや業務の提供を受けようとする場合も同様です)。

まず、取引先がやむを得ず持ち帰った商品を保管するために新たに発生した費用、例えば倉庫代などは自社の負担になります。また、取引先が商品を持ち帰った後、新たな災害や余震など取引先に帰責性がない事象で商品が滅失しても、自社が商品代金の支払い義務を免れない恐れがあります。こうした受領拒絶の効果は、解釈上の争いはあるものの、商品の受領を拒絶した理由が災害を原因としたやむを得ないものであっても、認められることがあります。

従って、たとえ自社が営業できなくなったとしても、可能な限り取引先からの納品を受け入れることが望ましいといえます。しかし、納品された商品を営業再開後に利用する見込みがある場合はともかく、被災したために発注済みの商品や業務が不要となってしまった場合などは、取引先とよく協議して、双方合意の上で契約を解約するなどの対応を取るのがよいでしょう。

なお、自社が親事業者として下請事業者に対して製造委託をした場合など一部の取引では、下請業者からの納品の受領を拒絶すると、下請代金支払遅延等防止法(下請法)違反となる恐れがあります。

2 取引先が営業できなくなった場合

自社は営業を継続しているものの、取引先が営業できなくなってしまった場合、自社が災害前に発注していた商品が取引先から納品されなかったり、依頼していた業務が提供されなかったりする恐れがあります。

平常時であれば、こうした契約の不履行については、取引先に帰責性があるものとして、損害賠償請求が可能となることが多いと考えられます。しかし、契約の不履行の原因が災害にあり、しかもそれが「不可抗力」として認められる場合には、損害賠償請求が認められないこともあります。

なお、自社が商品の納品などをできる状態にあるにもかかわらず、取引先が被災したことを理由に商品の受領などを拒絶する場合については、前述の「自社が営業できなくなった場合」の解説を参照してください。

以上(2020年4月)
(監修 のぞみ総合法律事務所 弁護士 佐藤文行)

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災害でリース物件が損壊したら、賠償しなければなりませんか?/中小企業のためのBCP

Q.災害でリース物件が損壊したら、賠償しなければなりませんか?

A.リース物件については規定損害金の支払義務が発生します。
また、顧客などからの預かり品などについても損害賠償義務を負う恐れがあります。

1 リース物件が損壊した場合

自動車・コピー機・オフィス内装などを対象とした一般的なリース契約では、災害によってリース物件が損壊した場合、物件利用者が修理費用を負担した上でリース料を支払わなければならないものとされています。

また、リース物件が災害によって滅失し修復不能となった場合でも、物件利用者は規定損害金を支払わなければならないものとされています。

こうした事情を背景に、災害時のリース業者の対応としては、新たに代替品のリース契約を締結して、そのリース料を低額に抑えたり、規定損害金の支払いを長期分割にしたりするなど、物件利用者の実質的負担を軽くすることもあるようです。

もっとも、通常はリース物件に動産保険が掛けられています。念のため、保険の適用の有無を、リース業者に確認してみましょう。

2 顧客などからの預かり品などが損傷した場合

倉庫業者である自社が顧客から物品を預かっている最中、あるいは加工業者である自社が商品の仕掛品を預かっている最中に被災し、預かり品が損傷・滅失してしまったとします。こうした場合、自社は損害賠償義務を負うのでしょうか。

自社が預かり品を保管・管理するに当たって、どの程度注意を払わなければいけないのかは、物品を預かった原因によって異なりますが、多くの場合、自社は「善管注意義務」を負います。善管注意義務とは、自社の業務内容などを踏まえて、取引上一般的に要求される程度の義務をいいます。倉庫業者の例でいえば、「一般的な倉庫業者であれば、このくらいの保管・管理はすべき」というものです。

従って、預かり品を不用意に荷崩れや落下が起きやすい状態で保管していたところ、地震が発生して預かり品が落下し損傷してしまったような場合、たとえ損傷の原因が災害であったとしても、善管注意義務違反として、自社が損害賠償義務を負う恐れがあります。

一方、預かり品を保管していた倉庫が津波で流されて預かり品も一緒に流出してしまったというような場合、どれほど注意を尽くしてもその結果は避けられなかったといえるケースが多いと思われます。よって、通常は損害賠償義務を負うことはありません。

ただし、倉庫の立地などによっては、こうした場合でも損害賠償義務を負う恐れがあります。例えば、他の保管手段もあったのに、津波の危険のある海岸近くの倉庫に預かり品を保管していた場合などが考えられます。

以上(2020年4月)
(監修 のぞみ総合法律事務所 弁護士 佐藤文行)

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被災時、オフィスの賃料や、自社ビルの借地権はどうなりますか?/中小企業のためのBCP

Q.被災時、オフィスの賃料や、自社ビルの借地権はどうなりますか?

A.オフィスの全部が使用できない場合、賃料の支払い義務はありません。一部が使用できない場合は減額が認められます。
また、借地上の自社ビルが被災しても、借地権は原則として被災を理由に消滅しません。

1 賃借しているオフィスが被災した場合

賃借しているオフィスが被災した場合、被災の程度によって賃料の支払いの要否やその額が異なります。

オフィスの全部が使用できなくなった場合、オフィスの借家契約は解除などの手続きを取らなくても当然に終了するので、賃料を支払う必要はありません。使用できなくなったといえるかどうかは、被災の程度、修復に必要となる費用などを考慮して判断されます。

オフィスの一部が使用できなくなった場合、借家契約は終了しませんが、使用できなくなった部分の割合に応じて賃料が減額されます。とはいえ、自社の判断で勝手に賃料を減額して支払うと、オーナーとトラブルになる恐れがあるので、まずは減額する金額や期間などについてオーナーと協議するのが望ましいでしょう。

こうした場合、賃料の減額の他、使用できなくなった部分の修繕を求めることもできます。

また、使用できる部分だけではオフィスの用を成さないのであれば、契約を解除することもできます。

2 借地上の自社ビルが被災した場合

自社ビルを借地上に建てている場合、自社ビルが全壊しても例外的な場合(プレハブの仮事務所などのように、一時的に土地を借りており、かつ建物滅失の場合には借地権が消滅する特約があるケースなど)を除いて借地権は消滅しません。そのため、地代は継続して支払わなければなりません。

一方、借地権が存続する以上、原則として自社ビルの再築は可能です。また、再築に当たって地主の承諾を得たり、承諾料を支払ったりする必要もありません。しかし、地主の承諾を得ずに再築すると、借地期間の延長が認められないことがあります。

また、借地契約で再築を禁止したり、増改築を制限したりする特約が定められていることもあるので、注意が必要です。

従って、自社ビルを再築するのであれば、可能な限り地主に承諾を得るのがよいでしょう。それが難しい場合、裁判所に承諾に代わる許可を得るための申立てをすることができます。

なお、自社ビルが全壊にまでは至らなかった場合、必要に応じて修理・修繕できることは当然です。たとえ契約書に修理・修繕を制限する条項があったとしても、通常の修理・修繕まで制限する場合、その範囲でこうした条項が無効になると考えられます。

以上(2020年4月)
(監修 のぞみ総合法律事務所 弁護士 佐藤文行)

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災害などを見据え、契約書のどこを確認するべきですか?/中小企業のためのBCP

Q.災害などを見据え、契約書のどこを確認するべきですか?

A.民法(2020年4月1日より改正法が施行)の内容を踏まえ、解除権の行使などについて、契約書の規定を見直し、災害時の自社のリスクを低減しておきましょう。

1 解除権の行使に関する定め

民法では、一方当事者が契約を履行できなくなった場合、その原因が災害のように自己に責任がないものだったとしても、相手方は履行を催告した上で(履行が不能であれば催告なしで)、契約を解除できるとされています。災害などによって物流が滞り、商品の納品が遅れる場合を想定してみましょう。

まず、自社が売主の場合、契約を解除されると支払いを受けられないまま在庫を抱えることになります。もう少し時間がたてば納品できそうな場合などは特に困ります。そのため契約では、「履行遅滞の原因が不可抗力によるものであるときは、当該履行遅滞を理由として契約を解除できない」などとしておくことが考えられます。

次に、自社が買主の場合、「納品が遅れるのであれば、契約を直ちに解除して他社から商品を購入したい」と考えるかもしれません。そのため契約では、「不履行があったときは、催告をすることなく直ちに契約を解除できる」などとしておくことが考えられます。

2 引渡し前か後かで変わる代金の支払い

自らに責任がない事情で債務を履行できなくなった場合に、対価の支払いが受けられるか否かの結論が変わることを「危険の移転」といいます。例えば、自社が販売する建売住宅の売買契約を締結した後に(引渡し前に)地震で当該建物が倒壊した場合、自社が買主に代金の請求をしても、買主は代金の支払いを拒絶できます。一方、自社が買主に建物を引き渡してしまえば、その後に地震で建物が倒壊しても、買主は代金を支払わなければならないとされています。

つまり、災害などを原因として売買契約の目的物が滅失した場合、それが引渡しの前か後かによって代金支払拒絶の可否が異なります。そして、当事者が契約で取り決めれば、危険の移転時期を引渡しとは異なった時点とすることができます。例えば、鍵の引渡しより前に所有権移転登記がされる場合、「登記の移転をもって危険を移転する」とすれば、鍵の引渡しが未了でも、登記さえされていれば代金の支払いを求めることができます。

3 請負契約、賃貸借契約の留意点

民法では、請負契約において、災害などを原因として仕事の完成が不能となった場合、請負人が出来高部分に応じた報酬を請求できます。また、賃貸借契約において、災害などで賃借物の一部が滅失した場合、賃料が滅失の割合に応じて当然に減額されます。 こうした民法の定めと異なる取り扱いをしたい場合、あらかじめ契約に定めておくことが必要です。

以上(2020年4月)
(監修 のぞみ総合法律事務所 弁護士 佐藤文行)

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災害などで契約を履行できない。どのようなリスクがありますか?/中小企業のためのBCP

Q.災害などで契約を履行できない。どのようなリスクがありますか?

A.自社だけではなく、取引先が被災して契約を履行できなくなった場合にも、自社が損害賠償責任を負う恐れがあります。

1 自社が契約を履行できなくなった場合

災害時は、工場が被災して商品が納品できない、社員が出社できず請け負っていたソフトウエア開発が納期に間に合わないなど、自社が取引先との契約を履行できなくなる恐れがあります。社員が感染症にかかり、自宅待機を命じられている場合なども同様です。

契約の世界では、不可抗力によって契約を履行できなくても、当事者は損害賠償責任を負わないものとされています。実際、災害などによる契約不履行について、免責する規定を定めている契約書は多く見受けられます。

もっとも、契約不履行の原因が災害にあるからといって、必ず免責されるわけではありません。例えば、地震が原因で契約を履行できない場合、地震の規模がどの程度であれば不可抗力といえるのかについての明確な基準はありません。また、極めて大規模な地震であっても、近隣の同業他社が事前に災害に備えていて、早期に事業を再開させた場合、事業がストップし続けた原因は、事前の対策が不十分な自社にあるかもしれません。

こうした場合、自社が損害賠償責任を負う恐れがあります。その対策として、契約書の中に、不可抗力として自社が免責される場合をできる限り具体的に定めたり(「自社所在地の震度が○以上の場合」など)、早期に業務を再開するためにBCPを策定したりしておく必要があるでしょう。

2 取引先が契約を履行できなくなった場合

自社が被災していなくても、取引先が被災して操業がストップしてしまい、いわゆる「サプライチェーンの断絶」によって自社が契約を履行できないケースもあります。例えば、取引先から部品を調達できず、完成品を納品できない場合などです。

自社が顧客に対し、平常時の生産体制を前提とした納品を約束しているとしたら、自社は顧客から、商品を納品できないことについての責任を問われる恐れがあります。これは、取引先である部品メーカーが被災した場合のみならず、部品メーカーのさらに先の原材料商社などが被災した場合も同様です。 こうした事態を避けるためには、代替部品や代替業者などの確保手段を検討したり、契約書の中に「原材料や部品の調達が自社の責めによらずして不能となった場合、不可抗力として自社が免責される」旨の規定を定めたりしておくことがとても重要です。

また、場合によっては、自社と密接な取引関係にある業者との間で、「グループ」としてBCPを策定するのもよいでしょう。いずれかの会社が被災した際、自社と業者で協力して顧客への影響を最小限に抑えられるようにするためです。非常時の体制が整備されているかを、取引先チェックの項目に加えることも検討すべきです。

以上(2020年4月)
(監修 のぞみ総合法律事務所 弁護士 佐藤文行)

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地震が発生した場合の初動対応のポイントは?/中小企業のためのBCP

1 地震が発生した場合にまずすべきこと

さまざまな意見がありますが、地震が発生したら、次の1、2、3の順で安全を確保するのが一般的です。また、負傷者などがいる場合は、速やかに応急処置)を施します。

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1.揺れが収まるまで、机の下(机の近くにいない場合はものが落ちてこない場所)に避難する

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2.揺れが収まったら、ヘルメットを着用の上、給湯室などの火の元を止める

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3.オフィスのドアを開放し、避難経路を確保する。避難経路を確保できたら、被害の状況を確認する

2 地震で火災が発生した場合にすべきこと

火災が発生したら、周囲に火災が発生した旨を伝え、119番通報を促し、次の1、2、3の順で初期消火などを行います。

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1.消火器の安全ピンを抜き、ホースを火元に向けてレバーを握り、初期消火を行う

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2.危険を感じたら(消火器による初期消火の場合、目安は火の天井到達まで)、初期消火を中止し、避難する

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3.防火戸を閉め、煙を吸わないよう、濡れたハンカチなどで口を覆い、姿勢を低く保って避難する

3 避難すべきかの判断基準

地震によって、「火災や建物の倒壊の危険がある場合」「役所・警察・消防から避難の指示があった場合」は速やかに避難する必要があります。

一般的に、震災時の避難の流れは次の通りです。

  • 近所の学校や公園などの「一時集合場所」に避難する
  • 一時集合場所への避難が危険な場合、大きな公園・広場などの「避難場所」に避難する
  • 火災や建物の倒壊の危険がなくなり自宅に被害がない場合、帰宅する
  • 自宅で生活できない場合、学校などの「避難所」に避難する

火災や建物の倒壊の危険がなく、役所・警察・消防から避難の指示がない場合、避難すべきかは会社が判断します。例えば、東京都「帰宅困難者対策ハンドブック(平成29年10月)」では、災害発生から3時間後までに、建物の耐震性や周辺の被害状況を勘案し、避難するべきかを判断するのがよいとされています。

以上(2020年4月)

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イラスト:狐崎のち

【座談会】債務不履行責任など、災害時に自社が負う責任を把握していますか?/中小企業のためのBCP

――災害時に起こりがちな法務上の問題について教えてください。

弁護士A
まず想定されるのは、契約を履行できない事態です。例えば、災害による影響で事業の継続が不可能な場合、期日までに顧客に商品を納品できないことなどが起こり得ます。災害という非常時なので、事情を考慮してくれる顧客は多いでしょう。しかし、型通りの解釈をされてしまえば、自社が債務不履行責任を問われる恐れもあります。

弁護士B
債務不履行責任に問われるような事態を避けるためには、「不可抗力により、自社が免責される場合」をあらかじめ契約書で定めておくという方法があります。不可抗力には地震、暴風雨、洪水などの天災や火災などが含まれます。例えば、不可抗力となる災害の範囲を「自社所在地の震度が○以上の場合」など、できる限り具体的に定めておくとよいでしょう。

――契約に関する問題は、専門的な知識がないと対応が難しいように思います。何から始めればよいでしょうか?

弁護士A
中小企業の場合、単一事業を手掛けていたり、特定の顧客への依存度が高かったりします。災害時に事業の継続が難しくなり、取引に支障を来せば、経営が大きく傾きかねません。

そこで、自社の契約内容を十分に理解し、どのような責任を負うのかを把握してください。弁護士といっても、ビジネスの細部まで理解しているわけではありません。信頼できる弁護士に、自社の事業を理解してもらい、現在の契約で問題になりそうなポイントと、それを防ぐ方法を相談するのもよいでしょう。

――顧客との契約以外に、注意しておくべきことはありますか?

弁護士B
オフィスや機械などの事業用資産を、賃借やリースで調達していると思いますが、災害によってこれらが損壊した場合の取り扱いについても注意が必要です。例えば、賃借しているオフィスが使用できなくなった場合、再び使用できるようになるまでは、賃料を支払う必要はありません。一方、リース物件が損壊した場合、契約で定められた残リース料(規定損害金)を支払う義務を負います。

賃借もリースも、事業用資産を他者から借りる点は同じですが、自社と契約相手(物件のオーナーやリース業者)のどちらが責任を負うのかなどの違いを理解しておかなければなりません。

弁護士A
重要な事業用資産の被災という点でいえば、データの消失についても対策が必須です。顧客情報やデザインデータなどの営業上重要なデータを、社内のPCでしか保管していない中小企業も見受けられます。こうした場合、PCの損傷などで、営業上重要なデータを失ってしまう恐れがあります。

しかし、社内のPCで保管しているデータを消失しても、バックアップがあれば、自宅などオフィスではない場所から、リモートワークなどで事業を継続することができます。バックアップの方法や保管先、万が一の際のアクセス方法などを取り決め、早めに対策を講じましょう。

――BCPや災害対策に本気で取り組もうとしている経営者に対して、アドバイスをお願いします。

弁護士B
BCPの策定や災害対策は、売り上げに直結したり、社員のモチベーションが高まったりといった、プラスの効果が生まれる取り組みではありません。そのため、後回しにされがちです。

しかし、BCPの策定や災害対策をしていない状態で被災すれば、一気に経営が傾きかねません。どれだけ努力しても、リスクをゼロにすることはできませんが、準備をしておくことで、万が一の際に大きな効果を得られることがあります。

影響の大きさを最もよく理解している経営者がリーダーシップを発揮して、ぜひ、BCPや災害対策に取り組んでいただきたいと思います。

以上(2020年4月)
(監修 弁護士 田島直明、弁護士 坂東利国)

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安全な場所にデータを退避させるバックアップサービスとは?/中小企業のためのBCP

1 クラウドを使って容易に環境構築

顧客情報や日々の受発注情報などのデータを、社内のPC やサーバーに保存している会社は多いでしょう。しかし、災害によってハードディスクなどの記憶媒体が損傷し、これらのデータが消失すると、顧客に連絡できなくなる他、資材調達や営業活動も通常通り行えません。こうした事態を回避するために、バックアップ体制の構築が重要です。

そこで検討したいのが、「クラウド」というインターネット技術を使ったバックアップサービスです。インターネット回線を使ってファイルを遠隔地に退避できるため、災害によって社内のPCやサーバーが損傷しても、迅速にデータを復旧し、事業を再開できる可能性があります。

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2 クラウド型バックアップサービスのポイント

クラウド型バックアップサービスの多くが、保存するデータ容量に応じた料金体系になっています。どのくらいの費用がかかるのかを把握するため、事前にバックアップするデータ容量を算出しておくのが望ましいでしょう。

その他、安全性、速度、運用のしやすさなども、サービスを選ぶ際のポイントになります。

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3 セキュリティーを踏まえたバックアップ

データを社外に持ち出す場合、重要な情報の漏洩に十分注意しなければなりません。クラウド型バックアップサービスも例外ではありません。バックアップサービスを提供する事業者は独自にセキュリティー対策を実施しているものの、サービスを使う利用者側にも情報を漏洩させない使い方や運用体制が求められます。

例えば、バックアップサービスを利用する人を特定の社員に限定しているか、誰がいつバックアップデータにアクセスしたのかを把握できているかなどです。サービスにログインする IDやパスワードの適切な管理も、情報の漏洩を防ぐためには欠かせません。

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4 知らないうちにバックアップしているかも? PCの設定をチェック!

「バックアップしていなくてデータが消えてしまった!」と嘆く前に、PCの設定をチェックしましょう。もしかすると、先日まで使っていたファイルを復旧できるかもしれません。

Windows10の場合、標準装備されているバックアップ機能を確認します。機能が有効なら、バックアップデータからファイルを復旧できます。「OneDrive」などのオンラインストレージサービスの中には、特定フォルダ内のファイルを自動保存する機能を備えるものがあります。対象となるフォルダ内のファイルに限られるものの、機能を事前に有効化していればファイルを復旧できます。

これらの設定を有効化するだけで、ファイルをバックアップできるようになります。簡単に設定できるので、万が一に備えて事前に確認しておきましょう。

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以上(2020年4月)
(監修 aaaリサーチアンドコンサルティング 代表 中小企業診断士 福島一公)

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