先が見通せないVUCAの時代に、企業が生き残り持続的な成長を遂げるために、「予実管理」を行なう必要性が高まっています。また、生成AIや各種ITツールの発達を追い風に、中小企業においても、正確かつ効果的な予実管理が可能になってきています。本冊子を教材として社内教育に活用したり、各事業部門の実務担当者に読んでもらったりして、予実管理の精度を高めましょう。
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先が見通せないVUCAの時代に、企業が生き残り持続的な成長を遂げるために、「予実管理」を行なう必要性が高まっています。また、生成AIや各種ITツールの発達を追い風に、中小企業においても、正確かつ効果的な予実管理が可能になってきています。本冊子を教材として社内教育に活用したり、各事業部門の実務担当者に読んでもらったりして、予実管理の精度を高めましょう。
おはようございます。この9月は、私たちにとって上期の総決算、つまりこの半年間の努力の成果を振り返り、下期へとつなげる大切な1カ月です。さて、この実りの秋にちなんで、今日皆さんと共有したいことわざがあります。それは、「実るほど頭(こうべ)を垂れる稲穂かな」です。稲が実れば実るほどその重みで穂が垂れ下がる様子から転じて、「学問や徳が深まり、人間として大きく成長した人ほど、自らを誇示することなく、謙虚な姿勢でいるものだ」という教えを示しています。
私たちもこの上期、さまざまな目標を掲げ、日々業務に励んできました。それぞれが困難に直面しながらも、知恵を絞り、工夫を凝らし、時には協力し合いながら、多くの成果を上げてきたことと思います。企画が形になったこと、お客様に喜んでいただけたこと、プロジェクトを成功させたことなど、一人ひとりの努力が実を結び、会社としても着実に成長できた半年間だったと思います。
まさに、私たちの努力の「稲穂」が豊かに実った時期といえます。しかし、ここで大切なのが、この「実るほど頭を垂れる稲穂かな」の精神です。成果が出たときこそ、私たちは謙虚な姿勢を忘れてはなりません。例えば、皆さんのプロジェクトが成功したとします。その成功は、個人の能力だけでなく、チームメンバーの協力、他部署のサポート、あるいは上司の適切な指示、そして何よりもお客様からの信頼があってこそ成り立ったものです。自分一人の力ではない、という感謝の気持ちを持つことが、さらなる成長への第一歩となります。
ただ、謙虚さとは、単に控えめであればよいのではありません。それは、自分の現状に満足せず、常に学び続け、高みを目指す姿勢の表れでもあります。上期に素晴らしい成果を出せたからこそ、私たちはその成功体験から何を学び、何を改善できるのかを冷静に見つめ直す必要があります。課題や反省点と真摯に向き合うことで、下期にはさらに大きな実りを得られるはずです。
私たち一人ひとりが、自分の「実り」をしっかりと受け止めつつも、決しておごることなく、常に学びの姿勢を持ち続けること。そして、周囲への感謝を忘れず、互いに協力し合うことで、会社全体の稲穂もより一層豊かに実っていくことでしょう。
以上(2025年9月作成)
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画像:Mariko Mitsuda
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徳島県産業国際化支援機構(以下「機構」)は、県内中小企業の競争力強化と県産品の販路拡大を目的に、「徳島セレクト商品開発実践業」を展開します。
事業では、商品開発・人財開発・デザインの専門講師を迎え、魅力的な加工品の創出と国内外へのプロモーションを支援。ヒット商品を手がけてきた講師の助言を受けながら、新商品の開発や既存商品のリニューアルにも取り組みます。
売れる商品づくりに本気で挑戦したい事業者さまにとって、絶好の機会です。ご興味のある方はぜひご参加ください。
【開催概要】
以上(2025年8月作成)
今年10月1日、教育訓練休暇給付金がスタートします。従業員が業務に必要な知識・技術を身につけるため無給の休暇を取って学ぶ場合に、雇用保険から従業員に給付金が出る制度です。従業員が給付金を受け取るには、会社が就業規則を整備し、書類などの手続きを行わなければなりません。本稿では、教育訓練休暇給付金のしくみや、会社がやるべきことについてお伝えします。
今年10月1日、教育訓練休暇給付金がスタートします。従業員が業務に必要な知識・技術を身につけるため無給の休暇を取って学ぶ場合に、雇用保険から従業員に給付金が出る制度です。従業員が給付金を受け取るには、会社が就業規則を整備し、書類などの手続きを行わなければなりません。本稿では、教育訓練休暇給付金のしくみや、会社がやるべきことについてお伝えします。
給付金の対象は、雇用保険の一般被保険者です。65歳未満で、正社員または1年以上の雇用が見込まれるパート従業員が該当します。就業規則等に基づき、会社からの業務命令ではなく本人が自発的に希望し、連続30日以上、教育訓練を受けるため無給の休暇を取ることが条件です。
教育訓練にあてはまるのは、①学校教育法に基づく大学、大学院、専修学校等での勉強、②教育訓練給付金の指定講座を行う法人が提供する教育訓練等、③司法修習、語学留学、海外大学院での修士号の取得など職業安定局長が定めるもの――です。
さらに、①休暇開始前2年間に12か月以上、雇用保険の被保険者期間がある、②休暇開始前に5年以上、雇用保険の加入期間がある――という要件もクリアする必要があります。
給付日数は、雇用保険の加入期間に応じて異なります。給付金の日額は原則、休暇開始前6か月の賃金日額に応じて計算されます。


※給付月額は、給付金の日額×30日
従業員が教育訓練休暇給付金を受け取るためには、まず、会社が、教育訓練休暇について就業規則や労働協約などに定め、従業員に周知する必要があります。規定する内容は、対象となる教育訓練、休暇の長さ、休暇取得の手続きのほか、休暇を与える対象者に勤続年数などの基準を設けるか、休暇を賞与や退職金の算定期間に入れるかなどです。
厚生労働省は、規程例をパンフレットで公表しています。ハローワークや、各都道府県の働き方改革推進支援センターでも相談に応じています。

就業規則に基づき、従業員から教育訓練休暇を取りたいと申し出があったら、会社と従業員の間で休暇を取ることについて合意します。会社は合意後、従業員から提出された教育訓練休暇取得確認票に必要事項を記載し、休暇開始日から起算して10日以内に賃金月額証明書を作り、管轄のハローワークに提出しなければなりません。その際、教育訓練休暇が定められた就業規則等、賃金台帳、出勤簿の写しも添付します。
ハローワークから、賃金月額証明書、教育訓練休暇給付金支給申請書が交付されたら、速やかに従業員に渡してください。一連の流れは、離職票の交付手続きに似ています。
教育訓練に専念してもらうため、教育訓練休暇中に、会社が出勤を求めることはできません。また、解雇や雇止め、休業を予定している従業員は、教育訓練休暇給付金の支給対象にならないので、注意してください。
教育訓練休暇を導入するかどうかは、各企業の裁量に任されています。さらに、教育訓練休暇給付金は、就業規則等に基づき会社と従業員が合意したうえで休暇を取ることが前提となっています。会社が休暇取得を拒み、合意しなければ、給付金は支給されません。
人員体制や繁忙の状況によっては、教育訓練休暇を導入するのが難しいケースもあるでしょう。無給とはいえ、連続30日以上の休暇を与えるのは、中小企業にとってハードルが高そうです。その一方で、従業員のスキルアップや資格取得を後押しする手段として、この給付金の活用を前向きに検討してみるのもよいでしょう。
※図表はすべて、厚生労働省のパンフレット「教育訓練休暇給付金のご案内」より
※本内容は2025年8月10日時点での内容です。
(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)
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画像:photo-ac
目次
高齢化が進む日本社会で、シニア層のニーズは多様化しています。健康維持、社会参加、生きがい創出などへの関心が高まる中、新たなビジネスチャンスとして注目されているのが、
シニア向けeスポーツ
です。eスポーツとは、「エレクトロニック・スポーツ」の略で、コンピューターゲーム、ビデオゲームを使った対戦を、スポーツ競技として楽しむものです。
体力や年齢といった身体的な制約が少ないため、シニア層も気軽に楽しむことができます。
最近のシニア層は、日常的にスマートフォンやパソコンを使いこなしている人も多く、コンピューターゲームなどにもさほど抵抗感が少ない
という特徴があり、そうした意味で「シニア向けeスポーツ」は、今後ますます注目を集める可能性があります。
この記事では、中小企業の経営者がシニア向けeスポーツ市場への参入を検討する際に必要となる、市場の基本情報、具体的なメリット、参入時の注意点、参考事例を紹介します。
日本のeスポーツ市場は、近年急速な成長を遂げており、今後もその拡大が予測されています。日本eスポーツ協会の予測によると、市場規模は2019年の61億1800万円から右肩上がりに成長し、2025年で199億8200万円に達する見込みです。

eスポーツ市場全体が拡大していく中で、特に「シニア向け」が注目キーワードとなっています。eスポーツは身体的な制約を受けにくいため、「体力がなくても参加できる」「年齢や障害の有無に関わらずプレイできる」といった点で、運動するのは難しい人でも気軽に楽しめるのが強みです。
また、今のシニア層はデジタル分野への関心が強く、デジタルハルメクホールディングス(東京都千代田区)の「eスポーツに関する意識と実態調査(2025年2月)」によると、eスポーツへの関心が最も高いのは70代以上で、「プレイ/視聴」のいずれかに関心がある人の割合が約半数(52.6%)を占めています。
シニア向けeスポーツは、プロを目指すような高い競技性だけでなく、自分のペースで「楽しい」と感じられる娯楽性も重要視されています。例えば、60歳以上の人だけが会員になることができ、スタッフが初心者にゲーム機の操作方法などを指導してくれるeスポーツ施設などがあります。シニア層が同じ施設に通う仲間同士で交流したり、自分の孫や会社の若手社員と一緒にオンラインゲームで遊んだりすることで、刺激を受けられるという面もあるでしょう。
シニア向けeスポーツの、単なる娯楽を超えたさまざまなメリットを見ていきましょう。
eスポーツは、ストレス軽減、記憶力向上、認知症予防といった脳機能の活性化効果が期待されています。また、足腰が悪くてもプレイできるため、身体的な負担が少なく、リハビリテーションの一環としても活用可能です。
同じ施設に通う仲間同士での交流はもちろん、自分の孫や会社の若手社員と一緒にオンラインゲームで遊ぶことで、世代を超えた新たなコミュニケーションが生まれます。これは孤立防止にも繋がり、社会とのつながりを創出する重要な要素となります。
一般的に、eスポーツで求められる反射神経や動体視力は加齢とともに低下する傾向にあるため、プロゲーマーのピークは20~30代といわれていますが、なかには平均年齢65歳以上のプロeスポーツチームも存在します。「本気でプロの選手を目指す」などの目標を持つことで、新たな生きがいを得る人もいるでしょう。
シニア向けeスポーツが提供するこれらのメリットは、単なるエンターテイメントの枠を超え、認知症予防、リハビリ、孤立防止といった「健康・福祉サービス」としての側面を強く持っています。eスポーツを健康・福祉のツールとして位置づけると、新しいビジネスチャンスが見えてくるかもしれません。
シニア向けeスポーツ施設を開業する、もしくは関連のサービスを行うと仮定して、シニア向けeスポーツ事業の競争環境を、ビジネスフレームワークの「ファイブフォース分析」で考えてみます。

シニア層の中には、デジタルのゲームはとっつきにくい、ゲームは体に良くないといったマイナスイメージを抱えている方もいるかもしれません。一方で、そうしたシニア層に対して、「認知症の予防に効果がある」「シニア層同士、あるいは世代を超えた新たな出会いやコミュニケーションの場ができる」、そして、「これから仲間と本気でプロ選手を目指すワクワク&充実感を、改めて感じてみませんか」などのアピールをしていくことが、eスポーツを普及させる鍵になりそうです。
シニア向けeスポーツ事業の収益源は、次のようなものが考えられます。
ゲーミングPCやチェアを備えたeスポーツカフェや、月額会員制のスポーツジムのような施設運営が基本的なモデルとして考えられます。例えば、60歳以上限定のeスポーツ施設「ISR e-Sports」では、月~金曜日は1000円、土曜日は2000円の利用料を設定しており、登録料や年会費は無料です。
シニア限定のeスポーツ大会や配信イベントを企画・開催することも有効です。例えば、大会や配信イベントの参加費、観覧チケットの販売、グッズ販売などが収益源として挙げられます。
健康維持や認知機能向上をテーマにした独自のコンテンツ開発や、シニアのデジタルリテラシー向上支援を組み合わせたプログラム提供も考えられます。
eスポーツ市場全体で最も大きな収益源はスポンサー料や広告収入とされています。シニア向け市場の場合、健康関連企業や介護関連企業がスポンサーになってくれることが期待されます。
介護施設でのeスポーツ導入事例が増加しており、今後は医療分野との連携も進む可能性があります。介護予防やリハビリテーションの一環としてのeスポーツ提供は、新たな収益源となり得ます。
ISR e-Sportsは、日本初の60歳以上限定eスポーツ施設として2020年に開業しました。この施設は、eスポーツによって同じ場所・同じ時間を参加者同士が共有することで新たなコミュニケーションが生まれることを大切にしています。シニア世代にとっては、生きがいづくりや孤立防止にもつながります。特筆すべきは、
プレイ前の準備体操やプレイ後のクールダウンタイムを設けるなど、シニアの身体に配慮した運営を行っている点
です。また、スタッフがゲームの操作方法を丁寧に指導し、初心者でも安心して楽しめる環境を提供しています。
ハッピーブレインは、自治体や高齢者施設、重度障がい者向けにeスポーツの導入サービスを提供しています。特筆すべきは、
ボタン操作のみで楽しめる「UDe-スポーツ(ユーディイースポーツ)」を導入し、身体的な制約がある方でも参加しやすい工夫をしている点
です。施設内でのオフライン対戦に加え、Zoomを活用したオンライン対戦で他施設との交流も促進しています。
友愛会は、運営する通所リハビリテーション施設の「デイケアさとやま」(静岡県沼津市)でリハビリサービスの一環としてeスポーツを活用しています。この施設では、
eスポーツを「脳トレ」と位置づけ、利用者の注意・遂行機能、ワーキングメモリー、情報処理能力の改善に効果がある
と考えています。サービス提供に当たっては、日本アクティビティ協会が認定する「健康ゲーム指導士」(ゲームを通じて、健康寿命や社会参加寿命の延伸のために活動する人材)の養成講座をスタッフが受講するなどして、準備を整えたそうです。
エスツーは、平均年齢65歳以上のプロeスポーツチーム「マタギスナイパーズ」を運営しています。特筆すべきは、
「孫にも一目置かれる存在」をスローガンに掲げ、加齢や病気予防だけでなく、プロ選手を目指すという高い目標設定
です。若手の専属コーチを付け、仲間と切磋琢磨(せっさたくま)する姿は、シニア向けeスポーツの新しいあり方を示しています。また、国際交流試合も実施し、1万人以上が視聴するなど、国内外から注目を集めています。
全国各地の自治体で、シニア向けeスポーツの講座や体験会、交流会が実施されています。
具体的な取り組みとして、群馬県太田市は、60歳以上の団体向けにゲーム機と講師を派遣する「シニアeスポーツ出前講座」を無料で提供しており、地域住民の健康増進と交流促進に貢献しています。また、横浜市青葉区では地域ケアプラザでeスポーツ体験会が開催され、「太鼓の達人」などを通じた交流が行われています。鳥取県では「ねんりんピックはばたけ鳥取2024」でeスポーツが初めて正式種目に採用されるなど、全国的な広がりを見せています。
他にも、千葉大学予防医学センター 社会予防医学研究部門が作成した「高齢者のつながりと健康を育むデジタルアクティビティのすすめ ~介護予防・通いの場の新しいカタチとしてのeスポーツ導入ガイド」の中で、自治体によるシニア向けeスポーツの導入事例を紹介しています。自治体関係者向けの資料ではありますが、版権やゲーム機材に関するFAQなどもあるため、参考にすると良いでしょう。
最後に、シニア向けeスポーツ施設を開業する際の法的留意点を紹介します。
シニア向けeスポーツ施設にゲーム機を設置して開業する場合、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)の適用を受けることがあります。風営法の適用を受ける場合、学校の近くには開業できなかったり、都道府県の公安委員会への営業許可申請が必要になったりします。
インターネットカフェなどが、パソコンのように汎用性のある機器を用いてeスポーツを楽しめる環境を提供する場合、その機器はゲーム以外の機能が現実に利用可能な状態である限り、「ゲーム機」には当たらない(風営法の適用を受けない)とされていますが、この辺りは専門家に確認するなどして慎重に判断する必要があります。
また、シニア向けeスポーツ施設を経営していて、ゲームの大会を開催したい場合、告知や大会での競技の様子をインターネット配信する際に著作権法違反に該当しないか、賞金を用意したい場合、刑法上の賭博罪に当たらないかなどに留意する必要があります。
日本eスポーツ連合では、eスポーツにまつわる法律上の課題や、大会を開く際の留意点などをまとめた「かんたんeスポーツマニュアル」を公開しているので、参考にするとよいでしょう。
以上(2025年8月更新)
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従業員持株会を作ると、事業承継対策として次の4つのメリットがあります。
社長が保有している自社株式を従業員持株会に売り渡せば、事業承継コスト(贈与税など)を減らすことができます。
例えば、株式の相続税評価額が1億円のX社の株式を社長が100%保有しているとします。これを後継者である長男に、相続時精算課税(毎年110万円までの非課税枠あり。非課税枠を除いて最大2500万円まで贈与税がかからず、毎年の非課税枠を除いた贈与財産が累計2500万円を超えた部分には税率20%が適用される制度)を活用して一括贈与する場合、
1478万円(=(1億円-110万円-2500万円)×20%)の贈与税の負担
となります。
これが従業員持株会を活用し、社長の株式を従業員持株会に30%売り渡すと、社長の保有割合は70%、相続税評価にして7000万円(1億円×70%)となります。従って、相続時精算課税を活用して一括贈与する場合、
878万円(=(7000万円-110万円-2500万円)×20%)の贈与税の負担
となり、
贈与税負担が約40%軽減
されます。

社長が保有する自社株式を従業員持株会へ売り渡す場合、類似業種比準価額などで計算した場合よりも価額が安い、配当還元価額(自社の配当金額と資本金を基に算出する方法)を採用できます。
従って、従業員持株会を利用すると、社長は有利な譲渡対価で保有株式の割合を減らすことができるのです。
従業員持株会を通じて自社株式を保有する従業員に、業績に応じた配当を出すことで、愛社精神を高めたり、業績に対する意欲を向上させたりすることができるでしょう。
従業員持株会が保有する株式について、優先配当を行う仕組みを導入することもできます。具体的には、種類株式を設定するか、株式の属人的定めという制度(株主ごとに異なる取り扱いができる株式)を活用します。
従業員持株会は、従業員持株会規約などで株式の所有権を理事長に信託しているケースがあります。従業員持株会は民法上の組合なので、組合財産である株式は組合員の共有となりますが、株主名簿に組合員全員の名前を記載するのは事務作業的な負担が大きいです。そこで、形式的な所有権は従業員持株会の代表者である理事長にあるとするために、株式を理事長に信託譲渡する仕組みを取ります。
株式の所有権が理事長にある場合、他の組合員は理事長を通じて議決権を行使したり、閲覧権を行使したりすることになるので、不適切な株主権の行使を防げます。
従業員持株会規約で、
会員(従業員)が会社を退職する際は、出資持分の払い戻しを受けてから退職し、株式を組合外に持ち出すことを禁止する
ことを定めれば、従業員の退職による株式の分散を防止できます。
従業員持株会は民法上の組合契約です。組合契約は、一定の事業を複数の者が共同で行うことを合意することで成立します。従業員持株会は株式を共同保有するものなので、そのルールとして従業員持株会規約を定めます。規約の主な内容は次の通りです。
従業員持株会規約ができたら、このルールに従って株式を共同保有することに合意して従業員持株会が発足します。最初は少人数で合意して従業員持株会を発足させ、その後に参加資格がある従業員に持株会への出資を募集します。
従業員持株会は社長(会社)にもメリットが大きいため、従業員による出資金の一部を会社が奨励金として支援することがあります。出資金の10~30%程度の奨励金を支給するケースが多いです。
こうして従業員持株会の実体ができると社長から株式の譲渡を受け、以後、共同で株式を保有していきます。
たとえ少数でも、株式を従業員に保有させることは経営権の弱体化につながります。1株でも保有すれば、株主総会議事録、取締役会議事録、株主名簿を見ることができますし、取締役に違法行為があれば、株主代表訴訟(株主が会社に代わって取締役などの責任を追及する訴訟)を提起して、会社の損害を回復するよう求めることができます。また、保有株式が3%を超えると会計帳簿を見ることができますし、取締役の解任訴訟を起こすこともできます。
こうしたデメリットを避けるには、従業員持株会の保有株式を議決権のない株式などに転換することが考えられます。とはいえ、全ての株主に与えられる権利を封じることはできません。
従業員持株会を作ったけれども、従業員側のメリットが少なく、参加する従業員が減ってしまい、従業員持株会が形骸化してしまうことがあります。株主名簿上は従業員持株会が株式を保有しているにもかかわらず、従業員持株会の組合員が存在しないケースもあります。
このような状態となると従業員持株会は名義株とみなされ、実体は経営者がそれらの株式を保有しているとみなされる危険性もあります。その場合、上述した事業承継コスト(贈与税など)に関するメリットなどを受けることはできないので注意が必要です。
従業員持株会を作った後にM&Aが行われる場合、株式譲渡対価の何割かを従業員に交付することになります。従業員には雇用契約によって賃金や賞与が支給されていますが、もしも、M&Aが行われると、想定外の株式譲渡対価を得ることがあるのです。従業員持株会は、そもそも配当還元価額という非常に安い値段で株式を取得しているにもかかわらず、その何十倍もの株式譲渡代金を受領してしまうと、不公平感を抱く従業員が出ることも懸念されます。
以上(2025年9月更新)
(監修 リアークト法律事務所 弁護士 松下翔)
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事業承継にはさまざまな課題がありますが、最初に着手すべきなのは、
「人(経営)の承継」である後継者問題
です。後継者が決まらなければ、
借入金や債務保証の引き継ぎなどの具体的な話ができず、事業承継が進められない
からです。中小企業庁「事業承継ガイドライン」(以下「ガイドライン」)で紹介されている「事業承継計画書」の様式も、後継者が決まっていることが前提になっています。
これを裏付けるデータとして以下をご覧ください。後継者選びの方針や決定状況によって、事業承継の障害や課題が違っていることがお分かりいただけると思います。


このように、後継者選びは事業承継のスタート地点ともいえるわけですが、既に後継者を決めている会社は29.9%にすぎないのが実情です。本気で事業承継を進めるならば、まずは後継者選びを進めなければなりません。
「人(経営)の承継」の方法には、
の3つがあります。それぞれのメリット・デメリットは次の通りです。

最近は第三者を後継者とするケースが増えていますが、やはり親族や従業員を後継者にしたい経営者も多いです。このあたりは、
後継者候補となる親族の有無、事業の状態などを踏まえて慎重に検討
することになるでしょう。例えば、事業の状態が芳しくない、社内の結束が弱いといった場合、その苦労を親族には負わせたくないかもしれません。
いずれにしても、後継者に是非とも備えてほしいマインドがあるものです。経営者の考え方によって違ってくる面もありますが、主なものを9つにまとめて次章で紹介します。
心身が健康であることは大前提です。無理をして心身の調子を崩してしまったら、結果として多くの人に迷惑を掛けることになってしまいます。自分のことをよく理解し、必要に応じて肩の力が抜ける人でなければなりません。真面目なのはいいですが、集中していない状態で「ダラダラ」と続けるのは良くありません。
謙虚さも欠かせない資質です。経営者は社内外のさまざまな人に支えられて、経営者でいることができます。このことを常に忘れることなく、周囲に感謝の気持ちを伝えられる人でなければなりません。もし、後継者に指名されたことで有頂天になって偉ぶるような人は経営者に向きません。
経営者には「何がなんでもこれをやりたい!」「世の中のここを変えたい!」といった理想の姿があり、それが活動の原動力になると同時に、人物の奥行きにもなります。先代が描く理想の姿を承継したばかりの後継者が、すぐに自分の理想の姿を見つけることは難しいかもしれませんが、「全くない」というのでは物足りません。
経営は山あり谷ありです。基本はポジティブで、落ち込んでもすぐに立ち直れる、良い意味でのずうずうしさが必要です。コロナ禍で経営環境が激変する中でも、「本当に厳しい……」と動けなくなる人は経営者に向きません。「変化の中にはチャンスがある」とポジティブに考えてチャレンジする人でなければなりません。
事業のほとんどは失敗します。この失敗を恐れていては、いつまでたってもチャレンジできません。失敗は失敗として、そこから学び、次に活かしていける人でなければなりません。そうした人が率いる組織は、チャレンジと学習を繰り返すことができます。これは組織が成長する上で不可欠なことです。
経営者は決断の連続であり、決められない人は経営者になれません。とはいえ、何を考えて判断したらよいのか分からないまま、ばくちのように右か左かを選択し続けたら会社は潰れます。論点を整理して考えられる人でなければなりません。一方、時間をかけて決断すべきことについては、どんと構えて考える落ち着きも必要です。
どのような会社でも、恐らく最も勉強しているのは経営者でしょう。自分の知識や技術をバージョンアップし続けないと、すぐに取り残されることを知っているからです。多忙な中でも時間を見つけ、勉強をする人でなければ経営者に向きません。いまだに一人でオンライン会議につなげない困った経営者になるような人を、後継者に選んではいけません。
会社経営では、IT、法務、税務、労務、会計、営業、マーケティングなどの知識が必要です。とはいえ、一人で各分野のスペシャリストになることはできません。そこで、広く浅くでもよいので各分野の肝となる知識は押さえていなければなりません。そのためには、価値ある情報を教えてくれる社外の人脈が大切です。
ビジネスだけでは、人として面白みがないかもしれません。スポーツやアートなど何でもよいのですが、打ち込める趣味を持っていると、人としての深みが増します。それに、経営者の会食では意外なことにワインやアートなどの話がほとんどで、ビジネスの話は本当に少ないのです。そうした場についていくためにも趣味は必要です。
以上(2025年8月更新)
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目次
建設業では、労働力人口の減少に加え、長年にわたって業界を支えてきた熟練技術者の高齢化と引退が急速に進んでいます。そんな状況にあって企業が持続的に成長し、競争力を維持するには、新たな人材の確保と、既存社員のスキルアップが必須です。
国や地方自治体は、企業の人材投資を後押しするために、様々な助成金を実施していますが、
人材確保やスキルアップに使える「建設業だけの助成金」
があるのをご存じでしょうか? 以降で、建設業を営む中小企業向けの助成金を取り上げ、主な要件や支給額などを紹介します。
なお、助成金の内容は、2025年8月17日時点のもので、将来変更される可能性があります。申請書の書き方や添付書類などについては、次のURLをご参照ください。
建設関連の認定訓練を実施した場合に支給される助成金です。建設業界における技能水準の向上と、それを支える訓練体制の強化を目的としています。
この助成金を受け取るためには、次の要件などを満たす必要があります。
この助成金では、訓練の実施した場合に助成が受けられ、さらに賃金要件や資格等手当要件を達成した場合、支給額が増額されます。

中小企業が、若年者の育成や熟練技能の維持・向上を目的とし、キャリア段階に応じた技能実習を実施した場合に支給される助成金です。建設業界における技能の継承と向上を包括的に支援することを目的としています。
この助成金を受け取るためには、次の要件などを満たす必要があります。
この助成金では、事業主の規模(雇用保険被保険者数)などに応じた助成が受けられます。さらに賃金要件や資格等手当要件を達成した場合、支給額が増額されます。

若年者(35歳未満)または女性を試行的に雇用する際に、通常のトライアル雇用助成金(一般トライアルコース、障害者トライアルコース)に加えて支給される助成金です。一般的なトライアル雇用助成金とは別に、建設業界における若年者・女性の労働者を対象として試行雇用する場合、追加の助成を受けられます。
この助成金を受け取るためには、次の要件などを満たす必要があります。
この助成金では、トライアル雇用した対象労働者1人につき、月額最大4万円が通常のトライアル雇用助成金に加えて3カ月間支給されます。最大額(月額4万円)を受け取るには、実際の就労日数が、予定された就労日数の75%以上である必要があります。

若年者や女性の入職・定着を促すための職場環境改善事業(例:現場見学会、入職者向け研修、労災予防の取り組み、表彰制度)を実施した場合に受け取れる助成金です。この助成金は、単に若年者や女性を「採用する」だけでなく、建設業界で長く働き続けられるような「魅力的な職場環境を創る」ことを目指しています。
この助成金を受け取るためには、次の要件などを満たす必要があります。
この助成金では、企業規模と賃金要件の達成状況に応じて、対象経費に対する助成率が異なります。

女性専用の作業員施設や、特定の地域(石川県)での作業員宿舎・施設・賃貸住宅の設置を支援する助成金です。女性の定着を妨げる要因の一つである女性専用施設を充足させること、特定の地域における労働者の住環境を整備することが目的です。
この助成金を受け取るためには、次の要件などを満たす必要があります。
この助成金では、設置する施設の種類と所在地によって、支給額または助成率が異なります。
さらに、女性専用施設を設置する場合において、賃金要件を満たせば、上記の助成率に加えて3/20が上乗せされます。

建設キャリアアップシステム(CCUS)を活用して雇用管理を改善する事業主に対し、技能労働者数に応じて支給される助成金です。CCUSは、技能労働者の就業履歴や保有資格などを業界横断的に登録・蓄積する仕組みで、これにより技能の評価や処遇改善、適正な賃金水準の確保につながることが期待されています。
この助成金を受け取るためには、以下の基本要件を満たす必要があります。
また、この助成金は、次のいずれにも該当する建設技能者に支給されます。
対象となる建設技能者1人当たり16万円が支給されます。上限は160万円です。

以上(2025年8月作成)
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画像:years-Adobe Stock
非上場株式は、上場企業の株式のように売買できる市場がなく換金性に乏しいことから、事業承継に伴い発生する納税資金を確保することが大切なポイントとなります。業歴が長く内部留保の多い会社ほど株価も高く購入資金が多額になりやすいため、対策をいち早く取る必要があります。主だった対策に金庫株や生命保険を活用した対策があります。それぞれの効果や留意点を認識し、自社に合った対策案として検討してみてください。
「金庫株」とは、会社が保有する自社の株式をいい、「自社株式」と同じ意味です。この金庫株の活用方法としては、
があります。
なお、金庫株の買取総額はその会社の分配可能額(おおよそ利益剰余金と資本剰余金の合計額、計算の詳細は省略します)を超えることができない点には注意が必要です。
換金性に乏しい非上場株式を、金庫株として活用することによりお金に換え、納税資金に充当します。
金庫株を活用した納税資金の確保のイメージは次の通りです。

金庫株を取得するための手続きは次の1.~3.の手順で行います。
なお、譲渡しようとする株主からの株式の申込総数が、上記2.で定めた総数を超える場合には、会社は各株主の申込数を按分した株式の譲り受けを承諾したものとみなします。承諾したものとみなされる株式数の計算式は次の通りです。

原則として、所有する自社株式を会社に譲渡した株主に対しては「みなし配当課税」が適用されるため、一般的な譲渡と比較して高い税率が課される可能性があります。みなし配当課税とは、金庫株により株式を譲渡した株主に対して、資本金等の金額を超える部分の対価については、譲渡ではなく、配当したとみなされて課税されることをいいます。
個人株主の場合には、
株式の譲渡によって生じた所得は分離課税(他の所得とは分けて課税計算をするもので、税率は20.315%)
となる一方で、
配当による所得は総合課税(給与など他の所得と合算して計算するもので、最高税率は49.44%)
となります。

ただし、相続により取得した自社株式に限り、相続税の納税がある株主が相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日より3年を経過する日までに、金庫株として会社に譲渡した場合には、みなし配当課税は適用されず、株式譲渡益課税が適用されます(原則、申告分離課税)。さらに、この場合の譲渡所得の計算上、相続税額のうち一定の計算により算出した税額相当額を取得費に加算することができます。
また、金庫株による株式の取得は、原則として株主総会の決議が必要となるため、他の株主に買い取りの内容を知られてしまう可能性があります。その上、金庫株の買い取りは株主全員を対象として通知されることから、想定している株主以外からの買い取りを要求される可能性があるため、事前に他の株主に金庫株の買い取りに至った事情をよく説明し理解を求めておきましょう。なお、特定の株主からの取得の場合には、前述の手続きに加えて一定の要件・手続きが必要となります。
被保険者、保険料負担者をオーナーとして保険金受取人を後継者とする生命保険契約により、後継者の相続税の納税資金を確保します。
なお、相続人が相続により保険金を取得した場合には、「500万円×法定相続人の数」までの金額の非課税枠があります。
生命保険を活用した納税資金の確保のイメージは次の通りです。

自社株式は経営権確保のため後継者に集中して承継させるのが鉄則です。しかし、オーナーの所有財産の中で自社株式の占める割合が大きい場合、自社株式を後継者に集中して承継させると非後継者に残す財産が著しく少なくなることから、「遺留分」をめぐるトラブルの原因となります。
「遺留分」とは相続人に最低限認められている財産を相続する権利で、原則、法定相続分の2分の1となります。また、「遺留分」の基となる財産は相続財産だけでなく、過去(原則として相続開始前の1年間)にそれぞれの相続人が受けた贈与財産も合算して計算します。なお、被相続人の兄弟姉妹には「遺留分」はありません。
遺留分の侵害が生じる事例は次の通りです。

このような場合の相続人間のバランスを取る方法として、財産を取得した相続人が他の相続人に現預金で清算する「代償分割」があります。
例えば、上記の事例で自社株式を長男が相続する代わりに、長男から次男、長女にそれぞれ約10百万円の現金を支払い分割するという方法です。
オーナーを被保険者、後継者(事例では長男)を保険金受取人とする生命保険を活用して、オーナーの死亡時には保険金が後継者の手元に入り、代償分割資金として活用することができます。
生命保険を活用した代償分割のイメージは次の通りです。

相続人が受け取る保険金は、相続税の計算上は相続財産とみなされて、相続税が課されますが、民法上は相続人固有の財産とされ、原則、遺留分の計算には含めません。
従って、非後継者を保険金受取人とする生命保険契約では、受け取った保険金は遺留分の計算の対象外となり遺留分の解決にはなりません。
上記のように、保険金は直接非後継者に渡すことができず、後継者を経由することから、本対策には後継者の理解と、オーナーの後継者への信頼が前提となります。
また、被保険者をオーナー、保険料負担者および保険金受取人を後継者とする生命保険契約によって、オーナーに代わって、後継者自らが遺留分対策を行うことも可能です。この場合の保険金には、後継者に所得税が課されることになります。
なお、「遺留分」に関する詳細については、以下のコンテンツをご参照ください。
将来のオーナーへの役員退職金支払いのための財源を確保するため、被保険者をオーナーとし、保険料負担者および保険金受取人を会社とする生命保険契約を活用し、役員退職金という多額の支出に対して着実に準備することができます。また、オーナーが突然亡くなった場合には、会社を立て直すための資金として活用することができます。
生命保険を活用した役員退職金の資金確保のイメージは次の通りです。

なお、一般的には役員退職金の支給により株価の引き下げ効果が期待されますが、役員退職金の原資とするための生命保険に加入していると、保険金などが収益として計上されるため、その効果を得るためには、退職金の支給額や支給時期などを慎重に検討するようにしましょう。
以上(2025年8月更新)
(監修 辻・本郷税理士法人 税理士 安積健)
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画像:soo hee kim-shutterstock