休暇明けに部下が元気に出社してくるための秘訣/若手社員が採用できる、辞めない職場づくりのヒント(4)

1 正月休み明け、上司への審判が下る?

本人に代わって会社と退職の手続きを行う「退職代行」というサービスをご存じでしょうか。2019年は、このサービスが急速に広まった年でした。メールやLINEで依頼するだけで、本人はその瞬間から会社と一切関わることなく退職できるのが、人気の理由のようです。我々、ツナグ働き方研究所が“入社3年目までの若者1000人”に聞いたところ、退職代行を知っていると回答した男子の47.5%が“退職代行を利用したい”という驚きの調査結果が出たほどです。

特に長期休暇の後は、退職代行が活躍しやすい季節です。実家に帰省して親と話したり、学生時代の友人と会ったりすることで、人生について見直すことが多いのです。

最近の若者は、SNSでいろんな人とつながっています。オンライン社会の中で“見て見られて”という生活を送ることで、無意識のうちに他人と自分を相対比較することが習慣化しています。だから久しぶりに会った友人の状況にも敏感。同世代がイキイキ働いている話を聞くと、自分の職場と比較して悶々とします。ただでさえ、あっさり辞めてしまう世代です。急激にモチベーションが下がり、休みが明けても出社することなく退職代行を頼む。こういう展開が容易に想像できます。

職場の若手が、お正月明けにちゃんと出社してくるか。それは彼らがどのようなコンディションで働いていたのかにかかっています。上司にとっては、日々のマネジメントに審判が下るドキドキの2020年仕事始めとなるかもしれません。

年始に元気よく部下が出社してくれることを願わない上司はいないでしょう。前置きが長くなりましたが、本稿では、拙著『なぜ最近の若者は突然辞めるのか』をもとに、若手部下に対して、日ごろからどのようなコミュニケーションを取っておくことが重要なのか、について述べていきます。

2 俄然、注目を浴びる心理的安全性

「心理的安全性」という言葉をご存じでしょうか。他人の反応に怯えたり、羞恥心を感じたりすることなく、自然体の自分をさらけ出すことのできる環境を指す心理学用語です。グーグル(アルファベット社)が、自社のプロジェクト運営研究結果から、「心理的安全性は成功するチームの構築に最も重要なものである」と発表したことから、注目を集めるようになりました。ビジネスシーンにおいて、本来の自分とは大きく異なる仕事用の人格を演じることではなく、普段通りのリラックスした状況で仕事に臨むことができる状態がベスト。そうGAFAの一角をなすITの巨人が言うわけですから、かなりの説得力です。

特に若者にとって、この心理的安全性はとても重要な意味があります。前述のように、いまの若者世代はSNSの中で“見て見られ”という生活に慣れ親しんだことで、過剰なくらい忖度をしがちです。同僚からバカにされないだろうか、上司から叱られないだろうか……。彼らは常にまわりの目を気にしているのです。そんな若者に「自分はここにいていいんだ」「何を言っても否定せずに受け止めてもらえるんだ」という居場所を提供することが極めて重要なのは、言うまでもないでしょう。

では、どうやったら職場の若者に心理的安全性を提供できるのか。

オトナ世代と若者の価値観には大きなギャップがあります。そのギャップを少しでも埋めていくことです。ひと言でいえば「彼らの価値観を理解し、彼らを承認していく」ということに他なりません。

3 理不尽なタテ社会を嫌悪

ここまでも再三述べてきたように、彼らは「SNS村社会」とも呼ぶべきオンライン空間の住人です。SNSを駆使することで、会ったことのない人とも容易につながり、仲間関係が横へ横へと広がっていきます。そこには年上も年下もなく、経営者でも会社員でも、あるいは外国人であっても、個と個でつながっています。

このように、フラットでボーダレスな「ヨコ社会」で生きている若者からすれば、職場や会社という枠組みは、それほど大きな意味を持ちません。まず組織ありきで働くのではなく、なんらかの目的があって集まった人たちという感覚です。ですから仕事の仕方も、上司や先輩の指示で盲目的に動く「上意下達型」ではなく、いろんな人と協力しながら進める「プロジェクト型」を志向します。

そんな若者にとって理想的な上司と部下の関係とはどういうものでしょうか。

彼らが望んでいるのは「仲間」です。人生の先輩と後輩でもなく、ましてや師匠と弟子ではなく、ひとつの仕事を協力して成し遂げる仲間であることを彼らは求めています。

仲間なのだから、どちらかが威張るのはおかしい。困っている相手を助けようとしないのもおかしい。ましてや、どうしていいかわからないでいる部下に対し、「自分で考えろ」とか「いちいち聞くな」などと言う上司は、仲間として不適格だと彼らは判断します。

オトナ世代は、上から降りてきた話はとりあえず受け止めてきたと思います。上司や先輩が言っていることを「上から目線」とは思いませんし、多少の疑問や不満があっても「それが仕事」だと自分を納得させてきたことでしょう。しかし若者たちは、これを理不尽ととらえます。また「自分のほうが上」とばかりに知識をひけらかしたりする上司には、忌むべきタテ社会の象徴として、相当なアレルギー反応を示します。

4 仲間的な上司が持つファシリテーション思考

「仲間的な上司」と言われても、しっくりこない人もいるでしょう。そんな友達みたいな関係性で組織マネジメントができるわけがないと感じる人もいるでしょう。

もう少し補足すると、強烈なリーダーシップで組織を引っ張るというより、サポートシップでチームを支援する意識のことを指しているのです。ファシリテーション思考ともいえます。

分かりやすい事例で言うと、青山学院大学陸上部監督の原晋氏。フレンドリーな指導に定評があり、体育会系にありがちな部員の上下関係も廃しました。トータルでの目標タイムを決めて各選手に割り振るのではなく、個々の選手がどのくらいのタイムで走りたいかを会話しつつ、その積み上げで目標タイムを作っていく、という話を聞いたことがあります。こうした上から目線ではなく横から目線、もっと言うと下から目線のコミュニケーションで、チーム内の自発的活動性を高めているのです。箱根駅伝4連覇という成果が、若者のハートを掴んでいる何よりの証拠でしょう。

仲間的な上司像の輪郭を具体的にしてみると、こんな感じでしょうか。

  • 細かく口を出すのではなく、スタッフに権限を与えてくれる
  • スタッフの成功やプライベートの充実、健康に関心を示してくれる
  • 良い聞き手であり、情報共有を円滑にする良いコミュニケーターである
  • チームをサポートするために必要な専門的技術やスキルを持っている
  • 組織への帰属意識を高めるために明確なビジョンを掲げている

5 承認は最強のコミュニケーション

ここからは「承認」についてのメソッドを解説しましょう。ポイントは至ってシンプル。コミュニケーションの「質より量」を意識することです。最近の若者は雑談が苦手だとか、興味のない話をしたがらないなどといわれます。みなさんの職場にも、黙々とデスクに向かっていて「話しかけないでオーラ」が出まくっている若者がいるかもしれません。

しかし若者は人と関わることが嫌いなわけではありません。面倒なタテの人間関係が苦手なだけで、「居心地のいいフラットな人間関係」自体は強く求めています。むしろ、インスタグラムでフォロワーが、自分の投稿に何も反応しなくなると不安でたまりません。職場でも「見てもらえているか」どうかを、かなりセンシティブに捉えています。だからこそ、承認の第一歩は、こまめなコミュニケーションから始まるのです。

これは、褒め方にも共通するポイントです。

例えば、いつもしかめっ面で怒ってばかりの厳しい師匠が、最後の最後で「よく頑張ったな」とポツリ。またしかめっ面で歩き出す師匠の背中を、目に涙を浮かべた弟子が追いかけていく……。若者はこんな「ドラマティックな光景」は望んでいません。渾身の大褒めよりむしろ「プチ褒め」が望まれています。

部下の長所を見つけて褒めるのが理想ですが、「プチ感謝」でも十分効果的。例えば報連相には必ず「ちょい足し」して返す。言葉はなんでも構いません。「よくなったな」と褒めてもいいし「大変だったろう」と共感してもいいし「助かったよ」と感謝を伝えてもいいでしょう。

褒めることは、相手を承認することに直結する最強のコミュニケーション。オトナ世代はフェイスブックやインスタグラムでいいね!を押し合う若者世代に対して、ぜひ意識的に取り組んでいただきたいですね。

6 レスポンスも素早くこまめに

若者からの報告や相談がメールであったとき、「ちゃんと答えないとマズいから、後にしよう」なんて1日寝かせたりした経験はないでしょうか。プレイングマネージャーだったりすると、自分の仕事も忙しいので、なかなかすぐには返答できない場面もありますよね。そんなときは、素早くベストな回答をしようとせず、一言だけも即レスしておけばOKです。

若者はノーレス状態に「あれ?」と思ってしまいます。「何か変なこと送っちゃったかな」「もしかして自分は軽く見られているんじゃないか」などと勝手に不安になったりします。この価値観に大きな影響を与えているのが、いうまでもなくラインです。既読スルーが許されないのは「SNS村社会」の典型的なマナーのひとつ。彼らはとりあえずであろうがレスを怠りません。スタンプひとつでも必ずリプライします。そのくらい、とりあえず一言返すことは重要なのです。少なくともオトナ側の事情で寝かせたりするより、よっぽどマシに見えるはずです。

「ありがとう」とか「後で返すね」と送るだけで、相手には「ちゃんと見てるよ」というメッセージが伝わります。レスポンスも、相手を承認する重要な行為なのです。繰り返しますが、職場においても「既読スルー」は許されません。

7 名前で呼ぶ効能

自分の名前が呼ばれたとき、自分のことを呼んだ人に対して好感を抱くことは、心理学においてネームコーリングという効果で知られています。人間は無意識に自分の名前を好ましいものとして捉えているため、名前を呼ばれると自分に好意があるのではないかと考えるのです。

部下を名前でちゃんと呼ぶ。めちゃくちゃ簡単ですが、これだけでも承認欲求を満たすことになるのなら、実践しない手はありません。例えば会議中、「今、○○さんが言ってくれたみたいに……」などと、わざわざ名前を添えて発言する。挨拶も「おはよう」じゃなく「○○さん、おはよう」。なにか業務をオーダーするときも「あのさ、これお願い」じゃなく「○○さん、これお願いね」。普段の会話の中に、部下の名前を差し込んでいく。この繰り返しが、相手の存在をしっかりと認めることにつながるのです。

また許されるのであれば、あだ名で呼び合うようにするのも効果的。SNSの中でいくつものハンドルネームを使い、キャラを確立している若者からすると、どんなふうに呼ばれるかは、個性や自意識と直結しているのです。

あの面白法人カヤックでも、新人にあだ名をつけることが文化として根付いているとのこと。名字が武田なら「鉄也」とか、名字が浅利なら「ボンゴレ」とか、ものすごく安直ではあるらしいのですが、確実に親近感が増します。

8 まとめ

連休明けなどは、職場の若者が辞めやすい時期。年始に部下が元気よく出社するためにも、上司としては日ごろから、次のようなコミュニケーションを心がけるべき。

  • 職場の若者に心理的安全性を提供することがとても重要
  • そのためには、職場の若者の価値観を理解・承認することが必要
  • 上から目線ではないファシリテーション思考を心がける
  • 質より量のコミュニケーション(プチ褒め・プチ感謝の実践)
  • レスポンスも素早くこまめに
  • 名前をちゃんと呼ぶことでも承認感は高まる

以上(2019年12月)
(執筆 平賀充記)

pj90143
画像:NDABCREATIVITY-Adobe Stock

豊臣秀吉(武将)/経営のヒントとなる言葉

「信長公は勇将なり、良将にあらず。剛の柔に克つことを知り給ひて、柔の剛を制することを知られず」(*)

出所:「名将名君に学ぶ 上司の心得」(PHP研究所)

冒頭の言葉は、

  • 「部下から恐れられるような態度を取っていては、良いリーダーとはいえない。リーダーは、部下の心情、部下の視点に配慮することが求められる」

ということを表しています。

秀吉は織田信長に仕え、こまやかな心配りや機転の良さによって、頭角を現したことで知られ、こうした秀吉の特性は次のエピソードにも見られます。

ある日、秀吉は信長から、城の薪代がかさんでいるため、節約を図るように命じられて、薪奉行を任されます。それを受けて、秀吉は台所で使用する薪代や、暖房として必要な薪代などについて関係者に話を聞き、使用量を調べたところ適正量であり、薪代がかさんでいるのにはほかの原因が考えられました。

秀吉は次に薪の流通経路に着目しました。すると、薪の生産地から城に運び込まれる間に、多くの中間業者が存在し、マージンを受け取っていることが明らかになったのです。また、一説によると、秀吉の前任の薪奉行は中間業者から賄賂を受け取っていた可能性もあるようです。

そこで、秀吉は中間業者を通さない新たなルートで、薪を調達することを思い付きます。そうすれば、前任の薪奉行が不正を働いていたことは公になることはありません。秀吉は、領内の村を訪ねて回り、薪として使用できる古い木を無料で城まで運び、古い木と引き換えに苗木を渡すという交渉を取り付けました。この秀吉のやり方に信長は満足しました。また、「不正が明るみに出ないように」という秀吉の配慮に対して、前任の薪奉行も感謝したようです。

秀吉は「主である信長の命令にさえ応えられればよい」「自分さえ手柄を立てられればよい」という上下関係の視点だけではなく、前任の薪奉行、領内の村など多くの関係者が満足するようにうまく利害を調整しています。

秀吉の成功には、信長に取り立てられて力をつけていったという側面だけでなく、自ら周囲の人をうまく巻き込んで、もりたててもらったという見方ができるのではないでしょうか。

秀吉は低い身分から後に天下人にまで出世を果たしますが、こうした過程で秀吉は自分が臣下の立場で感じた、リーダーに対する思いを、自らがリーダーになった際に生かしています。

例えば、冒頭の言葉は主君であった信長の非情な性格について秀吉が言及したものの一部で、信長は恐れられこそすれ愛されることがなかったリーダーであり、こうした信長の性格が明智光秀の裏切りを招いたと、冷静に分析しています。

また、信長に仕える以前の主であった松下之綱の下を、将来性が無いと感じて去る際に、次のような言葉を残したとされています。

「およそ主人たる者、一年使ひ見て、役に立たぬ時は暇を遣はし、家来としては、三年勤めて悪ししと知らば、暇を取ること、法なり」(**)

秀吉は多くの臣下を抱える主となった後も、“臣下の心情”“臣下の視点”に配慮して接したことで、竹中半兵衛、黒田官兵衛など、多くの才能ある将を引き付けたのかもしれません。

リーダーはリーダーであり、部下とは同じ立場に立てるわけではありません。リーダーに求められるのは、組織を健全に保つため、律するべき部下を律し、引き上げるべき部下を引き上げるということです。リーダーはミスを犯した部下を叱責しますが、その目的はその部下に同じミスを犯さないように気付いてもらうためです。一方、良い仕事をした部下を引き上げますが、その目的は、その部下のやる気を高め、組織全体に良い影響を与えるためです。決して、リーダーの個人的な好き嫌いによって、部下への処遇や評価が変わるわけではありません。

こうしたリーダーの姿勢は、マネジメントの基本ですが、さらに部下への配慮や気遣いというエッセンスを加えることで、その効果を高めることができます。

部下は、リーダーと部下の置かれている立場が異なることを理解しています。だからこそ、リーダーの部下への配慮や気遣いを感じた部下は、そうしたリーダーの姿勢に応えたいと思い、一生懸命に仕事に取り組んでくれるでしょう。

部下への配慮や気遣いとは、部下のためだけではなく、リーダーを助け、結果的に組織の発展へとつながるものだといえるでしょう。

【本文脚注】

本稿は、注記の各種参考文献などを参考に作成しています。本稿で記載している内容は作成および更新時点で明らかになっている情報を基にしており、将来にわたって内容の不変性や妥当性を担保するものではありません。また、本文中では内容に即した肩書を使用しています。加えて、経歴についても、代表的と思われるもののみを記載し、全てを網羅したものではありません。

【経歴】

とよとみひでよし(1537〜1598)。尾張国(現愛知県)生まれ。織田信長の下に仕え、後に天下統一を実現。

【参考文献】

(*)「名将名君に学ぶ 上司の心得」(童門冬二、PHP研究所、2007年5月)
(**)「戦国武将のひとこと」(鳴瀬速夫、丸善、1993年6月)
「戦国武将のマネジメント術 乱世を生き抜く」(童門冬二、ダイヤモンド社、2011年3月)

以上(2019年12月)

pj15147
画像:Josiah_S-shutterstock

売上の計上時期が変わる!? 新たな収益認識基準とは

書いてあること

  • 主な読者:大企業を取引先にもつ中小企業の経営者・経理担当者
  • 課題:2021年4月1日以後に開始する事業年度から、中小企業を除くすべての企業は、新しい収益認識基準を適用しなければならない
  • 解決策:従来の会計基準の違いや、ポイント、中小企業が注意すべき点を解説

1 新しい収益認識基準の公表

企業会計基準委員会(日本における会計基準の設定主体。以下「ASBJ」)は、2018年3月30日に企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」(以下、合わせて「本会計基準等」という)を公表しました。

本会計基準等における新たな収益認識基準は、上場・非上場企業であるかを問わず、中小企業を除く全ての企業に適用されることになります。なお、2018年4月1日以後に開始する事業年度より任意で適用が開始され、2021年4月1日以後に開始する事業年度からは強制適用されます。

本会計基準等の適用により、収益の認識単位・金額・タイミングが変わる可能性があり、これに対応するためには、企業の収益認識に及ぼす影響の把握と、正しく収益認識を行うための事前準備が必要となります。

本稿では、収益認識基準が新しくなった背景を解説したうえで、新たな収益認識基準のポイント及び中小企業に想定される主な影響を紹介します。

2 新たな収益認識基準が公表された背景

従来の日本における収益認識基準は、企業会計原則の損益計算書原則において「売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る。」とされているものの、収益認識に関する包括的な会計基準がこれまで開発されていませんでした。

一方、国外では、国際財務報告基準(以下「IFRS」)を策定している国際会計基準審議会(以下「IASB」)と、米国における会計基準を策定している米国財務会計基準審議会(以下「FASB」)が、共同して収益認識に関する包括的な会計基準の開発を行い、2014年5月に「顧客との契約から生じる収益」(IASBにおいてはIFRS第15号、FASBにおいてはTopic606)を公表しました。

これらの状況を踏まえ、2015年3月に開催されたASBJ会議において、日本における収益認識に関する包括的な会計基準の開発に向けた検討に着手することを決定し、その後2016年2月に適用上の課題等に対する意見を幅広く把握するため、「収益認識に関する包括的な会計基準の開発についての意見の募集」(以下「意見募集文書」という)が公表されました。この意見募集文書に寄せられた意見等を踏まえ審議が進められ、2017年7月20日に収益認識に関する会計基準等の公開草案を公表し、当該公開草案に対して寄せられた意見等について検討が行われてきました。

そして、2018年3月26日開催のASBJ会議において、企業会計基準第29号及びその適用指針第30号(以下、合わせて「本会計基準等」)が承認され、本会計基準等が同年3月30日付で公表されました。

3 従来の会計基準との主な違い

従来から多くの企業が契約(または受注)単位で収益を計上しています。一方、新たな収益認識基準では、その契約の中に複数の履行義務(顧客に対して、財またはサービスを提供する約束)がある場合、その履行義務ごとに収益認識の「単位」「金額」「タイミング」(詳細は後述)を判断することになります。例えば、製品の販売に付随して、無償で修理を行うなどのアフターサービスを付けた場合、製品の単価とアフターサービスの単価ごとに売上の単位・金額・タイミングを認識することが考えられます。

4 新たな収益認識基準のポイント

新たな収益認識基準の基本原則は、約束した財またはサービスの顧客への移転を、当該財またはサービスと交換に企業が権利を得ると見込む対価の額によって収益の認識を行うことです。また、この基本となる原則に従って収益を認識するために、次の5つのステップを適用することになります。

画像1

1)ステップ1:契約の識別(単位)

顧客との契約を識別します。本会計基準等では、顧客と合意し、かつ、所定の要件を満たす契約に適用されることになります。

2)ステップ2:履行義務の識別(単位)

契約における履行義務を識別します。契約において、顧客へ提供することを約束した財またはサービスが所定の要件を満たす場合には、別個のものであるとして、当該約束を履行義務として区別して識別することになります。

3)ステップ3:取引価格の算定(金額)

取引価格を算定します。変動対価または現金以外の対価の存在を考慮し、金利相当分の影響及び顧客に支払われる対価について調整を行い、取引価格を算定することになります。

4)ステップ4:取引価格の配分(金額)

契約における履行義務に取引価格を配分します。契約において約束した別個の財またはサービスのそれぞれの独立販売価格の比率に基づき、それぞれの履行義務に取引価格を配分します。独立販売価格を直接観察できない場合には、独立販売価格を見積もることになります。

5)ステップ5:収益認識(タイミング)

履行義務を充足したときに、または充足するにつれて収益を認識します。約束した財またはサービスを顧客に移転することによって履行義務を充足したとき、または充足するにつれて、充足した履行義務に配分された額で収益を認識します。履行義務は、所定の要件を満たす場合には一定の期間にわたり充足され、所定の要件を満たさない場合には一時点で充足されます。

5 重要性等に関する代替的な取扱い

本会計基準等においては、これまで行われてきた実務等に配慮し、財務諸表間の比較可能性(財務諸表の期間比較や、他社比較が可能なこと)を大きく損なわせない範囲で、IFRS第15号における取扱いとは別に、次の個別項目に対する重要性の記載等、代替的な取扱いを定めています。なお、重要性の判断については、公認会計士などの専門家が判断することになります。

1)契約変更(上記ステップ1関係)

契約変更による財またはサービスの追加が、既存の契約内容に照らして重要性が乏しい場合の処理の取扱いがあります。

2)履行義務の識別(上記ステップ2関係)

提供することを約束した財またはサービスが、顧客との契約の観点で重要性に乏しい場合には、当該約束が履行義務であるかについて評価しないことができます。

3)一定の期間にわたり充足される履行義務(上記ステップ5関係)

工事契約について、契約における取引開始日から、完全に履行義務を充足すると見込まれる時点までの期間がごく短い場合には、一定の期間にわたり収益を認識せず、完全に履行義務を充足した時点で収益を認識することができます。また、受注制作のソフトウエアについても、工事契約に準じて同様に適用することができます。

4)一時点で充足される履行義務(上記ステップ5関係)

商品または製品の国内の販売において、出荷時から当該商品または製品の支配が顧客に移転されるときまでの期間が通常の期間である場合には、出荷時から当該商品または製品の支配が顧客に移転されるときまでの間の一時点(例えば、出荷時や着荷時)に収益を認識することができます。

5)履行義務の充足に係る進捗度(上記ステップ5関係)

一定の期間にわたり充足される履行義務について、契約の初期段階において、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積もることができない場合には、当該契約の初期段階で収益を認識せず、当該進捗度を合理的に見積もることができるときから収益を認識することができます。

6)履行義務への取引価格の配分(上記ステップ4関係)

履行義務の基礎となる財またはサービスの独立販売価格を直接観察できない場合で、当該財またはサービスが、契約における他の財またはサービスの付随的なものであり、重要性に乏しいと認められるときには、当該財またはサービスの独立販売価格の見積方法として、残余アプローチ(契約における取引価格の総額から、契約において約束した他の財またはサービスについて、観察可能な独立販売価格の合計額を控除して見積もる方法)を使用することができます。

7)契約の結合、履行義務の識別及び独立販売価格に基づく取引価格の配分(上記ステップ1、2及び4関係)

一定の要件を満たす場合には、複数の契約を結合せず、個々の契約において定められている顧客に提供する財またはサービスの内容を履行義務と見なし、個々の契約において定められている当該財またはサービスの金額に従って収益を認識することができます。

6 中小企業に想定される影響

新たな収益認識基準は、上場・非上場を問わず、中小企業を除く全ての企業に適用されることになります。なお、中小企業においては、「中小企業の会計に関する指針」が適用されることになりますが、今後、当該指針の見直しが行われることも考えられます。

その場合には、事前に顧客との契約を見直し、企業内の管理体制を整備することが求められます。企業の会計・経理担当者は、収益の認識に関して「契約の識別」をするために法務担当者と連携しながら、契約の成立時点を契約書等に照らして確認しておくことが必要です。

また、「履行義務の識別」をするためには、契約書の条項に照らし、顧客に提供することを約束した財またはサービスのそれぞれについての履行義務を、あらかじめ確認しておくことも必要になります。

さらには、企業が想定する実態に合った収益認識を行うために、取引先と契約内容(契約条項など)を見直すことが必要となるかもしれません。

例えば、上記「ステップ1:契約の識別」の段階においては、そもそも契約の成立が特定されない限り、企業は収益を認識することができません。現行では、実務上個々の取引契約書や受注書・注文書によって企業の代表者名義による書面を取り交わしていない場合には、新しい収益認識基準に基づく収益認識にあたっては契約の識別が困難になる可能性があります。仮に、取引基本契約書が存在するのであれば、個々の取引契約の成立を容易に説明できる契約条項を織り込んでおくことが必要です。

また、そもそも企業の代表者名義による書面を取り交わしていないような場合には、契約の識別を容易に行えるように客観的な証拠を残す工夫が必要であると考えられます。上記「ステップ2:履行義務の識別」の段階においては、財またはサービスの給付対象だけでなく、それに付随して提供される財またはサービスの約束(販売インセンティブやポイントの付与など)等も含めて履行義務を特定しておくことが必要となります。

さらに、大企業との取引がある中小企業については、「中小企業の会計に関する指針」の見直しの有無にかかわらず、上記のような契約の見直し等を求められる可能性も考えられます。

以上(2019年12月)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 公認会計士 伏見健一)

pj35055
画像:photo-ac

ABCの考え方/コスト削減の教科書

書いてあること

  • 主な読者:取コスト削減を図りたい製造業の部門担当者
  • 課題:コスト削減のための具体的なフローを知りたい
  • 解決策:ABC(Activity-Based Costing:活動基準原価計算)を利用したコスト削減方法を実践してみる

1 ABCの考え方

1)ABCとは

ABC(Activity-Based Costing:活動基準原価計算)は、原価計算手法の1つです。ABCでは、さまざまな企業活動(アクティビティ)を基準に原価を集計します。その特長は、従来の原価管理手法では詳細に把握することができなかった間接費を、より正確につかめることにあります。製造業におけるABCのイメージは次の通りです。

画像1

2)業務プロセスの明確化

自社の業務プロセスを、フローチャートなどを用いて明らかにします。製造業の業務プロセスは、一般的に「購買→材料在庫→製造→製品在庫→販売」などの主要業務、「経理」「人事」などの支援業務に分けられます。

3)業務をアクティビティに細分類

主要業務の「製造」に注目します。管理者や実務担当者にヒアリングすると、「製造」は、さらに「材料出庫」「段取り」「加工」「組み立て」「検査」「梱包」などのアクティビティに細分類できるでしょう。

4)アクティビティごとのコストを把握

アクティビティごとのコストは、単価と時間と回数を掛け合わせて計算します。そのため、前述したヒアリングの際に、作業時間や回数についても明らかにすることが重要になります。

5)労務費以外への展開

アクティビティを行うために投入する経営資源を、金額に換算してコストを把握します。業種やABCを活用する目的などによって異なるため一概には言えませんが、製造業の場合、次のように考えられます。

  • 材料費:原材料などに関する費用で、原材料費や買入部品費など
  • 労務費:従業員を雇用することにより発生する費用で、賃金や法定福利費など
  • 経費:材料費と労務費以外の費用で、賃借料や水道光熱費など

「材料費」「労務費」「経費」の3つの費目は、従来通りの原価計算で直接費と間接費に分類できます。ABCが主に対象とするのは、製品などに直接配賦することのできない間接材料費・間接労務費・間接経費です。

2 ABCの活用例

1)業務プロセスを明確にする

最終消費財メーカーX社の生産部門における製造業務を例に、ABCの活用例を見ていきます。X社の生産部門における業務プロセスは次の通りです。

画像2

X社では、原材料の仕入先から材料を購入し、それを加工・組み立てることで製品化しています。完成した製品は製品在庫として一時保管した後、注文に応じて出庫されることになります。また、これら一連の製造部門のプロセスは、現在の製品在庫量や受注量などを勘案した上で作成された、生産計画に基づいて実施・管理されています。

2)アクティビティを明確にする

X社では、作成したフローチャートを基に、各部門の責任者などへのヒアリングを実施しながら、各業務のプロセスのアクティビティを明確にし、製造部門のアクティビティを「材料出庫」「段取り」「工程待ち」「加工・組み立て」「検査」「梱包」の6つに分類しました。X社の製造業務のアクティビティは次の通りです。

画像3

3)投入要素の算出

X社では、製造原価報告書などの財務データを基に、製造業務で発生している費用を次の4つの投入要素に分類しました。

  • 間接材料費:補助材料費など製造部門で使用している直接材料費以外の費用
  • 労務費:従業員の賃金など製品の製造にかかった費用
  • 設備関係費:経費の中で製造部門に配置されている機械類に関わる修繕費など
  • その他経費:上記以外に発生する費用(水道光熱費など)

労務費およびその他経費は、各アクティビティに関する費用をできるだけ正確に把握する目的から、直接労務費・直接経費を含むこととしました。これら4つの投入要素を業務ごとに分析した結果、製造業務の4つの投入要素は次の通りで、合計1850万円となっていることが分かりました。

  • 間接材料費:100万円
  • 労務費:1200万円
  • 設備関係費:350万円
  • その他経費:200万円

4)投入要素別コストの算出・配賦

X社では、間接材料費は全て「加工・組み立て」で発生しているため、このアクティビティに配賦しました。また、「労務費=作業時間」「設備関係費=(機械設備の)稼働時間」「その他経費=作業時間」と配賦基準を定め、それに従って投入要素を各アクティビティに配賦して算出しました。

X社の製造業務のアクティビティコストは次の通りです。

画像4

5)アクティビティコストを各製品に配賦する

X社では、製品Aと製品Bを製造しています。これらを製造するのにかかった作業時間・稼働時間を基にアクティビティごとの単価を算出し、「4)投入要素別コストの算出・配賦」でアクティビティ別に算出されたアクティビティコストと掛け合わせると、製品別コストが算出されます。X社の製造業務における製品別コストは次の通りです。

画像5

X社の製造業務における製品別コストは、次の結果になりました。

  • 製品A:1071万円
  • 製品B:779万円

3 ABCをコスト削減のために活用するには

1)付加価値を生み出さないアクティビティに注目する

本来、自社の業務は、「部品を加工・組み立てて製品にする」など、新たな付加価値を生み出すために行われることが理想です。しかし、実際には、付加価値を全く生み出さない、あるいは付加価値をほとんど生み出さない業務が見られる場合があります。

ABCでは、現在の自社における業務プロセスと、その業務プロセスを構成している具体的な活動(アクティビティ)を明確に定義します。すると、削減すべき付加価値を生み出さないアクティビティを把握することができます。

例えば、X社の製造業務プロセスにおいては、「工程待ち」は全く付加価値を生み出さないため無駄であり、できる限り「工程待ち」の時間をゼロに近づけることが理想です。また、「段取り」は「加工・組み立て」を行うために欠かすことのできないアクティビティですが、それ自体に付加価値はないため、「段取り」の時間を短縮する取り組みが必要です。

ABCでは各アクティビティにかかるコストも明確にしていることから、無駄なアクティビティの削減に対する取り組みの効果や、進捗状況などを具体的な金額として、定量的に把握できるというメリットがあります。

2)コストの高いアクティビティに注目する

ABCをコストダウンに活用する際のもう1つの視点は、コストの高いアクティビティに注目することです。もちろん、コストが高いアクティビティでも、それに見合うだけの付加価値を生み出していれば、経営資源が適正に配賦されているということになります。

しかし、コストの高いアクティビティには、無駄なコストを生み出す要因が潜んでいることがしばしばあります。そのため、コストの高いアクティビティを細分化してより詳細に分析を行い、無駄なコストが発生していないかを確認することが必要です。

以上(2019年11月)

pj40045
画像:pixabay

【朝礼】理想の姿を描けば、なすべきことが見えてくる

ここ数カ月、私は知り合いの経営者に勧められて、「経営道場」なるものに参加しています。ここでは、受動的に学ぶのではなく、能動的にあるべき「理想の姿」を追求していきます。そして、理想の姿を実現するために足りていない部分を認識し、それを埋めるために最も効果的な取り組みを検討、実行します。

この一連の流れを繰り返す、こんなシンプルな経営道場での活動を通じて、私はとても重要な2つの気付きを得ました。今朝は、それを皆さんにお伝えします。

1つ目の気付きは、「『理想の姿』を持つ」ことの大切さです。経営道場の参加者は、向上心あふれる経営者ばかりなので、仕事についての理想の姿を熱く語ることができます。理想の姿を実現したいという思いは、日々の活力になります。

皆さんはどうですか。仕事でもプライベートでも結構です。「理想の姿」はありますか?

もしかすると、仕事について理想の姿を持つことは難しいかもしれません。私や上司の指示に従うことに慣れ過ぎていて、自由に発想することが苦手になっているかもしれないからです。

では、「皆さんに、仕事上の課題はありますか?」という質問ならどうですか。

こちらのほうが答えやすいのではないでしょうか。謙遜もあるかもしれませんが、自分の至らない部分、つまり課題を挙げるのは比較的、簡単なことでしょう。

問題は、皆さんが挙げた課題のほとんどが、改善に向かっていないと思われることです。それはなぜか。厳しい言い方かもしれませんが、課題について深く考えていないからです。この朝礼のように、課題の解決を約束するような場でなければ、「何となく、このままではいけない」と思っている程度のものについて、さも自分が思い悩んでいる重要な課題として話していないでしょうか。

ここで、経営道場で学んだ、重要な2つ目の気付きが活きてきます。それは、「自分を疑う」ことです。経営道場で私も熱く理想の姿を語りました。しかし、他の経営者から突っ込んだ質問をされると言葉に詰まってしまいました。考えているようで、実は表面的なところしか捉えていなかったのです。そこで、何度も何度も「それは本当に自分の理想なのか?」と自分に問いかけた結果、表面的な部分がそぎ落とされていき、本当の理想に近づけたのです。

理想が明確になると、今、克服しなければならない課題も分かります。課題を公式化すると、「理想-現実=課題」となります。本気で願う「理想の姿」から、正しい「現実」を引き算した結果が、今、取り組むべき本当の課題なのです。

ビジネスでは正しい課題設定が重要です。ただし、足元を見るだけでは正しい課題は見つかりません。思いつきレベルの課題でお茶を濁すのは、論外です。本当に重要な課題は、「理想の姿」を描くことで見つかるものなのです。

以上(2019年11月)

pj16981
画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】勝ちたければ、やるべきことはひとつ

今日は皆さんに、私が知っているある2人の話をします。2人とも、私がよく行くビリヤード場で一緒にビリヤードをする人です。その2人の話から何を感じるか、それぞれ考えてみてください。

1人は、ビリヤードを始めてまだ2カ月とほぼ初心者なのですが、とても研究熱心です。ビリヤードのプロの動画を何度も何度も見て正しいフォームを一から覚え、ビリヤード場で繰り返し練習しています。思うように玉を突けないときは、プロの動画を改めて見直したり、ビリヤードの上手な人に頭を下げて教えてもらったりしています。やみくもに自分の突き方だけを押し通そうとせず、素直に教えを聞き、自分の良くない点を改善しようとしているのです。

こうした姿勢でビリヤードに取り組む彼は、まだ始めてたった2カ月ですが、どんどん腕を上げ、時にはビリヤード歴の長い人に勝つこともあるくらいです。

一方、もう1人は、かれこれ、もう2年以上ビリヤード場に通っている人ですが、言葉を選ばずに言えば、実に下手で、誰かに勝っているのをほとんど見たことがありません。研究熱心な彼とは違い、練習したり誰かに教わったりするわけでもないので、一向に上達する気配もありません。単にビリヤードをすること自体が好きなのかと思っていましたが、本人はとても負けず嫌いな性格で、「勝ちたい」といつも言っています。負けると悔し涙を浮かべることもあるくらいです。

研究熱心な彼と、上手ではない彼は、「勝ちたい」という気持ちは同じです。しかし、気持ちは同じでも、それを原動力にして実際に行動に移したかどうかで、その先は大きく違ってきます。

研究熱心な彼は、勝ちたいと思うからこそ、研究し、練習したり教わったりするのは当たり前だといつも言っています。これには非常に共感しますし、彼の本気度合いが伝わってきます。

その一方で、本人はどう考えているのか分かりませんが、上手ではない彼が「勝ちたい」と言っていても、とても本気には思えません。「勝ちたい」と言う割に、勝つための努力や工夫をしようとしていないからです。負けて悔し涙を浮かべるのも、「誰かに負けてしまう」という事実を、感情的に嫌がっているようにしか見えないのです。

ビリヤードは単なる遊びですが、この2人の行動は、仕事にも通じるところがあると思います。皆さんも、日ごろ仕事で、「こうすればいいのに」「もっとこうしたい」などといろいろと言うことがあるでしょう。果たして、皆さんの「こうしたい」は、どれだけ本気で言っていることなのでしょうか。皆さんは、「こうしたい」ことを、実際にどのような行動に移しましたか。

口であれこれ言うのは簡単です。誰でもできることです。大切なのは、その先に、実際に具体的な行動に移したかどうかです。皆さん、「口だけ」は早く卒業してください。行動が全てです。皆さんの本気の行動を期待しています。

以上(2019年11月)

pj16982
画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】自分の「人付き合いルール」を持つ意味

先日、とても尊敬しているメンターの方から、人付き合いについて大切なことを教えてもらいましたので、それを皆さんに共有します。

実は、私は最近、仕事上で協業する可能性がある人との人間関係に困っていました。相手は悪い人ではないし、仕事で協業できそうなことも多いのですが、言動を見ているとどこか違和感があり、なんとなく打ち解けられずにいたのです。

そうした折、メンターの方とお会いする機会があったので、相手の実名は出さずに、私の心持ちだけを打ち明けてみました。するとメンターの方は、私にこう尋ねたのです。

「あなたが、『付き合わない』と決めているのは、どのような人ですか?」

正直に言えば、これまで私は、そうした視点で考えたことはありませんでした。「どのような人と付き合いたいか」と聞かれたら、恐らくすぐに答えることができたでしょう。しかし、「どのような人とは『付き合わない』のか」という問いかけに、私は答えることができませんでした。

メンターの方は続けて言いました。「経営者ともなると、多くの人と出会います。だからこそ、『こういう人とは付き合わない』というルールを持っておくことが、あなた自身と会社を守ることにつながります。『付き合わない』というルールに当てはまる人に出会ったら、早いうちに、お付き合いをお断りするのがよいでしょう。ただし、謙虚な気持ちで丁寧にお断りすることです」

私は、どのような人とは「付き合わない」のかをじっくりと考えてみました。私にとって大切なのは、やはり、「人」です。特に、社員や部下を大切にしていないと感じる人とは、たとえ仕事上のメリットがあっても、付き合いたくありません。当社の社員である皆さんのことも大切にしてもらえないような気がするからです。それが私の人付き合いのルールなのだと、初めて実感しました。

恐らく、私は今回、そうした点で相手に違和感を持ったのでしょう。その人との協業の話は、お断りしました。ただし、これはあくまでも私の主観です。実は社員や部下を大切にする人なのに、私が未熟で、そのことに気付けなかっただけなのかもしれません。そう考えると、メンターの方が言う「お断りは、謙虚な気持ちで丁寧に」というのも、よく分かる気がしたのです。

今日お伝えしたことは、皆さんには、まだピンとこないかもしれません。しかし、「こういう人とは付き合わない」という自分のルールを決めておくことは、皆さん自身が「どのように仕事をしていきたいか」「どのような人生を送りたいか」につながっていくのではないでしょうか。

ちなみに、尊敬するメンターの方は、「人の時間を大切にしない人とは付き合わない」と決めています。遅刻の他、自分勝手に仕事を進め、周りへの配慮がない人も該当するそうです。そうした方にお付き合いいただけることに感謝し、自分を顧みる軸にしようと、改めて感じました。

以上(2019年11月)

pj16983
画像:Mariko Mitsuda

【規程・文例集】「私有スマートデバイス取扱規程」のひな型

書いてあること

  • 主な読者:最新法令に対応し、運営上で無理のない会社規程のひな型が欲しい経営者、実務担当者
  • 課題:法令改正へのキャッチアップが難しい。また、内規として運用してきたが法的に適切か判断が難しい
  • 解決策:弁護士や社会保険労務士、公認会計士などの専門家が監修したひな型を利用する

1 私有スマートデバイスを業務に利用する「BYOD」

スマートフォンやタブレット端末などの携行可能な情報通信機器(以下「スマートデバイス」)が普及し、従業員が私有スマートデバイスを業務に利用する「BYOD」(Bring Your Own Device)という考え方が広まっています。

従業員にとってBYODは、使い慣れたスマートデバイスで、自ら導入したアプリケーション(アプリ)やクラウドサービスを利用し、いつでもどこでも業務を行えるという面で大きなメリットがあります。例えば、次のような行為を日常的にしているビジネスパーソンは少なくないのではないでしょうか。

  • 私有のスマートフォンで顧客に連絡し、訪問のアポイントメントを取る
  • 私有のスマートフォンにインストールした名刺管理アプリで顧客情報を管理する
  • 私有のタブレット端末で会社のサーバーにアクセスし、メールを確認する
  • 自宅で私有のタブレット端末を使い、見積書を作成する
  • 出張先のホテルで私有のタブレット端末を使い、翌日の会議の資料を作成する

会社にとってBYODは、従業員の業務効率化や組織の生産性向上、機器の導入や使い方の教育に掛かるコスト抑制などが期待できる半面、ルールを定めなければ、重要な情報の紛失・漏洩にもつながる危険性をはらむ悩ましい課題です。

BYODを有効活用するためには、私有スマートデバイスで会社の情報システムに接続する際の取り扱いと情報管理について定めた規程の策定や、業務に利用する場合の注意点についての教育を受ける機会を設ける必要があります。

本稿では、コンピュータソフトウェア協会が公表している「私有スマートデバイス取扱規程サンプル」「私有スマートデバイス利用許可申請書サンプル【新規】」「私有スマートデバイス利用許可申請書サンプル【機器追加】」「私有スマートデバイス利用解除申請書サンプル」(注)を基に、私有スマートデバイス取扱規程のひな型について紹介します。

■コンピュータソフトウェア協会「『BYOD』導入検討企業向け情報提供ページ」■
https://www.csaj.jp/activity/support/sample/byod.html

(注)コンピュータソフトウェア協会「私有スマートデバイス取扱規程サンプル」「私有スマートデバイス利用許可申請書サンプル【新規】」「私有スマートデバイス利用許可申請書サンプル【機器追加】」「私有スマートデバイス利用解除申請書サンプル」は、クリエイティブ・コモンズライセンス「CC BY-SA 2.1 JP 」によって許諾されています。

BY-SA

ライセンス証  https://creativecommons.org/licenses/by-sa/2.1/jp/
リーガルコード https://creativecommons.org/licenses/by-sa/2.1/jp/legalcode

なお、これらのサンプルは、特定の前提条件を想定して作成されており、それぞれの内容が必ずしも参照される各社の状況にそのまま合致するとは限りません。

2 私有スマートデバイス取扱規程のひな型

以降で紹介するひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の企業によって定めるべき内容が異なってきます。実際にこうした規程を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

【私有スマートデバイス取扱規程のひな型】

第1条(目的)
本規程は、私有スマートデバイスで会社の情報システムに接続する際の取り扱いと情報管理について定めるとともに、私有スマートデバイスからの情報漏洩、紛失、盗難、外部侵入などの危機に際しての行動指針を定め、会社の情報セキュリティの維持・向上並びに業務効率の向上を通じて、顧客の信頼を確保することを目的とする。

第2条(適用範囲)
1)本規程は、役員および従業員(以下「従業員等」)に適用されるものとする。
2)会社の業務委託を受けて、会社の情報システムに接続する委託事業者および派遣社員等が、私有スマートデバイスから会社の情報システムへ接続することは原則禁止とする。

第3条(用語の定義)
スマートデバイスとは、スマートフォン、タブレット端末等の携行可能な情報通信機器もしくは会社が判断した機器をいう。

第4条(利用許可)
1)利用許可を得た従業員等に限り、会社の許可条件に従い、私有スマートデバイスで、会社の電子メール、業務で使用する情報資産、顧客情報、業務アプリケーションの使用等もしくは、VPN、有線LAN、無線LAN等へ接続、使用することができる。なお、利用許可の範囲は、会社が認めた所定の範囲とする。
2)従業員等は、業務遂行において私有スマートデバイスを利用しようとする場合、所定の別表第1「私有スマートデバイス利用許可申請【新規】」を提出し、承認を得なければならないものとする。
3)会社は、利用状況等に鑑み、いつでも前項に規定する利用許可を解除することができるものとする。
4)会社は、第2項に規定する利用許可に当たり、許可申請のあった私有スマートデバイスに他の企業の機密情報であって、持ち出し・複製・第三者への開示が禁止された情報が含まれている場合には、従業員等に当該情報を消去させることができる。
5)従業員等は、会社が定めた私有スマートデバイス利用許可申請に記載されている内容および本規程の全てを順守するものとする。
6)従業員等は、会社が実施する私有スマートデバイスに関する教育プログラムを受講し、受講報告書を提出するものとする。
7)従業員等は、業務遂行において私有スマートデバイスを追加する場合、所定の別表第2「私有スマートデバイス利用許可申請【機器追加】」を提出し、承認を得なければならないものとする。
8)従業員等は、退職や業務遂行において私有スマートデバイスを利用する必要がなくなった場合、所定の別表第3「私有スマートデバイス利用解除申請」を提出し、承認を得なければならないものとする。なお、従業員等は利用解除に当たり事前に、利用していた私有スマートデバイスに登録されている会社業務に関する全ての情報を消去するものとする。
9)従業員等は、機種変更などの事由により業務遂行において私有スマートデバイスを変更する場合、初めに別表第3を提出した後、あらためて別表第1を提出し、承認を得るものとする。
10)利用許可を得ていない従業員等は、私有スマートデバイスによる会社の電子メール、業務で使用する情報資産、顧客情報、業務アプリケーションの使用等もしくは、VPN、有線LAN、無線LAN等への接続、使用を一切禁止する。

第5条(費用負担)
1)会社は、従業員等が利用する私有スマートデバイスの通信費用、保守費用、データバックアップ費用、紛失等での再取得費用等を原則として一切負担しない。
2)私有スマートデバイスで会社の情報システムに接続する従業員等は、業務利用部分の通話費用を明確にした請求書を作成し、部門長、総務部門を経由して経理部門に届け出るものとする。その場合、加入電話会社が提供する通話記録の明細書を添付しなければならない。
3)前項の請求分は毎賃金計算期間の末日に締め切り、別途「賃金規程」(省略)に定める賃金支払日に支給する。

第6条(善管注意義務)
1)私有スマートデバイスで会社の情報システムに接続する従業員等は、個人情報保護、不正競争防止、情報管理における一般的な知識の下、法令を順守し、善良なる管理者の注意をもって私有スマートデバイスを管理、運用しなければならない。
2)従業員等は、本規程、その他情報セキュリティに関連する全ての規程等(以下「情報セキュリティ等の規程等」)の改定、変更に注意を払い、常に最新の情報セキュリティ等の規程等を十分に理解するよう努めなければならない。
3)従業員等は、私有スマートデバイスの管理、運用に当たり、業務で利用する情報とプライベートで利用する情報を、明確に分けておかなければならない。
4)従業員等は、私有スマートデバイスを紛失し、もしくは盗難に遭った場合、またはコンピューターウイルスに感染し、もしくはその恐れがあると判断した場合には直ちに上長等に報告しなければならない。

第7条(監査)
1)私有スマートデバイスで会社の情報システムに接続する従業員等は、会社の求めに応じて、情報セキュリティ等の規程等に関する適用状況について、監査を受けなければならない。
2)私有スマートデバイスで会社の情報システムに接続する従業員等は、監査において、デバイスの安全性や設定状態、業務情報の保存状態の開示、これらを確認するための操作に協力しなければならない。

第8条(緊急措置)
1)会社は、会社のデータやプログラム、もしくは情報システム、または顧客のデータ(以下「データ等」)の保護のため必要と判断される場合、従業員等の私有スマートデバイスによる会社の情報システムへの接続を解除することができる。
2)従業員等は、本規程に違反し、もしくはその恐れがあると判断された場合、速やかに私有スマートデバイスの利用を中止し、上長等に報告するとともに、本規程で定められた手順、もしくは上長等の指示にのっとり、私有スマートデバイスにあるデータ等の消去など、適切な処置を講じなければならない。
3)前項の私有スマートデバイスにあるデータ等の消去には、状況に応じて私有スマートデバイスに保存されたプライベートで利用する情報が含まれる場合がある。
4)上長等は第1項および第2項に規定する措置を実施するに際し、合理的かつ有効な措置を従業員等とともに講じなければならない。
5)従業員等が第2項にあるデータ等の消去などを速やかに行わない、もしくはそれらの措置を講じることが困難な場合、会社は強制的にデータ等の消去などを行える権利を有するものとする。

第9条(免責)
従業員等は、業務遂行において私有スマートデバイスを利用するに当たって生じるリスクについて、全ての責任を負うものとし、会社は一切責任を負わないものとする。これには、会社が第8条第3項にある私有スマートデバイスに保存されたプライベートで利用する情報などを消去した場合を含む。

第10条(賠償)
従業員等が本規程に違反し会社に損害を与えた場合、会社は当該従業員等に対して相当分の賠償を求める場合がある。

第11条(罰則)
従業員等が故意または重大な過失により、本規程に違反した場合、就業規則に照らして処分を決定する。

第12条(改廃)
本規程の改廃は、取締役会において行うものとする。

附則
本規程は、○年○月○日より実施する。

(別表第1)

画像1

(別表第2)

画像2

(別表第3)

画像3

以上(2019年11月)

op60147
画像:ESB Professional-shutterstock

私有スマートデバイスの業務利用BYODについて考える

書いてあること

  • 主な読者:私有スマートデバイスを業務で利用する従業員がいる企業の経営者、情報システム部門、管理責任者
  • 課題:従業員の業務効率化や組織の生産性向上は図りたいが、重要な情報の紛失・漏洩は避けなければならない
  • 解決策:実態を把握した上で、リスクの軽減と、従業員の利便性や業務効率化を勘案した対応をしていく

1 私有スマートデバイスの脅威

1)BYODとは

スマートフォンやタブレット端末などの携行可能な情報通信機器(以下「スマートデバイス」)が普及し、従業員が私有スマートデバイスを業務に利用する「BYOD」(Bring Your Own Device)という考え方が広まっています。

従業員にとってBYODは、使い慣れたスマートデバイスで、自ら導入したアプリケーション(アプリ)やクラウドサービスを利用し、いつでもどこでも業務を行えるという面で大きなメリットがあります。

一方、企業にとってBYODは、従業員の業務効率化や組織の生産性向上、機器の導入や使い方の教育にかかるコストの抑制などが期待できる半面、重要な情報の紛失・漏洩の危険性もはらむ悩ましい課題です。

2)情報漏洩が発生すれば企業の責任が問われる

業務用の社有パソコンについては、多くの企業が情報システム部門や管理責任者などを設置し、端末の管理規程や利用マニュアルを整備し、情報セキュリティや個人情報保護に関する教育などの措置を講じ、取り扱いを管理・監視する体制を構築していることでしょう。

一方、従業員の私有スマートデバイスについては、あくまで「私物」であり、企業の管理の範囲外と見なしているケースもあるようです。しかし、仮に、業務にスマートデバイスを利用し、そのことが原因でセキュリティ被害や情報漏洩が発生した場合には、「そのスマートデバイスが社有か、私有か」「利用場所は社内か、社外か」「利用時間は業務時間内か、業務時間外か」などにかかわらず、企業の責任が問われることになります。

3)リスクを認識し、実態に即した対応が求められる

企業がルールを定めなければ、従業員は私有スマートデバイス内に、業務データとプライベートなデータを混在させて保存することになります。従業員のプライベートなデータを企業が管理・監視することは、プライバシーの権利の観点からも現実的ではありませんが、業務データは企業が管理・監視し、守るべき重要な経営資源の1つです。

従業員が、私有スマートデバイスを使って社有パソコンと同等の業務データを取り扱えるという状況は紛れもない事実であり、その状況を看過、黙認することは、業務データの紛失・漏洩などにつながりかねません。

企業は、BYODにおける脅威およびリスクを認識する必要があります。そして、自社のBYODの実態を把握した上で、リスクの軽減と、従業員の利便性や業務効率化を勘案した対応をしていくことが求められます。

2 BYODにおける脅威およびリスクの例

BYODにおける脅威およびリスクの例として次が挙げられます。

画像1

従業員は、私有スマートデバイスを常に持ち歩くため、紛失、水没や落下による故障といった偶発的な事象によって業務データが漏洩、消失する恐れがあります。

また、悪意を持った第三者による盗難、画面ののぞき見、不正プログラムへの感染などによって業務データが漏洩する恐れもあります。

さらに、タッチパネルの反応範囲や反応速度による操作ミス、Wi-Fiの自動接続設定をオンにしておいたことによる不正な無線LANアクセスポイントへの接続、私的に利用するアプリがGPSの位置情報や電話帳データにアクセスすることを知らずにインストールしていたなど、従業員の認識不足が業務データの漏洩につながる恐れもあります。

3 BYOD導入に当たっての検討課題

1)BYODにおけるリスクへの対応

リスクの大きさは、一般的に、脅威の発生確率、脅威が及ぼす影響度の掛け算によって評価できます。

BYODにおけるリスクへの対応を検討する際には、まず、自社にどのような脅威があるのか、実態を把握し、リスクを適切に評価する必要があります。アンケートやヒアリングを実施するなど、私有スマートデバイスの業務利用について従業員の実態を確認し、脅威を洗い出し、その上で、脅威の発生確率や影響度について評価していきます。

リスク評価の結果は、どのような業務をBYODで遂行するのか/しないのかを決める際の1つの判断材料となります。

2)従業員の利便性や業務効率化の勘案

どのような業務をBYODで遂行するのか/しないのかを決める際、重要なのは、リスク評価の結果と従業員の利便性や業務効率化の関係を勘案することです。

リスク評価の結果、仮にリスクが大きいと判断したとしても、リスクに比して、従業員の利便性や業務効率化の効果が期待できることもあり得ます。また、仮に、リスクが大きいという理由で、ある業務をBYODで遂行することを禁止したとしても、隠れて行う従業員が出てくる可能性もあります。

リスクへの対応は、リスク評価の結果と従業員の利便性や業務効率化を比較検討し、経営判断を下すことになります。

3)セキュリティ対策の考え方

BYODにおけるセキュリティの確保は、従業員の意識次第という面は否めません。そのため、BYODにおけるセキュリティ対策を検討する際には、従業員による運用面と企業(情報システム部門)による技術面の2つの側面から考える必要があります。BYODにおけるセキュリティ対策例として次が挙げられます。

画像2

例えば、盗難や紛失は、発生してしまうことを前提に、「端末内に業務データを残さないこと」が情報漏洩を防ぐための基本的な考え方となります。その上で、業務データが残っている可能性を考慮し、「第三者による侵入やデータの窃取を防ぐために端末をパスワードで保護しておくこと」、さらに「万一、端末のパスワードが破られた場合に備えてデータを暗号化しておくこと」が必要といえるでしょう。

4)従業員の私的なデータと業務データの使い分け

BYODで重要なのは、私的なデータと業務データを明確に使い分けることです。これらが端末内で混在して保存されていた場合、万一の際、業務データの情報漏洩を防ぐために、リモートワイプ機能で私的なデータも一緒に消去しなければならなくなります。

また、私的なデータと業務データがクラウドサービスなどの外部記憶域で混在して保存されていた場合、業務データが個人ごとに異なるクラウドサービスに広く拡散し、情報漏洩などが発生した際の原因究明や対策が困難になってしまいます。

業務で利用するアプリやアカウントは、プライベートで利用するアプリやアカウントと別にするなど、「公私を使い分ける」ことを従業員に理解させる必要があります。

5)利用終了時の取り扱いの明確化

従業員が退職したときやスマートデバイスを買い替えたときなどには、それまで使ってきたスマートデバイスを、業務で利用できないようにしなければなりません。その際、顧客情報や業務上知り得た機密情報などが、端末内に残存していないかチェックし、残っていれば削除する必要があります。また、ファイルサーバー、社内ネットワークなどへのアクセス権限も削除します。

ただし、従業員が個人で利用しているクラウドサービスのシステム上に残っている業務データについて、企業側で把握することは困難です。そのため、クラウドサービスについてあらかじめ利用を禁止するか、クラウドサービスのシステムから業務データを削除したことを誓約させるなどの措置が必要です。

6)費用負担

業務目的以外で従業員が自費で購入した有償アプリの取り扱い、スマートデバイス本体の購入代金の負担、通信費の負担などについても取り決めておく必要があります。

例えば、セキュリティ対策製品の導入や業務アプリのインストールなどについては、状況によって企業側の費用負担を考慮する必要があるでしょう。

なお、ビジネス用には050で始まる番号(IP電話)、プライベート用には080/090で始まる番号を簡単な操作で使い分けでき、ビジネスで利用した通話料は企業に請求するサービスもあります。そうしたサービスの利用も検討するとよいでしょう。

以上(2019年11月)

op60146
画像:photo-ac

全国、全ての中小企業を黒字に!〜ITサービスを提供するライトアップ社が実現したいこと/岡目八目リポート

年間1000人以上の経営者と会い、人と人とのご縁をつなぐ代表世話人 杉浦佳浩氏。ベンチャーやユニークな中小企業の目利きである杉浦氏が今回紹介するのは、昨年(2018年)6月にマザーズに上場された株式会社ライトアップの代表取締役である白石 崇さんです。

全国にあまたある企業の中で、周知のとおり圧倒的に数が多いのは中小企業。平成27年度国税庁データによると、企業数における大企業の割合は、0.3%。残りの99.7%の中で、黒字の中小企業は35.4%、圧倒的多数を占める64.3%の中小企業が赤字となっている現実。この赤字の中小企業にIT化という経営支援を推進することで経常利益率は1.46倍(出所:経済産業省)に。そこにコミットして、サービスを販売することから考えると儲かりづらい赤字中小企業にマーケットを絞り、愚直に事業に取り組んでおられる白石さんにお話を伺いました。

1 中小企業の課題感について

1)現状について なぜ赤字中小企業にターゲットを絞っているか?

大企業も中小企業の支えがあってこそ経営がなりたっているはず。その中で中小企業を取り巻く環境は厳しくなる一方。その支えている中小企業の3分の2が赤字決算、本当に厳しい経営環境。なぜ企業はITやネットを活用しようとしているのか? それは経営状態を改善したいからだ(売上向上等)と、いつしか考えるようになった白石さん、そのために2014年に専門部署を立ち上げ『経営支援』に真っ向から取り組んでいくと覚悟を決めたそうです。

冒頭の、業務をIT化することで経常利益が1.46倍に増える!ここにフォーカスして赤字企業を黒字へ導く支援をスタートしたそうです。赤字企業のIT化へのネックは【資金不足】と【人材・ノウハウ不足】の2点(中小企業庁のデータより)。ここも明確化している、そのために【安価】なITサービスを提供し、そのためのチャレンジ資金をなんとか確保する。解決施策と資金の両方の【解】をセットで提供することでどんな赤字企業でも業務のIT化が実現し、利益率を向上させることができる環境を作り、提供していきたいと話します。もともとITの世界にいた白石さんは、【資金不足】と【人材・ノウハウ不足】の2点をITで解決するのが、IT企業の役割、存在意義だと語ります。

2)白石さんが実現したいこと

国の税収は主に3つ、所得税、法人税、消費税で合計60兆円。支出は約100兆円。毎年40兆円の国債が新規で発行されている現実。現在300万社の法人が存在しますが、その合計で30兆円の利益を出し、12兆円の法人税が納付されています。

ここを白石さんは、すべての企業が3倍の利益を出すことができれば、法人税は36兆円となり、国債発行はほぼ必要なくなる。そしてさらに3倍の利益になれば国家予算は2倍に増えて、すべての社会問題に対して何らかの対策を打つことができ、日本を再度活性化させることができると思っていらっしゃいます。

起業家として大きな課題解決を掲げて取り組む大切さを感じました。

3)白石さんが実現できたこと(2018年度)

  • 年間2万社の経営者に2時間の経営勉強会でIT活用のノウハウ提供ができた
  • 年間2000社に対して経営コンサルティングができた
  • 年間3000社に対して業務のIT化支援を提供できた

この実績はなかなかすごいですね。そもそも事業投資、事業継続もままならない、赤字企業へアプローチすること、儲からないの一言が参入障壁となっていると感じますが、その儲けづらいマーケットをあえて選んで事業展開をされていることに頭が下がります。

その上、想いの高さ、大きな実績を作っておられる白石さん、続いて起業に至るまでのお話についてお聞きしました。

2 起業のキッカケ

1)NTTを辞めるまで 会社員時代6万人のファンがいたそうです

大学生の時の衝撃的な出会い、それがEメール、インターネット。【世の中を変える】そう感じ、一生このインパクトあるツールとなにかしら付き合っていこうと決めていたそうです。

その環境を続けられる会社として選択したのがNTT。「マルチメディアを形にするNTT」というテレビCMを見たことがきっかけだったそうです。サラリーマン活動がスタートしました。でもなかなか自分のやりたいことができない時、入社4年目にインターネットプロバイダ事業を行う子会社に出向した際、その事業連携の打診先にと連絡を取ったのが、後に転職することになる、まだまだ人数の少なかったサイバーエージェント社だったそうです。白石さんから連絡した時に、サイバーエージェント社側から『あのメルマガで有名な白石さん?』と聞かれたそうで、ご自身がビックリ。

白石さんは、大学時代から心理学を学び、それを題材に個人でメルマガを発行していたそうで、読者が当時6万人を超えてランキング3位という、その世界では【有名人】だったそうです。この有名人の白石さんから連絡があった、サイバーエージェント社側が、白石さんをスカウトへと動いて、NTTを退職することになったそうです。

2)サイバーエージェント社をスピンアウト

サイバーエージェント社に入社した白石さん、プログラム以外の仕事はすべてやりました、と話します。同社初のコンテンツ企画制作部門を創っていかれたそうです。

入社して1年ほどで転機を迎えます。白石さんが管掌していたコンテンツ部門が業務縮小へと方針が変化し、仕事がやりづらくなっていったそうです。その頃一緒に仕事していた部下の皆さんから『辞めないのですか?』『起業しないのですか?』と尋ねられるようになり、全く起業志向ではなかった中で周りから背中を押される感じで、起業の道を選んだそうです。サイバーエージェント社とはその後も友好関係が続き、創業後数年間はたくさんの仕事を発注してもらえたそうです。

以下にライトアップ社HPから同社の変遷をご紹介します。

    ・(株)ライトアップ・現在までの歴史

    (株)ライトアップは、2002年にサイバーエージェント社コンテンツ部門メンバーが中心になり設立されました。元々の部署名が「メルマガファクトリ」だったこともあり、当初は様々な企業の「メールマガジン」の編集代行を実施していました。現在でも、ライトアップは「現存する国内最古のメルマガ編集会社のひとつ」だと思います。

    その後、「メルマガ」→「ブログ」→「バズマーケ」→「ソーシャルマーケ」→「SEO」→「クラウドツール」→「経営コンサル」・・・と新規事業と業態転換を続けながら拡大していきます。その結果、2018年6月22日(金)に東証マザーズ市場へ上場することができました(証券コード:6580)。

    選択と集中という言葉がありますが、弊社は真逆を進み「世の中が望むサービスをできるだけたくさん、できるだけ低コストで提供し続けていく」をモットーに、あらゆるネット系新規事業にチャレンジし続けています。

    20年近くの社歴に基づいた安定感と、社員の数より多い商品・サービス群を武器に、これからも「受託制作業務」→「クラウドツール開発・卸業務」→「赤字の中小企業への経営・IT支援」に全力で取り組んでまいります。

    現在、最も力を入れていることはこちらです。これがIT・ネット企業の存在意義だと考えています。

    「全国、全ての中小企業を黒字にする」

    (出所:ライトアップ社ウェブサイト)

この歴史を拝見していて、まさに企業は生き物、トライアンドエラーの連続、ITを土台に時代にマッチする事業を行っている。白石さんのマーケットの声を聞く姿勢があればこそのことと感じました。

続いて、同社の事業概要、今力を入れている事業についてお話を聞きました。

3 毎年、年間600回のセミナーを開催、2万社の経営層が参加!

1)年間600回をどうやって?

年間600回のセミナー、勉強会、イベントを実施されている白石さん、IT企業だけにオンラインで実施している?と思いますがそれが全てリアルイベントだそうです。白石さん曰く、まだまだ地方の中小企業経営者はインターネットを日常的に【活用していない】ため、IT企業でありながら、対面状況を創り全国で600回にのぼるリアルな説明会イベントを開催しています。と。このリアルイベント、勉強会を開催するために、全国の、地銀、電力会社、生損保、自治体、商工会議所等と連携もしているそうです。智恵を絞り出されていますね。

2014年に経営支援に真っ向から取り組む覚悟で開発したツールが、社長のための経営支援サービス

Jマッチの画像です

これは、自社の【資本金、社員数、所在地、売上等】の【基本情報】と、【売上減少、人材採用難、離職率等】の【経営課題】を入力することで、最適な【解決策】と【資金確保手段】を自動的に提案するようになっています。

その結果、2017年には大きく飛躍することができ、会員1万社、80億円超の資金確保(返済不要)、多様な人材研修の提供などが実現できました。大変好評です。とのこと。

Jマッチの画像です

道玄坂日記の画像です

2)現状注力中のITサービスについて

白石さんにココ最近一番注力していること、そこを尋ねますと、真っ先に返事があったのが【採用です】と。昨今採用費はうなぎ登り、コストを掛けても採用人数0人やせっかく採用してもすぐに辞めていく。そんな中で、一人あたりの採用コストが150万円となっている現実。そこを10万円に下げようと頑張っていらっしゃいます。その余ったコストの100万円分を入社後の育成、研修や業務のIT化に投資できる経営環境を作りたいと思っています。

自社でもコスト70万円で15名の採用に成功されています。その概要はこちらです。

上記以外にも、外国人に特化した求人媒体、ロジックで最適人材を紹介する全自動の人材紹介会社システム、1日500円からの短期バイト・マッチングサービス、無料で利用できる採用診断システム、と多彩なサービスを展開中です。

3)今後の展開について

採用の次は離職の防止で経営者の役に立ちたいと思っている白石さん。

「革命的なPCログ分析ツール」「かゆいところに手が届く月次自動アンケートシステム」「ブロックチェーンを活用した福利厚生サービス」「かなり真面目な離職確率測定サービス」となかなかおもしろい企画が目白押しだそうです。順次、システム提供に移っていこうとされています。白石さんは、採用、育成、離職防止といった「人」に関する大切なことにITを活用して自動化し、売上向上や社員の働きやすい環境を実現して、本当の意味で生産性を向上させる。そんな取り組みを進めていこうとされていると思います。

【赤字】の中小企業を支援したいと事業にコミットしている、そんな会社はライトアップくらいだと奇特な会社扱いをされるそうですが、白石さんは、至って真面目に、真剣に取り組んでいますと胸を張ります。

最後に事業連携についても積極的に進めようとされています。同社としても提供できること、また必要としていることについても伺いました。

◆同社が提供できるもの

  • Jマッチ会員5万社をご紹介できます(79%が経営層・社員数20名未満)。毎年2万社の経営層が参加する勉強会を共同で開催したり、サービスを公的支援制度対応にリパッケージできます(価格ネックの大幅低減)。
  • 最新の各種ITツールを安価に“卸”せます。

◆同社が必要としているもの

  • 中小企業を支援したいと考えている「パートナー企業」「個人」
  • 中小企業の経営課題を解決できる「IT系サービス」
  • 新しいITサービスを開発したが、売り方がわからない「ベンチャー企業」

※法人、個人の区別なく、ビジョンに共感していただける方は大歓迎です、とのこと。

自分たちは、日本経済の足元を支えている中小零細企業の社長の悩みに向き合って、それに対して何をしたらいいかだけを真剣に考えてきた、そしてこれからも考えていく会社です。とお話しされる白石さん。

事業連携も加速していきながら赤字の中小企業を無くす、白石さんの「世の中へのお役立ち」にますますの成長を期待したい会社だと感じる次第です。

白石さんと杉浦さんの画像です

以上(2019年10月作成)