【朝礼】部下指導に悩める管理職への「たったひとつの処方せん」

管理職の皆さんは、日ごろ、一生懸命、部下を指導してくれています。しかし、なかなか部下が成長してくれないと悩む管理職も多いようです。今日は、そうした悩める管理職に、私から一つアドバイスをお伝えします。それは、「部下には、答えは教えない。答えにたどり着くための方法を教える」ということです。

分かりやすい例を挙げてみましょう。部下が、何かの参考として、書籍やインターネットの中から資料を探そうとしているとき、皆さんの多くは「これを見て」と参考になりそうな資料を渡しています。部下のためによかれと思っているのでしょうが、これでは「参考になる資料はこれだ」という答えを教えているにすぎません。

皆さんが部下に教えるべきなのは、「資料の探し方」です。どのようなキーワードで探すのか、どのような得意分野の人に聞いてみるとよいか。そうしたことを教えるほうが、部下本人のためになります。もっと言えば、「どのようなキーワードで探すのか」ということから部下に考えさせ、大きくズレているようなときにだけ、「自分だったらこのキーワードで探すと思う」とアドバイスするくらいでよいでしょう。

初めから答えを教えてしまうと、部下は自分で考えられなくなります。教えてもらったそのときは、無事に参考資料を手に入れられるでしょうが、「探し方」が身に付いていないので、別のときに、部下は自分で探すことができません。

また、こうしたことが続くと、部下は、管理職に教えてもらったことが全てだと思い込みます。それ以外のこと、それ以上のことにチャレンジしなくなってしまうでしょう。これでは部下が成長するわけがありません。

そうならないために、管理職の皆さんには、常に「相手軸」で考えてもらいたいのです。これは、「相手の立場で考えて、本当にためになるか」という視点です。ここでいう「相手軸」は、皆さんにとっての部下です。皆さんには、本当に部下のためになることを考えてほしいのです。

とはいえ、相手の立場に立つのは簡単ではありません。そこでヒントとなるのは「再現性」です。

今、自分が部下に教えようとしていることは、部下が次に似たようなシーンに出くわしたとき、管理職の力を借りず、部下自らの力で再現できる方法か。部下指導をするときには、常にこの点を考えてみてください。再現性があれば、部下は自らの力で突破できるようになります。部下の成長にもつながるでしょう。

管理職の皆さんに、はっきり言っておきます。部下が、いつまでたっても管理職の力を借りなければならない状態だとしたら、それは管理職の教え方が良くないからです。

管理職の皆さん、今日から、自分の部下指導を見直してみてください。この上半期が終わる頃、皆さんが「部下のこの点が成長した!」と大いに自慢してくれることを期待しています。

以上(2019年10月)

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画像:Mariko Mitsuda

保有目的によって異なる「有価証券」の会計処理

書いてあること

  • 主な読者:会計の基礎を身につけたい中小企業の経理担当者
  • 課題:有価証券は保有目的ごとに会計処理が異なり、判断に迷いやすい
  • 解決策:保有目的の判断基準や、それぞれの区分ごとの会計処理を解説

1 会計処理が複雑な有価証券

会社はさまざまな目的で有価証券を保有します。しかし、有価証券と一口に言っても、会計上はその保有目的ごとに区分されており、期末の評価などの会計処理が異なるなど、実務上、判断に迷いやすい勘定の1つでもあります。本稿では、会計上の分類や基本的な会計処理を紹介します。

2 有価証券とは

会計上、有価証券は法律(金融商品取引法)で定められており、主なものは次の通りとなります。

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これらの有価証券を会社が取得した場合、原則売買契約を締結した日に、資産として計上されます。そこでポイントとなるのが、その有価証券を「どのような目的で保有しているのか」という点です。

有価証券は、保有目的ごとに次の4区分に分類されます。

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また、区分ごとに会計処理が異なります。特に期末時の評価方法がポイントとなります。以降では、取得時・期末時・売却時・満期償還時の会計処理を区分別に紹介します。

3 有価証券の会計処理

1)売買目的有価証券

1.取得時

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売買目的有価証券を取得した場合には、手数料など購入に要する費用を取得価額に含めた金額で、貸借対照表に「有価証券(流動資産)」として計上します。

2.期末時

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売買目的有価証券を期末時に保有している場合には、期末日の時価で貸借対照表に計上します(以下「時価評価」)。時価評価による差額は、損益計算書に有価証券売却益(営業外収益)または、有価証券売却損(営業外費用)として計上します。

3.売却時

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売買目的有価証券を売却した場合には、売却時の時価との差額を損益計算書に有価証券売却益(営業外収益)、または有価証券売却損(営業外費用)を計上します。なお、売却時の手数料などの費用については有価証券売却損益に含めて処理します。

2)満期保有目的の債券

1.取得時

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満期保有目的の債券を取得した場合には、発行価額の金額で、満期までの期間に応じて「有価証券(流動資産)」か「投資有価証券(固定資産)」として計上します。

なお、社債などの債券については、額面金額より低い金額または高い金額で発行されることがあります。この額面と発行価額の差額(以下「調整差額」)は市場金利との調整によるものです。この調整差額は償還日までの期間にわたって、償却原価法(詳細は後述)により計算し、有価証券の帳簿価額に加減算していくことになります。

2.期末時

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満期保有目的の債券を期末時に保有している場合は、原則、償却原価法により計算した金額を取得原価に加算または減算した金額で計上します。

償却原価法とは、金利の調整とみなされた調整差額を取得日から償還日までの期間にわたって、毎期一定の方法で有価証券の取得価額に加算または減算する方法をいいます。

償却原価法により計算された調整差額は、「有価証券利息(営業外収益または営業外費用)」として計上されます。なお、詳細な説明は省略しますが、償却原価法には利息法(原則法)と定額法(簡便法)の2つの方法があります。

3.満期償還時

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満期保有目的の債券の満期償還時には、調整差額の残額を有価証券利息(営業外収益または営業外費用)に計上します。このとき、額面金額と帳簿価額は一致することになります。そして利息の支払いを受けた場合には、その金額も有価証券利息(営業外収益)に計上します。

最後に、額面金額で償還することになります。

3)子会社株式及び関連会社株式

1.取得時

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子会社株式及び関連会社株式を取得した場合には、取得原価で「関係会社株式(固定資産)」として計上します。

2.期末時

子会社株式及び関連会社株式については、期末時においても取得原価で、貸借対照表に計上します。そのため、期末の評価替えは行いません。

3.売却時

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子会社株式及び関連会社株式を売却した場合には、帳簿価額と売却価額との差額を有価証券売却益(特別利益)、または有価証券売却損(特別損失)として計上します。

4)その他有価証券

1.取得時

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その他有価証券を取得した場合には、取得価額で、「投資有価証券(固定資産)」として計上します。

2.期末時

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その他有価証券を期末時に保有している場合は、その他有価証券に市場価格があるかないかで、次の金額で評価することになります。

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市場価格ありのその他有価証券の場合は、期末日の時価で貸借対照表に計上します。時価評価による差額は、その他有価証券評価差額金として、貸借対照表の純資産の部に計上されます(注)。また、時価評価した場合には、翌期首に洗い替え(期末の仕訳と逆仕訳)をすることになります。そのため、その他有価証券が時価で計上されるのは、期末時のみとなり、基本的に期中は取得原価で計上されていることになります。

市場価格なしのその他有価証券の場合は、取得原価で貸借対照表に計上されるため、特段処理はありません。なお、債券の場合は、上述した満期保有目的の債券の期末時の仕訳と同様の処理をすることになります。

(注)時価が取得原価を下回る場合には、時価評価による差額を純資産ではなく、投資有価証券評価損(営業外費用)として損益計算書に計上する方法によることもできます。

3.売却時

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その他有価証券を売却した場合には、帳簿価額と売却価額との差額は、その他有価証券が次のいずれに該当するかに応じて、売却損益の表示場所が異なります。

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5)減損

決算時における時価評価をしない売買目的以外の有価証券については、通常の場合には損益計算書上に損失は計上されません。しかし、時価が取得原価よりも著しく下落し、回復が見込めない場合には、売買目的有価証券以外の有価証券においてもそのときの時価をもって貸借対照表に計上し、かつ損失(特別損失)を損益計算書に計上しなければなりません。この損失は減損損失といいます。

時価が著しく下落し、回復が見込めない場合とは主に次の通りです。

  • 時価が50%以上下落した場合
  • 時価が30%以上50%未満下落した場合で、継続して30%以上時価が下落している場合など、回復の見込みがない合理的な基準があること

なお、詳細な説明は省略しますが、時価評価が困難な株式などは、純資産方式、または企業価値算定方式といった一定の計算により時価を把握することになります。

以上(2019年10月)

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画像:photo-ac

棚卸資産の取得価額

書いてあること

  • 主な読者:会計の基礎を身につけたい経理担当者
  • 課題:棚卸資産の取得価額は購入代価以外にも、含めなければならないなど、会計処理が複雑で分かりにくい
  • 解決策:取得価額に含めなければならない費用、含めなくてもよい費用や、期末の評価方法を解説

1 購入した棚卸資産

1)購入した棚卸資産の取得価額

購入した棚卸資産の取得価額には、その購入の代価のほか、これを消費しまたは販売の用に供するために直接要した全ての費用の額が含まれます。

しかし、次に掲げる費用については、これらの費用の額の合計額が少額(当該棚卸資産の購入代価のおおむね3%以内の金額)である場合には、その取得価額に算入しないことができます(法人税基本通達5-1-1)。

  • 買入事務、検収、整理、選別、手入れなどに要した費用の額
  • 販売所等から販売所等へ移管するために要した運賃、荷造費等の費用の額
  • 特別の時期に販売するなどのため、長期にわたって保管するために要した費用の額

1.~3.に掲げる費用の額の合計額が少額かどうかについては、事業年度ごとに、かつ、種類等(種類、品質及び型)を同じくする棚卸資産ごとに判定することができます。事業所別に異なる評価方法を選定している場合には、事業所ごとの種類等を同じくする棚卸資産とすることができます。

棚卸資産を保管するために要した費用(保険料を含む)のうち、3.に掲げるもの以外のものの額は、その取得価額に算入しないことができます。

2)棚卸資産の取得価額に算入しないことができる費用

次に掲げるような費用の額は、たとえ棚卸資産の取得または保有に関連して支出するものであっても、その取得価額に算入しないことができます(法人税基本通達5-1-1の2)。

  • 不動産取得税の額
  • 地価税の額
  • 固定資産税及び都市計画税の額
  • 特別土地保有税の額
  • 登録免許税その他登記または登録のために要する費用の額
  • 借入金の利子の額

3)取得後の事業年度において購入代価が確定した場合の調整

棚卸資産を取得した日の属する事業年度において、その購入の代価が確定していないため、見積価額で棚卸資産の取得価額を計算している場合、その後の事業年度において購入の代価が確定したときは、その確定した金額と見積価額との差額に相当する金額は、その確定した日の属する事業年度の益金の額または損金の額に算入します。

ただし、その差額が多額である場合には、その差額については、原価差額の調整方法に準じて調整します(法人税基本通達5-1-2)。

2 製造等に係る棚卸資産

1)製造等に係る棚卸資産の取得価額

自己の製造等に係る棚卸資産の取得価額には、その製造等のために要した原材料費、労務費および経費の額の合計額の他、これを消費しまたは販売の用に供するために直接要した費用の額が含まれます。

しかし、次に掲げる費用については、これらの費用の額の合計額が少額(当該棚卸資産の製造原価のおおむね3%以内の金額)である場合には、その取得価額に算入しないことができます(法人税基本通達5-1-3)。

  • 製造等の後において要した検査、検定、整理、選別、手入れ等の費用の額
  • 製造場等から販売所等へ移管するために要した運賃、荷造費等の費用の額
  • 特別の時期に販売するなどのため、長期にわたって保管するために要した費用の額

1.~3.に掲げる費用の額の合計額が少額かどうかについては、事業年度ごとに、かつ、種類等を同じくする棚卸資産(工場別に原価計算を行っている場合には、工場ごとの種類等を同じくする棚卸資産)ごとに判定することができます。

棚卸資産を保管するために要した費用(保険料を含む)のうち、3.に掲げるもの以外のものの額は、その取得価額に算入しないことができます。

2)製造原価に算入しないことができる費用

次に掲げるような費用の額は、製造原価に算入しないことができます(法人税基本通達5-1-4)。

  • 使用人等に支給した賞与のうち、例えば創立何周年記念賞与のように特別に支給される賞与であることの明らかなものの額(通常賞与として支給される金額に相当する金額を除く)
  • 試験研究費のうち、基礎研究及び応用研究の費用の額並びに工業化研究に該当することが明らかでないものの費用の額
  • 措置法に定める特別償却の規定の適用を受ける資産の償却費の額のうち特別償却限度額に係る部分の金額
  • 工業所有権等について支払う使用料の額が売上高等に基づいている場合における当該使用料の額及び当該工業所有権等に係る頭金の償却費の額
  • 工業所有権等について支払う使用料の額が生産数量等を基礎として定められており、かつ、最低使用料の定めがある場合において支払われる使用料の額のうち生産数量等により計算される使用料の額を超える部分の金額
  • 複写して販売するための原本となるソフトウエアの償却費の額
  • 事業税及び地方法人特別税の額
  • 事業の閉鎖、事業規模の縮小等のため大量に整理した使用人に対し支給する退職給与の額
  • 生産を相当期間にわたり休止した場合のその休止期間に対応する費用の額
  • 償却超過額その他税務計算上の否認金の額
  • 障害者の雇用の促進等に関する法律第53条第1項「障害者雇用納付金の徴収及び納付義務」に規定する障害者雇用納付金の額
  • 工場等が支出した寄附金の額
  • 借入金の利子の額

3)製造間接費の製造原価への配賦

法人の事業の規模が小規模である等のため製造間接費を製品、半製品または仕掛品に配賦することが困難である場合には、その製造間接費を半製品および仕掛品の製造原価に配賦しないで製品の製造原価だけに配賦することができます(法人税基本通達5-1-5)。

4)法令に基づき交付を受ける給付金等の額の製造原価からの控除

法人が、その支出する休業手当、賃金、職業訓練費等の経費を補填するために「雇用保険法」「雇用対策法」「障害者の雇用の促進等に関する法律」等の法令の規定等に基づき給付される給付金等の交付を受けた場合、その給付の対象となった事実に係る休業手当、賃金、職業訓練費等の経費の額を製造原価に算入しているときは、その交付を受けた金額のうち、その製造原価に算入した休業手当、賃金、職業訓練費等の経費の額に対応する金額を当該製造原価の額から控除することができます(法人税基本通達5-1-6)。

5)副産物、作業くずまたは仕損じ品の評価

製品の製造工程から副産物、作業くずまたは仕損じ品(以下「副産物等」)が生じた場合には、総製造費用の額から副産物等の評価額の合計額を控除したところにより製品の製造原価の額を計算します。

しかし、この場合の副産物等の評価額は、継続して当該副産物等に係る実際原価として合理的に見積もった価額または通常成立する市場価額によるものとします。

ただし、当該副産物等の価額が著しく少額である場合には、備忘価額で評価することができます(法人税基本通達5-1-7)。

3 棚卸資産の評価

1)原価法による評価方法

原価法とは、当該事業年度終了の時において有する棚卸資産を取得価額をもって当該期末棚卸資産の評価額とする方法をいいます。

法人税法で定めている原価法による棚卸資産の評価方法には、個別法、先入先出法、総平均法、移動平均法、最終仕入原価法、売価還元法の6つの方法があります(法人税法施行令第28条第1項)。

次の前提条件を基に、各評価方法による期末棚卸資産の取得価額を算出してみます。

  • 期首商品=10円×10個=100円
  • 第1回当期仕入=20円×20個=400円
  • 第2回当期仕入=30円×20個=600円
  • 当期販売数量 =40個
  • 期末棚卸数量 =10個

1.個別法

個別法は、棚卸資産全てを個別に算出します。例えば期末商品が第1回当期仕入分4個、第2回当期仕入分6個で構成されている場合、次の通りです。

  • 期末棚卸高=20円×4個+30円×6個=260円

2.先入先出法

先入先出法は先に仕入れたものから先に売れるものと考えます。期末棚卸資産の取得価額は、最も後に仕入れた商品で構成されます。

  • 期末棚卸高=30円×10個=300円

3.総平均法

総平均法は次式で計算します。

  • 商品仕入単価=(100円+400円+600円)÷(10個+20個+20個)=22円
  • 期末棚卸高=22円×10個=220円

4.移動平均法

移動平均法では、棚卸資産を仕入れる都度、平均仕入単価を改定します。

  • 第1回当期仕入時の仕入単価=(100円+400円)/30個≒16.7円

次に、20個を販売した後、第2回当期仕入をしたものとした場合、次の通りです。

  • 第2回当期仕入時の仕入単価=(16.7円×10個+600円)/30個≒25.6円
  • 期末棚卸高=25.6円×10個=256円

5.最終仕入原価法

最終仕入原価法では、次の通りです。

  • 期末棚卸高=30円×10個=300円

6.売価還元法

売価還元法では、次のように算出されます。

  • 原価率=(期首商品+当期仕入高)/(当期売上高+期末棚卸資産の販売価額)
  • 期末棚卸資産=期末棚卸資産の販売価額×原価率

そこで、販売単価を50円とした場合、次の通りです。

  • 原価率=(100円+1000円)/(50円×40個+50円×10個)=44%
  • 期末棚卸高=50円×44%×10個=220円

2)原価法による評価と低価法による評価

法人税法施行令第28条第1項には、棚卸資産の評価方法として、次の2つの方法が規定されています。

  • 原価法(第28条第1項第1号)
  • 低価法(第28条第1項第2号)

原価法は前述の通り、期末棚卸資産を取得価額をもって当該期末棚卸資産の評価額とする方法をいいます。低価法は期末棚卸資産を原価法により評価した価額と当該事業年度終了の時における価額とのうち、いずれか低い価額をもってその評価額とする方法をいいます。

3)棚卸資産の評価方法の変更

法人税法施行令第30条第1項には、「内国法人は、棚卸資産につき選定した評価の方法を変更しようとするときは、納税地の所轄税務署長の承認を受けなければならない」と規定されています。例えば、先入先出法を総平均法に変更する場合や原価法による評価を低価法による評価に変更する場合、納税地の所轄税務署長の承認を受ける必要があります。

4)低価法採用後の処理

低価法により評価した場合において、翌事業年度終了の日において評価をする場合の当該棚卸資産の取得価額は、前事業年度終了の日における評価額ではなく、実際の取得価額を基礎として計算します。

以上(2019年10月)
(監修 税理士法人アイ・タックス 税理士 山田誠一朗)

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画像:photo-ac

中小企業も今こそ、SDGsを理解し、実践しましょう!〜CSRとは似て非なるもの、企業成長のために/岡目八目リポート

 年間1000人以上の経営者と会い、人と人とのご縁をつなぐ代表世話人 杉浦佳浩氏。ベンチャーやユニークな中小企業の目利きである杉浦氏が今回紹介するのは、SDGsビジネススクール「Start SDGs」を運営している株式会社グローバルイノベーションズの代表取締役である黒岩 賢太郎さんです。

 35℃を超える日々も多くあった今夏、それでもスーツの上着を着ている方々をたくさん見かける丸の内周辺。そこで、左胸の社章と、目につくのが、カラフルな色が散りばめられた【輪っか】、そうです、SDGsのピンバッジ。本当の意味をキチンと理解している方々がどれほどいるのか? そこは解りませんが、着実に浸透しつつあるのも事実、中小企業経営者に尋ねると『うちには関係ないよね〜』という返事も現状かと感じる次第です。

 そこで、中小企業になぜSDGsが今必要か? そこにフォーカスしたいと思います。

1 中小企業とSDGsについて

1)現状について

SDGsの認知度状況を示した画像です

日本における認知度、19%! 主要20カ国における平均が51.6%にかなり出遅れている現状をまず理解しておく必要がありますね。日本だけのお話ではなく世界的な潮流であり、世界共通言語になっていることをまず理解、19%の認知度の多くは大企業、実際380万社と仮定した場合の中小零細企業での現況は、

  • SDGsについて対応、アクションを行っている:1.2%→45,600社
  • SDGsについて対応、アクションを検討している:0.2%→7,600社
  • SDGsについて知っているが、特に対応はしていない:5.8%→22.04万社
  • SDGsという言葉を聞いたことがあるが内容は知らない:8.0%→30.4万社
  • SDGsについて全く知らない:84.2%→319.96万社

全く知らない会社が300万社を超えていることになること、またこの出遅れ感をなんとかしないといけないという課題感の大きさとともに、SDGsを指標にしたビジネスは中小企業にとって大きなチャンスが眠っている事を知らない会社が多すぎると黒岩さんは話します。

2)なぜ中小企業に必要か? を知る

滋賀銀行における【SDGs融資】についてのリリースを示した画像です

上記は、昨年日経新聞でも大きく取り上げられた、滋賀銀行における【SDGs融資】についてのリリースです。これは国内金融機関初の事例であり、金融面でのSDGsの大切さがクローズアップされた事象のスタートとなります。金融関係会社はほぼSDGs宣言をしている状況下において、今後ますます増えてくる事が予想されます。

もう少し大局的な目線でお伝えしますと、大企業と繋がりがある、自社の商売の根幹をなす中小企業も少なくないと思いますが、ほぼ全ての大企業がなぜSDGsに取り組むのか? SDGsを真正面から取り入れようとしているそこも大切ですし、そう本心から実践に向かっている会社も存在します、その一方で、大企業と機関投資家の関係も見過せません。

ESG投資をご存知でしょうか? 「ESG投資とは、環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視・選別して行なう投資のことです。ESG評価の高い企業は事業の社会的意義、成長の持続性など優れた企業特性を持つと言えます」。そこに、世界の投資家が重視し始めているという状況があります。「世界最大規模の公的年金基金もESG投資を採用しており、ESGを考慮した運用は、今後重要度が高まると考えられます」。実際、「世界最大の年金基金であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)では2017年に1兆円規模のESG投資を2017年に開始。今後3兆円まで増やす予定」とのこと(以上、大和証券HPより引用)。

大企業の株価がこの投資により大きく変化するリスク、そこから事業の大転換、変革も今後確実に起こってくる、その変化対応のためにも中小企業がSDGsを理解し、時代の先を読み解く力が必要であると黒岩さんは強く語ります。この変化を知ることで自社の先々の事業のあり方、あるべき姿を認識するキッカケに繋がります。

CSRもとても大事ではありますが、SDGsは事業の継続、発展、収益化にそもそも直結するものであり、過去にあったISOブームの次元が高いヴァージョンですとも黒岩さんは話します。

このゴールにおいて自社事業と関連する17のゴールを事業に落とし込むことで、事業の発展に繋げていく。中小企業におけるその具体的な事例について、黒岩さんにお聞きしました。

1. フロムファーイースト株式会社[第1回SDGsビジネスアワード大賞受賞企業]

使われれば使われるほど、売れれば売れるほど環境改善に繋がり、収益から森林を増やす100%無添加・自然素材の化粧品を販売。

米ぬかや小麦ぬかなど廃材になりそうな材料で製造し、皮膚にも優しく、有益微生物が排水までも綺麗にする商品を開発。

このSDGsビジネスであったからこそ、大手百貨店を中心に約800店舗の取り扱いへと拡大している。

2. 株式会社エコシステム[第2回SDGsビジネスアワード大賞受賞企業]

大量生産・大量消費型社会が生んだ産業廃棄物の瓦。形状の特異性などから最終処分場でも受け入れを敬遠されがちであり、処分費も高額になってきている中、瓦廃材を粉砕し、透水性特殊舗装製品や複合コンクリート製品としてアップサイクル商品を開発。

世界共通言語のSDGsビジネスだからこそ、今では南米との取引も加速している。

3. 会宝産業株式会社[第2回ジャパンSDGsアワード「SDGs推進副本部長(外務大臣)表彰」受賞企業]

自動車解体業という枠を超えて自動車リサイクルを事業に。車輌仕入れから解体・部品管理・販売までを一元管理できるシステムを屋台骨に、世界約90カ国とネットワークを形成し、ものをつくるのが「動脈産業」で、つくったものを循環させるのが「静脈産業」とするならば静脈産業のパイオニアとして地球環境と世界経済のために、その輪を広げています。

※上記だけではなかなか伝わらないと思います。上記企業のHPなどを是非ご覧くださいませ。

2 黒岩さんがSDGsを取り組むようになったワケ

1)自身の事業への疑問

阪口氏との出会いから5年、別の事業を経営しつつ勉強し、このSDGsビジネス普及に関する取り組みを決心し、行動に移して1年ほどという黒岩さんですが、なぜこの短期間で事業化に踏み込んで行えたのか。その部分についてお聞きしました。

長らくセールスプロモーションの業界に身を置いてきました。クライアントが喜んでもらうことを主眼にやってきましたが、自分の事業が【売り込み】に終わっている、例えばツールの販売に終わっている。お金の世界に喘いでいる自分に息苦しさを感じていました。未来に繋がる事業を模索している自分がいたと黒岩さんは話します。

2)阪口氏、平本先生との出会い

その頃に私の紹介で、黒岩さんにお繋ぎしたのが阪口竜也さんでした。阪口さんについてはこちらの記事をご覧ください(出典 2017年7月アナザーライフの記事より)。阪口さんは2017年の第1回SDGsビジネスアワード大賞の受賞者であり、私とは15年近いお付き合いです。当時のリリースはこちらです。

100年後の地球や子供達のことを本気で考え、実行している阪口さんに出会って、大きな衝撃だったと話す黒岩さん、自分がやってきたことで未来に繋がる事業はなにか? と考えた時にいろんな事業アイデアが生まれてきたそうです。

上記の資料で言うと3番(SDGsの考えを発展させる)、4番(SDGsを実践する)この部分が、黒岩さんが思いついた部分、その実現を話し始めた頃に阪口さんが、日本の最先端、早期のうちからSDGsに取り組んで来られた、金沢工業大学の平本先生を紹介してもらって、直接指南をいただけることになったそうです。平本先生の研究室のHPはこちらです。

そこで先生から、SDGs市場はこれから形成の段階にはいっていくところ、現在は、【理解】と【定義】が必要、市場を創造する前の段階、啓蒙活動をしていく必要性を促されたそうです。

そこから、黒岩さんは自身でSDGsビジネス普及に関する学びを平本先生から直接受け、イベントにも積極的に参加、昨年の12月からSDGs普及に関する講座、スクールの開講に向けて一気に舵を切りました。それから3カ月で準備も完了しスクールの開始へ。このスピード感で準備できたのはまさに元々本業であった、セールスプロモーションの仕事をやってきたからだそうです。

例えば、ある頭髪美容系メーカーにおいては、美容サロンへの教育ツールの開発、社内イベントの実施、美容師向けのカットコンテスト、Webプロモーションと、セールスプロモーションと言っても多岐にわたる経験、実績があってのこと、その経験がこのスクールの立ち上げに見事に活きているそうです。

3 SDGsビジネスプログラムをスタートして、そして今後

1)SDGsビジネスプログラム募集開始から見えてきたこと

最初にこちらの動画をご覧ください。

この動画は全国6箇所でスタートしたSDGsビジネスプログラムでの実際の状況です。第1期目の応募関係の数値から見えてきたこと。問い合わせ社数439社、申込者数107社うち大企業が12社(大企業の中には世界に名だたる有名ブランド、ナショナルブランド企業も参加しています)、残りの95社が中小企業とのことです。全国各地からの申込みがあり、大きな広告費も掛けていない中でのこの反応には黒岩さん自身がびっくりしたそうです。さらにびっくりするのは、中学生や高校生の発言が参加する大人以上に真剣にこのSDGsの取り組みへの理解と実践について考えていること。学生さんのプレゼンから参加する大人達の表情、スクール参加への意気込みも変わり真剣さもましていったそうです。面白いですね(学生さんの参加は無料で対応しているそうです)。

加えて、平本先生のプログラムが圧倒的であることが大きいとも黒岩さんは語ります。単純な座学のみのスタイルではなく【自発的】にどう実践するか? そこに持ち込める特殊の手法を用いたワークショップ形式の内容となっていること。そこが大きい。バックキャスト・トレードオフ・ボーダレス・トリプルボトムラインなどSDGsならではの新規事業企画要素を取り入れていたりしています。面白いことに、SDGs講師業の方も受講にきているという事実があるのは、圧倒的である事を物語っているのではないかと思います。

更にはこの「Start SDGs」はスクールの域を超えてマルチステークホルダーパートナーシップの形成が起こりつつあり、既に受講者企業同士で連携や新会社設立の話にもなってきているそうです。

2)今後の展開について

第1期目のプログラムの実施から、次への展開も見えてきた黒岩さんに今後について聞きました。

今回は座学、ワークショップによる【通学制スクール形式】で実施していますが、誰でもどこにいてもいつでもeラーニング形式でSDGsビジネスを学べる【オンラインスクール】、企業ごとに個別でスクール対応をする【社内実践スクール】、企業ごとに、社員と会社のエンゲージメントを高める側面からや働き方改革の文脈でも【社内浸透イベント】、企業がSDGs宣言を展開し、ブランディング広報・PRを具体的に行動できるように【宣言企画】や【宣言ツール製作】のお手伝いを行っていくそうです。

また、小学校でも今年からSDGsの授業が義務化されたこと、今後中学校、高校、大学へと教育プログラムの中でマスト化していくことに対応するため、【教育者向けプログラムの開発】を行い、今年の11月頃には実施に移りたいと話します。加えて、まだまだ遅れている、日本の女性社会活躍問題、男性の意識改革も含めて女性向けのプログラム開発も来年1月スタートに向けて準備中だそうです。

SDGsの実践のためにも、阪口さんのような、事業そのものがSDGsと関連する事業者、SDGsの取り組みを加速できる協力事業者とも連携していく構想とともに、学生や子供達がもっとビジネス社会と関われる機会の実現に向けた【マッチングプラットフォーム兼オンラインサロン】も具現化しようとしています。

過去に培ったセールスプロモーションの力量を思う存分、将来世代のために、未来創造のために役立てていこうとされています。私も心から楽しみにしています。

最後に黒岩さんから一言、想いを

私は、日本とともに世界を変えられると信じて努力しています。
次世代を担う子供達の100年後の未来を守れると。
SDGs…これ程までに一つのキーワードのもとに人々が動く事象があったでしょうか。
SDGsの重要な点は、ビジネスを通じて様々な社会課題を解決していくという事です。
誰でも変革者になれます。
SDGsを通じて同じ志を持った人は全て同志になります。
これまで出会わなかった、交えなかった人達と行動を共にする事ができます。

はじめてSDGsを知った人の中には、貧困をなくそうと聞いて「いやいや海外の話で、日本はないでしょ?」と思われる人もいるかもしれません。
しかし、日本の子供の7人に1人が貧困といわれています。
親の都合で1人で食事をとる子供も貧困です。
「仕事だから仕方ない」で本当に良いのでしょうか。

他にも、熱波・寒波・大規模洪水・高温少雨など日本をはじめ世界各地で深刻な災害をもたらしている気候変動など、様々な社会課題もあります。
ちなみに、世界最大手の保険会社であるアクサのCEOは「今後、世界の平均気温が4℃上昇したら損害保険ビジネスは崩壊する」と宣言しています。
「自分は関係ない」で本当に良いのでしょうか。

改めて、なぜこの事業に取り組むのか。
私は、SDGsを指標として実践に移せるビジネスだからこそ、日本とともに世界を変えられると信じているからです。

その想いの中で、
金沢工業大学 経営情報学科・SDGs推進センターの平本先生と出会いました。
平本先生はSDGsをビジネスに落とし込むロジックと手法をお持ちになられていました。
このロジックと手法を、もっと多くの人に知ってもらいたいという想いが湧き上がりました。

そして、昨今SDGsの広まりに伴って、SDGsのコンサルタントと銘打って、確かな知識・経験がない方による表面的な表現だけの支援が目立つようになったと各所から声が聞こえるようになりました。
こうした状況を否定して新たな対立構造を生み出すのではなく、実際の社会変革の経験に基づいた知識・経験の共有が今後は特に必要であると考え、SDGsを確かな知識のもとに実践に移していける人物を各地で育てていくべく、本スクール化について平本先生に監修いただくとともに企画・実行する運びとなりました。

そして、SDGs・社会課題に対する有識者への登壇依頼が殺到している状況下において、休日も全く取得できずにご家族と過ごすこともままならない程に多忙な処遇の解決。
そして、確かな知識と経験を積んだ学生に対する無償活動支援の強要を阻止すると共に、当スクールでは選抜された学生・若者に対しての受講料は無償化し、次世代を担う希望に社会で活躍できるステージを提供していくこと、女性の活躍への正当なる評価実現も当スクールの運営目的としました。

学ぶだけのスクールの域を超え、SDGsを指標としたその先にある「実践」を第一に弊社及び私は活動して参ります。

●SDGsビジネススクール「Start SDGs」
https://www.startsdgs.com/

以上(2019年9月作成)

事業承継に種類株式を活用するための手続き

書いてあること

  • 主な読者:種類株式について知りたい経営者
  • 課題:どのような種類株式があるのか分からない
  • 解決策:本稿では種類株式の概要や、発行手続きについて紹介するので参考にする

1 種類株式の概要

株式会社は、剰余金の配当、残余財産の分配、株主総会において議決権を行使することができる事項など、会社法に定められている事項について異なる定めをした、内容の異なる2以上の種類の株式を発行することができます(法第108条第1項。本稿の参照条項は全て会社法の条文であり、「法」と表記しています)。

内容の異なる2以上の種類の株式を発行する場合、その各株式を「種類株式」と呼びます。法第108条第1項には、種類株式の内容として定めることのできる事項について、次章で示す9つの事項が掲げられています。

種類株式を活用することにより、株主から出資を受けながら、経営権限の分散防止を図ることができます。また、1つの株式には2以上の内容を付することができます。例えば、1つの株式について、剰余金配当優先(第1号)と議決権制限(第3号)の内容を付することができます。

2 9種類の種類株(法第108条第1項)

1)剰余金の配当(第1号)

剰余金の配当について、異なる内容を定めた株式をいいます。

2)残余財産の分配(第2号)

会社解散後の清算段階における残余財産の分配について、異なる内容を定めた株式をいいます。

3)株主総会において議決権を行使することができる事項(第3号)

議決権制限株式に係る種類株式の規定です。議決権制限株式とは、株主総会で決議する全部または一部の事項について議決権を行使することができない株式をいいます。なお、公開会社では一部の経営者等が議決権制限株式を利用することで、少数の議決権で会社を支配する状況を生み出すことは好ましくないとの観点から、議決権制限株式数が発行済株式総数の2分の1を超えた場合、当該会社は直ちに2分の1以下にするための措置を講じる義務が課せられていますので注意が必要です(法第115条)。

4)譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要すること(第4号)

譲渡制限株式(法第2条第17号)に係る種類株式の規定です。譲渡による株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定めを設けている場合における当該株式をいいます。会社法では譲渡制限性は株式の種類の1つとして位置付けられています。なお、一部の種類の株式のみ譲渡制限がある会社であっても、会社法上の公開会社になり、非公開会社に比べて厳格な規律に服することになる点には注意が必要です(法第2条第5号)。

5)当該種類の株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること(第5号)

取得請求権付株式(法第2条第18号)に係る種類株式の規定です。取得請求権付株式とは、株主が会社に対して保有する株式の取得(買取)を請求できる株式をいいます。この場合、株主は、定款に定められた期間内に請求することで、定款の定めに従い、対価を得ることになります(法第108条第2項第5号、第107条第2項第2号)。

6)当該種類の株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること(第6号)

取得条項付株式(法第2条第19号)に係る種類株式の規定です。取得請求権付株式は、株主が請求できるものであったのに対し、取得条項付株式は、一定の事由が生じたことを条件に会社側が当該株主の保有する株式を取得することができる株式です。この場合、会社は、定款に定められた事項が生じたこと等を株主等に通知・公告(法第168条第2項および第3項、法第169条第3項および第4項、法170条第3項および第4項)し、定款の定めに従い対価を支払うことになります(法第108条第2項第6号、第107条第2項第3号)。

7)当該種類の株式について、当該株式会社が株主総会の決議によってその全部を取得すること(第7号)

全部取得条項付種類株式に係る規定です。全部取得条項付種類株式とは、会社が株主総会の特別決議(法第171条第1項、第309条第2項第3号)によりその全部を取得することができる種類の株式をいいます。この場合、定款で発行可能種類株式総数と取得対価の決定方法等を定めておく必要があります(法第108条第2項第7号イ)。

8)株主総会において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とするもの(第8号)

拒否権付株式、いわゆる「黄金株」に係る種類株式の規定です。株主総会等の決議に加え、種類株主総会の決議があることも必要とする株式をいいます。

9)当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役又は監査役を選任すること(第9号)

取締役等の選任に係る種類株式の規定です。特定の種類株主総会決議により、取締役等を選任することが定められた株式をいいます。ただし、取締役等の選任に係る種類株式は、委員会設置会社および公開会社は発行することができません(法第108条第1項但書)。

3 種類株式を発行するための手続き

1)定款の変更

これまで種類株式を発行していない株式会社が新たに種類株式を発行するためには定款を変更する必要があります。定款を変更するためには、株主総会の特別決議が必要です。

特別決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(3分の1以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成により成立します(法第466条、第309条第2項第11号)。

2)定款に記載すべき内容

種類株式を発行する場合に、定款で定める事項は法第108条第2項で次の通り定められています。発行可能種類株式総数および発行する各種類の株式の内容は登記事項です(法第911条第3項第7号)。定款を変更した際には、定款変更決議の効力発生日から2週間以内に、本店所在地の管轄法務局に変更の登記申請をする必要があります(法第915条第1項)。

【法第108条第2項】
株式会社は、次の各号に掲げる事項について内容の異なる二以上の種類の株式を発行する場合には、当該各号に定める事項及び発行可能種類株式総数を定款で定めなければならない。
 一 剰余金の配当 当該種類の株主に交付する配当財産の価額の決定の方法、剰余金の配当をする条件その他剰余金の配当に関する取扱いの内容
 二 残余財産の分配 当該種類の株主に交付する残余財産の価額の決定の方法、当該残余財産の種類その他残余財産の分配に関する取扱いの内容
 三 株主総会において議決権を行使することができる事項 次に掲げる事項
  イ 株主総会において議決権を行使することができる事項
  ロ 当該種類の株式につき議決権の行使の条件を定めるときは、その条件
 四 譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要すること 当該種類の株式についての前条第二項第一号に定める事項
 五 当該種類の株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること 次に掲げる事項
  イ 当該種類の株式についての前条第二項第二号に定める事項
  ロ 当該種類の株式一株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の他の株式を交付するときは、当該他の株式の種類及び種類ごとの数又はその算定方法
 六 当該種類の株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること 次に掲げる事項
  イ 当該種類の株式についての前条第二項第三号に定める事項
  ロ 当該種類の株式一株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の他の株式を交付するときは、当該他の株式の種類及び種類ごとの数又はその算定方法
 七 当該種類の株式について、当該株式会社が株主総会の決議によってその全部を取得すること 次に掲げる事項
  イ 第百七十一条第一項第一号に規定する取得対価の価額の決定の方法
  ロ 当該株主総会の決議をすることができるか否かについての条件を定めるときは、その条件
 八 株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会、清算人会設置会社にあっては株主総会又は清算人会)において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とするもの 次に掲げる事項
  イ 当該種類株主総会の決議があることを必要とする事項
  ロ 当該種類株主総会の決議を必要とする条件を定めるときは、その条件
 九 当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役又は監査役を選任すること 次に掲げる事項
  イ 当該種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役又は監査役を選任すること及び選任する取締役又は監査役の数
  ロ イの定めにより選任することができる取締役又は監査役の全部又は一部を他の種類株主と共同して選任することとするときは、当該他の種類株主の有する株式の種類及び共同して選任する取締役又は監査役の数
  ハ イ又はロに掲げる事項を変更する条件があるときは、その条件及びその条件が成就した場合における変更後のイ又はロに掲げる事項
  ニ イからハまでに掲げるもののほか、法務省令で定める事項

なお、種類株式発行会社がある種類の株式の発行後に定款を変更して当該種類の株式に取得条項を付し、または取得条項の内容を変更する場合(法第108条第1項第6号)には、株式会社が実際に取得条項付株式を取得する際に、株主保護のため、当該株主全員の同意が必要です(法第111条第1項)。

4 事業承継で後継者が経営権限を持つ方法

1)考えられる方法

種類株式発行会社ではない非公開会社で、現に複数の株主が既発行の株式を保有している状況で、後継者に経営権限を集中させるための方法は種類株式によるものに限られません。種類株式によらない方法としては、例えば「新株発行による方法」があります。

一方で、種類株式を活用することにより、後継者以外の株主による議決権を制限する方法としては、「既発行株式の内容変更による方法」「全部取得条項付株式による方法」「取得条項付株式による方法」などがあります。

以降で非公開会社を想定した上記の方法を紹介しますが、これを読むとオーナー経営者および後継者が経営権限を持つための方法が複数あることが分かります。どの方法が最も適切かは会社の規模や株主構成、または株主の関係などの要因によって異なります。そのため、実際には、弁護士・公認会計士・税理士などの専門家の助言を得ながら進める必要があります。

2)新株発行による方法

当該株式会社が新株を発行し、それを後継者に対して割り当てます。後継者が他の株主が保有する議決権の合計を上回る株式を保有する状態にすれば、結果として後継者が過半数または3分の2超の議決権を持つことになります。

新株を発行する際には、株主総会で募集事項を決定し、募集手続きを取らなければなりません。

1.募集事項の決定

会社が株式を発行する場合(募集株式を引き受ける者の募集をする場合)、募集する株式の数や、払込価額、払込期日など当該募集に関する事項(以下「募集事項」)を決定しなければなりません(法第199条第1項)。この募集事項の決定は、原則として株主総会の特別決議によらなければなりません(法第202条第3項第4号、第309条第2項第5号)。

2.募集手続き

会社は募集に応じて募集株式の引受けの申込みをしようとする者に対し、募集事項などの通知をしなければなりません(法第203条第1項)。

引き受ける者の申し込み(法第203条第2項)を受け、会社は申込者の中から割り当てを受ける者を定め、かつ、その者に割り当てる募集株式の数を定めなければなりません(法第204条第1項)。募集株式が譲渡制限株式である場合には、その決定は原則として株主総会の特別決議によらなければなりません(法第204条第2項、第309条第2項第5号)。

また、会社は払込期日(期間を定めた場合はその期間の初日)の前日までに、申込者に対し、当該申込者に割り当てる募集株式の数を通知しなければなりません(法第204条第3項)。

なお、これらの規定は、募集株式を引受けようとする者がその総数の引受けを行う契約(総数引受契約)を締結する場合は適用されません(法第205条)。

募集株式の引受人による出資の履行により、当該引受人は募集株式の株主となります(法第209条)。なお、金銭ではなく現物で出資された場合、出資された財産等の価額が不足する場合には取締役等の填補責任が定められていますので注意が必要となります(法第213条)。

3.ポイント

新株発行による方法は、手続きが比較的シンプルという利点がありますが、後継者が発行される新株を引き受けることができるだけの資金力を持っていることが必要です。

3)既発行株式の内容変更による方法

後継者以外の株主が保有する株式を議決権制限株式に内容変更する方法です。手続きは次の通りです。

1.議決権制限株式を発行する旨の定款変更

株主総会の特別決議により、議決権制限株式を発行できる旨の定款変更を行います(法第466条、第309条第2項第11号)。

2.議決権制限株式に変更される各株主の同意

上記の定款変更の他、議決権制限株式に変更される各株主の同意も必要と解されます。

3.ポイント

上記の方法は、議決権制限株式に変更される各株主の同意が必要であるため、実際にこの方法が活用できるケースは極めて限定的であるといえます。

4)全部取得条項付株式による方法

当該株式会社が、株主が保有する株式を全部取得条項付株式に変更した上で株式を取得し、その対価として議決権制限株式を交付する方法です。

1.議決権制限株式を発行する旨の定款変更

株主総会の特別決議により、議決権制限株式を発行できる旨の定款変更を行います(法第466条、第309条第2項第11号)。

2.既発行株式を全部取得条項付株式とする旨の定款変更

株主総会の特別決議および種類株主総会の特別決議(法第111条第2項)により、既発行株式を全部取得条項付株式とし、取得対価として議決権制限付株式を交付する旨の定款変更を行います。

3.議決権制限株式の交付

全部取得条項付株式の対価として、従前の持ち株比率に応じて議決権制限株式を交付します。交付に先立ち、取得対価の内容や割り当てに関する事項等を株主総会の特別決議で決定する必要があります(法第171条、第309条第2項第3号)。

4.株式の処分

当該株式会社が全部取得条項により取得した自己株式を、現オーナー経営者に割り当てることにより処分します。それによって、現オーナー経営者は議決権を有する株式を独占することができます。自己株式の処分は新株発行と同じ手続きが必要とされているので、法第199条第1項により募集事項を定め、現オーナー経営者に株式を割り当てます。なお、この募集事項の決定は、原則として株主総会の決議によらなければなりません(第202条第3項第4号、第309条第2項第5号)。

5.ポイント

全部取得条項付株式による方法は現オーナー経営者の手元に潤沢な資金がなくても実行できることが特長です。一方、手続きが煩雑で、全部取得条項付株式への内容変更に反対の株主には買取請求権が認められています(法第116条第1項第2号)ので、当該株式会社には買取資金を準備しておく必要がある場合があります。また、現オーナー経営者の持ち株数が議決権の3分の2に達していない場合、オーナー経営者には不足する株式を取得するための資金が必要となります。

5)取得条項付株式による方法

株主が保有する株式を当該株式会社がいったん取得し、対価として議決権制限株式を交付する方法です。

1.議決権制限株式を発行する旨の定款変更

株主総会の特別決議により、議決権制限株式を発行できる旨の定款変更を行います。

2.既発行株式を取得条項付株式とする旨の定款変更

既発行株式を取得条項付株式に転換することは、一定の事由が生じた際にいわば強制的に当該株式会社が株式を取得することになるため、株主全員の同意を得ることが必要とされています(法第110条)。

3.株式の取得と議決権制限株式の発行

あらかじめ定款に定めた日の到来や取締役会の決議など、一定の事由が生じたことによって当該株式会社が取得条項付株式を取得し、その対価として議決権制限株式を発行します。

4.ポイント

取得条項付株式による方法は、株主全員の同意が必要であるため、実際にこの方法が活用できるケースは極めて限定的であるといえます。

以上(2019年9月)
(監修 TMI総合法律事務所 弁護士 池田賢生)

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画像:unsplash

任されたいのに指示待ちって、どっちなんだ?/若手社員が採用できる、辞めない職場づくりのヒント(2)

1 すぐ辞めてしまう若者。どのように接すればいいの?

すぐ答えを欲しがる、何がモチベーションか分からない、怒るとパワハラと言われる、急に辞めてしまう……。新入社員や若者とどのように接すればいいのか、悩んでいる人も多い時期ではないでしょうか。本稿では、拙著『なぜ最近の若者は突然辞めるのか』から一部抜粋し再構成の上、悩めるオトナを日々のストレスから解放するためのヒントを探ります。

2 なんでもテンプレ問題

今回は、「仕事なんでもテンプレ化問題」を取り上げます。

最近の若い子って、とにかく答えを知りたがる。この言葉が、マネジメント層からよく聞こえてきます。まずは自分で考えてみてほしいのに、真っ先にテンプレートやマニュアルを欲しがる。確かにそんな若者が増えているように感じます。

オトナ世代と若者の残念なすれ違い事例を紹介しましょう。

ある中堅食品会社の商品開発部。この会社の商品開発部は花形部署であり、幾つかのチームがそれぞれ新商品の開発を巡りしのぎを削っています。「女性に喜ばれる商品開発」を担うチームでリーダーを務めている木村係長(女性・40歳)の下に、新人の藤原さん(女性・22歳)が新しく配属されてきました。

木村係長が、ある案件の市場調査を藤原さんに頼んだときのこと。

  • 「市場調査って初めてなんですけど、どういうデータを調べたらいいんですか?」
  • 「うーん、藤原さんが必要だと思うデータでいいよ。まずは自分で考えてみてよ」
  • 「え、ああ、はい……。そしたら、過去に作った調査書類のテンプレみたいなの、どこかにないですか?」
  • 「あると思うけど、別に形が重要なわけじゃないから、まずは簡単にでも自分で作ってみてほしいの」

こんな会話が繰り広げられていました。

3 まず自分で考える習慣をつけてほしいのに……

木村係長の言い分はこうです。

  • 「私が若い頃なんて、今ほど丁寧に仕事を教えてくれることはなかった。先輩のやり方を見て盗んでいくのが当然だし、振られた仕事を自分なりになんとかやり遂げて、それで認めてもらいたいって気持ちのほうが強かったけど。若い子は言われた通りの作業はやりがいがないとか言うくせに、考えてと言ったらテンプレがほしいと言う。
  • 育てていくことも私の仕事だから、なるべく考えさせようとしているのが、なぜ伝わらないんだろう」

しかし藤原さんにも言い分があります。

  • 「答えがあるなら、まずそれを参考にするほうが無駄がなくていいと思うんだけど。考えてって言われて考えて出したこともあるけど、結局いろいろ直されて木村係長の答えになったじゃない。その間の私の時間と手間ってなんなの? 考えることが大事なのは分かる。だけど、それとテンプレを使わないことは違う話じゃない? 考えなくていいところは省いて、考えるべきところに時間を割くべきだと思う」

自分で考えた結果、結局いつもと同じ答えになるくらいなら、考えるだけ無駄。そうではなくて、自分の考えた結果が成果物にちゃんとつながることだけに集中したい。これが今どきの若者の仕事観なのです。

4 GAFA世代の思考回路

まさに超合理的。そんな若者のバックボーンにはテクノロジーがあります。今の若者は、スマホを持ち歩き24時間常時接続、フェイスブックで友達とつながり、分からないことがあればすぐにググる。参考資料が必要になれば、アマゾンでポチる。いわゆるGAFA(ガーファ)の申し子です。GAFAとは、グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルの4つの主要IT企業の頭文字を取って総称する呼称。これらのデジタルテクノロジーと若者がタッグを組んでしまえば、オトナが培ってきた経験や知識を、軽々と飛び越えていくということです。

テンプレ問題の根っこは、ここにあります。どれだけ時間と経験を重ねて渾身(こんしん)の力で企画書を作り上げたとしても、そのノウハウはテクノロジーで簡単にシェアできてしまいます。先人がたどり着いた答えをシェアすることは当たり前。これが若者です。

逆に、積み上げた知識が100あっても、テクノロジーを使いこなす力が10しかなかったら、若者から見ると「仕事ができない人」と同義だったりするわけです。自前で考えて知見として蓄積していくことに意味を見いだしません。

5 とにかく時間の無駄が許せない

20代の若手社員に何が一番のパワハラかを尋ねたら、意外な答えに最も多くの賛同が集まりました。「何十分も説教されるのが一番嫌かも。時間を奪われるのが最悪」

てっきり、暴言を浴びせられたり怒鳴られたりする説教がパワハラかと思っていたのですが、それよりも“時間を奪われる”ことをハラスメントだと感じると言うのです。無茶な仕事を振られるのも、理不尽な指示を受けるのも、結局は時間が無駄になるのが一番のダメージだと、彼らは考えているのです。

ある新聞記事によると、GAFA断ち(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルのサービスを使わないこと)をして仕事をするという実験を3週間行ったら、仕事の生産性が3分の1になってしまったとのこと。テクノロジーの発達と一般化が、合理的で生産性への意識を高めているのは間違いありません。そんな状況下で、若者は時間に対してとてつもなく大きな価値を見いだすようになってきたのです。とにかく何事も最短距離でゴールしたい。そのために、どうやって時間を生み出すか、その時間で何を生産するか。「コストパフォーマンス」ならぬ「タイムパフォーマンス」を常に追求しているのです。だからビジネスでもメールよりLINEなどのチャットツールを好みます。メールでの定型的な「お世話になっております」は無駄中の無駄。「了解しました」を「りょ」だけで済ませる時短派もいるくらいです。

6 働き方改革ともシンクロ

そんな若者の仕事価値観は、昨今の働き方改革ともフィットしています。その文脈でいけば、むしろ早く帰ることを強要されて戸惑っているオトナ世代よりもはるかに進歩的です。私が聞いた若者の時間に対するコメントを幾つか紹介しましょう。

  • 「親の世代は長時間働くことを正当化している」
  • 「仕事の時間と自分の時間を分けたいから、そこに踏み入ってこられるとパワハラだと思う」
  • 「同じ量の仕事を、昔より短い時間でやらないといけないから、そこは困る。昔の人はいくらでも時間をかけられたが今は違う」

定時に帰りたがるなどといわれることもありますが、若者たちも働きたくないわけではありません。それよりも若者たちには、オトナ世代には仕事に費やせる時間がたっぷりあったけど、自分たちは違うという感覚があるようです。テクノロジーがもたらした生産性至上主義の側面もありますが、オトナが想像している以上に忙しい毎日を送っているという事情もあります。何百人とか1000人超というフォロワーとつながり、幾つものコミュニティーに所属して、マルチに活動している若者は、ワーク以外のライフの時間に大きな価値を置いているのです。

7 「8割テンプレ・2割余白」で考えさせる

とはいえ、若者に仕事を任せることが成長につながるというマネジメント側の思考も間違いではありません。そもそも若者は、「すぐに答えを欲しがる」くせに「単純作業はやりたくない」と考えています。任されたいのか指示してほしいのか、どっちなんだ? と言いたくもなりますが、基本的に、仕事は任されるほうがやりがいがあると考えています。あくまで無駄を省きたいわけで、成長欲求は強めですから。

では、いったいどうすればいいのか。

結論から言うと、「8割テンプレ・2割余白」で仕事を任せるくらいがベストです。まず型を教えてあげることはマスト。書類のテンプレやひな型のようなものを渡してあげましょう。そして、それを完全流用すれば間違いはないし、ちょっと自分なりに工夫しても大外れにはならないよ、と示してあげます。そこが2割の余白です。無駄なやり直しが大嫌いな若者に、答えを示しつつ工夫する余地も与えるという作戦です。

SNS村社会での若者には「守破離」の感覚が備わっているといわれます。例えばあるコミュニティーに属すとき、最初は「型」にはまろうとするそうです。例えば、自撮りが流行だとすれば、自分も自撮りでアップします。これが守破離の「守」。そしていったん型にはまってから、ちょっとだけ独自の使い方を開発します。これが守破離の「破」。それが広まってブームになると、自分がコミュニティーを立ち上げる。これが守破離の「離」。

要するに、彼らが欲しがっている答えというのは、ベースの「型」なのです。言う通りにしろと命令されたいわけではありません。難しく考える前に「8割テンプレ」は提供してしまいましょう。2割の余白が、若者にとっては貴重なアイデンティティーの発露。どう使って型を破るかは若者次第です。さらにそこからイノベーションが生まれたら、それはまさに離の境地。オトナにとってももうけものです。

いかがですか。若者の背景にある価値観や行動原理を知ると、少しは彼らに近づける気がしませんか。それが若者攻略の第一歩です。そしてうまくチカラを引き出すマネジメントにつなげてください。

以上(2019年9月)
(執筆 平賀充記)

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画像:NDABCREATIVITY-Adobe Stock

【朝礼】「他責」の自分に気付いた管理職こそが成長できる

おはようございます。今朝は管理職の皆さんに集まってもらいました。変化の激しい時代、今後の我が社の成長には、管理職の皆さんの頑張りが欠かせません。そこで、私から皆さんにお伝えしたいことがあります。耳の痛い話かもしれませんが、これは私から管理職へのエールです。

先日、大学生時代の友人たちと食事をしました。皆、それなりのポジション、つまり、ある程度の権限を持って組織を回す管理職クラスになっていました。彼らは恐らく、並々ならぬ努力の末、今のポジションを手に入れたのでしょう。私は、そんな彼らをとても尊敬しています。

一方で、一つ気になったことがありました。それは、彼らが口々に自分ではなく、「若手」のことを語っていたことです。内容はさまざまで、「若手にもっと頑張ってほしい」といったものから、「若手の教育にもっと時間とコストをかけるべき」といったものまでありました。

私は彼らの意見自体はもっともだと思いましたが、一方で、「そういう皆さんはどうなの?」と疑問に感じました。若手に頑張れと言うのなら、「管理職はその何倍も頑張り、なおかつ若手が頑張れる環境をつくっているのだよね?」とか、若手の教育の話をする前に、「管理職は経営者から見て十分に勉強しているのか?」と思うのですが、彼らから「自分」に関する発言は出てきませんでした。つまり、彼らの話は「他責」に終始し、「自責」の要素が欠けてしまっていたのです。

この話は、若手のことだけではなく、自分の上司に対しても同じことです。管理職が、「うちの役員は頭が固くて……」とため息をつく姿をよく見かけます。それはそれで一つの感じ方ですが、やはり思うのは、「そう言うあなたは、何をしているのですか?」ということなのです。

管理職は情報への感度を高め、これだというものについてトライ&エラーを繰り返しながら、実行しなければなりません。権限とは、そのためのものです。しかも、今は環境の変化が激しく、昔と同じやり方では、ほぼ通用しません。ダーウィンの「唯一生き残るのは、変化できる者である」という言葉を、今まさに管理職は肝に銘じるべきでしょう。厳しい言い方ですが、多くの管理職は、自分の上司や部下のことを、あれこれ批判している余裕はないはずです。上司や部下の意見に流されて、都度ポジションを変えることも論外です。

管理職が下から上司を仰ぎ、上から若手を見る時代は、もう終わります。皆さんはこれまでよりも簡単に上を追い越すことができますし、逆に、簡単に下に追い越されてしまいます。今すぐ、自分の権限で具体的な行動を起こさなければならないのです。もしかすると、「失うものが多いと思っている」ことが他責につながっているのかもしれません。しかし、誠実に活動している限り、皆さんがビジネスで失うものは何もないのです。たとえ失敗しても、次で取り返せばよいことです。皆で、さらなる成長を目指しましょう。

以上(2019年9月)

pj16972
画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】ラグビーに学ぶ。君たちは、勝ち方を知っているか

もうすぐ、ラグビーワールドカップが、この日本で始まります。ラグビーファンはもちろん、ラグビーをよく知らなくても、4年前のワールドカップで、日本代表が強豪南アフリカ代表を倒したあの劇的勝利は、記憶に残っていることでしょう。

今回の日本代表の活躍も、とても楽しみです。

4年前、日本代表を率いていたのは、エディ・ジョーンズ氏です。彼のやり方には賛否両論ありそうですが、24年ぶりにワールドカップで白星を挙げ、南アフリカ戦をはじめ、3勝という輝かしい成績を収めたのは誰もが認めるところです。

当時の日本代表の快進撃にはさまざまな要因がありますが、大きかったのは、ジョーンズ氏が「勝ち方を知っていた」からだと私は思っています。ジョーンズ氏は、よくインタビューなどで、「日本人の体格は小さいが、正しく努力すれば勝つことができる」と言っていました。だからこそ、体の大きな選手がボールを持って向かってくるのを守るラグビーではなく、常に自分たちでボールを保持して回し続け、攻め続けるスタイルを貫いたのだといわれています。そして、攻め続けるラグビーを実現するために、ジョーンズ氏は、選手たちに相当なハードワークを課したのです。

私はラグビーについてそれほど詳しくはありませんが、ジョーンズ氏のやり方は、実に理にかなっているように思えます。「勝てる方法」を考えた。そして、「そのために必要な準備」を徹底した。この2点に尽きるのではないでしょうか。

「勝てる方法」を考えるだけでは、「勝ち方を知っている」とはいえません。勝てる方法を実現するために、必要な準備を実際にやってこそ、「勝ち方を知っている」といえるのです。

ビジネスの世界も同じです。例えば営業活動で言えば、まず、「顧客を獲得できる方法」を考えます。どのような順番で話を持っていき、どのような提案をすれば、どのような難所をクリアすれば顧客を獲得できるのか。そして「そのために必要な準備」として、どのような情報を収集し、どのような資料を提出し、日ごろ、誰とどのようにコミュニケーションを取っていくか。これらを実践して初めて、「勝つ」ことができるのです。

皆さんの仕事の進め方はどうですか。行き当たりばったりで考えなし、単なる前例踏襲だったりはしませんか。失注して悔しいのなら、うまく進められなくて苦しいのなら、「勝てる方法」を考え、「そのために必要な準備」をしなければなりません。ただがむしゃらに、これまでと変わらないやり方を繰り返しても、きっと勝つことはできないでしょう。あえて厳しい言い方をすれば、それは、正しい努力ではありません。考えること、準備することを放棄した、思考停止も同じです。

皆さん、今の仕事を、改めて振り返ってみてください。「勝てる方法」も、「そのために必要な準備」も、日々担当している皆さんだからこそ、考え、実践できるはずです。「勝ち方」を知れば、皆さんは、必ず、「勝てる」のです。

以上(2019年9月)

pj16973
画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】「管理職予備軍」の中堅社員に伝えたい2つの話

今日は、入社3年目から5年目までの中堅社員の皆さんに集まってもらいました。皆さんは、これから先、我が社を背負って立つ存在です。中には、管理職となって部下を育て、組織を率いていく人もいるでしょう。皆さんは、「管理職予備軍」ともいえるのです。

管理職には、一般社員とは違った意識や働きが求められます。よく、「立場が人を育てる」と言いますが、いざ管理職になってから意識や働きを変えようと思っても、なかなかうまくはいきません。「管理職予備軍」である皆さんには、今のうちから管理職になる準備をしておいてほしいのです。そこで、私はこれから皆さんに、2つの話をします。ぜひ、今のうちから、管理職としての心構えを学んでください。

1つ目の話です。先日、学生時代の友人が初めて本格的な舞台の脚本を書いたので、私は仲間と一緒に見に行きました。舞台の素晴らしさもさることながら、私は一緒に見ていたある仲間の姿に感心したのです。舞台はコメディーだったので、随所に笑いどころがありました。彼は、笑いどころでは真っ先に、とても気持ちの良い明るい声で笑い、素晴らしい演技には惜しみない拍手を送っていました。つられて周りの観客も笑い、手をたたくようになり、会場は大いに盛り上がったのです。舞台後、脚本家の友人や役者が、「笑い声で場が盛り上がってやりやすかった。本当にありがとう」と口々に言っていたのが印象的でした。

私の仲間の楽しみ方は、「役者たちが演じやすい場をつくった」のでしょう。管理職にも、同じことが求められます。明るく前向きな場をつくるのは管理職の仕事です。管理職が前向きな言動でハツラツと仕事をしていれば、組織はポジティブになるでしょう。逆に後ろ向きで文句ばかり言っていれば、ネガティブな組織になってしまいます。管理職は、言動一つにも、「場をつくる」という責任があることを忘れてはなりません。

ただし、いつも、単に盛り上げていればいいというわけではありません。組織には、時に、立ち止まって考えることや足元を固めることも必要です。ここでお伝えしたいのが2つ目の話、世界的に有名なF1レーサーが言っていたことです。

彼いわく、「レーサーにとって一番大切なのはブレーキを踏む判断力」なのだそうです。その力があるからこそ、レーサーは、自分を信じて、時速何百キロものスピードを出すことができます。組織にも、ブレーキは必要です。ブレーキを踏むことができればこそ、組織は思い切って前に進めるのです。管理職は、必要とあらば率先して組織のブレーキにならなければなりません。そのためには、目の前の見えるところだけを見るのではなく、広くて高い視点を持つ努力が必要です。

中堅社員の皆さん、今日、私は管理職として大切な心構えを、2つお話ししました。皆さんが、一日も早く管理職となり、一緒に我が社をつくっていく未来を、私は心から待っています

以上(2019年9月)

pj16974
画像:Mariko Mitsuda

中小企業には【共感ブランディング】が必須です!〜時間軸を超え、深みのある共感が事業承継にも有益なワケ/岡目八目リポート

 年間1000人以上の経営者と会い、人と人とのご縁をつなぐ代表世話人 杉浦佳浩氏。ベンチャーやユニークな中小企業の目利きである杉浦氏が今回紹介するのは、株式会社ドットライフの代表取締役である新條隼人さんです。

 私の愛読誌である『Wedge』。その2019年8月号には、いつも気付きを与えてくださる一橋大学名誉教授の野中郁次郎先生が、【「三つの過剰に」に陥った平成の日本企業 今こそ共感や直観による経営を取り戻せ】の文章を寄稿されていて、私自身感銘を受け、まさに【共感】させていただきました。その共感の深さを追求し、時間軸を超えていくブランディングを提供しているのが今回の新條さんです。中小企業における【共感ブランディング】について掘り下げ、事業承継にも有益なお話と捉えて今回はお伝えできればと思います。

1 新條さんの事業の一つanother life.について

1)私のこともすてきな記事にしてくださいました

上記は私の2年前の記事。53歳のときに今回の新條さんが運営されているサービス【another life.】にて記事にしてくださいました。記事掲載サイトはこちらです。

新條さんとは2年ほどのお付き合いで、スタートアップの世界では投資家であり、事業開発のお兄さん的存在の山口豪志さんのご紹介で知り合いました。そこからすぐにもう一度お会いしたいと思い、アポイントを入れさせていただいたことが鮮明です。

その理由は、収益性が見えない事業をよくここまでやりきっている、それでいて自信にあふれ、これからの世の中で大切な無名の個人の人生ストーリーにフォーカスし共感を生み出していることに、私自身も気付かせてもらったこと。2度目にお会いした際に私のプロフィールをお伝えしたところ、その場で『杉浦さんのインタビューがしたい』と仰ってくださいました。すぐにインタビューを表参道のカフェで実現し、この記事につながりました。インタビューのときに感じたこと、それは私の人生を丁寧に何度も掘り返してもらっている感覚、新條さんの優しいトーン、言葉遣いでありながら、私の人生ストーリーで記憶のかなたに忘れ去っていたことまで力強く呼び戻してくださったと感謝しています。深掘り感、その感性の深さに驚くばかりでした。

程なくして、私の記事が公開、その途端、大反響となりました。最近会っていなかった方々からは久しぶりに会いたいとか、全く会ったこともない方からは感動しましたという感想を寄せてもらったことから、私自身が感動したことも。

杉浦氏、新條さん、ご紹介者の山口さんの画像です

実際に、このanother life.の特徴は、読了率が圧倒的に高いこと、しかも5000文字を超える記事も多数ありながら、記事全文を読了する人が70%を超えていること。不特定多数の大量の人々に訴求するマスメディアの発信とは全く異なるものであり、点と点である人と人、個人と個人を深い共感で結びつけていく、そんな特徴があります。しかもその共感が時間軸をはるかに超えていき、テレビの世界で見られるその場の【瞬間風速】【はやり、すたり】にやきもきする視聴率競争とは遠い世界のWebメディアという位置づけで、実際私の記事リリースから2年近く経過した今年の春ごろに、記事への感想を寄せていただきました。それがこちらです。

『こちらのanother life.を読ませていただきました。人と人をつなぐことの価値を感じるひとりとして、共鳴の想いで鳴く如くメッセージを差し上げました。まことにありがとうございました。私もこれからも人と人のつながりを大切にします。信頼する気持ちや安心感、挑戦する想いを持ち歩みます。あらためてこころさせていただく記事でした。敬意と感謝をこめて』

まさに点と点がつながったことを感謝し、確信するコメントをいただきました。

2)日本の国境問題、その意識することの大切さもストーリーから

このanother life.を内閣府総合海洋政策推進事務局も注目をし、記事の作成をした経緯があります。ほとんどの日本人が意識から遠い、国境の問題。離島での人口減少問題。そこに住む人々の人生ストーリーを共有することからの共感、今まで意識することのなかった離島での生活や人生ストーリーから、日本の現実に意識を向けることにもつながっています。

東京都の青ヶ島ってどこ? と思いながらも、すてきな人生ストーリーにホロッとするような、勝手に空想の世界で映像が動き出すようなお話の数々。2年前に公開となった、山田アリサさんの記事。山田さんのストーリーはこちらです。人口165人、面積5.98平方キロメートル、東京から358キロメートルの絶海の孤島で育った山田さん、大っ嫌いだった地元で見つけた自分の居場所に共感しました。

そこから2年後にフジテレビの番組セブンルールに、この山田さんがご登場されました。

山田さんのすてきな人生経験がシェアリングされたという証しに感じますね。

内閣府総合海洋政策推進事務局のサイトはこちらです。この離島に住むみなさんへのインタビュープロジェクトを3カ月かけて取り組んだそうです。すごい経験になりますね。

また、このプロジェクトから生まれたお話には、

  • 長崎県の壱岐島で海女として働く女性の取材記事に多数の反響メッセージが届く
    その詳細はこちらです。
  • 漁師など漁業で活躍される方が、Yahooのメディアに転載される
    その記事はこちらです。

3)境遇への共感 点と点が結びついていく

私からは、私以上にすてきな人生を歩んでいらっしゃる方々を、新條さんにご紹介させていただいたりもしています。代表的な3名の方を挙げますと、転職エージェントとしてNHKのプロフェッショナルにも出演された森本千香子さん(森本さんの記事はこちら)、国内初のSDGsアワード2017大賞に輝いた阪口竜也さん(阪口さんの記事はこちら)、ベンチャーキャピタリストからキャリアコンサルタントやラジオのパーソナリティーで活躍の森清華さん(森さんの記事はこちら)がいらっしゃいます。ご縁の広がりが、このanother life.から見ず知らずの方々につながっていくことを体感した次第です(この記事をご覧になった方々から、採用への応募とか、またご縁が広がっているそうです)。

他人の人生を【ジブンゴト】となっていくことで深い共感性、高い価値観を生んでいく、マスメディアから遠い人々にリーチできていることがanother life.の価値と感じます。

最近では、マスメディア側から、このanother life.への歩み寄りも見られるようになり、テレビ局とのタイアップ、新聞とのタイアップの実績もでき始め、メディア×メディアの掛け算となり、クロスメディアの打ち出しにもつながってきました。

新聞とのタイアップ事例を示した画像です

2 起業のキッカケについて

新條さんの会社のミッションと、起業へのキッカケは密接に関係しているように思います。

『やりたいことをやる人生を、あたりまえに』

私たちは、誰もが「自分にとって幸せな人生」を歩むことができるような社会、世界を目指しています。「やりたいことが見つからない」「やりたいことを諦めた」。そんな悩みやモヤモヤを感じている人が、人生経験のシェアリングを通じて、新しい人生を一歩踏み出すキッカケを提供したいと考えています。

このミッションそのものが新條さんがモヤモヤを解き放ち、自身のやりたいことに突き進んだ結果の起業ということになります。

ご実家が和裁やちょうちんを作る【稼業】を営む中で、継ぐな、自分でやりたいことを考えてやりなさいと小さい頃から言われて育った新條さん、0(ゼロ)から価値を何か提供したいと思いつつ、自信や覚悟がなかったそうです。

転機は、大学生のときに母校の高校に講師として2年生と対話の機会があった際、講師である新條さんに救われたという感想が寄せられたそうです。新條さん自身がこの講師体験で得たものは、人がどう生きるかの根幹に価値を提供できたことに対して、やりがいを感じ、また起業という特定の選択肢に縛られることもなく、その都度、目の前にある選択肢を自分で決めて飛び込んでみる。そしていきなり起業でなく、一旦、就職を選択することに。

起業目的で就職した新條さん、1年目でいきなりリーダー格に。しかし、そのまま会社員をやる選択はなく、2年間の会社員時代はとにかく起業資金を作る期間に充てたそうです(ご本人いわく、起業資金目的の就職ではなく、その会社の【人】ベースで選択、まさにやりがい目的でその会社を選択したそうです)。そこで200万円の【資本金】を蓄え、前述のミッションを実現するための【人軸】のストーリーを表現すること、見知らぬ誰かにとってキラッと光る部分にフォーカスを当て、【事例】をキチンと出していくこと、多数の人生経験をシェアリングすることを打ち出していきました。しかも事業、企業活動として成立していくことにコミットしながら。

3 中小企業に共感ブランディングの時代、事業承継にも有効なワケ

1)中小企業での共感ブランディング

採用ブランディングの企業の方ともお会いする機会が多いのですが、見せかけだけを良くする、脚色して打ち出す、さもきらびやかな人生が待っているかのような。現実はかけ離れて、ニセブランドにだまされたと思っても気付くのは入社後、不幸の連鎖を生んでいること、見かけます。このようなブランディング企業に多額の費用を支払い、結果せっかく入社した社員が辞めていくのも事実。なんのために、誰のために会社経営をしているのか? 本当に分からなくなってしまっている経営者もいらっしゃいます。

another life.で共感を呼ぶ人生経験のシェアリングを、中小企業向けブランディングでも活用が進んでいます。嘘のないストーリーを主軸としたマーケティングで、人事、採用、広報へ展開し、企業の組織力強化を底上げするお手伝いをしています。このあたりのことはセミナーでお話をされる場面もあるそうです。

セミナーで話す新條さんの画像です

具体的な採用事例も。
コーヒー専門店に就職 独立 そしてまた人が来る

another life.の記事を見た沖縄で働いていた和田さんが、コーヒー専門店のお話、記事の中に出てくる「人のために生きるのが自分にとっての幸せ」という考え方に衝撃を受け、自分が満足していないと他人を満足させられるわけないよなという気付きを得て、手紙を書き、そこから会う、そこからそこで2年間ストーリーの主と一緒に働き、今般独立へ。茨城県で【ただいまコーヒー】を開店したそうです。人生のシェアリングがリアルに一緒に働く共感を呼び、そこから独立につながる。なんてすてきなことか。さらにその和田さんのストーリーを知った方が、その和田さんのお店で働くという共感の連鎖。就職、就社というような今までの【働く】概念を超えた、嘘偽りのない人生を共に歩みたいと思うからこその、自分で決めた【居場所】となっていると感じます。

この和田さんの記事はこちらです。

和田さんに共感して居場所を決めた神定さんの記事はこちらです。

2)事業承継も共感の時代へ

三重県の町工場に決まっていた内定を蹴って、自身の父が経営する会社に入社することを決めた野見山さん。入社以来退職者は1名も出していないそうです。この野見山さんが活用したのが、another life.とマスメディアです。

野見山さんのanother life.の記事はこちらです。

野見山さんのテレビ動画はこちらです。

Q.マスメディアタイアップ実施後、自社内、社外に変化はありましたか? もしあったならどんな変化、効果があったか教えてください。また、ドットライフ社への期待、上記以外に感じたこと等々教えてください。

A.社外的には、等身大のストーリーを語ったことにより親近感が湧いた等と言われました。
今後の期待としては、今まで世の中で認知されていないけれども、必死に働いている方にスポットを当ててくれると思います。

杉浦氏、新條さんの画像です

4 今後について

another life.や会社が、ニュース配信をしている共同通信社のような存在、しかも【人軸】とした配信を行う事業で、いろんなメディアや企業で活用される事業体を目指したい、前述の国境の島のストーリーのような地方活性化の文脈でも取り組んでいきたい、人生ストーリーを発信していく中で、シンデレラを輩出するようなこと、シンデレラストーリー自体を自分たちで巻き起こすことにもチャレンジしたい、と幅広くお考えです。

新しいことへのチャレンジ、答えのない世界に喜んで飛び込んでいくそのお手伝い、個人が主体の誰かの価値をみんなの価値に変えていく、そこに自分たちの居場所を見いだしていきたいと新條さんは語ります。

私もこの価値観への共感がますます大切な時代に入っていくと感じます。なにかしら新條さんたちとご一緒できるように、私も人軸を大切にしたいと思います。

最後に新條さんから一言、想いを

新規顧客の開拓や採用向けの広報など、中小企業が事業を成長させていくために、PR・ブランディングが大きな力を発揮するシーンは多々あります。一方で、SNS発信をしても反響がない、自社サイトで記事を更新しているが工数的に継続できない、何を発信すればいいか分からないなど、効果を得られぬまま頓挫してしまうことも。another life.では、人軸のストーリー配信と、テレビ・新聞・Webでのメディア配信を通じて、これまでメディアに縁遠かったような中小企業の方々の発信をお手伝いしていきたいと考えています。

以上(2019年8月作成)