「役職名」の基礎知識

書いてあること

  • 主な読者:役職名の変更などを検討している企業の経営者、取引先などの役職で、どのような役割や責任があるのかを知りたいビジネスパーソン
  • 課題:他社がどのような考えの下、役職名を決めているのか参考にしたい
  • 解決策:役職名はビジネスの潮流や各社の価値観が表れるものであり、その役職名にどのような役割があるのかを考えたり、知ったりすることが重要

1 ビジネスの潮流などを反映する役職名

企業規模、業種、企業風土、経営戦略などさまざまな要素を考慮して、各企業は組織形態とそれに応じた役職名を採用しています。

従来、日本企業の多くは、「社長」「本部長」「部長」「次長」「課長」「係長」「主任」など、上位から下位に向けて命令が伝達される部課制(ライン組織)を採用してきました。しかし、最近では迅速な意思決定や対応を行うことを目的に、役職の階層を減らして組織のフラット化を進める企業もあります。

また、「CEO」といった役職名を目にする機会が増えています。こうした役職名はもともと経営の意思決定・監督機関としての取締役会と、意思決定に基づく業務執行機能を分離した制度(以下「執行役員制」)を採用する外資系企業などで使用されていました。現在では日本企業でも一般的になってきています。執行役員制を導入する企業などで使用されている代表的な役職名は次の通りです。

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これらの役職名は社内規定に基づく呼称ですが、会長兼CEOなどといったように使われるケースが増えてきています。また、自社のブランドや価値観などを創造し、社内外に発信・浸透させていくCCO(Chief Culture Officer、最高文化責任者)や、健康経営を推進する企業などがCHO(Chief Health Officer、最高健康責任者)を設けるなど、自社が重視する価値観を表したユニークな役職を設けている企業もあります。

このように企業における組織とそれに応じた役職名の在り方は、その時々のビジネスの潮流を反映していたり、自社の重視する価値観を反映したりするものでもあります。

以降では、企業でよく使用されている役職名について紹介します。役職名の新設や変更を考える際、あるいは自社と異なる役職名を目にしたときに、どのような役割や権限があるのかを確認する際の参考としてください。

2 部課制における役職名

1)中間的な役職名

部課制(ライン組織)は、日本企業の多くで採用されている組織形態です。役職としては、「社長」「本部長」「部長」「課長」「係長」などがあり、そこに中間的な役職が加わって組織が形成されています。

中間的な管理職の代表的な役職名としては、「副本部長」「副部長(部長代理・部長補佐)」「次長・副次長(次長代理・次長補佐)」「副課長(課長代理・課長補佐)」「副係長(係長代理・係長補佐)」などがあります。

2)その他の役職名

中間的な管理職の他にも、「顧問」「相談役」「非常勤取締役」「参事」などという役職があります。また、支社(支店)・営業所・工場においては、部長クラスに代わる役職として「支社長(支店長)」「所長」「工場長」などを置いている場合があります。

本社・営業所を問わず「係長の代わりに主任」としている企業や、その下に「班長」がいる場合もあります。一方、事業部制を採用している企業では、「事業部長」という役職があり、社内的には取締役と同等の立場である場合もあります。

3)執行役員について

経営と業務の執行の分離が重要視されるようになり、さまざまな企業で社内体制として執行役員制が設立されたことから、多くの「執行役員」が選出されました。執行役員制は会社法の規定によるものではありません。そのため、社内体制や権限などについては各企業によって異なります。また、執行役員は現場のトップということもあって、本部長や営業部長を兼ねている場合が多いようです。

3 グループ制における役職名

グループ制とは、従来のピラミッド型の組織から、課や中間的な役職を除いた体制です。組織のフラット化を図り、意思決定や判断の迅速化を進めることを目的としています。

具体的には、「部を部門に変更し、部門の下にグループまたは室を置く」という体制です。役職は、次長クラス、係長クラスを廃止して、部長クラスは「部門長」「グループマネジャー」「主席」などに、課長クラスは「グループリーダー」「室長」「主査」などとなります。また、企業によっては室長や部長クラスがグループリーダーになっているケースもあります。

部課制・部門室制・グループ制の組織(例)は次の通りです。

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4 マトリックス組織の概要

部門室制やグループ制などと並行して、業務遂行のためにプロジェクトチーム制を設けている企業もあります。プロジェクトチーム制では、各部門やグループから担当者が集まってチームを構成することによって、何らかの目的を果たすために業務を遂行していきます。スポーツメーカーを例に取ると、ユニフォームチーム、シューズチームなどとなり、各チームは企画・開発・販売・宣伝など各部門やグループから数名ずつ担当者が任命されて構成されています。

その際、各チームにチームリーダーが配置されます。この組織形態は、各スタッフがグループとチームの双方に所属するため、マトリックス組織とも呼ばれます。

例えば、資生堂では、世界の地域ごとに強いブランドを育成するため、5つのブランドカテゴリーと6つの地域を掛け合わせたマトリックス組織を発足させています。

マトリックス組織(例)は次の通りです。

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5 専門職について

従来の人事制度では、管理職に就くことで高い賃金やキャリアを得ることが一般的でした。しかし、中には管理職に就くよりも、現場で高い専門性を発揮するほうが、企業にとって高い付加価値を生む人材もいます。また、消極的な理由として、管理職ポストが不足している場合に、専門職ポストを設ける場合もあるようです。

専門職は、部課制(ライン組織)上の役職とは異なり、部下を持たずに(持つ場合も少数)業務を遂行します。

専門職の仕事は、技術や営業・販売に関しては各企業の扱う製品やサービスによって異なるため一概にはいえません。ただし一般的には、研究開発に携わる研究者や技術者、法務・税務などの分野に関連した資格を持つ者、営業・システムエンジニアやコンサルタントなど、高度な専門性が求められる職種が挙げられます。

また、専門職は部課制(ライン組織)やグループ制において新しく課やグループをつくるに至らない(規模が小さい)場合にも有効な手段として導入されています。

この他、最近は高年齢社員の技能を活用するための専門職を設ける企業も増えています。こうした高年齢社員には、「シニアアドバイザー」「シニアマネジャー」などの役職が設けられ、一般の従業員とは別の基準で処遇されています。

以上(2019年4月)

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出向社員を受け入れる側の留意点

書いてあること

  • 主な読者:親会社から出向社員を受け入れる予定のある企業の経営者
  • 課題:出向について親会社に確認すべきことや出向社員への対応のポイントが分からない
  • 解決策:親会社には出向期間・賃金・賞与・労働条件などを確認する。出向社員とトラブルにならないよう出向者を受け入れる際の覚書を用意する(本稿でひな型を紹介)

1 人事権の基本的な考え方

使用者には、出向など労働者の地位の変更に関する事項について、その裁量で決定できる権利、すなわち「人事権」が認められています。ただし、人事権は使用者が自由に行使できるわけではありません。個々のケースで解釈が異なる場合があるものの、基本的な考え方を確認していきましょう。

使用者と労働者が締結している労働契約の条件は、就業規則などで定められています。人事権は労働契約に基づく指揮命令の一つであると解釈されていることから、「就業規則などで定められた範囲で行使することができる権利である」と考えることができます。そのため、出向などについて、就業規則で定められた範囲を逸脱した決定を下すと、使用者の人事権の濫用と判断されてしまうことがあります。

加えて、就業規則などの定めだけを根拠とする人事権が問題となることがあります。就業規則などに、出向などに関する定めがあったとしても、それが「業務上の必要性があること」「不当な目的によるものでないこと」などの要件を満たしていない場合、使用者の人事権の濫用と判断されてしまうことがあります。

この点については、労働契約法でも定められており、使用者が出向を命じることができる場合であっても、その必要性や対象となる労働者の選定の方法などを考慮し、それが使用者の権利濫用であると認められるときは出向命令を無効にするとしています。

2 出向の種類と主な目的

1)在籍出向と転籍出向

1.在籍出向

在籍出向とは、労働者が出向元(出向を命じる会社)との労働契約を維持したまま、出向先(出向する労働者を受け入れる会社)と労働契約を交わして労働する形態です。労働者の立場から見ると、就業場所が変わるイメージです。

2.転籍出向

転籍出向とは、労働者が出向元との労働契約を終了した後、新たに出向先と労働契約を交わして労働する形態です。労働者の立場から見ると、勤め先の会社が変わるイメージです。

通常、人事権の範囲に含まれると解釈されるのは在籍出向までです。労働者との労働契約が消滅する転籍出向は人事権の範囲には含まれず、これを命じる場合は労働者の同意が必要となります。

以降では、在籍出向に注目し、その特徴などを紹介していきます。

2)会社が労働者に出向を命じる主な目的

1.新会社の経営の早期安定

新分野に進出する際に新会社を設立することがあります。新会社の経営を早期に軌道に乗せるために、優秀な労働者を出向させることがあります。

2.人材開発

人材の育成を目的として、若手や幹部候補の労働者をグループ会社などに出向させることがあります。

3.雇用の維持

親会社での雇用が困難になった場合、子会社に出向させることで雇用を維持するケースがあります。

3 出向者を受け入れる際の留意点

出向先が、出向者を受け入れる際の主な留意点を紹介します。

1)出向期間

出向者を受け入れる際の条件はさまざまですが、まずは出向期間を明確にしなければなりません。例えば、優秀な出向者が短期間で出向元に呼び戻されてしまったら、出向先は業務の引き継ぎなどに苦労します。逆に、優秀ではない者の出向が長期にわたる場合は雇用負担が重くなります。また、出向先は出向期間に応じて、出向者の教育ペースや配置を考えるものです。仮に、「3年間」といったように出向期間を明確にすることが難しい場合は、出向期間を1年単位とした上で、更新の3カ月~6カ月前までに、次期の出向の有無を決定するようにします。

2)賃金・賞与などの支払い

出向期間中の出向者に対する賃金・賞与などの支払い方法は次に大別されます。

  • 出向元か出向先のどちらかが全額を負担するケース
  • 出向元と出向先が負担割合を決めて負担するケース

特に、出向元と出向先が負担割合を決めて負担する場合は、負担割合を明確にしておくことが大切です。

3)出向者の労働条件

出向元よりも、出向先の労働条件のほうが低いことがあります。このような場合、出向者のためにも出向元の労働条件を適用することが理想的です。これが難しい場合、あらかじめ出向者に、出向元と出向先の労働条件の違いを伝え、同意を得ることが不可欠です。

4)親会社が出向者の受け入れを要請してきた場合の対応

親会社が子会社に出向者の受け入れを要請してきたケースを考えてみましょう。

出向元(親会社)が出向者の受け入れを要請してきた場合、基本的に出向先(子会社)はこれを受け入れることになるでしょう。出向者の受け入れによる人的交流を図ることで出向元との関係強化が期待できるからです。

とはいえ、労働者を一人雇用する際の負担はとても大きなものです。そのため、出向先は、前述した出向期間・賃金・賞与・労働条件を十分に確認しなければなりません。これに加え、出向の目的についても確認しておきます。出向元が出向者の受け入れを要請する目的は、ポスト不足・技術支援・雇用調整の布石などさまざまで、これによって出向先の対応も異なります。仮に、出向元が出向者を高く評価しており、幹部候補として送り込んでくるのであれば、出向先もそれなりの処遇をしなければなりません。

また、こうした出向元との条件確認に加え、出向先は自社の労働者に対する説明もしなければなりません。「親会社からの出向者を受け入れる」ことについて、出向先の労働者は高い関心を持っています。出向者を受け入れた後の円滑なコミュニケーションを実現するためにも、出向先は労働者に対して「出向者を受け入れる理由と活用の方針」を説明しておく必要があるかもしれません。

一方、雇用負担やポスト不足などを理由に、出向元からの出向要請を断らざるを得ない場合は、出向元との円満な関係を維持するために、十分に話し合います。その際は、「出向者を受け入れることができない理由」を明確に伝えることが重要です。

4 出向者受け入れに関する覚書のひな型

出向者を受け入れる際の覚書のひな型を紹介します。なお、次のひな型は一般的な定めを紹介したものであるため、実際にこうした覚書を作成する際は弁護士や社会保険労務士などの専門家に相談することをお勧めします。

【出向社員受け入れに関する覚書のひな型】

○○株式会社(以下「甲」)と△△株式会社(以下「乙」)とは、甲から乙へ出向の取り扱いを受ける甲の従業員◇◇◇◇(以下「丙」)の労働条件その他について、以下の事項を確認し、その証として本書を交換する。

第1条
この出向により、甲と丙の労働契約が終了することはなく、出向期間中も丙は引き続き甲の従業員としての地位を維持する。

第2条
出向期間は○年○月○日より○年○月○日までとする。ただし、甲乙の協議により出向期間が変更されることがある。この場合、甲は丙の同意を得た上で出向期間を変更する。

第3条
出向期間中、丙は乙の指揮命令に従って労働する。

第4条
出向期間中の丙の労働条件は乙の就業規則に基づくものとする。

第5条
出向期間中、甲は丙に所定の給与、賞与、通勤費実費を支給する。

第6条
丙の健康保険、介護保険、厚生年金保険および雇用保険などの社会・労働保険については、甲において引き続き加入する。

第7条
丙の安全衛生および災害補償義務は乙が負い、丙の労災保険料は乙が負担する。

第8条
丙が乙の指揮命令による業務の従事中、過失などにより乙または第三者に損害を及ぼしたときは、乙はその責任においてこれを処理し、甲に対して何ら請求をしない。

第9条
出向により、丙が何らかの不利益を被ることがある場合は、甲乙並びに丙が協議してその解決を図るものとする。

第10条
本書の解釈などに疑義のあるときは、その都度、甲乙協議のうえで決定する。

本書締結の証として、2通を作成し甲乙各々その1通を保有する。

○年○月○日

以上(2019年4月)

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シーン別に押さえる「伝え方」の流儀/「断り方」編

書いてあること

  • 主な読者:ビジネス上で「断る」のが苦手なすべての人
  • 課題:なかなか相手の立場に立つことができない
  • 解決策:「意図を明確にする・気持ちを伝える・スピード感を持つ」の3つがポイント。本稿では、悪い例と良い例を具体的に挙げているので、今日からでも実践できる

1 なぜ、うまく伝えられないのか

ビジネスにおいて、「伝え方」はとても大切です。立場や考え方、仕事の進め方など、さまざまなことが異なる者同士が互いに意図を伝え、認識を共有し合って物事を判断し、進めていくのがビジネスの基本だからです。

しかし、うまく伝えられない人は少なくありません。その理由の1つに、「相手のことを考えられていない」ことがあります。伝える際の基本は、「どうすれば相手が理解しやすいか、行動に移しやすいか」と、相手の立場で考えることです。

「伝え方」の中でも、特に難しい、苦手だと感じることが多いのは「断る」ときでしょう。本稿では、「断り方」について、「意図を明確にする」「気持ちを伝える」「スピード感を持つ」という3点で考えていきます。日ごろのやり取りの参考になれば幸いです。

2 意図を明確にする

ビジネス上の依頼や誘いなどを断るときの悪い例は、回りくどいことです。断るならば、その意思を明確に伝えなければなりません。こちらは相手に気を使っているつもりでも、伝わりにくいと、相手は「どっちなの?」とかえって混乱してしまいます。

メールなど文章だけで伝えるときは、特に難しいものです。基本は誤解がないようにはっきり断りますが、機械的にならないことです。まず、悪い断り方の例を見てみましょう。このようなメールを受け取ったとして、「断っている」と分かりますか?

    • 【悪い例(1)】
    • お話、誠にありがとうございます。弊社としても親和性があるお話で、いろいろな方法が考えられると思います。ただし、申し訳ありませんが、弊社のリソース面を考慮すると、ご希望の通りに対応するのは、もしかしたら難しいかもしれません。
    • 素晴らしいお話をいただきまして大変感謝しておりますので、その分野に強い方をご紹介することはできるかもしれません。来月になれば、その方と一度お会いすることになっていますので、少しお待ちいただければ幸いです。

相手に失礼のないように配慮しているのは分かります。しかし、断っているのか、可能性があるのか、相手が分からないのでは問題です。「少しお待ちいただければ」と相手の行動を止めているのもよくありません。相手は、次のように感じるかもしれません。

    • 【悪い「断り方」をされた相手の気持ち(1)】
    • 結局、どっちなの? 本当は断りたいのに、断ったらこちら側がマイナスの評価をするとでも思っているのだろうか。それとも、少しでも自分たちのビジネスにつなげようとしているのか。意図が分からないから次に進めにくい。困る。

時と場合にもよりますが、本当に相手のことを考えるなら、明確に断るべきでしょう。こちらの「断る」という意図が伝われば、相手は、別の方法を考えるなど次の行動に移すことができます。それを妨げるようなことをしてはなりません。

また、相手との関係性にもよりますが、相手に「断りにくいのだろうか」と思わせてしまったら、それも失礼です。相手は、「言うべきことを言える間柄ではないのか」と失望してしまうかもしれません。例えば、次のような文章で明確に断るとよいでしょう。

    • 【良い例(1)】
    • お話、誠にありがとうございます。とても光栄なのですが、リソース面を考えると、お引き受けするのは難しいのが現状です。せっかくの機会、お引き受けできず、本当に申し訳ありません。またお役に立てそうな機会がありましたら、お声掛けいただけましたら幸いです。

3 気持ちを伝える

内容や相手との関係性にもよりますが、「断る」ときには、「気持ちを伝える」ことも必要です。依頼や誘いなどは、相手が期待してくれている、こちら側のことを考えてくれていることの表れです。「断る」ときでも、感謝の念をしっかり伝えましょう。

とはいえ、「断る」のは気まずいもので、相手との関係が微妙に変化することもあります。そのため、「断る」行為をすぐに終わらせたいと思うあまり、次のような「そっけない」メールを出してしまうことがあります。しかし、これはよくありません。

    • 【悪い例(2)】
    • ご案内いただきまして、誠にありがとうございます。いただきました内容について、社内で情報共有させていただきますが、今すぐには対応させていただくのが難しいのが現状です。大変申し訳ありませんが、必要があればこちらから改めてご連絡いたします。

今回はお断りをしても、今後も相手との付き合いを続けたいのなら、文章を改める必要があります。丁寧な言葉で感謝や断ることのおわびを示してはいますが、事務的で気持ちが伝わらず、相手は次のように感じるでしょう。

    • 【悪い「断り方」をされた相手の気持ち(2)】
    • そっけなく断られてしまった。忙しいところを邪魔してしまったのだろうか。それとも、何か意に沿わないことをしてしまったのかもしれない。かえって申し訳ないことをしてしまった。おわびしよう。今後は、こうした案内は控えたほうがいいのかもしれない。

相手にこうしたことを思わせないためにも、気持ちはしっかり伝えましょう。難しく考えることはありません。「光栄です」「うれしいです」「残念です」といった感情を一言添えるだけでもいいのです。例えば、次のようにです。

    • 【良い例(2)】
    • ご案内、ありがとうございます。弊社のことをとても考えてくださった内容で、本当に光栄です。ただ、今のところすぐには対応が難しいのですが、今後もこうしたご案内は、ぜひお願いしたいので、引き続きよろしくお願いいたします!

4 スピード感を持つ

「断る」ときは、スピード感も重要です。ビジネスでは、自分がボールを持ったらできるだけ早く打ち返すのが基本ですが、特に、断ったり良くない話を伝えたりするときほど速さが大切です。そのほうが、相手が次の一手を早く打てるようになるからです。

局面によりますが、話を聞いた段階で断る可能性が高いと思ったら、その場でそれを伝えます。また、相手が返事を待ってくれている段階で、断る可能性が出てきたら、それを“先出し”するのも一策です。全ては、相手が次の行動を取りやすくするためです。

「伝え方」は、使う言葉や言い回しなどテクニックで上達するわけではありません。相手の状況や立場、気持ちを想像し、常に「どのようにすれば相手が前に進みやすいか」を思って伝えることが大切です。これこそが、上手な「伝え方」の一番大切な流儀です。

以上(2019年4月)

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「やる気」のメカニズムを理解して成果の上がる指導を実践しよう

書いてあること

  • 主な読者:部下のやる気を引き出したい上司
  • 課題:部下が思ったような成果を上げてくれない
  • ポイント:本稿で紹介する意思決定のマトリクスを活用して、部下の考えを知り、指導に活かす

1 部下の「やる気」を引き出せ!

1)部下が成果を上げるために必要な5つの要素

部下を持つ上司に求められる役割の中で、最も重要なことは「部下に成果を上げてもらうこと、そして会社・部・課などが掲げている目標の達成に貢献する」ということです。しかし、上司がいくら、日々努力しても、部下が期待するような成果を上げてくれるとは限りません。むしろ、期待通りにいかないことのほうが多いと悩んでいる上司も多いのではないでしょうか。

その原因は、視点を変えて部下の立場から考えると分かりやすいかもしれません。部下が上司の期待通りの成果を上げるためには、次の5つの要素が必要です。

  • 上司が指示した業務の内容や、期待されている成果に対する理解力
  • 業務を遂行し、期待されている成果を実現できるだけの能力
  • 上司(あるいは企業)に対して「上司(あるいは企業)の期待に応えたい」という思い(貢献意欲)
  • 実際の行動に移す意思
  • より良い成果を上げるために、そのプロセスにおいて工夫・調整・継続などの努力を行う意欲(創意工夫)

部下が期待通りの成果を上げるためには、5つの要素全てが重要ですが、本稿では、「4.実際の行動に移す意思」と「5.より良い成果を上げるために、そのプロセスにおいて工夫・調整・継続などの努力を行う意欲(創意工夫)」のポイントを紹介します。

2)「やる気」を引き出すことの難しさ

「部下が期待通りの成果を上げるために必要な5つの要素」のうち、「4.実際の行動に移す意思」と「5.より良い成果を上げるために、そのプロセスにおいて工夫・調整・継続などの努力を行う意欲(創意工夫)」に共通しているのは、「意思」や「意欲」という言葉が示すように、部下の「やる気」が関係していることです。

「やる気の問題」ほど、上司にとって厄介な問題はありません。能力の問題であれば、経歴・経験などから、ある程度客観的に判断して、適材適所の配置を行うことができます。また、指導・教育を通じて能力向上のための工夫もできます。

しかし、やる気はそう簡単にはいきません。例えば、上司の手前もあり、口先では「やる気があります!」と部下は言うものの、本心ではやる気がなく、結局、期待通りの成果を上げられなかったという経験をしたことがある人は少なくないでしょう。

2 やる気のメカニズム

1)意思決定の基本マトリクスとやる気の関係

仕事に限らず、人はさまざまな意思決定を行い、それが行動となって表れます。例えば、今日のランチは何を食べるかということについて、「カレーライスにしよう!」と意思決定を行い、実際に食べに行くという行動となって表れます。そのため、やる気を理解するには、まず、人の意思決定の仕組みから考えることが必要です。

意思決定を「メリットとデメリットを比較した結果」に基づいて考えてみます。意思決定を基本マトリクスにすると次の通りです。なお、本稿では「やる気」をテーマにしているので、便宜上、意思決定の内容を「やる場合」「やらない場合」と表記します。

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4つの象限の中には、「やる」という意思決定の促進要因(AとD)と、「やらない」という意思決定の促進要因(BとC)があります。例えば、「やる」という意思決定の促進要因について見ると、「A.やる場合のメリット」があれば、「やる」という意思決定を促進する要因となります。また、「D.やらない場合のデメリット」があれば、そのデメリットを避けるために「やる」という意思決定を促進する要因となります。「やらない」という意思決定の促進要因は、これと逆になります。

人は「やる」と「やらない」という意思決定の促進要因を比較して、意思決定を行います。これを“意思決定の公式”として整理すると次のようになります。

  • A+D>B+Cの場合:「やる」という意思決定をする
  • A+D≦B+Cの場合:「やらない」という意思決定をする

(注)A+D=B+Cの場合は、「やっても、やらなくても同じ」状態なので、「やらない」という意思決定をすることになります。

2)簡単な例で考えてみる

例えば、「新規顧客を開拓する」という新たな業務に対する部下の思いを「意思決定の基本マトリクス」に従って整理すると次の通りとなります。

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なお、人の意思決定は「やる場合」「やらない場合」という単純な二者択一ではありません。同じ「やる場合」でも、「積極的にやる」「最小限の範囲でやる」といったようにやる気には濃淡があります。この差は、「やる」という意思決定の促進要因と、「やらない」という意思決定の促進要因の差として考えることができます。

例えば、「A+D>B+C」であれば人は「やる」という意思決定をしますが、同じ「A+D>B+C」の状態であっても次のような場合では、後者のほうが、より積極的に「やる」ことになります。

  • 「A+D=5」>「B+C=4」
  • 「A+D=10」>「B+C=1」

もちろん、人の意思決定をこのように単純化して考えることはできません。しかし、まずは、こうした考え方を押さえておくことが、部下に期待通りの成果を上げさせるための第一歩となるのです。

3)部下のやる気を高めるための基本的な指導方針

ここまで紹介したことから、部下のやる気を高め、期待した成果を上げさせるために上司が取るべき基本的な指導方針として次のような点が明らかになります。

  • 「A.やる場合のメリット」と「D.やらない場合のデメリット」を最大化する
  • 「B.やる場合のデメリット」と「C.やらない場合のメリット」を最小化する

前述した新規顧客開拓における指導方針(例)は次の通りです。

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3 期待した成果を上げさせるために上司が注意すべきこと

1)部下の考えや思いを把握するよう努力する

部下を効果的に指導するためには、最初に部下の考えや思いをできるだけ正確に把握することが必要です。人はメリットとデメリットを比較して意思決定を行っていても、「何がメリット(デメリット)なのか」といった判断は、意思決定を行う人(この場合は部下)の主観によって異なります。

そのため、部下の考えや思いを把握することができれば、より効果的な指導が行えるようになります。とはいえ、部下の考えや思いを知ることは容易ではありません。特にやる気を低下させる要因となる「B.やる場合のデメリット」や「C.やらない場合のメリット」については注意が必要です。

これらは「部下に積極的に仕事に取り組み、成果を上げてもらいたい」という上司の考えと相反するものです。そのため、上司が直接話を聞いても、部下は本音を話しません。従って、上司は、直接聞いた話はもちろんですが、日ごろの言動など部下に関するあらゆる情報を基に部下の考えや思いを把握する必要があります。

また、「自身が部下の立場だったらどう思うか」ということを考えてみることも大切です。部下の考えや思いを知るためには、このようにさまざまな角度から考えてみるようにしましょう。

2)指導の基本的な方向性を理解する

部下の考えや思いを把握したら、それに見合った指導を行います。基本的には「『A.やる場合のメリット』と『D.やらない場合のデメリット』を最大化する」ことと、「『B.やる場合のデメリット』と『C.やらない場合のメリット』を最小化する」ことになります。一般的には、最初の第一歩を踏み出してもらいたいときにはA、B、Cを重視した指導、継続的に取り組んでもらいたいときにはA、Bを重視した指導を、それぞれ行うとよいでしょう。

また、いずれの場合にも「D.やらない場合のデメリット」を最大化する指導は好ましくありません。「D.やらない場合のデメリット」は罰則を科すなど、脅しが中心です。脅しは簡単に行え、期待した成果も得られやすい指導方法です。しかし、脅しによって開始、継続された行動は、部下の本心からのものではないので、自発性や発展性は望めません。また、上司に対する感情的な反発や、面従腹背の恐れがあります。場合によっては、パワハラと言われて問題となる可能性もあるため注意が必要です。

従って、「D.やらない場合のデメリット」を取り入れた指導は、非常事態を除いて、避けたほうがよいでしょう。

3)冷静な指導を心掛ける

本稿で紹介した内容を踏まえて部下に対する指導を行おうとしても、「指導内容をうまく伝えることができない」、あるいは「適切な指導を行ったと思っていたものの、部下には指導内容が正確に伝わっていなかった」ということもあるかもしれません。その一因は、上司が自身の感情に流されてしまうことにあるようです。部下には、必要なことを、適切な話し方で伝えなければなりません。しかし、「ついカッとなる」「くどくど叱る」、あるいは「面倒くさい」「必要ないことまで話したいという気持ちを抑えられず話してしまう」など、感情に流されてしまうことが多いようです。

部下への指導は、自分の感情をコントロールし、冷静に行う必要があります。もちろん、時には「叱る」という行為も必要です。しかし、それは「冷静に目的を認識し、言葉や口調にも注意を払いながら叱る」ようにし、決して感情的対処となってはいけません。常に冷静な気持ちで部下に接し、伝えるべき内容をしっかりと伝えるということが、適切な指導を行う上では重要となるのです。

以上(2019年7月)

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コスト削減に効果大「再エネ調達」の取り組み

書いてあること

  • 主な読者:電気代削減に取り組みたい製造業の経営者など
  • 課題:どのような再エネ調達の方法があるのか、メリットや費用感も含めて知りたい
  • 解決策:「自家発電・自家消費」がコストや税制面で注目されている。今後はサプライヤーとしての立場を強固にする上でも重要な調達方法となる

1 中小企業が再エネ調達に乗り出すメリット

地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」が2020年1月から本格スタートしたことなどを背景に、多くの大手企業は、企業活動におけるCO2削減を迫られています。そうした中、大手企業がサプライヤーに対して、CO2削減を要請するケースが増えています。

代表的なCO2削減策は、企業活動に必要な電力を再生可能エネルギーで賄う「再エネ調達」です。今後、中小企業がサプライヤーとしての立場を強固にする上で、再エネ調達は重要な取り組みになるとの指摘もあります。

注目されている再エネ調達方法は「自家発電・自家消費」。企業が自らソーラーパネルなどを設置し、そこから生まれた電力を自社で消費する方法で、次のようなメリットがあります。

  • 電気代を削減でき、コストダウンにつながる
  • 導入することで税制措置が受けられる
  • 災害時や緊急時の非常電源としてBCP対策になる

実際の導入事例などを踏まえ、具体的なメリットや費用感を見ていきましょう。

2 初期費用面を税制措置が後押し

太陽光発電事業などを展開するエコスタイルへのヒアリングによると、《電気代削減によるコストダウンに魅力を感じつつも、初期費用の面で二の足を踏んでいた中小企業が、税制措置に後押しされて「自家発電・自家消費」を導入するケースがここ数年で増加している》(2020年3月15日時点)とのことです。

大量の電気を使用するメーカーでは、自家発電・自家消費による電気代の削減効果は大きくなります。例えば、緩衝材加工メーカーのA社は、節電のために90キロワットのソーラーパネルを敷地内に設置。年間400万円以上かかっていた電気代のうち、約200万円分を自家発電で賄えるようになりました。

A社が「自家発電・自家消費」を導入した決め手の1つが、税制措置です。これは、2021年3月までに自家消費型の太陽光発電設備を取得した中小企業が、その費用について「即時償却」または「取得価額の10%の税額控除」などが受けられるというものです。

税制措置は、2016年7月に施行された中小企業等経営強化法に基づく支援措置の1つ(中小企業経営強化税制)で、他にも、民間金融機関から融資を受ける際の信用保証といった金融支援も受けることができます。

3 災害時の非常電源としてBCP対策に活用

2018年6月に発生した西日本豪雨では、被災地域で約1週間の停電が発生しました。今後、水害の発生頻度が増加するという予測もあり、メーカーなどがサプライヤーに対してBCP対策を求めるケースも出てきています。

「自家発電・自家消費」であれば、停電時でも、電話、メール、インターネットなど外部との通信手段を維持できます。従業員の安否確認や業務再開に向けた指示、取引先との連絡などを通して、業務の早期復旧を目指すことができます。

また、自家発電で賄える範囲で、工場の稼働や店舗の営業を継続することもできるため、取引先や地域住民の安心感や信頼の獲得にもつながります。

4 導入を検討する際のポイント

1)設置費用の目安は?

太陽光発電の普及に伴い、海外メーカーの参入による価格競争などの影響で、法人向けの太陽光発電設備の設置費用は年々下がっています。太陽光発電事業者などへのヒアリングによると、最近では《1キロワット当たり12万~20万円》で設置するケースが多いようです。

ただし、エコスタイルへのヒアリングによると、《設備業者や使用するソーラーパネル、積雪の有無、風の強さ、設置する屋根の角度や強度など、細かい条件によって費用はケース・バイ・ケースで大きく変わる》(2020年3月18日時点)とのことです。

2)設置規模の目安は?

エコスタイルへのヒアリングによると、《導入する中小企業の多くは、100~300キロワットのソーラーパネルを設置しており、パネルの面積は100キロワットで約660平方メートル、300キロワットで約2000平方メートルになる。これより規模の小さい事例だと、例えば、一般的なコンビニエンスストアの屋根の場合、20~30キロワットのパネルを設置できる》(2020年3月15日時点)とのことです。

また、《自家発電・自家消費の場合、導入する企業の普段の電気使用量に合わせて、発電した電気が余らないようにソーラーパネルを設置することになる》(2020年3月15日時点)とのことです。

5 サプライチェーンの要請はこれから本格化

近年、大手企業を中心に、サプライチェーンにおけるCO2排出量の算定・管理・情報開示を進める動きが活発化しています。

  • イオン:PB商品の製造委託先企業へCO2削減目標の設定を要請
  • 大和ハウス工業:2025年度までに主要サプライヤーの9割以上と温室効果ガスの削減目標を共有。取引先とともに省エネ診断や合同勉強会等を実施し、目標の設定および省エネ活動を推進
  • 富士通:事業のバリューチェーンからの温室効果ガス排出量を、2030年度までに2013年度比30%削減
  • NTTデータ:サプライヤーとの連携による購入した製品・サービスの省エネ化
  • NEC:製品の製造過程で消費する電力、ガスなど、資源の削減を要望

実際の導入事例などを踏まえ、具体的なメリットや費用感を見ていきましょう。

企業のサプライチェーンにおけるCO2削減支援などを行っているB社へのヒアリングによると、大手企業への支援件数は、《2019年度が5件だったものが、2020年度は17件に急増した。サプライチェーンへの具体的な要請に乗り出す企業も増えている》(2020年3月15日時点)とのことです。

「自家発電・自家消費」は、こうした大手企業の要請に十分に応える取り組みといえます。

例えば、大手自動車メーカーのサプライチェーンに属するC社の事例では、空調や照明設備などで省エネ化を図っていたものの、なかなか削減目標に届きませんでした。そこで、自家消費型の太陽光発電設備を導入したところ、削減目標を大きく超えることができたといいます。

このように、日本企業の多くは、従来、高効率空調設備の導入やLED照明への切り替えによる節電などを進めており、省エネ策は「頭打ち」ともいわれています。そうした中で、電気そのものを作り出す自家発電・自家消費は、打開策として注目されています。

以上(2020年4月)

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法人税に関する税務対策

書いてあること

  • 主な読者:税務対策を適切に行いたい中小企業の経営者
  • 課題:事業年度が終わり、申告書の作成時期に税金のことを心配しても、とれる税務対策はない
  • 解決策:「事業年度当初」「事業年度の中途」「事業年度末」それぞれの時期に適した税務対策を解説する

1 税務対策と経営計画

会社の経営は経営計画を策定し、それを着実に実行していかなければなりません。その際、経営と切り離せない税金については、経営計画の段階で納税額を試算し、納税資金の準備と税務対策を講じる必要があります。経営計画を実行する過程で月次や四半期ごとに年間利益を推計し納税額を試算し、それに対応した対策を検討します。

事業年度が終了し、申告段階になって税金の心配をしても、既に手遅れです。こうしたことのないように、定期的に税理士などの専門家のアドバイスを受けるようにしましょう。

なお、企業にかかる税金で、とっさにできる対策はありません。基本的には、払い過ぎを防止したり、課税の繰り延べを図ることが中心となります。

2 税務対策のポイント

1)費用および損失の発生

損金に算入できる給与の増額、福利厚生の充実、設備投資、不良資産の処分など。

2)損金算入可能な経理処理の適用

貸倒引当金の計上、棚卸資産の評価損の計上など。

3)費用および損失の前倒し計上

短期前払費用の費用計上、少額減価償却資産の費用化、特別償却など。

4)課税の繰り延べ処理の活用

圧縮記帳など。

5)特例制度の活用

設備投資などの税額控除など。

税務対策は、そのときだけの税額が少なくなればよいというだけではなく、中長期的な観点で判断し、タイミングや組み合わせを考えて行う必要があります。また、各種の税務対策を実行するに当たっては、税理士などの専門家に相談して実行する必要があります。

3 事業年度当初から行う税務対策

1)役員報酬の改定

事業年度初めに引き続き業績好調が見込まれる場合は、役員報酬の改定を行います。その額は業績などから検討します。なお、事業年度開始からの3カ月以内に改定しなければなりません。留意点は次の通りです。

  • 役員報酬の総額については定款に定めのない場合は株主総会(株式会社以外は、社員総会)の決議事項であり、各役員の報酬額は取締役会および監査役会の決議事項であるため、必ず株主総会・取締役会および監査役会を開催し、その承認を受け議事録を作成します。なお、取締役会非設置会社においては株主総会で全てを決議します。
  • 職務の内容、収益状況および使用人に対する給与の状況、同業同規模の他社の支給状況などと照らして、その役員の職務に対する対価として不当に高額でないかを確認します。

2)事前確定届出給与の届出

事前確定届出給与とは、その役員の職務につき所定の時期に確定額を支給する給与で、次に定める届出期限までに納税地の所轄税務署長に、事前確定届出給与に関する定めの内容の届出をします。

原則として次の1または2のうち、いずれか早い日が届出期限です。

  • 株主総会等の決議により、その定めをした場合におけるその決議をした日から1カ月を経過する日
  • その事業年度開始の日から4カ月を経過する日

3)中小企業倒産防止共済制度への加入

中小企業基盤整備機構の「(中小企業倒産防止共済制度)経営セーフティ共済」に基づき納付する掛け金は、全額損金算入することができます。

中小企業倒産防止共済制度とは、取引先の倒産の影響を受けて中小企業者が倒産する事態(連鎖倒産)、または倒産に至らないまでも、著しい経営難に陥る事態の発生を防止するため、中小企業者の拠出による共済制度で、中小企業の経営の安定に寄与することを目的としています。

中小企業倒産防止共済制度の諸条件は次の通りです。

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4)中小企業退職金共済制度(中退共)への加入

勤労者退職金共済機構の中小企業退職金共済制度へ納付する掛け金は、全額損金の額に算入されます。

中小企業退職金共済制度は事業主が機構と退職金共済契約を結び、毎月の掛け金を最寄りの金融機関に納付し、従業員が退職したときその従業員に機構から退職金が直接支払われる制度です。単独では退職金制度を持つことが困難な中小企業に、事業主の相互共済と国の援助によって退職金制度を設け、これによって中小企業の従業員の福祉の増進と雇用の安定を図ることを目的としています。

中小企業退職金共済制度の諸条件は次の通りです。

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5)役員退職金の支払い

高齢の役員などがいれば、退職を検討します。留意点は次の通りです。なお、役員退職金の算式の例としては「最終月額報酬×役員在任年数×功績倍率(規定に準ずる)」といったケースなどが見られます。

  • 役員退職金は原則として株主総会で決議された日の属する事業年度で損金経理をします。
  • 同業同規模の他社と比較して不当に高額でないようにします。
  • その役員の業務従事期間や退職の事情に照らして不当に高額でないようにします。

また、実際に退職しない場合の分掌変更による退職金も検討できます。

4 事業年度の中途で行う税務対策(修繕・修理の実施)

1)資本的支出の範囲

古くなった建物、機械、車両などの修繕・修理を行います。なお、資本的支出に該当するか否かという点には注意が必要です。

税務上の資本的支出に該当するものとして、次のような例が明らかにされています。

  • 【法人税法基本通達7-8-1】
    法人がその有する固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち当該固定資産の価値を高め、又はその耐久性を増すことになると認められる部分に対応する金額が資本的支出となるのであるから、例えば次に掲げるような金額は、原則として資本的支出に該当する。
  • 建物の避難階段の取付等物理的に付加した部分に係る費用の額
  • 用途変更のための模様替え等改造又は改装に直接要した費用の額
  • 機械の部分品を特に品質又は性能の高いものに取替えた場合のその取替えに要した費用の額のうち通常の取替えの場合にその取替えに要すると認められる費用の額を超える部分の金額

(注)建物の増築、構築物の拡張、延長等は建物等の取得に当たる。

この通達は、資本的支出の基本的な考え方を明らかにしているもので、リフォームなどが、「建物の価値を高めているか否か」「建物の耐久性を増加させるかどうか」で、資本的支出または修繕費に該当するかどうかを示しています。

2)資本的支出と修繕費の区分の特例

実務上、資本的支出と修繕費の区分は大変困難な問題です。そこで、税務上において、その区分の特例として次の取り扱いが認められています。なお、この方法は、法人が継続的に一種の簡便法を適用することを認めたものですが、あらかじめ文書により所轄の税務署長に届け出る必要はありません。

  • 【法人税法基本通達7-8-5】
    一つの修理、改良等のために要した費用の額のうちに資本的支出であるか修繕費であるかが明らかでない金額(法人税法基本通達7-8-3「少額又は周期の短い費用の損金算入」、法人税法基本通達7-8-4「形式基準による修繕費の判定」の適用を受けるものを除く)がある場合において、法人が、継続してその金額の30%相当額とその修理、改良等をした固定資産の前期末における取得価額の10%相当額とのいずれか少ない金額を修繕費とし、残額を資本的支出とする経理をしているときは、この経理を認める。

3)災害等の場合の資本的支出と修繕費の区分の特例

災害等の場合においては、特別な手当てが必要ですが、これについて税務上次の特例を認めています。

  • 【法人税法基本通達7-8-6(3)】
    被災資産について支出した費用の額のうちに資本的支出であるか修繕費であるかが明らかでないものがある場合において、法人が、その金額の30%相当額を修繕費とし、残額を資本的支出とする経理をしているときは、この経理を認める。

この取り扱いは、資本的支出と修繕費の区分について特例を認めたものですが、災害等の場合には、被災した建物などへの支出額に関して、資本的支出であるか修繕費であるかの区分が困難な場合が多いことから、この特例が設けられ、処理の簡便化を図っています。

なお、災害等の場合における修繕については、災害損失特別勘定など、別途、一定の経理処理が認められています。そのため、災害時の修繕費の取り扱いについては注意が必要です。

4)耐用年数を経過した建物について行った修理、改良など

耐用年数を経過した減価償却資産につき、修理、改良などを行った場合の税務上の取り扱いは次の通りです。

  • 【法人税法基本通達7-8-9】
    耐用年数を経過した減価償却資産について修理、改良等をした場合であっても、その修理、改良等のために支出した費用の額に係る資本的支出と修繕費の区分については、一般の例によりその判定を行うことに留意する。

5)他人の建物に対する造作など

他人から賃借している建物に対して造作などを行った場合においては、原則として、資本的支出に該当し、その内部造作を1つの資産として合理的に見積もった耐用年数により償却します。

ただし、当該建物について賃貸期間の定めがあるもの(賃借期間の更新のできないものに限る)で、かつ、有益費の請求または買取請求ができないものについては、当該賃借期間を耐用年数として償却することができます(耐用年数の適用等に関する取扱通達1-1-3)。

5 事業年度末に行う税務対策

1)ボーナスの支給

業績が好調な会社の場合、社員の功績に応じて決算賞与を支給します。留意点は次の通りです。また、未払経理により賞与を決算に計上して経費とします(一定の要件あり(注))。

  • 社員に対する賞与であれば、年度末までに支給額が確定していれば問題になりませんが、役員に対するものは損金になりません。
  • 使用人兼務役員に支給する場合は、他の使用人等と同時期に支給し、かつ損金経理した使用人分相当額のみが損金となり、それを超える部分は損金となりません。

(注)一定の要件とは、「支給額を各人別に同時期に支給を受けるすべての使用人に対し、期末日までに通知し、その通知をした日の属する事業年度において損金経理をした上で、翌期首から1カ月以内に通知通り支給すること」です。

2)未払費用の検討

社会保険料、電話料、電気料、給与のうち、締め日から期末日までの期間分(役員報酬は不可)等の未払費用の計上漏れがないかチェックします。留意点は次の通りです。

  • 事業年度末までに債務が成立していること。
  • 債務に基づいた具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。
  • その支払うべき金額が明らかであること。

3)その他の税務対策

その他の税務対策として検討できるものとしては次のようなものがあります。

  • 生命保倹(経営者保険)の加入(注)。
  • 固定資産の売却・除却。
  • 消耗品の購入(貯蔵品として資産計上するものを除く)。
  • 不良債権の処理(損失処理・引当金計上など)。

(注)支払額全額が損金計上できるとは限りません。また、固定資産を売却した時は、利益が生じる場合があるので注意が必要です。

6 決算時に行う税務対策

1)棚卸資産の評価損計上

法人税法上、資産の評価損の計上は原則認められていません(法人税法第33条第1項)。しかし、棚卸資産については次のような場合および法的整理に限り評価損の計上が認められています(法人税法施行令第68条第1項第1号)。

  • 当該資産が災害により著しく損傷したこと。
  • 当該資産が著しく陳腐化したこと。
  • 上記に準ずる特別の事実。

例えば、身近で分かりやすい例を挙げると、売れ残りの季節商品で通常の価額では今後販売できないことが明らかであるものや、新製品が発表されたことで流行遅れになるため、今後通常の方法で販売できなくなった場合も当てはまります。

つまりは、いろいろな要因はあるものの、著しく価値が減少して、今後その価格が回復しない状態や、通常の価額で販売できないということが明らかであれば、評価損として計上できるのです。ただし、単に時価や物価変動があった場合や、過剰生産によって価額が低下した場合には、計上することができません。

最後に、評価損を計上する場合、「著しく価値が減少して、通常の方法で販売できなかった」旨を、税務署から問われても大丈夫なように証拠資料をそろえておくことです。例えば、バーゲンセールの広告などを保管しておくとよいでしょう。

2)特別償却や税額控除の検討

経営改善設備を取得した場合の特別償却または税額控除、特定経営力向上設備等を取得した場合の即時償却または税額控除、雇用者給与等支給額が増額した場合の特別控除などの制度があります。これらの制度の適用を受けることができるかどうかについては、顧問税理士など専門家に確認するとよいでしょう。

以上(2020年1月)
(監修 南青山税理士法人 税理士 窪田博行)

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社長と外出。何に気を配り、何を学ぶか。

書いてあること

  • 主な読者:出張や会食など、社長と一緒に行動することになった社員
  • 課題:ガチガチに緊張するし、どうすれば失敗しないか不安。せっかくの一緒の機会にうまくコミュニケーションも取れない
  • 解決策:とにかく準備をしっかりと。社長を大切なお客様と思って「相手のことを考える」ことを忘れずに。そして、社長の一言、一挙手一投足から学びましょう

1 社長と一緒に行動。そのときあなたはどうする?

社長と一緒に行動するのは、とても緊張するものです。忙しい社長に迷惑をかけたくない。失敗のないようにしたい。そんな気持ちが働くかもしれません。しかし、考えてみてください。普段と違って社長から直接学ぶチャンスでもあるのです。

本稿では、社長と一緒に行動するときに気をつけたいことに加え、どのようなことが学べるかもまとめてみました。現在は新型コロナウイルス感染症の影響で、社長と一緒に行動できる機会はないかもしれませんが、いつか来るその日のために、参考になれば幸いです。

2 「移動」はとにかく時間が大事

1)移動ルートを確認する

社長と一緒に移動するときは、電車などの公共交通機関やタクシーを使いますが、いずれの場合も目的地までの移動ルートと、それぞれの所要時間は確実に頭に入れておきましょう。

社長は移動中も仕事をするなど、時間を無駄にしません。また、時間の長さによってやることを決めるので、所要時間は特に大切です。事前に移動ルートと所要時間を伝えるのはもちろん、移動直前にも「今から〇分間乗車します」と伝えましょう。

タクシーを使うときには、早くタクシーをつかまえて、待ち時間を短くします。事前に手配しておくのが望ましいのですが、難しい場合は、タクシー乗り場など早くタクシーをつかまえられる場所を把握しておきます。

2)できるだけ下見する

可能な範囲で、事前に同じ移動ルートを下見・体験しておきましょう。駅の構造やタクシー乗り場の場所などを確認します。遠方であっても、「Google ストリートビュー」で道順を確認できます。

また、健康のために歩くことを好む社長もいます。当日、歩いて移動できる時間の余裕があれば、その旨を社長に伝えてもよいでしょう。もちろん、社長が徒歩を選択した場合に備えて、事前に徒歩ルートも確認しておきます。

3)新幹線の席はどこが良い?

新幹線で移動する場合、社長の席は、人の出入りが少なく、駅に到着したらすぐに降りやすい位置が望ましいでしょう。例えば、お手洗いに近い車両の、前から3列目くらいの窓側などが良いかもしれません。

また、新幹線は、上りと下りの列車がすれ違うとき、車両が大きく振動し、騒音が発生することがあります。それを避けるため、対向列車とすれ違う側とは反対側の窓際の席を取るなど、そこまで気を使うこともあるようです。

ただし、「パソコンを使うため、コンセントがある席が良い」「ゆったりした席で集中して仕事がしたいのでグリーン車が良い」といったように、社長によって好みの席があることがあります。こうした点は、上司や秘書などに事前に確認しておきましょう。

3 「食事」は心地よい雰囲気が大事

1)食事のときも重要なのは時間

社員がホストになり、少し改まった場(店)で社長と会食するときを想定して考えてみます。まずは社長の好みを確認することが大切です。好き嫌いや、「肉か魚か」「和食か洋食か」といった希望や、アレルギーも必ず確認します。

また、会食前後の予定も確認し、その上で、来店のしやすさ、次の予定先への移動のしやすさなども考慮して店を選びます。次の予定がある場合は、「次の予定に間に合うには、店を何時に出ればよいか」ということも確認しておきます。

社長に次の予定がある場合、当日は、店を出る時間を忘れないようにしておかなければなりません。時間が迫ってきたら「あと10分で時間です」などと、社長に伝えるようにしましょう。

2)店側とタッグを組むことも必要

店を選ぶときは、「実際に行ったら、全然違った」ということもあるので、必ず自分で下見をしてから決めましょう。料理の味を確認するのはもちろん、店の雰囲気、利用できる席(個室かどうかなど)、接客のレベルなどもチェックします。

店を決めたら、事前に店側に事情を話し、社長と食事をする当日に協力してもらえるようにしておくことも必要です。その場合、「気持ちのよい接客をしてくれた」「サービスが行き届いている」と思える店員に事情を話しておくことがポイントです。

その店員には、社長が店に入る時間と出る時間、社長の好みの他、会食の趣旨や大まかな流れを伝えておきましょう。例えば、「お祝いの席なので、乾杯前に社長が5分くらい話をする。話が終わる頃を見計らって料理を運んでほしい」といった具合です。

3)複数人で会食する場合はどこに座る?

食事をするときは、座る場所にも気を配りましょう。上座・下座の他、眺めが一番良い席、空調が一番心地よい席はどこなのか。あるいは、店員を呼んで話をしやすい席(ホストの自分が座る席)はどこがよいかを事前に確認しておくことが大切です。

社長も交えて複数人での会食であれば、一番出入りしやすい末席で、すぐに動けるようにしておきましょう。そうした席だと、店員と話をしやすく、注文などで大きな声を出さずに済むので、場の雰囲気を壊すこともありません。

なお、ホストとはいえ、段取りばかりに気を取られてはいけません。出席者の顔ぶれや会食の趣旨などにもよりますが、社長との会話を楽しんだり、社長の話を聞いたりして、社長と一緒の時間を楽しむようにしましょう。

4 「会話」は話して聞くのが大事

1)“現場感”のある話

社長は、社員のことをもっと知りたいと思っています。特に日ごろなかなか接する機会のない社員と一緒に行動できるときにこそ、いろいろな話をしたいと考えているものです。

そこで、社長と一緒に行動するときは、できるだけ現場感のある話を心掛けてみましょう。この機会に、日ごろ温めている企画があれば、「こんなことがしたいです!」と社長に直接ぶつけてみるのも一策です。

良い話ばかりでなくてもかまいません。例えば、今、職場で困っていることを話したり、思い切って、自分自身の仕事上の悩みを話したりしてみるのもよいでしょう。社長は、真剣に相談に乗ってくれるはずです。

2)パーソナルな引き出しを準備

社長が知りたいのは仕事の話だけではありません。社員はどのような趣味を持っているか、家族とはうまくいっているか、心身の健康状態は問題ないか。社長は、できるだけ社員のことを知りたいものです。

そこで、趣味や家族、出身地、学生時代の部活、最近読んだ本など、少し仕事から離れた話題で、自分のことを話せる引き出しを準備しておくとよいでしょう。格好つけて話をつくる必要はありません。ありのままの自分を話すことが大切です。

ただし、社長も交えて複数人で会食しているときは、自分ばかりでなく他の人にも話を振ることを忘れてはなりません。「△△さんはこの間、大きな魚を釣ったと言っていましたよね」など、他の人の趣味に関する話題を振るのもよいでしょう。

3)やっぱり聞きたい社長の話

自分が話すばかりではなく、社長に、少し仕事から離れた話を聞いてみるのも勉強になります。事前に、社長の趣味や愛読書、好きな偉人(歴史上の人物)などを調べておき、そのことを質問していろいろと教えてもらってもよいでしょう。

社長は、さまざまなことを知っていて、人生経験も豊富です。また、自分なりの哲学を持っていたり、何事にも“一家言”持っていたりするものです。こうした社長の話は普段はなかなか聞けない宝物です。

社長の話を聞くと「勉強になった」と感謝することがたくさんあるはずです。後日、「先日聞いた話にとても感動したので実践してみました(あるいは、もっと深く勉強してみました)」ということを社長に伝えれば、感謝の気持ちがきっと伝わります。

5 社長と一緒に行動して学べること

1)社長の行動は“教科書”

社長と一緒に行動することは、社員にとって大きな“学び”のチャンスです。社内の誰よりも働き、多くの経験を積んできた社長の一挙手一投足はまさに、ビジネスパーソンとしての“教科書”です。

仕事のことだけではありません。多くの社長は、恐らくどのような場所に行ってもそこになじんで見えるでしょう。どの場の空気にも溶け込み、気張らず自然な立ち居振る舞いをするのは、簡単に見えて、とても難しいことなのです。

日ごろ社長と一緒に行動する機会の少ない若手社員や中堅社員は、社長と一緒に行動することで、普段の仕事では得られない気付きを得られるはずです。例えば、次の3つの点は、社長と一緒に行動した経験のある人の多くが実感できるものです。

2)社長の時間の使い方

社長と一緒に行動すると、その時間の使い方に驚くはずです。社長は移動中も時間を無駄にしません。資料を読む、メールを送る、顧客に連絡を入れる……。そうした姿から、隙間時間の使い方を学ぶことができるでしょう。

社長が時間を無駄にしないのは仕事が忙しいからというだけではありません。時間をやりくりして本を読み、勉強会に出かけ、そして社員を育てています。つまり、会社の未来に投資する時間をつくるため、社長は少しの時間も無駄にできないのです。

3)社長のお金の使い方

社長は、「お金を使うべきところには使い、使う必要のないところには使わない」ということを徹底しています。例えば、大切に思う社員のためになることであれば、お金を使うことを惜しみません。

こんな話があります。社員旅行に行ったある会社では社員が大いに飲んだため、予算オーバーしそうになりました。それを見た社長が一言。「会社で全部持つから好きなだけ飲んでください。これは社員のための旅行です」。その社長の、社員への感謝の気持ちだったのでしょう。

4)社長の社員を思う気持ち

もしかすると、最初に社長と一緒に行動したときに、一番驚くのは、社長の社員を思う強い気持ちかもしれません。一緒に行動していると、その言動の端々に社員に対する思いや愛情を感じることができるでしょう。

社長は社員の想像以上に社員のことを思っています。社長の時間の使い方もお金の使い方も、社員に感謝し、社員の未来を思っている証しです。一緒に行動した社長の姿からそのことが少しでも社員に伝わってほしい。それが、社長の本音なのかもしれません。

以上(2020年7月)

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事業承継計画を見直すためのポイント

書いてあること

  • 主な読者:事業承継を考えている中小企業の経営者
  • 課題:円滑に事業承継を成功させるためには何から手を付けてよいかわからない
  • 解決策:事業承継の主なポイントである人、資産、知的資産の承継についてポイントを解説する

1 事業承継の範囲

事業承継は、中小企業(特にオーナー企業)の経営者にとって重要な経営課題です。事業承継を円滑に進めるためには、さまざまな対策が必要であり、相応の期間がかかります。そのため、事業承継は早めに計画を立て、取り組みを進めていくことが大切です。

事業承継は、事業そのものを承継する取り組みであり、その構成要素は広範囲にわたります。誰か(親族内外)に、株式を渡せばよいというわけではなく、その他にも事業運営に関わる有形・無形の資産を承継しなければなりません。

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これらは、事業承継計画に沿って承継されます。例えば、「息子に経営権を承継させる場合は株式の評価を下げつつ、知的財産はきちんと権利化して守る」といったようにです。以降でそれぞれのポイントを確認していきます。

2 事業承継の類型

事業承継の主な方法は「親族内承継」「役員・従業員承継」「M&A」に大別されます。最も多いのは親族内承継ですが、最近は後継者不足からM&Aなどの親族外承継も増えています。それぞれのメリットを確認してみましょう。

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次章では、中小企業に多い親族内承継を対象に、「人(経営)の承継」「資産の承継」「知的資産の承継」の3つの観点から、事業承継対策をチェックする際の基本的なポイントを確認します。

3 「人(経営)の承継」のポイント

1)後継者の育成

後継者の育成方法は、事業承継に費やすことのできる期間や後継者の能力などに応じて異なります。通常は、「自社で教育する」「他社で経験を積ませる」「外部研修機関で知識を習得させる」の3つを組み合わせます。

1.自社で教育する

社内の主要部門をローテーションさせたり、関連会社の経営を任せたりして、自社の業務内容や実情を肌で感じながら経験を積む機会を与えます。経営者が直接育成に携わることで、いわゆる“帝王学”を教え込むこともできます。

2.他社で経験を積ませる

経営者の親族という甘えのない環境で経験を積ませることができます。また、自社とは異なる業務内容や経営手法など、社内での教育では得ることのできない知識や経験を習得させることも可能です。人脈の形成にもつながります。

3.外部研修機関で知識を習得させる

外部研修機関のセミナーや勉強会などに参加させます。経営に関する幅広い知識を体系的に習得させることができます。また、他の参加者や講師との人脈の形成にもつながります。

2)理念や価値観の承継

経営者は、経営に対する理念や価値観を有しています。これらが明文化されていない場合もあるので、経営者は日々のコミュニケーションの中で後継者に伝え、また後継者は理念や価値観を理解・尊重して会社を率いなければなりません。

4 「資産の承継」のポイント

1)株式の集中

事業承継後、後継者の意思決定を迅速に経営に反映させるためには、後継者や後継者に友好的な株主の元に株式の相当数を集中させることが望まれます。目安は、株主総会で重要事項を決議するために必要な3分の2以上の議決権を確保できる株式数です。

経営者が目安となる株式を保有していれば、相続などを通じて後継者に株式を集中させます。株式が分散している場合は、後継者や会社が株式の買い取り、後継者を対象とした新規株式の発行などを通じて、後継者の持株比率を高めるなどします。

また、事業承継後の株式分散防止策などとして、定款に株式譲渡制限や株式の買い取り請求に関する事項を定めるなど、必要に応じて会社法に基づく対策も検討するようにしましょう。

なお、株式の集中においては、経営者と友好的な関係であった株主が、後継者に対しても友好的であるとは限らないという点に留意が必要です。中小企業の場合は、経営者個人への信頼に基づき関係を構築していることが多く、株主も例外ではありません。

2)事業用資産の集中

中小企業の場合、経営者の個人資産を事業用資産として利用していることがあります。相続などを通じてこうした資産が分散すると、事業継続に支障を来すことにもなりかねません。株式同様、事業用資産も後継者が集中して承継するなどの対策が必要です。

3)相続対策

後継者へ株式および事業用資産の集中を図る際のポイントは相続対策です。相続や贈与に際しては法定相続分や遺留分(一定の相続人が最低限相続できる財産)などの制約を受ける点を勘案しなければなりません。

こうした点を考慮しておかなければ、「主な相続財産が株式や事業用資産しかなく、これらの資産が後継者以外の相続人の手に渡ってしまった」など、後継者への株式および事業用資産の集中を図ることができなくなってしまいます。

相続対策は、経営者の所有財産や相続人の数などを把握した上で、財産の移転・財産の評価引き下げ、納税資金の確保などの観点で検討します。その際、税法などの専門的な知識が不可欠なので、税理士や弁護士などの専門家に相談するようにしましょう。

なお、財産の移転とは、相続発生前に、株式および事業用資産を後継者や会社などに移転することです。贈与や売買などによって行います。

財産の評価引き下げとは、資産の移転などをスムーズに行うために、事前に株式などの評価額を引き下げることです。株式の評価額の引き下げに効果がある役員退職慰労金の支給などを検討することが一般的です。  

納税資金の確保とは、財産のほとんどが株式や不動産などで占められ、金融資産(現金・預金、市場性のある有価証券など)が少ない場合に、相続人のために行う対策です。生命保険の活用などを検討することが一般的です。

5 「知的資産の承継」のポイント

知的資産とは、特許などのいわゆる知的財産権にとどまらず、「人材、技術、組織力、経営理念、顧客とのネットワーク」など、通常は財務諸表には表れない企業の財産を指します。

知的財産権の活用は、中小企業の重要な経営課題です。手続きの煩雑さを嫌う経営者もいますが、事業承継までを見据えて計画的に進める必要があります。また、知的資産をリスト化しておくことも欠かせません。

この他、人材、技術、組織力などが自社ならではの強みになっていることもあります。経営者は、後継者や社員と対話をしながら、組織運営に関する多様な資産を承継していく必要があります。

以上(2018年10月)

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初めてオフィスを移転するときに知っておきたいこと

書いてあること

  • 主な読者:初めてオフィスの移転を考える経営者
  • 課題:オフィス移転に必要な手続きやかかる費用がわからない
  • 解決策:現在のオフィスを評価し、移転するオフィスを探すための方法や、オフィス移転に必要な公共的な手続きなどを整理する

1 オフィス移転の検討プロセス

オフィス環境は、従業員のワークスタイルやモチベーション、社内のコミュニケーション、人的なネットワークにも影響を及ぼします。働きやすく魅力的なオフィス環境を提供することで、人材の定着につながりやすく、人材採用にも効果が期待されます。

本稿では、オフィスビルにテナントとして入居している企業(株式会社)を想定し、別のオフィスビルに移転する場合の実務について考えていきます。

1)現状のオフィスについて評価する

オフィス移転の検討に際しては、まず、次のような視点で現状のオフィスについて評価することが大切です。

1.現状のオフィス面積は、適正なのか

現状のオフィス面積をベースとして増員計画に合わせて案分し、必要な面積を算出する方法では、オフィスが適正な広さかどうかを判断できないでしょう。そこで、同規模企業や同業種企業と比較することで、適正なオフィス面積を考えていくことが求められます。

日本ビルヂング協会連合会が発行する「ビル実態調査(全国版)」では、契約面積ベースのオフィスワーカー1人当たり床面積の推移などが掲載されており、参考にすることができます。

2.現在支払っている賃料は、適正なのか

現在支払っている賃料が相場と比べて適正なのかを確認します。例えば、不動産流通推進センターが運営する総合不動産情報サイト「不動産ジャパン」では、不動産流通4団体(全国宅地建物取引業協会連合会、不動産流通経営協会、全日本不動産協会、全国住宅産業協会)に加盟する全国の不動産会社およびその営業所が持つ物件情報の中から、エリア・路線などの条件を入力して、事業用物件を検索できます。また、オフィス仲介大手の三鬼商事、三幸エステート、シービーアールイーなどは、主要都市のオフィス市況データを公表しています。

■不動産ジャパン■
http://www.fudousan.or.jp/
■三鬼商事■
http://www.e-miki.com/
■三幸エステート■
http://www.sanko-e.co.jp/
■シービーアールイー■
https://www.cbre-propertysearch.jp/

現在支払っている賃料について、これらから得られる情報と比較し、移転による削減余地がどれくらいあるのか把握します。

3.移転する場合、イニシャルコストはどの程度掛かるのか

オフィス移転に掛かるイニシャルコストは、敷金、礼金、仲介手数料、前家賃、前共益費、火災保険料、内装工事費、設備工事費、家具・備品購入代、引っ越し代、名刺や封筒の印刷代など多岐にわたります。これらの金額を全て見積もる必要があります。

なお、イニシャルコストの中には経費として損金算入できない費用もあります。詳細は税理士などに確認するようにしましょう。

2)移転先オフィスビルの選定

移転先オフィスビルについては、不動産会社に仲介を依頼するのが一般的です。その際には、立地条件、必要面積、賃料、移転時期に加え、オフィスビルの仕様(天井高、床荷重、電気容量、OAフロアの有無、個別空調の有無、セキュリティーの有無、喫煙コーナーの有無、駐車場・駐輪場の有無など)の条件を設定した上で依頼します。

なお、1981(昭和56)年5月31日以前に建築確認を受けた建物であれば、耐震診断を受け、必要に応じた耐震補強が行われているかどうかを確かめておきましょう。

3)パートナー(移転担当業者)の選定

オフィス移転に関する業務は非常に多岐にわたります。通常業務と並行してオフィス移転を進めるために、ノウハウ・実績を持つパートナーを選定するのが一般的です。

パートナー候補先としては、オフィス家具メーカー、建築デザイン事務所、プロパティマネジメント会社、通信系設備工事会社などさまざまな企業が挙げられます。自社のオフィス移転の目的や新しいオフィスのコンセプトに応じて、必要性・重要性が高い業務を得意とするパートナーを選定することが大切です。ノウハウ・実績などからパートナー候補先を数社に絞り、各社にプレゼンテーションを行ってもらい、提案の良しあし(技術面、コスト面)や、パートナー候補先の担当スタッフの力量を見定めるとよいでしょう。

4)現状のオフィスの解約予告期間の確認

不動産の賃貸借契約書には、「(借主は)少なくとも○○日前までに解約の申し入れを行うことにより、契約を解除できる」といった、契約解除に関する条項があります。オフィス移転のスケジュールを立てるに当たって、まずは、現在のオフィスの賃貸借契約書で、この条項を確認することが大切です。

現在のオフィスと移転後のオフィスの賃料について、両方負担する期間をなるべく短くするため、この解約予告期間を勘案して移転の時期や条件を検討します。

2 オフィス移転の実施プロセス

1)不動産会社へ紹介を依頼~現地内見

移転の時期や希望する条件が固まったら、不動産会社に移転先オフィスビルの紹介を依頼します。移転先の候補となる物件については、現地に赴いて内見をします。あらかじめ設定していた条件に加え、フロアの形状、フロア内の柱の有無、眺望、採光、ブラインドの有無、入居している他のテナントの状況、エントランスの開閉時間、エレベーター・トイレなど共用部分の状況、携帯電話の電波状況などを確認します。

2)申し込みと条件交渉~審査書類提出

移転先の候補として気に入った物件が見つかれば、不動産会社へ申し込みをして、その物件を押さえます。この段階で不動産会社を通じて、移転先候補の物件の貸主に条件交渉を行います。賃料・共益費の金額交渉とともに、フリーレント(賃料を無料とする期間)の交渉も行うとよいでしょう。共益費についても、交渉次第で入居工事着工時から請求対象とするといった条件が得られることもあります。また、間仕切りなどの内装工事やオフィス内の電気コンセント工事については、借主負担で貸主側が指定する施工業者が行う条件となっているケースが多いといわれますが、交渉次第で、借主負担で借主側が指定する施工業者が行うことに変更できる場合があります。

なお、宅地建物取引業法では、賃貸借契約を締結するまでの間に、仲介や代理を行う不動産会社は、入居予定者に対して賃借物件や契約条件に関する重要事項の説明をしなければならないと定められています。重要事項説明は、宅地建物取引士が内容を記載した書面に記名押印し、その書面を交付した上で、口頭で説明を行わなければなりません。重要事項説明書に記載されていることは、「対象物件に関する事項」と「取引条件に関する事項」に大別できます。確認していた情報と異なる説明はないか、その他気になる事実はないかなど、何か不明な点があれば納得のいくまで確認しましょう。
不動産会社が貸主の場合は、重要事項説明の義務がないので、物件や契約条件について気になることがあれば、自ら不動産会社に確認するようにしましょう。

その後、不動産会社を通じて審査書類を提出します。主な審査書類として次が挙げられます。

  • 法人の登記簿謄本(写し)
  • 法人の概要(会社のパンフレット等)
  • 直近3期分の決算書類
  • 連帯保証人の身分証明書(写し)
  • 連帯保証人の収入証明(写し)

なお、提出が求められる審査書類は、物件の貸主によって異なるので、あらかじめ確認しておくことが大切です。

3)審査通過~現状のオフィスの解約申し入れ

審査書類を提出後、審査を通過した段階で現状のオフィスを管理している先に解約を申し入れます。解約の申し入れは基本的に、電話ではなく書面で行います。この解約通知書面は、契約時に渡されるのが一般的で、その書面をFAXまたは郵送で送付します。

なお、解約の申し入れ後は、日割り計算で賃料を支払うのが通常です。送付日が解約を受け付けた日付となるため、早めに対応するとよいでしょう。

4)電話回線・インターネット回線の移転の手配、各種見積もり

移転に向けて、電話回線・インターネット回線の移転の手配を行い、各種見積もりを取ります。

  • オフィスのレイアウト作成、内装工事の見積もり
  • 購入する家具・備品の見積もり
  • 通信機器・LAN設定工事の見積もり
  • 引っ越しの見積もり

5)賃貸借契約の締結

契約時に必要なものとしては、一般的に次の書類があります。契約によって必要な書類は異なるので、事前に不動産会社や貸主に確認の上、契約日までに用意します。

  • 法人の登記簿謄本
  • 法人の印鑑証明書
  • 連帯保証人の住民票
  • 連帯保証人の印鑑証明書

賃貸借契約を締結した後に一方的に解約を申し出ても、それが認められるとは限らず、違約金などが発生する可能性もあるので、事前に条件交渉の結果が正確に契約書に反映されているかをしっかりと確認することが大切です。内容に問題がなければ契約書に署名・押印を行います。敷金、礼金、仲介手数料、火災保険料などの支払いを行い、費用に応じて領収書、預かり証などを受け取った後、鍵が渡されると契約は完了します。
契約に必要な初期費用は、契約時に支払うのが基本ですが、事前に振り込む方法を取る場合もあります。貸主、不動産会社、保険会社それぞれに必要な金額を支払い、敷金に関しては預かり証、それ以外の支払いについては、領収書を受け取ります。火災保険料については、不動産会社経由で保険会社に支払い、後日郵送で領収書や保険証書を受け取る場合が多いようです。

6)各種発注~工事の施工

賃貸借契約完了後に、内装工事、家具・備品、通信機器・LAN設定工事、引っ越しの発注を行います。また、取引先などに出す移転通知状や、社用封筒、名刺、ゴム印などの発注を済ませます。

内装工事に入る前には、レイアウトと工事内容が記載された図面、工程表を貸主に提出して、許可を得ます。騒音が出る工事については、他のテナントの迷惑にならないよう、土日にしか作業ができない場合も多いため、注意が必要です。

7)引っ越し

引っ越しでは、前日までに梱包作業を済ませておき、移転先での開梱作業で混乱が生じないようにしましょう。梱包した荷物と移転後のレイアウト図面に番号を振って引っ越し業者に渡し、梱包した荷物をどこに配置するのか分かるようにしておくとよいでしょう。

粗大ごみが出る場合、各市区町村の窓口に問い合わせ、日時・場所など指示に従って出します。回収は基本的に有料なので(無料の市町村もあります)、問い合わせのときに料金や支払い方法について確認します。ビルで指定の業者がある場合には、ビルの管理会社から収集日や収集方法などの説明を受けます。

3 移転に伴う関係官庁への手続き

移転によって所在地が変更となるため、登記、税務、労務などについて関係官庁へ必要書類を提出し、手続きをしなければなりません。オフィス移転に伴って必要となる関係官庁への主な手続き(例)は次の通りです。

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ケースによって提出書類の様式や添付書類、提出期限が異なるため、実際には関係官庁に問い合わせて確認することが大切です。必要に応じて、司法書士、行政書士、税理士、社会保険労務士に手続きの代行を依頼することも検討するとよいでしょう。

以上(2018年10月)

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入会金・会費などの税務上の取り扱い

書いてあること

  • 主な読者:適正な税務処理を徹底したい経営者・税務担当者
  • 課題:入会金や会費は内容によっては、税務上役員報酬や給与とみなされることがある
  • 解決策:ゴルフクラブの入会金や同業団体の会費など、会社で発生する主な入会金や会費を抜粋して、税務上の取り扱いを解説

1 ゴルフクラブの入会金など

1)ゴルフクラブの入会金

法人がゴルフクラブに対して支出した入会金については、次のいずれかの場合に応じて処理します(法人税基本通達9-7-11)。

1.法人会員としてゴルフクラブに入会するケース

法人会員として入会する場合、入会金は資産として計上します。

ただし、記名式の法人会員で名義人として特定の役員または使用人が法人の業務に関係なく利用するため、これらの者が負担すべきものであると認められるときは、当該入会金に相当する金額は、これらの者に対する給与とします。

2.個人会員としてゴルフクラブに入会するケース

個人会員として入会する場合、入会金は個人会員たる特定の役員または使用人に対する給与とします。

ただし、無記名式の法人会員制度が無いため個人会員として入会し、その入会金を法人が資産に計上した場合、その入会が法人の業務の遂行上必要であるため法人の負担すべきものであると認められるときは、その会計処理を認めます。

入会金はゴルフクラブに入会するために支出する費用なので、他人の有する会員権を購入した場合、その購入代価の他、他人の名義を変更するためにゴルフクラブに支出する費用も含まれます。

2)資産に計上した入会金の処理

法人が資産に計上した入会金は償却を認められていません。しかし、ゴルフクラブを脱退してもその返還を受けることができない場合、当該入会金に相当する金額およびその入会金に係る譲渡損失に相当する金額は、脱退または譲渡をした日の属する事業年度の損金の額に算入します(法人税基本通達9-7-12)。

3)年会費その他の費用

法人がゴルフクラブに支出する年会費、年決めロッカー料その他の費用(その名義人を変更するために支出する名義書換料を含み、プレーする場合に直接要する費用を除く)については、「入会金が資産として計上されている場合には交際費」とし、「入会金が給与とされている場合には会員たる特定の役員または使用人に対する給与」とします(法人税基本通達9-7-13)。

プレーする場合に直接要する費用については、入会金を資産に計上しているかどうかにかかわらず、その費用が法人の業務の遂行上必要なものであると認められる場合には交際費とし、その他の場合には当該役員または使用人に対する給与とします。

4)レジャークラブの入会金

前述の「ゴルフクラブの入会金」および「資産に計上した入会金の処理」の取り扱いは、法人がレジャークラブに対して支出した入会金について準用します。

ただし、レジャークラブ会員としての有効期間が定められており、かつ、その脱退に際して入会金相当額の返還を受けることができないものとされているレジャークラブに対して支出する入会金(役員または使用人に対する給与とされるものを除きます)については、繰延資産として償却することができます(法人税基本通達9-7-13の2)。

レジャークラブとは、宿泊施設、体育施設、遊技施設その他のレジャー施設を会員に利用させることを目的とするクラブで、ゴルフクラブ以外のものをいいます。

年会費その他の費用は、その使途に応じて交際費または福利厚生費もしくは給与となることに留意を要します。

施設を利用する人が特定の役員や社員だけの場合は、入会金も年会費も給与になります。また、特定の社員の他に取引先の接待などに使えば、年会費は交際費になります。そして、施設を従業員全員が平等に使えるのならば、年会費は福利厚生費になります。

2 社交団体の入会金など

1)社交団体の入会金

法人が社交団体(ゴルフクラブおよびレジャークラブを除きます)に対して支出する入会金については、次の各場合に応じて処理します(法人税基本通達9-7-14)。

1.法人会員として入会する場合

法人会員として入会する場合、入会金は支出の日の属する事業年度の交際費とします。

2.個人会員として入会する場合

個人会員として入会する場合、入会金は個人会員たる特定の役員または使用人に対する給与とします。ただし、法人会員制度がないため個人会員として入会した場合において、その入会が法人の業務の遂行上必要であると認められるときは、その入会金は支出の日に属する事業年度の交際費とします。

2)社交団体の会費など

法人がその入会している社交団体に対して支出した会費その他の費用については、次の区分に応じて処理します(法人税基本通達9-7-15)。

1.経常会費

経常会費については、その入会金が交際費に該当する場合には交際費とし、その入会金が給与に該当する場合には会員たる特定の役員または使用人に対する給与とします。

2.経常会費以外の費用

経常会費以外の費用については、その費用が法人の業務の遂行上必要なものであると認められる場合には交際費とし、会員たる特定の役員または使用人の負担すべきものであると認められる場合には当該役員または使用人に対する給与とします。

3)ロータリークラブおよびライオンズクラブの入会金など

法人がロータリークラブまたはライオンズクラブに対する入会金または会費などを負担した場合には、次によります(法人税基本通達9-7-15の2)。

1.入会金または経常会費として負担した金額

入会金または経常会費として負担した金額は、その支出をした日の属する事業年度の交際費とします。

2.それ以外に負担した金額

それ以外に負担した金額は、その支出の目的に応じて寄附金または交際費とします。

ただし、会員たる特定の役員または使用人の負担すべきものであると認められる場合には、当該負担した金額に相当する金額は、当該役員または使用人に対する給与とします。

3 同業団体の会費など

1)同業団体などの会費

法人がその所属する協会、連盟その他の同業団体などに対して支出した会費の取り扱いについては次によります(法人税基本通達9-7-15の3)。

1.通常会費

同業団体などがその構成員のために行う広報活動、調査研究、研修指導、福利厚生その他同業団体としての通常の業務運営のために、経常的に要する費用の分担額として支出する通常会費については、支出をした日の属する事業年度の損金の額に算入します。

ただし、当該同業団体などにおいてその受け入れた通常会費につき不相当に多額の剰余金が生じていると認められる場合には、当該剰余金が生じたとき以後に支出する通常会費については、当該剰余金の額が適正な額になるまでは、前払費用として損金の額に算入しないものとします。

同業団体などの役員または使用人に対する賞与または退職給与の支給に充てるために引き当てられた金額で適正と認められるものは、剰余金の額に含めないことができます。

2.その他の会費

同業団体などが次に掲げるような目的のために支出する費用の分担額として支出する会費については、前払費用とし、当該同業団体などがこれらの支出をした日にその使途に応じて当該法人がその支出をしたものとします。

  • 会館その他特別な施設の取得または改良
  • 会員相互の共済
  • 会員相互または業界の関係先などとの懇親など
  • 政治献金その他の寄附

通常会費として支出したものであっても、その全部または一部が当該同業団体などにおいて上記のような目的のための支出に充てられた場合には、その会費の額のうちその充てられた部分に対応する金額については、その他の会費に該当します。

ただし、その同業団体などにおける支出が当該同業団体などの業務運営の一環として通常要すると認められる程度のものである場合には、この限りでありません。

2)災害見舞金に充てるために同業団体などへ拠出する分担金など

法人が、その所属する協会、連盟その他の同業団体などの構成員の有する事業用資産について災害により損失が生じた場合に、その損失の補てんを目的とする構成員相互の扶助等に係る規約など(災害の発生を機に新たに定めたものを含む)に基づき、合理的な基準に従って当該災害発生後に当該同業団体などから賦課され、拠出した分担金などは、支出した日の属する事業年度の損金の額に算入します(法人税基本通達9-7-15の4)。

以上(2019年4月)
(監修 税理士法人コレド会計 石田和也)

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