“社員と確実につながる” ための安否確認のポイントは?/中小企業のためのBCP

1 複数の安否確認手段を準備

過去の災害では、通信規制、メールサーバーへのアクセス集中、バッテリー切れ、社員のアドレス変更によるメールの不達などによって、安否確認が正常に行えなかった会社がありました。

どの安否確認手段も完璧ではないため(下図を参照)、できれば複数の安否確認手段を準備しておくのがよいでしょう。

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2 報告事項を決めて社員に周知

「氏名」「けがの有無」「現在地」「出社可否(出社不可の場合はその理由)」など、報告事・けがはありません項を決めて社員に周知しておく・自宅にいますと、状況を円滑に把握できます。

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以上(2020年4月)
(監修 aaaリサーチアンドコンサルティング 代表 中小企業診断士 福島一公)

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画像:Maslakhatul Khasanah-Shutterstock

中核事業やBCP の発動基準はどうやって決める?/中小企業のためのBCP

1 重要顧客・重要取引先で特定

BCPでは、「中核事業」を特定します。中核事業とは、会社の存続に関わる最も重要性(または緊急性)の高い事業のことです。中小企業は単一事業のみを手掛けていることが少なくないため、「中核事業」を「重要顧客・重要取引先」と読み替えるとイメージしやすくなります。つまり、「そこからの収益や調達などが途絶えると、会社の存続が危ぶまれる顧客・取引先」を特定するのです。

重要顧客を特定する基準としては、「収益」が最も分かりやすいでしょう。最も収益が大きい顧客への商品・サービスの提供を止めないためにはどうすればよいかを検討し、BCPにまとめます。例えば、重要顧客の担当者を増やすなどの対策が考えられます。

また、重要取引先を特定する基準としては、「取引先への依存度」が最も分かりやすいでしょう。例えば、その取引先から部品が調達されないと商品の製造ができない場合、依存度が高いといえるでしょう。こうした場合、在庫量を見直したり、取引金額が高くなっても問題ないように代替先を確保したりする必要があります。

2 BCPの発動基準(誰が、いつ、発動するか)の決め方

誰が、いつ、BCPを発動するかというのは、BCPの意外な盲点です。「誰が」については、通常は経営者がBCPの責任者としてBCPを発動します。しかし、経営者自身が被災することもあるため、万が一に備えて代理も任命しておきます。

難しいのは「いつ」です。タイミングは、災害や感染症などの状況によって変わります。BCPの責任者の判断を尊重しますが、災害の場合、「防災気象情報」を確認しましょう。

また、BCPの発動後に素早く運用体制に入るために、日ごろから、単なる避難訓練ではなく、BCPの発動後の体制を想定した訓練をすることが重要です。例えば、重要顧客や重要取引先に対する緊急連絡のロールプレイング、業務担当者の交代、リモートワークなどの訓練をします。

3 BCPを「定着させ、運用する」ポイント

平常時、社員はBCPについて真剣に考えることはないでしょう。しかし、そうして油断しているときに災害などが発生すると、現場は大いに混乱してしまいます。

そうならないように、経営者は社員のBCPに対する意識を高め続けなければなりません。定期的な訓練を行う他、「万が一の際に会社が被る影響」を共有するとよいでしょう。例えば、「重要顧客を失うと、収益が10分の1になる」など、赤裸々な数字を示すことで社員の意識が高まるでしょう。BCPは、「策定する」ことはもちろん、「定着させ、運用する」ことも非常に重要です。

以上(2020年4月)
(監修 ひらきプランニング 代表取締役 平野喜久)

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画像:Maslakhatul Khasanah-Shutterstock

【朝礼】欲しい情報は私に聞きなさい!

今わが社では、私を含む全社員のスケジュールがイントラネットに登録されていて、誰でもすぐに確認することができます。こうしたスケジュール管理を始めて数年、ついに私が待ち望んできた行動をしてくれる社員が出たので、皆さんにお伝えします。

数カ月前から、私はわが社にとって非常に重要なクライアントとの会談を継続しています。イントラネットを見れば誰にでも分かるのですが、先日、私がその会談から戻ってくるなり、「どのような話だったのですか? とても気になるので聞かせてください」と質問してくる社員がいたのです。その社員は、私に直接話を聞くことに緊張していました。また、状況をよく知らないためどう質問してよいのか分からず、ストレートな言葉をぶつけてきたのでしょう。

私は質問してきた社員を高く評価しています。重要クライアントの動きは私たちの仕事に大きな影響を与えるわけですから、その動向が気になって当然です。逆に、そこにすら関心が持てないような社員は、周囲で何が起きようと私や上司が指示するままに動くということなのでしょうか。「目先の仕事が忙しい」「自分はまだ重要事項を知るレベルではない」なんて、情けないことを言わないでもらいたいのです。重要クライアントとトラブルになれば、皆さんの目先の仕事は一瞬でなくなります。そんな重要な情報だからこそ、皆さんは自主的に知るべきだと思います。

私は、質問してきた社員に重要クライアントとの会談の内容を事細かに説明しました。2人だけで30分くらい話をしたと思います。会談の内容はもちろんですが、その他にも私の交渉シナリオ、先方のキーマンとどのように信頼関係を築いたか、実はこの会談に至る1年前から関係者を少しずつ巻き込んで伏線を敷いていたことなど、とにかく私の“頭の中”をできるだけ伝えました。その社員の質問にも全て答えました。最初はかなり緊張していた様子でしたが、最後は身を乗り出して質問してきたのが印象的でした。

さて皆さんは覚えているでしょうか? この重要クライアントと大きな会談を持つことになるであろうことを、私は半年前から繰り返し伝えてきています。「情報を出してほしい」と皆さんは言いますが、その受け皿がなければ意味がないような気がします。私に質問してきた社員は、自らの行動によって情報を飛躍的にアップデートさせ、日々の自分の行動にリンクさせたのです。

最後に、その社員の背中を押した上司がいることをお伝えします。当初、その社員は自分の上司に重要クライアントについて質問したそうですが、上司は「自分が話すより、社長から直接聞いたほうがより生の情報が得られる。私も何度も社長に質問しているが、きちんと答えてくれる」と言ってくれたそうです。私には皆さんの質問に答える義務があります。このことを忘れないでください。

以上(2020年4月)

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画像:Mariko Mitsuda

災害、感染症などの脅威から社員や会社を守るBCP とは?/中小企業のためのBCP

BCPの基本的な考え方

BCPとは、会社が災害、感染症などの緊急事態に遭遇した場合に、損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業を継続・早期復旧するため、平常時の活動や緊急時の事業継続の方法、手段などについて定めた計画のことです。

災害時の避難マニュアルなどは、あくまでも BCPの要素の1つです。避難マニュアルによって社員の命を守ることができても、顧客データが消失したり、工場の復旧に必要な運転資金が確保できなかったりすると、会社は事業を継続することができないからです。

BCPの策定内容は会社によって異なりますが、中小企業庁「BCP様式類(記入シート)入門コース」の場合、おおむね下図の構成になっています。

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緊急事態に遭遇した直後だけでなく、そこから事業を再開するまでの間に、社員や会社がどのような脅威にさらされるかを想定し、事前に対策を準備しておくことがBCPの基本です。

以上(2020年4月)
(監修 ひらきプランニング 代表取締役 平野喜久)

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画像:Maslakhatul Khasanah-Shutterstock

2020年2月開催のオンラインカンファレンス成功秘話〜たった2日の準備でオンライン化を実現〜/岡目八目リポート

年間1000人以上の経営者と会い、人と人とのご縁をつなぐ代表世話人 杉浦佳浩氏。ベンチャーやユニークな中小企業の目利きである杉浦氏が今回紹介するのは、松林大輔さん((株)ストリートスマート社 代表取締役)です。

働き方改革元年と言われた、2017年に第1回の【働き方を考えるカンファレンス】を設立1年未満の一般社団法人が開催し、大いに、良い意味で波紋、波及効果を招いた団体が、at will work。その代表理事が松林さんです。
このカンファレンスも今年4回目、予定通り開催されようとしていました、2日前までは。しかし、当日は新型肺炎の影響下、カンファレンス会場の虎ノ門ヒルズには関係者のみ、会場を埋め尽くすはずの聴衆のみなさんはオンラインでの参加、オンラインカンファレンスという新たな発信を見事にやりきった、松林さんに、団体のこと、カンファレンスのことについて話を伺いました。

●at Will Work
●カンファレンスサイト

本文の前に、私自身のテレワークに関してお話しておきたいと思います。
フリーランスになって6年目、独立当初からカフェが事務所、仕事場であり応接、面談場所、テレビ会議の場所、東京・大阪を行き来しながら、安価にもしくは無料で活用できるITツールのZoom、whereby、Chatwork、G Suite等々を駆使して時間場所を気にしない、不自由さを感じない、まさに意志を持った働き方(at will work)を体現できていると思っています。さらにここ最近、私が主催するイベントや研修会では、You Tubeライブを活用して場所にこだわらない配信も2年ほど前から実践しています。私自身からするとこのテレワークに騒いでいる世間には今更感を感じています。
写真の通り、

今回のインタビューも実はテレビ会議で大阪にいらっしゃる松林さんと東京にいる私とをつないで行っていました。テレワークによる恩恵も享受、理解しておりこのラクチンな働き方の動きはもう後戻りはしないと思います。

1 一般社団法人at will workのこと概要と活動について

1)2016年発足当初のこと

at will workの発足について、お伝えしておきたいこと。それは松林さんが起業した会社、(株)ストリートスマートの事業内容が大きく影響しています。同社は、Google社のクラウドツールであるG Suiteを企業や学校に導入支援することを大きな柱としています。その事業活動自体が、働き方の変革を先取りしたものであり私自身もその恩恵を大きく享受している一人です。この事業を通じてGoogle社とも近しい関係にあり、Google社が世界的な活動として展開していたのが、Womenwillの活動でした。そこに松林さんも賛同し、私も応援させていただき、大阪でのイベントは会場を私が提供させていただくお手伝いをいたしました。そのGoogle側の中心人物だった藤本さんが、女性のみに囚われることなく、性別、職種、多様な働き方全般にアクセスできるような団体の構想をもった時に、社内での活動に限界を感じ、新しい枠組み創設する、その実現のためにat will work設立に至ります。
このあたりの詳細は、当時の記事を参考までに。藤本さんの記事はこちらです。

2)2017年1回目のカンファレンスを開催 ヒヤヒヤしかし神風が吹きました

3年前に1回目のカンファレンス、その時、鮮明に覚えているのが開催1ヶ月ほど前の時点で、松林さんからの連絡でした。それが、『杉浦さん!開催まであと少しなのに参加申込みが100名にも到達していません!やばいです。。。』というもの。結果から申しますと、600名のカンファレンスルームが満席になりました。
それが開催前月の日経ほか、政府、首相の働き方改革断行の年であるという堅い意思表示によるものでした。
2017年初めの記事はこちらです。この発表のあたりから一気に参加申し込みが殺到し、設立1年未満の団体でありながら虎ノ門ヒルズのカンファレンス会場が満席となりました。
当日は50名を超えるスピーカー、当時経産大臣だった、世耕さんまでお越しいただいて盛り沢山な一日でした。
【人と企業の「これからの働き方」や「理想の働き方」を考え、実現する】をテーマに開催に至りました。
当日の詳細はこちらをご覧ください。
開催翌日には、団体の背中を押すような記事も出てますます活動に勢いがでました。日経の記事はこちらです。

3)活動を通じて発信してきたこと 変化への気付き

at Will Work が目指すのは「働き方の選択肢がある社会」。そこを、当初から5年間限定での活動と決めて運営しているのも大きな特徴に思います。時代が変わろうとうするところに固執しないで変化を創出できれば自分たちの活動は終わりを迎える。潔い、心地よい活動と思います。2017年以後のテーマと特徴を以下に。

・2018年→「働くを定義∞する」 詳細はこちらです。

個人だけではなく会社もまた様々。歴史を紡いできた会社もあれば、新しく産声をあげたばかりの会社もあります。人と同じように、また会社も様々なのです。そこには多くの”ものさし”が存在しています。その”ものさし”は決して一つだけではありません。だからこそ自分が持っている”ものさし”と違うと戸惑い、不安になるのではないでしょうか。at Will Work が目指すのは「働き方の選択肢がある社会」
それは個人も、会社も、社会にも選択肢があることを指しています。その選択肢は実に様々なのではないでしょうか。そして同時に、働き方自体も様々であると私たちは考えます。(サイトから)

・2019年→「働くをひも解く」 詳細はこちらです。

2019年のカンファレンスは、5回実施するat Will Work の真ん中である3回目になります。これからの働き方を考えていく中で、“だからこそ”大事なことは今までの働き方を知ることだと考えました。新しいことだけを追い求めるのではなく、続けていくこともあるはず。例えば、リモートワークやフリーアドレス、WeWorkなどの新しいオフィスの形態が増えていますが、そもそも“オフィス”はなぜ必要だったのか、どのような歴史を歩んできたのか、その歴史をひも解くことによりオフィスのあり方を考えていくことができるのではないでしょうか。(サイトから)

働くと経営課題の画像です

・2020年→働くと経営課題~ 企業の経営戦略・実践のリアルから学ぶ~」 詳細はこちらです。

リモートワークやフリーアドレスなどの新しいオフィスの形態が増えていますが、それらは本当にマネジメントにおける課題解決に繋がっているのか、また繋げていくにはどのようにしていくのがいいのでしょうか。
そのような経営課題に直結する働き方のテーマについて実際の現場でどのように取り組みが行われているのでしょうか。2020年のカンファレンスでは「働き方改革関連法」「マネジメント」「働く場所の柔軟性」「データで見る働き方改革」「人材難への対応 」などのテーマに、これらの課題に真剣に取り組む経営者の皆様から学び、次の新しい世界をどうやって創っていくのか、様々な角度から考えるカンファレンスを実施したいと思います。(サイトから)

4)過去4回の開催から松林さんが感じたこと気付いたことをお聞きしました。

政府が働き方改革という言葉の発信を開始してからはや4年が経過しましたが、2019年から関連の法案も施行され始め、ようやく企業においての取り組みが大企業を中心に始まってきたなと感じています。働き方改革推進の取り組みにおいて、初回開催した時はどういう方向性で実施していくかという情報収集のレベルでしたが、制度設計についての相談、取り組みで出てきた課題についての相談などの具体的なお話が増えてきたと感じています。
今後はより実践的なレベルでの事例の共有などがこれまで以上に世の中に求められてくるのではと考えています。

2 オンラインカンファレンス開催を実践してみる

1)カンファレンス2日前にオンライン開催を決定

今年のカンファレンス、開催日まで1週間前、松林さんと話す機会がありました。その時、『来週は予定通り開催します、入り口でマスクを配布し、アルコール消毒液を常備して。』という感じでしたが、その後カンファレンス終了後のネットワーキング(交流会)パートの中止、お昼のお弁当の配布も中止となっていき、ついに開催2日前にオンラインによる開催が決定しました。

カンファレンス風景の画像です

【当日のカンファレンスの風景】
決定と同時に参加申し込みの皆さんに発信されたメッセージは以下です。

【カンファレンスをオンライン配信にて実施致します】
当カンファレンスは公式発表のタイムテーブルどおりに開催致しますが、すべての参加者の皆様にオンライン配信にてカンファレンスのセッションを視聴いただく形に変更致します。そのため、会場にはお越しいただけませんので、ご理解いただけますと幸いです。(オンライン配信の閲覧は、チケットをお申し込み頂いた方限定です)

オンライン視聴の方法につきましては、当カンファレンス開催時刻の2020年2月20日10:00までに、チケットお申し込み時にご登録頂いたメールアドレスに、カンファレンスの様子をご視聴いただける動画の限定URLを送付させて頂きます。(動画配信はYouTube Liveを予定しております)

※動画配信における禁忌事項について
カンファレンス動画に関しましては、転送禁止、録画・撮影や保存の禁止、チケット購入者以外の動画の閲覧はご遠慮ください。禁忌事項に関する違反が発覚した場合には、法的処置を取らせていただく場合もございますのでご注意ください。

【カンファレンスの録画映像を期間限定で公開します】
上記のリアルタイムでのオンライン配信に加えて、カンファレンスの映像を1週間の期間限定で録画配信させていただく予定です。こちらの詳細につきましても後日ご連絡差し上げます。(こちらのカンファレンス映像につきましても、閲覧はチケットをお申し込み頂いた方限定です)

※リアルタイム配信はネットワーク環境により、見られないなどの可能性もありますので、その場合は録画配信でご覧ください。一部、リアルタイム配信と録画配信で内容が異なる場合があります。

以上です。

【当日の配信画面】
映像は約3種類。登壇者、スライド、そしてその組み合わせです。下記の様な形で表示されます。

当日の配信画面の画像です

背景は黒と白、またはその中間から選べるのですが今回白背景のスライドがほとんどだったので、コントラストをはっきりさせるために黒にしました。またスライドが見えやすい様に並べていますが、これも真横にしたり大きさを変化させたり、スライドの中にワイプ(テレビでよくみるスタジオの方の様子が見える様に抜くやつですね)でも表示できます。いくつかテストした結果、この比率と位置(こうすることでどこを見ればいいか迷わない箇所)に決定しました(代表理事の藤本さんの“オンライン配信”でのカンファレンス開催の選択肢とはより抜粋)。

無事に配信でのトラブルもなく、視聴された方々からも好印象の評価を得て終了できました。
開催報告についてはこちらを御覧ください。

2)オンライン開催が全て有効だとは言えない

トークセッションが主体のこのカンファレンス、すごくわかり易い表現を松林さんが話されたのが、視聴者がテレビスタジオに集まって番組を配信して臨場感がある、スタジオに参加した人が普段のカンファレンス参加者、テレビを見ている人が今回の配信を視聴している感じ。今年に限って言えば、スタジオ参加者のいない中での対談番組が配信されているイメージ。
テレビ局でしか出来なかったことが、現在は、簡易カメラ、パソコンとWi-Fiさえあれば最低限の放送局ができてしまうという時代、YouTuberの存在からもオンラインカンファレンスのハードルが実は低かったという感想をもちました。
しかし、全てオンラインに置き換わるか? そこはそうでも無いと感じます。
ピッチのような【ライブ感】が命のような場面、その場にいることが大きな意味をなすものについては、オンラインのみでは伝わらないのも同じ。これも過去からのテレビ番組の構成と親しいと思います。
オンラインに向くもの、向かないものこれを使い分けることが大切と感じます。
今回のカンファレンスでオンライン配信の裏方として大活躍されたHOT SCAPE社前野さんも当日早速、オンライン配信についてのコメントを発信されています。こちらを御覧ください。
その翌日にも【新型コロナウィルスに対するイベント開催(LIVE配信を終えて)】をコメントされています。

3)カンファレンスその後について

このカンファレンスの成功を自分たちだけのノウハウとするのではなく、早速に【オンライン配信ノウハウを伝えるオンラインイベント】と題して、3月6日に開催、このスピード感もオンラインだからこそですね。
またこのイベントの様子も、You Tubeにてご覧いただけます。是非、オンラインカンファレンスにご興味ある方にはご覧頂きたいと思います。オンライン配信ノウハウを伝えるオンラインイベントの動画はこちらです。
松林さんからは、展示会もオンライン化し始めていると教えてもらいました。ユーザベース社のオンライン展示会についても御覧ください。
時間と場所の制限を外す、情報を伝える部分だけをオンラインで、人と人とのコミュニケーション、ネットワーキングはオフライン、リアルイベントは無くならないし、必要であると思います。オンとオフの組み合わせでさらに人と人のコミュニケーションの向上に繋がる社会へと変化していくと感じます。

4)最後に松林さんからのメッセージを

私たちにたくさんの相談が来ていることを考えても、イベントや展示会などのオンライン配信化はこれまで以上に加速していくと思います。企業データのクラウド化も促進され、テレワークなどの働き方の選択肢もさらに広がると思います。杉浦さんがおっしゃるように全てがオンラインに切り替わることはないので、オンライン・オフラインをうまくバランスよく活用するということがあらゆる組織において求められることとなる時代になりました。やったことのないことに取り組むことは大変だと思いますが、失敗を恐れてやらないのではなく、改善しながらチャレンジしていく風潮に世の中が変わり働き方がよりよく変わっていくことを願っています。

働き方にも通じたこの団体の活動概要と共に、オンラインカンファレンスのあり方についてリポートいたしました。

働くと経営課題の画像です

以上(2020年3月作成)

仲人を頼まれた時の準備とスピーチの参考事例

書いてあること

  • 主な読者:部下から仲人を頼まれた経営者、上司
  • 課題:引き受けるに当たり、役割や心構えを知りたい
  • 解決策:結納から会場のセッティング、スピーチまで役割は多岐に渡るので、段階ごとに役割を把握する

1 仲人の役割

現在では、仲人を立てて結婚するカップルは少なくなっているようですが、経営者は立場的に仲人を頼まれることもあるでしょう。

本稿では、仲人を務めるためには、何に気を配り、どのような「役割」を果たせばよいのかを中心に紹介します。

なお、本稿では、結納や結婚式での礼儀作法に関する事柄については割愛しています。

2 仲人を引き受ける前に考えておきたいこと

1)仲人に必要な心構え

仲人とは、本来、お見合いから結婚式・披露宴にまで関与して結婚の仲立ちを務める存在を指します。仲人は、結婚に深く関わる存在であり、結婚する当人たちの双方、少なくとも片方をよく知っている必要があります。

また、結婚式・披露宴のほとんどは円満に進むとはいえ、当日に至るまでに意見の食い違いやトラブルが発生しないとも限りません。また、結婚後もトラブルがあると、仲人は当人たちや親から相談される可能性があるでしょう。

従って、仲人を引き受ける際は、「当人たちをよく知っていること」「親を説得してでも、結婚する当人たちの意見を尊重できること」「婚約解消という事態にも冷静に対処できること」などの心構えを持っておく必要があります。

2)婚約解消などのトラブルへの対処も必要

仮に婚約解消などのトラブルが発生した場合、仲人には、断られた側を気遣いながらも、冷静にしかるべき「事後処理」を行う役目があります。

婚約解消が法的に認められるのは、「相手が著しく経歴を偽っていた」「婚約中に相手が他の異性と関係した」「相手からひどい侮辱、虐待を受けた」「相手が再起不能の傷病を負って、正常な結婚生活ができなくなった」などとされています。

婚約解消を希望しているのであれば、仲人は当人や親と相談しながら、話し合いを進めることになります。婚約解消の場合、「婚約披露に要した費用」「結婚の準備に使った費用」「結婚のために職場を辞めた場合の損害」「婚約解消によるショックで病気になった場合の治療費や精神的苦痛に対する慰謝料」などが必要になる場合があります。

婚約解消は繊細なトラブルであり、かつ金銭の損害などが生じる場合は、話がこじれることも想定されます。弁護士に相談するなどして、対応するとよいでしょう。

また、婚約解消にともない、「これまで互いに交換した結納品、結納金、家族書、履歴書、写真、プレゼントなどを返却し合う」「関係者へ婚約解消の旨を連絡する」などの事後処理も必要になります。

3 仲人に求められる「役割」

1)仲人に求められる役割

結納の儀、そして、結婚式会場のセッティングまで、無事、結婚式を迎えるまでに仲人が果たすべき仕事は、「調整役」「アドバイス役」などと決して少なくありません。ここではそれらを、各段階に分けて紹介します。

2)結納の儀

結納とは、正式には、仲人が両家の使者として双方の家を往復し、互いの結納品を送り届けるものです。しかし、現在は両家が一カ所に集まって結納品を取り交わす略式が一般的であり、結納そのものを行わない場合もあります。

1.結納に関する調整事項

「結納品」は地方によって差があるので、両家の出身地のしきたりに応じて調整する必要があります。「結納金」については、女性側に嫁入り支度に必要な費用を確認した上で、男性側に伝えて額を決定するのが妥当といえるでしょう。

次に、結納の儀のときに取り交わす「家族書・親族書」については、特に、親族書はどの程度の親族まで記載するか、両家と打ち合わせをして決めます。さらに、当日の「服装」については、両家の意向を確認した上で仲人夫妻もそれに準じた装いをします。

2.結納品

結納品は、次の9品目が一般的とされていますが、5品目、7品目の場合もあります。なお、地方によっても結納品は異なります。

  • 目録:結納品とその数量を箇条書きにしたもの
  • 長熨斗(ながのし):あわびを長く伸ばしたもの
  • 金(宝)包:結納金
  • 末広(すえひろ):白無垢の扇子
  • 友白髪(ともしらが):麻ひも
  • 子生婦(こんぶ):昆布
  • 寿留女(するめ):するめ
  • 勝男武士(かつおぶし):鰹ぶし
  • 家内喜多留(やなぎだる):清酒を入れた樽ですが、一般的には樽料としてお金を包みます

さらに、結納の儀では「結納品の並べ方」「結納受渡の作法」「仲人口上」などの作法を覚えることも重要になります。

なお、キリスト教の場合、結納の代わりに「婚約式」を行う場合もあります。作法その他については、事前に神父や牧師が細かく教えてくれるので、心配ないでしょう。

3)挙式への準備期間

1.結婚式・披露宴の費用分担

結婚式の挙式の方法や披露宴の規模などは、両家の資産や社会的立場によって意見に食い違いが出やすいところです。仲人としてはよく話し合って、双方にとって納得のいく最善の妥協点を見つけて調整をする必要があります。

2.招待客のバランス

招待客の顔ぶれや、人数の割り振りも、仲人が間に立って調整します。一般的には、両家同数にそろえるのが理想です。

3.式場側との打ち合わせ

当人たちに任せてもよいのですが、同行を求められれば行ったほうがよいでしょう。その場合、式場の「責任者」や「係員」とできるだけ親しくなって良い関係をつくっておくとよいでしょう。

また、挙式から披露宴までを取り仕切る「世話役」、披露宴会場の「受付係」、来賓を控室にお通しする「案内係」などのスタッフとの顔合わせをして、披露宴の進行について、きめの細かい打ち合わせをしておきます。

最後に忘れてはならないのは、急病などにより、式に参加できなくなったときのために、「代わりの媒酌人(仲人)の手配」まで行っておくことです。

4)挙式および披露宴

1.挙式

神前の場合、事前の打ち合わせによって、誓詞(せいし)の奏上や玉串奉奠(たまぐしほうでん)を新郎新婦に代わって仲人が行うことがあります。その他の場合は、神主や僧侶、あるいは神父や牧師から、何をすればよいか当日詳しく説明があります。

2.挙式後の両家親族紹介

挙式後一堂に会した両家親族の紹介役を務めます。あらかじめ、親族についての基本知識と新郎新婦との関係を頭に入れておかなければなりません。

3.来賓の出迎え

会場入り口で来賓への応対あいさつを行います。両家を代表する一人として、風格のある態度、上品な身のこなしが望まれるところです。

4.媒酌人(仲人)のスピーチ

式の冒頭で述べられる媒酌人(仲人)のスピーチは、式の雰囲気を盛り上げる基盤づくりを行う上で重要な役割を担っています。

5.新郎新婦の介添

新郎新婦のお色直しの際には、媒酌人(仲人)夫妻が同行します。特に、媒酌人(仲人)は花嫁の介添人として、お色直しの合間を縫って口にできそうな飲み物や簡単な軽食を用意する、移動の際に衣装を踏んだり、つまずいたりしないよう、階段を下りる際には、1段先に降りて花嫁の手をとって誘導するなどの点に配慮しましょう。

6.来賓の見送り

大役をほぼ終えて、疲れが顔に出やすいところですが、最後まで笑顔を忘れず、来賓一人ひとりに心のこもったお礼の言葉を述べます。

4 媒酌人(仲人)のスピーチ参考事例

1.参列者へのお礼

本日は○○、▲▲ご両家の結婚披露宴にご列席賜りまして、誠に有難うございます。

2.媒酌人としての自己紹介

私はご両家の媒酌を務めることになりました●●でございますが、ふつつかながら一言あいさつを述べさせていただきます。

3.結婚式が済んだことの報告

まず、新郎新婦は先ほど神前において、結婚の儀を滞りなく挙げられましたことを、ここに慎んでご報告申し上げます。 

4.新郎新婦の紹介(両家紹介)

さて恒例によりまして、新郎新婦のご紹介をさせていただくことにいたします。

新郎の○○太郎君は、○○夫・○○子ご夫妻のご長男として、○○年、○県○市にお生まれになりました。○○大学をご卒業後、○○商事に入社され、現在海外営業部に勤務されています。海外営業の第一線でご活躍される前途有望な青年であります。また、ご覧の通りの体格で学生時代はボート部の主将を務めた経験もあり、周囲からの人望も厚い好青年です。

一方、新婦の○○子さんは、○○郎・○美ご夫妻の次女として、○○年、○県○市にお生まれになりました。○○音楽大学をご卒業後、現在はピアノの教師をなさっています。特に芸術の才能に優れていらっしゃる才媛で、ピアノ以外にフルートも演奏なさる他、作詞・作曲もなさいます。ご覧のように誠に相ふさわしいご良縁であると確信いたしまして、私ども夫婦は喜んでお二人の新生活のご出発をお手伝いさせていただいた次第でございます。

5.新郎新婦への今後の支援を願う言葉

若いお二人の新しい門出に当たりまして、媒酌人としてご列席の皆様に今後とも機会あるごとに、いろいろとご指導ご支援賜りますようにお願い申し上げて、媒酌人としてのごあいさつとさせていただきます。

以上(2020年3月)

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製造物責任(PL)法の概要と同法への輸入業者の対応

書いてあること

  • 主な読者:PL法への対応が必要な製造業者や輸入業者
  • 課題:PL対策として何に取り組むべきか分からない
  • 解決策:本稿では、製品事故の未然防止、保険への加入などを取り上げるので、これらを参考に対策を行う

1 PL法の概要

「製造物責任法」(以下「PL法」)は、製造物の欠陥により人の生命、身体または財産に係る被害が生じた場合にメーカーや輸入業者の損害賠償の責任について定めた法律です。

PL法の特徴は、被害者の円滑かつ適切な救済を行うため、企業に過失がなくても製品に欠陥があれば賠償責任を負わせるという点にあります。すなわち、被害者である消費者が救済されやすくするとともに、企業には製品の安全性確保のための努力を促す法律であるといえます。

1)製造物

PL法では、製造物を「製造又は加工された動産」と定義しています。一般的には、工業製品を中心に、人為的な操作や処理がなされた動産を対象とします。未加工の農林畜水産物や不動産、電気やソフトウエアなどの無体物はPL法に定める製造物には該当しません。

2)欠陥

PL法でいう欠陥とは、「当該製造物に関するいろいろな事情(判断要素)を総合的に考慮して、製造物が通常有すべき安全性を欠いていること」をいいます。安全性に関わらないような、単なる品質上の不具合はPL法が定める欠陥には該当しません。

欠陥の類型としては、次の3つがあります。

  • 製造上の欠陥(製品の製造過程で粗悪な材料が混入したり、製品の組み立てに誤りがあったりなどの原因により、製品が設計・仕様通りに作られず安全性を欠くような場合)
  • 設計上の欠陥(製品の設計段階で十分に安全性に配慮していなかったために、製造される製品全体が安全性に欠ける結果になるような場合)
  • 指示・警告上の欠陥(有用性ないし効用との関係で除去し得ない危険性が存在する製品について、その危険性の発現による事故を消費者側で防止・回避するに適切な情報を製造事業者等が分かりやすい方法で与えなかったような場合。表示や取扱説明書中に、指示や警告が適切に示されているかどうかも考慮されます)

3)製造業者等

PL法でいう製造業者等とは、製造物の製造業者、加工業者、輸入業者、および製造物に氏名などを表示した事業者を指し、単なる販売業者は原則として製造業者等には該当しません。ただし、販売業者であっても、OEM製品やプライベートブランドのように、販売業者の名前が前面に出ており、販売業者への信頼によって消費者の商品選択が行われるような場合には、その販売業者はPL法に定める製造業者等に該当します。

また、販売業者の名前が製造物に記載されていなかったとしても、実際の製造業者の名前を出さずに、販売業者が自社の名前で広告を展開するような場合は、販売業者は製造業者等に該当します。こうしたケースは医薬品などでよく見られます。

4)賠償責任

製造業者等が賠償責任を負うのは、製造物の欠陥により、人の生命、身体に被害をもたらした場合や、欠陥のある製造物以外の財産に損害を与えた(拡大損害が発生した)場合です。欠陥のある製造物のみの損害にとどまった場合は、PL法の定めによる賠償責任は発生しません。

5)免責

製造物の欠陥による拡大損害が発生した場合でも、製造業者等が賠償責任を免責される2つの場合が規定されています。

1つは、製造物の引き渡し時点の科学技術の水準では製造物に欠陥があることが分からなかった場合です。これは例えば、製造当時は危険はないとされていた物質が、後になって発がん性を持った物質であることが判明した場合などがあります。

もう1つは、部品・原材料の製造業者等において、その部品・原材料を組み込んだ製造物の製造業者等の指示に従ったために欠陥が発生した場合で、部品・原材料の製造業者等に過失がなかった場合です。この場合、部品・原材料の製造業者等は免責となります。

例えば、下請け業者が、納入先からの規格や仕様などの指示に従って部品を製造したものの、指示に誤りがあったために欠陥が発生する場合などがあります。この場合、下請け業者は免責となります。ただし、下請け業者が、指示に誤りがあることに気付いていながらその誤りを指摘しなかった場合などは、下請け業者に過失があったとして賠償責任を負わされる可能性があります。

免責事由は上記の2つですが、いずれの場合も、免責事由に該当することを製造業者等が立証しなければなりません。

6)民法の適用

安全性に関わらない不具合はPL法に定める欠陥に該当しないため、そうした不具合があってもPL法に基づく賠償責任は発生しません。また、製造物に欠陥があったとしても、拡大損害が発生しなかった場合はPL法に基づく賠償責任は発生しません。

ただし、これはあくまでPL法に基づく賠償責任がないというだけで、こうした場合には民法の瑕疵(かし)担保責任(2020年4月以降は契約不適合責任)、債務不履行責任、不法行為責任に基づいて賠償責任が発生する場合があります。

2 PL法への対応

1)製品事故の未然防止

PL法への対応としてまず考えるべきことは、製品の欠陥をなくし、製品事故を未然に防ぐための対策を講じることです。前述の通り、PL法でいうところの「欠陥」には、製品自体の欠陥だけでなく、指示・警告上の欠陥も含まれます。そのため、製品事故の未然防止を考える際には、その両面から考える必要があります。

1.製品の安全性向上

製品自体の安全性を向上させるべく、設計・製造段階において対策を講じます。その際に留意すべき点は次の通りです。

【設計段階】
  • 技術開発、および安全性試験の強化を進める
  • 販売店や消費者の意見を反映させるシステムを確立する
  • 自主基準を更新し、高度化を図る
【製造段階】
  • 製造マニュアルの見直しを含め、製造工程の改善を図る
  • 外部機関を活用する(民間機関による自主的な認証制度の導入)
  • 企業間の協力体制を整備する(親企業と下請け企業、部品・原材料や産業用機械のメーカーとユーザー、メーカーと販売業者などの企業間や業界単位で安全性チェック体制を整備)

2.表示・取扱説明書の充実

製造物の取り扱いについて消費者に情報を伝達し、誤使用などによる事故の防止を図ります。その際に留意すべき点は次の通りです。

  • 取扱説明書の内容をより一層分かりやすいものにする
  • 危険レベル(危険、警告、注意)の表示などに統一的な基準を導入する
  • 表示事項の優先度、内容および表示方法の見直しを図る
  • 過去の事故やクレームを参考にする

2)社内体制の構築

製品自体の安全性向上に取り組むとともに、安全性確保に向けた社内体制の構築・整備も重要です。社内体制の構築に当たっては、経営者が自ら先頭に立ち、PL対策への取り組みを推進しなければなりません。その際に留意すべき点は次の通りです。

  • 社員教育を徹底し、製品の安全性を重視する社風を作り出す
  • 製品の技術開発、安全性試験の強化を図る
  • 部品や原材料の品質管理を徹底する
  • PL対策部門の設置および専任スタッフを任命する
  • 検査記録などの文書の管理をしっかり行う
  • 消費者のクレームなどを迅速に処理するため、紛争解決体制を整備する

3)保険への加入

細心の注意を払っていても、事故が発生する可能性はゼロにはなりません。万一事故が発生した場合、企業は多額の費用負担を強いられる恐れがあり、それを回避するための手段として、保険の加入があります。

損害保険会社や商工会議所などでは、製造物責任を補償する保険を取り扱っています。

3 輸入業者とPL法

1)輸入業者の責任

製造業者とともに輸入業者もPL法において責任主体となっています(PL法第2条)。この規定の趣旨としては、次の事項が挙げられます。

  • 輸入業者は日本国内における最初の流通開始者または製品供給者である
  • 輸入業者は日本国内の規制を受ける最初の事業者である
  • 外国の製造業者の責任を問うことが実質的に困難である

例えば、商社が米国から玩具を輸入し、国内の流通業者を通じ全国で販売したとします。その玩具に設計上の欠陥があり、玩具を使用していた子供がけがをした場合、商社はPL法の規定に基づき賠償責任を負います。

輸入業者も事故発生の際、製造物責任を負う可能性があることから、製造業者同様、PL法への対策が求められています。

輸入業者は、輸入業者固有のものとして次のような対策を講じる必要があります。

2)製造業者のPL対策の確認

輸入した製品を国内で販売する場合、製造業者がどのようなPL対策を講じているかを確認することが重要です。その際の確認方法として、次に挙げる資料を製造業者から入手するなどしておくとよいでしょう。

  • 製品の設計図・仕様書
  • 各種安全基準の認定証
  • 製造工程表
  • 取扱説明書・警告表示
  • クレーム処理マニュアル
  • PL保険証券の写し

前述の資料だけで不十分な場合、輸入業者は製造業者から直接話を聞くか、製造工場を訪問します。製造業者のPL対策を確認した結果、国内で製品を販売する際に問題となる点が判明した場合には、輸入業者は製造業者に対策の改善を求める必要があります。

3)取扱説明書や警告表示の翻訳

輸入品の取扱説明書や警告表示は、日本の消費者が理解できるように日本語に翻訳する必要があります。この際、「意味・内容を取り違える可能性がある」「日本語として分かりにくい」など、適切な翻訳がなされていないと、「警告・表示上の欠陥」として輸入業者が損害賠償責任を負う可能性があります。

さらに、翻訳が不適切であったために「警告・表示上の欠陥」となった場合、その責任は輸入業者にあると考えられ、製造業者に対して求償できない恐れがあります。

従って、輸入業者が日本語の取扱説明書や警告表示などを作成する場合は、製造業者に内容の確認をとりながら、慎重に作業を進める必要があります。

4)輸入契約の締結

輸入した製品に欠陥があり、事故が発生した場合、PL法の規定により輸入業者は損害賠償責任を負います。輸入業者が支払った賠償金について、輸入業者は、改めて製造業者に損害賠償を求めることができますが、必ずしも賠償金の支払いを受けられるというわけではありません。また、訴訟によって製造業者に損害賠償を請求する場合、製造業者の所在する国と日本との法制の違いなどもあり、手続きも複雑です。

従って、輸入業者が製造業者と輸入契約を締結する際には、次の条項などを盛り込んでおく必要があります。

  • 製品の欠陥により輸入業者が損害賠償請求を受けた場合、製造業者に求償できる
  • 日本国内で発生したトラブルに基づく訴訟については、日本の法制に従う

ただし、契約書に求償権について規定していたとしても、実際に製造業者に支払い能力が無ければ意味がありません。輸入業者は、輸入契約締結に際して、製造業者の企業規模などを考慮するとともに、製造業者は、日本を対象地域とするPL保険に加入することを義務付けておくとよいでしょう。

以上(2020年3月)

pj60010
画像:photo-ac

【朝礼】「おみくじ」は、何度でも引ける

もうすぐ新年度がスタートします。新年度、皆さんには、何事にも強い意志を持ち、諦めずに進めてもらいたいと思っています。今日は、その参考になる2つの話をします。

1つ目は「おみくじ」の話です。皆さんは、お寺や神社でおみくじを引くとき、何かこだわっていることはありますか。中には、自分なりのルールを決めている人もいるかもしれません。私の場合、「おみくじは、大吉が出るまで何度でも引く」ことにしています。このやり方を、もう10年以上続けており、今年の初詣では、5回目で大吉を引くことができました。

賛否両論あるでしょうが、私はこのやり方が良いと信じています。「おみくじは一度しか引いてはいけない」と法律で定められているわけではありません。たとえ「凶」など自分にとって良くない内容が出たとしても、そこで悲観して終わってはいけません。「大吉を引く」と自分で決めたら、大吉が出るまで引き続ければいいのです。私にとって大事なのは、「大吉が出た」ことではありません。「大吉が出るまで諦めずに引き続けた、そして大吉を引いた」ことなのです。

陸上競技の桐生祥秀選手が100メートル走で、日本人初の9秒台を記録した際のインタビューで、「大吉が出るまでおみくじを引き続けた」と語っており、同様のエピソードを持つ著名人は他にもいます。「大吉が出るまで引く」のは、ある意味で強い意志の表れともいえるかもしれません。

2つ目の話は、帝人の元会長・社長である長島徹氏のエピソードです。

長島氏が幼い頃、高価だった野球ボールの代わりに何時間もかけて布を巻いて作ったボールが、竹やぶに入ってしまったことがあったそうです。必死に捜しても、なかなかボールは見つかりません。そのとき、長島氏は、神様に「どうぞ諦めさせないでください」と祈ったというのです。「どうかボールが見つかりますように」ではなく、「自分が諦めるという考えを抱くことのないように」と祈ったのです。

「何事も自分の気持ち次第だ」という強い意志の大切さを、幼いながらに体現した長島氏のこのエピソードが、私は大好きです。私も、ビジネスでうまくいかないことがあり、諦めてしまいそうになったとき、心の中で「どうぞ諦めさせないでください」と言っています。祈るというよりは、私自身の意志を、いま一度奮い立たせるために言うのです。

皆さんは、この2つの話を聞いてどう感じるでしょうか。ビジネスの状況は刻一刻と変わります。周りから、いろいろと言われることもあるでしょう。それらに一喜一憂し、右往左往してはいけません。時と場合によりますが、大切なのは、強い意志を持つこと、そして簡単に諦めないことです。そうすれば、必ず道は開けます。新年度、皆さんが自分自身の道を開いていくことを、私は大いに期待しています。

以上(2020年3月)

pj16996
画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】「気が緩んでいるから風邪を引く」と言われてしまう理由

まだ20代だった頃の話です。私には大事な商談の前日に風邪を引いて高熱を出し、商談を欠席してしまったという苦い経験があります。そのとき、当時の上司から言われたのは、「気が緩んでいるから風邪を引くのだ!」という厳しい言葉でした。気の緩みと風邪を引くことに因果関係はありませんから、私は「精神論を言われても困る。私だって風邪を引きたくはない!」と、上司に腹を立てたことを覚えています。

しかし、今ではその上司の気持ちが分かる気がします。上司は、文字通り「気を引き締めれば風邪など引かない」ということを伝えたかったのではありません。商談に対する私の真剣さや準備が足りないことを不満に感じており、その感情がそのような言葉として表れたのだと思うのです。

実際、その商談に向けた私の準備は不十分でした。資料の仕上がりはスケジュールギリギリで、商談シナリオも練り込まれていませんでした。その結果、私の代わりに商談を託された同僚には、大変な迷惑を掛けてしまいました。「気が緩んでいるから風邪を引く」という上司の言葉は乱暴ですが、そもそもの問題は、私の仕事に対する姿勢にあったのです。

あることをきっかけに、本音が口をついて出ることがあります。心の中で2人の人物をイメージしてみてください。1人は仕事を頑張っていて、時間もきっちりと守る人。もう1人は仕事に対してやる気がなく、時間にもルーズな人です。

遅くまで続いた飲み会の翌日、この2人がそろって遅刻をしたら、皆さんはどのように感じますか? 前者のしっかりした人については、「昨日、飲み過ぎて体調を崩したのかな? それとも別の理由があったのかな?」などと心配するかもしれません。一方、後者のダメな人については、「飲み会の次の日に寝坊するなんて……。私だって眠いのに」などと腹を立てるかもしれません。2人とも遅刻をしているのに、日ごろの行い次第で、これほどまでに印象が違ってしまうのです。

ありがたいことに、私はビジネスのタフな交渉の場面で、相手から「○○さんがそこまで言うのだから信じます」と言ってもらえる経験を何度かしています。これは、日ごろから当社が真摯な姿勢で相手に接しているからだと思いますし、そうした対応をしてくれる皆さんには心から感謝しています。しかし、仮に、当社の姿勢が不誠実であれば、相手は決して「信じます」とは言ってくれないでしょう。逆に「もっとこちらに配慮してください」などと苦情を言われるかもしれません。

日ごろの行いの積み重ねが、いざというときに大きな差となります。そして、悪い行いを積み重ねてしまえば、後からマイナスを取り戻すことは本当に難しくなります。そうならないために心がけるべきは、謙虚な姿勢で、真摯に相手と向き合うことです。その姿勢が相手に伝われば、皆さんへの好感が生まれ、ビジネスが進めやすくなるのです。

以上(2020年3月)

pj16998
画像:Mariko Mitsuda

戦国武将・偉人に学ぶ部下育成術

書いてあること

  • 主な読者:部下に「前向きに仕事に取り組んでほしい」「成長してほしい」と願う管理職
  • 課題:自分と考え方や性格が違う部下のやる気を、どうやって引き出せばよいか分からない
  • 解決策:「部下の本質を評価する」「まず自分が手本を示す」などの取り組みによって大業を成し遂げた戦国武将・偉人のエピソードから、部下育成のノウハウを学ぶ

1 武田信玄に学ぶ「部下を思いやり、その本質を見抜く」術

1)武田信玄のエピソード

武田信玄(たけだしんげん。本名は武田晴信(たけだはるのぶ))は、甲斐国(現山梨県)の武将です。

信玄が生まれた当時、甲斐国ではさまざまな勢力が乱立し、争いを続けていましたが、信玄の父・武田信虎(たけだのぶとら)が、これらの勢力を破り、甲斐国を統一しました。しかし、家臣の言葉に耳を貸さず専制的な政治を行う、戦費の調達のために領民に重税を課すなどの行動を問題視され、信虎は甲斐国を追放されてしまいます。

信虎の跡を継いだ信玄は、信虎とは対照的に、生涯を通じて家臣や領民を大切にしたといわれます。信玄が残した有名な言葉に、「人は城、人は石垣、人は堀、情は味方、あだは敵なり」というものがあります。

「合戦において、たとえどんなに城・石垣・堀などの守りを固めても、家臣や領民などの人心が離れてしまったら敗北は確実である。勝敗を決するのは、結局は人である。人は、用い方によっては城・石垣・堀など、合戦の際に重要なものにも成り得る」という意味です。

信玄は日ごろから家臣を大切にし、正しく評価することに努めました。そして、行政や軍事を効果的に運用するべく強固な組織をつくり上げ、合議制を採用して家臣の意見を積極的に取り入れました。

また、信玄は一軍の将でありながら、家臣たちとくつろいだ雰囲気で座談を行うことを好んだといいます。その際、信玄は自身がこれまでの経験から学んだ知恵などを家臣に説いたり、逆に家臣の意見に耳を傾けたりしました。このような場を通じて信玄の肉声に触れることで、家臣はさらに武田家に対する帰属意識を高めていったのです。

戦国時代、武田家の家臣は、その高い戦闘力と強い団結力から「武田軍団」として他国の武将たちから恐れられました。信玄の巧みな手腕が、武田家の家臣を強力にまとめ上げ、最強集団としての武田軍団をつくり上げたといえるでしょう。

2)部下のやる気を引き出す術、気持ちを引き付ける術

信玄は、家臣を見た目や表面上の言葉などではなく、本質をもって評価しました。例えば、万事において遠慮深い家臣は、合戦では「臆病者」と見られやすいものですが、信玄はこうした家臣を「思慮深い」と判断しました。「思慮深い者は常にあらゆることに対して慎重であるため、万全の態勢を整えて事に臨むだろう」と考えるのです。

このため、家臣は「信玄の下にいれば、外面ではなく本質を見抜いて判断してもらえる」と考えて発奮し、組織はより一層活性化することとなりました。後に、信玄は「人を使うのではなく、業(わざ:才能の意味)を使う」という内容の言葉を残しています。

部下の持つ長所を見抜いてそれを活用することで、部下の自発的なやる気を促し、組織のパフォーマンスを最大限に高めることができるのです。

2 織田信長に学ぶ「正当な評価によって部下のモチベーションを高める」術

1)織田信長のエピソード

織田信長(おだのぶなが)は、尾張国(現愛知県)の武将です。

織田家にはいくつかの流れがあり、信長が生まれた織田家は主流ではありませんでした。しかし、信長の父親である織田信秀(おだのぶひで)の代に大きく勢力を伸ばして織田家の主流となりました。

信秀の跡を継いだ信長は、尾張国を統一し、さらに強大な力を誇っていた駿河国・遠江国(ともに現静岡県)の今川義元(いまがわよしもと)を破り、東海道の勢力図を大きく塗り替えました。

信長が織田家を継いだ後、織田家は急速に勢力を拡大していったため、優れた人材の確保が急務となりました。信長は、家臣が優秀であると思った際には、家柄や過去の実績に関係なく登用しました。これは、家柄や過去の実績が重視されていた当時としては、画期的な人材登用でした。

特に代表的な存在は、豊臣秀吉(とよとみひでよし)でしょう。信長は、秀吉の「人心掌握に非常に長けている」という才能を見抜き、次々と重要な役職に抜てきしました。

秀吉は、その才能を遺憾なく発揮して織田家の勢力拡大に大きく貢献し、さらに信長亡き後は、天下統一を実現します。

元来は貧しい身分であったとされる秀吉が天下人にまで成長できたのには、信長の大胆かつ柔軟な人材登用が少なからず関係しているといえるでしょう。

2)部下のやる気を引き出す術、気持ちを引き付ける術

信長は、徹底した能力主義者であったといいます。このため、たとえ長年仕えてきた功臣であっても、能力がないと判断すれば、ためらわずにその任を解いたとされます。

例えば、若い頃から信長に仕え、数々の武勲を挙げてきた佐久間信盛(さくまのぶもり)は、後年、合戦における消極的な働きを叱責されて信長の下から追放されています。信長が「苛烈で家臣に対して厳しい」という印象を持たれやすいのは、こうしたエピソードがあるからかもしれません。

一方で、家柄や過去の実績などにとらわれず、家臣の能力を正しく評価しようとする信長の姿勢は見習うべきところがあります。家臣は信長の期待に応えようと努力し、努力が正しく評価されることで、さらにモチベーションが高まり、より一層仕事に励むことになるからです。

上司による正当な評価こそが、部下の、ひいては組織全体のモチベーションを高めるといえるでしょう。

3 黒田官兵衛に学ぶ「部下の意見を尊重する」術

1)黒田官兵衛のエピソード

黒田官兵衛(くろだかんべえ。本名は黒田孝高(くろだよしたか))は、播磨国(現兵庫県)の武将です。

官兵衛の生家である黒田家は、播磨国の大名・小寺家の家老でした。しかし、後に織田信長が畿内に勢力を拡大してくると、官兵衛はその将来性を確信し、信長に仕えるようになります。そこで秀吉と出会った官兵衛は、秀吉の参謀的な存在となり活躍します。

やがて、本能寺の変によって信長が明智光秀(あけちみつひで)に討たれると、官兵衛は、秀吉に「信長のあだを討つことで織田政権の後継者となり、天下統一を果たす」ことを進言するなど、秀吉の天下取りを支えました。

官兵衛は知将として知られ、官兵衛自身もその知謀を誇ったことがありました。しかし、あるとき中国地方の武将・小早川隆景(こばやかわたかかげ)から、官兵衛は鋭い頭脳を持つが故、独善的な決断を下してしまう恐れがあると忠告されました。

これ以降、官兵衛は周囲の意見に耳を傾けるよう努めたといいます。周囲の意見に耳を傾け、多面的な視点から問題を捉えることができたからこそ、官兵衛は軍師として、多数の家臣を率いる武将として、後世に名を残す功績を収めることができたのでしょう。

2)部下のやる気を引き出す術、気持ちを引き付ける術

官兵衛は、家臣の意見を尊重しただけでなく、各家臣の性格を把握し、それらをうまく組み合わせることで家中をまとめました。それは、官兵衛が「組織においては、各人が協力し合うことで、より大きな力が発揮できる」ということを理解していたからです。

このため、家臣の交遊関係を調べ「誰と誰とは性格的に合う」「誰と誰とは性格的に合わない」といったことまで勘案し、性格の合う家臣同士を組み合わせて仕事に当たらせたといいます。

このように、官兵衛は家臣に対しても細やかな配慮を欠かさず、それぞれの意見を尊重しました。自由な意見交換の場を設けることで、家臣は身分や役職に関係なく、活発に意見交換を行い、自身の頭で物事を考えるようになりました。

ただし、あくまでも最終的な決断は自身の責任の下に自身が行いました。官兵衛は、「決断はあくまでトップの仕事である」ということを認識しており、家臣の意見は尊重するものの、決断は自身が行い、決断に対する責任も自身が負う覚悟をしていました。

さまざまな意見を受け入れる柔軟性、そして決断の責任に対する上司の自覚が部下を大きく育てるのです。

4 上杉鷹山に学ぶ「自らが部下の手本となる」術

1)上杉鷹山のエピソード

上杉鷹山(うえすぎようざん。本名は上杉治憲(うえすぎはるのり))は、出羽国米沢(現山形県米沢市)の大名です。

上杉謙信(うえすぎけんしん)の活躍で有名な上杉家は、秀吉の時代には陸奥国会津(現福島県会津地方)を中心とする石高120万石を治める大大名でしたが、後に徳川家康(とくがわいえやす)と敵対して米沢藩に移され、その後、石高を15万石にまで減らされてしまいます。しかも大藩であった頃とほぼ同じ数の家臣を養っていたため、膨大な借金を抱えてしまいます。

こうした中、九州の高鍋藩(現宮崎県)から養子として米沢藩に迎えられた鷹山は、藩の財政を改革するべく自身の食事を質素なものとし、年間行事の中止や贈答の禁止を行うなど倹約に努めました。また自ら鍬(くわ)を取り、家臣にも田畑の開墾に当たらせました。鷹山は、自身が率先して取り組むことで、藩全体に改革の精神を広げようとしたのです。

しかし、保守的な家臣たちの反対や飢饉(ききん)による損害などにより改革は頓挫し、鷹山は藩主の座を退くことを余儀なくされました。その後も、米沢藩の財政は悪化の一途をたどり家臣が農民から不正に多くの年貢を徴収する、厳しい生活に耐えられなくなった農民が他国へ逃げ出すといった問題が起きました。

こうした状況を憂慮した鷹山は、隠居の身でありながら再び改革に着手することを決意します。そして、かつて性急に改革を進めようとして挫折した経緯を省みて、まずは家臣に藩の財政状況を公開し、危機を実感させることに努めました。

その後、武士だけでなく、農民や町人からも財政再建に関する意見を広く求め、集まった意見について検討を重ねた結果、産業の振興に力を入れるべく、藩全体で養蚕による生糸の生産に取り組むことを決定しました。さらに、藩内で以前から栽培されていた紅花で生糸を染めて織物を織り、藩外に販売することを考案しました。

これらの織物は「米沢織」と呼ばれ、米沢藩の名産品となって家臣の暮らしを支えることとなります。その後、米沢藩の財政は徐々に回復に向かい、鷹山の逝去後には、ついに借金のほとんどを返済することができたといいます。鷹山の現実を直視し、打開策を探り、自ら率先実行する姿勢が、家臣や領民を引き付けた結果といえるでしょう。

2)部下のやる気を引き出す術、気持ちを引き付ける術

厳しい状況に陥った藩の財政を立て直すに当たり、鷹山は、藩主の地位にありながら、自身が率先して質素な暮らしを心掛けました。家臣や領民に苦しい倹約を依頼するに当たり、まず自身が模範になろうとしたのです。

かつては120万石という大藩であった上杉家の家臣の中には、九州の小藩から養子に入った若い鷹山が進める改革を不満に思う者も少なくありませんでした。

こうした反発の中、鷹山は懸命に改革の必要性を説き、先頭に立って厳しい改革に取り組みました。このような鷹山の姿勢を目にし、当初は改革に協力的でなかった家臣の一部も次第に心を開き、その結果、藩の家臣や領民たち全員が一丸となって再建に取り組むようになりました。後に、鷹山は「してみせて、いってきかせて、させてみる」という言葉を残しています。

何かに取り組む際には、まず自身が身をもって部下に示し、指導した後に実際に挑戦させてみるという、上司の真摯かつ愛情に満ちた姿勢が、部下の心に火をともすといえるでしょう。

5 部下を1人の人間として尊重することの大切さ

戦国武将・偉人の家臣に対する姿勢にはいくつかの類型が見られます。しかし、そのいずれにも共通しているのは、「家臣を1人の人間として尊重していること」でしょう。

上司は、リーダーであると同時に、部下と同じ組織の一員でもあります。同じチームのメンバーとして、部下に対して真摯に向き合い、部下を導く姿勢こそが部下を大きく育て、強い組織づくりにつながるのです。

以上(2020年3月)

pj00259
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