【朝礼】答えはお客さまの中にある

6月になり、2019年上半期のヒット商品番付が公表されました。東の横綱には新元号「令和」が、西の横綱にはスマホ決済サービス各社が行ったキャンペーン「スマホペイ還元」が上がりました。

この他にも、各種メディアでは、改元のあった今年の上半期にふさわしい、新しい発想の商品やサービスが多数報道されました。例えば、普通は置いて使うはずのプリンターを、手で持って自分で動かせるものに変えた「リコーハンディープリンター」。ビルなどにあるのが一般的なオフィスを、エキナカに設置した「ボックス型シェアオフィス」。こうした、これまでの常識を変えたものが「新しい発想」として注目されたのでしょう。

社会や人々のライフスタイルがめまぐるしく変わりゆく現代では、商品やサービスもそれに合わせて進化させていくことが求められます。ただし、私は、「新しい発想」を生み出す源泉自体は、いつの時代も変わらないと思っています。

それは、「お客さまが本当に望んでいることは何かをとことん考え抜く」ことです。これは、かなり難しいことでもあります。本当に望んでいること、困っていることの多くは、実は本人も分かっていないからです。私の知っている経営者は、こう言っています。「本人も分かっていない、潜在的な本当の困り事を見つけて解決することが、自分の一生を懸けた仕事である」。そのため、彼は、使える限りの時間をお客さまと一緒に行動し、お客さまの話を聞くことに費やしています。

当社も同じです。お客さまが普段、どのようなことを考え、どのような行動を取っているか。喜びや悲しみを感じるのはどのようなときか。そうしたことを聞き、お客さまの表情をよく見て、そこから「本当に望んでいることは何か」を考え抜く。それこそが、私たちがやるべき一番大切な仕事です。

皆さん、ぜひ、お客さまの顔をよく見てください。連絡を取り、できるだけ直接会って話を聞きましょう。そうしなければ、お客さまの困り事を見つけることはできません。お客さまのほうから要望を言ってもらい、その後に対応するようでは遅いのです。言われてからやることは、作業にすぎません。しかし、言われるより前に実践すれば、それは、お客さまにとって「うれしいサービス」になるでしょう。

皆さんの中には、「お客さまと話をしているが、お客さまのことがよく分からない」という人もいるかもしれません。それは、お客さまの思っていることをしっかりと聞き出せていないからです。「なぜそうするのか、そう思うのか」「なぜ他の選択肢を選ばないのか」。こうしたことを質問し、お客さまの話はとことん掘り下げることが大切です。掘り下げた先に、きっと、お客さまの本当の思いが見えてくるでしょう。

「新しい発想」は、お客さまに思いを寄せ、考え抜くことで生まれます。いつの時代も、「答えはお客さまの中にある」と私は考えます。

以上(2019年7月)

pj16968
画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】ビジネスの正解はあなたの情熱の中にある

先日、経営者仲間で食事をしたときに、話題になった質問があります。その内容は、「あなたが経営者ならば、A事業とB事業のどちらを選択しますか?」というものです。A事業は「社会的な意義が大きいが、もうからない事業」、B事業は「社会的な意義はないが、もうかる事業」です。皆さんの答えはどのようなものでしょうか。

この質問は、Google社が相手の視野の広さや柔軟性を知るために使うことがあるそうです。正解があるわけではありませんが、人によって答えに大きな違いが生じます。

ちなみに、私の答えは「A事業でもうかるように工夫する」というものでした。まず私の信条として、社会的に意義のない事業はやりたくありません。それに、A事業が本当に社会的に意義のあるものならば、いずれは世間に受け入れられる可能性が高いと思います。「もうからない」というのは、既存の参入企業を想定した情報かもしれませんが、そうであるならば、むしろビジネスチャンスが大きいと私は思うのです。

同じ類いの質問は他にもあります。例えば、「中小企業は大きな市場を狙うべきか? それとも、いわゆるニッチ市場を狙うべきか?」というのもその類いです。これらの質問で共通しているのは、絶対的な正解がなく、前提条件次第で有利な回答に変わることです。こうした質問を受けたとき、私が最も情けないと感じるのは、「前提条件が分からないから答えられない」という回答です。

このように回答する人は、いつまでも前提条件の提示を求め、結局、自分の答えを言えないものです。しかし、ビジネスは不確定要素だらけで、完全に前提条件が分かることはありません。

冒頭の質問は、いわゆる経営判断を求めるものです。では、私が何をもって意思決定したかといえば、最終的には自分の情熱なのです。もちろん市場調査はするでしょうし、これまでの経験も生かされるでしょう。しかし、リアルのビジネスではどの選択にも一長一短があることがほとんどで、99対1のように、分かりやすい差がつくことはまれです。となると、最後は自分の情熱で選択するしかないのです。言葉を変えれば、「どちらを『正解』にしたいか」を自分で決めるということなのです。この正解とは、皆さんの信念や夢に沿ったビジネスということになります。

皆さん、「こっちを正解にしたい!」という思いを持って活動してください。そのためには、世の中の大きなうねりを感じ、自分がビジネスの主人公になることです。試しに、A4用紙の中央に「自分」を書き、周囲に皆さんの仕事や業界の動きを書き込んでみてください。頭の中が整理され、重要なことは自然と大きく書くでしょう。そのたった1枚の図の中に、皆さんの仕事の喜びや苦しみが凝縮されています。それをじっくり見れば、「あぁ、自分がやりたいことはこれだ!」とおぼろげにでも分かってくるはずであり、それが皆さんの判断基準となるのです。

以上(2019年8月)

pj16969
画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】頼れる人、頼れない人

今日は、皆さんに大事なことを質問します。皆さんには、困ったときに頼れる人はいますか。仕事のことでも、仕事以外のことでも、頼れる人がいるのといないのとでは、心の持ちようが大きく違います。

私には、困ったときに頼れる人が、何人かいます。そのうちの1人は、まだ20代の若者です。彼は、自身の専門分野に明るいのはもちろんですが、それだけではありません。人から相談されたときに、すぐに解決できないことでもゼロ回答とせず、一緒にどうにかしようとする姿勢や心意気を持っています。彼の真摯な姿を見ていると、感謝で胸がいっぱいになります。心が洗われ、自分自身も頑張ろうという気持ちが湧いてきます。

一方で、残念ながら「この人は、いざというときに頼れないな」と思う人もいます。何かを相談したりお願いしたりしたときに、リアクションが悪く、対応してくれる際も保身に走る言動が目立つような人は、「頼れない」と感じてしまいます。利害関係があれば、ある程度の保身は仕方がないのかもしれませんが、それがあまり目に付くようだと、信頼できなくなってしまうのです。

そうした頼れない人の言動を見ると、私は悲しい気持ちになるのと同時に、その人を反面教師にしなければと強く思います。皆さんは、こうした話をどのように感じますか。困ったときに頼れる人はいるか、そして、皆さん自身は、誰かの頼れる人になっているか。一度、考えてみてください。

頼れる人と頼れない人には、さまざまな違いがあります。分かりやすいのは、「相談を受けた際、どのような動きをするか」という点でしょう。

頼れる人は、すぐにリアクションをします。自身が今できることを考え、実践しようとするのです。たとえ今、本人にできることがなかったとしても、「この手段がよいかもしれない」「この人に聞けば分かる可能性がある」「こうした影響も考慮したほうがよい」と、前に進む提案や建設的な意見を相手に伝えられるのが頼れる人です。

一方、私の経験上、頼れない人は、自分から動こうとしません。「分かりません」「できません」「今は難しいです」と、できるだけ労力を費やさずに済まそうとします。こういうリアクションを取らせる関係を築いてしまった側にも責任はあるでしょう。しかし、こうした言動は、相手にあまりにも冷たく利己的な印象を与えます。そして、次第に相手からの信頼は失われていくのです。

頼れる人と頼れない人とでは、結局、「誠実さ」において違いがあるのではないかと私は考えます。相手の困っている状況や気持ちに寄り添い、誠実に向き合おうとすれば、人は自ずと、頼れる人の言動を取るものではないでしょうか。

例に挙げた20代の彼は、私が感謝すると、「いえ、自分はまだ、至らないところが多くて。もっと勉強します」と答えます。皆さんは果たして、そうしたことが言えますか。皆さん、ぜひ、私と一緒に、「頼れる人」になりましょう。

以上(2019年8月)

pj16971
画像:Mariko Mitsuda

リファラル採用は企業変革の絶好のチャンスです!〜中小企業は知らない人を採ってはいけないという社会情勢を知る〜/岡目八目リポート

年間1000人以上の経営者と会い、人と人とのご縁をつなぐ代表世話人 杉浦佳浩氏。ベンチャーやユニークな中小企業の目利きである杉浦氏が今回紹介するのは、リファラルリクルーティング株式会社の代表取締役である白潟敏朗さんです。

今年の1月に白潟さんが出版された【知らない人を採ってはいけない 新しい世界基準「リファラル採用」の教科書】が発売後すぐに、Amazonの会社経営、マネジメント・人材管理、人事・労務管理の3分野で1位となるほどの人気。これも時代が正しい方向に進もうとしている結果と感じました。中小企業における採用のあり方を掘り下げることにフォーカスして今回はお伝えできればと思います。

まずは白潟さん作成の自己紹介シートと同社HPをご覧ください。

白潟氏の自己紹介シートを示した画像です

なんと解りやすい自己紹介シートなんでしょうか。。。。伝わる伝える技術の大切さがこの1枚で理解できます。さすが29年間で12,600社のコンサルを手がけられた実績の証と思いますね。物腰柔らかながらも伝えるべきことはキチンと伝え、伝わる。経営者経験も20年となり、7社の経営に携わってこられた白潟さんに、中小企業にとって大きな課題である人材採用面での大切な情報を余すところなく伺ってまいりました。私自身も企業間を取り巻く情勢状況を理解出来、大変勉強になった次第です。是非、ご期待下さい!!

1 リファラル採用をコンサルティングすることになったワケ~中小企業を取り巻く採用情勢、企業経営者との対話から生まれる~

1)減り続ける労働人口

開口一番 白潟さんから飛び出したのは、労働人口の減少の現実。2030年には何も対策を打たなければ、今より644万人の人手不足が生じる(出所:パーソル総合研究所より)。外国人の受け入れ、高齢者・主婦の社会復帰等で、一定はこの労働人口不足の【手当】は可能だと思うが、深刻な人手不足が日本を支えている中小企業にボディーブローのように効いていくことが、これから現実味を帯びていくことは明白です。

2)人材採用業界における中小企業の現況

マーケットサイズ(求人広告・職業紹介)が1兆円を超えたのがおおよそ10年前(出所:人材サービス産業の近未来を考える会作成資料9ページ)。現状何が起こっているか?

  • 求人広告に掲載してもまったくと言っていいほど人が来ない、応募がない(儲かるのは求人広告会社ばかり)
  • 求人広告の内容が自社の実態とかけ離れた【誇張】で打ち出し、採用のミスマッチが後を絶たない
  • たまに採用に至っても、質の低い人材しか来ない(すぐに辞めてしまう)
  • 登録している人材の中には経歴詐称をしている人材も(質の担保ができない)
  • 紹介会社に依頼して年収の35%の手数料を払える中小企業は少なくなってきている

ますます肥大化する人材採用マーケット、売上、利益が絶好調な収益構造にそろそろ綻びが出始め、賢明な経営者ほど自社の利益をある意味、対価なく貢いでいるだけのような構造を疑問視するようになっていると、白潟さんは話します。

3)コンサル業界ではやらないエリア戦略から見えてきたこと

50歳で一念発起し、トーマツ イノベーション(現ラーニングエージェンシー)の社長を後進に譲り、中小企業経営者を元気にする!を天命と誓い白潟総合研究所株式会社を起業した際、中小企業の集積している場所として当初八丁堀町駅近くに事務所を構えていました。その時の思い出話として、コンサルティング会社がやらない顧客開拓手法のエリア戦略にチャレンジしたそうです。

  • ご近所への開拓するのに、飛び込みを選んだ白潟さん、ありがちなことでは誰も取り合ってくれない、門前払いの連続、そこで名刺をA3サイズに巨大化して手渡す。社長がいなくても必ず社長にその巨大名刺が行き渡り、社長への面談確率を上げていたそうです。実際の名刺はこちらです。

白潟総合研究所株式会社の名刺を示した画像です

  • 社長と面談が叶った時に、営業新人でも誰でも簡単に経営課題を確認できるツールも作成。それは経営課題を予め印刷した大きなカード(トランプのような、ソリューションカードと名付けていらしゃいました)。こちらを7枚、社長の目の前に提示し、徹底的に課題を聞いていったそうです。

ソリューションカードの画像です

このエリア戦略について、白潟さんは笑顔で『うまくいきませんでした。』と話されていましたが、中小企業経営者との徹底的な対話から、一番の課題が【人が採れない、良い人が採れない】ということでした。前職時代から、社長の身内が入社したいと思わない会社はだめ!と言っていたそうですが、この課題を事業化、新規事業として、そして【新会社】として設立したのがリファラルリクルーティング株式会社となった経緯です。経営者への課題に向き合う姿勢大切ですね。

2 リファラル採用が全てうまくいっている。なぜか、その内容とは?

白潟さんから衝撃的なコメントがあったのが、『今まで、リファラル採用のお手伝いをしてきた中小企業で上手く行かなかった(採用に至らなかった)会社は1社もありません。』という事実。

なぜか? それは以下の【リファラル採用がうまくいく3つの前提条件】をご覧ください。

リファラル採用がうまくいく3つの前提条件を示した画像です

  • 社長と会社を好きな社員がいる
  • 嘘をつかない
  • 社長が耳の痛い提案を聴ける

まずはこの3つを会社の代表である社長が約束できるか? そこを見極め、確認できた時にだけ、採用のコンサルティングに進むそうです。ある意味うまくいくことに納得感がありますね。

リファラルリクルーティングについて詳細をお伝えしていきたいと思います。

1)リファラルリクルーティング≠コネ入社ではありません

リファラルリクルーティングを説明した画像です

社内外の信頼できる人脈からの紹介・推薦による採用活動のことなんですね。

2)リファラルリクルーティングの位置づけについて

リファラルリクルーティングの位置づけを説明した画像です

多様化する採用活動、その中でもダイレクトリクルーティングの中に分類されています。ウォンテッドリー等のソーシャルメディアが発達して行く中でリファラル採用も利便性、効率性がアップしたと言えます。

3)リファラル採用の誤解と適切な理解

リファラル採用のよくある誤解と適切な理解を説明した画像です

上記の中で大切に思ったのは、友人知人を口説くわけではない、その友人の先にいる友人や知人ということ。また自分で口説かなくて良い、会社主催のイベントに連れてくるだけでもOK。個人戦ではなく団体戦ということ。

4)リファラル採用の王道プロセス

リファラル採用の王道プロセスを説明した画像です

リファラル採用の唯一のデメリットが上記に記載されています。それは、求職者が入社意向であっても、テストでNG、面接でNGの場合。ここで大切なのは、テストでNGであっても、面接でNGであっても、必ず社長との面接までは実行すること。そして決して、不合格通知をださないこと。社長名の感謝の手紙、誠意を伝える。ここを失敗すると、声を掛けてくれた社員までが辞めてしまう恐れもあり、慎重にする。

5)実際にコンサルティングのイメージと費用について(標準例)

リファラル採用の具体的な推進手順を説明した画像です

標準6カ月でコンサルティングを行い、9回の訪問で2名以上の採用へ。その後の自力自走で採用を継続していくというイメージです。

このコンサルティングの中で、アピールブックの重要性、まさに嘘をつかないこと。出来ていないことは出来ていない、課題の全て、現状の事実を最初から隠すことなく求職者に伝える、入社してバレてしまう課題を入社前にキチンと見える化。しかし、会社が変革していこうとする中期経営計画と入社後の個人への能力開発を見える化することで期待をもって入社してもらう。

3 白潟さんの今後の展開、インタビューを終えて

1)白潟さんの事業の展開、今後について

前職時代に顧客社数が8,000社までマーケットを創った白潟さん、50歳からまたゼロからのスタートから現在顧客数は250社へと5年で成長させていらっしゃいます。今後の事業展開についても伺いました。

白潟総合研究所のHPにも掲載していますが、今後の展開は、親→子→孫の形態で会社を設立していきます。いわば総合店と専門店を同時に経営し顧客に向き合うこと。』

もう少し詳しく伺いますと、今回の主テーマである、リファラルリクルーティング株式会社は孫にあたります。白潟総合研究所は親に。今年1月、ソーシャルメディアを活用した採用コンサルティングの会社としてソーシャルリクルーティング株式会社を設立しています。こちらも孫の位置づけであり、今後も経営者の採用に関する課題に対応する事業を新会社化していく、その孫と親の間に【採用総合研究所】を設立、これが子にあたる位置づけに。

総合店(白潟総合研究所)でありながらも、専門店として対応ができる、親→子→孫という発想で、組織開発、人財育成、売上アップ、業務改革、経営管理と現時点でこれだけの【子】の研究所のイメージをお持ちです。この事業展開を継続、発展していく先、30年後には【お客様の数、シンプルな方法論の数、コンサルタントの質で世界No1.のコンサルティングファームになる】というビジョンを掲げていていらっしゃいます。日本が強くなる、活気ある中小企業経営者のために。私も微力ですがご一緒できますようにと願い、この白潟さんの想いに共感しています。

また今月(2019年7月)には私にとっても念願の大阪に拠点を構えることに。

2)インタビューを終えて

経営コンサルティング業界29年、しかも圧倒的な数の経営者と向き合ってこられた白潟さん。ご実績からすると少しくらい上から目線の部分もあるかと思いますが、そんなことは微塵もなく。物腰柔らかく、素人でも解りやすい口調で終始笑顔で接してくださいます。

経営者の課題を傾聴し、見える化したところから事業開発にまでもっていかれるスピード感には感心というより驚きのレベルです。

今回は、中小企業の経営を圧迫し、結果を出せていない、採用事情についてリポートさせていただきましたが、採用レベルのお話ではなく、経営者の変革、組織の変革、会社の変革を行う上で相当のチャンスと理解しました。

社長の親戚や社長の奥さんの友人、得意先等々社長をとりまく人脈から魅力がなければそれは大きな問題、課題、その解決にリファラル採用が決め手になるように思いました。まさに【知らない人は採ってはいけない】と。

白潟さんに感謝です。

以上(2019年7月作成)

法人間の国際送金サービス

書いてあること

  • 主な読者:海外企業と取引のある事業者
  • 課題:国際送金サービスの事例、留意点を知りたい
  • 解決策:銀行以外でも国際送金サービスを手掛ける企業がある。取引に当たり、ビジネスメール詐欺などの金融犯罪に注意する

1 拡大する国際送金の額

グローバル化の進展によって出稼ぎ労働者を含む移民が増加していることなどを背景に、国際送金の額の拡大が続いています。

世界銀行のデータによると、世界における国際送金の額(送金の受け手国側から集計した額)は、2018年には6894億400万ドル(1ドル=110円で換算すると約76兆円)と過去最高を記録したもようです(2019年4月公表の速報値)。

同じく世界銀行のデータによると、日本への国際送金の額は、2018年には56億3400万ドル(1ドル=110円で換算すると約6200億円)、日本からの国際送金の額は、2017年には52億8300万ドル(同、約5810億円)となっています。

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2 銀行以外で法人間の国際送金サービスを展開している企業事例

1)国際送金とは

国際送金は、国境を超えて現金を物理的に移動させることはまれで、実際には銀行間の「帳簿の付け替え」が行われるかたちが一般的です。

詳細は割愛しますが、国内のA銀行の口座から、海外のX銀行の口座に送金する場合、「送金手数料」「為替手数料」「受取手数料」が発生し、途中に介在する金融機関が多ければ、それだけ時間やコストが掛かることになります。

国際送金サービスの市場は、かつては、銀行や送金専門業者(Money Transfer Operator)の独壇場でしたが、インターネットが普及した近年では、ITを駆使したフィンテック企業の参入も相次いでいます。

以降では、銀行以外で、法人間の国際送金サービスを日本でも展開している企業事例を紹介します。

2)TransferWise(トランスファーワイズ)

TransferWise(英国)は、自社の銀行口座を多数の国に開設しており、送り手が自国のTransferWiseの口座へ入金して指示をすれば、受け手の国にあるTransferWiseの口座から、その時点での為替レートで送金できるというサービスを展開しています。

同社は、手数料計算ツールをウェブサイトで公開するなど、送金に掛かるコストの透明化を図っています。

同社の日本法人トランスファーワイズ・ジャパン(東京都千代田区)は、2016年9月より個人向けサービスを、2018年6月より法人向けサービスを開始しました。

■トランスファーワイズ「法人サービス」■
https://transferwise.com/jp/business/

3)Queen Bee Capital(クイーンビーキャピタル)

Queen Bee Capital(東京都港区)は、「PayForex(ペイフォレックス)」という、銀行間の国際送金ルートを利用し、顧客の資金を海外の銀行口座へ送金するサービスを展開しています。全ての手続きがインターネット上で完結でき、取り扱い通貨は20種類以上、200カ国以上に送金が可能です。送金額によって手数料が異なり、大口の外貨送金手数料は無料となります。

■Queen Bee Capital「PayForex」■
https://www.queenbeecapital.com/payforex/

3 銀行以外の法人間の国際送金サービスを利用する際の留意点

1)1回当たり100万円を超える送金は銀行以外に認められていない

上述したトランスファーワイズ・ジャパン、Queen Bee Capitalの2社は「資金移動業者」として登録を受けています。これは、「資金決済に関する法律」に基づき、銀行等(銀行、外国銀行の日本支店)以外のものが100万円に相当する額以下の為替取引を業として営む場合、「資金移動業者」として内閣総理大臣の登録を受けなければならないためです。

2)法人口座の開設には書類提出が必要

法人口座の開設には、申し込み者が本人であることを証明する書類と、個人番号(マイナンバー)・法人番号の提出が必要となります。これらの必要書類を取りまとめるには、相応の手間が掛かります。

3)金融犯罪に注意

いわゆる「ビジネスメール詐欺」の手口が巧妙化しています。2018年8月には情報処理推進機構(IPA)が、「日本語メールの攻撃事例を確認、あらゆる国内企業・組織が攻撃対象となる状況に」として、注意喚起を行いました。

今後、日本語の文面によるビジネスメール詐欺が増加した場合、海外との取引がない、あるいは英語のメールのやり取りの習慣がない国内の一般企業・組織も被害に遭う恐れがあります。

4 参考

現在、1回当たり100万円を超える送金は銀行以外に認められていません。ただし、2018年秋以降、金融庁の金融審議会において、この規制の緩和に向けた議論が進められています。

2019年5月29日には、金融審議会「金融制度スタディ・グループ」において、「『決済』法制及び金融サービス仲介法制に係る制度整備についての報告≪基本的な考え方≫(案)」が示されました。その中では、資金移動業者を送金額に応じて、「現行の送金上限額を超える高額送金を取り扱う事業者」「現行規制を前提に事業を行う事業者」「数千円または数万円以下の少額送金のみを取り扱う事業者」の3類型に再編することなどが、検討課題として示されています。

報道によると、金融庁は制度化に向けて議論を進め、早ければ2020年の通常国会に関連法改正案の提出を目指しているもようです。

以上(2019年7月)

pj50426
画像:photo-ac

【朝礼】「変化」は自ら起こすもの

先日、私は大学の頃の友人と、大学時代の思い出の地を巡ってきました。実に30年ぶりに、校舎の中と、その周辺の街を歩いてみたのです。

懐かしさと同時に、新しく変わった校舎や街並みに、大きな衝撃を受けました。

中でも印象に残ったのは、大学周辺の飲食店が、ほとんど新しく変わっていたことです。私たちは、「思い出の地巡り」の締めくくりとして、当時よく通っていた何軒かの店で乾杯しようと思っていましたが、それらの店はただの一軒も残っていませんでした。

唯一残っていたのは、昼ごはんをよく買いに行ったパン屋さんだけです。そのパン屋さんも、店名を含めて30年前とは様子が全く違っており、おしゃれなベーカリーカフェに変わっていました。私たちは、30年たつと飲食店がこれほどまでに入れ替わり、変化するのかと、時代の流れを実感しつつ帰ってきました。

それぞれの飲食店で事情はさまざまでしょうが、唯一パン屋さんが30年たっても残ることができたのは、時代とともに移りゆく学生たちのニーズやライフスタイルに合わせて、自分たちも変化してきたからかもしれません。私は、このパン屋さんの姿から、当社も、これから変化していかなければならないと改めて強く感じました。

ただし、パン屋さんと当社では、大きく違う点があります。それは、「パン屋さんは外から変化がやってくる」という点です。

そのパン屋さんは大学のそばにあるため、毎年、多くの学生が新しく入学し、そして卒業していきます。つまり、「顧客」も含めて、「常に外から変化がやってくる」環境にあるのです。

一方、当社はそうではありません。新入社員を定期的に採用してはいませんし、顧客が毎年、定期的に入れ替わるようなこともありません。外から大きな変化がやってくるわけではない当社は、「中から変わっていく」しかないのです。

皆さん、自分の周りを見回してみてください。当社は設立30年以上ですが、30年前と全く同じ進め方をしている仕事、変わらない商品があるはずです。長く続いているのは大いに誇れる素晴らしいことですが、ただ漫然と前例を踏襲しているだけで、本当は変わらなければならないのに変わっていないとしたら、それは大きな問題です。

「日に新た(ひにあらた)」。これは、昨日とは違う今日という意識を持ち、日々新しい自分になることで成長していけるという趣旨の言葉で、松下幸之助氏が好んで使っていたものです。松下氏は、社員が全く同じことを続けているだけだと、厳しく叱ることもあったといいます。

当社も同じです。皆さん一人ひとりが、「中から、自分たちから変わっていこう」という意識を持ち、日々変化していくことで成長できるのです。

この朝礼が終われば、昨日とは違う新しい一日が始まります。皆さん、今日から変化を意識し、当社に新しい風をぜひ起こしてください。

以上(2019年7月)

pj16964
画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】「笑顔」と「笑い声」の準備はできていますか?

皆さん、おはようございます! 本日は良い雰囲気でビジネスを進めるための、ある秘訣について話したいと思います。皆さんは、日々の営業の場面で、「今日はトークの調子がいい!」とか、逆に「調子が悪い」と感じるときがあるでしょう。

トークの調子の良しあしは、準備したシナリオ通りに話せたか否かで決まるわけではありません。例えば、相手と丁々発止の議論ができ、その中で、当初は想定していなかったアイデアが浮かんで提案の幅が大きく広がったときなどに、「トークの調子がいい!」といえるのです。

では、トークの調子がいい状態はどのようにすればつくれると思いますか。私は「相手に気持ちよく話をしてもらうこと」と、「自分が気持ちよく話をすること」、この2点に尽きると思います。

恥ずかしいことですが、私は一度だけ商談中に居眠りをしたことがあります。疲れていたこともありますが、何より相手の話が単調だったのです。居眠りしたのは一瞬でしたが、相手は見逃しませんでした。相手は私の反応を探ろうと全神経を集中させているのですから、気付いて当然です。

次の瞬間から相手の雰囲気がガラッと変わりました。「私に聞く気がない」と判断した相手は、さらに単調な口調となり、早口にマニュアル通りの説明をして、そそくさと帰っていきました。もしあのとき、私が相手に気持ちよく話をしてもらう配慮ができていたら、より良い提案を受けられていたかもしれません。

逆に、良い例もあります。ご縁があってインターネットメディアの対談に参加したときのことです。そのときの対談相手の言葉がとても印象的だったのです。彼は、「周りの人たちは、常に笑顔と笑い声を絶やさず、餅つきの合いの手のように盛り上げてください。そうすることで私たちは気持ちよく対談できます。結果として、それが良い内容に結び付くのです」と言いました。その人が対談に慣れていたこともありますが、アドバイス通りにした結果、確かにその場は非常に盛り上がり、中身の濃い対談ができました。

関係者の中には、仕事として笑顔をつくり、笑い声を発し、合いの手を入れていた人もいたはずです。全員が心を込めていたわけではないでしょう。しかし、それでも、人は周りの笑顔や笑い声から力をもらい、前向きになれるものです。実際、私もそうでした。

多くの人は商談前に、「シナリオ作りも含め、事前準備を怠らないように」と教えます。とても大事なことですが、私はここに、「笑顔」と「笑い声」も準備するようにしています。プロのアナウンサーは、本番前に鏡の前でニーッと歯を出して笑顔の練習をするそうですが、これと同じです。実践してみれば分かりますが、「笑顔」と「笑い声」には、皆さんが考えている以上の効果があります。皆さんの「笑顔」と「笑い声」は相手にも伝わり、とても良い雰囲気でビジネスを進めることができます。ぜひ、試してください。

以上(2019年7月)

pj16965
画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】部下が成長するベストタイミングを逃さない

皆さんは、「信じる」ということの意味をどのように捉えていますか。私は、「信じる」とは、相手の人間性についてはもちろんのこと、相手の実力をも信じることだと考えています。

分かりやすく、スポーツに例えてみましょう。サッカーチームに、性格はとても良いが実力は三流の選手がいたとしたら、その彼にエースストライカーを任せることはできないでしょう。点を取ってくれるとは思えないからです。逆に、実力は一流だが性格に難がある選手がいたらどうでしょう。やはりエースストライカーを任せることはできません。ひねくれたプレーをして、せっかくのチャンスを台無しにしてしまうかもしれないからです。

偉大な成績を残して現役を引退したイチロー選手のように、一流と呼ばれる選手は、人間性と実力を兼ね備えています。だからこそ周囲は「信じる」ことができるのです。

さて、ここで管理職の皆さんに質問します。

「信じられる部下を育てていますか?」

注意してほしいのは、私は「部下を信じていますか?」とは聞いていないことです。皆さんの仕事は部下を信じるだけではなく、信じられる部下を育て、その上で信じることです。人間的に未熟な部下には、仕事に取り組む姿勢を教え、技術的に未熟な部下には、スキルアップの機会を与えなければなりません。それも、適切なタイミングで部下の成長を後押しする必要があります。

私が課長だった頃、上司からの信頼を強く感じた出来事があります。私は大きな商談を担当していて、最終コンペまでこぎ着けました。その当日、上司は次の言葉で私を送り出してくれました。

「楽しんできなさい!」

その上司は人の何倍も準備をする人でした。通常なら直前まで私を指導し、「とにかく慎重に!」と送り出したはずです。それなのに「楽しんできなさい!」と言われたので私は驚きましたが、すぐにその言葉は私への信頼の証しだと分かり、やる気が倍増したのを覚えています。当時、私は本当に入念にコンペの準備をしていました。後から聞いた話ですが、上司はそのことを同僚から聞いていたこともあり、私を信頼してくれたようです。

「啐啄同時(そったくどうじ)」という言葉があります。「啐(そつ)」はひな鳥が卵の内側から殻をたたく状態、「啄(たく)」は親鳥が卵の外側から殻をたたく状態を示します。親鳥は、ひな鳥がいよいよ殻を破って外に出るタイミングを見逃さず、その手助けをしているのです。

先ほど例に挙げたコンペのとき、上司から「とにかく慎重に!」と言われていたら、私はそれほど上司からの信頼を感じなかったはずですが、まさに上司の絶好のタイミングの一言でやる気が倍増しました。部下は一気に成長しません。しかし、ブレークスルーのタイミングは必ずあります。上司はそれを見逃さず、「啐啄同時」でサポートすることが大事なのです。

以上(2019年7月)

pj16966
画像:Mariko Mitsuda

経営者の皆さん!社員とコミュニケーション取れていますか?〜会社が明るく、楽しくなる秘訣をVITAさんに聞く〜/岡目八目リポート

年間1000人以上の経営者と会い、人と人とのご縁をつなぐ代表世話人 杉浦佳浩氏。ベンチャーやユニークな中小企業の目利きである杉浦氏が今回紹介するのは、等身大株式会社の代表取締役であるVITAこと内藤紗弥花さんです。多くの方々から「VITA(ヴィータ)」で親しまれていますので、ここでも「VITAさん」でご紹介します。

1 人は、いつから働くのが楽しくなくなったのか?

「働く喜び調査2013~2017年」(出所:リクルートキャリア社)の資料を見ていても、ネガティブワードのオンパレード。【楽しい】がなんと15番目に出てくるのです。いったい仕事が楽しくなくなったのはいつからのことなのか……? そう考え込んでしまいそうです。

私は毎日楽しくて楽しくて仕方がないですが(笑)。

この他にも、会社員が「イキイキ仕事していない」と感じることが、残念ながら少なくありません。これでは、働くのはシンドい、ツラいというのが当たり前になってしまうと危惧しています。

そんな重い空気感を数分で一変させ、その場を笑いと笑顔で包み込む講演家、それがVITAさんです。今回は、VITAさんに「会社が明るくなる、楽しくなる秘訣」を伺いました。特に「うちの会社はちょっと暗くて……」と悩んでいる経営者の方には、とても良い刺激になる内容です。

2 「年収6000円ですか?」「いえ、8900円です!」と真顔で

2018年11月、私が登壇させていただいたある勉強会に、VITAさんをお招きしたことがあります。そのときに私は、会場の皆さんに「年収1万円以下の経験がある方はいらっしゃいますか?」と質問させていただきました。そこでたった1人だけ手が挙がったのがVITAさんなのです。

次に問いかけたのが、「年収6000円でしたよね?」でした。それに対してVITAさん、『もう少し多かったです!8900円でした』。この一言で会場がどよめく! 仕事感、働き方関係のセミナーであったこともあり、参加していらっしゃる方々に、「いかにお笑いの世界が厳しいか。そこで頑張ったVITAさんが、いかにすてきか」をお伝えしたいと思い、筋書きのない質問を突然させていただいた次第です。

この質問の後に、VITAさんには一発ネタを幾つか披露していただき、会場の雰囲気が一気に明るくなりました。おかげで皆さんとの交流もスムーズに進み、とても素晴らしい会となりました。感謝しています。

VITAさんとの出会いは、VITAさんが会社を設立されて3カ月後のことで、今から3年前の9月になります。懇意にしていただいている社長さんから、「面白い講演が聞けるから杉浦さんも来たら? 勉強にもなるよ」と声を掛けていただき、参加しました。当時は、「内藤紗弥花VITA」というふうに「本名+芸名」で名乗っていらっしゃったことも懐かしいです。

ここで、等身大株式会社のHPから、VITAさんの略歴を簡単にご紹介しましょう。

●VITAさんの略歴(HPより)

・等身大株式会社 代表取締役。エンターテイナー・講演家。1985年神奈川県三浦市生まれ。「将来は政治家になります」と宣言し、AO入試にて慶應大総合 政策学部に合格。卒業後、突然、よしもと芸人に。全く売れずに、バイト生活すること3年。引退を考えていたころ、友人の言葉に奮起し、なんとか、2010年プチブレイク。「さんまのまんま」、「ぐるぐるナインティナイン」等、計10番組に出演を果たす。引退後は、営業コンサルティング会社にて営業パーソンとしての経験を積み、辛酸をなめる。ある時「あなただから買ったのよ」と伝えてくれた顧客との出会いに「仕事の最大の価値は人」だという信念を持つ。その後、2年間で7業種の営業を体験し、トレーナーとしても経験を積む。現在はエンターテイナー・講演家として活動。中学生から中央官庁管理職までと対象は幅広い。どんな相手でも繋がれるコミュニケーション術や、「等身大力セミナー」(今ある力を最大限に活かして、目の前の人を幸せにする力)を伝え、デビューわずか2年で年間150回の講演、研修の依頼を獲得。セミナーは、元よしもと芸人ならでは。ユーモアを交え、会場内を縦横無尽に動き回る体当たりのスタイルは好評を博し、働く人々の背中を押す。

このような略歴のVITAさん。「年間150回の講演を全力で」。本当にスゴいと感じます。

等身大株式会社の使命を記載した画像です

3 なぜ、VITAさんはお笑い芸人を目指したか?

政治家を目指していたVITAさんが、お笑い芸人へと進んだのはなぜなのか? 「この歩みには、子供の頃からのことが何か影響しているのでは?」と思い、子供の頃や学生時代について伺ってみました。

「目立ちたがり屋さん」。これが、VITAさんの子供の頃の全てと感じました。ただの目立ちたがり屋さんということではもちろんなく、周りに元気を与える、その元気が伝播することが大好きな子供時代だったようです。

「小学校の頃はどんな感じでしたか?」という質問に、VITAさんはこう答えてくださいました。「班長や学級委員長など、『長』がつくものを、とにかくやっていました。学級委員長に初めて立候補したのは、小学校3年生のときでした。そのときに多数決で選ばれた経験、人から信頼を得ることがこれほど気持ちいいのか!と思ったことを、今も鮮明に覚えています。小学校の授業が終わり休憩時間になると、そこは自分の【舞台】。今、授業をしたばかりの先生の物まねをしてクラスメートに「授業」をする【復習】で、自分自身も勉強となり、クラスメートも同様に学習レベルが上がる感じでしたね」

ある意味、教育研修で大切な相手に【伝える・伝わる】技術も、この「物まね授業」あたりから習得できて、一定のレベル感になっていった感じですね。

また、VITAさんは、高校の3年間のうち、2年間も生徒会長だったそうです。これはビックリしますね。1年生の秋口に立候補をして当選。そこから丸2年間、生徒会長を経験したわけですから、VITAさんの行動力、リーダーシップを感じます。

こうした子供時代や学生時代のコミュニケーション力や行動力、リーダーシップを生かし、社会課題を解消すべく政治家を目指したVITAさん。大学入学後も熱心に学んでいたそうです。テーマは学問として浸透し始めていたCSR(Corporate Social Responsibility)や、CSV(Creating Shared Value)。そこにのめり込んで、社会問題、社会企業論を研究しながら、VITAさんは「自分に何ができるか?」「社会へのインパクト、プロジェクトを何で動かすか?」という自問自答を繰り返し、卒業前のゼミの発表で「お笑い芸人になる!」と宣言し、その道へ。ゼミの中で相当珍しいチャレンジであったことを笑顔で振り返ってくださいました。

4 お笑いの世界で学んだこと

「世の中を笑顔にしたい」というプロジェクトを実現するために、VITAさんが飛び込んだお笑いの世界。そこは、生易しいものではなかったそうです。吉本興業が運営するNSC(吉本総合芸能学院)に40万円の入学金を払い込んで入ったVITAさん。同期は当時600人ですが、厳しさに耐えかねて、すぐに100人が去ったそうです。1年目のプログラムに最後まで残ったのは、入学当初の3分の1程度の200人。

言葉にできないほど理不尽とも思える【先輩からの教育】も相当ありながらも、VITAさんは頑張ったのですが、正直、NSC入学時、「私の来るべきところではなかった」という思いもあったと話します。お笑いの世界の上下関係はとても厳しく、本当は優しい先輩たちも、入学1年目のVITAさんたちには、1年間、心を鬼にして厳しいことをあえて実践してくれていたのだそうです。こうしたしきたりや、流儀、お笑いの世界特有の慣習で、VITAさんがメンタル・タフネスとなっていったことも事実。しかし一方で、どこにも売れることが保証されていない現実にも直面したそうです。

NSCへ入学してから1年後、VITAさんはプロのお笑い芸人への道を進みます。VITAさんに、当時のスケジュールを聞いてみました。

●ある2日間のVITAさんのスケジュール

  • 6:30~15:30 カレー屋さんでアルバイト
  • 16:00~22:00 電気店で接客のアルバイト
  • 23:00~4:00 居酒屋でアルバイト
  • 4:30~6:00 睡眠 90分
  • 6:30~15:30 カレー屋さんでアルバイト
  • 16:00~18:00 漫才の相方とネタ打ち合わせ
  • 19:00~21:00 ライブに出てスベル(笑ってもらえない)

とこんな48時間を繰り返していたそうです!

お笑いライブに出演するにも、VITAさんは自らチケットを購入していたそうです。1500円×10枚が最低枚数。これを購入して舞台に上がる権利を得ていたのです。その出演ギャラは、当初は500円もらえればよいほうだったとか。

この芸能生活スタート時点の1年目のギャラ総額が、「年間で8900円」だったそうで、翌年、翌々年と3年間チャレンジするたび少しずつギャラは上がり始めましたが、逆にバイトをする時間がなくなってしまいます。お笑い芸人の最終年には何度も生活が困窮する場面があったそうです。その状況で相方さんから『もう辞めよう』の一言でお笑いを卒業することになったそうです。

VITAさんのお笑い芸人時代のお話を伺っていて、「理不尽がよいとは言えないが、そうした経験をしたことは大きい」と私は感じます。

芸人生活の後、VITAさんが飛び込んだのは営業コンサルティングの会社でした。ビジネス経験が何もなかったことから、現場に入り込み、自ら電話営業などなど幾つも【現場経験】を積み重ね、トレーナーとしても活躍。そこから現在の姿である講演家として、VITAさんは独立します。

持ち前の明るさ+芸人根性+コンサルティング=講演家

というスタイルとなっていると感じます。

VITAさんと著者の近影です

5 年間150回の講演で見えてくる、【今】の課題について

VITAさんが代表を務める会社の社名である【等身大】については、同社のHPにもその想いがこもっていると感じます。

●【等身大力】について(HPより)

「あなたに、会えて良かった」「あなただから、お願いしたい」「あなたの、おかげです」そう言われる「あなた」とは、ありのままの自分を受け入れ、それを輝かせて生きている「人」です。どんなに似たモノやサービスが溢れる時代になっても、たった一つ、差別化できる価値とは、「人」であると私たちは信じています。等身大株式会社では講演や研修をつうじ、まずは、“知る”「自分の素晴らしさに気づくこと」(自己理解)そして、“表す”その能力と社会をつなげるための発信力(コミュニケーション能力)を伝え、行動の変化を促しています。

自分との対話の中で、決して偽りなくイキイキ生きることの大切さ。等身大だからこそ明るくなれる、セルフマネジメントも無理なくできる、自分に向き合える、だからこそ【あなた】【みんな】に優しくなれる。そんな気付きを与えてもらえるのがVITAさんの研修の特徴だと、受講してみて感じます。

それだけではなく、冒頭で紹介したような、蔓延するネガティブな雰囲気の会社や社会の問題に対して、等身大力を広げることで、VITAさんは大学時代に研究してきた課題と向き合っていらっしゃるように私には感じました。

  • 自分と向き合っていない
  • 自分が何がしたいのか? 欲しいものも見つけられない
  • 【個】を生きていない
  • 周りに、耳年増(みみどしま)になっただけ、「青い鳥」を探し続けている
  • 本当の喜びを知らない、見いだせない(風を読むことだけは卓越している)

現在、こんなことが若者だけでなく、それなりの年齢層にも多く見受けられるそうです。この傾向は残念ながらますます増えていく様相を呈しているように思えます。

「生きるとか、働くといったら『VITA』だよな」。【笑顔のアイコン】になりたいと願うVITAさんは、常に最高品質の自分でいることを心掛けています。楽しくないのは、全力で参加していないから。VITAさんの姿勢から強い思いを感じた次第です。

年間150回の講演で、おおよそ2万人もの方々に「等身大力」を伝授し続けながら、将来は等身大力を伝授した「VITAチルドレン」たちと一緒に、「社会に笑顔を届ける仕事を続けたい」と、VITAさんは、まさに大きな大きなVITAスマイルで語ってくださいました!

VITAさんと著者の近影です

以上(2019年6月作成)

【朝礼】あなたも私も素晴らしい!

皆さんは、自分ができないことや、思いもよらないことを考えている人と出会ったとき、「この人はすごい!」と素直に感じることができますか。恥ずかしいことですが、私が他人のことを素直に認められるようになったのは、それほど昔のことではありません。

それまでは、自分より優れた人に会えば嫉妬をしていました。また、本当に素晴らしい工夫がされている事柄でも、その“からくり”が何となくイメージできることについては、安易に、「たいしたことはない」と低い評価を下しがちでした。逆の場合もしかりです。自分のほうが相手よりも優れていると思えば、必要以上に強気になっていたと思います。

多くの人は、相手との関係性、相手の能力、置かれている状況に応じて自分のポジションを変えながら、「幾つもの自分」を使い分け、なんとかバランスを取っているものです。実際、家族に接するとき、上司に接するときのそれぞれの場面では、部下に接するとき、友人に接するときでは、皆さんの態度は大きく異なるはずです。

こうした立ち居振る舞いは、「自分の軸がない」ようにも映ります。通常、そうした人は高い評価を受けません。しかし私は今では、さまざまなポジションの自分についても、「それはそれで自分の弱さやもろさである」と認めています。その結果、視野が広がり、同時に頼りない自分を受け入れられるようにもなっていったのです。

他人と自分を比較していてもキリがありません。勝ち負けや優劣の判断だけでは、相手と上か下かの関係しか築くことができず、コラボレーションしながら仕事をする関係にはなりにくいでしょう。ビジネスにおいては、他社とのコラボレーションがとても上手な人がいます。そういう人は、自分の考えをしっかり持っていますが、ポジションは中立で目線もフラットです。自分のだけではなく相手の立場から相手の考えを聞く姿勢ができているということなのです。

相手と自分を比べてしまうということは、相手から見ても同じです。私たちが「自分はたいしたことはない」と思っていても、相手は私たちのことを「すごい!」と思っているかもしれません。皆さんがフラットな目線を心掛ければ、もっと深いコミュニケーションが生まれ、新しい仕事が生まれる可能性があります。

最近、「自己肯定」という言葉をよく聞きます。とにかく「今の自分を受け入れよう」との風潮がありますが、大切なのは「ダメなことはダメ」と認めることです。そこで初めて自分と深く向き合い、本当に肯定できる自分になれるのです。

「あなたも私も素晴らしい!」。この朝礼で私が皆さんに伝えたいメッセージです。元号が平成から令和に変わり、新しい時代が始まりました。皆さんにも新しい可能性があります。それを追求し、令和の時代に躍動するために、自分と向き合い、弱さを認める強さを持ってください。

以上(2019年6月)

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画像:Mariko Mitsuda