助け合いは大事。ただし、数字の裏付けも忘れずに/半歩先行く中堅社員(7)

相手を思いやる気持ちが強く、同僚や部下の仕事も献身的にサポートする中堅社員のAさん。その姿勢が課内でも浸透し、他の社員も助け合いながら仕事をするようになってきました。

この功績が評価されたAさんは、若くして取引先とのプロジェクトリーダーに抜てきされました。しかし、その直後から取引先の仕事が遅れ始めました。悩んだ末にAさんは、取引先をサポートしようと決めました。社内外関係なく、皆、プロジェクトの大切なメンバーであると考えたからです。そして、課長に相談しました。

「取引先の仕事に遅れが生じ、“泣き”が入っています。そこで、当社が一部を引き受け、助けたいと思っています」

すると課長は、そっけない感じで言いました。

「それは、本当に当社が助けてあげるべきことなの?」

課長の意外なリアクションに驚いたAさんは、「取引先が困っていたもので……」と、同じ言葉を繰り返すばかりです。

「協力」する基準はありますか?

「取引先をサポートしてプロジェクトをうまくまとめたい」という気持ちは理解できますが、冒頭のAさんの選択は正しいのでしょうか?

ビジネスには役割分担があり、関係者がそれを守らなければ、良好な関係は維持できません。相手が社外の場合、契約によって役割分担(権利と義務)が決まります。いくら全体や相手のことを考えてのことであっても、本来やらなくてもよい契約外の仕事を引き受けることになれば、社内に負荷がかかり、収益も悪化します。

一方、“損して得とれ”ということで、そのとき相手に協力することで、その後のビジネスの広がりが期待できるなら話は別です。では、どのような場合に相手に協力できるのか、その基準を考えていきましょう。

良いシームレスと悪いシームレス

Aさんが所属する課のように、情報が活発に共有され、互いに助け合える「シームレス」な組織は理想的です。しかし、この関係を社外にまで広げるとなると、マネジメントが一気に難しくなります。

ビジネスには、「良いシームレス」と「悪いシームレス」とがあります。両者の違いは、「定性的な感覚と定量的な感覚のバランス」にあります。定性的な感覚とは、仕事に向き合う真摯さや他者を思いやる心です。また、定量的な感覚とは、文字通り、数字で仕事の収益性や効率性などを測る姿勢です。

Aさんのようなタイプは定性的な感覚は優れていますが、定量的な感覚は乏しいかもしれません。思いが先行し、コスト計算をしていない状態で仕事を引き受けてしまうのです。

仮に他社をサポートした場合、Aさんやその仲間には満足感があるでしょう。しかし、定量的に分析してみると、機会損失が大きく、会社全体で見るとマイナスになっていることがあります。

良いシームレスな体制の作り方

1)仕事の標準化を図る

良いシームレスを実現するための大前提は、中堅社員自身が効率的に仕事を進め、余裕のある状態をキープしておくことです。自分の仕事が終わっていないのに、新たに他人の仕事を引き受けるのはよくありません。

中堅社員は、メンバーの状況を正しく把握して余裕がありそうなメンバーを見つけ、そのメンバーにもう一頑張りしてもらうなどして、全体に余裕のある状態をキープします。

2)仕事の収益を把握する

仕事を進めるために生じるコストと所要時間を把握します。例えば、皆さんが受け取る給料から時給を計算し、仕事の所要時間を控えておけば、その仕事の収益が分かります。

同様のことをメンバーについても行えば、チーム全体のパフォーマンスが分かります。大まかでもよいので収益を把握すれば、少なくとも悪いシームレスに陥ることはありません。また、どの仕事にリソースを集中すべきかを判断する上でも役立ちます。

3)契約内容を確認する

良いシームレスとして取引先をサポートするとしても、契約範囲から逸脱することは好ましくありません。もし、その仕事でトラブルが生じた場合、責任の所在が問題になります。取引先の仕事に協力するのであれば、トラブル時を想定した取り決めが必要です。

また、こちらが善意で取引先の仕事をサポートするとしても、それはそのとき限りのことであるのが通常です。「どこまでやるのか、いつまでやるのか」を明確に示しておかないと、やはりトラブルになる恐れがあるので注意が必要です。

日々、意識すること

Aさんはプロジェクトリーダーであり、プロジェクトの収益を詳細に把握することができます。仮に自社の利益が数%下がるとしても、それによってプロジェクトの遅れが解消されて取引先との関係が強まり、次のビジネスにつながる可能性が高いのであれば、検討の余地があります。

ただし、中堅社員の独断で進めるのではなく、少しでも迷うところがあれば上司に相談しましょう。中堅社員はこのプロジェクトの収益を考えますが、上司はそれを含む複数のプロジェクトで収益を考えます。部分最適と全体最適の違いであり、上司はAさんと違った判断をすることもあります。

Point

  • 中堅社員は定量的な感覚を磨くべし。
  • そして「良いシームレス」を進め、関係者との信頼関係を築き、ビジネスの可能性を広げる!

以上(2019年8月)

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画像:Eriko Nonaka

「働き方改革」の第一歩は、今でも「整理整頓」/半歩先行く中堅社員(6)

中堅社員のAさんが勤める会社では、「働き方改革」の一環として、いわゆる「5S」を推進しています。しかし、大ざっぱな性格のAさんは、整理整頓がとても苦手です。Aさんのデスクは常に書類が山積みで、パソコンのデスクトップもファイルが散乱しています。

ある日、課長がAさんに言いました。

「昨日Aさんに渡した資料が見当たらないんだが、キャビネットに戻してくれた?」

焦ったAさんは、ガシャガシャと書類をかき分けながら資料を探し始めましたが、なかなか見つかりません。あきれた課長は、「見つかったら持ってきてね。整理整頓しないと書類をなくすよ!」と言って、立ち去ってしまいました。

残されたAさんは、心の中で思っています。

「整理整頓が大切なのは分かっているけど、忙しいから仕方がない! 仕事で成果を上げればいいんでしょ!!」

整理整頓は仕事の一環

まず理解したいのは、オフィスは「公の場所」であるということです。そこで働く以上、同僚などに不快感を与えないように、整理整頓するのは最低限のマナーです。

しかし、「売上が先、整理整頓は後!」といったように、この点を理解していない人がいます。「ビジネスなのだから、整理整頓をしなくても、仕事で成果を上げればよい!」と考えているわけですが、これは正しいとはいえません。整理整頓ができていないと、以降で紹介するようなマイナスポイントがあります。

3つのマイナスポイント

1)相手に不信感を抱かれる

デスクの整理整頓ができない社員は、パソコンやかばんの中も散らかっています。目の前でノートパソコンの中のファイルを探していたり、かばんの中の名刺入れを探していたりするような人が、相手から信頼を得ることは難しいでしょう。

2)コストをムダにする

整理整頓が苦手な社員は、コスト感覚も欠如しています。整理整頓ができておらずに会社の備品をなくした場合、会社のコストをムダにしています。また、デスクやパソコンのファイルなどが散らかっていると、本来は必要のない探し物をする時間が生じます。ビジネスパーソンが探し物をする時間は、年間150時間といわれますが、整理整頓ができていない社員はもっと長くなります。

仮に時給4000円とすると、その社員が150時間探し物をする場合の人件費は年間60万円です。探し物をしている間、別の社員を待たせることもあるため、ムダなコストはこれよりも大きくなります。

3)情報の漏洩、紛失

整理整頓されていないと、情報の漏洩や紛失が起こりやすくなります。例えば、パソコンのファイルが整理されていないと、メールの添付ファイルを間違えてしまうことがあります。もし、他社の営業情報や個人情報が記載されたファイルを誤って送ってしまったら、取り返しがつきません。

こうしたリスクを知っている上司は、部下に整理整頓を指示します。実際、デスクやパソコンを整理していくと、意外に不要な書類やファイルが多く、「なんで、とっておいたんだっけ?」と思うものがあるはずです。その気になれば、どんどん捨てられます!

書類の分類でトレーニング

仕事で成果を上げるために、整理整頓が大切であることはお分かりいただけたと思います。では、整理整頓が苦手な人はどうすればよいのか、そのヒントを紹介します。

1)処分する癖をつける

まず、面倒がらずに書類やファイルを処分する癖をつけましょう。捨てるかどうか迷うものは、一時保存の場所を確保し、しばらくたっても使わなければ、捨ててしまうとよいでしょう。

2)書類とファイルの保管方法

紙の書類を、次から次へと積み重ね続けるのはやめましょう。書類を種類別に整理すべきファイルを作って、そこに入れるようにします。そもそも、紙の書類は廃止していくのが好ましいかもしれません。

また、パソコンにあるファイルについては、ファイル名のルールを決めましょう。少なくとも「日付、内容、作成者」が明らかになるようにします。また、これらの要素の順番も統一します。

整理整頓も仕事の1つ

整理整頓ができない上司の部下は、上司に似て整理整頓ができなくなります。中堅社員にも部下がいるはずですが、整理整頓は部下指導の一環でもあります。

そのため、中堅社員は、自身はもちろん、部下や同僚にも整理整頓をするように働きかけましょう。会議室などの共用スペースについても、整理整頓を心がけると理想的です。こうした姿勢が部下に伝われば、仕事を整然とこなす強いチームを作ることができ、結果として生産性が向上していきます。

Point

  • オフィスは「公の場所」である。自分のデスクなどはもちろん、共用スペースも整理整頓をしよう。
  • 生産性の向上につながる!

以上(2019年8月)

pj00425
画像:Eriko Nonaka

接待は「おにぎり」を食べてから行こう!/半歩先行く中堅社員(5)

大切なクライアントとの接待を前に、課長がおにぎりを食べています。“食事の前の食事”が理解できない中堅社員のAさんは、「課長、これから接待ですよ。今食事をしたら料理がおいしく食べられません」と、話しかけました。

すると課長は笑いながら答えました。

「これから接待だから食べてるんだよ。私はおなかがすき過ぎていると、がっついてしまう癖があってね。もてなす側の姿勢として好ましくないでしょ。だから、軽く食べているんだよ」

納得したAさんは「へ~、いつもそうなんですか?」と、さらに話しかけました。

そこで課長は言いました。

「そんなことはないよ。接待によっては、“ガツガツ”食べたほうが喜ばれるときもあるからね。Aさんも経験を積んだら、TPOに合わせた立ち居振る舞いが分かってくるはずだよ」

接待にもあるTPO

接待は、相手との関係強化、情報交換、セールスなどの目的で行われます。食事やゴルフなど、オフィス以外の場所で行われるのが通常なので、ふとした瞬間に、好ましくない“素の自分”が出てしまうことがあります。

例えば、食べ方が汚い、話題が下品、ゴルフなどのゲームの進め方が自分勝手などです。もてなす側がこうした振る舞いをすると相手は不快になり、せっかくの場が台無しになってしまいます。

また、食事を伴う接待では、料理をおいしく食べるのが基本ですが、食べ方はその場の雰囲気で変わります。冒頭の課長は、このことに配慮していたわけです。

接待のTPOは次のようにさまざまです。

  • 日 時:平日か休日か? 昼か夜か?
  • 場 所:行ったことがある場所か、ない場所か?
  • 相 手:関係が深いか、浅いか?
  • 雰囲気:打ち解けた感じか、真面目な感じか?
  • 立 場:もてなす側か、もてなされる側か?

「平日の夜に、なじみのカジュアルイタリアンで、長年のクライアントをもてなす場合」と、「休日の昼に、新規クライアントの社長宅に招かれて、ホームパーティーでもてなされる場合」とでは、こちらの立ち居振る舞いや服装、事前準備が全く違うでしょう。これらを意識しておくことは、とても大切です。

自分のペースを保つための3つの事前準備

接待のTPOに合わせるための秘訣は、落ち着いて自分のペースを保てるように、事前準備を徹底することです。そのためのポイントを、会食を例に確認してみましょう。

1)食べ物の好き嫌いを確認する

相手が楽しめるよう、事前に相手の嗜好を確認しておきましょう。相手の好きな食べ物と苦手な食べ物、帰宅の際に利用する路線などを確認するのは基本です。

また、年末など接待が集中する時期は、こちらが接待する日の前後で、相手がどういったジャンルの食事をするのかについても把握します。これによって、相手が3日連続で焼き肉を食べるといった事態を防げます。

2)お店を把握する

一度も行ったことのないお店で接待をするのは避けたほうが無難です。何らかの理由で新規のお店を利用する場合は、下見をしておくべきでしょう。

その際、お店周辺の地理や店内のレイアウト、トイレの場所、お薦めの料理などを確認しておきましょう。また、店長と名刺交換をして、「接待の当日はよろしくお願いします」と一言伝えることも大切です。

3)時間を管理する

特に昼の接待では、接待後の相手のスケジュールを確認しておきましょう。こちらの好意でコース料理を予約しても、あまり時間がなければ、料理を楽しむことができません。

また、配膳のスピードが遅い場合などは、さりげなくお店に伝えて、スピードを速くしてもらいます。

大切なのはもてなす心

本当に大切なのは、相手をもてなす心です。礼儀作法を重んじるあまり、ロボットのような対応になっては面白みがありません。相手との共通の話題を見つけ、笑顔で会話を楽しみましょう。

「TPO×自分」=新しい可能性

接待に限らず、中堅社員はいろいろな場を経験し、自分なりのビジネススタイルを確立していきます。最初は、基本に忠実にしていれば、大きな失点をすることはありません。

    

慣れてきたら、「TPO×自分」でアレンジしてみましょう。課長のように、“食事の前の食事”をすることは、型にはまった行為ではありません。しかし、課長は自分自身をよく知っていたため、事前に軽食を済ませ、相手との会話に集中できるようにしたわけです。

皆さんの得意分野を活かすにはどうしたらよいか、逆に不得意分野を改善するにはどうしたらよいかを考え、その結果とTPOを掛け合わせることで、皆さんの魅力が磨かれ、相手とのコミュニケーションも深まっていくことでしょう。

Point

  • 中堅社員は、「TPO×自分」を意識して、自分なりのビジネススタイルを確立しよう。
  • それが中堅社員の魅力になる!

以上(2019年8月)

pj00424
画像:Eriko Nonaka

ジーンズにはき替えたら、すごいアイデアが浮かぶ?/半歩先行く中堅社員(4)

リース会社に勤める中堅社員のAさん。最近、服装がガラリと変わりました。どうやら、先月参加したイベントで他の参加者に刺激を受け、服装をカジュアルにしたようです。

Aさんの会社はカジュアルな服装が認められていますし、会話で横文字を使うのも普通です。ただ、Aさんの場合、どこか“ 板についていない” 印象がある上に、急激な変わりっぷりも気になります。

そこで、課長がAさんに声をかけてみました。

「Aさん、ここのところずいぶんと印象が変わったね!」

するとAさんは、次のように答えました。

「課長もスーツにネクタイなんてダメですよ。そんな堅苦しい格好では、いいアイデアなんて出てきません」

課長はため息をついた後、言いました。

「確かに格好から入ることも大事だ。ただ、スーツをジーンズに替えただけで、すごいアイデアが出てくるものなのかな?」

スーツ族とジーンズ族

考え方や立場の違いを、団塊ジュニアやミレニアル世代などといったグループで区別することがあります。「スーツ族とジーンズ族」の違いもこれと同じようなものかもしれません。

一般的なビジネスパーソンの場合、警察官の制服のように誰もが一目で職業を認識できるようにしたり、工場の作業着のように労災のリスクを徹底的に低減したりする必要はなく、割と自由に服装を選択することができます。

にもかかわらず、服装選びに対する考え方は立場によって大きな違いがあります。最近は減ってきたように思いますが、「お客様に失礼だから、スーツを着てビシッとしなければダメだ!」という意見や、「スーツは堅苦しい印象になるし、窮屈で生産性が低下する!」という意見があり、互いに相容れない部分があるようです。

服装選びのポイント

スーツとジーンズ(ここでは、カジュアル全般の意味)のどちらが仕事の服装としてふさわしいかについてはケース・バイ・ケースですが、仕事の服装を選ぶ基準は次の2 つです。

  • 相手に失礼のないこと
  • 仕事がしやすいこと(動きやすい、快適など)

単純に考えれば、相手に失礼のない服装はスーツにネクタイが無難、仕事がしやすい服装はジーンズよりもっと楽なジャージーが好ましいといえるでしょう。

とはいえ、例えばIT 系のイベントにガチガチのスーツ姿で参加したら浮いてしまいます。同様に、いくら動きやすいとはいえ、ホテルのフロントがジャージーで勤務したら違和感があります。

「守破離」に当てはめてみよう

冒頭のAさんは、参加したイベントで自分が知らなかった新しい雰囲気に刺激を受け、服装という分かりやすいところから取り入れました。この姿勢を、柔軟で向上心があるととるか、短慮で場当たり的ととるかは、Aさんの言動次第です。

この問題は、「守破離」で考えてみると分かりやすいです。具体的には次のイメージです。

  • 「新しいアイデアを得るためにイベントに参加した。まずは周囲に合わせ、その格好をまねながら、ルールや考え方を深く理解する(「守」の段階)。その上で自分なりのアレンジを加え(「破」の段階)、最終的に自分のオリジナルスタイルを確立する(「離」の段階)」

そうではなく、「手段の目的化」に陥っているようなら問題です。「手段の目的化」とは、目的を達成するための手段ばかりに目がいき、その手段を講じること自体が目的にすり替わってしまっている状態です。

Aさんがイベントに参加した目的は、ビジネスの課題解決や人脈拡大のはずです。それを忘れず、まず服装をまねてみたのなら問題はありません。

しかし、服装をカジュアルに変えたことに満足し、本来の目的を達成するための努力を怠ってしまうのは本末転倒です。

継続すること、味方を得ること

変化を起こそうと頑張る中堅社員は、組織の宝です。せっかくの取り組みを、単に「ジーンズ族にかぶれた人」という残念な評価で終わらせないためにも、本来の目的を達成する努力を継続しましょう。

その際、「スーツ族とジーンズ族」といったような、目的とは直接関係のない二項対立を作り出し、不要な摩擦を生むことは、絶対に避けなければなりません。

新しいことを始めようとするときは摩擦が生じます。中堅社員はそうした摩擦を恐れず、前に進む勇気を持ちたいものですが、その勇気はスーツをジーンズに替えただけで示せるものではありません。正しい目標を設定し、継続的に取り組むことを忘れないようにしましょう。

Point

  • 中堅社員は変化を起こす勇気を持とう!
  • ただし、「手段の目的化」に陥らないように注意する。
  • 不要な二項対立も作ってはならない。

以上(2019年8月)

pj00423
画像:Eriko Nonaka

仕事があるのに「休日出勤」したらいけないの?/半歩先行く中堅社員(3)

「頑張り屋」で有名な中堅社員のAさん。「働き方改革」が進む昨今ですが、残業や休日出勤をいとわずに働いています。今日は土曜日ですが、Aさんはいつものように休日出勤してきました。

Aさんがオフィスに着くと、課長も休日出勤していました。Aさんを見るなり、課長が声をかけてきました。

「お疲れさま。休日なのに悪いね。ここのところ残業や休日出勤が続いているようだけど、会社としては残業は削減、休日出勤は原則禁止だから、少し見直してほしいな。私も相談に乗るし」

すると、やや怒った様子のAさんが言いました。

「仕事が終わらないので、残業や休日出勤は仕方のないことです。とにかく私は頑張ります!」

それを聞いた課長は、少し困った表情で言いました。

「う~ん……。他の社員、特に部下への影響も考えてほしいな。Aさんは周囲から見られる立場になったんだよ」

組織人である以上、ルールは守る

働き方は人それぞれです。冒頭のAさんのように、「仕事第一」で残業や休日出勤を全く苦にしない人がいる一方で、仕事よりもプライベートを充実させたい人もいます。

働き方は個人の意思に基づいて自由に選択されることが理想ですが、会社に所属している以上、そのルールを守らなければなりません。会社が「残業は削減、休日出勤は原則禁止」といった方針を打ち出しているのであれば、それを守ることが基本となります。

もう1つ、役職が上がるほど意識しなければならないことがあります。それは「周囲への配慮」です。自分の言動が周囲にどのような影響を与えているのかを、考えなければなりません。

中堅社員に求められる周囲への配慮

1)良きロールモデルになる

部下に「自分も上司(中堅社員)のようになりたい」と思ってもらえたら、とてもうれしいものです。では、Aさんのような働き方を見た部下がそのように思ってくれるでしょうか?

  • 「Aさんのような働き方は無理……」

多くはこのように敬遠するはずです。それに、Aさんの働き方を受け入れられない部下は、Aさんが自発的に働き、実は楽しんでいることを知らないまま、

  • 「自分の会社は、残業や休日出勤が慢性化している社員がいるブラックな職場である」

とSNSに書き込むかもしれません。誤解なのに、こうした書き込みがされると会社のブランドが毀損されることがあります。

2)部下に任せる

「頑張り屋」が陥りやすい問題の1つが、「どんな仕事でも引き受けて、自分で抱え込んでしまうこと」です。ただでさえ忙しいのに、さらに仕事を引き受けてしまうのです。

その結果、どんどん仕事がたまっていき、残業や休日出勤をしなければ終わらなくなってしまいます。そのような状況で、Aさんが体調を崩しでもしたら、関係者に大きな迷惑をかけることになります。

加えて、簡単な仕事もAさんがやってしまうと、部下の成長の機会は奪われてしまいます。中堅社員は、部下の育成も重要な仕事であることを認識しなければなりません。

仕事の振り先はある

  • 「そう言われても、仕事の振り先がない……」

こんな反論が聞こえてきそうですが、本当にそうでしょうか?

忙しいように見えて、実はかなり余裕を持って仕事をしている人はいないでしょうか。そうした人こそ、仕事の振り先となります。

「教える時間がとれない。自分でやったほうが速い」と考えがちですが、それでも誰かに仕事を振らなければ、仕事は終わらず、部下も仕事を覚える機会がありません。仕事を振ることが、中堅社員の仕事です。

“本当の忙しさ”を見える化する

1)仕事の見える化で情報共有

人に仕事を振るために、まずは仕事の状況を正しく把握しましょう。具体的には、中堅社員とその部下が担当している仕事をスケジューラーに登録します。その際、仕事ごとの所要時間も登録することで、各人の“本当の忙しさ”が見えてきます。

中には、わざと長い時間を登録して忙しさを演出する部下が出てくるかもしれないので、中堅社員が適正な所要時間を示し、部下をマネジメントします。

2)朝一のメールを禁止する

少々細かなマネジメントになりますが、午前中の部下の仕事を15~30分単位で把握してみてください。メールや資料作成など、仕事の種類ごとに色分けすると、多くの部下が、朝の集中できる大切な時間をメールに費やしているという実態が浮き彫りになるはずです。

朝の時間を有効に活用して生産性を向上させるために、“メールからの解放”は有効です。そうした意味では、上司の「ちょっといい?」と言って、部下の時間を少しずつ奪うコミュニケーションもやめるようにしましょう。

Point

  • 中堅社員は、部下から見られる存在である。
  • 安易に残業や休日出勤をする前に、チームの生産性を向上させることを考えよう!

以上(2019年8月)

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画像:Eriko Nonaka

定時退社の上司に、部下はついていけるのか?/半歩先行く中堅社員(2)

中堅社員のAさんが勤める会社では、毎月、幹部会が行われます。今月から、Aさんも上司のB本部長と一緒に出席することになりました。B本部長はAさんを高く評価しており、「他の幹部に名前を覚えてもらえるように」と声をかけてくれました。

その日の幹部会のテーマは「働き方改革」。幹部たちは所管部の取り組みを順番に発表していきます。次は社内でも仕事ができると評判のC本部長です。どんな発言をするのか興味津々だったAさんですが、C本部長の発言は意外なものでした。

「私は定時退社で『働き方改革』を実践しているが、部下は残業続きだ。部下の要領が悪くて仕事が遅いのが一番の原因だ」

C本部長の指摘にも一理あるのかもしれませんが、残業が慢性化しているのは事実です。C本部長の真意が理解できないAさんは、同意を求めるように隣のB本部長を見ました。すると、B本部長も何やら深く考え込んでいます……。

働かない上司は問題外

若い頃はバリバリ働いていたのに、今は面倒なことは全て部下にやらせて、自分は口だけ出す。こんな人が皆さんの会社にはいませんか? 定時退社するのが、こんな「働かない上司」だったら誰もついてきません。

かつては、年功序列・終身雇用で若い頃に頑張った分、ある程度の年齢になったら楽をする働き方も認められていたかもしれません。しかし、今の時代には通用しません。

働かない上司の存在は、現場の士気にも悪影響を及ぼします。中堅社員が自ら解決するのは難しいはずなので、その場合は自分の上司に“やんわり”と、働かない上司のことを相談してみるとよいでしょう。

仕事ができても“愛”がなければ……

冒頭のC本部長は、働かない上司ではなく、仕事ができる上司です。新技術が次々と登場し、働き方も残業規制、副業・兼業の容認、リモートワークなどと様変わりする中、C本部長は環境の変化に適応し、第一線で通用するスキルを維持する努力を続けてきたはずです。

C本部長のような上司の下で働く部下は、新しいことにチャレンジする機会に恵まれます。変化が当たり前の環境で鍛えられた部下は、柔軟性と突破力を兼ね備えることができるかもしれません。

これを実現するためには、上司の“愛”ある指導が必要です。仕事ができる上司は、部下にも自分と近いペースで働くことを求めがちです。しかし、上司が求めるスピードについてこれる部下はほとんどいません。

能力不足や不慣れなど、部下の仕事が遅い理由はさまざまですが、部下の“迷い”にも注目してあげたいものです。部下が、自分の思った通りに進めれば意外と早く終わるのに、「本当にこの進め方でよいのだろうか。間違えたら上司に叱られる」などと迷ってしまうので、余計な時間がかかるのです。

こうした部下の迷いを断ち切るためには、上司が丁寧に指導しなければなりません。仕事ができる上司が、「昔は自分もそうだった。手間と時間はかかるが、しっかりと教えてあげよう」と、“愛”のある指導を行ったとき、部下は成長することができるのです。

定時退社の上司を部下はどう見ているのか?

ところで、部下は自分たちが残業続きであっても、仕事ができる上司が定時退社することを、最初、次のように好意的に受け止めてくれることがあります。

  • 「上司は『働き方改革』を率先垂範するために、早く帰っているのだ」

ただ、この状態は長く続きません。上司が残業削減の対策を講じなければ、部下の状況は改善されません。そして、「定時退社の上司」と「残業続きの部下」という構図が定着します。不満がたまった部下は、先ほどとは全く違う印象を持つようになります。

  • 「なぜ、自分たちだけ残業しなければならないのだ!?」

仕事ができる上司は、「働き方改革」を率先垂範しているつもりでも、部下の心はどんどん離れていってしまうのです。

問われるのは「依存と自立」のバランス

C本部長が発言しているとき、Aさんの上司であるB本部長が考えていたのは、「依存と自立」のバランスです。全てがそうではありませんが、指示通りに働いていれば給料がもらえ、雇用も維持されるという環境は、ある意味、「会社への依存」です。

同様に、何かあれば上司がフォローしてくれるから大丈夫と甘えるのも、「上司への依存」といえるでしょう。

会社や上司は、こうした依存を受け入れる代わりに、社員(部下)から労働力の提供を受けていますが、「働き方改革」が進む中で、こうした関係は少しずつ変わっています。それは、

  • 個々人が自立して働くようになっている

ということです。

C本部長のやり方は、部下の自立を促すものかもしれませんが、言葉が足りませんでした。B本部長がAさんを幹部会に同席させたのも自立を促すためですが、B本部長がきちんと説明していたので、Aさんはやる気になっています。

「依存と自立」のバランスが問われる時代、大切なのは、上司が丁寧に説明することです。最初は時間がかかるかもしれませんが、そこで投資した時間は、必ず将来に活かされます。

Point

  • 中堅社員は、仕事ができて“愛”のある上司を目指していこう!
  • 「依存と自立」のバランスを忘れずに。

以上(2019年8月)

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画像:Eriko Nonaka

おごってくれない上司を、部下はケチだと思うか?/半歩先行く中堅社員(1)

「ごちそうさまでした~♪」

満腹・満足げな部下たちに別れを告げた中堅社員のAさん。今月は大忙しだったため、頑張った五人の部下たちをねぎらおうと奮発して焼き肉をおごりました。食事会は大盛り上がりで、「チームの結束が強まった!」と実感できました。

ただ、切実な問題が1つ……。Aさんの財布の中身がさみしいのです。

食事会の目的と、その成果を考えれば、飲食代を会社に請求しても問題ないでしょう。しかし、Aさんの会社では、「上司は部下に必ずおごる」という暗黙の了解があり、Aさんもそれに従っているのです。内心、Aさんはこう思っています。

「自分もよく上司におごってもらうけど、皆会社に請求していないのかな。毎回自腹では、正直、きついはずだ。出世もいいけど、部下におごったためにお小遣いがなくなるのはちょっとな」

「上司はおごるもの」という強迫観念

上司が集まると、「部下にどこまでおごる?」という話に割とよくなります。部下におごるのはいいけれど、毎回だと金銭的につらいので、他人がどこまでおごっているのかを知りたいのです。

とにかく上司は、部下から「ケチだ!」と思われたくはありません。そのため、「前回はおごったので、今回もおごらないと……」とか、「Bさんにはおごったから、Cさんにもおごらないと……」などと考えてしまうのです。

一方、上司にとってはうれしい? 意外な事実があります。部下の立場にある人に話を聞いてみたり、アンケートを見てみたりすると、部下は上司のおごりをそれほど期待していないようです。「気を使うし、おごってもらうのは申し訳ない。それに、フラットな気持ちで話ができない」というのがその理由です。

「部下におごらなければならない」という思いは、上司が持つ強迫観念のようなもので、この傾向は年配の上司に多く見られるようです。年功序列・終身雇用という雇用慣行の中で、「給料が低い若手を援助するのは上司の役割である」という雰囲気があったのでしょう。

とはいえ、おごるのは効果的?

とはいえ、「おごるのや~めた!」ということにはなりません。財布事情は別として、食事会は上司と部下とのコミュニケーションの場であることは間違いないからです。

普段とは違う雰囲気でリラックスできますし、おいしい食事があれば会話も弾みやすくなります。上司から食事に誘われた部下は、最初、「上司と二人はつらいな~。説教されるのでは……」などと敬遠するかもしれませんが、「おいしいお店があるから、一緒に食べに行こう。おごるよ!」とカジュアルに誘えば、部下も上司の誘いに応じやすくなります。

結局、上司はある程度は部下におごることになりそうですが、それが毎回だと、部下は「上司の誘い=タダ飯」と期待するかもしれません。バブル時代、ご飯をおごってもらうだけの「メッシーくん」がいましたが、“メッシー上司”になるのは避けたいものです。

おごるか否かの基準を持つ!

ということで、上司は「おごるか否かの基準」を持ちましょう。単純ですが分かりやすいのは、

  • 仕事なのか、プライベートに近いのか?

という基準です。

この基準を冒頭のAさんに当てはめてみましょう。食事会の目的は「部下をねぎらい、やる気を明日につなぐ」ことであり、完全に仕事です。しかも成果が上がっています。これなら、会社に飲食代を請求しても問題ないでしょう。

なお、こうした飲食代を「いくらまで請求していいか?」は、会社の規則で定められているはずです。経費を請求する場合は、事前に確認しましょう。

上司の素直な気持ちが大切

ここまでの話とは逆に、「会社に経費請求するまでもなく、むしろ自分で支払いたい」と上司が感じるケースがあります。

例えば、上司が一人の人間(人生の先輩)として部下にアドバイスをする場合や、頑張っている部下を何らかの形で応援したいと思う場合は、こんなふうに考えるものです。難しく考えずに、「上司がおごりたいと思ったら、おごる」というシンプルな判断をすればよいでしょう。ただし、懐具合とのバランスはとっておかないと長続きしません。

そうした意味では、食事でなく、コーヒーをおごるだけでも十分です。豪華な食事を1回するよりも、何度も一緒にコーヒーを飲むほうが、コミュニケーションの回数も増えます。

いずれにしても、中堅社員になったら、使う経費が増えてきます。部下との食事会に限らず、会社のお金と自分のお金の区別を明確にしなければなりません。

  • 「出世するほど、お金にきれいになる」

というのが、中堅社員の1つのテーマです。

また、今どきの問題として気をつけたいのが、ハラスメントです。部下と二人だけで食事などに行く場合、そこでの言動にはいつも以上に注意しておいたほうが無難です。こちらの意図とは全く関係のないところで、セクシュアルハラスメントやパワーハラスメントを指摘されることがあるかもしれないからです。そうした懸念があるなら、食事会は三人以上としたほうが無難です。

Point

  • 「上司はおごるもの」という強迫観念から解放され、「おごるか否かの基準」を設ける。
  • 大切なのはコミュニケーションの質!

以上(2019年8月)

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画像:Eriko Nonaka

サバイバルゲームフィールドの開設について

書いてあること

  • 主な読者:サバイバルゲームフィールドの開設を検討している事業者
  • 課題:市場の動向や収支見込みに関する知見がない
  • 解決策:競合の状況や開設に必要な設備・サービス、関連する法規制などを把握する

1 サバイバルゲームの概要と市場動向

1)サバイバルゲームとは

サバイバルゲームは、板壁などで囲った施設の中で玩具銃を用い、模擬的な銃撃戦などを敵味方に分かれた数人から数十人のチームで楽しむ競技です。一般的には、BB弾と呼ばれる直径6ミリメートルの球状の弾丸を装填し、難燃性ガスや圧縮空気などの力で射出するタイプの玩具銃(以下「エアガン」)が用いられます。

野外で楽しむことが多かったり、一種の「戦争ごっこ」でもあったりすることから、雰囲気を盛り上げ、かつ安全性を確保するべく、服装(以下「ミリタリールック」)は野外の行動に適した軍装品・迷彩服(払い下げ品やレプリカ品など)や、それに近いものであるのが一般的です。

また、エアガンは、射出時に代替フロンなどの難燃性ガスを使う「ガスガン」、射出時に電動モーターでポンプを作動させて作り出した圧縮空気を使う「電動ガン」、銃弾の装填と同時に人力で銃内部のポンプを使って圧縮空気を作り出し、弾丸を射出する「エアコッキングガン」があります。

銃弾が自動で装填され、低温でも作動するなど利便性の高さから大型銃を中心に電動ガンが使用されています。拳銃モデルなど小型の銃は電動モーターなどを内蔵するのが難しいため、ガスガンやエアコッキングガンが主流のようです。

2)市場の概要

サバイバルゲームの市場は、エアガン、ミリタリールックといった「装備」と、サバイバルゲームを楽しむ場所である「サバイバルゲームフィールド(以下「フィールド」)」などで構成されます。

装備市場は、総称してミリタリーショップなどと呼ばれるミリタリールック専門店・サバイバルゲーム専門店の他、玩具専門店・量販店などが主なプレーヤーです。主として、商品の販売で収益を上げています。

フィールド市場は、主に次のような背景を持つ事業者によって運営されています。

  • 愛好家グループを母体とする事業者(個人、法人)
  • 玩具銃も取り扱うミリタリーショップ
  • 遊休不動産の活用や町おこしなどを目的とする、異業種の新規参入者

フィールドの収益源は、時間・1日単位の貸し切り料、定例会(詳細は後述)の参加費、飲食物や関連グッズの販売などです。

3)フィールドの件数

東京サバゲーナビによると、都道府県別のフィールドの件数は次の通りです。

画像1

なお、本業の閑散期(例:春~秋季のスキー場)、商業施設のイベントといった期間限定で開業しているフィールドや、個人が運営する小規模なフィールドなど、捕捉できていないフィールドもあるため、実際には図表より件数は多いものとみられます。

■東京サバゲーナビ■
https://tokyosavage.jp/
■日本遊戯銃協同組合(ASGK)■
http://www.asgk.jp

2 フィールドの概要

1)スタイル別に見るフィールド

フィールドのスタイルは、アウトドア型とインドア型に大別されます。

アウトドア型は、郊外の山林や採石場跡などの遊休地に立地する、フィールド外部に流れ弾が飛ばないように板壁やフェンスなどで囲った施設です。障害物を設置するなどして、模擬的な野外戦闘を楽しめるようにしています。

インドア型は、廃倉庫や廃工場といった使われなくなった施設、ビルのワンフロアなど、屋内でサバイバルゲームを楽しめるようにしたものです。施設の特性上、模擬的な屋内戦闘を楽しめるようにしてあるのが一般的ですが、模擬樹木を設置するなどして森林戦を模しているところもあります。

いずれのスタイルのフィールドも、開設に当たっては障害物や競技に必要な機材を設置するだけなど、比較的手間が掛からず、原状回復もしやすいため、遊休不動産の活用策にもなります。例えば、事務所跡を什器などが残った居抜きの状態でフィールドに転用し、日常的な環境で楽しめるようにしているケースがあります。また、スキー場の運営者が、春~秋季の休業中の施設活用策としてフィールドを運営しているケースもあります。

2)主な付帯設備

フィールドの付帯設備として、セーフティー(待機・休憩所)、更衣室、洗面所、装備の整備・一時保管スペース、試射場などが挙げられます。セーフティーはサバイバルゲーム特有の設備で、他のプレーヤーからの銃撃によって退場させられた人や、プレーの順番待ちをしている人が安全に待機できるようになっていることから、その名が付いています。

アウトドア型の場合、セーフティー、更衣室、洗面所といった付帯設備は、プレハブの建物などにまとめていることが多いようです。都心から離れているフィールドであれば、駐車場も備えています。

なお、女性愛好家の増加に伴い、女性専用の更衣室や洗面所などを設けるところも見られるようになっており、フィールドの計画を立てる際は留意が必要です。

3)主なサービス

フィールドのサービスとして、定例会の開催、フィールドの貸し切り、銃や防具など装備の有料レンタル、飲食物や関連グッズの販売、最寄り駅への送り迎えなどがあります。

定例会は、不特定の愛好家にサバイバルゲームの参加を呼びかけるもので、1日単位で行われます。特定のチームに属していない人でも参加費を支払うことで手軽に参加できます。フィールドの定員にもよりますが、1日当たり20~30人程度を集めるのが一般的なようです。稼働率向上が図れるため、参加者が見込める土日祝日を中心に行われています。

フィールドの貸し切りは、団体客向けに施設を数時間~1日単位で貸し出すもので、多くの施設では最低利用人数を定めています。

装備の有料レンタルは、初めてサバイバルゲームに参加する人や、装備をそろえるまでに至っていないライト層を取り込むためのサービスで、多くのフィールドで取り扱っています。

最寄り駅への送り迎えは、フィールドまでの交通手段がない人に対して行うものです。現地までの移動距離が長く、路線バスの本数も少ないため、タクシーでの移動を余儀なくされるような場所に立地しているフィールドで実施されている場合があります。

4)料金の目安

フィールドの利用に関わる料金の目安は次の通りです。

  • 定例会会費(1人当たり)
    3000円(終日)
  • 貸し切り料金
    定例会会費×最低利用人数
    (例:定例会会費が3000円、最低利用人数が15人の場合、3000×15=4万5000円)
  • 装備レンタル料
    エアガン:2000~3000円程度
    迷彩服:1000円程度
    フェースガードやゴーグルといった小物類:各500円程度

5)開設に掛かる費用

フィールドの開設に掛かる費用は、大きく分けて次の3つになります。

  • フィールドそのもの
    土地・建物の賃借料・取得費、造成費(アウトドア型の場合)
  • フィールドの設備
    セーフティーなどに使う建物、水道や電気などのインフラ回り(いずれもアウトドア型の場合)、遮蔽物(小規模な建物、工作物、廃車など)
  • フィールドの備品
    受付、ロッカー、レンタル用装備(エアガン、小物類)

なお、実際に掛かる費用については、どのようなフィールドにするのかによって、大きく異なってきます。例えば、フェンスの設置など手を付ける範囲を最低限にとどめ、セーフティーをイベント用のテントにしたり、トイレを仮設タイプにしたりするなどして、設備を簡易なものにする場合、造成費はほとんど掛からず、その他の費用も抑えられるでしょう。

ただし、魅力的なフィールドにするためには、多額の投資を行い、快適性やエンターテインメント性を高める施策が欠かせません。具体的には、セーフティーなどに使う建物を設置して水洗トイレやシャワー、更衣室を設けたり、遮蔽物を小屋など本格的なものにしたりすることが考えられます。

また、装備レンタル料については、1セット当たりの大まかな目安は次の通りです。

  • エアガン:2万~3万円(銃本体、バッテリーなど)
  • 迷彩服:5000~1万円(上下セット)
  • 小物類:2000~5000円(フェースガード、ゴーグルなど)

6)法規制

フィールドを開設するに当たり、特有の法規制はありません。

また、フィールドは「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)」の規制対象となる「5号営業(ゲームセンターなど)」には基本的に該当しません。ただし、念のため所轄警察署の生活安全を担当する部署に相談しておくと、間違いないでしょう。

アウトドア型フィールドを次に挙げるような場所に設置する場合、許認可を取り付けたり、転用の手続きを取る必要があります。

  • 市街化調整区域(都市計画法)
  • 保安林(森林法)
  • 農地(農地法)
  • その他開発が規制されている場所

そのため、フィールドの開設を予定している場所が決まり、大まかな計画が固まり次第、土地の登記簿を取得したり、市町村の建設担当部署に問い合わせたりして、必要な手続きを洗い出す必要があります。規制によって開発できないケースもあり得るため、早めの対応が欠かせません。

また、セーフティーなどとして使う建築物を新たに設置する場合、建築基準法などに基づく手続きが必要なため、併せて建設担当部署に問い合わせておきましょう。

そして、開設に関わる工事や開設後にトラブルとならないよう、説明会や見学会を行うなどして、近隣住民の不安を解消することが欠かせません。

運営に当たっては、条例等により18歳未満の使用が禁止されているエアガンもあることから、18歳未満の入場を規制したり、該当するエアガンを18歳未満には貸し出さないなどの対応が必要です。

7)利用者などへのヒアリング、専門家への確認が欠かせない

本章で紹介したフィールドの概要は、あくまで基本的なもので、立地や競合環境、ターゲット層、ターゲット層が求める設備、敷地に見合った適正なプレー人数などの見極めが重要です。近隣のサバイバルゲーム専門店にヒアリングしたり、サバイバルゲーム愛好家を招いて試遊会を開催したりして、利用者に選ばれるフィールドを構築できるようにしましょう。

また、土地開発や風俗営業に詳しい行政書士などの専門家とも相談し、トラブルなく開設できるようにしましょう。

以上(2019年8月)

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画像:pixabay

この会社を選ぶ意味を語れますか?/若手社員が採用できる、辞めない職場づくりのヒント(1)

1 ビジョン語りで優秀な学生を採る

ゆとりさとり世代、ミレニアル世代、デジタルネイティブ、SNS社会の住人――。

どれも今どきの若者を形容するキーワードです。究極の売り手市場といわれる令和の時代、そんな彼らの価値観や行動原理を理解することなしに採用成功は望めません。本稿では、拙著『なぜ最近の若者は突然辞めるのか』に記した若者を理解するためのキーワードをもとに、いま若手採用において、何が重要かを解説していきます。

今どきの若者がよく言う口癖に「それって意味あるんですか?」というセリフがあります。とにかく論理的、合理的な納得感が彼らの行動原理。意味と目的を理解できないと動きません。逆にその意味と目的に共感したら、大まじめに取り組みます。

就職先を選ぶ上でも、この「意味付け」という価値観が大きく影響しています。ですから企業としては、ビジョナリーな採用コミュニケーション戦略がより重要度を増しています。特に知名度の低い中小企業においては、ビジョン語りによる「意味」の提供は生命線となってくるでしょう。逆に「意味」の提供ができれば、優秀な学生を大企業からリプレイスできるジャイアントキリングにも期待が持てます。

2 親や友達に説明しなきゃいけない

彼らが、これほど企業選択に対する「意味付け」にこだわるのには、納得感以外にも理由があります。他人に、“なぜこの会社を選ぼうとしているのか”という理由を説明するための意味を欲しているのです。その筆頭が親です。オヤカクという言葉があるように、新卒で就職するにせよ転職するにせよ、いまや就活に親が口を出す時代。いまの若者たちは、親に対しての説明を意識せざるをえません。

また、いまの若者には多くの友達がいます。育ってきた中で知り合ったリアル友達だけでなく、SNSでつながったオンライン友達が圧倒的に増えています。その友達にも“なぜこの会社を選ぼうとしているのか”を語りたい、あるいは語る必要に迫られているのです。SNS上での彼らは、炎上したり悪目立ちしたりするのは困るけど、充実した自分を見せたい!他人に認められる自分でありたい!という欲求が人一倍強い世代なのです。

3 その会社に決めて「いいね」と言われたい

だから「そういう理由で選んだのなら分かる。いいじゃん。頑張ってね」と言われたいのです。逆にいうと、自分の友達が認めてくれないような就職先を選ぶというのは、相当勇気のいる選択なのです。超合理的な価値観を持つ若者からすると、すごく説明コストがかかるのです。それこそコスパが悪いじゃんということになってしまいます。

終身雇用が崩壊し、将来不安を抱える若者の人気企業ランキングにおいて、相変わらず大企業が上位にズラリと並ぶのは、その企業の安定性を買っているのではありません。だって一生勤め上げるという感覚は皆無なのですから。あのランキングには、就職先を選んだ意味の語りやすさ、周囲への説明のしやすさが反映されているといっても過言ではありません。

4 テクノロジー積極活用のススメ

また超合理的で生産性を極限まで追求する彼らは、時間のムダが大嫌い。最短ルートでゴールしたいと考えています。当然ながらデジタルツールを使うことは大得意です。こういった採用ツール(最近ではHRテックといわれます)を駆使することは、若手採用を成功させるもうひとつのカギといえます。

そういった観点から、若者への親和性があって時短を実現してくれる採用ツールをふたつ紹介しましょう。

まずは、オンライン自動面接日程調整システム。急速に進歩を遂げた「チャットボット」という技術によって、面接日程調整を完全自動化するサービスが台頭してきています。「チャットボット(Chatbot)」とは、チャット(会話)とボット(ロボット)を組み合わせた言葉で、人工知能を活用した「自動会話プログラム」のことです。

いまの若い世代は、LINEなどチャットでのリアルタイムなやりとりが当たり前。応募したものの「どうして返事するのに1日もかかるのか」というようなストレスを感じる人は、少なくありません。

一方で、採用業務に携わる担当者のデジタルリテラシーが高くないと、この手のHRテックシステムを駆使するのは難しいというのも事実。しかし最近では、機能充実より機能を絞って操作性をシンプルにするというサービスが増えています。

従来型の採用管理システムを導入していたあるアパレルチェーン。月間300~1000名の応募者をさばくために、1日3時間を費やしていた本社の採用担当者は、前述の面接設定に特化したシステムに乗り換えたことによって採用業務時間が半減したとのこと。

「生産性を高めるシステムって導入してみても、使いこなせないって、あるあるですよね。でも新しいシステムは触っちゃえばまあまあ簡単だったっていう感触。私の仕事はなくなっちゃうんじゃないですか?って思わず言ってしまったほどです」。そう話す担当者もいました。

5 YouTube世代にささる動画面接

面接をオンラインでやってしまいましょうというテックサービスも増えています。この動画面接システムも、面接にこぎつけるスピード感という面で非常に有効です。採用担当者の面接時間確保、応募者との日程調整だけでも大変な中、当たり前ですがリアルな面接では面接会場の確保も必要になります。全てが空いているタイミングを探すのに労力がかかり、なかなか面接をセッティングできずに終わってしまうケースも実際に多々起きています。

しかも、ライブ面接だけでなく録画面接という機能もあります。この機能を使えば、応募者がスマホで録画しておいた面接動画を、採用担当者が空いている時間にチェックすることが可能です。観たい時に映画を観るオンデマンドな動画サービスと同じです。これも忙しい採用担当者にとっては、非常にありがたい機能でしょう。

また応募者が遠方に在住している場合、面接に来てもらうのには、移動時間や交通費の面で大きな負担となります。その点、オンラインでの動画面接は場所の制約を受けません。日本全国(あるいは世界中)どこに住んでいても、面接が可能です。いとも簡単に時空を超えて面接できるというのは、応募者と採用担当者の負担を大幅に軽減することにつながります。

さて、利便性は理解できたとしても動画面接に踏み切れない理由があるとすれば、「やっぱり実際に会って面接しないと、応募者の人となりは分からないでしょ」という見極め問題でしょう。しかし考えてみてください。緊張感いっぱいの面接で自分を出し切ることって、なかなか難しいものです。特に最近の若者はリアルコミュニケーションが苦手。むしろYouTubeやTikTokに投稿慣れしている世代にとっては、動画による自己表現のほうがよっぽどリラックスして「素」を出せそうです。そう考えると、ガチガチに緊張して盛り上がらないリアル面接よりも、実は応募者のキャラを見極めやすいのかもしれません。

6 SNS世代を理解したリクルーティング戦略

生まれた時からインターネットがあり、多感な思春期にSNSというバーチャルな社会にデビューしたいまの若者は、もはやオンラインコミュニケーションのほうが得意。SNSで個人と個人が直接つながり、仲間関係が横に広がっています。そこでは年上も年下もなく、経営者でも会社員でも、外国人であっても、個と個でつながっています。

若者はそういった「ヨコにつながる仲間コミュニティ」の中で「バリバリ目立つのは嫌だけど認められたい」という葛藤を抱えながら、一方で「意味や目的のないムダな仕事はしたくない」合理性と生産性への強いこだわりを持っています。

そんな彼らの傾向を理解した上での採用活動を心掛けていただきたい。キーワードはビジョナリーなコミュニケーション&テックでのスピーディな採用です。

以上(2019年8月)
(執筆 平賀充記)

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画像:NDABCREATIVITY-Adobe Stock

【朝礼】答えはお客さまの中にある

6月になり、2019年上半期のヒット商品番付が公表されました。東の横綱には新元号「令和」が、西の横綱にはスマホ決済サービス各社が行ったキャンペーン「スマホペイ還元」が上がりました。

この他にも、各種メディアでは、改元のあった今年の上半期にふさわしい、新しい発想の商品やサービスが多数報道されました。例えば、普通は置いて使うはずのプリンターを、手で持って自分で動かせるものに変えた「リコーハンディープリンター」。ビルなどにあるのが一般的なオフィスを、エキナカに設置した「ボックス型シェアオフィス」。こうした、これまでの常識を変えたものが「新しい発想」として注目されたのでしょう。

社会や人々のライフスタイルがめまぐるしく変わりゆく現代では、商品やサービスもそれに合わせて進化させていくことが求められます。ただし、私は、「新しい発想」を生み出す源泉自体は、いつの時代も変わらないと思っています。

それは、「お客さまが本当に望んでいることは何かをとことん考え抜く」ことです。これは、かなり難しいことでもあります。本当に望んでいること、困っていることの多くは、実は本人も分かっていないからです。私の知っている経営者は、こう言っています。「本人も分かっていない、潜在的な本当の困り事を見つけて解決することが、自分の一生を懸けた仕事である」。そのため、彼は、使える限りの時間をお客さまと一緒に行動し、お客さまの話を聞くことに費やしています。

当社も同じです。お客さまが普段、どのようなことを考え、どのような行動を取っているか。喜びや悲しみを感じるのはどのようなときか。そうしたことを聞き、お客さまの表情をよく見て、そこから「本当に望んでいることは何か」を考え抜く。それこそが、私たちがやるべき一番大切な仕事です。

皆さん、ぜひ、お客さまの顔をよく見てください。連絡を取り、できるだけ直接会って話を聞きましょう。そうしなければ、お客さまの困り事を見つけることはできません。お客さまのほうから要望を言ってもらい、その後に対応するようでは遅いのです。言われてからやることは、作業にすぎません。しかし、言われるより前に実践すれば、それは、お客さまにとって「うれしいサービス」になるでしょう。

皆さんの中には、「お客さまと話をしているが、お客さまのことがよく分からない」という人もいるかもしれません。それは、お客さまの思っていることをしっかりと聞き出せていないからです。「なぜそうするのか、そう思うのか」「なぜ他の選択肢を選ばないのか」。こうしたことを質問し、お客さまの話はとことん掘り下げることが大切です。掘り下げた先に、きっと、お客さまの本当の思いが見えてくるでしょう。

「新しい発想」は、お客さまに思いを寄せ、考え抜くことで生まれます。いつの時代も、「答えはお客さまの中にある」と私は考えます。

以上(2019年7月)

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画像:Mariko Mitsuda