【中小企業の予算(7)】 予算の分析と活用 ~分析とは比較である~

書いてあること

  • 主な読者:予算管理を自社に取り入れたい、あるいはしっかり取り組みたい経営者や財務担当者
  • 課題:実績が目標に達成する見込みがあるかは確認するが、ただそれだけで終わってしまう
  • 解決策:確認作業をもとに次の経営判断につなげるための「分析」が必要。中小企業は、まず比較分析を行って経営判断につなげる

1 予算の分析は比較

予算を作成し、月次の実績を出せるようになったら、そのデータを活用して分析をします。予算を作る目的は、達成したい目標を数字として明確にすることにあります。そのため、実績が出た段階で、目標が達成できたか、または達成が見込めるかを確認することが大切です。こうした確認作業をもとに、次の経営判断につなげるための「分析」は重要なステップです。

分析と聞くと、ROE(株主資本利益率)、営業利益率や回転期間といった「経営指標分析」を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、経営指標分析はその性質上、月次の数値では変動することは多くありません。また、中小企業の場合は、ビジネスモデルがシンプルな一方で、それぞれの会社の個性が強いことから、他社や業種別の経営指標と比較しても意味をなさないというケースもしばしば見られます。

他社や業種別の経営指標と比較するよりも、

自社の予算や前期実績との比較により実態を把握していくことのほうが、経営者の狙い通りに進んでいるかどうかを判断する上で意味がある

のです。そのため、この記事では、皆さんにより身近な予算や前期実績との「比較分析」を見ていきます。経営指標分析が「割り算」の手法としたら、比較分析は「引き算」の手法です。

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比較分析は、「2つの数値の差額を出してその理由を探る」という、とてもシンプルな手法です。もしかしたら、そのシンプルさと身近さゆえに物足りなく感じるかもしれませんが、実は、

比較を制するものは分析を制する

のです。

比較は、予算管理のみならず、数値管理全般の鉄板技といえます。データサイエンティストの方から、「分析とは比較である」という言葉を聞いたことがありますが、全く同感です。

例えば、当期の実績数値だけでは、それが多いか少ないか、長年の動向を知っているベテラン社員でもない限り、すぐに把握することは難しいでしょう。実数だけ、今、目の前にある数字だけだと、情報としては不十分なケースも多いのです。

しかし、予算や前期実績のような参考となる数字と比較、つまり、その「差異」に注目すれば、当期の実績数値が多いか少ないかがすぐに分かります。そうすると、会社の事業や経理に詳しくない人でも、その増減を通じて実態に迫ることができるようになるのです。

予算でいえば、前期実績、前期予算と比較することで、当期の予算が高い目標(難しい目標)なのかどうかも分かります。

2 「自社流」の利益

次に、予算管理において経営者が注目する指標ですが、やはり利益は外せません。ただ、利益は利益でも、オーナー会社の場合、

税引後利益に役員報酬や減価償却費を足した調整後の利益

が経営者に重宝されることがあります。予算管理の分野では、一般的に使われる利益(損益計算書上の利益)ではなく、自社の目的に応じてアレンジした利益を使うのもアリなのです。

では、なぜ役員報酬を足した利益が重宝されるのでしょうか。オーナー会社では、役員報酬を業績に応じて毎年改定するところが多いものです。例えば、利益が上がりそうであれば、役員報酬を増やすという具合です。すると、会社の事業の純粋なもうけを見る場合、役員報酬を足し合わせたほうがブレは少ないということになります。

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前期が25,000千円の税引後利益であるのに対し、当期は15,000千円で減益のように見えます。しかし、役員報酬を足し戻すと、前期も当期も同じ35,000千円の調整後利益となります。

では、減価償却費を足した利益は何の役に立つのでしょうか。答えは「資金繰りを簡易的に示す材料として使える」です。減価償却費は、会計上は費用ですが、実際にお金がそのときに出ていくものではありません。そこで、減価償却費の金額の分だけ利益に足し戻すことで、手元に残る資金がおおむね把握できるのです。

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利益が5,000千円で、減価償却費が3,000千円であれば、合計8,000千円を借入金の返済原資として使えるということになります。

どのような視点で判断したいのかを踏まえた上で、適切な指標を使うことが大切です。すでに使っている指標、または一般的に使われている指標ももちろん候補にはなりますが、自分の会社の実態に合うかを必ず判断するようにしてください。その上で目的に応じて、先ほどのようにアレンジするとよいでしょう。

3 (担当者向け)経営者への報告で大切な3つの「使わせない」

最後に財務担当者向けに、経営者への報告で大切なポイントを3つ紹介します。経営者に、経営判断に集中してもらうためのポイントと考えてください。

1)経営者に「時間を使わせない」

経営者は、スピードを重視します。一方、経理・予算管理の作業をする財務担当者には丁寧な人が多く、検討した順番に細かい内容も正確に伝えようとする傾向が強いように感じます。その結果、経営者がイライラしてしまうこともあるようです。

限られた時間を有効に使うために、経営者が気になることをテンポ良く伝えていけるようにしましょう。そして、やはり時間を使わせないために、なるべく経営者が知りたいことを優先して話すように心掛けましょう。

2)経営者に「頭を使わせない」

数字だけを淡々と述べてしまうと、その意味合いを経営者自身が頭で考え始めてしまいます。口頭では、「良いか悪いか」の結論を重視して説明しましょう。数字が必要であれば、そのときに資料に目をやればよいのです。資料の冒頭に「良いか悪いか」の結論を書いたサマリーを付けるというのも、頭を使わせないための対処法の1つです。

また、口頭で報告する場合には、専門用語に注意しましょう。例えば、「法定福利費」という勘定科目名は、難しい印象を与え、すぐに理解できないことも多いものです。このため、経営者になじみのある「社会保険料」と表現して伝えることも大切です。要は、通訳、翻訳をするということです。私も、経理では当たり前の売掛金や買掛金という用語を、社長と話す際には「未収」や「未払」と言い換えています。経営者の会計・税務知識も一様ではないので、相手に合わせてムダに経営者に「頭」を使わせないようにしましょう。

3)経営者に「気を使わせない」

これは「頭を使わせない」に近いのですが、経営者の気を散らさないように配慮することを意味します。例えば、数字を間違えない、資料の流れは左上から右下へ、字は大きめにする、資料の配色はモノトーン(黒や白やグレー)を使用するなど、資料の形式面に関する注意を徹底して守るだけでも、かなり効果があると感じます。

以上(2025年1月作成)

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もめない事業承継!~スムーズなバトンタッチのコツは!? ①遺産分割・納税編

事業承継はほとんどの中小企業が直面する重要な課題となりますが、やるべきことが多岐にわたるため、正しく理解しておこなわないと、思わぬトラブルになることもあります。そこで今回は、スムーズな事業承継をおこなっていくために、スムーズなバトンタッチのコツを3回にわたりご説明いたします。第1回目は、遺産分割・納税編です。

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リースが対象に!オーダーメイド式の類型も創設へ!運用改善が進む「中小企業省力化投資補助金」のご紹介

中小企業等を支援する国や自治体の補助金・助成金事業では、雇用・人材開発・IT補助など幅広いジャンルの支援があります。
本レポートでは、おすすめの補助金・助成金について支援の内容や対象条件、申請方法等についてわかりやすく紹介します。

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年上の部下Fさんが指示命令を素直に受け入れてくれません、どう声をかけますか?/武田斉紀の『次世代リーダーに必須のコミュニケーション習慣』【実践編】(7)

書いてあること

  • 主な読者:会社経営者・役員、管理職、一般社員の皆さん
  • 課題:コミュニケーションに関わる知識やノウハウは、頭では理解できても、実際の場面で使いこなせるようになるまでには高いハードルがあるものです。
  • 解決策:前回シリーズ『次世代リーダーに必須のコミュニケーション習慣』での知識やノウハウを聞いただけではまだ一歩を踏み出せない、あるいはトライしてみたがうまくいかないという方のために、新シリーズでは【実践編】として社内の“あるある”場面を想定した質問に対して一緒に考えながら、実践イメージを膨らませていただきます。またリーダー側の視点とは別に、若手社員側の視点による上司世代との上手な付き合い方のヒントも紹介していきます。リーダー世代と若手社員とのコミュニケーションギャップを埋めることは、世界を舞台にスピーディな成長をめざす日本企業にとっても喫緊の課題だからです。

1 年上の部下Fさんが指示命令を素直に受け入れてくれません、どう声をかけますか?

今シリーズは、前シリーズ『次世代リーダーに必須のコミュニケーション習慣』の実践編です。毎回実際にありそうなさまざまなシチュエーションを想定して、どんなコミュニケーションを取るのが望ましいかを一緒に考えていきます。

知識やノウハウは分かったけれど、「現場で実践するにはまだハードルが高い」「うまく一歩を踏み出せない」という方を想定しています。前回第6回では皆さんの最近の日常に起こりがちな話題として、「欠員(補充)」を取り上げてみました。いかがだったでしょうか。

今回は課題[事例6]です。再掲しますので、考えた解答を思い出してみてください。まだ考えていなかった方もぜひ考えてみてください。自ら考えないで、解説だけを読んでいても力はつきませんよ。

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Q.年上の部下Fさんに対して、あなたはこの後、最初にどんな声をかけますか?また、それを考える際に注意するべきポイントを3つほど挙げてください。書かれているさまざまな要素を考慮してみましょう。

[事例6]

〇あなたの部下として、年上のFさんが配属されました。他の部下と同じように指示命令を出したところ、「はいはい、分かりました」といった返事の仕方で、素直に受け入れてくれている感じがしません。上司と部下の関係なのに、正直そうした態度は気になります。

〇これからも普通に指示命令を出していいものか、また話し方は他の部下に対するのと同じような“ため口”でいいのか、どう話すべきか迷っています。

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テーマは「年上の部下との付き合い方」です。これまでの事例と同様に起こっている事象を整理することから始め、現場で起こっていることの可能性を探ってみましょう。

2 上司と部下は、“役割の違い”でしかない。互いをリスペクトし合える関係に

年上の部下について考える前に、皆さんに質問です。そもそも「上司は部下よりエライ」のでしょうか?「上司は部下よりエライ」という考え方は、日本中の働く人にとって常識と捉えられているかもしれません。でも本当にそうでしょうか。

上司と部下は、“役割の違い”でしかありません。

「じゃあ、給料が違うのはなぜだ、上司の方がエライから給料も高いんじゃないの?」と思われるでしょうか。

上司は部下よりも会社における役割や責任が重いから給料が高いだけで、部下よりエライわけではありません。

組織にとっては、上司も部下も同じくらい重要で必要です。

部下は、それぞれが任された日常の仕事を成し遂げることが役割であり仕事です。一人ひとりがプロとしての自覚を持って業務を遂行しないと会社の業績につながりませんし、取り組み次第では時としてクレームとなってマイナスに作用するかもしれません。彼らが日々前向きかつ一生懸命に働いてこそ、会社組織は回っていけるのです。

片や上司はどうでしょうか。上司の役割や仕事も時代と共に変わりつつありますが、現状求められているのは「部下が日々前向きかつ一生懸命に働いて」いけるようにすること。継続的な育成やモチベーション向上を図り、部署に求められている結果が出せるように支援することです。

部下の仕事にも業種や職種、仕事の任され方などで向き不向きといった適性と求められるスキルがあり、上司の仕事にはまた別の向き不向きの適性や求められるスキルがあります。けれども、日本ではずっと、部下の業務で結果を残した人から順に、上司=管理職に登用されてきました。

部下としての業務で結果を出すのに長(た)けた人が、必ずしも上司に向いているとは限りません。チームスポーツで、「優秀なプレーヤーが優秀な監督になるとは限らない」とよくいわれる所以(ゆえん)です。むしろ、上司としての役割や責任の重い仕事を任せられる人かどうかは、別の形で選ばれるべきでしょう。

話を戻しましょう。

「上司と部下は、“役割の違い”でしかない」のだとすれば、相手が年上の部下だろうと、年下の部下だろうと関係なく、“互いの役割を理解し、リスペクトし合える関係”を築くことが理想なのです。

「そうは言っても現状は違うじゃないか。上司の顔色を見ないといけないし、指示命令に従わないと部下のほうが不利益を被る」と感じられているでしょうか。例えば、少し前にはパワハラやセクハラという言葉が存在しなかったように、「上司と部下は、“役割の違い”でしかない」が常識になる日も近いと思いますよ。

3 上司は、部下に任せた業務に対してプロフェッショナリズムを求める

勘違いしがちなのですが、上司と部下が“互いの役割を理解し、リスペクトし合える関係”とは決して甘く緩い関係ではありません。むしろ高いプロフェッショナリズムを求め合う関係です。

私なら上司として部下に次のように求めます。「この業務はあなたが担当です。この業務で給料をもらう以上、この業務のプロとして、高い当事者意識と責任を持って担ってください」と。

具体的には「この業務について一番知っているのはあなたです。だからこの業務をもっと効率良く進め、価値を高めていくためにあなたならどうしたいかを、一生懸命考えて私に提案してください」と求めます。

そう求めても動いてくれない場合は、「プロとしてこの業務に向き合えないのなら、あなたにこの業務は任せられません」と言って担当から外すでしょう。その先に取引先や顧客がいれば、直接の迷惑を被るのは彼らであり、結果として会社にも損害をもたらしかねません。

任せる業務とそれに必要なスキル習得は表裏一体ですから、新人や初めて業務を担当する人に対しては業務の意義を伝えつつ、教育・育成の機会は必須です。上司の役割としては、そうした機会を十分に用意した上で部下に要望し続けていくことです。

それでもプロとして取り組まない、あるいは仕事を任されないことを喜んでいる部下がいれば、それに見合った人事評価をせざるをえないでしょう。その先については、今回の主旨から外れるのでまたの機会に譲りますが。

4 上司は自分が完璧ではないことを自覚し、部下の声を聴く

事例のように“指示命令”が必要な場面もありますが、基本的にはその都度部下の意見も求めるようにしましょう。「今回、あなたにはこれをやってもらいたいのですが、あなたから意見やアイデアはありますか?」といったように。

上司には見合った適性やスキルが必要であり、役割や責任が重いわけですが、だからといってエライわけでも完璧なわけでもありません。

上司も一人の人間で、ミスや間違った判断をしてしまうこともあります。意図せず不正に手を染めてしまっている可能性だってあるのです。

「上司だからエライわけでも完璧なわけでもない」と分かっている上司は、普段から部下に対してこう言います。「私が言うことについて、あなたが違うかなと思うことがあったらどうか遠慮せずに言ってほしい」と。

上司も部下も人間である以上、ミスもすれば間違った判断もするのです。ひと昔前までは、現場で部下が起こしたミスを“知らなかった”で済まされたことがありました。逆に上司がミスをしてもかん口令を敷いて、表に出ないで済んだ時代もありました。

ところが今はどうでしょう。インターネットが普及して誰もが一瞬で世界へ発信できる力を得たことで、“ここだけの話”はなくなりました。ささいなミスや不正もすぐに世の中の知るところとなります。昨今多くの企業で、数十年前から隠蔽されてきたことが白日の下にさらされ、大きな非難を浴びているのも周知の通りです。

となれば、上司と部下が“互いの役割を理解し、リスペクトし合える関係”を築いてチェックし合い、世間に知られる前に先手を打って対応したほうが傷も浅く済み、早く前に進めて、より成長できそうです。

今回のテーマ「年上の部下との付き合い方」に立ち返ってまず申し上げたいことは、「上司と部下の関係は“互いの役割を理解し、リスペクトし合える関係”が理想であって、年上か年下かは関係ない」ということです。

部下が新入社員だろうと、自分より年上の先輩社員だろうと、「上司は、部下に任せた業務に対してプロフェッショナリズムを求める」べきですし、「上司は自分が完璧ではないことを自覚し、部下の声を聴く」べきです。

ただ、日本には人によって差はあれ、年長者を敬う文化が根付いています。年下の上司から指示命令されて素直に従える人もいれば、感情的に反発してしまう人もいます。表向きは従順に見えて、内心は穏やかではないといった人もいるでしょう。

であるならば、上司としては新入社員と同じように“互いの役割を理解し、リスペクトし合える関係”を保ちながら、少しだけ年上の部下に配慮してあげてはどうでしょうか。彼らは新入社員に比べ、あなたよりも経験があり、幅広いノウハウも持っていることは間違いないのですから。

年上の部下に対する話し方は、“ため口”ではなく、少なくとも丁寧語を使って年長者へのリスペクトを表現したいものです。

イノベーション(新価値創造)が強く求められる時代には、経験が邪魔をしてしまうケースもあるでしょうが、それを彼らに理解してもらうのも上司の重要な仕事です。その上で年上の部下に今でも使える経験やノウハウを期待しつつ、イノベーションも求めていきましょう。

ちなみに年下の社員に対しても、初対面は少なくとも「さん」付けかつ丁寧語で話しかけるとよいでしょう。その上で時間をかけて徐々に互いのコミュニケーションにおける最適な距離感を測っていくことをお勧めします。

5 年上の部下Fさんに、新人とは違う期待を伝える

年上の部下Fさんに最初にかける言葉は次のようなイメージです。

「私の依頼の仕方が悪かったらごめんなさい。私はお任せする業務に、Fさんがこれまでに培ってこられた経験やノウハウを活かしていただくことを期待しています。ただ同時に会社としては、従来のやり方にとらわれないイノベーションも求めています。長年プロとして鍛えてこられたFさんの力を貸してください。この部署を支えてください!」

『新たな3つのコミュニケーション習慣』の「褒める」の表現として、直接的に「褒める」よりも「期待」と「感謝」を伝えましょう。

直接的に「褒める」行為は、時に年長者から “上から目線”と受け取られることもあります。

それでもなかなかこちらの思いが伝わらない場合は、十分な時間をとって年上の部下の思いを「傾聴」してみましょう。

「傾聴」の基本を思い出してください。予め答えを用意したり、そこに誘導したりしてはいけません。相手の話を途中で遮ったり、決めつけたり、まとめたり、結論を急いだりすることなく最後まで聞いてあげてください。

一方で、「私みたいな年寄りには今さらイノベーションなんて無理ですよ」と諦めている人には、「前向き発想」の言葉で鼓舞しましょう。

年長の社員ほど、とりわけIT系のリテラシー(活用能力)を身に付けることには及び腰です。人生100年時代には、リテラシーがないと私生活でも不便を強いられます。それを「今なら会社の教育機会を通して学べる」ことを伝えて説得しましょう。

ベテラン、新人を問わず自部署に求めるITリテラシーのレベルを定めるのも一つの方法です。業務上の必要性に応じて、PCやAIの活用など社内外の講座を受けた上で一定の到達レベルを基準とするといいでしょう。

【今回の3つのポイント】

  1. 上司と部下の関係は“互いの役割を理解し、リスペクトし合える関係”が理想であって、年上か年下かは関係ない
  2. 上司は、部下に任せた業務に対してプロフェッショナルを求めながら、自分が完璧ではないことを自覚して部下の声を聴くべき
  3. 年上の部下に対する話し方は、“ため口”ではなく丁寧語を使ってリスペクトを表現し、経験・ノウハウと同時にイノベーションへの期待も伝える

最後に、皆さんが年上の部下の立場だとしてできることを考えてみましょう。今回、“互いの役割を理解し、リスペクトし合える関係”を言い続けていますが、それを年上の立場から率先していくことです。

年上の部下の皆さんが、年下の上司を十分にリスペクトして支えていく気持ちがあれば、それはきっと彼らに伝わります。彼らを支援していくことは、長年お世話になった会社への恩返しにもなるのです。

また、皆さんが培ってきた経験やノウハウが生きて部署を救うこともあれば、イノベーションが求められる時代に邪魔になることもあるのだと知りましょう。そして自らもイノベーションを起こすためには、ITが苦手だなんて言っている場合ではないという自覚を持ちましょう。

生涯学び続けることで、あなたの残りの人生もきっと豊かになっていくはずです。

6 新人Gさんが「こんな仕事をしたかったわけじゃない」、どう声をかけますか?

次回に向けた課題[事例7]を紹介します。

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Q.新入社員のGさんに対して、あなたはこの後、最初にどんな声をかけますか? また、それを考える際に注意するべきポイントを3つほど挙げてください。書かれているさまざまな要素を考慮してみましょう。

[事例7]

〇あなたの部署に配属された新入社員のGさんが、退職を考えているようだという噂を耳にしました。

〇上司であるあなたは気になって、Gさんと1on1ミーティング(1対1の面談の機会)を持つことにしました。Gさんは開口一番「この仕事は自分に向いていなのになぜ任されたのか分からない。自分はこんな仕事をしたかったわけじゃない」と訴えました。

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テーマは「仕事への期待」です。これまでの事例と同様に起こっている事象を整理することから始め、現場で起こっていることの可能性を探ってみましょう。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。もし日常で近いシーンに出会うことがあれば、ご自身で考えて『新たな3つのコミュニケーション習慣』の実践にトライしてみてください。

次回もお楽しみに。

<ご質問を承ります>

ご質問や疑問点などあれば以下までメールください。※個別のお問合せもこちらまで

Mail to: brightinfo@brightside.co.jp

※武田が以前上梓した書籍『新スペシャリストになろう!』および『なぜ社長の話はわかりにくいのか』(いずれもPHP研究所)が、ディスカヴァー・トゥエンティワンより電子書籍として復刻出版されました。前者はキャリア選択でお悩みの方に、後者はリーダーやトップをめざしている方にお薦めです。

『新スペシャリストになろう!』 https://amzn.asia/d/e8GZwTB

『なぜ社長の話はわかりにくいのか』 https://amzn.asia/d/8YUKdlx

以上(2025年1月作成)
(著作 ブライトサイド株式会社 代表取締役社長 武田斉紀)
https://www.brightside.co.jp/

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【入社1年目の教科書】服装は本当に自由?「清潔感」こそがスベらない服装の絶対基準!

書いてあること

  • 主な読者:服装で「悪目立ち」したくない新入社員
  • 課題:おしゃれをしたいけれど、どこまでなら許されるか分からない
  • 解決策:とにかく「清潔感」が大事。迷ったら先輩の服装を参考にする

「うちの会社は服装が自由! やった~!!」。でも、いざ出勤となると何を着ていくか迷うぞ……。おしゃれしたいけれど、「悪目立ち」はしたくない。かといって、カチカチのリクルートスーツっていうのもな~。襟なし、ジーンズ、ひげ、ミュール、香水、ネイル、一体どこまで許してくれるのかな? 誰か教えて!

1 とにかく「清潔感」を意識すれば大丈夫!

IT系など特定の業界に限らず、最近は自由な服装を認める会社が増えてきました。皆さんにとっては喜ばしいことでしょうが、半面、どんな服装をすればよいのか迷いませんか?

おしゃれはしたいけど、悪目立ちはしたくはない。そんな皆さんにお伝えします。

失敗しない服装の基準は何といっても「清潔感」です。

言い換えると、だらしない格好や汚らしい格好は駄目ということです。シャツのボタンが取れている、襟が汚れている、ズボンやスカートがシワだらけ……。こんな格好に清潔感はないですよね。

なぜ、清潔感が大事かということですが、皆さんは「メラビアンの法則」を知っていますか? この法則は、人が相手のどこを見て第一印象を決めるかを示したものです。前提条件はいろいろありますが、なんと「55%が【表情や見た目】(視覚情報)で相手を判断する」という結果が出ています。服装が第一印象に与える影響は大きいのです。初対面の相手に「見た目」でマイナスの印象を与えてしまうのは本当にもったいないことです。おしゃれで個性的なファッションもいいですが、最初は清潔感を重視。これで間違いありません!

2 こんな服装・身なりは要注意です

1)ジーンズ、ダメージジーンズ

「これはどうかな~?」と迷うことが多いのはジーンズでしょう。職種によってはジーンズでも違和感ありませんが、相手がスーツ姿なのにこちらがトレーナーやTシャツにジーンズというのはバランスが悪いです。また、ダメージジーンズは避けたほうが無難です。

2)露出の多い服装

胸元のボタンを2つ以上開ける、パンツやスカートの丈が短か過ぎるといったスタイルは避けたほうが無難です。服装の問題とは別に、意図せずセクシュアル・ハラスメントになってしまう恐れもあります。夏場は特にご用心!

3)サンダル、ミュール

歩きにくいサンダルやミュールは控えたほうが無難です。また、爪先の開いたオープン・トゥ・パンプスや、かかと部分が高いピンヒールを認める会社もありますが、転倒時のけがも心配です。これは、いわゆる「労災(労働災害)」の観点からも考えてみてください。

4)ひげ

かつてはひげを認めない会社が多かったのですが、時代は変わり、今では明示的に禁止しないケースが増えています。ひげが即座に問題となるケースは減っていますが、大切なのは清潔感なので、お手入れは忘れずに。

5)ネイル、アクセサリーなど

皆さんの中には、ネイルやアクセサリーにこだわりがある人も多いでしょう。飲食店などを除けば、ネイルは自由としている会社も増えていますが、やはり清潔感を損なうようではいけません。アクセサリーについても同様です。

6)においの強い香水

香りの強過ぎる香水は「スメルハラスメント(スメハラ) 」といわれるほど迷惑です。身だしなみとして香水をつけるのはよいですが、あまり刺激的ではない香りを選び、またつけ過ぎには注意すべきです。これは職場に限ったことではありません。

3 リモートワーク時の服装は?

少し前、リモートワークでオンライン会議をする際の服装として、画面に映る上半身はネクタイを締め、下半身は短パンという、あり得ない格好が話題となりました。これはリモートワークが浸透するまでのご愛嬌ということで、今はそんな格好をしている人はいないでしょう。

リモートワークが主流で人と会うことがないのであれば、楽な服装で問題ありません。働きやすく、リラックスできる服装のほうが生産性も上がります。ただし、気を抜いてよいということではなく、身なりはきちんと整えましょう。

4 シチュエーションで使い分ける

皆さんが最も尊敬する人は誰ですか。その人とこれから会うとしたら、何を着ていきますか? とにかく「失礼にならない服装」を心掛けるはずですよね。この感覚がとても大事です。

仕事には、社内の人とだけ会う日、社外の人とも会う日、リモートワークの日などさまざまなシチュエーションがあります。会う相手の役職などもさまざまです。せっかく服装が自由なのだから、シチュエーションごとに服装を使い分けて自由な気分を味わいたいところですが、どれくらいなら許容されるのかの判断は難しいですね。

そこで、参考にしたいのが皆さんの先輩の服装です。先輩の格好を見ると、普段はカジュアルなのに、ネクタイを締めて訪問している取引先もあるはずなので、このあたりを参考にします。初めて訪問する相手など、どの程度が許されるか分からない場合は、先輩に「明日、訪問する会社は襟なしの服でも大丈夫ですか?」のように質問しましょう。

5 なぜ、仕事ができる人ほど定番の服装をしているのか?

抜群に仕事ができる人なら、ジーンズをはいていても文句は言われないでしょう。服装などとは別の次元で成果を上げているからです。

では、皆さんの会社で抜群に仕事ができる人の格好はどうですか? 恐らく、その人は個性的な格好でも許してもらえるのに、実際は定番の格好をしているのではないでしょうか。それは、仕事ができる人ほど周囲への配慮を欠かさないためであり、万一にも服装で相手を不快にさせたくないと思っているからなのです。

これって、重要な気づきだと思いませんか?

以上(2024年12月更新)

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画像:Mariko Mitsuda

コンテンツのご活用事例&2024年人気コンテンツランキング

「きらやか情報ステーションのコンテンツは、管理職向けの研修教材に使っています」

こう言って、きらやか情報ステーションをよく使ってくださっている企業さまが、これまでの研修教材にご活用いただいたコンテンツを見せてくださいました。たくさんのコンテンツがファイリングされた、とても分厚いバインダーでした。

管理職向けの研修教材にご活用いただいているテーマとしては、

ハラスメント、上司と部下のコミュニケーション、管理会計、朝礼スピーチ

などがあるそうです。

きらやか情報ステーションでは、日ごろ、会員さまが会社経営やビジネスで困ったとき、何かヒントが欲しいときなどにお役立ていただけるよう、

労務・財務・税務・法務、業界動向、人材育成、朝礼で使えるスピーチ、規程集など、常時1000本以上のビジネス系コンテンツを掲載しています。

ただ、「実際にどのようなコンテンツがあって、どのように活用できるか分からない」という会員さまもおられるかもしれません。その際は、今回、この記事でご紹介する企業さまの活用方法などをよろしければご参考になさってください。

冒頭の企業さまに、実際にハラスメントやコミュニケーション系のコンテンツを管理職向けの研修教材に使ってみて、どのような良いこと、効果があったか尋ねてみたところ、次のようなお話をしてくださいました。

「ハラスメントのコンテンツについては、管理職同士で、記事に書いてある事例を読み合わせしたり、事例をもとに議論したりしている。日頃の自分たちの指導・言動がパワハラになっていないかどうか客観的に振り返る、良いきっかけになっている」

「ハラスメントや上司・部下のコミュニケーションの話などは、実際の社内の話を持ち出すと、どうしても客観的に議論しにくい面がある。逆に、こうしたコンテンツを教材に使うと、客観的に議論ができるようになる」

また、事業承継、後継者育成という面からも、

「損益分岐点の考え方や決算書の読み方、予算の作り方など、管理会計や財務分析、税務系のコンテンツを、後継者候補の勉強用に活用している」

というお話も聞くことができました。

今回、実際に日々さまざまなコンテンツを事業に活用されている事例を直接お伺いすることができ、たいへん貴重な機会でした。ありがとうございます。

このほかの会員さまでも、例えば、財務系のコンテンツを同じように人材育成や自己啓発用に活用してくださっている方や、人材不足で悩んでいるときに高齢者活用・定年再雇用のコンテンツをご覧いただいている方などがいらっしゃいます。

このように、きらやか情報ステーションに掲載されている1000本以上のビジネスコンテンツが、今後も皆さまのお役に立てましたら幸いです。

なお、ハラスメント、財務、会計、といったキーワードでコンテンツを探したい場合は、サイト上部の検索ボックスをぜひご利用ください。


最後に、2024年によく見られた人気コンテンツをランキングでご紹介します!

ご興味惹かれるタイトルがありましたら、クリックしてご一読いただけますと幸いです。

⚫︎2024年人気コンテンツランキングはこちら

第1位 「会社の飲み会は労働時間ですよね?」と社員に聞かれたらどう返す?

第2位 2024年6月から始まる「定額減税」の内容とやるべきことを整理

第3位 【2024年版】年末調整の改正点と書き方の解説

第4位 「年収の壁」は6枚。配偶者特別控除が受けられなくなる年収、社会保険料の負担が発生する年収はいくら?

第5位 【社長のモノサシ】退職したい社員を引き止める? 引き止めない?

第6位 2024年「賃上げ」に対する経営者317人の本音。あそこの企業は賃上げするのか?

第7位 【中小企業の予算(2)】予算「損益計算書」の数字の作り方

第8位 中小企業が知っておくべき「令和6年度税制改正大綱」のポイント

第9位 「賃上げ」の参考情報! 助成金、社会保険料、賃金規程などさまざまな観点から一挙紹介!

第10位 5種類の「税務調査」の調査方法。オフィス以外でも行われ、社長の自宅や個人口座の情報も調査対象に!

以上

イライラする日はコレ食べて!葉物野菜とカリフラワーのストレス撃退レシピ

日々の生活で感じるイライラや不安といったストレスは、カルシウムとビタミンDが豊富な野菜を食事に取り入れることで症状軽減が期待できるのだとか。農園を営む野菜のプロが、ストレスに効く冬野菜の目利きや保存法、栄養素の吸収率がアップするレシピを紹介する。

この記事は、こちらからお読みいただけます。

「今の会社は合っていない。さっさと転職すべき?」→ノンスタ石田明の回答が的確すぎて、ぐうの音も出なかった

先日発売された著書『答え合わせ』(マガジンハウス新書)には、M-1 2008年チャンピオンであり、“生粋の漫才オタク”を自称する石田さんの漫才論や芸人論、そしてM-1論が熱く展開されている。

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なぜ木村石鹸は零細なのに非効率な「新卒採用」を続けるのか?その深い意図に舌を巻いた

「僕らみたいな中小零細企業は、できる限り人を増やさずに、効率をよくして利益を上げていくことを目指すべきでしょう。なのに、なぜ、毎年新卒を採用するのか?」──100年続く老舗・木村石鹸の四代目が明かす理由が深かった。「人手不足」でも「欠員補充」でもない新卒採用の狙いとは?

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相続税が3倍違う!? 相続は「準備」が9割

人生100年時代、お金を増やすより、守る意識のほうが大切です。相続税は、1人につき1回しか発生しない税金ですが、その額は極めて大きく、無視できません。家族間のトラブルも年々増えており、相続争いの8割近くが遺産5000万円以下の「普通の家庭」で起きています。

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