1 福利厚生費を削減せよ!
このシリーズでは、架空のサクゲン株式会社を舞台としたコスト削減の取り組みを、シミュレーション付きで紹介しています。今回のテーマは「福利厚生費」で、コスト全般の削減シミュレーションは以下からエクセルをダウンロードしてください(ウェブで閲覧の場合に限ります)。ダウンロードしたエクセルに、御社の数字を入力すれば使うことができます。
福利厚生は、法律で定められている「法定福利厚生(社会保険、労働保険)」と、会社独自の「法定外福利厚生(社内イベント、借り上げ社宅使用料など)」に大別できます。このうち、主にコスト削減の対象になるのは、会社がコントロールしやすい法定外福利厚生です。
法定外福利厚生は、単にメニューが多ければいいというわけではなく、自社と社員に合ったものを選択することが大切です。コスト削減においては、社員の利用率を確認しながらメニューを見直すことが中心となります。また、家計に関わるものもあるので、削減する場合は、社員のモチベーションを低下させないような工夫が必要です。
2 福利厚生費の削減方針
製造部長と管理部長が、福利厚生費の削減方針について話し合います。
製造部長:福利厚生費の削減方針をまとめよう。
管理部長:まず気になるのが、締め会の支出が大きいことです。締め会の回数を減らすのはどうでしょうか?
製造部長:う~ん。うちの部は人数が多いから、できるだけ継続したいな。ただ、最近は飲み会に参加したがらない社員も多いし、別のコミュニケーションの方法も探っていかないとね。
管理部長:様子を見ながら、ランチ会のように少額の補助を新設することも検討しましょう。
製造部長:分かった。あと当社が契約しているスポーツジムだけど、利用者が少ないらしい。
管理部長:はい。社員からは「交通の便が悪くて通いにくい」という声が上がっています。
製造部長:それを、最近増えているコンビニジムに切り替えてみるのはどうだろう?
管理部長:いいですね。次に、借り上げ社宅の賃料が、次の更新から5000円上がります。その一部を社員にも負担してもらいたいのですが。
製造部長:社宅利用者はうち(製造部)の社員が多かったね。家計に関わることだから、事前にしっかり説明する必要がある。その説明には、管理部長も加わってくれるかな?
管理部長:分かりました。
この会話を受けて、削減方針を次のようにまとめました。
法定福利厚生費
- 定 義:各法令で会社の負担が義務付けられている福利厚生の支出
- 支出内容:健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険など
- 削減方法:人件費と連動(今回の削減対象外)
法定外福利厚生費
- 定 義:会社が任意に行う福利厚生に要する支出
- 支出内容:通勤・住宅手当、家族手当、慶弔金、資格取得など自己啓発の補助費、借り上げ社宅、スポーツジムとの法人契約、社内レクリエーションなどの費用
- 削減方針:締め会の頻度を減らす、利用施設を変える、契約を変える
- 削減目標:400万円
さらに、提案があった削減方法のアイデアの取り組み難易度を決め、1年間の削減効果と削減に必要となる追加支出をシミュレーションして、取り組みの優先順位を決めました。具体的には次の通りです。
なお、図表中の削減効果は、サクゲン株式会社のシミュレーション条件によるものです。実際の効果は会社ごとに異なります。
3 福利厚生費の削減シミュレーション
1)恒例の社内イベント(締め会)を見直す(難易度:低)
効果が期待できない社内イベントを見直すことで、コスト削減につながります。
サクゲン株式会社では、年4回(四半期に1回)、社員50人全員が参加する締め会・忘年会(各予算1人当たり5000円)を実施しています。これを年2回に減らした場合、1年間の削減効果は次のようになります。
50万円=5000円×50人×(4回-2回)
2)大手スポーツジムとの法人契約を見直す(難易度:中)
社員の利用率が低い直営の保養所や、法人契約しているスポーツジムなどを見直すことで、コスト削減につながります。
サクゲン株式会社では、大手スポーツジムと法人契約をしています。利用回数無制限プランで、利用希望者10人分の料金(1人当たり月額1万1000円)を支払っています。しかし、実際はそれほど利用されていません。
そこで大手スポーツジムを解約し、店舗数が多く、より安い料金で利用できる小規模無人型の、いわゆる“コンビニジム”(1人当たり月額3300円)と契約した場合、1年間の削減効果は次のようになります。
93万円≒(1万1000円-3300円)×10人×12カ月
3)借り上げ社宅使用料を見直す(難易度:中)
社宅や寮の整備などの住宅関連費は、入居者からの適正な使用料を徴収することで、コスト削減につながります。
サクゲン株式会社では、社員5人を対象に借り上げ社宅(平均家賃6万9800円)を貸しており、社員には一律額面で定めた負担金の1万7000円を支払ってもらっていますが、次の更新時、家賃が5000円値上げされることが予定されています。
そこで、社員の負担額を定額から家賃の25%に変えた場合、1年間の削減効果は次のようになります。
10万円≒[(6万9800円+5000円-1万7000円)-(6万9800円+5000円)×(100%-25%)]×5人×12カ月
4 福利厚生費を削減するときのポイント
1)単なる削減ではなく費用対効果を重視する
福利厚生は、社員のモチベーション向上、会社の社員に対する思いや姿勢を伝える重要な取り組みです。コスト削減の視点のみで考えるのではなく、社員のニーズや会社の思いなどを踏まえて検討することが大切です。
例えば、テレワークを実施している場合、提携先の飲食店で利用できる食事補助券を支給するなど、社員の働き方に合わせたメニューへの変更を検討しましょう。また、社宅の負担額変更などは社員の生活に影響を与えるため、あらかじめ社員に対し十分な説明をし、実施までにある程度の期間を設けるなどの配慮が必要です。
2)世間相場を確認する
厚生労働省「令和3年就労条件総合調査」によると、常用労働者1人1カ月平均現金給与以外の労働費用のうち、法定外福利厚生費は6.7%を占めます。自社の法定外福利厚生費がこれよりも突出して高かったり低かったりする場合は、見直しが必要かもしれません。なお、労働費用とは、現金給与、法定福利費、法定外福利費、現物給与、退職金、教育訓練費、募集費など、会社が社員を雇用するために負担する費用の総称です。
3)福利厚生代行サービスを利用する
法定外福利厚生は、福利厚生代行サービス会社に運用を外部委託することで、メニュー内容の充実と利用率の向上を図ることができます。また、法定外福利厚生を導入・運用するための業務負担も軽減でき、時間的コストの削減にもつながります。
福利厚生代行サービスは、「会社(ユーザー)から入会金と月会費を受け取り、メニューや施設を用意し、法定外福利厚生の全ての運用を受託する」といった形で提供されており、全国各地の商工会議所(サービス名:CLUB CCI)やベネフィット・ワン、リロクラブ、イーウェル、リソルライフサポートなどの会社が行っています。
なお、福利厚生費以外のコストの削減アイデアは、それぞれのリンクから見ることができます。
以上(2025年2月更新)
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画像:Mariko Mitsuda