休日は、心と体を休ませるための大切な時間。でも、過ごし方によっては、かえって疲れが溜まったり、気分が落ち込んだりしてしまうことも…。「良い休日だったな」と心から思える、そんなメンタルヘルスに効く休日の過ごし方について今日は共有したいと思います。
「仕事ができる人になるには?」マッキンゼー時代の大前研一氏が説いた“納得の答え”
京都先端科学大学教授/一橋ビジネススクール客員教授の名和高司氏が、このたび『シン日本流経営』(ダイヤモンド社)を上梓した。日本企業が自社の強みを「再編集」し、22世紀まで必要とされる企業に「進化」する方法を説いた渾身の書である。本記事では、その内容を一部抜粋・編集してお届けする。
【中堅社員のスピーチ例】なぜ、あなたの指示は部下に伝わらないのか
【ポイント】
- 部下が成長しないのは、部下を教育する上司の「言語化」が足りないからかもしれない
- マニュアルのような大仰なものでなく、メモ書きでもいいので「ポイント」を言葉にする
- 言葉化することで、上司と部下との間に共通認識が生まれ、部下が成長しやすくなる
おはようございます。私が部下を持つ上司の立場になってから数年が経ちました。今日は私と同じ上司の皆さんに、ぜひ聞いていただきたい話があります。皆さんは、部下がなかなか仕事を覚えてくれなくて、モヤモヤした経験はないでしょうか。私は上司になってからそのようなモヤモヤがずっと続いていたのですが、最近になって、それは部下ではなく、部下を教育する私のほうに問題があったのだと気付くことができました。
私に足りなかったものは「言語化」です。私は今まで部下に何かを教える際、「私が今からやるから、同じようにやってみて」と、具体的な言葉で伝えずに指導をすることが多々ありました。私自身も若い頃、当時の上司から「仕事は見て覚えるものだ」と言われて育ちましたし、日々の業務も忙しく、マニュアルなどを作る余裕もなかったからです。
ですが、あるとき別の会社で働く友人から、アドバイスを受けました。その友人も、私と同じく部下を持つ上司ですが、このようなことを言われました。「仕事のポイントが『10個』あったとして、部下に『5個』しか言葉で伝えてなかったとしたら、それはできなくて当たり前だよ」と。私が「でも、マニュアルを作る時間もないし……」と言いかけたら、その友人は「そんな大仰なものじゃなくて、教えることをメモ帳やホワイトボードに書き出すだけでいいんだよ」と返してきました。
友人の言う通り、部下に何かを教える前に、ポイントをメモに書き出して渡すようにしたら、部下とのコミュニケーションが一変しました。先ほどの例えで言うなら、言語化によって「ポイントが10個あること」が私と部下の共通認識になり、部下は仕事の全体像が分かって質問がしやすくなり、私も「部下が理解できていること、できていないこと」を整理しやすくなったのです。
上司にも仕事がある以上、全てを手取り足取り教えるわけにはいきませんし、部下の成長のために「見て覚えてもらうこと」が必要なときもあります。とはいえ、チームで仕事をする以上、基本となるのはやはり「言葉」であり、「忙しいから」「言葉にしにくいから」といった理由で言語化を怠けていては、いつまでたっても上司も部下も成長できないのだと考える今日このごろです。
以上(2025年6月作成)
pj17219
画像:Mariko Mitsuda
荷物があるのに運べない! 物流業の人手不足打開のカギは?
1 物流業「2024年問題」の現在地
労働基準法の「時間外労働の上限規制」が物流業にも適用される(いわゆる2024年問題)ようになってから、1年以上がたちました。

とはいえ、物流業は「2割長く、2割安い」職業といわれており、もともと
- 点呼や運行日報の記入などを人力で行っているケースが多い
- 長時間の運転時間の他、荷待ち時間が発生したり、本来依頼になかった荷役作業を急ぎで依頼されたりすることが多い
- 労働時間が不規則で年次有給休暇が取りにくいなどの理由から、若手が入りにくい
など、長時間労働に陥りやすい傾向があり、2024年問題への対応がいまだ追いついていない会社が少なくありません。物流業の会社は、いかに人手不足を解消すればよいのか。この記事ではそのヒントとして、
業務のDX化や配置転換で長時間労働を是正すること
をご提案します。
なお、物流業界においては、2024年問題への対策として
2025年4月1日から改正流通業務総合効率化法・改正貨物自動車運送事業法が施行され、荷主・物流事業者に対する規制などが強化
されています。第3章で紹介していますので、自社が対応できているか改めてご確認ください。
2 業務のDX化や配置転換で長時間労働を是正する
中小企業クラスの物流業における、時間外労働の削減に関する取り組み事例を紹介します。
1)ドライバーの点呼や運行日報の記入を自動化
物流業では、安全運転の徹底のため、運行管理者がドライバーの出発前や帰社後に点呼を取り、健康状態や呼気中のアルコール濃度をチェックすることが欠かせません。ですが、この業務にかかる時間は、DX化によって削減できる可能性があります。
例えば、ある会社は、各営業所に設置したロボットが、ドライバーの健康状態やアルコール濃度のチェックを自動で行い、運行管理拠点にデータを送る形で点呼を行っています。
ロボットが点呼を行うことで、運行管理者がドライバーと対面する必要がなくなり、作業時間を大幅に削減できる
ようになったそうです。
また、この会社では、運行日報の記入の自動化も実施しています。運行日報は手書きが当たり前という会社も多いですが、
「デジタルタコグラフ(デジタコ)」を使い、運転時の速度・走行時間・走行距離などを自動で記録できるようにする
ことで、ドライバーの負担を軽減しているそうです。デジタコと連携した勤怠管理システムもあり、勤怠管理も自動化することもできます。
2)セーフティーレコーダーで荷待ち時間を削減
ドライバーの長時間労働が慢性化しやすい原因の1つに、荷物の積み下ろしが終了するまでドライバーが待機する「荷待ち時間」の問題があります。
例えば、ある会社は、ドライブレコーダー機能とデジタコ機能が一体になったセーフティーレコーダーを全車に導入し、車両の速度、走行時間、走行距離などを分析することで、荷待ち時間がどの程度発生しているのかを突き止めました。さらに、
荷待ち時間を可視化したデータを顧客に見せ、荷待ち時間短縮の協力を仰ぐ
ようにし、配送ルートの見直しも併せて行うことで、時間外労働の削減に成功したそうです。
3)高齢ドライバーを事務職に配置転換し、効率の良い配車を
どの会社でも従業員の高齢化は大きな課題ですが、物流業においては特にその傾向が強いです。経験豊かなベテランは会社にとって戦力の要ですが、一方で人間の身体機能は年齢とともに低下していくため、高齢化とともにドライバーが事故に遭うリスクも高まっていきます。
例えば、ある会社は、こうした高齢のドライバーをあえて「事務職」に配置転換することで、事故のリスクを減らすとともに、働き方改革に成功しました。「経験豊かなベテランを現場から外して大丈夫なのか?」と思うかもしれませんが、
ドライバーの仕事内容を細かく把握しているからこそ、配車が効率良く行える
という側面があり、結果的に職場全体の時間外労働の削減につながったそうです。例えば、どのサイズのトラックなら現場に入れるかなどを細かく顧客とやり取りしながら、ドライバーの仕事を決められるといった具合です。
4)「あえての新卒採用」に取り組む
中小企業の場合、ドライバーは中途採用が基本です。トラックの運転免許については、大型免許であれば原則21歳以上、中型免許であれば原則20歳以上といった具合に年齢要件が高めに設定され、なおかつ一定の運転経験が受験資格に含まれているため、新卒採用に取り組みにくい面があります。ただ、人手不足と高齢化の中、そんなことばかり言ってもいられません。
例えば、ある会社は、「いつまでも若手を入れないわけにはいかない」と考え、
物流業のいわゆる3K(きつい、汚い、危険)のイメージを取っ払い、新卒の人にも興味を持ってもらえる会社づくり
に取り組みました。業界未経験者であっても会社が費用を出して免許を取ってもらう形を整え、労働時間が不規則で年次有給休暇が取りにくいという課題を解決するため、年5日の計画年休制度も導入するなどした結果、高卒のドライバーの新卒採用に成功しました。また、従業員のユニフォームを清潔なデザインに一新したり、社内にパウダールームを設けたりすることで、女性の新卒採用にも成功し、人材の確保・育成を継続しているようです。
3 (参考)2025年の流通業務総合効率化法等改正について
最後に、2025年4月1日から施行されている、改正流通業務総合効率化法・改正貨物自動車運送事業法について解説します。今回の改正のポイントは大きく3つに分けられます。
1)荷主・物流事業者に対する規制(改正流通業務総合効率化法)
1.物流効率化のための努力義務
荷主(発荷主、着荷主)と物流事業者(トラック、鉄道、港湾運送、航空運送、倉庫)について、次のような措置を講じる努力義務が課されています。

2.特定事業者の指定と義務
「特定事業者」と呼ばれる、主務大臣が指定する一定規模以上の荷主・物流事業者について、物流効率化のための措置に関する中期計画の作成や提出が義務付けられています。
また、特定事業者に該当する荷主については、物流効率化のために必要な業務を統括管理する「物流統括管理者」の選任が義務付けられています。
2)トラック事業者の取引に対する規制(改正貨物自動車運送事業法)
1.実運送体制管理簿の作成
荷主から運送を委託された元請事業者について、1.5トン以上の貨物を運送するために他のトラック事業者(実運送事業者)を利用した際、「実運送体制管理簿」という運送の実態を記録する管理簿を作成することが義務付けられています。
2.運送契約時の書面交付
荷主・トラック事業者・利用運送事業者(実運送業者に運送を委託する事業者)は、運送契約の締結時に、提供する役務の内容やその対価(附帯業務料、燃料サーチャージ等)について記載した書面を交付することが義務付けられています。
3.下請け利用の適正化
トラック事業者・利用運送事業者について、他事業者の運送の利用(下請け)を適正化する努力義務が課され、一定規模以上の事業者には、適正化に関する管理規程の作成や責任者の選任が義務付けられています。
3)軽トラック事業者に対する規制(改正貨物自動車運送事業法)
1.貨物軽自動車安全管理者の選任と講習受講
軽トラック事業者の営業所ごとに「貨物軽自動車安全管理者」を選任し、定期的な講習を受講させることが義務付けられています。
2.事故情報の公表
軽トラック事業者に係る事故報告や安全確保命令に関する情報が、国土交通省のウェブサイトで公表対象となります。
以上(2025年6月)
(監修 三浦法律事務所 弁護士 磯田翔)
pj50526
画像:emma-Adobe Stock
「大学×企業の可能性を広げる」近畿大学リエゾンセンターに聞く産学連携の今と未来(3)
令和4年3月24日、近畿大学と徳島大正銀行は「産学連携包括契約」を締結しました。
産学連携・交流を円滑に推進するための組織が近畿大学リエゾンセンター(KLC)です。
「とくぎんサクセスクラブnavi」(とくさくnavi)では、KLCのコーディネーター武田和也さんへのインタビューを3回連載でお届けします。産学連携の『今』、地域企業とのつながり方や未来の可能性に迫ります。
最終回となる第3回では、リエゾンセンターが描く産学連携の進め方や、企業へのメッセージをご紹介します。「大学と連携してみたいけど、何から始めれば…?」という方へのヒントも必見です。
―今後、どのような産学連携を進めていきたいと考えていますか。
今までは、教員の研究テーマに合致したネタでないと技術相談が成立してこなかったんですが、企業のふわっとした「ビジネス展開を考えてほしい」といった相談にも対応できることがよくわかってきました。商品化につながっている例もたくさんあります。
また、学生が関わってくることにも面白みを感じています。若い学生たちが自分ごととして考えることができています。一番信用性が高いのは、若い人たち向けの商品展開を考えてほしい、といったご相談ですね。そういったご相談がどんどん増えていけばいいなと思っています。
また一方で、学生たちが関わって商品化につながることで学生たちの就職活動時に大きなアピール材料にもなります。デザインのご相談を受けた際、学生がデザインを考え、展示会にいってそのご縁で就職が決まったこともありました。当時2011年は就職活動氷河期でしたが、希望の企業へ就職できたのも産学連携の効果で、企業だけでなく学生たちにもメリットがあることも知りました。
このように、企業にとっても大学や学生にとってもWINWINとなる産学連携が増えることにも期待しています。

―「こんなことから始めてみては?」というアドバイスがありましたらお聞かせください
商品化に関するお困りごと、商品を作った時の不具合、学生たちに考えてもらいたい若い人たち向けのアイデアなどお気軽にご相談いただけたらと思います。オンライン相談もできるので、遠方からのご相談も大歓迎です。共同研究だけでなく色々なメニューをもっています。アイデアがほしい、分析をお願いしたい、デザインを考えてほしいだけでもかまいません。企業のお困りごとをビジネスコンテストで発表してもらう、なんてメニューもあります。企業のお困りごとへのアイデアを学生が3ヶ月かけて考えて、3ヶ月目で優勝者を決めるコンテストです。色々な学生のアイデアをお持ち帰りいただけるのでおすすめです。また、先生に企業にいってもらって指導してもらう、セミナーを行ってもらうなどもできます。企業の希望を聞きながら、希望に合うようなメニューを選び出すのが我々コーディネーターの仕事ですのでお任せください。

―とくぎんサクセスクラブの会員さまへメッセージをお願いします。
何でもご相談ください。ハードルはありません。とりあえず何ができるか聞いてあげようか、みたいな軽い気持ちでご相談ください。とくぎんサクセスクラブ会員様からのご相談をお待ちしております。
以上、近畿大学リエゾンセンターのコーディネーター武田和也さんへのインタビューを3回連載でお届けしました。
近畿大学産学連携についてのご相談は、お取引のある営業店にお問合せください。または、とくぎんサクセスクラブnaviのお問合せフォームからご連絡ください。
以上(2025年5月作成)
画像:近畿大学リエゾンセンター
【債権回収】倒産するかもしれない相手と取引を継続するか否かの判断基準
目次
1 いかに早く察知できるかが勝負
取引先からの支払いが滞り、こちらの催促にも応じない場合、いよいよ経営が危ないかもしれないので、速やかに行動しましょう。債権保全と回収の方法は幾つかありますが、取引先が破産や民事再生などの法的手続きを取ると、原則として個別の取り立てを行うことが禁止され、債権回収が認められなくなる場合があります。また、取引先に債権を持つのは自社だけではないはずですから、債権回収は「早い者勝ち」ともいえます。
この段階になったら、
いかに早く察知して判断し、行動するかが重要
です。この記事では、危ない取引先との取引について、「訴訟になる前の債権回収」の視点でまとめています。経営者は特に、
- 仮差押え:取引先が資産を処分できないように差し押さえる
- 商品の引き揚げ:相手の同意を得て自社商品を引き揚げる
- 相殺の実行:取引先との債権債務を相殺する
- 担保の取得、実行:担保を取得する、債務不履行なら不動産競売などを行う
- 動産売買の先取特権の実行:自社が販売した商品を当然に引き揚げる
について知っておかなければなりません。
債権回収は時間との勝負である一方で、倒産手続が開始された後には、手続開始前の一部弁済が偏頗(へんぱ)弁済として否認され、弁済に対応する金銭等を破産管財人に対して返還しなければならなくなります。したがって、早期回収を図る場合でも、取引先の倒産申立ての可能性や時期を見極め、専門家と連携して慎重に判断する必要があります。
2 取引を継続するか否かを判断する
取引先に関する情報収集が重要ですが、悠長に構えている時間はありません。取引を継続するか否かを判断する過程で、取引先へのヒアリングや、同業他社から情報収集をするので、情報収集と取引を継続するか否かの判断はセットで行うことになります。
取引先からの支払いが滞り、催促をしてもなお遅延が解消されない場合は、
- 決済サイトを短くする
- 取引量を減らす
- 担保を設定する
- リスク相当分を価格に上乗せする
といったことも検討します。
取引を継続しない場合は、契約書の「解約」か「約定解除」を実行します。解約とは、
当事者の一方の意思表示により、将来に向かって解約するというもので、「3カ月前に通知すれば解約できる」
といったように定めるものです。約定解除とは、
契約書に定められた条件に抵触する場合に解除するというもので、「1度でも支払いを怠ったときに契約を解除できる」
といったように定めるものです。もし、契約書にこれらの定めがなければ、取引先との話し合いにより「合意解除」することになります。
なお、契約解除には「法定解除」もあります。法定解除ができるのは、相手に「債務不履行」や「契約不適合」(相手から納品された目的物が仕様とは異なっていること)があった場合です。債務不履行には次の3つがあります。
- 履行遅滞:支払いが遅れているなど
- 履行不能:支払うことができないなど
- 不完全履行:一部しか支払われていないなど
法定解除の場合、債務不履行があっただけではなく、その後に履行の催告等の手続きを経なければ、解除することはできません。
3 仮差押えをするか否かを判断する
取引先が資産を勝手に処分しないように、「仮差押え」をすることを検討します。仮差押えとは、
売上債権などの金銭債権を保全するために、取引先の保有している財産を暫定的に差し押さえる制度
です。もう少し簡単に言うと、
訴訟を提起して、判決が出ても、実際に回収ができるようになるまでには時間がかかります。その間に相手が資産を処分してしまうと、回収できる資産がなくなるので、そうならないよう(相手が勝手に処分することがないようにするため)、仮で差し押さえておく
というものです。仮差押えは金銭債権を対象としています。一方、仮処分とは、
仮差押えと異なり、取引先に対して有する金銭債権以外の権利を保全する制度
です。例えば、譲渡担保権を設定している取引先の物件が第三者に譲渡される恐れがある場合、それを阻止するために利用されます。以降、仮差押えについて説明をしていきます。
仮差押えは有効な債権回収の手段、交渉手段となりますが、次のような注意点もあります。取引先の状況や費用についても検討する必要があります。
- 仮差押えは、回収の優先権ではない。従って、他の債権者も回収手続への参加を行った場合、各自の債権額の按分でしか回収できなくなる恐れがある
- 仮差押えは、取引先が破産などの法的な倒産手続を取り、当該手続きが開始されると失効する。この場合、有効な債権回収手段とはならない
- 仮差押命令を取得するためには、裁判所に担保金を積む必要がある。また、不動産を仮差押えする場合は登録免許税も必要
なお、仮差押えの主な流れは次の通りです。

4 商品を引き揚げるか否かを判断する
取引を継続しない場合は、速やかに取引先の倉庫などにある自社の商品を引き揚げます。
一方、取引が継続している状態で商品を引き揚げるには取引先の同意が必要です。同意がないと、自社が窃盗罪に問われたり、不法行為として損害賠償責任を負わされたりする恐れがあるからです。ただし、取引先の同意を得た上での商品の引き揚げでも、その後すぐに取引先が破産などの法的手続を取った場合は認められないことがあります。
引き揚げ商品が自社の売却した商品でなければ、「代物弁済」または「動産譲渡担保権」を実行します。代物弁済とは、
他の動産を受け取って債権の弁済に充てること
です。動産譲渡担保権とは、債権者に対して所有権を形式的に譲渡する方式の担保権であり、
取引先がそのまま利用できる状態で、動産を担保に取れる方法
です。動産を取引先のところにおいたままですので、譲渡担保が設定していることを知らない第三者に対しては担保の効力を主張できない恐れがありますが、少なくとも譲渡担保を知っている第三者に対しては、自己の優先権を主張できるので、一定の効果はあります。そのため、機械等の動産を譲渡担保に取る場合は、機械にプレートを付けたり、担保物件であることを示す札を立てるなどして明認方法を施すようにします。
5 相殺するか否かを判断する
相殺とは、
自社が取引先に負っている債務と、取引先が自社に負っている債務(自社から見ると債権)を相殺すること
です。原則として債権債務の弁済期が到来していることが条件ですが、自社が取引先に負っている債務については、弁済期が到来していなくても、自社が期限の利益を放棄することで相殺の対象となります。相殺は、相手方に対する意思表示によって行います。通常、証拠を残すために「内容証明郵便」を送ることで相殺通知を行います。相殺をすることによって、自分の債務分については、事実上優先的に債権を回収することができることとなります。
なお、相殺は取引先が法的な倒産手続きを取った場合に制限されることがあります。例えば破産手続きの場合、
取引先が破産手続き開始申立をしたことを知っているのに、その後に債権を取得して相殺を持ちかけることは禁止される
などといった制限です。
6 担保の設定・実行するか否かを判断する
担保には不動産などの物的担保と、経営者個人の連帯保証のような人的担保があります。ただ、担保を設定したとしても、例えば、経営者個人に支払い能力があるかは分からないので、この辺りの調査は必要です。
また、取引先が法的な破産手続きを取ることを知っているのに担保を取得しようとした場合、その担保は認められなくなる恐れがあります。
一方、債務不履行が発生し、取引先の経営が一刻を争う状態であれば、速やかに担保を実行します。例えば不動産を担保としている場合、担保不動産競売によって債権回収を図ります。担保不動産競売の主な流れは次の通りです。

7 動産売買の先取特権を実行するか否かを判断する
商品などの動産を売買した場合、当該動産の代金が未払いであれば、「動産売買の先取特権」という「法定担保物権」を有します。まず、先取特権とは、
特定の財産について、他の債権者に優先して債権回収することを認める制度
です。この先取特権が動産売買についているわけですから、動産売買の先取特権とは、
自社は取引先に販売した動産を優先的に回収できる
というものです。さらにこれは、法定担保物権という、
法律上当然に発生する担保物権なので、事前に物的担保を設定しておく必要はない
ことになります。
動産売買の先取特権は、動産競売により代金回収を行うことがまず考えられます。例えば、次の場合です。
- 債権者が執行官に対し当該動産を提出したとき
- 当該動産の占有者が差押えを承諾することを証明する文書を提出したとき
- 債権者が担保権の存在を証する文書を提出して動産競売の許可を申し立て、執行裁判所がこれを許可し、許可決定が債務者に送達されたとき
しかし、取引先が当該動産の代金を自社に支払わないまま、第三者に当該動産を譲渡してしまう場合もあります。この場合は、対象となる動産がすでに債務者の手許にないため、動産競売の方法を用いることができません。しかし、取引先がその代金を第三者から受け取っていない場合は、取引先の第三者に対する売上債権を差し押さえることができます。これを、
動産売買の先取特権に基づく物上代位
といいます。
以上(2025年7月更新)
pj60188
画像:Mariko Mitsuda
【中小企業のためのBCP】 社員の「安否確認」手段を整備しよう
1 緊急時、社員の安否確認が不可欠な2つの理由
昨今はいつどこで大きな地震が起きてもおかしくなく、備えはどの会社にとっても必須です。
いざ災害が起こってもスムーズに行動できるよう、事前に決めておきたいのが、安否確認の手段です。緊急時に社員の安否確認が不可欠なのは、
- 社員と、社員の家族の安全を確保するため
- 事業継続や再開の判断をするため
です。
社員の安否確認をすることは当然ですが、社員の家族も心配です。また、大規模な自然災害の場合、社員の状況によって事業継続(あるいは再開)の状況は変わってきます。「誰が業務をできるのか?」は大切な情報です。
会社が行うべき安否確認の流れは次の通りです。
- 避難して安全を確保してから、集合場所に集まった社員を点呼で確認する
- 外出中やリモートワークなどでその場にいない社員と連絡を取り、安否確認をする
- 安否情報を集計し、待機や出社などの状況に適した指示を出す
このとき、2.で発生しがちな課題として、いざというときに普段の連絡手段が使えないことがあります。特に電話は、災害発生時に回線の混雑や通信制限で使えない場合があります。
では、どうやって社員の安否確認を行えばよいでしょうか。また、日ごろからどのような備えをしておくべきでしょうか。具体的に見ていきましょう。
2 どのように社員の安否確認を行うか?
1)5つの主な安否確認手段を比較
ここでは、官公庁や各種企業が提供している防災情報を参考に、5つの主な安否確認手段を取り上げ、その特徴と注意点を比較します。

「社員への使い方の教育」「安否状況の集計作業」「導入費用」「運用費用」などを比較すると、それぞれの手段で一長一短があります。
東京商工会議所「会員企業の災害・リスク対策に関するアンケート(2024年調査)」によると、社員の安否確認に最も多く使われる手段は、「メールやSNS」の52.5%となっています。普段から使い慣れている連絡手段とはいえ、集計作業が煩雑であり、社員数や事業拠点数が多い場合は、安否情報を集めるだけでもかなりの時間が取られてしまいます。
対して、安否確認システム/サービスは、導入や運用に費用がかかるものの、安否状況を自動で集計できる上、安否確認メールの自動送信や、報告がない場合のメール再送信機能を備えているものもあり、混乱した状況でも安否情報をスムーズに整理できます。
また、災害用伝言ダイヤル(171)は無料で利用できますが、データ通信専用SIMカードでは音声通話ができないため、社員が格安SIMを使っている場合には注意が必要です。災害用伝言ダイヤル(171)と災害用伝言板(web171)について、詳しくは以下の総務省ウェブサイトをご確認ください。
■総務省「災害用伝言サービス」■
https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/net_anzen/hijyo/dengon.html
2)安否確認の前提となるインターネット接続環境の確保
安否確認手段はさまざまありますが、災害用伝言ダイヤル(171)を除けば、インターネットに接続できる環境が必要です。
そこで知っておきたいのが、災害用統一SSID「00000JAPAN」(ファイブゼロジャパン)です。「00000JAPAN」は、災害発生時に携帯電話会社などが無料開放する公衆無線LAN(Wi-Fi)のアクセスポイントで、これを利用してインターネットに接続できます。
ただし、「00000JAPAN」は、被災地で誰でも使えるという利便性を確保するため、通信の暗号化などセキュリティーへの対応は行われていません。「00000JAPAN」を利用するときは、安否確認や災害関連情報の収集にとどめるようにしましょう。
■無線LANビジネス推進連絡会■
https://www.wlan-business.org/00000japan/
3 日ごろから備えておきたいことは?
災害発生時に、安否確認手段が未整備だったら、もう手遅れです。そうならないために早急に決めておくべきなのは、「安否確認で優先的に使う手段」と「安否情報として報告する内容」です。その上で、報告・連絡といった基本的な行動が普段からしっかりできる組織を作っていきましょう。
1)安否確認で優先的に使う手段を1つ決めておく
日常業務で、メール、電話、ビジネスチャットなど複数のツールを用途に応じて使っている会社も多いでしょう。
しかし、緊急時には、連絡手段が複数あることで、かえって混乱を招く場合があります。バックアップ的に複数の安否確認手段を持っておくことは大切ですが、優先的に使う手段は1つに決めておきましょう。
2)安否情報として報告する内容を決めておく
社員が安否情報を登録するときの文言(メッセージ)については、
- 名前
- 現在いる場所(自宅・会社・外出先)
- 状況(例:1人・家族や同僚と一緒)
- 安否(けがの有無など)
- 出社の可否
- 次にメッセージを入れる時刻
など報告する内容を決めておきましょう。
災害用伝言ダイヤル(171)の録音時間は30秒以内、災害用伝言板(web171・各キャリア)の文字数は100文字以内(名前と状況以外)となっており、簡潔に伝える必要があります。災害発生時は、社員がパニックを起こし、うまく情報を伝えられなくなることもあり得ます。安否確認の訓練の実施や、報告すべき情報を記したカードを配布するなどの工夫をしましょう。
なお、災害用伝言ダイヤル(171)と災害用伝言板(web171・各キャリア)は、体験利用日を設けており、災害発生時以外でも利用できます。詳しい日程は、各サービスのウェブサイトをご確認ください。以下、一例として紹介します。
■NTT東日本「災害用伝言ダイヤル(171)体験利用のご案内」■
https://www.ntt-east.co.jp/saigai/voice171s/howto.html
■NTT東日本「災害用伝言板(web171)体験利用のご案内」■
https://www.ntt-east.co.jp/saigai/web171s/howto.html
■NTT西日本「災害用伝言ダイヤル(171)体験利用のご案内」■
https://www.ntt-west.co.jp/dengon/taiken/
■NTT西日本「災害用伝言板(web171)体験利用のご案内」■
https://www.ntt-west.co.jp/dengon/web171/taiken.html
3)報告・連絡をしっかりできるようにする
どれだけ事前に安否確認の体制を整備しても、災害発生時には想定外の事態が起こり得ます。
重要なのは、平時でも基本的な報告・連絡を、全員がしっかりとできる組織であることです。例えば、連絡に対して迅速にレスポンスを行う、外出するときに行き先を周知する(周囲のメンバーも確認する)といった基本的な行動です。社員がこうしたことをできているのか、いま一度確認し、できていないようであれば、普段から徹底するように、あらためて注意を促しましょう。
また、避難を要する災害に見舞われた場合、スマートフォンや携帯電話のバッテリーが切れてしまい、継続的な安否確認ができなくなる恐れがあります。外出時の持ち物や避難用品に充電済みのモバイルバッテリーを加えるなどの呼びかけをしておきましょう。
以上(2025年7月更新)
pj60168
画像:NOBUHIRO ASADA-shutterstock
【財務分析】会社の良し悪しを判断する基本の指標20選
1 財務分析は「仮説→検証」の繰り返し
財務分析は、会社の状況について「仮説」を立て、それを検証するために行うものです。例えば、次のようなイメージです。
- 「老朽化した設備があり、有形固定資産の効率性が落ちている?」と仮説を立てたら、有形固定資産回転率が低くないかを確認してみる
- 「借入金が増加し、短期安全性が低下している?」と仮説を立てたら、流動比率や当座比率を比較してみる
この記事では、財務分析に使う代表的な20の分析指標を紹介します。ただし、上から順番に計算していく必要はありません。会社の状況で「収益性」「安全性」「生産性」のうち、どの要素を判断したいかによって、必要な指標を使いわけてみてください。
2 収益性に関する指標10選
1)総資本経常利益率
総資本経常利益率の計算式は次の通りです。この比率が高いほど収益性は高くなります。
総資本経常利益率=経常利益÷総資本
また、総資本経常利益率の計算式は次のように分解することができ、収益性に影響を与える要因をより詳細に分析できます。
総資本経常利益率
=(経常利益÷売上高)×(売上高÷総資本)
=売上高経常利益率×総資本回転率
2)売上高総利益率
売上高総利益率の計算式は次の通りです。この比率が高いほど収益性は高くなります。
売上高総利益率=売上総利益÷売上高
売上総利益は次の式で計算できます。
売上総利益=売上高-売上原価
売上原価とは、販売した商品の仕入れや製造にかかった費用です。例えば、小売業は販売した商品の仕入代金が該当します。また、製造業は製品の製造費用などが該当します。
3)売上高営業利益率
売上高営業利益率の計算式は次の通りです。この比率が高いほど収益性は高くなります。
売上高営業利益率=営業利益÷売上高
営業利益は次の式で計算できます。
営業利益=売上総利益-販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費とは、販売部門や総務・経理といった管理部門などで発生する費用です。人件費・事務用品費・旅費交通費・広告宣伝費・支払家賃・減価償却費などが該当します。
4)売上高経常利益率
売上高経常利益率の計算式は次の通りです。この比率が高いほど収益性は高くなります。
売上高経常利益率=経常利益÷売上高
経常利益は次の式で計算できます。
経常利益=営業利益+営業外収益-営業外費用
営業外収益とは、財務活動や投資活動など、本業以外で得た収益です。受取利息・受取配当金・有価証券売却益などが該当します。また、営業外費用とは、本業以外で発生した費用のことです。支払利息・為替差損・有価証券売却損・社債利息などが該当します。
5)ROE(Return On Equity、自己資本利益率)
ROEの計算式は次の通りです。この比率が高いほど効率性は高くなります。
ROE=税引後当期純利益÷自己資本
6)ROA(Return On Assets、総資本利益率)
ROAの計算式は次の通りです。この比率が高いほど効率性は高くなります。
ROA=税引後当期純利益÷総資本
7)総資本回転率
総資本回転率の計算式は次の通りです。この比率が高いほど効率性は高くなります。
総資本回転率(回)=売上高÷総資本
なお、総資本回転率が悪化する例として、保養所などの売上獲得に直接貢献しない資産を多く所有していることなどが挙げられます。
8)売上債権回転率
売上債権回転率の計算式は次の通りです。この比率が高いほど効率性は高くなります。
売上債権回転率(回)=売上高÷売上債権
売上債権は次の式で計算できます。
売上債権=受取手形+売掛金など
9)棚卸資産回転率
棚卸資産回転率の計算式は次の通りです。この比率が高いほど効率性は高くなります。
棚卸資産回転率(回)=売上高÷棚卸資産
棚卸資産とは、販売されずに在庫として会社に残っている資産です。商品・製品の他に原材料・仕掛品なども含みます。棚卸資産回転率が低い場合、在庫過多や不良在庫の恐れがあります。
10)有形固定資産回転率
有形固定資産回転率の計算式は次の通りです。この比率が高いほど効率性は高くなります。
有形固定資産回転率(回)=売上高÷有形固定資産
3 安全性に関する指標7選
1)流動比率
流動比率の計算式は次の通りです。この比率が高いほど安全性は高くなります。
流動比率=流動資産÷流動負債
流動資産とは、現金預金・受取手形・売掛金・棚卸資産など1年以内に現金化が見込める資産です。また、流動負債とは、支払手形や買掛金など1年以内に支払う必要のある負債です。
流動比率は、短期的な支出を短期的な収入でどの程度補うことができるかが把握できる指標です。1年以内という基準で資産と負債の比率を見るわけですが、「1年以内に回収できるか、また、支払いが可能かどうか」までは考慮されていません。そのため、資産と負債が同一の状態である100%では安全とは言い切れず、200%以上が望まれます。
2)当座比率
当座比率の計算式は次の通りです。この比率が高いほど安全性は高くなります。
当座比率=当座資産÷流動負債
当座資産は、流動資産から棚卸資産を除いた換金性の高い資産です。
当座資産=現金預金+受取手形+売掛金+有価証券など
受取手形・売掛金は、貸倒引当金を控除した後の値を用います。貸倒引当金とは、取引先の倒産などにより回収ができなくなる可能性がある金額を見積もった値です。
当座比率は流動比率よりも資産の回収可能性を考慮した指標であり、100%以上が望まれます。もし当座比率が低い場合、支払原資に対する短期借入金などの比率が大きいことが分かります。また、当座比率についても回収や支払いのタイミングは考慮されていません。流動比率が高いのに当座比率が低い場合、棚卸資産(在庫)が過剰となっている恐れがあります。
3)手元流動性比率
手元流動性比率の計算式は次の通りです。この比率が高いほど安全性は高くなります。
手元流動性比率(カ月)=(現金預金+有価証券)÷月商
手元流動性比率は、短期的な安全性を見る際に信頼できる指標です。なぜなら、手元流動性は、現金預金とすぐに現金化できる有価証券だけで安全性を評価するからです。一概にはいえませんが、中小企業の場合は1.7カ月以上が望まれます。
4)固定比率
固定比率の計算式は次の通りです。この比率が低いほど安全性は高くなります。
固定比率=固定資産÷自己資本
固定資産とは、建物や土地など1年超にわたって使用される資産です。固定比率は、短期では回収の難しい固定資産が返済する必要のない自己資本によってどれくらい賄われているか、企業の長期的な安全性を見るための指標で、100%以下となることが望まれます。
5)固定長期適合率
固定長期適合率の計算式は次の通りです。この比率が低いほど安全性は高くなります。
固定長期適合率=固定資産÷(自己資本+固定負債)
固定負債とは、社債や長期借入金など1年以内に支払う必要がない負債です。固定長期適合率は、長期的な安全性を見るための指標ですが、自己資本に加えて固定負債も考慮していることが特徴です。固定長期適合率は、100%以下となることが望まれます。
6)自己資本比率
自己資本比率の計算式は次の通りです。この比率が高いほど安全性は高くなります。
自己資本比率=自己資本÷総資本
自己資本比率は、総資本のうち、返済する必要がない自己資本が占める割合です。安全性の観点から見ると、自己資本比率は高ければ高いほど好ましくなります。ただし、負債で事業投資をして負債コスト以上の利益を上げている場合、自己資本比率が低くても問題はありません。 そのため、収益性の観点から見ると、自己資本比率が高ければ良いというわけでもありません。
7)負債比率
負債比率の計算式は次の通りです。この比率が低いほど安全性は高くなります。
負債比率=負債÷自己資本
負債比率は、負債と自己資本を比較する指標です。負債比率は、自己資本比率を補完するものですが、安全性分析としては、自己資本比率もしくは負債比率のどちらか一方を分析すれば良いといえます。
4 生産性に関する指標3選
1)労働生産性
労働生産性の計算式は次の通りです。この比率が高いほど従業員1人当たりの生産性は高くなります。
労働生産性(円)=付加価値÷従業員数
労働生産性の計算式を次のように分解すると、生産性に影響を与える要因の詳細が見えてきます。
労働生産性(円)
=(売上高÷従業員数)×(付加価値÷売上高)
=1人当たり売上高×付加価値率
2)設備生産性
設備生産性の計算式は次の通りです。この比率が高いほど資産当たりの生産性は高くなります。
設備生産性=付加価値÷有形固定資産
設備生産性の計算式を次のように分解すると、生産性に影響を与える要因の詳細が見えてきます。
設備生産性
=(売上高÷有形固定資産)×(付加価値÷売上高)
=有形固定資産回転率×付加価値率
3)労働分配率
労働分配率の計算式は次の通りです。この比率が低いほど生産性は高くなります。
労働分配率=人件費÷付加価値
労働分配率が高ければ、労働生産性が低いか、余剰人員を抱えている可能性があります。
以上(2025年6月更新)
(監修 エスコート税理士法人 税理士 林孝行)
pj35039
画像:pexels
中小企業が知っておきたい 自社PRや補助金獲得につながる宣言集
1 積極的な「宣言」が成長のチャンスに
「パートナーシップ構築宣言」や「SECURITY ACTION(セキュリティ対策自己宣言)」など、世の中にはさまざまな「宣言」があります。これらは簡単に言うと、
企業が社会的責任などを果たす上で、「何に取り組んでいるのか」を端的に表すもの
です。宣言に伴い付与されるロゴマークなどが自社PRに役立つのはもちろん、宣言に取り組むことは “企業が成長するきっかけ”にもなります。なぜなら、宣言するまでの過程で、
- 自社には、どのような課題があるのか
- 課題を解決するには、どのような目標を立てればいいのか
- 目標を達成するには、どのような取り組みが必要なのか
などに、真剣に向き合うことになるからです。また、宣言の中には
補助金の加点などの優遇措置を受けられたり、あるいは宣言すること自体が補助金申請の必須要件になっていたりするもの
もあります。
この記事では、中小企業が行うさまざまな宣言の中から、
- 補助金の加点や融資金利の優遇などにつながる宣言
- イメージアップ、人材獲得や取引拡大などにつながる宣言
を紹介します。
2 補助金の加点や融資金利の優遇などにつながる宣言
1)「パートナーシップ構築宣言」(中小企業庁)
パートナーシップ構築宣言は、
企業が「サプライチェーン全体の共存共栄、下請事業者との取引の適正化などに取り組むこと」を発注者側の立場から宣言するもの
です。
宣言するには、
- サプライチェーン全体の共存共栄と規模・系列等を超えた新たな連携(企業間の情報共有や連携、IT実装支援やサイバーセキュリティ対策、専門人材マッチング、グリーン化、健康経営など労働環境に関する取り組み)を図ること
- 下請中小企業振興法に基づく「振興基準」を遵守すること
が必要です。
宣言すると、
政府、自治体などのさまざまな補助金の加点措置や優遇措置が受けられる
ようになります。また、
次のロゴマークの使用が認められ、宣言企業であることをアピールできる
ようになります。

なお、「宣言」は全国中小企業振興機関協会が運営するポータルサイトに掲載されますが、掲載後に指導・助言を受けるなど、宣言を履行していないと認められた場合、掲載が取りやめになることもあるので注意が必要です。
補助金の加点などの優遇措置については、次のウェブサイトをご確認ください。
■「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイト 宣言するメリット■
https://www.biz-partnership.jp/merit/index.html
2)「100億円宣言」(中小企業庁)
100億円宣言は、
経営者自らが、「売上高100億円」という野心的な目標を目指し、実現に向けた取組を行っていくことを宣言するもの
です。
宣言には、
- 企業概要(足下の売上高、従業員数等)
- 売上高100億円実現の目標と課題(売上高成長目標、期間、プロセス等)
- 売上高100億円実現に向けた具体的措置(生産体制増強、海外展開、M&A等)
- 実施体制
- 経営者のコミットメント(経営者自らのメッセージ)
を盛り込む必要があります。
この宣言は、中小企業成長加速化補助金を受けるための要件となっています。また、宣言をすることで
宣言の公式ロゴマーク活用による自社PRや、経営者ネットワークへの参加
といったメリットもあります。
詳しくは次のウェブサイトをご確認ください。
■100億企業成長ポータル■
https://growth-100-oku.smrj.go.jp/
3)「SECURITY ACTION(セキュリティ対策自己宣言)」(情報処理推進機構)
SECURITY ACTION(セキュリティ対策自己宣言)は、
中小企業が「情報セキュリティ対策に取り組むこと」を宣言するもの
です。取り組み目標に応じて「★一つ星」と「★★二つ星」のロゴマークがあります。
宣言するには、中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン付録の
- 「情報セキュリティ5か条」に取り組むこと(★一つ星)
- 「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」で自社の状況を把握した上で、情報セキュリティ基本方針を定め、外部に公開すること(★★二つ星)
が必要です。取り組み目標を決めて、自己宣言者サイトから申請をすると、1~2週間程度でロゴマークの使用方法が伝えられます。
宣言すると、
「IT導入補助金」「事業承継・引継ぎ補助金(経営革新)」などの申請ができる
ようになります(宣言が申請要件の1つになっています)。詳しくは次のウェブサイトをご確認ください。
■SECURITY ACTION 自己宣言を申請要件などにしている補助金・助成金一覧■
https://www.ipa.go.jp/security/security-action/requirement/requirement.html
4)「健康企業宣言」(全国健康保険協会(以下「協会けんぽ」)各支部)
健康企業宣言(健康宣言とも。協会けんぽの支部によって名称が異なる)は、
企業が「健康経営に取り組むこと」を宣言するもの
です。
宣言するには、協会けんぽの各支部が定める取り組みを実施します。支部によって内容が異なりますが、例えば、東京支部の場合、
- (STEP1)「100%健診実施」「健診結果の活用」などの5項目、「食」「運動」「性差に応じた健康課題」などの7項目(選択式)に取り組むことを宣言すること
- (STEP2)「健診・重症化予防」「メンタルヘルス対策」など6項目に取り組むこと
が必要です。
宣言すると、
支部ごとに設定された、さまざまな特典やサポートが受けられる
ようになります。例えば、東京支部では東京信用保証協会の信用保証料率の優遇が受けられるといった特典があります。詳しくは次のウェブサイトをご確認ください。
■協会けんぽ東京支部「健康企業宣言Rとは」■
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/shibu/tokyo/cat070/collabo271210-1/
3 イメージアップ、人材獲得や取引拡大などにつながる宣言
1)知的障がい者フレンドリー宣言(Lean on Me)
知的障がい者フレンドリー宣言は、
企業が「知的障がいのある人が活躍できる社会づくりに取り組むこと」を宣言するもの
です。運営会社のLean on Me(大阪府高槻市)は、障がい者支援者向けのe-ラーニング教材の提供などをしている会社で、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)におけるアドバイザリー契約を結んでいます。
宣言するには、
- 知的障がい特性理解のための研修を実施する(年1回以上)
- 知的障がいのある人を雇用している
- 知的障がいのある人が関わるチャリティーイベントに協賛する
- 知的障がいのある人が関わるチャリティーイベントにボランティア参加する
の4つのフレンドリーアクションのうち、1つ以上の活動に取り組むことが必要です。
宣言すると、
知的障がい者フレンドリーカンパニー特設サイトに登録され、フレンドリーカンパニー専用バナーを使用できる
ようになります。詳しくは次のウェブサイトをご確認ください。
■知的障がい者フレンドリーカンパニー■
https://leanonme.co.jp/friendlycompany/
2)ISO自己適合宣言
ISO自己適合宣言は、
企業が「国際標準規格ISOに基づくマネジメントシステムを運用していること」を宣言するもの
です。多くの企業は、ISO認証を取得するために、日本適合性認定協会(JAB)が認定した適合性評価機関の審査を受けていますが、ISO9001やISO14001などのマネジメントシステムについては自己適合宣言も認められています。
宣言するには、
ISOに基づくマネジメントシステムの構築・運用が適合していること
が必要です。ただし、実際には、それだけでは信頼度が低いため、
初回は適合性評価機関を通じて認証を取得し、更新する際に外部の第三者機関に適合を証明してもらう検証審査を基に自己宣言に切り替える方法
も取られています。
宣言すると、
適合性評価機関による審査を受けるのと比べて、費用を抑えることができる
ようになります。第三者機関の審査を受ける場合も、「SDC検証審査協会」のような非営利法人に依頼することで費用を抑えられるでしょう。詳しくは次のウェブサイトをご確認ください。
■SDC検証審査協会■
3)認知症バリアフリー宣言(日本認知症官民協議会)
認知症バリアフリー宣言は、
企業が「認知症やその家族の人が地域で安心して暮らしていくために、生活のあらゆる場面での障壁を減らしていくこと」を宣言するもの
です。
宣言するには、
- 社内の「人材の育成」
- 行政、他業種などとの「地域連携」
- 認知症の家族をサポートできる社内制度
- 顧客が利用しやすいサービス・店などの環境整備
の4つに継続的に取り組むことが必要です。
宣言すると、
認知症バリアフリー宣言ポータルのウェブサイトに宣言内容が掲載されるとともに、ロゴマークが提供され、自社での広報活動に活用できる
ようになります。詳しくは次のウェブサイトをご確認ください。
■認知症バリアフリー宣言ポータル■
https://ninchisho-barrierfree.jp
4)SDGs宣言
SDGs宣言は、
企業が「SDGs(持続可能な開発目標)の17項目に取り組んでいること」を宣言するもの
です。他の宣言のように所管の機関があるわけではなく、あくまで自主的に行う宣言です。
細かいルールはありませんが、宣言するには、次のような項目をまとめる傾向にあるようです。発信の方法については、すでに実施している企業を参考にするとよいでしょう。
- 宣言文
- 自社の取り組みと、それに関連するSDGs目標(17項目のうちのいずれか)
- 宣言の公表日
- SDGsの説明
宣言すると、
SDGsのロゴやアイコンを使える
ようになります。これらは国連広報センターのウェブサイトからダウンロード可能です。ただし、資金調達や販促用商品などの商業用途に使う場合は、あらかじめ国連に許諾申請する必要があります。なお、自社のSDGs関連活動など、会社資料や社内報といったものに使う場合は、許可を取る必要はありません。詳しくは次のウェブサイトをご確認ください。
■SDGsのポスター・ロゴ・アイコンおよびガイドライン■
また、多くの自治体ではSDGs宣言を募集して、情報提供やPRなどを支援しています。支援制度を利用したい方は、各自治体のウェブサイトをご確認ください。
以上(2025年6月更新)
pj80163
画像:blacksalmon-Adobe Stock
とくぎんサクセスクラブ 令和7年度 海外現地セミナー【米国テキサス州経済・産業視察】

令和7年度 海外現地セミナーの開催&詳細が決定しました!
今年はテキサス発の宇宙とビジネスの最前線を体感する内容になっております!
旅程や内容の詳細などは、以下のPDFからご覧ください。
お申し込みは、以下のフォームからお願いいたします。
【開催概要】
- 旅行期間 2025年10月6日(月)~12日(日)
- 参加人数 20名 ※先着順
- 参加費用 お一人様 1,220,000円
- 申し込み締め切り 2025年7月18日(金)
※参加者数が変動した場合、ご旅行代金を変更させていただく場合があります
※ビジネスクラス追加料金お一人様1,200,000円
※2名部屋ご利用の場合、お一人様80,000円引きとなります
問合せ先
とくぎんサクセスクラブ事務局(担当:泉)
088-656-1125
以上(2025年6月作成)