2024年度版 個人事業主201人に聞いた「Web口座開設に関する調査」

2024年5月、りそなCollaborare事務局では、個人事業主201人に、法人向けのWeb口座開設に関するアンケートを行いました。

このアンケートでは、個人事業主に対してWeb口座開設(法人口座)をしたことがあるかどうか、Web口座開設をした理由、Web口座開設をしてみての感想などを確認しました。それによると、Web口座開設をしたと回答した個人事業主は約30%です。

一方、Web口座開設をしたものの、「金融機関のサポートが手薄だと感じたから」「ファイルの添付方法が分からないから」などの理由で「意外と手間がかかる」「使い勝手がよくない」と感じた人もいるようです。

今後、個人事業主の方が口座開設の手続きをする上で、ご参考になりましたら幸いです。

調査概要

  • 調査時期:2024年5月8日〜5月15日
  • 調査方法:インターネットリサーチ
  • 調査対象:個人事業主

1 回答した個人事業主の年代

今回、年代についても質問してみました。アンケートに答えた個人事業主の方の年代として一番多いのが60代(36.8%)、次いで50代(29.4%)、三番目に多いのが70代(22.4%)と、50代~70代の個人事業主が約89%を占めています。

一方、20代の個人事業主の回答は0.5%、30代は1.5%、40代は9.5%という結果です。Web口座開設はデジタル分野ですので、年代によってはアンケート結果も変わってくるかもしれません。次章から今回の調査結果を見ていく上で、年代もご参考になりましたら幸いです。

アンケートに答えた経営者の年代

2 Web口座開設をした経験

Web口座開設をした経験については、「したことがある」個人事業主は26.4%、「したことがない」個人事業主は72.6%でした。

Web口座開設をした経験

3 Web口座開設をした理由

Web口座開設をした個人事業主にその理由を聞いたところ、「便利そうだから」の71.7%が最も高く、「スピードが速そうだから」の50.9%が続きました。

Web口座開設をした理由

4 Web口座開設をした際に使用したデバイス

Web口座開設をした際に使用したデバイスについては、「自宅(個人)のパソコン」の56.6%が最も高くなっています。次いで「会社のパソコン」が47.2%、「スマートフォン」が7.5%という結果でした。

Web口座開設をした際に使用したデバイス

5 Web口座開設をしてみての感想

Web口座開設をした個人事業主の感想としては、「便利」の62.3%が最も高く、「スピードが速い」の45.3%が続きます。

一方、「意外と手間がかかる」と回答した個人事業主は17.0%、「使い勝手が良くない」と答えた個人事業主は9.4%となっています。

Web口座開設をしてみての感想

また、その他の回答として「振り込み手数料が安い」という感想も挙げられました。

6 「意外と手間がかかる」「使い勝手が良くない」と感じた理由(複数回答)

設問5(Web口座開設をしてみての感想)において「意外と手間がかかる」「使い勝手が良くない」と答えた個人事業主のうち、その理由として一番多く挙げられた意見は「金融機関のサポートが手薄だと感じたから」で46.2%、次点で「ファイルの添付方法が分からないから」、「郵送があって面倒だから」の38.5%が並びます。

「意外と手間がかかる」「使い勝手が良くない」と感じた理由

その他の意見には、「画面構成が分かりづらい」「ファイルが多く手間」などが挙げられました。

7 Web口座開設について、改善してほしい点

Web口座開設について、改善してほしい点の要望を聞いたところ、次のような回答がありました(表現については、りそなcollaborare事務局で一部変更している部分があります)。

  • 確認書類のアップロードなどの手間がかからないようにしてほしい
  • マイナカードがあればすぐに開設できるようになれば良いと思う
  • 最初の手続きが面倒
  • 全てネットで完結するようになってほしい
  • あらかじめ必要な書類を教えてほしい
  • 顔認証などによって手続きを簡略化してほしい
  • 操作をもっと簡単にしてほしい
  • 開設時の確認用電話番号が、携帯のものしか使えなかったのが残念。加入回線からIP電話に切り替えているが、銀行からの2段階認証が受けられず、携帯しか、それ用の登録ができない。個人用と仕事用との峻別がつかず、この点が不自由
  • 担当者の知識不足を解決してほしい
  • セキュリティを保ちつつログインが簡単になってほしい
  • 手数料が逐一かかるのが面倒なので改善してほしい

(注)アンケートを基に抜粋しました。

8 Web口座開設をしなかった理由

Web口座開設をしなかった理由については、「対面のほうが信頼できると思うから」の22.6%が最も高く、次点で「Web口座開設があることを知らなかったから」の21.2%、「なんとなく不安だから」の15.8%が続きます。21.2%もの人が「知らなかったから」と挙げているので、知っていればWeb口座開設したのかもしれません。

Web口座開設をしなかった理由

また、その他の回答としては

  • 法人口座を必要としていないから
  • 開設当時はWebだけでは完結できなかったから
  • 法人ではないから

などの意見がありました。

9 Web口座開設、どうしたら活用できる?

「Web口座開設がどうなれば(或いはご自身の状況がどう変わったら)活用すると思いますか?」という設問に対しては、以下のような意見がありました(表現については、りそなcollaborare事務局で一部変更している部分があります)。

  • どこかで開設のアドバイスなどをしてくれれば活用できると思う
  • 法人口座が必要になったら活用できると思う
  • 懇意にしている担当者がいるので、そちらにお願いしがちである
  • 他社で活用するところが多くなったり、指定口座となったりした場合は活用したい
  • 余裕が出たら活用を考えたい
  • 法人認証が簡素化、あるいはなくなれば活用できると思う
  • 口座維持費や手数料が格安になれば活用したいと思う
  • 安全性が向上すれば活用できると思う
  • 売上が大きく上がったら考えるかもしれない
  • 事業が個人相手なので、今のところ必要ない
  • 口座開設時には懇意にしていた担当者がいたが、異動になってしまったので今後はWebも利用すると思われる
  • 高齢なので自身では開設しない。息子に事業を継承させたら活用する予定である
  • 簡単に開設できるメリットがあれば活用したい
  • 法人口座が必要となる程度の取引が発生したら
  • 法人口座を問題なく作れるようになるなら作ってみたいが、現状にも特に不満はないので、今使っている個人口座の条件がよほど悪くなったら考える
  • 端末を機種変更した際のデータ移行などをしなくて済むようになったら活用したい
  • すべての企業の取引や決済がネット上で完結できなければ現状は変わらない

(注)アンケートを基に抜粋しました。

10 Web口座に期待することは?

「Web口座に期待することはなんでしょうか?」という設問に対しては、以下のような意見がありました(表現については、りそなcollaborare事務局で一部変更している部分があります)。

  • 銀行にいちいち行かなくて済めば、時間の短縮になると思う
  • セキュリティの強化
  • 特典でポイント等のメリットがあればいいと思う
  • 口座開設に限れば一生に一度ぐらいなので分かりやすいこと、間違えたら戻ってやり直せること、始める前に何が必要か明確なこと、全体でどれぐらい時間がかかるか分かることが重要
  • 音声だけで手続きできるようになれば良いと思う
  • スピーディーに口座開設でき、手続きが簡単になれば良いと思う
  • 各種の手数料が安くなれば良いと思う
  • 口座維持費や手数料が安くなれば良いと思う
  • 口座開設で銀行などに出向く必要がなくなれば良いと思う
  • マイナカードとの連携を積極的にすすめ、手続きごとに同じような情報を入力する手間をなくしてほしい
  • 海外送金の引き出しが手数料最安でできれば嬉しい
  • 24時間どこでもアクセスできるようになれば良いと思う
  • セキュリティを万全にしてほしい

(注)アンケートを基に抜粋しました。

11 Web口座開設と併せて金融機関に相談したいことは?

「Web口座開設と併せて金融機関に相談したいことはありますか?」という設問の結果、「相談したいことがある」は11.4%、「相談したいことはない」は85.1%、「答えたくない・分からない」は3.5%という結果になりました。

Web口座開設と併せて金融機関に相談したいこと

12 Web口座開設をする際に金融機関に相談したい内容

設問11「Web口座開設と併せて金融機関に相談したいことはあるか?」で「相談したいことがある」と回答した方の詳細です(表現については、りそなcollaborare事務局で一部変更している部分があります)。

  • 融資について相談したい
  • NISAについて相談したい
  • 通帳の発行について相談したい
  • 低金利の借り入れについて相談したい
  • Web口座開設で何か有利な点があるかどうか相談したい
  • IP電話の扱いについて。IP電話側の取説には、このような場合の対応法が記載してあるけれど、その手続きをしても、銀行側の設定が、そもそもIP電話を認めず、となっていて、余計な手間と時間を取られた。結局、窓口で相談して、IPは不可、が判明した
  • 資金運用について
  • 税金について
  • 担当のITレベルを上げるように相談したい
  • 資産の有効活用について相談したい

(注)アンケートを基に抜粋しました。

13 Web口座開設と併せて「あればいいな」と思うサービス

「Web口座開設と併せて“あればいいな”と思うサービスがあれば教えて下さい」という設問に対しては、以下のような意見がありました(表現については、りそなcollaborare事務局で一部変更している部分があります)。

  • 手数料の値下げ
  • 売上に対するキャッシュカード利用料の優遇
  • 利用額に応じたポイント付与
  • 融資などの話があると嬉しい
  • 無期限のお得なキャンペーン
  • 返済計画の支援
  • 金利アップキャンペーン
  • 事業計画の書き方指南や簡単な経理事務サービス
  • 資産管理ツール
  • 他の口座から引き落としになっている支払いを新たにWeb開設した口座から引き落としができるように一括して移行できるサービス
  • 個人や小規模事業者への決済手段および回収と税処理の自動化
  • 資産運用のアドバイス
  • 金利等の優先事項のサービス

(注)アンケートを基に抜粋しました。

14 最も利用する金融機関

アンケートに答えた個人事業主の方が最も利用している金融機関についての設問です。

利用者が一番多いのは都市銀行で32.3%、次点が地方銀行で26.4%、その次に使用されているのは信用金庫で15.4%という結果でした。

また、今回新たに設置された項目「ネット銀行」は全体の約12.4%を占めています。個人事業主の間でも、ネットでの金銭管理を活用しはじめていることが分かります。

最も利用する金融機関

15 メインバンク/サブバンクを決めるポイント

メインバンク/サブバンクを決めるポイントについての設問です。一番多い理由は「ATM、支店が近くにある」で50.2%、次いで「手数料の安さ」が15.9%、続いて「安心感・信頼感がある」の10.4%という結果になりました。

メインバンク/サブバンクを決めるポイント

その他の回答としては、「担当者がしっかりしているか」「利便性」「過去に支店が近くにあった」「従前から取引を継続しているから」「長年利用しているから」「利便性」などの意見がありました。

16 銀行や信用金庫など以外で持っている口座

 

最後に、銀行や信用金庫以外で持っている口座についての設問です。

一番多かったのは「証券会社の口座」の50.2%、次いで「持っていない」の37.8%、電子決済口座を持っている方は12.9%、FXの専用口座を持っている方は8.0%でした。

銀行や信用金庫など以外で持っている口座

なお、経営者・役員編として、「2024年度版_経営者213人に聞いた『Web口座開設調査』」も公開しています。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2024年5月23日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

【電子メールでのお問い合わせ先】
inquiry01@jim.jp

(株式会社日本情報マートが、皆様からのお問い合わせを承ります。なお、株式会社日本情報マートの会社概要は、ウェブサイト https://www.jim.jp/company/をご覧ください)

ご回答は平日午前10:00~18:00とさせていただいておりますので、ご了承ください。

2024年度版 経営者213人に聞いた「Web口座開設に関する調査」

2024年5月、りそなCollaborare事務局は経営者213人に、法人向けのWeb口座開設に関するアンケートを行いました。

このアンケートでは、Web口座開設(法人口座)をしたことがあるかどうか、Web口座開設をした理由、Web口座開設をしてみての感想などを確認しました。それによると、約40%の経営者が「Web口座開設をしたことがある」と回答しています。

一方、Web口座を開設していなかったとしても、「開設できるならしてみたい」「メガバンクがWeb口座開設をしたら開設する」と回答した人もいて、デジタル化に、ある程度は積極的なことがうかがえます。

今後、経営者の方がWeb口座開設の手続きをする上で、ご参考になりましたら幸いです。

調査概要

  • 調査時期:2024年5月8日〜5月10日
  • 調査方法:インターネットリサーチ
  • 調査対象:経営者・役員

1 回答した経営者の年代

今回、年代についても質問してみました。アンケートに答えた経営者の年代として一番多いのが60代(39.0%)、次いで50代(26.8%)、三番目に多いのが70代(22.5%)と、50代~70代の経営者が約88%を占めています。

一方、20代の経営者の回答は0、30代は3.3%、40代は7.0%と少なくなっています。Web口座開設はデジタル分野ですので、年代によってはアンケート結果も変わってくるかもしれません。次章から今回の調査結果を見ていく上で、年代もご参考になりましたら幸いです。

アンケートに答えた経営者の年代

2 Web口座開設をした経験

Web口座開設をした経験については、「したことがある」経営者は38.0%、「したことがない」経営者は61.5%でした。

Web口座開設をした経験

3 Web口座開設をした理由

Web口座開設をした経営者にその理由を聞いたところ、「便利そうだから」の79.0%が最も高く、「スピードが速そうだから」の51.9%が続きました。

Web口座開設をした理由

また、その他の回答としては

  • PayPayの売上金のため
  • ポイントをためるため
  • ECサイトのため

などの意見がありました。

4 Web口座開設をした際に使用したデバイス

Web口座開設をした際に使用したデバイスについては、「会社のパソコン」の69.1%が最も高くなっています。次いで「自宅(個人)のパソコン」が37.0%、「スマートフォン」が17.3%という結果でした。

Web口座開設をした際に使用したデバイス

5 Web口座開設をしてみての感想

Web口座開設をした経営者の感想としては、「便利」の69.1%が最も高く、「スピードが速い」の48.1%が続きます。

一方、「意外と手間がかかる」と回答した経営者は33.3%、「使い勝手が良くない」と答えた経営者は6.2%となっています。

Web口座開設をしてみての感想

また、その他の回答として「社内でできる」という感想も挙げられました。

6 「意外と手間がかかる」「使い勝手が良くない」と感じた理由(複数回答)

設問5(Web口座開設をしてみての感想)において「意外と手間がかかる」「使い勝手が良くない」と答えた経営者のうち、その理由として一番多く挙げられた意見は「郵送があって面倒だから」で15件(50.0%)、次点で「金融機関のサポートが手薄だと感じたから」の12件(40.0%)、そして「申込書の記入方法が分かりにくいから」の8件(26.7%)が続きます。

「不明点などをどこに問い合わせていいか分からない」「問い合わせた際のリアクションが良くなかった」「ファイルの添付方法が分かりにくい」などの意見もありました。

「意外と手間がかかる」「使い勝手が良くない」と感じた理由

7 Web口座開設について、改善してほしい点

Web口座開設について、改善してほしい点を聞いたところ、次のような回答がありました(表現については、りそなcollaborare事務局で一部変更している部分があります)。

  • セキュリティ対策のためか、複雑になりすぎている
  • アプリで簡単に使えたら良いのに、と思う
  • もっと単純明快なシステムが良い
  • 利用履歴が見づらい
  • サイトの使い勝手があまり良くない
  • 個人口座のように簡単に作れるようにしてほしい
  • 必要な書類の種類が多すぎる
  • 証明書の提示がもっと簡単になればいい
  • 暗証などが簡便化すればいいと思う
  • すぐつながるコールセンターが欲しい
  • すべての問い合わせ手段への対応が良くなるように改善してほしい

(注)アンケートを基に抜粋しました。

8 Web口座開設をしなかった理由

Web口座開設をしなかった理由については、「対面のほうが信頼できると思うから」の27.5%が最も高く、次点で「Web口座開設があることを知らなかったから」「なんとなく不安だから」(ともに19.8%)が並びます。「知らなかったから(オレンジ色の横棒)19.8%」は、知っていればWeb口座開設をした「もったいない層」かもしれません。

Web口座開設をしなかった理由

また、その他の回答としては

  • 口座を開設する必要がないから
  • 経理の者が対応できないから
  • 会社と銀行の窓口が近いから
  • 銀行担当者が定期的に会社に来るから

などの理由がありました。

9 Web口座開設、どうしたら活用できる?

「Web口座開設がどうなれば(あるいはご自身の状況がどう変わったら)活用すると思いますか?」という設問に対しては、以下のような回答がありました(表現については、りそなcollaborare事務局で一部変更している部分があります)。

  • もっと便利になれば活用する
  • 新たに口座が必要になれば活用する
  • メインバンクで活用するようになれば開設しようと思う
  • 他社で活用するところが多くなったり、指定口座となったりした場合は活用したい
  • セキュリティ対策が万全であれば活用したい
  • 経理の担当が対応できるようになれば活用したい
  • 銀行の担当営業がこまめに案内してくれれば活用したい
  • 銀行などが近くにない土地に会社が移転したら活用したい
  • ポイントなどの特典が多ければ活用したい
  • Webのほうが優遇されるようになったら活用したい
  • 免許証やマイナンバーカードのみで開設ができるようになれば活用したい
  • (すでにWebで口座を開設している経営者の方から)もっと積極的にWeb口座開設ができることをアピールしたほうが良い
  • 口座開設の際にWeb口座開設の仕組みを知っていれば、或いはサービス自体が開始していたら使用していたと思う
  • 個人用の口座ならともかく、対人抜きで会社の口座を開設するなどありえない

(注)アンケートを基に抜粋しました。

10 Web口座に期待することは?

「Web口座に期待することはなんでしょうか?」という設問に対しては、以下のような意見がありました(表現については、りそなcollaborare事務局で一部変更している部分があります)。

  • 送金手数料を無料にしてほしい
  • 手数料を極力安くしてほしい
  • 手数料のシステムを明確にしてほしい
  • 海外取引先へ送金する際の手続きが簡便化したり、早くなったりするといいと思う
  • 時間にとらわれない取引ができるようになってほしい
  • セキュリティ対策を万全にしてほしい
  • 簡単な手続きで利用可能になってほしい
  • マイナンバーのみで手続きができるようになってほしい
  • 入金や振り込みが即座に分かるようになればいいと思う
  • パスワードをもっと短いものにしてほしい
  • 会計システムと連携できるようになってほしい
  • その日に開設してその日に使えるようになれば良いと思う

(注)アンケートを基に抜粋しました。

11 Web口座開設と併せて金融機関に相談したいことは?

「Web口座開設と併せて金融機関に相談したいことはありますか?」という設問の結果、「相談したいことがある」は20.2%、「相談したいことはない」は75.6%、「答えたくない・分からない」は4.2%という結果になりました。

Web口座開設と併せて金融機関に相談したいこと

12 Web口座開設をする際に金融機関に相談したい内容

設問11「口座開設と併せて金融機関に相談したいことはあるか?」で「相談したいことがある」と回答した方の回答の詳細です(表現については、りそなcollaborare事務局で一部変更している部分があります)。

  • (Web口座開設で)分からない部分があるのでサポートやレクチャーをしてほしい
  • 手数料について相談したい
  • 融資について相談したい
  • (Web口座の)お得な利用法について相談したい
  • トークンについて相談したい
  • トラブルがあった際の対応について相談したい
  • 迷惑メールへの対応について相談したい
  • ローン金利について相談したい
  • 経営支援について相談したい
  • 内部保留について相談したい
  • 手形対応について相談したい
  • 給与について相談したい
  • 資金の運用について相談したい
  • 助成金、低利無担保融資について相談したい
  • EC売上の入金口座について相談したい

(注)アンケートを基に抜粋しました。

13 Web口座開設と併せて「あればいいな」と思うサービス

 

「Web口座開設と併せて“あればいいな”と思うサービスがあれば教えて下さい」という設問に対しては、以下のような意見がありました。(表現については、りそなcollaborare事務局で一部変更している部分があります。)

  • ポイントがたまるサービス
  • ポイント間の連携
  • 最新の金融情報の案内
  • 借り換えなどの相談、経営者保険等の案内
  • 手数料の引き下げ
  • 手数料無料
  • 返済の月別明細書作成サービス
  • 借り入れや返済の相談時に、必要書類を事前送付するサービス
  • Webショップ等の連携方法の案内
  • 融資や借り入れの支援

(注)アンケートを基に抜粋しました。

14 最も利用する金融機関

アンケートに答えた経営者が最も利用している金融機関についての設問です。

利用者が一番多いのは都市銀行で35.7%、次点が地方銀行で31.5%、その次に使用されているのは信用金庫で15.5%という結果でした。

「ネット銀行」は2024年度版ではじめて設置した項目ですが、全体の約1割程度の人がメインバンクにしているという結果が出ています。経営者の間でもネットでの金銭管理が浸透しはじめているようです。

最も利用する金融機関

15 メインバンク/サブバンクを決めるポイント

メインバンク/サブバンクを決めるポイントについての設問です。一番多い理由は「ATM、支店が近くにある」で43.2%、次いで「安心感・信頼感がある」が20.7%、「手数料の安さ」「対応がスピーディー・丁寧」はともに7.5%という結果になりました。

メインバンク/サブバンクを決めるポイント

その他の回答として、「現在までの取引実績」を重要視しているという意見もありました。

16 銀行や信用金庫など以外で持っている口座

 

最後に、銀行や信用金庫以外で持っている口座についての設問です。

一番多かったのは「持っていない」の45.5%、次いで「証券会社の口座」の38.5%、電子決済口座を持っている方は16.9%、FXの専用口座を持っている方は3.3%でした。

銀行や信用金庫など以外で持っている口座

なお、個人事業主編として、「2024年度版_個人事業主201人に聞いた『Web口座開設調査』」も公開しています。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2024年5月23日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

【電子メールでのお問い合わせ先】
inquiry01@jim.jp

(株式会社日本情報マートが、皆様からのお問い合わせを承ります。なお、株式会社日本情報マートの会社概要は、ウェブサイト https://www.jim.jp/company/をご覧ください)

ご回答は平日午前10:00~18:00とさせていただいておりますので、ご了承ください。

【自社を強くする管理会計(2)】まずは月次決算をフル活用

書いてあること

  • 主な読者:管理会計を取り入れたい中小企業の経営者、経理担当者
  • 課題:管理会計を自社にどのように取り入れればいいのか分からない、または一度は取り入れたものの継続できない
  • 解決策:月次決算を活用し、まずは損益計算書に占める割合の大きい費用トップ3の内訳を押さえる

1 月次決算で出てきた利益が、経営者の肌感覚と一致しないのは要注意

皆さんの会社でも、月次決算を行っていると思います。月次決算を通じて、経理が月次の業績を集計し経営者に報告しているでしょう。比較的規模の小さな会社の場合には、外部の顧問税理士にお願いして毎月集計してもらっているかもしれません。

この月次決算の結果出てきた利益の金額は、経営者の肌感覚と一致していますか。もし、経営者が数字を見て首をかしげたり、質問をしてきたりするのであれば、経営者の頭の中にある数字と整合しないのかもしれません。そうであれば、管理会計の第一歩として、月次決算の結果である利益が、経営者にとって理解できるように「翻訳」することから始めましょう。

「翻訳」というのは、なぜ利益がその数字になっているのかが腑に落ちるよう、内訳を用意することだとまずは捉えてみてください。例えば、売上が思ったよりも少ないのであれば、製品種類別の売上の内訳をつくってみます。そうすることで、どの製品種類がその原因になっているのかを知ることができます。

比較的規模の小さな会社であれば、経営者も内訳をみることで「ああ、あれか」とすぐに思い当たるでしょう。少し会社の規模が大きくなってくると、経営者がそもそも詳細を把握することが難しくなります。そのため、月次決算の際に、管理会計の観点から内訳を作成することで、全体像を知ってもらう情報提供を達成できます。

2 月次決算の「見える化」から管理会計を始めよう

つまり、月次決算に管理会計を取り入れることで、「見える化」するのです。

よく会社の「業績」という言葉を聞きますが、ざっくりいえば、利益のことを意味しています。経営者は業績を自分の頭で理解し、自分の言葉で関係者に説明できる必要があります。とすると、すべての情報が利益に結びつけられることが大事です。

つまり、利益にどう影響しているのかということは、経営者にとってとても重要なのです。しかし、利益を含む会計情報を苦手とする(もしくは苦手意識を持つ)経営者はたくさんいます。そこで、同じく会計の一種である管理会計を行う上でも、ぜひ利益とのつながりを大事にするといいのです。

もっといえば、利益をより良く説明できるように管理会計を組み立てるのもいいでしょう。利益は売上や費用から計算されるわけですから、例えば、自社の製品種類別売上や、原価の内訳など利益に与える影響が大きい項目について内訳がとりやすいようにしておきます。

3 月次決算で押さえるべき3つの費用

もう少し具体的に見てみましょう。会社によって、費用の内容はさまざまですが、まずは自社の損益計算書(PL)に占める割合の多い費用トップ3つについて内訳を押さえるようにしてください。例えば、交通費の金額が大きな会社であれば、公共交通機関、タクシー、宿泊費などに分類するのもいいでしょう。もし海外出張が多いのであれば、ぜひ海外交通費を区分しておきましょう。

この分け方には、すべての会社に共通する答えはありません。自分たちのビジネスや業務を踏まえた上で、決めることが重要です。考え方としては、常日ごろ自分の会社で実際に見ている見方で区分するといいのです。

なお、利益の源泉である売上についても、内訳を押さえることはもちろん大事です。それは次回(第3回)詳しくお話ししたいと思います。

4 続けられる方法で

まずは3つの費用だけ、内訳を押さえようと言いました。おそらく「3つだけでいいの?」と思われた方もいると思います。その理由は、「初めから手を広げてしまうと、続かないから」です。

管理会計では、損益計算書(PL)以上に、会社のビジネスに近い数字を多く扱います。しかし、そうした数字を集計するのに十分な仕組みを持っていない企業はたくさんあります。はじめから力を入れて対象範囲を広げてしまうと、続けられずに途中で力尽きてしまうかもしれません。管理会計のデータというのは、ある程度の期間ためて分析・比較することで初めて意味が分かるものです。そのため、まずは対象範囲を広げずに、続けられる範囲に絞って始めると無駄がありません。

この見方は、実は通常の月次決算でも言えます。例えば、損益計算書は、複数期間を並べることで、今月の数字が過去と比べてどうなのかということや、少しずつ変化している様子が分かります。どうしても、前年との比較や予算との比較ばかりがされがちですが、せっかくの数字データは複数期間並べてみる見方を身に付けましょう。ちなみに、このような複数期間が並んだ損益計算書のことは「月次推移」と一般に呼ばれています。

5 見せ方ひとつでも結構変わる

多くの会計システムは月次推移表を自動で出力できるものがほとんどです。しかし、数字があまりに多く記載されているため、少し分かりにくいと感じる経営者もいるかもしれません。そこで、お勧めなのは、グラフにすることです。例えば、過去3年分の月次売上の棒グラフを作成してみましょう。売上であれば、この月が少ないのは〇〇があったからなどと容易に思い付くと思います。グラフにするだけで、目で感覚的に理解しやすくなるため、ビジネス上、起きたことと紐付けしやすくなるのです。

さらに、費用を分析するときに有効なのは、売上高構成比を計算することです。売上高構成比とは、各費用の金額を売上で割ったものをいいます。例えば、広告宣伝費が400万円、売上が2500万円であれば、広告宣伝費の売上高構成比は、400万円÷2500万円=16%と計算されます。費用の中には、売上が増えるとそれに比例して増えるものがあります。そのような費用が増えた理由が、売上が増えたせいなのか、それともそれ以外の理由なのかを区別するのに役立つのがこの売上高構成比なのです。

以上(2024年6月更新)
(執筆 管理会計ラボ株式会社 代表取締役・公認会計士 梅澤真由美)

pj35084
画像:pixabay

新規事業のヒントになるかもしれない「天気ビジネス」の事例

書いてあること

  • 主な読者:新規事業を検討しようとさまざまなビジネス情報を収集している経営者
  • 課題:何か新規事業のヒントとなる切り口が欲しい
  • 解決策:「天気」という身近なテーマを活用したビジネスの事例を参考にしてみる

1 天気はビジネスに活用できる?

気象庁によると、昨年(2023年)は最高気温35度以上が22日もあり、年平均気温が観測史上1位という記録的猛暑の年でした。今年も猛暑が心配されています。また、11月の夏日や各地で発生するゲリラ豪雨など、特にここ1、2年は天気を心配することが多くなってきました。

天気は私たちの生活や仕事に深く関わっていて、さまざまな消費行動、多くの産業に影響します。既に気象データを需要予測やマーケティングなどビジネスに活用している事例は出てきており、2021年2月に発表された「産業界における気象データの利活用状況に関する調査報告書」では、実際に気象データを次のように活用しているという回答がありました。

  • 台風などの気象情報を週間で確認し、物流ルートや物品の供給や社員の通勤等の危機管理に活用している
  • 季節商品に関して、過去の気象データ(温度等)と販売数量を照らし合わせて、本年の販売見込を立て、製造部署に生産数量を依頼している
  • 衣料品の展開等で、向こう1週間、1カ月単位で、平均気温の推移を見ながら展開時期を見極める等で活用している
  • 気温の予想をもとに、複雑な鋳型の造型予定をたてている

気象データの活用以外に、「急に雨が降ったとき傘をレンタルできる」などのように、天気そのものに関連した商品やサービスも登場してきています。こうした天気に関連するビジネス(天気ビジネス)へのニーズは、異常気象などが続く中、今後も高まっていく可能性があります。

さらに言うと、天気は生活に密接しているので、気象データを活用した新商品や新サービスを考えるとき、自分事に感じてアイデアが出やすいかもしれません。気象データに応じて、その日のコーディネートをお勧めするモバイルサービスなどは、とても身近な感じがします。

そこで今回は、新規事業を検討したい経営者向けに、ヒントになりそうな天気ビジネスの事例や、天気ビジネスを自社商品の改善などに活かしている事例をご紹介しますので、参考にしてみてください。

2 天気ビジネスを「提供する」「活用する」事例

1)メインどころは気象データの活用

今のところ、天気ビジネスのメインは「気象データの活用」です。スーパーやアパレルで気象データから需要予測を立てるなどは分かりやすい事例でしょう。一説には、気象データの活用サービスなどは400億~500億円の市場規模があるともいわれています。

日本気象協会では、こうした気象データのビジネス活用を推進しようと、ビジネス向けの天気予報アプリ「biz tenki by 日本気象協会」を提供しています。例えば、気象予測と前年を比較して、小売業の現場で商品発注量をコントロールし、売上増とロス削減につなげるといった活用方法などを推奨しています。

■「biz tenki by 日本気象協会」■
https://weather-jwa.jp/service/biz_tenki

 

●「biz tenki by 日本気象協会」のイメージ例

biz tenki by 日本気象協会

(出所:日本気象協会「Weather X」)

気象庁「気象ビジネス推進コンソーシアム」や日本気象協会「Weather X」のウェブサイトでは、気象データをビジネスに活用している事例もいくつか紹介されているので、参考になるでしょう。

■気象ビジネス推進コンソーシアム「データ活用事例(事例インタビュー、気象データ利用ガイド、利活用事例集)」■
https://www.wxbc.jp/exampleandinterview/
■Weather X「導入事例」■
https://weather-jwa.jp/case

また、気象データ×ビジネス活用を推進する人材として注目されているのが、「気象データアナリスト」です。気象庁によると、気象データアナリストとは、気象データとデータ分析の知識を両方持っており、気象データ×ビジネスデータを分析・活用できる人材です。

気象庁は気象データアナリスト育成講座の認定も行っていますので、今後、天気ビジネスを実現する場合は、経営者自ら気象データアナリスト育成講座を受けてみる、もしくは社員に講座を受けてもらってもいいかもしれません。

■気象庁「気象データアナリスト育成講座」の認定制度について■
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/shinsei/wda/index.html

 

●気象庁「気象データアナリストとは」

気象データアナリストとは

(出所:気象庁「『気象データアナリスト育成講座』の認定制度について」)

こうした気象データの活用や、天気予報、天気の変化を取り入れた商品などは、新規事業のヒントになるかもしれません。以下でいくつか事例をご紹介します。

2)新たな商品を自社で製造・販売する事例

1.AIを搭載した洗濯機

大手電気機器メーカーでは、AIを搭載した洗濯機を製造・販売しています。この洗濯機は、電源を入れると、住んでいる地域の天気予報に合わせた最適な洗濯方法を提案してくれます。例えば、午後から雨予報なのであれば、乾燥機能の利用をお勧めしてくれます。

また、AIが天気予報に応じて計算した1週間分の洗濯指数(洗濯物の乾きやすさを指数化したもの)を、スマホで確認することもできます。そのため、洗濯指数をチェックしながら1週間の洗濯の予定が立てられます。

2.近隣住民に浸水を知らせるシステム

各種センサーなどを受託製造するメーカーでは、冠水しやすい道路や住宅近くの水路に設置できる、浸水を知らせるセンサーを製造・販売しています。浸水が発生すると、近隣住民などにLINEで通知がいく仕組みです。このLINEメッセージに添付されるURLを開くと、浸水している地点が一目で分かるようになっています。このセンサーは、自治体向けに販売されているということです。

3.スピーディーに膨らむ土のう

合成樹脂繊維を用いた商品の開発・販売や産業機械を製造・販売する会社では、大雨や洪水時に必要となる土のうが、水に浸してもみ込むだけで完成する「ウォーターバスター」を製造・販売しています。大雨や洪水時に使用する一般的な土のうは土を補充して使用しますが、ウォーターバスターは水に浸すだけで土のうになるため、土のない都心部などでも簡単に災害対策が可能です。

3)新たなサービスを自社で開発・提供する事例

1.気候変動からリスクを分析するサービス

民間の気象情報会社では、気候変動が企業や自治体に与える影響を分析するサービスを提供しています。気候変動により企業が被るリスクや財務影響の分析などが可能です。気候変動による浸水リスクや操業停止リスクなどを拠点ごとに分析し、企業のBCP(事業継続計画)作成に貢献しています。また、企業のみならず自治体でも利用できるサービスです。

2.建設現場専用の気象対策システム

気象コンテンツを提供する会社では、建設現場専用の気象対策システムを運営しています。ピンポイントで建設現場の豪雨予測や最大風速予測などを出すことができ、大雨や強風の予測が作業中止基準を超えると、アラートメールが現場監督や現場作業員に自動で送信されます。

管理画面には工事現場名が入っているため、現場監督はスマホ画面を撮っておくことで、作業を中止したという記録を残すことが可能です。

3.天気に合わせたコーディネートが分かるアプリ

メディア事業や広告事業などを行っている会社では、その日の天気や気温に合ったファッションが分かるアプリを運営しています。「フェミニン系」「カジュアル系」「オフィス系」「モード系」の4種類から洋服のタイプを選べば、その日に合ったコーディネートを紹介してくれます。気に入ったアイテムがあれば、すぐに購入することも可能で、女性に人気のアプリとなっているようです。

4)自社商品やサービスの改善などに気象データを活かしている事例

1.需要予測サービスによるスーパーの加工量調整

スーパーを運営する会社では、日本気象協会が提供する商品需要予測サービスを利用して、総菜や刺身の加工量の調整をしています。天気予報によって商品の需要を予測することで無駄な加工を避けられ、廃棄食材の削減が可能です。

2.気象データを活かしたスマート農業

九条ねぎの栽培に特化した農業法人では、民間の気象情報会社によるIoTセンサーを畑に設置して、九条ねぎの栽培管理を行っています。

このIoTセンサーは、1分ごとの風速や風向、雨量、気温、湿度などを観測できるため、「畑の風速が〇メートルを超えたら畑の様子を確認しにいく」「畑の気温が〇度以下になったら葉面散布をする」などのように活用しています。

3.気象データを活かしたキャンプ場運営

キャンプ場を運営する会社でも、民間の気象情報会社によるIoTセンサーをキャンプ場に設置しています。キャンプ場は、たき火の火の粉が風に舞ってテントに穴を開けたり、周囲の草に燃え移ったりするリスクがあるため、IoTセンサーで計測した風速や風向を基準にして利用者に注意喚起をしたり、キャンプ場を閉鎖する決断をしたりしています。IoTセンサーの利用により、感覚的ではなく数値に基づいた客観的な判断が可能です。

4.訪れる人の安全確保に気象情報を使っている公園

公園の中には、雷・気象情報システムを導入して、来園者の安全確保を行っているところがあります。園内から一定圏内で落雷があった場合はシステムが警報音を発信し、同時に来園者に注意喚起を促す園内放送が流れる仕組みです。また、さらに近い範囲で落雷があった場合は、野外の施設使用を中止することとなっていて、来園者の安全確保に努めています。

以上、天気ビジネスの事例などをいくつかご紹介しました。こうした天気ビジネスのアイデアの根本は、新しい商品やサービス、あるいは既存の自社の強みを新規ビジネスに活かすヒントになるかもしれません。社員とも共有してみるとよいでしょう。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2024年5月29日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

【電子メールでのお問い合わせ先】
inquiry01@jim.jp

(株式会社日本情報マートが、皆様からのお問い合わせを承ります。なお、株式会社日本情報マートの会社概要は、ウェブサイト
https://www.jim.jp/company/をご覧ください)

ご回答は平日午前10:00~18:00とさせていただいておりますので、ご了承ください。

雨天時の運転中の歩行者見落としを防ごう(2024/6号)【交通安全ニュース】

活用する機会の例

  • 月次や週次などの定例ミーティング時の事故防止勉強会
  • 毎日の朝礼や点呼の際の安全運転意識向上のためのスピーチ
  • マイカー通勤者、新入社員、事故発生者への安全運転指導 など

雨の降る中で運転する機会が増える梅雨の季節。車の窓やサイドミラーに雨粒が付着したり、窓が曇ったりすると周囲の状況が見えにくくなることがあります。そのような中、歩行者の存在を見落としてしまうと、重大な事故を招くリスクが高まります。

今月は、視界が悪くなる雨天時の運転において、歩行者の見落としを防ぐにはどうすればよいかを考えます。

雨天時の運転

1.雨天時の事故発生傾向とその要因

統計によると、晴天時と雨天時の死亡事故件数を類型別割合で比べた場合、雨天時のほうが「人対車両」の割合が大きくなっていることがわかります。

事故類型別死亡事故割合

出典:公益財団法人交通事故総合分析センター令和5年版統計データより当社作成

なぜ雨天時に「人対車両」の事故が発生しやすくなるのでしょうか。車両の走行環境と歩行者の行動特性に分けて考えると、それぞれ以下のような要因が挙げられます。

【車両の走行環境】

  • 路面が濡れてスリップする
  • 視界不良になる
  • 特に豪雨時などは雨音で周りの音が遮られる

【歩行者の行動特性】

  • 傘で視界が遮られ、車の接近に気づきにくくなる
  • 水たまりを避けたり、傘を広げた歩行者どうしがすれ違ったりするとき、車道にはみ出ることがある

雨天時の事故発生

歩行者の行動が不安全になるのであれば、車両の運転者は歩行者をより確実に認知しなければなりません。次項では雨天時の視界不良と歩行者の見落としについて掘り下げて考えます。

2.雨天時の視界不良と歩行者の見落としについて

雨天時の直接的な視界不良要因として、フロントガラスやサイドミラーなどに付着した雨粒が挙げられます。

また眼の特性により、雨天時は以下のような見え方にも影響します。

雨天時の視界不良

  • 暗い色の傘やレインコートが目立たなくなる(晴天時より暗いため、眼の色を感じる細胞の働きが低下し、色の違いを識別しづらくします)
  • 暗い環境ではピントが合わせにくくなる
  • 夜間時、ライトの光や濡れた路面による光の反射のまぶしさが視界不良につながる

これら悪条件が重なると歩行者を見落とすリスクが高まることになります。

3.雨天時の歩行者見落としを防ぐには

【良好な視界を確保する】

運行前にワイパーゴムの切れ・ひび割れを点検し、デフロスタやデフォッガ(曇り除去装置)の正常動作も確認しましょう。窓についた油膜やミラーの水垢も除去しておくとよいでしょう。

【眼の特性を理解する】

周囲が暗いときは歩行者が見えにくくなります。よく見えるようにライトを点灯しましょう。歩行者からみても、ライト点灯により車の接近に気付きやすくなります。

ライト点灯なし

ライト点灯あり

写真資料:Ⓒ企業開発センター 安全運転フォトニュース2018年6月号より

【雨の日の歩行者の行動に注意する】

雨天時に不安全になりがちな歩行者の行動に留意し、危険予測運転を心がけましょう。

以上(2024年6月)

sj09114
画像:amanaimages

【自社を強くする管理会計(1)】管理会計は気負わずに

書いてあること

  • 主な読者:管理会計を取り入れたい中小企業の経営者、経理担当者
  • 課題:自社にとって効果的な理論や手法が分からない
  • 解決策:管理会計で大事なのは、経営者が知りたいことを数字で表現すること

1 管理会計とは一体何か?

管理会計には、予算管理や部門別損益といったイメージがあります。管理会計の勉強をしたことがある方は、CVP分析(Cost-Volume-Profit Analysis)やABC(Activity Based Costing)についても知っているかもしれません。しかし、これらの理論はよく知られていますが、会社の中では実際に目にすることが少ないものです。

そこで、本連載では、実務で本当に「使われている」と同時に「使える」(=役に立つ)管理会計のやり方を、特に中小・中堅企業を想定しながら解説していきます。

管理会計の定義を正確に覚えたり、管理会計の全体像を網羅的に説明したりはしません。なぜなら、皆さんのゴールは、自社に管理会計を取り入れることですので、それに直接役に立つ方法を中心に紹介します。

2 経営者が欲しい数字を届けよう

管理会計で最も大事なことは、経営者が欲しい数字を届けることです。分かりやすくいえば、管理会計というのは「経営者のための数字の見える化」です。管理会計が成功しているかどうかは、数字の提供状況について、自社の経営者が満足しているかどうかで判断できます。

経営者は日々多くの意思決定を行います。その際、判断を誤らないために役に立つのが、状況を客観的に教えてくれる数字です。

どのような数字を出したらいいかは、経営者や現場のトップがその答えを持っています。例えば製造業においては、業績不振の典型的な原因に「稼働率が低いライン」があります。そして、多くの場合、経営者や製造部門のトップはそのことにすでに気付いているものです。このとき、稼働率をラインごとに集計してみたり、業績が良かった過去も含めて5年間の稼働率の推移をグラフにしてみたりするといいでしょう。そうすることで、肌感覚だけに頼らず、正しく状況を把握することが可能になります。

例えば、プロ経営者として有名な松本晃さんがカルビーの立て直しを行ったときに、稼働率に注目し、徹底して改善に取り組んだというのは有名な話です。何に取り組んだら最も効果が高いのかを数字を使って検討する。これも立派な管理会計の取り組みの1つです。

3 正しさ以上に、スピードが大事

経営者に数字を提供するときに、大事なのはスピードです。前述のように、経営者が数字を欲しがるのは、これからのことを考えるのに使いたいからです。とすると、必要な数字をタイムリーに届けることが重要です。

もしあなたが経理畑で、経験も長いとすると、スピード以上に、正しさが気になるかもしれません。通常の経理では伝票を一枚一枚円単位で切るため、正しさが大事というのは当然の感覚です。しかし、管理会計の情報の使い手は、経営者です。多くの場合、1円単位はもちろん、会社の規模にもよりますが、数万円であっても経営者の意思決定においては誤差の範囲ということもあり得ます。正しさにこだわって、経営者が必要とするタイミングに数字が出せないとすれば、その方が問題なのです。

ぜひ経営者にとって、どのくらいの桁までは許容できるのか、そしていつまでに数字が欲しいのかを明確に把握しておきましょう。

4 予算管理から始めてはいけない

冒頭にも挙げた予算管理は、管理会計の代表例です。予算管理は、中小企業の管理会計で最も普及しているものだと思います。しかし、皆さんの会社が現在予算管理を行っていないのであれば、予算管理から管理会計の取り組みを始める必要はありません。

予算管理とは、年度初めに目標となる予算を作り、その通りに実績が推移するかを月次決算の都度確認していく手法のことをいいます。2~3カ月をかけて予算を作るという会社も多くあり、問題点の1つ目はまさにそこです。予算を作るのにあまりに時間がかかりすぎるのです。また、予算を作るには、会社全体の協力は必須であり、必要とする情報も膨大です。予算作りは、あまりに大がかりな取り組みといえます。

その結果、多くの会社では、年度初めの予算作りに疲弊してしまい、その後の進捗管理がおざなりになっている光景を見ます。しかし、これでは本末転倒です。予算という目標を立てるからには、本来達成に向けて期間中に頑張らなくては意味がないのです。

このような現状を踏まえると、時間も労力も多大に必要とする予算管理は、必ずしも取り組むべき管理会計とは言えません。むしろ、予算管理は、管理会計にある程度習熟した会社にとってこそ、効果的な管理会計の最高峰なのです。

もし、自社が予算管理をやっていない、またはうまくいっていない場合には、予算管理にとらわれずに、数字のPDCAを小さく回すことから始めてみてください。その題材は何でも構いませんので、前述の通り経営者が見たい数字から始めるといいでしょう。

予算管理もそうですが、世の中で管理会計として紹介されている取り組み全てを自社に取り入れる必要はありません。それよりは、経営者や部門のトップの声に耳を傾け、ヒントを得てください。それこそが、自社に合ったものであり、効果が期待できるものといえます。

5 「天気予報」のイメージを忘れない

管理会計を、皆さんのなじみのあるものに例えるなら、天気予報といえます。天気予報を皆さんが見るのは、これからの天気を知ることで、必要な準備をし、より快適に過ごすためでしょう。管理会計も同様です。得られた情報をもとに、会社のこれからをより良くできるからこそ、価値があるのです。管理会計は難しそうと気負わずに、経営者の声に耳を傾け、取り組めるところから小さく始めていきましょう。

以上(2024年6月更新)
(執筆 管理会計ラボ株式会社 代表取締役・公認会計士 梅澤真由美)

pj35079
画像:pixabay

定年再雇用で基本給を下げたら違法? 合理的な賃金設計をシミュレート!

書いてあること

  • 主な読者:まもなく定年を迎える社員を嘱託などとして再雇用する予定の経営者
  • 課題:再雇用後の賃金設計で社員とトラブルにならないか不安
  • 解決策:「いくらまでなら減額してよい?」ではなく「この人の仕事の価値はいくら?」という視点を持つ

1 「この人の仕事の価値はいくら?」という視点が大切

日本の会社では、社員の定年退職時に退職金を支払った後、「嘱託」などとして再雇用する「定年再雇用」が広く浸透しています。ただ、定年再雇用は再雇用時に労働契約を締結し直す働き方なので、定年後の労働条件をめぐって会社と社員の間でトラブルが起きるケースが少なくありません。

トラブルになりがちなのは「賃金」です。直近では2023年7月に、定年再雇用で嘱託になった職員の基本給を、正職員の頃の60%未満まで引き下げたことでトラブルが起き、最高裁判決までもつれこんだ事案がありました。詳細は後述しますが、その際、

高裁が「60%を下回るのは違法」と判断したのに対し、最高裁が「単純な額の問題ではなく、基本給の性質や支給目的を精査すべき」として、高裁に判決を差し戻した

ことが話題になりました(最高裁第一小法廷令和5年7月20日判決)。

この判決はいわゆる「同一労働同一賃金」、簡単に言うと「同じ働き方をしている人には、同じ賃金を支払いなさい」というルールを、最高裁が改めて明確に示したものです。「生涯現役社会」ともいわれる時代、定年再雇用はもはや当たり前の働き方になりつつありますが、

会社が再雇用後の賃金を決める際は、「いくらまでなら減額してよい?」ではなく「この人の仕事の価値はいくら?」という視点を持つ

ようにしないとトラブルになりかねません。

そこで、この記事では最高裁判決の内容に触れつつ同一労働同一賃金の基本をおさらいした後に、社員の働き方に応じた再雇用後の賃金設定のシミュレーション(社会保険労務士監修)を紹介します。

「同一労働同一賃金については大体分かっているから大丈夫」という人は、先に第3章(定年前後の働き方と賃金をシミュレートしてみよう)をご確認ください。

2 同一労働同一賃金の視点で、最高裁判決をひもといてみよう

同一労働同一賃金は、パートタイム・有期雇用労働法などを根拠とするルールで、その根幹にあるのは「均等待遇」「均衡待遇」という考え方です。

  • 仕事の内容などが同じなのに、非正規雇用であるという理由だけで正社員よりも低い労働条件にすることはできない(均等待遇)
  • ただし、能力や成果に基づく待遇格差は、合理的なものであれば問題ない(均衡待遇)

具体的には、図表1の3つの考慮要素をもとに判断します。「1.職務の内容」「2.職務の内容・配置の変更範囲」が同じなのに待遇格差を設けることはできません。ですが、「3.その他の事情」に該当する、個人の能力や成果に基づく格差は、合理的なものであれば認められます。

画像1

さて、前述した最高裁判決の事案は、嘱託として再雇用された自動車学校の教習指導員2名が、

定年前後で「1.職務の内容」「2.職務の内容・配置の変更範囲」が同じなのに、再雇用後の基本給が定年前の40%台(月額7~8万円台)まで引き下げられたのは不合理だ

と訴え、これが同一労働同一賃金に違反しないか争われたものです。高裁と最高裁は、それぞれ図表2のように判断しました(基本給以外にも争点はありましたが、ここでは割愛します)。

画像2

同一労働同一賃金の考え方に照らせば、本来「1.職務の内容」「2.職務の内容・配置の変更範囲」が同じなのに基本給を引き下げるのは不合理といえますが、最高裁の判断に基づくと、

能力や貢献度、健康状態、将来的なポテンシャルなどを考慮して、あえて定年前後で支給基準を変えているのなら、「3.その他の事情」に照らして必ずしも不合理とはいえない

と考えることができます。

以上、最高裁判決の内容に触れつつ同一労働同一賃金の基本をおさらいしましたが、そうは言っても、いざ再雇用後の賃金を決めるとなると、「本当にこの賃金設計で大丈夫か?」と不安になってしまう経営者もいるはずです。次章からは、社員の働き方に応じた定年再雇用の賃金設定のシミュレーションを紹介します。

3 定年前後の働き方と賃金をシミュレートしてみよう

冒頭で「この人の仕事の価値はいくら?」という視点で賃金設計をすることが大切とお話ししましたが、当然ながら「何となくこのぐらいの額」というような曖昧な決め方ではトラブルになるので、次のようなことを考慮しながら明確な基準に基づいて額を定める必要があります。

  • 仕事内容や役職は定年前から変わるか
  • 労働時間や、社会保険・雇用保険の適用(労働時間に応じる)は変わるか
  • 責任はどうなるか(仕事のノルマはあるか) など

図表3は、正社員(役職者、転勤あり、1日8時間×週5日勤務、社会保険あり、雇用保険あり、仕事のノルマあり、賞与支給あり)が定年後に再雇用される場合の働き方を、A~Dの4種類にパターン分けしたものです。赤字は、正社員時と働き方が変わる部分です。

画像3

パターンA

能力も意欲も十分で、定年後も会社の戦力となる社員を想定しています。仕事の内容や労働時間に変更はありませんが、定年後なので今まで以上にプライベートも大事にしてほしいという意図から、役職、転勤、残業、ノルマはなしとしています。一方、仕事へのモチベーションはある程度維持したいので、「嘱託用評価制度」により正社員時の最大50%の賞与を支給します。

パターンB

パターンAと同じく能力も意欲も十分ではあるものの、自身の体調や家族の介護などの関係で、フルタイムでの勤務は難しい社員を想定しています。基本的な労働条件はパターンAと同じですが、労働時間(労働日数)を減らしています。

パターンC

能力はそれなりですが、意欲については「定年後なのでゆったり働きたい」というレベルの社員を想定しています。労働時間は1日6時間×週5日、社会保険と雇用保険の適用はありますが、仕事内容は正社員時よりも簡易な業務に変え、賞与の支給はなしとしています。

パターンD

副業や起業など新しいキャリアを模索しており、他の人ほど長く働けない社員を想定しています。労働時間は1日6時間×週4日、雇用保険の適用はありますが、社会保険の適用はなくなります。仕事内容は正社員時よりも簡易な業務に変え、賞与の支給はなしとしています。

これをベースに、パターンA~Dの月例賃金の賃金設計をシミュレートしたものが図表4です。

画像4

図表4の中で押さえておきたい主なポイントは次の通りです。

1.正社員時を100%とした場合の総支給額の比率

パターンB~Dは、賃金の総支給額が正社員時の60%を下回っています。この「60%」というのは前述した最高裁判決の事案で、高裁が「生活保障の観点から看過し難い水準」と判断したパーセンテージでした。ただ、最高裁が判断している通り、賃金は「その性質や支給目的に照らして合理的といえるか」が重要なので、2.以降で紹介するように、まずは再雇用後の賃金支給について、明確な基準があるかどうかを確認しましょう。

なお、賃金が60歳到達時の75%未満に低下する社員については、一定の要件を満たすことで、雇用保険から「高年齢雇用継続給付」が支給されるので、制度を利用できる場合はその旨を社員に伝えておくとよいでしょう(ただし、2025年4月1日から最大支給率が15%から10%に引き下げられるので注意が必要です)。

2.基本給

基本給は、パターンA~Dの労働時間(図表3を参照)をベースにした額になっています。定年前(正社員時)に比べて労働時間が減った分だけ、支給額も減っているので、ある程度合理的な賃金設計といえるでしょう。なお、実際は職務の内容、職務の内容・配置の変更範囲など(図表1を参照)や会社の財務状況など、複数の要因を考慮して決定する必要があります。

3.諸手当

図表4に記載している諸手当の概要は次の通りです。

  • 役職手当:正社員の中から指定された役職者に対して支給
  • 資格手当:職務遂行に特定の資格が必要で、その資格を有している場合に支給
  • 精皆勤手当:欠勤せずに出勤することの奨励として支給
  • 交代勤務手当:交代制勤務がある場合に支給
  • 住宅手当:住宅費の負担を補助するために支給
  • 通勤手当:通勤費の負担を補助するために支給

今回、パターンA~Dの全てのケースで支給しているのは、精皆勤手当と通勤手当です。通勤したり、欠勤せずに出勤したりすることは、働き方の違いには直接関係がないので、再雇用後の社員にも支給すべきものです。

その他の手当については、支給対象としませんでした。役職手当などは役職者にのみ支給するものですし、その他の手当も、再雇用後の働き方が手当の支給要件にマッチしないのであれば支給は不要です。

やや判断が難しいのが住宅手当ですが、今回は「正社員は転勤があるのに対し、再雇用後は転勤がなく、正社員に比べ住宅費の負担が抑えられる」という理由から、支給しない設計にしてみました。

4.賞与

パターンAとBの社員には、前述した通り、賞与が支給されます。これはモチベーション維持のためでもありますし、同一労働同一賃金のルールに照らした際、「仕事内容が正社員時と変わらないのに、賞与は支給しないのは不合理」という考え方ができるためです。

一方、額については前述した通り、正社員時の最大50%としています。これは、パターンAとBがともに、仕事の責任が正社員よりも軽い(ノルマがない)ことを考慮したものです。50%は上限ですので、実際は評価制度に基づき、社員の成果と貢献を公正に評価して支給額を決めることになります。

以上(2024年6月作成)
(監修 ひらの社会保険労務士事務所)

pj00715
画像:VectorMine-Adobe Stock

【事業承継】「財産の承継」は合わせ技。基本的な方法を押さえよう

書いてあること

  • 主な読者:最も有利な方法で後継者に自社株式を集中させたい経営者
  • 課題:さまざまな方法があり、それぞれが専門的でよく分からない……
  • 解決策:財産の承継は合わせ技。後継者や経営者の年齢、経営見通しなどから判断する

1 事業承継で重要となる自社株式の評価

オーナー企業の事業承継では、自社株式の評価額が非常に重要になります。業績好調で利益を積み重ねれば自社株式の評価は上がりますが、事業承継に限っていえば、評価が上がるのは好ましいことばかりではありません。なぜなら、

親族内承継であれば評価額を下げたいですし、M&Aによる第三者への承継であれば評価額を上げたい

からです。実際、親族内承継の場合、後継者に株式の買い取り資金がないこと、譲渡の際の贈与税・相続税が高いということが課題となっています。

画像1

自社株式を後継者に「安く」引き継ぐことが事業承継を成功させるポイントですが、

  • さまざまな方法があり、それぞれ専門的である
  • 専門家や支援機関によって指摘するポイントが違う

といった課題があり、とっつきにくい分野です。そこで、この記事では、親族内承継を中心に財産の承継において、これくらいは知っておきたいというポイントをまとめます。実際に取り組む際は、必ず専門家などにご相談ください。

2 後継者に「3分の2以上」の株式を集中させる

後継者に自社株式を集中させる必要がありますが、具体的な割合を意識していますか? 過半数あれば大丈夫と考えているかもしれませんが、これは「普通決議」ができる水準にとどまります。より安定的な経営をするためには、「特別決議」ができる3分の2以上を後継者に集中させなければなりません。「特別決議」で決められることには「定款の変更や組織再編など」があり、より積極的な経営がしやすくなります。

一方、長く続いている会社ほど株式が分散する傾向があります。そこで、

会社や後継者が自社株式を買い取り、後継者を対象にした新株発行などを通じて、後継者の持株比率を高めること

を検討する必要があるでしょう。

さらに、事業承継をした後の株式分散を防止するために、定款に株式譲渡制限や株式の買い取り請求に関する事項を定めることも検討しましょう。

3 自社株式の評価を引き下げる、引き継ぐ数を減らす

1)自社株式の評価を引き下げる方法

自社株式の評価方法はさまざまです。中小企業の場合、

  • 類似業種比準価額方式:事業内容が類似する上場会社の平均株価を参考に計算する
  • 純資産価額方式:評価時点で資産や負債を時価評価した場合の純資産価額を、自社株式の数で除して計算する
  • 両方を併用

が用いられますが、いずれも純資産価額を引き下げれば自社株式の評価は下がります。純資産価額を引き下げる方法には、

  1. 役員退職慰労金を支払う
  2. 不動産を購入する

などがあります。特に役員退職慰労金は、経営者と後継者が話し合ってしっかりと決めるべきです。経営者は「勇退時にいくら欲しいのか」を明確に告げ、時期を決めて支給すれば自社株式の評価を引き下げられます。とはいえ、いくらでもよいというわけではなく、過大であれば税務上否認される恐れがあります。また、不動産の購入についても相続時の評価などに注意する必要があります。

2)引き継ぐ自社株式の数を減らす方法

全株式を引き継ぐと後継者の負担が重くなります。「3分の2」の株式を後継者に集中させれば、残りの3分の1は別の株主でもよいわけです。それも、

会社の方針に賛成し、長期に保有してくれる安定株主が好ましい

ということであり、ここで検討されるのが「従業員持株会」の設立です。従業員に株式を保有してもらえば、経営の安定と事業承継時の後継者の負担軽減が実現します。

4 「相続」の負担を軽減する

高齢の経営者が親族内承継をする場合、「相続」が事業承継の中心的な話題となります。負担軽減にどのような方法があるのか、ポイントを簡単に紹介します。

1)相続時精算課税:イメージは2500万円+110万円

「相続時精算課税」とは、贈与税の先送りのような制度です。具体的には、生前贈与が2500万円まで贈与税が非課税となり、これを超える部分には一律20%の贈与税がかかります。実際に相続が発生した場合、生前贈与した部分も含めて相続財産を評価し、相続税を計算します(2024年1月1日以降の改正については後述)。

ポイントは、

生前贈与した時点と、相続した時点の財産の価値の違い

です。価値が小さいうちに生前贈与し、価値が大きくなったときに相続が発生すると、生前贈与時の小さい価値により相続財産とされるため、後継者の負担は軽減されることになります。つまり、将来、業績が向上して自社株式の評価が高まると考えるなら、相続時精算課税は有効ということです。

なお、相続時精算課税は後述する「暦年贈与」とは別の仕組みなので、110万円より少ない贈与でも申告が必要であり、ここが面倒な点でもありました。これの制度が改正され、2024年1月1日以降の贈与については、相続時精算課税に110万円の基礎控除の枠が設定されます。この110万円には贈与税も相続税もかからないため(相続財産にも加わりません)、申告も不要となります。

2)暦年贈与:イメージは毎年110万円

「暦年贈与」という制度もあります。これは、毎年110万円までの贈与が非課税となる制度です。非課税はうれしいところですが、毎年110万円までしか非課税枠がなく、10年間にわたって利用しても贈与できるのは1100万円です。経営者が若く、よほど計画的に事業承継を検討していない限り、メリットは小さいかもしれません。また、前述した相続時精算課税と併用することもできません。

なお、暦年贈与も2024年1月1日以降に変わります。これまで、たとえ暦年贈与でも死亡日以前3年間の分については、相続財産に加えることになっています。つまり、相続税がかかるということです。この取り扱いが変わり、

  • 死亡日以前3年間:これまで同様に全て相続財産に加える
  • 死亡日以前4~7年間:100万円を差し引いた額を相続財産に加える

といった取り扱いになります。

3)事業承継税制

事業承継税制とは、

一定の要件を満たし続ければ、承継した自社株式にかかる相続税・贈与税が猶予・免除される制度

です。一定の要件についての詳細は割愛しますが、簡単にいうとある程度の規模を継続しながら会社経営を続け、事業承継のたびにこの制度を使えば、相続税と贈与税が猶予・免除され続けるというものです。

4)持ち株会社(ホールディングス)

厳密には相続と違いますが、事業承継の通過点として持ち株会社(ホールディングス)が設立されることもあります。株式移転などの組織再編の手法を用いるのですが、

持ち株会社に会社の株式を移転。事業会社(元の会社)は、持ち株会社の100%子会社

とします。経営者は持ち株会社の代表、後継者は元の事業会社の代表になり、経営者は持ち株会社の代表の立場から後継者の経営をサポートします。ある意味で「院政」のような体制となりますが、後継者がまだ若い場合など、事業承継前のワンステップとして有効です。

5 遺言書の作成、家族信託の利用

1)遺言書の作成

ここまで後継者の負担軽減を前提に説明してきましたが、それ以外の親族への配慮も必要です。例えば、経営者に長男と次男がいて、後継者である長男にだけ遺産を集中させると次男が不満を覚え、兄弟げんかになって会社経営に悪影響を及ぼしかねません。そこで、経営者は「遺言書」を作成し、

遺産の配分や、配分した意図(法的拘束力はない)

を残しておくことが大事です。

なお、相続には「法定相続分」があります。例えば相続人が「配偶者や子」の場合、それぞれ2分の1ずつ相続できることになっています。しかし、遺言書を書くとこれを変えることができます。とはいえ、遺言書に書いたからといって法定相続分がゼロになることは問題なので、「遺留分」が定められています。相続人が「配偶者や子」の場合、それぞれ4分の1ずつ相続できることになっています。まとめると、

遺留分>遺言書>法定相続分

ということになります。

2)家族信託の利用

ちょっと視点は変わりますが、財産の承継を間違いなく行うために、「家族信託」を利用することもあります。家族信託とは、

経営者が家族に財産(自社株式も含む)の管理を託すこと

であり、経営者が認知症になった際の対策として利用されるのが一般的です。高齢な経営者は認知症のリスクがあり、万一の場合は冷静な判断ができません。そうなると事業承継どころか会社経営が立ち行かなくなってしまうため、家族信託を利用し、長男が「議決権」を行使できるようにするなどします。

6 M&Aを検討する際の主なポイント

1)M&Aの目的と課題

ここまで親族内承継を中心に考えてきましたが、最後にM&Aについても簡単に触れておきます。アンケートなどを見るとM&Aに対する悪いイメージは根強いようですが、一方で近年は後継者不足からM&Aによる第三者への承継が増えているのも事実です。M&Aによって想定されている効果と課題は次の通りです。

画像2

2)M&Aの種類

M&Aにはさまざまな種類があり、代表的な方法およびそれぞれの特徴は次の通りです(中小企業庁「事業引継ぎハンドブック(2015年9月)」)。

1.株式譲渡

譲渡する側の会社のオーナー(経営者)が所有している発行済株式を、譲り受ける側の会社に売却し、子会社になることです。株主および経営者が交代するだけで、社員や社外の関係は変わりません。会社をそのまま存続させたいときや、オーナー(経営者)の持つ株式を現金化したいときに向いています。

2.事業譲渡

譲渡する側の会社が、その事業部門の全部または一部を譲り受ける側の会社に売却します。債権や債務、契約関係、雇用関係などについて、それぞれ同意を取り付けてなければいけないため手続きは煩雑です。

また、複数の事業のうちの一部だけを売却し、その他の事業は残したい場合には有効な方法です。

3.吸収合併・吸収分割

吸収合併は、譲渡する側の会社の全ての資産や負債、社員などを譲り受ける側の会社が吸収し、譲渡する側の会社は消滅します。雇用条件の調整や事務処理手続きの合意の形成が難航する恐れがあります。

吸収分割は、譲渡する側の会社が、その事業部門の全部または一部を分割した後、譲り受ける側の会社に承継させる方法です。労働契約承継法によって、社員の現在の雇用がそのまま確保されます。

3)M&Aに向けた事前準備と支援機関への相談

M&Aで会社を売却する場合、相手先との交渉に入る前に、仲介機関の選定や会社の実態把握、企業の「磨き上げ」などさまざまなことをしなければなりません。最も注意すべきなのは、

いかにして秘密を守り、外部への漏洩を防ぐか

です。第三者はもちろん、親族や友人、役員・社員に至るまで十分に注意しましょう。

また、こうした一連の手続きを自社だけで行うことは困難なので、専門的なノウハウを有する支援機関に相談しましょう。具体的には、事業引継ぎ相談窓口、事業引継ぎ支援センター、商工会議所、金融機関(銀行、生命保険会社、損害保険会社)、税理士、弁護士、M&A仲介業者などがあります。それぞれ得意分野や業務の範囲、報酬体系などが異なるため、実績や利用者の声などを十分調査して選択しましょう。その際、複数の機関から話を聞いて比較することを忘れないでください。

以上(2024年5月更新)
(監修 税理士 石田和也)

pj80115
画像:Mariko Mitsuda

自社は優遇措置を受けられる「中小企業」に該当するのか?

書いてあること

  • 主な読者:税制優遇の制度や補助金、助成金を利用したい経営者
  • 課題:一言に中小企業といっても、法律に示された定義の違いで自社が中小企業に該当せず、優遇制度を利用できないことがある
  • 解決策:どの法律なら、自社が中小企業基本法、法人税法などに定められた中小企業の要件を満たすのかを確認する

1 「中小企業」の定義をご存じですか?

税制優遇や補助金、助成金を受けるための要件の1つに、

「中小企業」であること

と示されていることがあります。この「中小企業」という言葉は、法律によって定義が違うことをご存じでしょうか。ある法律では中小企業の要件に該当していても、別の法律では該当しないため、補助金や助成金、税制優遇を受けられないことがあります。

そこで、この記事では、中小企業基本法、産業競争力強化法、法人税法、租税特別措置法、会社法で示されている中小企業の定義を整理します。自社がどの法律なら「中小企業」に該当するのか確認してみましょう。

なお、法律ごとに「会社」「法人」「企業」のように用語が異なるため、この記事でもそれぞれの法律に合わせて表記します。

2 法律ごとに違う中小企業の定義

1)まずは全体像を把握しよう

まずは、中小企業基本法、産業競争力強化法、法人税法、租税特別措置法、会社法で示されている中小企業の定義の全体像を把握してみましょう。資本金、従業員数、業種等によって中小企業の要件が異なることがよく分かります。

なお、産業競争力強化法の法改正については、2024年5月9日時点で国会の審議中となっています。それに伴い、下記の図表もこの時点での法律案を基に作成しています。

画像1

2)中小企業基本法

中小企業基本法では、業種によって中小企業の定義が違います。まず、中小企業の要件を満たすかどうかの基準は次の2点です。

  • 資本金の額または出資の総額
  • 常時使用する従業員の数

次に、下記の図表で「資本金の額または出資の総額」「常時使用する従業員の数」のいずれかを満たしていれば、中小企業基本法における中小企業に該当するといえます。

画像2

なお、別の業種に属する複数の事業を行っている場合は、「主たる事業」が属する業種で判断します。主たる事業は、直近1事業年度の決算書において、売上高などが最も大きい事業になります。

3)産業競争力強化法

政府は、従業員数が2000人以下で、中小企業に該当しない企業を「中堅企業者」と定義し、支援を強化することを柱とした「産業競争力強化法」の一部を改正する法律案などを閣議決定しています。

特に賃金水準が高く、国内投資に積極的な企業を「特定中堅企業者」と定義して、成長を伴う事業再編の計画を主務大臣が認定した場合、税制・金融面で支援する方針です。

2024年5月時点で国会審議中となっていますが、正式に施行された場合は、例えば製造業において常時雇用する従業員数が300人を超え、2000人以下かつ、資本金が3億円超の企業が中堅企業者と定義されます。

4)法人税法

法人税法では、中小企業に該当する法人を中小法人等と規定しています。中小法人等に該当するためには、次のいずれかの要件を満たす必要があります。

  • 普通法人のうち、資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下であること
  • 資本または出資を有しないもの
  • 公益法人等または協同組合等
  • 人格のない社団

ただし、次の要件に該当する法人を除きます。

  • 資本金の額または出資金の額が5億円以上の法人等による完全支配関係(簡単に言うと、100%の支配)があること
  • 複数の大法人(資本金の額または出資金の額が5億円以上の法人等)に発行済株式の全部を直接、もしくは間接的に保有されていること

5)租税特別措置

法租税特別措置法では、中小企業に該当する法人を中小企業者と規定しています。中小企業者に該当するためには、次のいずれかの要件を満たす必要があります。

  • 資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下であること
  • 資本または出資を有しない法人(公益財団等)については、常時使用する従業員数が1000人以下であること

ただし、次の要件に該当する法人等を除きます。

  • 発行済株式の総数または出資の総額の2分の1以上を同一の大規模法人に所有されていること(発行済株式は、自社の株式または出資を除いた分が対象)
  • 発行済株式の総数または出資の総額の3分の2以上を複数の大規模法人に所有されていること(発行済株式は、自社の株式または出資を除いた分が対象)

また、「適用除外事業者(前3事業年度の平均所得金額が15億円超の中小企業者)」に該当する場合も、優遇措置の対象から除かれます。

なお、大規模法人とは、中小企業者の要件に該当しない法人または大法人(資本金の額または出資金の額が5億円以上の法人)による完全支配関係がある法人等をいいます。

6)会社法

会社法では、中小企業の定義がなく、大会社のみが規定されています。次のいずれかの要件を満たせば大会社に該当します。逆に言えば、次のいずれの要件も満たさない場合は、便宜上、中小企業(大会社以外の会社)といえます。

  • 最終事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が5億円以上
  • 最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上

また、会社法における大会社は、決算公告や内部の組織について規定があります。会社法における大会社と非大会社(中小企業)の分類は次の通りです。

画像3

大会社では、取締役会の内部統制義務(注)がある、会計監査人を置かなければならない、決算公告は、貸借対照表と損益計算書の開示が必要といった規定があります。

これに対して、非大会社では、監査役会と会計監査人の設置は任意、決算公告は貸借対照表のみとしていますが、自社が発行する株式の一部または全部を自由に譲渡可能な公開会社(定款で株式の譲渡制限を設けていない会社をいいます)の場合は、3人以上で構成する取締役会を設置する必要があります。

(注)株主から経営を委ねられた取締役会が主体となり、取締役の業務が会社法や自社の定款にのっとり、適切に行われているかどうかチェックするための体制をいいます。大会社かつ取締役会設置会社の要件に該当する場合に内部統制義務があります。

以上(2024年6月更新)
(監修 税理士 石田和也)
(監修 弁護士 坂東利国)

pj30066
画像:pixabay

自社の成長に役立つ「補助金選び」と採択される事業計画づくりのポイント

書いてあること

  • 主な読者:補助金を自社の成長に役立てたい経営者、事業部長
  • 課題:補助金選びや、採択されるための事業計画づくりのポイントを知りたい
  • 解決策:補助金の目的・対象者・要件に合致しているか確認して申請する。事業計画は、審査項目を明記し、補助金が必要な理由を分かりやすく記載する

1 補助金は申請すれば必ずもらえるとは限りません

お得な資金調達と考えられている補助金や助成金。実は次のような違いがあります。

画像1

助成金は受給要件を満たすことと書類に不備がなければ受給できますが、補助金は申請時に事業計画の提出を求められ、事業計画の内容が審査されて採択・不採択が決まります。ハードルが高いといえますが、

補助金は、原則として返金不要(事業で利益が出た際に一部納付する収益納付の場合もあります)

であることが大きな特徴です。

うまく補助金や助成金を使いたいところですが、国や地方自治体などがさまざまな事業を行っているので、どのように選び、どのように活用したらよいのか迷う方も多いようです。また、近年は補助金も助成金も受給要件について、細目が追加や変更され複雑化しています。

この記事では、数ある補助金の中で、主に企業の成長に活用される補助金の選び方と、事業計画が採択され補助金を得るためのポイントをご紹介します。

2 目的・対象者・要件に合致したものを選ぶ

補助金の目的と内容はさまざまです。さらに最近の傾向として、1つの補助事業の中に「成長分野進出枠」「コロナ回復加速化枠」「サプライチェーン強靱化枠」など、多数の枠が設けられているケースもあります。また、その枠の中に、「通常類型」「GX進出類型」と細分化されていることもあります。枠や型というのは、「申し込むコース」と考えると分かりやすいでしょう。それぞれの枠や型に要件が定められていることもあります。

補助金は、補助事業ごと、枠・型ごとの、目的・対象者・要件に合致しているものを選びましょう。

補助事業の目的(何のための補助金なのか)・対象者・要件は、補助金の“ルールブック”である公募要領に記載されています。

補助金の申請を検討する際は、公募要領を読み込まなければなりませんので、時間がかかります。そのような場合は、専門家(中小企業診断士など)に相談することをお勧めします。また、各補助金には概要版やガイドブックが作成されていることもありますので、制度の概要を確認したい場合はそちらを参照されるとよいでしょう。ただし、公募要領と違って、あくまで概要版ですので、要件について細部まで記載されているわけではありませんので注意が必要です。

1)目的を確認する

まず、補助事業の目的を確認しましょう。自社が補助金を得て取り組みたい事業が、補助事業の目的に沿うかをチェックします。目的に沿わない申請は、審査で対象外と判断されてしまいます。

例えば、コロナ後に新設された事業再構築補助金の場合、目的は次のように書かれています。

「新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、当面の需要や売上の回復が期待し難い中、ポストコロナの時代の経済社会の変化に対応するために新市場進出(新分野展開、業態転換)、事業・業種転換、事業再編、国内回帰、地域サプライチェーン維持・強靱化又はこれらの取組を通じた規模の拡大等、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援することで、日本経済の構造転換を促すことを目的とします」

既存店舗を増やしたり休眠会社を復活させたりというのは、そもそも目的から外れているわけです。また、補助対象経費に関して、建物の新築もしくは改修、機械装置、システム構築のどれか1つ以上を計上することが求められているため、「実質的には中小企業への設備投資などが目的になっている」ことを読み解く必要があります。

2)対象者を確認する

次に、対象者を確認しましょう。公募要領では補助金の対象者を明記しており、表でまとめている場合が多いです。また、多くのケースでは、対象者は従業員数や資本金の額によって決められています。

補助金は基本的には経済産業省の管轄の中小企業(商業、工業)が対象ですが、補助金によっては、学校法人や医療法人が対象の場合もあります。ただし、大企業の関連会社は対象外のことが多いので注意しましょう。また、

幾つも会社を経営している場合(会社の株の過半数を持つ場合)は、1つの会社で交付決定(補助予定金額の決定通知)を受けると、同じ補助金については、他の会社で申請できなくなることもあります

ので、公募要領で確認してください。

3)要件を確認する

目的、対象者の確認が済んだら、要件を確認しましょう。補助金には複数の要件を課しているものが多いので、

全ての要件を満たす必要があるのか、一部でよいのかを確認します。

また、対象の事業終了後(申請した経費を使い、実績報告書を提出し終えた後)に、賃上げなどの要件が課されている場合がありますので要注意です。

要件を満たさない場合は、補助金の一部(もしくは全額)を返還することを義務付けられていることがあります

ので、しっかりと公募要領を確認してください。

4)補助対象経費の内容、補助率、補助金額の上限にも要注意

目的、対象者、要件に合致しても、

必ずしも事業に関する全ての経費が補助されるわけではありません。

公募要領には補助対象経費についても詳しく記載されていますので、内容、補助率、補助金額の上限などを確認しましょう。補助対象外の例も挙げられています。

補助対象経費の説明書きに記載されていない場合は、補助の対象外の可能性があると考えることがベターです。

補助の対象かどうか迷うときには、事務局やコールセンターに連絡して確認しましょう。また、たとえ補助の対象となっていたとしても、

原則、補助金は精算払い(後払い)なので、補助対象経費を自社で立て替えることが必要

です。融資等を検討する場合は、金融機関等との相談も行いましょう。

5)参考:国の4大補助金と新たな補助金

ここで、参考として、国が幅広く行っている「4大補助金」とも呼ばれる補助金の概要を紹介します。補助金選びにお役立てください。多様な枠や型がありますので、必ず補助金の公募要領で細目をご確認ください。

画像2

新たに2024年に新設された補助金があります。令和5年度補正予算「中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金」です。

  • 補助上限が50億円(最低投資額10億円以上)、補助率1/3
  • 工場等の建物費や製造機械等の機械装置費等が補助対象
  • 一定以上の賃上げが要件

中堅企業も対象になるのが珍しいですね。今年(2024年)に第2回公募が予定されています。次年度以降も公募があるかは不明ですが、今後、中堅企業への補助金も活性化するかもしれません。

3 採択される事業計画づくりのポイント

申請した事業計画が採択されなければ補助金は受給されません。採択される事業計画づくりにはポイントがありますので紹介します。

1)様式と枚数制限を守る

補助事業によっては、

事業計画の様式を指定していたり、計画書の枚数制限をしていたりする場合があります。

必ず公式のウェブサイトで様式や枚数制限の有無を確認しましょう。様式を指定していない場合でも、参考様式を公開しているケースがあります。必ずしも参考様式を使用することはありませんが、事業計画に盛り込むべき必要項目が記載されている場合がありますので、確認しておきましょう。

枚数に関して、「〇〇枚以内」と書かれている場合は、必ず規定枚数以内に収めてください。

審査が厳しい場合は、枚数を超過すると「不備」として不採択になることがあります。

2)審査員への説得文のつもりで合理的に分かりやすく

事業計画には、自社の現状を踏まえ、「なぜ補助金の活用が必要なのか」「補助金を活用することで自社の業績にどう効果が出るのか」というストーリーを、合理的に一貫性を持たせて記載しましょう。事業計画を「審査員への説得文」と捉えるとよいでしょう。

審査員が審査にかけられる時間は、1つの事業計画につき短いものは15分ほどといわれています。短時間で事業計画を確認し採点しますので、分かりやすさも重要です。

ストーリーの分かりやすさはもちろん、図やイラストなどを用いるとより効果的になります。

事業計画に記載する内容は補助金によって細目が異なりますが、大まかには次のようなものになります。

  • 現在の自社の事業の概要、財務状況、内部環境分析と外部環境分析
  • 補助金を活用して実施する新規事業の必要性
  • 新規事業の具体的な内容
  • 新規事業の市場分析、競合分析、自社の優位性や差別化要素
  • 新規事業の課題やリスクと解決方法
  • 実現可能性の高いマーケティング戦略
  • 実施体制、スケジュール、資金調達計画
  • 収益計画

3)審査基準を押さえる

事業計画の審査では、複数の審査員が、主観や事業計画の印象ではなく、審査基準に従って点数を付けているといわれています。補助金の公募要領には審査基準が記載されています。

例えば、ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)では、次のような審査項目例があります。

画像3

審査項目(1)には、「要件を満たすか」が書かれていることが分かります。審査項目に入っているものですので、事業計画にも「この要件を満たしている」旨の記載が必要になります。

電子申請の場合、申請画面に入力するだけでなく、事業計画にも記載してください。

また、(2)のそれぞれの質問に対する回答も事業計画に明記しましょう。前述したように、審査員は短時間しか審査にかけられません。そのため、

ニュアンスで分かるというレベルではなく、明記されていることが重要です。

4)加点項目を押さえる

審査員が事業計画を審査する際、

多くの場合は「加点審査」であり、減点はないといわれています。加点項目は公募要領に記載されていることがありますので、必ず確認しましょう。

補助金を支援するコンサルタントなどからすると、加点項目は単なる「付け足し」ではなく、「該当項目は必ず盛り込む項目」です。

「加点項目があって当然、なければ他社と比べて弱い」といえるくらい、加点項目を盛り込むことは重要です。

また、場合によっては減点項目が設定されていることもあります。例えば、

過去に類似の補助金を受給している場合に減点されることがあります

ので、減点項目が設定されているかどうか、忘れずに確認しておきましょう。

4 こんな事業計画は採択されにくい!

最後に、採択されにくい事業計画について解説します。「採択されない」と悩む経営者の事業計画には、大きく分けると次の3つの傾向が見られます。

1)ストーリーが分かりにくい/一貫性がない、専門用語の解説がない

自社の業務や研究開発の説明に大半を使ってしまい、自社の現状を踏まえての「なぜ補助金の活用が必要なのか」「補助金を活用することで自社の業績にどう効果が出るのか」という、ストーリーの説明が不足している事業計画は採択されにくいです。

加えて、専門用語の解説がないものも多く見られます。審査員は、必ずしも各業界の業務内容まで理解しているわけではありません。過去の業務経験で知っている場合がありますが、審査員は業界を知らないものとして記載しましょう。ポイントは、

中学生が読んでも理解できる内容を目指す

ことです。

2)審査項目の記載漏れがある

不採択の事業計画の特徴の1つに、審査項目の記載漏れが散見されます。審査項目は、必ず分かりやすく記載してください。

審査項目を審査員に見落とされないようにする

ことも大切です。

3)根拠がない、もしくは弱い

「なぜ機械を導入する必要があるのか」「なぜ新規事業で売り上げが立つのか」という説明に対して、その根拠がない、もしくは根拠が弱いものがよくあります。

特に採択か否かの差がつくのは、事業化の箇所です。

不採択になる事業計画には、「なぜ新規事業として成り立つのか」が分かりにくい、もしくはその記載がほとんどない場合が多いです。事業化した後の想定までしっかりと検討した上で、事業計画に落とし込んでください。

昨今、補助金の制度自体が複雑化しており、募集時期が変わるたびに枠や要件が変更されることもあります。申請を検討する際は、必ず最新の情報をご確認ください。補助金をうまく活用して、自社の成長に結び付けましょう。

以上(2024年6月更新)
(執筆 川崎朋子)

pj80160
画像:shutterstock-bleakstar