【分かりやすい原価計算(1)】原価の範囲~赤字覚悟!? どこまでが原価に含まれているの?

1 原価計算は何のためにするもの?

原価計算は、モノやサービスを作るのにいったいどれだけ費用がかかったかを知る手法で、会計などの分野にも必要な考え方です。会計は目的ごとに、

  • 税務会計:納税額を計算
  • 財務会計:株主などに向けて会社の状態や業績などを報告
  • 管理会計:自社の将来の意思決定のための資料

の3つに分かれ、いずれも原価計算が関わってきます。

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税務会計と財務会計では、決算期末の仕掛品などの在庫を決算書に計上するために必要となります。この在庫を基に売上原価が計算され、その後の利益計算が行われていきます。

一方、将来を予測し、将来を変える会計といわれる管理会計でも、原価計算の考え方は重要です。例えば、経営者は「物価高による解約で売上が2割落ちる見込みだが、利益はいったいいくらになるのか」「資金繰りは大丈夫なのか」といったことが心配になります。これらの疑問に答えるのに、自社のモノやサービスにいったいどれくらいお金がかかっているのかが全く分からないというのでは話になりません。原価計算の考え方を通して、将来の活動の方向性を示していくことができるように、会社の体質を把握していかなければなりません。

この会社の体質を、経営者、経理や財務だけでなく、あまり全体の数字には携わっていない営業担当者や製造担当者とも共有しておくことが大事です。各現場で全社として正しい判断ができるようになるでしょう。

書店に行くと、原価計算の体系化された書籍や新しい知識が盛り込まれた書籍が数多くあります。しかし、その中には中小企業の現場では使わない論点も数多くあるように感じます。本シリーズでは、このような膨大な情報の中から、中小企業の経営者や従業員が現場に落とし込むのに必要な情報を抜き出し、紹介していきます。

2 本当に赤字覚悟か? 原価で見るモノやサービスの値段

街中の飲食店で「赤字覚悟!」とうたい、スペシャルメニューの大盛りラーメン、ステーキやお寿司などを提供しているのを見たことがあると思います。お店が赤字になるぐらいギリギリの値段で、お客さんにはとてもお得というような宣伝文句として使われます。

この場合の赤字(その反対は黒字)には、どのような意味があるでしょうか。赤字・黒字というのは、利益のあるなしを示す言葉です。経営では、まず会社のもうけを増やすことを考えます。このもうけ、つまり利益は、

売上−費用=利益

の計算式で表すことができます。この費用の中に、

モノやサービスを作るための「原価」が含まれているのです。

少し身近な例(回転寿司店)で原価の範囲を考えてみましょう。回転寿司のお寿司の原価には何が含まれるかイメージしてみてください。ざっくり次のようなものがイメージできるのではないでしょうか。なお、次章の解説につなげるため、グループ分けしています。

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赤字覚悟と言われると、売上からネタやシャリなど材料費だけを引いたものが赤字スレスレとなっていると感じるかもしれませんが、実際は違います。なぜなら、材料費だけではなく料理人の給料や店舗家賃、電気代などの水道光熱費もかかっているからです。数字の仕事をされている方は、ちょっと立ち止まって、

どこまでの原価を費用に入れて赤字覚悟なのだろうか

と考えてみるのもよいでしょう。

3 決算書から読める原価はどれ?

原価のイメージができたところで、さっそく決算書(損益計算書と製造原価報告書)を見ていきましょう。

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損益計算書の「売上原価」に含まれている項目(製造原価報告書の当期製品製造原価)が、モノやサービスを作るための原価です。なお、製造原価報告書とは、原価を集計し、当期に完成した製品の原価(製造原価)を計算する決算書をいいます。売上原価には、材料費、労務費、外注費、経費といったモノやサービスを作るためにかかった費用が含まれます。図表2でいえば、1から6までが売上原価になります。

また、これ以外に本社の人件費や広告宣伝費といった販売や管理をするための費用として販売費及び一般管理費(以下「販管費」)があります。図表2でいえば、7から10までが販管費になります。

原価計算では、狭い意味での原価としてモノやサービスを作るためにかかった「売上原価」、広い意味での原価として、さらに販売や管理にかかった費用を加えた「売上原価+販管費」と表現します。

損益計算書の営業外収益・営業外費用、特別利益・特別損失は、原価計算の対象にはなりません。これらは、モノやサービスを作るためや販売・管理をするための費用、つまり営業活動にかかる費用ではないからです。

以降では、モノやサービスを作るための直接的な費用である「売上原価」を原価(狭い意味での原価)として説明していきます。

4 原価は3つ+αで構成される

原価は、何のために使った費用かということで、まず材料費、労務費、経費の3つに分類されます。

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さらに、経費の中に含まれる外注費は別枠で把握していきます。外注費というのは、自分の会社ではできないことを、他の会社や人に依頼してやってもらう場合に発生する費用です。自分の会社ではできないというのは、技術がなくてできないケースもあれば、まさに自社の本業だけれども、仕事の依頼が多すぎて人が足りないためできないというケースもあります。

自社のみで仕事を回すほうが、一般的に利益率は高くなります。このため、損益予測をしたり、決算分析で前期比較や予算比較をしたりする場合も、外注費がどれくらいかかっているかというのは重要になってきます。

例えば、建設業で前期よりも売上は20%上がったが、利益率が落ちているというケースで考えてみましょう。経営者は、仕事の効率が落ちてしまっているのかと心配になるかもしれません。そのときに見てもらいたいのは、外注費が多くなっていないかということです。仕事が会社のキャパ(許容範囲)よりも多くなってしまうと、どうしても外注に回す必要があります。外注する場合、自社だけで仕事を回すよりも一般的には利益率は落ちてしまいます。なので、自社で仕事をした分の効率が落ちていなければ、外注に回した仕事が増えたことによって全体の利益率が落ちることは問題ありません。

このように外注費は個別に把握すべき費目といえるので、

原価は材料費、労務費、外注費、経費という区分で考える

ことが大切なのです。

以上(2025年5月更新)

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画像:Shutter z-shutterstock

【朝礼】なぜ、「隣の芝生は青く見える」のか?

【ポイント】

  • 「隣の芝生が青く見える」のは普通で、転職などを考えるのは悪いことではない
  • ただ、私たちは、他人のものや外の環境の良い部分ばかりを見てしまう傾向がある
  • 「自分の芝生に水をやること」「隣の芝生の土をよく観察すること」を意識してみよう

今日は、「隣の芝生は青い」ということわざをテーマに話したいと思います。皆さんもご存じですよね。「他人のものや外の環境のほうが、自分のものや今いる場所より魅力的に見える」という意味です。ビジネスでも、今いる会社よりも、外の世界に魅力を感じ転職を考えるようになるというのはよくある話ですし、これは別に悪いことでもなんでもありません。ただ、なぜ私たちの目には「隣の芝生が青く見える」のでしょうか?

答えはシンプルです。私たちが「他人のものや外の環境の良い部分ばかりを見ているから」です。例えば、SNSには、他人や他社の華やかな投稿がたくさん載っています。もちろん、探せばネガティブな投稿も出てくるでしょうが、多くの人は今、自分がいる環境に慣れてしまっていて、無意識のうちに「自分は今のままでいいのだろうか……」「もっといい道があるのでは?」と考えています。だから、ネガティブな情報よりもポジティブな情報のほうが目に入りやすく、その結果、ますます「自分の環境はイマイチだな……」という思考に陥ってしまうのです。

とはいえ、SNSなどから得られる情報は断片的です。一見華やかな投稿でも、私たちは他人や他社がその陰で、どのような努力や苦労をしているかを知りません。外の世界に魅力を感じて転職するのはよくある話だと言いましたが、いざ新しい会社に入ってみたら「思っていたのと違った」というのもまたよくある話です。そこで、私から皆さんに提案したいことが2つあります。

1つは、「自分の芝生に水をやること」です。もし、少しの努力で今の環境を変えられそうなら、まずは自分のスキルを磨くなどして、どんな変化が訪れるか試してみましょう。意外と自分の芝生を好きになれるかもしれません。もう1つは、「隣の芝生の土をよく観察すること」です。先ほども言いましたが、無意識にポジティブな情報を探しているときは、ネガティブな情報が見えにくくなるものです。ポジディブな情報の陰にある努力や苦労に目を向ける、想像をする癖をつけましょう。

一度きりの人生、たくさんの選択肢の中から自分に合ったものを選ぶことは大切です。だからこそ後悔のない選択を! それでは、今日も一日よろしくお願いします。

以上(2025年5月作成)

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画像:Mariko Mitsuda

【債権回収】経営者個人から債権回収できる4つのケースとは?

1 経営者からの債権回収は可能か?

取引先に債務不履行があったとき、

会社が払えないなら、経営者から回収をしたい

と考えます。特に相手が中小企業だと、経営者と会社が一体と感じられるので、なおさらです。しかし、原則として会社と経営者は別の法人格であり、会社の債務を経営者個人が負うことはありません。

ただし、経営者が連帯保証人になっている、実質的に株式会社と経営者が一体とみなされるなどのケースでは経営者から債権回収ができます。この記事では、

「経営者個人」から債権回収が可能となる4つのケース

について紹介します。

2 経営者が連帯保証人である場合

1)連帯保証とは

経営者が連帯保証人になっている場合、経営者に弁済を求めることができます。連帯保証人は「催告の抗弁権」と「検索の抗弁権」を持っていません。

催告の抗弁権とは、

債権者が主債務者に請求せずに保証人に請求してきた際、まず主債務者に請求するよう求める権利

です。

また、検索の抗弁権とは、

債権者が主債務者に対して請求しても弁済しないので、保証人に請求を求めてきたときに、主債務者に弁済の資力があり、かつ執行が容易であることを証明して、まずは主債務者の財産から執行するよう求める権利

です。

以上から、債務者である会社が債務不履行を起こしたら、すぐに連帯保証人である経営者に弁済を求めることができます。

なお、保証にはいくつかの種類があり、いわゆる「普通保証(単純保証)」でも経営者に弁済を求めることができます。ただ、普通保証の保証人は催告の抗弁権と検索の抗弁権を持っているため、担保というには難があります。

2)支払能力の確認

連帯保証人であっても、その経営者に支払能力がなければどうすることもできません。そこで、経営者が所有していると思われる不動産(自宅、本籍地、別荘など)を不動産登記簿で調査し、次の点を明確にしましょう。そして、保有資産の規模から、支払能力を推測します。

  • どのような土地・建物を所有しているか
  • 抵当権等の担保権が設定されているか
  • 他の債権者による差押がなされていないか

会社が倒産する前後で、連帯保証人が所有不動産について、

  • 所有権を妻子の名義に移転する
  • 所有権移転の仮登記を付する
  • 他の債権者の担保権を設定する

などをして、回収から逃れようとするケースがあります。このような行為があった場合は、「詐害行為取消権」を行使して法的手段に訴えることができます。詐害行為取消権とは、

債権がその行為の前から存在することなどを要件に、債権者が債務者の行為を取り消す権利

です。

不動産以外にも、連帯保証人が「貴金属、書画・骨董、家具などの動産」「株券、債券などの有価証券」「現金、預貯金、ゴルフ会員権」などの資産を所有していることがあるかもしれません。しかし、これらの資産は簡単に隠せるので、正確に把握するのは困難です。

また、連帯保証人である経営者が他の会社の役員などを兼務している場合、その会社が連鎖倒産していなければ、他の会社から受ける報酬なども回収の対象にできることがあります。

3)交渉開始

連帯保証人との交渉では、正面から弁済を求めてもうまくいかないことが多いです。また、前述した通り、連帯保証人が資産を第三者に移転する恐れもあるため、

まずは連帯保証人の資産を仮差押した上で接触するのが好ましい

かもしれません。

仮差押とは、

売掛金債権などの金銭債権を保全するために、取引先の保有している財産を暫定的に差し押さえる制度

です。仮差押をすると交渉が進めやすくなりますが、仮差押をするには、裁判所に担保金を供託したり、必要に応じて弁護士に仮差押手続の申立てを依頼したりする必要があります。一時的にコストがかかるので、慎重に検討しましょう。

4)回収の実際

交渉が進んだとしても、連帯保証人の支払能力には限界があります。税金の滞納があるような場合、一般債権よりも優先されます。そのため、連帯保証人の資産状況によっては、債務の「一部弁済」や「分割弁済」で対応しなければならないケースもあります。分割弁済の場合、口約束でなく契約書を作成することが大切です。

3 実質的に株式会社と経営者個人が同一と認められる場合

相手が株式会社や合同会社の場合、経営者個人は債権者に対して直接の責任は負いません。しかし、「法人格の形骸化」や「法人格の濫用」が認められる場合、「法人格否認の法理」によって責任を追及できることがあります。

法人格の形骸化とは、

法人とは名ばかりであって経営者個人が営業している状態で、株主総会や取締役会を開催していなかったり、財産を混同していたりするなどの場合

です。また、法人格の濫用とは、

法人が株主により意のままに道具として支配されていることに加えて、株主に違法または不当な目的がある場合

です。ただし、経営者は法人格の形骸化や法人格の濫用を認めないことがほとんどで、結局、訴訟などで決着をつけなければならないことが多いです。

なお、法人格否認の法理とは、簡単に言うと、

法人と個人の独立性を確保すると、正義・衡平に反することがある場合に、生じている問題を解決する範囲で、法的に別個の法人格を有する法人と個人とを一体として取り扱う

という考え方です。

4 違法な職務執行により損害を受けた場合

相手の株式会社や合同会社とした取引により損害を被ってしまった場合、その取引を行うに際して、相手の経営者に悪意や重過失が認められる場合には、経営者個人に対して損害賠償責任を追及できることがあります。例えば、

経営者個人の違法な職務執行(粉飾決算、支払い見込みのない調達など)により損害を受けた場合

です。

もう少し具体的にいうと、取引先が組織的に粉飾決算をしていることを知らずに取引してしまい、その結果、債権回収ができずに損害を被ったケースでは、粉飾決算を行った取締役のみならず、粉飾決算を黙認した取締役、監視義務を怠った取締役や、監査上の責任を負う監査役にも個人責任を追及できる場合があります。

粉飾決算までしていた場合、かなりの確信犯なので、経営者は用意周到に夜逃げをするケースもあるでしょう。こうした場合は夜逃げをした経営者を捜すより、他の取締役、監査役の責任追及を検討したほうが早道かもしれません。

5 債務者が合名会社や合資会社である場合

合名会社の社員(出資者)や合資会社の無限責任社員は、会社の債権者に対して無限責任を負います。経営者がこれらに該当する場合は責任を追及できます。

以上(2025年7月更新)

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画像:Mariko Mitsuda

助成金で「健康経営」を実現! 時間外労働の削減で1520万円?

1 働き方改革推進支援助成金などを活用しよう!

働き方改革やSDGsの観点から、社員の「健康」維持が大きく注目されています。残業を減らす、休暇や休日を増やすなどアプローチはさまざまですが、同時に社内制度や設備の見直しも必要で、それなりにコストがかかります。そこで、ご提案するのが助成金の活用です。例えば、

建設業など特定の業種が時間外労働の削減などに取り組むと、最大1520万円が支給

されるのをご存じですか。これは働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース)というものですが、他にも「健康経営」に関する助成金がいくつかあります。以降で、制度概要の紹介と併せて専門家がポイントを説明するので参考にしてください。

なお、助成金の内容は2025年4月28日時点のもので、将来変更される可能性があります。

2 働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース)(最大1520万円)

1)働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース)とは?

建設業、運送業、病院等、砂糖製造業、情報通信業、宿泊業の中小企業が生産性を向上させ、時間外労働の削減などに取り組んだ場合に助成を受けられるというものです。なお、砂糖製造業は、「鹿児島県・沖縄県の事業者のみ」が対象です。

■厚生労働省「働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース)」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000120692_00001.html

2)助成金を受け取るには?

中小企業で、申請時点において一定の要件(年5日の年休(年次有給休暇)の取得に向けた就業規則等を整備している、法的要件を満たした36協定を締結し、届け出ている等)を満たしている会社が、次のいずれかの「成果目標」を設定し、成果の達成に向けて「支給対象となる一定の取り組み」を実施する必要があります。

具体的な「成果目標」となるのは次の7つで、1つ以上を選択する必要があります。なかには一部の業種にのみ適用されるものもあります。

  • 36協定の設定時間数の縮減
  • 年休の計画的付与制度の導入
  • 時間単位年休+1つ以上の特別休暇(注1)の導入
  • 勤務間インターバル制度の導入
  • 所定休日の増加(建設業のみ)
  • 「医師の働き方改革の推進(注2)」の実施(病院等のみ)
  • 3直3交代制等の勤務割表の整備(砂糖製造業のみ)

(注1)病気休暇、教育訓練休暇、ボランティア休暇、不妊治療のための休暇、時間単位の特別休暇等が対象です。

(注2)労務管理体制の構築(労務管理責任者の設置等、副業・兼業を行う医師の労務管理体制の整備、労働時間管理に関する研修の実施)、医師の労働時間の実態把握を指します。

次に、「支給対象となる取り組み」は次の9種類です。なお、7.から9.については、原則としてパソコン、タブレット、スマートフォンは対象となりません(ただし、所定の要件を満たした場合は緩和されます)。

  • 労務管理担当者に対する研修(勤務間インターバル制度に関するもの、業務研修を含む)
  • 社員に対する研修、周知・啓発
  • 外部専門家によるコンサルティング
  • 就業規則・労使協定等の作成・変更
  • 人材確保に向けた取り組み
  • 労務管理用ソフトウェアの導入・更新
  • 労務管理用機器の導入・更新
  • デジタル式運行記録計の導入・更新
  • 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新

ここまでの内容を踏まえた上で、所定の「交付申請書」を事業実施計画書などとともに、所轄都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に提出します。その後、事業実施計画に沿った取り組みを実施した後、申請期限までに支給申請をすることで助成金を受け取れます。

3)受け取れる金額はいくら?

取り組みの実施に要した経費の一部を成果目標の達成状況に応じて(具体的には図表1の額)受け取れます。なお、指定する従業員について、一定の賃上げを実施することを成果目標に加え、実施を達成した場合、加算が受けられます。

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要件を満たした場合、最大で次の額を受け取れる計算になります。

  • 建設業:1270万円
  • 運送業等:1190万円
  • 病院等:1240万円
  • 砂糖製造業:1520万円
  • 情報通信業、宿泊業:1170万円

4)専門家のワンポイントアドバイス

働き方改革推進支援助成金は全部で4つのコースがありますが、いずれも

2025年度の「交付申請書」の申請期限は、2025年11月28日まで(予算の制約により11月28日以前に締め切られる場合があるので注意)

となっているので、早めに準備を進める必要があります。加えて、時間外労働の削減などの各種取り組みについても、

交付決定後、2026年1月30日までに提出した計画に沿って取り組みを実施した上で、支給申請期限までに都道府県労働局に支給申請をしなければならない

ので、交付申請書の提出時期によっては非常にタイトなスケジュールになるため、余裕を持って計画的にプロジェクトの立案等を進めるようにしてください。

3 働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)(最大1000万円)

1)働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)とは?

事業主団体等(中小企業の団体やその連合団体等で1年以上の活動実績があるもの)が、傘下の構成事業主(社員を雇用する会社)の社員について、労働条件を改善するため、時間外労働の削減や賃上げに向けた取り組みを実施した場合に助成を受けられるというものです。

■厚生労働省「働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000200273.html

2)助成金を受け取るには?

課題対応の「成果目標」として

事業主団体等が事業実施計画に基づき、時間外労働の削減・賃上げに向けた改善事業の取り組みを行い、構成事業主の2分の1以上にその取り組みまたは取り組み結果を活用

する必要があります。

支給対象となる取り組みは、次の10種類です。いずれも成果目標の達成に向けて実施する必要があります。

  • 市場調査の事業
  • 新ビジネスモデルの開発、実験の事業
  • 材料費、水光熱費、在庫等の費用の低減実験(労働費用を除く)の事業
  • 下請取引適正化への理解促進等、労働時間等の設定改善に向けた取引先との調整の事業
  • 販路の拡大等の実現を図るための展示会開催・出展の事業
  • 好事例の収集、普及啓発の事業
  • セミナーの開催等の事業
  • 巡回指導、相談窓口の設置等の事業
  • 構成事業主が共同で利用する労働能率の増進に資する設備・機器の導入・更新の事業
  • 人材確保に向けた取り組みの事業

ここまでの内容を踏まえた上で、所定の「交付申請書」を事業実施計画書などとともに、所轄都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に提出します。その後、事業実施計画に沿った取り組みを実施した後、申請期限までに支給申請をすることで、助成金を受け取れます。

3)受け取れる金額はいくら?

取り組みの実施に要した経費の一部(具体的には図表2の額)を受け取れます。

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要件を満たした場合、最大1000万円を受け取れる計算になります。

4)専門家のワンポイントアドバイス

基本的な注意点は、働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース)と同じです。ただし、交付決定後の取り組み実施期間は、2026年2月13日までとなります。なお、働き方改革推進支援助成金には、ここで紹介した「業種別課題対応コース」「団体推進コース」の他に、「労働時間短縮・年休促進支援コース」「勤務間インターバル導入コース」があります。

  • (労働時間短縮・年休促進支援コース)年休の計画的付与を導入した場合などにおいて、最大920万円を受け取れる
  • (勤務間インターバル導入コース)事業場の半数超を対象とする勤務間インターバル制度を新たに導入した場合などにおいて、最大840万円を受け取れる

両者については、次のコンテンツで紹介しています。

4 その他の健康経営関連の助成金

1)業務改善助成金(最大600万円)

会社(実際は支店等の事業場単位)が事業場内最低賃金(最も賃金が低い社員の時給)を30円以上引き上げ、生産性を向上させるための設備投資等を行った場合、その費用の一部について助成金を受け取れるというものです。こちらは中小企業・小規模所業者だけが対象です。

■厚生労働省「業務改善助成金」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/03.html

助成金の対象になる設備投資等の例として、

  • 設備投資(例:POSレジシステム導入による在庫管理の短縮、リフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮)
  • コンサルティング(例:専門家による業務フロー見直しによる顧客回転率の向上)
  • その他(例:店舗改装による配膳時間の短縮)

が挙げられており、これらを導入することで時間外労働の削減などが図れるかもしれません。次のコンテンツで申請のポイントなどを紹介しています。

2)人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)(最大287.5万円)

社員の離職率を低下させるために、

  • 雇用管理制度(賃金規定制度、諸手当等制度、人事評価制度、職場活性化制度、健康づくり制度)
  • 雇用環境整備(社員の直接的な作業負担を軽減する機器・設備等の導入・運用)

の措置のいずれかを実施し、離職率が低下した場合に助成金を受け取れるというものです。

■厚生労働省「人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000199292_00005.html

雇用管理制度の「健康づくり制度」とは、希望者に対する「人間ドック」の実施のことです。 次のコンテンツで申請のポイントなどを紹介しています。

3)両立支援等助成金(不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース)(最大90万円)

女性社員が不妊治療と仕事を両立したり、健康課題(月経や更年期)に対応したりするため、休暇制度などを導入し、実際に対象者に利用させた中小企業が助成金を受け取れるというものです。

■厚生労働省「両立支援等助成金のご案内」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/shokuba_kosodate/ryouritsu01/index.html

具体的には

  • 休暇制度(不妊治療や女性の健康課題に対応するための特別休暇。多様な目的で利用できるものも可)
  • 短時間勤務制度(1日の所定労働時間を1時間以上短縮する制度。ただし、利用しても1時間当たりの基本給等の水準の引き下げや雇用形態の変更がされないことが条件)
  • 所定外労働制限(残業免除)、時差出勤制度、フレックスタイム制度、在宅勤務等

などが対象になります。次のコンテンツで申請のポイントなどを紹介しています。

以上(2025年6月作成)
(監修 人事労務すず木オフィス 特定社会保険労務士 鈴木快昌)

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画像:maroke-Adobe Stock

仕事はできるが態度が悪い社員は会社に残すべきか?

1 優秀だけど問題が多い社員。残すかどうか?

仕事はできるが、短気で口が悪い、上司の命令に従わない、遅刻が多いといった問題の対応は難しいものです。ただの問題社員なら、場合によっては辞めてもらう(解雇する)という選択肢がありますが、相手が会社の中核を担う優秀な社員だと、辞めた後の影響が心配です。とはいえ、優秀だからといって問題社員を放置するわけにはいきません。

このようなケースにどのように対応すべきかについて、次の2つを紹介します。

  • 誰が相手でも「服務規律違反」には毅然と対処する
  • 辞めさせたくないなら「解雇する前」の段階で手を打つ

2 誰が相手でも「服務規律違反」には毅然と対処する

就業規則には「服務規律(社員が守るべき基本的な行動規範)」があります。誰が相手でも「服務規律」を厳格に適用することが基本です。その上で、勤務態度が悪い社員には次のような流れで対処します。

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図表のうち、2)については労働条件通知書、雇用契約書や就業規則への定めが、3)から5)については就業規則への定めが必須です(ただし、1)については特に定めは不要)。

また、5)の「普通解雇」とは、

社員としての適性がない(能力、健康状態、勤務態度などに問題がある)ことを理由とする解雇

です。問題社員に対処する場合、「懲戒解雇」をイメージする人も多いでしょうが、懲戒解雇は原則、横領やハラスメントなど重大な問題行為を対象とした処分なので、単に勤務態度が悪い社員に対して行っても無効となる可能性が高いです。

図表のケースであれば、1)から4)までの行程を経ても社員の勤務態度が改善されなければ、5)の普通解雇は免れないという考え方です。逆に言えば、

1)から4)までの行程で社員が問題行為を起こさない状況をつくれば、解雇する必要はなくなる

ということになります。次章では、「『解雇する前』の段階で手を打って社員を会社に残す」という観点から、図表の各行程のポイントを紹介していきます。

3 辞めさせたくないなら「解雇する前」の段階で手を打つ

1)注意:問題行為は必ず注意する。ただし、社員の言い分も聞く

社員の勤務態度に問題があれば、まずはその上司が「君の言動は間違っている。改めなさい」などと注意します。大切なのは、「問題行為を発見したら必ず注意する」という姿勢です。時によって対応がまちまちになると、せっかく注意をしても社員から「今日は、上司の機嫌が悪いから注意されたのかな」などと、軽く受け取られる恐れがあります。

また、注意する際は社員の言い分も聞きます。例えば、仕事の進め方について上司の命令を聞かない社員は、もしかしたら自分のやり方のほうが合理的だと思っているかもしれません。実際にそうならば、

「君のやり方のほうが良さそうだ、今回はそれでやってみよう。ただし、次回から自分の考えを試したい場合は事前に相談してくれ」

と社員の意見を取り入れつつ、相談を怠ったことを注意します。

繰り返し注意しても改善が見られない場合、

「注意書」「指導書」などの形で、どのような注意をしたかを書面で残しておく

と、「言った、言わない」のトラブルになるのを防げます。

2)配置転換など:問題行為を起こしにくく、能力を発揮できる状況をつくる

注意しても社員の勤務態度が改善しなければ、

  • 短気で口が悪い社員は、他の社員と関わらずに1人でできる業務を与える
  • 上司の命令に従わない社員には、思い切って権限を移譲してみる
  • 遅刻が多い社員は、「9時始業、18時終業」などの均一的な労働時間管理が適していない可能性を考え、働く時間を自分で決められる「フレックスタイム制」を適用する

といった具合に、配置転換や労働条件の変更を検討します。社員の勤務態度を改めさせるというよりも、社員が問題行為を起こしにくい状況をつくるイメージです。

ただし、例えば「問題行為は起きにくいが、単純作業しか行わないポジションに就ける」といった配置転換は、場合によってはパワハラ(パワーハラスメント)になる恐れがありますし、優秀な社員を活用し続けたいという会社側の意図にも反します。ですから、

社員が「どうすれば問題行為を起こしにくいか」だけでなく、「どうすれば能力を発揮しやすいか」も考慮した上で、配置転換などを実施することが大切

です。

3)懲戒処分:貢献度に応じて処分を軽減しつつ、警告を忘れない

配置転換などをしても効果がなければ、就業規則の懲戒事由に基づいて懲戒処分を検討します。懲戒処分は、一般的に次の7種類に分けられます。なお、社員の問題行為に対して重すぎる懲戒処分や、弁明の機会を与えずに行った懲戒処分は無効になり得ますので注意が必要です。

  • 戒告:厳重注意を言い渡す(懲戒処分として行うので、前述した「注意」とは異なる)
  • けん責:始末書を提出させ、将来を戒める
  • 減給:一定期間、賃金額を下げる
  • 出勤停止:数日間、出勤することを禁じ、その間は無給とする
  • 降格:役職の罷免・引き下げ、または資格等級の引き下げを行う
  • 諭旨解雇:退職届の提出を勧告した上で、退職届の提出がなければ解雇とする
  • 懲戒解雇:即時に解雇する

一概には言えませんが、単に勤務態度が悪い社員に対して懲戒処分を行う場合、

一般的には「1.戒告」から「3.減給」あたりが妥当(「口が悪い」が行き過ぎてパワハラに当たる指導を繰り返した場合などは、「4.出勤停止」「5.降格」もあり得る)

です。実際は、「当該行為の動機、目的、方法、頻度等の行為態様」「会社に与えた損害や周囲への影響」「社員の過去の処分歴・指導歴や反省態度」「会社側の落ち度」「社員の会社への貢献度」などを考慮して慎重に判断します。

例えば、社員が過去に新サービスを立ち上げたなど、客観的に評価できる実績がある場合、

その貢献度を考慮して、処分を引き下げること

が可能です。とはいえ、単に処分を軽くするだけだと社員が増長する恐れもあるので、

「今回は、君のこれまでの会社への貢献度を考えて軽い懲戒処分とする。ただ、今後勤務態度に改善が見られなければ、次はより重い処分を科す用意がある」

といった具合に、社員が反省しない場合の警告もします。

4)退職勧奨:退職を促しつつ、社員に反省の意思があれば雇用継続を検討する

懲戒処分後も状況が変わらなければ、「退職勧奨」の実施を検討します。退職勧奨とは、

会社から社員に自主退職を促し、社員が同意した場合に退職させること

で、一般的な流れは次の通りです。

  • 「注意」「配置転換など」「懲戒処分」を実施したが状況が改善しなかったため、会社としては社員に自主退職してもらいたいと考えている旨を伝える
  • 退職勧奨に応じる場合の条件(退職金の支払い、年次有給休暇の消化など)について説明する
  • 社員に退職勧奨に応じるかを確認し、応じた場合に退職が成立する

退職勧奨は、会社が一方的に労働契約を解除する解雇と違い、社員に退職を強制するものではありません。ですから、

仮に社員がこの時点で「退職したくありません、これまでの勤務態度を改めます」などと言ってくるようであれば、反省の様子によっては雇用を継続する

という選択肢もあります。逆に、ここでも社員が反省せず退職勧奨にも応じない、あるいは「勤務態度を改める」というのが口だけで、その後も改善が見られないといった場合、解雇せざるを得ないという判断になります。

5)普通解雇:この行程まで来たら雇用継続は諦める

退職勧奨後も改善が見られなければ、「普通解雇」の行程に移ります。労働基準法では、

普通解雇に限らず、解雇はその30日前に解雇予告をして実施しますが(解雇予告手当を支払えば日数を短縮可)、一度解雇予告をしたら会社の意思で撤回することは不可

です。つまり、普通解雇を決定したら、社員の雇用を継続するのは諦めなければなりません。繰り返しになりますが、どれだけ優秀であっても、この行程まで来て勤務態度に改善が見られないような社員を雇用し続けることは、企業秩序を危うくします。企業秩序と社員の定着、両立できればそれが一番ですが、

いざ両立が難しくなったときは、企業秩序を優先するという姿勢を貫くこと

が大切です。

以上(2025年5月)
(監修 Earth&法律事務所 弁護士 岡部健一)

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画像:ayakono-Adobe Stock

【労災の落とし穴(建設業)】 熱中症は労災になる? ならない?

この記事では、現役社労士が直面した小さな建設業の労災の事例として、「社員が日陰も休憩もほとんどない環境で熱中症になったのに、『本人の自己責任なので労災ではない』と判断してしまった会社」の話を紹介します(実際の会社が特定できないように省略したり、表現を変えたりしているところがあります)。

1 日陰も休憩もほとんどない環境なのに、熱中症になったら自己責任と言われた……

社員数10人の屋根工事会社に勤めるベテラン社員のAさん。夏場の猛暑日が続く中、Aさんは屋根のふき替え作業を長時間続けていました。現場には日陰がほとんどなく、しかも社長が「早く終わらせよう」とせかすため、水分補給も十分にできません。そんな環境で仕事をしていたAさんは、作業中に突然、めまいや吐き気を感じ、倒れてしまいました。

同僚がAさんを日陰に移動させ、社長に報告しましたが、社長は「体調管理が甘かったんだろう」「水分をちゃんと取っていたら、こんなことにはならなかったはず」と、Aさんの自己管理不足を責める始末……。さらに、「大した症状ではないだろう」と判断し、労災対応や医療機関への報告も行わず、Aさんを自宅で休ませるだけにとどめてしまいました。

2 会社の安全配慮義務が原因で熱中症になったのなら、労災になり得る

業務中の事故でけがをした場合、それが労災になるかどうかは、

  • 業務遂行性:その事故は、「会社の支配・管理下にある」ときに発生したのか
  • 業務起因性:その事故は、「業務と因果関係がある」といえるか

を基準に判断されます。

Aさんは、屋根のふき替え作業中に突然、めまいや吐き気を感じたので、業務遂行性は認められるでしょう。問題は、業務起因性ですが、会社には安全配慮義務(労働者が安全に働けるよう配慮する義務)があるため、

安全配慮義務を果たさなかったことで事故が発生したのであれば、業務との因果関係があるとして、業務起因性が認められる可能性が高い

です。屋外作業や高温多湿の環境が原因で起こる熱中症は、会社が管理すべき作業環境が大きく影響します。Aさんのケースでは、「休憩を十分に与える」などの安全対策が取られておらず、安全配慮義務を十分に果たしているとはいえないので、労災になり得ます。「本人の体調管理が甘かった」「水分をちゃんと取らなかった」では済まされないのです。

3 万が一の発症時は、すぐ医療機関を受診&労災の手続きを

熱中症は重篤化すると生命に関わる危険があります。熱中症の疑いがある社員がいたら、まずは速やかに作業を中断させ、医療機関を受診するよう指示しましょう。労災であれば、

4日以上の休業が発生した場合、労働基準監督署に「労働者死傷病報告」を遅滞なく提出しなければなりません。4日未満でも、四半期ごと(3カ月ごと)にまとめて報告が必要

です(違反は労働安全衛生法により50万円以下の罰金の対象)。なお、2025年1月からは「電子政府の総合窓口(e-Gov)」での提出(電子申請)が義務化されています。

ここまでが、社員が熱中症になった場合の対応ですが、もちろん「予防」も大切です。

  • 定期的な休憩時間の確保
  • スポーツドリンクの用意
  • 日除け・テントや遮光ネットの設置
  • 冷却ベストやファン付き作業服の導入(作業服や保護具の通気性が悪い場合)

など、会社が取れる予防策は多岐にわたります。熱中症の初期症状(めまい、だるさ、吐き気、頭痛など)を社員に周知し、チーム全員で互いの体調をチェックし合えるようにするなど、安全衛生教育も不可欠です。

夏の建設現場は、何もしなくても熱中症になるリスクがあります。

社員の自己責任では片付けられない(会社が責任を問われる可能性がある)

ということを念頭に置いて、会社主導で積極的に対策を講じましょう。

以上(2025年6月作成)

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画像:ChatGPT

【PDF】印刷して貼れる職場ポスター「仕事中に熱中症になってしまったら」

印刷して職場に掲載できるポスターです。

今回は、仕事中に熱中症になってしまったときの対応策を作成しました。


こちらからポスターのPDFをダウンロードできます。社員への呼びかけのため、職場や店舗に貼ってご活用ください

こちらからダウンロード

以上(2025年5月作成)

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画像:日本情報マート

【PDF】印刷して貼れる職場ポスター「STOP 熱中症 水分の補給と適度な休憩を!」

印刷して職場に掲載できるポスターです。

今回は、熱中症予防のため、社員に水分の補給と適度な休憩を推奨するものを作成しました。


こちらからポスターのPDFをダウンロードできます。社員への呼びかけのため、職場や店舗に貼ってご活用ください

こちらからダウンロード

以上(2025年5月作成)

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画像:日本情報マート

うつ病から復職した社員に 「もう一度休みたい」と言われたら?

1 復職した矢先に再び症状が悪化するケースは珍しくない

「休職(私傷病休職)」とは、

社員が私傷病(仕事以外の理由によるケガや病気)で働けない場合、労働契約を維持したまま、一定期間労働義務を免除する制度

です。就業規則で定めた休職期間が満了するまでに社員が働ける状態に回復したら「復職」、そうでなければ「自然退職」となるのが一般的な流れです。

もちろん復職できるのが理想ですが、うつ病のように完治の判断が難しい病気の場合、

社員が復職した矢先に、再び症状が悪化してしまうケース

は珍しくありません。経営者としては、「社員に働く意思があるなら、症状が改善するまで根気強く待ってあげたい」という気持ちもあるでしょう。ただ、他の社員との兼ね合いもあり、ある程度はルールに基づいて対応せざるを得ないのがつらいところです。

そこで、この記事では、「復職した社員の症状が再び悪化しても、雇用を継続できるようにするにはどうすればよいか」を、次の3つに注目して考えていきます。

  • 休職期間の「通算」の規定を確認する
  • 雇用形態の変更などによって働き方のルールを変える
  • 社員の生活保障(傷病手当金や退職金)にも注意する

2 休職期間の「通算」の規定を確認する

休職制度は、法律上の制度ではなく、会社が就業規則で独自にルールを定めて実施します。そして、休職制度がある会社の中には、一定期間内に同じまたは類似の傷病で再び休職したら、休職期間を「通算」する規定を設けているところがあります。具体的には次の通りです。

復職した社員が、その後○カ月以内に、同じまたは類似の傷病により再度欠勤をした場合、もしくは通常の労務提供ができなくなった場合は復職を取り消し直ちに再休職とする。この場合、以後連続または断続する欠勤は、復職前に休職した期間と通算する。

このような「通算」の規定があった場合の流れを確認します。例えば、休職期間が最長6カ月間の会社で、社員がうつ病で2カ月間休職したとします。この場合、復職後すぐにうつ病が再発したら、休職期間は通算され、再休職できる期間は4カ月間(6カ月間-2カ月間)となります。ただし、うつ病以外の病気であれば、それが原因で再休職しても、休職期間は通算されません。

仮に1回目の休職で6カ月間休んだ場合、休職期間の上限に達してしまうので、再休職はできません。その場合、一般的には、休職期間の満了までに復職できなかったとして、自然退職になります(就業規則に定めが必要。なお、うつ病以外の病気による再休職は6カ月間まで可)。

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なお、休職期間の通算と併せて、就業規則に休職期間を延長できる規定が設けられていないかを確認することも必要です。就業規則では、「必要に応じ、これを延長することができる」というような規定が設けられていることも多く、会社の裁量によって休職期間を延長できます。

3 雇用形態の変更などによって働き方のルールを変える

休職期間が残っていない社員をそれでも雇用し続けたいのであれば、「雇用形態の変更や部署移動などによって働き方のルールを変える」ことを検討します。

例えば、

社員の雇用形態を正社員からパート等に変更することで、業務の負担を減らす

という方法で雇用を継続することができます。次のように労働日を調整することで、正社員が休んだ場合は「欠勤」扱いとなる日を、「休日」扱いにできる可能性があります(「欠勤」扱いにならなければ、休職制度を適用する必要がない)。

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ただし、雇用形態の変更は会社の一存では行えません。社員との合意が必要です。特に正社員からパート等に転換する場合、一般的には、

  • 業務内容や責任が変わることで、賃金が下がる
  • 所定労働時間が変わることで、年次有給休暇の付与日数が少なくなる
  • 退職金の支給の有無が変わる

など、従前よりも労働条件が引き下げられるケースが多いです。ですから、書面などで労働条件の変更部分を明確にした上で、合意を得るようにします。

なお、社員と労働条件について相談する際は、

正社員として業務を行える状態に回復した場合、パート等から正社員に戻れるか否かについても明らかにして社員に伝える

ようにしましょう。

その他、雇用形態の変更に合意が得られない場合には、短時間勤務制度やフレックスタイム制度、テレワークを適用するなどとして、雇用を継続することも考えられます。

4 社員の生活保障(傷病手当金や退職金)にも注意する

最後に、復職した社員が再び働けなくなってしまった場合の生活保障について、「休職期間が残っている場合」と「休職期間が残っていない場合」とに分けて考えてみます。

1)休職期間が残っている場合

社員が一定の要件を満たせば、再休職中に健康保険の「傷病手当金」がもらえます。支給額は「おおむね休職前の賃金の3分の2」です。通常、傷病手当金は、療養のために連続3日以上休んでからでないともらえませんが、

同じ傷病であれば、2回目以降は再び会社を休んだ日(再休職した日など)から支給

されます。ただし、支給期間は、同一の傷病について最初に支給が開始されてから通算1年6カ月間が上限なので、例えば、1回目の休職で傷病手当金を2カ月間もらった場合、再休職での支給期間は1年4カ月間(1年6カ月間-2カ月間)までとなります。

ただし、雇用形態を正社員からパート等に変更した場合、

社員が健康保険の被保険者でなくなり、傷病手当金がもらえなくなる可能性がある

ので注意が必要です。

なお、社員の年次有給休暇(年休)が残っている場合、休職に入る前に取得してもらうことも併せて検討しましょう。一度休職に入ると、労働義務が免除された状態になり、年休が取得できなくなってしまうので注意が必要です。

2)休職期間が残っていない場合

前述した通り、雇用形態が変わると賃金は従前よりも下がるケースが多いので、社員は不安です。こうした場合の対策として、

正社員からパート等に転換した時点で退職金を支給し、当面の生活に充ててもらう

という方法があります。退職金規程などで「雇用形態が正社員からパート等に変更され、かつ社員が雇用形態の変更時に退職金を受け取ることを希望した場合、退職金を支給する」という旨の規定を設けておけば対応可能です。ただし、その場合、

パート等に転換した社員の症状が改善し、再び正社員に戻った場合の退職金の取り扱い

に注意が必要です。退職金規程などに「社員が退職した場合、退職金を支給する」という定めがあれば、パート等が正社員再転換後に退職する際にも退職金を支給することになりますが、その場合、図表3のように「パート等への転換時に退職金をもらったか否か」によって退職金の算定方法が変わり、支給額に差が出ることがあります。

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以上(2025年5月更新)
(監修 三浦法律事務所 弁護士 磯田翔)

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画像:琢也 栂-Adobe Stock

エアコン「暑い派」VS「寒い派」問題!平和的解決の方法とは?

1 「暑い派」と「寒い派」それぞれへのケアを叶えるには?

コロナ禍で浸透したテレワークが見直され、オフィス勤務中心の働き方に戻った会社も多いと思います。しかし、暑くなってきたこの時期に多くの社員がオフィスに集まるとなると、“あの”問題が勃発します。それは、

エアコン温度の「暑い」vs「寒い」バトル

です。

例えば、エアコンの設定温度を下げた暑がりの社員を寒がりの社員が睨んでいるのを目撃したり、逆に汗だくになりながらやせ我慢をしている暑がりの社員を目撃したり……皆さんも、一度は経験があるのではないでしょうか。

今年も去年に引き続きまたもや猛暑となる予想ですが、オフィスでは一人ひとりの好みに合わせた室温の調整はできないので、会社としては何とかこのバトルの対策を講じておきたいところです。また、

快適に働くための環境づくりは、業務の生産性向上という面でもとても大切

です。

そこでこの記事では、オフィスにおける適温や、「暑い派」「寒い派」それぞれへのケア方法など、猛暑の中でも社員が快適に働けるようにするポイントを紹介していきます。

ちょっとした工夫や心掛けで業務中の快適さは一気に変わりますので、今一度オフィス環境について振り返り、改善することをご提案します。

2 「快適さ」は多角的に捉えるべし

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1)室温の変化でオフィスの生産性も変わる?

暖冷房・換気、給水・排水、衛生設備など生活と密着した設備を主に研究している空気調和・衛生工学会の研究によると、室温の変化がオフィスでの生産性も影響をすることが明らかになっています。

同学会の西原 直枝氏(日本女子大学家政学部准教授)、2020年まで会長を務めた田辺 新一氏(早稲田大学創造理工学部教授)などが発表した論文「コールセンターにおける中程度の高温環境が作業効率に与える影響の評価-2004年と2012年の比較-(空気調和・衛生工学会大会 学術講演論文集{2014.9.3~5 秋田}29-32)」によると、空気温度が26.5度を超えると生産性が大きく低下するという結果も実証されています。こうしてみると、

オフィスでの快適な環境を用意することは、会社の業績や仕事の生産性の上昇につながる

といえるでしょう。

2)バトルの原因は「PMV」だった

まずは、快適なオフィス環境を整えるために知っておくと良い知識、

「PMV(Predicted Mean Vote)、予測平均温冷感申告」

についてご紹介します。PMVとは「快適さを表す国際規格」で、

  • 室温
  • 湿度
  • 着衣量
  • 放射(日当たりや熱からの距離)
  • 気流(直接エアコンの風が当たるかどうか)
  • 活動量(体を動かしているか)

の6つの要素によって、その数値が左右されます。

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「PMV」では、暑さ・寒さの度合いを-3~+3の値で示します。そしてISO(国際標準化機構)が定めた基準によると、約9割の人にとって「快適」な数値は、上図のように「-0.5~+0.5」と、かなり狭い範囲です。

つまり、同じオフィスで働いていても、皆が感じている快適さの数値は同じではないということです。これが「暑い派」vs「寒い派」のバトルの原因で、

快適なオフィス環境を整えるためには、エアコンの温度設定だけでなく、「PMV」を構成する指標の多角的な要素を捉えて対策する必要がある

といえるでしょう。

3)段階を踏んでバトルの鎮火を目指そう

次に、この「PMV」を快適温度範囲に近い数値で平均化するために、経営者が社員のためにできることを紹介します。

ポイントは、次の3段階でオフィス環境を調整することです。

  • 【対・全体】まずは部屋全体で「室温」や「湿度」という最低限の環境を整える
  • 【対・陣営ごと】次に社員の「暑い」「寒い」という体感に合わせて席の移動を許可することで、「気流」「放射」を調整する
  • 【対・個人】最後に個人の「着衣量」に柔軟に対応することで、「活動量」や個人の代謝の差に対して微調整をかける

次章以降では、各要素をコントロールする方法を解説していきます。

3 【対・全体】まずは「室温」や「湿度」を調整

一番に整えておかなければいけないのが、対・全体の環境。PMVの中で、確実に操作できる「温度」と「湿度」がこれに当てはまります。

オフィスの衛生管理に関する法令「事務所衛生基準規則」では、室内にエアコンなどの空調設備がある場合「室の気温が18度以上28度以下、相対湿度が40%以上70%以下になるよう努めなければならない」と定められています。

ただし、これはエアコンの設定温度の話ではなく、オフィスの「室温」や「湿度」の基準

です。

たとえエアコンの設定温度が28度でも、実際の体感温度は、湿度やオフィスにいる社員の人数などによっても大きく左右されます。温度計や湿度計を用意し、エアコン設定の調整や除湿機の活用を検討してみるのもよいでしょう。

また、環境省はクールビズ下で28度の室温を推奨していますが、これはいまから20年近く前に設定された指標です。それを考えると、

室温28度、湿度70%以下を基準にしつつも、近年記録的な猛暑が確認されていることも鑑みて、柔軟な対応を心がける

ことがお勧めです。

4 【対・陣営ごと】フリーアドレスで「気流」「放射」を調整

一旦の目標点としてオフィス全体の温度・湿度を設定できたとしても、「暑い派」vs「寒い派」バトルの根本的な解決には至りません。そこで、

この夏は、フリーアドレスで放射・気流を調整

してみましょう。フリーアドレスとは、「職場で従業員の席を固定せず、空いている席を自由に使う制度」(小学館 デジタル大辞林より引用)のこと。

例えば、

「寒い派」陣営が窓の近くのデスクに、「暑い派」陣営が日陰のデスクに移動することで、2つの陣営に「放射」の差をもたらす

ことができます。紫外線の問題もあるので、基本的には夏場のブラインドは下げておくのがベターですが、窓の近くは放射で他の場所より暖かくなります。

また、

「暑い派」陣営はエアコンの風が当たる場所に、「寒い派」陣営はエアコンの風が当たらない場所に移動することで、「気流」の数値も調節

することが可能です。普段であればあまり気にすることはないですが、改めて天井を見上げ、エアコンの位置や風がよく当たる席を確認してみるのもよいでしょう。

業務上の都合でフリーアドレスを取り入れることができない場合は、エアコンにアクリル板を取り付けて「寒い派」の社員に直接風が当たらないようにするなどの対策もできます。

5 【対・個人】「着衣」を柔軟に! 個人差を調整

単なる「暑い派」vs「寒い派」の戦いで終わってくれないのが、夏場のエアコン調節問題の怖いところです。「暑い」「寒い」陣営のみに着目し、個々へのケアを怠ると、

  • 暑い派陣営の中でも一番の暑がりは「熱中症」
  • 寒い派陣営の中でも一番の寒がりは「冷房病(クーラー病、体が急激な温度差についていけず、自律神経に異常をきたす症状)」

などになってしまう恐れがあります。

また、個人が「暑い」か「寒い」かは、そもそもその時にどれだけ体を動かしているかという「活動量」の違いや、PMVを構成する要素以外でも、外的調整ができない代謝の影響が大きいことも覚えておきたいポイント。

それをカバーするために活躍するのが、「着衣量」で個々のPMVを調整する

という方法です。

身近で分かりやすい例は、ネクタイを外すと体感温度が2度下がる「クールビズ」です。

「全員が快適」をかなえることが難しくても、個人個人ができる限り快適さと健康をかなえられるよう、ネッククーラーを許可する・ブランケットを羽織るのを許可するなど、柔軟な対応を心掛けましょう。

こちらのコンテンツで最新の熱中症対策グッズを紹介していますので、ぜひご確認ください。

6 快適なオフィスで猛暑を乗り切ろう

ここまで紹介してきたように、フリーアドレスや自由な服装などを取り入れるだけでも、社員が快適に仕事をする環境を整えることが可能です。

オフィスで働く社員の健康を保つためにも、また気温差による生産性の低下を防ぐためにも、今夏は快適な環境維持に努め、猛暑を乗り切りましょう!

以上(2025年6月更新)

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画像:illustAC