【事業承継】「財産の承継」は合わせ技。基本的な方法を押さえよう

1 事業承継で重要となる自社株式の評価

オーナー企業の事業承継では、自社株式の評価額が非常に重要になります。業績好調で利益を積み重ねれば自社株式の評価は上がりますが、事業承継に限っていえば、評価が上がるのは好ましいことばかりではありません。なぜなら、

親族内承継であれば評価額を下げたいですし、M&Aによる第三者への承継であれば評価額を上げたい

からです。実際、親族内承継の場合、後継者に株式の買い取り資金がないこと、譲渡の際の贈与税・相続税が高いということが課題となっています。

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自社株式を後継者に「安く」引き継ぐことが事業承継を成功させるポイントですが、

  • さまざまな方法があり、それぞれ専門的である
  • 専門家や支援機関によって指摘するポイントが違う

といった課題があり、とっつきにくい分野です。そこで、この記事では、親族内承継を中心に財産の承継において、これくらいは知っておきたいというポイントをまとめます。実際に取り組む際は、必ず専門家などにご相談ください。

2 後継者に「3分の2以上」の株式を集中させる

後継者に自社株式を集中させる必要がありますが、具体的な割合を意識していますか? 過半数あれば大丈夫と考えているかもしれませんが、これは「普通決議」ができる水準にとどまります。より安定的な経営をするためには、「特別決議」ができる3分の2以上を後継者に集中させなければなりません。「特別決議」で決められることには「定款の変更や組織再編など」があり、より積極的な経営がしやすくなります。一方、長く続いている会社ほど株式が分散する傾向があります。そこで、

会社や後継者が自社株式を買い取り、後継者を対象にした新株発行などを通じて、後継者の持株比率を高めること

を検討する必要があるでしょう。

さらに、事業承継をした後の株式分散を防止するために、定款に株式譲渡制限や株式の買い取り請求に関する事項を定めることも検討しましょう。

3 自社株式の評価を引き下げる、引き継ぐ数を減らす

1)自社株式の評価を引き下げる方法

自社株式の評価方法はさまざまです。中小企業の場合、

  • 類似業種比準価額方式:事業内容が類似する上場会社の平均株価を参考に計算する
  • 純資産価額方式:評価時点で資産や負債を時価評価した場合の純資産価額を、自社株式の数で除して計算する
  • 両方を併用

が用いられますが、いずれも純資産価額を引き下げれば自社株式の評価は下がります。純資産価額を引き下げる方法には、

  • 役員退職慰労金を支払う
  • 不動産を購入する

などがあります。特に役員退職慰労金は、経営者と後継者が話し合ってしっかりと決めるべきです。経営者は「勇退時にいくら欲しいのか」を明確に告げ、時期を決めて支給すれば自社株式の評価を引き下げられます。とはいえ、いくらでもよいというわけではなく、過大であれば税務上否認される恐れがあります。また、不動産の購入についても相続時の評価などに注意する必要があります。

2)引き継ぐ自社株式の数を減らす方法

全株式を引き継ぐと後継者の負担が重くなります。「3分の2」の株式を後継者に集中させれば、残りの3分の1は別の株主でもよいわけです。それも、

会社の方針に賛成し、長期に保有してくれる安定株主が好ましい

ということであり、ここで検討されるのが「従業員持株会」の設立です。従業員に株式を保有してもらえば、経営の安定と事業承継時の後継者の負担軽減が実現します。

4 「相続」の負担を軽減する

高齢の経営者が親族内承継をする場合、「相続」が事業承継の中心的な話題となります。負担軽減にどのような方法があるのか、ポイントを簡単に紹介します。

1)相続時精算課税:イメージは2500万円+年間110万円

「相続時精算課税」とは、贈与税の先送りのような制度です。具体的には、生前贈与について、特別控除(累計2500万円)と基礎控除(年間110万円で、2024年1月1日以後の贈与に適用)の合計額まで贈与税が非課税となり、これを超える部分には一律20%の贈与税がかかります。実際に相続が発生した場合、生前贈与した部分(年間110万円の基礎控除分を除く)も含めて相続財産を評価し、相続税を計算します。ポイントは、

生前贈与した時点と、相続した時点の財産の価値の違い

です。価値が小さいうちに生前贈与し、価値が大きくなったときに相続が発生すると、生前贈与時の小さい価値により相続財産とされるため、後継者の負担は軽減されることになります。つまり、将来、業績が向上して自社株式の評価が高まると考えるなら、相続時精算課税はさらに有効な手段になります。

2)暦年贈与:イメージは年間110万円

「暦年贈与」という制度もあります。これは、年間110万円までの贈与が非課税となる制度です。非課税はうれしいところですが、年間110万円までしか非課税枠がなく、10年間にわたって利用しても贈与できるのは1100万円です。経営者が若く、よほど計画的に事業承継を検討していない限り、メリットは小さいかもしれません。また、前述した相続時精算課税と併用することもできません。なお、暦年贈与については死亡日以前3年~7年間の分を相続財産に加えることになっています。つまり、相続税がかかるということです。

  • 死亡日以前3年間:これまで同様に全て相続財産に加える
  • 死亡日以前4〜7年間(2027年の相続については最長4年間となり、翌年から段階的に延長され2030年以後の相続で最長7年間):100万円を差し引いた額を相続財産に加える

といった取り扱いになります。

3)事業承継税制

事業承継税制とは、

一定の要件を満たし続ければ、承継した自社株式にかかる相続税・贈与税が猶予・免除される制度

です。一定の要件についての詳細は割愛しますが、簡単にいうとある程度の規模を継続しながら会社経営を続け、事業承継のたびにこの制度を使えば、相続税と贈与税が猶予・免除され続けるというものです。

4)持ち株会社(ホールディングス)

厳密には相続と違いますが、事業承継の通過点として持ち株会社(ホールディングス)が設立されることもあります。株式移転などの組織再編の手法を用いるのですが、

持ち株会社に会社の株式を移転。事業会社(元の会社)は、持ち株会社の100%子会社

とします。経営者は持ち株会社の代表、後継者は元の事業会社の代表になり、経営者は持ち株会社の代表の立場から後継者の経営をサポートします。ある意味で「院政」のような体制となりますが、後継者がまだ若い場合など、事業承継前のワンステップとして有効です。

5 遺言書の作成、家族信託の利用

1)遺言書の作成

ここまで後継者の負担軽減を前提に説明してきましたが、それ以外の親族への配慮も必要です。例えば、経営者に長男と次男がいて、後継者である長男にだけ遺産を集中させると次男が不満を覚え、兄弟げんかになって会社経営に悪影響を及ぼしかねません。そこで、経営者は「遺言書」を作成し、

遺産の配分や、配分した意図(法的拘束力はない)

を残しておくことが大事です。なお、相続には「法定相続分」があります。例えば相続人が「配偶者や子」の場合、それぞれ2分の1ずつ相続できることになっています。しかし、遺言書を書くとこれを変えることができます。とはいえ、遺言書に書いたからといって法定相続分がゼロになることは問題なので、「遺留分」が定められています。相続人が「配偶者や子」の場合、それぞれ4分の1ずつ相続できることになっています。

2)家族信託の利用

ちょっと視点は変わりますが、財産の承継を間違いなく行うために、「家族信託」を利用することもあります。家族信託とは、

経営者が家族に財産(自社株式も含む)の管理を託すこと

であり、経営者が認知症になった際の対策として利用されるのが一般的です。高齢な経営者は認知症のリスクがあり、万一の場合は冷静な判断ができません。そうなると事業承継どころか会社経営が立ち行かなくなってしまうため、家族信託を利用し、長男が「議決権」を行使できるようにするなどします。

6 M&Aを検討する際の主なポイント

1)M&Aの目的と課題

ここまで親族内承継を中心に考えてきましたが、最後にM&Aについても簡単に触れておきます。アンケートなどを見るとM&Aに対する悪いイメージは根強いようですが、一方で近年は後継者不足からM&Aによる第三者への承継が増えているのも事実です。M&Aによって想定されている効果と課題は次の通りです。

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2)M&Aの種類

M&Aにはさまざまな種類があり、代表的な方法およびそれぞれの特徴は次の通りです(中小企業庁「事業引継ぎハンドブック(2015年9月)」)。

1.株式譲渡

譲渡する側の会社のオーナー(経営者)が所有している発行済株式を、譲り受ける側の会社に売却し、子会社になることです。株主および経営者が交代するだけで、社員や社外の関係は変わりません。会社をそのまま存続させたいときや、オーナー(経営者)の持つ株式を現金化したいときに向いています。

2.事業譲渡

譲渡する側の会社が、その事業部門の全部または一部を譲り受ける側の会社に売却します。債権や債務、契約関係、雇用関係などについて、それぞれ同意を取り付けてなければいけないため手続きは煩雑です。また、複数の事業のうちの一部だけを売却し、その他の事業は残したい場合には有効な方法です。

3.吸収合併・吸収分割

吸収合併は、譲渡する側の会社の全ての資産や負債、社員などを譲り受ける側の会社が吸収し、譲渡する側の会社は消滅します。雇用条件の調整や事務処理手続きの合意の形成が難航する恐れがあります。吸収分割は、譲渡する側の会社が、その事業部門の全部または一部を分割した後、譲り受ける側の会社に承継させる方法です。労働契約承継法によって、社員の現在の雇用がそのまま確保されます。

3)M&Aに向けた事前準備と支援機関への相談

M&Aで会社を売却する場合、相手先との交渉に入る前に、仲介機関の選定や会社の実態把握、企業の「磨き上げ」などさまざまなことをしなければなりません。最も注意すべきなのは、

いかにして秘密を守り、外部への漏洩を防ぐか

です。第三者はもちろん、親族や友人、役員・社員に至るまで十分に注意しましょう。また、こうした一連の手続きを自社だけで行うことは困難なので、専門的なノウハウを有する支援機関に相談しましょう。具体的には、事業引継ぎ相談窓口、事業引継ぎ支援センター、商工会議所、金融機関(銀行、生命保険会社、損害保険会社)、税理士、弁護士、M&A仲介業者などがあります。それぞれ得意分野や業務の範囲、報酬体系などが異なるため、実績や利用者の声などを十分調査して選択しましょう。その際、複数の機関から話を聞いて比較することを忘れないでください。

以上(2025年8月更新)
(監修 アイ・タックス税理士法人 税理士 山田誠一朗)

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画像:Mariko Mitsuda

最前線でクマと対峙! マタギと猟友会のヒミツ(9月法改正の内容を追記)

1 鳥獣保護管理法改正でますます注目! マタギと猟友会

近年、人の生活圏内にクマが出没し、人的・物的被害が増加していることが大きな社会問題となっています。2023年度は全国でクマによる人身被害が過去最多の219人(うち死亡者6人)に達し、2025年度も8月末時点ですでに69人(うち死亡者5人)の被害が出ている状態です(環境省「クマによる人身被害件数(速報値)」)。

以前は想定しにくかった「市街地にクマが出没するケース」も報告されており、こうした状況を受けて、2025年9月1日から鳥獣保護管理法が改正されました。改正内容は複数ありますが、特に重要なのが「銃猟(銃を使用してクマ等を捕獲すること)」のルール変更です。以前は、市街地での銃猟は原則禁止(都道府県知事の許可を得た場合を除く)されていたのですが、

  1. 危険鳥獣(クマ等)が人の日常生活圏(住居、広場、乗物等)に侵入し、
  2. 危険鳥獣による人の生命・身体への危害を防止する措置が緊急に必要で、
  3. 銃猟以外の方法では的確かつ迅速に危険鳥獣の捕獲等をすることが困難であり、
  4. 避難等によって地域住民等に弾丸が到達する恐れがない場合

に限り、市町村長が捕獲者に委託して「緊急銃猟」を行えるようになりました。

さて、捕獲者として実際に銃猟を行うのが「マタギ」や「猟友会」。前述した法改正で、地域の安全を守る彼らの役割はますます重要になってきています。日本の狩猟文化を語る上でも欠かせない存在ですが、その実態や関係性、そして現代社会における役割については、意外と知られていないことも多いのではないでしょうか。

この記事では、マタギと猟友会の「ヒミツ」に迫り、それぞれの魅力と、現代社会が抱える野生動物との共存という課題に対する彼らの貢献、今後の展望について深掘りしていきます。

2 マタギと猟友会:それぞれの定義と関係性

1)マタギとは

マタギは、主に東北地方・北海道で、古くから伝わる伝統的な方法を用いて集団で狩猟を行う人々を指します。特に秋田県の阿仁地方は、本家「マタギの里」として知られています。マタギの語源については、「狩猟用具に又木を使用することから来た」「狩猟を意味するアイヌ語のマトキから来た」など諸説あります。

マタギの狩猟は、地域の「マタギ組」という共同体によって行われ、頭領(シカリ)の指示のもと、厳格な役割分担と公平な獲物の分配が行われます。狩猟は彼らの生活の基盤であり、山を神聖な場所と捉え、独自の掟や山言葉など、山岳信仰に基づいた独自の文化を持つ人々でもあります。

正確な統計はありませんが、現在は後継者不足でマタギの数が激減しているとされています。一方、動植物の乱獲や自然破壊といった問題が深刻化している昨今、マタギ独自の文化が、古くて新しい文化として再評価されている面もあります。

2)猟友会とは

猟友会は、狩猟免許を持つ人々が所属する公益団体です。全国組織である大日本猟友会を中心に、各都道府県、市町村単位で支部が組織され、狩猟事故の防止、マナー向上や関係法令改正の要請、狩猟の担い手の育成、野生鳥獣の保護管理などの事業を行っています。

現代において狩猟を行う人はほぼ猟友会に所属しており、情報交換や共同での狩猟活動、地域での有害鳥獣駆除などに重要な役割を果たしています。また、猟友会に加入すると、会員全員が大日本猟友会の「狩猟事故共済保険」(対人補償限度額4000万円)に入れるなどのメリットもあります。

大日本猟友会によると、猟友会の会員数は1978年度にピーク(42万4820人)を迎えるも、その後は後継者不足などから減少が続き、2023年度は10万1068人となっています。一方、女性の会員数については、カウントが始まった2015年度(1183人)から年々増加し、2023年度は3799人となっています。

3)両者の関係性

現代において、多くのマタギは猟友会に所属しています。これは、現代で狩猟を行うには鳥獣保護管理法に基づいた狩猟免許の取得が必須であり、マタギも例外ではないためです。また、地域の有害鳥獣駆除活動は猟友会が中心となっており、マタギはその長年の経験とクマなどの大型獣に関する深い知識を活かして、この活動に大きく貢献しています。

3 マタギが持つ独自の文化とは?

マタギの文化や精神性は、厳しい自然と共生する中で育まれた、深い知恵と畏敬の念に満ちています。

1)山岳信仰と厳格な掟

マタギにとって山は、獲物を与えてくれる恵みの場所であると同時に、危険も潜む神聖な領域です。山の神への畏敬の念から、多くの厳格な掟が生まれ、守られてきました。

  • (女人禁制)山の神が嫉妬深いとされることから、マタギの狩りの場に女性が入ることは禁じられてきました。家でお産があった場合も仲間に入れないそうです。
  • (山に持ち込んではいけないもの)酒やタバコは禁止、汁かけ飯を食べてはいけない、サメやイカを持ち込めないなどのルールがあります。
  • (ケボカイの儀式)獲物を解体する前に行われる儀式です。獲物の魂を山の神に返し、肉と皮を受け取るという意味があります。頭領(シカリ)しか行うことができません。

2)独自の山言葉

山に入る際には、日常生活で使う「里言葉」ではなく、マタギにしか通じない「山言葉」を使用します。

  • (神聖な領域での言葉遣い)山は神聖な場所であり、里の言葉は「穢れた言葉」とされます。そのため、山の神を怒らせないよう、独特の言葉を使うのです。山の中で里の言葉を使うと、冬でも裸にされて水こり(身を清める)をさせられたそうです。
  • (山言葉の例)例えば、米を「クサノミ」、人を「ヘタゲ」、クマを「イタジ」、犬を「ヘダ」などと呼びます。動詞についても、食べるは「クサノミヲツム」、寝るは「スマル」などと言います。

3)自然との共生とそこから得られる「知恵」

マタギは、山を深く理解し、自然の摂理に従って生きることを重んじます。これは単なる知識ではなく、身体に染み付いた「知恵」として受け継がれています。

  • (獲物の全身活用)マタギは獲物を「山の神からの授かりもの」と考え、肉はもちろん、内臓から骨、血液、脂まで余すことなく使います。肉を食べるだけでなく、舌や内臓を薬として使うこともあります。皮や血を絵画の材料に使うケースもあるそうです。
  • (何事も静かに)マタギは、山を歩くときは足音を立てません。また、咳払い、あくび、歌を歌うことや口笛を吹くこともしません。仲間と相撲を取るなどして戯れるのも禁止。これは自然への配慮と、獲物に自身の存在を悟られないための知恵でもあります。
  • (敬意を持った真剣勝負)獲物を仕留めた際、マタギは「勝負させてもらった」と言います。常に獲物と対等な立場で勝負し、命のやり取りに深い敬意を払うのです。

4 猟友会はどんな活動をしている?

クマの被害などが深刻化する昨今、マタギを含む猟師が所属する猟友会では、次のような活動をしています。

1)有害鳥獣の捕獲・駆除

猟友会会員は、自治体からの要請に応じて、主にオレンジ色のベストと帽子を着用し、銃器や罠を用いてこれらの動物の捕獲に協力しています。この活動は義務ではありませんが、住民の安全確保のためにボランティア精神に基づき行われています。

  • (有害鳥獣の捕獲)自治体から依頼を受け、猟友会の会員が猟銃や罠により有害鳥獣の捕獲を行っています。主な捕獲対象は、クマ・ニホンジカ・イノシシ・ニホンザル・カワウなどです。農林業被害を軽減させるため、一部の鳥獣については加害群の数や生息数について目標数値が定められています。
  • (外来種の駆除)日本にもともと生息していなかった外来種による被害を防ぐため、「特定外来生物」の駆除に取り組んでいます。特定外来生物には、アライグマ、アメリカミンク、ヌートリア、タイワンリス(クリハラリス)などが指定されています。
  • (訓練の実施)警察や自治体と連携し、鳥獣の被害から人々を守るための訓練を実施しています。例えば、市街地にクマが現れた場合を想定し、通報を受けてからクマを追い払うまでの手順の確認、クマが逃げなかった場合の猟銃による駆除や怪我人の救護などの流れの確認をするケースがあります。

2)環境への配慮

森林は多くの野生鳥獣の生息地であるため、その保全は鳥獣の生息数増加に直結します。多くの猟友会が地域で植樹や森林保全活動などに協力しています。

  • (植樹等の推進)自治体と協力して、キジ・ヤマドリの増殖・放鳥事業を行い、狩猟対象の鳥類の増加に努めています。一部の猟友会では、「野鳥愛護校」を指定し、巣箱や双眼鏡を贈るなどの活動も行っています。
  • (各種環境調査への協力)毎年1月に実施される環境省「ガン・カモ調査」の際は、各猟友会がカモ類の狩猟を自粛し、調査に協力します。この他、環境省や自治体が実施する地域の野生動物関係の各種調査に、猟友会会員である狩猟者が協力しています。

3)狩猟の知識・文化の伝承

猟友会の会員数の減少・高齢化が進む中で、狩猟の知識・文化を次世代につなげていくための活動も行われています。

  • (狩猟体験会の実施)猟友会による射撃や鳥獣の解体、罠の仕掛けなどの体験会が行われるケースがあります。
  • (ジビエ利用の推進)脂の乗った猪のぼたん鍋や鴨鍋、雉鍋など、野生鳥獣の肉(ジビエ)の利用を推進することで、命を無駄にしないという文化の伝承に努めています。

5 マタギと猟友会、それぞれの課題・展望

マタギも猟友会も、現代社会において多くの課題を抱えていますが、同時に今後の展望も期待されています。

1)マタギの課題と展望

1.課題

  • (高齢化・後継者不足)厳しい修行や、生活様式の変化などからマタギの道を志す若者が少なく、高齢化が進み、伝統的な狩猟技術や文化の継承が困難になっています。
  • (法規制との調整)伝統的な狩猟方法や文化が、現代の鳥獣保護管理法などの法規制と必ずしも合致しない場合があり、活動が制限されることがあります。

2.今後の展望

  • (文化継承の取り組み)マタギ文化の保存・継承を目指す団体や、マタギの魅力を伝える教育プログラムなどが各地で始まっています。秋田県の阿仁地方では、マタギを志す若者をインターネットで募集する動きもあります。
  • (エコツーリズムへの活用)マタギ文化を活かしたガイド付きトレッキングや、マタギ小屋での体験など、地域活性化や観光資源としての可能性が模索されています。
  • (自然共生モデルとしての価値)自然を畏敬し、共生するマタギの哲学は、現代社会における環境問題や持続可能な社会を考える上で、貴重なモデルケースとなり得ると再評価されています。

2)猟友会の課題と展望

1.課題

  • (会員の減少と高齢化)狩猟免許取得者の減少と高齢化は、猟友会にとっても大きな課題です。若手の加入が伸び悩み、組織の維持が難しくなる地域も出てきています。
  • (社会からの理解不足)狩猟に対する偏見や誤解が根強く、有害鳥獣駆除などの活動が十分に社会に理解されていない場合があります。「クマを殺すな」などのクレームが入るケースも少なくありません。
  • (安全管理の徹底)猟銃を扱うため、常に事故のリスクが伴います。安全対策の徹底と、会員への安全意識の浸透は不可欠です。

2.今後の展望

  • (広報活動の強化)狩猟の重要性や、野生動物保護管理における猟友会の役割を社会に広く伝えるための広報活動が強化されることが期待されます。
  • (若い世代へのアプローチ)狩猟体験会や免許取得支援など、若い世代が狩猟に興味を持ち、参加しやすい環境を整える取り組みが重要です。近年は、ジビエブームやアウトドア志向の高まりから、20代から30代の若年層の狩猟免許取得者が増加傾向にあり、今後の会員増に繋がる可能性も出てきています。
  • (テクノロジーの活用)ドローンによる鳥獣の探索や、GPSを用いた狩猟管理など、最新技術を導入が進んでいます。今後はより効率的かつ安全な狩猟活動が可能になると思われます。
  • (地域貢献への注力)有害鳥獣駆除だけでなく、地域の自然環境保護や、ジビエ利用を通じた地域経済の活性化など、より多角的な地域貢献の役割が期待されます。

以上(2025年9月更新)

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画像:日本情報マート

【中堅社員のスピーチ例】「言いにくいこと」を伝える3つのポイント

【ポイント】

  • 「言いにくいこと」を避け続けると、後々大きな問題につながりかねない
  • 建設的な目的を持ち、Iメッセージで、具体的に伝えることが大切
  • 言いにくいことを伝えるのは、否定ではなく、共に成長していきたい願いの表れ

おはようございます。社内会議やクライアントとの打ち合わせなどで、意見が対立しそうな場面では、多かれ少なかれ「相手に不快な思いをさせたくない」「波風を立てたくない」と考えて、自分の意見を主張しづらくなるときがあります。しかし、そうした「言いにくいこと」を避け続ける状況が続くと、業務の改善が進まなかったり、小さな不満が積もって大きな問題になったりと、後々面倒なことになります。私自身も、過去に「もっと早く伝えていれば……」と後悔した経験があるので、今日は「言いにくいこと」を伝えるときに私なりに意識しているポイントを3つ話します。

1つ目は、「相手を責める」「不満をぶつける」という感情的な目的ではなく、「より良い成果を出すため」「円滑な業務遂行のため」といった建設的な目的を持つことです。「これを言ったら相手に嫌がられるかな……」と考えると消極的になってしまいますが、「これを言うことは相手のためにもなる」というマインドで臨めば、発言する勇気が湧いてくるはずです。

2つ目は、「あなたは~すべきです」ではなく、「私は~だと考えています」というI(アイ)メッセージで伝えることです。「あなたは…」を主語にすると、相手の行動を制限することになるので強い口調になりがちですが、「私」を主語にすると、柔らかい印象になります。

3つ目は、「いつも」「全然」といった曖昧な言葉を避け、「〇月〇日の〇〇の件ですが……」と具体的に伝えることです。せっかく主張をしても、曖昧な言い方では自分と相手の共通認識ができないので、物事が前に進んでいきません。なので、発言はできる限り具体的にしましょう。

これらは、私が若い頃、上司から「君の意見は分かるけれど、もう少し主観ではなく、事実と自分の感情を分けて話してみようか」とアドバイスされて以来、特に意識している点です。「言いにくいこと」を伝えるのは、確かに勇気がいります。しかし、それは決して相手を否定することではありません。むしろ、相手への真剣な関心と、共に成長していきたいという強い願いの表れだと私は考えています。私たちもコミュニケーションの種をまき、互いに高め合い、実り多い秋を迎えられるよう、今日から少しだけ「伝え方」を意識してみましょう。

以上(2025年9月作成)

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画像:Mariko Mitsuda

映画派?漫画派?小説派?経営者が好きなコンテンツ大調査!

1 経営者の好きなコンテンツ決定戦!

好きな物語を語れば、その人の価値観や意外な一面が浮かび上がってきます。それはもちろん、日々会社のために忙しく走り回る経営者も例外ではありません。日々の経営判断や人との向き合い方の背景には、実は幼いころに夢中になった漫画や、心を打たれた映画のワンシーンが息づいていることもあるのではないでしょうか。

そこで、中小企業の経営者214人に「好きなコンテンツ」についてのアンケートを実施し、

  • 映画・ドラマ派ですか? 漫画・アニメ派ですか? 小説派ですか?
  • 特に好きな作品や、心に残っているセリフ・シーンはありますか?
  • 特に好きな作品の好きなセリフやシーンについて教えて下さい

という3つの質問をしたところ、経営者の素顔や価値観が垣間見える結果が集まりました。この記事では、個性豊かな回答をジャンルごとにご紹介します。

アンケートは2025年8月に、インターネットを通じて行いました。回答の中で、明らかに誤字と思われる表記などは修正しています。

2 経営者が熱愛するコンテンツ第1位は一体!?

アンケートの結果

アンケートの結果、

映画・ドラマ派が57.9%

と、圧倒的な人気を見せました! 次点で漫画・アニメ派の19.2%、小説派の13.6%が続きます。「どれも好きではない」と答えた方も9.3%いました。

また、「映画・ドラマ派」「漫画・アニメ派」「小説派」のいずれかを選んだ方のうち、

特に好きな作品や、好きなセリフやシーンなどがある方は52.1%

でした。次章からは、経営者に人気のセリフやシーンを紹介していきます! なお、セリフやシーンは各経営者の回答に基づいており、実際の内容とは必ずしも一致しない場合があります。

3 映画・ドラマ派の経営者たち

映画・ドラマ派

映画・ドラマ派の「好きなセリフ」の中で最も票を集めたのは、

「I’ll be back(また来る)」(映画「ターミネーター」シリーズより)

でした!

その他の回答は次の通りです。数々の印象的な名台詞が揃っています。

  • 「Don’t think, feel(考えるな、感じろ)」(映画「燃えよドラゴン」より)
  • 「男が女を好きになるのは理屈じゃねえんだよ」(映画「男はつらいよ」シリーズより)
  • 「人生はお前が見た映画とは違うんだ。人生はもっと厳しいものだ」(映画「ニュー・シネマ・パラダイス」より)
  • 「天は我々を見放した」(映画「八甲田山」より)
  • 「なめたらいかんぜよ」(映画「鬼龍院花子の生涯」より)
  • 「怖いよ。けど誰かが行くんだよ。だから俺でいいんだよ。」(映画「突入せよ! あさま山荘事件」より)
  • 「誰かが貧乏くじ引かなきゃなんねえんだよ」(映画「ゴジラ-1.0」より)
  • 「待ってるだけじゃ、救えない命があるんです」(ドラマ「TOKYO MER~走る緊急救命室」より
  • 「青春は贅沢だ」(ドラマ「ちはやふる めぐり」より)
  • 「たまるかー」「ほいたらね」(ドラマ「あんぱん」より)

また、「好きなシーン」では次のような回答がありました。

  • 映画「キリング・フィールド」……映画でエンディングのあたりでBGMとして流れたジョン・レノンの「イマジン」、まるでこの映画の為に作られたのかと思うほど感動的だった。
  • 映画「道」……冷たく当たっていた女性が亡くなり、掛け替えのない人を失い号泣したアンソニー・クインのシーン
  • 映画「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」……最後に百合が泣き崩れるところ
  • 映画「卒業」……結婚式場(教会)から花嫁を奪って逃げるシ-ン
  • 映画「タイムライン」……耳のない石像を見て、「It’s me.」と言ったところ
  • 映画「砂の器」……加藤嘉がわが子(加藤剛)を「知らん」と言うシーン

4 漫画・アニメ派の経営者たち

漫画・アニメ派

漫画・アニメ派の「好きなセリフ」の中で最も票を集めたのは、

「お前はもう死んでいる」(漫画「北斗の拳」より)

でした! また、

「地球か……何もかも懐かしい」(アニメ「宇宙戦艦ヤマト」より)

も、複数票を集めています。

その他の回答は次の通りです。

  • 「バルス」(映画「天空の城ラピュタ」より)
  • 「お前にサンを救えるか?」(映画「もののけ姫」より)
  • 「まるでシンクロニシティ!(意味のある偶然)」(漫画「ゴルゴ13」より)
  • 「聖闘士に同じ技は通じない」(漫画「聖闘士星矢」より)
  • 「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」(漫画「鋼の錬金術師」より)

中には、「このセリフのここが好き!」を、熱く語ってくれた経営者も。

  • 「あきらめたらそこで試合終了だよ」(漫画「SLAM DUNK」より)……自分を奮い立たせたいときに思い出す
  • 「俺の敵はだいたい俺です」(漫画「宇宙兄弟」より)……何か挑戦しようとするときにためらう自分に対して
  • 「ちょっと勘弁してよォッ!! 法律が許すならオメーらの命なんてどーでもいいけどさあッ あたしに轢き殺させる気ィッ!?」(漫画「ジョジョリオン」より)……セリフを見るに、世の代弁だろうなという印象を見受けられるので

また、「好きなシーン」では以下のような回答が寄せられました!

  • 漫画「ONE PIECE」……魚人島でルフィがナミに麦わら帽子を被せたところ
  • 漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」……両津勘吉のお決まりのシーン

5 小説派の経営者たち

小説派

「小説派」の経営者たちももちろん、好きな気持ちでは負けていません。寄せられた回答は次の通りです。

  • 「大切なものは目に見えない」(「星の王子さま」より)
  • 「皇国の興廃、この一戦にあり」(「坂の上の雲」より)
  • 「遠藤周作作品の、心優しいカトリック(の表現)が好き」
  • 「壬生義士伝のシーンが好き」

以上(2025年9月作成)

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画像:ChatGPT

全事業所が対象!育児・介護休業法改正に係る指針の実務対応のポイント

「仕事と育児の両立」「仕事と介護の両立」を進める雇用環境の整備は、少子高齢化の進行により人手不足が続く中、貴重な人材の定着、新たな人材(特に若年労働者)を呼び込むための重要な経営課題といえます。

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農業の初期投資をサポート! 就農準備資金・経営開始資金

1 農業を始めたいけどお金が……そんな悩みを解決!

自然に囲まれて働きたい、自分のペースで仕事がしたい、地元に貢献したいなど、さまざまな理由から農業を始めようとする人は少なくありません。農林水産省によると、2023年の新規就農者数は4万3460人、うち3万9630人が親元での就農または雇用就農、3830人が新規参入者です(農林水産省「令和5年新規就農者調査結果」)。

一方、ネックとなるのが初期投資。全国新規就農相談センターによると、新規参入者が

  • 就農1年目に要した費用は平均896万円(機械・施設等への費用が670万円、必要経費が226万円)
  • それに対し、新たに農業経営を開始した参入者の自己資金は平均278万円

で、農業に必要な費用と自己資金の差額にかなりの開きがあるようです(全国新規就農相談センター「令和6年度新規就農者の就農実態に関する調査結果」)。

つまり、農業を始めたいけどお金が足りない……というのが多くの新規参入者が抱える悩みなわけですが、そんな悩みの解決に役立つ制度があります。それが、

農林水産省が実施している「就農準備資金・経営開始資金」

です。どちらも新規参入であるかどうかを問わず、次世代の農業を担うことを目指す49歳以下の人々に対し、就農準備段階や経営開始時の早期の経営確立を支援するために資金を交付する制度で、40代以下の農業従事者を拡大し、将来の農業経営を担う人材を育成することを目的にしています。

以降でそれぞれの概要を簡単に紹介します。なお、制度についてより詳しく知りたい人は、こちらをご確認ください。

■農林水産省「就農準備資金・経営開始資金」■
https://www.maff.go.jp/j/new_farmer/n_syunou/roudou.html

2 就農準備資金

就農準備資金は、農業技術を習得するための研修期間中の生活を支援することを目的としています。

1)主な交付要件

  • 就農時に49歳以下であること
  • 都道府県等が認めた研修機関で、1年以上かつ年間1200時間以上の研修を受けること
  • 原則として、前年の世帯全体の所得が600万円以下であること。ただし、資金の交付主体が生活費の確保の観点から支援を必要と認める場合は、この限りではない
  • 常勤の雇用契約を締結していないこと
  • 研修中のけがに備え、研修開始前に傷害保険に加入していること
  • 交付期間中に農業経営力向上のための研修を修了すること

2)支給額と交付期間:

  • 月額12.5万円(年間150万円)を交付
  • 交付期間は最長2年間。ただし、国内研修後に海外研修(最長1年間)を行う場合は、最長3年間まで延長が可能

3 経営開始資金

経営開始資金は、就農直後の経営が不安定な時期の生活を支援し、早期の経営確立を促すことを目的としています。

1)主な交付要件

  • 独立・自営で就農する49歳以下の「認定新規就農者」であること(市町村の審査を経て、事業計画の実現可能性が高いと公的に認められた経営者)
  • 経営開始5年後までに農業により生計が成り立つ実現可能な計画を立てていること
  • 経営を継承する場合でも、経営発展に向けた取り組みを行い、新規参入者と同等の経営リスクを負っていると市町村長に認められること
  • 原則として、前年の世帯全体の所得が600万円以下であること
  • 目標地図に位置付けられている農地を利用するか、または農地中間管理機構から農地を借り受けていること

2)支給額と交付期間:

  • 月額12.5万円(年間150万円)を交付
  • 交付期間は最長3年間
  • 夫婦で共同経営を行う場合、資金は年間150万円の1.5倍、つまり225万円を交付

4 申請時に必要な主な書類

資金を申請する際は、地方自治体の農業支援担当窓口に対し、必要書類を提出する必要があります。両資金制度で必要となる主な書類は次の通りです。

主な必要書類

この他、確約書、離職票の原本、経営開始時期の証明書類などが必要になります。

5 申請時の注意点

1)交付停止について

資金の交付は、以下の要件に該当した場合に停止されることがあります。

  • 前年の世帯全体の所得が600万円を超えた場合
  • 適切な研修や経営が行われていないと判断された場合
  • 虚偽の申請や不正な手段で資金を受給したことが判明した場合

特に注意すべきは、交付期間中に世帯所得が600万円を超えた場合に交付が停止されるという規定です。例えば、経営開始資金の受給期間中(最長3年間)に、事業が予想以上に急成長し、農業所得が大きく向上した結果、世帯所得が600万円を超えてしまうケースが想定されます。この場合、その時点で資金の交付は停止されます。

一見喜ばしい成功のようですが、翌年の作柄が悪化したり、市場価格が暴落したりして所得が減少した場合、既に資金は停止しているため、安定した生活基盤を失うリスクを抱えることになります。単に売上を最大化するだけでなく、資金停止後の経営リスクに備え、所得を計画的に管理する必要があるということです。

2)返還請求について

次のいずれかに該当した場合、資金の全額または一部の返還が求められます。

  • 就農準備資金の受給者が、研修終了後1年以内に就農しなかった場合
  • 経営開始資金の受給者が、交付期間終了後、その期間と同期間以上、同程度の営農を継続しなかった場合

これらの規定は、単なる手続き上のルールではなく、就農希望者が抱える2つの潜在的な事業リスクを具現化したものです。

1つ目は「就農失敗リスク」です。研修を終えたにもかかわらず、農地や資金の確保ができずに就農できなかった場合、それまでの受給額を全て返還しなければなりません。

2つ目は「経営失敗リスク」です。経営を開始しても、事業が立ち行かなくなり、義務付けられた営農期間を達成できなかった場合、資金返還の義務が発生し、自己資金と借入金に加えてさらなる負債を抱えることになります。

以上(2025年9月作成)

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画像:SENRYU-Adobe Stock

選択と集中のための「戦略的事業撤退」の考え方

1 事業撤退の要因

1つの事業だけで成長し続けることは難しく、新製品や新規事業へのチャレンジは欠かせません。その一方で、店舗を閉じたり製品の生産をやめたりする「撤退」も大切な経営判断です。そして、撤退には、赤字続きなど後ろ向きの判断の他に、

コア事業を成長させるためにその他の事業からは撤退するという、いわゆる「選択と集中」

もあります。この記事では、こうした「前向きな事業撤退=戦略的な事業撤退」にスポットを当て、その視点に立った事業撤退プロセスの基本を紹介しています。

2 収益性だけで撤退を決めてはいけない

撤退を検討する際、足元の「収益性」だけで判断するのではなく、「この事業が将来の成長に必要かどうか」を考えることが重要です。極端な例ですが、

  • 現在は赤字でも、将来の成長のために必要な事業なら継続する
  • 現在は黒字でも、将来の成長のために不要な事業なら徹底する

といったこともあり得ます。「黒字なのに撤退する」というのは違和感があるでしょうが、自社の将来にとって不要だったり、足枷になったりするのであれば、今、そこにリソースを割いていることの機会損失も考えるべきです。これは、自社開発と受託開発のジレンマに似ています。

受託開発は収益が安定しますが、リソースを割かれる分、本当にやりたい自社開発が滞る

ということです。特に中小企業は単一事業に最適化された組織となり、いざ現在の枠を出ようとしても、経営者の号令だけで組織がついてこられません。こうした事情も想定しつつ、素早く、そして勇気ある判断が経営者に求められることがあります。

3 事業撤退のプロセス

事業撤退を検討する前提は、

自社の「あるべき姿」が明確になっていること

です。その上で、「あるべき姿」を実現するために必要な事業分野を決めます。基本的には、次のようなプロセスで進めます。

事業撤退のプロセス

1.経営理念と経営目標の明確化

「自社は何のために存在するのか」「どんな価値を社会に提供するのか」という企業の存在意義や使命を明確にします。

2.SWOT分析

外部資源の「機会(Opportunities)と脅威(Threats)」、内部資源の「強み(Strengths)と弱み(Weaknesses)」を整理し、どこにチャンスがあるかを把握します。

3.事業ドメイン(事業領域)の設定

自社の強みを活かしながら成長できる領域を検討・決定します。

4.事業戦略の立案

選んだ事業ドメインについて、経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)の配分やマーケティングなど具体的な戦略を立案します。

5.個別事業戦略の実行

戦略を実行し、定期的に評価・見直しを行います。

4 早期撤退戦略と収穫戦略

1)早期撤退戦略と収穫戦略

撤退を決めた事業への対応は、事業の収支状況などによって異なります。

1.早期撤退戦略

対象の事業が赤字で将来性もない場合、できるだけ早く撤退します。損失を最小限にとどめ、主力事業への集中を早めるためです。

2.収穫戦略

撤退を決めた事業が黒字なら、撤退を決めた事業へのリソース配分を最小限に抑えつつ、そこから得られる利益を成長事業に振り向けます。収穫戦略を実行する場合は、撤退基準として一定の収益水準を事前に決めた上で取り組む必要があります。

2)収穫戦略を検討する際の視点

収穫戦略を検討する際、重要なのが「対象となる事業の収益の予想」です。もし、対象となる事業に競合が多い(競争が激しい)場合、短期間で収益が落ち込む恐れがあります。それを避けるには一定の投資が必要で、そうなると撤退を決めている事業に対し、これまでと同等かそれ以上のリソースを割かなければならなくなります。つまり、簡単な図で示すと、dの事業が最も収穫戦略に向いているということです。

収穫戦略を検討する際の視点

5 事業撤退を検討・実施できる組織

事業撤退は先送りにされがちです。主な理由としては、

  • 他の事業に転用できない工場・機械などの資産の存在
  • その事業に携わっている多くの従業員の存在
  • 経営者や従業員などの心理的抵抗感
  • 取引先などの利害関係者からの反対
  • 業界内などにおける社会的風評

などがあります。これらの中には、経営者として慎重な対応が求められるものがあります。例えば、ある事業から撤退することが他の事業の取引関係にも影響を及ぼす恐れがある場合、事前に十分な説明をして取引先の理解を得なければなりません。一方、合理的な意思決定を妨げる要因もあります。例えば、経営者や従業員などの心理的抵抗感です。特に、自らの手で生み出し、育て上げてきた事業には愛着があり、なかなか撤退を検討できないわけですが、経営者が率先してそうした意識を変革していく必要があります。そこで重要なのが、

事業撤退を検討する基準を明確にし、社内で共有しておくこと

です。例えば、「△年間継続して売上高利益率が○%を下回った場合」「市場シェアが□%以下になった場合」など、定量的な指標を設定しておけば、事業撤退の検討を自分の都合で先送りにすることはなくなるでしょう。そして、基準を作ったら、社内に広く公表します。これは、基準に該当しそうな事業に携わる従業員に対して、事業を立て直す努力をするチャンスを与えるためであり、いざ撤退が決定された場合に納得を得やすくするためです。

以上(2025年9月更新)

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画像:pixabay

【開催終了】2025年11月5日開催!きらやか銀行×GSX サイバーセキュリティセミナーのご案内

2025年11月5日、きらやか銀行と、サイバーセキュリティサービスを提供しているグローバルセキュリティエキスパート(GSX)との共催で、サイバーセキュリティセミナーを開催します。

近年は事業規模、地域を問わずサイバー攻撃の被害が多発しています。自社への被害だけでなく、自社の操業が止まることで取引先にも影響を及ぼすことから、サイバーセキュリティ対策は、すべての経営者が重要課題として取り組んでいくことが求められます。

このページの最後に、サイバーセキュリティ対策に役立つコンテンツも紹介していますので、ぜひご覧ください!


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お申し込みフォームはこちらから(外部サイトへリンク)(先着順)

お申し込み締め切りは2025年10月29日(水)17:00です。

登壇者

  • 「サイバー空間をめぐる脅威の現状と対策」
    山形県警察本部 生活安全部サイバー犯罪対策課課長 補佐 小野 秀崇 様
  • 「お客様にちょうどいいセキュリティ対策をご提供するGSX 」
    グローバルセキュリティエキスパート 代表取締役社長 青柳 史郎 氏
  • 「事業継続に影響を及ぼすサイバー攻撃の脅威から経営リスクとしてどう取り組むべきか」
    グローバルセキュリティエキスパート 常務取締役 三木 剛 氏

プログラム

  • 15:00-15:30 受付開始
  • 15:30-15:35 開会ご挨拶 きらやか銀行 取締役頭取 西塚 英樹
  • 15:35-15:55 「サイバー空間をめぐる脅威の現状と対策」
    山形県警察本部 生活安全部サイバー犯罪対策課 課長補佐 小野 秀崇様
  • 15:55-16:05 「お客様にちょうどいいセキュリティ対策をご提供するGSX」
    グローバルセキュリティエキスパート 代表取締役社長 青柳 史郎氏
  • 16:05-16:45 「事業継続に影響を及ぼすサイバー攻撃の脅威から経営リスクとしてどう取り組むべきか」
    グローバルセキュリティエキスパート 常務取締役 三木 剛氏
  • 16:45-16:55 質疑応答
  • 16:55-17:00 閉会挨拶
お問合わせ先
きらやか銀行 法人サポート部 担当:福田、金田
電話:023-628-3822(直通)

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