【入社1年目の教科書】新入社員のためのビジネスの基礎知識〜シリーズを一挙紹介

書いてあること

  • 主な読者:社会人の基礎を学びたい新入社員
  • 課題:学生から社会人になると何が変わるのか、何を準備しておけばいいのかが分からない
  • 解決策:お金をもらって仕事をする「プロ」になる。プロとして働く以上、社会人として最低限の常識やマナーは身に付けておく必要がある

「入社1年目の教科書」シリーズでは、皆さんに今のうちから身に付けてほしい社会人の基礎を分かりやすくまとめたものです。服装・挨拶のマナーや電話の出方など初歩的な内容から、契約のルールなど少し専門的な内容まで、幅広く紹介していますので、参考にしてください。

1 最初が肝心! 社会人の常識やマナー

社会人になって皆さんが最初に接する相手は、会社の上司や先輩です。上司や先輩は新たに仲間となった皆さんを優しく出迎えてくれるでしょうが、その優しさに甘え過ぎず、社会人の常識やマナー、ルールを守って「大人として」行動することが大切です。

1)「会社の一員である」ことを自覚し、常識やマナーを大事にしよう

フレンドリーな雰囲気の会社、服装などのルールが比較的緩い会社などはたくさんありますが、どんな会社であっても「会社の一員である」という自覚を持って仕事をしないといけないのは同じです。社会人の常識や服装・挨拶のマナーを紹介します。

2)仕事のルールは「就業規則」を読んで理解しよう

会社の「就業規則」には、就業時間やお給料の計算方法など、働く上での基本的なルールが定められています。皆さんがまず押さえるべきは「服務規律」です。服務規律には「就業時間中は仕事に専念しなければならない」など、仕事をする上での基本的な心構えが書かれています。

一般的な就業規則の項目や、服務規律の内容を紹介します。

3 電話やメールの基本を押さえよう

電話やメールは、ビジネスの基本ツールです。最初は使い方に戸惑うかもしれませんが、マナーなどを早めに押さえておくと、電話やメールの内容(商品やサービスに関する具体的な話)に気を回す余裕が出てきて、仕事への理解が深まります。取引先を訪問したり、議事録を作成したりするときも、同じようにポイントを押さえて臨むことで、会話の内容に集中できます。

1)電話は怖がらずに出よう

電話応対では、「取り次ぎのために自社の商品名や部署、担当者を覚えられる」「リアルなビジネストークを、敬語を交えながら体験できる」といった、ビジネスの基礎体力が身に付きます。怖がらずに電話に出るためのコツを紹介します。

2)パソコンのキーボードは「静かに」叩こう

パソコンのキーボード操作に慣れていないと、見慣れない配列に悪戦苦闘。やたらに力強くキーを押してしまうので、タイピング音がうるさくなりがちです。大切なのは正しい姿勢なので、パソコンを使うときの視線の高さや、キーボード操作で指を置く基本位置を紹介します。

3)メール独特の「お作法」を覚えよう

メールは今でもビジネスにおける主力の連絡手段です。メールは長く使われてきたツールなだけに、宛先(TO、CCなど)や言い回しについて独特の「お作法」があるので、正しいマナーを身に付けましょう。メールの送り方や誤送信時の対応のポイントを紹介します。

4)訪問する際は、しっかりと事前準備をしよう

初めて取引先などを訪問するときというのは誰でも緊張しますが、「時間を取ってくれた相手に感謝し、決して準備を怠らないこと」を忘れなければ基本的には大丈夫です。取引先などを訪問する際の準備やマナーを紹介します。

5)席次の基本を覚えて、臨機応変に対応しよう

席次の基本は、偉い人が座る「上座」が、出入口とは反対の奥の席です。応接室、会議室、自動車、列車、エレベーターにも席次がありますが、時と場合によることもあります。席次についてのマナーを紹介します。

6)議事録で必要なのは速記ではない。事前準備を怠らないようにしよう

議事録の作成と聞くと、会議の進行と同時に会話をまとめていく「速記」をイメージする人がいますが、実は違います。必要なのは、アジェンダの事前共有、会議中の要点のまとめ、会議後の確認です。議事録作成のポイントを紹介します。

4 お金の流れが分かれば会社のことが見えてくる

ビジネスでは、商品やサービスを売ったり、必要な備品や設備を買ったりと、さまざまなお金の流れがあります。皆さんの「お給料の支払い」も、そうした流れの1つといえるでしょう。自社のお金の流れを見れば、例えば「自社が今、どのような活動に注力しているのか」などが、他社のお金の流れを見れば、例えば「今後も取引関係を継続できそうか」などが分かります。

1)自分のお金と会社のお金を明確に分けよう

社会人になると、仕事のために会社のお金を使うようになります。そのときに大切なのは、自分のお金と会社のお金を明確に分けることです。お金に関する基本的なルールを紹介します。

2)給与明細を見れば、お給料の支払いの流れが分かる

お給料はもらうと、とてもうれしいものです。ただ、社会保険料や税金など、お給料から引かれる金額があることをご存じでしょうか。お給料の額や内訳などを示す「給与明細」の仕組みを紹介します。

3)源泉徴収票を見れば、1年間のお給料の支払い状況が分かる

年末年始に配られる「源泉徴収票」には、その年(前年)のお給料の合計額、差し引かれた社会保険料や税金の情報などが書かれています。これは、皆さんが家や車を買うときなどにも必要になる大切な書類なので、しっかり内容を確認しましょう。

4)3つの財務諸表を押さえれば、会社のお金の動きが分かる

財務諸表は会社のお金の流れを表す重要な書類で、社会人はこれが読めて初めて一人前といわれます。会社がもうかったか損をしたかを示す「損益計算書」、会社がどのようにお金を調達し何に使っているかを示す「貸借対照表」、会社の現金の流れを示す「キャッシュフロー計算書」の読み方を紹介します。

5)金融リテラシーの基本を押さえて、もっとお金に詳しくなろう

稼いだお金を株式や投資信託などの金融商品に投資する資産形成。今では、高校の授業にも「金融教育」が組み込まれています。ただ、具体的に何をしたらよいのか分からないこともあります。そこで、資産形成の基本について紹介します。

5 そろそろ独り立ち。半歩先ゆくビジネスのルール

入社したての頃は、上司や先輩が皆さんに付いて仕事を教えてくれますが、ある程度時間がたつと、やがて1人で仕事をするようになります。そのときに注意しなければならないのが、契約違反、情報の取り扱い、取引先への営業などで、知らず知らずのうちに法律に違反してしまうことです。

1)契約の内容をしっかり把握しよう

仕事は、相手とさまざまな「契約」をしながら進めます。契約は相手との約束であり、守らなかった場合はペナルティーがあるので注意が必要です。契約の基本的なルールを紹介します。

2)ビジネス文書は何のために作成されるのかを知っておこう

ビジネス文書は、誠実にトラブルなくビジネスを進めるために必要なものです。納品書、検収書、注文書、見積書などさまざまなビジネス文書があって最初は混乱しますが、「何のために作成されるのか」を意識していれば、トラブルなく使いこなすことができます。ビジネス文書の種類や使用目的などを紹介します。

3)情報の取り扱いには細心の注意を払おう

仕事をしているとたくさんの情報を取り扱いますが、どんな情報であっても慎重に取り扱い、相手の会社や個人、取引内容を特定できるような情報は話さないのが基本です。情報の取り扱いに当たって押さえておくべき6つの注意事項を紹介します。

4)営業では、正しい情報を相手に魅力的に伝えよう

商品やサービスを売りたいからといって、話を盛り過ぎるような不当なセールストークなどをするのは法律違反です。営業で必要なのは、相手のニーズを捉え、正しい情報を魅力的に伝える力です。法律に違反しないセールストークなどのポイントを紹介します。

5)取引先には無理なお願いをしないように気を付けよう

ビジネスでは、こちらが有利な立場(発注する側など)にあるときほど、無理なお願いをしがちです。取引内容に注意しないと、「下請法」という法律に抵触し、自社の社会的な信用を傷つけてしまう恐れがあります。皆さんが守らなければならない義務や禁止事項を紹介します。

6)著作物の侵害などをしないために注意点を知っておこう

プレゼン資料やチラシを作るとき、ネット上で公開されている動画や画像を無断で使用すると、著作権の侵害になることがあります。動画や画像を使用する際のルールを紹介します。

6 働き過ぎてもダメ! 健康に働きましょう

仕事熱心なのは良いことですが、働き過ぎで体を壊してしまっては意味がありません。残業は必要最低限にして、休みを取り、健康診断も受けましょう。自分の健康をコントロールできてこそ、一人前の社会人といえるのです。

1)残業は上司の許可を得た上で、最低限にとどめよう

労働時間は、「原則1日8時間、1週40時間までが上限」と決められています。どうしても仕事が終わらないときは残業が認められますが、必ず事前に許可を得ることが大切です。残業の定義や申請するときのマナーを紹介します。

2)年次有給休暇(年休)は積極的に取得しよう

会社には、入社後6カ月以上勤務すると、お給料をもらいつつ休みを取れる「年次有給休暇(年休)」という制度があります。正社員の場合、1年間に5日の年休を取るのが決まりなので、積極的に取得しましょう。年休のルールや申請するときのマナーを紹介します。

3)健康診断の受診など健康管理のルールを知っておこう

会社には、社員が病気やけがをせずに安心して働けるように配慮をする義務があり、社員には自ら健康管理に取り組む義務があります。健康診断もこの一環です。皆さんが守るべき健康管理のルールを紹介します。

以上(2024年1月更新)

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画像:Mariko Mitsuda

【外国人雇用】自社が雇用できる外国人労働者は?~複雑な区分を解説

書いてあること

  • 主な読者:外国人雇用を検討している経営者
  • 課題:外国人には「在留資格」があるらしいが、それがどのようなものか分からない
  • 解決策:在留資格は、外国人が日本で行える活動と在留期間を示したもの。種類が多いので、違いを押さえた上でどれくらいの期間、外国人を雇用するのか計画を立てる

1 押さえるべきは「在留資格」

国内の外国人労働者数は、入国制限が設けられたコロナ禍も増加を続け、2022年10月末時点で過去最高の182万2725人となりました(厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況」)。入国制限も2023年4月に解除され、今後は外国人の受け入れがさらに進むことでしょう。

外国人雇用を検討する会社はますます増えますが、注意が必要なのが「在留資格」です。在留資格とは、

外国人の住所地を管轄する地方出入国在留管理局(出入国在留管理庁の地方支分部局、以下「入管」)に申請すると取得できる資格で、日本で行える活動と在留期間を示したもの

です。在留資格ごとに就労できる職種や在留期間が違うので、これを正しく押さえておかないと不法就労などのトラブルになりかねません。大切なのは、

  • 職種の制限:制限があるかないか
  • 在留期間の期限:制限があるかないか(一部は無期限)
  • 労働時間の上限:日本人と同じか否か

を確認することです。

この記事では、在留資格ごとの就労できる職種や在留期間を図表にして紹介するので、それぞれの違いを整理してみましょう。

2 日本で就労する外国人の区分

日本で就労する外国人の区分は次の通りです。

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ざっくりとまとめると、多くの外国人は、

  • 職種の制限:あり
  • 在留期間の期限:あり
  • 労働時間の上限:日本人と同じ

となります。ただし、就労できる職種や在留期間の細かいルールは在留資格ごとに異なりますので、確認していきましょう。

3 身分に基づき在留する者

活動内容に関係なく日本に滞在する外国人が該当します。

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就労に関する特徴は次の通りです。

  • 職種の制限:なし。単純労働なども可
  • 在留期間の期限:永住者は無期限。その他の者は期限あり
  • 労働時間の上限:日本人と同じ

どの在留資格も職種の制限がなく、労働時間の上限も日本人と同じなので、在留期間にさえ注意しておけば問題ありません。永住者の場合は在留期間も無期限なので、基本的に日本人と同じように雇用できます。

4 就労目的で在留が認められる者

特定の知識・スキルを活かした職業に就く外国人が該当します。

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就労に関する特徴は次の通りです。

  • 職種の制限:それぞれの在留資格で認められた範囲内でしか活動できない
  • 在留期間の期限:高度専門職2号は無期限。それ以外の者は期限あり
  • 労働時間の上限:日本人と同じ

基本的にどの在留資格も在留期間に期限がありますが、例外は高度専門職2号です。高度専門職とは、高度な知識・スキルによって日本経済に貢献することなどを期待され、ポイント制による一定の評価を受けた外国人のための在留資格で、研究者やプロ経営者が該当します。

  • 最初は高度専門職1号(在留期間は5年)からスタート
  • 高度専門職1号として3年以上の活動など一定の要件を踏まえ、ポイント制による評価を満たすことで高度専門職2号になり、在留期間が無期限になる

という仕組みになっています。

5 技能実習

技能実習制度の技能実習生が該当します。技能実習制度とは、技能実習生が日本で実習を行う会社(実習実施者)の下で働き、母国では得がたい技能の修得などを図るための制度です。

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就労に関する特徴は次の通りです。

  • 職種の制限:技能実習2号、3号に移行が可能な職種・作業は省令で定められている
  • 在留期間の期限:あり
  • 労働時間の上限:日本人と同じ技能実習制度は、まず技能実習1号からスタートし、所定の試験を受けることで2号、3号へと移行していくシステムです。ただし、2号、3号に移行が可能な「職種」

と各職種にひもづく「作業」が、省令で細かく定められています。例えば、

「耕種農業」という職種には、「施設園芸」「畑作・野菜」「果樹」という作業がひもづくといった具合に、2023年10月31日時点で90の職種と165の作業(下記URL参照)

が定められています。技能実習1号には職種・作業の制限はありませんが、技能の修得などに関係ない業務(単純労働など)に従事させることはできません。

■厚生労働省「技能実習計画審査基準・技能実習実施計画書モデル例・技能実習評価試験試験基準」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/global_cooperation/002.html

なお、技能実習制度については、1号から3号に移行するまでに最長で5年かかるのに、その間の労働が低賃金・長時間になりやすいという理由から、実習先から失踪する技能実習生が少なくなく、以前から問題視されていました。そのため、現在政府内では、

技能実習制度を廃止し、原則3年間で外国人を一定の専門性や技能を持つ水準にまで育成する新制度を立ち上げること

が検討されています。詳細はこちらをご確認ください。

■出入国在留管理庁「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(第12回)」■
https://www.moj.go.jp/isa/policies/policies/03_00001.html

6 資格外活動

就労するための在留資格を持っていないものの、法務大臣から資格外活動(在留資格の範囲外の活動)の許可を与えられた外国人が該当します。

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就労に関する特徴は次の通りです。

  • 職種の制限:本来の在留資格に属する活動を阻害しない範囲であれば、基本的になし。ただし、風俗営業等への就労は不可
  • 在留期間の期限:あり
  • 労働時間の上限:日本人より短い(原則1週28時間まで)

労働時間については、日本人の場合、原則1日8時間、1週40時間が上限ですが、資格外活動を行う外国人の場合、原則1週28時間までとされています。

1日当たりの上限は特に定められていませんが、どの曜日から起算しても1週28時間以内になるようにしなければならない

ので、注意が必要です。ただし、

例外として、在留資格の本来の活動に影響がない期間に限り、労働時間の上限が1日8時間、1週40時間まで延長

されます。留学生のアルバイトを雇用する場合であれば、勉強の妨げになりにくい大学の夏休み期間などがそうです。

7 特定活動

特定活動(法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動)を行う外国人が該当します。

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就労に関する特徴は次の通りです。

  • 職種の制限:在留資格に該当しない活動を行う場合、法務大臣から個々の指定を受ける必要がある。なお、ワーキング・ホリデーの場合は、風俗営業等以外であれば制限なし
  • 在留期間の期限:あり
  • 労働時間の上限:日本人と同じ

特定活動の場合、外国人のパスポートに添付される「指定書」という書類に、「活動類型」(ワーキング・ホリデー、EPAなど)が記載されており、その内容に応じて就労できる職種が変わってきます。

以上(2024年1月更新)
(監修 三浦法律事務所 弁護士 磯田翔)

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画像:pexels

【かんたん所得税(7)】おトク情報! 住宅を売った時に受けられる所得税の特例とは?

書いてあること

  • 主な読者:住宅を売ったことで利益が出た人、または売ることを検討している人
  • 課題:住宅を売った時に、利益や損失が出たときに受けられる特例を知りたい
  • 解決策:利益が出たら特別控除、軽減税率など。損失が出たら他の所得と相殺など

1 住宅を売った時や買い換えた時には、税金優遇あり

住宅を売った時や買い換えた時の金額は多額で、その年の所得税に大きな影響を与えます。納税額を減らしたり、将来に所得を繰り延べたりできる特例もあるので、利用できるものは利用したいものです。

この記事では、2023年に住宅と住宅用土地(以下「居住用財産」)を売った時や買い換えた時の、お得な特例を紹介していきます。

2 居住用財産を売って利益が出た:3000万円特別控除

1)概要

居住用財産を売った場合、譲渡所得から3000万円を控除(譲渡益の金額が限度)できます。

2)要件

売った居住用財産が、次の要件を満たす必要があります。

  • 実際に住んでいるか、住まなくなった日から3年が経った年の12月31日までに売ること
  • 土地だけの場合は、火災などで住宅が消失したなど一定の事由に該当していること

また、売った相手が、配偶者や同一生計親族など特別の関係にある人ではいけません。さらに、売った年、前年もしくは前々年において、他の居住用財産の特例の適用を受けていてはいけません。ただし、この3000万円特別控除と軽減税率の特例(詳細は後述)は同時に適用を受けられます。

3 居住用財産を売って利益が出た:軽減税率の特例

1)概要

所有期間が10年を超える居住用財産を売った場合、通常(所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%)より低い税率(所得税・復興特別所得税10.21%、住民税4%。軽減税率という)で、所得税の納税額を計算することができます。

課税譲渡所得金額(税率を掛ける前の金額)が6000万円以下か否かで税率が違います。

1.課税譲渡所得金額が6000万円以下の場合

所得税:10.21%(復興特別所得税を含む)

住民税:4%

2.課税譲渡所得金額>6000万円の場合

  • 6000万円以下の部分
    所得税:10.21%(復興特別所得税を含む)
    住民税:4%

  • 6000万円超の部分
    所得税:15.315%(復興特別所得税を含む)
    住民税:5%

2)要件

売った居住用財産が、次の要件を満たす必要があります。

  • 実際に住んでいるか、住まなくなった日から3年が経った年の12月31日までに売ること
  • 売った年の1月1日時点の所有期間が10年を超えていること

また、売った相手が、配偶者や同一生計親族など特別の関係にある人ではいけません。さらに、売った年、前年もしくは前々年において、他の居住用財産の特例の適用を受けていてはいけません。ただし、この軽減税率の特例と3000万円特別控除は同時に適用を受けられます。

4 居住用財産を買い換えた

1)概要

今まで住んでいた居住用財産を売って、新たに別の居住用財産に買い換えた場合の特例です。

売った金額が買い換えた金額より少ない場合、今まで住んでいた居住用財産を売って利益が出ても、その年には課税されません。ただし、新たに買い換えた居住用財産を将来売ったときに、まとめて計算されます(課税の繰り延べ)。

逆に、売った金額が買い換えた金額より多い場合、今まで住んでいた居住用財産を売って利益が出ても、その利益に課税されるのではなく、売った金額と買い換えた金額の差額を収入金額として譲渡所得を計算します。

2)要件

売った居住用財産が、次の要件を満たす必要があります。

  • 売った居住用財産の売却額が1億円以下であること
  • 売った人の居住期間が10年以上であること
  • 売った年の1月1日時点の所有期間が10年を超えていること
  • 実際に住んでいるか、住まなくなった日から3年が経った年の12月31日までに売ること
  • 土地だけの場合は、火災などで住宅が消失したなど一定の事由に該当していること

また、買い換えた居住用財産が、次の要件を満たす必要があります。

  • 住宅の床面積が50平方メートル以上であること
  • 土地の面積が500平方メートル以下であること
  • 中古である場合には築後25年以内のものであること。または構造が一定の安全基準を満たしているものであること
  • 以前住んでいた居住用財産を売った年か、その前年に取得している場合には、売った年の翌年12月31日までに住み始めていること
  • 以前住んでいた居住用財産を売った年の翌年に取得している場合(確定申告書に一定の書類の添付が必要)には、取得した年の翌年12月31日までに住み始めていること

また、売った相手が、配偶者や同一生計親族など特別の関係にある人ではいけません。さらに、売った年、前年もしくは前々年において、他の居住用財産の特例の適用を受けていてはいけません。

3)特例計算と具体例

この特例の適用を受ける場合、居住用財産の譲渡について、譲渡所得の金額と買換資産の取得価額は次のように計算します。

1.売った金額(A)が、買い換えた金額(B)より少ないケース

譲渡所得の金額=0円(譲渡はなかったものとみなす)

買換資産の取得価額=(譲渡資産の取得費+譲渡費用)+(B-A)

2.売った金額(A)が、買い換えた金額(B)より多いケース

譲渡所得の金額=(A-B)-(取得費+譲渡費用)×(A-B)/A

買換資産の取得価額=(譲渡資産の取得費+譲渡費用)×B/A

具体例を見ながら確認しましょう。居住者であるAさんは、2023年1月に自己所有の住宅を1000万円、その土地を5000万円で売りました。売るための諸費用(以下「譲渡費用」)は100万円でした。

この住宅と土地は、Aさんが2005年に取得してから住み続けていたもので、取得したときの購入代金や購入手数料の合計額(以下「取得費」。住宅の場合は、合計額から所有期間の減価償却費相当額を差し引いた金額)は住宅が700万円で、土地が2200万円です。

Aさんは、上記の売った代金と自己資金で新たに土地(面積250平方メートル)を取得し、その上に新築の住宅(床面積150平方メートル)に買い換え、2023年2月から住み始めています。

売った年の1月1日における所有期間が10年を超え、また居住期間が10年以上である居住用財産を売り、要件を満たす居住用財産を新たに取得し居住の用に供しているため、特例の適用を受けることができます。

その場合の譲渡所得の金額と買い換えた居住用財産の取得価額は、次のように計算されます。

1.売った金額が、買い換えた金額より少ないケース(買い換えた居住用財産の取得価額が住宅3000万円、土地4000万円である場合)

  • 譲渡所得の金額
    イ.1000万円+5000万円=6000万円
    ロ.3000万円+4000万円=7000万円
    ハ.イ.≦ロ. 
    ∴譲渡はなかったものとされます(譲渡所得ゼロ)
  • 買い換えた居住用財産の取得価額(将来の売却時に使うもの)
    (700万円+2200万円+100万円)+(7000万円-6000万円)=4000万円

将来の譲渡時にまとめて課税するために、今回売った居住用財産の取得費・譲渡費用(700万円+2200万円+100万円)を買い換えた居住用財産に引き継がせます。また、取得価額は、売った居住用財産の対価を超える部分(7000万円-6000万円=1000万円)しか認識しません。

2.売った金額が、買い換えた金額より多いケース(買換資産の取得価額が住宅2000万円、土地3000万円である場合)

  • 譲渡所得の金額
    イ.1000万円+5000万円=6000万円
    ロ.2000万円+3000万円=5000万円
    ハ.イ.>ロ.
  • 収入金額
    6000万円-5000万円=1000万円
  • 収入金額から控除できる取得費および譲渡費用
    (700万円+2200万円+100万円)×(6000万円-5000万円)/6000万円
    =500万円
  • 譲渡所得の金額
    収入金額1000万円-取得費および譲渡費用500万円=500万円
  • 買換資産の取得価額
    (700万円+2200万円+100万円)×5000万円/6000万円=2500万円

買い換えた居住用財産の取得価額を超える部分のみが課税されます。この場合、譲渡資産の取得費と譲渡費用が今回の譲渡について計上する部分と買換資産に引き継がせる部分とに按分されます。

5 居住用財産を売って損失が出た

1)概要

居住用財産を売ったときの所得は、他の所得と合算できません(分離課税)。そのため、本来は損失が出ても他の所得の黒字と相殺(損益通算)できないのですが、居住用財産を売って損失が出た場合は、要件を満たすことで損益通算できます。また、損失が大きすぎて、1年分の他の所得では相殺しきれない場合、翌年以後3年間で相殺できます(以下「繰越控除」)。

この特例は、

  • 居住用財産を買い換え、その買い換えのために住宅ローンを組んだ場合(居住用財産の買い換え等の場合の譲渡損失の特例)
  • 居住用財産を売った金額以上の住宅ローンの残高がある場合(特定居住用財産の譲渡損失の特例)

に認められます。なお、居住用財産を売った金額以上の住宅ローンの残高がある場合、損益通算できる金額には限度額があります。

損益通算の限度額=住宅借入金の残高-譲渡資産の譲渡対価の額

2)適用:居住用財産を買い換え、その買い換えのために住宅ローンを組んだ場合

1.売った居住用財産と買い換えた居住用財産の要件

まず、売った居住用財産が、次の要件を満たす必要があります。

  • 売った年の1月1日時点の所有期間が5年を超えていること
  • 実際に住んでいるか、住まなくなった日から3年が経った年の12月31日までに売ること
  • 土地だけの場合、火災などで住宅が消失したなど一定の事由に該当していること

買い換えた居住用財産が、次の要件を満たす必要があります。

  • 住宅の床面積が50平方メートル以上であること
  • 売った年、またはその前年に買い換えたものであること。または、売った年の翌年中に取得する見込みであること
  • 買い換えた居住用財産を取得した年の12月31日時点に、償還期間が10年以上の住宅ローン(買い換えた居住用財産に係るもの)の残高があること
  • 以前住んでいた居住用財産を売った年の翌年12月31日までに住み始めていること。または、住み始める見込みであること。

2.売った相手が配偶者などではない

売った相手が、配偶者や同一生計親族など特別の関係にある人ではいけません。

3.その年分の合計所得金額が3000万円以下

合計所得金額(給与所得など他の所得も合わせた所得の合計額)が、3000万円を超えてはいけません。

4.直近3年間に居住用財産に係る他の特例を受けていない

売った年、前年もしくは前々年において、他の居住用財産の特例の適用を受けていてはいけません。

5.売った年の前年以前3年内に、この特例を受けていない

売った年の前年以前3年内の年に生じた他の居住用財産の譲渡損失の金額について、この特例(居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の特例)を受けていてはいけません。

3)適用:居住用財産を売った金額以上の住宅ローンの残高がある場合

1.売った居住用財産の要件

売った居住用財産が、次の要件を満たす必要があります。

  • 売った年の1月1日時点の所有期間が5年を超えていること
  • 実際に住んでいるか、住まなくなった日から3年が経った年の12月31日までに売ること
  • 土地だけの場合は、火災などで住宅が消失したなど一定の事由に該当していること
  • 売った居住用財産の売買契約日の前日において、償還期間が10年以上の住宅ローン(売った居住用財産に係るもの)の残高があること

2.売った金額が、住宅ローン残高を下回る

売った金額が、売買契約日の前日における住宅ローン残高を下回っている必要があります。

3.売った相手が配偶者などではない

売った相手が、配偶者や同一生計親族など特別の関係にある人ではいけません。

4.その年分の合計所得金額が3000万円以下

合計所得金額(給与所得など他の所得も合わせた所得の合計額)が、3000万円を超えてはいけません。

5.直近3年間に居住用財産に係る他の特例を受けていない

売った年、前年もしくは前々年において、他の居住用財産の特例の適用を受けていてはいけません。

6.売った年の前年以前3年内に、この特例を受けていない

売った年の前年以前3年内の年に生じた他の居住用財産の譲渡損失の金額について、この特例(特定居住用財産の譲渡損失の特例)を受けていてはいけません。

以上(2023年12月更新)
(監修 税理士法人アイ・タックス 税理士 山田誠一朗)

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画像:pixabay

なぜ、ちゃんと伝えたはずの労働条件なのに「話が違う」とトラブルになるのか?

書いてあること

  • 主な読者:入社後の社員と労働条件をめぐるトラブルを避けたい経営者
  • 課題:ちゃんと伝えたはずなのに、入社後に「聞いていた労働条件と違う」と言われる
  • 解決策:法律で決められた労働条件は必ず明示する。ネガティブな情報も正直に伝える

1 会社に悪意がなくても、労働条件の勘違いは起きる

せっかく入社した社員と、労働条件をめぐってトラブルになることがあります。例えば、

  • 賃金の金額が、募集時に聞いていた条件よりも低い
  • 業務内容に魅力を感じて応募したのに、その業務をほとんどやらせてもらえない
  • 休暇制度自体は充実しているのに、申請しても取得を認めてもらえない

などです。

しかも、こうしたすれ違いは、「会社側の説明不足で、求職者が労働条件を自分に都合よく解釈してしまう」「福利厚生などの情報は正しいが、実際は業務が忙しくてほとんど利用できない」など、会社に悪意がない状況で起きるケースがあります。

この記事では、こうした社員とのすれ違いを防ぐためのポイントとして次の3つを紹介します。

  • 法律で決められた労働条件は必ず明示する
  • 労働条件の解像度を今よりもう1段階上げる
  • ネガティブな情報も正直に伝える

なお、3つのポイントのうち、1.については、

2024年4月1日から「従事すべき業務の内容」「就業場所」「契約更新に関する事項」「無期転換申込機会、無期転換後の労働条件」の明示のルールが変わる

という法改正があります。この記事では法改正の内容自体には細かく触れていませんので、気になる人は、こちらのコンテンツをご確認ください。

2 法律で決められた労働条件は必ず明示する

通常、会社が求職者に労働条件を明示するタイミングは

  • 社員を募集する際(職業安定法)
  • 社員として採用する際(労働基準法、パートタイム・有期雇用労働法)

の2回です。それぞれ図表1の通り明示すべき労働条件が決められていて、これらは確実に求職者に伝えなければなりません。なお、グレー部分は「社員を募集する際と、社員として採用する際とで内容が異なる事項」、赤字部分は「2024年4月1日から明示が義務付けられる事項」です。

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もしも募集時から労働条件が変わったら、そのときは速やかに変更内容を求職者に明示しなければなりません。社員として採用する前に書面で新しい労働条件を明示するのが原則ですが、求職者が希望した場合はメールなどでの明示も可能です。

3 労働条件の解像度を今よりもう1段階上げる

労働条件の内容が曖昧だと、求職者に誤解を与えてしまいます。例えば、求人票に「基本給は月30万円」と記載していて、求職者が「賃金が高い」と思って応募したら、その中に手当や固定残業代が含まれていた、なんていうのはよくあるケースです。

細かく書きすぎると文字数が増えて逆に伝わりにくくなりますが、「労働条件の解像度を今よりもう1段階上げる」という意識を持つことは大切です。例えば、「社員を募集する際に明示する労働条件」であれば、次のような点をチェックしてみてください。なお、赤字部分は、2024年4月1日以降に求人を出す場合に注意が必要な事項です。

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4 ネガティブな情報も正直に伝える

条件と実態に乖離(かいり)があるような場合でも、それをしっかり伝えましょう。例えば、

  • 休暇制度が就業規則で定められ、求人情報でも正しく明示されている
  • しかし、実際は業務が忙しく、なかなか休暇を取得できない

といったケースです。

こうしたネガティブな情報は、「嘘はついていないから、まぁいいだろう」と積極的に伝えないケースが多いですが、求職者が入社後に実態を知ったら幻滅して退職してしまうかもしれませんし、「あの会社はブラック企業だ」などとSNSに書き込まれる恐れだってあります。

ですから、ネガティブな情報も正直に求職者に伝えましょう。もしも面接などで求職者から「年次有給休暇の取得状況」について質問されたら、

「今の取得日数は1人当たり平均で年5日だけど、来年度には年7日に引き上げられるよう、計画的付与制度(注)を導入する予定なんだ」

といった具合に、自社の現状と改善に向けた方針を正しく伝え、その上で納得して入社してくれる人を採用するようにするのです。

(注)年次有給休暇の付与日数のうち5日を超える部分について、会社が取得時季を決めて計画的に割り振る制度です(労使協定の締結が必要)。

以上(2024年1月更新)
(監修 シンシア総合労務事務所 特定社会保険労務士 白石和之)

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画像:unsplash

【入社1年目の教科書】売りたくても御用心。相手を惑わすセールストークは法律違反

書いてあること

  • 主な読者:売りたい気持ちが強くて、ついつい話を盛ってしまいがちな新入社員
  • 課題:相手を困惑させたり、勘違い(誤認)させたりする不当なセールストークは法律違反
  • 解決策:正しい情報を相手に魅力的に伝える力を鍛えるべし!

営業って本当に難しい……先週から一人で外回りをしているけど、なかなか売れないな。そういえば、他の会社に就職した大学時代の友達は成果を上げているようだけど、結構、「話を盛っている」って言っていたな。私は真面目すぎるかな? 嘘はダメだけど、ちょっと話を盛るぐらいなら大丈夫だよね……?

1 「売りたい!」気持ちに要注意

営業を担当することになったら、張り切って自分たちの商品やサービスを売り込みたいですよね。ただし、その「売りたい!」という気持ちに御用心。なぜなら、

相手を勘違いさせるようなセールストークや、実際よりもよく見せかける広告は法律違反

になることがあるからです。皆さんに悪気がなくても、売りたいという気持ちから話を盛ることがあるでしょうが、押さえるべきところは押さえていきましょう。

2 セールストークなどで禁止されていること

相手を困惑させたり、勘違い(誤認)させたりするセールストークなどは、「消費者契約法」という法律で禁止されています。こうした行為があった場合、

  • 相手は一方的に契約を取消すことができる
  • 相手が契約書にサインしていたり、代金を支払っていたりしていても、取消しの申し出があった場合、会社は応じなければならない

などのルールがあります。不当なセールストークなどの例は次の通りです。

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3 広告などで禁止されていること

実際よりもよく見せかける広告や表示は、「景品表示法(略称)」という法律で禁止されています。CM、チラシ、ダイレクトメールだけでなく、商品のパッケージ、料理のメニュー、口頭でのセールストークなども対象になります。こうした行為があった場合、

契約自体が取消されることはありませんが、会社は表示を改める、再発防止策を講じる

といった対応をしなければなりません。

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広告であるにもかかわらず、広告であることを隠す「ステルスマーケティング(ステマ)」も規制の対象です。インターネット広告なども対象になります。皆さんがこうした仕事を担当されている場合は注意しましょう。

4 正しい情報を魅力的に伝える練習を!

ここまで紹介してきた内容は、要するに「嘘をついてはいけない」ということに尽きますから、皆さんが「売りたい!」と思ったら、

正しい情報を相手に魅力的に伝える練習

をすればよいことになります。そして、そのために必要なのは相手のニーズを捉えることです。この辺りは先輩から徹底的に教わってください。事前準備をして、実際に営業し、課題を見つけて改善していくことで、皆さんの営業力は確実に高まります!

最後に、

「相手に誤解を与えてしまったかもしれない」と思ったら、恐れずにその場で相手に確認し、誤解を解く

ようにしましょう。皆さんは「一度言ったことを覆すようで嫌だ」と思うでしょうが、相手は皆さんのことを「正直で誠実な人」と評価してくれるかもしれません。そして何より、

皆さんが嘘つきにならずに済む

のです。

以上(2025年1月更新)

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画像:Mariko Mitsuda

【外国人雇用】初めての外国人雇用Q&A~在留資格の管理から住居等の手続きまで

書いてあること

  • 主な読者:外国人雇用を検討している経営者
  • 課題:日本人を雇用する場合との違いが分からない
  • 解決策:「在留資格」以外は基本的に日本人雇用と同じ。ただし、言語や文化の違いに配慮する。また、住居の確保などが必要な場合もある

1 在留資格を押さえれば、他は基本的に日本人雇用と同じ

2023年4月にコロナ禍の入国制限が解除され、これまで滞っていた外国人の受け入れが再開されつつあります。外国人雇用を検討する会社も多いでしょうが、一方で「日本人と同じように雇用して大丈夫なの?」といった疑問があるかもしれません。

そこで、外国人雇用と日本人雇用の違いを簡単にまとめてみました。

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「日本人雇用と異なる点が多い」と思うかもしれませんが、これらの違いは

外国人が日本に滞在し、活動するための資格「在留資格」に関するもの

です。在留資格とは、

外国人の住所地を管轄する地方出入国在留管理局(出入国在留管理庁の地方支分部局、以下「入管」)に申請すると取得できる資格で、日本で行える活動と在留期間を示したもの

です。在留資格で認められていない仕事に就いたり、在留期間を超えて働いたりするのは違法です(ただし、在留期間が無期限のものもある)。逆に言えば、

在留資格にさえ注意しておけば、外国人雇用と日本人雇用は基本的に同じ

ということになります。以降では、ここまでの内容をもう少し掘り下げ、外国人を雇用する際の手続きや、在留資格の確認のポイント、雇用した後の注意点などを紹介していきます。なお、在留資格の種類や在留期間については、出入国在留管理庁のウェブサイトなどをご確認ください。

■出入国在留管理庁「在留資格一覧表」■
https://www.moj.go.jp/isa/applications/guide/qaq5.html

2 外国人を雇用する際はどんな手続きが必要?

1)海外から国内に外国人を呼び寄せて雇用する場合

外国人を国内に呼び寄せる場合、「在留資格認定証明書」という書類の交付を申請します。これは、外国人の国内での活動内容が、在留資格の条件に適合していることを証明する書類です。

会社は入管に交付を申請後、交付された証明書を海外にいる外国人本人に送付します。外国人が在外日本大使館や領事館での査証(ビザ)申請を行う際や、入国審査官による上陸審査を受ける際に、この証明書を提出すると審査がスムーズに行われます。

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なお、入国時の感染症対策についてですが、2023年5月のコロナ5類移行に伴い、現在はワクチン証明書・出国前検査証明書の提示が不要になっています。一方で、海外から流入する感染症を把握するために、発熱・咳などの有症状の外国人に対しては、任意で鼻腔ぬぐい液を採取する「入国時感染症ゲノムサーベイランス」が行われています(検疫所にて実施)。

■厚生労働省「入国時感染症ゲノムサーベイランス」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00209.html

2)海外から技能実習生を受け入れて雇用する場合

技能実習制度は、外国人の技能実習生が、日本で実習を行う会社(実習実施者)の下で働き、母国では得がたい技能の修得などを図るための制度です。実習実施者になるには、

技能実習生ごとの「技能実習計画」を作成し、外国人技能実習機構の認定を受ける

必要があります。なお、技能実習制度については、現行の制度を廃止して新制度を立ち上げることが政府内で検討されています。

■出入国在留管理庁「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(第12回)」■
https://www.moj.go.jp/isa/policies/policies/03_00001.html

3)現在日本に住んでいる外国人を雇用する場合

外国人の在留資格が、雇用後の業務内容に適合していれば、雇用できる可能性があります。ちなみに在留資格は、外国人が保有している「在留カード」に記載されています。

現在の在留資格では働けない場合、入管に在留資格の変更を申請

する必要があります。一方で、「永住者」や「日本人の配偶者等」といった就労制限がない在留資格もあります。

4)現在日本に住んでいる留学生を雇用する場合

日本の大学や専門学校、日本語学校などに「留学」の在留資格で在留している外国人をアルバイトとして雇用する場合、外国人が「資格外活動」の許可を受けていれば、雇用できます。卒業と同時に正社員などとして雇用する場合、入管に申請し、在留資格を「留学」から業務内容に適合したものに変更します。

ここまで紹介した4つは許可手続きの主なケースです。外国人の滞在場所などによって手続きの詳細が異なる場合があるため、実務では申請取次行政書士などの専門家に相談してください。

3 在留資格の確認など採用時の注意点は?

1)在留資格を確認する際は何に注意すればいい?

在留資格と査証(ビザ)は混同されがちですが、

  • 査証(ビザ)は、上陸審査時に必要となるもの
  • 在留資格は、日本での滞在・活動時に必要となるもの

といったように全く違うものです。そのため、

報道などで使われる「就労ビザ」という言葉も、本来は「就労可能な在留資格」のことを指します。査証(ビザ)だけ持っていても日本では働けないので、必ず在留資格を確認

しなければなりません。外国人の在留資格を確認する際は、在留資格と雇用後の業務内容に齟齬(そご)がないか、在留期間が終了していないかなどをチェックします。

2)在留資格の判断に迷ったら?

外国人の在留資格が有効か判断しにくい場合、入管に「就労資格証明書」を申請すると、外国人が行える活動について法務大臣の証明が受けられます。また、現在の在留資格では働けないものの、どの在留資格に変更すればよいか分からない場合、入管や厚生労働省の機関である外国人雇用サービスセンターに問い合わせると、アドバイスを受けられます。

在留資格の確認は非常に重要です。この対応をショートカットして後で在留資格と業務内容とが適合していない事が発覚した場合、違法性を問われる事になりますので、充分注意して対応する必要があります。

3)在留資格の確認以外に、採用での注意点は?

求人募集では、外国人のみを対象としたり、外国人が応募できないという条件を出したりすることはできません。

選考では、言語の違いから面接などでの意思疎通がうまくいかないケースがあります。能力等を正確に知りたい場合は、実技をやらせたり、同じ分野の専門家を外国人と面談させて専門分野に関する質問を行ったりして、適性や能力を判断してみるとよいでしょう。

採用が決まったら、労働条件通知書などで労働条件を明示します。労働基準法では昇給、退職金、賞与など、口頭で明示してもよい労働条件がありますが、トラブルを回避するなら書面で明示したほうが無難です。

なお、厚生労働省では、英語、中国語、韓国語、ポルトガル語など13カ国語に対応した「外国人労働者向けモデル労働条件通知書」を公表しています。

■厚生労働省「外国人労働者向けモデル労働条件通知書」(下記URL中段)■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000056460.html

4 外国人を雇用した後の主な注意点は?

1)外国人を雇用した後に必要な手続きは?

1.外国人雇用状況の届け出

外国人を雇用した場合、所轄の公共職業安定所(ハローワーク)に外国人雇用状況の届け出を行います。届け出の方法は、外国人が雇用保険の被保険者になるかどうかで変わります。

  • 被保険者になる:「雇用保険被保険者資格取得届」を入社月の翌月10日までに届け出
  • 被保険者にならない:「外国人雇用状況届出書」を入社月の翌月末日までに届け出

なお、雇用保険の資格取得を行う場合、資雇用保険被保険者格取得届の提出をもって外国人雇用状況届出書を提出したものとみなされます。

2.健康保険・厚生年金保険の届け出

外国人が健康保険・厚生年金保険の被保険者になる場合、「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を、入社日から5日以内に所轄の年金事務所に届け出ます。

被扶養者がいる場合、「健康保険被扶養者(異動)届」なども併せて提出します。なお、被扶養者になれるのは、原則「国内居住者」だけです。国内居住者かどうかは、住民票があるか否かで判断します。この他は基本的に日本人雇用と同じです。

なお、マイナンバーと基礎年金番号が結びついていない場合や個人番号制度の対象外である場合については、「ローマ字氏名届」の提出も必要となります。

2)在留資格の管理は会社がするべきか?

在留資格は永住者など一部の例外を除き、在留期間が決まっており、在留期間を1日でも超えたら「不法滞在」となってしまいます。ですから、

外国人の「氏名」「国籍」「在留資格」「在留期限」などは、会社側で管理しておく

のが望ましいでしょう。在留期間の期限が近づいてきたら、満了前に入管に更新を申請する必要があります。6カ月以上の在留期間を有する場合、期限満了の約3カ月前から申請できます。

3)住居をどうするか?

在留資格の取得などを済ませた外国人は、入国後14日以内に住所を定めなくてはなりません。必要な手続きは日本人と同じ(転入届・転出届など)で、手続き後に住民票が作成されます。

住所を定めるには住居を確保する必要がありますが、言語の違いから不動産オーナーとうまくコミュニケーションが取れないケースもあるようです。この辺りは、外国人賃貸専門の不動産会社を利用するなどして対応しましょう。

なお、出入国在留管理庁では、英語、中国語、韓国語、ポルトガル語など15カ国語に対応した「外国人生活支援ポータルサイト」を運営していて、住居の他、日本での生活に必要な知識などを確認できます(ポータルサイト内に掲載の「生活・就労ガイドブック」は16言語に対応)。

■出入国在留管理庁「外国人生活支援ポータルサイト」■
https://www.moj.go.jp/isa/support/portal/index.html

4)外国人に効果的な教育法は?

外国人を教育する際も、言語の違いから意思疎通がうまくいかないケースがあります。特に安全衛生に関する意思疎通がうまくいかないと、外国人が作業現場などでけがをする恐れがあるので、絵や動画など視覚に訴える方法でポイントを伝えるようにしましょう。

なお、厚生労働省では、建設現場における安全衛生対策のポイントが分かる教材(動画)や働く人の安全と健康について学べる教材(漫画)を公表しています。

■厚生労働省「外国人労働者の安全衛生対策について」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000186714.html

5)宗教・文化の違いはどう配慮すべきか?

宗教や文化の違いにもある程度の配慮が必要です。例えば、宗教上決められた時間に礼拝を行う必要がある外国人には就業時間中の礼拝を認めたり、中国の旧正月(毎年2月ごろ)のように、外国人が本国独特の文化で長期にわたって帰国するときは、スムーズに帰国できるよう配慮したりします。

6)外国人に子どもが生まれたときは?

外国人が雇用後に結婚し、子どもが生まれた場合、子どもが日本国籍を持つ場合と持たない場合があります。例えば、父親(労働者)が外国人、母親が日本人の場合、その子どもは日本国籍を持ちます。この場合、その子どもの在留資格の取得手続きは原則として必要ありません。一方、父親(労働者)と母親の両方が外国人の場合、その子どもは日本国籍を持ちません。この場合、子どもが日本に在留するには、出生日から30日以内に在留資格取得の申請が必要です。

以上(2024年1月)
(監修 人事労務すず木オフィス 特定社会保険労務士 鈴木快昌)

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画像:Luis Molinero-shutterstock

交差点での右折(2024/2号)【交通安全ニュース】

活用する機会の例

  • 月次や週次などの定例ミーティング時の事故防止勉強会
  • 毎日の朝礼や点呼の際の安全運転意識向上のためのスピーチ
  • マイカー通勤者、新入社員、事故発生者への安全運転指導 など

多くの車や人が行き交う交差点は、交通事故が起こりやすい場所です。

特に右折では、運転者は対向車はもちろんのこと、歩行者や自転車などにも十分注意しなければなりません。一瞬の気の緩みが重大事故につながるおそれがあります。

今月は、このような重大事故となる危険が高い、信号のある交差点での右折における安全運転を考えます。

交差点での右折

1.交差点での右折に潜む危険

令和4年の統計をみると、信号のある交差点で発生した交通事故は約5.3万件あり、その内、右折事故は約2万件にのぼり、全体の約40%を占めています。

交通事故件数

出典:公益財団法人交通事故総合分析センター「令和4年版交通統計」から当社作成

交差点での右折は、走行中の対向車とのタイミングを計ったり、横断歩道上の歩行者や自転車などの安全を確認したりする必要があり、運転行動が複雑です。また、交通状況で想定外のことが起こったり、心理面で負荷がかかったりすることもあります。例えば以下のような危険が潜んでいます。

◆交通状況の危険

  • 対向車の陰から二輪車などが飛び出してくる。
  • 黄色信号で対向車が無理に交差点へ進入してくる。
  • 自転車が目前の横断歩道を猛スピードで走行する。

◆運転者の心理面の危険

  • 後続車がいるプレッシャーで、早く右折しなければと焦る。
  • 対向車の車体が小さい場合など、そのスピードを実際よりも遅く感じる。
  • 対向車の動きに気を取られてしまい、横断歩道上の歩行者や自転車への注意が疎かになる。

右折をする際は、様々な危険が常に潜んでいることを意識して運転することが大切です。

2.右折時の安全運転のポイント

右折時の安全運転のポイント

以下の運転行動で上図のような安全確認を徹底し、事故を防ぎましょう。

  • 交差点の中央寄りを徐行して、交差点の状況を広く見るようにしましょう。(交差点内での視野が広がり、右後方(※1)の確認がしやすくなります。)
  • 対向車に急減速させるような強引な右折をしてはいけません。対向車が途切れない場合には、焦らず信号が変わるまで待つことが大切です。(対向車の陰(※2)に注意しましょう。)
  • 交差点の信号が青に変わる瞬間に(対向車よりも先に)、猛ダッシュでショートカットするような右折をしてはいけません。

3.重大事故を避けるために

交差点右折時の重大事故で、多くの歩行者や自転車搭乗者が被害にあっています。交差点の右折では、対向車だけに気を取られないようにし、右折先の横断歩道にいる歩行者や自転車などにも注意を向ける必要があります。

対向車の陰や運転者の視野の外など見えないところに歩行者や自転車などがいるかもしれないと想定しながら運転しましょう。

見えない先に注意

以上(2024年2月)

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【かんたん所得税(6)】税金の特典が受けられる「青色申告制度」

書いてあること

  • 主な読者:これから個人事業を起業しようとする人や不動産所得、山林所得がある人
  • 課題:確定申告には、青色申告と白色申告とがあるが違いが分からない
  • 解決策:税務署への届出や帳簿の記帳などを義務付ける代わりに、各種特典が与えられる

1 確定申告は色によって違う? 青色と白色の違い

所得税の確定申告には「青色申告」と「白色申告」とがあります。

  • 青色申告:日々の取引を複式簿記で記録する代わりに、さまざまな特典が受けられる
  • 白色申告:簡便な帳簿記録でよい代わりに、青色申告で受けられるような特典がない

近年はクラウド型の会計システムの導入が進み、会計の知識がなくても簡単に青色申告に必要な書類が作れるようになったことから、青色申告の壁はほとんどありません。そこで、この記事では、青色申告制度を受けるための手続きや特典を説明します。

なお、青色申告ができるのは、不動産所得、事業所得または山林所得が生ずる業務を行っていて、納税地の所轄税務署長の承認を受けた人です。個人事業主はもちろんですが、副収入として不動産所得のある給与所得者なども青色申告ができます。

2 青色申告の手続き

青色申告をしたい人は、青色申告をしたい年の3月15日までに「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出します。例えば、2024年分の所得税を青色申告したいなら、2024年3月15日が提出期限となります。ただし、その年の1月16日以後の新規開業の場合は開業日から2カ月以内に提出すれば大丈夫です。

なお、申請書の提出後に特段の承認通知はなく、申請却下の連絡がなければ受理されたことになります。

3 青色申告者がすること

1)記帳の義務

青色申告をする人は、帳簿書類を備え付け、これに不動産所得、事業所得および山林所得の金額に係る取引を記録し、保存します。この記帳は原則として、複式簿記で行う必要があります。特例として、損益計算書が作成できる程度に簡略された簡易帳簿(現金出納帳や固定資産台帳のみなど)による記帳も認められます。しかし、青色申告の特典の1つである青色申告特別控除額が10万円に減額されます(複式簿記の場合は最高65万円)。なお、山林所得は10万円の控除のみです。

2)添付の義務

青色申告書には、貸借対照表、損益計算書その他不動産所得、事業所得または山林所得の金額の計算に関する明細書を添付しなければなりません。ただし、簡易帳簿による場合は、貸借対照表の添付は必要ありません。

4 青色申告の代表的な特典

1)青色申告特別控除

1.65万円の青色申告特別控除

次の要件を満たす青色申告者は、不動産所得または事業所得の金額の計算上、合計65万円を控除できます。この控除は、不動産所得の金額、事業所得の金額から順次控除します。なお、不動産所得または事業所得の金額が65万円より少ない場合は、原則として、その金額が限度となります。

イ.不動産所得に係る業務を事業的規模で行っていること、または事業所得を生ずべき事業を行っていること

ロ.不動産所得、事業所得に係る一切の取引の内容を詳細に帳簿に記録していること

ハ.期限内に確定申告書を提出し、かつ、貸借対照表、損益計算書その他不動産所得または事業所得の金額の計算に関する明細書を添付していること

ニ.青色申告書と決算書を、提出期限までにe-Taxにより提出していること、または仕訳帳・総勘定元帳を電子帳簿保存(事前に税務署長の承認が必要)していること

不動産所得を生ずべき業務については、貸付不動産が、アパートやマンションならおおむね10室以上、貸家ならおおむね5棟以上であれば事業的規模とされます。

なお、上記ニ.の要件のみを満たしていない場合の控除額は55万円です。

2.10万円の青色申告特別控除

簡易帳簿で記帳を行うなど、上記1.の要件を満たさない青色申告者は、不動産所得、事業所得または山林所得の金額の計算上、合計10万円を控除できます。この控除は、不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額から順次控除します。なお、不動産所得、事業所得または山林所得の金額が10万円より少ない場合は、原則として、その金額が限度となります。

2)青色事業専従者給与額の必要経費算入

不動産所得、事業所得または山林所得の金額の計算上、青色事業専従者(事業に携わっている家族など)に支払った給与や賞与を必要経費に算入できます(退職金は算入できません)。給与を必要経費に算入すると所得が減り、納税額も減ります。

3)純損失の繰越控除・繰戻還付

その年の所得が赤字(純損失)となった場合に、翌年以降3年間の繰越控除(翌年以降3年間の黒字と相殺)またはその前年への繰戻還付(前年の黒字のうち、その年の損失分の還付を受けられる)の請求ができます。

5 青色事業専従者給与額の必要経費算入の注意点

1)青色事業専従者とは

青色事業専従者とは、青色申告者と同一の生計で暮らしている15歳以上の親族で、一定期間、専ら青色申告者が営む事業に携わる人です。青色事業専従者は、支給額をその年分の給与所得に係る収入金額に計上します。そのため、支給時には所得税の源泉徴収が必要です(支給額が月額8万8000円以上の場合)。

2)必要な手続き

この規定の適用を受ける場合、その年の3月15日まで(その年の1月16日以降に事業を開始した場合、または新たに青色事業専従者を有することとなった場合は、その開始した日あるいはその有することとなった日から2カ月以内)に「青色事業専従者給与に関する届出書」を、税務署に提出します。

また、その給与の金額の基準を変更する場合や新たに青色事業専従者が加わった場合は、変更届出書を遅滞なく提出しなければなりません。

3)専ら従事するかどうかの判定

まず、学生や他に職業のある人は、原則として専従者として認められません。その上で、その事業に専ら従事するかどうかの判定は、その年を通じて事業に従事している期間が6カ月を超えるか否かで行います。しかし、開業や廃業などでその年を通じて事業が営まれなかった場合や、専従者の死亡、長期にわたる病気、婚姻などによりその年を通じてその事業に従事することができなかった場合は、従事可能期間の2分の1を超える期間を従事すれば大丈夫です。

例えば、9月初めに開業した場合の従事可能期間は9~12月の4カ月なので、2カ月超をその事業に従事すればよいことになります。

以上(2023年12月更新)
(監修 辻・本郷税理士法人 税理士 安積健)

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画像:unsplash

【入社1年目の教科書】ネット上に公開されている無料画像でも無断で利用してはいけません

書いてあること

  • 主な読者:画像などの利用で注意すべきルールを知りたい新入社員
  • 課題:ネット上に公開されている画像をプレゼン資料で使いたいけど、ダメなの?
  • 解決策:画像などを利用する場合は創作者の許可が必要。無料でも無断利用は違法

先輩からプレゼン資料に使う画像の検索を頼まれた。先輩が頑張って資料を作ってたから、格好いい画像を選ばないとな〜。どれどれ、この画像なんて無料だし、いいんじゃないかな! んっ? 「商用利用の場合は、著作権表示をしていただくようお願い申し上げます」だって。画像は無料で利用できるんだよね、これってどういう意味なの!?

1 他人のものを使うときは著作権に注意する

プレゼン資料やチラシを作るとき、「お、イメージ通り!」という画像がネット上に公開されていたら、使いたくなりますよね。でも注意してください。たとえネット上に公開されている画像でも、無断で利用すると著作権の侵害になることがあります。著作権とは、

画像・動画・文章・音楽などを創作した人に与えられる権利のこと

です。著作権には、自分の作品であることを表示する権利、無断で作品を利用されない権利など、さまざまな権利が含まれます。プロが創作したものに限らず、個人がSNSで公開している画像などにも著作権はあるので、基本的に、

自分以外の人が創作した画像などを利用する場合、許可を得る必要がある

と覚えておきましょう。通常は、創作した人が著作権を持っているので、創作した人に許可を得なければなりません。あるいは、創作した人が出版社など他者に著作権の一部を譲渡している場合もあります。

2 画像サイトなどの利用は「利用条件」を確認してから

画像や動画などの素材を提供しているサイトは、有料サイトと無料サイトがあります。有料サイトの場合は、通常、ビジネスでも使えます。つまり、プレゼン資料に掲載しても問題ありません。これは、有料サイトの運営者が事前に画像を撮った人や、画像に映っている人などから許可を得ているので、皆さんはお金を支払う代わりに、個別に許可を得る必要はないということです。

ただし、サイトによっては「利用時は『画像提供:○○』など著作権の表示が必要」「印刷物で利用する場合は、1万部以下までとする」などが設けられていることもあるので、各サイトの利用条件を必ず確認しましょう。

3 相手の許可が不要な「引用」と「私的利用」

著作権には、創作した人の許可を得なくてもよいケースがあります。とはいえ、ビジネスではトラブルを避けるためにも許可を得るのが基本なので、参考程度に知っておいてください。まずは「引用」です。引用とは、

自分の主張などを補強するために、他人の画像などを利用すること

です。引用には、「かぎかっこをつけるなど、自分の著作物と引用部分とが区別されていること」「出所が記載されていること」など幾つかのルールがあります。次は「私的利用」です。私的利用とは、

個人または家族内で動画観賞を楽しむこと

です。ただ、基本的にビジネスは私的利用には該当しません。

以上(2025年1月更新)

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画像:Mariko Mitsuda

【かんたん所得税(5)】2023年に住宅を購入した人は必見の「住宅ローン控除」

書いてあること

  • 主な読者:2023年中に住宅をローンで購入した人
  • 課題:はじめて確定申告をするが、必要な書類や控除額の計算が分かりにくい
  • 解決策:まずは5つの要件を全て満たすかを確認する。例えば、建ててから6カ月以内に住み始め、適用を受ける各年の12月31日まで住んでいるなどがある

1 住宅ローン控除ではじめての確定申告

年末調整だけで済んでいた人が、はじめて所得税の確定申告をする。そのきっかけとして最も一般的なのが、いわゆる「住宅ローン控除」(正式には「住宅借入金等特別控除」)です。しかし、はじめての確定申告は戸惑うものです。また、住宅ローン控除は、控除期間が10年または13年と長いので、毎年、きちんと手続きしなければなりません。

この記事では、2023年中にローンで住宅を購入した人向けに、住宅ローン控除の基本的な手続きや適用要件、事例を用いた控除額の計算などを説明します。

2 確定申告は1年目だけ。2年目以降は年末調整で

住宅ローン控除を受けるには、次の書類を添付した確定申告書を税務署に提出します。給与所得者の場合、住宅に住み始めた年に確定申告をすれば、翌年以降は勤務先の年末調整で大丈夫です。

  • 金融機関等から交付を受けた「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」
  • 法務局で発行を受ける「家屋の登記簿謄本または抄本」
  • 不動産会社との「売買契約書、請負契約書など」で、家屋の新築年月日または取得年月日、家屋の新築工事の請負代金または取得対価の額および家屋の床面積を明らかにする書類またはその写し

土地の取得に係る住宅ローンがある場合、土地の登記簿謄本または抄本、売買契約書などで土地等を取得したこと、取得年月日および取得対価の額が明らかになる書類またはその写しが必要です。

確定申告をすると、申告をした年の秋ごろに残りの年数分(9年または12年分)の控除申告書が、まとめて税務署から郵送(確定申告時にe-Taxで電子データによる交付を希望した場合には、e-Tax上で証明書を受け取る)されます。年末調整では、その控除申告書に毎年金融機関から送られてくる残高等証明書の項目を転記し、年末調整の書類と併せて会社に提出することで、2年目以降の住宅ローン控除を受けることができます。

3 全て満たす必要がある5つの要件

1)年末まで住み続けていますか?

新築・取得・増改築(以下「新築等」)の日から6カ月以内に住み始め、適用を受ける各年の12月31日まで引き続いて住んでいる必要があります。

2)控除を受ける年の合計所得金額は2000万円以下ですか?

特別控除を受ける各年分の合計所得金額が2000万円以下である必要があります。

3)新居の床面積や用途は適切ですか?

新築等をした住宅の床面積が50平方メートル以上(合計所得金額が1000万円以下の人は40平方メートル以上)であり、床面積の2分の1以上の部分を自分自身が居住するために使っている必要があります。つまり、賃貸や店舗利用をしていないということです。

4)住宅ローンの借入先・返済期間・利率は適切ですか?

10年以上の分割返済をする新築等のための、一定の借入金または債務(住宅の敷地となる土地を取得するための借入金を含む)である必要があります。一定の借入金または債務とは、例えば、金融機関、独立行政法人住宅金融支援機構、勤務先などからの借入金や、独立行政法人都市再生機構、地方住宅供給公社、建設業者などに対する債務です。しかし、勤務先からの借入金で、無利子または0.2%に満たない利率による場合は該当しません。また、親族や知人からの借入金は全て該当しません。

5)住み始めた年の直前2年間・直後3年間に今まで住んでいた住宅を売って、特例を受けていませんか?

住み始めた年とその直前2年間、直後の3年の6年間に、以前居住していた住宅を譲渡した場合の特例(住宅を譲渡したときに受けられる3000万円の特別控除や軽減税率などの特例)の適用を受けていると該当しません。

4 控除対象年と控除額

1)区分

住宅ローン控除は、新築等をした住宅を次のように区分しており、一般住宅以外の住宅には一定の評価基準があります。

  • 一般住宅:下記以外の住宅
  • 認定長期優良住宅:長期に使用するための構造設備などが備わっている住宅
  • 認定低炭素住宅:二酸化炭素の排出が抑制できる住宅
  • 省エネ基準適合住宅:日本住宅性能表示基準(外壁などの耐熱性や給湯・照明などの1次エネルギー消費の評価基準)において一定以上の性能を満たしている住宅
  • ZEH水準省エネ住宅:日本住宅性能表示基準(外壁などの耐熱性や給湯・照明などの1次エネルギー消費の評価基準)において一定以上の性能を満たしている住宅。省エネ住宅よりも多くの性能を満たす必要がある

いずれの場合も、居住開始1年目~10年目または13年目において、合計所得金額が2000万円以下の年について適用できます。

2)一般住宅の新築等

一般住宅の新築等に係る住宅ローン控除の控除期間、控除額の計算方法は次の通りです。

  • 控除期間:13年(増改築または中古住宅の場合は10年)
  • 各年の控除額の計算:各年末借入金残高等×0.7%
  • 控除限度額:21万円=3000万円×0.7%(増改築または中古住宅の場合は14万円=2000万円×0.7%)

3)省エネ基準適合住宅

省エネ基準適合住宅を新築等した場合、一般住宅より多くの控除限度額が設定されています。控除期間、控除額の計算方法は次の通りです。

  • 控除期間:13年(増改築または中古住宅の場合は10年)
  • 各年の控除額の計算:各年末借入金残高等×0.7%
  • 控除限度額:28万円=4000万円×0.7%(増改築の場合は14万円=2000万円×0.7%または中古住宅の場合は21万円=3000万円×0.7%)

4)ZEH水準省エネ住宅

ZEH水準省エネ住宅を新築等した場合、一般住宅より多くの控除限度額が設定されています。控除期間、控除額の計算方法は次の通りです。

  • 控除期間:13年(増改築または中古住宅の場合は10年)
  • 各年の控除額の計算:各年末借入金残高等×0.7%
  • 控除限度額:31万5000円=4500万円×0.7%(増改築の場合は14万円=2000万円×0.7%または中古住宅の場合は21万円=3000万円×0.7%)

5)認定長期優良住宅または認定低炭素住宅の新築等

認定長期優良住宅や認定低炭素住宅を新築等した場合、一般住宅より多くの控除限度額が設定されています。控除期間、控除額の計算方法は次の通りです。

  • 控除期間:13年(増改築または中古住宅の場合は10年)
  • 各年の控除額の計算:各年末借入金残高等×0.7%
  • 控除限度額:35万円=5000万円×0.7%(増改築または中古住宅の場合は21万円=3000万円×0.7%)

5 事例で計算してみよう

1)条件

居住者甲は、2023年3月1日に新築のマンション(床面積84平方メートル、認定長期優良住宅および認定低炭素住宅ではないもの)を取得し、すぐに住み始めました。

  1. マンションの取得対価:5350万円(消費税10%込み)
  2. 取得資金
    • 自己資金:1250万円
    • 借入金(20年間):4100万円
    • 借入金の年末残高:4062万円
  3. 3.甲の2023年分の合計所得金額:850万円

2)住宅ローン控除額の算出方法

1.要件の確認

合計所得金額が850万円(2000万円以下に該当)、かつ、床面積が84平方メートル(50平方メートル以上に該当)なので「適用あり」とします。

2.控除額の計算

年末借入金残高は4062万円であり、3000万円を上回っているため、控除額は28万4340円(4062万円×0.7%)ではなく、21万円(3000万円×0.7%)となります。

6 住宅ローン控除の注意点

1)適用除外になるケース

住み始めた年とその直前2年間、直後の3年の6年間のどこかで、居住用財産の課税の特例(住宅の買換えがあった場合の課税の繰延規定や、住宅の譲渡があった場合の3000万円特別控除など)の適用を受ける場合、住宅ローン控除は住み始めた年以後10年または13年間は適用できません。従って、住宅を譲渡または買換える場合は、どの特例が有利なのかを判断しましょう。

2)転勤などで購入した住宅に住めなくなったケース

住宅ローン控除の適用を受けた人が、転勤などやむを得ない事情で住宅に住めなくなった場合、その年以後は住宅ローン控除が受けられません。しかし、その人が再び居住用家屋に住むことになったら、一定の手続きをして適用を受けることができます。一定の手続きとは、計算書や控除額を添付・記載した確定申告書の提出です。

例えば、東京に住宅を購入して住み始めた年以後3年間、住宅ローン控除の適用を受けた人が大阪に転勤となり、その間、東京の家屋は他人に賃貸していたとします。2年後、その人が東京に戻り、元の家屋に再び住み始めた場合、当初の居住開始年からの適用期間(10年または13年間)のうち賃貸していた年の翌年から、再び住宅ローン控除が適用できます。

以上(2023年12月更新)
(監修 税理士法人アイ・タックス 税理士 山田誠一朗)

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