【規程・文例集】最新法令に対応した「就業規則」のひな型

書いてあること

  • 主な読者:古い就業規則を使っていて、内容をブラッシュアップしていない経営者
  • 課題:就業規則は内容が多岐にわたるため、具体的にどう見直せばよいのか分からない
  • 解決策:「絶対的必要記載事項」「相対的必要記載事項」を中心に、就業規則全体を見直す

1 就業規則の見直しは絶対的必要記載事項から

就業規則とは、賃金や労働時間などの労働条件、職場内の規律などについて定めた会社のルールブックで、常時10人以上の社員が働く事業場では作成・届け出が義務付けられています。本来は「法改正、社員数の増加、働き方改革」など、自社の状況や制度の変化に応じてブラッシュアップしていく必要があるのですが、実際は、

  • 社歴が長く、労使関係が落ち着いているので、就業規則を見直す必要性がない
  • 問題が起きると都度、経営者が判断しているので、就業規則に落とし込む必要がない

といった理由から、古い就業規則をそのまま使っている会社が少なくありません。ただ、こうした運用は、大きなトラブルが起きた場合にリスクです。

就業規則の記載事項は次の3つに分かれており、特に「絶対的必要記載事項」「相対的必要記載事項」が、最新の法令に基づく内容で漏れなく定められているかを確認するのが先決です。

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次章では、就業規則のひな型を紹介します。ここまでの内容を踏まえた上で、自社の就業規則の見直しにご活用ください。

2 就業規則のひな型

以降で紹介するひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の企業によって定めるべき内容が異なってきます。実際に就業規則を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

【就業規則のひな型】

第1章 総則

第1条(目的)

この就業規則(以下「本規則」)は、株式会社○○○○(以下「会社」)の従業員の労働条件、服務規律、その他就業に関して必要な事項について定めたものである。会社と従業員は本規則を遵守し、会社の発展に寄与するものとする。なお、本規則に定めのない事項は、労働基準法およびその他の関係法令によるものとする。

第2条(適用範囲)

本規則の適用を受ける従業員は、第3条および第4条の手続きを経て、会社と期間の定めがない労働契約を交わした従業員とする。期間に定めのある労働契約を交わした短時間勤務従業員は別途定める「パートタイマー就業規則」(省略)、期間に定めのある労働契約を交わした従業員は別途定める「契約従業員用就業規則」(省略)の適用を受けるものとする。また、パートタイマー就業規則および契約従業員用就業規則で規定する「無期労働契約への転換」によって無期労働契約に転換した従業員は、本規則の適用を受けず、転換後も各々の規則を適用とする。

第2章 採用、異動

第3条(採用の手続き)

会社は、就職を希望する者の中で、次の各号に定める書類を提出した者の中から、面接その他一定の選考試験により採用者を決定する。ただし、状況により、会社はその一部の書類の提出を求めないことがある。

  1. 履歴書
  2. 職歴のある者については職務経歴書
  3. 写真(提出日前3カ月以内に撮影したもの)
  4. 学校の卒業証明書または卒業見込証明書および成績証明書(原則として新卒者のみ)
  5. 会社が指定した資格証明書のコピー
  6. 在留カードのコピー(在留資格を有する外国人のみ)
  7. その他、会社が指定する書類

第4条(採用時の提出書類)

1)従業員として採用された者は、採用日から2週間以内に次の各号に定める書類を提出しなければならない。ただし、状況により、会社はその一部の書類の提出を求めないことがある。

  1. 誓約書
  2. 身元保証書
  3. 住民票記載事項証明書。個人番号(マイナンバー)が記載されているものの場合は、第8号の書類を提出する必要はない
  4. 通勤経路図
  5. 入社の年に給与所得があった者については、源泉徴収票
  6. 基礎年金番号が確認できる書類(基礎年金番号通知書など)の写し、雇用保険被保険者証(職歴のある者)
  7. 給与所得の扶養控除等(異動)申告書
  8. 個人番号(マイナンバー)カードの表裏面の写し、または個人番号(マイナンバー)の通知カードの写し。なお、個人番号(マイナンバー)カードの表裏面の写しの場合は、第9号の書類を提出する必要はない
  9. 自動車運転免許証または旅券の写し(有効期間内のもので、顔写真、氏名、住所、生年月日が分かるもの。ただし、交付されている場合に限る)
  10. 健康診断書(提出日前3カ月以内に受けたもの)
  11. その他、会社が指定する書類

2)前項の提出書類の記載内容に変更があったときは、速やかに所属長に届け出なければならない。

3)会社は、第1項の提出書類を人事労務に関する手続きおよび人事労務管理のために利用するものとし、その他のために利用する場合には従業員から同意を得るものとする。

4)前各項の規定にかかわらず、個人番号(マイナンバー)および個人番号(マイナンバー)をその内容に含む個人情報(以下「特定個人情報等」)の利用目的や取り扱いは、別途定める「マイナンバー(特定個人情報)取扱規程」(省略)によるものとする。

第5条(試用期間)

1)会社が新たに採用した従業員については、採用日から3カ月間を試用期間とする。

2)採用過程や入社後の業務遂行状況等を考慮し、会社が適当と認めたときは試用期間を短縮または延長することがある。なお試用期間の延長は、3カ月を限度とする。

3)試用期間は勤続期間に算入する。ただし、賞与の算定対象期間には含まれない。

4)パートタイマー就業規則に規定する一般従業員への転換(正社員転換)制度により、本規則が適用となる従業員については、試用期間はなしとする。

第6条(採用取消事由)

1)試用期間中の従業員が次の各号のいずれかに該当し、本採用が適当でないと認めるときは、会社は本採用を行わない。ただし、改善の余地がある等、特に必要と認めた場合に限り、会社は試用期間を延長し、採用の取り消しを留保することがある。

  1. 遅刻、早退、欠勤等の不就労が多く、出勤状況が悪いとき
  2. 上司の指揮命令に従わない、また報告や連絡を行わない等、組織の秩序を乱す行動態度が見られるとき
  3. 同僚や周囲の従業員とコミュニケーションを取ろうとせず、職場内で協調して働くことができないとき
  4. 必要な教育を行っても会社が求める能力に足りず、また、改善の見込みが低い等業務習得能力が不足すると認められるとき
  5. 重要な経歴を偽っていたとき
  6. 心身の健康状態の悪化により、本採用後の就労が困難と認められるとき
  7. その他上記に準じるまたは解雇事由に該当する場合

2)採用の日から14日を経過した者の採用の取り消しについては、第48条(解雇予告)の規定を準用する。

第7条(異動)

1)業務上の必要がある場合は、会社は従業員に人事異動を命じることがある。人事異動を命じられた従業員は正当な理由なくこれを拒むことはできない。

2)人事異動の種類は次の各号に定める通りとする。

1.配置転換

 同一事業場内における所属部門や担当業務等の異動をいう。

2.転勤

 勤務地の変更を伴う所属部門や担当業務等の異動をいう。

3.出向

 会社の従業員が社命によって関係会社その他で勤務することをいう。出向については、別途定める「出向者取扱規程」(省略)に基づくものとする。出向先での労働条件等については個別に定める。

4.転籍

 会社の従業員が社命によって関係会社その他へ籍を移し、勤務することをいう。転籍は、本人の同意を得るものとする。転籍先での労働条件等については個別に定める。

第8条(赴任)

異動を命じられた従業員は、次の各号に定める期間内に赴任しなければならない。

1.住居の移転を伴う異動

 発令日より原則として2週間以内

2.住居の移転を伴わない異動

 発令日より原則として1週間以内

第9条(業務の引き継ぎ)

異動を命じられた従業員は、会社が指示する期間内に速やかに後任者に業務の引き継ぎを行わなければならない。後任者がいないとき、あるいは後任者の着任が遅れるときは、速やかに所属長に業務の引き継ぎを行うものとする。

第3章 服務規律

第10条(服務規律の基本原則)

従業員は、会社の指揮命令に従い、職務上の責任を自覚し、互いに協力して誠実に職務を遂行するとともに、職場の秩序の維持に努めなければならない。

第11条(服務心得)

1)従業員は、次の各号に定める事項を遵守しなければならない。

  1. 勤務時間中は誠実に業務に励み、正当な理由なく無断欠勤および遅刻、早退、私用外出等をしないこと
  2. 許可なく業務以外の目的で会社の施設、物品などを使用しないこと
  3. 職務に関して自己の利益を図り、または会社の取引先から不当に金品を借用し、もしくは贈与を受けるなどの私的な利益を受けようとしないこと
  4. 整理整頓を徹底し、清潔な職場を心掛けること
  5. 日ごろから健康管理を怠ることなく、自己保健義務を果たすこと
  6. 会社の一員としての自覚と品位を持ち、会社の名誉または信用を傷つける行為をしないこと
  7. 酒気を帯びて就業したり、自動車を運転したりしないこと
  8. 勤務時間中に、職務上の必要がないにもかかわらず電子メールやSNSを私的に利用しないこと。また、職務と関係のないウェブサイトを閲覧したりしないこと
  9. 他の者の業務を妨げないこと
  10. 他の者の就業環境を害さないこと
  11. 業務上の都合により、担当業務の変更または他の部署への応援を命ぜられた場合は、正当な理由なく拒まないこと
  12. 会社の許可なく、会社の文書類または物品を社外の者に交付、提示しないこと
  13. その他、職場の風紀・秩序を乱す行為をしないこと

2)従業員が会社施設内において政治活動、宗教活動、集会、演説、放送をし、または文書の配布、掲示をしようとする場合は、事前に会社の許可を受けなければならない。

第12条(機密保持)

従業員は、自己の担当であるか否かを問わず、業務上知り得た機密を第三者に開示または漏洩もしくは自らのために利用してはならない。退職後も同様とする。

第13条(副業・兼業)

1)従業員は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。

2)従業員は、前項の業務に従事するときは、事前に会社に届け出を行うものとする。手続きの方法等については別途定める「副業・兼業取扱規程」(省略)によるものとする。

3)会社は、従業員が第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、これを禁止または制限することができる。

  1. 労務提供上の支障がある場合
  2. 企業秘密が漏洩する場合
  3. 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
  4. 競業により、企業の利益を害する場合
  5. 過度な長時間労働が見込まれる場合

第14条(ハラスメントの禁止)

従業員は、国籍、信条、性別、性的指向、性自認、職務上の地位・権限・職権、雇用形態に関係なく、職場において相手の人格や尊厳を尊重し、ハラスメント(セクシュアルハラスメント、妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント、パワーハラスメントなど)並びにそれらと疑われる行為をしてはならない。ハラスメントの防止については別途定める「ハラスメント防止規程」(省略)によるものとする。

第4章 労働時間、休憩、休日・休暇

第15条(勤務時間、休憩)

1)1週の労働時間は40時間、1日の労働時間は8時間とする。

2)始業時刻、終業時刻および休憩時間は次の通りとする。ただし、業務上やむを得ない事由がある場合には、労働時間が8時間を超えない範囲で、始業時刻、終業時刻、または休憩時間を変更することができる。

  1. 始業時刻:午前8時、終業時刻:午後5時
  2. 休憩時間:午後0時から午後1時まで

第16条(休憩時間の自由)

従業員は、休憩時間を自由に使用することができる。

第17条(出勤、退社)

1)従業員は、始業時刻に所定の方法に従ってその時刻を記録しなければならない。

2)退社は終業時刻に自己の管理する物品を整理整頓した後、所定の方法に従ってその時刻を記録しなければならない。

第18条(遅刻、早退、欠勤)

1)従業員は、遅刻、早退、欠勤しようとするときは、その前日までに所属長の承認を受けなければならない。ただし、やむを得ない事由により事前に所属長の承認を得ることが困難な場合は、当日の始業時刻までに電話などの方法により連絡し、出勤後に速やかに承認を得なければならない。

2)私傷病による欠勤が連続して3日を超える場合、会社は従業員に医師の診断書などの提出を求めることがある。

第19条(私用外出)

勤務時間中に私用による外出を希望する従業員は、あらかじめ所属長の承認を得なければならない。

第20条(公民の権利)

従業員が、選挙権の行使や裁判員としての職権行使その他、公民としての権利を行使するために必要な時間を請求するときは、会社は公民権行使に必要な時間を与えるものとする。ただし、業務上の理由により、権利の行使を妨げない限度において従業員が請求した時間を変更することがある。

第21条(休日)

1)休日は次の各号に定める通りとする。

  1. 土曜日、日曜日(日曜日を法定休日とする)
  2. 国民の祝日
  3. 会社創立記念日(○月○日)
  4. 年末年始(原則として12月30日から1月3日までの5日間)
  5. その他、会社が指定する日

2)前項の休日のうち、法定休日を上回る休日は所定休日とする。

3)業務上、その他必要があるときは、第1項第1号については、休日を週1日確保した上で、事前に通知指定した日と振り替えることがある。

第22条(時間外労働)

1)業務上必要がある場合は、所定労働時間を超えて労働を命じることがある。

2)法定労働時間を超える時間外労働は、従業員の過半数を代表する者との労使協定の範囲とする。

3)第2項に定める時間外労働は、労働基準法およびその他の関係法令における時間外労働の上限を超えることはない。

4)満18歳未満の従業員に対しては、原則として時間外労働を命じることはない。

第23条(代替休暇)

会社は、1カ月(別途定める「賃金規程」(省略)による賃金の計算期間)の時間外労働が60時間を超えた従業員に対して、従業員の過半数を代表する者との労使協定に基づき、次の各号に定める代替休暇を与えるものとする。

  1. 代替休暇を取得できる期間は、直前の賃金締切日の翌日から起算して翌々月の賃金締切日までの2カ月間とする。
  2. 代替休暇を付与する単位は半日または1日とする。この場合の半日とは、始業時間から始まる連続した4時間、または終業時間から遡る連続した4時間をいう。
  3. 代替休暇の時間数は、1カ月60時間を超える時間外労働の時間数に換算率を乗じて得た時間数とする。この場合において換算率とは、代替休暇を取得しなかった場合に支払う割増賃金率50%から代替休暇を取得した場合に支払う割増賃金率25%を差し引いた25%とする。また、会社は、従業員が代替休暇を取得した場合は、取得した時間数を換算率(25%)で除した時間数については、25%の割増賃金の支払いを要しない。
  4. 前号の代替休暇の時間数は、前々月および前月の代替休暇の時間数を合算して半日または1日とすることができる(この場合は前々月の時間数を優先する)。また、代替休暇の時間数に半日または1日に満たない端数がある場合で、その満たない部分について従業員が第29条第3項の時間単位年休の取得を請求する場合は、当該時間単位年休と併せて半日または1日の休暇として与えることができる。この場合、会社は代替休暇と時間単位年休を区別して管理する。
  5. 代替休暇を取得しようとする従業員は、1カ月に60時間を超える時間外労働を行った月の賃金締切日の翌日から5日以内に、別途定める「代替休暇の取得申請書」(省略)を所属長に提出しなければならない。代替休暇の取得申請書が提出された場合は、支払うべき割増賃金額のうち代替休暇に代替される賃金額を除いた部分を、通常の賃金支払日に支払うこととする。ただし、当該月の末日の翌日から2カ月以内に代替休暇が取得されなかった場合には、取得されないことが確定した月に係る割増賃金支払日に残りの25%の割増賃金を支払うこととする。
  6. 従業員が代替休暇の取得申請書を前項前段に定める期限までに提出しなかった場合は、会社は当該月に行われた時間外労働に係る割増賃金の総額を、通常の賃金支払日に支払うこととする。

第24条(休日労働)

1)業務上必要がある場合は、休日に労働を求めることがある。

2)法定休日の労働は、従業員の過半数を代表する者との労使協定の範囲とする。

3)第2項に定める休日労働は、労働基準法およびその他の関係法令における休日労働の上限を超えることはない。

4)満18歳未満の従業員に対しては、原則として休日労働を命じることはない。

第25条(災害など非常時の特別措置)

火災・地震・暴風雨・洪水、設備の爆発などの事故、感染症の流行その他避けることのできない事由により臨時の労働の必要がある場合は、会社は第22条および第24条にかかわらず労働基準監督署の許可を受けて、妊娠中および産後1年を経過しない女性従業員(以下「妊産婦」)を除く全ての従業員に時間外労働、休日労働、深夜労働(午後10時から午前5時までの間の労働。以降、同じ)を命じることがある。

第26条(割増賃金)

時間外労働、休日労働、深夜労働に対して、「賃金規程」(省略)により割増賃金を支払う。

第27条(妊産婦の特例)

妊産婦が請求した場合には、会社は時間外労働、休日労働、深夜労働を命じることはない。

第28条(出張等の勤務時間および旅費)

1)従業員が、会社の命令により出張その他社外で勤務する場合において、勤務時間を算定し難いときは、原則として第15条に定める時間を勤務したものとみなす。ただし、所属長があらかじめ別段の指示をしたときはこの限りではない。

2)前項の業務が所定労働時間外に及ぶ場合は、当該業務の遂行に通常必要とされる時間を勤務したものとみなす。

3)従業員が社用により出張する場合は、別途定める「出張旅費規程」(省略)により旅費を支給する。

第29条(年次有給休暇)

1)会社は、6カ月以上継続勤務し、所定労働日の80%以上出勤した従業員に対して、次の表の通り勤続期間に応じた日数の年次有給休暇を付与する。この休暇期間中については、所定労働時間を労働した場合に支払われる通常の賃金を支払う。

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2)年次有給休暇を付与する基準日は、入社日から起算して6カ月が経過した日から1年ごとに区分した各期間(最後に1年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日とする。

3)年次有給休暇は、原則として労働日単位で付与する。ただし、従業員の過半数を代表する者との労使協定に基づき、一つの年度について5労働日分を限度に、1時間単位の年次有給休暇(以下「時間単位年休」)を付与する。時間単位年休の場合、1労働日を8時間と計算し、5労働日分で40時間とする。

4)年次有給休暇(時間単位年休を含む。以下、この条において同じ)を請求する従業員は、原則として3日前までに所属長に、別途定める「年次有給休暇の取得願」(省略)を提出しなければならない。

5)年次有給休暇は、原則として従業員が指定した時季に付与する。ただし、事業の正常な運営に支障があるときは、会社は従業員の指定した時季を変更することがある。

6)会社は、労働基準法第39条第7項に基づき、従業員に対して、時季を指定して年次有給休暇を付与することがある。

7)第1項の出勤率の算定に当たっては、年次有給休暇を取得した期間、産前産後の休業期間、育児休業期間、介護休業期間および業務上の傷病による休業期間は出勤したものとして取り扱う。

8)年次有給休暇は、権利発生から2年の間において取得することができる。

第30条(産前産後の休業)

1)6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産する予定の女性従業員から請求があったときは、産前休暇を与える。

2)産後8週間を経過しない女性従業員は就業させない。ただし、産後6週間を経過した女性従業員が請求した場合において、当該女性従業員について医師が支障ないと認めた業務に就かせることができる。

3)第1項および第2項の休業期間は無給とする。

4)妊娠中の女性従業員が請求した場合、他の軽易な業務に転換させる。ただし、業務に適する軽易な業務がないときには請求しても応じないことがある。

第31条(母性健康管理のための時間内通院)

1)妊産婦が母子保健法に定める健康診査または保健指導を受けるために請求した場合、会社は次の各号に定める範囲において母性健康管理のため、時間内通院を認める。

  1. 妊娠23週までは4週間に1回
  2. 妊娠24週から35週までは2週間に1回
  3. 妊娠36週以後出産までは1週間に1回
  4. 医師または助産師(以下「医師など」)が、第1号から第3号までと異なる指示をしたときは、その指示により必要な時間

2)母性健康管理のために勤務していない時間は無給とする。

第32条(通勤緩和)

1)妊産婦が通勤による心身の負担を軽減するために請求した場合、会社は出社時および退社時について、各々30分の遅出および早退を認める。

2)通勤緩和の時間は無給とする。

第33条(疲労回復のための休憩)

1)妊産婦が業務による疲労回復のために請求した場合、会社は第15条第2項第2号の他に適宜休憩を取ることを認める。

2)業務による疲労回復のための休憩は無給とする。

第34条(医師などの指導による措置)

1)妊産婦が医師などから勤務状態が健康に支障を及ぼすとの指導を受けた場合であって、妊産婦より申し出があった場合は、会社は当該妊産婦の意見を聴いた上で、次の各号に定める措置を講じる。

  1. 担当業務の変更
  2. 心身の負担が小さいと会社が認める業務への転換
  3. 所定労働時間の短縮
  4. 休業

2)前項第4号の休業は無給とする。

3)所定労働時間の短縮の適用を受ける期間については、賃金規程に基づく基本給を時間換算した額を基礎とした実労働時間分の基本給を支給する。

第35条(育児時間)

1)生後満1年に満たない生児を育てる女性従業員は、あらかじめ所属長に申し出て、勤務時間中に1日について2回、1回につき少なくとも30分の育児時間を受けることができる。

2)育児時間は無給とする。

第36条(生理日の休暇)

1)生理日の就業が著しく困難な女性従業員から請求があったときは、必要な期間の生理日の休暇を与える。

2)生理日の休暇は無給とする。

第37条(育児休業および介護休業)

会社は、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」に基づき、育児休業および介護休業、その他の両立支援策を講じる。育児休業および介護休業、その他の両立支援策については、別途定める「育児休業等に関する規程」(省略)および「介護休業等に関する規程」(省略)によるものとする。

第38条(特別休暇)

1)会社は、従業員が次の各号のいずれかに該当する場合は特別休暇を与える。特別休暇に対して、会社は所定労働時間を労働した場合に支払われる通常の賃金を支払う。

  1. 本人が結婚したとき:5日間
  2. 配偶者が出産したとき:1日間
  3. 配偶者、本人の父母、子が死亡したとき:4日間
  4. 本人の祖父母および兄弟姉妹、配偶者の父母が死亡したとき:2日間
  5. 配偶者の祖父母、兄弟姉妹が死亡したとき:1日間
  6. 夏季休暇:7月1日から9月末日までの間に3日間
  7. 誕生日休暇:従業員の誕生月に1日間
  8. 裁判員に任命されたとき:会社が必要と認めた日数

2)会社は、必要に応じて前項に定める事由を確認するための書類の提出を求める場合がある。

第5章 賃金、賞与、退職金

第39条(賃金および昇給、賞与)

賃金および昇給、賞与は、「賃金規程」(省略)によるものとする。

第40条(退職金)

退職金は、別途定める「退職金規程」(省略)によるものとする。

第6章 休職、退職、解雇

第41条(休職)

1)会社は、従業員が次の各号のいずれかに該当する場合に休職を命じることがある。

  1. 私傷病その他従業員の都合による欠勤が、継続、断続を問わず日常的に支障を来す程度(おおむね1カ月)続くとき
  2. 精神、身体の疾患により労務提供が不完全なとき
  3. 第7条第2項第3号の定めにより出向するとき
  4. その他、特別な事情によって休職を命じる必要があると会社が認めたとき

2)試用期間中の者、嘱託社員については、休職は適用しない。

第42条(休職期間)

1)休職期間は次の各号に定める通りとする。

1.第41条第1項第1号および第2号による休職

 勤続期間が2年未満の者:6カ月

 勤続期間が2年以上5年未満の者:1年

 勤続期間が5年以上の者:1年6カ月

2.第41条第1項第3号による休職

 出向している期間

3.第41条第1項第4号による休職

 会社が必要と認める期間

2)前項第1号の勤続期間は、雇用期間の定めのない従業員としての勤続期間とする。ただし、試用期間は含まれない。

3)休職期間は、原則として、賞与、退職金等の算定対象となる勤続期間に通算されない。ただし、第29条に定める年次有給休暇の付与に関する勤続期間には通算する。

第43条(休職中の賃金)

1)休職期間中は無給とする。

2)住民税、社会保険料は休職中でも発生するため、従業員は、毎月末日までに所定の金額を会社が指定する金融機関口座へ振り込みにて支払うものとする。振込金額等の詳細については、休職開始前に従業員に通知する。

第44条(復職)

1)休職期間の満了前に休職事由が消滅した場合には、従業員は速やかに総務部に、別途定める「復職願」(省略)を提出しなければならない。会社は、復職願を受け取るに当たり、必要に応じて会社の指定した医師による診断結果の提出を命ずることがある他、診断書を発行した医師に対する面談を求めることがある。

2)会社は、復職願を受理し、休職期間中に休職事由が消滅したと確認できたときは、原則として前職務に復職させる。ただし、元の職務に復帰させることが困難または不適当な場合には前職務と異なる職務に配置することがある。なお、職務の変更に応じ、労働条件も変更する場合がある。

3)第41条第1項第1号および第2号により休職した者が復職し、その後6カ月以内に同一または類似の事由により再び休職した場合には、休職期間は引き続いているものとみなす。

4)休職期間の満了までに復職できない従業員は、休職期間満了の日をもって自動退職とする。

第45条(定年)

従業員の定年は満60歳とし、定年に達した日の属する月の末日をもって退職とする。ただし、従業員が希望し、解雇事由または退職事由(第46条第1項第1号を除く)に該当しないときは、会社が別途定める「労働条件」(省略)にて満65歳まで再雇用する。

第46条(退職)

1)従業員が次の各号のいずれかに該当する場合は、次の各号に定める日を退職の日とする。

  1. 定年に達したとき:定年に達した日の属する月の末日
  2. 死亡したとき:死亡した日
  3. 従業員が自己の都合により退職を申し出て、会社がこれを承認したとき:会社が退職日として承認した日
  4. 会社が転籍を命じ、従業員がこれを承諾したとき:会社が命じた転籍日の前日
  5. 第41条に定める休職を命じられた従業員が、休職期間の満了までに復職できないとき:休職期間の末日
  6. 従業員が届け出および連絡なく欠勤を続け、その欠勤期間が1カ月を超え、所在が不明のとき:欠勤期間が1カ月を経過した日

2)自己の都合により退職を申し出る従業員は、退職希望日の14日前までに、総務部に別途定める「退職願」(省略)を提出しなければならない。会社の承認を受けるまでの間、従業員は従前の業務に従事しなければならない。

第47条(普通解雇)

会社は、従業員が次の各号のいずれかに該当した場合に解雇することがある。

  1. 勤務成績または業務能率が著しく不良で、向上の見込みがなく、他の職務にも転換できないなど、就業に適さないと認められたとき
  2. 勤務状況が著しく不良で、改善の見込みがなく、従業員としての職責を果たし得ないと認められたとき
  3. 業務上の負傷または疾病による療養の開始後3年を経過した日において、従業員が労働者災害補償保険法に基づく傷病補償年金を受けているとき、または受けることとなったとき(会社が労働基準法に基づく打切補償を支払った場合または労働者災害補償保険法に基づく打切補償を支払ったとみなされる場合はこの限りではない)
  4. 精神または身体の障害については、適正な雇用管理を行い、雇用の継続に配慮してもなおその障害により業務に耐えられないと認められたとき
  5. 事業の運営上のやむを得ない事情、または天災事変その他これに準ずるやむを得ない事情により、事業の継続が困難となったとき
  6. 事業の運営上のやむを得ない事情、または天災事変その他これに準ずるやむを得ない事情により、事業の縮小・転換または部門の閉鎖などを行う必要が生じ、他の職務に転換させることが困難なとき
  7. 試用期間における作業能率または勤務態度が著しく不良で従業員として不適格であると判断されたとき
  8. その他、前各号に準ずるやむを得ない事由があるとき

第48条(解雇予告)

従業員を解雇する場合、会社は労働基準法に基づき30日前に予告をするか、または予告に代えて平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払う。ただし、労働基準監督署長の認定を受けた場合、および次の各号のいずれかに該当する従業員を解雇する場合はこの限りではない。

  1. 日雇いの従業員。ただし、1カ月を超えて引き続き雇用される従業員を除く
  2. 2カ月以内の期間を定めて使用する従業員。ただし、その期間を超えて引き続き雇用される従業員を除く
  3. 試用期間中の従業員。ただし、14日を超えて引き続き雇用される従業員を除く

第49条(解雇理由の証明書)

会社は、解雇する従業員から請求があった場合は、解雇の理由を記載した証明書を交付する。

第50条(解雇の制限)

会社は、次の各号に定める期間中は従業員を解雇しない。ただし、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合で労働基準監督署長の認定を受けた場合は除く。

  1. 業務上の負傷または疾病により欠勤する期間、およびその後30日間。ただし、業務上の負傷または疾病による療養の開始から3年を経過しても傷病が治癒せず、労働基準法に基づく打切補償を支払った場合または労働者災害補償保険法に基づく打切補償を支払ったとみなされる場合はこの限りではない
  2. 産前産後の休業期間およびその後30日間

第51条(退職または解雇時の義務)

1)退職または解雇された従業員は、会社の指示する期間内に速やかに後任者に業務の引き継ぎを行わなければならない。

2)退職または解雇された従業員は、身分証明書、社員記章、携帯電話など会社からの貸与品を直ちに返納しなければならない。また、会社に債務のあるときは退職または解雇の日までに完済しなければならない。

3)退職または解雇された従業員は、退職または解雇の日以後、在職中に知り得た業務上の機密事項を他に漏らしてはならない。

第7章 賞罰

第52条(表彰)

従業員が次の各号のいずれかに該当する場合は、会社はその都度審査の上で表彰することがある。表彰は賞状の他、賞品または賞金を授与して行う。

  1. 業務上有益な創意工夫、改善を行い、会社の業績に貢献したとき
  2. 品行方正で業務熱心であり、従業員の模範とするに足りるとき
  3. 事故や災害などを未然に防止し、または非常事態に際し適切に対応し、被害を最小限にとどめるなどの功労が顕著であったとき
  4. 社会的な功績があり、会社および従業員の名誉となったとき
  5. その他、表彰に値する善行または功績があると会社が判断したとき

第53条(懲戒の種類)

懲戒はその情状により、次の各号の区分に従って行う。

1.けん責

 始末書を提出させ、将来を戒める。

2.減給

 始末書を提出させ、減給する。減給は1回の額が平均賃金の1日分の50%を超えることはなく、また減給の総額が賃金規程による一つの賃金の計算期間における賃金総額の10%を超えることはない。

3.出勤停止

 始末書を提出させ、出勤停止を命ずる。出勤停止は7日間を限度とし、その間は無給とする。

4.降格

 始末書を提出させ、役職の罷免・引き下げ、資格等級の引き下げのいずれか、または両方を行う。この場合の賃金は、賃金規程に従い、降格後の役職、資格等級に対応した金額となる。

5.諭旨解雇

 退職願の提出を勧告する。ただし、応じない場合は懲戒解雇に処する。情状に応じて退職金の全部または一部を支給しないことがある。

6.懲戒解雇

 即時に解雇する。原則として退職金の全部を支給しない。この場合、労働基準監督署長の認定を受けたときは、解雇予告手当を支給しない。

第54条(懲戒の事由)

会社は、従業員が次の各号のいずれかに該当する場合は、その程度に応じて、けん責、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇に処する。

  1. 就業規則、社内規程、通達に違反したとき
  2. 正当な理由なく、無断で遅刻、早退または欠勤を繰り返したとき
  3. 正当な理由なく、しばしば業務上の指示・命令に従わなかったとき
  4. 正当な理由なく、無断でしばしば職場を離れたとき
  5. 職務、勤務に関する諸手続きを怠り、または不正に偽ったとき
  6. 素行不良で、会社内の秩序または風紀を乱したとき
  7. 会社を誹謗(ひぼう)中傷し、または虚偽の風説を流布・宣伝したとき
  8. 会社に所属する個人の名誉・信用を傷つけたとき
  9. 性的な言動によって他人に不快な思いをさせたり、職場の環境を悪化させたりしたとき。または、性的な関心を示したり、性的な行為をしかけたりして、他の従業員の業務に支障を与えたとき
  10. 妊娠・出産・育児に関する不適切な言動により、他人に精神的・身体的な苦痛を与えたり、また他の従業員に不利益を与えたりして、就業環境を害したとき
  11. 職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景とした不適切な言動により、他人に精神的・身体的な苦痛を与えたり、また他の従業員に不利益を与えたりして、就業環境を害したとき
  12. 業務上知り得た機密を、不正に第三者に開示または漏洩もしくは自らのために利用したとき
  13. 重要な経歴を詐称して雇用されたとき
  14. その他、前各号に準ずる程度の不都合な行為があったと会社が判断したとき

第55条(懲戒解雇)

1)会社は、従業員が次の各号のいずれかに該当する場合は懲戒解雇に処する。懲戒解雇された従業員には、原則として退職金の全部を支給しない。ただし、平素の服務態度その他情状によっては、諭旨解雇または降格にとどめることがある。

  1. 重要な経歴を詐称して雇用されたとき
  2. 正当な理由なく無断欠勤が14日以上に及び、出勤の督促に応じなかったとき
  3. 正当な理由なく、無断で遅刻、早退または欠勤を繰り返し、再三にわたって注意を受けても改めなかったとき
  4. 故意または重大な過失により、会社に重大な損害を与えたとき
  5. 会社内において刑法その他刑罰法規の各規程に違反する行為をし、その犯罪事実が明らかとなったとき
  6. 素行不良で、著しく会社内の秩序または風紀を乱したとき
  7. 数回にわたり懲戒を受けたにもかかわらず、なお、勤務態度などに関し、改善の見込みがないと認められたとき
  8. 相手方の望まない性的言動により、円滑な職務遂行を妨げ、就業環境を悪化させ、またはその性的言動に対する相手方の対応によって、一定の不利益を与えたりするような行為をしたとき
  9. 職務上の立場を利用して交際や性的な関係を強要したとき
  10. 許可なく職務以外の目的で会社の施設、物品などを使用し、会社に損害を与えたとき
  11. 会社における職務上の地位を利用して私利を図り、または取引先などより不当な金品を受け、もしくは求め、または供応を受けたとき
  12. 私生活上の非違行為や会社に対する誹謗中傷などによって会社の名誉・信用を傷つけ、業務に重大な悪影響を及ぼすような行為があったとき
  13. 会社の業務上重要な機密を外部に漏洩して会社に損害を与え、または業務の正常な運営を阻害したとき
  14. 酒気帯び、あるいは酒酔いの状態で自動車を運転したとき
  15. 特定個人情報等を不正に取得、利用、提供したとき
  16. 非違行為に対し、再三の注意、指導を受けたにもかかわらず、なお改悛(かいしゅん)の見込みがないとき
  17. 前条に準ずる行為において、その情状等に悪質性があると判断される場合
  18. その他、前各号に準ずる程度の不都合な行為があったと会社が判断したとき

2)会社は、諭旨解雇または懲戒解雇事由に該当し、実際に諭旨解雇または懲戒解雇になる恐れがある従業員に対し、原則として事前に弁明の機会を与える。

第8章 安全衛生

第56条(安全衛生の遵守事項)

会社は、従業員の安全衛生の確保および改善を図り、快適な職場の形成のため必要な措置を講ずる。職場の安全衛生については、別途定める「安全衛生管理規程」(省略)によるものとする。

第57条(就業禁止)

1)会社は、次の各号のいずれかに該当する従業員の就業を禁止する。

  1. 病毒伝ぱの恐れのある伝染病の疾病に罹患した者
  2. 心臓、腎臓、肺などの疾病で労働のため病勢が著しく増悪する恐れがある疾病に罹患した者
  3. 前各号に準ずる疾病で厚生労働大臣が定めるものおよび感染症法等で定める疾病に罹患した者

2)会社は、前項の定めにより就業を禁止しようとするときは、あらかじめ、会社が指定する医師の意見を聴くものとする。また、従業員は、前項に該当する恐れがあるときは、直ちに会社に届け出なければならない。

3)第1項の定めにより就業を禁止された期間は無給とする。

第58条(健康診断)

1)会社は、従業員に対し、入社時および毎年1回定期的に健康診断を行う。

2)会社は、前項の健康診断の結果を本人に速やかに通知する。結果に異常の所見があり、会社が必要と認めるときは、就業の禁止、配置の転換、その他必要な措置を命ずることがある。

第59条(医師による面接指導の実施)

1)会社は、第22条の時間外労働および第24条の休日労働の合計が1カ月当たり80時間を超えた従業員から申し出があった場合には、医師の面接指導を受けさせるものとする。

2)前項の他、労働安全衛生法およびその関係法令において必要とされる場合、医師が必要と認めた場合、会社が必要と判断した場合等において、面接指導を実施することがある。

第9章 災害補償

第60条(災害補償)

従業員が業務上の事由または通勤途中に負傷し、疾病にかかり、または死亡した場合の災害補償や保険給付については、別途定める「災害補償規程」(省略)によるものとする。

第10章 個人情報の取り扱い

第61条(従業員個人情報の取り扱い)

1)会社は、適正な雇用管理を行うために必要な範囲において、従業員およびその家族から適正な方法で入手した情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述などにより、特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。以下「従業員個人情報」)を利用し、または法令の範囲内において第三者に開示する。

2)前項にかかわらず、特定個人情報等の取り扱いは、別途定める「マイナンバー(特定個人情報)取扱規程」(省略)によるものとする。

第62条(従業員個人情報の管理責任者)

従業員個人情報の管理責任者は総務部長とする。

第63条(従業員個人情報の開示請求)

1)従業員は、会社に対して自らの従業員個人情報の開示を求めることができる。

2)会社は、従業員から従業員個人情報の開示を求められたときは、速やかにこれを開示する。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、従業員個人情報の全部または一部の開示を拒否することができる。

  1. 法令に違反することとなる場合
  2. 本人または第三者の生命、身体または財産の保護のために必要がある場合
  3. 雇用管理に重大な支障を来す恐れがある場合

3)従業員個人情報が開示された結果、当該従業員個人情報に誤りがあることが判明した場合、会社は当該従業員に通知し、同意を得た上で従業員個人情報を修正する。

第64条(従業員が退職などをした際の従業員個人情報の取り扱い)

退職などの事由により、会社と従業員の雇用関係が消滅した場合、会社は法令で定められている期間において、当該従業員の従業員個人情報を管理し、その後は検証可能な方法による完全な廃棄処分を行う。

第65条(顧客個人情報の取り扱い)

1)会社が保有する従業員個人情報以外の情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述などにより、特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む)を「顧客個人情報」という。

2)従業員は、別途定める「個人情報保護規程」(省略)を遵守して、適切に顧客個人情報を利用しなければならない。

第11章 雑則

第66条(慶弔見舞金)

会社は、従業員の慶弔、被災の際は別途定める「慶弔見舞金規程」(省略)により、それぞれ祝金、弔慰金、見舞金を支給する。

第67条(損害賠償)

従業員が故意または過失によって会社に損害を与えた場合、会社はその全部または一部の賠償を求めることがある。従業員の退職後に、その者の行為が故意または過失によって会社に与えた損害の原因であると判明した場合も、その損害の全部または一部の賠償を求めることがある。

第68条(改廃)

本規則の改廃は、取締役会において行うものとする。

附則

本規則は、○年○月○日より実施する。

以上(2024年2月更新)
(監修 ひらの社会保険労務士事務所)

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画像:ESB Professional-shutterstock

中小企業の「生成AI活用ガイドブック」(2024年1月号)

2022年11月、日本を含む世界中で話題を席巻することになる新たなAIサービス「ChatGPT」が登場しました。ブラウザさえあれば、誰もが利用できるため、爆発的にユーザーの数を増やしています。
一方、不特定多数のユーザーがAIを使えるようになったことで、生成情報への過度な信頼と悪質な利用が課題として注目されるようになってきました。利用者を保護するためにChatGPTを完全に禁止する国や、AIに関するポリシーを再考する国も出てきています。
しかし、AI革命の動きはもはや誰にも止めることはできません。そこで、中小企業が生成AIをうまく活用するために、これだけは知っておきたい基礎知識をまとめました。

新NISAとiDeCoを徹底比較! 自分に合った資産形成の方法を見つけよう

「資産形成」という言葉がすっかりと定着した昨今。2024年1月からは、いわゆる「新NISA」が開始されます。

ただ、資産形成で利用できる制度は新NISAに限りません。例えば、よく知られているものの1つに「iDeCo」があります。新NISAやiDeCoについて、分かりやすく説明している情報はたくさんあります。しかし、実際に資産形成を始めるとなると、改めて制度比較をしてみたいですし、金融のプロの話も聞いてみたいのではないのでしょうか。

そこで、この記事は新NISAとiDeCoの主な特徴をまとめ、それぞれの制度が有利なポイントをまとめます。一定の条件下で行う資産形成のシミュレーションも紹介するので、あくまでも一例ですが、「投資の結果はどうなるのか?」というイメージも湧くと思います。

そして、何より大切なのは制度を正しく理解することですが、その点についても、りそな銀行でお手伝いできることをまとめています。

それでは、早速、見ていきましょう!

1 新NISAとiDeCoの比較。一体、どこが違うのか?

非常に簡単に言うと、新NISAとiDeCoは次のような制度です。

新NISAとは、

株式投資などで得た利益が一定の範囲内で非課税になる(税金がかからなくなる)もので、2024年1月から年間投資可能額が増えるなど使い勝手が良くなっている制度

です。

iDeCoとは、

掛金を拠出して運用し、原則60歳以降に年金などで受け取るというもので、拠出時・運用時・受取時に税制優遇を受けられる制度

です。

より具体的に新NISAとiDeCoの内容を比較すると図表1のようになります。それぞれにメリットと注意点があることが分かります。

(図表1)【新NISA、iDeCoの比較】

新NISA iDeCo
成長投資枠 つみたて投資枠
併用 可能
対象年齢 18歳以上 20歳以上65歳未満
年間投資可能額 240万円 120万円 14万4,000円~27万6,000円(注)
非課税保有期間 無期限 無期限(75歳までに受取開始)
生涯投資枠 1,800万円(成長投資枠は1,200万円まで)
投資対象商品 上場株式、ETF、投資信託、REIT等 金融庁が厳選した一定の投資信託 投資信託、定期預金、保険
引き出し いつでも可能 60歳~75歳までの間に受取開始
所得控除 なし あり

(出所:金融庁「NISAとは?」などを基に作成)

(注)加入者が会社員である場合について記載しています。個人事業主の場合などは限度額が異なります。

1)新NISAの有利なポイント

1.非課税で運用できる

新NISAの有利なポイント1つ目は、非課税で運用できることです。新NISAは、株式投資などで得た利益が一定金額の範囲内で非課税となります。

通常、投資で発生する利益には約20%の税金がかかります。例えば、80万円で購入した株を100万円に値上がりしたタイミングで売却すると、利益20万円(100万円-80万円)に対して約4万円(20万円×約20%)の税金がかかる仕組みです。しかし、新NISAで投資すれば利益に対して税金がかからず、利益20万円を全額受け取れます。

iDeCoも同様に投資で得た利益は非課税となります。

2.期間の制限なく運用できる

新NISAの有利なポイント2つ目は、期間の制限なく運用できることです。新NISAは、生きている限り非課税で商品を運用できます。運用期間に制限はありません。

一方で、iDeCoの場合、75歳までに受取を開始する必要があります。

3.いつでも引き出せる

新NISAの有利なポイント3つ目は、いつでも引き出せることです。新NISAは運用している商品をいつでも売却して現金化できます。

一方、老後資金であるiDeCoは原則60歳以降でないと引き出しができません。教育資金やいつ発生するか分からない万一の支出への備えは、いつでも引き出せるNISAがおすすめです。

4.さまざまな商品に投資できる

新NISAの有利なポイント4つ目は、さまざまな商品に投資できることです。具体的には次の通りです。

  • 新NISA:株式、投資信託、ETF、REIT(つみたて投資枠は国が定めた基準を満たした投資信託のみ)
  • iDeCo:投資信託(定期預金と保険も利用可能)

新NISAは、投資信託以外にも株式やETF、REITなどに投資が可能です。さまざまな商品に投資したい人は、新NISAの利用を検討したほうがよいかもしれません。

2)iDeCoの有利なポイント

1.所得控除がある

iDeCoの有利なポイント1つ目は、所得控除があることです。掛金を拠出すると、その分の金額が所得から控除され、所得税と住民税が減額されます。例えば、所得税率と住民税率がそれぞれ10%の人が年間10万円の拠出をした場合、所得税と住民税がそれぞれ1万円ずつ安くなるイメージです。

新NISAにはこの所得控除の仕組みがありませんので、資産形成をしながら節税もしたい人には、iDeCoをおすすめします。

2.元本保証の商品がある

iDeCoで運用する商品には、定期預金などの元本が保証されるものもあります。投資商品と組み合わせることでリスクをコントロールすることができます。新NISAの場合、投資対象は運用商品のみなので、普通預金や手元の現金などとトータルで考えてリスクをコントロールする必要があります。

3.確実に老後資金を貯められる

前述した通り、iDeCoは原則60歳以降でないと引き出しができません。ただ、途中引き出しができないということは、浪費癖のある人などにとっては、原則60歳まで散財する心配がないということでもあります。

そのため、より確実に老後資金を用意したい場合は、iDeCoをおすすめします。

4.年金形式で受け取れる

iDeCoは60歳以降に資金を受け取る際、受取方法を「一時金」「年金形式」「一時金と年金形式の併用」から選べます。新NISAにはこうした仕組みはありません。

老後の生活資金として毎月定額のお金を受け取りたい人は、「年金形式」での受け取りを検討するとよいかもしれません。ただし、受け取り方や受取金額によって税金の発生有無や税額が異なるため、実際の受取時にはシミュレーションが必要です。

3)大きく投資するなら併せ技

資産形成をする上で、「いくら投資するのか」というのは、大切なポイントです。まず、1年間の投資額で見た場合、新NISAとiDeCoには次のような違いがあります。

  • 新NISA:年間360万円(成長投資枠240万円・つみたて投資枠120万円)
  • iDeCo:年間14万4,000円~27万6,000円(会社員の場合)

新NISAの場合、18歳以上であれば原則として誰でも年間360万円まで投資が可能です。一方、iDeCoは加入者が会社員の場合、勤務先に企業年金制度があるかないか、ある場合はその内容(企業型DCかDBかなど)により、年間に投資できる金額が異なります。

さらに新NISAの場合は非課税保有限度額(総枠)1,800万円まで買付した後でも売却により非課税枠の再利用が可能となりました。

投資活動は1年間で終わるものではありません。長期で投資をすると総額としては大きな投資になることを踏まえると、それぞれの特徴を考慮して、新NISAとiDeCoの併用を検討することが重要です。

2 ここが知りたい! 資産運用のシミュレーション

それでは、最も気になるところをご紹介します。それは、新NISAやiDeCoを利用したら、具体的にいくらの老後資金を用意できるのかということです。年率3%での運用を前提とした場合、毎月の投資金額別の結果は図表2の通りです。

(図表2)【資産運用のシミュレーション】

積立期間 5年間 10年間 20年間 30年間 40年間
月1万円 64.6万円
(利益4.6万円
139.7万円
(利益19.7万円
328.3万円
(利益88.3万円
582.7万円
(利益222.7万円
926.1万円
(利益446.1万円
月3万円 193.9万円
(利益13.9万円
419.2万円
(利益59.2万円
984.9万円
(利益264.9万円
1748.2万円
(利益668.2万円
2778.2万円
(利益1338.2万円
月5万円 323.2万円
(利益23.2万円
698.7万円
(利益98.7万円
1641.5万円
(利益441.5万円
2913.7万円
(利益1113.7万円
4630.3万円
(利益2230.3万円
月10万円 646.5万円
(利益46.5万円
1397.4万円
(利益197.4万円
3283.0万円
(利益883.0万円
5827.4万円
(利益2227.4万円
9260.6万円
(利益4460.6万円

(注1)年率3%の運用でシミュレーションしています。

(注2)新NISAで非課税の対象となるのは元本1800万円までです。

当然ですが、積立期間が長く、積立金額が大きいほど成果は上がります。なお、図表2のシミュレーションは年率3%を前提としていますが、実際の運用では成績がマイナスになって元本割れを起こす可能性もゼロではありません。そのため、基本は余剰資金を使って無理のない範囲で資産形成をすることが大切です。

3 従業員への情報提供

新NISAやiDeCoはメリットが大きい制度です。ただし、それぞれの制度は複雑で、分かりにくい面もあります。そのような場合、りそな銀行が従業員への情報提供のお手伝いをします。

りそな銀行では、従業員の皆さん向けに、NISA・資産形成について≪学ぶ≫ ≪使う≫さまざまなサービスをご提供しています。また、新NISAを簡単に理解できる専用HPの用意やオンラインセミナーの配信、スマホで簡単に投資を始められる「りそなグループアプリ」もございます。


経営者向けご案内 りそな銀行サービスメニューのご案内ボタン NISA制度サイトへのボタン
NISAオンラインミニセミナーサイトへのボタン アプリで始める資産形成 つみたてボックスのサイトへのボタン
■iDeCo HP■
https://www.resonabank.co.jp/nenkin/ideco/?utm_source=mail&utm_medium=email&utm_campaign=colla_nisaideco05
■iDeCo+ HP■
https://www.resonabank.co.jp/nenkin/ideco/ideco-plus/?utm_source=mail&utm_medium=email&utm_campaign=colla_nisaideco06

以上

(監修 社会保険労務士法人AKJパートナーズ)

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2023年12月15日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

【電子メールでのお問い合わせ先】
inquiry01@jim.jp

(株式会社日本情報マートが、皆様からのお問い合わせを承ります。なお、株式会社日本情報マートの会社概要は、ウェブサイト https://www.jim.jp/company/をご覧ください)

ご回答は平日午前10:00~18:00とさせていただいておりますので、ご了承ください。

「【何を】褒めるか」の5つのターゲットとその活用テクを伝授/武田斉紀の『次世代リーダーに必須のコミュニケーション習慣』(7)

書いてあること

  • 主な読者:会社経営者・役員、管理職、一般社員の皆さん
  • 課題:最近話題のZ世代(1990年代後半以降生まれで会社においては20代前半くらいまで)だけでなく、それ以前の平成生まれ(30代前半くらいまで)の世代と、現在経営や管理職を担っている昭和世代との世代間ギャップが注目されています。それは価値観の違いやコミュニケーションの違いとして表れ、変化や多様性が求められる昨今、日本企業において深刻な経営の足かせとなりつつあるようです。
  • 解決策:まず会社においてZ世代を含む平成生まれと昭和生まれの世代背景を整理しながら、ギャップを埋めるための「価値観の変化」を明らかにします。その上で、筆者が多くの講演や企業研修で紹介してきた『次世代リーダーに必須のコミュニケーション習慣』を実践的に指南します。

1 相手を「褒める」ときに、【何を】褒めるのがベストか意識できていますか?

今シリーズでは、昭和生まれの管理職・リーダー世代と、平成生まれ、とりわけ「Z世代」との価値観に、ここ10年ほどで“真逆”といえるほどのギャップが生まれていることを取り上げています。

世界のビジネス上の価値観は、平成生まれや「Z世代」の価値観のほうに寄っており、会社の成長を今後も目指すためには管理職・リーダー側の皆さんが、価値観やコミュニケーション習慣を見直す必要に迫られているのです。

『次世代リーダーに必須のコミュニケーション習慣』その1の『傾聴』に続いて、前回第6回からは、その2『褒める』を取り上げています。

『褒める』は各社における35歳くらいから以下の平成生まれや、新人や若手の「Z世代」が育ってきた環境を象徴するキーワードの1つです。彼らは昭和生まれの『叱る』ではなく、『褒める』ことを優先した教育を経験しています。

同時に『褒める』は、『傾聴』と同様にグローバルで互いを尊重し合うDEI(=Diversity:多様性, Equity:公平性, Inclusion:包括性)にもつながっており、昭和世代にとって「人を褒めるなんて恥ずかしくて自分には無理」と逃げている場合ではなくなっているのです。

今回は、『次世代リーダーに必須のコミュニケーション習慣』その2の「褒める」について、「【何を】褒めるか」の5つのターゲットとその活用テクを伝授したいと思います。

皆さんは相手を「褒める」ときに、【何を】褒めるのがベストかを意識できていますか?

2 ①「見た目や持ち物」を褒める vs ②「内面や行動」を褒める

①「見た目や持ち物」を褒める [初対面向き]

見た目や持ち物は比較的簡単に【何を】が見つけられます。早ければ会った瞬間に見つけられるので、[初対面向き]ともいえます。

例えば、「髪形が決まっていますね。かっこいいなあ!」「素敵な時計ですね。こだわってますねー」「笑顔が素敵ですね!」といった感じ。相手は照れ臭そうですが、まんざらでもない様子でうれしそうです。

一瞬で気付けるほど目立っている見た目や持ち物は「ここを褒めて」と言っているようなものです。出会った瞬間から探すことを意識していればすぐに見つかります。

本人が普段からこだわっている可能性が高いので、そこを声に出して言うだけで、相手は「わかります?」という気持ちになって互いの距離が一気に縮まります。

なかんずく初対面同士が集う会合などで有効です

が、相手はうれしさのあまり褒めたこだわりポイントについて語り続けるかもしれません。その際はタイミングを見て「いやあ、私のほうが詳しくなくてすみません。勉強になりました、ありがとうございます。今後ともよろしくお願いします」と告げて、次の方との出会いに進めばいいでしょう。

社内でも新人や異動してきた社員を迎える際に有効です。ただし①「見た目や持ち物」を褒めるには、注意するべき点もあります。特に意識してほしいのはセクハラ(セクシャルハラスメント)への配慮です。セクハラか否かの判断基準は、自分側ではなく相手の中にあります。

例えば、「おしゃれだね」まではよいとしても、その後に「今日はデートなの?」と続けると、セクハラになる可能性があります。「髪切った? 何かあったの?」も同様です。仕事に関係ないプライベートは個人の自由、余計な詮索をしてはいけません。

男性が女性の服装や髪形を褒めるのは、かなり高度なテクニックが必要なのでお薦めしません。パートナーや家族を褒めるときでも失敗しがちです。「その服、素敵だね」と褒めても「2回目だけど」と返されたり、「髪切った? 似合うね」と褒めても「切ってない、まとめただけだけど」と返されたりすることはママあります。

また、相手が複数いるのに1人だけに「おしゃれですね」「髪形が似合ってますね」と褒めると、他の人は自分はそうではないのかなと不機嫌になってしまうかもしれません。

②「内面や行動」を褒める

①とは対照的に、内面や行動はすぐにはわかりません。だからこそ、②の「内面や行動」を褒めるがはまると、相手は「普段から自分のことをよく見てくれているんだな」と感じて相互の信頼関係が高まります。組織においては上司と部下の関係構築に向いています。

例えば、「〇〇さんは後輩の面倒見がいいですね、優しいんですね」「〇〇さんはいつも仕事が丁寧ですね」「〇〇さんはいつも字がきれいですね」といった感じです。

「内面や行動」を褒めるポイントの見極めは、普段から相手の良いところを見つけてあげようと意識していれば、難しいことではありません。見つかったら素直に言葉に出して届ければいいのです。「内面や行動」は何度褒めてあげても構いません。

「何度も言っちゃうけど、〇〇さんは本当に仕事が丁寧ですね」と言えば、相手はそれを強みに感じて自信になり、もっと上を目指してくれることでしょう。褒めることで一人ひとりが育っていくのです。

3 ③「変化や成長」を褒める ④「貢献」を褒める

これらは②「内面や行動」を褒めるの発展形といえるでしょう。

③「変化や成長」を褒める

②の「内面や行動」の中でも、目立った③「変化や成長」を褒めます。それには長期的な関係が前提となりますが、半年、1年と長い付き合いだからこその大きな効果を発揮します。

例えば、「今日の朝会の司会、前回より良かったですよ」「企画書の書き方がこの1年ですごく上手になりましたね」といった感じです。褒められた本人はうれしくなって、もっと上を目指そうと心に誓うのではないでしょうか。

朝会など毎週、毎月実施するものであれば、長期でなく1週間、1カ月でも可能です。とにかく本人の「変化や成長」を、つぶさに観察しておいてあげることが大切なのです。

④「貢献」を褒める

「貢献」を測るにも③と同様に長期的な関係が前提となります。期間が長ければ長いほど、“褒める”ことの効果は大きいといえるのではないでしょうか。

例えば、「今回も目標達成できたのは〇〇さんのおかげですよ」「〇〇さんの気遣いで、私は救われました」といった感じです。

個人や組織への「貢献」を褒められることは、本人にとっては「この仕事をしていてよかった」とやりがいに思えるレベルの喜びでしょう。褒める側は、本人の貢献への感謝を正直に述べたまでですが、そのことが本人の仕事や会社へのエンゲージメントを想像以上に高めるケースがあるのです。

4 ⑤「ナンバーワン」だけでなく「オンリーワン」を褒める

結果を出した「ナンバーワン」のメンバーは、ラッキーがあったとしても褒めてあげましょう。それなりの数の競争相手がいればラッキーだけで「ナンバーワン」は取れません。ラッキーだって努力の結果かもしれないのですから。

そして

「ナンバーワン」のメンバーと同時に、プロセスも含めて「オンリーワン」の貢献や成長をしたメンバーを褒めることも重要です。

人は「誰にでもできる仕事」より、「自分にしかできない仕事」にやりがいや自身の存在価値を感じるものです。

例えば、「〇〇さんの気遣いあっての△課ですよ」「〇〇さんのサポートがあったから、頑張ってこられました」と、「オンリーワン」の言葉を添えられたらこの上ない喜びでしょう。④の「貢献」を褒めるの喜びに加えて、現在の仕事を“天職”とまで思えるかもしれません。

仕事や会社へのエンゲージメントはいうに及ばず、上を目指して自らどんどん成長して、周囲や会社により良い影響を与えてくれることでしょう。

もちろん、会社としては〇〇さんが病気で急に休むことになっても十分に回る組織でなければなりませんが、一人ひとりの「オンリーワン」の個性が生きている職場こそ、輝いている職場なのだと思います。

以上、今回は「【何を】褒めるか」の5つのターゲットとその活用テクをご紹介してみました。

最後までお読みいただきありがとうございました。次回は、「相手を【どのように】褒めればいいか」をテーマにお話ししていきたいと思います。

<ご質問を承ります>ご質問や疑問点などあれば以下までメールください。※個別のお問合せもこちらまで
Mail to: brightinfo@brightside.co.jp

※武田が以前上梓した書籍『新スペシャリストになろう!』(PHP研究所)が、ディスカヴァー・トゥエンティワンより電子書籍として復刻出版されました。キャリア選択でお悩みの方にお薦めです。

https://www.amazon.co.jp/dp/B0CMCW1FVY/

以上(2024年1月作成)
(著作 ブライトサイド株式会社 代表取締役社長 武田斉紀)
https://www.brightside.co.jp/

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2024年から始まる「新NISA(少額投資非課税制度)」で従業員の資産形成をサポート!

2019年に大きな話題となった老後2,000万円問題。これは「公的年金だけでは、老後の生活資金を十分に賄いきれないかもしれない」というものです。この老後2,000万円問題を背景に、福利厚生として企業が「従業員の資産形成をサポートする」ことの重要性が高まっています。

ただ、企業が支援金を拠出する福利厚生はコストと手間がかかります。経営者にとっての理想は、

できるだけコストや手間をかけずに従業員の資産形成をサポートする

ことでしょう。そうした中で注目されるのが、最近話題の「NISA(ニーサ。正式名称は「少額投資非課税制度」)です。国が整えたNISAを利用すれば、コストや手間をかけずに従業員の資産形成をサポートできます。なにより、NISAは2024年1月からパワーアップされ、使い勝手が良くなっています。

この記事では、NISAの概要と、NISAで資産形成を行う従業員のサポート方法を紹介していきます。

1 話題の「NISA」ってなに?

NISAとは、

株式投資などで得た利益が、一定の範囲内で非課税になる(税金がかからなくなる)制度で、正式名称は「少額投資非課税制度」

といいます。

通常、投資で得た利益には約20%の税金がかかります。例えば、50万円で購入した株を80万円に値上がりしたタイミングで売却した場合、利益30万円(80万円-50万円)に対して約6万円(30万円×約20%)の税金がかかるイメージです。

しかし、専用のNISA口座で投資をすれば利益が非課税になるので、約6万円の税金が発生せずに、利益30万円を全て受け取れます。利益に税金がかからないので効率的に資産形成ができます。これこそが、NISAの最大のメリットです。

2 2024年の制度改正でNISAはどう変わるの?

NISAは2024年1月から制度が改正されます。便宜上、改正前のNISAを「従来NISA」、改正後のNISAを「新NISA」として説明を続けます。

従来NISAは、年間投資可能額や非課税期間、対象年齢などによって「一般NISA」「つみたてNISA」「ジュニアNISA」の3種類に分かれます。新NISAで変わるのは一般NISA、つみたてNISAで、それぞれ「成長投資枠」と「つみたて投資枠」として整備されます。従来NISAと新NISAを比較すると図表のようになります。

(図表)【従来NISAと新NISAの比較】

従来NISA 新NISA(2024年1月~)
一般NISA つみたてNISA 成長投資枠 つみたて投資枠
併用 できない 可能
対象年齢 18歳以上 18歳以上
年間投資可能額 120万円 40万円 240万円 120万円
非課税保有期間 5年間 20年間 無期限
生涯投資枠 600万円 800万円 1,800万円
(成長投資枠は1,200万円まで)
投資対象商品 上場株式、ETF、投資信託、REIT等 金融庁が厳選した一定の投資信託 上場株式、ETF、投資信託、REIT等 金融庁が厳選した一定の投資信託
引き出し いつでも可能 いつでも可能

(出所:金融庁「NISAとは?」などを基に作成)

パッと見ただけで分かりますが、投資可能額が増え、非課税保有期間がのびています。これはNISAを利用する人にとって有利な改正です。では、新NISAのポイントを5つに絞って、もう少し詳しく見ていきましょう。

1)成長投資枠とつみたて投資枠の併用が可能

新NISAのポイント1つ目は、成長投資枠とつみたて投資枠を併用できることです。従来NISAでは、一般NISAとつみたてNISAのいずれかを選択しなければなりませんでしたが、2024年1月からは、

一般NISAは「成長投資枠」に、つみたてNISAは「つみたて投資枠」に名前を変え、これらは併用できる

ようになります。そのため、従来NISAのように、一般NISAかつみたてNISAのどちらにしようか迷うことはなくなりました。

2)年間投資可能額の拡大

新NISAのポイント2つ目は、年間投資可能額が拡大することです。具体的には以下の通りです。

  • 従来NISA:一般NISAの年間120万円か、つみたてNISAの年間40万円のいずれか
  • 新NISA:年間360万円。成長投資枠の240万円と、つみたて投資枠120万円の合計

新NISAでは、最大で年間360万円の投資を非課税で行えます。プロの投資家でもなければ、十分な投資額といえるのではないでしょうか。

3)非課税保有限度額(総枠)の拡大

新NISAのポイント3つ目は、非課税保有限度額の拡大です。具体的には以下の通りです。

  • 従来NISA:一般NISAは600万円、つみたてNISAは800万円
  • 新NISA:1,800万円(成長投資枠は1,200万円まで)

また、

新NISAでは非課税保有限度額が拡大するのに加え、その保有限度額の枠の再利用が可能

です。例えば、毎年360万円の商品を購入して保有し続ければ、5年間で非課税保有限度額1,800万円の購入残高(簿価残高)に達するので、原則として、それ以上の新規投資はできません。ただし、満額利用に達した場合、解約を行った購入残高(簿価残高)は翌年に再利用が可能です。

4)非課税保有期間の無期限化

新NISAのポイント4つ目は、非課税保有期間の無期限化です。具体的には以下の通りです。

  • 従来NISA:一般NISAは5年間、つみたてNISAは20年間
  • 新NISA:無期限

新NISAの場合は、30年間でも50年間でも、期間を気にせずに非課税で運用できます。そのため、より長期的な資産形成に向いています。

5)制度の恒久化

新NISAのポイント5つ目は、制度の恒久化です。一般NISAやつみたてNISAは2023年で新規投資が終了されます。しかし、新NISAは制度が恒久化されます。そのため、「NISAがいつか終わってしまうかもしれない……」という心配をせずに、安心して資産形成を続けられます。

3 情報提供で従業員の金融リテラシー向上!

ここまで紹介した通り、新NISAは従業員の資産形成をサポートする上でとても便利な制度です。企業が支援金を拠出する必要もありません。問題は、

投資に不慣れな従業員は新NISAのことを知らず、自分で勉強するのも難しいと考えているかもしれない

ということです。そこで企業の出番です。投資に不慣れな従業員のために、福利厚生として、企業が新NISAなどに関する情報提供をしてみるのはいかがでしょうか。従業員の金融リテラシーが向上し、資産形成を始めるきっかけを与えることができます。

企業で新NISAに詳しい人がいない場合もご安心ください。りそな銀行では、

従業員の皆さん向けに、NISA・資産形成について≪学ぶ≫ ≪使う≫さまざまなサービス

をご提供しています。新NISAを簡単に理解できる専用HPの用意やオンラインセミナーの配信を行っています。また、スマホで簡単に投資を始められる「りそなグループ」アプリも利用できます。

りそな銀行の各サービスをご利用いただければ、金融教育も含めて総合的に従業員の資産形成をサポートできます。各サービスの詳細は以下のURLから確認できますので、福利厚生の一環として、ぜひ検討してみてください。


経営者向けご案内 りそな銀行サービスメニューのご案内ボタン NISA制度サイトへのボタン
NISAオンラインミニセミナーサイトへのボタン アプリで始める資産形成 つみたてボックスのサイトへのボタン

以上

(監修 社会保険労務士法人AKJパートナーズ)

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2023年12月15日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

【電子メールでのお問い合わせ先】
inquiry01@jim.jp

(株式会社日本情報マートが、皆様からのお問い合わせを承ります。なお、株式会社日本情報マートの会社概要は、ウェブサイト https://www.jim.jp/company/をご覧ください)

ご回答は平日午前10:00~18:00とさせていただいておりますので、ご了承ください。

【入社1年目の教科書】キャッシュフロー計算書ではプラスとマイナスの組み合わせに注目

書いてあること

  • 主な読者:キャッシュフロー計算書の構造や読む際のポイントが知りたい新入社員
  • 課題:お金の流れを示しているはずだが、投資活動や財務活動などの意味が分からない
  • 解決策:キャッシュフロー計算書は、プラスとマイナスの組み合わせに注目して読む

「キャッシュフロー計算書」はお金の流れを示す大切な財務諸表らしいけど、損益計算書とは全く違うな。それに、損益計算書や貸借対照表に比べるとマイナーなイメージが……。そもそも投資がプラスで財務がプラスって、一体どういう意味? 営業がプラスになっていれば大丈夫なのかな?

1 まずはキャッシュフロー計算書を見てみよう

キャッシュフロー計算書とは、

会社の現金の流れ(キャッシュフロー)を示す財務諸表

です。少し難しく説明すると、損益計算書や貸借対照表では表れないキャッシュの流れを、3つの区分で詳細に示した財務諸表となります。英語では「Cash Flow Statement」と表記されるので、「CS」「C/S」(または、「CF」「C/F」と略されたりします。

また、キャッシュフロー計算書には、

  • 直接法:入金総額から出金総額を引いて営業活動によるキャッシュフローを算出
  • 間接法:税引前当期純利益にキャッシュのズレを生じさせる項目を加減算して、営業活動によるキャッシュフローを算出

がありますが、経理部に配属されたのでなければ、新入社員の皆さんが直接法と間接法の違いを詳しく知る必要はありません。この記事で紹介するのは間接法で、実務でも多く使用されています。

早速、キャッシュフロー計算書を確認してみましょう。

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会社は商品の販売などの営業活動を通じてキャッシュを獲得します。また、借入や株式の発行などの財務活動によってキャッシュを調達します。そして、得られたキャッシュを固定資産の取得などの投資活動に充てます。

この営業活動、投資活動、財務活動ごとにキャッシュの動きをまとめたのがキャッシュフロー計算書です。3つの区分を確認してみましょう。

1.営業活動によるキャッシュフロー(以下「営業CF」)

営業CFは、会社が本業でどれだけキャッシュを獲得したかを示します。営業CFが大きいほど好ましいです。また、ここでは「掛け」についても調整されるので、損益計算書のようなズレはありません。例えば、売掛金はまだお金をもらっていないのでマイナス、買掛金はまだお金を払っていないのでプラスとなります。

2.投資活動によるキャッシュフロー(以下「投資CF」)

投資CFは、固定資産、有価証券の取得・売却などのキャッシュの動きを示します。例えば、設備投資をしたらお金が減るので投資CFはマイナス、逆に設備を売却すればお金が増えるので、投資CFはプラスになります。

3.財務活動によるキャッシュフロー(以下「財務CF」)

財務CFは、借入、返済、増資などの資金調達・返済などのキャッシュの動きを示します。例えば、銀行からの借入を返済すればお金が減るので財務CFはマイナス、逆に借入をすればお金が増えるので、財務CFはプラスになります。

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営業CF、投資CF、財務CFの合計額に、その年度の最初にあった現金を足した金額が、「現金及び現金同等物の期末残高」となり、実際に会社にある現金となります。この残高は、貸借対照表にある現預金の金額と一致します。

次章で、それぞれの項目の意味を説明していきます。説明ばかりで退屈かもしれませんが、全て大切な内容なので、できるだけ覚えてください。

2 キャッシュフロー計算書の項目

1)営業CF

1.税引前当期純利益

税引前当期純利益は、損益計算書の税引前当期純利益と一致します。

2.減価償却費

減価償却費は、損益計算書の販売費・一般管理費に計上されるキャッシュの支出を伴わない費用です。

3.資産及び負債の増減、「その他」による収入及び支出

資産及び負債の増減、「その他」による収入及び支出は、受取手形・売掛金や支払手形・買掛金などの増減、利息や配当金の受け取りと、利息の支払いなどに関するキャッシュの動きを示します。

2)投資CF

1.有形固定資産の取得による支出及び売却による収入

有形固定資産の取得・売却は、有形固定資産の取得による支出及び売却による収入に関するキャッシュの動きを示します。

2.有価証券及び投資有価証券の取得による支出及び売却による収入

有価証券及び投資有価証券の増減は、有価証券及び投資有価証券の取得による支出及び売却による収入に関するキャッシュの動きを示します。

3.貸付金などの増減

貸付金などの増減は、貸し付けやその回収、定期預金の預け入れやその払い戻しなどに関するキャッシュの動きを示します。

3)財務CF

1.短期・長期借入債務の増加による収入

短期・長期借入債務の増加による収入は、借入金の増加に関するキャッシュの動きを示します。

2.短期・長期借入債務の返済による支出

短期・長期借入債務の返済による支出は、借入金の返済に関するキャッシュの動きを示します。

3.自己株式の取得などによる支出

自己株式の取得などによる支出は、自己株式の取得、配当金の支払いなどに関するキャッシュの動きを示します。

4)現金及び現金同等物の増減額

現金及び現金同等物の増減額とは、当期中のキャッシュの増減額です。

5)現金及び現金同等物の期首残高

現金及び現金同等物の期首残高とは、期首時点に会社が保有するキャッシュの残高です。

6)現金及び現金同等物の期末残高

現金及び現金同等物の期末残高とは、期末時点に会社が保有するキャッシュの残高です。

3 3つのCFのプラスとマイナスを把握する!

キャッシュフロー計算書を読む際は、3つのCFのプラスとマイナスの組み合わせを把握することが大切です。

営業CFがプラスなら、本業できちんと稼げているので好ましいです。その上で投資CFがマイナスなら、本業で稼いだ資金で設備投資をしているといえます。この、

営業CFと投資CFを足したものを「フリーキャッシュフロー」

と呼び、これが大きければ好ましいです。また、財務CFがどうなっているかですが、マイナスなら余った資金を返済に回しているのでしょうし、プラスならフリーキャッシュフローだけでは足りない部分を借入で補っているかもしれません。以下で、3つのCFのプラスとマイナスの組み合わせが何を指しているのかについて、一般的な解釈を示しているので参考にしてみてください。

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4 【質問】財務CFはプラスのほうがいい?

最後に皆さんに質問です。

財務CFは、プラスとマイナスのどちらが好ましいですか?

この質問に対する答えは、キャッシュフロー計算書を読む理由や立場によって違います。財務CFには銀行からの借入などがあります。つまり、借入をすれば財務CFはプラスになりますが、その理由が大切です。例えば、

新たなチャレンジのために借入したのか、資金繰りに窮して借入をしたのかによって評価は全く違ってくる

ことになります。ここでは財務CFについて説明しましたが、この考え方は投資CFでも同じです。

「自分は何のためにキャッシュフロー計算書を読むのか?」という目的を持つと、キャッシュフロー計算書の見え方が違ってきます。また、キャッシュフロー計算書に限らず、財務諸表は単年度のものだけでは良しあしを判断することはできません。理想的には、当期、前期、前々期の3期分を比較してみると、状況がより分かりやすくなります。

以上(2024年12月更新)

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画像:Mariko Mitsuda

社長の言葉と泥臭さが学生に受ける!インターンシップで採用するためのヒント

書いてあること

  • 主な読者:採用活動の一環としてインターンシップを実施したい経営者
  • 課題:インターンシップをしたことがないし、知名度がないので参加者が集まるのか不安
  • 解決策:大まかな流れを押さえつつ、「現場感」「短期集中」を意識する

1インターンシップは採用チャンス!

かつてはインターンシップを採用選考に組み込む「インターンシップ採用」は御法度でしたが、2025年卒生(2023年4月時点で学部3年生)からは条件付きで緩和されます。ということで、各社ともインターシップ採用を取り入れようとしています。そして、このインターシップ採用、実は中小企業にとってはチャンスです。なぜなら、

中小企業のインターンシップは実践的で、社長が泥臭く語りかけることができる

からです。特に、起業前の就業先を探している学生や、実業に触れたい学生には魅力的ですし、就業体験を経た上での採用なら入社後のミスマッチも防ぎやすくなります。

この記事では、中小企業がインターンシップ採用に取り組む際のポイントを3つ紹介します。

  • インターンシップ採用の大まかな流れをつかむ
  • 泥臭く、「現場感」を前面に出す
  • 「短期集中」を意識しつつ、ある程度柔軟に対応する

2 インターンシップ採用の大まかな流れをつかむ

文部科学省・厚生労働省・経済産業省「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」では、学生のキャリア形成支援活動が図表1の通り、4つに類型化されています。いわゆる「インターンシップ」はタイプ3とタイプ4ですが、タイプ4は主に理系大学院生を対象とするので、

多くの企業に関係するのはタイプ3の「汎用的能力・専門活用型インターンシップ」

です。

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2025年卒生から、タイプ3とタイプ4で得た学生の情報を採用活動で利用できるようになっています。具体的には、

インターンシップに参加した学生に求人案内を送る、選考過程を一部免除するなど

といったことができます。ただし、そのためには産学協議会(日本経済団体連合会と大学関係団体等の代表者により構成)基準に準拠した、図表2の5つの要件を満たす必要があります。

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5つの要件を満たすことが理想ですが、これらは法律のような強制力があるものではないので、しゃくし定規に従う必要はないともいえます。それよりも、中小企業は学生に自社の良さをアピールできるプログラムの検討に注力するべきでしょう。以降では、中小企業がインターンシップを実施する上でのポイントを紹介します。

3 泥臭く、「現場感」を前面に出す

インターンシップの参加者を集めるには、

大学のキャリアセンターや就活サイト、自社ウェブサイトなどで時期や期間、内容などの要項を告知する

といった方法があります。ただ、形式的な内容を出しても学生の興味はひけないので、より現場感のある発信をすべきです。例えば、外構工事業を営むある会社では、自社ウェブサイトで、

  • そもそも外構とは何なのか
  • スタッフの1日の仕事の流れ
  • 職場で達成感や満足感が得られる理由

などを、イラストや写真付きで分かりやすく紹介しています。また、SNSの動画サイトで自社の事業や社員の仕事内容をアニメーションで紹介しており、動画の最後にインターンシップや会社訪問を常時受け付けている旨と受付用の連絡先を記しています。こうした募集は、

業界に興味があるけど、自分が実際に仕事をするイメージが湧かない。もっと“現場感”のある話が聞きたい

という学生の興味をひくはずです。

こうして参加者を集めることができたら、時間がゆるす限り社長も参加者と交流しましょう。中小企業の魅力は社長の魅力でもあります。社長が語る内容は、学生にとってかなりエキサイティングなはずですし、恐らく大学の講義では教えてくれないもののはずです。

なお、最近はオンラインでインターンシップを行うケースも増えています。オンラインにするか対面にするかについては、内容によって次のように使い分けるとよいでしょう。オンラインと対面を交互に行うのもよいでしょう。

  • オンライン:会議や説明、情報収集、個人の作業など
  • 対面:職場の見学、クライアントへの訪問、社員のサポートなど

4 「短期集中」を意識しつつ、ある程度柔軟に対応する

インターンシップはやりたいが、本業が忙しくてなかなかリソースを割けないという会社は少なくありません。そんな場合におすすめしたいのが「1dayインターンシップ」です。

1dayインターンシップとは、文字通り、1日限りのプログラムであり、インターンシップにあまり時間を割けない場合に有効です。また、何日もかけてダラダラとインターンシップを行うよりも、充実した1日を過ごしてもらいつつ、自社に興味を持ってくれた学生に個別にアプローチするほうが中小企業にとっても効率的です。

例えば、情報通信業の会社が行う1dayインターンシップのプログラム例としては、

  • 午前:IT業界の現状や将来像に関する説明会
  • 午後:要件確認、設計、プログラム、テスト、完成報告を疑似体験

といったものが考えられます。一方、1dayインターンシップを基本としつつ、意欲のある学生に対しては必要に応じて中長期のインターンシップを実施するという方法もあります。例えば、建設業などを営むある会社では、

  • 工場見学、ものづくり体験:数時間から1日
  • より実践的な業務体験(ポンプの分解点検、レーザー加工など):5日から2週間

といった具合に、インターンシップの実施期間について複数の選択肢を設けています。会社が割くべきリソースは増えますが、選択肢を設けることで、より意欲のある学生を見つけやすくなるメリットがあります。なお、この会社ではインターンシップを実施する際、

会社が事前にあれこれ決めず、学生の希望に合わせてどんな内容にするかを検討していく

という方法を取っています。大企業の場合、参加人数の関係で日程や内容をある程度画一的にせざるを得ませんが、この辺りを柔軟に調整できるのは、中小企業ならではの強みといえます。

5 (参考)インターンシップの日数、学生側の要望など

最後に、「リクルート 就職みらい研究所」が2025年卒生に対して実施したアンケート調査(2023年9月実施)から「インターンシップ等の内容別参加日数」「インターンシップ等に参加して良かった点(参加日数別)」のデータを紹介します。インターンシップ等の内容別参加日数は図表3の通りです。どのような内容のインターンシップであっても、日数については「1日以下」で実施するケースが多いようです。

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インターンシップ等に参加して良かった点(複数回答)は図表4の通りです。参加日数に関係なく、学生はインターンシップを通じて「業種や仕事などについて具体的に知れる」ことを、特に期待しているようです。

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以上(2024年1月)

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お酒に変わる新しい〆の形 夜アイス・夜パフェ専門店の参入方法と差異化策は?

1 夜アイス・夜パフェ専門店はなぜ人気なのか?

近年、夜間に営業する夜アイス・夜パフェ専門店の人気が高まっています。

お酒を飲んだ後の〆としてアイスやパフェを食べることを、俗に「夜アイス・夜パフェ」

といい、北海道札幌市・すすきのから、ここ10年くらいで全国に広がったとされています。

夜アイス・夜パフェ専門店のターゲットは、主に若者です。少し古いデータですが、厚生労働省「国民健康・栄養調査」によると、週3回以上酒を飲む人は、2019年時点で50代が36.8%、40代が31.6%、30代が22.3%、20代が9.6%となっており、若い人ほど飲酒の習慣がありません。

1次会の後に2次会でさらにお酒を飲むのではなく、アイスやパフェで酔いを醒ますという選択は、お酒離れが進む若者に向いている

のでしょう。また、お酒の〆以外に、普段の食事後やドライブの目的地として夜アイス・夜パフェ専門店に行く人も多いといいます。専門店ならではのメニューの独自性や、夜間営業の店舗でアイスやパフェを楽しめる非日常感が、こうした人たちの心をつかんでいるようです。

夜アイス・夜パフェ専門店は、一般的な飲食店に比べ必要なスペースが小さく、導入すべき機器も少ないなど、開業のハードルはそこまで高くありません。ただ、夜アイス・夜パフェの文化自体が比較的新しいので、開業を検討しようにも、「経営にどんな苦労があるのか」「一般的なアイスやパフェの店とどう違うのか」など、イメージがつかみにくい部分があるでしょう。

そこで、

夜パフェ発祥の店である「Parfaiteria PaL」の兄弟店「Parfaiteria beL 渋谷」の店長に取材をし、店舗の特徴や夜パフェの動向についてヒアリング

しました。次章で取材内容を紹介するので、これを読めばおおまかなイメージがお分かりいただけるかと思います。その上で、第3章以降では、夜アイス・夜パフェ専門店を開業するに当たって、競争環境、注意すべき許可・規制や、Parfaiteria PaL以外の専門店の事例を紹介します。

2 店長に聞きました! 夜パフェ専門店のリアル

飲食店コンサルティング事業などを手掛ける株式会社GAKU(北海道札幌市)では、夜パフェ発祥の店である「Parfaiteria PaL(北海道札幌市)」や日本酒などの和のテイストを取り入れた「ななかま堂(北海道札幌市)」など、北海道から沖縄で7店舗の夜パフェ専門店を展開しています。

「Parfaiteria beL 渋谷(東京都渋谷区)」の店長の佐藤大介氏に、店舗の特徴や夜パフェの動向についてヒアリングができましたので、その結果を紹介します。

1)夜パフェ専門店を開業した理由について

同社は、2015年に夜パフェ専門店の1号店として、Parfaiteria PaLをオープンしました。同社の社長が甘いものが好きで、酒を飲んだ後に甘いパフェが食べられる店があったらいいなと常々考えていたことから、開業に至ったそうです。

佐藤氏「社長は、『同じパフェでも、生クリームやコーンフレークたっぷりのパフェではなく、生のフルーツを使ったソルベやさっぱりとしたジェラート、手の込んだフレンチのコースのデザートが食べたい』というこだわりがあり、それが同社の夜パフェ専門店の原点になりました」

なお、佐藤氏によると、ちょうど1号店をオープンした2015年に、北海道で「札幌パフェ推進委員会」という夜パフェ文化を盛り上げる委員会が発足し、それも同社が夜パフェ専門店を立ち上げるに当たっての追い風になったようです。

2)東京進出の経緯について

北海道で夜パフェ専門店を経営していた同社は、2017年に東京に進出し、渋谷区に「Parfaiteria beL」をオープンしました。

佐藤氏「社長が東京でもお店をやってみたいと考えており、自ら東京の町を歩いて出店場所を決めました。東京に進出した当時は、まだ夜パフェ文化が浸透していなかったため、開店当時のお店の認知度は低かったですが、百貨店の催事でブースを出したことなどがきっかけで、次第に認知度が上がっていきました」

3)メニューについて

同社は、発祥元である北海道の食材を中心に、旬を大切にしたものを提供したり、既製品ではなくて手作りのパーツを使ったりなど、顧客に高級感のあるパフェを楽しんでもらうことに特に注力しています。季節ごとにパフェのラインナップを変更しており、映画とのタイアップ商品など、期間限定のメニューも提供しています。

佐藤氏「全てのメニューが社長のアイデアを基にしています。きれいで可愛く、メニューを見ただけでこのお店のものと分かるようになっており、テーマがはっきりしているので、Instagramでもプロモーションがしやすいのが特徴です。パフェに使うパーツは既製品ではなく、全て手作りです。手作りのパーツを使うことで、味の微調整が効き、複数のパーツを使ってパフェを作る中で、どのパーツを一緒に食べても、特定のパーツだけ味が浮かないように作ることができるのが最大のメリットです」

Parfaiteria beLのメニュー例

また、接客面でも意識していることがあるようです。

佐藤氏「パフェの商品力がどうしても強くなりがちなので、お客さまの世代や人数に合わせて接客の距離感を変えて、パフェよりも、自分自身にリピーターを付ける接客を常に心がけています」

4)客層について

主なターゲットは若者ですが、それ以外の客層にも人気があるようです。

佐藤氏「20代~30代の客層が中心ですが、中には中高年のリピーターのお客さまもいます。来店のきっかけはInstagramと口コミがメインとなっているようです。また、インバウンドでの来店客も半数くらいいて、来店のきっかけを聞くと、海外の旅行会社、雑誌、テレビなどで、渋谷に行く際のオススメスポットとしてここのお店が紹介されているのを見て来たといいます」

5)客足や売り上げについて

平日・土日の客足や売り上げについても話を聞けました。

佐藤氏「多い時で、平日は100人ほどが来店して売り上げは20~25万円。土日は270人ほどが来店して売り上げは60万円くらいです。客単価は2400円程度となっています。映画とのタイアップ商品など期間限定のメニューの中には、3000円を超えるものもありますが、原価率は20%前後に収まっています」

6)出店について

開業する際の店舗の広さや出店場所などについて、次のような話が聞けました。

佐藤氏「店舗は広すぎるとその分必要なスタッフが増えて人件費がかかるので、小さめの店舗でお客さんの回転率を高めるほうがよいかもしれません。また、認知度を上げるには路面店で目立つ方が効果的ではありますが、その分家賃もかさみますので、注意が必要です」

以上が、夜パフェ専門店に実際に取材をした内容です。おおまかなイメージはつかめましたでしょうか。以降では、さらに

  • 夜アイス・夜パフェ専門店を取り巻く外部環境
  • 新規開業に当たり注意が必要な許可・規制
  • Parfaiteria beL以外の夜アイス・夜パフェ専門店の事例

を紹介します。

3 夜アイス・夜パフェ専門店を取り巻く外部環境

夜アイス・夜パフェ専門店を取り巻く外部環境を「ファイブフォース分析」に沿って整理します。

夜アイス・夜パフェ専門店の競争環境

大手の夜アイス・夜パフェ専門店はフランチャイズにより店舗や出店地域を拡大しており、InstagramなどのSNSを使ったブランディングにすでに成功している場合も多いです。

そのため、フランチャイズ以外の手段で新規開業する場合は、品質やブランディングにこだわった独自性を打ち出して、顧客が自社のパフェやアイスを購入するための動機づけを作る必要があるでしょう。

第5章で既存店舗の特徴も紹介しますので、参考にしてください。

4 新規開業に当たり注意が必要な許可・規制

1)食品衛生責任者資格

飲食店を営業するには、原則として食品衛生責任者が必要です。食品衛生責任者資格は、計6時間程度の養成講習会を受講することで取得できます。ただし、調理師や栄養士、製菓衛生師などの資格を持っている人は、講習会を受講せずに食品衛生責任者になることが可能です。

2)飲食店営業許可

飲食店を営業するために必要な資格です。必要事項を記入した営業許可申請書と施設の図面などを所轄の保健所に提出してください。各基準を問題なく満たす場合、営業許可を受けられます。

3)アイスクリーム類製造業許可

アイスクリームを製造する場合は、アイスクリーム類製造業許可が必要となる場合があります。取得には製造室や調合室の用意、原料混合機や殺菌機などの指定の機械の設置が必要となります。

4)菓子製造業許可

パフェを製造する場合は、菓子製造業許可が必要となる場合があります。原材料の保管室を用意することなどの要件を満たせば取得可能です。

5)HACCPに沿った衛生管理

HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)は、食中毒や異物混入などの食品衛生上の危害の発生を防ぐための食品衛生管理の仕組みです。原則として全ての食品等事業者に対応が義務付けられており、衛生管理計画を作成して従業員に周知徹底を図ることや、衛生管理の実施状況の記録、保存などの対応が必要になります。

厚生労働省のウェブサイトで業種ごとの手引書が公開されており、アイスクリーム類製造事業者向けの手引書もありますので、参考にしてください。

■HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書(五十音順)■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000179028_00005.html

なお、各許可の取得条件や、許可の取得そのものが必要かどうかは、地域の保健所によっても異なるため、詳細は開業を検討する地域を管轄する保健所に確認・相談しましょう。

5 夜アイス・夜パフェ専門店の事例

1)夕食やお酒を飲んだあとに食べたくなるアイス:21時にアイス(大阪府堺市ほか)

東北から九州まで40店舗以上をフランチャイズ展開している夜アイスの専門店です。店舗によって異なりますが、主な営業時間は16時~24時となっています。

夕食やお酒を飲んだあとに食べたくなる、あっさりとしたミルクアイスをメインにしたメニューが楽しめます。

SNSでは、InstagramとTikTokを使って人気商品や季節限定商品などを紹介しています。

21時にアイスのメニュー例

2)テイクアウト専門で出店拡大:月曜からアイス(香川県高松市ほか)

東北から四国まで7店舗を展開している夜アイスの専門店です。店舗によって異なりますが、主な営業時間は17時~24時となっています。

店舗はイートインスペースを設けずに、テイクアウトのみとすることでコスト削減やオペレーションの短縮化を図っています。また、商品はお酒や食事の〆としてではなく「ドライブのお供」といったコンセプトで売り出しています。

SNSでは、InstagramとLINEを使って人気商品や店舗について紹介しています。他にも、FCでの開業を検討する人向けに、YouTubeチャンネルでも情報発信をしています。

なお、同店ウェブサイトによると、FCは全国展開しており、開業予算の目安は次の通りとなっています(常時2~3名体制・家賃16万5000円を想定する場合です)。

  • 加盟金:300万円
  • 保証金:100万円 
  • 物件取得費:82万5000円(2カ月前)
  • 内装費用:150万円(居抜き)
  • 厨房機器:250万円(中古の機器を含む)
  • 初期食財:30万円
  • その他消耗品備品等:52万3000円

3)写真映えを狙ったメニューを展開:アイスは別腹(兵庫県姫路市ほか)

兵庫県姫路市を中心に、東京都の渋谷区や埼玉県の桶川など全国で10店舗を展開している夜パフェ専門店です。

通常サイズのパフェよりも小さい「こどもあいす」や、アルコール入りの「大人の深酔いパフェ」など、その時のシチュエーションで夜パフェを楽しむことができます。

また、店舗に撮影スポットを設けていたり、明るい色の果物を使うなど盛り付けを工夫していたりすることで、写真映えを狙ったメニューとなっているのも特徴です。

4)観光と併せてアイスを楽しむ:夜アイス専門店 真夜中牧場(東京都墨田区)

東京都の押上と両国横綱横丁で店舗を展開している夜アイス専門店です。営業時間は16時~24時となっています。押上本店は東京スカイツリーの近く、両国横綱横丁店は両国国技館の近くにそれぞれ店舗を構えることで、仕事終わりやドライブでの利用だけに限らず、観光客の来店も図っています。

SNSでは、Instagramでメニューを紹介する他、LINEの友達登録で割引クーポンを配布するキャンペーンも行っています。

5)メニューのネーミングでインパクトを出す:This is ICECREAM(沖縄県那覇市ほか)

沖縄県から北九州と名古屋に店舗を展開している夜パフェ専門店です。「アイスで最高な週末の夜を締めくくる」をコンセプトとしており、金曜日、土曜日、日曜日の週末限定で営業をしています。店舗によって異なりますが、主な営業時間は21時~24時となっています。

週末限定の営業で特別感を出しているのと併せて、メニュー名が「一途なチョコレート」「抹茶がめっちゃ抹茶」など、ネーミングにインパクトがあり味をイメージしやすいのが特徴です。

This is ICECREAMのメニュー例

6)完全会員制、アルコール提供で特別感を演出:Remake easy(東京都渋谷区ほか)

渋谷、名古屋、札幌で店舗を展開する完全会員制、住所非公開のパフェバーです。

月替わりのパフェメニューと併せて、ワインやウイスキーなどのアルコール類も提供しており、非日常的空間を味わうことができます。

SNSでは、X(旧Twitter)、Instagram、TikTokで店舗やメニューを紹介しており、新規会員の入会募集をXで不定期に告知しています。

7)キッチンカー出店で利用を拡大:よるのアイス(大阪府大阪市)

大阪市で店舗を構える夜アイス・夜パフェ専門店です。主な営業時間は20時~24時となっています。店舗と併せて、大阪府や兵庫県のイベント会場などでキッチンカーを使って出店しており、遠方や県外の利用客拡大を図っています。

SNSでは、Instagram、TikTokで店舗やメニューを紹介しています。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2023年12月21日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

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【入社1年目の教科書】貸借対照表で大切なのは5つの箱とその大きさ

書いてあること

  • 主な読者:貸借対照表の構造や読む際のポイントが知りたい新入社員
  • 課題:とにかく難しい言葉がたくさん並んでいて、全く読む気が起きない
  • 解決策:貸借対照表は、「負債と資産」「流動と固定」のバランスに注目して読む

損益計算書はわりと分かりやすかったけど、「貸借対照表」は本当に苦手……。科目が多くて、似たような名前だから区別できない。どれが一番大事なのか、印を付けてくれればいいのに。それに、貸借対照表は必ず左右の金額が一致している。これって偶然? それともわざわざ合わせているのかな?

1 まずは貸借対照表を見てみよう

貸借対照表とは、

会社がどのようにお金を調達し、それを何に使っているかを示す財務諸表

です。少し難しく説明すると、ある時点(通常は決算日。企業によって異なります)の会社の「財政状態」を示した財務諸表となります。英語では「Balance Sheet」と表記されるので、「BS」「B/S」と略されたりします。

早速、貸借対照表を確認してみましょう。

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貸借対照表の右側と左側は、

  • 右側:お金をどのように持ってきたのか(資金調達状況)
  • 左側:持ってきたお金を何に使ったのか(資金運用状況)

を示します。この左右の内容をさらに細かく見ると、次のようになります。

  • 右側の上「負債の部」:銀行からの借入など。他人資本とも呼ばれる
  • 右側の下「純資産の部」:株主の出資金やこれまでの利益など。自己資本とも呼ばれる
  • 左側の「資産の部」:現預金や土地など

次の分かりやすい図で、貸借対照表の構造を確認してみましょう。右側から左側に、調達したお金が使われているイメージがよく分かりますね。

画像2

2 貸借対照表は5つの箱で考える

貸借対照表の右側と左側の説明は前述した通りですが、

右側の負債と左側の資産は、それぞれ「流動」と「固定」とに分類

されます。流動と固定の区別は「正常営業循環基準」と「1年基準」によって行われます。正常営業循環基準とは、

「現金→仕入れ→商品→販売→売り上げ→現金」という営業サイクル

です。この営業サイクルの中で発生する資産・負債を「流動」として表示します。次が1年基準です。正常営業循環基準で流動とならないものでも、

決算日の翌日から1年以内に現金化や返済期限がある資産・負債は「流動」

に区分されます。

画像3

そして、貸借対照表を読む際は、

流動資産、固定資産、流動負債、固定負債、純資産

の5つの箱のバランスを見ることがとても大切です。簡単に示すと次のようになります。

画像4

どれが大きくて、どれが小さければよいかというのは貸借対照表を読む理由や立場によって違ってきますが、個々の数字の大小よりも、5つの箱のバランスを見るようにしてください。

次章で、それぞれの項目の意味を説明していきます。説明ばかりで退屈かもしれませんが、全て大切な内容なので、できるだけ覚えてください。

3 貸借対照表の項目

1)資産の部

1.流動資産

流動資産は、現金・預金、受取手形、売掛金、棚卸資産など、営業サイクルの中で発生する資産または決算日の翌日から1年以内に現金化される資産です。

2.固定資産

固定資産は、建物・構築物・付属設備、特許権など、営業サイクルの中で発生する資産で、なおかつ決算日の翌日から1年以内に現金化されない資産です。

a.有形固定資産

有形固定資産は、固定資産のうち、建物・構築物・付属設備、土地など、有形の財産として会社が保有する資産です。

b.無形固定資産

無形固定資産は、固定資産のうち、特許権、借地権など、無形の財産として会社が保有する資産です。

c.投資その他の資産

投資その他の資産は、関係会社株式、出資金、長期貸付金など、本業以外の投資活動のために保有する資産です。

3.繰延資産

繰延資産は、創立費、開業費、株式交付費など既に発生した費用のうち、現在から将来にわたって効果が見込まれるために、経過的に貸借対照表に記載される資産です。

2)負債の部

1.流動負債

流動負債は、支払手形、買掛金など、前述の基準で流動負債に分類される負債です。

2.固定負債

固定負債は、社債、長期借入金など、前述の基準で固定負債に分類される負債です。

3)純資産の部

1.株主資本

株主資本は、資本金、資本剰余金、利益剰余金など、返済の必要性のない資金です。

2.その他の純資産

その他の純資産は、株主資本以外の時価評価に伴うその他有価証券評価差額金、新株予約権などです。

4 細かな数字よりもバランスを見る!

貸借対照表を読む際は、個別の項目よりも、

流動資産と固定資産、資産と負債、負債と純資産のバランス

を見ることで、会社の状況が分かりやすくなります。例えば、流動資産よりも流動負債が大きければ、資金繰りに窮している恐れがあります。また、一般的には、負債よりも純資産が大きく、純資産で固定資産を賄えている形が理想的です。

ちなみに、損益計算書では分からなかった「掛け」については、貸借対照表の流動資産の「売掛金」、流動負債の「買掛金」で分かります。それぞれの大きさはもちろんですが、それ以上に決済の後先が資金繰りに大きな影響を及ぼすことを忘れないでください。先にお金が入れば、支払いが楽になります。逆に、先に支払いがくると資金繰りが厳しくなるということです。

5 【質問】どちらが大きいほうがいい?

最後に皆さんに質問です。

流動と固定は、どちらが大きいほうが好ましいですか?

この質問に対する答えは、貸借対照表を読む理由や立場によって違います。例えば、銀行からの借入は、返済期間が1年以内なら流動負債、1年超なら固定負債となります。考えるべきは、

長期(返済期間が1年超)のほうが資金は安定するが金利は高くなり、短期の場合は逆になる

ということです。会社の資金繰りや借りたい資金の種類(運転資金や設備資金)によって、好ましい借入は変わってくるのです。

「自分は何のために貸借対照表を読むのか?」という目的を持つと、貸借対照表の見え方が違ってきます。また、貸借対照表に限らず、財務諸表は単年度のものだけでは良し悪しを判断することはできません。理想的には、当期、前期、前々期の3期分を比較してみると、状況がより分かりやすくなります。

以上(2024年12月更新)

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画像:Mariko Mitsuda

【入社1年目の教科書】損益計算書の利益はどこにいった?

書いてあること

  • 主な読者:損益計算書の構造や読む際のポイントが知りたい新入社員
  • 課題:他の財務諸表よりはとっつきやすいが、なぜ、利益が5つもあるのか分からない
  • 解決策:損益計算書は5つの利益の意味を知り、キャッシュとの不一致を意識する

いよいよ財務諸表を読むぞ! 先輩が「損益計算書は売上から費用を引いて利益を出す単純な構造だから簡単だよ」って言ってたな。確かに足し算と引き算の連続なので計算は分かるけど、なんで利益が5つもあるのかな。それに、利益の分だけお金があるなら、うちの会社はすごいお金持ちだけど、本当かな?

1 まずは損益計算書を見てみよう

損益計算書とは、

会社がもうかったか損をしたかを示す財務諸表

です。少し難しく説明すると、会計期間の売上、費用、利益の状況を示した財務諸表となります。英語では「Profit and Loss Statement」と表記されるので、「PL」「P/L」と略されたりします。

早速、損益計算書を確認してみましょう。

画像1

注目していただきたいのは、損益計算書が、

収益-費用=利益

の繰り返しになっていることです。この計算を繰り返して、会社がどれくらいもうけたのか、あるいは損をしたのかを示しており、計算の過程で、

5つの利益

が登場します。項目の説明は後ほどしますが、まず、この5つの利益が何を意味するのかのイメージをつかんでください。

画像2

一番上の売上高から費用を引いていき、利益を求める構造になっていることがよく分かりますね。

次章で、それぞれの項目の意味を説明していきます。説明ばかりで退屈かもしれませんが、全て大切な内容なので、できるだけ覚えてください。

2 損益計算書の項目

1)売上高

売上高は、商品・製品・サービスなどを販売することで得た売上の総額です。売上高は会社の収益力を確認する最も基本的な数値で、会社のおおよその規模を示します。

2)売上原価

売上原価は、小売業の仕入原価や製造業の材料費など、商品の調達や製品の製造に必要な費用です。また、社員がサービスの提供や製品の製造に直接関係する業務(工場のラインなど)に従事している場合、その人件費も一般的には売上原価になります。

3)売上総利益

売上総利益は、「売上高-売上原価」で求めるもので、「粗利(あらり)」とも呼ばれます。売上高に対する売上総利益の割合が高いほど、その会社ならではの付加価値の高い商品・サービスを販売しているといえます。

4)販売費・一般管理費

販売費・一般管理費(以下「販管費」)は、旅費・交通費、広告宣伝費、減価償却費などの諸経費です。また、社員が商品・サービスの販売を間接的にサポートする業務(経理・総務など)に従事している場合、その人件費も一般的には販管費になります。

5)営業利益

営業利益は、「売上総利益-販管費」で求めるもので、会社がメインとしている「本業」でどれだけもうかっているか、もしくは赤字になっているかが分かります。損益計算書を見る際は必ず確認したい利益です。

6)営業外収益・費用

営業外収益・費用は、本業以外の投資・財務活動によって生じた収益や費用です。営業外収益には預貯金の受取利息や受取配当金などが含まれます。また、営業外費用には支払利息などが含まれます。

7)経常利益

経常利益は、「営業利益+営業外収益-営業外費用」で求めるもので、本業以外の投資・財務活動までを勘案した利益です。今はあまりいませんが、「経常(けいつね)」と呼ぶ人もいます。営業利益が赤字なのに、経常利益で黒字になっている会社もあるので、なぜ、そのような状態になっているのかを分析してみましょう。

8)特別利益・損失

特別利益・損失は、会社の経常的な経営活動とは直接関係のない、臨時的、偶発的に生じた収益や費用です。特別利益には固定資産の売却益などが含まれます。また、特別損失には自然災害や訴訟による損失などが含まれます。

9)税引前当期純利益

税引前当期純利益は、「経常利益+特別利益-特別損失」で求めるもので、臨時的、偶発的に発生する収益と費用までを考慮した利益です。

10)法人税、住民税及び事業税

法人税、住民税及び事業税は、会社が支払う税金です。

11)税引後当期純利益

税引後当期純利益は、「税引前当期純利益-法人税、住民税及び事業税」で求めるもので、会社が処分可能な最終利益です。税引後当期純利益は、会社の財務体質強化のために内部留保に充てられたり、新たな設備投資に使われたりする原資となります。

3 損益計算書の利益はどこにいった?

損益計算書に関する最大のポイントは、

損益計算書の利益に相当するお金が、会社の金庫や銀行口座にあるわけではない

という驚愕(きょうがく)の事実です。「えっ?」と思うでしょうが、損益計算書の利益は帳簿上のものにすぎません。細かなことはさておき、ここでは、

  • ビジネスは「掛け」が多く、実際にお金をもらったり払ったりするのは数カ月先になる
  • 損益計算書では、請求書を発行した時に売上になり、請求書を受領した時に費用になる

ことを覚えてください。例えば、4月に100万円の請求書を発行し、支払期日を5月末にした場合、

4月に売上が100万円計上されますが、実際にお金をもらうのは5月末になり、1カ月のズレが生じる

ということです。そして、このズレにより「黒字倒産」という奇妙な現象が起こります。黒字なのに倒産してしまうのは、

損益計算書は黒字なのに、実際のお金はマイナスになっている状態

を指しているわけです。ここを押さえていれば、かなり上級です!

では、「掛け」の規模ってどれくらいなのとか、会社にはいくらのお金(キャッシュ)があるのとか、というのは、別の財務諸表である貸借対照表とキャッシュフロー計算書を読めば分かります。

4 【質問】売上と利益のどれを重視する?

最後に皆さんに質問です。

「売上高、売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、税引後当期純利益」の中で、最も重視するのは何ですか?

この質問に対する答えは、損益計算書を読む理由や立場によって違います。例えば、

その会社の本業の状態を知りたいのであれば、営業利益を重視する

ことになります。あるいは、銀行の立場だと、

借入金の返済原資となる税引後当期純利益を重視する

ことになるわけです。

「自分は何のために損益計算書を読むのか?」という目的を持つと、損益計算書の見え方が違ってきます。また、損益計算書に限らず、財務諸表は単年度のものだけでは良し悪しを判断することはできません。理想的には、当期、前期、前々期の3期分を比較してみると、状況がより分かりやすくなります。

以上(2024年12月更新)

pj00509
画像:Mariko Mitsuda